説明

半導体組成物

本発明は、以下の物質から製造された、またはそれらを含有する、高分子複合材料である。(i)エチレンと4〜20個の炭素原子を有する不飽和エステルとの極性コポリマーから本質的になる第I相材料;(ii)非極性低密度ポリエチレンから本質的になる第II相材料;および(iii)第I相材料および第II相材料において連続導電ネットワークを生じるのに必要とされる量またはそれより多い量であるのに充分な量で、第I相材料および/または第II相材料に分散された導電性充填材料。本発明は、該高分子複合材料から製造された物品も含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル、特に中圧および高圧電力ケーブルに使用するための半導体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な電力ケーブルは、一般に第一半導体シールド層(導体またはストランドシールド)、絶縁層、第二半導体シールド層(絶縁シールド)、金属テープまたはワイヤシールド、および保護ジャケットを含むいくつかの高分子材料層によって囲まれたケーブル芯線中に、1つまたはそれ以上の導体を一般に含む。外側半導体シールドは、絶縁層に結合させることができるか、または可剥性にすることができる。この構造内の付加層、例えば湿分不透過性材料が組み込まれることが多い。
【0003】
高分子半導体シールドは、何十年にもわたり、多層電力ケーブル構造に使用されている。一般に、それらは、1キロボルト(kV)より高い電圧に定格された固体誘電体電力ケーブル(solid dielectric power cables)を製造するのに使用される。これらのシールドは、高電位導体(high potential conductor)と一次絶縁体、および一次絶縁体と地電位または中性電位(neutral potential)との、中間導電性の層を与えるために使用される。これらの半導体材料の体積抵抗(volume resistivity)は、ICEA S−66−524、セクション6.12、IEC 60502−2(1997)、Annex Cに記載されている方法を用いて完成(completed)電力ケーブル構造物において測定した場合に、典型的に10-1〜108Ω−cmである。
【0004】
典型的なシールド組成物は、ポリオレフィン、例えば、エチレン/ビニルアセテートコポリマー、導電性カーボンブラック、有機過酸化物架橋剤、および他の従来の添加剤、加工助剤および酸化防止剤を含有する。これらの組成物は、一般に、粒状またはペレット形態で調製される。
【0005】
シールド組成物は、典型的に、押出機に導入され、該押出機において、該組成物は、有機過酸化物の分解温度より低い温度で、導電体の周りに共押出されて、ケーブルを形成する。次に、ケーブルを有機過酸化物が分解する高温に暴露して遊離基を得、これがポリマーを架橋させる。
【0006】
半導体シールドを得るために、導電性粒子(導電性充填剤)を組成物に組み込む必要がある。当産業において、充分なレベルの導電性を維持し、減少した粘度によって加工性を向上させる一方で、導電性充填剤添加量を減少させ、それによって製造コストを低減する努力が常になされている。
【発明の開示】
【0007】
従って、本発明の目的は、高レベルの導電性を維持し、加工性を向上させる一方で、減少した導電性充填剤添加量を有する多相半導体シールド組成物(multiphase semiconductive shield composition)を提供することである。他の目的および利点は、以下から明らかである。
【0008】
本発明により、そのような組成物が発見された。半導体シールド組成物は、以下の物質を含む高分子複合材料である。
(i)エチレンと4〜20個の炭素原子を有する不飽和エステルとの極性コポリマーから本質的になる第I相材料;
(ii)非極性低密度ポリエチレンから本質的になる第II相材料;
(iii)第I相および第II相材料において連続導電ネットワークを生じるのに必要とされる量またはそれより多い量であるのに充分な量で、第I相材料および/または第II相材料に分散された導電性充填材料。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第I相材料は、エチレンと不飽和エステルとの極性コポリマーから本質的になる。極性コポリマーは、一般に、高圧法によって製造される。従来の高圧法が、Introduction to Polymer Chemistry, Stille, Wiley and Sons, New York, 1962, pages 149 to 151に記載されている。高圧法は、典型的に、管形反応器または攪拌オートクレーブにおいて行われるフリーラジカル開始重合である。攪拌オートクレーブにおいて、圧力は10,000〜30,000ポンド/平方インチ(psi)であり、温度は175〜250℃であり、管形反応器において、圧力は25,000〜45,000psiであり、温度は200〜350℃である。
【0010】
