説明

半導体装置およびその作製方法

【課題】 大面積のガラス基板上に薄膜からなる集積回路を形成し、他の基体に転写して分断を行い、接触、好ましくは非接触でデータの受信または送信が可能な微細なデバイスを大量に効率よく作製する方法を提供することを課題とする。特に薄膜からなる集積回路は、非常に薄いため移動時に飛んでしまう恐れがあり、取り扱いが難しかった。
【解決手段】 本発明は、剥離層に達する多数の穴または多数の溝を設け、穴(または溝)およびデバイス部に重ならない領域にパターン形状を有する材料体を設けた後、ハロゲン化フッ素を含む気体又は液体を導入して、前記剥離層を選択的に除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタ(以下、TFTという)で構成された回路や半導体装置等を剥離するための方法およびその方法により得られる半導体装置に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
近年、絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜(厚さ数〜数百nm程度)を用いて薄膜トランジスタ(TFT)を構成する技術が注目されている。薄膜トランジスタはICや電気光学装置のような電子デバイスに広く応用され、特に画像表示装置のスイッチング素子として開発が急がれている。
【0004】
画像表示装置を利用したアプリケーションは様々なものが期待されているが、特に携帯機器への利用が注目されている。現在、ガラス基板や石英基板が多く使用されているが、割れやすく、重いという欠点がある。そのため、可撓性を有する基板、代表的にはフレキシブルなプラスチックフィルムの上にTFT素子を形成することが試みられている。
【0005】
しかしながら、プラスチックフィルムの耐熱性が低いためプロセスの最高温度を低くせざるを得ず、結果的にガラス基板上に形成する時ほど良好な電気特性のTFTを形成できないのが現状である。そのため、プラスチックフィルムを用いた高性能な半導体素子は実現されていない。
【0006】
そこで、ガラス基板上に形成した素子を基板から剥離し、他の基材、例えばプラスチックフィルムなどに転写する技術が提案されている。
【0007】
本出願人は、特許文献1や特許文献2に記載の剥離および転写技術を提案している。
【0008】
また、ICのような微小なデバイスにおいては、半導体ウェハを粘着シートに貼り付けた状態でチップ単位に切断し、該切断された半導体素子を粘着シートからピックアップし、ICカード等を構成する回路基板に搭載して実装することが行われている。半導体ウェハを用いているため、ピックアップ時において傷ついたり、割れやすい欠点を有していた。
【特許文献1】特開平8−288522号公報
【特許文献2】特開平8−250745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
また、近年では、非接触で情報を記録し、且つ読み取りできる「非接触ICタグ」(一般的に非接触データキャリアとも呼ぶ)が物品や商品の情報管理、物流管理等に利用することが検討されている。
【0010】
ICカードや非接触ICタグに用いる半導体チップの母体となる半導体ウェハは高価であり、大量生産には不向きである。
【0011】
また、ガラス基板上に多数の電子部品素子を搭載し、個別に切断して製品とするマトリックスタイプ(多数個取りタイプ)の製造方法が普及しつつある。大量生産上、大きな基板に小さなデバイスを作製することが好ましい。
【0012】
そこで、本発明は、大面積のガラス基板上に薄膜からなる集積回路を形成し、他の基体に転写して分断を行い、接触、好ましくは非接触でデータの受信または送信が可能な微細なデバイスを大量に効率よく作製する方法を提供することを課題とする。特に薄膜からなる集積回路は、非常に薄いため移動時に飛んでしまう恐れがあり、取り扱いが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者らは、ガラス基板上にアモルファスシリコンまたはポリシリコンを剥離層とし、該剥離層上に半導体素子などのデバイス部を設けた後、部分的に材料体(代表的には樹脂)を設けると、材料体を設けた箇所と重なる剥離層の部分は除去されない(または、除去されにくくなる)ことを見出した。
【0014】
具体的には、剥離層に達する多数の穴または多数の溝を設け、穴(または溝)およびデバイス部に重ならないパターン形状を有する材料体を設けた後、フッ化ハロゲンを含む気体又は液体を導入して、前記剥離層を選択的に除去することができる。本発明者らは剥離層上の凹凸などもエッチングに変化を与えることを見出し、固定したい領域に凸部となる材料体を設ける構成としている。膜厚が1μm以上の材料体を設けることによってフッ化ハロゲンを含む気体又は液体の導入経路が変わり、エッチングのされ方が変化して材料体が設けられた箇所の剥離層が残存する。
【0015】
所定の箇所の剥離層を残存させることによって、ガラス基板に対して部分的に固定させている状態で他の基材にデバイス部のみの転写を行うことができる。
【0016】
本明細書で開示する半導体装置の作製方法に関する発明の構成は、
絶縁表面を有する基板上に剥離層を形成し、
前記剥離層上に第1部分及び第2部分を含む層を形成し、
前記第1部分及び前記第2部分を含む層に対して前記剥離層に達する開口を形成し、
前記第1の部分と前記第2の部分の間に位置する第3部分に材料体を形成し、
前記開口にフッ化ハロゲンを含む気体又は液体を導入して、前記剥離層を選択的に除去し、且つ、前記第3部分と重なる前記剥離層の一部を残存させ、
絶縁表面を有する基板から前記第1部分及び前記第2部分を切り離すことを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0017】
上記構成において、前記第1部分及び前記第2部分は、それぞれ半導体素子を少なくとも一つ有していることを特徴の一つとしている。
【0018】
また、他の発明の構成は、
絶縁表面を有する基板上に剥離層を形成し、
前記剥離層上に第1の薄膜集積回路及び第2の薄膜集積回路を含む層を形成し、
前記第1の薄膜集積回路及び前記第2の薄膜集積回路を含む層に対して前記剥離層に達する開口を形成し、
前記第1の薄膜集積回路と前記第2の薄膜集積回路の境界上の少なくとも一部に材料体を形成し、
前記開口にフッ化ハロゲンを含む気体又は液体を導入して、前記剥離層を選択的に除去して、前記材料体の下方に前記剥離層の一部を残存させ、
