説明

半導体装置の製造方法

【課題】 ワイヤボンディングの技術を用いた半導体チップの接続信頼性の向上を図る。
【解決手段】 半導体チップ15a側では、第一の接続21として、キャピラリの先端に形成したボールでボールボンディング21aを行う。半導体チップ15b側では、第二の接続22として、キャピラリの先端でワイヤを潰して圧着する熱圧着22aを行う。その後に、第二の接続22側では、キャピラリの先端にボールを形成して、ボールボンディング22bを行う。かかるボールボンディング22bを最後に行うことで、熱圧着22aの強度の強化が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造に関し、特に、ワイヤボンディングの技術を用いてその接続信頼性を高めるのに適用して有効な技術である。
【背景技術】
【0002】
以下に説明する技術は、本発明を研究、完成するに際し、本発明者によって検討されたものであり、その概要は次のとおりである。
【0003】
これまでの半導体装置の構成では、半導体チップとベース基板、あるいは半導体チップとリードフレームの電気的接続は、ワイヤボンディングによりなされている。
【0004】
半導体装置の中には、複数の半導体チップを互いに接続する構成を必要とする場合がある。かかる場合には、上記ワイヤボンディングの手法がそのまま踏襲されていた。すなわち、半導体チップの回路同士を接続するに際して、一度、ベース基板側にワイヤボンディングで電気的接続を行い、その上でベース基板側と別の半導体チップとをワイヤボンディングにより電気的に接続し、その結果として半導体チップ同士の電気的接続が行われるものである。
【0005】
一方、パッケージ内にロジックチップとメモリチップとを搭載した構成において、両者をワイヤボンディングで接続することで配線容量を少なくして、チップ間の高速なデータ転送を行えるようにした発明が、特許文献1には開示されている。
【特許文献1】特開平11−86546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、ワイヤボンディングを用いたチップ間接続においては、以下の課題があることを見出した。
【0007】
すなわち、一度ベース基板を介してチップ間を接続する方法は、確かにこれまでの接続技術をそのまま活かした技術で、技術の安定性という観点からはその接続信頼性は高い。しかし、かかる構成を採用していたのでは、その小型化が図れないという問題がある。
【0008】
一方、特許文献1には、チップ間接続をワイヤボンディングで行う構成が開示されてはいるが、しかし、ワイヤボンディングに際しての詳細な技術は示されていない。ワイヤボンディングに際しての技術的問題は、何ら説明されていない。
【0009】
そこで、本発明者は、ベース基板を介することなく直接ワイヤボンディングで複数の半導体チップを接続することについて、その構成を具体的に考えて、その問題点の洗い出しを行った。
【0010】
先ず、半導体チップ間のワイヤボンディングによる接続を、これまでのワイヤボンディングの接続技術をそのまま踏襲する形で行った場合について考えた。すなわち、第一の接続側をボールボンディングで行い、第二の接続側をキャピラリでワイヤを潰して圧着する接続の場合である。
【0011】
かかる接続方法では、ボールを使用して圧着する第一の接続側に比べて、キャピラリの先端で押し潰すようにして圧着する第二の接続側の強度が低下することが分かった。第二の接続側は、ベース基板に設けられる場合に比べて、チップ厚さ分、ワイヤ下に入り込む樹脂量が多くなり、封止樹脂の熱応力による影響が大きく出て、その分、接続信頼性が低下するのである。
【0012】
一方、これまでのワイヤボンディングの方法をそのまま踏襲するのではなく、例えば、第二の接続側では、一度ボールボンディングを打ち、その上にワイヤボンディングを行う方法も考えられる。かかる接続方法を採用すれば、確かに、ボールボンディングを先に打っておくことで、第二の接続側での圧着強度の向上は図れる。
【0013】
しかし、封止樹脂がワイヤ下に入り込む量は、ボールボンディングを打った分さらに多くなり、封止樹脂の熱応力によるダメージをより受け易くなり、やはり接続信頼性の低下が起きるという問題がある。
【0014】
