説明

半導体装置ならびに半導体ダイの実装方法

【課題】金属ナノインクを用いて半導体ダイと基板を接合した半導体装置において、接合部の信頼性を向上させる。
【解決手段】基板21と各半導体ダイ11の各電極12の上に形成され、その表面に微小な凹凸と細孔とを有する金属バンプ13,23と、半導体ダイ11の各金属バンプ13と半導体ダイ11が実装される基板21に形成された各金属バンプ23との間に形成され、金属ナノインク中の金属ナノ粒子を焼結させて各金属バンプの間を接合する接合層31とを備える。金属バンプ13,23は、金属ナノインク中の金属ナノ粒子を焼結させたものであり、金属バンプ13,23と接合層31とは、同一種類の金属ナノ粒子を焼結させたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノインクを用いて電極を接合した半導体装置の構造及び半導体ダイの実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ダイなどの電子部品の電極と回路基板上の回路パターンの電極との接合には、半導体ダイなどの電子部品の電極パッド上に金属バンプを形成し、半導体ダイを反転させて基板の電極に金属バンプを押し付けると共に超音波加振を行って接合するフリップチップボンディングが行われることが多い。しかし、この接合方法は、金属バンプの高さにバラツキがある場合、全ての電極と金属バンプとを接合するためには金属バンプを変形させて高さのバラツキを吸収させるため、半導体ダイに大きな力を加えるので半導体ダイが損傷を受ける場合があった。そこで、金属バンプを加圧しないで各電極を接合する方法として金属の超微粒子を含む金属インクを用いる色々な方法が提案されている。
【0003】
特許文献1には、回路基板の端子電極上に銀の超微粉末を溶剤に分散させて調製した銀微粒子インクのボールを形成し、回路基板の端子電極上に形成したボール上にフェースダウン法で半導体素子の電極を接合した後に、銀微粒子インク中のトルエン等の溶剤を蒸発させた後、100から250℃の温度で焼成して半導体素子と回路基板とを電気的に接合する方法が提案されている。
【0004】
特許文献2には、平均直径が100nm以下の金属からなる超微粒子を有機系の溶媒中に分散させてなる金属ナノインクを用いて半導体素子の金属層と金属基板とを接合する方法が開示されている。この接合方法は、半導体素子の金属層と金属基板と金属ナノインクに含まれる金属が、金、銀、白金、銅、ニッケル、クロム、鉄、鉛、コバルトのうちのいずれかの金属、またはこれらの金属のうちの少なくとも一種を含む合金、またはこれら金属もしくは合金の混合物からなり、加熱、加圧、あるいはそれらの組合せにより前記溶媒を揮発させることによって、前記超微粒子が凝集することで形成される接合層を介在させて、半導体素子の金属層と金属基板とを接合する方法である。
【0005】
【特許文献1】特開平9−326416号公報
【特許文献2】特開2006−202938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載されているように、金属ナノインクを用いて半導体素子の電極等を接合する場合には、接合面を加圧すると共に、200から300℃程度の温度に保持することが必要である。加熱は金属ナノインクに含まれている溶剤や分散剤を揮発させることによって除去し、金属のナノ粒子同士を接触させ、比較的低温での金属溶融による接合を行うために必要なものである。また、加圧は、金属の超微粒子が融合して接合金属を形成する際に、金属の超微粒子の表面をコーティングしている有機物である分散剤の熱分解の際に発生する二酸化炭素化等のガスを外部に押し出すことによって接合金属内部の空洞を減少させ、接合強度を大きくすることに寄与するものと考えられている。
【0007】
しかし、特許文献1に記載された従来技術のように、基板に金属ナノインクのバンプを形成し、基板と半導体ダイとの間に金属ナノインクを挟みこんで加熱して、焼結させる場合には、金属ナノインクに含まれている分散剤の熱分解の際に発生するガスは、基板と半導体ダイとに挟まれた金属ナノインクの円筒状の側面からしか外部に逃げることができず、焼結した接合金属がポーラスなものとなってしまい焼結性が劣るという問題があった。
【0008】