絶縁表面を有する基板から前記第1の薄膜集積回路及び前記第2の薄膜集積回路を切り離すことを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0019】
また、上記各構成において、前記開口は、穴または溝であることを特徴の一つとしている。
【0020】
また、前記材料体の上面形状は、前記基板の一辺と平行な直線形状、または前記薄膜集積回路を囲む格子形状であることを特徴の一つとしている。
【0021】
また、前記材料体は、スクリーン印刷法または液滴吐出法により得られることを特徴の一つとしている。
【0022】
また、前記材料体は、フッ化ハロゲンを含む気体又は液体と化学反応しない材料であることを特徴の一つとしている。
【0023】
また、他の発明の構成は、
絶縁表面を有する基板上に剥離層を形成する第1の工程と、
前記剥離層上に複数の薄膜集積回路を含む層を形成する第2の工程と、
前記複数の薄膜集積回路を含む層に対して前記剥離層に達する多数の穴または多数の溝を形成する第3の工程と、
隣り合う薄膜集積回路の境界上の少なくとも一部に材料体を形成する第4の工程と、
前記多数の穴または多数の溝にフッ化ハロゲンを含む気体又は液体を導入し、前記剥離層を選択的に除去して、前記材料体の下方のみに前記剥離層の一部を残存させる第5の工程と、
絶縁表面を有する基板から前記薄膜集積回路を個々に又は各組ごとに切り離す第6の工程と、を有することを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0024】
また、接着面を備える基体へ転置した後に個々に分けてもよく、他の発明の構成は、
絶縁表面を有する基板上に剥離層を形成する第1の工程と、
前記剥離層上に複数の薄膜集積回路を含む層を形成する第2の工程と、
前記複数の薄膜集積回路を含む層に対して前記剥離層に達する多数の穴または多数の溝を形成する第3の工程と、
隣り合う薄膜集積回路の境界上の少なくとも一部に材料体を形成する第4の工程と、
前記多数の穴または多数の溝にフッ化ハロゲンを含む気体又は液体を導入し、前記剥離層を選択的に除去して、前記材料体の下方のみに前記剥離層の一部を残存させる第5の工程と、
前記薄膜集積回路を、接着面を備える基体へ転置する第6の工程と、
前記薄膜集積回路を個々に又は各組ごとに分断する第7の工程と、を有することを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0025】
上記各構成において、前記前記材料体の上面形状は、前記基板の一辺と平行な直線形状、または前記薄膜集積回路を囲む格子形状であることを特徴の一つとしている。なお、材料体が配置される箇所には穴を形成しなくともよい。また、上記各構成において、前記材料体は、スクリーン印刷法または液滴吐出法により得られることを特徴の一つとしている。フォトマスクを使用せずに材料体を形成することによって工程の簡略化を図っている。また、スクリーン印刷法または液滴吐出法は、エッチングによる溶媒や反応ガスによる素子への影響もなく、好ましい。
【0026】
また、前記材料体は、フッ化ハロゲンを含む気体又は液体と化学反応しない材料であることが好ましい。例えば、前記材料体として、エポキシ樹脂やテフロン(登録商標)樹脂などを用いることができる。
【0027】
従来の技術では、ガラス基板上に設けられた剥離層上に半導体素子を形成し、固定するための基板に接着した後に剥離を行ってガラス基板から半導体素子を剥離していたが、本発明では、ガラス基板をそのまま固定基板とすることで、剥離工程や転写工程において、小さなサイズを有する集積回路がバラバラになることを防ぐ。本発明により、大きな基板に小さなデバイスを作製し、個々に取り扱うことが簡便となる。
【0028】
また、本発明では、フッ化ハロゲンを含む気体又は液体を導入すると、デバイス部と重なる部分において、基板とデバイス部の間において空洞が形成される。この空洞は、剥離層が部分的に除去されることで形成されるものである。
【0029】
また、フッ化ハロゲンを含む気体又は液体を導入した後、ヒートシールを行うことによってラミネート処理を行えば、さらなる薄膜化を実現することができる。
【0030】
また、上記作製方法によって得られる半導体装置も本発明の一つであり、その構成は、
第1のフィルムと、第2のフィルムとで封止された半導体装置であり、
前記第1のフィルムと前記第2のフィルムとの間に、第1の絶縁膜と、該第1の絶縁膜上に半導体素子を含む層と、該半導体素子を含む層を覆う第2の絶縁膜とを有し、
前記第1のフィルムは、前記第1の絶縁膜と接し、且つ、前記第2のフィルムは前記第2の絶縁膜と接していることを特徴とする半導体装置である。
【0031】
また、通信機能を持たせたデバイスとしてもよく、他の構成は、
第1のフィルムと、第2のフィルムとで封止された半導体装置であり、
前記第1のフィルムと前記第2のフィルムとの間に、第1の絶縁膜と、該第1の絶縁膜上に半導体素子およびアンテナを含む層と、該半導体素子およびアンテナを含む層を覆う第2の絶縁膜とを有し、
前記第1のフィルムは、前記第1の絶縁膜と接し、且つ、前記第2のフィルムは前記第2の絶縁膜と接していることを特徴とする半導体装置である。
【0032】
また、上記各構成において、半導体素子およびアンテナを含む層における絶縁膜のうち、半導体素子およびアンテナに重ならない箇所に多数の穴、若しくは溝を有している。この多数の穴、若しくは溝は、第1のフィルム及び第2のフィルムに達している。この多数の穴、若しくは溝は、ガラス基板から半導体素子およびアンテナを含む層を剥離する際に形成されたものである。
【0033】
また、フッ化ハロゲンを含む気体又は液体に耐えうる材料、例えばアルミニウムを主成分とする材料からなるアンテナであれば、アンテナを第2の絶縁膜で覆う必要は特になく、他の構成は、
第1のフィルムと、第2のフィルムとで封止された半導体装置であり、
前記第1のフィルムと前記第2のフィルムとの間に、第1の絶縁膜と、該第1の絶縁膜上に半導体素子を含む層と、半導体素子を含む層上にアンテナと、を有し、
前記第1のフィルムは、前記第1の絶縁膜と接し、且つ、前記第2のフィルムは前記アンテナと接していることを特徴とする半導体装置である。この構成とすることによって、第2の絶縁膜を形成する工程を削減することができる。
【0034】
