説明

半導体装置用ボンディングワイヤ

【課題】ワイヤの表面性状、ループの直線性、ループ高さの安定性、ワイヤの接合形状の安定化に優れている、細線化、狭ピッチ化、ロングスパン化、三次元実装等の半導体実装技術にも適応する、高機能のボンディングワイヤを提供する。
【解決手段】導電性金属からなる芯材と、該芯材の上に芯材とは異なる面心立方晶の金属を主成分とする表皮層を有する半導体装置用ボンディングワイヤであって、前記表皮層の表面における長手方向の結晶方位のうち<100>の占める割合が50%以上であり、前記表皮層と前記芯材との間に、前記表皮層及び前記芯材を構成する主成分とは異なる成分からなる中間金属層を有することを特徴とする半導体装置用ボンディングワイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子上の電極と、外部端子との間を接続するために利用される半導体装置用ボンディングワイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体素子上の電極と、回路配線基板(リードフレーム、基板、テープ等)の配線である外部端子との間を接合するボンディングワイヤとして、線径20〜50μm程度の細線(ボンディングワイヤ)が主として使用されている。ボンディングワイヤの接合には超音波併用熱圧着方式が一般的であり、汎用ボンディング装置、ボンディングワイヤをその内部に通して接続に用いるキャピラリ冶具等が用いられる。ボンディングワイヤのワイヤ先端をアーク入熱で加熱溶融し、表面張力によりボールを形成させた後に、150〜300℃の範囲内で加熱した半導体素子の電極上に、このボール部を圧着接合せしめ、その後で、直接ボンディングワイヤを外部リード側に超音波圧着により接合させる。
【0003】
近年、半導体実装の構造・材料・接続技術等は急速に多様化しており、例えば、実装構造では、現行のリードフレームを使用したQFP(Quad Flat Packaging)に加え、基板、ポリイミドテープ等を使用するBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Scale Packaging)等の新しい形態が実用化され、ループ性、接合性、量産使用性等をより向上したボンディングワイヤが求められている。
【0004】
隣接するボンディングワイヤの間隔が狭くなる狭ピッチ化が進行している。これに対応するボンディングワイヤへの要求として、細線化、高強度化、ループ制御、接合性の向上等が求められる。半導体実装の高密度化によりループ形状は複雑化している。ループ形状の分類として、ループ高さ、ボンディングワイヤのワイヤ長さ(スパン)が指標となる。最新の半導体では、一つのパッケージ内部に、高ループと低ループ、短いスパンと長いスパン等、相反するループ形成を混載させるケースが増えている。それを1種類のボンディングワイヤで実現するには、厳しいボンディングワイヤの材料設計が必要となる。
【0005】
ボンディングワイヤの素材は、これまで高純度4N系(純度>99.99mass%)の金が主に用いられている。高強度化、高接合等の特性を向上するため、微量の合金元素を調整することが行われている。最近では、接合部の信頼性を向上する目的等で、添加元素濃度を1%以下まで増加させた純度2N(純度>99%)の金合金ワイヤも実用化されている。金に添加する合金元素の種類、濃度を調整することで、高強度化、信頼性の制御等可能である。一方で、合金化により、接合性が低下したり、電気抵抗が増加する等の弊害が生じる場合もあり、ボンディングワイヤに要求される多様な特性を総合的に満足することは難しい。
【0006】
また、金は高価であるため、材料費が安価である他種金属が所望されており、材料費が安価で、電気伝導性に優れた、銅を素材とするボンディングワイヤが開発されている。しかし、銅のボンディングワイヤでは、ワイヤ表面の酸化により接合強度が低下することや、樹脂封止されたときのワイヤ表面の腐食等が起こり易いことが問題となる。これらが銅のボンディングワイヤの実用化が進まない原因ともなっている。
【0007】
これまでに実用化されたボンディングワイヤは全て単層構造であることを特徴とする。素材が金、銅等変わっても、内部に合金元素を均一に含有しており、ボンディングワイヤのワイヤ断面で見るとワイヤ単層構造であった。ボンディングワイヤのワイヤ表面に薄い自然酸化膜、表面保護のための有機膜等が形成されている場合もあるが、これらも最表面の極薄い領域(〜数原子層レベル)に限られる。
【0008】
ボンディングワイヤに要求される多様なニーズに応えるため、ワイヤ表面に別の金属を被覆した多層構造のボンディングワイヤが提案されている。
【0009】
銅ボンディングワイヤの表面酸化を防ぐ方法として、特許文献1には、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、クロム、チタン等の貴金属や耐食性金属で銅を被覆したボンディングワイヤが提案されている。また、ボール形成性、メッキ液の劣化防止等の点から、特許文献2には、銅を主成分とする芯材、該芯材上に形成された銅以外の金属からなる異種金属層、及び該異種金属層の上に形成され、銅よりも高融点の耐酸化性金属からなる被覆層の構造をしたボンディングワイヤが提案されている。特許文献3には、銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と成分又は組成の一方又は両方の異なる金属と銅を含有する外皮層を有し、その外皮層の厚さが0.001〜0.02μmの薄膜であるボンディングワイヤが提案されている。
【0010】
また、金ボンディングワイヤでも、多層構造が多く提案されている。例えば、特許文献4には、高純度Au又はAu合金からなる芯線の外周面に高純度Pd又はPd合金からなる被覆材を被覆したボンディングワイヤが提案されている。特許文献5には、高純度Au又はAu合金からなる芯線の外周面に高純度Pt又はPt合金からなる被覆材を被覆したボンディングワイヤが提案されている。特許文献6には、高純度Au又はAu合金からなる芯線の外周面に高純度Ag又はAg合金からなる被覆材を被覆したボンディングワイヤが提案されている。
【0011】
量産で使用されるボンディングワイヤのワイヤ特性として、ボンディング工程におけるループ制御が安定しており、接合性も向上しており、樹脂封止工程でボンディングワイヤの変形を抑制すること、接続部の長期信頼性等の、総合的な特性を満足することで、最先端の狭ピッチ、3次元配線等の高密度実装に対応できることが望まれている。
【0012】
ボール接合に関連して、ボール形成時に真球性の良好なボールを形成し、そのボール部と電極との接合部で十分な接合強度を得ることが重要である。また、接合温度の低温化、ボンディングワイヤの細線化等に対応するためにも、回路配線基板上の配線部にボンディングワイヤをウェッジ接続した部位での接合強度、引張り強度等も必要である。
【0013】
ワイヤの表面性状は使用性能を左右する場合が多く、例えばキズ、削れの発生だけでも量産使用では問題となる。削れにより隣接するボンディングワイヤと電気的ショートする危険性があり、キズはボンディングワイヤの製造歩留まり、樹脂封止時のワイヤ変形等、ボンディングワイヤの品質、信頼性を損なう原因となる。また、ループ形状制御の安定性の追及、低温での接合性の向上等により、半導体製造工程の不良発生率をppmオーダで管理する厳しい要求に適応できなくては実用化に至らない。
【0014】
こうした半導体向けの多層構造のボンディングワイヤは、実用化の期待は大きいものの、これまで実用化されていなかった。多層構造による表面改質、高付加価値等が期待される一方で、ボンディングワイヤの生産性、品質、またボンディング工程での歩留まり、性能安定性、さらに半導体使用時の長期信頼性等が総合的に満足されなくてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開昭62-97360号公報
【特許文献2】特開2004-64033号公報
【特許文献3】特開2007-12776号公報
【特許文献4】特開平4-79236号公報
【特許文献5】特開平4-79240号公報
【特許文献6】特開平4-79242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来の単層構造のボンディングワイヤ(以下、単層ワイヤと記す)では、引張り強度、接合部の強度、信頼性等を改善するのに、合金化元素の添加が有効であるが、特性向上には限界が懸念されている。多層構造をしたボンディングワイヤ(以下、複層ワイヤと記す)では、単層ワイヤよりもさらに特性を向上して付加価値を高めることが期待される。高機能化をもたらす複層ワイヤとして、例えば、銅ボンディングワイヤの表面酸化を防ぐために、ワイヤ表面に貴金属や耐酸化性の金属を被覆することが可能である。金ボンディングワイヤでも、ワイヤ表面に強度の高い金属又は合金を被覆することで、樹脂流れを低減する効果が期待される。
【0017】
しかし、半導体実装の高密度化、小型化、薄型化等のニーズを考慮して、本発明者らが評価したところ、複層ワイヤでは、後述するような実用上の問題が多く残されていることが判明した。
【0018】
複層ワイヤについては、ワイヤ製造工程での伸線加工及び、ワイヤボンディング工程での複雑なループ制御等により、ワイヤ最終製品又は半導体素子の接続に使用された状態において、ワイヤ表面にキズ、削れ等が発生し易いこと等が問題となる。例えば、ワイヤ表面のキズではサブミクロンの微小な溝が発生する場合があり、削れの不良例では、カンナ屑状の削れが複層ワイヤのワイヤ長手方向に発生し、その削れ長さが数百μmにまでなる場合もある。表面キズ、削れにより、ループ形状が不安定になったり、複層ワイヤに損傷を与えて強度が低下したり、さらに削れ屑が隣接する複層ワイヤに接触するとショート不良を起こし、実用上のトラブルの原因となる。
