説明

半導体発光装置

【課題】面発光型半導体素子から発せられた光の利用効率を向上できる半導体発光装置を提供する。
【解決手段】面発光型半導体素子16と、面発光型半導体素子16を実装する基板12と、面発光型半導体素子16と基板12との間に充填され、面発光型半導体素子16から発せられる光を長波長の光に波長変換する第1の波長変換材料を含有するアンダーフィル樹脂18と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光型半導体素子を用いる半導体発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、面発光型の発光ダイオード(Light Emitting Diode:以下、LEDと略記する)を用いた半導体発光装置を照明用として利用する動きが増加しており、より高照度、高効率の半導体発光装置が要求されている。
【0003】
この種の半導体発光装置は、一般に、紫外から青領域に発光ピークを有するLEDと、その光を吸収して長波長の光を発する1種または複数種の蛍光体とを組み合わせて混色によって白色光を得るように構成されている。例えば、青色光を発するLEDと、その光によって励起されて黄色光を発する蛍光体とを組み合わせて、白色光を得る半導体発光装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、波長λが300nm≦λ≦370nmの波長領域に発光ピークを有するLEDと、430nm≦λ≦490nmの波長領域に発光ピークを有する青色蛍光体と、520nm≦λ≦570nmの波長領域に発光ピークを有する緑色蛍光体と、590nm≦λ≦630nmの波長領域に発光ピークを有する赤色蛍光体とを組み合わせてなる半導体発光装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
このような半導体発光装置におけるLEDの実装法としては、回路基板上にLEDをフェースアップで実装して、ワイヤボンディングにより回路基板上の電気配線と電気的に接続するフェースアップ実装法や、LEDを回路基板上にフェースダウンで実装して、金属バンプを介して電気配線と電気的に接続するフリップチップ実装法が知られている。フリップチップ実装法は、フェースアップ実装法と比較して、小型化、高密度集積化が容易であり、また、実装生産性が高い、ワイヤが無いため断線や光の遮蔽が無い、ワイヤよりも太く短いバンプによって高い放熱性が得られる、などの利点がある。さらに、フリップチップ実装法では、半導体素子と基板との間にアンダーフィル樹脂を充填して信頼性の向上が図られている。
【0005】
また、近年の半導体発光装置は、LEDの高出力化に伴う電流、発熱増加に対応するために、LEDを実装する回路基板として、セラミック基板が用いられることが多くなっている。
【0006】
また、面発光型のLEDは、発光面から放射状に光を発生する。そのため、例えば、所望の領域を照明する照明用として面発光型のLEDを用いる場合は、所望の領域に向かない光の存在によって、光の利用効率が低下し、高輝度の照明光が得られにくくなる。このような不要な方向に放射される光を有効利用して高輝度の出力光を得る発光装置として、例えば、LEDの周辺にリフレクタを形成して、LEDからの放射光を所望の方向に出射させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
図4は、かかるリフレクタを有する従来の半導体発光装置の構成を示す図である。この半導体発光装置100は、特許文献3に開示されたものである。面発光型のLED102は、セラミック基板104の一方の表面に形成された配線層106a,106bにバンプ108a,108bを介してフリップチップ実装されている。また、セラミック基板104の一方の表面上で、LED102の周囲には、リフレクタ110が配置されており、このリフレクタ110とセラミック基板104とで形成される凹部には、LED102を覆うように、蛍光体を含有した封止部材112が充填されている。なお、配線層106a,106bは、それぞれスルーホール114a,114bを介して、セラミック基板104の他方の表面に形成された配線層116a,116bに電気的に接続されている。
【0008】
