説明

半導体装置

【課題】 対向する両金属体の間に2個以上の半導体素子を介在させ、これらを樹脂でモールドしてなる半導体装置において、応力的なバランスをとる。
【解決手段】 対向して配置された第1の金属体20および第2の金属体30と、これら両金属体20、30の間に設けられ両金属体20、30と熱的に接続された第1の半導体素子10と、これら両金属体20、30の間に設けられ両金属体20、30と熱的に接続された第2の半導体素子11と、これら両金属体20、30の間に充填され第1の半導体素子10および第2の半導体素子11を封止するモールド樹脂70とを備える半導体装置100において、両金属体20、30が隔てられている方向における両金属体20、30の間隔の中心部に対して、第1の半導体素子10は第1の金属体20に寄った位置に配置され、第2の半導体素子11は第2の金属体30に寄った位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、向する両金属体の間に2個以上の半導体素子を介在させ、これらを樹脂でモールドしてなる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の半導体装置としては、一般に、対向して配置された第1の金属体および第2の金属体と、第1の金属体と前記第2の金属体の間に設けられ当該両金属体と熱的に接続された第1の半導体素子および第2の半導体素子と、当該両金属体の間に充填され第1の半導体素子および第2の半導体素子を封止するモールド樹脂とを備えて構成されたものが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、この種の半導体装置の一般的な断面構成を具体的に示す図である。第1の金属体20および第2の金属体30は、放熱性に優れた金属などのヒートシンク材料からなる板材であり、これら両金属体20、30は対向して配置されている。
【0004】
第1の金属体20と第2の金属体30との間には、第1の半導体素子10と第2の半導体素子11が、平面的に並列に配置されている。そして、第1の半導体素子10および第2の半導体素子11の下面と下側の第1の金属体20の上面との間は、第1の導電性接合部材51によって熱的に接合されている。
【0005】
また、両半導体素子10、11の上面とヒートシンクブロックなどからなる第3の金属体40の下面との間は、第2の導電性接合部材52によって熱的に接合されている。さらに、第3の金属体40の上面とその上側の第2の金属体30の下面との間は、第3の導電性接合部材53によって熱的に接合されている。
【0006】
そして、第1の金属体20と第2の金属体30との間には、モールド樹脂70が充填され、このモールド樹脂70によって、第1の半導体素子10および第2の半導体素子11、さらに第3の金属体40が封止されている。
【0007】
また、図5に示されるように、モールド樹脂70の内部において第1の半導体素子10の周囲には、リードフレーム60が設けられており、図示しないボンディングワイヤなどを介して、リードフレーム60と第1の半導体素子10とが電気的に接続されている。
【0008】
このリードフレーム60は、その先端部がモールド樹脂70から露出しており、第1の半導体素子10と外部とを電気的に接続可能としている。
【0009】
そして、このような半導体装置においては、第1および第2の半導体素子10、11の上面では、第2の導電性接合部材52、第3の金属体30、第3の導電性接合部材53および第2の金属体30を介して放熱が行われ、第1および第2の半導体素子10、11の下面では、第1の導電性接合部材51から第1の金属体20を介して放熱が行われる構成となっている。
【特許文献1】特開2004−6967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らの検討によれば、上記図5に示されるような半導体装置においては、次のような問題が生じることがわかった。
【0011】
本発明者らは、従来では、図5に示されるように、第1の半導体素子10と第2の半導体素子11が、両金属体20、30が隔てられている方向(図5中の上下方向すなわち半導体装置の厚さ方向)における両金属体20、30の間隔の中心部に対して、下側の第1の金属体20に寄った位置に配置されていることに着目した。
【0012】
なお、従来では、第1の半導体素子10が複数個の半導体素子、第2の半導体素子11が複数個の半導体素子からなるものであってもよい。その場合でも、従来の半導体装置では、これら複数個の半導体素子10、11の全てが、一方の金属体に寄った位置に配置されたものとなっていた。
【0013】