本発明者は、これまでのワイヤボンディングによる接続方法を基本的に踏襲しながらも、チップ間接続におけるワイヤボンディングの接続信頼性を向上させることができないかと考えた。また、かかる対策は、上記チップ間の接続だけではなく、通常の半導体チップとベース基板、あるいはリードフレーム等との接続にも応用できるものであればなお好ましい。
【0015】
本発明の目的は、ワイヤボンディングの技術を用いた半導体チップの接続における接続信頼性の向上を図ることにある。
【0016】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0018】
すなわち、半導体チップのワイヤボンディングによる接続で、第二の接続の熱圧着後にボールボンディングを行ったり、あるいはワイヤループを下方に押し付けて曲げる等して、ワイヤ下方に入り込む封止樹脂の熱応力に対応できるようにした。
【発明の効果】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0020】
半導体チップの第二の接続側の熱圧着後にボールボンディングを打つことにより、熱圧着だけで終了させる場合よりも、ワイヤ下方に入り込む封止樹脂による熱応力に勝る接続力を確保し、その接続信頼性を高めることができる。
【0021】
半導体チップのワイヤループを押し下げて曲げることで、ワイヤ下方の樹脂量を少なくし、ワイヤ下方に入り込む封止樹脂による熱応力の影響を排除して、その接続信頼性を高めることができる。
【0022】
半導体チップのパッド同士を隣接配置して、その両方に跨ぐようにボールボンディングを行うことで、ワイヤ下方の樹脂を実質的になくして、ワイヤ下方に入り込む封止樹脂による熱応力の影響を排除し、その接続信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明に係わる半導体装置をRFモジュールに構成した様子を模式的に示す断面図である。図2(a)、(b)は、第二の接続側で、熱圧着の後にボールボンディングを打つ手順を示す部分斜視図である。図3(a)、(b)は、本発明に際して検討されたチップ間接続にワイヤボンディングを用いた場合の問題点を示す部分斜視図である。
【0025】
本発明の半導体装置10は、図1に示すように、RFモジュール10a等に構成されている。かかる半導体装置10は、次のようにして製造される。
【0026】
例えば、図1に示すように、複数枚の絶縁体板(本実施の形態では、5枚のセラミック基板11a〜11eを例示して説明する)を用意し、かかるセラミック基板11a〜11eに複数個のビア12を形成する。このビア12の内部に導電性材料、例えば銅(Cu)または銀を充填する。
【0027】
次に、各々のセラミック基板11a〜11eの表面に導電性材料、例えば銅または銀からなる表面導体パターン13を印刷する。その後、これら5枚のセラミック基板11a〜11eを順次積層し、例えば800〜900℃程度の温度で焼成することにより、図1に示すように、積層基板11を形成する。
【0028】
このようにして形成された積層基板11を洗浄した後、積層基板11の裏面に導電性材料、例えば銅または銀からなる導体ペーストを印刷する。続いて、例えば150℃以下の温度で導体ペーストを焼き固めることにより、積層基板11の裏面に裏面導体パターン14を形成する。
【0029】
さらに、図1に示すように、積層基板11の部品搭載面に、能動素子が形成された半導
体チップ15および受動素子が形成されたチップ部品16等の表面実装部品を搭載する。その後、これら表面実装部品を絶縁性の樹脂17によって覆うことにより、RFモジュール10aが完成する。尚、半導体チップ15、チップ部品16は、半田18を介して搭載されている。
【0030】
半導体チップ15は、例えば、Si−MOSFET等の電界効果トランジスタに形成されている。半導体チップ15a(15)の主面に形成された複数のパッド(ボンディングパッド、電極等とも言う)と、これに対応する積層基板11の部品搭載面に形成された表面導体パターン13と、あるいは別の半導体チップ15b(15)の主面に形成された複数のパッドとは、接合材により接続されている。ここでは、接合材には、例えば金(Au)の細線からなるワイヤボンディング19が用いられている。
【0031】
