説明

半導体集積回路装置

【課題】
CPUに対する複雑な電源供給シーケンスに対応でき、かつ消費電力の削減効果が高い半導体集積回路装置を提供すること。
【解決手段】
本発明にかかる半導体集積回路装置は、演算回路を備えたCPU10と、CPU10の電源制御を電源IC200を介して実行するPMU1とを備えている。このPMU1は、演算回路を有しない。また、PMU1は、複数のコマンドを格納するRAM1bと、RAM1bに格納されたコマンドに基づいてCPU10の電源制御を実行する制御部1aとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路装置に関するものであり、特に、半導体集積回路の電源制御に関する。
【背景技術】
【0002】
電池によって駆動される携帯電話機や携帯端末には、種々のLSI(Large Scale Integration)が組み込まれている。携帯電話機等の長時間使用を可能とし、かつ多機能化を実現する上では、当該LSIの低消費電力化が極めて重要な要因である。また、LSIの集積化が進み、0.13μm以下の微細プロセスにおいては、停止時に消費される静消費電流、即ちリーク電流が全体の消費電流に占める割合が高くなり、無視できない。
【0003】
このような背景により、リーク電流を低減するために、LSIの内部を複数のブロックに分割し、それぞれのブロックに対して個別に電源を供給できるようにし、動作上必要のないブロックに対する電源供給を遮断する技術が提案されるに至った。
【0004】
図6を用いて、従来の電源制御技術について説明する。図に示されるように、LSI100は、電源IC200と接続されている。LSI100は、CPU(Central Processor Unit)10、常時電源オン領域20、ロジック回路A30、ロジック回路B40を備えている。ここで、常時電源オン領域20とは、CPU10等の他の回路が動作を停止している状態であっても常時電源が供給されている回路領域をいう。この常時電源オン領域20には、CPU10の電源供給を制御する制御回路21が設けられている。当該制御回路21は、プログラムを使用しない電気回路よりなるハードウェア固定回路により構成され、例えば単純な電源オン要求の固定動作のみ実行する。電源IC200は、機能ブロックとして、ロジック回路A30に対する電源供給部201、CPU10に対する電源供給部202、常時電源オン領域20に対する電源供給部203、ロジック回路B40に対する電源供給部204、制御I/F(インターフェース)205、CPU10に対する電源のオン要求処理部206を備えている。
【0005】
図6に示す従来例において、CPU10に対する電源供給が遮断されているときに、外部割込信号が制御回路21に入力された場合の処理動作について説明する。制御回路21は、この外部割込信号を検知すると、電源IC200に対してCPU10に対する電源供給の要求を出力する。ここで、電源供給が遮断状態のCPU10は、全て初期化されているため、電源の供給が再開された際には、ブート時間が極めて長くなる。例えば、20〜30秒のブート時間を要する場合もある。また、制御回路21は、ハードウェアにより構成されているため、固定シーケンスの実行のみ可能であり、複雑な電源供給シーケンスには対応できない。例えば、制御回路21は、外部割込み信号を検知し、ロジック回路A30の電源をオンし、ロジック回路A30の初期化ルーチンを実行した後に50μs待機し、そしてCPU10の電源をオンするというような複雑な電源供給シーケンスは実行することが困難である。仮にこのような複雑な電源供給シーケンスをハードウェア固定回路で実現したとしても、予め用意しておかなければ、他の電源供給シーケンスは実行できない。さらに、様々な種類の電源供給シーケンスを実行できる回路を全てハードウェア固定回路上に設けると、回路規模が増大してしまう。
