説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】2枚のシリコンウエハを重ね合わせて接着し、2枚のシリコンウエハのそれぞれに形成されたバンプ電極同士を電気的に接続する半導体装置において、2枚のシリコンウエハの接着面のボイドを抑制する。
【解決手段】シリコンウエハ10Aとシリコンウエハ10Bとの接着面には、埋め込み導電膜21の表面に形成された窪み22に起因する空洞23が形成される。この空洞23の端部は、シリコンウエハ10A、10Bの接着面の外周部まで延在している。これにより、2枚のシリコンウエハ10A、10Bの接着面に閉じ込められたエアーが空洞23を通じて外部に抜けるので、接着面のボイドの発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造技術に関し、特に、バンプ電極を介して複数枚の半導体基板同士を電気的に接続する半導体装置およびその製造に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の小型化、高性能化を達成する方法の一つとして、単結晶シリコンからなる半導体基板(以下、シリコン基板という)を積層し、微細な電極配線を使ってシリコン基板同士を電気的に接続する実装技術が発展している。
【0003】
上記した実装技術のうち、最近注目されている手法として、バンプ電極と呼ばれるシリコン基板同士を接続する微細な電極、およびシリコン貫通電極(Through Silicon Via)と呼ばれるシリコン基板を貫通する電極を使用して、複数枚のシリコン基板に形成された集積回路同士を電気的に接続する手法がある。
【0004】
上記の手法を採用した半導体装置の場合、シリコン基板に加わる熱や衝撃による応力によって、シリコン基板同士を接続するバンプ電極の接続信頼性が劣化する。そのため、バンプ電極の周囲を樹脂などの絶縁体で封止することによってバンプ電極を保護し、バンプ電極の接続信頼性を確保する技術が必要不可欠となっている。
【0005】
バンプ電極の周囲を樹脂で封止する方法の一つに先塗布方式がある。これは、バンプ電極を形成した2枚のシリコン基板(例えばシリコンウエハ)同士を接着する工程に先立って、各シリコン基板上にエポキシ樹脂に代表される熱硬化性樹脂を塗布し、その後、2枚のシリコン基板同士を加熱圧着することにより、バンプ電極同士を電気的に接続する方式である。
【0006】
しかし、バンプ電極を形成したシリコン基板上に樹脂を塗布した後、シリコン基板同士を加熱圧着してバンプ電極同士を接続する上記の先塗布方式の場合、バンプ電極の接続面に付着した樹脂が加熱圧着時にバンプ電極同士の隙間に入り込むことがある。これにより、バンプ電極間の接触抵抗が高くなったり、さらにはバンプ電極間が非接触になるなど、バンプ電極の接続信頼性が低下するという問題が生じる。
【0007】
そこで、バンプ電極の接続面に樹脂が入り込む不具合をなくすため、バンプ電極を覆う樹脂の一部を除去して接続面を露出させ、バンプ電極同士の接続と樹脂同士の接着とを同時に行う手法がいくつか提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1(特開2003−188343号公報)には、バンプ電極を形成したLSIチップの主面にバンプ電極の高さよりも厚い樹脂を塗布した後、バンプ電極の頭部が露出するまで樹脂を研磨する手法が開示されている。これにより、バンプ電極の接続面に樹脂が介在することなく、2枚のLSIチップ同士の接続(バンプ電極同士の接続および樹脂同士の接着)が可能となる。以下、特許文献1に記載された手法を従来例1と呼ぶ。
【0009】
しかし、上記従来例1の場合、樹脂の接着面を平坦に研磨することが困難であることから、LSIチップ同士の接続工程において、樹脂同士の接着面にエアーが閉じ込められ、ボイドになるという問題がある。
【0010】
そこで、特許文献2(特開2008−078419号公報)では、各バンプ電極の周囲の樹脂に溝を形成し、この溝同士を互いに連結してシリコン基板の端部まで繋ぐことにより、2枚のシリコン基板の間に閉じ込められたエアーを溝を通じて外部に逃がす手法を提案している。以下、特許文献2に記載された手法を従来例2と呼ぶことにする。
【0011】