図4に示した半導体発光装置によると、LED102のセラミック基板104とは反対側のチップ裏面102aから放射された光のうち、リフレクタ110とセラミック基板104とで形成された凹部の射出開口に向かわない光は、リフレクタ110で反射されて射出開口から放出される。したがって、LED102のチップ裏面102aから放射された光の利用効率を向上でき、高輝度の出力光を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3993854号公報
【特許文献2】特表2000−509912号公報
【特許文献3】特開2005−166937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、本発明者による種々の実験検討によると、従来提案されている半導体発光装置には、さらに改良すべき点があることが判明した。すなわち、面発光型のLEDは、チップ両面から光を放射する。このため、例えば、図5に側面図を示すように、面発光型のLED120を、バンプ122を介して回路基板124の配線層126にフリップチップ実装すると、LED120の回路基板124とは反対側のチップ裏面120aと、回路基板124側のチップ表面120bとから光が放射されることになる。
【0011】
ところが、LED120のチップ表面120bから放射された光は、チップ表面120bと回路基板124との間で多重反射される。その結果、一部の光は、LED120のチップ裏面120a側の出射方向に向かうが、大部分の光は、回路基板124、配線層126、LED120等に吸収されて減衰されてしまう。特に、バンプ122や配線層126等を構成する金属や、回路基板124を構成するセラミック材料は、図6に示すような反射スペクトルを有する。そのため、特に、LED120が紫外や紫等の短波長の光を発する場合は、チップ表面120bから放射された光の殆どが吸収されて利用できないことになる。
【0012】
したがって、かかる観点に鑑みてなされた本発明の目的は、面発光型半導体素子から発せられた光の利用効率を向上できる半導体発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する第1の観点に係る半導体発光装置の発明は、
面発光型半導体素子と、
該面発光型半導体素子を実装する基板と、
前記面発光型半導体素子と前記基板との間に充填され、前記面発光型半導体素子から発せられる光を長波長の光に波長変換する第1の波長変換材料を含有するアンダーフィル樹脂と、
を備えることを特徴とするものである。
【0014】
第2の観点に係る発明は、第1の観点に係る半導体発光装置において、
前記面発光型半導体素子の前記基板への取り付け面とは反対面の少なくとも一部を被覆し、前記面発光型半導体素子から発せられる光を長波長の光に波長変換する第2の波長変換材料を含有する第1の被覆樹脂を、さらに備えることを特徴とするものである。
【0015】
第3の観点に係る発明は、第2の観点に係る半導体発光装置において、
前記第2の波長変換材料は、前記面発光型半導体素子から発せられる光を、前記第1の波長変換材料が波長変換する光よりも短波長の光に波長変換することを特徴とするものである。
【0016】
第4の観点に係る発明は、第2または3の観点に係る半導体発光装置において、
前記第1の被覆樹脂は、前記面発光型半導体素子の周辺部を被覆し、
さらに、前記面発光型半導体素子の周囲に配置された反射体と、
前記面発光型半導体素子の前記基板への取り付け面とは反対面の中央部と前記第1の被覆樹脂の一部を被覆し、前記面発光型半導体素子から発せられる光を長波長の光に波長変換する第3の波長変換材料を含有する第2の被覆樹脂と、
を備えることを特徴とするものである。
【0017】
第5の観点に係る発明は、第4の観点に係る半導体発光装置において、
前記第3の波長変換材料は、前記面発光型半導体素子から発せられる光を、前記第2の波長変換材料が波長変換する光よりも短波長の光に波長変換することを特徴とするものである。
【0018】
第6の観点に係る発明は、第1乃至5のいずれか一の観点に係る半導体発光装置において、
前記面発光型半導体素子は、青色光の波長以下の短波長の光を発することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る半導体発光装置によれば、面発光型半導体素子から発せられた光の利用効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る半導体発光装置の要部の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施の形態に係る半導体発光装置の要部の概略構成を示す断面図である。