このように、複数個の半導体素子10、11が第1の金属体20に偏って配置されていると、応力の集中点が第1の金属体20側に偏る。ここで、この応力とは、たとえば、温度サイクルが印加された場合において、金属体、半導体、モールド樹脂の間の熱膨張係数の差などに起因して発生する熱応力などである。
【0014】
このように、両金属体20、30との間において一方の金属体、上記図5では第1の金属体20側に応力集中が偏ることにより、モールド樹脂70のクラックや界面剥離が進展し、パッケージとして機能不良に陥る。また、このように応力集中が偏ることにより、パッケージすなわち半導体装置に反りが生じ、当該半導体装置を他部材への組み付けることが困難となる。
【0015】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、対向する両金属体の間に2個以上の半導体素子を介在させ、これらを樹脂でモールドしてなる半導体装置において、応力的なバランスをとることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、対向して配置された第1の金属体(20)および第2の金属体(30)と、第1の金属体(20)と第2の金属体(30)の間に設けられ、これら両金属体(20、30)と熱的に接続された第1の半導体素子(10)と、第1の金属体(20)と第2の金属体(30)の間に設けられ、これら両金属体(20、30)と熱的に接続された第2の半導体素子(11)と、第1の金属体(20)と第2の金属体(30)の間に充填され、第1の半導体素子(10)および第2の半導体素子(11)を封止するモールド樹脂(70)とを備える半導体装置において、両金属体(20、30)が隔てられている方向における両金属体(20、30)の間隔の中心部に対して、第1の半導体素子(10)は、第1の金属体(20)に寄った位置に配置され、第2の半導体素子(11)は、第2の金属体(30)に寄った位置に配置されていることを特徴としている。
【0017】
それによれば、第1の半導体素子(10)と第2の半導体素子(11)とをそれぞれの金属体(20、30)に側へ分散させた配置構成となるため、従来のように、第1の半導体素子および第2の半導体素子をともに、一方の金属体、たとえば第1の金属体側に偏って配置した構成よりも、熱応力など応力の集中点が分散する。
【0018】
よって、本発明によれば、対向する両金属体(20、30)の間に2個以上の半導体素子(10、11)を介在させ、これらを樹脂(70)でモールドしてなる半導体装置において、応力的なバランスをとることができる。
【0019】
そして、本発明によれば、応力的なバランスをとれることから、モールド樹脂(70)のクラックや、モールド樹脂(70)の界面剥離の進展や、モールドパッケージすなわち装置本体の反りなどの問題を、極力抑制することができる。
【0020】
ここで、請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の半導体装置においては、第1の半導体素子(10)は、第1の金属体(20)に対して導電性接合部材(51)を介して直接接合され、第2の半導体素子(11)は、第2の金属体(30)に対して導電性接合部材(53)を介して直接接合されているものにできる。
【0021】
また、請求項3に記載の発明のように、請求項1または請求項2に記載の半導体装置においては、第1の金属体(20)に寄った位置に配置されている第1の半導体素子(10)は、第3の金属体(40)を介して第2の金属体(30)と熱的に接続されており、第2の金属体(30)に寄った位置に配置されている第2の半導体素子(11)は、第3の金属体(40)を介して第1の金属体(20)と熱的に接続されていることを特徴とするものにできる。
【0022】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1〜請求項3に記載の半導体装置において、第1の半導体素子(10)および第2の半導体素子(11)は、それぞれ複数個の半導体素子からなり、両金属体(20、30)の間において、1個の第1の半導体素子(10)と1個の第2の半導体素子(11)とが隣り合った形で繰り返し配列されていることを特徴としている。
【0023】
それによれば、第1の半導体素子(10)および第2の半導体素子(11)が、それぞれ複数個の半導体素子からなる場合において、応力的なバランスがよりとりやすくなり、好ましい。
【0024】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各図相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0026】
[構成等]
図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置100の概略断面構成を示す図である。
