説明

半導体装置

【課題】半導体装置と、基板との間を封止するアンダーフィル材料として使用する際に、接着面積を抑えても、硬化性と保存安定性とのバランスを維持しながら、接着方法と潜在性の活性基を有する化合物を用いることで、衝撃時の接続信頼性とリペア性とをバランスよく向上させることができる一液型エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】接着剤を充填する面積をコントロールし空洞部を設け、かつ加熱時にカルボン酸またはスルホン酸を発生する潜在性化合物あるいはポリマーを含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ、一体型VTR、携帯電話機、携帯端末などの小型電子機器が普及するにつれて、LSI装置の小型化が求められている。このため、LSI等の半導体ベアチップを保護したり、テストを容易に行える従来のチップ実装用パッケージの特徴を生かしながら、ベアチップ並みに小型化し、特性の向上を図る目的でCSPやBGAなどの新しいパッケージが普及しつつある。
【0003】
このリードのないチップキャリアは、比較的小さいパッケージの中で、チップとそれに対応する基板との間に多数の入出力接続部を備えている。リードのないチップキャリアは、一般的に、アルミナのような一枚のセラミックを含むパッケージからなり、そのセラミックがチップキャリア即ちベースを形成し、そのベース上にチップが実装される。チップが実装されたパッケージは、さらにより大きいプリント回路基板(PCB)などに実装される。具体的には、パッケージのコンタクトパッドと鏡像関係にあるコンタクトパッドがPCB上に形成され、両者を符合させた後、リフロー半田付け等を行うことによって、電気的及び機械的に接続され、表面実装される。パッケージをPCBに半田により接続する場合は、通常、半田ペーストを用いるか、半田バンプが用いられる。パッケージとPCBとの間の半田バンプによって生じる隙間には、エポキシ系などの封止樹脂(アンダーフィル材料)が注入されるのが一般的である。
【0004】
また、チップをパッケージやPCBに実装する際に必要とされる面積を低減するための方法の一つとして、フリップチップ接続法がある。これは、チップの上面側にある接続用パッドを下面側へ向け、対向するパッケージやPCBに半田バンプにより接続する方法である。この場合も、チップ素子面とチップキャリア、あるいはチップ素子面とPCBとの間に半田バンプによる隙間が生じるため、同様にアンダーフィル材料が注入される。アンダーフィル材料は、上記接続部における隙間や空間を埋めるだけでなく、電気的接点を密封して周囲から保護するとともに、例えばパッケージとPCBとを接着する機能を有し、小さな機械的接合点である半田バンプ接合部に過度の力が作用することを防ぐ目的も併せ持っている。
【0005】
このアンダーフィル材料の充填方法としては、チップまたはパッケージの外周に沿って塗布し、毛細管現象を利用して充填するキャピラリーフローと、充填する場所にあらかじめアンダーフィル材料を滴下しておき、その上からチップまたはパッケージを載せるコンプレッションフローの二通りがある。
【0006】
このようなアンダーフィル材料には熱硬化性樹脂を用いるために、従来は配線基板にCSPやBGAを実装した後に、CSPやBGA上のLSIの不良、CSPやBGAと配線基板との接続不良等が発見されたときに、これらの熱硬化性樹脂を剥離してCSPやBGAを交換することが困難であり、リペア性に劣るという問題があった。
【0007】
このような半導体装置のリペア性を向上させる手段として、ベアチップと基板との固定接続を所定温度で硬化する樹脂を用いて行い、半導体装置に不具合が発生した場合は、この所定温度より高い温度で軟化させてベアチップを取り外す方法が挙げられる(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、信頼性とリペア特性の両方を満足する具体的なアンダーフィル材料そのものについては依然として知られていなかった。
また、上述したようなアンダーフィル材料を基板から剥離するために、有機溶剤等に浸漬してから剥離する方法があるが、剥離性(リペア性)を向上させると、アンダーフィル材料本来の接着性能が低下し、アンダーフィル材料の接着性や耐久性を向上させると剥離性が低下するといった状況にあり、アンダーフィル材料としての本来の接着性能と、剥離性を両立するものは未だに得られていない。さらに、一液型あるいは二液型のアンダーフィル材料に、アクリル酸エステル類、芳香族または脂肪族のエステル類などの可塑剤を配合する方法がある(例えば、特許文献2参照。)。この方法は、CSPやBGA等の半導体装置を配線基板に短時間の熱硬化で接続でき、耐ヒートショック性に優れ、かつ不良が発見されたときに容易にCSPやBGAを取り外すことが可能であるとされているが、上記の可塑剤を配合するため、耐久性や耐熱性、耐ヒートサイクル性が低下したり、硬化物中からの可塑剤成分のブリードによって周囲を汚染したりするといった問題があった。