また、上記各構成において、前記第1のフィルムまたは前記第2のフィルムは積層構造を有しているラミネートフィルムであることを特徴の一つとしている。ラミネートフィルムを用いれば、フィルムを貼り付けるための接着層を形成する工程が省略できる。また、ラミネートフィルムと第1の絶縁膜との間にアンカーコート層を設けて密着性を向上させてもよい。また、ラミネートフィルムと第2の絶縁膜との間にアンカーコート層を設けて密着性を向上させてもよい。
【0035】
ラミネートフィルムとは、基材フィルムと接着性合成樹脂フィルムとの積層フィルム、または2種類以上の積層フィルムを指す。基材フィルムとしては、PETやPBT等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、また無機蒸着フィルム、または紙類を用いればよい。また、接着性合成フィルムとしてはPEやPP等のポリオレフィン、アクリル系合成樹脂、エポキシ系合成樹脂などを用いればよい。ラミネートフィルムはラミネート装置により、被処理体と熱圧着によりラミネートされる。なお、ラミネート工程を行う前処理としてアンカーコート剤を塗布することが好ましく、ラミネートフィルムと被処理体との接着を強固なものとすることができる。アンカーコート剤としてはイソシアネート系などを用いればよい。
【0036】
本明細書でヒートシールとは、加熱圧着により封止することを指しており、フィルム基材にパートコートされている接着剤層か、ラミネートフィルムの融点の低い最外層または最内層を熱によって溶かし、加圧によって接着することを言う。
【0037】
また、前記第1の絶縁膜は、窒化珪素または酸化珪素を主成分とする無機絶縁膜であることを特徴の一つとしている。なお、この窒化珪素または酸化珪素を主成分とする無機絶縁膜を下地膜としてTFTが積層形成されている。
【0038】
また、TFT構造に関係なく本発明を適用することが可能であり、例えば、トップゲート型TFTや、ボトムゲート型(逆スタガ型)TFTや、順スタガ型TFTを用いることが可能である。また、シングルゲート構造のTFTに限定されず、複数のチャネル形成領域を有するマルチゲート型TFT、例えばダブルゲート型TFTとしてもよい。
【0039】
また、TFTの活性層としては、非晶質半導体膜、結晶構造を含む半導体膜、非晶質構造を含む化合物半導体膜などを適宜用いることができる。さらにTFTの活性層として、非晶質と結晶構造(単結晶、多結晶を含む)の中間的な構造を有し、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する結晶質な領域を含んでいるセミアモルファス半導体膜(微結晶半導体膜、マイクロクリスタル半導体膜とも呼ばれる)も用いることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明は、剥離層を除去した後も、基板と残存した剥離層の一部とが密着した領域を設けることで、当該絶縁膜の上方に設けられた薄膜集積回路の飛散を防止することができる。また、剥離層の一部が残存した領域を設けることで、基板上に薄膜集積回路を保持することができるため、当該薄膜集積回路の基体への転置を容易に行うことができる。
【0041】
また、本発明のように、基板上に薄膜集積回路が保持された状態であれば、当該基板をそのまま搬送することができるため、搬送手段を含む量産装置に用いることができる。例えば、ラミネート装置に、薄膜集積回路が保持された基板を搬送すれば、当該薄膜集積回路のラミネート処理を連続的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の実施形態について、以下に説明する。
【0043】
本発明の実施の形態について、図1〜図4を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いる。
【0044】
(実施の形態1)
ここでは、本発明の半導体装置の作製方法について以下に説明する。
【0045】
まず、絶縁表面を有する基板10上に剥離層11aを形成する。なお、絶縁表面を有する基板101とは、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、アクリル等の可撓性を有する合成樹脂からなる樹脂基板、金属基板に相当する。また、剥離層11aは、珪素を含む層をスパッタリング法やプラズマCVD法等の公知の方法により形成する。珪素を含む層とは、非晶質半導体層、非晶質状態と結晶質状態とが混在したセミアモルファス半導体層、結晶質半導体層に相当する。
【0046】
次いで、無機絶縁膜からなる絶縁膜12aを形成する。絶縁膜12aは、プラズマCVD法やスパッタリング法等の公知の方法を用いて、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素等からなる単層膜、またはこれらの積層膜を形成する。
【0047】
次いで、絶縁膜12aを下地膜として半導体素子を含む層12bを形成する。(図1(A)参照)。図1(A)では、第1の素子群13aと、第1の素子群に隣接する第2の素子群13bとを示した例を示しているが、特に限定されず、基板10には多数の素子群が設けられており、最終的に個別に切断して製品とする。なお、第1の素子群13aは、複数のTFTとアンテナとして機能する導電層14とを含んでおり、最終的には第1の素子群13aが一つのデバイスとなる。
【0048】
次いで、マスクを用いてエッチングを行う。このエッチング工程でTFTや導電層14が設けられた領域以外に、剥離層11aに達する開口部15を選択的に形成して、剥離層11aを露出させる(図1(B)参照)。なお、開口部15の配置はTFTや導電層14が設けられた領域以外であれば特に限定されず、適宜設ければよい。また、開口部15は穴であってもよいし、幅を有する溝であってもよい。
【0049】
次いで、スクリーン印刷法または液滴吐出法により材料体16を形成する(図1(C)参照)。また、ディスペンサ装置を用いて材料体16を形成することも可能である。なお、この段階での上面図を図3に示す。剥離層を残存させたい領域に材料体16を形成すればよく、例えば、図3に上面図の一例を示したように1つの素子群を囲む格子形状とする。図3中における鎖線A−Bが図1(C)の断面図に相当する。また、前記材料体は、フッ化ハロゲンを含む気体又は液体と化学反応しない材料であることが好ましい。ここでは材料体16として、エポキシ樹脂を用いてスクリーン印刷法により格子形状とする。
【0050】