【0019】
こうした表面キズ、削れに関連する不良発生の頻度は、ワイヤ線径が細いほど上昇するため、狭ピッチ接続には不利であり、また、高いループと低いループとが混載させる等ループ制御が複雑になることでも上昇することで、3次元接続への適応が困難となる。低ループを形成するときに表面傷の発生頻度が増加する傾向にある。これらの不良が低減しなければ、複層ワイヤの実用範囲が限定されることが懸念される。
【0020】
こうした直接的な不良だけでなく、ワイヤ表面にキズ、削れの発生による間接的な不良、あるいは歩留まりの低下等も懸念される。例えば、複層ワイヤのワイヤ製造の途中工程で一旦発生したキズ、削れは、最終製品では検出できなくても、表皮層の厚さを不均一にしたり、内部クラックが残留することで、ループ形状を不安定にさせる場合もある。また、量産工程での光学顕微鏡によるループ外観検査では検出が難しい、ループの裏側でのキズ、削れ等が発生する場合もある。こうした不具合は、キズ、削れとの因果関係を直接は認識し難くても、製造歩留まりの低下等に悪影響を及ぼす。
【0021】
表面キズ、削れの発生頻度、現象等は表皮層の素材により変化するが、これまで十分な対策はとられていない。複層ワイヤでの発生頻度は単層ワイヤより増加する場合が多く、これは複層ワイヤではループを形成する工程での表皮層に対する応力、歪等の負担が大きくなったり、ワイヤ製造工程のプロセス条件の違い等が関与していると考えられる。
【0022】
複層ワイヤでループ形成したときには、ループの直線性が低下して、複層ワイヤの倒れ、垂れ、曲がり等の不具合が生じる場合がある。このループの直線性が低下することで、製造歩留まりを低下させることが問題となる。
【0023】
複層ワイヤのボール接合部の不具合としては、花弁現象と芯ずれ現象とが代表的である。花弁現象とは、ボール接合部の外周近傍が花弁状に凹凸変形を起こして、真円性からずれるものであり、小さい電極上に接合するときにボールがはみ出たり、接合強度の低下を誘発したりする不良の原因となる。芯ずれ現象とは、ワイヤ先端に形成したボール部が、ワイヤ軸に対し非対称に形成され、例えばゴルフクラブ状となる現象であり、狭ピッチ接続において芯ずれボールを接合したときに隣接するボールと接触するショート不良を起こすことが問題となる。これら複層ワイヤにおける花弁現象と芯ずれ現象との発生頻度は単層ワイヤより増える傾向であり、生産性の低下をもたらす一因であるため、ワイヤボンディング工程の管理基準を厳しくする必要がある。
【0024】
複層銅ワイヤでは、単層銅ワイヤより酸化を遅らせる効果が期待できるが、その効果は、表皮層又はワイヤ表面近傍における組成、構造、厚さ等により大きく異なる。複層銅ワイヤの構造の適正化が重要となる。金ワイヤと同等の作業性を確保するには、例えば、2ヶ月程度の大気保管の後でも、ウェッジ接合性、ループ形状等が劣化しないことが保障される必要がある。これは、単層銅ワイヤの保管寿命に比べれば数十倍の寿命向上が必要であり、銅を主体とする材料においては相当厳しい条件が求められることになる。
【0025】
本発明では、上述するような従来技術の問題を解決して、従来の基本性能に加えて、ワイヤ表面の傷、削れの抑制、ループ形状の安定化、良好なボール形成等の性能向上を図った半導体装置用ボンディングワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明者らが、上記ワイヤの表面キズや削れ発生等の問題を解決するために複層構造のボンディングワイヤを検討した結果、特定の表皮層であって前記表皮層の組織を制御することが有効であることを見出した。
【0027】
本発明は前記知見の基づいてなされたものであり、以下の構成の要旨とする。
【0028】
本発明の請求項1に係る半導体装置用ボンディングワイヤは、導電性金属からなる芯材と、前記芯材の上に該芯材とは異なる金属を主成分とする表皮層とを有する半導体装置用ボンディングワイヤであって、前記表皮層の金属が面心立方晶であって、前記表皮層の表面の結晶面における長手方向の結晶方位<hkl>の内、<111>の占める割合が50%以上であることを特徴とする。
【0029】
本発明の請求項2に係る半導体装置用ボンディングワイヤは、請求項1において、前記表皮層の表面の結晶面における長手方向の結晶方位<hkl>の内、<111>と<100>との占める割合の総計が60%以上であることを特徴とする。
【0030】
本発明の請求項3に係る半導体装置用ボンディングワイヤは、請求項1又は2において、前記芯材の断面の結晶面における長手方向の結晶方位<hkl>の内、<111>と<100>との占める割合の総計が15%以上であることを特徴とする。
【0031】
本発明の請求項4に係る半導体装置用ボンディングワイヤは、請求項1〜3において、前記芯材の断面の結晶面におけるワイヤ長手方向の結晶方位<hkl>の内、<111>と<100>との占める割合が30%以上であることを特徴とする。
【0032】
本発明の請求項5に係る半導体装置用ボンディングワイヤは、請求項1〜4において、前記表皮層の表面における結晶粒の平均サイズについて、円周方向の平均サイズに対する長手方向の平均サイズの比率が3以上であることを特徴とする。
【0033】
本発明の請求項6に係る半導体装置用ボンディングワイヤは、請求項1〜5において、前記表皮層の表面におけるワイヤ長手方向の結晶方位が<111>である結晶粒の面積が、ワイヤ表面の総面積に対する割合として30%以上であることを特徴とする。
【0034】
本発明の請求項7に係る半導体装置用ボンディングワイヤは、請求項1〜6において、前記表皮層を構成する主成分がPd、Pt、Ru、Agの少なくとも1種であることを特徴とする。
【0035】
本発明の請求項8に係る半導体装置用ボンディングワイヤは、請求項1〜7において、前記芯材を構成する主成分がCu、Auの少なくとも1種であることを特徴とする。
【0036】
本発明の請求項9に係る半導体装置用ボンディングワイヤは、請求項1〜8において、前記表皮層と前記芯材の間に、前記表皮層及び前記芯材を構成する主成分とは異なる成分からなる中間金属層を有することを特徴とする。
【0037】
本発明の請求項10に係る半導体装置用ボンディングワイヤは、請求項1〜9において、前記表皮層の厚さが0.005〜0.2μmの範囲であることを特徴とする。
【0038】
本発明の請求項11に係る半導体装置用ボンディングワイヤは、請求項1〜10において、前記表皮層と芯材の間に濃度勾配を有する拡散層を有することを特徴とする。
【0039】
本発明の請求項12に係る半導体装置用ボンディングワイヤは、請求項7〜11において、前記芯材を構成する主成分がCuで、B、Pd、Bi、P、Zrの1種以上を5〜300ppmの範囲で含有することを特徴とする。
【0040】
本発明の請求項13に係る半導体装置用ボンディングワイヤは、請求項7〜11において、前記芯材を構成する主成分がCuで、Pdを5〜10000ppmの範囲で含有し、前記表皮層を構成する主成分がPdまたはAgであることを特徴とする。
【0041】
本発明の請求項14に係る半導体装置用ボンディングワイヤは、請求項7〜11において、前記芯材を構成する主成分がAuで、Be、Ca、Ni、Pd、Ptの1種以上を5〜8000ppmの範囲で含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0042】
本発明の半導体装置用ボンディングワイヤにより、ワイヤ表面のキズ、削れを抑制して表面性状を改善できる。また、ループの直線性、ループ高さの安定性を向上できる。また、半導体装置用ボンディングワイヤの接合形状の安定化を促進できる。その結果、細線化、狭ピッチ化、ロングスパン化、三次元実装等、最新の半導体実装技術にも適応する、高機能の半導体装置用ボンディングワイヤを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】複層構造のボンディングワイヤ(線径25μm)のEBSP測定結果(ワイヤ長手方向に<111>方位に配向した領域を着色。結晶粒界を線表示)
【発明を実施するための形態】
【0044】
半導体装置用ボンディングワイヤ(以下、ボンディングワイヤという)について、導電性金属からなる芯材と、該芯材の上に芯材とは異なる面心立方晶の金属を主成分とする表皮層で構成されたものを検討した結果、ボンディングワイヤの表面近傍に導電性金属を含有させることにより、ウェッジ接合性の向上等期待できる反面、ワイヤ製造工程での伸線加工及び、ワイヤボンディング工程での複雑なループ制御等における、ワイヤ表面のキズ、削れ等の発生が問題となること、ループ形状の安定性等が十分でないこと等が判明した。
【0045】
そこで、狭ピッチ接続、3次元接続の厳しいループ制御等の新たなニーズへの対応、細線のワイヤ伸線加工における歩留まりの向上等にも対応できる複層構造のボンディングワイヤを検討した結果、特定の表皮層であって前記表皮層の組織を制御することが有効であることを見出した。特に、これまで殆ど知られていなかった複層ワイヤの表面の集合組織とワイヤボンディングの使用性能の関係に着目することで、特定の結晶方位を制御することにより、加工性、接合性、ループ制御性等の総合的な改善が可能であることを初めて確認した。更に効果的には、表皮層と芯材との組織の組合せ等の制御が有効であることを見出した。