【0008】
近年の半導体チップの高性能化に伴いチップサイズも大きくなってきており、基板との接着力を保持しつつ、剥離性を両立が難しく、剥離後の残渣の面積も大きくなり、除去時間の増加が生産性を低下させる要因となる。
【0009】
【特許文献1】特開平06−69280号公報
【特許文献2】特開平10−204259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、配線基板上にCSPやBGA等の半導体装置を確実に接続することができ、硬化後の耐ヒートショック性に優れ、かつ、不具合が発見された際には、半導体装置を容易に配線基板から取り外すことができ、正常な配線基板、または半導体装置の再利用が可能なリペア性に優れた半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、以下の本発明[1]〜[4]によって達成される。
[1] 基板と電気的接合させるための半田バンプを有する半導体素子との間に補強用接着剤が充填された構造である半導体装置であって、前記補強用接着剤が、充填可能な面積の5〜95%を充填させ、かつ、半導体素子の中心から外周部に対し少なくとも1箇所以上の未充填空間を有する構造であり、前記補強用接着剤は、加熱によりカルボン酸及びスルホン酸を発生する潜在性化合物及び/又は樹脂であることを特徴とする半導体装置。
[2] 補強用接着剤が熱硬化性樹脂組成物である[1]項記載の半導体装置。
[3] 該熱硬化性樹脂組成物がエポキシ系樹脂組成物、シアネート系樹脂組成物およびマレイミド系樹脂組成物からなる群より選ばれる1種以上の樹脂組成物である[2]項記載の半導体装置。
[4] 補強用接着剤がフラックス活性を有する熱硬化性樹脂組成物である[3]項記載の半導体装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、基板と電気的接合させるための半田バンプを有するウエハーとの半田接合部の補強用接着剤が空間を有する構造で用いられた半導体装置および半導体装置の製造方法である。
本発明の半導体装置および半導体装置の製造方法は、耐ヒートサイクル性等の信頼性に優れ、かつリペア性に優れ半導体装置の製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の半導体装置および半導体装置の製造方法について説明する。
まず、本発明の半導体装置について説明する。
基板と電気的接合させるための半田バンプを有する半導体素子との半田接合部の補強用接着剤が空間を有する構造を有する。特に、半導体素子下の補強用接着剤の充填可能な面積の5〜95%を充填させ、かつ、中心から外周部に対し少なくとも1箇所以上の未充填空間を有する構造とすることにより、接着力を保持しつつ、リペア作業性を容易にすることが可能となる。また、外部との空間を設けることで接着剤あるいは基板から発生しうる発生ガス分の抜け道として活用できる。5%未満の場合、接着面積が不十分で有り接続信頼性が低下する。また、95%より多く充填した場合は、逆にリペアー性が低下する。
【0014】
ここで用いられる補強用接着剤としては、加熱によりカルボン酸及びスルホン酸を発生する潜在性化合物及び/又は樹脂であることが必要である。このような補強用接着剤としては、カルボン酸化合物とビニルエーテル化合物を反応させ保護基を有した化合物及び/又は樹脂、またはあるいは芳香族スルホン酸シクロヘキシル類を含有する熱硬化性樹脂組成物であって、具体的には、エポキシ系樹脂組成物、シアネート系樹脂組成物又はマレイミド系樹脂組成物を用いることができるが、すべての材料に共通して、加熱によりカルボン酸及びスルホン酸を発生する化合物及び/又は樹脂を含有することによりフラックス活性を持たせることが可能になる。
【0015】
補強用接着剤に用いるエポキシ系樹脂組成物中のエポキシ樹脂としては、分子内に2個以上のグリシジル基を有するものであり特に限定されないが、ビスフェノールタイプエポキシ樹脂(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型)、脂環式エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などのほか、カテコール、レゾルシノール、またはグリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコール類とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエーテルも使用できる。また、P−ヒドロキシ安息香酸、β−ヒドロキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸類とエピクロルヒドリンを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル、あるいはフタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸類とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエステル、エポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂、さらに低粘度化のために反応性希釈剤としてモノエポキシ樹脂等も使用することができ、これらを単独あるいは混合して使用してもよい。