【0027】
図1に示されるように、本半導体装置100は、大きくは、第1の半導体素子10および第2の半導体素子11と、これら半導体素子10、11を挟むように半導体素子10、11の両面に配置された一対の放熱板としてのヒートシンク20および30と、この一対のヒートシンク20、30間に充填され第1の半導体素子10および第2の半導体素子11を封止するモールド樹脂70とを備えて構成されている。
【0028】
ここで、本半導体装置100においては、このモールド樹脂70の封止は、一対のヒートシンク20、30の放熱面であるそれぞれの外側の主表面20a、30aがモールド樹脂70から露出するように行われている。
【0029】
これら一対のヒートシンク20、30のうち図1において下側に位置するものを下側ヒートシンク20ということとし、上側に位置するものを上側ヒートシンク30ということとする。図1に示される半導体装置100では、下側ヒートシンク20が第1の金属体20として、上側ヒートシンク30が第2の金属体30として構成されている。
【0030】
そして、図1に示される半導体装置100では、各半導体素子10、11は、第3の金属体40としてのヒートシンクブロック40および各導電性接合部材51、52、53を介して、下側ヒートシンク20と上側ヒートシンク30とに挟み付けられている。
【0031】
また、図1に示される例では、第1の半導体素子10と第2の半導体素子20とは、平面的に並列に配置されている。ここで、図1において、左側に位置するものが第1の半導体素子10であり、右側に位置するものが第2の半導体素子20である。
【0032】
このように、本例では、第1の半導体素子10、第2の半導体素子11はそれぞれ1個ずつ、計2個設けられているが、本実施形態の半導体装置100において、一対のヒートシンク20、30に挟まれる第1の半導体素子10が複数個の半導体素子からなり、第2の半導体素子11が複数個の半導体素子からなるものであってもよい。
【0033】
つまり、本実施形態の半導体装置100においては、対向して配置された下側ヒートシンク20と上側ヒートシンク30との間に2個以上の半導体素子10、11が挟まれた形となっている。
【0034】
そして、本実施形態においては、図1に示されるように、下側および上側のヒートシンク20、30が隔てられている方向(図1中の上下方向すなわち半導体装置100の厚さ方向)における両ヒートシンク20、30の間隔の中心部に対して、左側の第1の半導体素子10は、下側ヒートシンク20に寄った位置に配置され、右側の第2の半導体素子11は、上側ヒートシンク30に寄った位置に配置されている。
【0035】
なお、第1の半導体素子10および第2の半導体素子11が、それぞれ複数個の半導体素子からなる場合、本実施形態においては、下側ヒートシンク20に寄った位置に配置された複数個の半導体素子が、第1の半導体素子10として構成され、上側ヒートシンク30に寄った位置に配置された複数個の半導体素子が、第2の半導体素子11として構成される。
【0036】
また、このように第1の半導体素子10および第2の半導体素子11が、それぞれ複数個の半導体素子からなる場合、下側および上側のヒートシンク20、30の間において、1個の第1の半導体素子10と1個の第2の半導体素子11とが隣り合った形で繰り返し配列されていることが好ましい。
【0037】
このことは、具体的に言うならば、次のようなことである。たとえば、図1において、下側および上側のヒートシンク20、30の間に、左側から右側に向かって4個の半導体素子が並列に配置されているとする。
【0038】
このとき、左側の2個が、第1の金属体としての下側ヒートシンク20側に偏った第1の半導体素子10であり、右側の2個が、第2の金属体としての上側ヒートシンク30側に偏った第2の半導体素子11であってもよい。
【0039】
しかしながら、好ましい形態としては、図1の左側から右側にかけて、下側ヒートシンク20側に偏った第1の半導体素子10、上側ヒートシンク30側に偏った第2の半導体素子11、下側ヒートシンク20側に偏った第1の半導体素子10、上側ヒートシンク30側に偏った第2の半導体素子11というように、4個の半導体素子が配置されることが望ましい。
【0040】
このように、本実施形態の半導体装置100は、第1の半導体素子10および第2の半導体素子11について独自の構成を有している。
【0041】
そして、図1に示されるように、このような半導体素子の配置構成において、具体的には、第1の半導体素子10の下面と下側ヒートシンク20の上面との間は、第1の導電性接合部材51によって接合されている。
【0042】
