説明

半導体電子スピン操作方法および装置

【課題】簡単な構成で、電子や正孔のスピンの向きを制御できるようにする。
【解決手段】半導体より構成されたキャリアを閉じ込める閉じ込め部101、および閉じ込め部101よりエネルギーギャップの大きい材料から構成された障壁部102から構成された閉じ込め構造103を備える。また、閉じ込め構造103に、障壁部102を構成する材料のエネルギーギャップより大きなエネルギーの光を照射する第1光照射部104と、閉じ込め構造103に、閉じ込め部101を構成する半導体のエネルギーギャップより大きく、障壁部102を構成する材料のエネルギーギャップより小さなエネルギーで、右回りおよび左回りの中より選択された円偏光の光を照射する第2光照射部105とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体中に生成された電子のスピンを操作する半導体電子スピン操作方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子スピンは、上向きおよび下向きの状態があることが知られている。このスピンは、量子として振る舞うため、上向きと下向きの状態の組み合わせである中間状態をとることも可能である(非特許文献1参照)。従って、電子スピンは、量子ビットの基本的な要請を満たしており、電子スピンを基本的な要素として計算機を構成することが可能となる(非特許文献2参照)。このような電子スピンを用いた計算機は、電子スピン量子コンピュータと呼ばれている。
【0003】
量子ビットの基本要請には、先に延べたような中間状態がとれることに加え、その状態を自在に制御可能なこと(回転操作)、初期化が実施可能なこと、が含まれる。電子スピンの向きは、通常ではランダムであり、初期化操作を行って上向きか下向きに揃える必要がある。この初期化について、半導体量子ドット構造を用いた実験結果が報告されている。
【0004】
初期化の1つとして、量子ドット構造に電子注入用の電極を設け、かつ外部から磁場を印加する方法がある(非特許文献3参照)。この手法では、注入した電子の初期化が可能であり、ほぼ100%の初期化が実現されているが、初期化のメカニズム上、素子に電極を設けること、および外部の磁場が必須である。
【0005】
他の初期化として、電極を用いず、量子ドット構造に電子をドーピングした試料を用い、強磁場下で実験を行った報告がある(非特許文献4参照)。この手法では、90%以上の初期化が実現されているが、初期化対象の電子密度の制御が非常に困難で、かつ外部の強磁場なしでは、初期化は実現できない。
【0006】
強磁場があると、電子状態は、スピンの向きによって異なるエネルギーとなることが知られている。これをゼーマン分離と呼ぶ。この状態で、量子コンピュータに必要な回転操作を行うと、エネルギーの低い状態に緩和する過程が発生する(図18参照)。この緩和は、ランダム過程であるため、量子ビットが意図した動きから外れる可能性がある。
【0007】
このゼーマン分離に加えて、外部磁場は、半導体を構成する原子の核スピンが0でないものを分極させる効果がある。これは、磁場として作用して電子スピン状態を変化させてしまう効果で、オーバーハウザー効果(Overhauser effect)と呼ばれている(非特許文献5参照)。オーバーハウザー効果は、スピン状態を変化させ、かつ、その効果を制御することが非常に困難なため、意図しない量子ビットの動きにつながり、量子コンピュータの性能を低下させてしまう。
【0008】
また、非特許文献1の技術で使われる電極は、試料の構成を複雑にするという欠点がある。また非特許文献2の技術で使われるドーピング法では、試料によって電子濃度が決まってしまい、試料を作製した後にその濃度を制御することが不可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】小出昭一郎 著、「量子力学」(改訂版)、裳華房、1990。
【非特許文献2】ゲナディ・P・ベルマン 他、松田和典 訳、「入門量子コンピュータ」、パーソナルメディア、2002。
【非特許文献3】M. Atature, et al. , "Quantum-Dot Spin-State Preparation with Near-Unity Fidelity", SCIENCE, vol.312, pp.551-553, 2006.
【非特許文献4】D.Press1, et al. ,"Complete quantum control of a single quantum dot spin using ultrafast optical pulses", Nature, Vol.456, pp.218-221, 2008.
