説明

半導体装置

【課題】入力信号のタイプを自動的に判別し、そのタイプに最適な特性の出力信号を共通の出力端子から出力することのできる半導体装置を提供する。
【解決手段】実施形態の半導体装置は、利得を変化させることのできる可変利得増幅器1と、入力信号SIGの周波数を計測するカウンタ2と、を備え、切り替え部3が、入力信号SIGの周波数に応じて、入力信号SIGを、可変利得増幅器1を介して出力端子OUTへ出力するか、そのまま出力端子OUTへ出力するか、を切り替える。また、この半導体装置では、入力信号SIGを可変利得増幅器1を介して出力端子OUTへ出力する場合には、出力先インピーダンス判定部4が、出力端子OUTに接続される機器の入力インピーダンスの高低を判定し、利得調整部5が、出力端子OUTに接続される機器の入力インピーダンスの高低に応じて可変利得増幅器1の利得を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やポータブルオーディオプレーヤなどの携帯機器では、小型化、多機能化の進展に伴い、本体に多くのコネクタを配置する必要が生じている。そのため、コネクタの小型化が進められる一方、従来、専用コネクタでそれぞれ伝送されていたタイプの異なる信号を、1つのコネクタを兼用して伝送することも行われている。その1つとして、本来デジタル信号伝送用のUSBコネクタを、アナログ信号であるオーディオ信号の伝送にも使用することが行われている。
【0003】
したがって、このような兼用コネクタを使用する携帯機器に搭載され、この兼用コネクタを介してタイプの異なる信号を出力する半導体装置は、この兼用コネクタに接続される相手側機器に応じて、出力信号を切り替える必要がある。
【0004】
例えば、USBコネクタを兼用する場合、USBコネクタに接続される機器が、スピーカやイヤホンなどの音声再生機器であればオーディオ信号を出力し、USBメモリであればUSB信号を出力する必要がある。
【0005】
従来、このような出力信号の切り替えは、出力端子に接続された半導体スイッチをCPUなどで制御することにより行われている。
【0006】
この出力の切り替えを行う半導体スイッチの求められる特性で、特に重要な特性は、オン抵抗とスイッチ容量である。例えば、オーディオ信号が通過する半導体スイッチのオン抵抗が大きい場合、オーディオ信号を伝送することができない、という問題が発生する。また、USB信号では、データ伝送時に通過する半導体スイッチのオン容量や、伝送経路に並列に接続された半導体スイッチのスイッチオフ容量が大きい場合、正常なデータ伝送が行えなくなる、という問題が発生する。
【0007】
また、オーディオ信号を出力する場合、USBコネクタに接続されるスピーカやイヤホンの入力インピーダンスが、製品によって8Ωであったり16Ωであったりと、まちまちである。したがって、USBコネクタから出力される電流が一定であると、スピーカやイヤホンの入力インピーダンスの違いによって、再生音量が大きく変わる、という問題も発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−116243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、入力信号のタイプを自動的に判別し、そのタイプに最適な特性の出力信号を共通の出力端子から出力することのできる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の半導体装置は、利得を変化させることのできる可変利得増幅器と、入力信号の周波数を計測する周波数計測部と、を備え、切り替え手段が、前記入力信号の周波数に応じて、前記入力信号を、前記可変利得増幅器を介して出力端子へ出力するか、そのまま出力端子へ出力するか、を切り替える。また、この半導体装置では、前記入力信号を前記可変利得増幅器を介して前記出力端子へ出力する場合には、出力先インピーダンス判定手段が、前記出力端子に接続される機器の入力インピーダンスの高低を判定し、利得調整部が、前記入力インピーダンスの高低に応じて前記可変利得増幅器の利得を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構成の例を示すブロック図。
