半導体装置
【課題】 半導体装置の放熱性を向上させる。
【解決手段】 本発明は、半導体素子107と、該半導体素子107を保持する支持体101とを有する半導体装置であって、支持体101は、その側面の方向に開口する凹部102を有し、該凹部102の内壁面のうち、少なくとも半導体素子107の実装面側の内壁面は、導電性材料により被覆されていることを特徴とする半導体装置である。また、支持体101は、半導体素子の実装面側の内壁面から半導体素子の方向に延伸する貫通孔を有し、該貫通孔の内壁面が導電性材料により被覆されている。
【解決手段】 本発明は、半導体素子107と、該半導体素子107を保持する支持体101とを有する半導体装置であって、支持体101は、その側面の方向に開口する凹部102を有し、該凹部102の内壁面のうち、少なくとも半導体素子107の実装面側の内壁面は、導電性材料により被覆されていることを特徴とする半導体装置である。また、支持体101は、半導体素子の実装面側の内壁面から半導体素子の方向に延伸する貫通孔を有し、該貫通孔の内壁面が導電性材料により被覆されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子や受光素子のような半導体素子が支持体に実装された半導体装置に関し、特に放熱性に優れた表面実装型の半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子が支持体に搭載されてなる半導体装置は、その支持体の側面が外部の配線基板に対向され、実装されることがある。このような表面実装型の半導体装置は、半導体素子から実装基板への放熱性の向上が課題となっている。例えば、特開平11−121805号公報に開示される発光装置は、発光素子から支持基板の方向に延伸する貫通孔に存在する空気やシリコーン樹脂を媒質として、発光素子から発生する熱を発光装置の外部へ放熱させている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−121805号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半導体素子が配置された箇所から半導体装置の実装面へ最短経路で結ぶ方向には、支持体を構成する絶縁性材料が存在するため、放熱性が十分ではない。
【0005】
そこで、本発明は、従来の半導体装置と比較して放熱性がさらに向上された半導体装置とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するために本発明に係る半導体装置は、半導体素子と、該半導体素子を保持する支持体とを有する半導体装置であって、上記支持体は、その側面の方向に開口する凹部を有し、該凹部の内壁面は、少なくとも上記半導体素子側の内壁面が導電性材料により被覆されていることを特徴とする。
【0007】
このように構成すると、従来の半導体装置と比較して、半導体素子からの放熱経路を短縮でき、放熱性の高い半導体装置とすることができる。
【0008】
また、上記支持体は、上記凹部102の内壁面から上記半導体素子の方向に延伸する貫通孔を有し、該貫通孔の内壁面が上記導電性材料により被覆されている。これにより、半導体装置の放熱性をさらに向上することができる。
【0009】
また、上記貫通孔は、上記半導体素子の方向に向かって徐々に内径が狭くなる。さらに、上記貫通孔は、上記半導体素子が載置される側の開口部が前記導電性材料により塞がれていることが好ましい。これにより、半導体装置の放熱性をさらに向上することができる。
【0010】
また、上記支持体の側面の方向に開口する凹部を形成する内壁面のうち、上記凹部102の内壁面は、その断面が上記半導体素子の方向に徐々に狭くなるテーパ形状とされている。つまり、内壁面の断面が半導体装置の実装面の方向に徐々に広くなるテーパ形状とされている。これにより、半導体装置の放熱性をさらに向上することができる。また、半導体装置を基板に安定な姿勢で実装することができ、実装時のリフローにおいて、半田のような導電性部材が第一の凹部の壁面を被覆することが容易となる。
【0011】
また、上記支持体は、上記半導体素子を載置する凹部104を有し、該凹部104の底面から内壁面および側壁上面を経由し該支持体101の側面まで延伸する導体配線を有しており、上記支持体101の側面に施された導体配線は、上記側壁上面から所定の間隔を空けて施された第一の配線領域105aと、該第一の配線領域105aと上記側壁上面の導体配線とを接続する第二の配線領域105bとからなり、上記第一の配線領域105aは、前記第二の配線領域105bより面積が広いことが好ましい。
【0012】
これにより、半導体装置を基板に実装する際に、半田のような導電性部材が導体配線の上を伝って第二の凹部の開口部まで濡れ広がることを防止できる。したがって、量産性よく信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0013】
また、上記導電性材料は、上記第一の凹部102の側壁上面を被覆している。これにより、半導体装置を基板に実装する際に、半田が側壁上面を濡れ広がるため、半田の状態を基板の直上から視認することが容易にできる。
【0014】
上記支持体は、その側面により画定される外郭の隅に切欠部を有し、該切欠部の壁面は、隣接する支持体の側面にして略垂直あるいは鋭角をなす平面部204aを有する。これにより、切欠部の壁面に延出された導体配線と実装基板とを半田にて電気的および機械的に強固に接続することができる。
【0015】
また、上記平面部204aが隣接する支持体の側面は、上記凹部102が開口している側の側面であることが好ましい。これにより、半導体素子の直下に位置する凹部102の内壁面と、切欠部の平面部とを半田にて配線基板に固定することができるため、配線基板に強固に固定され放熱性の高い半導体装置とすることができる。
【0016】
また、上記支持体は、セラミックス材料からなる。これにより、耐久性および耐熱性に優れた半導体装置とすることができる。例えば、鉛フリー半田を使用した高温下でのリフローも信頼性高く行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、従来と比較して、半導体素子が実装された方向からの放熱性が向上された表面実装型の半導体装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための半導体装置を例示するものであって、本発明は半導体装置を以下に限定するものではない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
【0019】
半導体素子と、該半導体素子を保持する支持体とを有する半導体装置において、本発明者は、上記支持体が、その側面の方向に開口する凹部を有し、該凹部の内壁面のうち、少なくとも上記半導体素子が実装されている部位に対向する内壁面は、導電性材料により被覆されていることにより上述したような課題を解決するに至った。
【0020】
半導体素子と、該半導体素子を配置する支持体とを有し、該半導体素子が配置される面に対して略垂直な実装面を有する半導体装置として、例えば、特開平11−121805号公報に開示される半導体装置が挙げられる。このような従来の半導体装置は、半導体素子が配置された箇所から半導体装置の実装面へ最短経路で結ぶ方向に、支持体を形成する絶縁性材料が存在している。この絶縁性材料は、導電性材料と比較して熱伝導性が低いため、半導体装置全体の放熱性の向上を図ることができない。
【0021】
そこで、本願発明にかかる半導体装置は、支持体の少なくとも一方の側面、特に、外部基板に対する半導体装置の実装面とする方向に開口する凹部(以下、「第一の凹部」と呼ぶ。)を支持体に形成し、その凹部のうち少なくとも半導体素子の直下に位置する内壁面を熱良導性の導電性材料にて被覆する。これにより、従来の半導体装置と比較して、半導体素子から半導体装置の実装面方向への放熱経路を短縮でき、放熱性の高い半導体装置とすることができる。
【0022】
図4は、本形態における支持体101の背面方向からの断面斜視図であり、図8は、背面方向からの斜視図である。図4および図8に示されるように、本形態における支持体101は、第一の凹部102内壁面のうち、半導体素子側の底面から半導体素子が実装されている方向に延伸する穴103aや穴103bを有する。図4に示される孔103aは、第一の凹部の内壁面から半導体素子107の方向に断面が楔形となるように二つ形成されている。また、図8に示される穴103bは、円錐形をしており、第一の凹部の内壁面に対し複数個形成させている。さらに、穴103aおよび穴103bの内壁面は、導電性材料により被覆されていることが好ましい。また、穴103aおよび穴103bは、半導体素子の方向に向かって徐々に内径が狭くなることがさらに好ましい。さらに、半導体素子が載置される側まで穴が貫通されるときには、その開口部は、例えば、導体配線の電解メッキによる金属膜など、導電性材料により塞がれていることが好ましい。これにより、半導体素子の熱は、貫通孔内の導電性材料を介して効率よく放熱され、半導体装置の放熱性をさらに向上することができる。
【0023】
図5は、本形態における支持体101の背面方向からの断面斜視図である。第一の凹部102内壁面のうち、上記半導体素子側に位置する内壁面は、その断面が半導体装置の実装面の方向に徐々に広くなるテーパ形状とされていることが好ましい。これにより、半導体装置から該半導体装置の実装基板方向への放熱性をさらに向上することができる。また、半導体装置を実装基板に対して安定な姿勢で実装することができる。さらに、実装時のリフローにおいて、半田、鉛フリー半田のような導電性部材は、支持体の壁面を這い上がるフィレットを形成し易くなり、第一の凹部の壁面(あるいは該壁面を被覆する導電性材料)を被覆することが容易となる。
【0024】
また、図3に示されるように、支持体101は、半導体素子を内部に載置する第二の凹部104を有し、該第二の凹部104の底面から内壁面および凹部の側壁上面を経由して支持体の側面まで延伸する導体配線105を有している。このように、支持体は、半導体素子を載置する凹部104を有し、該凹部104の底面から内壁面および側壁上面を経由し該支持体101の側面まで延伸する導体配線を有し、支持体101の側面に施された導体配線は、上記側壁上面から所定の間隔を空けて施された第一の配線領域105aと、該第一の配線領域105aと上記側壁上面の導体配線とを接続する第二の配線領域105bとからなり、第一の配線領域105aは、第二の配線領域105bより面積が広いことが好ましい。例えば、支持体101の側面に施された導体配線105は、該側面に垂直な方向から見て、半導体装置の実装面の方向にコの字、ジグザグ形状あるいはS(エス)字形状となるように延伸されていることが好ましい。ここで、半導体装置の実装面から凹部側壁上面に至る導体配線の延伸距離および第一の配線領域105aと第二の配線領域105bの面積は、導体配線および半田のそれぞれの材質や半田の量を考慮して調整される。これにより、半導体装置を基板に実装する際に、半田のような導電性部材が導体配線上を第二の凹部内まで濡れ広がることを確実に防止することができ、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0025】
また、導電性材料は、第一の凹部の側壁上面を被覆していることが好ましい。これにより、半導体装置を基板に実装する際に、半田が側壁上面を濡れ広がりフィレットを形成するため、半田の状態を基板の直上から視認することが容易にでき、作業性が向上する。
【0026】
また、本願発明は、上述の半導体装置と、該半導体装置が実装される基板とを有し、第一の凹部内壁面のうち、少なくとも半導体素子の実装面の直下に位置する内壁面は、上記基板の実装面とともに、半田のような導電性部材により被覆されていることを特徴とする装置である。また、導電性部材は、第一の凹部の底面から半導体素子の方向に延伸する貫通孔内にも延在していることが好ましい。これにより、半導体素子の直下に位置する内壁面から導電性部材および基板への放熱経路が形成され、半導体装置の熱が半田を介して効率よく基板の方向へ放熱される。また、上記貫通孔は、基板の方向に傾斜していることが好ましい。これにより、導電性部材が貫通孔内に入り込みやすくなり、放熱性の高い装置とすることができる。以下、本形態の各構成について詳述する。
【0027】
[支持体]
本形態における支持体とは、半導体素子を搭載して、外部環境などから該半導体素子を保護し、該半導体素子へ給電を行う導体配線(回路部)が施されている部材である。特に、本発明における支持体は、半導体素子から発生する熱を外部の基板の方向へ放熱するための第一の凹部とを有する。さらに、本発明における支持体は、第一の凹部に加えて、半導体素子を収納するための第二の凹部を有することもできる。
【0028】
第一の凹部は、第二の凹部とは反対側に形成されており、第一の凹部内壁面の一部(底面)は、実装された半導体素子の直下に位置する。また、第一の凹部の内壁面は、回路部あるいは光反射部を形成する工程において、一体的かつ同時に形成される後述の回路部あるいは光反射部と同じ金属材料により被覆されている。さらに、第一の凹部は、少なくとも支持体の側面側に開口部を有するように形成されている。例えば、図2に示される第一の凹部102は、半導体装置が外部の基板に実装されるとき、その実装面側および支持体の背面に開口部を有するように形成されている。これにより、半田にてリフローする際に、半田は第一の凹部の内壁面(その内壁面を被覆する導電性材料の表面)を伝って延在し、半田の這い上がり(フィレット)を形成することが容易にできる。したがって、半導体素子から第二の凹部の内壁面および該内壁面を被覆する半田を介して、半導体装置の実装基板方向への放熱性が向上された半導体装置とすることができる。
【0029】
図6および図7は、本発明の他の形態における支持体を背面方向から見た模式的な斜視図である。ここで、図6に示される溝の数や図7に示される円錐部の数は、図示されるものに限定されることなく、半導体装置の放熱特性を考慮して適宜選択されることは言うまでもない。
【0030】
本形態における支持体は、図6および図7にそれぞれ示されるように、第一の凹部102の内壁面形状を凹凸形状や円錐形の突起形状とし、支持体の外壁面の表面積を増やすことができる。これにより、半導体装置の放熱性をさらに向上させることができる。ここで、図6に示される凹凸形状における溝の方向は、半導体装置の実装面の方向に延伸されていることが好ましい。これにより、溝に沿って、半田の這い上がり(フィレット)が容易に形成される。そのため、半導体装置の半田を介した放熱経路が形成され、半導体装置の放熱性を向上させることができる。
【0031】
一方、支持体正面の第二の凹部104は、半導体素子や、該半導体素子の電極を導体配線105と電気的に接続する導電性ワイヤなどを内部に配置させるためのものである。したがって、半導体素子をダイボンド機器などで直接積載などすると共に半導体素子との電気的接続をワイヤボンディングなどで採れるだけの十分な大きさがあれば良い。第二の凹部は、半導体素子の数、大きさおよび形状を考慮し、種々の形状および大きさが選択される。また、発光装置の配光性などを考慮し、複数の形状および大きさの凹部を設けることもできる。
【0032】
半導体素子と凹部の底面との接着は、熱硬化性樹脂などによって行うことができる。具体的には、エポキシ樹脂、アクリル樹脂やイミド樹脂などが挙げられる。また、フリップチップ実装された半導体素子と配線と電気的に接続させるためにはAgペースト、ITOペースト、カーボンペースト、金属バンプ等を用いることができる。このような支持体として、例えば、MID基板やセラミックパッケージなどが挙げられる。以下、本形態における支持体について、詳細に説明する。
【0033】
(MID基板)
MID基板は、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、液晶ポリマ等の電気絶縁性材料を用い、射出成型によって絶縁性基材を形成する。そして、半導体素子の実装箇所に第二の凹部、および該第二の凹部の反対側に第一の凹部を設けるなどして、三次元の立体形状の絶縁性基材を形成する。
【0034】
この絶縁性基材をアルカリ脱脂した後、その表面をプラズマ処理して表面の活性化及び微細な粗面化を行う。その後、絶縁性基材の表面にスパッタリングや真空蒸着等により、銅、銀、金、ニッケル、白金またはパラジウム等の金属膜(めっき下地層)を形成する。
【0035】
そして、YAGレーザやエキシマレーザのようなレーザの電磁波を照射して、上記金属膜を除去する。すなわち、ガルバノミラーでレーザ光を照射することにより、絶縁性基材の表面のうち回路を形成する箇所である回路部以外の部分、すなわち回路部間の絶縁スペースとなる非回路部において照射されるものであり、非回路部の少なくとも回路部との境界領域に非回路部のパターンに沿って照射することにより、非回路部の回路部との境界領域の金属膜を除去するものである。
【0036】
次に、回路部に給電を行い、所定厚の金属膜を形成した支持体を得る。例えば、電解メッキにより、Cu、NiさらにAuの順にメッキする。なお、非回路部の残存した金属膜は、必要に応じてソフトエッチング等で除去してもよい。
【0037】
(セラミックパッケージ)
セラミックパッケージとは、セラミック材料で形成されたものであり、半導体素子が配置されると共に半導体素子と外部とを電気的に接続する回路部が設けられた支持体である。
【0038】
セラミック材料は、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライトなどが好ましい。特に、原料粉末の90〜96重量%がアルミナであり、焼結助剤として粘度、タルク、マグネシア、カルシア及びシリカ等が4〜10重量%添加され1500から1700℃の温度範囲で焼結させたセラミックスや原料粉末の40〜60重量%がアルミナで焼結助剤として60〜40重量%の硼珪酸ガラス、コージュライト、フォルステライト、ムライトなどが添加され800〜1200℃の温度範囲で焼結させたセラミックス等が挙げられる。
【0039】
このようなセラミック材料とバインダーとしての樹脂との混合物を材料とした射出成型によって絶縁性基材を形成する。そして、半導体素子の実装箇所に第二の凹部、該第二の凹部の反対側に第一の凹部を設けるなどして、三次元の立体形状の絶縁性基材を形成し、焼成する。さらに、上述のMID基板と同様にして絶縁性基材に回路部を形成して、支持体とする。セラミック材料の射出成型によって絶縁性基材を形成する方法は、以下に述べるセラミックグリーンシートを積層させる方法と比較して、図6から図8に示されるような種々の形状を有する支持体をセラミック材料にて形成することが容易にできる。
【0040】
一方、セラミックグリーンシートを積層させ、焼成することにより形成されるセラミックパッケージがある。このセラミックグリーンシートを材料として形成されるセラミックパッケージは、焼成前のグリーンシートの段階で種々の形状をとることができる。パッケージ内の導体配線は、タングステンやモリブデンなど高融点金属を樹脂バインダーに含有させたペースト状の材料から形成される。まず、スクリーン印刷などの方法により、ペースト状の材料をグリーンシートに設けたスルーホールに押し込んで所望の形状とし、セラミック材料の焼成によって導体パターンとする。次に、この導体パターンに通電し、ニッケルや銀、金などを材料とする電解メッキを行うことにより、スルーホールの内壁面から半導体素子が搭載される部位までパターニングされた導体配線を形成される。なお、スルーホールの開口部を含む断面の位置で分割して個片とすることによって、スルーホールの分割痕からなる切欠部を支持体の隅角に電極として形成することができる。
【0041】
半導体素子を載置するための凹部は、貫通孔を有するグリーンシートを多層に張り合わせることなどにより形成される。したがって、円状、楕円状や孔径の異なるグリーンシートを積層することで階段状の開口部内壁などを形成することも可能である。さらに、一定の方向に内径が大きくなる貫通孔を有するグリーンシートと、種々の形状および大きさの貫通孔を有するグリーンシートを組み合わせることにより、開口方向に向かって内径が広くなる形状を有する凹部とすることができる。
【0042】
なお、支持体の背面側において一方の側面方向に開口する凹部は、凹部を有するグリーンシートの積層体を焼成し金属メッキをした後、凹部を含む断面の位置で分割して個片とすることによって形成することができる。例えば、図10に示されるように、支持体の背面側から見て、一方の側面方向と他方の側面方向に開口する二つの凹部が形成されることとなる。その二つの凹部のうち、一方の凹部は、凹部の内壁面の少なくとも一つが支持体に載置される半導体素子の直下に位置するように、その大きさが調整されている。
【0043】
図11は、本発明の別の形態における半導体装置を正面方向から見た模式的な斜視図である。本形態における支持体は、図11に示されるように、内壁面に導体配線が施されたスルーホールの分割痕からなる切欠部204を有する。この切欠部204のうち、最も直近かつ隣接して形成される切欠部204同士が繋がるような第三の凹部205を支持体201の一方の側面(例えば、幅狭側)に形成することもできる。このような第三の凹部205を形成し、支持体201の他方の側面(例えば、幅広側)を外部の実装基板に対する実装面とし、切欠部204の壁面と実装基板とが半田付けされる。このとき、半導体装置の直上(半田付けされていない方の切欠部204側)から第三の凹部205を通して半田付けの具合を確認することができる。そのため、作業性よく信頼性の高い実装が可能な半導体装置とすることができる。
