説明

半導体装置の製造方法

【課題】ダイシングブレードの劣化を防止し、チッピングの発生を防止し、高品質な半導体装置を製造可能とする。
【解決手段】半導体ウエハW0の一面にフィラーが含有された樹脂層14を形成するフィラー含有樹脂層形成工程S2と、ダイシングブレードを用いて半導体ウエハと樹脂層とを一括して切削し、半導体ウエハを個片化するダイシング工程S3と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に係り、特に、樹脂層がシリコンウエハ表面上に形成されたデバイスをダイシングする際に用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
WLCSP(Wafer level chip size package)のような、ウエハレベルでのパッケージ加工を行った半導体ウエハにおいては、半導体ウエハ上に形成されたデバイスやパッケージ加工で形成した配線を保護するための保護樹脂層が形成されている。
WLCSPでは、保護樹脂層を形成した後にダイシングソーに取り付けられたダイシングブレードを用いて個片化する。
半導体ウエハを個々の半導体チップに分離するためにダイシングする際、ダイシングブレードの切削刃は、半導体ウエハ上に形成されたダイシングラインと呼ばれるデバイス間に位置する線上を切削する。
【0003】
最近、特許文献1に示すように、半導体ウエハをダイシングする際、半導体ウエハ本体と保護樹脂層とを、ダイシングブレードを用いて一括して切断することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−91453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、シリコン等の半導体ウエハを切断する際、ダイシングを継続するに従ってダイシングブレードが劣化し、切削能力が低下する。そして、チッピングと呼ばれるシリコンの欠けが発生し易くなり、高品質な半導体装置を製造することが困難となる。
【0006】
また、ガラスが貼り合されたウエハを切削する際には、シリコンウエハ切削用ブレードでは切削することができないため、レジンブレードと呼ばれる専用のブレードを必要とする。このレジンブレードはシリコンブレードと比べて刃が厚いため、チッビングも大きく発生する。そのため、半導体装置の品質の低下への影響はかなり大きく、これを改善したいという要求があった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、ダイシング時にダイシングブレードの劣化を抑制することで、チッピングの発生を低減し、高品質な半導体装置を製造可能とすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る半導体装置の製造方法は、半導体ウエハの一面にフィラーが含有された樹脂層を形成するフィラー含有樹脂層形成工程と、
ダイシングブレードを用いて前記半導体ウエハと前記樹脂層とを一括して切削し、前記半導体ウエハを個片化するダイシング工程と、
を有することを特徴とする。
本発明の請求項2に係る半導体装置の製造方法は、請求項1において、前記フィラーの平均粒径が前記ダイシングブレードに含まれる砥粒の平均粒径より小さく設定されてなることを特徴とする。
本発明の請求項3に係る半導体装置の製造方法は、請求項1または2において、前記フィラーのモース硬度が3以上8以下に設定されてなることを特徴とする。
本発明の請求項4に係る半導体装置の製造方法は、請求項1から3のいずれかにおいて、前記半導体ウエハの他面側にはガラス基板が接合され、該ガラス基板も一括して前記ダイシング工程において切削することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ダイシングブレードを用いて前記半導体ウエハと前記樹脂層とを一括して切削することで、ダイシングブレードの刃先が樹脂層に含有されているフィラーによって磨耗し、常に新しい砥粒を表出させることができる。これにより、ダイシングを継続して行っても、ダイシングブレードが劣化することなく、高品質な半導体装置を製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明に係る半導体装置の製造方法の第1実施形態における工程を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る半導体装置の製造方法の第1実施形態における工程を示すフローチャートである。
【図3】図3は、本発明に係る半導体装置の製造方法の第2実施形態における工程を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明に係る半導体装置の製造方法の実験例としてダイシングブレードにより切断した断面の画像を示す図である。
【図5】図5は、本発明に係る半導体装置の製造方法の実験例としてダイシングブレードにより切断した断面の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る半導体装置の製造方法の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における半導体装置の製造方法の工程を示す断面図であり、図2は、本実施形態における半導体装置の製造方法の工程を示すフローチャートであり、図において、符号W0は、半導体ウエハである。
【0012】