【0006】
従来の電源制御技術の一例が特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示された半導体集積回路は、I/O端子部に設けられた制御回路によってCPUの電源制御を実行している。しかしながら、特許文献1に開示された制御回路は、極めて単純な制御を実行するのみであり、また、バックアップレジスタも単に各種の信号のバックアップを実行するものである。このため、特許文献1に開示された制御回路は、複雑な電源供給シーケンスを実行することはできず、かつフレキシブルに対応することもできない。
【0007】
また、従来の電源制御技術の他の一例が特許文献2に開示されている。この特許文献2に開示された半導体集積回路は、高性能のCPUと低消費電力のCPUの双方を備え、処理を行なわないCPUの電源供給を遮断することによりリーク電流を削減し、消費電力を削減している。しかしながら、CPUは演算回路を備えているので、低消費電力であるとしてもかなりのリーク電流が発生し、消費電力の削減効果は小さい。
【特許文献1】特開2002−341976号公報
【特許文献2】特開2002−288150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、従来の半導体集積回路装置においては、CPUの電源管理をハードウェア固定回路により実現しているため、複雑な電源供給シーケンスに対応できないという問題があった。また、高性能のCPUの電源管理を低消費電力のCPUにより実行する従来技術においては、消費電力の削減効果が小さいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる半導体集積回路装置は、演算回路を備えたプロセッサと、前記プロセッサの電源制御を電源供給部を介して実行するパワーマネージメントユニットとを備えた半導体集積回路であって、前記パワーマネージメントユニットは、演算回路を有さず、複数のコマンドを格納するメモリと、前記メモリに格納されたコマンドに基づいて前記プロセッサの電源制御を実行する制御部とを備えたものである。このようにプロセッサの電源制御を行うパワーマネージメントユニットを備えているので、プロセッサに電源が供給されていない状態でも、各周辺マクロに対して命令を発行することができるので、システムの再スタートに要する時間を短縮化できる。また、パワーマネージメントユニットは、プログラマブルであり、メモリに格納するコマンドを変更することにより、様々な電源オンオフシーケンスを実行することができ、さらに電源分割数が多くなっても対応可能である。さらに、パワーマネージメントユニットは、コマンド制御のため機能拡張や変更が容易である。さらに、パワーマネージメントユニットは、演算回路を有しないため、演算回路を有するプロセッサと比較して回路規模が非常に小さく、低消費電力化を図ることが可能となる。
【0010】
本発明にかかる別の観点による半導体集積回路装置は、演算回路を備えたプロセッサと、前記プロセッサの電源制御を電源供給部を介して実行する、演算回路を有しないプログラマブルシーケンサとを備えた半導体集積回路装置であって、前記プログラマブルシーケンサは、前記プロセッサに対して前記電源供給部を介して電源を供給するときに、並行して、当該半導体集積回路装置の他の回路に対する初期化処理を実行するものである。このような構成により、特にシステムの再スタートに要する時間を短縮化できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、CPUに対する複雑な電源供給シーケンスに対応でき、かつ消費電力の削減効果が高い半導体集積回路装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の実施の形態1.