【0016】
前記エポキシ樹脂の形態は特に限定されず、液体でも固体でもよいが、通常は後述する酸無水物硬化剤と混合した場合に液状となるものが好ましく使用される。これらの中でも、比較的低分子量であるビスフェノールA型、ビスフェノールF型のエポキシ樹脂が好ましい。これにより、組成物製造時の作業性や硬化後の特性を良好なものにでき、かつ材料コストを抑えることができる。
【0017】
また、前記エポキシ樹脂の硬化剤としては、酸無水物あるいはフェノール樹脂が用いられるが、酸無水物としては特に限定されないが、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ドデシニルコハク酸、無水ジクロルコハク酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、アルキルスチレン−無水マレイン酸共重合体、テトラブロム無水フタル酸、ポリアゼライン酸無水物、無水クロレンディク酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、製造時の取り扱いの作業性や硬化後の特性、材料コスト、工業的な供給安定性を考慮すると、常温で液状であるものが好ましく、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸が特に好ましい。なお、カルボン酸基を有する無水トリメリット酸は保存安定性が低下する場合がある。
【0018】
フェノール樹脂としては、液状でも固形でも良く、固形の場合は軟化点が150℃以下であることが好ましい。フェノールノボラック樹脂の軟化点が、前記上限値を超えると半田接合時における樹脂の流動性が低下し、半田接続信頼性を向上する効果が低下する場合がある。前記フェノールノボラック樹脂を構成するフェノール化合物としては、例えばフェノール、クレゾール、ビスフェノール、ナフトール等が挙げられる。
【0019】
また、酸無水物およびフェノール樹脂の配合量としても特に限定されないが、エポキシ樹脂1当量に対して、0.4〜1.2当量配合することが好ましい。さらに好ましくは0.5当量〜1.1当量である。これにより、低粘度で、かつ適切な機械的強度を有する硬化物を得ることができる。配合量が前記下限値未満では機械的強度が充分でないことがある。また、前記上限値を超えると、組成物の粘度が低下するようになり、未硬化部分を生じやすく、機械的強度が低下することがある。
【0020】
本発明の半導体装置に用いる補強用接着剤がエポキシ系樹脂組成物である場合には、硬化剤として前記酸無水物またはフェノール樹脂を用いるとともに、硬化促進剤を併用することもできる。硬化促進剤としては特に限定されないが、潜在性硬化剤として市販されているアダクト系化合物が使用できる。例えば、味の素ファインテクノ社製・「アミキュアPN−23」、同・「アミキュアMY−24」、あるいは、富士化成工業社製・「フジキュアFX−1000」などが挙げられる。また、一般的なイミダゾール化合物や、特開平1−70523号公報に開示されている一液性エポキシ樹脂用マスターバッチ型硬化剤、特開平6−73156号公報に開示されている潜在性硬化剤などを用いてもよい。
【0021】
本発明の半導体装置に用いる補強用接着剤がシアネート系樹脂組成物である場合、シアネート樹脂としては、例えばビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂、ノボラック型シアネート樹脂等を挙げることができる。前記シアネート樹脂は、例えばハロゲン化シアン化合物とフェノール類とを反応させて得られる。
【0022】
シアネート樹脂の反応触媒としてコバルトアセチルアセトナートなどの金属錯体が用いられるが、酸無水物やフェノール樹脂を加えることで反応を加速することができ、かつ、フラックス活性も持たせることができる。これら酸無水物やフェノール樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤としても活用できるので、シアネート系樹脂組成物にエポキシ樹脂を混合して使用しても良い。
【0023】