図22は、上記従来技術2における接着工程前のシリコンウエハ30Aの主面を示す要部平面図である。図22において、破線で示すスクライブラインSLは、シリコンウエハ30Aをダイシングして複数枚のシリコンチップに個片化する位置を示している。この構造は、シリコンウエハ30Aの主面に柱状のバンプ電極31を形成した後、樹脂32を塗布し、フォトリソグラフィおよびエッチング技術を用いてバンプ電極31の周辺の樹脂32を除去することにより形成される。バンプ電極31の周辺の樹脂32を除去して形成した溝33は互いに繋がっており、溝33の端部はシリコンウエハ30Aの外周部まで延在している。
【0012】
図23は、上記従来例2における接着工程後の構造を示す要部断面図である。第1のシリコンウエハ30Aの主面には、バンプ電極31とその周囲を囲む樹脂32とが形成されており、両者の間には溝33が形成されている。同様に、第2のシリコンウエハ30Bの主面には、バンプ電極31とその周囲を囲む樹脂32とが形成されており、両者の間には溝33が形成されている。従って、第1のシリコンウエハ30Aの主面と第2のシリコンウエハ30Bの主面とを対向させて両者を接着すると、バンプ電極31の周囲にはエアー抜き用の空洞34が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−188343号公報
【特許文献2】特開2008−078419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
2枚のシリコンウエハのそれぞれに形成されたバンプ電極同士の接続と樹脂同士の接着とを同時に行う際、あらかじめバンプ電極周辺の樹脂を除去して溝を形成する上記従来例2は、次のような課題を有している。
【0015】
第1に、バンプ電極の周囲がシリコンウエハの端部まで繋がった溝で囲まれているため、シリコンウエハの接着後の洗浄工程において、溝の内部に薬液が浸入する。そのため、バンプ電極が薬液に接触して腐食を引き起こし、バンプ電極同士の接触抵抗が上昇してしまう。また、溝の内部に入り込んだエアーによってバンプ電極の表面が酸化されるため、バンプ電極同士の接触抵抗がさらに上昇する。
【0016】
第2に、シリコンウエハの主面にバンプ電極を形成した後、樹脂を塗布し、フォトリソグラフィおよびエッチング技術を用いてバンプ電極の周囲の樹脂を除去することによって溝を形成するので、工程数が多くなり、生産性が悪い。
【0017】
本発明は、従来技術が有していた上記課題を解決しようとするものであり、シリコン基板間のボイドを抑制する効果を発揮しながら、生産性良くバンプ電極および封止用樹脂を形成し、信頼性の高いシリコン基板同士の接着を実現することを目的とする。
【0018】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0020】
(1)本発明の一態様である半導体装置は、主面に集積回路および前記集積回路に電気的に接続された第1電極が形成された第1基板と、主面に第2電極が形成された第2基板とを積層し、前記第1基板の前記主面と前記第2基板の前記主面とを接着することによって、前記第1電極と前記第2電極とを電気的に接続した半導体装置であって、
前記第1基板の前記主面に第1絶縁膜が形成され、
前記第1絶縁膜の第1領域に形成された第1バンプ開口部の内部に前記第1電極が形成され、
前記第1絶縁膜の第2領域に形成された第1溝開口部の内部に、前記第1電極と同一の材料で構成された第1導電膜が形成され、
前記第1電極の表面の高さは、前記第1絶縁膜の表面の高さと同一であり、
前記第1導電膜の表面には、その表面の高さが前記第1絶縁膜の表面の高さよりも低い窪みが形成され、
前記第1溝開口部の端部は、前記第1基板の外周部まで延在しているものである。
【0021】
(2)本発明の他の態様である半導体装置は、半導体基板の一面に第1絶縁膜が形成され、前記第1絶縁膜の第1領域に形成された第1バンプ開口部の内部に前記第1電極が形成され、前記第1絶縁膜の第2領域に形成された第1溝開口部の内部に、前記第1電極と同一の材料で構成された第1導電膜が形成され、前記第1電極の表面の高さは、前記第1絶縁膜の表面の高さと同一であり、前記第1導電膜の表面には、その表面の高さが前記第1絶縁膜の表面の高さよりも低い窪みが形成され、前記第1溝開口部の端部は、前記第1基板の外周部まで延在しているものである。
【発明の効果】
【0022】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0023】
(1)上記した本発明の一態様によれば、第1基板と第2基板の接着面には、第1溝開口部に埋め込まれた第1導電膜の表面の窪みに起因する空洞が形成される。これにより、上記接着面に閉じ込められたエアーが空洞を通じて外部に抜けるので、ボイドの発生を抑制することができる。