図1を用いて、本発明の実施の形態1にかかる電源制御技術について説明する。図に示されるように、本発明にかかる半導体集積回路装置はLSI100と電源IC200を備えており、例えば、携帯電話機にアプリケーションプロセッサとして組み込まれる。LSI100は、当該LSI100と独立して設けられた電源IC200と接続されている。LSI100は、CPU10、常時電源オン領域20、ロジック回路A30、ロジック回路B40を備えている。この常時電源オン領域20には、パワーマネージメントユニット(PMU)1及びクロック生成回路2が設けられている。CPU10は、演算回路を備えている。CPU10とPMU1間は共通のバスで接続されており、CPU10とPMU1からの信号は、このバスを介して選択的に電源IC100に対して出力される。また、CPU10とPMU1からの信号を切り換えるセレクタを別途設けるようにしてもよい。
【0013】
PMU1は、CPU10、ロジック回路A30、ロジック回路B40等の電源供給を制御したり、クロック生成回路2やリセット制御回路(図示せず)の動作を制御する機能を有する。PMU1は、制御部1a及びRAM(Random Access Memory)1bを備えている。かかる制御部1aは、演算回路を有しない電気回路により構成されており、RAM1bに格納された複数のコマンドからなるコマンド列、即ちプログラムに基づいて動作する。従って、PMU1は、プログラマブルシーケンサであり、RAM1bに格納するコマンドを変更することにより、様々な電源オンオフシーケンスを実行することができ、さらに電源分割数が多くなっても対応可能である。さらに、PMU1は、コマンド制御のため機能拡張や変更が容易である。
【0014】
また、PMU1は、CPU10に対して電源が供給されていない状態でも、各周辺マクロ(ロジック回路A30やロジック回路B40等)に対して命令を発行することができる。即ち、PMU1は、CPU10に対して電源が供給されていない状態でも、各周辺マクロを制御できる。従って、CPU10に対して電源が供給された後に当該CPU10がリジューム処理している間、またはリジューム処理前に各種の命令を実行することができるため、システムの再スタートに要する時間を短縮化できる。
【0015】
さらに、PMU1は、割り込み監視機能を有し、外部割込信号の入力に応じて、電源オンシーケンスを実行することができる。また、PMU1は、ウォッチドッグタイマ機能を有し、システムがハングアップした場合にもリセット処理することにより対応可能である。本発明の実施の形態1にかかるPMU1は、電源制御に特化したプログラマブルシーケンサであり、演算回路を有しない。従って、当該PMU1は、演算回路を有するプロセッサと比較して回路規模が非常に小さく、プロセッサの1/10〜1/50程度である。そのため、PMU1を用いることにより、プロセッサを用いた場合と比較して低消費電力化を図ることが可能となる。PMU1の具体的な構成については、後に詳述する。
【0016】
クロック生成回路2は、CPU10、ロジック回路A30、ロジック回路B40等に対してクロック信号を生成し、供給する回路である。クロック生成回路2は、一般的なPLL(Phase Lock Loop)回路により構成され、発振回路を備えている。
【0017】
電源IC200は、LSI100に対して電源を供給する電源供給部として機能する。当該電源IC200は、機能ブロックとして、ロジック回路A30に対する電源供給部201、CPU10に対する電源供給部202、常時電源オン領域20に対する電源供給部203、ロジック回路B40に対する電源供給部204、制御I/F(インターフェース)205を備えている。
【0018】
続いて、図2を用いてPMU1の内部ブロックについて具体的に説明する。PMU1は、周辺マクロレジスタI/F(インターフェース)回路11、内蔵SRAM12、SRAM制御・コマンドデコード回路13、シーケンサ回路14及び電源制御I/F(インターフェース)回路15を備えている。
【0019】