また、第1の半導体素子10の上面とヒートシンクブロック40の下面との間は、第2の導電性接合部材52によって接合されている。さらに、このヒートシンクブロック40の上面と上側ヒートシンク30の下面との間は、第3の導電性接合部材53によって接合されている。
【0043】
一方、図1に示されるように、第2の半導体素子11の上面と上側ヒートシンク30の下面との間は、第3の導電性接合部材53によって接合されている。また、第2の半導体素子11の下面とヒートシンクブロック40の上面との間は、第2の導電性接合部材52によって接合され、さらに、このヒートシンクブロック40の下面と下側ヒートシンク20の上面との間は、第1の導電性接合部材51によって接合されている。
【0044】
このように、第1の半導体素子10は、下側ヒートシンク20に対して導電性接合部材51を介して直接接合され、第2の半導体素子11は、上側ヒートシンク30に対して導電性接合部材53を介して直接接合されている。
【0045】
そして、下側ヒートシンク20に寄った位置に配置されている第1の半導体素子10は、第3の金属体としてのヒートシンクブロック40を介して上側ヒートシンク30と熱的に接続されており、上側ヒートシンク30に寄った位置に配置されている第2の半導体素子11は、第3の金属体としてのヒートシンクブロック40を介して下側ヒートシンク20と熱的に接続されている。
【0046】
ここで、これら第1、第2、第3の導電性接合部材51、52、53としては、はんだや導電性接着剤等を採用することができる。具体的な例として、本半導体装置100においては、これら第1、第2、第3の導電性接合部材51、52、53としては、たとえばSn(すず)系はんだを用いることができる。
【0047】
これにより、上記した構成においては、第1の半導体素子10の上面では、第2の導電性接合部材52、ヒートシンクブロック40、第3の導電性接合部材53および上側ヒートシンク30を介して放熱が行われ、第1の半導体素子10の下面では、第1の導電性接合部材51から下側ヒートシンク20を介して放熱が行われる構成となっている。
【0048】
一方、第2の半導体素子11の上面では、第3の導電性接合部材53から上側ヒートシンク30を介して放熱が行われ、第2の半導体素子11の下面では、第2の導電性接合部材52、ヒートシンクブロック40、第1の導電性接合部材51および下側ヒートシンク20を介して放熱が行われる構成となっている。
【0049】
このように、本実施形態の第1の金属体としての下側ヒートシンク20および第2の金属体としての上側ヒートシンク30は、第1および第2の半導体素子10、11と熱的に接続されることにより、これら各半導体素子10、11からの熱を伝達して放熱する放熱板として構成されている。
【0050】
そして、下側ヒートシンク20においては、図1中の下面が放熱面20aとして構成され、上側ヒートシンク30においては、図1中の上面が放熱面30aとして構成されている。そして、図1に示されるように、各放熱面20a、30aは、モールド樹脂70から露出している。
【0051】
これら各ヒートシンク20、30の放熱面20a、30aは、板状の放熱板としてのヒートシンク20、30における最も広い面すなわち板面であり、半導体素子10、11を挟んで対向して配置されている一対のヒートシンク20、30におけるそれぞれの外側の主表面20a、30aのことである。
【0052】
ここで、第1の半導体素子10および第2の半導体素子11としては、特に限定されるものではなく、シリコン半導体基板などを用いて通常の半導体製造技術を用いて製造される素子等を採用することができる。
【0053】
具体的に、本実施形態において半導体素子として用いることのできる上記第1の半導体素子10は、たとえばIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)やサイリスタ等のパワー半導体素子から構成することができる。
【0054】
また、同じく本実施形態において半導体素子として用いることのできる第2の半導体素子11は、たとえば、FWD(フリーホイールダイオード)等からなるものにできる。また、具体的には、上記第1および第2の半導体素子10、11の形状は、たとえば矩形状の薄板状とすることができる。
【0055】
ここで、第1および第2の半導体素子10、11の表面(図1中の上面)はトランジスタなどの素子が形成された素子形成面であり、第1および第2の半導体素子10、11の裏面(図1中の下面)はそのような素子が形成されていない非形成面として構成されている。
【0056】
また、本実施形態の第1および第2の半導体素子10、11の表面および裏面には、図示しない電極が形成されている。この電極は、たとえばアルミニウムなどから形成されたものであり、それぞれの面において各導電性接合部材51、52、53と電気的に接続されている。
【0057】
