説明

半導体レーザ駆動装置の製造方法

【課題】
半導体レーザ素子のサージ電流からの保護と高い応答特性を両立する半導体レーザ駆動装置の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
半導体レーザ素子と保護素子とを備える半導体レーザ装置をレーザ駆動回路に電気的に接続する工程と、
前記保護素子を電気的に絶縁する保護素子絶縁工程とを順に備える半導体レーザ駆動装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護素子を備えた半導体レーザ駆動装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レーザダイオードをサージ電流から保護するためにパッケージ内に保護素子を備えた半導体レーザ装置がある(例えば、特許文献1)。また、半導体レーザ装置を光ディスクの書き込み等に用いる場合には、パルス駆動させるために高速応答性が求められることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05-102605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体レーザ装置内に保護素子を備えることによって、サージ電流により半導体レーザ素子が壊れるのを防ぐことができる。しかし、保護素子を備える半導体レーザ装置は静電容量が増加する為、半導体レーザ素子の応答特性が低下するという問題がある。
そこで本願では、半導体レーザ素子のサージ電流からの保護と高い応答特性を両立する半導体レーザ駆動装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体レーザ駆動装置の製造方法は、半導体レーザ素子と保護素子とを備える半導体レーザ装置をレーザ駆動回路に電気的に接続する工程と、前記保護素子を電気的に絶縁する保護素子絶縁工程とを順に備える。
【発明の効果】
【0006】
本願の半導体レーザ駆動装置の製造方法によれば、半導体レーザ素子のサージ電流からの保護と高い応答特性を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態の半導体レーザ装置の構造を説明するための概略斜視図である。
【図2】実施形態の半導体レーザ駆動装置の製造方法を説明するための回路図である。
【図3A】別の実施形態の半導体レーザ装置の構造を説明するための概略平面図である。
【図3B】別の実施形態の半導体レーザ装置の構造を説明するための要部の概略平面図である。
【図4】別の実施形態の半導体レーザ装置の構造を説明するための要部の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に図面を参照しながら実施形態を説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための半導体レーザ駆動装置の製造方法を例示するものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる例示にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。
【0009】
(実施形態1)
図1は、実施形態の半導体レーザ装置の斜視図である。
実施形態の半導体レーザ装置1では、ステムのヒートシンク2b上にサブマウント6を介して半導体レーザ素子3が配置されている。半導体レーザ素子3は、上方にレーザ光を出射する。その半導体レーザ素子の後方であって、ステムのベース部2a上に保護素子4が配置されている。また、ステムのベース部2aを貫通するようにリード(21、22、23)が設けられている。半導体レーザ素子3はワイヤ5a及び5bによって、保護素子4はワイヤ5c及び5dによって、第1のリード21及び第2のリード22と電気的に接続されている。また、説明の便宜上部分的に図示しているが、半導体レーザ装置は、半導体レーザ素子3及び保護素子4を覆うようにキャップ7で封止されている。
【0010】
本実施形態の半導体レーザ駆動装置の製造方法を説明する。まず、半導体レーザ装置を組み立てる工程である。
