説明

半導体素子の検査方法

【課題】検査効率を向上させることができる半導体素子の検査方法を提供する。
【解決手段】本発明は、半導体ウエハ上に配列された半導体素子を検査する検査方法であって、半導体素子が配列された面における、少なくとも2つの直線方向に存在する半導体素子についてのみ検査を行う欠陥位置検査工程と、欠陥位置特定工程において、欠陥であると特定された半導体素子の位置に基づいて半導体ウエハ上における欠陥がある半導体素子が存在する欠陥領域を特定する欠陥領域特定工程と、特定された欠陥領域についてのみ検査を実行する本検査工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子製造工程において、半導体ウエハ上に配列された半導体素子を検査する検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の固体撮像素子などの半導体素子は、略円盤状の半導体ウエハの一方の面に、露光工程、現像工程、エッチング工程などの処理を行うことで形成される。このとき、半導体素子は半導体ウエハ上に格子状などの所定の配置で形成される。
【0003】
半導体素子の製造工程において、各半導体素子に複数の処理を施した際に欠陥や不具合が発生することがあるため、半導体素子の性能を確保する上で必要となる複数の種類の検査を全ての半導体素子に行う必要がある。このような半導体素子の欠陥検査としては、例えば、下記特許文献1から3がある。
【0004】
【特許文献1】特開平9−145627号公報
【特許文献2】特開平11−219997号公報
【特許文献3】特開2003−7779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、半導体ウエハ上の半導体素子を検査する際に、全ての半導体素子について同一の検査を行う必要があり、半導体素子単一又は複数個同時に測定する構成の場合であっても、検査効率を一定以上向上させることができず、改善の余地があった。また、半導体素子に生じる欠陥として、例えば、カラーフィルタの塗布ムラなどは、半導体ウエハにスピンコート塗布することに起因して、該半導体ウエハの周縁側の所定の領域に存在する半導体素子に影響が出るが、それ以外の領域に存在する半導体素子には影響が見られない。このように、半導体素子の製造工程において、半導体ウエハの一部の領域に存在する半導体素子にのみ欠陥が多くみつかるといった傾向があるため、全ての半導体素子について検査を行うことは検査効率を向上させる上で好ましくないため、所定の領域を検査の対象とする最適化に対する要望があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、検査効率を向上させることができる半導体素子の検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、半導体ウエハ上に配列された半導体素子を検査する検査方法であって、前記半導体素子が配列された面における、少なくとも2つの直線方向に存在する半導体素子についてのみ検査を行う欠陥位置検査工程と、前記欠陥位置検査工程において、欠陥であると特定された半導体素子の位置に基づいて前記半導体ウエハ上における欠陥がある半導体素子が存在する欠陥領域を特定する欠陥領域特定工程と、特定された前記欠陥領域についてのみ検査を実行する本検査工程と、を有することを特徴とする半導体素子の検査方法によって達成される。
【0008】
本発明は、半導体ウエハ上に配列された半導体素子のうち2つの直線方向に存在する半導体素子についてのみ検査を行うことで、欠陥のある半導体素子の位置から欠陥領域を特定した後で、特定された欠陥領域についてのみ検査を実行するものである。こうすれば、半導体素子の製造工程において、半導体ウエハの一部の領域に存在する半導体素子にのみ欠陥が多くみつかるといった傾向があっても、全ての半導体素子について検査を行う必要がなく、欠陥領域に存在する半導体素子のみを検査対象とすることで検査時間を短縮することができ、検査効率を向上できる。
【0009】
また、本発明は、特定された前記欠陥領域又は該欠陥領域以外の領域について所定の検査を省略することが好ましい。こうすれば、検査にかかる時間をより一層短縮することができ、検査効率が向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、検査効率を向上させることができる半導体素子の検査方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる半導体素子の検査方法を説明する図である。以下、本実施形態の半導体素子としては、固体撮像素子を例に説明するが特にこれに限定されない。図示しないが、固体撮像素子は、例えば、半導体基板上に形成されたフォトダイオード等の光電変換部と、光電変換部で発生した電荷を転送する電荷転送部とを備え、光電変換部のそれぞれの上方にRGBのいずれかのカラーフィルタが形成されている。