不飽和エステルは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、およびビニルカルボキシレートであってよい。アルキル基は、1〜8個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有し得る。カルボキシレート基は、2〜8個の炭素原子、好ましくは2〜5個の炭素原子を有し得る
【0011】
半導体シールドにおいて、エステルコモノマーに起因するコポリマーの部分は、コポリマーの重量に基づいて約10〜約55重量%であってよく、好ましくは約15〜約30重量%である。モル%によれば、エステルコモノマーは、5〜30mol%の量で存在し得る。エステルは、4〜20個の炭素原子、好ましくは4〜7個の炭素原子を有し得る。
【0012】
ビニルエステル(またはカルボキシレート)の例は、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルピバレート、ビニルネオノナノエート、ビニルネオデカノエート、およびビニル2−エチルヘキサノエートである。ビニルアセテートが好ましい。アクリル酸またはメタクリル酸エステルの例は、以下の物質である。ラウリルメタクリレート;ミリスチルメタクリレート;パルミチルメタクリレート;ステアリルメタクリレート;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン;シクロヘキシルメタクリレート;n−ヘキシルメタクリレート;イソデシルメタクリレート;2−メトキシエチルメタクリレート;テトラヒドロフルフリルメタクリレート;オクチルメタクリレート;2−フェノキシエチルメタクリレート;イソボルニルメタクリレート;イソオクチルメタクリレート;オクチルメタクリレート;イソオクチルメタクリレート;オレイルメタクリレート;エチルアクリレート;メチルアクリレート;t−ブチルアクリレート;n−ブチルアクリレート;および2−エチルヘキシルアクリレート。メチルアクリレート、エチルアクリレート、およびn−またはt−ブチルアクリレートが好ましい。アルキル基は、例えばオキシアルキルトリアルコキシシランによって置換し得る。
【0013】
コポリマーは、0.900〜0.990g/cm3の密度を有することができ、好ましくは0.920〜0.970g/cm3の密度を有する。コポリマーは、0.1〜100g/10分のメルトインデックスも有することができ、好ましくは1〜50g/10分、より好ましくは5〜21g/10分のメルトインデックスを有する。
【0014】
第I相材料は、複合材料の重量に基づいて10〜80重量%の量で、複合材料に存在することができ、好ましくは20〜60重量%の量で存在する。
【0015】
第II相材料は、エチレンのホモポリマーとして一般に高圧法によって調製される非極性低密度ポリエチレン(LDPE)から本質的になる。前記のように、従来の高圧法は、Introduction to Polymer Chemistry, Stille, Wiley and Sons, New York, 1962, pages 149 to 151に記載されている。高圧法は、典型的に、管形反応器または攪拌オートクレーブにおいて行われるフリーラジカル開始重合である。攪拌オートクレーブにおいて、圧力は10,000〜30,000psiであり、温度は175〜250℃であり、管形反応器において、圧力は25,000〜45,000psiであり、温度は200〜350℃である。
【0016】
これらのLDPEポリマーは、ASTM D−792によって測定して、約0.910g/cm3〜約0.940g/cm3の密度を有する。
【0017】
非極性低密度ポリエチレンは、好ましくは、1.1〜10の多分散性(Mw/Mn)を有する。Mwは、重量平均分子量として定義され、Mnは数平均分子量として定義される。Mwは、好ましくは、10,000〜1,000,000である。それらは、0.25〜30g/10分、好ましくは1〜20g/10分、より好ましくは5〜10g/10分のメルトインデックスも有し得る。
【0018】
第II相材料は、複合材料の重量に基づいて10〜80重量%の量で存在することができ、好ましくは20〜60重量%の量で存在する。
【0019】
第I相材料および第II相材料は、それぞれ極性材料および非極性材料であるが、組み合わせた場合に相溶性(compatible)になることが見出されている。しかし、2つの材料は混和性(miscible)にならない。むしろ、それらは容易に完全均質状態にならない。
【0020】
どのような特定の理論にも縛られるものではないが、第I相および第II相材料をメルト状態で混合した際に、ポリマーが分離し、別個の相を形成すると考えられる。相分離は、2つのポリマーメルト間の不完全混和性によるか、または、それは各成分からの異なる結晶化によって生じるか、または、同時に両方の要素によって生じると考えられる。
【0021】
カーボンブラックをポリマーブレンドに配合して、導電性ポリマーブレンド複合材料を形成した際に、カーボンブラック凝集体がトンネリングネットワーク(tunneling network)を形成する。配合物における高レベルのカーボンブラック凝集体ネットワークを促進するために、ホスティング(hosting)ポリマーにとって、カーボンブラックが、相形態において連続的であることが好ましい。