【図2】入力信号がオーディオ信号であるときの、第1の実施形態の半導体装置の切り替え部の動作説明図。
【図3】入力信号がUSB信号であるときの、第1の実施形態の半導体装置の切り替え部の動作説明図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の構成の例を示すブロック図。
【図5】入力信号がオーディオ信号であるときの、第2の実施形態の半導体装置の切り替え部の動作説明図。
【図6】入力信号がUSB信号であるときの、第2の実施形態の半導体装置の切り替え部の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図中、同一または相当部分には同一の符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構成の例を示すブロック図である。
【0014】
本実施形態の半導体装置は、利得を変化させることのできる可変利得増幅器1と、入力信号SIGの周波数を計測するカウンタ2と、入力信号の周波数に応じて、入力信号SIGを、可変利得増幅器1を介して出力端子OUTへ出力するか、そのまま出力端子OUTへ出力するか、を切り替える切り替え部3と、入力信号SIGを可変利得増幅器1を介して出力端子OUTへ出力する場合には、出力端子OUTに接続される機器の入力インピーダンスの高低を判定する出力先インピーダンス判定部4と、出力端子OUTに接続される機器の入力インピーダンスの高低に応じて可変利得増幅器1の利得を調整する利得調整部5と、を備える。
【0015】
本実施形態における切り替え部3は、入力信号SIGを出力端子OUTへ出力するか否かを切り替えるスイッチSW1と、可変利得増幅器1へ電源電圧VDDを供給するかスイッチSW1を導通させるかを切り替えるスイッチSW2と、入力信号SIGを可変利得増幅器1へ入力するか否かを切り替えるスイッチSW3と、可変利得増幅器1の出力を出力端子OUTへ出力するか否かを切り替えるスイッチSW4と、カウンタ2の計測結果に応じて、スイッチSW2〜SW4の切り替えを制御するスイッチ制御部31と、を有する。
【0016】
ここでは、スイッチSW1として、MOSトランジスタを用いたスイッチの例を示しており、そのゲート端子へスイッチSW2を介して電源電圧VDDが印加されたときに導通する。
【0017】
スイッチ制御部31は、カウンタ2の計測結果に応じて、スイッチSW2〜SW4の切り替えを制御する。一般的なオーディオ信号の周波数は20Hz〜20kHzであり、一般的なUSB信号の周波数は1.5MHz〜480MHzである。そこで、判定閾値を、20Hzと1.5MHzの間に設定することにより、スイッチ制御部31は、入力信号がオーディオ信号であるかUSB信号を判定し、その判定結果にもとづいてスイッチSW2〜SW4の切り替えを行う。図2および図3に、このスイッチSW2〜SW4の切り替えの様子を示す。
【0018】
図2は、入力信号SIGがオーディオ信号であるときのスイッチSW2〜SW4の切り替えの様子を示す。
【0019】
スイッチ制御部31は、入力信号SIGがオーディオ信号であると判定したときは、可変利得増幅器1へ電源電圧VDDを供給するようスイッチSW2を切り替え、入力信号SIGを可変利得増幅器1へ入力するようスイッチSW3を切り替え、可変利得増幅器1の出力を出力端子OUTへ出力するようスイッチSW4を切り替える。
【0020】
これにより、入力オーディオ信号は可変利得増幅器1へ入力されて増幅され、その増幅されたオーディオ信号が出力端子OUTへ出力される。
【0021】
また、このとき、出力先インピーダンス判定部4により、出力端子OUTに接続される機器の入力インピーダンスの高低が判定される。オーディオ信号を出力する場合、出力端子OUTには、スピーカやイヤホンが接続される。一般的に、スピーカやイヤホンの入力インピーダンスは、8Ωないしは16Ωである。そこで、出力先インピーダンス判定部4は、出力端子OUTに流れる電流値を観測し、出力先の入力インピーダンスの高低を判定する。
【0022】
この出力先インピーダンス判定部4の判定結果を受けて、利得調整部5は、可変利得増幅器1の利得を制御する。
【0023】
すなわち、利得調整部5は、出力先インピーダンス判定部4の判定結果が「高」であるときは、可変利得増幅器1の利得を低くし、出力先インピーダンス判定部4の判定結果が「低」であるときは、可変利得増幅器1の利得を高くする。