チップ部品16は、例えばコンデンサ、インダクタ、レジスタまたは空芯コイル等の受動素子に構成されている。チップ部品16の両端に形成された接続端子が、半田を介して、積層基板11の部品搭載面に形成された表面導体パターン13に接続されている。
【0032】
かかる構成の半導体装置10では、複数の半導体チップ15a、15b間のチップ間接続は、ワイヤボンディング19a(19)により行われている。かかるワイヤボンディング19aでは、半導体チップ15a側で第一の接続(1st側接続とも言う)21が、半導体チップ15b側で第二の接続(2nd側接続とも言う)22が行われる。
【0033】
第一の接続21は、図2(a)に示すように、ボールボンディング21aにより行われている。すなわち、図示はしないが、キャピラリに通されたAuワイヤ等のワイヤ先端が、ボール形成用のトーチにより溶融されてボールが形成され、かかるボールが半導体チップ15aのAl電極等のパッド20上に加熱圧着されてボールボンディング21aが行われている。
【0034】
半導体チップ15a側でボールボンディング21aを行ったキャピラリは、ワイヤを切断することなく、ワイヤループ23を作りながら半導体チップ15bのAl電極等のパッド20上にて、第二の接続22を行う。かかる第二の接続22は、図2(a)、(b)に示すように、2回の工程に分けて行われる。
【0035】
すなわち、図2(a)に示すように、第二の接続22の初めの工程では、キャピラリの先端でワイヤを潰しながら接続位置に、超音波をかけながら熱圧着22aを行う。このようにステッチボンデイングにより、キャピラリの周縁の一部分によりワイヤを圧接するのである。かかる工程で、ワイヤ切断が行われる。その後、第二の接続22では、終わりの工程として、熱圧着22a上に、ボールボンディング22bが行われる。
【0036】
熱圧着22aを行ったキャピラリはワイヤを一度切断し、その後にキャピラリ側のワイヤ先端をトーチにより溶融してボールを形成し、ボールボンディング22bを行う。このように、第二の接続22側では、同じキャピラリを用いて熱圧着22aと、ボールボンディング22bを行うこととなる。
【0037】
第二の接続22では、熱圧着22aの上にボールボンディング22bが施されるため、第二の接続22の強度は高められる。その分、接続信頼性の向上が図られることとなる。
【0038】
一方、半導体チップ15aとベースの多層に構成された積層基板11との間の接続には、通常のワイヤボンディング19bが適用されている。すなわち、半導体チップ15側ではボールボンディングが、積層基板11側では熱圧着が行われている。
【0039】
図3(a)には、今回の発明において検討されたワイヤボンディング30によるチップ間接続の場合を示した。図3(a)に示すように、半導体チップ31aの側ではボールボンディング32aによる第一の接続32が行われ、半導体チップ31bの側では熱圧着33aで第二の接続33が行われている。ワイヤボンディング30では、接合材としてAuワイヤが用いられている。
【0040】
かかる構成では、第二の接続33側がベースの積層基板11側に接続される場合とは異なり、半導体チップ31bの厚さ分、その接続高さが高くなっている。かかる構成をそのまま樹脂封止した場合には、ワイヤループ34の下方に入り込む樹脂量が多くなり、結果として、かかる封止樹脂の熱応力による影響を大きく受けることとなる。
【0041】
例えば、繰り返し行われる昇温、降温の温度サイクルによる封止樹脂の熱膨張、熱収縮に伴い、ワイヤループ34がかかる熱応力の影響を受け、最終的には熱圧着33a部分等からのワイヤ切断が起きる。
【0042】
すなわち、ボールを使用して圧着する第一の接続32側に比べて、キャピラリの先端で押し潰すようにして圧着する第二の接続33側の強度が弱くなり、接続信頼性が低下するのである。
【0043】
しかし、図2に示すように、熱圧着22aの後にボールボンディング22bが施されていれば、かかる熱圧着22a部の強度補強が行われたと同様の効果が発揮され、ワイヤループ23の下方に入り込んだ樹脂17の量が多くても、その熱応力に対応したワイヤ切断等が発生しないのである。
【0044】
(実施の形態2)
本実施の形態では、半導体チップ15bでの第二の接続22側の熱圧着22aを、ボールボンディング24の後に行うものである。すなわち、図4(a)、(b)に示すように、第二の接続22のボンディング工程では、最初にボールボンディング24を打ち、その後に熱圧着22aを行い、最後にボールボンディング22bを行うものである。半導体チップ15a側での第一の接続21は、前記実施の形態で述べたと同様、ボールボンディング21aが行われる。