【0024】
(2)上記した本発明の他の態様によれば、この半導体基板の一面と他の基板の一面とを対向させて両者を接着した場合、両者の接着面には、半導体基板の第1溝開口部に埋め込まれた第1導電膜の表面の窪みに起因する空洞が形成される。これにより、上記接着面に閉じ込められたエアーが空洞を通じて外部に抜けるので、ボイドの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態による半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図2】図1に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図3】感光性樹脂膜に形成されたバンプ開口部および溝開口部の平面レイアウトを示すシリコンウエハの平面図である。
【図4】図3の一部を示す拡大平面図である。
【図5】図2に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図6】図5に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図7】図6に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図8】図7に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図9】図8に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図10】図9に続く半導体装置の製造方法を示す要部断面図である。
【図11】本発明の半導体装置の別例を示す要部断面図である。
【図12】(a)は、本発明の半導体装置の超音波深傷写真、(b)は、比較例1の超音波深傷写真である。
【図13】本発明の半導体装置の別例を示す拡大平面図である。
【図14】本発明の半導体装置の別例を示す拡大平面図である。
【図15】本発明の半導体装置の別例を示す要部断面図である。
【図16】本発明の半導体装置の別例を示す要部断面図である。
【図17】本発明の半導体装置の別例を示す要部断面図である。
【図18】本発明の半導体装置の別例を示す要部断面図である。
【図19】本発明の半導体装置の別例を示す要部断面図である。
【図20】本発明の半導体装置の別例を示す要部断面図である。
【図21】本発明の半導体装置の別例を示す要部断面図である。
【図22】従来技術における接着工程前のシリコンウエハの主面を示す要部平面図である。
【図23】従来技術における接着工程後の構造を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、実施の形態では、特に必要なときを除き、同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。さらに、実施の形態を説明する図面においては、構成を分かり易くするために、平面図であってもハッチングを付す場合や、断面図であってもハッチングを省略する場合がある。
【0027】
本実施の形態の半導体装置は、主面に複数のバンプ電極およびそれらの周囲を囲む樹脂を形成した2枚のシリコンウエハを接着し、それぞれのシリコンウエハに形成された集積回路同士をバンプ電極を介して電気的に接続した積層型の半導体装置である。
【0028】
以下、図1〜図10を参照しながら、本実施の形態の半導体装置の製造方法を工程順に説明する。
【0029】
まず、図1に示すように、第1のシリコンウエハ10Aの主面にスピンコータを用いて感光性樹脂膜11を塗布した後、感光性樹脂膜11をプリベークする。感光性樹脂膜11は、例えばポリベンゾオキサゾール(PBO)前駆体を主成分とする絶縁材料からなる。また、シリコンウエハ10Aは、いわゆる前工程が完了したウエハであり、その所定の領域には半導体素子およびそれらを接続する配線などからなる集積回路が形成されている。なお、図1には、シリコンウエハ10Aに形成された配線の一部(配線12)のみを示し、半導体素子や層間絶縁膜などの図示は省略する。
【0030】
次に、上記感光性樹脂膜11をi線ステッパなどにより露光し、続いてアルカリ現像液などで現像する。これにより、図2に示すように、配線12の上部の感光性樹脂膜11にバンプ開口部13を形成する。また、バンプ開口部13から所定の距離だけ離れた領域の感光性樹脂膜11に溝開口部14を形成する。ここで、溝開口部14の幅は、バンプ開口部13の直径よりも大きい。本実施の形態では、例えばバンプ開口部13の直径を5μmとし、溝開口部14の幅を50μmとした。その後、感光性樹脂膜11をポストベークすることによって完全硬化させる。硬化後の感光性樹脂膜11の厚さは、例えば5μmである。