【0046】
即ち、導電性金属からなる芯材と、該芯材の上に芯材とは異なる、面心立方晶の金属を主成分とする表皮層とを有するボンディングワイヤであって、前記表皮層の表面の結晶面における長手方向の結晶方位<hkl>の内、50%以上が<111>であることを特徴とするボンディングワイヤであることが必要である。該ボンディングワイヤであれば、ワイヤ製造工程での伸線加工及び、ワイヤボンディング工程での複雑なループ制御等における、ワイヤ表面のキズ、削れの発生を抑制する高い効果が得られる。
【0047】
表皮層を構成する成分が面心立方晶の金属であれば、加工時の降伏降下もなく、加工性も良好であり、伸線加工、ループ制御等の複雑な加工、曲げ等に順応し易い。
【0048】
ボンディングワイヤのワイヤ長手方向の結晶方位<hkl>の内、50%以上が<111>であることにより、表皮層の表面硬度、加工性、曲げ耐性等、両立が困難とされていた特性群の総合的な改善が可能となり、結果として、ワイヤ表面のキズ、削れを抑制することができる。面心立方晶の金属の<111>方位は最稠密方向であり、この<111>方位が表層に集まるほど、表面の機械的特性は向上する傾向にあり、例えば硬度を高め、弾性変形に強く、塑性変形への耐性が強く、靭性も高められる。結晶方位の内<111>方位の占める割合が50%以上であれば、ワイヤ表面のキズ、削れを抑制する十分な効果が得られる。好ましくは、この<111>方位の割合が60%以上であれば削れを抑える効果が高められ、ワイヤ長が5mm以上のロングスパンでも削れ、キズを低減できる。より好ましくは、70%以上であればキズを抑制する効果がさらに高まり、例えば、ループ高さが65μm以下の低ループでも、キズ、削れを抑制して安定したループ形成が可能となる。
【0049】
複層ワイヤでは表層と芯材とが異なる成分で構成されているため、ワイヤ表面を被覆している表層の組織を分離して制御することが比較的容易である。この表面組織の制御による特性改善効果も高い。こうした点では、従来の単層ワイヤの組織制御とは異なる。単層ワイヤでは、ワイヤ全体の集合組織及び結晶方位を管理することはできるが、表面近傍だけワイヤ内部と分離して組織制御することは難しい。因って、複層ワイヤの表層の組織制御には、複層ワイヤ独自の考え方が求められ、単層ワイヤのワイヤ断面における集合組織及び結晶方位の管理を当て嵌めることはできない。
【0050】
表皮層の表面の結晶面における長手方向の結晶方位<hkl>の内、<111>と<100>との占める割合の総計が60%以上であれば、ループ高さのバラツキを低減し、高速動作でのループの安定制御が容易となる。通常のワイヤ接続工程では、キャピラリの穴を通るボンディングワイヤが繰り出されたり、引き戻されたりする等、複雑な動作をする。これは数十ミリ秒のオーダのかなり高速でボンディングワイヤが出入りする動作である。<111>と<100>それぞれの方位の具体的な効果、関わりは明確でないが、ボンディングワイヤとキャピラリとの摺動抵抗を下げることで、ループ高さが安定化していると考えられる。言い換えれば、こうした摺動性及びループ高さを安定化させるには、<111>と<100>以外の結晶方位を低く抑えることが有効である。表皮層における<111>と<100>との占める割合の総計が60%以上であれば、ワイヤ長が3mm以下の一般的なスパンで、ループ高さを安定化する高い効果が得られる。好ましくは、80%以上であれば、ワイヤ長が5mm以上のロングスパンでもループ高さを安定化させる高い効果が得られる。また、<111>と<100>との占める割合を高めることによる効果として、成膜後の加工、熱処理のプロセスにおける膜厚の不均一性を抑えることで、表皮層の厚さの均一化にも有利である。
【0051】
芯材の断面におけるワイヤ長手方向の結晶方位<hkl>の内、<111>と<100>との占める割合の合計が15%以上であれば、ボール接合部が真円から大きくずれた異常変形が発生する不良を抑制できる。この異常変形は隣接する電極との電気的ショートの直接的原因となる等、ボール接合で最も懸念される不良形態の一つである。異常変形の判断基準の目安として、ボール接合部の長径サイズと短径サイズとの比率が1.3倍以上となる楕円状の形状を不良と判断する。例え低い発生率で突発的に発生するだけでも、ワイヤボンディングの生産性を阻害する。好ましくは、<111>と<100>との占める割合の合計が30%以上であれば、ボール接合部の外周近傍が凹凸変形する小さな花弁不良を低減することになり、ボール接合部を真円に近づけて安定化させることができる。真円性が良好であれば接合面積の縮小に有利となり、接合工程の製造管理が容易となったり、あるいは狭ピッチ接合の生産性を向上できる。ボール部の凝固組織は、芯材の組織も大きく反映され、芯材の結晶方位<hkl>の内、<111>と<100>との占める割合を高くすることが有効であることを確認した。こうした芯材の結晶方位の制御について、単層ワイヤでは効果が十分でないのに対して、複層ワイヤでは高い効果が得られることが確認された。この要因について完全には解明されていないが、複層ワイヤのボール溶融では先に表皮層、次に芯材と段階的に溶融されることで、芯材の組織がボール部の組織に及ぼす影響が大きいためと推察される。この作用効果は、通常のボールサイズの場合に、より高い効果が確認されている。例えば、初期ボール径/ワイヤ径の比率が1.9〜2.2の通常サイズのボールを接合する場合に、ボール接合部における異方性や花弁状等の形状不良を低減して、真円性を向上できる。圧縮変形、超音波印加によるボール部の変形挙動を調査した結果、ボール接合形状に関しては、表皮層の組織との相関は小さく、むしろ芯材の組織が支配的に作用することが確認された。ここで、芯材における<111>と<100>との占める割合の合計が15%未満であれば、ボール接合時の異常変形が発生する頻度が高くなり、また、30%未満であれば、ボールが接合時に花弁状、楕円状の変形を起こす頻度が高くなり、不良となる場合がある。ワイヤの組織がボール変形に及ぼす影響は、複層ワイヤの方が顕著であり、単層ワイヤの組織の影響とは異なる場合が多い。好ましくは、芯材における<111>と<100>との占める割合の合計が50%以上であれば、小径ボールの接合形状を安定化できる。例えば、初期ボール径/ワイヤ径の比率が1.5〜1.7の範囲である小径ボールを接合する場合に、ボール接合部の真円性を向上することで、電極間隔が40μm以下の狭ピッチ接合でも良好なボール接合形状が得られる。芯材における<111>と<100>との占める割合の合計の上限は特にはないが、85%以下であれば製造時の制御が比較的容易となる利点がある。
【0052】
こうした芯材の組織と、前述した表皮層の組織とを組み合わせることにより相乗作用が期待でき、ループ形状の制御、ボール変形の安定化を同時に改善することが可能となる。即ち、表皮層の表面の結晶面における長手方向の結晶方位<hkl>の内、50%以上が<111>であり、且つ、芯材の断面におけるワイヤ長手方向の結晶方位<hkl>の内、<111>と<100>との占める割合が40%以上である複層構造のボンディングワイヤであることが望ましい。これにより、三次元実装の代表例である、複数のチップを積層させた積層チップ接続、BGA、CSPで最近使用される、隣接するボンディングワイヤのループ高さが60〜500μmの範囲で大きく異なる多段接続(Multi-Tier Bonding)等において、ボンディングワイヤの総合特性を改善することができる。
【0053】
これまでの説明では、測定できる結晶方位を基準として、特定の配向が占める割合が及ぼす作用、効果について説明している。今後狭ピッチ化に適応するため細線化が進めば、表面の影響度が増すことで、結晶方位の及ぼす効果をボンディングワイヤの表面を基準として整理した方が、実用の効果を正確に把握することが可能である。
【0054】
具体的には、表皮層の表面の結晶面における長手方向の結晶方位<hkl>の内、50%以上が<111>である複層構造のボンディングワイヤであって、さらに表皮層の表面におけるワイヤ長手方向の結晶方位が<111>である結晶粒の面積が、ワイヤ表面の総面積に対する割合として30%以上であることが望ましい。これにより、ループ形状を安定化させる効果が高まり、中でも直径22μm以下に細線化されたボンディングワイヤでもループ特性が安定化し、キズ、削れの低減に有効である。線径が22μm以下の細いボンディングワイヤでは、伸線加工歪みの増大等により、測定が難しい結晶方位の領域が増加すること等で、測定できる結晶方位の内の<111>の配向の割合だけではループ特性を正確に把握できない領域が増える傾向にある。そこで、表皮層の表面における<111>結晶粒の面積が、ワイヤ表面の総面積に対する割合(面積比率)で適正な割合(適正な面積比率)とすれば、細線でも良好な特性が得られる。該面積比率が30%以上である理由は、結晶方位の内50%以上が<111>であっても面積比率が30%未満であれば、線径22μm以下のボンディングワイヤを用いて狭ピッチ接続するとキズ、削れ等を抑制しきれないことがある。好ましくは、該面積比率が40%以上であれば、直径18μm以下の細線を接続しても、ループ形成時のキズ、削れを低減できる。さらに好ましくは、該面積比率が50%以上であれば、直径18μm以下の細線でのキズ、削れを抑制する効果がさらに高められるため、40μmピッチ以下の狭ピッチ接続にも有利となる。
【0055】
