説明

半導体装置及び半導体装置の製造方法

【課題】半導体素子の電極に形成されている溶融性金属が、半導体素子の電極の接合箇所に必要以上に濡れ広がることを抑制する半導体装置の製造方法の提供。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、半導体素子1Aに突起電極2Aを形成する工程と、突起電極の上部表面に溶解液を形成する工程と、回路基板11に基板電極12を形成する工程と、基板電極を覆うように樹脂膜13を形成する工程と、半導体素子を回路基板に押し当てながら、突起電極の上部表面に形成された溶解液と、基板電極を覆うように形成された樹脂膜とを接触させることにより、樹脂膜に開口を形成する工程と、半導体素子に形成された突起電極と、樹脂膜の開口から露出する基板電極とを接合する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ等の電子機器の高速化や大集積化に対応するため、コンピュータシステムに用いられる回路基板(配線基板)への半導体素子(半導体チップ)の高密度の実装が行われている。回路基板への半導体素子の高密度の実装を実現するため、半導体素子を回路基板に直接実装するフリップチップ接合(フリップチップ実装)が提供されている。例えば、フリップチップ接合においては、半導体素子に設置された電極(接続端子)と、回路基板に設置された電極とを接合することで、半導体素子がフェースダウンで回路基板に直接接合される。
【0003】
フリップチップ接合の一つとして、半導体素子の電極に用いられている錫(Sn)又は半田等の金属を溶融し、溶融した金属と回路基板の電極とを接合することにより、半導体素子と回路基板とを電気的に導通させる方式がある。この方式は、半導体素子と回路基板との接続部分に必要最小限の錫(Sn)又は半田等の溶融性金属を形成するのみで、半導体素子を回路基板に実装する。このため、半導体素子の高性能化や高集積化に伴い、半導体素子の電極の数が増加することによる半導体素子の電極のファインピッチ化に際して、電極同士のショートを抑止するのに有利な方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−59970号公報(特許第3608536号)
【特許文献2】特開2002−334895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、半導体素子の端子の断面積よりも回路基板の電極の面積が大きい場合、半導体素子の電極に形成されている溶融性金属が回路基板の電極に必要以上に濡れ広がってしまう。この場合、半導体素子と回路基板との接続部分における溶融性金属の量が少なくなり、フリップチップ接合時の熱や機械的応力により、半導体素子の電極と回路基板の電極との接合部分が破断する問題がある。このため、半導体素子の電極に形成されている溶融性金属が回路基板の電極に必要以上に濡れ広がらないようにするため、レジスト等を用いて回路基板の電極に開口を設けることができるが、半導体素子の接続端子を開口部に位置合わせする際に高い搭載精度が求められる。
【0006】
本件は、半導体素子の電極に形成されている溶融性金属が、半導体素子の電極の接合箇所に必要以上に濡れ広がることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件の一観点による半導体装置の製造方法は、半導体素子に突起電極を形成する工程と、突起電極の上部表面に溶解液を形成する工程と、回路基板に基板電極を形成する工程と、基板電極を覆うように樹脂膜を形成する工程と、半導体素子を回路基板に押し当てながら、突起電極の上部表面に形成された溶解液と、基板電極を覆うように形成された樹脂膜とを接触させることにより、樹脂膜に開口を形成する工程と、半導体素子に形成された突起電極と、樹脂膜の開口から露出する基板電極とを接合する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本件によれば、半導体素子の電極に形成されている溶融性金属が、半導体素子の電極の接合箇所に必要以上に濡れ広がることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図2】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図3】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図4】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図5】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図6】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図7】