【0031】
図3は、感光性樹脂膜11に形成されたバンプ開口部13および溝開口部14の平面レイアウトを示すシリコンウエハ10Aの平面図、図4は、図3の一部(二点鎖線で囲んだ矩形の領域)を示す拡大平面図である。
【0032】
図3および図4に示すように、溝開口部14は、シリコンウエハ10AのスクライブラインSLに沿って格子状に形成されている。また、溝開口部14は、互いに連結されており、かつそれらの端部は、シリコンウエハ10Aの外周部まで延在している。一方、バンプ開口部13は、溝開口部14によって囲まれた矩形の領域内においてアレイ状に形成されている。
【0033】
次に、図5に示すように、感光性樹脂膜11の上面と、バンプ開口部13および溝開口部14のそれぞれの内部とにスパッタリング法で膜厚70nm程度のTiN(窒化チタン)膜からなるバリア金属膜15を堆積する。バリア金属膜15は、後の工程でバンプ開口部13および溝開口部14の内部に埋め込むCu膜が感光性樹脂膜11内に拡散するのを防ぐために形成する。
【0034】
次に、図6に示すように、バリア金属膜15の上部にスパッタリング法で膜厚100nm程度のCuシード膜16を堆積した後、図7に示すように、Cuシード膜16の上部に電解メッキ法でCu膜17を堆積する。このとき、Cu膜17の膜厚は、バンプ開口部13の内部を完全に埋め込み、かつ溝開口部14の内部を完全に埋め込まないような膜厚とする。本実施の形態では、Cu膜17の膜厚を約3μmとした。
【0035】
次に、図8に示すように、化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)法を用いて感光性樹脂膜11の上部のCu膜17、Cuシード膜16およびバリア金属膜15をこの順に研磨し、感光性樹脂膜11の上面を露出させる。このとき、Cu膜17とCuシード膜16の研磨にはCuスラリーを用い、バリア金属膜15の研磨にはバリアスラリーを用いる。そして、バンプ開口部13に埋め込まれたCu膜17の上面と感光性樹脂膜11の上面との間に段差がなくなるまで研磨を行い、平坦な接着面を形成する。
【0036】
ここまでの工程により、バンプ開口部13の内部には、Cu膜17、Cuシード膜16およびバリア金属膜15からなるバンプ電極20が形成される。また、溝開口部14の内部には、Cu膜17、Cuシード膜16およびバリア金属膜15からなる埋め込み導電膜21が形成される。
【0037】
前述したように、溝開口部14の内部のCu膜17は、溝開口部14の内部を完全に埋め込まないような膜厚で堆積されている。そのため、溝開口部14の内部に形成された埋め込み導電膜21の表面には、感光性樹脂膜11の表面よりも低い窪み22が形成される。
【0038】
また、前述したように、感光性樹脂膜11に形成された溝開口部14は、互いに連結されており、かつそれらの端部は、シリコンウエハ10Aの外周部まで延在している。従って、埋め込み導電膜21の表面に形成された窪み22も互いに連結されており、かつそれらの端部は、シリコンウエハ10Aの外周部まで延在している。
【0039】
次に、図9に示すように、所定の領域に集積回路が形成された第2のシリコンウエハ10Bを用意し、このシリコンウエハ10Bに対して上記図1〜図8と同様の処理を施す。すなわち、第2のシリコンウエハ10B上の感光性樹脂膜11にバンプ開口部13および溝開口部14を形成した後、バンプ開口部13内にバンプ電極20を形成する。また、溝開口部14内には、表面に窪み22を有する埋め込み導電膜21を形成する。
【0040】
次に、図10に示すように、上記2枚のシリコンウエハ10A、10Bを重ね合わせて加熱・圧着し、2枚のシリコンウエハ10A、10Bのそれぞれに形成されたバンプ電極20同士の電気的接続と、感光性樹脂膜11同士の接着とを同時に行うことにより、本実施の形態の半導体装置が完成する。
【0041】
上記のようにして製造された半導体装置において、シリコンウエハ10Aとシリコンウエハ10Bとの接着面には、埋め込み導電膜21の表面に形成された窪み22に起因する空洞23が形成される。前述したように、埋め込み導電膜21の表面に形成された窪み22は、互いに連結されており、かつそれらの端部は、シリコンウエハ10A、10Bの外周部まで延在している。従って、2枚のシリコンウエハ10A、10Bの接着面に形成された空洞23も互いに連結されており、かつそれらの端部は、シリコンウエハ10A、10Bの接着面の外周部まで延在している。