【0022】
本発明の複合材料は、(a)相分散のための高分子流体力学原理、および(b)ブレンドした系における相連続性を利用して、一段階混合におけるカーボンブラック分布のためのホスティング条件を最適化する。ポリマーメルトの層状2相において、より大きい容積の相、またはより低い粘度の相が、得られたポリマーブレンド中でより連続性になる傾向がある。
【0023】
任意に、他の高分子材料の付加相を、それらが第I相材料または第II相材料のどちらかの特性に対応する特性を有すれば、複合材料に導入することができる。
【0024】
ポリマーブレンドの相形態は、ポリマーメルトの層状2相流れにおける相の分布を考察することによって、定性的に調べることができる。不相溶性ポリマーメルトにおける分散のレベルは、ポリマー対(つい)および変形の種類に依存して変化し得る。一般に、同様の粘度および化学的性質を有するポリマー対は、容易にブレンドすることが公知である。前者は、2相間の粘度比がほぼ1(unity)である場合に、不混和性液滴をマトリックス相に変形し分解する効率が最も高くなるという、流体力学的安定性の見地に基づく。
【0025】
剪断および伸長流れ場の両方に関して、液滴を分解するのに必要な力の測度である臨界ウェーバー数は、約1の粘度比において最少である。混合条件は、剪断場(shearing field)(通常の一軸スクリュー押出機)より伸長流れ場(extensional flow field)(例えば、Buss(商標)コニーダーにおける伸長流れ場)において、かなり低い。2つの成分の粘度比が、1程度であり、4未満である場合に、剪断場における伸長液滴が、より小さい液滴に分解することも公知である。しかし、容積比も、2つのポリマーの分布的および分散的混合に関するもう1つの重要な要素である。
【0026】
ポリマーは、樹脂を加水分解性にすることによって湿分硬化性にすることができ、これは、加水分解基、例えば−Si(OR)3(式中、Rはヒドロカルビル基(hydrocarbyl radical)である)を共重合またはグラフトによって樹脂構造に付加することによって行うことができる。好適なグラフト剤は、有機過酸化物、例えば、ジクミルペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン;t−ブチルクミルペルオキシド;および2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン−3である。ジクミルペルオキシドが好ましい。加水分解基は、例えば、以下のようにして付加することができる。エチレンと、1つまたはそれ以上の−Si(OR)3基を有するエチレン的不飽和化合物、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランとを共重合させるか、またはこれらのシラン化合物を前記の有機過酸化物の存在下に樹脂にグラフトする。次に、加水分解性樹脂を、シラノール縮合触媒、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、酢酸第一錫、ナフテン酸鉛およびカプリル酸亜鉛の存在下に、湿分によって架橋させる。ジブチル錫ジラウレートが好ましい。
【0027】
導電性充填材料(導電性粒子)は、半導体シールドに一般に使用される従来の導電性カーボンブラックであってよい。これらの導電性粒子は、一般に、粒状カーボンブラックとして供給されている。有用なカーボンブラックは、50〜1000m2/gの表面積を有し得る。表面積は、ASTM D 4820−93a(多点B.E.T.窒素吸着)によって測定される。カーボンブラックは、半導体シールド組成物中に、組成物の重量に基づいて10〜50重量%の量で使用することができ、好ましくは15〜45重量%、より好ましくは25〜35重量%の量で使用される。これは、導電性充填剤添加量と呼ぶことができ、最も好ましくは27〜33重量%である。
【0028】
標準導電性および高導電性カーボンブラックの両方を使用することができ、標準導電性カーボンブラックが好ましい。導電性カーボンブラックの例は、ASTM N550、N472、N351、N110、Ketjenブラック、ファーネスブラックおよびアセチレンブラックと記述される銘柄である。
【0029】
カーボンブラックは、炭化水素の熱分解によって製造される球状コロイド粒子および結合粒子凝集体の形態の元素状炭素である。カーボンブラックは黒鉛より低い秩序(less order)を有するが、カーボンブラックのミクロ構造は、性質上、黒鉛状である。カーボンブラックの重要な特徴の1つは、カーボンブラック粒子のコアにおける高度の多孔性および空洞化である。カーボンブラックは、真性(intrinsic)半導体として公知である。
【0030】