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図8】第2実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図9】第2実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【図10】第2実施形態に係る半導体装置の製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態に係る半導体装置及びその製造方法について説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明の半導体装置及びその製造方法は実施形態の構成に限定されない。
【0011】
〈第1実施形態〉
第1実施形態に係る半導体装置の製造方法においては、まず、図1(A)に示すように、半導体素子(半導体チップ)1Aにバンプ2Aを形成する。半導体素子1Aにバンプ2Aをペリフェラル状又はエリア状に形成してもよい。
【0012】
半導体素子1Aは、半導体基板、半導体基板に形成されたトランジスタ等の能動素子、抵抗素子・容量素子等の受動素子、これらの素子間を絶縁分離する絶縁領域、層間絶縁層、素子間相互配線層等を有する。半導体基板は、例えば、シリコン基板である。
【0013】
バンプ2Aは、突起形状の電極(接続端子)である。バンプ2Aは、半導体素子1Aに形成されている電極パッド3A上に形成される。例えば、電解めっき法により、電極パッド3A上に半田めっき又は錫(Sn)めっきを形成し、リフロー処理により電極パッド3A上の半田めっき又は錫(Sn)めっきを突起形状にすることで、図1(A)に示すように、電極パッド3A上にバンプ2Aを形成してもよい。また、例えば、半田ボール又は錫(Sn)ボールを電極パッド3A上に設置することで、図1(A)に示すように、電極パッド3A上にバンプ2Aを形成してもよい。これに限らず、他の方法により、電極パッド3A上にバンプ2Aを形成してもよい。
【0014】
第1実施形態では、電極パッド3A上にバンプ2Aを形成する例を示すが、これに限定されず、電極パッド3A上にバンプ2Aとは異なるバンプを形成してもよい。
【0015】
例えば、電極パッド3A上にめっきバンプ4を形成し、次に、めっきバンプ4上に半田5を形成することで、図1(B)に示すように、電極パッド3A上にバンプ2Bを形成してもよい。めっきバンプ4の材料として、金(Au)や銅(Cu)等の金属を用いてもよい。半田5に代えて、錫(Sn)をめっきバンプ4上に形成することで、電極パッド3A上にバンプ2Bを形成してもよい。これに限らず、他の方法により、電極パッド3A上にバンプ2Bを形成してもよい。
【0016】
また、例えば、電極パッド3A上にボールバンプ6を形成し、次に、ボールバンプ6上
に半田7を形成することで、図1(C)に示すように、電極パッド3A上にバンプ2Cを形成してもよい。この場合、ボールバンプ6の材料として、金(Au)や銅(Cu)等の金属を用いてもよい。半田7に代えて、錫(Sn)を用いてもよい。これに限らず、他の方法により、電極パッド3A上にバンプ2Cを形成してもよい。
【0017】
次に、図2に示すように、バンプ2Aの上部表面に溶解液8を形成する。具体的には、転写ステージ9上に形成された溶解液8にバンプ2Aの上部を浸漬する。溶解液8をバンプ2Aの上部表面に転写することにより、バンプ2Aの上部表面に溶解液8が形成される。溶解液8は、例えば、有機溶媒又は有機酸である。
【0018】
次に、図3(A)に示すように、半導体素子1Aに形成されているバンプ2Aと、回路基板(配線基板)11に形成されている基板電極12との位置合わせを行う。回路基板11及び基板電極12上には、回路基板11及び基板電極12を覆うように樹脂膜13が形成されている。例えば、スピンコート法により、回路基板11及び基板電極12を覆うように樹脂膜13を形成してもよい。この場合、樹脂膜13として、溶解液8に溶解する性質を有する材料を用いる。
【0019】
なお、回路基板11は、8.5mm角の半導体素子1Aを搭載でき、基板電極12を50μm間隔で400個形成している。ただし、これに限らず、他の大きさの半導体素子1Aを回路基板11に搭載してもよい。基板電極12を回路基板11に形成する間隔及び個数は他の値であってもよい。
【0020】
第1実施形態では、半導体素子1Aに形成されているバンプ2Aと回路基板11に形成されている基板電極12とを接合させる例を示す。これに限らず、半導体素子1Aに形成されているバンプ2Aと他の半導体素子に形成されている電極パッドとを接合させる場合に、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を適用してもよい。
【0021】