また、材料体16のパターンは特に限定されず、図5に示すように、材料体51のパターンを基板50の一辺と平行な直線形状としてもよい。直線形状を形成する場合にはインクジェット法を用いることが好ましい。インクジェット法では格子形状を形成する際、交差する部分を形成することは困難である。図5においては、素子群の間にも穴52を設けることができる。また、材料体のパターンを図5とした場合は、材料体51のパターンに沿って、接着層を用いた他の基板との貼り合わせや、ラミネートフィルムを用いたラミネート処理を行うことが好ましい。
【0051】
次いで、剥離層を除去するエッチング剤を開口部に導入して、剥離層を部分的に除去して材料体と重なる領域の剥離層11bを残存させる(図1(D)参照)。エッチング剤には、フッ化ハロゲンを含む気体又は液体を使用する。フッ化ハロゲンを含む気体としては、例えば三フッ化塩素(ClF3)を使用する。材料体16を設けることによって、エッチング剤が開口部に入りにくくなり、結果的に材料体16の重なる領域に剥離層11bを残存させることができる。図1(D)では残存した剥離層11bの幅を材料体のパターン幅よりも狭い様子を示しているが、特に限定されず、両者の幅が同一、もしくは素子群に重ならない程度に剥離層11bの幅を広くしてもよい。
【0052】
次に、第1の接着性合成樹脂フィルム18と第1の基材フィルム17との積層からなるラミネートフィルムに対して、第1の素子群13aと第2の素子群13bとをラミネート法により熱圧着させて、第1の素子群13aと第2の素子群13bを基板10から剥離する(図1(E)参照)。強度、加工作業性、コスト等の点からラミネートフィルムのトータル厚さは15μm〜200μmのものを使用する。ここでは、ポリエチレン(20μm)とポリエチレンフィルム(40μm)との積層で形成されたラミネートフィルム(トータル厚さ60μm)を用いる。
【0053】
熱圧着させる際には、素子群に含まれる素子を破壊しない範囲、好ましくは素子特性が変化しない範囲で加熱温度と圧力を設定することが好ましい。また、材料体16は、圧着させる際に圧力を材料体16の部分に集中させることができ、素子群に圧力が集中することを防ぐ効果もある。
【0054】
材料体16が第1の接着性合成樹脂フィルム18と密着性がよい場合、材料体16も基板から剥離されることもあるが、後の工程で除去することが可能である。 材料体も剥離される場合、残存した剥離層が存在しているため、材料体と重なる絶縁膜の積層は固定されたままで、材料体と絶縁膜との界面で分離される。材料体を除去する工程を省くため、材料体16は第1の接着性合成樹脂フィルム18と密着性が悪いことが好ましい。材料体16が第1の接着性合成樹脂フィルム18と密着性が悪い場合、剥離層が除去された部分は第1の基材フィルム17に接着して基板10から完全に剥離され、剥離層11bが残存している部分は基板10に保持されたままとなる。
【0055】
また、第1の接着性合成樹脂フィルム18と第1の基材フィルム17との積層からなるラミネートフィルムに代えて、接着層を有する基材を用いてもよい。
【0056】
この段階で、図2(A)に示すように、第1の接着性合成樹脂フィルム18と第1の基材フィルム17との積層からなるラミネートフィルムに第1の素子群13aと第2の素子群13bとが接着された状態を得ることができる。
【0057】
次いで、第2の接着性合成樹脂フィルム19と第2の基材フィルム20との積層からなるラミネートフィルムに対して、第1の素子群13aと第2の素子群13bとをラミネート法により熱圧着(約100℃程度)させて封止を行う(図2(B)参照)。ここでも、ポリエチレン(20μm)とポリエチレンフィルム(40μm)との積層で形成されたラミネートフィルム(トータル厚さ60μm)を用いる。なお、本実施の形態では、同じ種類のラミネートフィルム2枚を用いて封止を行った例を示したが特に限定されず、2枚の異なる種類のラミネートフィルムを封止に用いてもよい。
【0058】
また、第2の接着性合成樹脂フィルム19と第2の基材フィルム20との積層からなるラミネートフィルムに代えて、接着層を有する基材を用いて封止してもよい。
【0059】
最後に、個々に分断を行って図2(C)の状態を得ることができる。ラミネートフィルムと第1の素子群とは直接接しており、間に他の材料層を有していない。こうして、2枚のラミネートフィルム(60μm)で挟まれた非常に厚さの薄い半導体装置(合計膜厚は第1の素子群の厚さ(3μm以下)+120μm)を提供することができる。なお、図2(C)では、ラミネートフィルムが曲がっている図面となっているが、実際は、第1の素子群の厚さは3μm以下であるのに対し、ラミネートフィルムは1枚当たり60μmであるため、貼りあわされた2枚のラミネートフィルムは、ほとんど平坦である。
【0060】
また、ここでは開口部15を形成した後、材料体16を形成した例を示したが、特に限定されず、材料体16を形成した後に開口部15を形成してもよい。
【0061】
(実施の形態2)
ここでは、実施の形態1よりも、さらに詳細な説明を行うこととする。図4を用いて半導体装置の作製方法の例を示す。なお、図4(B)は実施の形態1に示した図3中の鎖線C−Dで切断した断面図に相当する。
【0062】
まず、絶縁表面を有する基板101の一表面に剥離層102を形成する。
【0063】
次いで、剥離層102上に接して、下地用の絶縁膜105を形成する。絶縁膜105は、プラズマCVD法やスパッタリング法等の公知の方法を用いて、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素等からなる薄膜を形成する。
【0064】
続いて、絶縁膜105上に複数の素子を含む素子群106を形成する。素子群106は、例えば、薄膜トランジスタ、容量素子、抵抗素子、ダイオード等を1つ又は複数形成する。また、薄膜トランジスタに接続する発光素子を設けて小さな発光領域、または表示領域を備えた素子群を設けてもよい。また、素子群106に静電破壊防止のための保護回路(保護ダイオードなど)を設けてもよい。ここでは、素子群106として、2つのトランジスタ117、118を形成する。次に、素子群106を覆うように、絶縁膜107を形成し、絶縁膜107上に、絶縁膜108を形成する。続いて、絶縁膜108上に、スパッタ成膜後にパターニングを行う、或いは液滴吐出法によりアンテナとして機能する導電層110を形成する。
【0065】
次に、導電層110上に、保護膜として機能する絶縁膜111を形成する。上記の工程を経て、素子群106と導電層110を含む薄膜集積回路109が完成する。(図4(A)参照)。
【0066】