最初に、半導体レーザ素子3をステムに実装する。半導体レーザ素子の実装は、半導体レーザ素子とステムの接着面を合わせた後、所定の温度及び圧力下で保持することによって接着することができ、具体的には、熱圧着法、ダイレクトボンディング法等が挙げられる。半導体レーザ素子とステムの接合材としては、250℃以上の高融点材料、Au系低融点半田材(例えばAu/Sn、Ni/Au、Ni/Pd/Au等)、Ag系接合材料、接合樹脂を用いることができる。
【0011】
半導体レーザ素子は、半導体レーザ素子の半導体層側をステムに実装したフェイスダウン実装、半導体レーザ素子の基板側をステムに実装したフェイスアップ実装等いずれの構造であってもよい。
【0012】
半導体レーザ素子3は、電圧が印加されてしきい値以上の電流が流れると、活性層及びその付近でレーザ発振が起こり、生成されたレーザ光が導波路領域を通って外部に放射されるものである。また、その半導体材料は、III−V族、II−VI族等の化合物を用いたもので、いずれの波長のレーザ光を出射するものであってもよい。例えば、GaNをはじめとする窒化物半導体からなる半導体レーザ素子を用いることができる。半導体レーザ素子の構造としては、例えば、導電性又は絶縁性の基板上にn型半導体層、活性層及びp型半導体層の順に積層され、半導体層の表面に絶縁膜や電極が形成されたものが挙げられる。また、半導体レーザ装置内には単数又は複数の半導体レーザ素子を有していてもよい。
【0013】
ステムは、半導体レーザ素子で発生する熱を効率的に外部に放出するためにも利用されるため、比較的熱伝導度が高い材料、例えば、20W/mK程度以上の材料によって形成されることが好ましい。具体的な材料としては、Cu、Al、Fe、Ni、Mo、CuW、CuMo等の金属や、AlN、SiC、アルミナなどのセラミックが挙げられる。これらの金属またはセラミックを母材とし、その表面の全面、または一部にAu、Ag、Al等でめっきが施されることで導電性が確保されていてもよい。なかでも、表面が金めっきされた銅又は銅合金により形成されているものが好ましい。
【0014】
ステムの形状、大きさは特に限定されるものではなく、半導体レーザ装置の最終的に望まれる形状及び大きさ等によって、適宜調整することができる。平面形状としては、円形、楕円形、矩形等の多角形又はこれらに近似する形状のものを用いることができる。例えば、3〜10mm程度の直径の円形で平板状のものが挙げられる。その厚みとしては、0.5〜5mm程度であることが好ましい。また、ステムは平板状のものには限定されず、その表面に凹部及び/又は凸部が設けられていてもよい。例えば半導体レーザ素子及び/又は保護素子が載置される領域に凹部又は凸部が設けられているものが挙げられる。具体的には、図1に示すように、略円形で平板状のベース部2aに、半導体レーザ素子を載置するための凸部状のヒートシンク2bを備えた形状が挙げられる。
また、ステムは外部電源と接続するためのリードが設けられていてもよい。リードとしては、ステムと同一の材料で形成されステムを貫通するように低融点ガラスで接着されたものなどが挙げられる。また、ステムの表面や内部に配線パターンを有していてもよい。
【0015】
次に、保護素子4をステムに実装する。保護素子の実装は、半導体レーザ素子の実装と同様の方法で行うことができる。保護素子とステムの接着面を合わせた後、所定の温度及び圧力下で保持することによって接着することができる。保護素子とステムの接合材としては、250℃以上の高融点材料、Au系低融点半田材(例えばAu/Sn、Ni/Au、Ni/Pd/Au等)、Ag系接合材料、接合樹脂を用いることができる。
【0016】
保護素子を実装する位置は、ステムのベース部上には限定されない。例えば、半導体レーザ素子と同様に、ステムのヒートシンク上に配置してもよい。詳細は後述するが、保護素子はサブマウントを介してステムに実装されていてもよい。また、半導体レーザ素子がサブマウントを介してステムに実装されている場合には、保護素子を同じサブマウント上に配置してもよいし、異なるサブマウント上に配置してもよい。
【0017】