半導体素子1Aに形成されているバンプ2Aと他の半導体素子に形成されている電極パッドとを接合させる場合、図3(B)に示すように、半導体素子1Aに形成されているバンプ2Aと、半導体素子(半導体チップ)1Bに形成されている電極パッド3Bとの位置合わせを行う。半導体素子1B及び電極パッド3B上には、半導体素子1B及び電極パッド3Bを覆うように樹脂膜13が形成されている。例えば、スピンコート法により、半導体素子1B及び電極パッド3Bを覆うように樹脂膜13を形成してもよい。この場合、樹脂膜13として、溶解液8に溶解する性質を有する材料を用いる。
【0022】
なお、図4以降では、半導体素子1Aのバンプ2Aと回路基板11の基板電極12とを接合させる例を説明し、半導体素子1Aのバンプ2Aと半導体素子1Bの電極パッド3Bとを接合させる例の説明は省略する。
【0023】
次に、バンプ2Aの上部表面に形成されている溶解液8と、基板電極12上に形成されている樹脂膜13とを接触させる。例えば、バンプ2A一つ当たり1gの荷重を半導体素子1Aに印可しながら、半導体素子1Aを回路基板11に1.5秒間押し当てて、バンプ2Aの上部表面に形成されている溶解液8と、基板電極12上に形成されている樹脂膜13とを接触させる。
【0024】
溶解液8と樹脂膜13とを接触させることで、樹脂膜13は溶解液8に溶解する。樹脂膜13が溶解液8に溶解した状態で、半導体素子1Aを基板電極12に押しつけることにより、溶解液8及び溶解液8に溶解した樹脂膜13は、バンプ2Aと基板電極12との間から外側に押し出される。この場合、バンプ2Aと基板電極12との間から外側に押し出された溶解液8及び溶解液8に溶解した樹脂膜13は、残留物14としてバンプ2Aの周
囲に存在することになる。
【0025】
溶解液8に溶解した樹脂膜13が、バンプ2Aと基板電極12との間から外側に押し出され、基板電極12の一部が樹脂膜13から露出する。基板電極12の一部が樹脂膜13から露出することにより、基板電極12上に形成されている樹脂膜13に開口が形成される。樹脂膜13に開口が形成され、溶解液8が、バンプ2Aと基板電極12との間から外側に押し出されることにより、バンプ2Aと樹脂膜13の開口から露出する基板電極12とが接触した状態となる。半導体素子1Aに形成されているバンプ2Aと、回路基板11に形成されている基板電極12とを接触させた状態の半導体素子1A及び回路基板11を、図4に示す。
【0026】
溶解液8に対する樹脂膜13の溶解を促進するために、半導体素子1A又は基板電極12を加熱しながら、或いは、半導体素子1A及び基板電極12を加熱しながら、溶解液8と樹脂膜13とを接触させてもよい。
【0027】
次に、基板電極12に対するバンプ2Aの濡れ性を向上させるため、半導体素子1Aと回路基板11との間にフラックスを充填する。
【0028】
次に、半導体素子1A及び回路基板11をリフロー炉に搬送し、リフロー処理を行うことにより、図5に示すように、バンプ2Aを溶融させる。例えば、バンプ2Aの材料として錫−銀(Sn−Ag)半田を使用した場合、回路基板11の表面の最高温度が260℃になるように設定されたリフロー炉を用いて、リフロー処理を行う。バンプ2Aが溶融し、バンプ2Aと基板電極12とが接合することで、バンプ2Aと基板電極12とが電気的に導通する。
【0029】
バンプ2Aを溶融させることによりバンプ2Aと基板電極12とを接合させるが、基板電極12上の樹脂膜13が形成されている部分には溶融したバンプ2Aは濡れ広がらない。このように、樹脂膜13は、バンプ2Aが必要以上に濡れ広がることを抑制する抑制膜として機能する。
【0030】
溶融したバンプ2Aは、樹脂膜13が形成されている部分にまでは濡れ広がらず、半導体素子1Aと回路基板11との接続部分の金属量が確保されるため、バンプ2Aと基板電極12との接合部分の破断を抑制することができる。
【0031】
次に、洗浄剤を用いて、半導体素子1Aと回路基板11との間に充填されたフラックスを洗浄除去する。次に、ディスペンサーを用いて、図6に示すように、半導体素子1Aと回路基板11との間に、封止樹脂15を充填する。例えば、封止樹脂15としてアンダーフィル封止剤を用いた場合、アンダーフィル封止剤の温度を30℃に設定し、回路基板11の温度を60℃に設定して、半導体素子1Aと回路基板11との間にアンダーフィル封止剤を充填する。アンダーフィル封止剤は、例えば、エポキシ樹脂である。
【0032】
そして、封止樹脂15を加熱処理することで、封止樹脂15を硬化させる。例えば、半導体素子1Aと回路基板11との間に封止樹脂15を充填後、150℃で2時間、オーブンの中で半導体素子1A及び回路基板11を加熱処理することで、封止樹脂15を硬化する。
【0033】
このように、半導体素子1Aと回路基板11とをフリップチップ接合し、半導体素子1Aと回路基板11との間に充填した封止樹脂15を硬化させることで、図6に示す半導体装置を製造する。
【0034】