このように、本実施形態においては、第1および第2の半導体素子10、11の表面側の電極および裏面側の電極は、下側ヒートシンク20および上側ヒートシンク30に対して、導電性接合部材51〜53およびヒートシンクブロック40を介して電気的に接続されている。
【0058】
ここで、下側ヒートシンク20、上側ヒートシンク30およびヒートシンクブロック40は、たとえば、銅合金もしくはアルミ合金等の熱伝導性および電気伝導性の良い金属で構成されている。また、ヒートシンクブロック40としては、一般的な鉄合金を用いてもよい。
【0059】
また、ヒートシンクブロック40は、各半導体チ素子10、11のそれぞれに対応して設けられているが、このヒートシンクブロック40としては、たとえば、それぞれの半導体素子10、11よりも1回り小さい程度の大きさを有する矩形状の板材を採用することができる。
【0060】
このヒートシンクブロック40は、各半導体素子10、11と各ヒートシンク20、30との間に介在することによって、それぞれの半導体素子10、11と各ヒートシンク20、30とを熱的および電気的に接続するとともに、上述した第1および第2の半導体素子10、11の位置を規定するためのスペーサとしての役割を有している。
【0061】
こうして、本実施形態では、下側ヒートシンク20および上側ヒートシンク30は、それぞれ、電極と放熱体とを兼ねる金属体として構成されており、半導体装置100において半導体素子10、11からの放熱を行う機能を有するとともに半導体素子10、11の電極としての機能も有する。
【0062】
また、図1に示されるように、モールド樹脂70の内部において第1の半導体素子10の周囲には、リードフレーム60が設けられている。このリードフレーム60は、銅や42アロイなどの導電材料からなるものである。
【0063】
このリードフレーム60は、図1に示されるように、本例では複数本設けられており、第1の半導体素子10の主表面に設けられている信号電極(たとえばゲート電極)などと導通する端子や基準端子となるものである。
【0064】
そして、図示しないが、各リードフレーム60は、モールド樹脂70の内部にて、第1の半導体素子10と、金やアルミニウムなどからなるボンディングワイヤなどにより結線され、電気的に接続されている。
【0065】
ここで、リードフレーム60における上記ボンディングワイヤとの接続部は、インナーリードとしてモールド樹脂70の内部に封止され、リードフレーム60は、モールド樹脂70の外部に突出した部位すなわちアウターリードにて、外部と電気的な接続が可能となっている。
【0066】
こうして、本実施形態の半導体装置100においては、各半導体素子10、11は、上記ボンディングワイヤ、リードフレーム60や各ヒートシンク20、30を介して外部と電気的な接続がなされ、信号のやりとりなどが可能になっている。
【0067】
さらに、本実施形態の半導体装置100においては、装置100のほぼ全体がモールド樹脂70によりモールドされ封止されている。そして、下側および上側のヒートシンク20、30の放熱面20a、30aがモールド樹脂70から露出するように、当該放熱面20a、30aを除いて装置100がモールド樹脂70により包み込まれるように封止されている。
【0068】
具体的には、図1に示されるように、一対のヒートシンク20、30の隙間、並びに、各半導体素子10、11およびヒートシンクブロック40の周囲部分に、モールド樹脂70が充填封止されている。
【0069】
このモールド樹脂70は、たとえばエポキシ樹脂等の通常のモールド材料を採用することができる。また、各ヒートシンク20、30等をモールド樹脂70で封止するにあたっては、成形型を使用したトランスファーモールド法やポッティングなどによって容易に行うことができる。
【0070】
[製造方法等]
次に、上記した構成の半導体装置100の製造方法について説明する。
【0071】
まず、下側ヒートシンク20の上面に、第1の半導体素子10、およびその上のヒートシンクブロック40、ならびに、第2の半導体素子11の下側のヒートシンクブロック40およびその上の第2の半導体素子20をはんだ付けする工程を実行する。
【0072】
この場合、下側ヒートシンク20とその上の第1の半導体素子10との間、第1の半導体素子10とその上のヒートシンクブロック40との間、下側ヒートシンク20と第2の半導体素子11側のヒートシンクブロック40との間、第2の半導体素子11とその上のヒートシンクブロック40との間に、たとえばSn系はんだからなるはんだ箔を介して、これらを積層する。
【0073】
この後、加熱装置(リフロー装置)によって、はんだの融点以上に昇温することにより、上記はんだ箔を溶融させてから、硬化させる。
【0074】