【非特許文献5】S. W. Brown, et al. ,"Spectrally resolved オーバーハウザー shifts in single GaAs/AlxGa12xAs quantum dots",PHYSICAL REVIEW B, vol.54, no.24, pp.R17 339-R17 342, 1996.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上に説明したように、上述した技術では、簡単な構成で、電子や正孔のスピンの向きを制御することが容易ではないという問題があった。
【0011】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、簡単な構成で、電子や正孔のスピンの向きを制御できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る半導体電子スピン操作方法は、半導体より構成されたキャリアを閉じ込める閉じ込め部、およびこの閉じ込め部よりエネルギーギャップの大きい材料から構成された障壁部から構成された閉じ込め構造に、障壁部を構成する材料のエネルギーギャップより大きなエネルギーの第1光を照射するステップと、閉じ込め構造に、半導体のエネルギーギャップより大きく障壁部を構成する材料のエネルギーギャップより小さなエネルギーで、右回りおよび左回りの中より選択された円偏光の第2光を照射するステップとを少なくとも備える。
【0013】
上記半導体電子スピン操作方法において、閉じ込め構造は、量子ドット構造、量子井戸構造,量子細線構造の中より選択されたものであればよい。また、第2光の波長は、閉じ込め部に生成される荷電励起子のエネルギーに対応する波長に共鳴するものであるとよい。また、半導体および障壁部を構成する材料は、これらを構成する原子が核スピンを持たないものであるとよい。
【0014】
本発明に係る半導体電子スピン操作装置は、半導体より構成されたキャリアを閉じ込める閉じ込め部、およびこの閉じ込め部よりエネルギーギャップの大きい材料から構成された障壁部から構成された閉じ込め構造と、この閉じ込め構造に、障壁部を構成する材料のエネルギーギャップより大きなエネルギーの第1光を照射する第1光照射手段と、閉じ込め構造に、半導体のエネルギーギャップより大きく障壁部を構成する材料のエネルギーギャップより小さなエネルギーで、右回りおよび左回りの中より選択された円偏光の第2光を照射する第2光照射手段とを少なくとも備える。
【0015】
上記半導体電子スピン操作装置において、閉じ込め構造は、量子ドット構造、量子井戸構造,量子細線構造の中より選択されたものであればよい。また、第2光の波長は、閉じ込め部に生成される荷電励起子のエネルギーに対応する波長に共鳴するものであるとよい。また、第1光照射手段および第2光照射手段は、レーザより構成されていればよい。また、半導体および障壁部を構成する材料は、これらを構成する原子が核スピンを持たないものであるとよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、閉じ込め構造に、障壁部を構成する材料のエネルギーギャップより大きなエネルギーの第1光を照射し、また、閉じ込め部を構成する半導体のエネルギーギャップより大きく障壁部を構成する材料のエネルギーギャップより小さなエネルギーで、右回りおよび左回りの中より選択された円偏光の第2光を照射するようにしたので、簡単な構成で、電子や正孔のスピンの向きを制御できるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施の形態における半導体電子スピン操作装置の構成を示す構成図である。
【図2】図2は、AlGaAsからなる障壁層201と、GaAsからなる井戸層202とAlGaAsからなる障壁層203が積層された量子井戸構造のエネルギーバンド構造を示すバンド図である。
【図3】図3は、井戸層に閉じ込められた電子と正孔の、井戸層に入射する光に対する応答特性を示した説明図である。
【図4】図4は、励起子の生成を説明するための説明図である。
【図5】図5は、荷電励起子の生成を説明するための説明図である。
【図6】図6は、電子および荷電励起子のエネルギーを用いた荷電励起子の生成を説明するための説明図である。
【図7】図7は、電子スピンの初期化を説明するための説明図である。
【図8】図8は、スピンの初期化のプロセスを説明する説明図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態における半導体電子スピン操作方法を説明するための説明図である。
【図10】図10は、励起子および荷電励起子の生成を説明するための説明図である。
【図11A】図11Aは、量子ドット構造より得られたフォトルミネッセンスの強度変化を示す特性図である。
【図11B】図11Bは、量子ドット構造より得られたフォトルミネッセンスの強度変化を示す特性図である。
【図12】図12は、原子核のスピンの状態を説明するための説明図である。
【図13】図13は、本発明の実施例1における半導体電子スピン操作装置の構成を示す構成図である。
【図14】図14は、照射する光の波長について説明するための説明図である。
【図15】図15は、本発明の実施例1における他の半導体電子スピン操作装置の構成を示す構成図である。
【図16】図16は、本発明の実施例2における半導体電子スピン操作装置の構成を示す構成図である。