バンプ2Aの上部表面に形成されている溶解液8と基板電極12上に形成されている樹脂膜13との接触部分が樹脂膜13の開口部分となる。したがって、基板電極12上に形成されている樹脂膜13を選択的に開口することができる。そして、樹脂膜13の開口から露出する基板電極12にバンプ2Aを接合させるため、バンプ2Aと基板電極12との接合箇所を必要最小限にすることができる。
【0035】
基板電極12の表面の面積がバンプ2Aの表面の面積よりも大きい場合であっても、バンプ2Aが基板電極12に対して過度に濡れ広がることを抑制することができる。したがって、回路基板11に対する半導体素子1Aの過度の搭載精度を必要とせずに、半導体素子1Aに形成されているバンプ2Aと回路基板11に形成されている基板電極12とを接合することができる。
【0036】
以下、実施例に基づいて第1実施形態をより具体的に説明するが、第1実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
実施例1では、溶解液8として有機溶媒を使用する。実施例1において使用する有機溶媒としては、例えば、ケトン系溶媒、芳香族系溶媒及び酢酸エチル系溶媒がある。ケトン系溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)、シクロヘキサノン及びメチルヘキシルケトン(2−オクタノン)等がある。芳香族系溶媒としては、例えば、ベンゼン、ジクロロベンゼン及びベンズアルデヒドがある。酢酸エチル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、アセト酢酸エチル及びアクリル酢酸エチルがある。
【0038】
実施例1において、バンプ2Aの上部表面に溶解液8を形成する場合、転写ステージ9上に形成された溶解液8にバンプ2Aの上部を浸漬することは上述と同様である。この場合、転写ステージ9上に形成する溶解液8の高さは1μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0039】
また、実施例1において使用する樹脂膜13としては、例えば、有機溶媒として使用する溶解液8に溶解する性質を有するポリエーテルサルホン、ポリアミド、変成ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー等がある。
【0040】
(実施例2)
実施例2では、溶解液8として有機酸を使用する。実施例2において使用する有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ベラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、コハク酸、マロン酸、シュウ酸等がある。
【0041】
実施例2において、バンプ2Aの上部表面に溶解液8を形成する場合、転写ステージ9上に形成された溶解液8にバンプ2Aの上部を浸漬することは上述と同様である。この場合、転写ステージ9上に形成する溶解液8の高さは1μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0042】
また、実施例2において使用する樹脂膜13としては、例えば、溶解液8として使用する有機酸に溶解する性質を有するポリカーボネート及びポリアセタールがある。
【0043】
ここで、バンプ2Aを溶融させるためのリフロー処理について説明する。例えば、バン
プ2Aの材料として、錫−銀(Sn−Ag)半田を使用する場合、バンプ2Aを溶融させるため、回路基板11の表面の最高温度が260℃になるように設定されたリフロー炉を用いてリフロー処理を行う。回路基板11の表面の最高温度を260℃にしてリフロー処理を行う場合、有機酸の種類によっては、リフロー処理時の加熱では有機酸が気化せず、有機酸がバンプ2Aの上部表面に存在する。
【0044】
有機酸は、基板電極12に対するバンプ2Aの濡れ性を向上させる性質を備えている。そのため、バンプ2Aを溶融させるためのリフロー処理において、有機酸がバンプ2Aの上部表面に存在している場合、基板電極12に対するバンプ2Aの濡れ性が確保される。したがって、バンプ2Aを溶融させるためのリフロー処理において、有機酸が気化しない場合、半導体素子1Aと回路基板11との間にフラックスを充填する処理及びフラックスを洗浄除去する処理を省略することができる。言い換えれば、リフロー処理時の加熱で気化しない有機酸を溶解液8として用いる場合、半導体素子1Aと回路基板11との間にフラックスを充填する処理及びフラックスを洗浄除去する処理を省略することができる。
【0045】
例えば、回路基板11の表面の最高温度を260℃にしてリフロー処理を行う場合、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、コハク酸、マロン酸又はシュウ酸は気化しない。ただし、リフロー処理の条件に応じて、気化する有機酸の種類は異なる。バンプ2Aの材料によりリフロー処理の条件が変更される場合、有機酸の種類を適宜選択することで、半導体素子1Aと回路基板11との間にフラックスを充填する処理及びフラックスを洗浄除去する処理を省略することができる。