絶縁膜107、108、111は、有機材料又は無機材料により形成する。有機材料は、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、シロキサン、エポキシ等を用いる。シロキサンは、珪素と酸素との結合で骨格構造が構造され、置換基に少なくとも水素を含む、又は置換基にフッ素、アルキル基、又は芳香族炭化水素のうち少なくとも1種を有する材料である。また、無機材料には、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素等を用いる。
【0067】
続いて、素子と導電層110が設けられた領域以外に、穴または溝となる開口部112、113を選択的に形成して、剥離層102を露出させる(図4(B)参照)。つまり、素子と導電層110が設けられた領域の外周に開口部112、113を選択的に形成する。開口部は、マスクを利用したエッチングやダイシング等によって形成する。
【0068】
続いて、スクリーン印刷法または液滴吐出法により材料体を形成する。剥離層を残存させたい領域、例えば隣り合う薄膜集積回路との境界に材料体を形成すればよい。
【0069】
続いて、開口部に剥離層102を除去するエッチング剤を導入して、剥離層102を部分的に除去する(図4(C)参照)。図4(C)では基板101と絶縁膜105との間に空洞を有しているが、材料体が設けられた領域には剥離層が残存しており、薄膜集積回路109は基板101に固定されたままである。エッチング剤には、フッ化ハロゲンを含む気体又は液体を使用する。フッ化ハロゲンを含む気体としては、例えば三フッ化塩素(ClF3)を使用する。
【0070】
次に、素子群106と導電層110を含む薄膜集積回路109を基体114に接着させて、薄膜集積回路109を基板101から剥離する(図4(D)参照)。この際、剥離層102が除去された部分は基体114に接着して基板101から完全に剥離され、剥離層が残存している部分は基板101に保持されたままとなる。
【0071】
基体114には、プラスチック等からなる可撓性基板、両面テープなどを用いるとよい。可撓性基板には、熱硬化樹脂などの接着剤からなる接着面を設けていてもよい。また、基体114を用いずに、物品の表面に接着させてもよい。そうすれば、実装する物品の薄型化や軽量化に貢献することになる。
【0072】
上記の作製方法では、剥離層を部分的に除去することを特徴の一つとしている。上記特徴により、剥離層を部分的に除去した後も、剥離層を残存させた領域は固定状態にあるため、薄膜集積回路109を基板101上に保持することができ、薄膜集積回路109の飛散を防止することができる。
【0073】
つまり、本発明では、薄膜集積回路を1つの単位として、隣り合う薄膜集積回路との境界に設けた材料体パターンによって材料パターンの下方に剥離層を残存させることができるため、任意の薄膜集積回路のみを基体に転置することができる。また、基体に転置する工程を経ると、複数の薄膜集積回路の各々は自動的に分断される。そのため、複数の薄膜集積回路を分断する工程を省略することもできる。
【0074】
本実施の形態は、実施の形態1と自由に組み合わせることができる。
【0075】
(実施の形態3)
本実施の形態では、薄膜集積回路の製造装置の例を示す。
【0076】
図6(A)〜図6(E)には、送り出し用キャリア401、第1基板移動用アーム400、エッチング剤導入用チャンバー405、エッチング剤導入口406、エッチング剤排出口407、第2基板移動用アーム408、ベルトコンベア410、フィルムの送り出し用ロール411、巻き取り用ロール412、フィルム送り出し用ロール413、アライメント装置414を示す。
【0077】
図6(A)に示すように、剥離層を除去する前の状態の薄膜集積回路を含む層は、送り出し用キャリア401から送り出し用エレベータ402を用いて搬送される。このとき、剥離層により薄膜集積回路を含む層は固定され、ばらばらに分離することなく基板を移動することができる。なお、この段階での基板は、剥離層に達する多数の穴が形成され、さらに隣り合う薄膜集積回路間の境界に材料体が設けられている。
【0078】
そして図6(B)に示すように、第1基板移動用アーム400を用いて、薄膜集積回路を含む層が形成されている絶縁基板100を挟み込んで持ち上げ、図6(C)に示すエッチング剤導入用チャンバー405へ設置する。また絶縁基板100に形成された薄膜集積回路を下方からすくい上げ、チャンバー405の下部へ絶縁基板100を端から入れることもできる。すなわち、絶縁基板100をチャンバー405へ設置を可能とする手段であれば、第1基板移動用アーム400に限定されない。
【0079】
この状態で、エッチング剤導入口406からエッチング剤を導入し、エッチング剤排出口407から排出する。エッチング剤は、材料体に阻害されつつ、剥離層に達する多数の穴を通って、剥離層を部分的、即ち、薄膜集積回路と重なる剥離層を除去して空洞を形成する。
【0080】
剥離層の部分的な除去を行った後、第2基板移動用アーム408により図6(E)に示す装置場所に基板を移動させる。このとき、材料体により残存した剥離層により薄膜集積回路を含む層は固定され、ばらばらに分離することなく基板を移動することができる。
【0081】
その後、フィルムの送り出し用ロール411から送り出される、接着面を備えるフィルム、例えばスコッチテープ、タックウェルテープ(極薄片面テープ)、ダブルタックテープ(極薄両面テープ)を極薄フィルムへ貼り合わせたもの等に基板を押し付けることによって、薄膜集積回路のみを転置させる。このとき、接着面を備えるフィルムの接着強度は、材料体が設けられた領域、即ち剥離層が残存している領域の接着強度より高くなるようにする。また、転置と同時に個々の薄膜集積回路の切り離しが行われる。なお、図6(E)は、転置後の状態を示しており、材料体が設けられた部分は転置されず、基板に残存したままとなる。
【0082】
なお接着面を備えるフィルムには、アンテナが形成されていてもよい。またアンテナの間隔と、薄膜集積回路の間隔が異なる場合、伸展性フィルムにアンテナを形成し、フィルムを引っ張りながらアンテナと薄膜集積回路を貼り合わせてもよい。
【0083】
その後、フィルム送り出し用ロール413より、保護膜として機能するフィルム(保護フィルム)、例えばラミネート加工用フィルム、スコッチテープ、タックウェルテープ(極薄片面テープ)、ダブルタックテープ(極薄両面テープ)を極薄フィルムへ貼り合わせたもの等が送り出される。これらの保護フィルムは、エッチングガスに対する耐性を有し、熱耐性が強いことが望まれる。そしてアライメント装置414、例えばCCDカメラにより、貼り合わせのアライメントを制御し、薄膜集積回路に保護フィルムを貼り合わせる。