本実施形態においては、図2に示すように、フィラー含有樹脂層形成工程S2と、ダイシング工程S3と、を有し、これらの前工程である基板準備工程S1として、図1(a)に示すように、デバイスが形成された領域13が所定の幅寸法を持つダイシングライン12によって互いに離間するように複数のデバイス形成領域を有する半導体ウエハW0を用意する。
【0013】
半導体ウエハW0は、例えばシリコンからなるものとされる。半導体ウエハW0の表面上には複数のデバイス領域13が形成されている。また、隣り合うデバイス領域13の間には、後のダイシング工程S3で半導体ウエハW0を切断する部分となるダイシングライン12が設けられている。ICやメモリなどのデバイスを形成したデバイス領域13は、ダイシングライン12とされる所定幅を持って互いに離間するように半導体ウエハW0表面に複数形成される。本実施の形態における、ダイシングラインAの幅は、150μm程度とされるダイシングブレードの幅寸法よりも1〜2割程度大きく設定されている。
半導体ウエハW0は機械的手段や、化学的手段、及びこれらの手段を併用するバックグラインド(裏面研磨)されて薄厚化処理されていてもよい。
【0014】
[フィラー含有樹脂層形成工程S2]
フィラー含有樹脂層形成工程S2は、図1(b)に示すように、ウエハレベルパッケージ加工の工程として、半導体ウエハW0表面の全面にフィラー含有樹脂層14を形成する。
フィラー含有樹脂層14は、デバイス領域13を保護するための保護樹脂層とされ、半導体ウエハW0表面の全面に形成されるが、必要に応じてバンプを形成する部分15を除いて形成される。フィラー含有樹脂層14は、スピンコート法、浸漬法、ロールコート法、スプレー法などの塗布により形成する方法、または、シート状として貼着することにより形成する手段と、これに加熱処理をおこなう、あるいはフォトリソグラフィー工程を用いて形成することができる。
【0015】
フィラー含有樹脂層14は、フィラーを含有するものとされる。
このフィラーは、樹脂の中に混入された添加物の一つであり、樹脂の性能改善や機能付与などの目的に使用される。本実施形態においては、後述するダイシングブレードに含まれる砥粒よりも小さい0.3〜1.0μm程度の平均粒径を有するものとされる。ダイシングブレードに含まれる砥粒とフィラーとの平均粒径の比は、例えば10μm/0.3μm = 30程度、言い換えると、10〜500の範囲となるように設定される。
また、フィラーのモース硬度が3以上8以下に設定され、例えば、シリカや硫酸バリウムなどの無機物や有機物からなることができる。フィラーのモース硬度が3より小さい場合は、ダイシングブレードの刃先を磨耗させる効果が得られ難く、モース硬度が8より大きい場合は、ダイシングブレードの刃先にダメージが加わり、高品質なダイシングが困難となる。
【0016】
[ダイシング工程S3]
ダイシング工程S3は、図1(c)に示すように、平均粒径4〜10μm程度の砥粒が、所定の集中度をもって内蔵されたシリコンからなる図示しないダイシングブレードを高速回転させ、被切削体と接触させることで被切削体を切削し、個片化されたチップ18となるようにダイシングする。
本実施形態のダイシング工程においては、ダイシングブレードによる切削時に、フィラー含有樹脂層14と半導体ウエハW0をまとめて切削させる。
【0017】
フィラー含有樹脂層14と半導体ウエハW0をまとめて切削することで、フィラーがダイシングブレードに対して砥粒の役割を果たすことになる。ブレードが目詰まり・目つぶしを起こした場合であっても、引き続き切削を行うことでダイシングブレードは、フィラーによって磨耗し新たに砥粒が目立てされる。これによって、ダイシングブレードの砥粒は通常の切削が可能な状態を維持することができる。
したがって、ダイシングブレードの砥粒が目詰まり、目つぶれを起こし切削部に負荷がかかることで発生するチッビングがデバイス形成領域まで達するほど大きくなることを防止することが可能となる。
【0018】
チッビングは、ブレード中の砥粒が目つぶれ、目詰まりを起こした際に、正常とは違う形の力が半導体ウエハに加わることにより発生する。しかし、フィラーを含むフィラー含有樹脂層14と一緒に半導体ウエハW0を切削することでフィラーが砥粒の役割を果たし、ブレードが目詰まりを起こした状態でも結果的にチッビングが発生することなく切削が可能である。
【0019】
本発明においては、半導体ウエハW0の一面にフィラーが含有されたフィラー含有樹脂層14を形成するフィラー含有樹脂層形成工程S2と、ダイシングブレードを用いて半導体ウエハW0とフィラー含有樹脂層14とを一括して切削し、半導体ウエハW0を個片化するダイシング工程S3と、を有することにより、ダイシングブレードの刃先がフィラー含有樹脂層14に含有されているフィラーによって目立てされ、常に新しい砥粒を表出させる状態を維持することができる。これにより、ダイシングを継続して行っても、ダイシングブレードが劣化することない。その結果、チッピング不良が低減された高品質な半導体装置を製造することが可能となる。
【0020】
本発明においては、フィラーの平均粒径がダイシングブレードの砥粒の平均粒径より小さく設定されてなることにより、大き過ぎるフィラーによって、ダイシングブレードの刃先がダメージを受けることがない。
【0021】
本発明においては、フィラーのモース硬度が3以上8以下に設定されてなることにより、ダイシングブレードの刃先を、より効果的に磨耗させることができる。
【0022】
以下、本発明に係る半導体装置の製造方法の第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
