説明

半導電性ローラおよびトナー搬送ローラ

【課題】初期画像の画質を向上して十分な画像濃度を有する画像を形成でき、かつ前記性能に変化を生じ難く耐久性に優れるとともに、トナーの劣化とそれに伴う帯電量の低下とを抑制できるため、トナーを使い切る前にかぶり等が生じるのを防止できる半導電性ローラと、トナー搬送ローラとを提供する。
【解決手段】半導電性ローラ1のローラ本体2を、液状ニトリルゴムと固形ニトリルゴムとの混合ニトリルゴムN、クロロプレンゴムC、およびエピクロルヒドリンゴムEの、質量比(C+E)/N=10/90〜80/20の混合物であってクロロプレンゴムCの割合が5質量%以上、エピクロルヒドリンゴムEの割合が5質量%以上であるベースポリマを含むゴム組成物にて形成し、ローラ本体2のショアA硬さを60以下、半導電性ローラ1の、印加電圧5Vでのローラ抵抗を10〜10Ω以下とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばレーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の、電子写真法を利用した画像形成装置において、現像ローラ等のトナー搬送ローラとして好適に用いることができる半導電性ローラと、それを用いたトナー搬送ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真法を利用した前記各種の画像形成装置においては、高速化、高画質化、カラー化、小型化といった要求に対応するために種々の改良が進んでいる。
これらの改良において鍵となるのがトナーである。すなわち、前記種々の要求を満足するために必要となるのが、トナーの微細化、トナー粒径の均一化、およびトナー形状の球形化である。
【0003】
トナーの微細化については、平均粒径が10μm以下、さらには5μm以下といった微細なトナーが開発されるに至っている。またトナー形状の球形化については、真球度が99%を上回るトナーが開発されている。
さらに形成画像のより一層の高画質化を求めて、従来の粉砕トナーに代えて、重合トナーが主流となりつつある。かかる重合トナーは、特にデジタル情報を画像形成する際にドットの再現性が非常によく、高画質な画像が得られるという利点がある。
【0004】
画像形成装置において、帯電させたトナーを感光体の表面に搬送して、前記表面に形成された静電潜像をトナー像に現像するための現像ローラとしては、例えばベースポリマにカーボン等の導電性付与剤を配合した半導電性ゴム組成物の架橋物からなるローラ本体を備えるとともに、前記ローラ本体の中心に金属等からなるシャフトを挿通したものが一般的に用いられる。
【0005】
中でも、先に説明したトナーの微細化、均一化、および球形化や、あるいは重合トナーへの移行に対応して、トナーに高い帯電性を付与できる上、トナーを外周面に付着させることなく効率的に感光体表面に搬送させるために、前記現像ローラとしては、そのローラ抵抗が10Ω以下に調整された半導電性ローラを用いるのが有効である。
半導電性ローラには、前記ローラ抵抗を製品の使用寿命の最後まで維持させることが求められるが、現行品は、かかる要求に十分に対応できる耐久性を有していないのが現状である。
【0006】
そこで前記要求に対応するため、例えば特許文献1においては、ベースポリマとしてのゴムの種類やカーボンの種類等を調整して製造初期の半導電性ローラのローラ本体に極めて高い帯電性を付与することにより、初期の性能(初期画像の画質の向上)と、その性能の維持(耐久性)との両立を目指している。
しかし発明者の検討によると、特許文献1の構成では、初期画像の画質のみの向上、あるいは耐久性のみの向上はきわめて高いレベルで実現可能であるが、両者を両立させることは困難である。
【0007】
特許文献2には、ベースポリマとして電気特性が均一なイオン導電性ゴムを用いるとともに、誘電正接調整用の充填剤を配合した半導電性ゴム組成物からなり、誘電正接を0.1〜1.5としたローラ本体を備えた半導電性ローラが記載されている。
前記イオン導電性ゴムとしては、エピクロルヒドリンゴムに代表される、分子中に塩素原子を含むゴムや、あるいは共重合成分としてイオン導電性を示すエチレンオキサイドモノマーを含むゴムが使用される。
【0008】
しかし前者の、塩素原子を含むゴムは一般に表面自由エネルギーが高いため、トナーや、あるいは前記トナーの流動性や帯電性を改善するために添加されるシリカ等のトナー外添剤に対する付着性が高くなる傾向がある。また後者のゴムの場合も表面自由エネルギーが上昇して、前記トナー等に対する付着性が高くなる傾向がある。
さらに特許文献2では、ローラ本体の外周面に、紫外線照射やオゾン曝露によって酸化膜を形成しているが、その場合には前記外周面近傍の酸素濃度が高くなるため表面自由エネルギーが上昇して、さらにトナー等に対する付着性が高くなる傾向がある。
【0009】
加えて、誘電正接を前記範囲内に調整した場合には、トナーの帯電性を向上してトナーの搬送量を低減できるため、ハーフトーン画像などの高画質な画像を形成することができるが、一方でローラ本体の外周面におけるトナーの積層量が少なくなるため、トナー等に対する付着性がさらに高くなるおそれもある。
ローラ本体へのトナー等の付着は、ごく初期の画像や連続的に形成した画像にはあまり影響を及ぼさないが、例えば下記(a)〜(d)のいずれかの条件で画像形成した場合に、その影響を無視できなくなる。
【0010】
例えば、通常帯電されたトナーは静電気力(クーロン力)により逆の電荷を持つ感光体に搬送されるが、前記のように現像ローラのローラ本体の、トナー等に対する付着性が高すぎる場合には、前記静電気力によるトナーの搬送が妨げられるため、トナーの帯電量は変わらないにも拘らず、下記(a)〜(d)のいずれかの条件で画像形成した場合に画像濃度が低下する、すなわちトナーの現像効率が低下するという問題を生じる。
(a) 画像形成を程よく実施してトナーが現像ローラに比較的なじんだ時点、例えば1%濃度の画像を2000枚程度、画像形成した時点でさらに画像形成する場合。