【0046】
リフロー処理時の加熱で気化しない有機酸を溶解液8として用いる場合、リフロー処理後、半導体素子1Aと回路基板11との間に有機酸である溶解液8が残存する。すなわち、バンプ2Aの周囲に存在する残留物14から有機酸である溶解液8が除去されず、バンプ2Aの周囲に残留物14が存在する状態が維持される。図7に示すように、バンプ2Aの周囲に存在する残留物14に含まれる有機酸である溶解液8は、半導体素子1Aと回路基板11との間に充填する封止樹脂15に取り込まれる。有機酸である溶解液8は封止樹脂15と反応性を有するため、封止樹脂15に取り込まれた有機酸である溶解液8は封止樹脂15と硬化反応し、封止樹脂15の高分子骨格となる。
【0047】
〈第2実施形態〉
第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。第1実施形態では、半導体素子1Aのバンプ2Aの上部表面に溶解液8を形成し、回路基板11の基板電極12上の樹脂膜13に溶解液8を接触させることで、樹脂膜13に開口を形成する方法を説明した。第2実施形態では、半導体素子1Aのバンプ2Aの上部表面に溶解液8を形成せずに、樹脂膜20に開口を形成する方法を説明する。なお、同一の構成要素については、第1実施形態と同一の符号を付し、その説明を省略する。また、必要に応じて図1から図7の図面を参照する。
【0048】
第2実施形態に係る半導体装置の製造方法においては、まず、半導体素子1Aにバンプ2Aを形成する。半導体素子1Aにバンプ2Aを形成する方法については、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法と同様であるので、その説明を省略する。また、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法と同様に、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法においても、バンプ2Aに代えて、バンプ2B又はバンプ2Cを半導体素子1Aに形成してもよい。
【0049】
次に、図8(A)に示すように、半導体素子1Aに形成されているバンプ2Aと、回路基板11に形成されている基板電極12との位置合わせを行う。回路基板11及び基板電
極12上には、回路基板11及び基板電極12を覆うように樹脂膜20が形成されている。例えば、スピンコート法により、回路基板11及び基板電極12を覆うように樹脂膜20を形成してもよい。樹脂膜20としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンゴムがある。
【0050】
なお、回路基板11は、第1実施形態と同様に、8.5mm角の半導体素子1Aを搭載でき、基板電極12を50μm間隔で400個形成している。ただし、これに限らず、他の大きさの半導体素子1Aを回路基板11に搭載してもよく、また、基板電極12を回路基板11に形成する間隔及び個数は他の値であってもよい。
【0051】
第2実施形態では、半導体素子1Aに形成されているバンプ2Aと回路基板11に形成されている基板電極12とを接合させる例を示す。これに限らず、半導体素子1Aに形成されているバンプ2Aと他の半導体素子に形成されている電極パッドとを接合させる場合に、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を適用してもよい。
【0052】
半導体素子1Aに形成されているバンプ2Aと他の半導体素子に形成されている電極パッドとを接合させる場合、図8(B)に示すように、半導体素子1Aに形成されているバンプ2Aと、半導体素子1Bに形成されている電極パッド3Bとの位置合わせを行う。半導体素子1B及び電極パッド3B上には、半導体素子1B及び電極パッド3Bを覆うように樹脂膜20が形成されている。例えば、スピンコート法により、半導体素子1B及び電極パッド3Bを覆うように樹脂膜20を形成してもよい。
【0053】
なお、図9以降では、半導体素子1Aのバンプ2Aと回路基板11の基板電極12とを接合させる例を説明し、半導体素子1Aのバンプ2Aと半導体素子1Bの電極パッド3Bとを接合させる例の説明は省略する。
【0054】
次に、半導体素子1Aを回路基板11に押し当て、バンプ2Aと基板電極12上に形成されている樹脂膜20とを接触させる。この場合、半導体素子1A又は基板電極12を加熱しながら、或いは、半導体素子1A及び基板電極12を加熱しながら、バンプ2Aと基板電極12上に形成されている樹脂膜20とを接触させる。半導体素子1A又は基板電極12に加えられた熱、或いは、半導体素子1A及び基板電極12に加えられた熱が、樹脂膜20に伝わった状態で、半導体素子1Aを基板電極12に押し当てることにより、樹脂膜20の一部がバンプ2Aと基板電極12との間から外側に押し出される。この場合、バンプ2Aと基板電極12との間から外側に押し出された樹脂膜20は、バンプ2Aの周囲に存在することになる。