【0045】
かかる構成は、図3(b)に示す今回の発明において検討されたワイヤボンディング30によるチップ間接続の場合に対応するものである。すなわち、図3(b)に示すように、半導体チップ31aの側ではボールボンディング32aによる第一の接続32が行われ、半導体チップ31bの側ではボールボンディング35の後に熱圧着33aで第二の接続33が行われている。
【0046】
かかる第二の接続33側では、一度ボールボンディング35を打ち、その上から熱圧着33aが行われているので、確かに、第二の接続33側での圧着強度の向上は図られている。しかし、ボールボンディング35を打った分、第二の接続33側の高さが高くなり、ワイヤループ34の下に入り込む樹脂量が多くなっている。そのため、熱応力のダメージを受け易くなり、接続信頼性の低下という問題が発生する。
【0047】
しかし、かかる問題は、図4(b)に示すように、第二の接続22側の最終の工程をボールボンディング22bで終了させることで熱圧着22aを補強し、ワイヤ下方に入り込む樹脂17の量が増えてもその熱応力に勝る接続力を得ることで解決することができる。
【0048】
(実施の形態3)
前記実施の形態では、ワイヤボンディング19aを半導体チップ15a、15bのチップ間接続に使用する場合を示したが、第二の接続22側をボールボンディング22bで補強する構成は、チップ間接続にのみ適用し得るものではない。
【0049】
すなわち、図5(a)、(b)に示すように、半導体チップ15とベース側となる積層基板11上のAuパッド等に構成されたパッド20とのワイヤボンディング19bにも、十分に適用できるものである。
【0050】
半導体チップ15側での接続は、ボールボンディング21aで第一の接続21を行う。第二の接続22は、積層基板11のパッド20上で行う。例えば、パッド20上での第二の接続22側を、最初に熱圧着22aで行った後に、ボールボンディング22bをその上から打てばよい。かかる構成を採用することにより、第二の接続22側での圧着強度を増すことができる。
【0051】
(実施の形態4)
前記実施の形態では、ワイヤループ23の下方に入り込む樹脂17による影響を、第二の接続22側をボールボンディング22bで強化することで対応する場合について説明した。本実施の形態ではワイヤループ23の下方に入り込む樹脂17の量を減らすことで、その対応を図るものである。
【0052】
本実施の形態の半導体装置10は、前記実施の形態1で説明したと同様にRFモジュール10a等に構成されている。半導体チップ15a、15b間のワイヤボンディング19aを除いては、図6に示すように、前記実施の形態1で説明したと同様の方法で製造される。繰り返しの説明は、省略する。
【0053】
半導体チップ15a、15bを接続するワイヤボンディング19a(19)は、図6に示すように、ワイヤループ23の形状が上から下方に押し付け曲げられた形状に構成されている。すなわちワイヤループ23には、曲げ部分40が設けられている。
【0054】
図7に、チップ間のワイヤボンディング19aの様子を拡大して示した。ワイヤループ23の下方に入り込む樹脂17の量を、ワイヤループ23を押し下げて曲げるように曲げ部分40を設けることで少なくすることができる。かかる構成を採用することで、ワイヤループ23の下方に入り込む樹脂17の熱膨張、熱収縮等の熱応力に対応した影響を抑えることができる。
【0055】
かかる構成を採用しない場合には、例えば、チップ間接続では、第二の接続22を形成する側は、ベースの積層基板11に接続する場合より、半導体チップ15bの厚み分その高さが高く設定されることとなる。そのため、ワイヤループ23の下方に入り込む樹脂量がどうしても多くなり、樹脂17の熱応力の影響を受けることとなる。
【0056】
図6に示すように、ワイヤループ23に曲げ部分40を形成することで、入り込む樹脂量を少なくして、その熱応力による影響を抑えることの有効性は、例えば、チップ間接続の第二の接続22側で顕著に確認することができる。
【0057】