表皮層の表面の結晶面における長手方向の結晶方位<hkl>の内、50%以上が<111>である複層構造のボンディングワイヤであって、さらに表皮層の表面における結晶粒の平均サイズについて、円周方向の平均サイズに対する長手方向の平均サイズの比率(結晶粒径のアスペクト比)が3以上であることを特徴とする複層構造のボンディングワイヤであれば、ループ形成したボンディングワイヤの直線性を向上することができる。ボンディングワイヤは、キャピラリ先端の穴から出たり、戻ったりすることでループを形成する際に、キャピラリ内壁との摩擦等により、ボンディングワイヤが倒れたり、曲がりによるカール不良、垂れによるボンディング不良等が発生することで、歩留まりが低下する。こうした不良を抑制してループ直線性を向上するには、表皮層の表面における結晶粒径のアスペクト比を高めることが有効であることを見出した。アスペクト比が高めれば、ワイヤ長手方向に長い結晶粒が繊維状組織を形成することになり、ループ形成時のボンディングワイヤに残留する歪み、変形バラツキを低減することに有利となる。アスペクト比が3以上であれば、ループ直線性を向上する十分な効果が得られる。好ましくは、アスペクト比が5以上であれば、直径25μm以下でワイヤ長が5mm以上のロングスパンでも良好なループ直線性が得られる。さらに好ましくは、アスペクト比が10以上であれば、ワイヤ長が7mm以上の超ロングスパンでもループ直線性を向上する効果が高められる。
【0056】
表皮層の主成分となる面心立方晶の金属とは、芯材の主成分である導電性金属とは異なる金属であり、ボンディングワイヤの接合性の改善に効果があり、ボンディングワイヤの酸化防止にも有効である金属であることが望ましい。具体的には、Pd、Pt、Ru、Rh、Agが候補となり、さらに実用性、コストパフォーマンス等を重視すれば、Pd、Pt、Ru、Agの少なくとも1種の金属であることがより望ましい。ここでの主成分とは濃度が50mol%以上を有する元素のことである。Pdは、封止樹脂との密着性、電極への接合性も十分であり、品質管理も容易である等の利点がある。Ptは、ボール形状を安定化させることが比較的容易である。Ruは硬質で緻密な膜を形成し易く、材料費も比較的安価である。Rhは耐酸化性等性能は良好であるが、材料費が高価であるため、薄膜化等今後の検討が期待される。Agは軟質であるため、表皮層が形成されたワイヤの伸線加工によるキズ抑制などが比較的容易であり、材料費も安価であるため、コスト重視の半導体などに有用である。
【0057】
即ち、表皮層はPd、Pt、Ruの導電性金属の少なくとも1種を主成分とする純金属、又は該導電性金属を主成分とする合金であることが好ましい。純金属であれば耐酸化性、接合性の向上等が容易である利点があり、合金であれば引張強度、弾性率の上昇により樹脂封止時のワイヤ変形を抑制する利点がある。ここでの上記純金属とは、表皮層の一部に99mol%以上の濃度を有する層が含まれるか、あるいは拡散層を除く表皮層の平均濃度が80mol%以上であることに相当する。上記合金とは、Pd、Pt、Ruの少なくとも1種の金属を50mol%以上含有するものである。
【0058】
芯材を構成する導電性金属は、Cu、Au、Agが候補となり、実用性を重視すれば、Cu、Auの内少なくとも1種を主成分することが望ましい。Cuは、材料費が安く、電気伝導性が高く、ボール形成時にシールドガスを吹付ければ良好なボール形成も容易である等操作性も比較的良好である。Auは、耐酸化性が強く、ボール形成時にシールドガス等が不要であり、接合時の変形も良好であり、接合性を確保し易い等の利点がある。Agは、導電性が優れているが、伸線加工がやや難があり、製造技術を適正化することが必要である。一方、Cu、Auは単層ボンディングワイヤ用素材としての使用実績が多いことは利点でもある。
【0059】
芯材は導電性金属を主成分とする合金であれば、ワイヤ強度の増加による細線化、又は接合信頼性の向上等に有利な場合もある。Cu合金の場合には、B、Pd、Bi、Pの1種以上を5〜300ppmの範囲で含有することで、ボンディングワイヤの引張り強度、弾性率の増加等により、スパン5mm程度までのロングスパンでの直線性を向上する効果が得られる。上記の添加作用を高めるには、Cuの単層ワイヤでは十分ではないのに対して、芯材の主成分がCuである複層ワイヤに適用する方が高い効果が得られることを確認した。即ち、芯材がB、Pd、Bi、Pを5〜300ppmの範囲で含有するCu合金であり、表皮層がPd、Pt、Ruの少なくとも1種を主成分として、前記表皮層の表面の結晶面における長手方向の結晶方位<hkl>のうち、<111>の占める割合が50%以上であることにより、ロングスパンでの直線性を向上する効果が一層高められる。この理由として、結晶方位を制御した表皮層と合金元素を含有する芯材との相乗効果により、直線性が向上すると考えられる。
【0060】
前記表皮層の表面の結晶面における長手方向の結晶方位<hkl>のうち、<111>の占める割合が50%以上で、表皮層を構成する主成分がPdまたはAgであり、芯材を構成する主成分がCuで、芯材中にPdを5〜10000ppmの範囲で含有する複層構造のボンディングワイヤであれば、キズ・削れの抑制、ループの形状および高さの安定化または、ボール接合部の圧着形状の安定化などを総合的に満足することが容易となる。ワイヤ製造での熱処理工程において、芯材/表皮層の界面近傍で、芯材中のPdと表皮層中のPd、Agとがお互いに拡散するときにPd濃度の変化を均一化且つ緩やかにさせる相乗作用により、ループの上面近傍の剥離・削れを低減させる作用、またループの倒れ、曲がりなどの形状バラツキを低減させる高い作用が得られる。この濃度変化はワイヤ全体だけでなく、ボール溶融の熱影響を受けるネック部にも効果的であるため、ループ高さの安定化にも有効である。また、Cuの芯材とPdの表皮層との組み合わせでは、ボールが溶融するときにCuとPd、Agの混合が不均一となりボール形状の異形が発生する場合があるが、芯材にPdを含有させることで、ボール接合部の形状を真円化させる効果が高められる。ここで芯材に含まれるPd濃度に関しては、5ppm以上であれば上記効果が確認され、好ましくは200ppm以上であれば改善効果がより顕著である。該Pd濃度の上限に関しては、10000ppm以下であればボールの硬化によるチップ損傷を抑えることができ、好ましくは8000ppm以下であればチップ損傷を抑える効果がより高められ、狭ピッチ接続にも有利となる。
【0061】
Au合金の場合には、Be、Ca、Ni、Pd、Ptの1種以上を5〜8000ppmの範囲で含有することであれば、同様の効果があり、良好な直線性を確保するのが容易となる。即ち、芯材がBe、Ca、Ni、Pd、Ptの1種以上を5〜8000ppmの範囲で含有するAu合金であり、表皮層がPd、Pt、Ruの少なくとも1種を主成分として、前記表皮層の表面の結晶面における長手方向の結晶方位<hkl>の内、<111>の占める割合が50%以上であることが望ましい。
【0062】
複層構造のボンディングワイヤの構成では、表皮層と前記芯材との間に、前記表皮層及び前記芯材を構成する主成分とは異なる成分からなる中間金属層を有することで、前述した表皮層の結晶方位の配向を制御するのが、より有利となる。表皮層の形成では下地の結晶方位の影響を受けることがあり、芯材の結晶方位を制御するよりも、芯材の上に形成した中間金属層の結晶方位を制御する方が比較的容易であるためである。具体的には、表皮層の金属と同じ面心立方晶の金属が、中間金属層として好ましい。特に、表皮層の金属の格子定数と中間金属層の金属の格子定数とが近いものが、より好ましい。
【0063】
即ち、前記表皮層と前記芯材との間に、前記表皮層及び前記芯材を構成する主成分とは異なる成分からなる中間金属層を有することを特徴とする複層構造のボンディングワイヤが望ましい。中間金属層を加える効果として、表皮層と芯材との密着性の向上等により、ウェッジ接合部の接合強度の指標の一つであるピール強度を高めることができる。ここで、ピール強度の測定には、ウェッジ接合近傍でのプル強度を測定する簡便な方法で代用できる。従って、中間金属の挿入によりピール強度が増加できる。ここで、中間金属層の成分は、表皮層及び芯材の成分との組み合わせで選定されるべきものであり、上述のような金属成分とするのが好ましく、特に、Au、Pd、Ptがより好ましい。更に好ましくは、表皮層/芯材の主成分の組合せがPd/Cuである場合、中間金属層の主成分がAuであれば、表皮層の結晶方位の制御に有利であり、さらに表皮層/中間金属層/芯材のそれぞれの界面での密着性も比較的良好である。また、表皮層/芯材の主成分の組合せがPd/Auである場合、中間金属層の主成分がPtであれば、結晶方位の制御と表皮層の組成、膜厚の均一性に有利である。
【0064】
表皮層の厚さが0.005〜0.2μmの範囲であれば、前述した表皮層の結晶方位の制御にも有利であり、接合性、ループ制御等の要求特性も総合的に満足することが容易となる。厚さが0.005μm以上であれば、結晶方位を制御した表皮層の十分な効果が得られるためであり、0.2μmを超えると、ボール部の合金化による硬化が顕著となり、接合時にチップにクラック等の損傷を与えることが問題となる場合がある。
【0065】
好ましくは、表皮層の厚さが0.01〜0.15μmの範囲であれば、複雑なループ制御でも速度を落とすことなく、所望するループ形状を安定して形成することができる。より好ましくは、0.020〜0.1μmの範囲であれば、ボンディングワイヤの使用性能を維持しつつ、膜形成工程の処理効率を高められる等、安定した膜質を得ることが容易である。
【0066】
中間金属層の厚さが0.005〜0.2μmの範囲であれば、表皮層の結晶方位を制御するのが容易となり、また芯材との界面の密着性を向上し、複雑なループ制御にも対応できる。好ましくは、0.01〜0.1μmの範囲であれば、膜厚の均一性、再現性を確保することが容易となる。