【0055】
樹脂膜20の一部がバンプ2Aと基板電極12との間から外側に押し出され、基板電極12の一部が樹脂膜20から露出する。基板電極12の一部が樹脂膜20から露出することにより、基板電極12上に形成されている樹脂膜20に開口が形成される。樹脂膜20に開口が形成され、バンプ2Aと樹脂膜20の開口から露出する基板電極12とが接触した状態となる。半導体素子1Aに形成されているバンプ2Aと、回路基板11に形成されている基板電極12とを接触させた状態の半導体素子1A及び回路基板11を、図9に示す。
【0056】
次に、基板電極12に対するバンプ2Aの濡れ性を向上させるため、半導体素子1Aと回路基板11との間にフラックスを充填する。
【0057】
次に、半導体素子1A及び回路基板11をリフロー炉に搬送し、リフロー処理を行うことにより、バンプ2Aを溶融させる。例えば、バンプ2Aの材料として錫−銀(Sn−A
g)半田を使用した場合、回路基板11の表面の最高温度が260℃になるように設定されたリフロー炉を用いて、リフロー処理を行う。バンプ2Aが溶融し、バンプ2Aと基板電極12とが接合することで、バンプ2Aと基板電極12とが電気的に導通する。
【0058】
バンプ2Aを溶融させることによりバンプ2Aと基板電極12とを接合させるが、基板電極12上の樹脂膜20が形成されている部分には溶融したバンプ2Aは濡れ広がらない。このように、樹脂膜20は、バンプ2Aが必要以上に濡れ広がることを抑制する抑制膜として機能する。
【0059】
溶融したバンプ2Aは、樹脂膜20が形成されている部分にまでは濡れ広がらず、半導体素子1Aと回路基板11との接続部分の金属量が確保されるため、バンプ2Aと基板電極12との接合部分の破断を抑制することができる。
【0060】
次に、洗浄剤を用いて、半導体素子1Aと回路基板11との間に充填されたフラックスを洗浄除去する。次に、ディスペンサーを用いて、図10に示すように、半導体素子1Aと回路基板11との間に、封止樹脂15を充填する。例えば、封止樹脂15としてアンダーフィル封止剤を用いた場合、アンダーフィル封止剤の温度を30℃に設定し、回路基板11の温度を60℃に設定して、半導体素子1Aと回路基板11との間にアンダーフィル封止剤を充填する。アンダーフィル封止剤は、例えば、エポキシ樹脂である。
【0061】
そして、封止樹脂15を加熱処理することで、封止樹脂15を硬化させる。例えば、半導体素子1Aと回路基板11との間に封止樹脂15を充填後、150℃で2時間、オーブンの中で半導体素子1A及び回路基板11を加熱処理することで、封止樹脂15を硬化する。
【0062】
このように、半導体素子1Aと回路基板11とをフリップチップ接合し、半導体素子1Aと回路基板11との間に充填した封止樹脂15を硬化させることで、図10に示す半導体装置を製造する。
【0063】
バンプ2Aの上部と基板電極12上に形成されている樹脂膜20との接触部分が樹脂膜20の開口部分となる。したがって、基板電極12上に形成されている樹脂膜20を選択的に開口することができる。そして、樹脂膜20の開口から露出する基板電極12にバンプ2Aを接合させるため、バンプ2Aと基板電極12との接合箇所を必要最小限にすることができる。
【0064】
基板電極12の表面の面積がバンプ2Aの表面の面積よりも大きい場合であっても、バンプ2Aが過度に濡れ広がることを抑制することができる。したがって、回路基板11に対する半導体素子1Aの過度の搭載精度を必要とせずに、半導体素子1Aに形成されているバンプ2Aと回路基板11に形成されている基板電極12とを接合することができる。
【0065】
第1実施形態及び第2実施形態に係る半導体装置の製造方法によって製造した半導体装置及び回路基板11上に樹脂膜13を形成せずに製造した半導体装置に対して、熱サイクル試験を行った。熱サイクル試験条件は、低温側の温度を−55℃、高温側の温度を125℃とし、低温側での待機時間及び高温側での待機時間をそれぞれ15分とした。第1実施形態及び第2実施形態に係る半導体装置の製造方法によって製造した半導体装置及び回路基板11上に樹脂膜13を形成せずに製造した半導体装置のそれぞれのサンプル数を30個として評価した。
【0066】
第1実施形態及び第2実施形態に係る半導体装置の製造方法によって製造した半導体装置は、1000サイクルを繰り返しても、半導体素子1Aのバンプ2Aと回路基板11の
基板電極12との接合部分の破断は発生しなかった。
【0067】
一方、回路基板11上に樹脂膜13を形成せずに製造した半導体装置は、300サイクルを繰り返すと、半導体素子1Aのバンプ2Aと回路基板11の基板電極12との接合部分の破断が発生した。そして、500サイクルを繰り返すと、14個の半導体装置が、半導体素子1Aのバンプ2Aと回路基板11の基板電極12との接合部分に破断が発生した。
【0068】