引用文献2に記載されているように加熱焼結の際に接合面を加圧することによって、ガスを外面に排出させることができるものの、金属ナノインクは液状であり、金属ナノインクによって形成したバンプは、金属ナノ粒子同士が接触、融合して接合金属を形成するまでは変形しやすく、これに圧力を加えた場合には、バンプが電極の表面に薄く広がってしまう。このため、加圧によってガスを外部に押し出そうとすると、金属ナノインクが接合しようとする電極の表面からはみ出してしまい、場合によっては隣接する電極の間に広がって隣接する電極同士を電気的に接続してしまい、製品の不良の原因となることがある。
【0009】
また、半導体が動作する場合には、半導体の発熱によって半導体ダイと基板との間に熱膨張差が発生し、半導体ダイの電極と基板の電極とを接合している接合金属に熱応力がかかる。接合金属の高さが小さい程、接合金属の横方向の弾性変形量が小さくなるので、横方向への弾性変形によって吸収することのできる熱膨張差が小さくなる。この結果、接合金属の高さが低い程、接合金属に発生する熱応力は大きくなる。従って、半導体動作の際の熱応力を低減させるためには、接合金属にある程度の高さがあることが必要となってくる。しかし、液状の金属ナノインクを用いてバンプを形成する場合、1つのバンプの高さはあまり高くできないことから、半導体ダイと基板との接合金属の高さを高くするには半導体ダイと基板の両方にバンプを形成して、このバンプ同士を接合することが必要となる。ところが、焼結前のバンプは変形しやすいため、半導体ダイを反転させる際に半導体ダイの表面に形成したバンプを損傷してしまう場合があり、接合の信頼性が低下するという問題があった。
【0010】
本発明は、金属ナノインクを用いて半導体ダイの電極と基板および/または半導体ダイの電極同士を接合した半導体装置において、接合部の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の半導体装置は、基板上に半導体ダイが実装された半導体装置であって、基板と半導体ダイのいずれか一方または両方の各電極上に形成され、その表面に微小な凹凸と細孔とを有する金属バンプと、各金属バンプの間または各金属バンプと各電極との間に形成され、金属ナノインク中の金属ナノ粒子を焼結させて各金属バンプの間または各金属バンプと各電極とを接合する接合層と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の半導体装置において、基板上に実装された半導体ダイの上に実装される少なくとも1つの他の半導体ダイを含み、金属バンプは、半導体ダイと各他の半導体ダイの対向するいずれか一方または両方の各電極上に形成されていること、としても好適であるし、金属バンプは、金属ナノインク中の金属ナノ粒子を焼結させたものであること、としても好適であるし、金属バンプと接合層とは、同一種類の金属ナノ粒子を焼結させたものであること、としても好適である。
【0013】
本発明の半導体ダイの実装方法は、基板上に半導体ダイを実装する半導体ダイの実装方法であって、表面に微小な凹凸と細孔とを有する金属バンプを基板と半導体ダイのいずれか一方または両方の各電極上に形成するバンプ形成工程と、各金属バンプのいずれか一方又は両方の表面に金属ナノインクを塗布するインク塗布工程と、半導体ダイをピックアップして反転させ、金属ナノインクを介して各金属バンプ同士または各金属バンプと各電極とを重ね合わせる重ね合わせ工程と、金属ナノインクを加熱して金属ナノインク中の金属ナノ粒子を焼結させ、各金属バンプの間または各金属バンプと各電極とを接合する接合工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の半導ダイの実装方法において、バンプ形成工程は、基板上に実装された半導体ダイと少なくとも1つの他の半導体ダイのいずれか一方または両方の各電極上に金属バンプを形成し、重ね合わせ工程は、他の半導体ダイをピックアップして反転させ、金属ナノインクを介して各金属バンプ同士または各金属バンプと各電極とを重ね合わせること、としても好適であるし、金属ナノインクを塗布する前にプラズマによって各金属バンプと各電極のいずれか一方または両方の表面をクリーニングするクリーニング工程を含み、バンプ形成工程は、各電極上に金属ナノインクの微液滴を射出した後、金属ナノインクを加熱して金属ナノインク中の金属ナノ粒子を焼結させること、としても好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、金属ナノインクを用いて半導体ダイの電極と基板および/または半導体ダイの電極同士を接合した半導体装置において、接合部の信頼性を向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施形態の半導体装置10は、基板21の上に半導体ダイ11が実装されているものである。