【図17】図17は、本発明の実施例3における半導体電子スピン操作装置の構成を示す構成図である。
【図18】図18は、ゼーマン分離によるエネルギーの低い状態に緩和する過程を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における半導体電子スピン操作装置の構成を示す構成図である。この半導体電子スピン操作装置は、まず、半導体より構成されたキャリアを閉じ込める閉じ込め部101、および閉じ込め部101よりエネルギーギャップの大きい材料から構成された障壁部102から構成された閉じ込め構造103を備える。
【0019】
また、半導体電子スピン操作装置は、障壁部102を構成する材料のエネルギーギャップより大きなエネルギーの光を、閉じ込め構造103に照射する第1光照射部104と、閉じ込め部101を構成する半導体のエネルギーギャップより大きく、障壁部102を構成する材料のエネルギーギャップより小さなエネルギーで、右回りおよび左回りの中より選択された円偏光の光を、閉じ込め構造103に照射する第2光照射部105とを少なくとも備える。
【0020】
閉じ込め構造103は、例えば、閉じ込め部101としての量子ドットおよび障壁部102としての障壁層から構成された量子ドット構造であればよい。また、閉じ込め構造103は、例えば、閉じ込め部101としての量子井戸および障壁部102としての障壁層から構成された量子井戸構造であればよい。閉じ込め構造103は、例えば、閉じ込め部101としての量子細線、および障壁部102としての障壁層から構成された量子細線構造であってもよい。例えば、閉じ込め構造103は、GaAsからなる量子ドットとAlGaAsからなる障壁層とからなる量子ドット構造や、GaAsからなる量子井戸とAlGaAsからなる障壁層とからなる量子井戸構造であればよい。なお、よく知られているように、閉じ込め部は、量子閉じ込め効果が発現する範囲の寸法に形成されていればよい。
【0021】
上述した本実施の形態における半導体電子スピン操作装置では、まず、第1光照射部104により、閉じ込め部101および障壁部102から構成された閉じ込め構造103に、障壁部102を構成する材料のエネルギーギャップより大きなエネルギーの第1光を照射し、次に、第2光照射部105により、閉じ込め構造103に、閉じ込め部101を構成する半導体のエネルギーギャップより大きく、障壁部102の材料のエネルギーギャップより小さなエネルギーで、右回りおよび左回りの中より選択された円偏光の第2光を照射することで、キャリアのスピンの向きを制御する。第1光の照射により、閉じ込め構造103の閉じ込め部101に電子が生成され、生成された電子や正孔などのキャリアのスピンの向きが、第2光照射部105による第2光の照射により制御できる。
【0022】
以下、本実施の形態における半導体電子スピン操作について、より詳細に説明する。以下では、井戸層をGaAsから構成し、障壁層をAlGaAsから構成した量子井戸構造を例に説明する。図2は、AlGaAsからなる障壁層201と、GaAsからなる井戸層202とAlGaAsからなる障壁層203が積層された量子井戸構造のエネルギーバンド構造を示すバンド図である。
【0023】
障壁層201を構成するAlGaAsのエネルギーギャップより大きなエネルギーの光を照射すると、電子および正孔が生成されるが、AlGaAsよりGaAsの方がバンドギャップが小さいため、図2に示すように、電子は井戸層202の伝導帯に閉じ込められ、電子の抜け穴である正孔は、井戸層202の価電子帯に閉じ込められる。
【0024】
また、図3は、井戸層に閉じ込められた電子と正孔の、井戸層に入射する光に対する応答特性を示した説明図である。半導体(GaAs)のバンド構造の特性から、井戸層に入射する円偏光の光の偏光方向によって、上向きと下向きのスピンを生成することが可能である。ここで、円偏光は、GaAsのエネルギーギャップより大きく、AlGaAsのエネルギーギャップより小さなエネルギーに対応する波長の光である。
【0025】
例えば、図3(a)に示すように、価電子帯に上向きスピンの電子301がある状態で、右回り円偏光の光311を井戸層に照射すると、この光が吸収され、図3(b)に示すように、伝導帯に上向きスピンの電子302が生成され、価電子帯に下向きスピンの正孔303が生成される。
【0026】
一方、図3(c)に示すように、価電子帯に下向きスピンの電子304がある状態で、左回りの円偏光の光312を井戸層に照射すると、この光が吸収され、図3(d)に示すように、伝導帯に下向きスピンの電子305が生成され、価電子帯に上向きスピンの正孔306が生成される。
【0027】
これらのように、価電子帯の下向きスピンの電子は、右回り円偏光には応答せず、左回り円偏光を照射した場合のみ伝導帯に移動する。
【0028】
以上のように円偏光の光の入射により、井戸層の伝導帯に電子が生成し、また、価電子帯に正孔が生成されると、これらは各々マイナスとプラスの電荷を持つため、両者の間に引力が発生する。図4に示すように、井戸層202に生成した電子211および正孔212の間には引力401が発生し、発生した引力401により電子211および正孔212が束縛されて励起子402と呼ばれる粒子を形成するようになる。
【0029】
励起子402は、電子211および正孔212から構成されており、上述した束縛の結果、再結合して光を放出する。また、この再結合の際に放出される光(円偏光)の偏光方向は、図3に示したように、電子および正孔のスピンによって決定される。まず、上向きスピンの電子と下向きスピンの正孔とによって形成された励起子は、再結合により右回りの円偏光の光を放出する。一方、下向きスピンの電子と上向きスピンの正孔によって形成された励起子は、再結合により左回りの円偏光の光を放出する。