【0042】
なお、図10は、2枚のシリコンウエハ10A、10Bの間に合わせずれがないときの例を示している。しかし、埋め込み導電膜21の幅はバンプ電極20の直径よりも十分に大きいため、図11に示すように、シリコンウエハ10Aのバンプ電極20とシリコンウエハ10Bのバンプ電極20とが接触する範囲内の合わせずれであれば、接着面に空洞23を形成することができる。
【0043】
上記した本実施の形態の半導体装置と、感光性樹脂膜11に溝開口部14を形成しないことを除いては、製造工程およびレイアウトに差異のない半導体装置(比較例1)につき、超音波深傷装置を用いて2枚のシリコンウエハ10A、10Bの接着面のボイド評価を行った。
【0044】
図12(a)は、直径200mmのシリコンウエハ10A、10Bを接着した本実施の形態の半導体装置の超音波深傷写真である。また、図12(b)は、直径200mmのシリコンウエハ10A、10Bを接着した比較例1の超音波深傷写真である。図12(a)、(b)において、接着面の白くムラになっている領域がボイドの発生した領域を示している。
【0045】
上記ボイド評価によれば、シリコンウエハ10A、10Bの接着面に空洞23を有しない比較例1では、接着面の48パーセントの領域にボイドが発生した。これに対し、接着面に空洞23を有する本実施の形態では、10パーセント未満の領域にしかボイドが発生しなかった。
【0046】
これにより、2枚のシリコンウエハ10A、10Bの接着面に空洞23を形成した場合には、接着面に閉じ込められたエアーが空洞23を通じて外部に抜けるので、ボイドの発生を抑制できることが判明した。
【0047】
次に、本実施の形態の半導体装置、およびバンプ電極31の周囲にエアー抜き用の空洞34を形成した従来例2(図22、図23参照)について電気特性を評価した。その結果、本実施の形態の半導体装置は、従来例2に比べて、バンプ電極20同士の接触抵抗が15パーセント程度低いことが判明した。
【0048】
これは、バンプ電極31の周囲に空洞34を形成した従来例2の場合、外部から空洞34内に入り込んだエアーや薬液によってバンプ電極31の表面が酸化されたり、腐食したりするのに対し、バンプ電極20の周囲が感光性樹脂膜11で覆われ、バンプ電極20と空洞23とが分離されている本実施の形態では、このような恐れがないためである。
【0049】
このように、本実施の形態によれば、2枚のシリコンウエハ10A、10Bを重ね合わせて接着し、2枚のシリコンウエハ10A、10Bのそれぞれに形成されたバンプ電極20同士を電気的に接続する半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0050】
また、従来例2では、シリコンウエハ30Aの主面にバンプ電極31を形成した後、樹脂32を塗布し、さらにバンプ電極31の周囲の樹脂32を除去することによってエアー抜き用の空洞34を形成する。これに対し、本実施の形態では、シリコンウエハ10Aの主面に感光性樹脂膜11を塗布し、続いて感光性樹脂膜11に形成したバンプ開口部13内にバンプ電極20を形成する工程で同時に窪み22が形成されるので、従来例2に比べて工程数が少ないという利点がある。
【0051】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0052】
前記実施の形態では、2枚のシリコンウエハ10A、10Bを接着した積層型の半導体装置について説明したが、2枚のシリコンウエハ10A、10Bを接着した後、スクライブラインSL(図4参照)に沿ってシリコンウエハ10A、10Bを同時にダイシングすることにより、2枚のシリコンチップが接着された積層型の半導体装置とすることもできる。
【0053】
前記実施の形態では、シリコンウエハ10A、10BのスクライブラインSLに沿って溝開口部14を配置したが、溝開口部14の数やレイアウトは適宜変更することができる。また、溝開口部14の平面形状は格子形状に限定されるものではなく、例えば曲線や四角形以外の多角形であってもよい。さらに、溝開口部14の幅も適宜変更することができる。シリコンウエハ10A、10BのスクライブラインSLに沿って溝開口部14を配置した場合は、バンプ電極20のレイアウトが溝開口部14によって制約されないという利点がある。
【0054】