基板21と半導体ダイ11の各電極12,22の上には、その表面に微小な凹凸14,24と細孔15,25とを有する金属バンプ13,23が形成され、半導体ダイ11の各金属バンプ13と基板21に形成された各金属バンプ23との間には金属ナノインク中の金属ナノ粒子を焼結させて各金属バンプ13,23の間を接合する接合層31が形成されている。半導体ダイ11の電極12と基板21の電極22との間の高さは10から15μmとなっている。
【0017】
図2に示すように、本半導体装置10の各金属バンプ13,23は、銀の金属ナノ粒子を含む金属ナノインクを焼結して形成したもので、内部に多くの空洞を含んでおり、いくつかの内部の空洞は各金属バンプ13,23の表面に達して細孔15,25を形成している。また、表面には多くの微小な凹凸が形成されている。表面の微小な凹凸は金属ナノインクに含まれる分散剤が焼結の際に熱分解して発生する二酸化炭素化等のガスが各金属バンプ13,23の表面近くに移動してくることによって形成され、内部の空洞は、外表面に移動できなかったガスが内部に閉じ込められて成形されたものである。空洞以外の部分は金属ナノインクに含まれている銀の金属ナノ粒子が結合した金属の銀となっている。
【0018】
図2に示すように、各金属バンプ13,23の間には、各金属バンプ13,23と同様、銀の金属ナノ粒子を含む金属ナノインクが焼結した接合層31が形成されている。接合層31は、微小な凹凸14,24や細孔15,25を有する各金属バンプ13,23の表面に金属ナノインクを塗布し、その金属ナノインクを焼結させたものである。金属ナノインクは各金属バンプ13,23の各凹凸14,24や細孔15,25の中に入り込んだ後、焼結されるため、焼結した接合層31は各金属バンプ13,23の微小な凹凸14,24や細孔15,25の中に食い込んでいる。このため、接合層31は各金属バンプ13,23を構成する金属と同様の銀の共晶によって金属的に接合されると共に、各金属バンプ13,23の微小な凹凸14,24や細孔15,25に入り込んで焼結した接合層31の部分とが機械的に結合しているため、大きな結合強度を備えている。
【0019】
以下、図3から図5を参照して、本実施形態の半導体装置10の組立方法について説明する。図3(a)から(c)に示すように、半導体ダイ11及び基板21の各電極12,22の上に、金属ナノインクの微液滴42を射出ノズル41から射出してバンプ13a,23aを形成する。バンプ13a,23aは5〜10μm程度の高さの台状である。金属ナノインクは、銀を微細化した金属ナノ粒子の表面に分散剤をコーティングしたものをインク状のバインダーの中に分散させたものである。銀の金属ナノ粒子のほかに、金、銅、白金、パラジウム、ニッケル、アルミニウムなどの金属ナノ粒子を用いることができる。金属ナノ粒子の表面にコーティングする分散剤としては、アルキルアミン、アルカンチオール、アルカンジオール、などを用いることができる。またインク状のバインダーは、室温付近では容易に蒸散することのない比較的に高沸点な非極性溶剤あるいは低極性溶剤、例えば、テルピネオール、ミネラルスピリット、キシレン、トルエン、テトラデカン、ドデカン等の分散溶媒の中に有機バインダーとして機能する熱硬化性樹脂成分を含有させたものを用いることができる。射出ノズル41はインクジェットプリンタのヘッドなどを応用することとしてもよい。
【0020】