【0067】
ここで、表皮層と芯材との境界は、表皮層を構成する導電性金属の検出濃度の総計が50mol%の部位とする。よって、本発明でいう表皮層とは、表皮層を構成する導電性金属の検出濃度の総計が50mol%の部位から表面であり、即ち、表皮層を構成する導電性金属の検出濃度の総計が50mol%以上の部位である。
【0068】
本発明における結晶方位は、ボンディングワイヤの長手方向に対する結晶方位の角度差が15°以内のものを含むことが好ましい。通常、ある方向の結晶方位に着目しても、個々の結晶はある程度の角度差を有しており、また、サンプル準備、結晶方位の測定法等の実験法によっても若干の角度差が生じる。ここで、角度差の範囲が15°以内であれば、それぞれの結晶方位の特性を有しており、ボンディングワイヤの諸特性に及ぼす影響度も有効に活用できるためである。
【0069】
25μm径程度の微細線の表面の集合組織に関して、これまであまり知られておらず、特に、微細線の複層ワイヤの最表面の集合組織に関する報告例も少ない。ボンディングワイヤのように、比較的軟質で線径の細い金属線における集合組織を精度良く測定するには、高度な測定技術が必要となる。
【0070】
集合組織の測定法には、測定領域を微小に絞ったり、最表面だけの情報を得るのに有利であることから、最近開発された後方電子散乱図形(Electron Back Scattering Pattern、以降EBSPという)法を用いることができる。EBSP法による集合組織の測定により、ボンディングワイヤのような細線でも、その表面又は断面の集合組織を精度良く、しかも十分な再現性をもって測定できる。本測定方法により、ボンディングワイヤの微細組織に関して、サブミクロンの微細結晶粒の結晶方位、ワイヤ表面の結晶方位の分布等を、高精度に再現良く測定できる。
【0071】
EBSP法では、通常、試料の凹凸、曲面が大きい場合は、結晶方位を高精度測定するのが難しい。しかしながら、測定条件を適正化すれば高精度の測定、解析が可能である。具体的には、ボンディングワイヤを平面に直線状に固定し、そのボンディングワイヤの中心近傍の平坦部をEBSP法で測定する。測定領域について、円周方向のサイズはワイヤ長手方向の中心を軸として線径の50%以下であり、長手方向のサイズは100μm以下であれば、精度に加えて測定効率を高められる。好ましくは、円周方向のサイズは線径の40%以下、長手方向のサイズは40μm以下であれば、測定時間の短縮により測定効率をさらに高められる。
【0072】
EBSP法で高精度の測定を行うには、1回で測定できる領域は限られるため、3箇所以上の測定を行い、ばらつきを考慮した平均情報を得ることが望ましい。測定場所は近接しないよう、円周方向に異なる領域を観察できるように、測定場所を選定することが好ましい。
【0073】
例えば、線径25μmのボンディングワイヤの測定では、平板上にワイヤ向きをなるべく変えるように固定したボンディングワイヤを用い、そのワイヤ軸を中心に円周方向に8μm、長手方向には30μmのサイズを一回の測定エリアとし、1mm以上離して3箇所の測定を行うことで、ワイヤ表面の結晶方位の平均的情報を入手することが可能である。但し測定の領域、場所の選定はこの限りでなく、測定装置、ワイヤ状態等を考慮して適正化することが望ましい。
【0074】
また、芯材の結晶方位を測定する場合は、ワイヤの長手方向の垂直断面又は、長手方向と並行でワイヤ中心近傍の平行断面のどちらの測定も可能である。好ましくは、垂直断面の方が求める研磨面を容易に得られる。機械的研磨により断面を作製したときは、研磨面の残留歪みを軽減するためにエッチングにより表層を除去することが望ましい。
【0075】
EBSP法による測定結果の解析では、装置に装備されている解析ソフトを利用することで、上述したワイヤ表面の測定面積に対する各方位の結晶粒の面積が占める面積比、又は、測定エリアの中で結晶方位が識別できる結晶粒又は領域の総面積を母集団として各結晶方位が占める比率等を算出できる。ここで結晶方位の面積を算出する最小単位は、結晶粒又は、結晶粒内の一部の微小領域でも構わない。結晶粒のサイズに関しても長手方向と円周方向とでの平均サイズ等を計算できる。
【0076】
本発明のボンディングワイヤを製造するに当り、芯材の表面に表皮層を形成する工程と、表皮層、拡散層、芯材等の構造を制御する加工・熱処理工程とが必要となる。
【0077】
表皮層を芯材の表面に形成する方法には、メッキ法、蒸着法、溶融法等がある。メッキ法では、電解メッキ、無電解メッキ法は使い分けることが可能である。電解メッキでは、メッキ速度が速く、下地との密着性も良好である。電解メッキは1回のメッキ処理でも構わないが、フラッシュメッキと呼ばれる薄付けメッキと、その後に膜を成長させる本メッキとに区分でき、これら複数の工程に分けて行うことで、より膜質の安定化に有利である。無電解メッキに使用する溶液は、置換型と還元型とに分類され、膜が薄い場合には置換型メッキのみでも十分であるが、厚い膜を形成する場合には置換型メッキの後に還元型メッキを段階的に施すことが有効である。無電解法は装置等が簡便であり、容易であるが、電解法よりも時間を要する。
【0078】
蒸着法では、スパッタ法、イオンプレーティング法、真空蒸着等の物理吸着と、プラズマCVD等の化学吸着を利用することができる。いずれも乾式であり、膜形成後の洗浄が不要であり、洗浄時の表面汚染等の心配がない。
【0079】
メッキ又は蒸着を施す段階について、狙いの線径で導電性金属の膜を形成する手法と、太径の芯材に膜形成してから、狙いの線径まで複数回伸線する手法とのどちらも有効である。前者の最終径での膜形成では、製造、品質管理等が簡便であり、後者の膜形成と伸線との組み合わせでは、膜と芯材との密着性を向上するのに有利である。それぞれの形成法の具体例として、狙いの線径の細線に、電解メッキ溶液の中にワイヤを連続的に掃引しながら膜形成する手法、あるいは、電解又は無電解のメッキ浴中に太線を浸漬して膜を形成した後に、ワイヤを伸線して最終径に到達する手法等が可能である。
【0080】
ここで、前述した最終線径で表皮層を形成する最終メッキ法では、成膜後には熱処理工程だけである。また、太径の芯材に膜形成する太径メッキ法では、狙いの線径までの加工工程と熱処理工程とを組み合わせることが必要となる。
【0081】
表皮層を形成した後の加工工程では、ロール圧延、スエージング、ダイス伸線等を目的により選択、使い分ける。加工速度、圧加率又はダイス減面率等により、加工組織、転位、結晶粒界の欠陥等を制御することは、表皮層の組織、密着性等にも影響を及ぼす。
【0082】
単純にワイヤを成膜、加工及び加熱しただけでは、表皮層の表面及び内部での集合組織の結晶方位を制御できない。通常のワイヤ製造で用いられる最終線径での加工歪取り焼鈍をそのまま適用しても、表皮層と芯材との密着性の低下によりループ制御が不安定になったり、ワイヤ長手方向の表皮層の均質性、ワイヤ断面での表皮層、拡散層等の分布をコントロールすることは困難である。そこで、表皮層の成膜条件、伸線工程における減面率、速度等の加工条件、熱処理工程のタイミング、温度、速度、時間等の適正化等を総合的に組合せることで、表皮層の集合組織を安定して制御することが可能となる。
【0083】
ワイヤの圧延、伸線の工程では加工集合組織が形成され、熱処理工程では回復、再結晶が進行して再結晶集合組織が形成され、これらの集合組織が相互に関連して、最終的に表皮層の集合組織及び結晶方位が決定する。表皮層の結晶方位を<111>に配向させるには、加工集合組織を利用することがより有効である。成膜後に伸線加工の処理条件を適正化することで、<111>への配向率を高めることができる。前記伸線加工による<111>への配向率は、加工前の組成等ワイヤ条件によって異なるが、前述した表層の<111>配向率を50%以上にするためには、例えば、加工率を80%以上まで上昇させることが有効である。好
ましくは、加工率を95%以上とすることでボンディングワイヤ全体に<111>配向率を上昇させる効果を高められる。
【0084】
熱処理工程では、熱処理を1回又は複数回実施することが有効である。熱処理工程は、膜形成直後の焼鈍と、加工途中での焼鈍と、最終径での仕上げ焼鈍とに分類され、これらを選択、使い分けることが重要となる。どの加工段階で熱処理を行うかにより、最終の表皮層、表皮層と芯材との界面での拡散挙動等が変化する。一例では、メッキ処理後の加工途中に中間焼鈍を施し、さらにワイヤを伸線し、最終径で仕上げ焼鈍を施す工程で作製することで、中間焼鈍を施さない工程と比較して、表皮層/芯材の界面に拡散層を形成して密着性を向上するのに有利である。
【0085】
熱処理法として、ワイヤを連続的に掃引しながら熱処理を行い、しかも、一般的な熱処理である炉内温度を一定とするのでなく、炉内で温度傾斜をつけることで、本発明の特徴とする表皮層及び芯材を有するボンディングワイヤを量産することが容易となる。具体的な事例では、局所的に温度傾斜を導入する方法や、温度を炉内で変化させる方法等がある。ボンディングワイヤの表面酸化を抑制する場合には、N2やAr等の不活性ガスを炉内に流しながら加熱することも有効である。
【0086】