【0012】
図1に示すように、シリコン基板などからなる略円盤状の半導体ウエハWの一方の面(図1では上方の面)に、固体撮像素子の構成を有するチップTが露光工程、現像工程、エッチング工程などの処理を行うことで形成される。
【0013】
チップTは、半導体ウエハを平面視した状態で、隣接するチップとダイシングラインLを境界として、格子状に配列されている。なお、チップの配列のパターンは特に限定されず、半導体ウエハを平面視した状態で所定のパターンで配列されていればよい。
【0014】
半導体素子の検査を行う検査機構は、配列された半導体素子の画像データを検出するテスター11と、テスター11によって検出された画像データを入力し、入力された画像データを解析することで欠陥のあるものを抽出する処理を実行する処理部12とを備えている。また、検査機構には、テスター11から入力された画像データを記憶するためのメモリなどの記憶部を備えていてもよい。処理部12としては、例えば、パーソナルコンピュータなどの演算処理装置を用いることができる。または、テスター11として、半導体素子から画像データを検出する機能と、処理部12の機能とを兼ね備えた検出装置を用いてもよい。
【0015】
テスター11は、半導体ウエハW上に配列された半導体素子のそれぞれから画像データを取得するための検出部を備えている。なお、テスター11は、半導体素子のうち1つずつ画像データを検出部で取得する構成でもよく、または、複数個の半導体素子の画像データを同時に取得する構成であってもよい。
【0016】
テスター11の検出部は、半導体ウエハWの上面に平行な2次元方向に対して駆動制御可能な構成である。
【0017】
次に、本実施形態の検査方法の手順を説明する。本実施形態では、カラーフィルタなどの塗布ムラに起因する画像の輝度欠陥を検査する手順を例に説明する。なお、輝度欠陥の検査においては、チップの撮像領域に向かって固定された光源から一定に照射光を供給し、このときチップから取得された画像データに基づいて輝度を算出する。
【0018】
図2は、検査方法の手順を示す図である。図3,5及び6は、半導体ウエハを平面視した状態を示す図である。図4は、半導体素子の輝度分布を示すグラフである。
【0019】
先ず、半導体ウエハW上に配列されたチップ(半導体素子)Tが配列された面において、所定の直線上に存在する半導体素子についてのみ検査を行う(ステップS11)。この工程を欠陥位置検査工程とする。
【0020】
本実施形態では、図3に示すように、半導体ウエハWにおいて、4つの直線D1,D2,D3,D4に沿って、その直線上に存在するチップTについてそれぞれ、画像データをテスター11によって取得し、輝度検査を行う。具体的には、最初に、直線D1上に存在するチップTについて、直線D1の方向に順にチップTの輝度検査を行う。直線D1上に存在する全てのチップTの輝度検査が終了した後、直線D2の矢印方向に沿って順に直線D2上に存在するチップTの輝度検査を行う。同様に、直線D3,D4に沿ってチップTの輝度検査を行う。
【0021】
本実施形態では、欠陥位置検査工程で、4つの直線上に存在するチップTの検査を行ったが、少なくとも2つの直線上に存在するチップTを検査すれば、後述するようにこれら直線によって定義される領域を規定することができる。
本実施形態では、直線D1と直線D3とが直交する位置関係にあり、直線D2と直線D4とが直交する位置関係にある。一般に、円盤状の半導体ウエハにおいては、製造工程で施される処理の手法を理由にその周縁側と中心部側とで、性能が変化しやすい。このため、本実施形態のように、複数の直線を半導体ウエハの平面視において略中心近傍で交差させるとともに、検査する直線方向をそれぞれ放射状に規定することで、半導体ウエハに配列されたチップTの性能をより正確に検査することができる。
【0022】
このとき、テスター11によって取得された各チップTの輝度データが処理部12に入力され、処理部12において、輝度データに基づき、チップTごとに輝度分布を検出する。
【0023】
図4に示すように、輝度が一様なチップでは、輝度分布が所定の範囲の幅Cになるが、一部に欠陥が生じているようなチップでは、輝度分布が所定の幅Cを超える範囲に輝度の分布があらわれる。言い換えると、欠陥が発生している領域の境目に位置する半導体素子では、輝度分布の幅Cが異常な範囲をとる。そこで、輝度分布を解析し、輝度の分布の幅Cが予め規定された閾値の範囲内であれば欠陥なしとし、一方で、輝度の分布の幅Cが予め規定された閾値の範囲を超える場合には欠陥ありとし、そのチップTを欠陥と判定する。