【0084】
最後に、巻き取り用ロール412に完成した薄膜集積回路が巻き取られる。
【0085】
その後、物品へ実装するときに薄膜集積回路を切断する。そのため、巻き取り用ロール412に巻き取られた状態で薄膜集積回路の移動、又は取引を行なうことができる。その結果、5mm四方(25mm2)以下、好ましくは0.3mm四方(0.09mm2)〜4mm四方(16mm2)の微少な薄膜集積回路が、ばらばらに分離することなく、簡便な作製、移動、又は取引を行なうことができる。
【0086】
本実施の形態は、実施の形態1または実施の形態2と自由に組み合わせることができる。
【0087】
(実施の形態4)
本実施の形態では実施の形態3で示した製造装置とは異なる製造装置を示す。実施の形態3では基板を第2基板移動用アームで押し付ける例であったが、本実施の形態ではロールを用いる。
【0088】
図7には、送り出し用キャリア1201、送り出し用エレベータ1202、ベルトコンベア1203、転置用ローラー1204、フィルムの送り出し用ロール1205、取り出し用キャリア1206、取り出し用エレベータ1207、ローラー1208a、1208b、1208c、1208d、動作評価用装置1209、フィルム送り出し用ロール1210、アライメント装置1211、巻き取り用ロール1212を示す。なおフィルムの送り出し用ロール1205からは、薄膜集積回路の上面に対して接着面を備えるもの、所謂テープが送り出される。
【0089】
図7に示したように、剥離層が選択的除去された薄膜集積回路を有する基板は、送り出し用キャリア1201から搬送され、ベルトコンベア1203上に配置される。そしてベルトコンベア1203で運ばれた基板は、接着面を備える転置用ローラー1204に押しつけられ、薄膜集積回路のみが転置される。このような転置用ローラー1204は、シリコン系樹脂、又はフッ素系樹脂により形成することができる。具体的には、シリコーンゴム、パーフロロエラストマー、フルオンアフラス、テフロン(登録商標)ゴム等により形成することができる。特に、パーフロロエラストマー、フルオンアフラスは、耐熱性、耐薬品性の高く好ましい。
【0090】
このとき、転置用ローラー1204の接着強度は、材料体が設けられた領域、即ち剥離層が残存している領域の接着強度より高くなるように設定する。そして、基板から薄膜集積回路のみを転置し、基板1100はそのままベルトコンベア1203により移動する。
【0091】
その後フィルムの送り出し用ロール1205から、接着面を備えるフィルム、例えばスコッチテープ、タックウェルテープ(極薄片面テープ)、ダブルタックテープ(極薄両面テープ)を極薄フィルムへ貼り合わせたもの等が送り出される。これらのフィルムは、エッチングガスに対する耐性を有し、熱耐性が強いことが望まれる。そして、ローラー1208aにより、転置された薄膜集積回路に接着面を備えるフィルムを貼り合わせることができる。
【0092】
なお接着面を備えるフィルムには、アンテナが形成されていてもよい。その場合、ローラー1208aの近傍にアライメント装置を設けるとよい。またアンテナの間隔と、薄膜集積回路の間隔が異なる場合、伸展性フィルムにアンテナを形成し、フィルムを引っ張りながらアンテナと薄膜集積回路を貼り合わせてもよい。
【0093】
フィルムが貼り合わされた薄膜集積回路は、ローラー1208b等により、動作評価用装置1209を通過する。このとき薄膜集積回路の動作を確認することができる。例えば、動作評価用装置としてリーダ\ライタ装置を用い、アンテナが実装された薄膜集積回路が搬送されてくると、所定の信号を記録し、当該信号を返信するか否かによって動作を確認することができる。
【0094】
このとき例えば、7300×9200mm2のガラス基板を用いて薄膜集積回路を形成すると、1mm四方のIDタグが約672000個作製することができるため、動作確認は、ランダムに選択された薄膜集積回路に対して行なう。
【0095】
その後、保護フィルム送り出し用ロール1210より、保護膜として機能するフィルム(保護フィルム)、例えばラミネート加工用フィルム、スコッチテープ、タックウェルテープ(極薄片面テープ)、ダブルタックテープ(極薄両面テープ)を極薄フィルムへ貼り合わせたもの等が送り出される。これらの保護フィルムは、エッチングガスに対する耐性を有し、熱耐性が強いことが望まれる。そしてアライメント装置1211、例えばCCDカメラにより、貼り合わせのアライメントを制御し、薄膜集積回路に保護フィルムを貼り合わせる。
【0096】
最後に、巻き取り用ロール1212に完成した薄膜集積回路が巻き取られる。
【0097】
その後、物品へ実装するときに薄膜集積回路を個々に切断する。そのため、巻き取り用ロール1212に巻き取られた状態で薄膜集積回路の移動、又は取引を行なうことができる。その結果、5mm四方(25mm2)以下、好ましくは0.3mm四方(0.09mm2)〜4mm四方(16mm2)の微少な薄膜集積回路がばらばらに分離することなく、簡便な作製、移動、又は取引を行なうことができる。
【0098】
本実施の形態は、実施の形態1乃至3のいずれか一と自由に組み合わせることができる。
【0099】
(実施の形態5)
本発明により作製される薄膜集積回路は、複数の素子と、アンテナとして機能する導電層とを有する。複数の素子とは、例えば、薄膜トランジスタ、容量素子、抵抗素子、ダイオード等に相当する。
【0100】
薄膜集積回路210は、非接触でデータを交信する機能を有し、当該薄膜集積回路210が含む複数の素子は様々な回路を構成する。例えば、電源回路211、クロック発生回路212、データ復調/変調回路213、制御回路214、インターフェイス回路215、メモリ216、データバス217、アンテナ(アンテナコイルともよぶ)218等を有する(図8参照)。
【0101】
電源回路211は、アンテナ218から入力された交流信号を基に、上記の各回路に供給する各種電源を生成する回路である。クロック発生回路212は、アンテナ218から入力された交流信号を基に、上記の各回路に供給する各種クロックを生成する回路である。データ復調/変調回路213は、リーダライタ219と交信するデータを復調/変調する機能を有する。制御回路214は、例えば、中央処理ユニット(CPU、Central Processing Unit)やマイクロプロセッサ(MPU、MicroProcessor Unit)等に相当し、他の回路を制御する機能を有する。アンテナ218は、電磁界或いは電波の送受信を行う機能を有する。リーダライタ219は、薄膜集積回路との交信、制御及びそのデータに関する処理を制御する。
