説明

半導体装置

【課題】設計変更することなく、入出力信号を任意の外部端子から入出力できる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、導電支持基板1と、該基板1に固着した半導体チップ4と、該基板1に固着され、部品10(電気・電子部品)を固着した絶縁基板6と、外部導出端子2と、基板6上に形成したボンディングパッド7と該端子2とを接続するボンディングワイヤ8と、モールド樹脂12で構成し、外部導出端子2の一部を、接続するボンディングパッド7側の基板6の一辺に対向し、且つ、平行になるように形成し、ボンディングパッド7と対向する外部導出端子の平行箇所3の長さL2を、ボンディングパッド7の両端の間の長さL1より長くする。こうすることで、外部導出端子の平行箇所3にボンディングワイヤ8をそれぞれ交叉しないように固着することで、設計変更することなく、入出力信号を任意の外部導出端子から入出力できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の外部導出端子を有する樹脂封止された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、農機具および芝刈機などの内燃機関(エンジン)に用いられる点火装置の一例をつぎに示す。
図8は、従来の点火装置の要部構成図である。磁石付きフライホイール71(磁石がフライホイールの円周面に内蔵されている)と点火コイル72の1次コイル72aとは磁気的に結合し、2次コイル72bは点火プラグ73と接続する。1次コイル72aおよび2次コイル72bはパワートランジスタである半導体チップ4および制御回路76と接続する。
また、制御回路76は制御部を内蔵したICチップ75とトリガ回転数設定用の抵抗74とで構成される。つぎに、この点火装置の動作を説明する。
フライホイール71は内燃機関の出力回転数(rpm)に連動して回転し、フライホイール71の回転に応じて1次コイル72aに電圧が誘起される。制御回路76は誘起された電圧により回転数を検知し、回転数が設定されたトリガ開始回転数以下の場合は、パワートランジスタ(半導体チップ4)を遮断状態または導通状態のいずれかに固定して、1次コイル72aの誘起電圧による電流の遮断を行わないように制御回路76を設定する。回転数が設定されたトリガ開始回転数以上になると、パワートランジスタのオン、オフ制御が開始され、所定の位相でパワートランジスタの遮断が行われる。パワートランジスタの遮断時に1次コイル72aを介して2次コイル72bに高電圧が発生し、点火プラグ73の好適な高電圧が印加される。抵抗74の値を変えると、トリガ開始回転数を変えることができ、抵抗74の値を大きくするとトリガ開始回転数が高くなるように制御回路76は設計されている。この制御回路76とパワートランジスタとはモールド樹脂62内に収納される。
【0003】
尚、図中の6は導電パターン付き絶縁基板、7a〜7eは絶縁基板6上に形成されたボンディングパッド、51は半導体チップ4と絶縁基板6を固着する導電支持基板、52a〜52eは外部導出端子である。
図9は、従来の半導体装置の構成図であり、同図(a)は要部平面図、同図(b)は要部側面図である。図8のパワートランジスタ(半導体チップ4)と、制御回路を構成する抵抗74やICチップ75などの部品10を固着した導電パターン付きの絶縁基板6を導電支持基板51に固着する。絶縁基板6のボンディングパッド11と半導体チップ4のボンディングパッド5をボンディングワイヤ9で接続する。外部導出端子52と絶縁基板6のボンディングパッド7(7a〜7e)はボンディングワイヤ58で接続する。導電支持基板51、半導体チップ4、絶縁基板6、外部導出端子52およびボンディングワイヤ9、58をモールド樹脂62で封止して固定する。
【0004】
前記の外部導出端子52は、制御回路76への入出力信号を入出力したり、パワートランジスタのエミッタ・コレクタ間の電圧を出力したりする。この外部導出端子52は、顧客側の仕様で設計されるフライホイール71や点火コイル72や制御回路76などと接続する。
尚、共通のパッケージに相互に絶縁された複数の半導体ダイ(半導体チップ)を装着した例が特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平4−233262号公報 第1図
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば、Aという顧客は、図9のように、外部導出端子52から入出力される信号を左側から、例えば、a、b、c、d、eとする設計を行うものとする。また、Bという顧客は、図10のように、外部導出端子52から入出力される信号を左側から、例えば、c、a、e、d、bとする設計を行うものとする。このように設計が顧客で異なるのは、顧客の設計思想がそれぞれで異なるためである。
このような場合、Aの顧客の設計に対応する場合は、図9のように、ボンディングパッド7a、7b、7c、7d、7eと外部導出端子2a、2b、2c、2d、2eをボンディングワイヤ58で配線する。この場合はボンディングワイヤ8同士は交叉せずに平行に配線できるので半導体装置として組み立てすることができる。
しかし、Bという顧客の設計に対応しようとした場合には、図10のように、ボンディングワイヤ58が交叉してしまいボンディングワイヤ58を配線することがきなくなり、半導体装置として組み立てすることができない。
【0006】
Bの顧客に対応しようとすると、平行に配線できるようにボンディングパッド7a、7b、7c、7d、7eに入出力する信号を変更する必要がでてくる。これは絶縁基板6の導電パターンを変更することになる。