周辺マクロレジスタI/F回路11は、CPU10、ロジック回路A30、ロジック回路B40と接続され、これらのCPU10等と、内蔵SRAM12やシーケンサ回路14などのPMU1内の各マクロとの間で通信を実行するために、通信プロトコルの変換を行なう回路である。周辺マクロレジスタI/F回路11は、PMU1内の各マクロから通信CPU10等に対してデータやコマンドを出力する場合には、I/Fバスプロトコルにプロトコルを変換し出力する。
【0020】
内蔵SRAM12は、図1に示すRAM1bに相当するメモリであり、複数のコマンドからなるコマンド列(プログラム)を読み書き可能に格納するメモリ(記憶手段)である。
【0021】
SRAM制御・コマンドデコード回路13は、内蔵SRAM12を制御する。SRAM制御・コマンドデコード回路13は、シーケンサ回路14によるコマンド要求に応じて当該内蔵SRAM12に格納されたコマンドを読み出し、デコード処理し、シーケンサ回路14に出力する回路である。
【0022】
シーケンサ回路14は、ステートマシン141とデコーダ142により構成される。本発明にかかるシーケンサ回路14は、演算回路を備えていない。ステートマシン141は、コマンドに同期して内部状態を遷移させる回路である。ここで、ステートマシン141において遷移させる内部状態には、例えば、外部電源オン命令発行状態、周辺マイクロレジスタライト状態、外部電源安定待ち状態が含まれる。ステートマシン141は、例えば、ジョンソン・カウンタをベースに構成され、外部信号に合わせて内部状態を刻々と変化させて順序制御を実行する。デコーダ142は、ステートマシン141において遷移する内部状態(ステート)をデコードして、命令発行やコマンド要求信号を生成する回路である。
【0023】
電源制御I/F回路15は、電源IC200に対して命令発行を行なうために、当該命令(コマンド)を電源IC200のI/Fバスプロトコルに変換を行なう回路である。
【0024】
続いて、図3に示すフローチャートを用いて、電源オフシーケンスについて説明する。図3のフローチャート中に記載したS1〜S82は、図2に記載したS1〜S82にそれぞれ対応している。
【0025】
まず、CPU10が内蔵SRAM12へコマンドを格納する(S1、S2)。具体的には、CPU10がコマンド格納要求をPMU1に対して出力する(S1)と、PMU1は、当該コマンド格納要求を周辺マクロレジスタI/F回路11によりプロトコル変換し、プロトコル変換されたコマンドを内蔵SRAM12の所定領域に格納する(S2)。
【0026】
次に、CPU10は、PMU1に対して起動要求を発行する(S3)。PMU1は、当該起動要求を入力し、周辺マクロレジスタI/F回路11によりプロトコル変換し、プロトコル変換された起動要求をシーケンサ回路14に出力する(S3)。シーケンサ回路14は、ステートマシン141により起動要求に応じた処理を行うためにコマンド要求をSRAM制御・コマンドデコード回路13に対して出力する(S4)。SRAM制御・コマンドデコード回路13は、当該コマンド要求に応じて内蔵SRAM12より起動要求を受けた場合に処理すべきコマンドデータを読み出す(リードする)(S5)。SRAM制御・コマンドデコード回路13は、読み出されたコマンドデータを入力し、デコードした後、シーケンサ回路14に対して出力する(S6)。
【0027】
この例では、シーケンサ回路14は、コマンドデータに応じてロジック回路A30やロジック回路B40のレジスタ31、41に対して、内蔵SRAM12に予め用意された所定値を書き込む。当該レジスタ31、41に書き込む値には、クロック周波数を変更するための値、リセットするための値、モード変更するための値が含まれる。この処理を行うために、シーケンサ回路14は、周辺マクロレジスタI/F回路11に対してレジスタ31、41に所定値を書き込むための命令を発行し、出力する(S72)。周辺マクロレジスタI/F回路11は、発行された命令をI/Fバスプロトコルに変換し、各ロジック回路A30、B40に対して出力する(S82)。各ロジック回路A30、B40は、当該命令に応じて、それぞれレジスタ31、41に対して所定値を書き込む(ライトする)。