【図3】本発明の第3実施の形態に係る半導体発光装置の要部の概略構成を示す断面図である。
【図4】従来の半導体発光装置の構成を示す図である。
【図5】本発明が解決しようとする課題を説明するための図である。
【図6】金属およびセラミック材料の反射スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0022】
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る半導体発光装置の要部の概略構成を示す断面図である。この半導体発光装置10は、回路基板12と、回路基板12上にバンプ14を介してフリップチップ実装された面発光型半導体素子16と、回路基板12と面発光型半導体素子16との間に充填されたアンダーフィル樹脂18とを備える。アンダーフィル樹脂18は、面発光型半導体素子16から発せられる光を長波長の光に波長変換する第1の波長変換材料を含有する。
【0023】
回路基板12は、例えば、アルミナや窒化アルミ、ムライト、ガラスなどの焼結体からなるセラミック基板が用いられる。この回路基板12の表面には、W、Mo、Cu、Ag、Au等からなる配線層20が形成される。配線層20は、W、Mo、Cu、Ag、Au等を含んだ金属ペーストをスクリーン印刷法等により回路基板12上に配線状に塗布し、その後、加熱焼成して形成される。あるいは、電鋳法や金属蒸着法等の金属成膜手法と、アディティブ法やサブトラクト法によるパターン加工手法を用いて形成される。
【0024】
面発光型半導体素子16は、ZnSeやGaN、InGaN、InAlGaN、AlGaNなどの種々の半導体を用いた青色光の波長以下の短波長の光である紫外から青領域の光を発する面発光型のLEDを用いる。面発光型半導体素子16は、バンプ14を介して回路基板上の配線層20に搭載固定されて電気的に接続される。バンプ14は、Au、AuSn等で形成される。
【0025】
アンダーフィル樹脂18に含有させる第1の波長変換材料は、周知の蛍光体を用いることができる。また、第1の波長変換材料は、波長変換作用のある顔料、染料、半導体材料を用いることができる。
【0026】
例えば、蛍光体としては、430nmから490nm付近の波長の光、すなわち青色の発光が得られるものとして、Sr5(PO4)3Cl:Eu、Re10(PO4)6Q2:Eu(ReはSr、Ca、Ba、Mg、Zn。QはF、Cl、Br、I)、BaMg2Al16O27:Eu、BaMgAl10O17:Eu、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al、ZnS:Ag,Cu,Ga,Cl、ZnS:Ag+In2O3、BaMg2Al16O25:Eu等が挙げられる。
【0027】
また、500nmから560nm付近の波長の光、すなわち緑色の発光が得られるものとして、(SrEu)O・Al2O3、ZnS:Cu、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al、Y3Al5O12:Tb、Y3(Al,Ga)5O12:Tb、Y2SiO5:Tb、Y2O2S:Tb、Cd2O2S:Tb、Zn2SiO4:Mn、ZnS:Cu、(Zn,Cd)S:Cu、3(Ba,Mg,Eu,Mn)O・8Al2O3、CeMgAl11O19:Tb、LaPO4:Ce,Tb,BaAl12O19:Mn、BaMgAl10O17Eu,Mn等が挙げられる。
【0028】
また、590nmから700nm付近の波長の光、すなわち赤色の発光が得られるものとして、Y2O2S:Eu、Y2O3:Eu、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn、Mg6As2O11:Mn、Gd2O2:Eu、LaO2S:Eu、 LaO2S:Eu,Sm、YVO4:Eu、YNbO4:Eu、YTaO4:Eu、Zn3(PO4)2:Mn、(Zn,Cd)S:Ag+In2O3、(Y,Gd,Eu)BO3、(Y,Gd,Eu)2O3等が挙げられる。
【0029】
また、黄色の発光が得られるものとして、YAlO3:Ce、Y3Al5O12:Ce、Y4Al12O9:Ce等が挙げられる。
【0030】