続いて、第1の半導体素子10とリードフレーム60とをワイヤボンディングする工程を実行する。これにより、上記ボンディングワイヤによって第1の半導体素子10とリードフレーム60とが結線され電気的に接続される。
【0075】
次いで、第1の半導体素子10側のヒートシンクブロック40および第2の半導体素子11の上に、上側ヒートシンク30をはんだ付けする工程を実行する。この場合も、これらの上にはんだ箔を介して上側ヒートシンク30を載せ、加熱装置によって上記はんだ箔を溶融させてから、硬化させる。
【0076】
こうして、溶融した各々のはんだ箔が硬化すれば、硬化したはんだが、第1の導電性接合部材51、第2の導電性接合部材52、第3の導電性接合部材53として構成されることになる。
【0077】
そして、これら導電性接合部材51〜53を介して、下側ヒートシンク20、第1および第2の半導体素子10、11、各ヒートシンクブロック40、上側ヒートシンク30間の接合および電気的・熱的接続を実現することができる。
【0078】
なお、第1、第2および第3の導電性接合部材51、52、53として導電性接着剤を用いた場合にも、上記工程において、はんだを導電性接着剤に置き換え、導電性接着剤の塗布や硬化を行うことにより、下側ヒートシンク20、第1および第2の半導体素子10、11、各ヒートシンクブロック40、上側ヒートシンク30間の接合および電気的・熱的接続を実現することができる。
【0079】
しかる後、トランスファーモールド法により、下側ヒートシンク20と上側ヒートシンク30の隙間および外周部等にモールド樹脂70を充填する工程を実行する。これにより、上記図1に示されるように、下側ヒートシンク20と上側ヒートシンク30の隙間および外周部等に、モールド樹脂70が充填封止される。こうして、半導体装置100が完成する。
【0080】
[効果等]
ところで、本実施形態によれば、対向して配置された第1の金属体としての下側ヒートシンク20および第2の金属体としての上側ヒートシンク30と、これら下側および上側ヒートシンク20、30の間に設けられ当該両ヒートシンク20、30と熱的に接続された第1の半導体素子10と、これら下側および上側ヒートシンク20、30の間に設けられ当該両ヒートシンク20、30と熱的に接続された第2の半導体素子11と、これら下側および上側ヒートシンク20、30の間に充填され第1の半導体素子10および第2の半導体素子11を封止するモールド樹脂70とを備える半導体装置において、下側および上側ヒートシンク20、30が隔てられている方向における当該両ヒートシンク20、30の間隔の中心部に対して、第1の半導体素子10は、下側ヒートシンク20に寄った位置に配置され、第2の半導体素子11は、上側ヒートシンク30に寄った位置に配置されていることを特徴とする半導体装置100が提供される。
【0081】
それによれば、第1の半導体素子10と第2の半導体素子11とをそれぞれのヒートシンク20、30に側へ分散させた配置構成となるため、従来のように、第1の半導体素子および第2の半導体素子をともに、一方の金属体側に偏って配置した構成よりも、熱応力など応力の集中点が分散する。
【0082】
よって、本実施形態によれば、対向する両ヒートシンク20、30の間に2個以上の半導体素子10、11を介在させ、これらを樹脂70でモールドしてなる半導体装置100において、応力的なバランスをとることができる。
【0083】
そして、本実施形態の半導体装置100によれば、応力的なバランスをとれることから、モールド樹脂70のクラックや、モールド樹脂70の界面剥離の進展や、モールドパッケージすなわち装置本体の反りなどの問題を、極力抑制することができる。
【0084】
ここで、本実施形態の半導体装置100においては、第1の半導体素子10は、第1の金属体としての下側ヒートシンク20に対して導電性接合部材51を介して直接接合され、第2の半導体素子11は、第2の金属体としての上側ヒートシンク30に対して導電性接合部材53を介して直接接合されていることも特徴のひとつである。
【0085】
また、本実施形態の半導体装置100においては、下側ヒートシンク20に寄った位置に配置されている第1の半導体素子10は、第3の金属体としてのヒートシンクブロック40を介して上側ヒートシンク30と熱的に接続されており、上側ヒートシンク30に寄った位置に配置されている第2の半導体素子11は、ヒートシンクブロック40を介して下側ヒートシンク20と熱的に接続されていることも特徴のひとつである。
【0086】
また、本実施形態の半導体装置においては、好ましい形態として、上述したが、第1の半導体素子10および第2の半導体素子11が、それぞれ複数個の半導体素子からなる場合、両ヒートシンク20、30の間において、1個の第1の半導体素子10と1個の第2の半導体素子11とが隣り合った形で繰り返し配列されているものとしてもよい。このことも、本実施形態の特徴のひとつである。