つまり、顧客の設計に応じて、その都度、半導体装置の設計変更が必要となり、製造コストが増大し、リードタイム(製造時間で納期に関係する)が長くなってしまう。
この発明の目的は、前記の課題を解決して、設計変更することなく、入出力信号を任意の外部導出端子から入出力できる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、四角形の半導体チップと、該半導体チップを固着する四角形の導電支持基板と、複数の外部導出端子と、半導体チップと外部導出端子を接続するワイヤと、半導体チップを封止するモールド樹脂とを有する半導体装置において、前記複数の外部導出端子のうち少なくとも一部の外部導出端子の一部が導電支持基板の一辺と平行して配置される構成とする。
また、四角形の半導体チップと、電気部品が固着した導電パターンが形成された四角形の絶縁基板と、前記半導体チップと前記絶縁基板を固着する導電支持基板と、複数の外部導出端子と、半導体チップと外部導出端子を接続するワイヤと、前記半導体チップと前記絶縁基板を封止するモールド樹脂とを有する半導体装置において、前記複数の外部導出端子のうち少なくとも一部の外部導出端子の一部が導電支持基板の一辺と平行して配置される構成とする。
【0008】
また、前記該平行に配置される箇所の外部導出端子の長さが、導電支持基板の一辺に形成される複数の第2ボンディングパッドの最も外側に配置された2つの第2ボンディングパッド間の長さ以上であるとよい。
また、前記半導体チップがリードフレームに固着されるとよい。
また、前記半導体チップと前記絶縁基板がリードフレームに固着されるとよい。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、複数の外部導出端子のうち少なくとも一部の外部導出端子の一部を導電支持基板と平行に配置し、複数のボンディングパッドの両側に配置されるボンディングパッド間の長さより平行に配置された外部導出端子の長さを長くすることで、絶縁基板の導電パターンの設計変更なしで、入出力信号を任意の外部導出端子から入出力することができるようになる。
つまり、半導体装置の設計変更なしで、顧客の設計に対応できるので、低コストでリードタイムが短い半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の最良の形態を以下の実施例で説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、この発明の第1実施例の半導体装置の構成図であり、同図(a)は要部平面図、同図(b)は要部側面図である。この半導体装置は、導電支持基板1と、この導電支持基板1に固着した半導体チップ4と、この導電支持基板1に固着され、抵抗やICチップなどの部品10(電気・電子部品)を固着した導電パターン付き絶縁基板6と、外部導出端子2と、絶縁基板6上に形成したボンディングパッド7と外部導出端子2とを接続するボンディングワイヤ8と、これらを封止するモールド樹脂12で構成される。尚、ICチップと導電パターン月絶縁基板6との電気的接続はフェイスダウンボンディング(フリップチップ)もしくは図示しないワイヤボンディングにより行われる。外部導出端子2は5本の外部導出端子2a、2b、2c、2d、2eから構成され、絶縁基板6上に形成されたボンディングパッド7は5個のボンディングパッド7a、7b、7c、7d、7eで構成され、それぞれボンディングワイヤ8で接続する。この外部導出端子2の一部を、接続するボンディングパッド7側の絶縁基板6の一辺に対向し、且つ、平行になるように形成し、ボンディングパッド7と対向する外部導出端子の平行箇所3の長さL2を、ボンディングパッド7の両端の間の長さL1と同程度もしくはそれ以上の長さとする。長さL2は長さL1より短くてもよいが、望ましくはL2≧L1である。本実施例では長さL2を長さL1より長くする。この外部導出端子の平行箇所3にボンディングワイヤ8をそれぞれ交叉しないように固着する。
【0012】
例えば、ボンディングパッド7a、7b、7c、7d、7eからの入出力信号を左側からa、b、c、d、eとしたとき、顧客の設計で外部導出端子2a、2b、2c、2d、2eからそれぞれ入出力する入出力信号をc、a、e、d、bとした場合(これはすなわち、図10に示すように従来の半導体装置では対応不可能な場合である)、図1のように、ボンディングパッド7aと外部導出端子2b、ボンディングパッド7bと外部導出端子2e、ボンディングパッド7cと外部導出端子2a、ボンディングパッド7dと外部導出端子2d、ボンディングパッド7eと外部導出端子2cをそれぞれボンディングワイヤ8で接続すると、顧客の要求する位置の外部導出端子から顧客が要求する入出力信号を入出力させることができる。また、ボンディングワイヤ8を外部導出端子の平行箇所3に固着するので、ボンディングワイヤ8は互いに交叉することなく平行に配線することができる。つまり、ボンディングワイヤ8を固着する外部導出端子2を平行箇所3で変えるだけで、顧客の要求する位置の外部導出端子から顧客が要求する入出力信号を入出力させることができる。
【0013】
このように、外部導出端子の平行箇所3にボンディングワイヤ8を固着することで、絶縁基板6の導電パターンの設計変更なしで、顧客が要求する位置の外部導出端子から顧客が要求する任意の入出力信号を入出力することができるので、低コストで、リードタイムの短い半導体装置を提供することができる。
前記の外部導出端子2は、図1では導電支持基板1の一辺に対向するように形成されているが、必要に応じて、二辺から四辺に対向するように外部導出端子2を形成し、外部導出端子2をモールド樹脂12の根元で直角に折り曲げて、ICのパッケージのようにしてもよい。