【0044】
図12は、本発明の別の形態における半導体装置を正面方向から見た模式的な斜視図である。図12に示されるように、半導体素子を収納する第二の凹部を形成している側壁の外壁面に対し、複数の突状部206を設けることができる。なお、突状部206は、支持体の一方の側面方向あるいは他方の側面方向のうち、少なくとも一方に設けることができる。これにより、支持体の外壁面の表面積が増加し、半導体装置の放熱性をさらに向上させることができる。特に、第二の凹部の側壁から直接放熱される傾向が強くなるため、半導体素子を被覆する樹脂に蛍光体を含有させたとき、その蛍光体の熱劣化が抑制され、光学特性の低下がない信頼性の高い発光装置とすることができる。
【0045】
さらに、封止部材が充填される凹部を形成する際に、所定の大きさだけ内径の小さい貫通孔を有するグリーンシートを適宜配置し、凹部内に充填された樹脂の保持手段を有するセラミックパッケージとすることができる。この保持手段は、凹部の内側方向に突出しており、凹部内に充填された樹脂は、凹部内から剥離することなく、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0046】
このようなグリーンシートを積層させた後、焼結させることによってセラミックスパッケージとすることができる。また、Cr2O3、MnO2、TiO2、Fe2O3などをグリーンシート自体に含有させることによって暗色系にさせることもできる。
【0047】
[光反射部]
発光素子や受光素子のような半導体素子を凹部に収納するとき、その凹部の内壁面には光反射部を形成することが好ましい。光反射部は、セラミックパッケージの正面側において、凹部を形成する内壁面に対して設けられ、セラミックパッケージのセラミック素地部と直接接し第二の金属層の下地となる第一の金属層と、発光素子から放出された光を反射させ効率よく外部に取り出すための反射機能を有する第二の金属層とを含む。なお、本形態における光反射部、第一の凹部の内壁面を被覆する導電性材料および導体配線は、以下に詳述する形成方法により一体的に形成することができる。
【0048】
(第一の金属層)
第一の金属層は、セラミックパッケージに直接接して形成されると共に第二の金属層を形成させる下地となるものである。したがって、セラミック焼成と同時に形成される第一の金属層は、セラミックの焼成時に溶融しないことが必要となる。このような第一の金属層に用いられる高融点金属としては、タングステン、クロム、チタン、コバルト、モリブデンやこれらの合金などが挙げられる。例えば、これらの金属粒子を樹脂ペーストに混合させグリーンシートの凹部内壁に塗布或いは印刷などし、グリーンシートと共に焼成することによって第一の金属層を形成することができる。金属粒子の粒径を制御することによってセラミックや第一の金属層上に形成される第二の金属層さらには、その上に形成されるモールド部材との密着性をも制御することができる。第一の金属層に用いられる金属粒径によって、その上に形成される第二の金属層の表面粗さも制御することができる。そのため、第一の金属層に含有される金属粒子の粒径としては、0.3から100μmであることが好ましく、1から20μmがより好ましい。
【0049】
また、内壁面をスクリーン印刷する以外の反射導体層形成の方法としては、グリーンシートの開口部に完全に導体ペーストを流入し埋め込んだ後、内壁に導体層を残す範囲で開口部中心をレーザで穴開けする方法を用いても良い。この場合、レーザ光源としては、炭酸ガスレーザー及びYAGレーザ、エキシマレーザなどが好適に挙げられる。さらに、第一の金属層は、必ずしも内壁の全面に形成させる必要はない。部分的に第一の金属層及び第二の金属層を形成させないことにより所望方向のみ光の反射をさせる。金属層が形成されていない部位は、セラミックを透過して光が広がったように見える。このように内壁に形成させる金属層を部分的に形成させることによって視野角を所望方向に広げることもできる。また、導体配線を構成する高融点金属含有の樹脂ペーストを内壁に塗布などすることにより光反射部を構成する第一の金属層として形成することもできる。
【0050】
(第二の金属層)
本形態の第二の金属層は、第一の金属層上に形成させるものであって、発光素子から放出された光を効率よく外部に取り出すための反射機能を有するものである。このような第二の金属層は、第一の金属層上にメッキや蒸着などを利用して比較的簡単に形成させることができる。第二の金属層として具体的には、金、銀、白金、銅、アルミニウム、ニッケル、パラジウムやそれらの合金、それらの多層膜など発光素子から放出された光に対して90%以上の反射率を有する金属が好適に挙げられる。
【0051】
第二の金属層は、セラミックパッケージ内に配線された導体配線パターンの表面処理と同時に形成させることもできる。即ち、セラミック パッケージに設けられた導体配線に半田接続性などを考慮してNi/Ag又はNi/Auを第二の金属層形成と同時にメッキさせる場合もある。また、第二の金属層の形成と導電配線の表面とを別々に電気メッキを行っても良い。凹部の底面に配されている導電配線の表面を第二の金属層にて被覆することによって、発光素子の下方における光の損失を抑制することができる。
【0052】
[半導体素子]
本発明における半導体素子は、発光素子、受光素子、およびそれらの半導体素子を過電圧による破壊から守る保護素子(例えば、ツェナーダイオードやコンデンサー)、あるいはそれらを複数種組み合わせたものとすることができる。ここでは、半導体素子の一例として、発光素子(LEDチップ)について説明する。LEDチップを構成する半導体発光素子としては、ZnSeやGaNなど種々の半導体を使用したものを挙げることができるが、蛍光物質を有する発光装置とする場合には、その蛍光物質を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体(InXAlYGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適に挙げられる。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。
【0053】
窒化物半導体を使用した場合、半導体用基板にはサファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO等の材料が好適に用いられる。結晶性の良い窒化物半導体を量産性よく形成させるためにはサファイア基板を用いることが好ましい。このサファイア基板上にMOCVD法などを用いて窒化物半導体を形成させることができる。サファイア基板上にGaN、AlN、GaAlN等のバッファ層を形成し、その上にpn接合を有する窒化物半導体を形成させる。
【0054】
窒化物半導体を使用したpn接合を有する発光素子の例として、バッファ層上に、n型窒化ガリウムで形成した第1のコンタクト層、n型窒化アルミニウム・ガリウムで形成させた第1のクラッド層、窒化インジウム・ガリウムで形成した活性層、p型窒化アルミニウム・ガリウムで形成した第2のクラッド層、p型窒化ガリウムで形成した第2のコンタクト層を順に積層させたダブルへテロ構成などが挙げられる。
【0055】
窒化物半導体は、不純物をドープしない状態でn型導電性を示す。発光効率を向上させるなど所望のn型窒化物半導体を形成させる場合は、n型ドーパントとしてSi、Ge、Se、Te、C等を適宜導入することが好ましい。一方、p型窒化物半導体を形成させる場合は、p型ドーパントであるZn、Mg、Be、Ca、Sr、Ba等をドープさせる。窒化物半導体は、p型ドーパントをドープしただけではp型化しにくいためp型ドーパント導入後に、炉による加熱やプラズマ照射等により低抵抗化させることが好ましい。
【0056】
p型半導体層には、発光素子に投入された電流をp型半導体層の全面に広げるための拡散電極が設けられる。さらに、拡散電極およびn型半導体層には、バンプや導電性ワイヤのような導電部材と接続するp側台座電極およびn側台座電極がそれぞれ設けられる。ここで、バンプの材料としては、例えばAuやAu−Sn共晶、鉛フリー半田が挙げられる。また、導電性ワイヤの材料としては、例えば、Al、Au、Cuあるいはそれらを含む合金からなる細線が挙げられる。
【0057】
拡散電極あるいはp側台座電極、およびn側台座電極の形成は、エッチング等の方法によりn型半導体を露出させた後、蒸着法やスパッタリング法により行う。また、拡散電極あるいはp側台座電極の形状は、発光素子全面に電流が均一に広がるように、種々の形状とされる。
【0058】
本形態において、p側およびn側台座電極の材料は、バンプに含有される材料の少なくとも一種を含有することが好ましい。すなわち、バンプがAuを材料とするときは、p側およびn側台座電極の材料、特にバンプとの接合面となる最上層の材料は、AuまたはAuを含む合金とする。例えば、p側およびn側台座電極は、W/Pt/AuやRh/Pt/Auとされ、それぞれの金属の厚みは数百Å〜数千Åである。なお、本明細書中において、記号「A/B」は、金属Aおよび金属Bが順にスパッタリングあるいは蒸着のような方法により積層されることを示す。
【0059】
また、p型半導体層側全面に形成される拡散電極は、発光素子の出光を発光素子の透光性基板方向へ反射させる材料とすることが好ましい。例えば、Ag、Al、Rh、Rh/Irが挙げられる。さらに、これらの材料と組み合わせて、或いは単独で、p型半導体の全面にITO(インジウム(In)とスズ(Sn)の複合酸化物)、ZnOのような酸化物導電膜や、Ni/Au等の金属薄膜を透光性電極として形成させることができる。
【0060】
[光変換部材]
本形態にかかる半導体装置は、発光ダイオードやレーザダイオードなどの発光素子から放出される可視光や紫外光の一部を吸収し、その吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光する蛍光物質を備えることができる。特に、本形態に用いられる蛍光物質は、少なくとも半導体発光素子から発光された光によって励起され、波長変換された光を発する蛍光体をいい、該蛍光体を固着させる結着剤とともに光変換部材を構成する。
【0061】
ここで、結着剤としては、例えば、エポキシ樹脂のような透光性樹脂や、耐光性の高いシリコーン樹脂や金属アルコキシドを出発原料としてゾルゲル法により生成される透光性無機材料とすることもできる。また、光変換部材の形成方法としては、スクリーン印刷、インクジェット塗布、ポッティング、孔版印刷等種々の形成方法とすることができる。また、蛍光体は、例えば第二の凹部の開口側に配されるレンズのような透光性部材に含有させることもできる。以下、本形態の光変換部材に含有させることができる蛍光体について詳述する。
【0062】
(アルミニウム・ガーネット系蛍光体)
本形態におけるアルミニウム・ガーネット系蛍光体とは、Alを含み、かつY、Lu、Sc、La、Gd、Tb、Eu及びSmから選択された少なくとも一つの元素と、Ga及びInから選択された一つの元素とを含み、希土類元素から選択された少なくとも一つの元素で付活された蛍光体であり、発光素子から発光された可視光や紫外線で励起されて発光する蛍光体である。
【0063】
例えば、YAlO3:Ce、Y3Al5O12:Ce、Y4Al2O9:Ce、(Y0.8Gd0.2)3Al5O12:Ce、Y3(Al0.8Ga0.2)5O12:Ce、Tb2.95Ce0.05Al5O12、Y2.90Ce0.05Tb0.05Al5O12、Y2.94Ce0.05Pr0.01Al5O12、Y2.90Ce0.05Pr0.05Al5O12等が挙げられる。さらに、本実施の形態において、特にYを含み、かつCeあるいはPrで付活され組成の異なる二種類以上のイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体(イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(以下、「YAG系蛍光体」と呼ぶ。))が利用される。特に、高輝度且つ長時間の使用時においては(Re1-xSmx)3(Al1-yGay)5O12:Ce(0≦x<1、0≦y≦1、但し、Reは、Y,Gd,Laからなる群より選択される少なくとも一種の元素である。)などが好ましい。
【0064】
(Re1-xSmx)3(Al1-yGay)5O12:Ce蛍光体は、ガーネット構造のため、熱、光及び水分に強く、励起スペクトルのピークが470nm付近などにさせることができる。また、発光ピークも530nm付近にあり720nmまで裾を引くブロードな発光スペクトルを持たせることができる。
【0065】
また、蛍光体は、2種類以上の蛍光体を混合させてもよい。即ち、上述したYAG系蛍光体について言えば、Al、Ga、Y、La及びGdやSmの含有量が異なる2種類以上の(Re1-xSmx)3(Al1-yGay)5O12:Ce蛍光体を混合させてRGBの波長成分を増やすことができる。また、現在のところ半導体発光素子の発光波長には、バラツキが生ずるものがあるため2種類以上の蛍光体を混合調整させて所望の白色系の混色光などを得ることができる。具体的には、発光素子の発光波長に合わせて色度点の異なる蛍光体の量を調整し含有させることでその蛍光体間と発光素子で結ばれる色度図上の任意の点を発光させることができる。
【0066】
発光層に窒化物系化合物半導体を用いた発光素子から発光した青色系の光と、青色光を吸収させるためボディーカラーが黄色である蛍光体から発光する緑色系の光と、赤色系の光とを混色表示させると所望の白色系発光色表示を行うことができる。発光装置はこの混色を起こさせるために蛍光体の粉体やバルクをエポキシ樹脂、アクリル樹脂或いはシリコーン樹脂などの各種樹脂や酸化珪素、酸化アルミニウムなどの透光性無機物中に含有させることもできる。このように蛍光体が含有されたものは、発光素子からの光が透過する程度に薄く形成させたドット状のものや層状ものなど用途に応じて種々用いることができる。蛍光体と透光性無機物との比率や塗布、充填量を種々調整すること及び発光素子の発光波長を選択することにより白色を含め電球色など任意の色調を提供させることができる。
【0067】
また、2種類以上の蛍光体をそれぞれ発光素子からの入射光に対して順に配置させることによって効率よく発光可能な発光装置とすることができる。即ち、反射部材を有する発光素子上には、長波長側に吸収波長があり長波長に発光可能な蛍光体が含有された色変換部材と、それよりも長波長側に吸収波長がありより長波長に発光可能な色変換部材とを積層などさせることで反射光を有効利用することができる。
【0068】
YAG系蛍光体を使用すると、放射照度として(Ee)=0.1W・cm−2以上1000W・cm−2以下の発光素子と接する或いは近接して配置された場合においても高効率に十分な耐光性を有する発光装置とすることができる。
【0069】
本実施の形態に用いられるセリウムで付活された緑色系が発光可能なYAG系蛍光体では、ガーネット構造のため、熱、光及び水分に強く、励起吸収スペクトルのピーク波長が420nmから470nm付近にさせることができる。また、発光ピーク波長λpも510nm付近にあり700nm付近まで裾を引くブロードな発光スペクトルを持つ。一方、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体である赤色系が発光可能なYAG系蛍光体でも、ガーネット構造であり熱、光及び水分に強く、励起吸収スペクトルのピーク波長が420nmから470nm付近にさせることができる。また、発光ピーク波長λpが600nm付近にあり750nm付近まで裾を引くブロードな発光スペクトルを持つ。
【0070】
ガーネット構造を持ったYAG系蛍光体の組成の内、Alの一部をGaで置換することで発光スペクトルが短波長側にシフトし、また組成のYの一部をGd及び/又はLaで置換することで、発光スペクトルが長波長側へシフトする。このように組成を変化することで発光色を連続的に調節することが可能である。したがって、長波長側の強度がGdの組成比で連続的に変えられるなど窒化物半導体の青色系発光を利用して白色系発光に変換するための理想条件を備えている。Yの置換が2割未満では、緑色成分が大きく赤色成分が少なくなり、8割以上では、赤味成分が増えるものの輝度が急激に低下する。また、励起吸収スペクトルについても同様に、ガーネット構造を持ったYAG系蛍光体の組成の内、Alの一部をGaで置換することで励起吸収スペクトルが短波長側にシフトし、また組成のYの一部をGd及び/又はLaで置換することで、励起吸収スペクトルが長波長側へシフトする。YAG系蛍光体の励起吸収スペクトルのピーク波長は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長より短波長側にあることが好ましい。このように構成すると、発光素子に投入する電流を増加させた場合、励起吸収スペクトルのピーク波長は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長にほぼ一致するため、蛍光体の励起効率を低下させることなく、色度ズレの発生を抑えた発光装置を形成することができる。
【0071】
アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、以下のような方法で製造することができる。まず、蛍光体は、Y、Gd、Ce、La、Al、Sm、Pr、Tb及びGaの原料として酸化物、又は高温で容易に酸化物になる化合物を使用し、それらを化学量論比で十分に混合して原料を得る。又は、Y、Gd、Ce、La、Sm、Pr、Tbの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈したものを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムとを混合して混合原料を得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して坩堝に詰め、空気中1350〜1450°Cの温度範囲で2〜5時間焼成して焼成品を得、次に焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通すことで得ることができる。また、別の実施の形態の蛍光体の製造方法では、蛍光体の原料を混合した混合原料とフラックスからなる混合物を、大気中又は弱還元雰囲気中にて行う第一焼成工程と、還元雰囲気中にて行う第二焼成工程とからなる、二段階で焼成することが好ましい。ここで、弱還元雰囲気とは、混合原料から所望の蛍光体を形成する反応過程において必要な酸素量は少なくとも含むように設定された弱い還元雰囲気のことをいい、この弱還元雰囲気中において所望とする蛍光体の構造形成が完了するまで第一焼成工程を行うことにより、蛍光体の黒変を防止し、かつ光の吸収効率の低下を防止できる。また、第二焼成工程における還元雰囲気とは、弱還元雰囲気より強い還元雰囲気をいう。このように二段階で焼成すると、励起波長の吸収効率の高い蛍光体が得られる。従って、このように形成された蛍光体にて発光装置を形成した場合に、所望とする色調を得るために必要な蛍光体量を減らすことができ、光取り出し効率の高い発光装置を形成することができる。
【0072】
組成の異なる2種類以上のセリウムで付活されたアルミニウム・ガーネット系蛍光体は、混合させて用いても良いし、それぞれ独立して配置させても良い。蛍光体をそれぞれ独立して配置させる場合、発光素子から光をより短波長側で吸収発光しやすい蛍光体、それよりも長波長側で吸収発光しやすい蛍光体の順に配置させることが好ましい。これによって効率よく吸収及び発光させることができる。
【0073】
本実施の形態において使用される蛍光体は、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体やルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体に代表されるアルミニウム・ガーネット系蛍光体と、赤色系の光を発光可能な蛍光体、特に窒化物系蛍光体とを組み合わせたものを使用することもできる。これらのYAG系蛍光体および窒化物系蛍光体は、混合して光変換部材中に含有させてもよいし、複数の層から構成される光変換部材中に別々に含有させてもよい。以下、それぞれの蛍光体について詳細に説明していく。
【0074】
(ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体)
ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体とは、一般式(Lu1−a−bRaMb)3(Al1−cGac)5O12(但し、RはCeを必須とする少なくとも1種以上の希土類元素である。MはSc、Y、La、Gdから選択される少なくとも1種の元素であり、0.0001≦a≦0.5、0≦b≦0.5、0.0001≦a+b<1、0≦c≦0.8である。)で表される蛍光体である。例えば、組成式が(Lu0.99Ce0.01)3Al5O12、(Lu0.90Ce0.10)3Al5O12、(Lu0.99Ce0.01)3(Al0.5Ga0.5)5O12で表される蛍光体である。
【0075】
ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(以下、「LAG系蛍光体」と呼ぶことがある。)は、次のようにして得られる。蛍光体原料として、ルテチウム化合物、希土類元素Rの化合物、希土類元素Mの化合物、アルミニウム化合物及びガリウム化合物を用い、各化合物について上記一般式の割合になるように秤取し、混合するか、又はこれら蛍光体原料にフラックスを加えて混合し、原料混合物を得る。この原料混合物をルツボに充填後、還元性雰囲気中、1200〜1600℃で焼成し、冷却後、分散処理することにより、上記一般式で表される本発明の蛍光体を得る。
【0076】
蛍光体原料として、酸化物又は熱分解により酸化物となる炭酸塩、水酸化物等の化合物が好ましく用いられる。また、蛍光体原料として、蛍光体を構成する各金属元素を全部又は一部含む共沈物を用いることもできる。例えば、これらの元素を含む水溶液にアルカリ、炭酸塩等の水溶液を加えると共沈物が得られるが、これを乾燥又は熱分解して用いることができる。また、フラックスとしてはフッ化物、ホウ酸塩等が好ましく、蛍光体原料100重量部に対し0.01〜1.0重量部の範囲で添加する。焼成雰囲気は、付活剤のセリウムが酸化されない還元性雰囲気が好ましい。水素濃度が3.0体積%以下の水素・窒素の混合ガス雰囲気がより好ましい。焼成温度は1200〜1600℃が好ましく、目的の中心粒径の蛍光体を得ることができる。より好ましくは1300〜1500℃である。
【0077】
上記一般式において、Rは付活剤であり、Ceを必須とする少なくとも1種以上の希土類元素であって、具体的には、Ce、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lrである。RはCeのみでもよいが、CeとCe以外の希土類元素から選ばれる少なくとも1種以上の元素とを含んでいてもよい。Ce以外の希土類元素は、共付活剤として作用するためである。ここで、Rには、CeがR全量に対し70mol%以上含有されていることが好ましい。a値(R量)は、0.0001≦a≦0.5が好ましく、0.0001未満では発光輝度が低下し、0.5を越えても濃度消光によって発光輝度が低下する。より好ましくは、0.001≦a≦0.4、さらに好ましくは、0.005≦a≦0.2である。b値(M量)は、0≦b≦0.5が好ましく、より好ましくは0≦b≦0.4であり、さらに好ましくは0≦b≦0.3である。例えば、MがYの場合、b値が0.5を越えると長波長紫外線〜短波長可視光、特に360〜410nm励起による発光輝度が非常に低下してしまう。c値(Ga量)は、0≦c≦0.8が好ましく、より好ましくは0≦c≦0.5であり、さらに好ましくは0≦c≦0.3である。c値が0.8を越えると発光波長は短波長にシフトし、発光輝度が低下する。
【0078】
LAG系蛍光体の中心粒径は1〜100μmの範囲が好ましく、より好ましくは5〜50μmの範囲であり、さらに好ましくは5〜15μmの範囲である。1μmより小さい蛍光体は、凝集体を形成しやすい傾向にある。これに対し、5〜50μmの粒径範囲の蛍光体は、光の吸収率及び変換効率が高く、光変換部材も形成しやすい。このように、光学的に優れた特徴を有する粒径の大きな蛍光体を含有させることにより、発光装置の量産性も向上する。また、上記中心粒径値を有する蛍光体が頻度高く含有されていることが好ましく、頻度値は20%〜50%が好ましい。このように粒径のバラツキが小さい蛍光体を用いることにより、より色ムラが抑制され良好な色調を有する発光装置が得られる。
【0079】
ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は300nm〜550nmの波長域の紫外線又は可視光により効率よく励起され発光することから、光変換部材に含有される蛍光体として有効に利用することができる。さらに、組成式の異なる複数種のLAG系蛍光体、又はLAG系蛍光体を他の蛍光体とともに用いることにより、発光装置の発光色を種々変化させることができる。半導体発光素子からの青色系の発光と、該発光を吸収し黄色系の発光する蛍光体からの発光との混色により、白色系の混色光を発光する従来の発光装置は、発光素子からの光の一部を透過させて利用するため、構造自体を簡略化できると共に出力向上を行いやすいという利点がある。その一方、上記発光装置は、2色の混色による発光であるため、演色性が十分でなく、改良が求められている。そこで、LAG系蛍光体を利用して白色系の混色光を発する発光装置は、従来の発光装置と比較してその演色性を向上させることができる。また、LAG系蛍光体は、YAG系蛍光体と比較して温度特性に優れるため、劣化、色ずれの少ない発光装置を得ることができる。
【0080】
(窒化物系蛍光体)
本形態における窒化物系蛍光体とは、Nを含み、かつBe、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnから選択された少なくとも一つの元素と、C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfから選択された少なくとも一つの元素とを含み、希土類元素から選択された少なくとも一つの元素で付活された蛍光体である。また、本実施の形態に用いられる窒化物系蛍光体としては、発光素子から発光された可視光、紫外線、及びYAG系蛍光体からの発光を吸収することによって励起され発光する蛍光体をいう。
【0081】
例えば、Sr2Si5N8:Eu,Pr、Ba2Si5N8:Eu,Pr、Mg2Si5N8:Eu,Pr、Zn2Si5N8:Eu,Pr、SrSi7N10:Eu,Pr、BaSi7N10:Eu,Ce、MgSi7N10:Eu,Ce、ZnSi7N10:Eu,Ce、Sr2Ge5N8:Eu,Ce、Ba2Ge5N8:Eu,Pr、Mg2Ge5N8:Eu,Pr、Zn2Ge5N8:Eu,Pr、SrGe7N10:Eu,Ce、BaGe7N10:Eu,Pr、MgGe7N10:Eu,Pr、ZnGe7N10:Eu,Ce、Sr1.8Ca0.2Si5N8:Eu,Pr、Ba1.8Ca0.2Si5N8:Eu,Ce、Mg1.8Ca0.2Si5N8:Eu,Pr、Zn1.8Ca0.2Si5N8:Eu,Ce、Sr0.8Ca0.2Si7N10:Eu,La、Ba0.8Ca0.2Si7N10:Eu,La、Mg0.8Ca0.2Si7N10:Eu,Nd、Zn0.8Ca0.2Si7N10:Eu,Nd、Sr0.8Ca0.2Ge7N10:Eu,Tb、Ba0.8Ca0.2Ge7N10:Eu,Tb、Mg0.8Ca0.2Ge7N10:Eu,Pr、Zn0.8Ca0.2Ge7N10:Eu,Pr、Sr0.8Ca0.2Si6GeN10:Eu,Pr、Ba0.8Ca0.2Si6GeN10:Eu,Pr、Mg0.8Ca0.2Si6GeN10:Eu,Y、Zn0.8Ca0.2Si6GeN10:Eu,Y、Sr2Si5N8:Pr、Ba2Si5N8:Pr、Sr2Si5N8:Tb、BaGe7N10:Ceなどが挙げられるがこれに限定されない。窒化物蛍光体に含有される希土類元素は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Luのうち少なくとも1種以上が含有されていることが好ましいが、Sc、Sm、Tm、Ybが含有されていてもよい。これらの希土類元素は、単体の他、酸化物、イミド、アミド等の状態で原料中に混合する。Mnを用いると粒径を大きくすることができ、発光輝度の向上を図ることができる。
【0082】
特に本蛍光体は、Mnが添加されたSr−Ca−Si−N:Eu、Ca−Si−N:Eu、Sr−Si−N:Eu、Sr−Ca−Si−O−N:Eu、Ca−Si−O−N:Eu、Sr−Si−O−N:Eu系シリコンナイトライドである。この蛍光体の基本構成元素は、一般式LXSiYN(2/3X+4/3Y):Eu若しくはLXSiYOZN(2/3X+4/3Y−2/3Z):Eu(Lは、Sr、Ca、SrとCaのいずれか。)で表される。一般式中、X及びYは、X=2、Y=5又は、X=1、Y=7であることが好ましいが、任意のものも使用できる。具体的には、基本構成元素は、Mnが添加された(SrXCa1−X)2Si5N8:Eu、Sr2Si5N8:Eu、Ca2Si5N8:Eu、SrXCa1−XSi7N10:Eu、SrSi7N10:Eu、CaSi7N10:Euで表される蛍光体を使用することが好ましいが、この蛍光体の組成中には、Mg、Sr、Ca、Ba、Zn、B、Al、Cu、Mn、Cr及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が含有されていてもよい。Lは、Sr、Ca、SrとCaのいずれかである。SrとCaは、所望により配合比を変えることができる。蛍光体の組成にSiを用いることにより安価で結晶性の良好な蛍光体を提供することができる。
【0083】
本蛍光体は、母体のアルカリ土類金属系窒化ケイ素に対して、Eu2+を付活剤として用いる。添加物であるMnは、Eu2+の拡散を促進し、発光輝度、エネルギー効率、量子効率等の発光効率の向上を図る。Mnは、原料中に含有させるか、又は、製造工程中にMn単体若しくはMn化合物を含有させ、原料と共に焼成する。
【0084】
蛍光体には、基本構成元素中に、若しくは、基本構成元素とともに、Mg、Ga,In,Li、Na,K、Re、Mo、Fe,Sr、Ca、Ba、Zn、B、Al、Cu、Mn、Cr、O及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含有する。これらの元素は、粒径を大きくしたり、発光輝度を高めたりする等の作用を有している。また、B、Al、Mg、Cr及びNiは、残光を抑えることができるという作用を有している。
【0085】
このような窒化物系蛍光体は、発光素子によって発光された光の一部を吸収して黄から赤色領域の光を発光する。窒化物系蛍光体をYAG系蛍光体と共に使用して、発光素子により発光された光と、窒化物系蛍光体による黄色から赤色光とが混色により暖色系の白色系の混色光を発光する発光装置を提供する。窒化物系蛍光体の他に加える蛍光体には、アルミニウム・ガーネット系蛍光体が含有されていることが好ましい。アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含有することにより、所望の色度に調節することができるからである。例えば、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質は、発光素子光の一部を吸収して黄色領域の光を発光する。ここで、発光素子により発光された光と、イットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質の黄色光とが混色により白色系の混色光を発する。従って、このイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質と赤色発光する蛍光体とを、透光性を有する光変換部材中に一緒に混合し、発光素子により発光された青色光、あるいは蛍光体により波長変換された青色光とを組み合わせることにより白色系の光を発光する発光装置を提供することができる。特に好ましいのは、色度が色度図における黒体放射の軌跡上に位置する白色系の発光装置である。但し、所望の色温度の発光装置を提供するため、イットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質の蛍光体量と、赤色発光の蛍光体量を適宜変更することもできる。この白色系の混色光を発光する発光装置は、特殊演色評価数R9の改善を図っている。従来の青色発光素子とセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質との組合せのみの白色系発光装置は、色温度Tcp=4600K付近において特殊演色評価数R9がほぼ0に近く、赤み成分が不足していた。そのため特殊演色評価数R9を高めることが解決課題となっていたが、本発明において赤色発光の蛍光体をイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質と共に用いることにより、色温度Tcp=4600K付近において特殊演色評価数R9を40付近まで高めることができる。
【0086】
次に、本発明に係る蛍光体((SrXCa1−X)2Si5N8:Eu)の製造方法を説明するが、本製造方法に限定されない。上記蛍光体には、Mn、Oが含有されている。
【0087】
原料のSr、Caは、単体を使用することが好ましいが、イミド化合物、アミド化合物などの化合物を使用することもできる。また原料Sr、Caには、B、Al、Cu、Mg、Mn、MnO、Mn2O3、Al2O3などを含有するものでもよい。原料のSr、Caは、アルゴン雰囲気中、グローブボックス内で粉砕を行う。粉砕により得られたSr、Caは、平均粒径が約0.1μmから15μmであることが好ましいが、この範囲に限定されない。より混合状態を良くするため、金属Ca、金属Sr、金属Euのうち少なくとも1以上を合金状態としたのち、窒化し、粉砕後、原料として用いることもできる。
【0088】
原料のSiは、単体を使用することが好ましいが、窒化物化合物、イミド化合物、アミド化合物などを使用することもできる。例えば、Si3N4、Si(NH2)2、Mg2Siなどである。原料のSiの純度は、3N以上のものが好ましいが、Al2O3、Mg、金属ホウ化物(Co3B、Ni3B、CrB)、酸化マンガン、H3BO3、B2O3、Cu2O、CuOなどの化合物が含有されていてもよい。Siも、原料のSr、Caと同様に、アルゴン雰囲気中、若しくは、窒素雰囲気中、グローブボックス内で粉砕を行う。Si化合物の平均粒径は、約0.1μmから15μmであることが好ましい。
【0089】
次に、Sr、Caを、窒素雰囲気中で窒化する。Sr、Caは、混合して窒化しても良いし、それぞれ個々に窒化しても良い。これにより、Sr、Caの窒化物を得ることができる。また、原料のSiを、窒素雰囲気中で窒化する。これにより、窒化ケイ素を得る。
【0090】
Sr、Ca若しくはSr−Caの窒化物を粉砕する。Sr、Ca、Sr−Caの窒化物を、アルゴン雰囲気中、若しくは、窒素雰囲気中、グローブボックス内で粉砕を行う。
同様に、Siの窒化物を粉砕する。また、同様に、Euの化合物Eu2O3を粉砕する。Euの化合物として、酸化ユウロピウムを使用するが、金属ユウロピウム、窒化ユウロピウムなども使用可能である。このほか、原料のZは、イミド化合物、アミド化合物を用いることもできる。酸化ユウロピウムは、高純度のものが好ましいが、市販のものも使用することができる。粉砕後のアルカリ土類金属の窒化物、窒化ケイ素及び酸化ユウロピウムの平均粒径は、約0.1μmから15μmであることが好ましい。
【0091】
上記原料中には、Mg、Sr、Ca、Ba、Zn、B、Al、Cu、Mn、Cr、O及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が含有されていてもよい。また、Mg、Zn、B等の上記元素を以下の混合工程において、配合量を調節して混合することもできる。これらの化合物は、単独で原料中に添加することもできるが、通常、化合物の形態で添加される。この種の化合物には、H3BO3、Cu2O3、MgCl2、MgO・CaO、Al2O3、金属ホウ化物(CrB、Mg3B2、AlB2、MnB)、B2O3、Cu2O、CuOなどがある。
【0092】
上記粉砕を行った後、Sr、Ca、Sr−Caの窒化物、Siの窒化物、Euの化合物Eu2O3を混合し、Mnを添加する。これらの混合物は、酸化されやすいため、Ar雰囲気中、又は、窒素雰囲気中、グローブボックス内で、混合を行う。
【0093】
最後に、Sr、Ca、Sr−Caの窒化物、Siの窒化物、Euの化合物Eu2O3の混合物をアンモニア雰囲気中で、焼成する。焼成により、Mnが添加された(SrXCa1−X)2Si5N8:Euで表される蛍光体を得ることができる。ただし、各原料の配合比率を変更することにより、目的とする蛍光体の組成を変更することができる。
【0094】
焼成は、管状炉、小型炉、高周波炉、メタル炉などを使用することができる。焼成温度は、1200から1700℃の範囲で焼成を行うことができるが、1400から1700℃の焼成温度が好ましい。焼成は、徐々に昇温を行い1200から1500℃で数時間焼成を行う一段階焼成を使用することが好ましいが、800から1000℃で一段階目の焼成を行い、徐々に加熱して1200から1500℃で二段階目の焼成を行う二段階焼成(多段階焼成)を使用することもできる。蛍光体の原料は、窒化ホウ素(BN)材質のるつぼ、ボートを用いて焼成を行うことが好ましい。窒化ホウ素材質のるつぼの他に、アルミナ(Al2O3)材質のるつぼを使用することもできる。
【0095】
以上の製造方法を使用することにより、目的とする蛍光体を得ることが可能である。本発明の実施例において、赤味を帯びた光を発光する蛍光体として、特に窒化物系蛍光体を使用するが、本発明においては、上述したYAG系蛍光体と赤色系の光を発光可能な蛍光体とを備える発光装置とすることも可能である。このような赤色系の光を発光可能な蛍光体は、波長が400〜600nmの光によって励起されて発光する蛍光体であり、例えば、Y2O2S:Eu、La2O2S:Eu、CaS:Eu、SrS:Eu、ZnS:Mn、ZnCdS:Ag,Al、ZnCdS:Cu,Al等が挙げられる。このようにYAG系蛍光体とともに赤色系の光を発光可能な蛍光体を使用することにより発光装置の演色性を向上させることが可能である。
【0096】
以上のようにして形成されるアルミニウム・ガーネット系蛍光体、および窒化物系蛍光体に代表される赤色系の光を発光可能な蛍光体は、発光素子の周辺において一層からなる光変換部材中に二種類以上存在してもよいし、二層からなる光変換部材中にそれぞれ一種類あるいは二種類以上存在してもよい。このような構成にすると、異なる種類の蛍光体からの光の混色による混色光が得られる。この場合、各蛍光物質から発光される光をより良く混色しかつ色ムラを減少させるために、各蛍光体の平均粒径及び形状は類似していることが好ましい。また、窒化物系蛍光体は、YAG系蛍光体により波長変換された光の一部を吸収してしまうことを考慮して、窒化系蛍光体がYAG系蛍光体より発光素子に近い位置に配置されるように光変換部材を形成することが好ましい。このように構成することによって、YAG蛍光体により波長変換された光の一部が窒化物系蛍光体に吸収されてしまうことがなくなり、YAG系蛍光体と窒化物系蛍光体とを混合して含有させた場合と比較して、混色光の演色性を向上させることができる。
【0097】
(酸窒化物系蛍光体)
上述の蛍光物質の他、本形態における蛍光物質には、さらに下記の一般式で表される酸窒化物蛍光体を含有させることができる。
LxMyOzN{(2/3x+(4/3)y−(2/3)z}:R
ただし、LはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選択される少なくとも1種の元素を有し、MはC、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群より選択される少なくとも1種の元素を有する。また、Nは窒素で、Oは酸素、Rは希土類元素である。x、y、zは以下の数値を満足する。
x=2、4.5≦y≦6、0.01<z<1.5
またはx=1、6.5≦y≦7.5、0.01<z<1.5
またはx=1、1.5≦y≦2.5、1.5≦z≦2.5
以下、酸窒化物蛍光体の製造方法を説明するが、本製造方法に限定されないことは言うまでもない。まず、所定配合比となるように、Lの窒化物、Mの窒化物および酸化物、希土類元素の酸化物を原料として混合する。各原料の配合比率を変更することにより、目的とする蛍光体の組成を変更することができる。
【0098】
次に、上記原料の混合物を坩堝に投入し、焼成を行う。焼成は、管状炉、小型炉、高周波炉、メタル炉などを使用することができる。焼成温度は、特に限定されないが、1200から1700℃の範囲で焼成を行うことが好ましく、1400から1700℃の焼成温度が、さらに好ましい。本蛍光体の原料は、窒化ホウ素(BN)材質の坩堝、ボートを用いて焼成を行うことが好ましい。窒化ホウ素材質の坩堝の他に、アルミナ(Al2O3)材質の坩堝を使用することもできる。また、焼成は、還元雰囲気中で行うことが好ましい。還元雰囲気は、窒素雰囲気、窒素−水素雰囲気、アンモニア雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気等である。以上の製造方法を使用することにより、目的とするオキシ窒化物蛍光体を得ることができる。
【0099】
(アルカリ土類金属珪酸塩)
本実施の形態における発光装置は、発光素子が発光した光の一部を吸収し、その吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光する蛍光体として、ユウロピウムで付活されたアルカリ土類金属珪酸塩を有することもできる。アルカリ土類金属珪酸塩は、青色領域の光を励起光とし、暖色系の混色光を発光する発光装置とすることができる。該アルカリ土類金属珪酸塩は、以下のような一般式で表されるアルカリ土類金属オルト珪酸塩が好ましい。
(2−x−y)SrO・x(Ba,Ca)O・(1−a−b−c−d)SiO2・aP2O5bAl2O3cB2O3dGeO2:yEu2+(式中、0<x<1.6、0.005<y<0.5、0<a、b、c、d<0.5である。)