例えば図13は、スクライブラインSLだけでなく、他の領域にも溝開口部14を配置した例であり、図14は、スクライブラインSLの両側に溝開口部14を配置した例である。
【0055】
図13に示す例では、前記実施の形態に比べて溝開口部14の数が増えるので、2枚のシリコンウエハ10A、10Bの接着面に閉じ込められたエアーをより確実に外部に逃がすことができる。また、図14に示す例では、シリコンウエハ10A、10Bをダイシングしてシリコンチップに個片化した場合、バンプ電極20が溝開口部14内の埋め込み導電膜21によって囲まれた構造になる。従って、外部からシリコンチップ内部への水分の浸入をより確実に抑制することができる。
【0056】
前記実施の形態では、2枚のシリコンウエハ10A、10Bに同一のレイアウトで溝開口部14を形成したが、例えば図15および図16に示すように、溝開口部14の位置や幅がシリコンウエハ10Aとシリコンウエハ10Bとで異なっていてもよい。ただし、2枚のシリコンウエハ10A、10Bに形成する溝開口部14の幅は、いずれもバンプ開口部13の直径より大きくする。
【0057】
また、図17に示すように、溝開口部14内に形成された埋め込み導電膜21の窪み22の深さがシリコンウエハ10Aとシリコンウエハ10Bとで異なっていてもよい。さらに、図18に示すように、シリコンウエハ10A、10Bのいずれか一方のみに溝開口部14を形成し、他方には溝開口部14を形成しなくてもよい。
【0058】
前記実施の形態では、2枚のシリコンウエハ10A、10Bのそれぞれの主面に感光性樹脂膜11、バンプ電極20および埋め込み導電膜21を形成したが、例えば図19に示すように、一方のシリコンウエハ10Bには感光性樹脂膜11、バンプ電極20および埋め込み導電膜21を形成せず、もう一方のシリコンウエハ10Aのバンプ電極20とシリコンウエハ10Bの配線12とを直接接続してもよい。また、図20に示すように、貫通電極24を形成したシリコンウエハ10Cを用意し、シリコンウエハ10Aのバンプ電極20とシリコンウエハ10Cの貫通電極24とを直接接続してもよい。
【0059】
図19および図20に示す例では、一方のシリコンウエハ10Aのみに感光性樹脂膜11、バンプ電極20および埋め込み導電膜21を形成するので、半導体装置の工程数を大幅に削減することができる。
【0060】
また、図19に示す例では、シリコンウエハ10Bに代えて配線基板を使用してもよく、図20に示す例では、シリコンウエハ10Cに代えて配線基板を使用してもよい。
【0061】
前記実施の形態では、2枚のシリコンウエハ10A、10Bを接着した半導体装置について説明したが、3枚以上のシリコンウエハを接着した半導体装置に適用することもできる。例えば、図21は、貫通電極24を形成したシリコンウエハ10Cの一方の面にシリコンウエハ10Aを接着し、他方の面にシリコンウエハ10Bを接着した半導体装置の例である。この場合も、シリコンウエハ10Cに代えて配線基板を使用することができる。
【0062】
前記実施の形態では、シリコンウエハ10Aの主面に塗布した感光性樹脂膜11にバンプ開口部13および溝開口部14を形成したが、感光性樹脂膜11に代えて、他の絶縁膜、例えば非感光性樹脂膜や酸化シリコン膜を使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、バンプ電極を介して複数の半導体基板同士を電気的に接続する半導体装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
10A、10B、10C シリコンウエハ
11 感光性樹脂膜
12 配線
13 バンプ開口部
14 溝開口部
15 バリア金属膜
16 Cuシード膜
17 Cu膜
20 バンプ電極
21 埋め込み導電膜
22 窪み
23 空洞
24 貫通電極
30A、30B シリコンウエハ
31 バンプ電極
32 樹脂
33 溝
34 空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に第1電極が形成された第1基板と、一面に第2電極が形成された第2基板とを積層し、前記第1基板の前記一面と前記第2基板の前記一面とを接着することによって、前記第1電極と前記第2電極とを電気的に接続した半導体装置であって、
前記第1基板の前記一面に第1絶縁膜が形成され、
前記第1絶縁膜の第1領域に形成された第1バンプ開口部の内部に前記第1電極が形成され、
前記第1絶縁膜の第2領域に形成された第1溝開口部の内部に、前記第1電極と同一の材料で構成された第1導電膜が形成され、