【0087】
それによれば、第1の半導体素子10および第2の半導体素子11が、それぞれ複数個の半導体素子からなる場合において、応力的なバランスが、より均一にとりやすくなるため、好ましい。
【0088】
ここで、本実施形態の半導体装置100による具体的な応力バランスの効果について、上記図5に示される従来の半導体装置と比較して示す。
【0089】
ここでは、本実施形態の半導体装置100と従来の半導体装置とについて、装置における各部について、モールド樹脂70と第1の金属体20との界面におけるせん断応力、モールド樹脂70と第2の金属体30との界面におけるせん断応力を、FEM(有限要素法)解析を行い、調査した。
【0090】
図2は、このモールド樹脂/金属体界面のせん断応力の調査の軸方向を示す図である。本実施形態および従来の半導体装置において、第1および第2の金属体20、30が隔てられている方向(すなわち半導体装置の厚さ方向)とは直交する方向(すなわち半導体素子10、11の配列方向)を、x軸方向とする。
【0091】
そして、図2において、本実施形態および従来の半導体装置におけるx軸方向の左端部を、座標0とし、ここから、x軸方向の右側に向かって離れていく各部における上記せん断応力を調査した。
【0092】
図3は、従来構造の半導体装置について上記せん断応力を調査した結果を示す図であり、図4は、本実施形態の半導体装置100について上記せん断応力を調査した結果を示す図である。
【0093】
これら図3、図4においては、横軸には上記図2に示されるx軸方向の距離(単位:mm)が示されており、縦軸には、モールド樹脂/金属体界面のせん断応力(単位:MPa)が示されている。
【0094】
また、従来の図3においては、白四角プロットは第1の金属体20の界面、黒四角プロットは第2の金属体30の界面についての結果であり、本実施形態の図4においては、白丸プロットは第1の金属体20の界面、黒丸プロットは第2の金属体30の界面についての結果である。
【0095】
図3と図4との比較から、従来構造の半導体装置では、本実施形態の半導体装置100に比べて第1の金属体20側に大きな応力が負荷されるが、本実施形態の半導体装置100は、従来のものに比べて、両方の金属体20、30に均一に応力が負荷されることがわかる。
【0096】
また、図3、図4に示される結果から、応力集中部すなわち応力が急激に大きくなっている部位における応力は、従来のものに比べて、本実施形態の半導体装置100では小さく抑えられている。
【0097】
このように、本実施形態によれば、応力の集中を分散させ応力的なバランスをとることができ、また、その応力も比較的小さいものに抑えることができる。そのため、樹脂クラック、界面剥離の進展、パッケージの反りなどを極力防止することができる。
【0098】
(他の実施形態)
なお、金属体としてのヒートシンク20、30の形状は、上記した略板状のものに限定されるものではなく、それ以外にも、適宜設計変更された形状としてもよい。
【0099】
また、各半導体素子10、11としては、上記したIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)やサイリスタ等のパワー半導体素子やFWD(フリーホイールダイオード)などに限定されるものではない。
【0100】
また、上記図1に示される半導体装置100においては、第1の半導体素子10の電気的な取り出し構成として、半導体素子10とリードフレーム60とをボンディングワイヤなどにより結線した構成を採用しているが、それ以外に、半導体装置の分野で用いられている他の構成を採用してもよい。また、第2の半導体素子11の電気的な取り出し構成としても、適宜、半導体装置の分野で用いられている種々の構成を採用してもよいことはもちろんである。
【0101】
また、上記実施形態では、ヒートシンクブロック40を介在させることにより、上記した第1の半導体素子10と第2の半導体素子11との位置関係を実現しているが、ヒートシンクブロック40を用いずに、当該位置関係を実現してもよい。
【0102】
たとえば、図1において、ヒートシンクブロック40を省略し、その代わりに、上側ヒートシンク30において、その下の第1の半導体素子10に突出する凸部を形成するとともに、下側ヒートシンク20において、その上の第2の半導体素子11に突出する凸部を形成し、各凸部を、導電性接合部材を介して、対向する各半導体素子10、11に接合すればよい。
【0103】
また、上記図1に示される例では、第1の半導体素子10が下側ヒートシンク20に寄っており、第2の半導体素子11が上側ヒートシンク30に寄った位置となっており、下側ヒートシンク20が第1の金属体20として、上側ヒートシンク30が第2の金属体30として構成されている。