(2−x−y)BaO・x(Sr,Ca)O・(1−a−b−c−d)SiO2・aP2O5bAl2O3cB2O3dGeO2:yEu2+(式中、0.01<x<1.6、0.005<y<0.5、0<a、b、c、d<0.5である。)
ここで、好ましくは、a、b、cおよびdの値のうち、少なくとも一つが0.01より大きい。
【0100】
本実施の形態における発光装置は、アルカリ土類金属塩からなる蛍光体として、上述したアルカリ土類金属珪酸塩の他、ユウロピウムおよび/またはマンガンで付活されたアルカリ土類金属アルミン酸塩やY(V,P,Si)O4:Eu、または次式で示されるアルカリ土類金属−マグネシウム−二珪酸塩を有することもできる。
【0101】
Me(3−x−y)MgSi2O3:xEu,yMn(式中、0.005<x<0.5、0.005<y<0.5、Meは、Baおよび/またはSrおよび/またはCaを示す。)
次に、本実施の形態におけるアルカリ土類金属珪酸塩からなる蛍光体の製造工程を説明する。
【0102】
アルカリ土類金属珪酸塩の製造のために、選択した組成に応じて出発物質アルカリ土類金属炭酸塩、二酸化珪素ならびに酸化ユウロピウムの化学量論的量を密に混合し、かつ、蛍光体の製造に常用の固体反応で、還元性雰囲気のもと、温度1100℃および1400℃で所望の蛍光体に変換する。この際、0.2モル未満の塩化アンモニウムまたは他のハロゲン化物を添加することが好ましい。また、必要に応じて珪素の一部をゲルマニウム、ホウ素、アルミニウム、リンで置換することもできるし、ユウロピウムの一部をマンガンで置換することもできる。
【0103】
上述したような蛍光体、即ち、ユウロピウムおよび/またはマンガンで付活されたアルカリ土類金属アルミン酸塩やY(V,P,Si)O4:Eu、Y2O2S:Eu3+の一つまたはこれらの蛍光体を組み合わせることによって、所望の色温度を有する発光色および高い色再現性を得ることができる。
【0104】
(その他の蛍光体)
本形態における蛍光体として、紫外から可視領域の光により励起されて発光する蛍光体も用いることができ、具体例として、以下の蛍光体が挙げられる。
(1)Eu、MnまたはEuとMnで付活されたアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体;例えば、M5(PO4)3(Cl、Br):Eu(但し、MはSr、Ca、Ba、Mgから選択される少なくとも一種)、Ca10(PO4)6ClBr:Mn、Euなどの蛍光体。
(2)Eu、MnまたはEuとMnで付活されたアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体;例えば、BaMg2Al16O27:Eu、BaMg2Al16O27:Eu,Mn、Sr4Al14O25:Eu、SrAl2O4:Eu、CaAl2O4:Eu、BaMgAl10O17:Eu、BaMgAl10O17:Eu,Mnなどの蛍光体。
(3)Euで付活された希土類酸硫化物蛍光体;例えば、La2O2S:Eu、Y2O2S:Eu、Gd2O2S:Euなどの蛍光体。
(4)(Zn、Cd)S:Cu、Zn2GeO4:Mn、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn、Mg6As2O11:Mn、(Mg、Ca、Sr、Ba)Ga2S4:Eu、Ca10(PO4)6FCl:Sb,Mn
【実施例1】
【0105】
以下、本発明に係る実施例について詳述する。なお、本発明は以下に示す実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【0106】
図1は、本実施例における発光装置100の模式的な斜視図である。また、図2は、本実施例における発光装置100の背面方向からの斜視図である。図3は、本実施例における支持体101の模式的な斜視図である。
【0107】
本実施例にかかる発光装置100の支持体101は、セラミックス材料の射出成型により立体的に形成された基体に、導体配線および第二の凹部内については光反射部として、NiおよびAgを順に電解メッキしたものである。また、支持体101の大きさは、横が約4.5mm、縦が約2.0mm、高さが約2.0mmとさせてある。
【0108】
本実施例における発光装置100は、発光素子を載置するための第二の凹部104を支持体101の正面に有する。さらに、支持体101は、その背面に、発光素子の直下から支持体の一方の側面方向および背面の方向に開口する第一の凹部102を有する。本実施例における第一の凹部102は、その凹部の底部から第二の凹部104底部の方向に向かって内径が徐々に狭くなる複数の貫通孔103を有する。さらに、図4に断面斜視図として示されるように、その貫通孔103の断面は楔形となるようにされている。なお、第二の凹部104の底面において、貫通孔103の開口部は、導体配線を施す際の電解メッキにより所定の膜厚(数十μm)の金属により塞がれている。また、本実施例における発光素子107は、図4に示されるように、塞がれた貫通孔103の開口部の直上に接着剤により固定される。また、貫通孔103の数は、図示されるものに限定されることなく、半導体装置の放熱特性や大きさに併せて適宜選択されることは言うまでもない。
【0109】
図3に示されるように、本実施例における導体配線105は、第二の凹部104の底面からその内壁面、側壁上面、支持体の側面および支持体101の実装面にかけて施されている。ここで、支持体101の側面にかけて施されている導体配線105について、第一の配線領域105aは、第二の配線領域105bの面積より広くなるように施されている。また、導体配線と一体的に施された導電性材料は、貫通孔103の内壁面から第一の凹部102の内壁面、支持体101の実装側壁面にかかて被覆している。
【0110】
本実施例における発光素子107は、活性層として単色性発光ピークが可視光である460nmのIn0.2Ga0.8N半導体を有する窒化物半導体素子のLEDチップを用いる。より詳細に説明すると、発光素子であるLEDチップは、洗浄させたサファイア基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジウム)ガス、窒素ガス及びドーパントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化物半導体を成膜させることにより形成させることができる。ドーパントガスとしてSiH4とCp2Mgを切り替えることによってn型窒化物半導体やp型窒化物半導体となる層を形成させる。
【0111】
本実施例のLEDチップの素子構造としては透光性基板であるサファイア基板上に、アンドープの窒化物半導体であるGaN層、Siドープのn型電極が形成されたn型コンタクト層となるn型GaN層、アンドープの窒化物半導体であるGaN層を積層させ、さらに、バリア層となるGaN層、井戸層となるInGaN層を1セットとして5セット積層して最後にバリア層となるGaN層を積層させて活性層とし、該活性層は多重量子井戸構造としてある。さらに、活性層上にはMgがドープされたp型クラッド層としてAlGaN層、Mgがドープされたp型コンタクト層であるp型GaN層を順次積層させた構成としてある。なお、サファイア基板上には低温でGaN層を形成させバッファ層とさせてある。また、p型半導体は、成膜後400℃以上でアニールさせてある。
【0112】
エッチングによりサファイア基板上の窒化物半導体に同一面側で、p型コンタクト層およびn型コンタクト層の各表面を露出させる。次に、p型コンタクト層上にITO(インジウムと錫の複合酸化物)およびRhを材料とするスパッタリングを順に行い、ストライプ状に露出されたp型コンタクト層のほぼ全面に拡散電極が設けられる。このような電極とすることにより、拡散電極を流れる電流がp型コンタクト層の広範囲に広がるようにし、およびLEDチップの発光効率を向上させ、均一発光させることができる。
【0113】
さらに、W、PtおよびAuを材料とするスパッタリングを順に行い、拡散電極およびn型コンタクト層の一部に対し、積層させp側台座電極とn側台座電極とする。最後にダイシングによりチップ化し、□=600μm×600μmの半導体発光素子チップとする。
【0114】
本実施例の発光素子は、エッチングによりチップの対角方向に櫛状に露出されたn型半導体にn型台座電極を有する。また、p型半導体に対し、チップの対角方向に櫛状に拡散電極およびp側台座電極が形成されている。
【0115】
図4は、本実施例における発光装置100の模式的な断面図である。図4に示されるように、発光素子107は、支持体101正面の第二の凹部104底面にエポキシ樹脂にてダイボンドされ、発光素子107のp側台座電極およびn側台座電極は、第二の凹部104の底面に露出された導体配線105と、導電性ワイヤにて接続される。
【0116】
さらに、発光素子107は、第二の凹部104内に充填された蛍光物質を含む光変換部材106により被覆されている。これにより、本実施例における発光装置100は、発光素子107からの光と、その光により励起されて発光する蛍光物質からの光との混色光を発光することができる。
【0117】
本実施例における蛍光物質は、Y、Gd、Ceの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させ、これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウムとを混合して混合原料を得る。さらに、フラックスとしてフッ化バリウムを混合した後坩堝に詰め、空気中1400℃の温度で3時間焼成することにより焼成品が得られる。焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して中心粒径が8μmである(Y0.995Gd0.005)2.750Al5O12:Ce0.250蛍光物質を形成する。光変換部材の材料は、シリコーン樹脂に、上記蛍光物質を20〜75wt%含有させ、自転公転ミキサーにて5分間攪拌を行い、蛍光体と結着剤であるシリコーン樹脂との混合物とする。さらに、その混合物は、発光素子107が載置された第二の凹部104内に充填され、硬化されることにより光変換部材106とされる。
【実施例2】
【0118】
図9は、本実施例における半導体装置200の正面方向からの模式的な斜視図である。図10は、本実施例における半導体装置200の背面方向からの模式的な斜視図である。本実施例にかかる半導体装置200の支持体201は、種々の形状のセラミックスグリーンシートを積層させ、焼成することにより形成されるものである。このような支持体201の形成方法が異なる他は、実施例1と同様に発光素子および光変換部材106を形成することにより発光装置を形成する。
【0119】
図10に示されるように、本実施例における支持体201において、第一の凹部は、壁202により仕切られた凹部203aおよび凹部203bとされており、それぞれの内壁面が導電性材料により被覆されている。このうち、凹部203bは、支持体201正面の第二の凹部底面に配置された発光素子の直下にその内壁面が位置するように形成されており、支持体201の一方の側面方向に開口している。また、凹部203bと壁202を隔てて形成されている凹部203aは、凹部203aと比較して凹部の大きさが小さい。これは、凹部203bの内壁面を発光素子の直下に位置させるべく、壁202が形成される位置を調整したことによるものである。また、支持体201の側面のうち、凹部203bの側を実装基板に対する実装面とすることにより、発光素子の直下に位置する凹部203bの内壁面に、比較的大きな半田の這い上がり(フィレット)を形成することができる。したがって、本実施例にかかる半導体装置は、実装基板に対して強固に固定され、さらに放熱性が向上された半導体装置とすることができる。
【0120】
また、本実施例における支持体201は、導電性材料により内壁面が被覆された切欠部204を一方の側面側と他方の側面側とに、それぞれ二対有している。本実施例における切欠部204は、支持体201の正面方向から背面方向まで貫通して延伸させることなく形成されたものである。そのため、支持体201の一方の側面を外部の配線基板に対する実装面として、発光装置200を半田により配線基板に固定するとき、半田は切欠部204の底部に形成されている壁によりその流動が妨げられる。これにより、本実施例における発光装置200と配線基板との接続は、主に支持体201の正面方向において半田の状態を確認しながら作業性よく行うことができる。
【実施例3】
【0121】
実施例1または実施例2における発光装置100、200を、導体配線が施された実装基板に対して電気的および機械的に接続する。すなわち、実施例1または実施例2における発光装置の支持体に施された導体配線のうち、実装基板と対向する側の導体配線と、実装基板の導体配線とをリフローにより半田付けする。また、支持体の背面に形成された凹部の内壁面と、実装基板とを半田にて接合する。このとき、実装基板から凹部の内壁面にかけて半田の這い上がり(フィレット)が形成される。これにより、支持体の背面に形成された第一の凹部の内壁面と、実装基板とが半田を介して電気的および機械的に接続されるだけでなく、熱的にも接続される。したがって、発光素子の発熱は、半田を介して実装基板の方向に効率よく放熱されるため、本実施例にかかる発光装置は、放熱性が向上され、高出力発光することができる。
【実施例4】
【0122】
図13は、本実施例における半導体装置に利用することができる支持体301の正面図である。また、図14は、本実施例の支持体301における切欠部204の部分的な拡大図である。なお、本実施例の支持体301は、上述したようにセラミックスを材料として成型されており、大きさが横4.8mm、縦2.0mm、高さ1.4mmとさせてある。
【0123】
図13に示されるように、本実施例における支持体301は、その側面により画定される外郭の隅角となる四隅に、支持体301の正面側(第二の凹部104の側)から背面側へ延伸するように形成された切欠部204を有する。その切欠部204の壁面は、平面部204aと曲面部204bとからなり、第二の凹部104底面に配された導体配線105と電気的に接続する導体配線が各壁面に施されている。ここで、第二の凹部104の方向から見て、平面部204aの縦方向の距離は、0.4mmであり、一方、曲面部204bは、半径0.2mmの扇形である。また、支持体301の正面側から背面側へ延伸する切欠部204の延伸距離は、約1.4mmである。さらに、平面部204aは、支持体301の外郭面を形成する側面のうち、該平面部204aが隣接する側面に対して略垂直である。なお、平面部204aと支持体301の側面とがなす角度は、垂直に限定されることなく、支持体の方向に鋭角をなすように該平面部が隣接する側面に対して傾斜されていてもよい。また、切欠部204の壁面において、曲面部204bは必ずしも必要ではなく、壁面が平面部のみにより形成されていてもよい。
【0124】
このように、少なくとも平面部からなる壁面を有する切欠部とすることにより、半田は、その切欠部の壁面を這い上がり易くなる。また、平面部204aが隣接する支持体の側面は、第一の凹部102が開口している側の側面であることが好ましい。これにより、半導体素子の直下に位置する凹部102の内壁面と、切欠部の平面部204aとを配線基板に対する接合面とすることができる。すなわち、放熱経路確保のための熱的接続と機械的および電気的接続とを支持体の同一側面方向において、半田を介して配線基板に行うことができる。したがって、本実施例にかかる半導体装置は、配線基板に強固に固定され、かつ放熱性の高い半導体装置とすることが容易にできる。以下、本実施例における切欠部の効果について詳述する。
【0125】
本実施例の切欠部を接合部位として支持体と実装基板の導体配線とを半田にて固定する。ここで、図9に示されるような曲面のみからなる切欠部204と、本実施例のように平面部を有する切欠部とを比較すると、半田は、平面部を有する切欠部の方がより這い上がり易く、より広い壁面を被覆することができる。一方、図9に示されるように、切欠部が曲面のみから形成された支持体において、支持体の大きさを一定にして半田が被覆する切欠部の壁面の面積を大きくしようとすれば、切欠部を第二の凹部104の方向に大きくせざるを得ず、その第二の凹部104における開口部の大きさや形状を制限してしまう。また、曲面のみからなる切欠部とし、第二の凹部104における開口部の大きさや形状を保持しつつ切欠部を大きくすれば、支持体自体も大きくなってしまう。
【0126】
そこで、本実施例における支持体の切欠部は、少なくとも平面部を有する壁面からなる。これにより、切欠部は、その切欠部の形状を第二の凹部104方向に大きくすることなく、より広い壁面が半田にて被覆される。このように、本実施例における支持体は、平面部を有する切欠部の壁面を半田が這い上がることにより、実装基板に対し更に強固に固定され、半田を介しての放熱性を更に向上させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明にかかる半導体装置は、放熱性に優れるため、高出力な光を照射する液晶バックライト光源としても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は、本発明の一実施例における半導体装置の模式的な斜視図である。
【図2】図2は、本発明の一実施例における半導体装置を背面方向から見た模式的な斜視図である。
【図3】図3は、本発明の一実施例における支持体の模式的な斜視図である。
【図4】図4は、本発明の一実施例における半導体装置の模式的な断面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施例における半導体装置を背面方向から見た模式的な斜視図である。
【図6】図6は、本発明の一実施例における半導体装置を背面方向から見た模式的な斜視図である。
【図7】図7は、本発明の一実施例における半導体装置を背面方向から見た模式的な斜視図である。
【図8】図8は、本発明の一実施例における半導体装置を背面方向から見た模式的な斜視図である。
【図9】図9は、本発明の一実施例における半導体装置の模式的な斜視図である。
【図10】図10は、本発明の一実施例における半導体装置を背面方向から見た模式的な斜視図である。
【図11】図11は、本発明の一実施例における半導体装置の模式的な斜視図である。
【図12】図12は、本発明の一実施例における半導体装置の模式的な斜視図である。
【図13】図13は、本発明の一実施例における半導体装置の模式的な正面図である。
【図14】図14は、本発明の一実施例における半導体装置の一部を拡大した模式的な正面図である。
【符号の説明】
【0129】
100、200・・・発光装置
101、201、301・・・支持体
102、203a、203b・・・第一の凹部
103a、103b・・・貫通孔
104・・・第二の凹部
105・・・導体配線
106・・・光変換部材
107・・・発光素子
202・・・壁
204・・・切欠部
204a・・・平面部
204b・・・曲面部
205・・・第三の凹部
206・・・突状部
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子や受光素子のような半導体素子が支持体に実装された半導体装置に関し、特に放熱性に優れた表面実装型の半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子が支持体に搭載されてなる半導体装置は、その支持体の側面が外部の配線基板に対向され、実装されることがある。このような表面実装型の半導体装置は、半導体素子から実装基板への放熱性の向上が課題となっている。例えば、特開平11−121805号公報に開示される発光装置は、発光素子から支持基板の方向に延伸する貫通孔に存在する空気やシリコーン樹脂を媒質として、発光素子から発生する熱を発光装置の外部へ放熱させている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−121805号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半導体素子が配置された箇所から半導体装置の実装面へ最短経路で結ぶ方向には、支持体を構成する絶縁性材料が存在するため、放熱性が十分ではない。
【0005】
そこで、本発明は、従来の半導体装置と比較して放熱性がさらに向上された半導体装置とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するために本発明に係る半導体装置は、半導体素子と、該半導体素子を保持する支持体とを有する半導体装置であって、上記支持体は、その側面の方向に開口する凹部を有し、該凹部の内壁面は、少なくとも上記半導体素子側の内壁面が導電性材料により被覆されていることを特徴とする。
【0007】
このように構成すると、従来の半導体装置と比較して、半導体素子からの放熱経路を短縮でき、放熱性の高い半導体装置とすることができる。
【0008】
また、上記支持体は、上記凹部102の内壁面から上記半導体素子の方向に延伸する貫通孔を有し、該貫通孔の内壁面が上記導電性材料により被覆されている。これにより、半導体装置の放熱性をさらに向上することができる。
【0009】
また、上記貫通孔は、上記半導体素子の方向に向かって徐々に内径が狭くなる。さらに、上記貫通孔は、上記半導体素子が載置される側の開口部が前記導電性材料により塞がれていることが好ましい。これにより、半導体装置の放熱性をさらに向上することができる。