かかる構成では、図8に示すように、半導体チップ15a側の第一の接続21はボールボンディング21aで行われ、半導体チップ15b側の第二の接続22は熱圧着22aで行われている。半導体チップ15a、15b間のワイヤボンディング19aには、Auワイヤ等の接合材が使用されている。
【0058】
このように、かかる構成を採用すれば、ワイヤループ23の形状のみを変更することで、半導体チップ15a、15bでのワイヤボンディング19aのボンディング技術は何ら変更することなく、これまでの方法を踏襲することができる。
【0059】
ワイヤループ23を押し下げて曲げ部分40を作る構成は、例えば、図9に示すように、ワイヤボンディング19aに使用するツールのキャピラリ50の側方に、ワイヤガイド51を設けることで行うことができる。かかるワイヤガイド51は、例えば、キャピラリ50と同様に下降することができるように、キャピラリ50に一体に設けておけばよい。
【0060】
例えば、ワイヤガイド51は、ワイヤループ23を作る際に移動するキャピラリ50の移動方向に対して、キャピラリ50の後続位置に設けられている。さらに、ワイヤガイド51は、キャピラリ50が移動する際に引きだすワイヤを、キャピラリ50の先端近くの位置で上方から押さえるように、横方向に延ばされた腕部分52の下方を通るように構成されている。
【0061】
かかる構成のキャピラリ50、ワイヤガイド51を用いて、先ず、図9に示すように、半導体チップ15a側では第一の接続21でボールボンディング21aを行う。キャピラリ50に通されたAuワイヤ等のワイヤの先端は、ボール形成用のトーチにより溶融されてボールが形成され、かかるボールが半導体チップ15aのAl電極等に構成されたパッド20上に加熱圧着されてボールボンディング21aが行われる。
【0062】
半導体チップ15a側でボールボンディング21を行ったキャピラリ50は、ワイヤを切断することなく、第一の接続21の位置より上方に持ち上げられ、さらに第二の接続22側に向けて下降することとなる。この際に、ワイヤループ23を作りながら半導体チップ15bのパッド20上で、第二の接続22が行われる。
【0063】
かかる場合に、キャピラリ50の側方にはワイヤガイド51が設けられているため、キャピラリ50に引きずられるワイヤは、ワイヤガイド51の横方向に延ばされた腕部分52の下方にガイドされて、下方に押し下げられた状態にワイヤループ23は曲げ加工されることとなる。
【0064】
ワイヤループ23は、キャピラリ50の側方に設けられたワイヤガイド51の腕部分52の下を通されているので、キャピラリ50が下降する際には、ワイヤループ23も下方に押し下げられて、曲げ部分40が形成されることとなる。これにより、ワイヤループ23の下方に入り込む樹脂量を少なく抑えることができる。その結果、ワイヤループ23の下方に入り込んだ樹脂17の熱膨張、熱収縮による熱応力の影響を小さく抑えることができる。
【0065】
かかる曲げ部分40を設けない構成では、図10に示すように、ワイヤループ23の箇所で、その下方に入り込んだ樹脂17の熱膨張、熱収縮による熱応力の影響を受け、例えばワイヤループ23に切断等のダメージ53を受けることとなる。しかし、ワイヤループ23を下方に押し下げた状態に曲げ加工することで、ワイヤループ23の下方に入り込む樹脂量を少なくすることができ、かかる問題の解消を図ることができる。
【0066】
本実施の形態では、第一の接続21はボールボンディング21aで行われ、第二の接続22は熱圧着22aで行われるが、第二の接続22側は、例えば、熱圧着22aの後にボールボンディング22bを施してもよい。さらには、ボールボンディング24、熱圧着22a、ボールボンディング22bとから、第二の接続22を構成しても構わない。
【0067】
このように構成すれば、ワイヤループ23に曲げ部分40を設けることで直接的に樹脂量を少なくし、併せてボールボンディング22bを打つことでワイヤループ23の下方に入り込む樹脂17の熱応力に対する接続強度を強化して、第二の接続22側の樹脂17による影響を抑えることができる。
【0068】
(実施の形態5)
前記実施の形態では、キャピラリ50の側方に設けたワイヤガイド51により、ワイヤループ23を下方に押し下げるように曲げ部分40を形成したが、キャピラリ50でワイヤループ23を形成した後で、上方からワイヤループ23を下方に押し下げで曲げ部分40を形成しても構わない。