前記第1電極の表面の高さは、前記第1絶縁膜の表面の高さと同一であり、
前記第1導電膜の表面には、その表面の高さが前記第1絶縁膜の表面の高さよりも低い窪みが形成され、
前記第1溝開口部の端部は、前記第1基板の外周部まで延在していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1基板は、半導体ウエハまたは半導体チップであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1溝開口部は、前記半導体ウエハのスクライブラインに沿って格子状に形成されていることを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1溝開口部の幅は、前記第1バンプ開口部の直径よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1絶縁膜は、感光性樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2基板の前記一面に第2絶縁膜が形成され、
前記第2絶縁膜の第1領域に形成された第2バンプ開口部の内部に前記第2電極が形成され、
前記第2絶縁膜の第2領域に形成された第2溝開口部の内部に、前記第2電極と同一の材料で構成された第2導電膜が形成され、
前記第2電極の表面の高さは、前記第2絶縁膜の表面の高さと同一であり、
前記第2導電膜の表面には、その表面の高さが前記第2絶縁膜の表面の高さよりも低い窪みが形成され、
前記第2溝開口部の端部は、前記第2基板の外周部まで延在していることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2溝開口部の幅は、前記第2バンプ開口部の直径よりも大きいことを特徴とする請求項6記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2絶縁膜は、感光性樹脂からなることを特徴とする請求項6記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2基板の前記第2電極は、前記第2基板の前記一面から他面に貫通する貫通電極であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2基板は、配線基板であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項11】
一面に第1電極が形成された第1基板と、一面に第2電極が形成された第2基板とを積層し、前記第1基板の前記一面と前記第2基板の前記一面とを接着することによって、前記第1電極と前記第2電極とを電気的に接続する半導体装置の製造方法であって、
前記第1基板の前記一面に前記第1電極を形成する工程は、
(a)前記第1基板の前記一面に第1絶縁膜を形成する工程、
(b)前記第1絶縁膜の第1領域に第1バンプ開口部を形成し、前記第1絶縁膜の第2領域に、その端部が前記第1基板の外周部まで延在する第1溝開口部を形成する工程、
(c)前記第1絶縁膜の上面と、前記第1バンプ開口部および前記第1溝開口部のそれぞれ内部とに、前記第1バンプ開口部の内部を完全に埋め込み、かつ前記第1溝開口部の内部を完全に埋め込まないような膜厚を有する第1導電膜を形成する工程、
(d)化学的機械研磨法を用い、前記第1バンプ開口部に埋め込まれた前記第1導電膜の上面と、前記第1絶縁膜の上面との間に段差がなくなるまで前記第1導電膜を研磨することによって、前記第1バンプ開口部の内部に前記第1導電膜からなる前記第1電極を形成する工程、
を含み、
前記(d)工程では、前記第1溝開口部に埋め込まれた前記第1導電膜の表面に、その表面の高さが前記第1絶縁膜の表面の高さよりも低い窪みが形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1基板は、半導体ウエハまたは半導体チップであることを特徴とする請求項11記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1溝開口部は、前記半導体ウエハのスクライブラインに沿って格子状に形成されていることを特徴とする請求項12記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記第1溝開口部の幅は、前記第1バンプ開口部の直径よりも大きいことを特徴とする請求項11記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記第1絶縁膜は、感光性樹脂からなることを特徴とする請求項11記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記第2基板の前記一面に前記第2電極を形成する工程は、