(b) トナーの平均粒径が8μm以下、特に6μm以下である場合。
(c) 連続的に画像形成せず、例えば一日停止して翌日に画像形成する場合。
(d) トナーの帯電量が比較的高くなる低温低湿環境下で画像形成する場合。
【0011】
前記現像効率の低下は、高速化により、現像ローラの回転速度が例えば20rpm以上に設定される画像形成装置において特に生じやすい。
しかも現像効率が低下すると、現像によって消費されずにトナーボックス内を繰り返し循環するトナーが多くなり、その劣化が進んでトナーの帯電量の低下が早まるという問題も生じる。その結果、帯電量の低下によって形成画像に画像不良を生じやすくなる。
【0012】
トナーの劣化とそれに伴う帯電量の低下は、トナーの搬送量が多いとより一層早まるとされる。かかるトナーの劣化を防止するために、現像ローラのローラ本体を形成する半導電性ゴム組成物に含有させるフィラーの種類と量を調整して、トナー等に対する付着性を低下させ、トナーの現像効率を向上させる場合がある。
しかしフィラーの調整によって現像効率を向上させた場合、確かに画像濃度は上昇するものの、トナーへのダメージが却って大きくなって、前記トナーを使い切る前にトナーの劣化が進み、トナーがなくなる直前に、特にかぶり(紙面の白地部分が黒ずむ現象)等の画像不良が頻発しやすくなるという問題がある。
【0013】
特許文献3には、イオン導電性ゴムにワックスを添加することで、ローラ本体の外周面の表面自由エネルギーを低減してトナー等の付着を防止することが記載されている。また特許文献4には、トナーの帯電性をコントロールするために、アミン化合物を有する処理剤を導電性部材の表面にコーティングすることが記載されている
しかしワックスやアミン化合物はトナーや感光体に転移しやすく、前記トナーや感光体を汚染して形成画像の画質を低下させる原因となる。またワックスやアミン化合物は前記転移によって徐々に失われるため、前記ワックスやアミン化合物による効果を、製品の使用寿命の最後まで維持することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−99036号公報
【特許文献2】特開2004−170854号公報
【特許文献3】特開2005−225969号公報
【特許文献4】特開2001−357735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、例えば現像ローラ等のトナー搬送ローラとして使用した際に、初期画像の画質を向上して十分な画像濃度を有する画像を形成でき、かつ前記性能に変化を生じ難く耐久性に優れるとともに、トナーの劣化とそれに伴う帯電量の低下とを抑制できるため、前記トナーを使い切る前にかぶり等の画像不良が生じるのを防止できる半導電性ローラと、それを用いたトナー搬送ローラとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、少なくとも最外層が半導電性ゴム組成物の架橋物で形成されたローラ本体を有する半導電性ローラであって、
前記半導電性ゴム組成物はベースポリマを含み、前記ベースポリマは、
(1) 液状ニトリルゴムと固形ニトリルゴムとの混合ゴムN、
(2) クロロプレンゴムC、および
(3) エピクロルヒドリンゴムE、
の、質量比(C+E)/N=10/90〜80/20の混合物であるとともに、前記ベースポリマの総量中に占める前記クロロプレンゴムの割合が5質量%以上、前記エピクロルヒドリンゴムの割合が5質量%以上であり、
前記ローラ本体のショアA硬さは60以下で、かつ前記半導電性ローラは、印加電圧5Vでのローラ抵抗が10Ω以上、10Ω以下であることを特徴とするものである。
【0017】
本発明おいてベースポリマとして用いている(1)の液状ニトリルゴムと固形ニトリルゴムとの混合ゴム(以下「混合ニトリルゴム」と記載する場合がある)の架橋物は、前記液状ニトリルゴムの作用によって、単体では十分な強度が得られないほど柔軟である。
しかし前記混合ニトリルゴムは、ローラ本体にトナーに対する良好な帯電性を付与する効果を有する(2)のクロロプレンゴム、およびイオン導電性ゴムである(3)のエピクロルヒドリンゴムとの相溶性に優れている。
【0018】
したがって混合ニトリルゴムを、前記両ゴムと前記質量比の範囲で併用することにより、半導電性ローラのローラ本体の全体に、前記エピクロルヒドリンゴムの作用によって均一なイオン導電性を付与しながら、前記ローラ本体に、クロロプレンゴムの作用によって良好な帯電性と、混合ニトリルゴムの作用によって高い柔軟性とを付与することができる。
【0019】
すなわち印加電圧5Vでの半導電性ローラのローラ抵抗を10Ω以上、10Ω以下とすることができる。かかるローラ抵抗は、十分な画像濃度を得ることができ、しかもトナーのチャージがリークしない最適な抵抗値である。
また前記ローラ本体の、23±1℃におけるショアA硬さを60以下とすることができる。そのため、例えば現像ローラとして使用して感光体の表面に接触させた際にローラ本体のニップ幅を広く取ることができ、それによってトナーの現像効率を向上することができる。また軟らかいためトナーへのダメージを低減することもできる。
【0020】
したがって、本発明の半導電性ローラによれば、初期画像の画質を向上して十分な画像濃度を有する画像を形成することができる。
また、ローラ本体の柔軟性は、固形ニトリルゴムと、架橋反応によって前記固形ニトリルゴムと架橋反応して架橋物中に取り込まれる液状ニトリルゴムとの混合物である極めて柔軟な混合ゴム(混合ニトリルゴム)を用いることによって付与されている。
【0021】
そのため、例えばオイル等の軟化剤を加えて柔軟性を付与する場合は、前記軟化剤がブリードして柔軟性が低下したり、ブリードした軟化剤によってトナー等に対する付着を生じたり、前記軟化剤によってトナーや感光体が汚染されたりするが、混合ニトリルゴムを使用する場合はこれらの問題が生じるおそれもない。