【0010】
また、上記支持体の側面の方向に開口する凹部を形成する内壁面のうち、上記凹部102の内壁面は、その断面が上記半導体素子の方向に徐々に狭くなるテーパ形状とされている。つまり、内壁面の断面が半導体装置の実装面の方向に徐々に広くなるテーパ形状とされている。これにより、半導体装置の放熱性をさらに向上することができる。また、半導体装置を基板に安定な姿勢で実装することができ、実装時のリフローにおいて、半田のような導電性部材が第一の凹部の壁面を被覆することが容易となる。
【0011】
また、上記支持体は、上記半導体素子を載置する凹部104を有し、該凹部104の底面から内壁面および側壁上面を経由し該支持体101の側面まで延伸する導体配線を有しており、上記支持体101の側面に施された導体配線は、上記側壁上面から所定の間隔を空けて施された第一の配線領域105aと、該第一の配線領域105aと上記側壁上面の導体配線とを接続する第二の配線領域105bとからなり、上記第一の配線領域105aは、前記第二の配線領域105bより面積が広いことが好ましい。
【0012】
これにより、半導体装置を基板に実装する際に、半田のような導電性部材が導体配線の上を伝って第二の凹部の開口部まで濡れ広がることを防止できる。したがって、量産性よく信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0013】
また、上記導電性材料は、上記第一の凹部102の側壁上面を被覆している。これにより、半導体装置を基板に実装する際に、半田が側壁上面を濡れ広がるため、半田の状態を基板の直上から視認することが容易にできる。
【0014】
上記支持体は、その側面により画定される外郭の隅に切欠部を有し、該切欠部の壁面は、隣接する支持体の側面にして略垂直あるいは鋭角をなす平面部204aを有する。これにより、切欠部の壁面に延出された導体配線と実装基板とを半田にて電気的および機械的に強固に接続することができる。
【0015】
また、上記平面部204aが隣接する支持体の側面は、上記凹部102が開口している側の側面であることが好ましい。これにより、半導体素子の直下に位置する凹部102の内壁面と、切欠部の平面部とを半田にて配線基板に固定することができるため、配線基板に強固に固定され放熱性の高い半導体装置とすることができる。
【0016】
また、上記支持体は、セラミックス材料からなる。これにより、耐久性および耐熱性に優れた半導体装置とすることができる。例えば、鉛フリー半田を使用した高温下でのリフローも信頼性高く行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、従来と比較して、半導体素子が実装された方向からの放熱性が向上された表面実装型の半導体装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための半導体装置を例示するものであって、本発明は半導体装置を以下に限定するものではない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
【0019】
半導体素子と、該半導体素子を保持する支持体とを有する半導体装置において、本発明者は、上記支持体が、その側面の方向に開口する凹部を有し、該凹部の内壁面のうち、少なくとも上記半導体素子が実装されている部位に対向する内壁面は、導電性材料により被覆されていることにより上述したような課題を解決するに至った。
【0020】
半導体素子と、該半導体素子を配置する支持体とを有し、該半導体素子が配置される面に対して略垂直な実装面を有する半導体装置として、例えば、特開平11−121805号公報に開示される半導体装置が挙げられる。このような従来の半導体装置は、半導体素子が配置された箇所から半導体装置の実装面へ最短経路で結ぶ方向に、支持体を形成する絶縁性材料が存在している。この絶縁性材料は、導電性材料と比較して熱伝導性が低いため、半導体装置全体の放熱性の向上を図ることができない。
【0021】
そこで、本願発明にかかる半導体装置は、支持体の少なくとも一方の側面、特に、外部基板に対する半導体装置の実装面とする方向に開口する凹部(以下、「第一の凹部」と呼ぶ。)を支持体に形成し、その凹部のうち少なくとも半導体素子の直下に位置する内壁面を熱良導性の導電性材料にて被覆する。これにより、従来の半導体装置と比較して、半導体素子から半導体装置の実装面方向への放熱経路を短縮でき、放熱性の高い半導体装置とすることができる。
【0022】
図4は、本形態における支持体101の背面方向からの断面斜視図であり、図8は、背面方向からの斜視図である。図4および図8に示されるように、本形態における支持体101は、第一の凹部102内壁面のうち、半導体素子側の底面から半導体素子が実装されている方向に延伸する穴103aや穴103bを有する。図4に示される孔103aは、第一の凹部の内壁面から半導体素子107の方向に断面が楔形となるように二つ形成されている。また、図8に示される穴103bは、円錐形をしており、第一の凹部の内壁面に対し複数個形成させている。さらに、穴103aおよび穴103bの内壁面は、導電性材料により被覆されていることが好ましい。また、穴103aおよび穴103bは、半導体素子の方向に向かって徐々に内径が狭くなることがさらに好ましい。さらに、半導体素子が載置される側まで穴が貫通されるときには、その開口部は、例えば、導体配線の電解メッキによる金属膜など、導電性材料により塞がれていることが好ましい。これにより、半導体素子の熱は、貫通孔内の導電性材料を介して効率よく放熱され、半導体装置の放熱性をさらに向上することができる。
【0023】
図5は、本形態における支持体101の背面方向からの断面斜視図である。第一の凹部102内壁面のうち、上記半導体素子側に位置する内壁面は、その断面が半導体装置の実装面の方向に徐々に広くなるテーパ形状とされていることが好ましい。これにより、半導体装置から該半導体装置の実装基板方向への放熱性をさらに向上することができる。また、半導体装置を実装基板に対して安定な姿勢で実装することができる。さらに、実装時のリフローにおいて、半田、鉛フリー半田のような導電性部材は、支持体の壁面を這い上がるフィレットを形成し易くなり、第一の凹部の壁面(あるいは該壁面を被覆する導電性材料)を被覆することが容易となる。
【0024】
また、図3に示されるように、支持体101は、半導体素子を内部に載置する第二の凹部104を有し、該第二の凹部104の底面から内壁面および凹部の側壁上面を経由して支持体の側面まで延伸する導体配線105を有している。このように、支持体は、半導体素子を載置する凹部104を有し、該凹部104の底面から内壁面および側壁上面を経由し該支持体101の側面まで延伸する導体配線を有し、支持体101の側面に施された導体配線は、上記側壁上面から所定の間隔を空けて施された第一の配線領域105aと、該第一の配線領域105aと上記側壁上面の導体配線とを接続する第二の配線領域105bとからなり、第一の配線領域105aは、第二の配線領域105bより面積が広いことが好ましい。例えば、支持体101の側面に施された導体配線105は、該側面に垂直な方向から見て、半導体装置の実装面の方向にコの字、ジグザグ形状あるいはS(エス)字形状となるように延伸されていることが好ましい。ここで、半導体装置の実装面から凹部側壁上面に至る導体配線の延伸距離および第一の配線領域105aと第二の配線領域105bの面積は、導体配線および半田のそれぞれの材質や半田の量を考慮して調整される。これにより、半導体装置を基板に実装する際に、半田のような導電性部材が導体配線上を第二の凹部内まで濡れ広がることを確実に防止することができ、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0025】
また、導電性材料は、第一の凹部の側壁上面を被覆していることが好ましい。これにより、半導体装置を基板に実装する際に、半田が側壁上面を濡れ広がりフィレットを形成するため、半田の状態を基板の直上から視認することが容易にでき、作業性が向上する。
【0026】
また、本願発明は、上述の半導体装置と、該半導体装置が実装される基板とを有し、第一の凹部内壁面のうち、少なくとも半導体素子の実装面の直下に位置する内壁面は、上記基板の実装面とともに、半田のような導電性部材により被覆されていることを特徴とする装置である。また、導電性部材は、第一の凹部の底面から半導体素子の方向に延伸する貫通孔内にも延在していることが好ましい。これにより、半導体素子の直下に位置する内壁面から導電性部材および基板への放熱経路が形成され、半導体装置の熱が半田を介して効率よく基板の方向へ放熱される。また、上記貫通孔は、基板の方向に傾斜していることが好ましい。これにより、導電性部材が貫通孔内に入り込みやすくなり、放熱性の高い装置とすることができる。以下、本形態の各構成について詳述する。
【0027】
[支持体]
本形態における支持体とは、半導体素子を搭載して、外部環境などから該半導体素子を保護し、該半導体素子へ給電を行う導体配線(回路部)が施されている部材である。特に、本発明における支持体は、半導体素子から発生する熱を外部の基板の方向へ放熱するための第一の凹部とを有する。さらに、本発明における支持体は、第一の凹部に加えて、半導体素子を収納するための第二の凹部を有することもできる。
【0028】
第一の凹部は、第二の凹部とは反対側に形成されており、第一の凹部内壁面の一部(底面)は、実装された半導体素子の直下に位置する。また、第一の凹部の内壁面は、回路部あるいは光反射部を形成する工程において、一体的かつ同時に形成される後述の回路部あるいは光反射部と同じ金属材料により被覆されている。さらに、第一の凹部は、少なくとも支持体の側面側に開口部を有するように形成されている。例えば、図2に示される第一の凹部102は、半導体装置が外部の基板に実装されるとき、その実装面側および支持体の背面に開口部を有するように形成されている。これにより、半田にてリフローする際に、半田は第一の凹部の内壁面(その内壁面を被覆する導電性材料の表面)を伝って延在し、半田の這い上がり(フィレット)を形成することが容易にできる。したがって、半導体素子から第二の凹部の内壁面および該内壁面を被覆する半田を介して、半導体装置の実装基板方向への放熱性が向上された半導体装置とすることができる。
【0029】
図6および図7は、本発明の他の形態における支持体を背面方向から見た模式的な斜視図である。ここで、図6に示される溝の数や図7に示される円錐部の数は、図示されるものに限定されることなく、半導体装置の放熱特性を考慮して適宜選択されることは言うまでもない。
【0030】
本形態における支持体は、図6および図7にそれぞれ示されるように、第一の凹部102の内壁面形状を凹凸形状や円錐形の突起形状とし、支持体の外壁面の表面積を増やすことができる。これにより、半導体装置の放熱性をさらに向上させることができる。ここで、図6に示される凹凸形状における溝の方向は、半導体装置の実装面の方向に延伸されていることが好ましい。これにより、溝に沿って、半田の這い上がり(フィレット)が容易に形成される。そのため、半導体装置の半田を介した放熱経路が形成され、半導体装置の放熱性を向上させることができる。
【0031】
一方、支持体正面の第二の凹部104は、半導体素子や、該半導体素子の電極を導体配線105と電気的に接続する導電性ワイヤなどを内部に配置させるためのものである。したがって、半導体素子をダイボンド機器などで直接積載などすると共に半導体素子との電気的接続をワイヤボンディングなどで採れるだけの十分な大きさがあれば良い。第二の凹部は、半導体素子の数、大きさおよび形状を考慮し、種々の形状および大きさが選択される。また、発光装置の配光性などを考慮し、複数の形状および大きさの凹部を設けることもできる。
【0032】
半導体素子と凹部の底面との接着は、熱硬化性樹脂などによって行うことができる。具体的には、エポキシ樹脂、アクリル樹脂やイミド樹脂などが挙げられる。また、フリップチップ実装された半導体素子と配線と電気的に接続させるためにはAgペースト、ITOペースト、カーボンペースト、金属バンプ等を用いることができる。このような支持体として、例えば、MID基板やセラミックパッケージなどが挙げられる。以下、本形態における支持体について、詳細に説明する。
【0033】
(MID基板)
MID基板は、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、液晶ポリマ等の電気絶縁性材料を用い、射出成型によって絶縁性基材を形成する。そして、半導体素子の実装箇所に第二の凹部、および該第二の凹部の反対側に第一の凹部を設けるなどして、三次元の立体形状の絶縁性基材を形成する。
【0034】
この絶縁性基材をアルカリ脱脂した後、その表面をプラズマ処理して表面の活性化及び微細な粗面化を行う。その後、絶縁性基材の表面にスパッタリングや真空蒸着等により、銅、銀、金、ニッケル、白金またはパラジウム等の金属膜(めっき下地層)を形成する。
【0035】
そして、YAGレーザやエキシマレーザのようなレーザの電磁波を照射して、上記金属膜を除去する。すなわち、ガルバノミラーでレーザ光を照射することにより、絶縁性基材の表面のうち回路を形成する箇所である回路部以外の部分、すなわち回路部間の絶縁スペースとなる非回路部において照射されるものであり、非回路部の少なくとも回路部との境界領域に非回路部のパターンに沿って照射することにより、非回路部の回路部との境界領域の金属膜を除去するものである。
【0036】
次に、回路部に給電を行い、所定厚の金属膜を形成した支持体を得る。例えば、電解メッキにより、Cu、NiさらにAuの順にメッキする。なお、非回路部の残存した金属膜は、必要に応じてソフトエッチング等で除去してもよい。
【0037】
(セラミックパッケージ)
セラミックパッケージとは、セラミック材料で形成されたものであり、半導体素子が配置されると共に半導体素子と外部とを電気的に接続する回路部が設けられた支持体である。
【0038】
セラミック材料は、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライトなどが好ましい。特に、原料粉末の90〜96重量%がアルミナであり、焼結助剤として粘度、タルク、マグネシア、カルシア及びシリカ等が4〜10重量%添加され1500から1700℃の温度範囲で焼結させたセラミックスや原料粉末の40〜60重量%がアルミナで焼結助剤として60〜40重量%の硼珪酸ガラス、コージュライト、フォルステライト、ムライトなどが添加され800〜1200℃の温度範囲で焼結させたセラミックス等が挙げられる。
【0039】
このようなセラミック材料とバインダーとしての樹脂との混合物を材料とした射出成型によって絶縁性基材を形成する。そして、半導体素子の実装箇所に第二の凹部、該第二の凹部の反対側に第一の凹部を設けるなどして、三次元の立体形状の絶縁性基材を形成し、焼成する。さらに、上述のMID基板と同様にして絶縁性基材に回路部を形成して、支持体とする。セラミック材料の射出成型によって絶縁性基材を形成する方法は、以下に述べるセラミックグリーンシートを積層させる方法と比較して、図6から図8に示されるような種々の形状を有する支持体をセラミック材料にて形成することが容易にできる。
【0040】
一方、セラミックグリーンシートを積層させ、焼成することにより形成されるセラミックパッケージがある。このセラミックグリーンシートを材料として形成されるセラミックパッケージは、焼成前のグリーンシートの段階で種々の形状をとることができる。パッケージ内の導体配線は、タングステンやモリブデンなど高融点金属を樹脂バインダーに含有させたペースト状の材料から形成される。まず、スクリーン印刷などの方法により、ペースト状の材料をグリーンシートに設けたスルーホールに押し込んで所望の形状とし、セラミック材料の焼成によって導体パターンとする。次に、この導体パターンに通電し、ニッケルや銀、金などを材料とする電解メッキを行うことにより、スルーホールの内壁面から半導体素子が搭載される部位までパターニングされた導体配線を形成される。なお、スルーホールの開口部を含む断面の位置で分割して個片とすることによって、スルーホールの分割痕からなる切欠部を支持体の隅角に電極として形成することができる。
【0041】
半導体素子を載置するための凹部は、貫通孔を有するグリーンシートを多層に張り合わせることなどにより形成される。したがって、円状、楕円状や孔径の異なるグリーンシートを積層することで階段状の開口部内壁などを形成することも可能である。さらに、一定の方向に内径が大きくなる貫通孔を有するグリーンシートと、種々の形状および大きさの貫通孔を有するグリーンシートを組み合わせることにより、開口方向に向かって内径が広くなる形状を有する凹部とすることができる。
【0042】
なお、支持体の背面側において一方の側面方向に開口する凹部は、凹部を有するグリーンシートの積層体を焼成し金属メッキをした後、凹部を含む断面の位置で分割して個片とすることによって形成することができる。例えば、図10に示されるように、支持体の背面側から見て、一方の側面方向と他方の側面方向に開口する二つの凹部が形成されることとなる。その二つの凹部のうち、一方の凹部は、凹部の内壁面の少なくとも一つが支持体に載置される半導体素子の直下に位置するように、その大きさが調整されている。
【0043】
図11は、本発明の別の形態における半導体装置を正面方向から見た模式的な斜視図である。本形態における支持体は、図11に示されるように、内壁面に導体配線が施されたスルーホールの分割痕からなる切欠部204を有する。この切欠部204のうち、最も直近かつ隣接して形成される切欠部204同士が繋がるような第三の凹部205を支持体201の一方の側面(例えば、幅狭側)に形成することもできる。このような第三の凹部205を形成し、支持体201の他方の側面(例えば、幅広側)を外部の実装基板に対する実装面とし、切欠部204の壁面と実装基板とが半田付けされる。このとき、半導体装置の直上(半田付けされていない方の切欠部204側)から第三の凹部205を通して半田付けの具合を確認することができる。そのため、作業性よく信頼性の高い実装が可能な半導体装置とすることができる。
【0044】
図12は、本発明の別の形態における半導体装置を正面方向から見た模式的な斜視図である。図12に示されるように、半導体素子を収納する第二の凹部を形成している側壁の外壁面に対し、複数の突状部206を設けることができる。なお、突状部206は、支持体の一方の側面方向あるいは他方の側面方向のうち、少なくとも一方に設けることができる。これにより、支持体の外壁面の表面積が増加し、半導体装置の放熱性をさらに向上させることができる。特に、第二の凹部の側壁から直接放熱される傾向が強くなるため、半導体素子を被覆する樹脂に蛍光体を含有させたとき、その蛍光体の熱劣化が抑制され、光学特性の低下がない信頼性の高い発光装置とすることができる。
【0045】
さらに、封止部材が充填される凹部を形成する際に、所定の大きさだけ内径の小さい貫通孔を有するグリーンシートを適宜配置し、凹部内に充填された樹脂の保持手段を有するセラミックパッケージとすることができる。この保持手段は、凹部の内側方向に突出しており、凹部内に充填された樹脂は、凹部内から剥離することなく、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0046】
このようなグリーンシートを積層させた後、焼結させることによってセラミックスパッケージとすることができる。また、Cr2O3、MnO2、TiO2、Fe2O3などをグリーンシート自体に含有させることによって暗色系にさせることもできる。
【0047】
[光反射部]
発光素子や受光素子のような半導体素子を凹部に収納するとき、その凹部の内壁面には光反射部を形成することが好ましい。光反射部は、セラミックパッケージの正面側において、凹部を形成する内壁面に対して設けられ、セラミックパッケージのセラミック素地部と直接接し第二の金属層の下地となる第一の金属層と、発光素子から放出された光を反射させ効率よく外部に取り出すための反射機能を有する第二の金属層とを含む。なお、本形態における光反射部、第一の凹部の内壁面を被覆する導電性材料および導体配線は、以下に詳述する形成方法により一体的に形成することができる。
【0048】
(第一の金属層)
第一の金属層は、セラミックパッケージに直接接して形成されると共に第二の金属層を形成させる下地となるものである。したがって、セラミック焼成と同時に形成される第一の金属層は、セラミックの焼成時に溶融しないことが必要となる。このような第一の金属層に用いられる高融点金属としては、タングステン、クロム、チタン、コバルト、モリブデンやこれらの合金などが挙げられる。例えば、これらの金属粒子を樹脂ペーストに混合させグリーンシートの凹部内壁に塗布或いは印刷などし、グリーンシートと共に焼成することによって第一の金属層を形成することができる。金属粒子の粒径を制御することによってセラミックや第一の金属層上に形成される第二の金属層さらには、その上に形成されるモールド部材との密着性をも制御することができる。第一の金属層に用いられる金属粒径によって、その上に形成される第二の金属層の表面粗さも制御することができる。そのため、第一の金属層に含有される金属粒子の粒径としては、0.3から100μmであることが好ましく、1から20μmがより好ましい。
【0049】