【0102】
なお、薄膜集積回路が構成する回路は上記構成に制約されず、例えば、電源電圧のリミッタ回路や暗号処理専用ハードウエアといった他の構成要素を追加した構成であってもよい。
【0103】
本実施の形態は、実施の形態1乃至4のいずれか一と自由に組み合わせることができる。
【0104】
(実施の形態6)
本発明により作製される薄膜集積回路の用途は広範にわたるが、例えば、紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、証書類(運転免許証や住民票等、図9(A)参照)、包装用容器類(包装紙やボトル等、図9(B)参照)、記録媒体(DVDソフトやビデオテープ等、図9(C)参照)、乗物類(自転車等、図9(D)参照)、身の回り品(鞄や眼鏡等、図9(E)参照)、食品類、衣類、生活用品類、電子機器等に設けて使用することができる。電子機器とは、液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装置(単にテレビ、テレビ受像機、テレビジョン受像機とも呼ぶ)及び携帯電話等を指す。
【0105】
本発明により薄膜集積回路を非常に薄くすることができるため、証書類(運転免許証や住民票等、図9(A)参照)の写真と重ねて薄膜集積回路210を配置することができ、有用である。
【0106】
なお、薄膜集積回路は、物品の表面に貼ったり、物品に埋め込んだりして、物品に固定される。例えば、本なら紙に埋め込んだり、有機樹脂からなるパッケージなら当該有機樹脂に埋め込んだりするとよい。紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、証書類等に薄膜集積回路を設けることにより、偽造を防止することができる。また、包装用容器類、記録媒体、身の回り品、食品類、衣類、生活用品類、電子機器等に薄膜集積回路を設けることにより、検品システムやレンタル店のシステムなどの効率化を図ることができる。乗物類に薄膜集積回路を設けることにより、偽造や盗難を防止することができる。
【0107】
また、薄膜集積回路を、物の管理や流通のシステムに応用することで、システムの高機能化を図ることができる。例えば、表示部294を含む携帯端末の側面にリーダライタ295を設けて、物品297の側面に薄膜集積回路296を設ける場合が挙げられる(図10(A)参照)。この場合、リーダライタ295に薄膜集積回路296をかざすと、表示部294に物品297の原材料や原産地、流通過程の履歴等の情報が表示されるシステムになっている。また、別の例として、ベルトコンベアの脇にリーダライタ295を設ける場合が挙げられる(図10(B)参照)。この場合、物品297の検品を簡単に行うことができる。
【0108】
本実施の形態は、実施の形態1乃至5のいずれか一と自由に組み合わせることができる。
【0109】
(実施の形態6)
本実施の形態では、アンテナを露出したまま剥離、転写を行って半導体素子を形成する例を図11を用いて説明する。なお、実施の形態1とは第2の絶縁膜を形成しない以外は同じプロセスであるため詳細な説明は省略する。
【0110】
まず、絶縁表面を有する基板上に剥離層を形成する。剥離層は、珪素を含む層をスパッタリング法やプラズマCVD法等の公知の方法により形成する。
【0111】
次いで、無機絶縁膜からなる絶縁膜312aを形成する。次いで、絶縁膜312aを下地膜として半導体素子を含む層312bを形成する。最後にアルミニウムを主成分とする材料でアンテナ314を形成する。このアンテナ314は三フッ化塩素(ClF3)に耐えることができるため、その上に絶縁膜を形成する必要がない。また、絶縁膜を設けない分、信号の送受信を行いやすくなる。
【0112】
なお、素子群313aは、アンテナ314を除く部分、複数のTFTを含んでおり、最終的には素子群313aとTFTに接続されたアンテナとで一つのデバイスとなる。
【0113】
次いで、マスクを用いてエッチングを行う。このエッチング工程でTFTやアンテナ314が設けられた領域以外に、剥離層に達する開口部を選択的に形成して、剥離層の一部を露出させる。
【0114】
次いで、スクリーン印刷法または液滴吐出法により材料体を形成する。
【0115】
次いで、剥離層を除去するエッチング剤を開口部に導入して、剥離層を部分的に除去して材料体と重なる領域の剥離層を残存させる。
【0116】
次に、第1の接着性合成樹脂フィルム318と第1の基材フィルム317との積層からなるラミネートフィルムに対して、素子群313aをラミネート法により熱圧着させて、素子群313aを基板から剥離する。ここでは、ポリエチレン(10μm)とポリエチレンフィルム(20μm)との積層で形成されたラミネートフィルム(トータル厚さ30μm)を用いる。
【0117】
次いで、第2の接着性合成樹脂フィルム319と第2の基材フィルム320との積層からなるラミネートフィルムに対して、素子群313aをラミネート法により熱圧着(約100℃程度)させて封止を行う。ここでも、ポリエチレン(10μm)とポリエチレンフィルム(20μm)との積層で形成されたラミネートフィルム(トータル厚さ30μm)を用いる。
【0118】
最後に、個々に分断を行って図11の状態を得ることができる。ラミネートフィルムとアンテナとは直接接しており、間に他の材料層を有していない。こうして、2枚のラミネートフィルム(30μm)で挟まれた非常に厚さの薄い半導体装置(合計膜厚は第1の素子群の厚さ(3μm以下)+60μm)を提供することができる。
【0119】
本実施の形態は、実施の形態1乃至5のいずれか一と自由に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明により、600mm×720mm、680mm×880mm、1000mm×1200mm、1100mm×1250mm、1150mm×1300mm、またはこれら以上の基板サイズのガラス基板上に小さな多数の電子部品素子を搭載し、個別に切断して製品とするマトリックスタイプ(多数個取りタイプ)の製造方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の薄膜集積回路の作製方法を説明する断面図。
【図2】本発明の薄膜集積回路の作製方法を説明する断面図。
【図3】本発明の薄膜集積回路の作製方法を説明する上面図。
【図4】本発明の薄膜集積回路の作製方法を説明する断面図。