そのため、多少は低下することもありうるが十分な柔軟性と、それによる広いニップ幅を確保してトナーの現像効率を向上させる効果、およびトナーへのダメージを低減する効果を、基本的には製品の使用寿命の最後まで十分に維持することができる。
【0022】
したがって、前記のように広いニップ幅を確保できて本来的に現像効率が高いことと、軟らかいためトナーへのダメージを低減できることと、現像によって消費されずにトナーボックス内を繰り返し循環するトナーを少なくしてその劣化を抑制できることとが相まって、最後まで良好な画像を維持して、特にトナーを使い切る前にかぶり等の画像不良が生じるのを防止することもできる。
【0023】
前記ローラ本体は、その構造を簡略化するとともに、ニップ幅をできるだけ広く取って現像効率を向上することを考慮すると、前記架橋物にて一体に形成されているのが好ましい。また前記ローラ本体の外周面には、トナー等の付着性を低減するために、紫外線照射による酸化膜が形成されているのが好ましい。
前記本発明の半導電性ローラは、例えばレーザープリンタ等の、電子写真法を利用した画像形成装置に組み込んで、帯電させたトナーを感光体の表面に搬送して前記表面に形成された静電潜像をトナー像に現像するための現像ローラ等のトナー搬送ローラとして好適に使用することができる。
【0024】
すなわち本発明は、電子写真法を利用した画像形成装置に用いるトナー搬送ローラであって、前記本発明の半導電性ローラからなることを特徴とするものである。
前記本発明のトナー搬送ローラによれば、初期画像の画質を向上して十分な画像濃度を有する画像を形成でき、かつ前記性能に変化を生じ難く耐久性に優れるとともに、トナーの劣化とそれに伴う帯電量の低下とを抑制できるため、前記トナーを使い切る前にかぶり等の画像不良が生じるのを防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、例えば現像ローラ等のトナー搬送ローラとして使用した際に、初期画像の画質を向上して十分な画像濃度を有する画像を形成でき、かつ前記性能に変化を生じ難く耐久性に優れるとともに、トナーの劣化とそれに伴う帯電量の低下とを抑制できるため、前記トナーを使い切る前にかぶり等の画像不良が生じるのを防止できる半導電性ローラと、それを用いたトナー搬送ローラとを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の半導電性ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】半導電性ローラのローラ抵抗を測定する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の半導電性ローラは、少なくとも最外層が半導電性ゴム組成物の架橋物で形成されたローラ本体を有するものであって、
前記半導電性ゴム組成物はベースポリマを含み、前記ベースポリマは、
(1) 液状ニトリルゴムと固形ニトリルゴムとの混合ゴム(混合ニトリルゴム)N、
(2) クロロプレンゴムC、および
(3) エピクロルヒドリンゴムE、
の、質量比(C+E)/N=10/90〜80/20の混合物であるとともに、前記ベースポリマの総量中に占める前記クロロプレンゴムの割合が5質量%以上、前記エピクロルヒドリンゴムの割合が5質量%以上であり、
前記ローラ本体のショアA硬さは60以下で、かつ前記半導電性ローラは、印加電圧5Vでのローラ抵抗が10Ω以上、10Ω以下であることを特徴とする。
【0028】
〈半導電性ゴム組成物〉
前記半導電性ローラのもとになる半導電性ゴム組成物のうち(1)の混合ニトリルゴムとしては、室温(3〜35℃)で液状を呈する液状ニトリルゴム(液状アクリロニトリルブタジエンゴム)と、前記室温で固形である通常の固形ニトリルゴム(固形アクリロニトリルブタジエンゴム)とを任意の割合で混合したものが挙げられる。
【0029】
前記混合ニトリルゴムにおける液状ニトリルゴムの含有割合は、架橋後のローラ本体に適度な強度と、液状ニトリルゴムによる高い柔軟性とを付与することを考慮すると、10質量%以上、中でも30質量%以上、特に40質量%以上であるのが好ましく、90質量%以下、特に85質量%以下であるのが好ましい。
液状ニトリルゴムの含有割合が前記範囲未満では、前記液状ニトリルゴムによる、架橋後のローラ本体に高い柔軟性を付与する効果が不十分となって、ショアA硬さを60以下に調整できないおそれがある。
【0030】
液状ニトリルゴムとしては、室温で液状を呈する任意の液状ニトリルゴムが使用可能である。
また液状ニトリルゴムとともに混合ニトリルゴムを構成する固形ニトリルゴムとしては、常温で固形であって、ローラ本体の形状を維持しうる種々のニトリルゴムが使用可能であり、特に架橋後のローラ本体に適度な強度を付与するとともに、液状ニトリルゴムを配合することによって高い柔軟性を発揮することを考慮すると、アクリロニトリル含量が31〜35%である中高ニトリルゴムが好ましい。
【0031】
前記混合ニトリルゴムとしては、例えば日本ゼオン(株)製のNipol(登録商標)DN223〔共に中高ニトリルゴムであって同じアクリロニトリル含量を有する液状ニトリルゴムと固形ニトリルゴムとの質量比1:1の混合ゴム〕等が挙げられる。
ただし、その他の混合ニトリルゴムも使用可能である。
例えば前記DN223に含まれる液状ニトリルゴムと、固形ニトリルゴムとしての、いずれも同社製の、低ニトリルゴムであるDN401、DN401LLや、中ニトリルゴムであるDN302、あるいはニトリルゴムのカルボキシル変性物であるDN631等との混合ニトリルゴム等が挙げられる。
【0032】
さらに前記DN401を液状化したゴムとDN401との混合ニトリルゴムも使用可能である。
(2)のクロロプレンゴムとしては、種々のクロロプレンゴムがいずれも使用可能である。前記クロロプレンゴムとしては、例えば昭和電工(株)製のショウプレン(登録商標)WRT、東ソー(株)製スカイプレン(登録商標)等が挙げられる。
【0033】