【0024】
これにより、出力先の入力インピーダンスが高いときは出力先へ流れる電流が小さくなり、出力先の入力インピーダンスが低いときは出力先へ流れる電流が大きくなる。その結果、出力先のスピーカやイヤホンで発生する電圧が、その入力インピーダンスによらず一定となり、最適な音量でのオーディオ信号の再生が可能となる。
【0025】
図3は、入力信号SIGがUSB信号であるときのスイッチSW2〜SW4の切り替えの様子を示す。
【0026】
スイッチ制御部31は、入力信号がUSB信号であると判定したときは、スイッチSW1のゲート端子へ電源電圧VDDを印加するようスイッチSW2を切り替え、入力信号SIGを可変利得増幅器1へ入力しないようスイッチSW3を切り替え、可変利得増幅器1の出力を出力端子OUTへ出力しないようスイッチを切り替える。
【0027】
これにより、入力USB信号は、スイッチSW1を介して出力端子OUTへ出力される。すなわち、USB信号のような高周波の信号の場合、低スイッチ容量での出力が可能となる。
【0028】
このような本実施形態によれば、カウンタ2が入力信号SIGの周波数を計測し、その結果にもとづいて、スイッチ制御部31が、入力信号SIGが低周波のオーディオ信号であるか高周波のUSB信号であるかを判定し、スイッチSW2〜SW4を切り替えて、出力端子OUTへ至る入力信号SIGの信号経路を自動的に切り替える。これにより、外部から信号経路の切り替えをしなくとも、入力信号SIGの信号タイプに最適な特性の出力信号を共通の出力端子OUTから出力することができる。このとき、入力信号SIGがオーディオ信号であれば、出力先の入力インピーダンスによらず最適な音量での再生が可能なオーディオ信号を伝送することができ、入力信号SIGがUSB信号であれば、低スイッチ容量での出力信号の伝送が可能となる。
【0029】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の構成の例を示すブロック図である。
【0030】
本実施形態の半導体装置は、第1の実施形態の半導体装置の回路からスイッチSW3およびスイッチSW4を削除したものである。すなわち、本実施形態では、入力信号SIGが可変利得増幅器1へ直接入力され、可変利得増幅器1の出力が出力端子OUTへ直接出力される。
【0031】
本実施形態の半導体装置の切り替え部3Aは、入力信号SIGを出力端子OUTへ出力するか否かを切り替えるスイッチSW1と、可変利得増幅器1へ電源電圧VDDを供給するかスイッチSW1を導通させるかを切り替えるスイッチSW2と、のみを備え、スイッチ制御部31Aが、カウンタ2の計測結果に応じて、スイッチSW2の切り替えを制御する。
【0032】
図5に、入力信号SIGがオーディオ信号であるときのスイッチSW2の切り替えの様子を示す。
【0033】
スイッチ制御部31Aは、入力信号SIGがオーディオ信号であると判定したときは、可変利得増幅器1へ電源電圧VDDを供給するようスイッチSW2を切り替える。これにより、入力されたオーディオ信号は可変利得増幅器1で増幅され、その増幅されたオーディオ信号が出力端子OUTへ出力される。
【0034】
このように、本実施形態では、入力信号SIGがオーディオ信号であるときは、その信号経路にスイッチが挿入されない。そのため、実施形態1と比較して、スイッチのオン抵抗が付加されない分、低オン抵抗でのオーディオ信号の伝送が可能となる。
【0035】
図6に、入力信号SIGがUSB信号であるときのスイッチSW2の切り替えの様子を示す。
【0036】
スイッチ制御部31Aは、入力信号がUSB信号であると判定したときは、スイッチSW1のゲート端子へ電源電圧VDDを印加するようスイッチSW2を切り替える。これにより、入力されたUSB信号は、スイッチSW1を介して出力端子OUTへ出力される。
【0037】
通常、可変利得増幅器1の容量は、実施形態1で用いたスイッチSW3、SW4のスイッチ容量よりも十分小さいので、実施形態1と比較して、スイッチSW1に並列接続される容量が低減する。そのため、本実施形態では、さらなる低スイッチ容量でのUSB信号の伝送が可能となる。
【0038】
このような本実施形態によれば、入力信号SIGがオーディオ信号であるときは、より低オン抵抗での信号伝送が可能であり、入力信号がUSB信号であるときは、より低スイッチ容量での信号伝送が可能となる。