本発明の半導体装置に用いる補強用接着剤がマレイミド系樹脂組成物の場合マレイミド樹脂としては、分子内に2個以上のマレイミド基を有するものであり特に限定されないが、N,N'−m−フェニレンビスマレイミド、 N,N'−p−フェニレンビスマレイミド、 N−N'−m−トルイレンビスマレイミド、N,N'−4,4'ビフェニレンビスマレイミド、 N,N'−(3,3'−ジメチル−ビフェニレン)ビスマレイミド、 N,N'−4,4'−ジフェニルメタンビスマレイミド、 N,N'−4,4'−(3,3'−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、 N,N'−4,4'−(3,3'−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、 N,N'−4,4'−ジフェニルプロパンビスマレイミド、 N,N'−4,4'−ジフェニルエーテルビスマレイミド、 N,N'−4,4'−ジフェニルスルフォンビスマレイミド、フェニルアラルキルマレイミド樹脂等があり、これらを単独或いは2種以上組合せて使用することができる。
【0024】
マレイミド樹脂系材料の硬化剤としては、過酸化物を用いてマレイミドの2重結合を反応させたり、アミン系化合物を加え付加反応させたりできるが、硬化剤として働き、かつフラックス活性を持たせる点で、アリール基含有フェノール化合物が好ましい。例えば3−(2−ヒドロキシフェニル)プロペン、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロペン、3−(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)プロペン等を挙げることができる。
【0025】
本発明の半導体装置に用いる補強用接着剤において、加熱によりフラックス活性を有するカルボン酸を発生する潜在性化合物としては、例えば、カルボン酸化合物とビニルエーテル化合物を反応させ保護基を有した化合物、オリゴマーあるいはポリマー、あるいは芳香族スルホン酸シクロヘキシル類を用いることができる。
カルボン酸化合物とビニルエーテル化合物を反応させ保護基を有した化合物としては、例えば、安息香酸、テレフタル酸、トリメシン酸などのカルボン酸化合物と例えば、イソブチルビニルエーテル、ビニルエチルエーテル、2,3−ジヒドロフラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピランなどのビニルエーテル化合物を無溶媒またはケトン系溶媒中、無触媒あるいは微量の有機酸を添加し反応させたものを用いる。あるいは、カルボキシル基を有するアクリル酸オリゴマーやポリマーと反応させたものも使用できる。芳香族スルホン酸シクロヘキシル類としては、例えば、シクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2−メチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、3−メチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、4−メチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、4−ブチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、4−シクロヘキシルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2,6−ジメチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2,4−ジメチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、3,4−ジメチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、3,5−ジメチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2−ヒドロキシシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、4−ヒドロキシシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネートおよび4,4'−ビシクロヘキシル=ビス(4−メチルベンゼンスルホネート)、等のp−トルエンスルホン酸シクロヘキシル類や、シクロヘキシル=4−ビフェニルスルホネート、等のビフェニルスルホン酸シクロヘキシル類や、シクロヘキシル=1−ナフタレンスルホネートおよびシクロヘキシル=2−ナフタレンスルホネート、等のナフタレンスルホン酸シクロヘキシル類などが挙げられるが、これらの中でも、p−トルエンスルホン酸スルホン酸シクロヘキシル類がより好ましく、さらに、この中でも、シクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