【0069】
かかる構成では、半導体チップ15a側では、図11(a)に示すように、キャピラリ50によるボールボンディング21aで第一の接続21を行う。その後、キャピラリ50で、Auワイヤ等でワイヤループ23を形成しながら、半導体チップ15b側で第二の接続22を行う。
【0070】
その後、図11(b)に示すように、ワイヤボンディング19aが終了した時点で、ワイヤループ23に曲げ加工を施す。すなわち、第二の接続22が形成された後で、圧着ピン54の腕部分52をワイヤループ23に押し当てて下方に押し下げ、曲げ部分40を設ければよい。かかる構成でも、ワイヤループ23を下方に押し下げた形状に曲げ加工することができ、ワイヤループ23の下方に入り込む樹脂量を少なく抑えることができる。
【0071】
(実施の形態6)
本実施の形態では、半導体チップ15とベース側の積層基板11とのワイヤボンディング19bに、ワイヤループ23に曲げ部分40を設けた構成を適用したものである。ワイヤループ23の形状を変化させることで、ワイヤループ23の下方に入り込む樹脂量を抑え、樹脂17による熱膨張、熱収縮の影響を少なくする構成は、図12に示すように、半導体チップ15とベースの積層基板11との接続においても同様にその効果を有するものである。
【0072】
すなわち、半導体チップ15のパッド20に、ボールボンディング21aによる第一の接続21を行う。その後、積層基板11のAuパッド等のパッド20上に、ワイヤボンディング19bの第二の接続22を行う。かかる第二の接続22の際に、あるいは形成後に、実施の形態4、5等の技術を用いてワイヤループ23に曲げ部分40を設ければよい。
【0073】
かかる構成を採用することにより、これまでの構成に比べてワイヤループ23の下方に入り込む樹脂量が少なくなり、樹脂17の熱応力の影響を受けなくなり、よりその接続信頼性が向上する。
【0074】
(実施の形態7)
本実施の形態は、ワイヤループ23の下方に入り込む樹脂17を実質的になくすことで、樹脂17による影響を解消しようとするものである。前記実施の形態で示すように、半導体チップ15a、15bの接続は、これまでは、例えば、図13に示すように、全てワイヤボンディング19により接続されている。
【0075】
かかる構成では、ワイヤループ23の下方に入り込む樹脂17の熱応力による影響をさけるために、前記実施の形態で述べたように、第二の接続22側をボールボンディング22bで補強する構成を採用する必要がある。あるいは、ワイヤループ23を下方に押し下げたように曲げ部分40を構成して、直接的に下方に入り込む樹脂量を低減することでその対応を考える必要がある。
【0076】
しかし、前記実施の形態で述べた構成では、その多寡はあるものの、ワイヤループ23の下方に樹脂17が入り込むことでは共通の構成を有している。かかる構成では、樹脂種の熱膨張率等により、その熱応力は多様に変化し、その対応は複雑とならざるを得ない。
【0077】
そこで、本実施の形態では、図14に示すように、接続する半導体チップ15a、15bを隣接配置することで、ワイヤループ23の下方に入り込む樹脂17を無くす構成を採用した。これにより、樹脂17の熱応力の影響を排除することができる。併せて、隣接配置した半導体チップ15a、15bの接続するパッド60a、60b同士も隣接配置し、両パッド60a、60bに跨がるようにボールボンディング25を打つのである。
【0078】
図14に示すように、半導体チップ15a、15bの厚みは同一に構成され、ベースの積層基板11からの接着高さは同一レベルの高さに揃えられている。かかる構成の半導体チップ15a、15bは、図15に示すように、互いに接続するパッド60a、60bが隣接配置するように並べて設けられている。
【0079】
このようにして隣接配置されたパッド60a、60bの両方にかかるように、ボールボンディング25が打たれ、両パッド60a、60bが接続されている。かかる構成では、半導体チップ15a、15bは隣接配置されているので、両パッド60a、60bを接続するボールボンディング25の下方には、実質的に樹脂17が入り込まず、樹脂17の熱膨張、熱収縮等の熱応力の影響を受けることがない。
【0080】