【図5】本発明の薄膜集積回路の作製方法を説明する上面図。
【図6】薄膜集積回路の製造装置を示した図である。
【図7】薄膜集積回路の製造装置を示した図である。
【図8】薄膜集積回路を説明する図。
【図9】薄膜集積回路の使用形態について説明する図。
【図10】薄膜集積回路の使用形態について説明する図。
【図11】本発明の薄膜集積回路を説明する断面図。
【符号の説明】
【0122】
10:基板
11a:剥離層
11b:残存した剥離層
12a:絶縁膜
12b:半導体素子を含む層
13a:第1の素子群
13b:第1の素子群
15:開口部(穴または溝)
16:材料体
17:第1の基材フィルム
18:第1の接着性合成樹脂
19:第2の基材フィルム
20:第2の接着性合成樹脂


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁表面を有する基板上に剥離層を形成し、
前記剥離層上に第1部分及び第2部分を含む層を形成し、
前記第1部分及び前記第2部分を含む層に対して前記剥離層に達する開口を形成し、
前記第1の部分と前記第2の部分の間に位置する第3部分に材料体を形成し、
前記開口にフッ化ハロゲンを含む気体又は液体を導入して、前記剥離層を選択的に除去し、且つ、前記第3部分と重なる前記剥離層の一部を残存させ、
絶縁表面を有する基板から前記第1部分及び前記第2部分を切り離すことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、前記第1部分及び前記第2部分は、それぞれ半導体素子を少なくとも一つ有していることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項3】
絶縁表面を有する基板上に剥離層を形成し、
前記剥離層上に第1の薄膜集積回路及び第2の薄膜集積回路を含む層を形成し、
前記第1の薄膜集積回路及び前記第2の薄膜集積回路を含む層に対して前記剥離層に達する開口を形成し、
前記第1の薄膜集積回路と前記第2の薄膜集積回路の境界上の少なくとも一部に材料体を形成し、
前記開口にフッ化ハロゲンを含む気体又は液体を導入して、前記剥離層を選択的に除去して、前記材料体の下方に前記剥離層の一部を残存させ、
絶縁表面を有する基板から前記第1の薄膜集積回路及び前記第2の薄膜集積回路を切り離すことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一において、前記開口は、穴または溝であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一において、前記材料体の上面形状は、前記基板の一辺と平行な直線形状、または前記薄膜集積回路を囲む格子形状であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一において、前記材料体は、スクリーン印刷法または液滴吐出法により得られることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一において、前記材料体は、フッ化ハロゲンを含む気体又は液体と化学反応しない材料であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項8】
絶縁表面を有する基板上に剥離層を形成する第1の工程と、
前記剥離層上に複数の薄膜集積回路を含む層を形成する第2の工程と、
前記複数の薄膜集積回路を含む層に対して前記剥離層に達する多数の穴または多数の溝を形成する第3の工程と、
隣り合う薄膜集積回路の境界上の少なくとも一部に材料体を形成する第4の工程と、
前記多数の穴または多数の溝にフッ化ハロゲンを含む気体又は液体を導入し、前記剥離層を選択的に除去して、前記材料体の下方のみに前記剥離層の一部を残存させる第5の工程と、
前記薄膜集積回路を、接着面を備える基体へ転置する第6の工程と、
前記薄膜集積回路を個々に又は各組ごとに分断する第7の工程と、を有することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項9】
第1のフィルムと、第2のフィルムとで封止された半導体装置であり、
前記第1のフィルムと前記第2のフィルムとの間に、第1の絶縁膜と、該第1の絶縁膜上に半導体素子を含む層と、該半導体素子を含む層を覆う第2の絶縁膜とを有し、
前記第1のフィルムは、前記第1の絶縁膜と接し、且つ、前記第2のフィルムは前記第2の絶縁膜と接していることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
第1のフィルムと、第2のフィルムとで封止された半導体装置であり、
前記第1のフィルムと前記第2のフィルムとの間に、第1の絶縁膜と、該第1の絶縁膜上に半導体素子およびアンテナを含む層と、該半導体素子およびアンテナを含む層を覆う第2の絶縁膜とを有し、
前記第1のフィルムは、前記第1の絶縁膜と接し、且つ、前記第2のフィルムは前記第2の絶縁膜と接していることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
第1のフィルムと、第2のフィルムとで封止された半導体装置であり、
前記第1のフィルムと前記第2のフィルムとの間に、第1の絶縁膜と、該第1の絶縁膜上に半導体素子を含む層と、半導体素子を含む層上にアンテナと、を有し、
前記第1のフィルムは、前記第1の絶縁膜と接し、且つ、前記第2のフィルムは前記アンテナと接していることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれか一において、前記第1のフィルムは積層構造を有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれか一において、前記第2のフィルムは積層構造を有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
請求項9乃至13のいずれか一において、前記第1の絶縁膜は、窒化珪素または酸化珪素を主成分とする無機絶縁膜であることを特徴とする半導体装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−49859(P2006−49859A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189573(P2005−189573)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】