前記クロロプレンゴムの量は、ベースポリマの総量、すなわち(1)〜(3)のゴムの総量の5質量%以上である必要がある。クロロプレンゴムの量が前記範囲未満では、架橋後のローラ本体に、トナーに対する良好な帯電性を付与する効果が得られない。そのため、たとえ混合ニトリルゴムを使用してローラ本体に高い柔軟性を付与したとしても、現像効率が低下してしまう。
【0034】
なおクロロプレンゴムの量は、前記範囲内でも50質量%以下であるのが好ましい。クロロプレンゴムの量が前記範囲を超える場合には、相対的に他の2種のゴムの量が少なくなって、架橋後のローラ本体に良好な導電性や柔軟性を付与する効果が不十分になるおそれがある。
(3)のエピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとの二元共重合体(ECO)、およびエピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルとの三元共重合体(GECO)等がいずれも使用可能である。
【0035】
このうちCOとしては、例えばダイソー(株)製のエピクロマー(登録商標)H等が挙げられる。
なおローラ本体に良好なイオン導電性を付与することを考慮すると、前記エピクロルヒドリンゴムとしてはECO、およびGECOのうちの少なくとも1種が好ましい。
前記ECOとしては、例えばダイソー(株)製のエピクロマー(登録商標)D〔EO/EP=61/39(モル比)〕等が挙げられる。
【0036】
またGECOとしては、例えばダイソー(株)製のエピオン(登録商標)ON301〔EO/EP/AGE=73/23/4(モル比)〕、同社製のエピクロマー(登録商標)CG102〔EO/EP/AGE=56/40/4(モル比)〕、CG104〔EO/EP/AGE=63/34.5/2.5(モル比)〕、日本ゼオン(株)製のゼオスパン(登録商標)8030〔EO/EP/AGE=90/4/6(モル比)〕等の少なくとも1種が挙げられる。
【0037】
前記エピクロルヒドリンゴムの量は、ベースポリマの総量、すなわち(1)〜(3)のゴムの総量の5質量%以上である必要がある。エピクロルヒドリンゴムの量が前記範囲未満では、架橋後のローラ本体に十分なイオン導電性を付与する効果が得られない。
なおエピクロルヒドリンゴムの量は、前記範囲内でも50質量%以下であるのが好ましい。エピクロルヒドリンゴムの量が前記範囲を超える場合には、相対的に他の2種のゴムの量が少なくなって、架橋後のローラ本体に良好な柔軟性や、あるいはトナーに対する良好な帯電性を付与する効果が不十分になるおそれがある。
【0038】
ベースポリマは、前記(1)の混合ニトリルゴムN、(2)のクロロプレンゴムC、および(3)のエピクロルヒドリンゴムEの、質量比(C+E)/N=10/90〜80/20の混合物である必要がある。
前記範囲より混合ニトリルゴムの量が少ない場合は、架橋後のローラ本体に良好な柔軟性を付与して現像効率を向上する効果が得られない。また前記範囲より混合ニトリルゴムの量が多い場合には、相対的に他の2種のゴムの量が少なくなって、架橋後のローラ本体に良好な導電性や、あるいはトナーに対する良好な帯電性を付与する効果が得られない。そのため、却って現像効率が低下してしまう。
【0039】
半導電性ゴム組成物には、前記ベースポリマを架橋させるための架橋成分を含有させることができる。前記架橋成分としては、例えば過酸化物架橋剤とチオウレア系加硫剤との併用系が挙げられる。このうち過酸化物架橋剤が、主に混合ニトリルゴム、およびエピクロルヒドリンゴムの架橋剤として機能し、チオウレア系加硫剤が、主にエピクロルヒドリンゴム、およびクロロプレンゴムの架橋剤として機能する。
【0040】
前記過酸化物架橋剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、1,4−ビス[(tert−ブチル)パーオキシイソプロピル]ベンゼン、ジ(tert−ブチルパーオキシ)ベンゾエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジtert−ブチルパーオキサイド、および2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)−3−ヘキセン等の1種または2種以上が挙げられる。
【0041】
過酸化物架橋剤の量は、ベースポリマの総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、2質量部以下であるのが好ましい。
またチオウレア系加硫剤としては、例えばテトラメチルチオウレア、トリメチルチオウレア、エチレンチオウレア(2−メルカプトイミダゾリン)、および(C2n+1NH)C=S〔式中、nは1〜10の整数を表す。〕で示されるチオウレア等の1種または2種以上が挙げられる。
【0042】
チオウレア系加硫剤の量は、ベースポリマの総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、2質量部以下であるのが好ましい。
またチオウレア系加硫剤とともに、前記チオウレア系加硫剤による加硫反応を促進する働きを有する種々の促進剤を併用することもできる。
前記促進剤としては、例えば1,3−ジ−o−トリルグアニジン(DT)等が挙げられる。
【0043】
促進剤の量は、その種類および組み合わせ等に応じて適宜設定できる。
また架橋成分としては、硫黄系加硫剤とチオウレア系架橋剤とを併用することもできる。このうち硫黄系加硫剤が、主に混合ニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、およびクロロプレンゴムの架橋剤として機能し、チオウレア系加硫剤が、主にエピクロルヒドリンゴム、およびクロロプレンゴムの架橋剤として機能する。
【0044】
前記硫黄系加硫剤としては、硫黄および含硫黄系加硫剤(分子中に硫黄を有する有機化合物)からなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。また含硫黄系加硫剤としては、例えば4,4′−ジチオジモルホリン(R)等が挙げられる。特に硫黄が好ましい。