【0028】
次に、シーケンサ回路14は、CPU10、ロジック回路A30、B40等に対して電源IC200経由で電源オフ命令を出力する(S4、S5、S6、S71、S81)。具体的には、シーケンサ回路14のステートマシン141は、SRAM制御・コマンドデコード回路13に対して電源オフ命令を受けた場合に処理すべきコマンドを要求する(S4)。SRAM制御・コマンドデコード回路13は、当該コマンド要求に応じて、内蔵SRAM12から電源オフ命令を受けた場合に処理すべきコマンドを読み出し(S5)、シーケンサ回路14に対して出力する(S6)。シーケンサ回路14は、デコーダ142によりデコードし、そしてステートマシン141により当該電源オフ命令を受けた場合に処理すべきコマンドに応じて、命令を発行する(S71)。この場合の命令は、CPU10、ロジック回路A30、ロジック回路B40に対する電源オフ命令である。電源制御I/F回路15は、当該発行された命令をバスプロトコル変換し、電源IC200に出力する(S81)。
【0029】
電源IC200は、当該電源オフ命令を制御I/F205によってプロトコル変換し、CPU電源部202、ロジック回路A電源部201、ロジック回路B電源204に入力する。CPU電源部202、ロジック回路A電源部201、ロジック回路B電源204は、それぞれCPU10、ロジック回路A30、ロジック回路B40に対して電源を遮断処理する。CPU10等は、当該電源オフ命令に応じて電源が遮断され、電源オフ状態となる。
【0030】
その後、PMU1は、0Vに電源が安定するのを待機する。そして、PMU1は、外部割込信号が入力されるのをさらに待機する。
【0031】
続いて、図4に示すフローチャートを用いて、電源オンシーケンスについて説明する。図4のフローチャート中に記載したS4〜S82は、図2に記載したS4〜S82にそれぞれ対応している。
【0032】
CPU10の電源が遮断されオフ状態にあるとき、PMU1が外部割込信号を検出したものとする。PMU1では、シーケンサ回路14が直接この外部割込信号を検出する。シーケンサ回路14のステートマシン141は、外部割込信号の検出に応じて、SRAM制御・コマンドデコード回路13に対して外部割込信号を検出した場合に処理すべきコマンドを要求する(S4)。SRAM制御・コマンドデコード回路13は、内蔵SRAM12よりコマンド要求に応じたコマンドを読み出し(S5)、シーケンサ回路14に出力する(S6)。シーケンサ回路14は、コマンドが電源オン命令であることをデコーダ142により認識し、当該ステートマシン141によって、電源オン命令を発行する(S71)。電源制御I/F回路15は、発行された電源オン命令をパス通信プロトコルに変換し、電源IC200に対して出力する(S81)。電源IC200は、当該電源オン命令を制御I/F205によってプロトコル変換し、CPU電源部202、ロジック回路A電源部201、ロジック回路B電源204に入力する。CPU電源部202、ロジック回路A電源部201、ロジック回路B電源204は、それぞれCPU10、ロジック回路A30、ロジック回路B40に対して電源を供給する。このとき、PMU1は、動作を実行させる必要性がある領域のみ電源を供給する制御を行なう。これにより、動作を実行させない領域には電源が供給されないので省電力化を図ることができる。
【0033】
CPU10は、図4のフローチャートに示されるように、電源オン状態となる。この例では、CPU10に対して1.2Vの電源が印加されるが、PMU1のシーケンサ回路14は、電源が1.2Vに安定するのを待機する。そして、所定時間が経過し、電源が1.2Vに安定すると、シーケンサ回路14のステートマシン141は、ロジック回路A30のレジスタ31、ロジック回路B40のレジスタ41に対して初期値を書き込む。
【0034】
具体的には、シーケンサ回路14のステートマシン141は、電源が1.2Vに安定したのを認識したことに応じて、SRAM制御・コマンドデコード回路13に対してコマンドを要求する(S4)。