【0030】
次に、荷電励起子について述べる。例えば、図5の(a)に示すように、井戸層202の伝導帯に上向きスピンの電子501が閉じ込められている状態の量子井戸構造に、左回り円偏光の光511を照射すると、光が吸収されて価電子帯の下向きスピンの電子502が伝導帯に遷移し、図5の(b)に示すように、伝導帯に下向きスピンの電子503が生成され、価電子帯には上向きスピンの正孔504が生成される。
【0031】
これに対し、右回り円偏光の光を照射しても、伝導帯にすでに上向きスピンの電子501が存在するため、価電子帯の上向きスピンの電子を伝導帯に遷移させるような光の吸収はなく、何も起こらない。これは、同じエネルギー状態に同じスピンの電子が存在することができないという量子力学の基本的な要請による。図5の(b)では、2個の電子と1個の正孔が存在している状態を示しているが、これらは励起子と同様にお互いに束縛し、荷電励起子を形成する。図5の(b)に示す例では、2つの電子と1つの正孔とが束縛されたマイナスに帯電した荷電励起子の状態を示している。
【0032】
上述では、量子井戸構造(井戸層202)のバンドを基準にして記述しているが、図6に示すように、電子および荷電励起子のエネルギーを用いて記述することもできる。図6の(a)および(b)の下側(基底状態)に示す2つの状態601および状態602が、伝導帯にあらかじめ電子が存在している状態に相当する。また、図6の(a)および(b)の上側(励起状態)には、正孔のスピン方向が各々異なる2つの荷電励起子603および荷電励起子604を示している。
【0033】
図6を用いることで、図5を用いた上記説明と同様に、円偏光の偏光方向を用いて生成される荷電励起子の状態の制御が説明できる。図6を用いた説明では、例えば、図6の(a)に示すように、右回り円偏光の光611を照射すると、正孔のスピンが下向きの荷電励起子603が生成される。荷電励起子603が1つの電子に戻る場合は、光(円偏光)が放出されるが、この偏光の向きも右回りである。また、図6の(b)に示すように、左回りの円偏光の光612を照射すると、正孔のスピンが上向きの荷電励起子604が生成される。荷電励起子604が電子に戻る場合も、光が放出されるが、この偏光の向きは左回りである。
【0034】
次に、スピンの初期化について説明する。上述した荷電励起子を用いることで、以下に示すようにスピンの初期化が可能となる。まず、図7はスピンの初期化そのものを説明した説明図である。通常、電子のスピンの向きは決まっておらず、図7の(a)に示すように、スピンが上向きの場合とスピンが下向きの場合の確率は、両方とも0.5である。これを、いずれかの向きの確率が1とされているのが初期化された状態であり、なんらかの手法を用いてこのような偏った状態を形成するのがスピン初期化である。図7の(b)に示す例では、上向きスピンに初期化されている。
【0035】
図8は、スピンの初期化のプロセスを説明する説明図である。まず、図8(b)に示すように、上向きスピンの電子804が存在している状態に、左回り円偏光の励起光(第2光)813を入射させると、上向きスピンの電子804が応答し、正孔のスピンが上向きの荷電励起子803が生成される。この状態で、一部の荷電励起子803は、左回り偏光の円偏光812を放出(発光)して電子804に戻る。また、他の一部の荷電励起子803は、緩和時間τHighのスピン緩和Hを経て、荷電励起子801に遷移する。なお、左回り偏光の円偏光812の放出により戻った電子804は、励起光813の照射によりこれを吸収し、荷電励起子803の状態に遷移する。
【0036】
励起光813の照射により荷電励起子803に遷移し、スピン緩和Hによって生成された荷電励起子801は、この一部が右回りの偏光の円偏光811を放出(発光)し、下向きスピンの電子802に遷移する。ここで、スピン緩和Lの緩和時間τLowが十分に遅ければ、下向きスピンの電子802の状態が保持される。荷電励起子801は、スピン緩和Hによって荷電励起子803に戻る可能性があり、この先に、円偏光812を放出して電子804に戻る可能性がある。しかし、励起光813が入射されていれば、存在する電子804は直ちに荷電励起子803に遷移し、スピン緩和Hを経て一部が電子802になる。
【0037】
従って、スピン緩和Lの緩和時間τLowが、入射する円偏光813によって荷電励起子803が生成される時間より十分に長ければ、電子802の状態が徐々に増加し、電子802の状態(電子が下向きのスピン)に揃ったスピン初期化が実現できる。なお、以上では、入射する円偏光の向きは、左回りとして説明したが、右回りでも同様である。右回り円偏光の光を入射させると、正孔が上向きのスピンの荷電励起子が生成され、これがスピン緩和Hを経て、上向きのスピンの電子が生成されるようになり、初期化された電子のスピンは上向きになる。
【0038】
ここで、上述したスピン初期化を理想的にするためには、励起光のエネルギーを荷電励起子のエネルギーと共鳴するようにすることが望ましい。共鳴しない場合でも初期化は可能であるが、共鳴する場合よりは特性は低下する。
【0039】
次に、荷電励起子を生成するもととなる電子の生成について説明する。
【0040】