また、内壁面をスクリーン印刷する以外の反射導体層形成の方法としては、グリーンシートの開口部に完全に導体ペーストを流入し埋め込んだ後、内壁に導体層を残す範囲で開口部中心をレーザで穴開けする方法を用いても良い。この場合、レーザ光源としては、炭酸ガスレーザー及びYAGレーザ、エキシマレーザなどが好適に挙げられる。さらに、第一の金属層は、必ずしも内壁の全面に形成させる必要はない。部分的に第一の金属層及び第二の金属層を形成させないことにより所望方向のみ光の反射をさせる。金属層が形成されていない部位は、セラミックを透過して光が広がったように見える。このように内壁に形成させる金属層を部分的に形成させることによって視野角を所望方向に広げることもできる。また、導体配線を構成する高融点金属含有の樹脂ペーストを内壁に塗布などすることにより光反射部を構成する第一の金属層として形成することもできる。
【0050】
(第二の金属層)
本形態の第二の金属層は、第一の金属層上に形成させるものであって、発光素子から放出された光を効率よく外部に取り出すための反射機能を有するものである。このような第二の金属層は、第一の金属層上にメッキや蒸着などを利用して比較的簡単に形成させることができる。第二の金属層として具体的には、金、銀、白金、銅、アルミニウム、ニッケル、パラジウムやそれらの合金、それらの多層膜など発光素子から放出された光に対して90%以上の反射率を有する金属が好適に挙げられる。
【0051】
第二の金属層は、セラミックパッケージ内に配線された導体配線パターンの表面処理と同時に形成させることもできる。即ち、セラミック パッケージに設けられた導体配線に半田接続性などを考慮してNi/Ag又はNi/Auを第二の金属層形成と同時にメッキさせる場合もある。また、第二の金属層の形成と導電配線の表面とを別々に電気メッキを行っても良い。凹部の底面に配されている導電配線の表面を第二の金属層にて被覆することによって、発光素子の下方における光の損失を抑制することができる。
【0052】
[半導体素子]
本発明における半導体素子は、発光素子、受光素子、およびそれらの半導体素子を過電圧による破壊から守る保護素子(例えば、ツェナーダイオードやコンデンサー)、あるいはそれらを複数種組み合わせたものとすることができる。ここでは、半導体素子の一例として、発光素子(LEDチップ)について説明する。LEDチップを構成する半導体発光素子としては、ZnSeやGaNなど種々の半導体を使用したものを挙げることができるが、蛍光物質を有する発光装置とする場合には、その蛍光物質を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体(InXAlYGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適に挙げられる。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。
【0053】
窒化物半導体を使用した場合、半導体用基板にはサファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO等の材料が好適に用いられる。結晶性の良い窒化物半導体を量産性よく形成させるためにはサファイア基板を用いることが好ましい。このサファイア基板上にMOCVD法などを用いて窒化物半導体を形成させることができる。サファイア基板上にGaN、AlN、GaAlN等のバッファ層を形成し、その上にpn接合を有する窒化物半導体を形成させる。
【0054】
窒化物半導体を使用したpn接合を有する発光素子の例として、バッファ層上に、n型窒化ガリウムで形成した第1のコンタクト層、n型窒化アルミニウム・ガリウムで形成させた第1のクラッド層、窒化インジウム・ガリウムで形成した活性層、p型窒化アルミニウム・ガリウムで形成した第2のクラッド層、p型窒化ガリウムで形成した第2のコンタクト層を順に積層させたダブルへテロ構成などが挙げられる。
【0055】
窒化物半導体は、不純物をドープしない状態でn型導電性を示す。発光効率を向上させるなど所望のn型窒化物半導体を形成させる場合は、n型ドーパントとしてSi、Ge、Se、Te、C等を適宜導入することが好ましい。一方、p型窒化物半導体を形成させる場合は、p型ドーパントであるZn、Mg、Be、Ca、Sr、Ba等をドープさせる。窒化物半導体は、p型ドーパントをドープしただけではp型化しにくいためp型ドーパント導入後に、炉による加熱やプラズマ照射等により低抵抗化させることが好ましい。
【0056】
p型半導体層には、発光素子に投入された電流をp型半導体層の全面に広げるための拡散電極が設けられる。さらに、拡散電極およびn型半導体層には、バンプや導電性ワイヤのような導電部材と接続するp側台座電極およびn側台座電極がそれぞれ設けられる。ここで、バンプの材料としては、例えばAuやAu−Sn共晶、鉛フリー半田が挙げられる。また、導電性ワイヤの材料としては、例えば、Al、Au、Cuあるいはそれらを含む合金からなる細線が挙げられる。
【0057】
拡散電極あるいはp側台座電極、およびn側台座電極の形成は、エッチング等の方法によりn型半導体を露出させた後、蒸着法やスパッタリング法により行う。また、拡散電極あるいはp側台座電極の形状は、発光素子全面に電流が均一に広がるように、種々の形状とされる。
【0058】
本形態において、p側およびn側台座電極の材料は、バンプに含有される材料の少なくとも一種を含有することが好ましい。すなわち、バンプがAuを材料とするときは、p側およびn側台座電極の材料、特にバンプとの接合面となる最上層の材料は、AuまたはAuを含む合金とする。例えば、p側およびn側台座電極は、W/Pt/AuやRh/Pt/Auとされ、それぞれの金属の厚みは数百Å〜数千Åである。なお、本明細書中において、記号「A/B」は、金属Aおよび金属Bが順にスパッタリングあるいは蒸着のような方法により積層されることを示す。
【0059】
また、p型半導体層側全面に形成される拡散電極は、発光素子の出光を発光素子の透光性基板方向へ反射させる材料とすることが好ましい。例えば、Ag、Al、Rh、Rh/Irが挙げられる。さらに、これらの材料と組み合わせて、或いは単独で、p型半導体の全面にITO(インジウム(In)とスズ(Sn)の複合酸化物)、ZnOのような酸化物導電膜や、Ni/Au等の金属薄膜を透光性電極として形成させることができる。
【0060】
[光変換部材]
本形態にかかる半導体装置は、発光ダイオードやレーザダイオードなどの発光素子から放出される可視光や紫外光の一部を吸収し、その吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光する蛍光物質を備えることができる。特に、本形態に用いられる蛍光物質は、少なくとも半導体発光素子から発光された光によって励起され、波長変換された光を発する蛍光体をいい、該蛍光体を固着させる結着剤とともに光変換部材を構成する。
【0061】
ここで、結着剤としては、例えば、エポキシ樹脂のような透光性樹脂や、耐光性の高いシリコーン樹脂や金属アルコキシドを出発原料としてゾルゲル法により生成される透光性無機材料とすることもできる。また、光変換部材の形成方法としては、スクリーン印刷、インクジェット塗布、ポッティング、孔版印刷等種々の形成方法とすることができる。また、蛍光体は、例えば第二の凹部の開口側に配されるレンズのような透光性部材に含有させることもできる。以下、本形態の光変換部材に含有させることができる蛍光体について詳述する。
【0062】
(アルミニウム・ガーネット系蛍光体)
本形態におけるアルミニウム・ガーネット系蛍光体とは、Alを含み、かつY、Lu、Sc、La、Gd、Tb、Eu及びSmから選択された少なくとも一つの元素と、Ga及びInから選択された一つの元素とを含み、希土類元素から選択された少なくとも一つの元素で付活された蛍光体であり、発光素子から発光された可視光や紫外線で励起されて発光する蛍光体である。
【0063】
例えば、YAlO3:Ce、Y3Al5O12:Ce、Y4Al2O9:Ce、(Y0.8Gd0.2)3Al5O12:Ce、Y3(Al0.8Ga0.2)5O12:Ce、Tb2.95Ce0.05Al5O12、Y2.90Ce0.05Tb0.05Al5O12、Y2.94Ce0.05Pr0.01Al5O12、Y2.90Ce0.05Pr0.05Al5O12等が挙げられる。さらに、本実施の形態において、特にYを含み、かつCeあるいはPrで付活され組成の異なる二種類以上のイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体(イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(以下、「YAG系蛍光体」と呼ぶ。))が利用される。特に、高輝度且つ長時間の使用時においては(Re1-xSmx)3(Al1-yGay)5O12:Ce(0≦x<1、0≦y≦1、但し、Reは、Y,Gd,Laからなる群より選択される少なくとも一種の元素である。)などが好ましい。
【0064】
(Re1-xSmx)3(Al1-yGay)5O12:Ce蛍光体は、ガーネット構造のため、熱、光及び水分に強く、励起スペクトルのピークが470nm付近などにさせることができる。また、発光ピークも530nm付近にあり720nmまで裾を引くブロードな発光スペクトルを持たせることができる。
【0065】
また、蛍光体は、2種類以上の蛍光体を混合させてもよい。即ち、上述したYAG系蛍光体について言えば、Al、Ga、Y、La及びGdやSmの含有量が異なる2種類以上の(Re1-xSmx)3(Al1-yGay)5O12:Ce蛍光体を混合させてRGBの波長成分を増やすことができる。また、現在のところ半導体発光素子の発光波長には、バラツキが生ずるものがあるため2種類以上の蛍光体を混合調整させて所望の白色系の混色光などを得ることができる。具体的には、発光素子の発光波長に合わせて色度点の異なる蛍光体の量を調整し含有させることでその蛍光体間と発光素子で結ばれる色度図上の任意の点を発光させることができる。
【0066】
発光層に窒化物系化合物半導体を用いた発光素子から発光した青色系の光と、青色光を吸収させるためボディーカラーが黄色である蛍光体から発光する緑色系の光と、赤色系の光とを混色表示させると所望の白色系発光色表示を行うことができる。発光装置はこの混色を起こさせるために蛍光体の粉体やバルクをエポキシ樹脂、アクリル樹脂或いはシリコーン樹脂などの各種樹脂や酸化珪素、酸化アルミニウムなどの透光性無機物中に含有させることもできる。このように蛍光体が含有されたものは、発光素子からの光が透過する程度に薄く形成させたドット状のものや層状ものなど用途に応じて種々用いることができる。蛍光体と透光性無機物との比率や塗布、充填量を種々調整すること及び発光素子の発光波長を選択することにより白色を含め電球色など任意の色調を提供させることができる。
【0067】
また、2種類以上の蛍光体をそれぞれ発光素子からの入射光に対して順に配置させることによって効率よく発光可能な発光装置とすることができる。即ち、反射部材を有する発光素子上には、長波長側に吸収波長があり長波長に発光可能な蛍光体が含有された色変換部材と、それよりも長波長側に吸収波長がありより長波長に発光可能な色変換部材とを積層などさせることで反射光を有効利用することができる。
【0068】
YAG系蛍光体を使用すると、放射照度として(Ee)=0.1W・cm−2以上1000W・cm−2以下の発光素子と接する或いは近接して配置された場合においても高効率に十分な耐光性を有する発光装置とすることができる。
【0069】
本実施の形態に用いられるセリウムで付活された緑色系が発光可能なYAG系蛍光体では、ガーネット構造のため、熱、光及び水分に強く、励起吸収スペクトルのピーク波長が420nmから470nm付近にさせることができる。また、発光ピーク波長λpも510nm付近にあり700nm付近まで裾を引くブロードな発光スペクトルを持つ。一方、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体である赤色系が発光可能なYAG系蛍光体でも、ガーネット構造であり熱、光及び水分に強く、励起吸収スペクトルのピーク波長が420nmから470nm付近にさせることができる。また、発光ピーク波長λpが600nm付近にあり750nm付近まで裾を引くブロードな発光スペクトルを持つ。
【0070】
ガーネット構造を持ったYAG系蛍光体の組成の内、Alの一部をGaで置換することで発光スペクトルが短波長側にシフトし、また組成のYの一部をGd及び/又はLaで置換することで、発光スペクトルが長波長側へシフトする。このように組成を変化することで発光色を連続的に調節することが可能である。したがって、長波長側の強度がGdの組成比で連続的に変えられるなど窒化物半導体の青色系発光を利用して白色系発光に変換するための理想条件を備えている。Yの置換が2割未満では、緑色成分が大きく赤色成分が少なくなり、8割以上では、赤味成分が増えるものの輝度が急激に低下する。また、励起吸収スペクトルについても同様に、ガーネット構造を持ったYAG系蛍光体の組成の内、Alの一部をGaで置換することで励起吸収スペクトルが短波長側にシフトし、また組成のYの一部をGd及び/又はLaで置換することで、励起吸収スペクトルが長波長側へシフトする。YAG系蛍光体の励起吸収スペクトルのピーク波長は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長より短波長側にあることが好ましい。このように構成すると、発光素子に投入する電流を増加させた場合、励起吸収スペクトルのピーク波長は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長にほぼ一致するため、蛍光体の励起効率を低下させることなく、色度ズレの発生を抑えた発光装置を形成することができる。
【0071】
アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、以下のような方法で製造することができる。まず、蛍光体は、Y、Gd、Ce、La、Al、Sm、Pr、Tb及びGaの原料として酸化物、又は高温で容易に酸化物になる化合物を使用し、それらを化学量論比で十分に混合して原料を得る。又は、Y、Gd、Ce、La、Sm、Pr、Tbの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈したものを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムとを混合して混合原料を得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して坩堝に詰め、空気中1350〜1450°Cの温度範囲で2〜5時間焼成して焼成品を得、次に焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通すことで得ることができる。また、別の実施の形態の蛍光体の製造方法では、蛍光体の原料を混合した混合原料とフラックスからなる混合物を、大気中又は弱還元雰囲気中にて行う第一焼成工程と、還元雰囲気中にて行う第二焼成工程とからなる、二段階で焼成することが好ましい。ここで、弱還元雰囲気とは、混合原料から所望の蛍光体を形成する反応過程において必要な酸素量は少なくとも含むように設定された弱い還元雰囲気のことをいい、この弱還元雰囲気中において所望とする蛍光体の構造形成が完了するまで第一焼成工程を行うことにより、蛍光体の黒変を防止し、かつ光の吸収効率の低下を防止できる。また、第二焼成工程における還元雰囲気とは、弱還元雰囲気より強い還元雰囲気をいう。このように二段階で焼成すると、励起波長の吸収効率の高い蛍光体が得られる。従って、このように形成された蛍光体にて発光装置を形成した場合に、所望とする色調を得るために必要な蛍光体量を減らすことができ、光取り出し効率の高い発光装置を形成することができる。
【0072】
組成の異なる2種類以上のセリウムで付活されたアルミニウム・ガーネット系蛍光体は、混合させて用いても良いし、それぞれ独立して配置させても良い。蛍光体をそれぞれ独立して配置させる場合、発光素子から光をより短波長側で吸収発光しやすい蛍光体、それよりも長波長側で吸収発光しやすい蛍光体の順に配置させることが好ましい。これによって効率よく吸収及び発光させることができる。
【0073】
本実施の形態において使用される蛍光体は、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体やルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体に代表されるアルミニウム・ガーネット系蛍光体と、赤色系の光を発光可能な蛍光体、特に窒化物系蛍光体とを組み合わせたものを使用することもできる。これらのYAG系蛍光体および窒化物系蛍光体は、混合して光変換部材中に含有させてもよいし、複数の層から構成される光変換部材中に別々に含有させてもよい。以下、それぞれの蛍光体について詳細に説明していく。
【0074】
(ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体)
ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体とは、一般式(Lu1−a−bRaMb)3(Al1−cGac)5O12(但し、RはCeを必須とする少なくとも1種以上の希土類元素である。MはSc、Y、La、Gdから選択される少なくとも1種の元素であり、0.0001≦a≦0.5、0≦b≦0.5、0.0001≦a+b<1、0≦c≦0.8である。)で表される蛍光体である。例えば、組成式が(Lu0.99Ce0.01)3Al5O12、(Lu0.90Ce0.10)3Al5O12、(Lu0.99Ce0.01)3(Al0.5Ga0.5)5O12で表される蛍光体である。
【0075】
ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(以下、「LAG系蛍光体」と呼ぶことがある。)は、次のようにして得られる。蛍光体原料として、ルテチウム化合物、希土類元素Rの化合物、希土類元素Mの化合物、アルミニウム化合物及びガリウム化合物を用い、各化合物について上記一般式の割合になるように秤取し、混合するか、又はこれら蛍光体原料にフラックスを加えて混合し、原料混合物を得る。この原料混合物をルツボに充填後、還元性雰囲気中、1200〜1600℃で焼成し、冷却後、分散処理することにより、上記一般式で表される本発明の蛍光体を得る。
【0076】
蛍光体原料として、酸化物又は熱分解により酸化物となる炭酸塩、水酸化物等の化合物が好ましく用いられる。また、蛍光体原料として、蛍光体を構成する各金属元素を全部又は一部含む共沈物を用いることもできる。例えば、これらの元素を含む水溶液にアルカリ、炭酸塩等の水溶液を加えると共沈物が得られるが、これを乾燥又は熱分解して用いることができる。また、フラックスとしてはフッ化物、ホウ酸塩等が好ましく、蛍光体原料100重量部に対し0.01〜1.0重量部の範囲で添加する。焼成雰囲気は、付活剤のセリウムが酸化されない還元性雰囲気が好ましい。水素濃度が3.0体積%以下の水素・窒素の混合ガス雰囲気がより好ましい。焼成温度は1200〜1600℃が好ましく、目的の中心粒径の蛍光体を得ることができる。より好ましくは1300〜1500℃である。
【0077】
上記一般式において、Rは付活剤であり、Ceを必須とする少なくとも1種以上の希土類元素であって、具体的には、Ce、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lrである。RはCeのみでもよいが、CeとCe以外の希土類元素から選ばれる少なくとも1種以上の元素とを含んでいてもよい。Ce以外の希土類元素は、共付活剤として作用するためである。ここで、Rには、CeがR全量に対し70mol%以上含有されていることが好ましい。a値(R量)は、0.0001≦a≦0.5が好ましく、0.0001未満では発光輝度が低下し、0.5を越えても濃度消光によって発光輝度が低下する。より好ましくは、0.001≦a≦0.4、さらに好ましくは、0.005≦a≦0.2である。b値(M量)は、0≦b≦0.5が好ましく、より好ましくは0≦b≦0.4であり、さらに好ましくは0≦b≦0.3である。例えば、MがYの場合、b値が0.5を越えると長波長紫外線〜短波長可視光、特に360〜410nm励起による発光輝度が非常に低下してしまう。c値(Ga量)は、0≦c≦0.8が好ましく、より好ましくは0≦c≦0.5であり、さらに好ましくは0≦c≦0.3である。c値が0.8を越えると発光波長は短波長にシフトし、発光輝度が低下する。
【0078】
LAG系蛍光体の中心粒径は1〜100μmの範囲が好ましく、より好ましくは5〜50μmの範囲であり、さらに好ましくは5〜15μmの範囲である。1μmより小さい蛍光体は、凝集体を形成しやすい傾向にある。これに対し、5〜50μmの粒径範囲の蛍光体は、光の吸収率及び変換効率が高く、光変換部材も形成しやすい。このように、光学的に優れた特徴を有する粒径の大きな蛍光体を含有させることにより、発光装置の量産性も向上する。また、上記中心粒径値を有する蛍光体が頻度高く含有されていることが好ましく、頻度値は20%〜50%が好ましい。このように粒径のバラツキが小さい蛍光体を用いることにより、より色ムラが抑制され良好な色調を有する発光装置が得られる。