【0104】
これに対して、たとえば、上記図1に示されるヒートシンク20、30の位置関係と同様の位置関係において、上記図1に示される半導体素子10、11の位置関係とは反対に、第1の半導体素子10が上側ヒートシンク30に寄っており、第2の半導体素子11が下側ヒートシンク30に寄った位置となっていてもよい。
【0105】
この場合、上側ヒートシンク30が第1の金属体として、下側ヒートシンク20が第2の金属体として構成される。つまり、本発明で言う金属体および半導体素子に付される第1、第2とは、一方、他方としての意味を持つ程度のものである。
【0106】
要するに、本発明は、対向して配置された第1の金属体および第2の金属体と、これら両金属体の間に設けられ両金属体と熱的に接続された第1の半導体素子と、これら両金属体の間に設けられ両金属体と熱的に接続された第2の半導体素子と、これら両金属体の間に充填され第1の半導体素子および第2の半導体素子を封止するモールド樹脂とを備える半導体装置において、両金属体が隔てられている方向における当該両金属体の間隔の中心部に対して、第1の半導体素子は第1の金属体に寄った位置に配置され、第2の半導体素子は第2の金属体に寄った位置に配置されていることを要部とするものである。そして、その他の細部については、適宜設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体装置の概略断面図である。
【図2】モールド樹脂/金属体界面のせん断応力の調査の軸方向を示す図である。
【図3】従来構造の半導体装置についてモールド樹脂/金属体界面のせん断応力を調査した結果を示す図である。
【図4】上記実施形態の半導体装置についてモールド樹脂/金属体界面のせん断応力を調査した結果を示す図である。
【図5】従来の一般的な半導体装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0108】
10…第1の半導体素子、11…第2の半導体素子、
20…第1の金属体としての下側ヒートシンク、
30…第2の金属体としての上側ヒートシンク、
40…第3の金属体としてのヒートシンクブロック、
51、53…導電性接合部材、70…モールド樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された第1の金属体(20)および第2の金属体(30)と、
前記第1の金属体(20)と前記第2の金属体(30)の間に設けられ、これら両金属体(20、30)と熱的に接続された第1の半導体素子(10)と、
前記第1の金属体(20)と前記第2の金属体(30)の間に設けられ、これら両金属体(20、30)と熱的に接続された第2の半導体素子(11)と、
前記第1の金属体(20)と前記第2の金属体(30)の間に充填され、前記第1の半導体素子(10)および前記第2の半導体素子(11)を封止するモールド樹脂(70)とを備える半導体装置において、
前記両金属体(20、30)が隔てられている方向における前記両金属体(20、30)の間隔の中心部に対して、前記第1の半導体素子(10)は、前記第1の金属体(20)に寄った位置に配置され、前記第2の半導体素子(11)は、前記第2の金属体(30)に寄った位置に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1の半導体素子(10)は、前記第1の金属体(20)に対して導電性接合部材(51)を介して直接接合され、前記第2の半導体素子(11)は、前記第2の金属体(30)に対して導電性接合部材(53)を介して直接接合されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の金属体(20)に寄った位置に配置されている前記第1の半導体素子(10)は、第3の金属体(40)を介して前記第2の金属体(30)と熱的に接続されており、
前記第2の金属体(30)に寄った位置に配置されている前記第2の半導体素子(11)は、第3の金属体(40)を介して前記第1の金属体(20)と熱的に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の半導体素子(10)および前記第2の半導体素子(11)は、それぞれ複数個の半導体素子からなり、
前記両金属体(20、30)の間において、1個の前記第1の半導体素子(10)と1個の前記第2の半導体素子(11)とが隣り合った形で繰り返し配列されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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