カーボンブラックをポリマーマトリックスに特定レベルまで添加した場合、カーボンブラック凝集体が、連続通路(path)を形成し、導電性高分子複合材料になる。電子トンネル理論において、カーボンブラック凝集体が、接触しているか、または臨界距離、またはパーコレーション距離(これは約100Åまたはそれ以下であることが示されている)未満で離れている場合に、電子流が生じる。ある意味において、電子は、抵抗性ポリマーを通って、凝集体から凝集体へ進む。トンネリングが生じるのに充分に、凝集体がますます接触するか、または接近すると共に、高分子複合材料の導電性が増加する。パーコレーションは、高分子複合材料が絶縁系から導電系に変換する点である。しかし、電力ケーブルにおける生成物の全体的性能のバランスをとるために、ポリマー配合物の加工性も考慮すべきである。カーボンブラック含有量が減少すると共に、押出が容易になる。
【0031】
カーボンナノチューブも使用することができる。
【0032】
カーボンブラックまたはカーボンナノチューブ以外の導電性充填剤も使用し得る。その例は、金属粒子、フラーレン、および導電性ポリマー、例えば、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリチオフェンおよびポリアニリンである。
【0033】
任意に、アクリロニトリルとブタジエンとのコポリマーを半導体シールド組成物に含ませてもよく、該コポリマーにおいて、アクリロニトリルは、コポリマーの重量に基づいて20〜60重量%の量で存在し、好ましくは30〜40重量%の量で存在する。このコポリマーは、一般に、導体またはストランドシールドではなく可剥性絶縁体シールドにおいて使用される。そのコポリマーは、ニトリルゴムまたはアクリロニトリル/ブタジエンコポリマーゴムとして公知である。密度は、例えば、0.98g/cm3であってよく、ムーニー粘度は(ML 1+4)50であってよい。所望であれば、シリコーンゴムをニトリルゴムの代わりに使用することができる。
【0034】
任意に、本発明組成物は、エチレンα−オレフィンコポリマーを含む他のポリオレフィンを、存在する全ポリマーの重量に基づいて約25重量%未満の量で含有してよい。
【0035】
第I相材料および第II相材料を架橋することができる。これは、有機過酸化物または放射線照射を用いる従来法によって行うことができ、前者が好ましい。使用される有機過酸化物の量は、複合材料の重量に基づいて0.3〜5重量%であってよく、好ましくは0.5〜3重量%である。有機過酸化物架橋温度は、125〜250℃であってよく、好ましくは135〜210℃である。
【0036】
架橋に有用な有機過酸化物の例は、ジクミルペルオキシド;t−ブチルクミルペルオキシド;ラウロイルペルオキシド;ベンゾイルペルオキシド;t−ブチルペルベンゾエート;ジ(t−ブチル)ペルオキシド;t−ブチルペルオキシジイソプロピル−ベンゼン;クメンヒドロペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチル−ペルオキシ)ヘキシン−3;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン;t−ブチルヒドロペルオキシド;イソプロピルペルカーボネート;およびα,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼンである。
【0037】
放射線照射は、典型的に、電子線によって行われる。ペレット形態の組成物を、所与の線量率において電子線に暴露するか、または特定強度のγ線源に所与時間にわたって暴露して、特定線量率の放射線を与える。
【0038】
組成物に導入できる従来の添加剤は、例えば、以下の添加剤である。酸化防止剤、カップリング剤、紫外線吸収剤または安定剤、帯電防止剤、顔料、染料、成核剤、補強充填剤またはポリマー添加剤、スリップ剤、可塑剤、加工助剤、潤滑剤、粘度調節剤、粘着性付与剤、粘着防止剤、界面活性剤、エキステンダー油、金属不活性化剤、電圧安定剤、難燃性充填剤および添加剤、架橋剤、ブースター、触媒、および防煙剤(smoke suppressants)。添加剤および充填剤は、複合材料の重量に基づいて0.1重量%未満〜50重量%超の量で添加できる(充填剤の場合、一般により多い量である)。
【0039】
酸化防止剤の例は以下の物質である。ヒンダードフェノール、例えば、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ−シンナメート)]メタン、ビス[(β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−メチルカルボキシエチル)]スルフィド、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、およびチオジエチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート;ホスファイトおよびホスホナイト(phosphonites)、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトおよびジ−t−ブチルフェニル−ホスホナイト;チオ化合物、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネートおよびジステアリルチオジプロピオネート;種々のシロキサン;および種々のアミン、例えば、重合2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、およびアルキル化ジフェニルアミン。酸化防止剤は、複合材料の重量に基づいて0.1〜5重量%の量で使用できる。