【0035】
SRAM制御・コマンドデコード回路13は、コマンド要求に応じて、内蔵SRAM12よりコマンドデータをリードし、デコードし、シーケンサ回路14に対して出力する。シーケンサ回路14は、デコーダ142によって、入力されたコマンドをデコードし、命令を発行する(S72)。ここでは、ロジック回路A30のレジスタ31やロジック回路B40のレジスタ41に対して初期値を書き込むコマンドが発行される。このコマンドには、初期値データも含まれる。周辺マクロレジスタI/F回路11は、当該コマンドをバス通信プロトコルに変換し、ロジック回路A30やロジック回路B40に対して出力する。ロジック回路A30やロジック回路B40では、入力されたコマンドに応じて、それぞれレジスタ31、レジスタ41に対して初期値を書き込む。従来、ロジック回路A30のレジスタ31、ロジック回路B40のレジスタ41に対する初期値の設定は、CPU10によって実行していたが、このようにPMU1が実行すれば、CPU10に対して電源が供給される前段階でも初期値を設定できる。このため、システムの再スタートのための処理時間を短縮することができる。
【0036】
また、PMU1は、常時電源オン領域20に設けられたリセット生成回路(図示せず)を介してCPU10に対してリセットを解除する。CPU10はこれに応じて、リジューム処理を開始する。従って、CPU10に対して電源供給を開始した状態、即ちパワーオンシーケンスにおいて、CPU10とPMU1の双方にて種々の処理を並行して実行できるため、システムの再スタートに要する時間を短縮化できる。例えば、20〜30秒要していた時間を、1ミリ秒程度に高速化できる。例えば、本発明の実施の形態1にかかる半導体集積回路が携帯電話機に内蔵されている場合を想定する。携帯電話機に着信があった場合には、PMU1は、DSP(Digital Signal Processor)マクロ等の、音声機能に関連するマクロに対して電源を供給するよう電源IC200を制御することにより、CPU10のリジューム処理を待つことなく、初期設定及び動作開始命令を行なうことができる。
【0037】
さらに、PMU1は、クロック生成回路2に対してクロック周波数の変更命令を発行するようにしてもよい。例えば、PMU1は、CPU10に対して供給するクロック周波数を比較的低い周波数から高い周波数(例えば、200MHz)に変更する命令を、当該クロック生成回路2に対して発行する。クロック生成回路2は、当該命令に応じて高い周波数のクロックを生成し、CPU10に対して供給する。特にクロック生成回路2は、周波数を変更してから安定するまで、例えば500マイクロ秒必要であるため、PMU1により周波数を変更しておくことは、システムの再スタートに要する時間を短縮する上で効果的である。尚、クロック生成回路2は、常時電源オン領域20に設けられており、電源が供給された状態にあるが、CPU10等にクロックを供給する必要がない場合には、発振回路は停止状態にある。
【0038】
以上、説明したように、本発明の実施の形態1にかかるPMU1は、プログラマブルであり、RAM1bに格納するコマンドを変更することにより、様々な電源オンオフシーケンスを実行することができ、さらに電源分割数が多くなっても対応可能である。さらに、PMU1は、コマンド制御のため機能拡張や変更が容易である。
【0039】
また、PMU1は、CPU10に対して電源が供給されていない状態でも、各周辺マクロに対して命令を発行することができるので、CPU10に対して電源が供給された後に、当該CPU10がリジューム処理している間、またはリジューム処理前に各種の命令を実行することができるため、システムの再スタートに要する時間を短縮化できる。
【0040】
さらに、PMU1は、電源制御に特化したプログラマブルシーケンサであり、演算回路を有しないため、演算回路を有するプロセッサと比較して回路規模が非常に小さく、低消費電力化を図ることが可能となる。
【0041】
発明の実施の形態2.