溶融法では、表皮層又は芯材のいずれかを溶融させて鋳込む手法であり、10〜100mm程度の太径で表皮層と芯材を接続した後に伸線することで生産性に優れているという利点や、メッキ、蒸着法に比べて表皮層の合金成分設計が容易であり、強度、接合性等の特性改善も容易である等の利点がある。具体的な工程では、予め作製した芯線の周囲に、溶融した導電性金属を鋳込んで表皮層を形成する方法と、予め作製した導電性金属の中空円柱を用い、その中央部に溶融金属を鋳込むことで芯線を形成する方法とに分けられる。好ましくは、後者の中空円柱の内部に芯材を鋳込む方が、表皮層中に芯材の主成分の濃度勾配等を安定形成することが容易である。ここで、予め作製した表皮層中に銅を少量含有させておけば、表皮層の表面での銅濃度の制御が容易となる。また、溶融法では、表皮層にCuを拡散させるための熱処理作業を省略することも可能であるが、表皮層内のCuの分布を調整するために熱処理を施すことで更なる特性改善も見込める。
【0087】
さらに、こうした溶融金属を利用する場合、芯線及び表皮層の内、少なくとも一方を連続鋳造で製造することも可能である。この連続鋳造法により、上記の鋳込む方法と比して、工程が簡略化され、しかも線径を細くして生産性を向上させることも可能となる。
【0088】
芯材の主成分が銅である複層銅ワイヤを用いてボンディングするときは、ボールを形成するときのシールドガスが必要であり、1〜10%の範囲でH2を含有するN2混合ガス、又は純N2ガスを用いる。従来の単層の銅ワイヤでは、5%H2+N2に代表される混合ガスが推奨されていた。一方、複層銅ワイヤでは、安価な純N2ガスを使用しても良好な接合性が得られるため、標準ガスである5%H2+N2ガスよりも、ランニングコストを低減できる。N2ガスの純度は99.95%以上であることが望ましい。即ち、純度が99.95%以上のN2ガスをワイヤ先端又はその周囲に吹付けながらアーク放電を生じさせてボール部を形成し、該ボール部を接合するボンディング方法であることが望ましい。
【0089】
また、表皮層と芯材との間に拡散層を形成することで密着性を向上することができる。拡散層とは、芯材と表皮層の主成分が相互拡散することで形成された領域であり、該主成分の濃度勾配を有する。拡散層を形成することで芯材と表皮層の密着性を向上させてループ制御や接合時の表皮層の剥離を抑制することができ、さらに濃度勾配を有することで、導電性金属は表皮層全体に均一濃度である場合より、複雑な塑性変形を受けるループ時の制御におけるワイヤ変形を安定化できる。また前述した、表皮層の表面の<111>方位を50%以上に高めることでキズ・削れを抑制する効果に対しても、濃度勾配を有する拡散層があればその効果が一層向上することが確認された。拡散層内の濃度勾配は、深さ方向への濃度変化の程度が1μm当り10mol%以上であることが望ましい。好ましくは、0.1μm当り5mol%以上であれば、表皮層と芯材の異なる物性を損なうことなく、相互に利用する高い効果が期待できる。拡散層の厚さは0.002〜0.2μmの範囲であることが好ましい。これは、拡散層の厚さが0.002μm未満であれば効果が小さく、分析で識別することも難しいためであり、0.2μmを超えると、表皮層の組織に影響を及ぼすため、前述した結晶方位を安定して形成することが難しいためである。この拡散層を制御するため、熱処理を利用することが有効である。先述したように、熱処理と加工を組み合わせて拡散の進行度を制御することにより、ワイヤの円周方向又は長手方向に所望する拡散層を均一に形成することが可能となる。
【0090】
表皮層、芯材等の濃度分析について、ボンディングワイヤの表面からスパッタ等により深さ方向に掘り下げて行きながら分析する手法、あるいはワイヤ断面でのライン分析又は点分析する方法等が有効である。前者は、表皮層が薄い場合に有効であるが、厚くなると測定時間がかかり過ぎる。後者の断面での分析は、表皮層が厚い場合に有効であり、また、断面全体での濃度分布や、数ヶ所での再現性の確認等が比較的容易であることが利点であるが、表皮層が薄い場合には精度が低下する。ボンディングワイヤを斜め研磨して、拡散層の厚さを拡大させて測定することも可能である。断面では、ライン分析が比較的簡便であるが、分析の精度を向上したいときには、ライン分析の分析間隔を狭くしたり、界面近傍の観察したい領域に絞っての点分析を行うことも有効である。これらの濃度分析に用いる解析装置では、電子線マイクロ分析法(EPMA)、エネルギー分散型X線分析法(EDX)、オージェ分光分析法(AES)、透過型電子顕微鏡(TEM)等を利用することができる。特にAES法は、空間分解能が高いことから、最表面の薄い領域の濃度分析に有効である。また、平均的な組成の調査等には、表面部から段階的に酸等に溶解していき、その溶液中に含まれる濃度から溶解部位の組成を求めること等も可能である。本発明では、前記全ての分析手法で得られる濃度値が本発明の規定範囲を満足する必要はなく、1つの分析手法で得られる濃度値が本発明の規定範囲を満足すればその効果が得られるものである。
【実施例】
【0091】
以下、実施例について説明する。
【0092】
ボンディングワイヤの原材料として、芯材に用いるCu、Au、Agは純度が約99.99質量%以上の高純度の素材を用い、表皮層又は中間金属層に用いられるAu、Pt、Pd、Ru、Rhの素材には純度99.9質量%以上の原料を用意した。
【0093】
ある線径まで細くしたワイヤを芯材とし、そのワイヤ表面に異なる金属の層を形成するには、電解メッキ法、無電解メッキ法、蒸着法、溶融法等を行い、熱処理を施した。最終の線径で表皮層を形成する方法と、ある線径で表皮層を形成した後、さらに伸線加工により最終線径まで細くする方法とを利用した。電解メッキ液、無電解メッキ液は、半導体用途で市販されているメッキ液を使用し、蒸着はスパッタ法を用いた。直径が約15〜1500μmのワイヤを予め準備し、そのワイヤ表面に蒸着、メッキ等により被覆し、最終径の15〜50μmまで伸線して、最後に加工歪みを取り除き伸び値が5〜15%の範囲になるよう熱処理を施した。必要に応じて、線径25〜200μmまでダイス伸線した後に、拡散熱処理を施してから、さらに伸線加工を施した。伸線用ダイスの減面率は、1個のダイス当たり5〜15%の範囲で準備し、それらダイスの組み合わせにより、ワイヤ表面の加工歪みの導入等を調整した。伸線速度は20〜500m/minの間で適正化した。
【0094】
溶融法を利用する場合には、予め作製した芯線の周囲に、溶融した金属を鋳込む方法と、予め作製した中空円柱の中央部に溶融した金属を鋳込む方法とを採用した。その後、鍛造、ロール圧延、ダイス伸線等の加工と、熱処理とを行い、ワイヤを製造した。
【0095】
本発明例のワイヤの熱処理について、ワイヤを連続的に掃引しながら加熱した。局所的に温度傾斜を導入する方式、温度を炉内で変化させる方式等を利用した。例えば、炉内温度を3分割して制御できるよう改造した熱処理炉を利用した。温度分布の一例では、ワイヤの挿入口から出口に向かって、高温→中温→低温、又は中温→高温→低温の分布を得て、それぞれの加熱長さも管理した。温度分布と合わせて、ワイヤ掃引速度等も適正化した。熱処理の雰囲気では、酸化を抑制する目的でN2、Ar等の不活性ガスも利用した。ガス流量は、0.0002〜0.004m3/minの範囲で調整し、炉内の温度制御にも利用した。熱処理を行うタイミングとして、伸線後のワイヤに熱処理を施してから表皮層を形成する場合と、熱処理を加工前、加工途中、又は表皮層を形成した直後等の内1回又は2回以上行う等の場合とを使い分けた。
【0096】
表皮層を形成した後の圧延、伸線による加工レベルについて、成膜時のワイヤと最終線径との面積比率で算出する累積の加工率で整理できる。この加工率(%)が30%未満の場合にはR1、30%以上70%未満ではR2、70%以上95%未満ではR3、95%以上ではR4で表記した。
【0097】
表皮層の表面組織を制御するには、材質、組成、厚さ等の材料因子と、膜形成条件、加工・熱処理条件等プロセス因子を適正化することが必要である。実施例において、表皮層の表面における長手方向の<111>比率を増加させる方策として、加工率を高めること、初期の膜厚を薄くすること、熱処理を低温化すること等が有効である。一例として、上記加工率がR2〜R4であれば、<111>比率を増加させることが比較的容易となる。一方の比較例では、<111>割合を低減させるために、加工率を低減したり、熱処理を高温又は長時間で実施することが有効であった。
【0098】
ワイヤ表面の組織観察について、ボンディングワイヤの表層における表面のある領域において、EBSP法により結晶方位を測定した。測定試料の準備では、3〜5本のボンディングワイヤを平板上に互いにワイヤ向きをなるべく変えるように固定した。観察領域はワイヤ軸を含む四角形の領域として、サイズは円周方向に5〜10μm、長手方向に10〜50μmを一回の測定エリアとした。測定箇所は、3〜10箇所とし、お互いに0.5mm以上離して選定した。測定ポイントの間隔は0.01〜0.2μmの間隔で実施した。
【0099】
芯材の組織観察では、ボンディングワイヤの断面を研磨し、化学エッチングにより表面の加工歪みを低減した試料を用いて、EBSP法により結晶方位を測定した。断面は、ワイヤ長手方向に垂直の断面を主として測定したが、試料状態、再現性等を検討しながら必要に応じて、ワイヤ長手方向に平行で中心軸を通る断面でも測定を実施した。
【0100】
EBSP測定データの解析には専用ソフト(TSL製 OIM analysis等)を利用した。測定エリアでの結晶方位を解析し、その内<111>、<100>方位等の結晶粒の割合を求めた。ボンディングワイヤの長手方向を基準に方位を決定し、それぞれの結晶方位の角度差が15°以内のものまで含めた。その結晶粒の割合の算出法について、測定エリアの全体面積を母集団として算出する各方位の割合(以下、面積比率と呼ぶ)と、測定エリア内である信頼度を基準に同定できた結晶方位だけの面積を母集団として算出する各方位の割合(以下、方位比率と呼ぶ)との2種類を求めた。後者の方位比率を求める過程では、結晶方位が測定できない部位、あるいは測定できても方位解析の信頼度が低い部位等は除外して計算した。ここで、信頼度とは、解析ソフトにパラメータが用意されている場合があり、例えばConfidential Index(CI値)、Image Quality(IQ値)等数種のパラメータを利用して、試料状態、解析目的等に応じて判定基準を選定することが望ましい。