硫黄の量は、ベースポリマの総量100質量部あたり1質量部以上であるのが好ましく、3質量部以下であるのが好ましい。
【0045】
チオウレア系加硫剤は先に説明したとおりである。チオウレア系加硫剤の量は、ベースポリマの総量100質量部あたり0.5質量部以下であるのが好ましい。
また硫黄や含硫黄系加硫剤とともに、前記硫黄または含硫黄系加硫剤による加硫反応を促進する働きを有する種々の促進剤を併用することもできる。
前記促進剤としては、従来公知の種々の促進剤が使用可能であり、例えばジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(DM)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)等の少なくとも1種が挙げられる。
【0046】
同様にチオウレア系加硫剤とともに、前記チオウレア系加硫剤による加硫反応を促進する働きをする、先に説明した1,3−ジ−o−トリルグアニジン(DT)等の促進剤を併用することもできる。
促進剤の量は、その種類および組み合わせ等に応じて適宜設定できる。
半導電性ゴム組成物には、さらに促進助剤や導電性フィラー、受酸剤等を含有させることもできる。またゴムの硬度や付着性等をコントロールするために、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化チタン等の無機フィラーを含有させることもできる。
【0047】
このうち促進助剤としては、例えば酸化亜鉛等の金属酸化物や、ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸などの1種または2種以上が挙げられる。
前記加硫促進助剤の量は、ベースポリマの総量100質量部あたり3質量部以上、7質量部以下であるのが好ましい。
また導電性フィラーとしては、例えば導電性カーボンブラック、酸化チタン等の少なくとも1種が挙げられる。
【0048】
前記導電性フィラーの量は、ベースポリマの総量100質量部あたり10質量部以上、40質量部以下であるのが好ましい。
受酸剤は、半導電性ゴム組成物の加硫時にクロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴムから発生する塩素系ガスの残留および前記塩素系ガスによる感光体ドラムの汚染を防止する働きをする。前記受酸剤としては、ゴムに対する分散性に優れていることからハイドロタルサイト類が好ましい。
【0049】
前記受酸剤の量は、ベースポリマの総量100質量部あたり1質量部以上、7質量部以下であるのが好ましい。
前記半導電性ゴム組成物は、従来同様に調製することができる。すなわち、まず(1)〜(3)の3種のゴムを所定の割合で配合して素練りし、次いで架橋成分以外の添加剤を加えて混練した後、最後に架橋成分を加えて混練することで半導電性ゴム組成物を調製できる。
【0050】
前記混練には、例えばニーダ、バンバリミキサ、押出機等を用いることができる。
〈半導電性ローラ、およびトナー搬送ローラ〉
図1は、本発明の半導電性ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
図1を参照して、この例の半導電性ローラ1は、前記半導電性ゴム組成物からなる円筒状のローラ本体2と、前記ローラ本体2の中心の通孔3に挿通されたシャフト4とを含んでいる。ローラ本体2の外周面5には、紫外線照射によって形成された酸化膜6が設けられている。
【0051】
シャフト4は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属によって一体に形成される。ローラ本体2とシャフト4とは、例えば導電性を有する接着剤等により電気的に接合されると共に機械的に固定されて一体に回転される。
前記本発明の半導電性ローラは、例えばレーザープリンタ等の、電子写真法を利用した画像形成装置に組み込んで、帯電させたトナーを感光体の表面に搬送して前記表面に形成された静電潜像をトナー像に現像するための現像ローラ等のトナー搬送ローラとして好適に使用することができる。これにより、例えば現像ローラとして使用した際には、初期画像の画質を向上して十分な画像濃度を有する画像を形成でき、かつ前記性能に変化を生じ難く耐久性に優れるとともに、トナーの劣化とそれに伴う帯電量の低下とを抑制できるため、前記トナーを使い切る前にかぶり等の画像不良が生じるのを防止できる。
【0052】
ローラ本体2の厚みは、前記現像ローラとして使用する場合、前記現像ローラの小型化、軽量化を図りながら適度なニップ厚を確保するために厚みが0.5mm以上、中でも1mm以上、特に3mm以上であるのが好ましく、15mm以下、中でも10mm以下、特に7mm以下であるのが好ましい。
前記ローラ本体2は、先に説明した各成分を含む半導電性ゴム組成物を用いて従来同様に形成される。すなわち半導電性ゴム組成物を、押出成形機を用いて混練しながら加熱して溶融させた状態で、前記ローラ本体2の断面形状、すなわち円環状に対応するダイを通して長尺の円筒状に押出成形し、冷却して固化させたのち、通孔3に加硫用の仮のシャフトを挿通して加硫缶内で加熱して加硫させる。
【0053】
次いで外周面に導電性の接着剤を塗布したシャフト4に装着しなおして、前記接着剤が熱硬化性接着剤である場合は加熱により前記熱硬化性接着剤を硬化させてローラ本体2とシャフト4とを電気的に接合する共に機械的に固定する。
そして必要に応じてローラ本体2の外周面5を所定の表面粗さになるように研磨し、さらに必要に応じて紫外線を照射することで、前記外周面5を構成する半導電性ゴム組成物の架橋物中のニトリルゴムを酸化させて、前記外周面5を被覆する酸化膜6を生成させる。これにより図1に示す半導電性ローラ1が製造される。
【0054】
前記酸化膜6は、トナー等の付着性をさらに低減するために機能するが、場合によっては形成しなくてもよい。