表面に形成されたバンプ13a,23aはまだ固まっておらず変形しやすい状態である。このように各電極12,22の上にバンプ13a,23aが形成された半導体ダイ11、基板12は図示しない移動装置によって加熱炉50の中に搬入される。加熱炉50は、ケーシング51の内部に半導体ダイ11、基板12を保持するステージ52と、ヒータ54とを備えている。また、ステージ52の内部にもヒータ53が設けられている。加熱炉50の中に搬入された半導体ダイ11、基板12はその温度が150から250℃まで加熱される。この加熱によって金属ナノインクの中のバインダーが飛散し、分散剤が熱分解し、金属ナノ粒子同士が集合して焼結される。この際、熱分解した分散剤から発生する二酸化炭素等のガスは表面に向かって移動し、表面から外部に放出されていく。バンプ13a,23aは、各電極12,22に接している面以外の面は大気に接しており、バンプ13a,23aと大気との接触面積は特許文献1に記載された従来技術のようにバンプが半導体ダイと基板との間に挟まれて円筒形の面のみが大気に接している状態よりも非常に大きくなっている。このため、焼結した後の各金属バンプ13,23の内部に残存するボイドも少なく、バンプ13a,23aの焼結性が向上する。
【0021】
一方、各バンプ13a,23aの表面全体からガスが大気に逃げるが、表面からガスの逃げた部分には内部から金属ナノ粒子が入り込めないので、表面からガスが逃げた後は微小な窪みが表面に残り微小な凹凸14,24を形成する。また、ガスが表面より少し内部から逃げた後は細孔15,25となる。この細孔15,25は表面近くにできる場合もあるし、内部の空洞と連通して深い細孔15,25となる場合もある。
【0022】
焼結の際にはいろいろな有機物がガスと共にバンプ13a,23aの表面に運ばれてくる。これらの有機物のうち、分解されてガスとして飛散しないものは、金属バンプ13,23の表面に残り、焼結後の各金属バンプ13,23の表面には図3に示すように、膜状に有機物の付着物17,27が残る。
【0023】
半導体ダイ11と基板12の各電極12,22の上に金属バンプ13,23を形成したら、図4(a)から(d)に示すように、半導体ダイ11を基板12の上に重ね合わせる。
【0024】
図4(a)から(d)に示すように、コレット55によって半導体ダイ11の金属バンプ13の形成されている面をピックアップし、コレット55のアーム56を軸57の周りに反転させて、半導体ダイ11を反転させる。この際、半導体ダイ11の電極12の上に形成された金属バンプ13は加熱、焼結によって固体の金属となっていることから、コレット55が金属バンプ13に触れた場合でも、金属バンプ13は大きな損傷を受けることがない。このため、反転のために特別な装置を用いなくとも簡単に金属バンプ13が形成された半導体ダイ11を反転させることができる。
【0025】
反転させた半導体ダイ11は電極12と反対側の面が表面に出ている。そして、別のコレット58によって半導体ダイ11の電極12と反対側の面を吸着し、コレット55の吸着を開放することによって、コレット55からコレット58に半導体ダイ11を受け渡す。半導体ダイ11の受け渡しが終了したら、コレット58をマイクロプラズマトーチ47の配置されているクリーニング位置まで移動させ、半導体ダイ11の金属バンプ13に向かってマイクロプラズマ49を照射する。このマイクロプラズマ49の照射によって、金属バンプ13の表面に付着している有機物の膜状の付着物17が除去され、金属の銀の表面が露出する。
【0026】
金属バンプ13の表面のクリーニングが終了したら、コレット58を金属ナノインクの射出ノズル43の配置されている塗布位置まで移動させ、射出ノズル43から金属ナノインクの微液滴44を金属バンプ13に向かって噴出させる。これによって、金属バンプ13の表面に金属ナノインクの塗膜19を形成する。
【0027】
また、基板21の金属バンプ23の上にマイクロプラズマトーチ48を移動させ、先端から金属バンプ23に向かってマイクロプラズマ49を照射して、金属バンプ23表面の有機物の膜状の付着物27を除去する。金属バンプ23の表面のクリーニングが終了したら、金属ナノインクの射出ノズル45を金属バンプ23の上に移動させ、金属ナノインクの微液滴46を金属バンプ23に向かって噴出させる。これによって、金属バンプ23の表面に金属ナノインクの塗膜29を形成する。
【0028】
半導体ダイ11の金属バンプ13のクリーニングと金属ナノインクの塗布と、基板21の金属バンプ23のクリーニングと金属ナノインクの塗布とが終了したら、コレット58に吸着された半導体ダイ11と基板12との間に例えば上下二視野カメラなどを挿入して位置を合わせた後、基板21の金属バンプ23の上に半導体ダイ11の金属バンプ13を重ね合わせる。各金属バンプ13,23を重ね合わせると、各金属バンプ13,23は金属ナノインクの塗膜19,29を介して重ねあわされる。金属ナノインクは液体であるので、各金属バンプ13,23表面の凹凸14,24及び細孔15,25の中に入り込む。基板21の金属バンプ23上に半導体ダイ11の金属バンプ13を重ね合わせると、各電極12,22の間の高さは10〜15μm程度となる。