【0101】
ワイヤ表面の膜厚測定にはAESによる深さ分析を用い、結晶粒界の濃化等元素分布の観察にはAES、EPMA等による面分析、線分析を行った。AESによる深さ分析では、Arイオンでスパッタしながら深さ方向に測定して、深さの単位にはSiO2換算で表示した。ボンディングワイヤ中の導電性金属濃度は、ICP分析、ICP質量分析等により測定した。
【0102】
ボンディングワイヤの接続には、市販の自動ワイヤボンダーを使用して、ボール/ウェッジ接合を行った。アーク放電によりワイヤ先端にボールを作製し、それをシリコン基板上の電極膜に接合し、ワイヤ他端をリード端子上にウェッジ接合した。ボール形成時の酸化を抑制するために用いるシールドガスは、主に純N2ガスを用いた。ガス流量は、0.001〜0.01m3/minの範囲で調整した。
【0103】
接合相手は、シリコン基板上の電極膜の材料である、厚さ1μmのAl合金膜(Al-1%Si-0.5%Cu膜、Al-0.5%Cu膜)を使用した。一方、ウェッジ接合の相手には、表面にAgメッキ(厚さ:2〜4μm)したリードフレームを用いた。尚、BGA基板上のAu/Ni/Cuの電極への接合性についても、一部のワイヤ試料を用いて、前記リードフレームと同様の効果が得られることを確認している。
【0104】
ワイヤ表面のキズ、削れ等の評価では、ボンディングされたループの外観観察により調査した。ワイヤ製造工程で発生したキズ、削れ等ループ形成前の影響も含めて評価できる。線径は25μmとする。ワイヤ長は2mmの汎用スパンと5mmのロングスパンの2種類で、高さの狙い値が100〜250μmとなる台形ループを形成し、それぞれ1000本のボンディングワイヤを投影機により観察した。キズ観察はループの外側を中心に、削れ観察は発生頻度の多いボール接合部近傍のネック部を中心に観察し、サイズが10μm以上のキズをカウントした。また、低ループ評価として、ループ高さの狙い値が約65μmとなる低いループを形成し、同様にキズ、削れの発生を観察した。一般的には、ワイヤ長が長いほど、あるいはループ高さが低いほど、ワイヤ表面がこすれる度合いが増えるため、より厳しい評価となる。削れが4本以上でキズも顕著な場合には問題有りと判断して×印で表し、削れが1〜3本の範囲だが、キズ発生が多く、キャピラリ詰まり等への影響が懸念される場合は、改善が必要と判断して△印で表し、削れが1〜3本の範囲で、問題視する大きなキズ発生がない場合には、ワイヤ表面は比較的良好であるため○印で示し、削れが発生しておらず、キズも目立たない場合には安定して良好であると判断し◎印で表した。キズ、削れの判定には、観察者の個人的判断によって多少影響を受けることが懸念されるため、2人以上の観察者で評価して、平均情報でランク付けを行った。
【0105】
細線におけるワイヤ表面のキズ、削れの評価では、線径が22μmと18μmの2種を用いた。ワイヤ長は2mmで、高さの狙い値が70〜200μmとなる台形ループを形成し、それぞれ1000本のボンディングワイヤを投影機により観察した。キズ、削れ等の判定基準は前述と同じものを採用した。
【0106】
ボンディングされたループの直線性を評価するため、ワイヤ間隔(スパン)が2mmの通常スパン、5mmのロングスパン、7mmの超ロングスパンの3種でボンディングを行った。線径は25μmとする。30本のボンディングワイヤを投影機により上方から観察して、ボール側とウェッジ側との接合部を結ぶ直線に対し、ボンディングワイヤが最も離れている部位のずれを曲がり量として測定した。その曲がり量の平均が、線径の1本分未満であれば良好であると判断し◎印で表示し、2本分以上であれば不良であるため△印、その中間であれば、通常は問題とならないため○印で表示した。
【0107】
ボンディング工程でのループ形状安定性については、ワイヤ長が5mmのロングスパンで、ループ高さが200〜250μmとなるように台形ループを30本接続し、高さの標準偏差より評価した。線径は25μmとする。高さ測定には光学顕微鏡を使用し、位置はループの最頂点の近傍と、ループの中央部の2箇所で測定した。ループ高さの標準偏差がワイヤ径の1/2以上であれば、バラツキが大きいと判断し、1/2未満であればバラツキは小さく良好であると判断した。その基準を基に判断し、3箇所ともバラツキが小さい場合には、ループ形状が安定していると判断し、◎印で表示し、バラツキが大きい個所が1箇所である場合には、比較的良好であるため○印、2箇所の場合には△印、3箇所ともバラツキが大きい場合には×印で表示した。
【0108】
圧着ボール部の接合形状の判定では、接合されたボールを200本観察して、形状の真円性、異常変形不良、寸法精度等を評価した。線径は20μmとする。初期ボール径/ワイヤ径の比率が1.9〜2.2の通常サイズのボールを形成する場合と、比率が1.5〜1.7の範囲である小径ボールを形成する場合の、2種類でそれぞれ評価した。真円からずれた異方性や花弁状等の不良ボール形状が5本以上であれば不良と判定し×印、真円からずれた不良ボール形状が2〜4本ある場合は二つに分類して、異常変形が1本以上発生していれば量産での改善が望ましいから▲印、異常変形が発生していなければ使用可能であることから△印、不良ボール形状が1本以下であれば良好であるため○印で表記した。
【0109】
ピール接合強度の評価には、ウェッジ接合部のプル試験を用いた。線径は25μm、スパンは2mmとする。これは、ワイヤ長の3/4よりもウェッジ接合部に近い位置で、ループに引っ掛けたフックを上方に移動させ、ボンディングワイヤの破断強度を測定した。プル強度はボンディングワイヤの線径、ループ形状、接合条件等にも左右されるため、絶対値ではなく、プル強度/ワイヤ引張強度の相対比率(Rp)を利用した。Rpが20%以上であればウェッジ接合性は良好であるため◎印、15%以上20%未満であれば問題ないと判断し○印、10%以上15%未満であれば不具合が発生する場合があると判断して△印、10%以上であれば量産工程で問題があるため×印で表示した。
【0110】
ループ形成における外皮層と芯材の密着性を評価するため、上方からループを光学顕微鏡で観察して外皮層の剥離の発生を調べた。線径は25μm、スパンは3mmの通常のループを用いて、ループ数は400本観察した。剥離数で比較して、ゼロであれば良好であると判断して○印、1〜4本であれば通常の使用では問題ないが改善が求められる場合があるため△印、5本以上であれば量産工程で問題があるため×印で表示した。
【0111】
AES分光分析の深さ分析において、表皮層と芯材の間に濃度勾配を有する拡散層が確認され、その拡散層の厚さが0.002〜0.2μmの範囲である場合には、表1中の「拡散層」の欄に○印で表記した。
【0112】
チップへの損傷の評価では、ボール部を電極膜上に接合した後、電極膜をエッチング除去して、絶縁膜又はシリコンチップへの損傷をSEMで観察した。電極数は400箇所を観察した。損傷が認められない場合は○印、クラックが2個以下の場合は問題ないレベルと判断して△印、クラックが3個以上の場合は懸念されるレベルと判断して×印で記載する。
【0113】
表1及び表2には、本発明に係わるボンディングワイヤの実施例と比較例を示す。
【0114】
【表1】

【0115】
【表2】

【0116】
第1請求項に係わるボンディングワイヤは実施例1〜39であり、第2請求項に係わるボンディングワイヤは実施例2〜14、16、18〜39、第3請求項に係わるボンディングワイヤは実施例1〜30、33〜39、第4請求項に係わるボンディングワイヤは実施例1〜7、10〜13、15〜17、19〜30、33〜39、第5請求項に係わるボンディングワイヤは実施例1〜9、12〜14、16、17、19〜24、26〜39、第6請求項に係わるボンディングワイヤは実施例1〜5、9〜21、23〜39、第7請求項に係わるボンディングワイヤは実施例1〜10、12〜39、第8請求項に係わるボンディングワイヤは実施例1〜22、24〜39、第9請求項に係わるボンディングワイヤは実施例25〜30、第10請求項に係わるボンディングワイヤは実施例1〜32、34〜39、第11請求項に係わるボンディングワイヤは実施例1〜9、11〜31、33〜39、第12請求項に係わるボンディングワイヤは実施例2、8、9、12、27、33、34、第13請求項に係わるボンディングワイヤは実施例8、34〜37、39、第14請求項に係わるボンディングワイヤは実施例17、19、20、22、30に相当する。比較例1〜6では、第1請求項を満足しない場合の結果を示す。
【0117】
図1には、実施例4のボンディングワイヤの表面において、EBSP測定結果の一例を示す。ワイヤ長手方向の結晶方位が<111>方位から角度差15°以内の領域を着色し、角度差が15°以上の結晶粒界を線表示した。図1における<111>面積比率は88%であった。
【0118】
それぞれの請求項の代表例について、評価結果の一部を説明する。
【0119】