【0040】
配合は、従来のメルト/ミキサー、または従来の押出機において、好ましくは一段階で行うことができ、メルト/ミキサーおよび押出機という用語は、本明細書において、同義で使用される。一般に、導電性シールド組成物は、メルト/ミキサーにおいて調製され、次に、ペレタイザー付属装置、またはペレット化のために適合された押出機を使用して、ペレット化される。その名が示すようにメルト/ミキサー、および押出機の両方は、実際に、溶融および混合ゾーンを有するが、それぞれの種々のセクションが種々の名称で当業者に公知である。本発明の半導体シールド組成物は、種々のタイプのメルト/ミキサーおよび押出機、例えば、Brabender(商標)ミキサー、Banbury(商標)ミキサー、ロールミル、Buss(商標)コニーダー、二軸スクリュー混練押出機、および一軸または二軸スクリュー押出機で調製することができる。従来の押出機についての記載が、米国特許第4857600号に見出される。
【0041】
メルト/混合に加えて、押出機は、ワイヤ、またはワイヤのコアを、被覆することができる。共押出およびそのための押出機の例が、米国特許第5575965号に見出される。典型的な押出機は、その上流端にホッパー、その下流端にダイを有する。ホッパーは、スクリューを含むバレルに供給する。下流端において、スクリューの末端とダイの間に、スクリーンパックおよびビーカープレートが存在する。押出機のスクリュー部分は、3つのセクション、供給セクション、圧縮セクションおよび計量セクション、ならびに2つのゾーン、バックヒートゾーンおよびフロントヒートゾンに分かれると考えられ、該セクションおよびゾーンは、上流から下流に走る。または、上流から下流に走る軸に沿って、多数の加熱ゾーン(3つ以上)が存在してもよい。それが2つ以上のバレルを有する場合、バレルは直列につながっている。各バレルの長さ対直径比は、15:1〜30:1である。ワイヤ被覆において、押出後に材料が架橋される場合、クロスヘッドのダイが加熱ゾーンに直接的に供給し、このゾーンは、120℃〜260℃の温度、好ましくは140℃〜220℃の温度に維持することができる。
【0042】
次に、押出物を、有機過酸化物の分解温度より高い温度に暴露することによって、架橋する。好ましくは、使用される過酸化物は4またはそれ以上の半減期を経て分解する。架橋は、例えば、オーブンまたは連続加硫(CV)管で行うことができる。蒸気CV装置を使用する場合、圧力定格加硫管を、押出機クロスヘッドに機械的につなぎ、それによって、ポリマーメルトが、クロスヘッド/ダイ・アセンブリから出て、押出機に垂直に走る加硫パイプに入る。一般的なCV稼動において、過酸化物を組み込んでいる組成物を、低いメルト押出温度で絶縁体およびケーブル外被に押出製造して、押出機における早期架橋を防止する。製造されたメルト付形物が、付形ダイから出て、蒸気加硫管に入り、押出後過酸化物開始架橋が行われる。蒸気管は飽和蒸気で満たされ、該飽和蒸気は、ポリオレフィンメルトを、架橋に必要とされる高温に加熱し続ける。架橋を生じさせるための滞留時間を最大にするために、CV管の大部分が飽和蒸気で満たされる。管から出る前の最終長さ(final length)を水で満たして、その時点で架橋している絶縁体/外被を冷却する。CV管の末端において、絶縁ワイヤまたはケーブルが、冷却水漏れを最小限にする締り嵌めガスケット(close fitting gaskets)を組み込んでいるエンドシールを通る。蒸気調節器、水ポンプおよびバルビングは、蒸気CV管内の蒸気と水の平衡および各充填長さ(fill lengths)を維持している。または、熱窒素ガスCV管を使用して、ケーブル構造物を硬化させてもよい。
【0043】
「囲まれた」という用語は、その用語が絶縁組成物、外被材料、半導体シールドまたは他のケーブル層によって囲まれている支持体に適用される場合に、当業者に周知のように、以下のことを含むと考えられる。支持体の周りに押し出すこと;支持体を被覆すること;または、支持体の周りに巻き付けること。支持体は、例えば、導体または導体の束を有するコア、または種々の下位ケーブル層を含み得る。
【実施例】
【0044】
以下の非限定的実施例は、本発明を例示するものである。
【0045】
実施例1および比較例2
実施例1および比較例2の組成物を、表Iに示す配合を使用して調製し、BussコニーダーB−46型で配合した。各成分の量は重量%で示されている。
【0046】