【0079】
ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は300nm〜550nmの波長域の紫外線又は可視光により効率よく励起され発光することから、光変換部材に含有される蛍光体として有効に利用することができる。さらに、組成式の異なる複数種のLAG系蛍光体、又はLAG系蛍光体を他の蛍光体とともに用いることにより、発光装置の発光色を種々変化させることができる。半導体発光素子からの青色系の発光と、該発光を吸収し黄色系の発光する蛍光体からの発光との混色により、白色系の混色光を発光する従来の発光装置は、発光素子からの光の一部を透過させて利用するため、構造自体を簡略化できると共に出力向上を行いやすいという利点がある。その一方、上記発光装置は、2色の混色による発光であるため、演色性が十分でなく、改良が求められている。そこで、LAG系蛍光体を利用して白色系の混色光を発する発光装置は、従来の発光装置と比較してその演色性を向上させることができる。また、LAG系蛍光体は、YAG系蛍光体と比較して温度特性に優れるため、劣化、色ずれの少ない発光装置を得ることができる。
【0080】
(窒化物系蛍光体)
本形態における窒化物系蛍光体とは、Nを含み、かつBe、Mg、Ca、Sr、Ba、及びZnから選択された少なくとも一つの元素と、C、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、及びHfから選択された少なくとも一つの元素とを含み、希土類元素から選択された少なくとも一つの元素で付活された蛍光体である。また、本実施の形態に用いられる窒化物系蛍光体としては、発光素子から発光された可視光、紫外線、及びYAG系蛍光体からの発光を吸収することによって励起され発光する蛍光体をいう。
【0081】
例えば、Sr2Si5N8:Eu,Pr、Ba2Si5N8:Eu,Pr、Mg2Si5N8:Eu,Pr、Zn2Si5N8:Eu,Pr、SrSi7N10:Eu,Pr、BaSi7N10:Eu,Ce、MgSi7N10:Eu,Ce、ZnSi7N10:Eu,Ce、Sr2Ge5N8:Eu,Ce、Ba2Ge5N8:Eu,Pr、Mg2Ge5N8:Eu,Pr、Zn2Ge5N8:Eu,Pr、SrGe7N10:Eu,Ce、BaGe7N10:Eu,Pr、MgGe7N10:Eu,Pr、ZnGe7N10:Eu,Ce、Sr1.8Ca0.2Si5N8:Eu,Pr、Ba1.8Ca0.2Si5N8:Eu,Ce、Mg1.8Ca0.2Si5N8:Eu,Pr、Zn1.8Ca0.2Si5N8:Eu,Ce、Sr0.8Ca0.2Si7N10:Eu,La、Ba0.8Ca0.2Si7N10:Eu,La、Mg0.8Ca0.2Si7N10:Eu,Nd、Zn0.8Ca0.2Si7N10:Eu,Nd、Sr0.8Ca0.2Ge7N10:Eu,Tb、Ba0.8Ca0.2Ge7N10:Eu,Tb、Mg0.8Ca0.2Ge7N10:Eu,Pr、Zn0.8Ca0.2Ge7N10:Eu,Pr、Sr0.8Ca0.2Si6GeN10:Eu,Pr、Ba0.8Ca0.2Si6GeN10:Eu,Pr、Mg0.8Ca0.2Si6GeN10:Eu,Y、Zn0.8Ca0.2Si6GeN10:Eu,Y、Sr2Si5N8:Pr、Ba2Si5N8:Pr、Sr2Si5N8:Tb、BaGe7N10:Ceなどが挙げられるがこれに限定されない。窒化物蛍光体に含有される希土類元素は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Luのうち少なくとも1種以上が含有されていることが好ましいが、Sc、Sm、Tm、Ybが含有されていてもよい。これらの希土類元素は、単体の他、酸化物、イミド、アミド等の状態で原料中に混合する。Mnを用いると粒径を大きくすることができ、発光輝度の向上を図ることができる。
【0082】
特に本蛍光体は、Mnが添加されたSr−Ca−Si−N:Eu、Ca−Si−N:Eu、Sr−Si−N:Eu、Sr−Ca−Si−O−N:Eu、Ca−Si−O−N:Eu、Sr−Si−O−N:Eu系シリコンナイトライドである。この蛍光体の基本構成元素は、一般式LXSiYN(2/3X+4/3Y):Eu若しくはLXSiYOZN(2/3X+4/3Y−2/3Z):Eu(Lは、Sr、Ca、SrとCaのいずれか。)で表される。一般式中、X及びYは、X=2、Y=5又は、X=1、Y=7であることが好ましいが、任意のものも使用できる。具体的には、基本構成元素は、Mnが添加された(SrXCa1−X)2Si5N8:Eu、Sr2Si5N8:Eu、Ca2Si5N8:Eu、SrXCa1−XSi7N10:Eu、SrSi7N10:Eu、CaSi7N10:Euで表される蛍光体を使用することが好ましいが、この蛍光体の組成中には、Mg、Sr、Ca、Ba、Zn、B、Al、Cu、Mn、Cr及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が含有されていてもよい。Lは、Sr、Ca、SrとCaのいずれかである。SrとCaは、所望により配合比を変えることができる。蛍光体の組成にSiを用いることにより安価で結晶性の良好な蛍光体を提供することができる。
【0083】
本蛍光体は、母体のアルカリ土類金属系窒化ケイ素に対して、Eu2+を付活剤として用いる。添加物であるMnは、Eu2+の拡散を促進し、発光輝度、エネルギー効率、量子効率等の発光効率の向上を図る。Mnは、原料中に含有させるか、又は、製造工程中にMn単体若しくはMn化合物を含有させ、原料と共に焼成する。
【0084】
蛍光体には、基本構成元素中に、若しくは、基本構成元素とともに、Mg、Ga,In,Li、Na,K、Re、Mo、Fe,Sr、Ca、Ba、Zn、B、Al、Cu、Mn、Cr、O及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含有する。これらの元素は、粒径を大きくしたり、発光輝度を高めたりする等の作用を有している。また、B、Al、Mg、Cr及びNiは、残光を抑えることができるという作用を有している。
【0085】
このような窒化物系蛍光体は、発光素子によって発光された光の一部を吸収して黄から赤色領域の光を発光する。窒化物系蛍光体をYAG系蛍光体と共に使用して、発光素子により発光された光と、窒化物系蛍光体による黄色から赤色光とが混色により暖色系の白色系の混色光を発光する発光装置を提供する。窒化物系蛍光体の他に加える蛍光体には、アルミニウム・ガーネット系蛍光体が含有されていることが好ましい。アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含有することにより、所望の色度に調節することができるからである。例えば、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質は、発光素子光の一部を吸収して黄色領域の光を発光する。ここで、発光素子により発光された光と、イットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質の黄色光とが混色により白色系の混色光を発する。従って、このイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質と赤色発光する蛍光体とを、透光性を有する光変換部材中に一緒に混合し、発光素子により発光された青色光、あるいは蛍光体により波長変換された青色光とを組み合わせることにより白色系の光を発光する発光装置を提供することができる。特に好ましいのは、色度が色度図における黒体放射の軌跡上に位置する白色系の発光装置である。但し、所望の色温度の発光装置を提供するため、イットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質の蛍光体量と、赤色発光の蛍光体量を適宜変更することもできる。この白色系の混色光を発光する発光装置は、特殊演色評価数R9の改善を図っている。従来の青色発光素子とセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質との組合せのみの白色系発光装置は、色温度Tcp=4600K付近において特殊演色評価数R9がほぼ0に近く、赤み成分が不足していた。そのため特殊演色評価数R9を高めることが解決課題となっていたが、本発明において赤色発光の蛍光体をイットリウム・アルミニウム酸化物蛍光物質と共に用いることにより、色温度Tcp=4600K付近において特殊演色評価数R9を40付近まで高めることができる。
【0086】
次に、本発明に係る蛍光体((SrXCa1−X)2Si5N8:Eu)の製造方法を説明するが、本製造方法に限定されない。上記蛍光体には、Mn、Oが含有されている。
【0087】
原料のSr、Caは、単体を使用することが好ましいが、イミド化合物、アミド化合物などの化合物を使用することもできる。また原料Sr、Caには、B、Al、Cu、Mg、Mn、MnO、Mn2O3、Al2O3などを含有するものでもよい。原料のSr、Caは、アルゴン雰囲気中、グローブボックス内で粉砕を行う。粉砕により得られたSr、Caは、平均粒径が約0.1μmから15μmであることが好ましいが、この範囲に限定されない。より混合状態を良くするため、金属Ca、金属Sr、金属Euのうち少なくとも1以上を合金状態としたのち、窒化し、粉砕後、原料として用いることもできる。
【0088】
原料のSiは、単体を使用することが好ましいが、窒化物化合物、イミド化合物、アミド化合物などを使用することもできる。例えば、Si3N4、Si(NH2)2、Mg2Siなどである。原料のSiの純度は、3N以上のものが好ましいが、Al2O3、Mg、金属ホウ化物(Co3B、Ni3B、CrB)、酸化マンガン、H3BO3、B2O3、Cu2O、CuOなどの化合物が含有されていてもよい。Siも、原料のSr、Caと同様に、アルゴン雰囲気中、若しくは、窒素雰囲気中、グローブボックス内で粉砕を行う。Si化合物の平均粒径は、約0.1μmから15μmであることが好ましい。
【0089】
次に、Sr、Caを、窒素雰囲気中で窒化する。Sr、Caは、混合して窒化しても良いし、それぞれ個々に窒化しても良い。これにより、Sr、Caの窒化物を得ることができる。また、原料のSiを、窒素雰囲気中で窒化する。これにより、窒化ケイ素を得る。
【0090】
Sr、Ca若しくはSr−Caの窒化物を粉砕する。Sr、Ca、Sr−Caの窒化物を、アルゴン雰囲気中、若しくは、窒素雰囲気中、グローブボックス内で粉砕を行う。
同様に、Siの窒化物を粉砕する。また、同様に、Euの化合物Eu2O3を粉砕する。Euの化合物として、酸化ユウロピウムを使用するが、金属ユウロピウム、窒化ユウロピウムなども使用可能である。このほか、原料のZは、イミド化合物、アミド化合物を用いることもできる。酸化ユウロピウムは、高純度のものが好ましいが、市販のものも使用することができる。粉砕後のアルカリ土類金属の窒化物、窒化ケイ素及び酸化ユウロピウムの平均粒径は、約0.1μmから15μmであることが好ましい。
【0091】
上記原料中には、Mg、Sr、Ca、Ba、Zn、B、Al、Cu、Mn、Cr、O及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が含有されていてもよい。また、Mg、Zn、B等の上記元素を以下の混合工程において、配合量を調節して混合することもできる。これらの化合物は、単独で原料中に添加することもできるが、通常、化合物の形態で添加される。この種の化合物には、H3BO3、Cu2O3、MgCl2、MgO・CaO、Al2O3、金属ホウ化物(CrB、Mg3B2、AlB2、MnB)、B2O3、Cu2O、CuOなどがある。
【0092】
上記粉砕を行った後、Sr、Ca、Sr−Caの窒化物、Siの窒化物、Euの化合物Eu2O3を混合し、Mnを添加する。これらの混合物は、酸化されやすいため、Ar雰囲気中、又は、窒素雰囲気中、グローブボックス内で、混合を行う。
【0093】
最後に、Sr、Ca、Sr−Caの窒化物、Siの窒化物、Euの化合物Eu2O3の混合物をアンモニア雰囲気中で、焼成する。焼成により、Mnが添加された(SrXCa1−X)2Si5N8:Euで表される蛍光体を得ることができる。ただし、各原料の配合比率を変更することにより、目的とする蛍光体の組成を変更することができる。
【0094】
焼成は、管状炉、小型炉、高周波炉、メタル炉などを使用することができる。焼成温度は、1200から1700℃の範囲で焼成を行うことができるが、1400から1700℃の焼成温度が好ましい。焼成は、徐々に昇温を行い1200から1500℃で数時間焼成を行う一段階焼成を使用することが好ましいが、800から1000℃で一段階目の焼成を行い、徐々に加熱して1200から1500℃で二段階目の焼成を行う二段階焼成(多段階焼成)を使用することもできる。蛍光体の原料は、窒化ホウ素(BN)材質のるつぼ、ボートを用いて焼成を行うことが好ましい。窒化ホウ素材質のるつぼの他に、アルミナ(Al2O3)材質のるつぼを使用することもできる。
【0095】
以上の製造方法を使用することにより、目的とする蛍光体を得ることが可能である。本発明の実施例において、赤味を帯びた光を発光する蛍光体として、特に窒化物系蛍光体を使用するが、本発明においては、上述したYAG系蛍光体と赤色系の光を発光可能な蛍光体とを備える発光装置とすることも可能である。このような赤色系の光を発光可能な蛍光体は、波長が400〜600nmの光によって励起されて発光する蛍光体であり、例えば、Y2O2S:Eu、La2O2S:Eu、CaS:Eu、SrS:Eu、ZnS:Mn、ZnCdS:Ag,Al、ZnCdS:Cu,Al等が挙げられる。このようにYAG系蛍光体とともに赤色系の光を発光可能な蛍光体を使用することにより発光装置の演色性を向上させることが可能である。
【0096】
以上のようにして形成されるアルミニウム・ガーネット系蛍光体、および窒化物系蛍光体に代表される赤色系の光を発光可能な蛍光体は、発光素子の周辺において一層からなる光変換部材中に二種類以上存在してもよいし、二層からなる光変換部材中にそれぞれ一種類あるいは二種類以上存在してもよい。このような構成にすると、異なる種類の蛍光体からの光の混色による混色光が得られる。この場合、各蛍光物質から発光される光をより良く混色しかつ色ムラを減少させるために、各蛍光体の平均粒径及び形状は類似していることが好ましい。また、窒化物系蛍光体は、YAG系蛍光体により波長変換された光の一部を吸収してしまうことを考慮して、窒化系蛍光体がYAG系蛍光体より発光素子に近い位置に配置されるように光変換部材を形成することが好ましい。このように構成することによって、YAG蛍光体により波長変換された光の一部が窒化物系蛍光体に吸収されてしまうことがなくなり、YAG系蛍光体と窒化物系蛍光体とを混合して含有させた場合と比較して、混色光の演色性を向上させることができる。
【0097】
(酸窒化物系蛍光体)
上述の蛍光物質の他、本形態における蛍光物質には、さらに下記の一般式で表される酸窒化物蛍光体を含有させることができる。
LxMyOzN{(2/3x+(4/3)y−(2/3)z}:R
ただし、LはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選択される少なくとも1種の元素を有し、MはC、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群より選択される少なくとも1種の元素を有する。また、Nは窒素で、Oは酸素、Rは希土類元素である。x、y、zは以下の数値を満足する。
x=2、4.5≦y≦6、0.01<z<1.5
またはx=1、6.5≦y≦7.5、0.01<z<1.5
またはx=1、1.5≦y≦2.5、1.5≦z≦2.5
以下、酸窒化物蛍光体の製造方法を説明するが、本製造方法に限定されないことは言うまでもない。まず、所定配合比となるように、Lの窒化物、Mの窒化物および酸化物、希土類元素の酸化物を原料として混合する。各原料の配合比率を変更することにより、目的とする蛍光体の組成を変更することができる。
【0098】
次に、上記原料の混合物を坩堝に投入し、焼成を行う。焼成は、管状炉、小型炉、高周波炉、メタル炉などを使用することができる。焼成温度は、特に限定されないが、1200から1700℃の範囲で焼成を行うことが好ましく、1400から1700℃の焼成温度が、さらに好ましい。本蛍光体の原料は、窒化ホウ素(BN)材質の坩堝、ボートを用いて焼成を行うことが好ましい。窒化ホウ素材質の坩堝の他に、アルミナ(Al2O3)材質の坩堝を使用することもできる。また、焼成は、還元雰囲気中で行うことが好ましい。還元雰囲気は、窒素雰囲気、窒素−水素雰囲気、アンモニア雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気等である。以上の製造方法を使用することにより、目的とするオキシ窒化物蛍光体を得ることができる。
【0099】
(アルカリ土類金属珪酸塩)
本実施の形態における発光装置は、発光素子が発光した光の一部を吸収し、その吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光する蛍光体として、ユウロピウムで付活されたアルカリ土類金属珪酸塩を有することもできる。アルカリ土類金属珪酸塩は、青色領域の光を励起光とし、暖色系の混色光を発光する発光装置とすることができる。該アルカリ土類金属珪酸塩は、以下のような一般式で表されるアルカリ土類金属オルト珪酸塩が好ましい。
(2−x−y)SrO・x(Ba,Ca)O・(1−a−b−c−d)SiO2・aP2O5bAl2O3cB2O3dGeO2:yEu2+(式中、0<x<1.6、0.005<y<0.5、0<a、b、c、d<0.5である。)
(2−x−y)BaO・x(Sr,Ca)O・(1−a−b−c−d)SiO2・aP2O5bAl2O3cB2O3dGeO2:yEu2+(式中、0.01<x<1.6、0.005<y<0.5、0<a、b、c、d<0.5である。)
ここで、好ましくは、a、b、cおよびdの値のうち、少なくとも一つが0.01より大きい。
【0100】
本実施の形態における発光装置は、アルカリ土類金属塩からなる蛍光体として、上述したアルカリ土類金属珪酸塩の他、ユウロピウムおよび/またはマンガンで付活されたアルカリ土類金属アルミン酸塩やY(V,P,Si)O4:Eu、または次式で示されるアルカリ土類金属−マグネシウム−二珪酸塩を有することもできる。
【0101】
Me(3−x−y)MgSi2O3:xEu,yMn(式中、0.005<x<0.5、0.005<y<0.5、Meは、Baおよび/またはSrおよび/またはCaを示す。)
次に、本実施の形態におけるアルカリ土類金属珪酸塩からなる蛍光体の製造工程を説明する。
【0102】
アルカリ土類金属珪酸塩の製造のために、選択した組成に応じて出発物質アルカリ土類金属炭酸塩、二酸化珪素ならびに酸化ユウロピウムの化学量論的量を密に混合し、かつ、蛍光体の製造に常用の固体反応で、還元性雰囲気のもと、温度1100℃および1400℃で所望の蛍光体に変換する。この際、0.2モル未満の塩化アンモニウムまたは他のハロゲン化物を添加することが好ましい。また、必要に応じて珪素の一部をゲルマニウム、ホウ素、アルミニウム、リンで置換することもできるし、ユウロピウムの一部をマンガンで置換することもできる。
【0103】
上述したような蛍光体、即ち、ユウロピウムおよび/またはマンガンで付活されたアルカリ土類金属アルミン酸塩やY(V,P,Si)O4:Eu、Y2O2S:Eu3+の一つまたはこれらの蛍光体を組み合わせることによって、所望の色温度を有する発光色および高い色再現性を得ることができる。
【0104】
(その他の蛍光体)
本形態における蛍光体として、紫外から可視領域の光により励起されて発光する蛍光体も用いることができ、具体例として、以下の蛍光体が挙げられる。
(1)Eu、MnまたはEuとMnで付活されたアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体;例えば、M5(PO4)3(Cl、Br):Eu(但し、MはSr、Ca、Ba、Mgから選択される少なくとも一種)、Ca10(PO4)6ClBr:Mn、Euなどの蛍光体。
(2)Eu、MnまたはEuとMnで付活されたアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体;例えば、BaMg2Al16O27:Eu、BaMg2Al16O27:Eu,Mn、Sr4Al14O25:Eu、SrAl2O4:Eu、CaAl2O4:Eu、BaMgAl10O17:Eu、BaMgAl10O17:Eu,Mnなどの蛍光体。
(3)Euで付活された希土類酸硫化物蛍光体;例えば、La2O2S:Eu、Y2O2S:Eu、Gd2O2S:Euなどの蛍光体。
(4)(Zn、Cd)S:Cu、Zn2GeO4:Mn、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn、Mg6As2O11:Mn、(Mg、Ca、Sr、Ba)Ga2S4:Eu、Ca10(PO4)6FCl:Sb,Mn
【実施例1】
【0105】
以下、本発明に係る実施例について詳述する。なお、本発明は以下に示す実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【0106】
図1は、本実施例における発光装置100の模式的な斜視図である。また、図2は、本実施例における発光装置100の背面方向からの斜視図である。図3は、本実施例における支持体101の模式的な斜視図である。