図5を用いて、本発明の実施の形態2にかかる電源制御技術について説明する。本発明の実施の形態2では、LSI100の内部に設けられた各マクロに対応して電源スイッチ3a、3b、3c、3d、3eを備え、当該電源スイッチ3a〜3eをPMU1によってオンオフ制御できる構成としている。
【0042】
より具体的には、電源スイッチ3a〜3eは、電源IC200から常時電源が供給される配線を分岐してCPU10、ロジック回路A30、B40、C50、D60のそれぞれと接続する分岐配線上に設けられている。そして、電源IC200のLSI電源部207から、電源スイッチ3aを介してCPU10に電源が供給され、同様に電源スイッチ3bを介してロジック回路A30、電源スイッチ3cを介してロジック回路B40、電源スイッチ3dを介してロジック回路C50、電源スイッチ3eを介してロジック回路D60にそれぞれ電源が供給されている。電源スイッチ3a、3b、3c、3d、3eは、常時電源オン領域20に設けられており、PMU1によってオンオフ制御される。従って、PMU1によって、LSI100の各マクロに対する電源制御を電源IC200を介することなく実行できるため、LSI100の外部に設けられた電源IC200の電源数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明にかかる半導体集積回路のブロック図である。
【図2】本発明にかかる半導体集積回路におけるPMUマクロの内部ブロック図である。
【図3】本発明にかかる半導体集積回路における電源オフシーケンスを示すフローチャートである。
【図4】本発明にかかる半導体集積回路における電源オンシーケンスを示すフローチャートである。
【図5】本発明にかかる半導体集積回路のブロック図である。
【図6】従来の半導体集積回路のブロック図である。
【符号の説明】
【0044】
1 PMU 2 クロック生成回路
3 電源スイッチ 10 CPU
12 SRAM 14 シーケンサ回路
20 常時電源オン領域 21 制御回路
30 ロジック回路A 40 ロジック回路B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算回路を備えたプロセッサと、前記プロセッサの電源制御を電源供給部を介して実行するパワーマネージメントユニットとを備えた半導体集積回路であって、
前記パワーマネージメントユニットは、演算回路を有さず、
複数のコマンドを格納するメモリと、前記メモリに格納されたコマンドに基づいて前記プロセッサの電源制御を実行する制御部とを備えた半導体集積回路装置。
【請求項2】
前記パワーマネージメントユニットは、前記電源供給部より常時電源が供給される常時電源オン領域に設けられていることを特徴とする請求項1記載の半導体集積回路装置。
【請求項3】
前記パワーマネージメントユニットの制御部は、ステートマシン及びデコーダを有するシーケンサ回路を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体集積回路装置。
【請求項4】
前記半導体集積回路装置は、さらにロジック回路を備え、
前記パワーマネージメントユニットは、前記プロセッサに対して前記電源供給部を介して電源を供給する場合に、さらに当該ロジック回路に対しても電源供給部を介して電源を供給することを特徴とする請求項1、2又は3記載の半導体集積回路装置。
【請求項5】
前記半導体集積回路装置は、さらにレジスタを有するロジック回路を備え、
前記パワーマネージメントユニットは、前記プロセッサに対して前記電源供給部を介して電源を供給する場合に、前記ロジック回路のレジスタに予め定められた値を書き込む処理を実行することを特徴とする請求項1、2又は3記載の半導体集積回路装置。
【請求項6】
前記半導体集積回路装置は、さらに前記プロセッサに対してクロックを供給するクロック生成回路を備え、
前記パワーマネージメントユニットは、前記プロセッサに対して前記電源供給部を介して電源を供給する場合に、前記クロック生成回路を制御し、前記プロセッサに対して所定のクロックを供給することを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の半導体集積回路装置。
【請求項7】
前記半導体集積回路装置は、ロジック回路と、電源供給部から常時電源が供給される配線を分岐して前記プロセッサ及び前記ロジック回路のそれぞれと接続する分岐配線上に設けられた複数の電源スイッチとをさらに備え、
前記パワーマネージメントユニットは、前記電源スイッチのオンオフを制御することを特徴とする請求項1記載の半導体集積回路装置。
【請求項8】
前記パワーマネージメントユニット及び前記電源スイッチは、ともに前記電源供給部より常時電源が供給される常時電源オン領域に設けられていることを特徴とする請求項7記載の半導体集積回路装置。
【請求項9】
演算回路を備えたプロセッサと、前記プロセッサの電源制御を電源供給部を介して実行する、演算回路を有しないプログラマブルシーケンサとを備えた半導体集積回路装置であって、
前記プログラマブルシーケンサは、前記プロセッサに対して前記電源供給部を介して電源を供給するときに、並行して、当該半導体集積回路装置の他の回路に対する初期化処理を実行する半導体集積回路装置。
【請求項10】
前記初期化処理は、前記半導体集積回路装置の他の回路に含まれるレジスタに対する初期値の書き込みであることを特徴とする請求項9記載の半導体集積回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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