実施例1〜39の複層構造のボンディングワイヤは、本発明に係わる、表皮層の表面における長手方向の結晶方位の内<111>の占める割合(<111>方位比率)が50%以上であることにより、ワイヤ表面のキズ、削れが低減していることが確認された。一方、表皮層の表面における<111>方位比率が50%未満である複層構造のボンディングワイヤに関する比較例1〜6では、通常のループ形成でも削れ、キズが多数確認された。好ましい事例として、表皮層の<111>方位比率が60%以上である実施例2〜5、8、9、11、13、14、16、18〜21、23、24、26、27、29、31、35〜37、39では、ロングスパンでもキズ、削れを低減することができ、さらに表皮層の<111>方位比率が70%以上である実施例3〜5、9、11、14、20、21、23、26、29、35では、低ループの厳しい条件でもキズ、削れの不良が抑えられていることを確認した。
【0120】
実施例2〜14、16、18〜39の複層構造のボンディングワイヤは、本発明に係わる、表皮層の表面における<111>と<100>とを合計した方位比率が60%以上であることにより、スパン3mmでの通常のループ条件でのループ高さのバラツキが抑えられ安定していることが確認された。好ましくは、該方位比率が80%以上である実施例3〜5、7〜11、14、16、20、21、23、26、29、30、31、35、36、39では、スパン5mmのロングスパンでもループ高さを安定化させることができる。
【0121】
実施例1〜7、10〜13、15〜17、19〜30、33〜39の複層構造のボンディングワイヤは、本発明に係わる、芯材の断面における<111>と<100>とを合計した方位比率が30%以上であることにより、通常のボール寸法で、ボール接合部の花弁不良を低減して、形状を安定化できることを確認した。好ましくは、該方位比率が50%以上である実施例3、7、10、11、19〜21、23、24、26、29、30、35、37、39では、厳しい接合条件である小径ボールでも、ボール接合部の真円性が向上することを確認した。
【0122】
実施例1〜9、12〜14、16、17、19〜24、26〜39の複層構造のボンディングワイヤは、本発明に係わる、表皮層の表面における結晶粒の平均サイズの、長手方向/円周方向のアスペクト比が3以上であることにより、通常条件の3mmスパンにおいて、ループの直線性が良好であることを確認した。好ましくは、該アスペクト比が5以上である実施例2〜5、7、8、13、14、16、20〜24、26、27、29、30、31、35〜38では、厳しい接合条件である5mmのロングスパンでも、直線性を向上できることを確認した。より好ましくは、該アスペクト比が10以上である実施例3〜5、14、21、24、26、29、36では、厳しいループ条件である7mmの超ロングスパンでも、直線性を向上できることを確認した。
【0123】
実施例1〜5、9〜21、23〜39の複層構造のボンディングワイヤは、本発明に係わる、表皮層の表面におけるワイヤ長手方向の結晶方位が<111>である結晶粒の面積がワイヤ表面に対する割合(<111>面積比率)が30%以上であることにより、線径が22μmの細線で、ワイヤ表面のキズ、削れが低減していることが確認された。好ましくは、<111>面積比率が40%以上である実施例3〜5、11、14、16、18、20、21、23、26、29、30、31、33〜36、39がさらに細い18μmの極細線でも、キズ、削れを抑制できることを確認した。より好ましくは、<111>面積比率が50%以上である実施例4、5、20、21、29、35では、18μmの極細線でキズ、削れを抑制する効果がさらに高められることを確認した。
【0124】
実施例25〜30の複層構造のボンディングワイヤは、本発明に係わる、前述した<111>方位比率が50%以上であり、且つ、表皮層と芯材との間に中間金属層を有することにより、ウエッジ接合部でのピール強度を高められることを確認した。
【0125】
実施例1〜30、33〜39の複層構造のボンディングワイヤは、本発明に係わる、芯材の断面における<111>と<100>とを合計した方位比率が15%以上であることにより、通常のボール寸法で、ボール接合部の異常変形を低減して、形状を安定化できることを確認した。
【0126】
実施例1〜32、34〜39の複層構造のボンディングワイヤは、本発明に係わる、外皮層の厚さが0.005〜0.2μmの範囲であることにより、チップ損傷を低減し良好であった。比較として、実施例33では、外皮層の厚さが0.2μmを超えるため、チップ損傷が増加していることが確認された。
【0127】
実施例1〜9、11〜31、33〜39の複層構造のボンディングワイヤは、本発明に係わる、表皮層と芯材の間に濃度勾配を有する拡散層を有するため、ループ上方で剥離がなく表皮層の密着性が良好であることが確認された。
【0128】
実施例2、8、9、12、27、33、34の複層構造のボンディングワイヤは、本発明に係わる、芯材を構成する主成分がCuで、B、Pd、P、Zrの1種以上を5〜300ppmの範囲で含有することにより、スパン5mm程度のループの直線性が向上することが確認された。同様に、実施例17、19、20、22、30は、本発明に係わる、芯材を構成する主成分がAuで、Be、Ca、Ni、Pdの1種以上を5〜8000ppmの範囲で含有することにより、直線性が向上することが確認された。ここでスパン5mm程度のループの直線性を改善する作用については、前述した、長手方向/円周方向のアスペクト比が5以上であることも有効であり、上記の合金成分の添加による効果と識別するのが難しい場合もある。一方で、実施例9、12、17、19、33では、アスペクト比が5未満であるものの、上記の合金成分を含有することで、スパン5mm程度の直線性を改善できることが確認された。
【0129】
実施例8、34〜37、39の複層構造のボンディングワイヤは、本発明に係わる、前記芯材を構成する主成分がCuで、Pdを5〜10000ppmの範囲で含有し、前記表皮層を構成する主成分がPdまたはAgであることにより、ループの上面近傍の剥離・削れを低減させる高い効果が得られることが確認された。好ましくは、実施例8、35〜37、39では、Pd濃度が200ppm以上であるため、上記効果がより顕著であった。また、実施例8、34〜36、39ではPd含有量が5〜8000ppmの範囲であるため、チップ損傷を抑制されていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性金属からなる芯材と、前記芯材の上に該芯材とは異なる金属を主成分とする表皮層とを有する半導体装置用ボンディングワイヤであって、
前記表皮層の金属が面心立方晶であって、該表皮層の厚さが0.005〜0.2μmの範囲であり、
前記表皮層の表面の結晶面におけるワイヤ長手方向の結晶方位<hkl>の内、前記ワイヤ長手方向に対して角度差が15°以内までを含む<111>の方位比率が50%以上であり、
前記表皮層と前記芯材との間に、前記表皮層及び前記芯材を構成する主成分とは異なる成分からなる中間金属層を有する
ことを特徴とする半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項2】
前記芯材の断面の結晶面におけるワイヤ長手方向の結晶方位<hkl>の内、<111>と<100>との占める割合が30%以上であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項3】
前記表皮層の表面におけるワイヤ長手方向の結晶方位が<111>である結晶粒の面積が、ワイヤ表面の総面積に対する割合として30%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項4】
前記表皮層を構成する主成分がPd、Pt、Ru、Agの内少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項5】
前記表皮層と芯材の間に濃度勾配を有する拡散層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項6】
前記芯材を構成する主成分がCuで、B、Pd、Bi、P、Zrの1種以上を5〜300ppmの範囲で含有することを特徴とする請求項4又は5のいずれか1項に記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項7】
前記芯材を構成する主成分がCuで、Pdを5〜10000ppmの範囲で含有し、前記表皮層を構成する主成分がPdまたはAgであることを特徴とする請求項4又は5のいずれか1項に記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項8】
前記芯材を構成する主成分がAuで、Be、Ca、Ni、Pd、Ptの1種以上を5〜8000ppmの範囲で含有することを特徴とする請求項4又は5のいずれか1項に記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−44729(P2011−44729A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238296(P2010−238296)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【分割の表示】特願2008−295178(P2008−295178)の分割
【原出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(306032316)新日鉄マテリアルズ株式会社 (196)
【出願人】(595179228)株式会社日鉄マイクロメタル (38)
【Fターム(参考)】