まず、電子は、閉じ込め構造を構成している障壁部を構成する材料のエネルギーギャップより大きなエネルギーの光を照射することで生成する。例えば、AlGaAsからなる障壁層とGaAsからなる量子井戸層とで構成した量子井戸層の場合、波長532nmのレーザ光を照射すればよい。
【0041】
例えば、図9の(a)に示すように、AlGaAsからなる障壁層901および障壁層903に、GaAsからなる量子井戸層902が挟まれた量子井戸構造では、量子井戸層902が表面(障壁層903の表面)の近くに存在すると、表面状態の影響を受けることによりバンドに電界が存在し、バンドが傾斜する。この状態で、波長532nmのレーザ光(グリーンレーザ)911を量子井戸構造に照射すると、障壁層903,障壁層901,および量子井戸層902に電子および正孔が生成され、傾いたバンドの影響により、図9の(b)に示すように、各々逆向きにドリフトする。
【0042】
上述したようにグリーンレーザ911の照射により発生した電子および正孔の一部は、図9の(b)に示すように、量子井戸層902に束縛される可能性がある。図9の(b)において、点線で囲われた電子904および正孔905が、量子井戸層902に束縛されている。このように束縛された電子904および正孔905は、バンドが傾斜しているため、各々逆向きにトンネリングする確率が生じる。例えば、図9の(c)に示すように、量子井戸層902に束縛されていた1つの正孔906が、障壁層903へトンネリングする。このトンネリングの確率は、障壁層903(障壁層901)のポテンシャル障壁高さと厚さに強く依存し、障壁が低く、厚さが薄いほど確率が大きくなる。
【0043】
図9の(b)に示すように、伝導帯のバンドオフセット(ΔEc)と価電子帯のバンドオフセット(ΔEv)とは、異なることが知られており、GaAs/AlGaAsからなる量子井戸構造では、ΔEc:ΔEvは、7:3である。このため、電子より正孔の方がトンネリングする確率が大きくなり、GaAsからなる量子井戸層902には、電子のみが残る確率が大きくなる。
【0044】
ここで、グリーンレーザ911の照射により最初に生成される電子および正孔濃度は、照射されるグリーンレーザ911の強度に依存し、この強度を調整すれば、量子井戸層902に電子のみ残るようにすることも可能である。この量子井戸層902に電子のみが残るようにした状態で、図9の(d)に示すように、波長720nmのレーザ光(レッドレーザ)912を量子井戸構造に照射すると、この波長では、量子井戸層902内にのみ電子および正孔が生成される。レッドレーザ912は、量子井戸層902を構成するGaAsのエネルギーギャップより大きく、障壁層901(障壁層903)を構成するAlGaAsのエネルギーギャップより小さなエネルギーの光である。この結果、図9の(e)に示すように、電子および正孔による励起子907が形成されるようになる。
【0045】
レッドレーザ912の照射により量子井戸層902内に生成された電子および正孔は、グリーンレーザ911の照射により生成した電子および正孔と同様に、トンネリングする可能性がある。しかし、レッドレーザ912の照射では、生成された直後のエネルギーが小さいため、電子および正孔は量子井戸層902内に強く閉じ込められ、電子および正孔ともにトンネリングする確率そのものが著しく低く、励起子907として存在するようになる。
【0046】
ここで、量子井戸層902内には、グリーンレーザ911の照射によって生成された電子も存在するので、上述したようにレッドレーザ912の照射により生成された励起子907と束縛状態を形成し、荷電励起子908が生成される。荷電励起子908が生成されると、図8を用いて説明したように初期化が実行可能である。例えば、円偏光としたレッドレーザ912の偏光を、左回りとすると、下向きスピンの電子を増加させることが可能になる。
【0047】
以上では、量子井戸構造を用いて説明したが、荷電励起子を生成するためには、電子が生成される場所と、励起子が生成される場所とを一致させることが重要となる。量子井戸構造の場合、電子や励起子の大きさが、照射する光(レーザ)のスポットサイズより著しく小さい。このため、図10の(a)に示すように、量子井戸構造1001にグリーンレーザ1002およびレッドレーザ1003を照射したとき、これらの照射が重なる領域1004に、電子と励起子とが存在するとは限らない。
【0048】
一方、図10の(b)に示すように、量子ドット構造1011の場合、量子ドットにグリーンレーザ1012およびレッドレーザ1013を照射する。このため、これらの照射が重なる領域1014に、電子および励起子が生成されることになり、電子および励起子が生成される場所が一致し、効率的に荷電励起子が生成できる。
【0049】
図11Aおよび図11Bは、GaAs/AlGaAsの量子ドット構造に、波長532nmのグリーンレーザと、波長710nmの円偏光のレッドレーザを照射したときに、観測(測定)されたフォトルミネッセンス(PL)の強度(Intensity)を示す特性図である。量子ドットは、層厚2.8nm、平面視15nm角の矩形としている。図11Aは、レッドレーザを照射したときの結果を示し、図11Bは、レッドレーザおよびグリーンレーザを照射したときの結果を示している。測定されるフォトルミネッセンスは、励起子および荷電励起子から放出されるものである。また、実線が、右回りの円偏光のレッドレーザ照射の結果であり、点線が、左回りの円偏光のレッドレーザ照射の結果を示している。
【0050】