第1の波長変換材料は、上記のような波長変換材料の中から、面発光型半導体素子16から発せられた光の波長を、回路基板12、バンプ14、面発光型半導体素子16、配線層20に対して高い反射率が得られる長波長の光に変換できる波長変換材料を用いる。例えば、図6に示した反射スペクトルから明らかなように、回路基板12は、アルミナからなる場合、波長420nm程度より短い波長の光に対する反射率が極端に低くなる。また、バンプ14は、AuやAuSn等からなる場合、波長550nm程度より短い波長の光に対して著しく反射率が低くなる。また、配線層20は、CuやAu、Ag等からなる場合、紫外から可視領域に吸収端があり、吸収端よりも短波長で反射率が極端に低くなる。
【0031】
以上のことを考慮し、面発光型半導体素子16が紫外から青領域の光を発する面発光型のLEDからなる場合は、アンダーフィル樹脂18に含有させる第1の波長変換材料として、例えば、上記の赤色の発光が得られる蛍光体の中から任意の蛍光体を選択する。
【0032】
アンダーフィル樹脂18は、上記の選択された蛍光体等の第1の波長変換材料を、加熱や紫外線照射によって硬化する液状の透明樹脂に混合し、これをディスペンサーなどで所望の位置に塗布し、加熱または紫外線により硬化させて形成される。これらの透明樹脂としては、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂などが用いられる。
【0033】
ここで、アンダーフィル樹脂18に含有させる上記の第1の波長変換材料は、その粒子径を従来から用いられている1μm程度以上とすることができるが、好ましくはnmサイズ、より好ましくは平均粒子径が10nm以下とする。このように、第1の波長変換材料を平均粒子径10nm以下のナノ粒子とすれば、そのサイズを変えることで、赤(長波長)から青(短波長)まで様々な色(波長)で発光させることが可能となる。また、励起光がバンドギャップより高エネルギーであれば、励起波長に制限がなく、発光寿命が希土類の10万倍程度と短く、吸収と発光のサイクルを素早く繰り返すことができる。しかも、飽和レベルが高いために、非常に高い輝度を実現することができる。また、粒子サイズを小さくすることで、アンダーフィル樹脂18を形成する際の液状樹脂中での分散性が良く、沈降による濃度ばらつきを小さくできるので、第1の波長変換材料が均一に含有されたアンダーフィル樹脂18を得ることができる。
【0034】
このように、本実施の形態に係る半導体発光装置10は、回路基板12上にバンプ14を介して紫外から青領域の光を発する面発光型のLEDからなる面発光型半導体素子16がフリップチップ実装されている。そして、この面発光型半導体素子16と回路基板12との間に、面発光型半導体素子16から発せられる光を、回路基板12、バンプ14、面発光型半導体素子16、配線層20に対して高い反射率が得られる長波長の光に波長変換する第1の波長変換材料を含有するアンダーフィル樹脂18が充填されている。したがって、面発光型半導体素子16の回路基板12側のチップ表面から発した光は、第1の波長変換材料により吸収されて長波長の光に変換され、回路基板12と面発光型半導体素子16との間で殆ど減衰されることなく高反射率で多重反射されて外部に放出されることになる。これにより、面発光型半導体素子から発せられた光の利用効率を向上した半導体発光装置が得られる。
【0035】
(第2実施の形態)
図2は、本発明の第2実施の形態に係る半導体発光装置の要部の概略構成を示す断面図である。この半導体発光装置30は、図1に示した半導体発光装置10において、面発光型半導体素子16およびアンダーフィル樹脂18の露出部分を、面発光型半導体素子16から発せられる光を吸収して長波長の光に波長変換する第2の波長変換材料を含有する第1の被覆樹脂32で被覆したものである。
【0036】
第2の波長変換材料は、例えば第1実施の形態で説明した周知の蛍光体、波長変換作用のある顔料、染料、半導体材料から、アンダーフィル樹脂18が含有する第1の波長変換材料と異なる材料を選択する。また、第1の被覆樹脂32は、アンダーフィル樹脂18と同様に、第2の波長変換材料を、加熱や紫外線照射によって硬化する液状の透明樹脂に混合し、これをディスペンサーなどで面発光型半導体素子16およびアンダーフィル樹脂18の露出部分全体に塗布し、加熱または紫外線により硬化させて形成される。透明樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂などが用いられる。
【0037】