保護素子は、半導体レーザ素子をサージ電流による電気的破壊から保護するための部材である。保護素子は、半導体レーザ素子と逆方向に並列に接続され、半導体レーザ素子に逆方向に電圧がかかった場合や、順方向に過度の電圧がかかった場合に、保護素子に電流が流れて半導体レーザ素子には電流が流れないようにすることで半導体レーザ装置が故障するのを防止することができる。保護素子としては、例えばSiからなるツェナーダイオードを用いることができる。
【0018】
次に、半導体レーザ素子及び保護素子とリードをワイヤで接続し半導体レーザ装置を得る。
実施形態の半導体レーザ装置では、半導体レーザ素子の陽極側がワイヤ5aによって第1のリード21と接続され、陰極側がワイヤ5bによって第2のリード22と接続されている。また、保護素子の陽極側がワイヤ5cによって第2のリード22と接続され、陰極側がワイヤ5dによって第1のリード21と接続されている。
ワイヤは、通常用いられる材料を使用することができる。具体的には、Au、Ag、Cu等の材料の直径10〜50μm程度のものを用いることができる。その長さは、接続する部材間の距離によって適宜設定することができる。また、接続する部材間において1本で接続されることには限定されず、複数本用いて接続してもよい。
【0019】
以下、その他の工程について説明する。
半導体レーザ素子及び保護素子は、サブマウントを介してステムに実装されてもよい。サブマウントを用いる場合には、半導体レーザ素子をサブマウント上に載置して接着し、その後サブマウントをステムに接着する方法、ステム上にサブマウントを載置して接着し、その後半導体レーザ素子をサブマウントに接着する方法等が挙げられる。半導体レーザ素子のサブマウントへの実装及びサブマウントのステムへの実装も半導体レーザ素子のステムへの実装と同様にして行うことができる。保護素子についても同様のことが言える。また、半導体レーザ素子及び/又は保護素子を載置するための部材であるステムとサブマウントを包括して「支持体」と記載することがある。
【0020】
サブマウントは放熱のために熱伝導性の高い部材が用いられることが好ましく、具体的には、AlN、CuW,ダイヤモンド,SiC、セラミックス等が挙げられる。その表面にTi/Pt/Au、Ni/Au等の金属の薄膜が形成され導電性が確保されていることが好ましい。
【0021】
また、本実施形態の半導体レーザ装置1は、半導体レーザ素子3及び保護素子4を被覆するようにキャップ7がステムに取り付けられ封止されていてもよい。発振波長が320〜530nm程度の短波長の半導体材料(例えば、窒化物半導体)を用いた半導体レーザ素子を用いる場合には、有機物や水分を集塵しやすいため、キャップを設けることでレーザ装置内の気密性を高め、防水性、防塵性を高めることができ好ましい。
【0022】
また、半導体レーザ装置をキャップにより封止する場合は、抵抗溶接又は半田付け等でステムに接着することができる。封止する際は、露点−10℃以下の乾燥した大気中や窒素雰囲気中で封止することが好ましい。また、各部材をアッシング若しくは熱処理等の方法を用いて前処理し、各部材に付着した水分や有機物の除去を行ってもよい。
【0023】
キャップの形状は、有底の筒型(円柱又は多角形柱等)、錐台型(円錐台又は多角形錐台等)又はドーム型及びこれらの変形形状等が挙げられる。キャップは、熱伝導率が高い材料で形成されていることが好ましく、例えば、Ni、Co、Fe、Ni−Fe合金、コバール、真鍮等の材料を用いることができる。
キャップの上面や側面のレーザ光の光出射部位に対応する部分には、レーザ光を通過させる開口部を有している。具体的には、図1に示すように、ステムに接着されたキャップの頂部に開口部を有し、開口部にはレーザ光を取り出すための透光性部材が支持されているものを用いることができる。透光性部材は、例えば、ガラス、サファイア、セラミックス、樹脂等により形成することができる。また、その表面に、レーザ光を好適に透過させることができるように光透過膜が設けられていてもよい。また、透光性部材は、波長変換部材、光拡散材等を含有していてもよい。
【0024】
また、半導体レーザ素子の出力をモニタするために所望の位置にフォトダイオードを配置してもよい。
【0025】
続いて、図2(a)に示すように、得られた半導体レーザ装置に電流を供給するためにレーザ駆動回路に接続する。