図11Aに示すように、レッドレーザの照射では、励起子からのフォトルミネッセンスが見られる。これに対し、図11Bに示すように、グリーンレーザおよびレッドレーザを照射した場合は、荷電励起子からの発光(フォトルミネッセンス)が見られる。また、励起子のフォトルミネッセンスのエネルギーと荷電励起子のフォトルミネッセンスのエネルギーとの間に差が見られる。これは、荷電励起子は、励起子に電子が1個加わった状態であり、励起子より安定に存在することを反映している。
【0051】
また、図11Bに示すように、荷電励起子からの発光が見られる場合、右回りの円偏光のレッドレーザ照射と、左回りの円偏光のレッドレーザ照射とで、荷電励起子からの発光強度の差が大きい。この比は、おおよそ1:3程度であり、図8の説明を参照すると、荷電励起子801と荷電励起子803と発光強度の比が、1:3程度であることを意味する。
【0052】
発光過程は、発光後の状態に移ることが可能なことが前提であるため、荷電励起子803が移る電子804と、荷電励起子801が移る電子802との比が、1:3であることが分かる。電子804と電子802の存在確率は、グリーンレーザを照射したのみでは、1:1である。これに対し、左回り円偏光のレッドレーザを照射したことにより、電子804と電子802との存在確率は1:3に変化し、スピン初期化が実現できたことが分かる。
【0053】
ところで、半導体は、上記GaAsを始め、InP,Siなどがあり、各々の原子の原子核のスピンが0でないものがある。図12の(a)に示すように、原子核のスピン(核スピン1201)が0でないと、図12の(b)に示すように、初期化された電子スピン1202によって核スピン1201の方向が揃い、磁場1203が発生してしまう。この状態になると、図18を用いて説明したように、初期化されたスピンが緩和してしまう可能性がある。
【0054】
材料(半導体)の持つ核スピンの値は、材料を構成する原子の原子番号と質量数によって決定され、GaとAsは3/2、Inは9/2などの値を持つ。ただし、原子番号と質量数が両方とも偶数のものはスピンが0である。ここで、Siから閉じ込め層を構成しSiO2から量子ドットを構成した量子ドット構造で、上述したスピン初期化を実行すると、初期化の状態が、GaAs/AlGaAsで構成した量子ドット構造より長い時間保持されることが確認されている。なお、Siを用いる場合、価電子帯のバンドオフセットの方が伝導帯より大きくなるため、正孔のスピンが制御されるようになる。
【0055】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、磁場を与える構成(外部磁場)や電極などを設けることなく、簡単な構成で、電子や正孔のスピンの向きを制御できるようになる。
【0056】
以下、実施例を用いてより詳細に説明する。
【0057】
[実施例1]
はじめに、実施例1について説明する。図13は、実施例1における半導体電子スピン操作装置の構成を示す構成図である。この半導体電子スピン操作装置は、GaAsからなる量子ドット1301と、量子ドット1301の周囲に配置されたAl0.3Ga0.7Asからなる障壁層1302とから構成された量子ドット構造1303を備える。量子ドット1301は、層厚2.8nm、平面視15nm角の直方体である。なお障壁層1302を構成するAlGaAsのAl組成を増加させると、量子ドット1301中に電子および励起子をより強く閉じ込めることができるが、半導体の品質(結晶性)が低下する。一方、Al組成を低下させると、結晶性は向上するが、量子ドット1301における電子および励起子の閉じ込め効果が弱くなる。
【0058】
また、この半導体電子スピン操作装置は、レーザ発振装置(第1光照射部)1311を備える。レーザ発振装置1311は、波長532nmのレーザ光を出射し、量子ドット構造1303に照射する。レーザ発振装置1311は、例えば、波長1064nmで発振する半導体レーザにYVO結晶が組み合わされ、YVO結晶により1064nmの2倍波を発生することで、波長532nmのレーザ光を出射する。
【0059】
また、この半導体電子スピン操作装置は、レーザ発振装置1312aと、レーザ発振装置1312aより照射されるレーザ光の偏光を制御する偏光調整器1312bと有する光照射部(第2光照射部)1312を備える。レーザ発振装置1312aは、よく知られた「Ti−Sapphire」レーザより構成され、出射するレーザ光の波長が、710〜900nmの範囲で可変可能とされている。また、偏光調整器1312bは、いわゆる1/4波長板から構成されたものであり、レーザ発振装置1312aより出射されるレーザ光の偏光を、円偏光に変更する。レーザ発振装置1312aおよび偏光調整器1312bにより円偏光の光を照射する光照射部(第2光照射部)1312が構成されている。
【0060】
本実施例において、まず、レーザ発振装置1311より出射したレーザ光を、量子ドット構造1303(量子ドット1301)に照射することで、量子ドット1301に電子および正孔を生成させることができる。ここで、前述したように、正孔は、障壁層1302をトンネリングし、量子ドット1301に電子が残る。この状態で、レーザ発振装置1312aからのレーザ光を偏光調整器1312bを透過させて円偏光として量子ドット1301に照射すれば、荷電励起子が生成される。このとき、偏光調整器1312bにより、例えば、左回りの円偏光としたレーザ光を照射すれば、図8を用いて説明したように、量子ドット1301に下向きスピンの電子を生成させることができる。加えて、この状態を継続すれば、量子ドット1301における電子のスピンの向きを下向きに揃える(初期化する)ことができる。
【0061】