本実施の形態に係る半導体発光装置30によれば、第1の波長変換材料で波長変換された光と、第2の波長変換材料で波長変換された光との混色によって、所望の色の光を得ることが可能となる。例えば、面発光型半導体素子16から青領域の光、第1の波長変換材料によって赤領域の光、第2の波長変換材料によって緑領域の光を放出させるようにすれば、それらの光の混色によって白色光を得ることが可能となる。また、第1の波長変換材料および第2の波長変換材料の量や濃度を調整することにより、それぞれ波長変換する光の強度を調整して、所望の色を得ることが可能となる。
【0038】
また、このように第2の波長変換材料により波長変換される光の波長を、第1の波長変換材料により波長変換される光よりも短波長の光とすれば、第1の波長変換材料と第2の波長変換材料との間での光の吸収、再放出などの複雑な相互作用を抑えることができる。これにより、面発光型半導体素子16から発する光、第1の波長変換材料で波長変換される光、第2の波長変換材料で波長変換される光のそれぞれの強度調整が容易となる。
【0039】
(第3実施の形態)
図3は、本発明の第3実施の形態に係る半導体発光装置の要部の概略構成を示す断面図である。この半導体発光装置40は、図1に示した半導体発光装置10と同様に、回路基板12上にバンプ14を介してフリップチップ実装された面発光型半導体素子16を備える。また、回路基板12上には、面発光型半導体素子16を取り囲むように配置された反射体42を備える。
【0040】
反射体42は、アルミナや窒化アルミ、ムライト、ガラスなどの焼結体からなるセラミックや、その他、樹脂、金属を用いて、所望の配光が得られる形状に形成されている。また、必要に応じて、反射体42の反射面には、Ag、Auなどの反射率の高い金属材料や、高反射率の誘電体積層膜が形成される。反射体42は、回路基板12上に樹脂接着材や半田で所望の位置に固定される。
【0041】
反射体42で囲まれた凹部には、回路基板12と面発光型半導体素子16との間を充填するように、第1実施の形態で説明した第1の波長変換材料を含有したアンダーフィル樹脂18が設けられている。また、面発光型半導体素子16のチップ裏面の中央部を除く周辺部からアンダーフィル樹脂18の一部にオーバーラップして、第2実施の形態で説明した第2の波長変換材料を含有した第1の被覆樹脂32が設けられている。さらに、面発光型半導体素子16のチップ裏面の中央部を覆うように、面発光型半導体素子16から発せられる光を吸収して長波長の光に波長変換する第3の波長変換材料を含有した第2の被覆樹脂44が設けられている。
【0042】
第3の波長変換材料は、例えば第1実施の形態で説明した周知の蛍光体、波長変換作用のある顔料、染料、半導体材料から、第1の被覆樹脂32が含有する第2の波長変換材料と異なる材料を選択する。また、第2の被覆樹脂44は、第1の被覆樹脂32と同様に形成される。
【0043】
本実施の形態に係る半導体発光装置40によれば、面発光型半導体素子16の周囲に反射体42を設けたので、面発光型半導体素子16から放射されて第1の波長変換材料、第2の波長変換材料、第3の波長変換材料でそれぞれ波長変換された光、および、面発光型半導体素子16から放射されて波長変換されることなく、アンダーフィル樹脂18、第1の被覆樹脂32、第2の被覆樹脂44を透過した光を、所望の方向に放出することができる。また、反射体42の形状を調整することにより、所望の配光とすることができる。
【0044】
また、面発光型半導体素子16のチップ裏面の周辺部を第2の波長変換材料を含む第1の被覆樹脂32で被覆し、チップ裏面の残りの中央部を第3の波長変換材料を含む第2の被覆樹脂44で被覆するので、第1の被覆樹脂32と第2の被覆樹脂44とのオーバーラップを小さくすることができる。これにより、第1の被覆樹脂32からの光放出領域と第2の被覆樹脂44からの光放出領域とを概ね分離することができる。したがって、それぞれの波長変換材料間での光の吸収や再放出などの複雑な相互作用を抑制することができ、それぞれの光の強度調整が容易となる。つまり、所望の色や、スペクトル分布の調整が容易となる。
【0045】
また、第3の波長変換材料により波長変換する光の波長を、第2の波長変換材料により波長変換する光よりも短波長の光とすることで、第1の波長変換材料および第2の波長変換材料で波長変換されて反射体42で反射される光の波長を長くでき、反射体42での反射率を高くできる。これにより、所望の方向に効率よく光を放出することができる。例えば、面発光型半導体素子16から青領域の光を発生させる場合は、アンダーフィル樹脂18に含有させる第1の波長変換材料によって赤領域の光を放出させ、第1の被覆樹脂32に含有される第2の波長変換材料によって緑領域の光を放出させる場合、第2の被覆樹脂44に含有される第3の波長変換材料は、青領域の光を放出させるように構成する。