またローラ本体2は、外周面5側の外層とシャフト4側の内層の2層構造に形成してもよい。その場合、少なくとも外層を前記半導電性ゴム組成物の架橋物によって形成すればよい。ただしローラ本体2の構造を簡略化するとともに、ニップ幅をできるだけ広く取って現像効率を向上することを考慮すると、前記ローラ本体2は、図に示すように前記架橋物によって一体に形成するのが好ましい。
【0055】
前記本発明の半導電性ローラ1においては、ローラ本体2のショアA硬さが、先に説明したように60以下に限定される。これは、ショアA硬さが前記範囲を超えるローラ本体は柔軟性が不足し、広いニップ幅を確保してトナーの現像効率を向上する効果や、トナーへのダメージを低減する効果が得られないためである。
なお前記効果をより一層向上することを考慮すると、ローラ本体2のショアA硬さは、前記範囲内でも50以下であるのが好ましい。
【0056】
またローラ本体2に適度な強度を付与して、例えば前記ローラ本体2の両端からトナーが漏出するのを防止するためにその外周面5に摺接されるシール部等に対する適度な耐摩耗性等を付与することを考慮すると、ローラ本体2のショアA硬さは、前記範囲内でも35以上であるのが好ましい。
前記ショアA硬さを、本発明では日本工業規格JIS K6253に記載の測定方法に則って温度23±1℃の条件で、硬度計に錘を載せて1000gとしてゴムローラに荷重を与えて測定した値でもって表すこととする。
【0057】
また前記ローラ本体1は、温度23±1℃、相対湿度55±1%の条件下で測定される、印加電圧5Vでのローラ抵抗が、先に説明したように10Ω以上、10Ω以下である必要がある。その理由は下記のとおり。
すなわち、前記ローラ抵抗が10Ω未満である低抵抗の半導電性ローラ1はトナーのチャージをリークしやすく、例えば形成画像の面方向にチャージがリークすることで形成画像の解像度等が低下するという問題を生じる。またローラ抵抗が10Ωを超える高抵抗の半導電性ローラ1では、たとえローラ本体2のショアA硬さを60以下としてニップ幅を確保したとしても、十分な画像濃度を有する画像を形成できないという問題を生じる。
【0058】
なお、これらの問題が生じるのを抑制して、より一層良好な画像を形成することを考慮すると、半導電性ローラ1のローラ抵抗は、前記範囲内でも106.5Ω以上であるのが好ましく、10Ω以下であるのが好ましい。
なお半導電性ローラ1のローラ抵抗は、ローラ本体2の外周面5に酸化膜6を形成する場合は、前記酸化膜6を形成する前の状態でのローラ抵抗である。
【0059】
図2は、半導電性ローラ1のローラ抵抗を測定する方法を説明する図である。
図1、図2を参照して、本発明では前記ローラ抵抗を、下記の方法で測定した値でもって表すこととする。
すなわち一定の回転速度で回転させることができるアルミニウムドラム7を用意し、前記アルミニウムドラム7の外周面8に、その上方から、ローラ抵抗を測定する半導電性ローラ1の、酸化膜を形成する前のローラ本体2の外周面5を当接させる。
【0060】
また前記半導電性ローラ1のシャフト4と、アルミニウムドラム7との間に直流電源9、および抵抗10を直列に接続して計測回路11を構成する。直流電源9は、(−)側をシャフト4、(+)側を抵抗10と接続する。抵抗10の抵抗値rは100Ωとする。
次いでシャフト4の両端部にそれぞれ500gの荷重Fをかけてローラ本体2をアルミニウムドラム7に圧接させた状態で、前記アルミニウムドラム7を回転(回転数:30rpm)させながら、前記両者間に、直流電源9から直流5Vの印加電圧Eを印加した際に、抵抗10にかかる検出電圧Vを4秒間で100回計測する。
【0061】
前記検出電圧Vと印加電圧E(=5V)とから、半導電性ローラ1のローラ抵抗Rは、基本的に式(i′):
R=r×E/(V−r) (i′)
によって求められる。ただし式(i′)中の分母中の−rの項は微小とみなすことができるため、本発明では式(i):
R=r×E/V (i)
によって求めた値でもって半導電性ローラ1のローラ抵抗とすることとする。測定の条件は、先に説明したように温度23±1℃、相対湿度55±1%である。
【0062】
またローラ本体2は、半導電性ローラ1の用途等に応じて任意の圧縮永久ひずみを有するように調整できる。前記圧縮永久ひずみ、ショアA硬さ、並びにローラ抵抗等を調整するためには、例えば(1)〜(3)の3種のゴムの質量比(C+E)/Nを先に説明した範囲内で調整したり、架橋成分の種類と量を調整したりすればよい。
本発明の半導電性ローラは、前記現像ローラのほか、例えば帯電ローラ、転写ローラ、クリーニングローラ等としてレーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の、電子写真法を利用した画像形成装置に用いることもできる。
【実施例】
【0063】
以下の実施例、比較例における導電性ローラの作製および試験を、特記した以外は温度23±1℃、相対湿度55±1%の環境下で実施した。
〈実施例1〉
ベースポリマとして、
(1) 混合ニトリルゴム〔液状ニトリルゴムと固形ニトリルゴムとの質量比1:1の混合ゴム、日本ゼオン(株)製のNipol(登録商標)DN223〕80質量部、
(2) クロロプレンゴム〔昭和電工(株)製のショウプレン(登録商標)WRT〕10質量部、および
(3) エピクロルヒドリンゴム〔GECO、ダイソー(株)製のエピオン(登録商標)ON301、EO/EP/AGE=73/23/4(モル比)〕10質量部
を配合した。
【0064】
前記混合ニトリルゴムN、クロロプレンゴムC、およびエピクロルヒドリンゴムEの質量比(C+E)/N=20/80であった。またベースポリマの総量中に占めるクロロプレンゴムの割合は10質量%、エピクロルヒドリンゴムの割合は10質量%であった。
前記ベースポリマの総量100質量部を、バンバリミキサを用いて素練りしながら、下記表1に示す各成分を加えてさらに混練してゴム組成物を調製した。
【0065】
【表1】

【0066】
表1中の各成分は下記のとおり。
過酸化物架橋剤:ジクミルパーオキサイド〔日油(株)製のパークミル(登録商標)D〕