【0107】
本実施例にかかる発光装置100の支持体101は、セラミックス材料の射出成型により立体的に形成された基体に、導体配線および第二の凹部内については光反射部として、NiおよびAgを順に電解メッキしたものである。また、支持体101の大きさは、横が約4.5mm、縦が約2.0mm、高さが約2.0mmとさせてある。
【0108】
本実施例における発光装置100は、発光素子を載置するための第二の凹部104を支持体101の正面に有する。さらに、支持体101は、その背面に、発光素子の直下から支持体の一方の側面方向および背面の方向に開口する第一の凹部102を有する。本実施例における第一の凹部102は、その凹部の底部から第二の凹部104底部の方向に向かって内径が徐々に狭くなる複数の貫通孔103を有する。さらに、図4に断面斜視図として示されるように、その貫通孔103の断面は楔形となるようにされている。なお、第二の凹部104の底面において、貫通孔103の開口部は、導体配線を施す際の電解メッキにより所定の膜厚(数十μm)の金属により塞がれている。また、本実施例における発光素子107は、図4に示されるように、塞がれた貫通孔103の開口部の直上に接着剤により固定される。また、貫通孔103の数は、図示されるものに限定されることなく、半導体装置の放熱特性や大きさに併せて適宜選択されることは言うまでもない。
【0109】
図3に示されるように、本実施例における導体配線105は、第二の凹部104の底面からその内壁面、側壁上面、支持体の側面および支持体101の実装面にかけて施されている。ここで、支持体101の側面にかけて施されている導体配線105について、第一の配線領域105aは、第二の配線領域105bの面積より広くなるように施されている。また、導体配線と一体的に施された導電性材料は、貫通孔103の内壁面から第一の凹部102の内壁面、支持体101の実装側壁面にかかて被覆している。
【0110】
本実施例における発光素子107は、活性層として単色性発光ピークが可視光である460nmのIn0.2Ga0.8N半導体を有する窒化物半導体素子のLEDチップを用いる。より詳細に説明すると、発光素子であるLEDチップは、洗浄させたサファイア基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジウム)ガス、窒素ガス及びドーパントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化物半導体を成膜させることにより形成させることができる。ドーパントガスとしてSiH4とCp2Mgを切り替えることによってn型窒化物半導体やp型窒化物半導体となる層を形成させる。
【0111】
本実施例のLEDチップの素子構造としては透光性基板であるサファイア基板上に、アンドープの窒化物半導体であるGaN層、Siドープのn型電極が形成されたn型コンタクト層となるn型GaN層、アンドープの窒化物半導体であるGaN層を積層させ、さらに、バリア層となるGaN層、井戸層となるInGaN層を1セットとして5セット積層して最後にバリア層となるGaN層を積層させて活性層とし、該活性層は多重量子井戸構造としてある。さらに、活性層上にはMgがドープされたp型クラッド層としてAlGaN層、Mgがドープされたp型コンタクト層であるp型GaN層を順次積層させた構成としてある。なお、サファイア基板上には低温でGaN層を形成させバッファ層とさせてある。また、p型半導体は、成膜後400℃以上でアニールさせてある。
【0112】
エッチングによりサファイア基板上の窒化物半導体に同一面側で、p型コンタクト層およびn型コンタクト層の各表面を露出させる。次に、p型コンタクト層上にITO(インジウムと錫の複合酸化物)およびRhを材料とするスパッタリングを順に行い、ストライプ状に露出されたp型コンタクト層のほぼ全面に拡散電極が設けられる。このような電極とすることにより、拡散電極を流れる電流がp型コンタクト層の広範囲に広がるようにし、およびLEDチップの発光効率を向上させ、均一発光させることができる。
【0113】
さらに、W、PtおよびAuを材料とするスパッタリングを順に行い、拡散電極およびn型コンタクト層の一部に対し、積層させp側台座電極とn側台座電極とする。最後にダイシングによりチップ化し、□=600μm×600μmの半導体発光素子チップとする。
【0114】
本実施例の発光素子は、エッチングによりチップの対角方向に櫛状に露出されたn型半導体にn型台座電極を有する。また、p型半導体に対し、チップの対角方向に櫛状に拡散電極およびp側台座電極が形成されている。
【0115】
図4は、本実施例における発光装置100の模式的な断面図である。図4に示されるように、発光素子107は、支持体101正面の第二の凹部104底面にエポキシ樹脂にてダイボンドされ、発光素子107のp側台座電極およびn側台座電極は、第二の凹部104の底面に露出された導体配線105と、導電性ワイヤにて接続される。
【0116】
さらに、発光素子107は、第二の凹部104内に充填された蛍光物質を含む光変換部材106により被覆されている。これにより、本実施例における発光装置100は、発光素子107からの光と、その光により励起されて発光する蛍光物質からの光との混色光を発光することができる。
【0117】
本実施例における蛍光物質は、Y、Gd、Ceの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させ、これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウムとを混合して混合原料を得る。さらに、フラックスとしてフッ化バリウムを混合した後坩堝に詰め、空気中1400℃の温度で3時間焼成することにより焼成品が得られる。焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して中心粒径が8μmである(Y0.995Gd0.005)2.750Al5O12:Ce0.250蛍光物質を形成する。光変換部材の材料は、シリコーン樹脂に、上記蛍光物質を20〜75wt%含有させ、自転公転ミキサーにて5分間攪拌を行い、蛍光体と結着剤であるシリコーン樹脂との混合物とする。さらに、その混合物は、発光素子107が載置された第二の凹部104内に充填され、硬化されることにより光変換部材106とされる。
【実施例2】
【0118】
図9は、本実施例における半導体装置200の正面方向からの模式的な斜視図である。図10は、本実施例における半導体装置200の背面方向からの模式的な斜視図である。本実施例にかかる半導体装置200の支持体201は、種々の形状のセラミックスグリーンシートを積層させ、焼成することにより形成されるものである。このような支持体201の形成方法が異なる他は、実施例1と同様に発光素子および光変換部材106を形成することにより発光装置を形成する。
【0119】
図10に示されるように、本実施例における支持体201において、第一の凹部は、壁202により仕切られた凹部203aおよび凹部203bとされており、それぞれの内壁面が導電性材料により被覆されている。このうち、凹部203bは、支持体201正面の第二の凹部底面に配置された発光素子の直下にその内壁面が位置するように形成されており、支持体201の一方の側面方向に開口している。また、凹部203bと壁202を隔てて形成されている凹部203aは、凹部203aと比較して凹部の大きさが小さい。これは、凹部203bの内壁面を発光素子の直下に位置させるべく、壁202が形成される位置を調整したことによるものである。また、支持体201の側面のうち、凹部203bの側を実装基板に対する実装面とすることにより、発光素子の直下に位置する凹部203bの内壁面に、比較的大きな半田の這い上がり(フィレット)を形成することができる。したがって、本実施例にかかる半導体装置は、実装基板に対して強固に固定され、さらに放熱性が向上された半導体装置とすることができる。
【0120】
また、本実施例における支持体201は、導電性材料により内壁面が被覆された切欠部204を一方の側面側と他方の側面側とに、それぞれ二対有している。本実施例における切欠部204は、支持体201の正面方向から背面方向まで貫通して延伸させることなく形成されたものである。そのため、支持体201の一方の側面を外部の配線基板に対する実装面として、発光装置200を半田により配線基板に固定するとき、半田は切欠部204の底部に形成されている壁によりその流動が妨げられる。これにより、本実施例における発光装置200と配線基板との接続は、主に支持体201の正面方向において半田の状態を確認しながら作業性よく行うことができる。
【実施例3】
【0121】
実施例1または実施例2における発光装置100、200を、導体配線が施された実装基板に対して電気的および機械的に接続する。すなわち、実施例1または実施例2における発光装置の支持体に施された導体配線のうち、実装基板と対向する側の導体配線と、実装基板の導体配線とをリフローにより半田付けする。また、支持体の背面に形成された凹部の内壁面と、実装基板とを半田にて接合する。このとき、実装基板から凹部の内壁面にかけて半田の這い上がり(フィレット)が形成される。これにより、支持体の背面に形成された第一の凹部の内壁面と、実装基板とが半田を介して電気的および機械的に接続されるだけでなく、熱的にも接続される。したがって、発光素子の発熱は、半田を介して実装基板の方向に効率よく放熱されるため、本実施例にかかる発光装置は、放熱性が向上され、高出力発光することができる。
【実施例4】
【0122】
図13は、本実施例における半導体装置に利用することができる支持体301の正面図である。また、図14は、本実施例の支持体301における切欠部204の部分的な拡大図である。なお、本実施例の支持体301は、上述したようにセラミックスを材料として成型されており、大きさが横4.8mm、縦2.0mm、高さ1.4mmとさせてある。
【0123】
図13に示されるように、本実施例における支持体301は、その側面により画定される外郭の隅角となる四隅に、支持体301の正面側(第二の凹部104の側)から背面側へ延伸するように形成された切欠部204を有する。その切欠部204の壁面は、平面部204aと曲面部204bとからなり、第二の凹部104底面に配された導体配線105と電気的に接続する導体配線が各壁面に施されている。ここで、第二の凹部104の方向から見て、平面部204aの縦方向の距離は、0.4mmであり、一方、曲面部204bは、半径0.2mmの扇形である。また、支持体301の正面側から背面側へ延伸する切欠部204の延伸距離は、約1.4mmである。さらに、平面部204aは、支持体301の外郭面を形成する側面のうち、該平面部204aが隣接する側面に対して略垂直である。なお、平面部204aと支持体301の側面とがなす角度は、垂直に限定されることなく、支持体の方向に鋭角をなすように該平面部が隣接する側面に対して傾斜されていてもよい。また、切欠部204の壁面において、曲面部204bは必ずしも必要ではなく、壁面が平面部のみにより形成されていてもよい。
【0124】
このように、少なくとも平面部からなる壁面を有する切欠部とすることにより、半田は、その切欠部の壁面を這い上がり易くなる。また、平面部204aが隣接する支持体の側面は、第一の凹部102が開口している側の側面であることが好ましい。これにより、半導体素子の直下に位置する凹部102の内壁面と、切欠部の平面部204aとを配線基板に対する接合面とすることができる。すなわち、放熱経路確保のための熱的接続と機械的および電気的接続とを支持体の同一側面方向において、半田を介して配線基板に行うことができる。したがって、本実施例にかかる半導体装置は、配線基板に強固に固定され、かつ放熱性の高い半導体装置とすることが容易にできる。以下、本実施例における切欠部の効果について詳述する。
【0125】
本実施例の切欠部を接合部位として支持体と実装基板の導体配線とを半田にて固定する。ここで、図9に示されるような曲面のみからなる切欠部204と、本実施例のように平面部を有する切欠部とを比較すると、半田は、平面部を有する切欠部の方がより這い上がり易く、より広い壁面を被覆することができる。一方、図9に示されるように、切欠部が曲面のみから形成された支持体において、支持体の大きさを一定にして半田が被覆する切欠部の壁面の面積を大きくしようとすれば、切欠部を第二の凹部104の方向に大きくせざるを得ず、その第二の凹部104における開口部の大きさや形状を制限してしまう。また、曲面のみからなる切欠部とし、第二の凹部104における開口部の大きさや形状を保持しつつ切欠部を大きくすれば、支持体自体も大きくなってしまう。
【0126】
そこで、本実施例における支持体の切欠部は、少なくとも平面部を有する壁面からなる。これにより、切欠部は、その切欠部の形状を第二の凹部104方向に大きくすることなく、より広い壁面が半田にて被覆される。このように、本実施例における支持体は、平面部を有する切欠部の壁面を半田が這い上がることにより、実装基板に対し更に強固に固定され、半田を介しての放熱性を更に向上させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明にかかる半導体装置は、放熱性に優れるため、高出力な光を照射する液晶バックライト光源としても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は、本発明の一実施例における半導体装置の模式的な斜視図である。
【図2】図2は、本発明の一実施例における半導体装置を背面方向から見た模式的な斜視図である。
【図3】図3は、本発明の一実施例における支持体の模式的な斜視図である。
【図4】図4は、本発明の一実施例における半導体装置の模式的な断面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施例における半導体装置を背面方向から見た模式的な斜視図である。
【図6】図6は、本発明の一実施例における半導体装置を背面方向から見た模式的な斜視図である。
【図7】図7は、本発明の一実施例における半導体装置を背面方向から見た模式的な斜視図である。
【図8】図8は、本発明の一実施例における半導体装置を背面方向から見た模式的な斜視図である。
【図9】図9は、本発明の一実施例における半導体装置の模式的な斜視図である。
【図10】図10は、本発明の一実施例における半導体装置を背面方向から見た模式的な斜視図である。
【図11】図11は、本発明の一実施例における半導体装置の模式的な斜視図である。
【図12】図12は、本発明の一実施例における半導体装置の模式的な斜視図である。
【図13】図13は、本発明の一実施例における半導体装置の模式的な正面図である。
【図14】図14は、本発明の一実施例における半導体装置の一部を拡大した模式的な正面図である。
【符号の説明】
【0129】
100、200・・・発光装置
101、201、301・・・支持体
102、203a、203b・・・第一の凹部
103a、103b・・・貫通孔
104・・・第二の凹部
105・・・導体配線
106・・・光変換部材
107・・・発光素子
202・・・壁
204・・・切欠部
204a・・・平面部
204b・・・曲面部
205・・・第三の凹部
206・・・突状部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、該半導体素子を保持する支持体とを有する半導体装置であって、
前記支持体は、その側面の方向に開口する凹部102を有し、該凹部102の内壁面のうち、少なくとも前記半導体素子側の内壁面は、導電性材料により被覆されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記支持体は、前記凹部102の内壁面から前記半導体素子の方向に延伸する貫通孔を有し、該貫通孔の内壁面が前記導電性材料により被覆されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記半導体素子の方向に向かって徐々に内径が狭くなる請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記半導体素子が載置される側の開口部が前記導電性材料により塞がれている請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記凹部102の内壁面は、その断面が前記半導体素子の方向に向かって徐々に狭くなる形状とされている請求項1乃至4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記導電性材料は、前記凹部102の側壁上面を被覆している請求項1乃至5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記支持体は、前記半導体素子を載置する凹部104を有し、該凹部104の底面から内壁面および側壁上面を経由し該支持体101の側面まで延伸する導体配線を有しており、
前記支持体101の側面に施された導体配線は、前記側壁上面から所定の間隔を空けて施された第一の配線領域105aと、該第一の配線領域105aと前記側壁上面の導体配線とを接続する第二の配線領域105bとからなり、
前記第一の配線領域105aは、前記第二の配線領域105bより面積が広い請求項1乃至6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記支持体は、その側面により画定される外郭の隅角に切欠部204を有し、該切欠部204の壁面は、隣接する支持体の側面に対して略垂直あるいは鋭角をなす平面部204aを有する請求項1乃至7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記平面部204aが隣接する支持体の側面は、前記凹部102が開口している側の側面である請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記支持体は、セラミックス材料からなる請求項1乃至9に記載の半導体装置。
【請求項1】
半導体素子と、該半導体素子を保持する支持体とを有する半導体装置であって、
前記支持体は、その側面の方向に開口する凹部102を有し、該凹部102の内壁面のうち、少なくとも前記半導体素子側の内壁面は、導電性材料により被覆されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記支持体は、前記凹部102の内壁面から前記半導体素子の方向に延伸する貫通孔を有し、該貫通孔の内壁面が前記導電性材料により被覆されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記半導体素子の方向に向かって徐々に内径が狭くなる請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記半導体素子が載置される側の開口部が前記導電性材料により塞がれている請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記凹部102の内壁面は、その断面が前記半導体素子の方向に向かって徐々に狭くなる形状とされている請求項1乃至4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記導電性材料は、前記凹部102の側壁上面を被覆している請求項1乃至5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記支持体は、前記半導体素子を載置する凹部104を有し、該凹部104の底面から内壁面および側壁上面を経由し該支持体101の側面まで延伸する導体配線を有しており、
前記支持体101の側面に施された導体配線は、前記側壁上面から所定の間隔を空けて施された第一の配線領域105aと、該第一の配線領域105aと前記側壁上面の導体配線とを接続する第二の配線領域105bとからなり、
前記第一の配線領域105aは、前記第二の配線領域105bより面積が広い請求項1乃至6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記支持体は、その側面により画定される外郭の隅角に切欠部204を有し、該切欠部204の壁面は、隣接する支持体の側面に対して略垂直あるいは鋭角をなす平面部204aを有する請求項1乃至7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記平面部204aが隣接する支持体の側面は、前記凹部102が開口している側の側面である請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記支持体は、セラミックス材料からなる請求項1乃至9に記載の半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−54410(P2006−54410A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−353049(P2004−353049)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】
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