本実施例によれば、レーザ発振装置1312aより出射するレーザ光の波長を728nmとすると、下向きスピンの電子と上向きスピンの電子との比が3:1となる初期化ができる。また、レーザ発振装置1312aより出射するレーザ光の波長を730nmとすると、下向きスピンの電子と上向きスピンの電子との比が5:1となる初期化ができる。また、レーザ発振装置1312aより出射するレーザ光の波長を731nmとすると、下向きスピンの電子と上向きスピンの電子との比が10:1となる初期化ができる。この波長731nmは、量子ドット1301に生成される荷電励起子のエネルギーを波長に換算したものに共鳴する波長である。このように、レーザ発振装置1312aからのレーザ光(第2光)を、荷電励起子のエネルギーに共鳴する波長とすることで、より効率的に初期化ができるようになる。
【0062】
なお、量子ドット構造を構成する材料としては、InGaAs/GaAsに限らず、InP/GaPなども用いることができる。また、GaAs/AlGaAs量子井戸構造を用いると、上述した量子ドット構造の場合に比較して特性が低下するが、初期化は可能である。
【0063】
ところで、電子のスピンを制御するための円偏光のレーザ光(第2光)の波長は、図14に示すように、上記波長に対応するエネルギー1401が、障壁層(障壁部)1302のバンドギャップより大きければよい。また、量子ドット1301に電子(および正孔)を生成させるためのレーザ光(第1光)の波長は、この波長に対応するエネルギー1402が、障壁層1302のバンドギャップより小さく、量子ドット(閉じ込め部)1301のバンドギャップより大きければよい。
【0064】
また、上述では、はじめに電子および正孔を生成するための第1光として、波長532nmのレーザ光を出射するレーザ発振装置1311を用いるようにしたが、これに限るものではない。例えば、図15に示すように、レーザ発振装置1312aから出射した一部のレーザ光を半反射鏡1501を用いて取り出し、この取り出したレーザ光を反射鏡1502で反射させて2倍波発生装置1503に導き、2倍波発生装置1503で2倍波を発生させて第1光1511として量子ドット1301に照射してもよい。レーザ発振装置1312aから出射して半反射鏡1501を透過したレーザ光は、偏光調整器1312bを透過して円偏光の第2光1512として量子ドット1301に照射される。このように構成しても、上述同様に、電子スピンの方向が制御可能となり、初期化を行うことが可能である。
【0065】
[実施例2]
次に、実施例2について説明する。図16は、実施例2における半導体電子スピン操作装置の構成を示す構成図である。この半導体電子スピン操作装置は、GaAsからなる量子ドット1601と、量子ドット1601の周囲に配置されたAlGaAsからなる障壁層1602とから構成された量子ドット構造1603を備える。また、量子ドット構造1603は、GaAs基板1604の上に形成されている。
【0066】
また、GaAs基板1604の上に、結晶成長により形成したAlGaAs層およびGaAs量子ドットによる量子ドット構造を用いた2つの半導体レーザ1611,半導体レーザ1612が設けられている。半導体レーザ1611のレーザ光出射端には、LiNbO3の結晶からなる2倍波発生部1613が形成されている。2倍波発生部1613は、電流注入により2倍波を発生させる動作が行える。また、半導体レーザ1612のレーザ光出射端には、円偏光用の偏光調整器1614が設けられている。
【0067】
本実施例においても前述した実施例1と同様に、電子スピンの向きの操作ができる。まず、半導体レーザ1611より出射して2倍波発生部1613を透過したレーザ光を、量子ドット構造1603(量子ドット1601)に照射することで、量子ドット1601に電子および正孔を生成させることができる。ここで、前述したように、正孔は、障壁層1602をトンネリングし、量子ドット1601に電子が残る。この状態で、レーザ発振装置1612からのレーザ光を偏光調整器1614を透過させて円偏光として量子ドット1601に照射すれば、荷電励起子が生成される。このとき、偏光調整器1614により、例えば、左回りの円偏光としたレーザ光を照射すれば、量子ドット1601に下向きスピンの電子を生成させることができる。加えて、この状態を継続すれば、量子ドット1601における電子のスピンの向きを下向きに揃える(初期化する)ことができる。
【0068】
なお、半導体レーザ1611,半導体レーザ1612は、別途に作製し、GaAs基板1604にウエハボンディング法によって取り付けて用いるようにしてもよい。
【0069】
[実施例3]
次に、実施例3について説明する。図17は、実施例3における半導体電子スピン操作装置の構成を示す構成図である。この半導体電子スピン操作装置は、Siからなる量子ドット1701と、量子ドット1701の周囲に配置された酸化シリコンからなる障壁層1702とから構成された量子ドット構造1703を備える。また、この半導体電子スピン操作装置は、レーザ発振装置(第1光照射部)1711および光照射部1712(第2光照射部)を備える。光照射部1712は、レーザ発振装置1712aおよびレーザ発振装置1712aより照射されるレーザ光の偏光を制御する偏光調整器1712bから構成されている。
【0070】