【0046】
なお、第1の波長変換材料、第2の波長変換材料および第3の波長変換材料は、それぞれの波長変換材料から発せられた光の混色により所望の色の光となるように、それぞれの波長変換材料の混合量、波長変換材料を含む樹脂の塗布量を調整する。また、それぞれの波長変換材料の混合量は、面発光型半導体素子16の発光強度、照射エリア、波長変換材料を含む樹脂の膜厚を考慮して決定する。例えば、各波長変換材料は、当該波長変換材料を含有させる樹脂の総量に対して、10質量%〜50質量%添加することが好ましい。また、各波長変換材料を含有する樹脂の厚みは、0.01mmから3mm程度とするのが望ましい。これにより、各樹脂層における波長変換効率を高くでき、かつ、各樹脂層からの光を充分に透過させることができる。
【0047】
本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、図1において、アンダーフィル樹脂18は、面発光型半導体素子16の周囲全体を被覆するように設けてもよい。また、図2において、第2の波長変換材料を含有する第1の被覆樹脂32は、面発光型半導体素子16のチップ裏面の一部を被覆するように設けてもよい。また、面発光型半導体素子16は、LEDに限らず、例えば複数の半導体レーザを内蔵して両面から発光するように構成された面発光型半導体素子を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0048】
10,30,40 半導体発光装置
12 回路基板
14 バンプ
16 面発光型半導体素子
18 第1の波長変換材料を含有するアンダーフィル樹脂
20 配線層
32 第2の波長変換材料を含有する第1の被覆樹脂
42 反射体
44 第3の波長変換材料を含有する第2の被覆樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面発光型半導体素子と、
該面発光型半導体素子を実装する基板と、
前記面発光型半導体素子と前記基板との間に充填され、前記面発光型半導体素子から発せられる光を長波長の光に波長変換する第1の波長変換材料を含有するアンダーフィル樹脂と、
を備える半導体発光装置。
【請求項2】
前記面発光型半導体素子の前記基板への取り付け面とは反対面の少なくとも一部を被覆し、前記面発光型半導体素子から発せられる光を長波長の光に波長変換する第2の波長変換材料を含有する第1の被覆樹脂を、さらに備える請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記第2の波長変換材料は、前記面発光型半導体素子から発せられる光を、前記第1の波長変換材料が波長変換する光よりも短波長の光に波長変換する請求項2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記第1の被覆樹脂は、前記面発光型半導体素子の周辺部を被覆し、
さらに、前記面発光型半導体素子の周囲に配置された反射体と、
前記面発光型半導体素子の前記基板への取り付け面とは反対面の中央部と前記第1の被覆樹脂の一部を被覆し、前記面発光型半導体素子から発せられる光を長波長の光に波長変換する第3の波長変換材料を含有する第2の被覆樹脂と、
を備える請求項2または3に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記第3の波長変換材料は、前記面発光型半導体素子から発せられる光を、前記第2の波長変換材料が波長変換する光よりも短波長の光に波長変換する請求項4に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記面発光型半導体素子は、青色光の波長以下の短波長の光を発する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の半導体発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−249476(P2011−249476A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119610(P2010−119610)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】