、3−メチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、3,5−ジメチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、4−ブチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート、2−ヒドロキシシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネートおよび4−ヒドロキシシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネートが好適である
【0026】
本発明の半導体装置に用いる補強用接着剤には、可撓性を付与するためのゴム成分やキシレン樹脂などの熱可塑性樹脂を含有することができる。これにより、被着体との接着性に優れかつ耐ヒートサイクル性も向上する。
【0027】
本発明の半導体装置に用いる補強用接着剤において、上記熱可塑性樹脂の配合量としては特に限定されないが、半導体装置に用いる補強用接着剤となるエポキシ系樹脂組成物、シアネート系樹脂組成物、またはマレイミド樹脂系樹脂組成物100重量部に対して、5〜40重量部であることが好ましい。さらに好ましくは10〜30重量部である。これにより、他の特性に実質的に影響を与えることなく、組成物に良好な接着力を付与することができる。熱可塑性樹脂の配合量が前記下限値未満では、熱可塑性樹脂の配合効果が充分でないことがある。また、前記上限値を超えると、可塑化効果が大きくなり、常温での密着性が低下して、本来の目的である接続信頼性が低下する傾向がある。
【0028】
本発明の半導体装置に用いる補強用接着剤は特に限定されないが、無機充填材を配合することができる。これにより、組成物の耐熱性の向上、熱膨張率の低減等を図ることができる。無機充填材としては特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、クレー、タルク、アルミナ、ガラス粉末等が挙げられる。これらの中でも、結晶シリカ、溶融シリカが好ましい。これにより、上記効果に加え、組成物の電気特性を向上させ、粘度上昇を低く抑えることができる。
【0029】
上記無機充填材を用いる場合の配合量としては特に限定されないが、半導体装置に用いる補強用接着剤のエポキシ系樹脂組成物、シアネート系樹脂組成物、またはマレイミド系樹脂組成物100重量部に対して、0〜200重量部であることが好ましく、さらに好ましくは、作業性の観点から0〜150重量部である。無機充填材を使用しなくても良いが、使用すると組成物の線膨張係数を低下させることができ、その結果耐ヒートサイクル性をさらに向上することができる。ただし、前記上限値を越えると、粘度が非常に高くなるため作業性が低下するとともに硬化物の物性、例えば接着力や曲げ強さが著しく低下することがある。
【0030】
なお、本発明の半導体装置に用いる補強用接着剤には、以上に説明した配合物のほかに、本発明の目的に反しない範囲において、必要に応じて、染料、変性剤、チキソ性付与剤、着色防止剤、老化防止剤、離型剤、レベリング剤、反応性ないしは非反応性の希釈剤等の添加剤を配合することができる。
【0031】
本発明の半導体装置に用いる補強用接着剤の製造方法は、通常のエポキシ樹脂組成物の製造方法と同様な一般的な撹拌混合装置と加工条件が適用される。使用される設備としては、ミキシングロール、ディゾルバ、プラネタリミキサ、ニーダ、押し出し機等である。加工条件としては主剤となるエポキシ、シアネート、またはマレイミド樹脂を溶解および/または低粘度化し撹拌混合効率を向上させるために加熱してもよい。また、摩擦発熱、反応発熱等を除去するために冷却してもよい。撹拌混合の時間は必要により定めればよく、特に制約されることはない。
【0032】
発明の半導体装置に用いる補強用接着剤を用いて半導体素子を組み立てる方法として、キャピラリーフローの場合、チップまたはパッケージの外周部に塗布し、毛細管現象を利用して充填させる。その後、熱風式乾燥機、熱風式乾燥炉、遠赤外線硬化炉等により加熱硬化により接合させる。コンプレッションフローの場合は、まずウエハー上に電気回路が形成された多数個の半導体素子にバンプを形成させた後、接着剤を基板面に塗布する。接着剤を塗布する方法は、スクリーン印刷、転写、ディスペンスなどを使用することができる。次に、塗布された素子を基板に接合する方法は、熱風式乾燥機、熱風式乾燥炉、遠赤外線硬化炉、パルスヒート、リフロー法等により行われる。フラックス活性を有する接着剤は、含有する硬化剤によりフラックス活性を発現することにより表面が活性化され、基板の金属端子と接合する。同時に接着剤が溶融その後に硬化反応により硬化して封止も行われる。硬化が不十分な場合は接合後、ポストベークを行うこともできる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0034】