【0024】
欠陥と判定されたチップTの位置は、例えば、半導体ウエハにおけるチップTの配列された面を2次元空間とした座標で表された位置情報として処理部12の記憶部に記憶される。本実施形態では、直線D1上の位置P11とP12のチップで輝度欠陥が検出され、直線D2上の位置P21とP22のチップで輝度欠陥が検出され、直線D3上の位置P31とP32のチップで輝度欠陥が検出され、直線D4上の位置P41とP42のチップで輝度欠陥が検出されたものとする。
【0025】
次に、上述のように欠陥であると特定されたチップの位置P11,12,P21,22,P31,32,P41,42に基づいて、半導体ウエハW上の、欠陥があるチップが存在する欠陥領域を特定する欠陥領域特定工程を行う(ステップS12)。
【0026】
本実施形態では、輝度欠陥の要因のひとつであるカラーフィルタの塗布ムラを想定している。一般に、カラーフィルタは、カラーフィルタ材料層をスピンコート塗布によって形成するため、半導体ウエハ回転時の遠心力に起因して該半導体ウエハの周縁側が厚くなり、ムラとなることが認識されている。このため、図6に示すように、欠陥のあったチップの位置P11,12,P21,22,P31,32,P41,42を含む略円周線を境界線として、この境界線より外周側の領域Aに存在するチップが欠陥のある可能性の高い欠陥領域と定めることができる。一方、欠陥のあったチップの位置P11,12,P21,22,P31,32,P41,42を含む境界線より内周側の領域Bに存在するチップについては、欠陥がないものとして本検査を省略する対象とすることができる。
【0027】
欠陥領域を特定した後、特定された欠陥領域Aについてのみ、所定の検査を実行する本検査工程(ステップS13)を行う。
【0028】
通常、半導体素子の製造工程においては、全てのチップTに対して数10種類以上の検査項目について、検査を行うが、本実施形態にように所定の性能ごとに欠陥領域Aを特定することで、特定された欠陥領域A又は該欠陥領域A以外の領域Bに存在するチップTついて所定の検査を省略することが好ましい。こうすれば、検査にかかる時間をより一層短縮することができ、検査効率が向上する。
【0029】
本実施形態の製造方法は、半導体ウエハW上に配列された半導体素子(チップT)のうち2つの直線方向に存在する半導体素子についてのみ検査を行うことで、欠陥のある半導体素子の位置から欠陥領域を特定した後で、特定された欠陥領域についてのみ検査を実行するものである。こうすれば、半導体素子の製造工程において、半導体ウエハの一部の領域に存在する半導体素子にのみ欠陥が多くみつかるといった傾向があっても、全ての半導体素子について検査を行う必要がなく、欠陥領域に存在する半導体素子のみを検査対象とすることで検査時間を短縮することができ、検査効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明にかかる半導体素子の検査方法を説明する図である。
【図2】検査方法の手順を示す図である。
【図3】半導体ウエハを平面視した状態を示す図である。
【図4】半導体素子の輝度分布を示すグラフである。
【図5】半導体ウエハを平面視した状態を示す図である。
【図6】半導体ウエハを平面視した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
T チップ(半導体素子)
W 半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハ上に配列された半導体素子を検査する検査方法であって、
前記半導体素子が配列された面における、少なくとも2つの直線方向に存在する半導体素子についてのみ検査を行う欠陥位置検査工程と、
前記欠陥位置検査工程において、欠陥であると特定された半導体素子の位置に基づいて前記半導体ウエハ上における欠陥がある半導体素子が存在する欠陥領域を特定する欠陥領域特定工程と、
特定された前記欠陥領域についてのみ検査を実行する本検査工程と、を有することを特徴とする半導体素子の検査方法。
【請求項2】
特定された前記欠陥領域又は該欠陥領域以外の領域について所定の検査を省略することを特徴とする請求項1に記載の半導体素子の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−324163(P2007−324163A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149353(P2006−149353)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】