チオウレア系加硫剤:エチレンチオウレア〔2−メルカプトイミダゾリン、川口化学工業(株)製のアクセル(登録商標)22−S〕
促進剤DT:1,3−ジ−o−トリルグアニジン〔グアニジン系促進剤、大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)DT〕
酸化亜鉛2種:促進助剤〔三井金属鉱業(株)製〕
導電性フィラーI:導電性カーボンブラック〔電気化学工業(株)製のデンカブラック(登録商標)〕
受酸剤:ハイドロタルサイト類〔協和化学工業(株)製のDHT−4A(登録商標)−2〕
表中の質量部は、前記ベースポリマの総量100質量部あたりの質量部である。
【0067】
前記ゴム組成物を押出成形機に供給して外径φ22.0mm、内径φ9〜9.5mmの円筒状に押出成形した後、外径φ8mmの架橋用の仮のシャフトに装着して加硫缶内で160℃×1時間架橋させた。
次いで、外周面に導電性の熱硬化性接着剤を塗布した外径φ10mmのシャフトに装着し直して、オーブン中で160℃に加熱して接着したのち両端をカットし、外周面を、円筒研磨機を用いトラバース研磨したのち仕上げとして鏡面研磨をして、外径がφ20.0mm(公差0.05)、外周面の表面粗さRzが3〜7μmになるように仕上げて、前記ゴム組成物の加硫物からなり、前記シャフトと一体化されたローラ本体を形成した。なお表面粗さRzは、日本工業規格JIS B0601−1994に従って測定した。
【0068】
次いで、研磨後のローラ本体の外周面を水洗いしたのち、UVランプから前記外周面までの距離が10cmになるように設定して紫外線照射装機〔セン特殊光源(株)製のPL21−200〕にセットし、シャフトを中心として90°ずつ回転させながら、波長184.9nmと253.7nmの紫外線を5分間ずつ照射することで前記外周面に酸化膜を形成して導電性ローラを製造した。
【0069】
〈実施例2〉
ベースポリマのうち(1)の混合ニトリルゴムの量を60質量部、(2)のクロロプレンゴムの量を30質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラを製造した。
前記混合ニトリルゴムN、クロロプレンゴムC、およびエピクロルヒドリンゴムEの質量比(C+E)/N=40/60であった。またベースポリマの総量中に占めるクロロプレンゴムの割合は30質量%、エピクロルヒドリンゴムの割合は10質量%であった。
【0070】
〈実施例3〉
ベースポリマのうち(1)の混合ニトリルゴムの量を45質量部、(2)のクロロプレンゴムの量を45質量部とし、かつ導電性カーボンブラックの量を15質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラを製造した。
前記混合ニトリルゴムN、クロロプレンゴムC、およびエピクロルヒドリンゴムEの質量比(C+E)/N=55/45であった。またベースポリマの総量中に占めるクロロプレンゴムの割合は45質量%、エピクロルヒドリンゴムの割合は10質量%であった。
【0071】
〈実施例4〉
ベースポリマのうち(1)の混合ニトリルゴムの量を45質量部、(3)のエピクロルヒドリンゴムの量を45質量部とし、かつ導電性カーボンブラックを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラを製造した。
前記混合ニトリルゴムN、クロロプレンゴムC、およびエピクロルヒドリンゴムEの質量比(C+E)/N=55/45であった。またベースポリマの総量中に占めるクロロプレンゴムの割合は10質量%、エピクロルヒドリンゴムの割合は45質量%であった。
【0072】
〈実施例5〉
ベースポリマのうち(1)の混合ニトリルゴムの量を90質量部、(2)のクロロプレンゴムの量を5質量部、(3)のエピクロルヒドリンゴムの量を5質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラを製造した。
前記混合ニトリルゴムN、クロロプレンゴムC、およびエピクロルヒドリンゴムEの質量比(C+E)/N=10/90であった。またベースポリマの総量中に占めるクロロプレンゴムの割合は5質量%、エピクロルヒドリンゴムの割合は5質量%であった。
【0073】
〈実施例6〉
ベースポリマとして、実施例1で使用したのと同じ(1)の混合ニトリルゴム20質量部、および(2)のクロロプレンゴム30質量部と、
(3)′ エピクロルヒドリンゴム〔ECO、ダイソー(株)製のエピクロマー(登録商標)D、EO/EP=61/39(モル比)〕50質量部
とを配合するとともに、チオウレア系加硫剤の量を1.35質量部、促進剤DTの量を1.26質量部、導電性カーボンブラックの量を10質量部とし、さらに導電性フィラーIIとして酸化チタン〔チタン工業(株)製の商品名KRONOS KR380〕20質量部を加えたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラを製造した。
【0074】
前記混合ニトリルゴムN、クロロプレンゴムC、およびエピクロルヒドリンゴムEの質量比(C+E)/N=80/20であった。またベースポリマの総量中に占めるクロロプレンゴムの割合は30質量%、エピクロルヒドリンゴムの割合は50質量%であった。
〈実施例7〉
実施例1と同じ(1)〜(3)の3種のゴムからなるベースポリマ100質量部を、バンバリミキサを用いて素練りしながら、下記表2に示す各成分を加えてさらに混練してゴム組成物を調製した。
【0075】
【表2】

【0076】
表2中のチオウレア系加硫剤、促進剤DT、酸化亜鉛2種、導電性フィラーI、および受酸剤は先に説明したとおり。その他の各成分は下記のとおり。
硫黄系加硫剤:粉末硫黄200メッシュ
促進剤DM:ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド〔大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM〕