半導体装置に用いる補強用接着剤の製造
(実施例1)
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「エピコート828」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量 約189))100重量部、硬化剤として酸無水物(新日本理化社製「MT−500」(メチルテトラヒドロ無水フタル酸、酸無水物当量 約169)80重量部、硬化促進剤としてアダクト系化合物(味の素ファインテクノ社製「MY−24」)3重量部、無機充填材として溶融シリカ(電気化学工業社製「FB−35」(平均粒径11μm))100重量部、顔料1重量部(三菱化学社製「MA−600」(カーボンブラック))、安息香酸(関東化学社製 試薬1級)と3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(関東化学社製)を予め反応させ保護した化合物5重量部を配合後、プラネタリミキサを用いて常温で均一分散されるまで十分に撹拌混合を行い、補強用接着剤1を得た。20×20mmのBGA(1.5mmピッチ、169ピン、半田ボール径0.8mm)を搭載した回路基板を用い、図5に示されるように、BGAの4角に注入し、BGAと回路基板との間にディスペンサーを用いた、キャピラリーフローにより組成物を充填した。重量換算により接着面積が約40%となるように調整した評価用基板を準備した。
【0035】
(実施例2)
実施例1の安息香酸(関東化学社製 試薬1級)と3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(関東化学社製)を予め反応させ保護した化合物をシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート5重量部に置き換えた以外は、実施例1と同様にして補強用接着剤2を得た。また上記同様に、ディスペンサーを用いて充填し、接着面積が約40%の評価基板を準備した。
【0036】
(実施例3)
実施例1の安息香酸(関東化学社製 試薬1級)と3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(関東化学社製)を予め反応させ保護した化合物を10重量部に増量し、また、シリカも200重量部に増量した以外は実施例1と同様にして補強用接着剤3を得た。またコンプレッションフローによる接続方法として、バンプ付きチップ(20mm×20mm、Sn37Pb半田バンプ又はSn3.5Ag半田バンプ)、また対となる厚み0.75mmのFR4基板(パッド付き)を用いてバンプを垂直接続させたものを作製し、そこに生じるギャップに液状封止材を例えば、図4のように塗布することで封止を行った。このときの接着面積は、約60%である評価基板を準備した。
【0037】
(実施例4)
実施例3の安息香酸(関東化学社製 試薬1級)と3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(関東化学社製)を予め反応させ保護した化合物をシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネート10重量部に置き換えた以外は、実施例3と同様にして補強用接着剤4を得た。また上記同様に、接着面積が約60%の評価基板を準備した。
【0038】
(比較例1)
実施例1で使用した評価用基板に補強用接着剤を未充填のまま評価に使用した。
【0039】
(比較例2)
実施例1で使用した補強用接着剤1を使用し、ディスペンサーによる100%充填した評価用基板を準備した。
(比較例3)
実施例3で使用した補強用接着剤3の安息香酸(関東化学社製 試薬1級)と3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(関東化学社製)を予め反応させ保護した化合物を安息香酸10重量部に置き換えた以外、実施例3と同様に行い、接着面積が約60%の評価用基板を準備した。
【0040】
(比較例4)
実施例4で使用した補強用接着剤4のシクロヘキシル=4−メチルベンゼンスルホネートをp−トルエンスルホン酸10重量部に置き換えた以外、実施例3と同様に行い、接着面積が80%の評価用基板を準備した。
【0041】
実施例及び比較例の組成物の配合組成を表1に示す。表中において、各配合量は「重量部」を示す。
【0042】
【表1】

【0043】
また、実施例及び比較例で得られた組成物について、以下の項目の評価を行った。結果を表2に示す。用いた原材料及び評価方法は以下のとおりである。
【0044】
【表2】

【0045】
2.評価方法
(1)粘度(25℃)
E型粘度計(東機産業社製)により測定した。ロータの型式は1°34‘コーンを用いた。