また、隣接配置される半導体チップ15a、15bの間に、万が一にも樹脂17が入り込んでも、その熱応力に対しては、ボールボンディング25はワイヤボンディング19のワイヤのような影響を受けることがなく接続強度が安定しており、接続信頼性を確保することができる。
【0081】
かかる構成を採用するについては、これまでの半導体チップ15におけるパッド位置を、より周縁側に配置する等の対策が必要となる場合もある。
【0082】
一方、ベースの積層基板11からの設置高さが異なる半導体チップ15a、15cでは、その設置高さを揃えた状態で、ボールボンディング25を施すことが必要となる。すなわち、図16に示すように、厚い半導体チップ15a側をキャビティ61に収納して、半導体チップ15cとの高さを揃えてある。
【0083】
かかる状態で、両半導体チップ15a、15cは、ボールボンディング25により接続されている。積層基板11側と半導体チップ15a、15cとの接続は、これまでのAuワイヤ等を用いたワイヤボンディング19bが施されている。
【0084】
また、図17に示す場合には、深さの異なるキャビティ62、63に半導体チップ15a、15cを設け、両者の高さを揃えた状態で、ボールボンディング25が打たれている。積層基板11側とは、半導体チップ15a、15cは、Auワイヤ等を用いてワイヤボンディング19bで接続されている。
【0085】
かかる構成では、半導体チップ間の接続を、ワイヤボンディングで使用するキャピラリを利用してボールボンディングにより行えるので、新たな装置導入も必要なく、既存の設備で対応することができ、極めて有利な構成である。
【0086】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0087】
前記実施の形態では、第二の接続側にボールボンディングを打つことと、ワイヤループの曲げ部分を設けることと、接続する半導体チップを隣接配置して両接続をボールボンディングで行うこととは、それぞれ独立して説明したが、かかる構成は互いに併用しても構わない。すなわち、第二の接続にボールボンディングを用いる構成とワイヤループに曲げ部分を設ける構成とを併用したり、あるいは隣接配置した半導体チップの接続をボールボンディングで行うとともに、基板側と半導体チップ側との接続にワイヤループに曲げ部分を設ける構成を採用する等しても構わない。
【0088】
前記実施の形態では、半導体装置としてRFモジュールに構成した場合を例に挙げて説明したが、例えば、パワーモジュール等のマルチチップ型半導体装置に対しても当然に適用できるものである。さらには、半導体装置をモジュールに構成しないで、複数の半導体チップを搭載するものであっても構わない。
【0089】
前記実施の形態では、ベースとなる基板側を積層基板に構成した場合を例に挙げて説明したが、かかるベース基板は、積層基板ではなくても勿論構わない。
【0090】
本発明は、半導体装置の製造方法として把握したが、例えば、ワイヤボンディング方法、ワイヤボンディングを用いた接続方法、チップ間接続方法等と把握することもできるものである。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の技術は、半導体チップの接続への封止樹脂の影響を抑制するのに有効に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の一実施の形態の半導体装置をRFモジュールに構成した場合を模式的に示す一実施例の断面図である。
【図2】(a)、(b)は、第二の接続側で、熱圧着の後にボールボンディングを行う手順を示す部分斜視図である。
【図3】(a)、(b)は、本発明に際して検討されたチップ間接続にワイヤボンディングを用いた場合の問題点を示す部分斜視図である。
【図4】(a)、(b)は、第二の接続側で、ボールボンディング、熱圧着、ボールボンディングの順にボンディングを行う手順を示す部分斜視図である。
【図5】(a)、(b)は、半導体チップとベース基板とのワイヤボンディングに第二の接続側でボールボンディングを行った様子を模式的に示す部分斜視図である。
【図6】本発明の一実施の形態の半導体装置をRFモジュールに構成した場合を模式的に示す一実施例の断面図である。
【図7】ワイヤループの形状を変化させる様子を模式的に拡大して示す部分断面図である。
【図8】ワイヤループの形状を変化させる様子を模式的に拡大して示す部分斜視図である。