表Iは、体積抵抗(VR)および細管レオロジー(capillary rheology)試験の結果も示す。体積抵抗試験は、プリコンディショニング後に、IEC 6093によって、導電ペイントを用いて、23℃および90℃で行った。細管レオロジー試験は、120℃において、Goettfert毛管レオメーター、Rheograph 6000、トリプルボア(trible bore)、および12mmのピストン直径で行った。20/1のダイを使用した。適用した見掛け剪断速度は、50〜10000sec-1であった。剪断速度は、実施例1/比較例2として示され、最初の数値は実施例1に関し、二番目の数値は比較例2に関し、従って、348/370は、348反数秒(reciprocal seconds)は実施例1に関し、370反数秒は比較例2に関することを示す。
【0047】
【表1】

【0048】
低密度ポリエチレン(LDPE)は、0.919g/cm3の密度、および8.7g/10分のメルトインデックスを有した。
【0049】
エチレン/エチルアクリレート(EEA)コポリマーは、0.931g/cm3の密度、および6g/cm3のメルトインデックスを有した。EEAコポリマーは、18.5重量%エチルアクリレートを含有する。
【0050】
カーボンブラックは、約68m2/gの表面積を有した。それは、Cabot CorporationからXC500として商業的に入手可能であった。酸化防止剤は、Agerite(商標)MA重合1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリンであり、R.T.Vanderbilt Companyから商業的に入手可能であった。使用した有機過酸化物はVulcup(商標)t−ブチルペルオキシジイソプロピル−ベンゼンであり、Geo Specialty Chemicalsから商業的に入手可能であった。
【0051】
実施例3ならびに比較例4および5
実施例3ならびに比較例4および5の組成物を、表IIに示す配合を使用して調製し、BussコニーダーB−46型で配合した。各成分の量は重量%で示されている。
【0052】
表IIは、体積抵抗(VR)および破断点伸び%の試験結果も示す。体積抵抗試験は、プリコンディショニング後に、IEC 6093によって、導電ペイントを用いて、23℃および90℃で行った。伸び%は、Thueringer Maschinenbau GmbHから入手可能なTIRA Test 2420を使用して、IEC 60811−1−1/IEC 60811−1−2に従って測定した。
【0053】
実施例1および比較例2で使用したものと同じLDPE、EEAコポリマー、カーボンブラックおよび有機過酸化物を使用して、実施例3ならびに比較例4および5を調製した。実施例3ならびに比較例4および5に使用した酸化防止剤は、Chemtura Corporation、旧Crompton Corporationから入手可能なNaugard Ultra Q重合キノリン酸化防止剤であった。
【0054】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子複合材料であって、
(i)エチレンと不飽和エステルとの極性コポリマーから本質的になる第I相材料;
(ii)非極性低密度ポリエチレンから本質的になる第II相材料;
(iii)第I相材料および第II相材料において連続導電ネットワークを生じるのに必要とされる量またはそれより多い量であるのに充分な量で、第I相材料および/または第II相材料に分散された導電性充填材料
を含む、高分子複合材料。
【請求項2】
第I相材料が、複合材料の重量に基づいて10〜80重量%の量で存在する、請求項1に記載の高分子複合材料。
【請求項3】
第II相材料が、複合材料の重量に基づいて10〜80重量%の量で存在する、請求項1に記載の高分子複合材料。
【請求項4】
第I相材料の極性コポリマーが、加水分解性である、請求項1に記載の高分子複合材料。
【請求項5】
第II相材料の非極性コポリマーが、加水分解性である、請求項1に記載の高分子複合材料。
【請求項6】
アクリロニトリルとブタジエンとのコポリマーをさらに含む、請求項1に記載の高分子複合材料。
【請求項7】
高分子複合材料から調製されたジャケット、絶縁体シールドおよび半導体シールドからなる群より選択される層を含むワイヤであって、前記高分子複合材料が、
(i)エチレンと不飽和エステルとの極性コポリマーから本質的になる第I相材料;
(ii)非極性低密度ポリエチレンから本質的になる第II相材料;
(iii)第I相材料および第II相材料において連続導電ネットワークを生じるのに必要とされる量またはそれより多い量であるのに充分な量で、第I相材料および/または第II相材料に分散された導電性充填材料
を含む、ワイヤ。

【公表番号】特表2009−526352(P2009−526352A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553411(P2008−553411)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/003165
【国際公開番号】WO2007/092454
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】