半導体レーザ装置において保護素子が電気的に接続されていると静電容量が増加する為、保護素子を備えない半導体レーザ装置と比較すると応答特性が悪い。しかし、この後の工程で、保護素子を電気的に絶縁することによって、半導体レーザ素子に電流を流しても保護素子には電流が流れないので、回路駆動時の応答性を向上させることができる。
また、レーザ駆動回路には、一定以上の電流や電圧が流れないようにするためにサージ保護回路が組み込まれていることが好ましい。レーザ駆動回路は、摩擦、周囲の装置や治具の帯電、取り扱う人体に由来する静電気等によってサージ電流が流れて半導体レーザ素子が故障してしまうことが考えられるが、サージ保護回路が組み込まれていることによって、半導体レーザ素子が壊れるのを防ぐことができる。サージ保護回路としては公知のものを用いることができ、例えばサージ電流をバイパスさせる回路を別途設ける方法を用いることができる。
このようなサージ保護回路を備えるレーザ駆動回路に組み込まれた半導体レーザ素子は、サージ保護回路によって保護されるので半導体レーザ装置内の保護素子は不要となる。
つまり、実施形態の製造方法によれば、半導体レーザ装置がレーザ駆動回路に組み込まれるまでの間は、半導体レーザ装置内に備えられた保護素子によってサージ電流から半導体レーザ素子を保護することができ、半導体レーザ装置がレーザ駆動回路に組み込まれ保護素子が絶縁された後には、半導体レーザ装置内の保護素子は電気的に絶縁されているので、応答特性は保護素子を備えない半導体レーザ装置と同等とすることができ、サージ電流からの保護と応答特性の維持を両立させた半導体レーザ駆動装置を製造することができる。さらに、レーザ駆動回路にサージ保護回路を備えることによって、半導体レーザ装置がレーザ駆動回路に組み込まれ、保護素子が絶縁された後にも半導体レーザ素子をサージ電流から保護することができる。
【0026】
最後に保護素子を絶縁し、図2(b)に示すような回路図の半導体レーザ駆動装置を得る。保護素子とレーザ駆動回路を接続している半導体レーザ装置内のワイヤを切断することによって保護素子をレーザ駆動回路から絶縁することができる。保護素子とレーザ駆動回路を接続しているワイヤを切断するには、電流を印加すればよい。本実施形態では、保護素子と接続されている2本のワイヤ(ワイヤ5c及びワイヤ5d)のうち、電流経路の中で最も抵抗の高い箇所で熱が発生することによりをこのワイヤが切断される(以下、切断されるワイヤを第1のワイヤと記載し、保護素子と接続され切断されないワイヤを第2のワイヤと記載する)。また、第1のワイヤ及び第2のワイヤの材料が同じ場合には、第1のワイヤの直径及び長さによってワイヤの切断する電流値が決定される。例えば、第1のワイヤとしてAuからなる直径20μmのものを用いる場合には、700mA程度の電流を印加することでワイヤを切断することができる。この工程においては、半導体レーザ素子の逆方向耐圧よりも低い電圧を印加することで半導体レーザ素子の劣化を抑制することができる。
【0027】
具体的には、図1のように接続された半導体レーザ装置では、ワイヤ5c及びワイヤ5dの材料及び直径が同じである場合には、より長いワイヤ5dが切断される。
つまり、保護素子が第1のワイヤ(5d)及び第2のワイヤ(5c)によってレーザ駆動回路と接続され、第1のワイヤ(5d)及び第2のワイヤ(5c)の直径が同じ場合には、第1のワイヤを第2のワイヤよりも長くすることで第1のワイヤが切断される。
また、第1のワイヤ(5d)及び第2のワイヤ(5c)の材料及び直径が同じ場合には、第2のワイヤ(5c)を複数本設けることによっても第1のワイヤ(5d)を切断することができる。
あるいは、第1のワイヤ(5d)及び第2のワイヤ(5c)の材料及び長さが同じ場合には、第1のワイヤ(5d)は第2のワイヤ(5c)よりも直径の小さいものを用いることで第1のワイヤ(5d)を切断することができる。
【0028】
(実施形態2)
実施形態2の半導体レーザ装置の平面図を図3Aに示す。図3Bはサブマウントの拡大平面図である。本実施形態では、半導体レーザ素子3と保護素子4とが同一のサブマウント6上に配置されている。
本実施形態の半導体レーザ装置では、半導体レーザ素子の陽極側がワイヤ5eによって第1のリード21と接続され、陰極側がワイヤ5fによって第2のリード22と接続されている。また、保護素子の陽極側は、半導体レーザ素子と同じワイヤ5fによって第2のリード22と接続され、陰極側はワイヤ5gによって第1のリード21と接続されている。