【0029】
基板21の上に半導体ダイ11を重ね合わせた後、図5に示すように、基板21と半導体ダイ11を加圧加熱装置60の中に搬入する。加圧加熱装置60は、基板21を保持する下部保持板61と、半導体ダイ11を保持する上部保持板62を備えている。各保持板61,62は、内部に加熱器63,64を備えている。また、上部保持板62は図示しない制御部の指令によって上下に駆動することができ、加熱している間、半導体ダイ11と基板21との間隔を例えば、一定の間隔に保持し、各金属バンプ13,23の間の塗膜19,29の金属ナノインクの焼結の際の膨張を抑えることによって金属ナノインクを加圧して二酸化炭素などのガスを外部に排出しやすいようにする。加圧加熱装置60によって、150から250℃程度に加熱された塗膜19,29の金属ナノインクは焼結して各金属バンプ13,23を接合する接合層31となる。接合層は金属ナノインクの金属ナノ粒子が焼結した金属であり、各金属バンプ13,23と金属的に接合されるともに、各金属バンプ13,23の凹凸14,24や細孔15,25に入り込んで各金属バンプ13,23と機械的に接合されるので、半導体ダイ11の金属バンプ13と基板21の金属バンプ23とを強固に接合することができる。
【0030】
また、本実施形態は、特許文献1に記載された従来技術のように、半導体ダイと基板との間に挟んだ金属ナノインク全体を焼結させて半導体ダイと基板とを接続するのではなく、各金属バンプ13,23の間に介在している薄い塗膜19,29の中の金属ナノインクを焼結させることによって接合を行うことから、ボイドの発生を低く抑えることができ、焼結性を向上させることができる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態の半導体装置10は、半導体ダイ11の電極12の上と基板21の電極22の上に焼結性のよい状態でそれぞれ金属バンプ13,23を形成した後、各金属バンプ13,23の間に少量の金属ナノインクを塗布し、それを焼結することによって半導体ダイ11と基板21とを接合することから、全体的な焼結性が向上し、半導体ダイ11と基板21の各電極12,22の間を低い電気抵抗と大きな機械的強度を持って接合することができ、接合部の信頼性を向上させることができるという効果を奏する。また、本実施形態によって半導体ダイ11の実装を行う場合、半導体ダイ11の電極12の上に形成したバンプ13aを焼結して金属バンプ13とした後に半導体ダイ11の反転、重ね合わせを行うことから、半導体ダイ11の実装の途中で金属バンプ13に接触した場合でも、半導体ダイ11を支障なく接合でき、接合部の信頼性を向上させることができるという効果を奏する。また、金属バンプ13を形成した後の半導体ダイ11の取り扱いが簡便になり、特別な反転装置などを使わずに半導体ダイ11を反転、重ね合わせることができる。更に、半導体ダイ11と基板21の双方に金属バンプ13,23を形成し、この金属バンプ13,23を接合することにより半導体ダイ11と基板21との接合部の高さを高くすることができ、半導体の動作の際に接合部に加わる熱応力を低減し、接合部の信頼性を向上させることができるという効果を奏する。
【0032】
以上説明した実施形態では、金属バンプ13,23は、金属ナノインクを焼結して成形するものとして説明したが、表面に微小な凹凸と細孔が形成できれば金属ナノインクの焼結によらないで形成してもよい。例えば、各電極12,22の表面にバンプボンダによって金のバンプを形成した後、バンプ表面に強力なアルゴンプラズマを当てて表面に荒れを作ってもよいし、金属バンプの表面をエッチング或いは化学的な表面処理によって荒らしてもよい。また、本実施形態では、金属ナノインクは各金属バンプ13,23の表面に塗布することとして説明したが、いずれか一方の金属バンプ13,23の上にのみ塗布するようにしてもよい。
【0033】