このように、熱サイクル試験によっても、第1実施形態及び第2実施形態に係る半導体装置の製造方法によって製造された半導体装置は、半導体素子1Aのバンプ2Aと回路基板11の基板電極12との接合部分の破断が抑制されることがわかる。
【符号の説明】
【0069】
1A、1B 半導体素子
2A、2B、2C バンプ
3A、3B 電極パッド
4 めっきバンプ
5、7 半田
6 ボールバンプ
8 溶解液
9 転写ステージ
11 回路基板
12 基板電極
13、20 樹脂膜
14 残留物
15 封止樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子に突起電極を形成する工程と、
前記突起電極の上部表面に溶解液を形成する工程と、
回路基板に基板電極を形成する工程と、
前記基板電極を覆うように樹脂膜を形成する工程と、
前記半導体素子を前記回路基板に押し当てながら、前記突起電極の上部表面に形成された前記溶解液と、前記基板電極を覆うように形成された前記樹脂膜とを接触させることにより、前記樹脂膜に開口を形成する工程と、
前記半導体素子に形成された前記突起電極と、前記樹脂膜の開口から露出する前記基板電極とを接合する工程と、を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体素子と前記回路基板との間に封止樹脂を形成する工程を更に備え、
前記突起電極の上部表面に形成された前記溶解液は、前記封止樹脂に取り込まれ、前記封止樹脂の高分子骨格となることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記溶解液が、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)、シクロヘキサノン、メチルヘキシルケトン(2−オクタノン)、ベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンズアルデヒド、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、アクリル酢酸エチル、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ベラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、コハク酸、マロン酸及びシュウ酸のうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂膜が、ポリエーテルサルホン、ポリアミド、変成ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー、ポリカーボネート及びポリアセタールのうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
第1の半導体素子に突起電極を形成する工程と、
前記突起電極の上部表面に溶解液を形成する工程と、
第2の半導体素子に電極パッドを形成する工程と、
前記電極パッドを覆うように樹脂膜を形成する工程と、
前記第1の半導体素子を前記第2の半導体素子に押し当てながら、前記突起電極の上部表面に形成された前記溶解液と、前記電極パッドを覆うように形成された前記樹脂膜とを接触させることにより、前記樹脂膜に開口を形成する工程と、
前記第1の半導体素子に形成された前記突起電極と、前記樹脂膜の開口から露出する前記電極パッドとを接合する工程と、を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
第1の半導体素子と、
前記第1の半導体素子に設けられた突起電極と、
第2の半導体素子と、
前記第2の半導体素子に設けられた電極パッドと、
前記電極パッドを覆うように形成された樹脂膜と、
前記半導体素子と前記回路基板との間に封止樹脂と、を備え、
前記樹脂膜は開口を有し、
前記突起電極と前記樹脂膜の開口から露出した前記電極パッドとが接合され、
前記封止樹脂には、前記樹脂膜を溶解することで前記樹脂膜に前記開口を形成するための溶解液が取り込まれ、前記溶解液は前記封止樹脂の高分子骨格となることを特徴とする
半導体装置。
【請求項7】
半導体素子と、
前記半導体素子に設けられた突起電極と、
回路基板と、
前記回路基板に設けられた基板電極と、
前記基板電極を覆うように形成された樹脂膜と、
前記半導体素子と前記回路基板との間に封止樹脂と、を備え、
前記樹脂膜は開口を有し、
前記突起電極と前記樹脂膜の開口から露出した前記基板電極とが接合され、
前記封止樹脂には、前記樹脂膜を溶解することで前記樹脂膜に前記開口を形成するための溶解液が取り込まれ、前記溶解液は前記封止樹脂の高分子骨格となることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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