【図9】ワイヤループの曲げを行う方法を模式的に示す部分斜視図である。
【図10】ワイヤループの下方に入り込む樹脂の影響を示す部分断面説明図である。
【図11】(a)、(b)は、ワイヤループの曲げを行う変形例の方法を模式的に示す部分斜視図である。
【図12】ワイヤループの形状を変化させる構成の適用の変形例を模式的に拡大して示す部分斜視図である。
【図13】本発明に際して検討されたチップ間接続にワイヤボンディングを用いた場合の問題点を示す部分断面図である。
【図14】チップ間接続にボールボンディングを用いて行う構成を模式的に示す断面図である。
【図15】チップ間接続にボールボンディングを用いて行う構成を模式的に示す部分斜視図である。
【図16】チップ間接続にボールボンディングを用いて行う構成を模式的に示す部分断面図である。
【図17】チップ間接続にボールボンディングを用いて行う構成を模式的に示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0093】
10 半導体装置
10a RFモジュール
11 積層基板
11a セラミック基板
11b セラミック基板
11c セラミック基板
11d セラミック基板
11e セラミック基板
12 ビア
13 表面導体パターン
14 裏面導体パターン
15 半導体チップ
15a 半導体チップ
15b 半導体チップ
15c 半導体チップ
16 チップ部品
17 樹脂
18 半田
19 ワイヤボンディング
19a ワイヤボンディング
19b ワイヤボンディング
20 パッド
21 第一の接続
21a ボールボンディング
22 第二の接続
22a 熱圧着
22b ボールボンディング
23 ワイヤループ
24 ボールボンディング
25 ボールボンディング
30 ワイヤボンディング
31a 半導体チップ
31b 半導体チップ
32 第一の接続
32a ボールボンディング
33 第二の接続
33a 熱圧着
34 ワイヤループ
35 ボールボンディング
40 曲げ部分
50 キャピラリ
51 ワイヤガイド
52 腕部分
53 ダメージ
54 圧着ピン
60a パッド
60b パッド
61 キャビティ
62 キャビティ
63 キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップをワイヤボンディングにより接続する半導体装置の製造方法であって、
前記ワイヤボンディングによる前記半導体チップの接続は、第一の接続と、前記第一の接続に引き続いて行われる第二の接続とからなり、
前記第二の接続では、その最終工程がボールボンディング工程であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
半導体チップをワイヤボンディングにより接続する半導体装置の製造方法であって、
前記ワイヤボンディングによる前記半導体チップの接続は、第一の接続と、前記第一の接続に引き続いて行われる第二の接続とからなり、
前記第二の接続では、ワイヤ圧着後にボールボンディングを行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
複数の半導体チップ間をワイヤボンディングで接続する半導体装置の製造方法であって、
前記ワイヤボンディングによる前記半導体チップ間の接続は、第一の接続と、前記第一の接続に引き続いて行われる第二の接続とからなり、
前記第二の接続では、その最終工程はボールボンディング工程であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
半導体チップをワイヤボンディングにより接続する半導体装置の製造方法であって、
前記ワイヤボンディングにより形成されるワイヤループを下方に押し付けて変形させることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
複数の半導体チップ間をワイヤボンディングで接続する半導体装置の製造方法であって、
複数の半導体チップのパッド同士を隣接させ、隣接させた前記パッド間をボールボンディングで接続することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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