次に図6を参照しながら他の実施形態について説明する。図1から図5を参照して説明した実施形態と同様の部分には同様の部号をつけて説明は省略する。図6に示すように、本実施形態の半導体装置100は、基板21の上に半導体ダイ11,111,211,311を多段に実装したものである。ここで、各半導体ダイ11,111,211,311はそれぞれ貫通電極18,118,218,318を備えており、各半導体ダイ11,111,211,311の接合は各貫通電極18,118,218,318の上に金属ナノインクによって形成した金属バンプを順次接合して接合したものである。
【0034】
接合は、基板21と一段目の半導体ダイ11とを図1から図5を参照して説明した方法によって接合し、その後、一段目の半導体ダイ11の貫通電極の上に金属ナノインクによってバンプを形成し、加熱焼結して金属バンプを成形する。二段目の半導体ダイ111の貫通電極118の上にも同様に金属バンプを形成し、各金属バンプをマイクロプラズマによってクリーニングした後、各金属バンプに金属ナノインクを塗布し、二段目の半導体ダイ111を反転させて二段目の半導体ダイ111の金属バンプを一段目の半導体ダイの金属バンプに金属ナノインクを介して重ね合わせる。そして、加圧加熱装置において金属ナノインクを焼成して二段目の半導体ダイ111を一段目の半導体ダイ11に接合する。
【0035】
以下、同様に二段目の半導体ダイ111の上に三段目の半導体ダイ211を接合し、三段目の半導体ダイ211の上に四段目の半導体ダイ311を接合していく。本実施形態は、先に説明した実施形態と同様の効果を奏する。
【0036】
次に、図7(a)から(d)を参照しながら本発明の他の実施形態について説明する。図1から図5を参照して説明した実施形態と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。図7(a)に示すように、本実施形態は、半導体ダイ11の電極12の上に金属バンプ13を形成後、図7(b)に示すように、その表面にマイクロプラズマ49を照射して金属バンプ13表面をクリーニングし、図7(c)に示すように、その表面に金属ナノインクの微液滴44を噴出させ、金属バンプ13の表面に金属ナノインクの塗膜19を形成する。また、図7(d)に示すように、基板21の電極22に向かってマイクロプラズマ49を照射して電極22の表面をクリーニングしておく。そして、図7(d)に示すように、コレット58に吸着した半導体ダイ11の位置を合わせて、半導体ダイ11の金属バンプ13を電極22の上に金属ナノインクの塗膜19を介して重ね合わせる。この後、図5に示す加圧加熱装置60の中に基板21を搬入し、加圧加熱すると塗膜19の金属ナノインクは焼結して各金属バンプ13,23を接合する接合層31となる。本実施形態は、半導体ダイ11の電極12にのみ金属バンプ13を形成して半導体ダイ11の電極12と基板21の電極22とを接続するので、先に説明した実施形態よりも簡便に半導体ダイ11の電極12と基板21の電極22とを接続することができる。
【0037】
また、本実施形態では、半導体ダイ11の電極12にのみ金属バンプ13を形成することとして説明したが、基板21の電極22にのみ金属バンプ23を形成し、金属バンプ23の表面に金属ナノインクの塗膜29を形成して半導体ダイ11の電極12と基板21の電極22とを接続するようにしても良い。また、重ね合わせの際に各金属バンプ13,23の表面に金属ナノインクを塗布するのではなく、各電極12,22に金属ナノインクを塗布して塗膜19,29を形成するようにしてもよい。更に、金属バンプ13,23の形成されていないいずれかの電極12,22のマイクロプラズマによるクリーニングを省略するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態における半導体装置の側面図である。
【図2】本発明の実施形態における半導体装置の接合部分の拡大断面図である。
【図3】本発明の実施形態における半導体装置の実装における金属バンプの形成の工程を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態における半導体装置の実装におけるクリーニングと金属ナノインクの塗布と半導体ダイの重ね合わせとを示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態における半導体装置の実装における加圧加熱装置での焼結を示す説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態における半導体装置の断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態における半導体装置の実装におけるクリーニングと金属ナノインクの塗布と半導体ダイの重ね合わせとを示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