【0039】
以上説明した少なくとも1つの実施形態の半導体装置によれば、入力信号のタイプを自動的に判別し、そのタイプに最適な特性の出力信号を共通の出力端子から出力することができる。
【0040】
また、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1 可変利得増幅器
2 カウンタ
3、3A 切り替え部
4 出力先インピーダンス判定部
5 利得調整部
31、31A スイッチ制御部
SW1〜SW4 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利得を変化させることのできる可変利得増幅器と、
入力信号の周波数を計測する周波数計測部と、
前記入力信号の周波数に応じて、前記入力信号を、前記可変利得増幅器を介して出力端子へ出力するか、そのまま出力端子へ出力するか、を切り替える切り替え手段と、
前記入力信号を前記可変利得増幅器を介して前記出力端子へ出力する場合には、前記出力端子に接続される機器の入力インピーダンスの高低を判定する出力先インピーダンス判定手段と、
前記入力インピーダンスの高低に応じて前記可変利得増幅器の利得を調整する利得調整部と
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記切り替え手段が、
前記入力信号を前記出力端子へ出力するか否かを切り替える第1のスイッチと、
前記可変利得増幅器へ電源電圧を供給するか前記第1のスイッチを導通させるかを切り替える第2のスイッチと、
前記入力信号を前記可変利得増幅器へ入力するか否かを切り替える第3のスイッチと、
前記可変利得増幅器の出力を前記出力端子へ出力するか否かを切り替える第4のスイッチと、
前記入力信号の周波数に応じて、前記第2乃至第4のスイッチの切り替えを制御するスイッチ制御部と
を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記スイッチ制御部が、
前記入力信号の周波数が低周波であるときは、前記可変利得増幅器へ電源電圧を供給するよう前記第2のスイッチを切り替え、前記入力信号を前記可変利得増幅器へ入力するよう前記第3のスイッチを切り替え、前記可変利得増幅器の出力を前記出力端子へ出力するよう前記第4のスイッチを切り替え、
前記入力信号の周波数が高周波であるときは、前記第1のスイッチを導通させるよう前記第2のスイッチを切り替え、前記入力信号を前記可変利得増幅器へ入力しないよう前記第3のスイッチを切り替え、前記可変利得増幅器の出力を前記出力端子へ出力しないよう前記第4のスイッチを切り替える
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記切り替え手段が、
前記入力信号を前記出力端子へ出力するか否かを切り替える第1のスイッチと、
前記可変利得増幅器へ電源電圧を供給するか前記第1のスイッチを導通させるかを切り替える第2のスイッチと、
前記入力信号の周波数に応じて、前記第2のスイッチの切り替えを制御するスイッチ制御部と
を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記スイッチ制御部が、
前記入力信号の周波数が低周波であるときは、前記可変利得増幅器へ電源電圧を供給するよう前記第2のスイッチを切り替え、
前記入力信号の周波数が高周波であるときは、前記第1のスイッチを導通させるよう前記第2のスイッチを切り替える
ことを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記利得調整部が、
前記入力インピーダンスが高い場合には、前記可変利得増幅器の利得を低くし、
前記入力インピーダンスが低い場合には、前記可変利得増幅器の利得を高くする
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−170032(P2012−170032A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31572(P2011−31572)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】