図3は、本実施形態における半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。本実施形態において図1に示す第1実施形態と異なるのは、半導体ウエハW0にガラス基板W1が接着されている点であり、これ以外の対応する構成要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0023】
本実施形態においては、前工程である基板準備工程S1として、図3(a)に示すように、半導体ウエハW0の裏面にガラス基板W1が貼り着けられた複合基板を用意する。その後、第1実施形態と同様にして、図3(b)に示すように、フィラー含有樹脂層形成工程S2としてフィラー含有樹脂層14を形成する。
【0024】
[ダイシング工程S3]
本実施形態におけるダイシング工程S3は、図3(c)に示すように、平均粒径4〜10μm程度の砥粒が、所定の集中度をもって内蔵された図示しないダイシングブレードを高速回転させ、被切削体と接触させることで被切削体を切削し、各チップ18となるようにダイシングする。
本実施形態のダイシング工程においては、ダイシングブレードによる切削時に、フィラー含有樹脂層14と半導体ウエハW0およびガラス基板W1をまとめて切削する。
【0025】
ダイシング工程S3においては、フィラー含有樹脂層14と半導体ウエハW0およびガラス基板W1をまとめて切削することで、フィラーがダイシングブレードに対して砥粒の役割を果たすことになる。ブレードが目詰まり・目つぶしを起こした場合であっても、引き続き切削を行うことでダイシングブレードは、フィラーによって磨耗し新たに砥粒が目立てされる。これによって、ダイシングブレードの砥粒は通常の切削可能状態に戻り半導体ウエハW0およびガラス基板W1をまとめて切削する。
したがって、ダイシングブレードの砥粒が目詰まり、目つぶれを起こし切削部に負荷がかかることで発生するチッビングがデバイス形成領域まで達するほど大きくなることを防止することが可能となる。
【0026】
本発明によれば、半導体ウエハの他面側にはガラス基板が接合され、該ガラス基板も一括して前記ダイシング工程において切削することにより、ブレードが劣化しやすい複合基板であっても、高品質な半導体装置を製造することができる。
従来は、ガラスが貼り合されたウエハを切削する際には通常のシリコンブレードでは切削することができ
ないため、レジンブレードと呼ばれる専用ブレードを必要としており、このレジンブレードはシリコンブレードと比べて刃が厚く、チッビングも発生し易いため、半導体装置の品質低下への影響はかなり大きかったが、この問題を解決することが可能となった。
【0027】
本発明に係る実験例について以下に説明する。
上述した実施形態のように、フィラー含有樹脂層14を半導体ウエハ(シリコンウエハ)W0に積層してダイシングブレードにより切断した断面の画像を図4に示す。
ここで、フィラーは、0.5μm程度の平均粒径を有し、モース硬度6.5のシリカやモース硬度3.5〜4の硫酸バリウムの混合物からなるものとされ、ダイシングブレードは、平均粒径4〜10μm程度の砥粒が、所定の集中度をもって内蔵されたシリコンからなるものとされる。
【0028】
図4の結果から、フィラー含有樹脂層14とシリコンウエハW0との界面付近において、シリコンウエハの大きなチッピングが生じていないことがわかる。これは、ダイシングブレードがフィラー含有樹脂層14に含まれるフィラーによって砥がれ、チッピングの無い良好なダイシングが実現されたことを意味する。
同様に、フィラーを含有しない点が異なる樹脂層14を半導体ウエハ(シリコンウエハ)W0に積層してダイシングブレードにより切断した断面の画像を図5に示す。
図5の結果から、シリコンウエハのチッピングが生じていることがわかる。図中、破線の丸で囲んだ部分は、シリコンウエハWOにクラック、空洞が生じた部分、つまり、チッピング発生箇所である。
【0029】
このように、シリコンウエハWOと樹脂層とを一括して切削する場合に、ダイシングブレードの刃先が樹脂層に含有されるフィラーで磨耗して常に新しい砥粒を表出させることにより、ダイシングを継続して行っても、ダイシングブレードが劣化することがなくチッピングを生じるかどうかが、フィラーの有無により影響されることがわかる。
【符号の説明】
【0030】
W0…半導体ウエハ
W1…ガラス基板
12…ダイシングライン
13…デバイス領域
14…フィラー含有樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハの一面にフィラーが含有された樹脂層を形成するフィラー含有樹脂層形成工程と、
ダイシングブレードを用いて前記半導体ウエハと前記樹脂層とを一括して切削し、前記半導体ウエハを個片化するダイシング工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記フィラーの平均粒径が前記ダイシングブレードに含まれる砥粒の平均粒径より小さく設定されてなることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記フィラーのモース硬度が3以上8以下に設定されてなることを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記半導体ウエハの他面側にはガラス基板が接合され、該ガラス基板も一括して前記ダイシング工程において切削することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−41965(P2013−41965A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177560(P2011−177560)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】