10 半導体装置、11,111,211,311 半導体ダイ、12,22 電極、13,23 金属バンプ、13a,23a バンプ、14,24 凹凸、15,25 細孔、17,27 付着物、18,118,218,318 貫通電極、19,29 塗膜、21 基板、31 接合層、41,43,45 射出ノズル、42,44,46 微液滴、47,48 マイクロプラズマトーチ、49 マイクロプラズマ、50 加熱炉、51 ケーシング、52 ステージ、53,54 ヒータ、55,58 コレット、56 アーム、57 軸、60 加圧加熱装置、61 下部保持板、62 上部保持板、63,64 加熱器、100 半導体装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に半導体ダイが実装された半導体装置であって、
基板と半導体ダイのいずれか一方または両方の各電極上に形成され、その表面に微小な凹凸と細孔とを有する金属バンプと、
各金属バンプの間または各金属バンプと各電極との間に形成され、金属ナノインク中の金属ナノ粒子を焼結させて各金属バンプの間または各金属バンプと各電極とを接合する接合層と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置であって、
基板上に実装された半導体ダイの上に実装される少なくとも1つの他の半導体ダイを含み、
金属バンプは、半導体ダイと各他の半導体ダイの対向するいずれか一方または両方の各電極上に形成されていること、
を特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置であって、
金属バンプは、金属ナノインク中の金属ナノ粒子を焼結させたものであること、
を特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置であって、
金属バンプと接合層とは、同一種類の金属ナノ粒子を焼結させたものであること、
を特徴とする半導体装置。
【請求項5】
基板上に半導体ダイを実装する半導体ダイの実装方法であって、
表面に微小な凹凸と細孔とを有する金属バンプを基板と半導体ダイのいずれか一方または両方の各電極上に形成するバンプ形成工程と、
各金属バンプのいずれか一方または両方の表面あるいは各電極の表面に金属ナノインクを塗布するインク塗布工程と、
半導体ダイをピックアップして反転させ、金属ナノインクを介して各金属バンプ同士または各金属バンプと各電極とを重ね合わせる重ね合わせ工程と、
金属ナノインクを加熱して金属ナノインク中の金属ナノ粒子を焼結させ、各金属バンプの間または各金属バンプと各電極とを接合する接合工程と、
を有することを特徴とする半導体ダイの実装方法。
【請求項6】
請求項5に記載の半導ダイの実装方法であって、
バンプ形成工程は、基板上に実装された半導体ダイと少なくとも1つの他の半導体ダイのいずれか一方または両方の各電極上に金属バンプを形成し、
重ね合わせ工程は、他の半導体ダイをピックアップして反転させ、金属ナノインクを介して各金属バンプ同士または各金属バンプと各電極とを重ね合わせること、
を特徴とする半導体ダイの実装方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の実装方法であって、
金属ナノインクを塗布する前にプラズマによって各金属バンプと各電極のいずれか一方または両方の表面をクリーニングするクリーニング工程を含み、
バンプ形成工程は、各電極上に金属ナノインクの微液滴を射出した後、金属ナノインクを加熱して金属ナノインク中の金属ナノ粒子を焼結させること、
を特徴とする半導体ダイの実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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