(a)前記第2基板の前記一面に第2絶縁膜を形成する工程、
(b)前記第2絶縁膜の第1領域に第2バンプ開口部を形成し、前記第2絶縁膜の第2領域に、その端部が前記第2基板の外周部まで延在する第2溝開口部を形成する工程、
(c)前記第2絶縁膜の上面と、前記第2バンプ開口部および前記第2溝開口部のそれぞれ内部とに、前記第2バンプ開口部の内部を完全に埋め込み、かつ前記第2溝開口部の内部を完全に埋め込まないような膜厚を有する第2導電膜を形成する工程、
(d)化学的機械研磨法を用い、前記第2バンプ開口部に埋め込まれた前記第2導電膜の上面と、前記第2絶縁膜の上面との間に段差がなくなるまで前記第2導電膜を研磨することによって、前記第2バンプ開口部の内部に前記第2導電膜からなる前記第2電極を形成する工程、
を含み、
前記(d)工程では、前記第2溝開口部に埋め込まれた前記第2導電膜の表面に、その表面の高さが前記第2絶縁膜の表面の高さよりも低い窪みが形成されることを特徴とする請求項11記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記第2溝開口部の幅は、前記第2バンプ開口部の直径よりも大きいことを特徴とする請求項16記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記第2絶縁膜は、感光性樹脂からなることを特徴とする請求項16記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
半導体基板の一面に第1絶縁膜が形成され、
前記第1絶縁膜の第1領域に形成された第1バンプ開口部の内部に前記第1電極が形成され、
前記第1絶縁膜の第2領域に形成された第1溝開口部の内部に、前記第1電極と同一の材料で構成された第1導電膜が形成され、
前記第1電極の表面の高さは、前記第1絶縁膜の表面の高さと同一であり、
前記第1導電膜の表面には、その表面の高さが前記第1絶縁膜の表面の高さよりも低い窪みが形成され、
前記第1溝開口部の端部は、前記第1基板の外周部まで延在していることを特徴とする半導体装置。
【請求項20】
前記第1溝開口部の幅は、前記第1バンプ開口部の直径よりも大きいことを特徴とする請求項19記載の半導体装置。
【請求項21】
(a)半導体基板の一面に第1絶縁膜を形成する工程、
(b)前記第1絶縁膜の第1領域に第1バンプ開口部を形成し、前記第1絶縁膜の第2領域に、その端部が前記半導体基板の外周部まで延在する第1溝開口部を形成する工程、
(c)前記第1絶縁膜の上面と、前記第1バンプ開口部および前記第1溝開口部のそれぞれ内部とに、前記第1バンプ開口部の内部を完全に埋め込み、かつ前記第1溝開口部の内部を完全に埋め込まないような膜厚を有する第1導電膜を形成する工程、
(d)化学的機械研磨法を用い、前記第1バンプ開口部に埋め込まれた前記第1導電膜の上面と、前記第1絶縁膜の上面との間に段差がなくなるまで前記第1導電膜を研磨することによって、前記第1バンプ開口部の内部に前記第1導電膜からなる前記第1電極を形成する工程、
を含み、
前記(d)工程では、前記第1溝開口部に埋め込まれた前記第1導電膜の表面に、その表面の高さが前記第1絶縁膜の表面の高さよりも低い窪みが形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項22】
前記第1溝開口部の幅は、前記第1バンプ開口部の直径よりも大きいことを特徴とする請求項21記載の半導体装置の製造方法。
【請求項23】
前記第1絶縁膜は、感光性樹脂からなることを特徴とする請求項21記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−69585(P2012−69585A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211078(P2010−211078)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、立体構造新機能集積回路(ドリームチップ)技術開発 委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)