【0029】
本実施形態でも、実施形態1と同様にして半導体レーザ装置とレーザ駆動回路とを電気的に接続した後に、保護素子と接続されているワイヤを切断することによって保護素子を絶縁し、半導体レーザ素子のサージ電流からの保護と、応答特性悪化の抑制を両立させることができる。本実施形態では、保護素子とレーザ駆動回路を接続する2本のワイヤ(ワイヤ5f及びワイヤ5g)のうち、ワイヤ5fは、半導体レーザ素子をレーザ駆動回路と電気的に接続する役割があるので、ワイヤ5gを切断することによって保護素子を絶縁する。つまり、保護素子と直接接続されているワイヤ5gを切断すればよい。
【0030】
具体的には、ワイヤ5gを切断するためには、ワイヤ5fとワイヤ5gに同じ材料及び直径のワイヤを用いた場合、ワイヤ5gをワイヤ5fよりも長くすることでワイヤ5gを切断することができる。あるいは、ワイヤ5fで図示されるリード22とサブマウントとを接続するワイヤの本数を増やしても同様にワイヤ5gを切断することができる。また、直径の異なるワイヤを用いる場合には、ワイヤ5fの直径をワイヤ5gの直径よりも太くすることでワイヤ5gを切断することができる。
【0031】
このような半導体レーザ装置を用いると、実施形態1と比較して、ステムに実装する部材がサブマウント1つのみになるので、工程を簡略化し、歩留まりを向上させることができる。さらに、半導体レーザ素子の陰極側のワイヤと保護素子の陽極側のワイヤを兼用することができるので、使用するワイヤの本数が減ることによっても工程を削減することができる。
また、本実施形態は、サブマウントを用いた半導体レーザ装置を用いることに限定されず支持体上で同様の形態とすることが可能である。
【0032】
(実施形態3)
実施形態3の半導体レーザ装置のサブマウントの拡大平面図を図4に示す。本実施形態では、実施形態2と同様に半導体レーザ素子3と保護素子4とが同一のサブマウント6上に配置され、ワイヤ(5e,5f,5g)によってリード(図示しない)と接続されている。
【0033】
また、サブマウント6はその表面に導電性が確保されている。本実施形態は、サブマウントの表面に部分的に絶縁部Y1及びY2が形成されている点で実施形態2と異なる。例えば、図4に示すように、絶縁部Y1及びY2が設けられ、絶縁部Y1及びY2に挟まれることによって電流の経路が狭められた導電部Xが設けられている。
半導体レーザ装置に電流を印加した際、ワイヤ5f、保護素子4、ワイヤ5gという経路で電流が流れるが、絶縁部及び導電部は、ワイヤ5fと保護素子4の間あるいは保護素子4とワイヤ5gの間に形成されている。
このようなサブマウントの製造方法としては、サブマウントの母材に所望の絶縁部の形状のマスクを設けて上述したような金属の薄膜を設けることで表面に導電部を形成すればよい。
【0034】
本実施形態では、他の実施形態と同様にして半導体レーザ装置とレーザ駆動回路とを電気的に接続した後に、絶縁部Y1及びY2の間を通る導電部Xを破断することによって保護素子を絶縁し、半導体レーザ素子のサージ電流からの保護と、応答特性悪化の抑制を両立させることができる。
【0035】
他の実施形態と同様に、電流経路の中で最も抵抗の高い箇所で熱が発生することにより導電部を切断し、保護素子を絶縁することができる。導電部Xを破断するためには、導電部の幅及び長さを調整すればよい。具体的には、導電部Xの幅を10〜100μm程度、長さを30〜300μm程度とすることで導電部Xを破断することができる。例えば、導電部の材料がTi/Pt/Au(厚みが0.1μm/0.2μm/0.6μm)からなり、導電部の幅が50μm、長さが120μmである場合には、500mA程度の電流を印加することで導電部を切断することができる。このとき、ワイヤ5gは、600mA以上の電流が印加できることが好ましい。具体的には、ワイヤの直径20μm以上で、長さが1000μm以下とすればよい。
【0036】