尚、図中の11は、半導体チップ4に形成したボンディングパッド5とボンディングワイヤ9で接続する絶縁基板6に形成したボンディングパッドである。
【0014】
つぎに、この半導体装置の製造方法について説明する。
図2から図6は、図1の半導体装置の製造方法を示す図であり、工程順に示した要部製造工程平面図である。
平行箇所3のある外部導出端子となる箇所23と導電支持基板1を有するリードフレーム20を形成する。リ−ドフレーム20は、枠板21および接続板22により導電支持基板1および外部導出端子となる箇所23が互いに接続し、一体となっている(図2)。
つぎに、リードフレーム20の導電支持基板1上に半導体チップ4と部品10が固着された導電パターン付き絶縁基板6を固着する(図3)。
つぎに、外部導出端子となる箇所23の平行箇所3と絶縁基板6に形成されたボンディングパッド7a〜7eおよび半導体チップ4と絶縁基板6に形成されたボンディングパッド11とをボンディングワイヤ8、9でそれぞれ接続する。このとき、ボンディングワイヤ8同士が交叉しないように平行になるようにする(図4)。
【0015】
つぎに、導電支持基板1、半導体チップ4、絶縁基板6、外部導出端子となる箇所23の平行箇所3およびボンディングワイヤ8、9などをモールド樹脂12で封止する(図5)。
つぎに、外部導出端子となる箇所23同士を接続している接続板22と枠板21を図5の切断線24で切り離して外部導出端子2(2a〜2e)を形成して、半導体装置が完成する(図6)。
【実施例2】
【0016】
図7は、この発明の第2実施例の半導体装置の構成図であり、同図(a)は要部平面図、同図(b)は要部側面図である。図1との違いは、導電支持基板1上に絶縁基板6が固着されず半導体チップ13のみ固着している点である。半導体チップ13上に形成されたボンディングパッド14(14a〜14e)と外部導出端子2(2a〜2e)の平行箇所3とがボンディングワイヤ8で接続され、外部導出端子の平行箇所3の長さL2がボンディングパッドの両端の長さL3より長くする。こうすることで、図1と同様の効果を得ることができる。
尚、必ずしも全ての外部導出端子に平行箇所3を設けなくてもよい。例えば、ある辺にモンディングパッドが1つしかない場合、そのボンディングパッドに対応する外部導出端子に平行箇所を設けても、本発明の効果は得られない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の第1実施例の半導体装置の構成図であり、(a)は要部平面図、(b)は要部側面図
【図2】図1の半導体装置の要部製造工程平面図
【図3】図2に続く、図1の半導体装置の要部製造工程平面図
【図4】図3に続く、図1の半導体装置の要部製造工程平面図
【図5】図4に続く、図1の半導体装置の要部製造工程平面図
【図6】図5に続く、図1の半導体装置の要部製造工程平面図
【図7】この発明の第2実施例の半導体装置の構成図であり、(a)は要部平面図、(b)は要部側面図
【図8】従来の点火装置の要部構成図
【図9】従来の半導体装置の構成図であり、(a)は要部平面図、(b)は要部側面図
【図10】図9のボンディングワイヤが交叉する場合の要部平面図
【符号の説明】
【0018】
1 導電支持基板
2、2a〜2e 外部導出端子
3 平行箇所 4、13 半導体チップ
5、14、14a〜14e ボンディングパッド(半導体チップ上)
6 導電パターン付き絶縁基板
7、7a〜7e、11 ボンディングパッド(絶縁基板上)
8、9 ボンディングワイヤ
10 部品
12 モールド樹脂
20 リードフレーム
21 枠板
22 接続板
23 外部導出端子となる箇所
24 切断線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角形の半導体チップと、該半導体チップを固着する四角形の導電支持基板と、複数の外部導出端子と、半導体チップと外部導出端子を接続するワイヤと、半導体チップを封止するモールド樹脂とを有する半導体装置において、
前記複数の外部導出端子のうち少なくとも一部の外部導出端子の一部が導電支持基板の一辺と平行して配置されることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
四角形の半導体チップと、電気部品が固着した導電パターンが形成された四角形の絶縁基板と、前記半導体チップと前記絶縁基板を固着する導電支持基板と、複数の外部導出端子と、半導体チップと外部導出端子を接続するワイヤと、前記半導体チップと前記絶縁基板を封止するモールド樹脂とを有する半導体装置において、
前記複数の外部導出端子のうち少なくとも一部の外部導出端子の一部が導電支持基板の一辺と平行して配置されることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記該平行に配置される箇所の外部導出端子の長さが、導電支持基板の一辺に形成される複数の第2ボンディングパッドの最も外側に配置された2つの第2ボンディングパッド間の長さ以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体チップがリードフレームに固着されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体チップと前記絶縁基板がリードフレームに固着されることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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