本実施例において、まず、量子ドット1701を構成するSiは、原子数14で質量数が28なので核スピンを持たない。また、障壁層1702を構成している酸化シリコンのOは、原子数8および質量数16であり、これも核スピンを持たない。このため、本実施例におけるレーザ発振装置1711は、出射する波長が170nmのレーザであり、レーザ発振装置1712aは、発振波長が1064nmのファイバレーザである。レーザ発振装置1711が出射するレーザは、ファイバレーザの6倍波である。
【0071】
本実施例において、シリコンから構成される量子ドット1701では、図9を用いた説明とは異なり、価電子帯のバンドオフセットの方が伝導帯より大きくなる。このため、本実施例においては、2つのレーザ光の照射により、正孔スピンの向きが統一されるような初期化がなされる。また、この初期化の状態は、GaAs/AlGaAsによる量子ドット構造の場合より長時間保たれる。
【0072】
以上に説明したように、本発明によれば、半導体に電子を生成し、生成する電子の濃度を制御可能であり、また、外部磁場および電極などを使用することなく、電子スピンの初期化など、電子スピンや正孔スピンの向きの制御が行える。これは、例えば、電子スピンを用いた量子コンピュータの性能向上に貢献する。また、電子スピンの向きの制御手段ともなるため、電子スピンを用いたメモリの実現も可能となる。このように、本発明によれば、情報処理および情報記録の能力を飛躍的に向上させることができる。
【0073】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形が実施可能であることは明白である。例えば、上述では、第1光を照射している状態で第2光を照射するようにしたが、これに限るものではない。第1光の照射により生成した電子の存在が維持されていれば、電子が生成された後、第1光の照射は必要なく、第2光の照射によりスピンの向きの操作が可能となる。また、閉じ込め構造は、量子ドット構造および量子井戸構造に限らず、量子細線構造であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
101…閉じ込め部、102…障壁部、103…閉じ込め構造、104…第1光照射部、105…第2光照射部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体より構成されたキャリアを閉じ込める閉じ込め部、およびこの閉じ込め部よりエネルギーギャップの大きい材料から構成された障壁部から構成された閉じ込め構造に、前記障壁部を構成する前記材料のエネルギーギャップより大きなエネルギーの第1光を照射するステップと、
前記閉じ込め構造に、前記半導体のエネルギーギャップより大きく前記材料のエネルギーギャップより小さなエネルギーで、右回りおよび左回りの中より選択された円偏光の第2光を照射するステップと
を少なくとも備えることを特徴とする半導体電子スピン操作方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体電子スピン操作方法において、
前記閉じ込め構造は、量子ドット構造、量子井戸構造,量子細線構造の中より選択されたものであることを特徴とする半導体電子スピン操作方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の半導体電子スピン操作方法において、
前記第2光の波長は、閉じ込め部に生成される荷電励起子のエネルギーに対応する波長に共鳴する
ことを特徴とする半導体電子スピン操作方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体電子スピン操作方法において、
前記半導体および前記材料は、これらを構成する原子が核スピンを持たない
ことを特徴とする半導体電子スピン操作方法。
【請求項5】
半導体より構成されたキャリアを閉じ込める閉じ込め部、およびこの閉じ込め部よりエネルギーギャップの大きい材料から構成された障壁部から構成された閉じ込め構造と、
この閉じ込め構造に、前記障壁部を構成する材料のエネルギーギャップより大きなエネルギーの第1光を照射する第1光照射手段と、
前記閉じ込め構造に、前記半導体のエネルギーギャップより大きく前記材料のエネルギーギャップより小さなエネルギーで、右回りおよび左回りの中より選択された円偏光の第2光を照射する第2光照射手段と
を少なくとも備えることを特徴とする半導体電子スピン操作装置。
【請求項6】
請求項5記載の半導体電子スピン操作装置において、
前記閉じ込め構造は、量子ドット構造、量子井戸構造,量子細線構造の中より選択されたものであることを特徴とする半導体電子スピン操作装置。
【請求項7】
請求項5または6記載の半導体電子スピン操作装置において、
前記第2光の波長は、閉じ込め部に生成される荷電励起子のエネルギーに対応する波長に共鳴する
ことを特徴とする半導体電子スピン操作装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の半導体電子スピン操作装置において、
前記第1光照射手段および前記第2光照射手段は、レーザより構成されていることを特徴とする半導体電子スピン操作装置。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の半導体電子スピン操作装置において、
前記半導体および前記材料は、これらを構成する原子が核スピンを持たない
ことを特徴とする半導体電子スピン操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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