【0046】
(2)ゲルタイム
150℃の熱盤を用いて組成物がゲル化するために要する時間を測定した。
【0047】
(3)熱処理時の接続信頼性
ヒートサイクル処理(−40℃/125℃ 各30分間を1サイクルとした)を行った。これを10サイクル実施するごとにBGAの接続の有無を測定し、導通不良が発生したときのサイクル数を測定した。
【0048】
(4)衝撃時の接続信頼性(25℃)=繰り返し曲げ試験
回路基板の幅が80mmになるように両端を固定し、回路基板の中心を5mm押して戻す操作を繰り返し行った。これを1000サイクル実施するごとにBGAの接続の有無を測定し、導通不良が発生したときのサイクル数を測定した。
【0049】
(5)リペア性
250℃に熱し、半田バンプ接合部を溶解させた後に、ピンセットでBGAを剥がし、組成物を回路基板から除去する際の作業性を測定した。評価基準は以下のとおりである。
○:回路基板からBGAや組成物を容易に除去することができ、回路基板の表面樹脂の剥離が発生しなかった。
×:回路基板からBGAや組成物を除去し難く、回路基板の表面樹脂の剥離が発生した。
(6)保存性
40℃1週間放置後の粘度(25℃)を(1)と同様にして、E型粘度計(東機産業社製)により測定し、初期値からの変化を測定した。
○:初期値に対し、2倍未満
△:初期値に対し、2倍以上
【0050】
実施例1〜2は、潜在性の活性基を有する化合物を含有する本発明の一液性エポキシ樹脂組成物であり、硬化性および熱処理時の接続信頼性を通常使用可能なレベルに保ちつつ、保存安定性に優れるものとなった。このことにより、本発明の組成物は、衝撃時の接続信頼性とリペア性が共に優れたものであることが証明された。
また実施例5,6は、酸無水物中に保護されていないカルボン酸またはスルホン酸が存在するため保存安定性が若干低下した。
一方、比較例1では、補強用接着剤を使用していないため、接続信頼性に劣る結果であり、また、実施例2において、完全に充填したものは、揮発分によるボイドの影響により接続信頼性に劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、潜在性の官能基を有する化合物あるいはオリゴマーまたはポリマーを有するアンダーフィル封止用の一液型エポキシ樹脂組成物を提供するものであり、これにより接着面積が少ない、即ち、使用量が少なくても衝撃時の接続信頼性とリペア性とをバランスよく向上させることができるアンダーフィル封止用材料として好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明においてハンダボール間を点で接着した例を模式的に示す断面図及び半導体素子を取り除いた状態での平面図である。
【図2】本発明においてハンダボール間を線で接着した例を模式的に示す断面図及び半導体素子を取り除いた状態での平面図である。
【図3】本発明においてハンダボール周りを接着した例を模式的に示す断面図及び半導体素子を取り除いた状態での平面図である。
【図4】本発明においてハンダボールを包んだ状態で線状に接着した例を模式的に示す断面図及び半導体素子を取り除いた状態での平面図である。
【図5】本発明においてハンダボールを包んだ状態で面状に接着した例を模式的に示す断面図及び半導体素子を取り除いた状態での平面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 半導体素子
2 接着剤
3 ハンダボール
4 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と電気的接合させるための半田バンプを有する半導体素子との間に補強用接着剤が充填された構造である半導体装置であって、前記補強用接着剤が、充填可能な面積の5〜95%を充填させ、かつ、半導体素子の中心から外周部に対し少なくとも1箇所以上の未充填空間を有する構造であり、前記補強用接着剤は、加熱によりカルボン酸及びスルホン酸を発生する潜在性化合物及び/又は樹脂であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
補強用接着剤が熱硬化性樹脂組成物である請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
該熱硬化性樹脂組成物がエポキシ系樹脂組成物、シアネート系樹脂組成物およびマレイミド系樹脂組成物からなる群より選ばれる1種以上の樹脂組成物である請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
補強用接着剤がフラックス活性を有する熱硬化性樹脂組成物である請求項3記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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