このような半導体レーザ装置を用いると、所望の位置で保護素子を絶縁することが可能になり、確実に保護素子が絶縁されているかどうかを確認することが容易になる。詳細に説明すると、ワイヤを破断させる場合には、ワイヤは通常その全長にわたって略同じ太さなので、保護素子絶縁工程の前に第1のワイヤ中のどの位置で破断されるのかを特定することは困難である。しかし本実施形態では、サブマウントに所望のパターンを設けて導電部を形成することで、破断位置をある程度特定することが可能になる。さらに、サブマウント上に設けられた導電部を破断するので、破断時の飛び散りが少なく、半導体レーザ装置内の汚染を抑制することができる。
また本実施形態はサブマウントを用いた半導体レーザ装置を用いることに限定されず、支持体上で同様の形態とすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の半導体レーザ駆動装置の製造方法は、光ディスク、光通信システム、プロジェクタ、ディスプレイ、印刷機又は測定器等全てのデバイスを製造するために利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1:半導体レーザ装置
2a:ステム(ベース部)
2b:ステム(ヒートシンク)
21、22、23:リード
3:半導体レーザ素子
4:保護素子
5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g:ワイヤ
6:サブマウント
7:キャップ
X:導電部
Y1、Y2:絶縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザ素子と保護素子とを備える半導体レーザ装置をレーザ駆動回路に電気的に接続する工程と、
前記保護素子を電気的に絶縁する保護素子絶縁工程とを順に備える半導体レーザ駆動装置の製造方法。
【請求項2】
前記レーザ駆動回路は、サージ保護回路を備える請求項1に記載の半導体レーザ駆動装置の製造方法。
【請求項3】
前記保護素子は、第1のワイヤによって前記レーザ駆動回路と電気的に接続され、前記保護素子絶縁工程は、電流を印加することで前記第1のワイヤを切断し、前記保護素子を電気的に絶縁する請求項1又は2に記載の半導体レーザ駆動装置の製造方法。
【請求項4】
前記保護素子は、前記第1のワイヤ及び第2のワイヤによって前記レーザ駆動回路と接続され、前記第1のワイヤ及び前記第2のワイヤの直径は同じであり、前記第1のワイヤは前記第2のワイヤよりも長い請求項3に記載の半導体レーザ駆動装置の製造方法。
【請求項5】
前記保護素子は、前記第1のワイヤ及び第2のワイヤによって前記レーザ駆動回路と接続され、前記第1のワイヤ及び前記第2のワイヤの直径は同じであり、前記第2のワイヤは複数本設けられる請求項3に記載の半導体レーザ駆動装置の製造方法。
【請求項6】
前記保護素子は、前記第1のワイヤ及び第2のワイヤによって前記レーザ駆動回路と接続され、前記第1のワイヤ及び前記第2のワイヤの長さは同じであり、前記第1のワイヤは前記第2のワイヤよりも直径が小さい請求項3に記載の半導体レーザ駆動装置の製造方法。
【請求項7】
前記半導体レーザ素子及び保護素子は、同一のサブマウント上に設けられる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体レーザ駆動装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1のワイヤは、前記保護素子に直接接続されている請求項7に記載の半導体レーザ駆動装置の製造方法。
【請求項9】
前記保護素子は、表面に導電部を有する支持体上に載置され、前記導電部によって前記レーザ駆動回路と電気的に接続され、前記保護素子絶縁工程は、電流を印加することで前記導電部を切断し、前記保護素子を電気的に絶縁する請求項1又は2に記載の半導体レーザ駆動装置の製造方法。

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図1】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−186326(P2012−186326A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48665(P2011−48665)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】