促進剤TS:テトラメチルチウラムモノスルフィド〔大内新興化学工業(株)製のノクセラーTS〕
そして前記ゴム組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして導電性ローラを製造した。
【0077】
混合ニトリルゴムN、クロロプレンゴムC、およびエピクロルヒドリンゴムEの質量比(C+E)/N=20/80であった。またベースポリマの総量中に占めるクロロプレンゴムの割合は10質量%、エピクロルヒドリンゴムの割合は10質量%であった。
〈比較例1〉
ベースポリマのうち(1)の混合ニトリルゴムの量を18質量部、(2)のクロロプレンゴムの量を70質量部、(3)のエピクロルヒドリンゴムの量を12質量部とし、かつ導電性カーボンブラックの量を11質量部、受酸剤の量を6質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラを製造した。
【0078】
前記混合ニトリルゴムN、クロロプレンゴムC、およびエピクロルヒドリンゴムEの質量比(C+E)/N=82/18であった。またベースポリマの総量中に占めるクロロプレンゴムの割合は70質量%、エピクロルヒドリンゴムの割合は12質量%であった。
〈比較例2〉
ベースポリマのうち(1)の混合ニトリルゴムの量を92質量部、(2)のクロロプレンゴムの量を3質量部、(3)のエピクロルヒドリンゴムの量を5質量部としたこと以外は実施例7と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラを製造した。
【0079】
前記混合ニトリルゴムN、クロロプレンゴムC、およびエピクロルヒドリンゴムEの質量比(C+E)/N=8/92であった。またベースポリマの総量中に占めるクロロプレンゴムの割合は3質量%、エピクロルヒドリンゴムの割合は5質量%であった。
〈比較例3〉
ベースポリマとして、実施例1で使用したのと同じ(2)のクロロプレンゴム20質量部、および(3)のエピクロルヒドリンゴム70質量部と、
(3)″ エピクロルヒドリンゴム〔GECO、日本ゼオン(株)製のゼオスパン(登録商標)8030、EO/EP/AGE=90/4/6(モル比)〕10質量部
とを配合するとともに、導電性カーボンブラックの量を10質量部、受酸剤の量を6質量部とし、さらに酸化チタン〔チタン工業(株)製の商品名KRONOS KR380〕20質量部を加えたこと以外は実施例7と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラを製造した。
【0080】
〈比較例4〉
ベースポリマとして、実施例1で使用したのと同じ(2)のクロロプレンゴム30質量部、および実施例6で使用したのと同じ(3)′のエピクロルヒドリンゴム50質量部と、液状ニトリルゴムを含まない固形ニトリルゴム〔日本ゼオン(株)製のNipol 401LL〕20質量部とを配合するとともに、導電性カーボンブラックの量を10質量部とし、さらに酸化チタン〔チタン工業(株)製の商品名KRONOS KR380〕20質量部を加えたこと以外は実施例7と同様にしてゴム組成物を調製し、導電性ローラを製造した。
【0081】
〈ショアA硬さの測定〉
前記各実施例、比較例で製造した導電性ローラのローラ本体のショアA硬さを、日本工業規格JIS K6253に記載の測定方法に則って温度23±1℃、両端荷重1000gfの条件で測定した。
〈ローラ抵抗の測定〉
実施例、比較例で製造途中の半導電性ローラの、ローラ本体の外周面に酸化膜を形成する前のローラ抵抗を、先に説明した測定方法によって測定した。なお表3、表4ではローラ抵抗をlogR値で示している。
【0082】
〈表面粗さ測定〉
ローラ本体の表面粗さRzを、日本工業規格JIS B0601−1994に従って測定した。
〈初期特性評価〉
実施例、比較例で製造した半導電性ローラを市販のレーザープリンタ〔プラス帯電の非磁性1成分トナーを使用したもので、トナー推奨印刷枚数約7000枚相当〕のトナーカートリッジに現像ローラとして組み込んで、温度23±1℃、相対湿度55±1%の常温常湿環境下、前記レーザープリンタを用いて5%濃度の画像を100枚連続して画像形成し、次の101枚目に25%濃度のハーフトーン画像を形成した。
【0083】
次いでレーザープリンタからトナーカートリッジを取り外し、現像ローラに対して上方から吸引型帯電量測定器〔トレック社製のQ/M METER Model 210HS−2〕を用いてトナーを吸引して帯電量(μC)とトナー質量(mg)とを測定した。そして前記帯電量(μC)とトナー質量(mg)とから、単位質量あたりのトナー帯電量(μC/g)を求めて初期帯電量とした。またトナー質量(mg)と、吸引された面積(cm)とから、単位面積あたりのトナー搬送量(mg/cm)を求めて初期搬送量とした。
【0084】
〈現像効率評価〉
前記と同じレーザープリンタを用いて画像形成した際に、トナー量の変化、すなわち形成画像におけるトナー積層量の変化を指標として現像効率を評価した。トナー積層量は、以下に示す透過濃度の測定から求めた。
すなわち温度23±1℃、相対湿度55±1%の常温常湿環境下、前記レーザープリンタを用いて5%濃度の画像を100枚連続して画像形成し、次の101枚目に黒ベタ画像を形成して、前記黒ベタ画像上の任意の5点における透過濃度を、反射透過濃度計〔TECHKON社製の「テシコン濃度計RT120/ライトテーブルLP20」〕を用いて測定し、その平均値を取って、下記の基準で、各半導電性ローラの現像効率を評価した。
【0085】
透過濃度は1.6以下:極めて薄い。トナー積層量極めて小。現像効率極はめて低い(×)。
透過濃度は1.6を超え、1.8以下:薄い。トナー積層量小。現像効率は低い(△)。
透過濃度は1.8を超え、2.0以下:やや薄い。トナー積層量やや小。現像効率はやや低いものの実用上支障なし(○)。
【0086】
透過濃度は2.0を超え、2.4以下:適度。トナー積層量良好。現像効率は良好(◎)。
透過濃度は2.4超:濃い。トナー積層量大。現像効率は高すぎる(×)。
〈耐久性評価〉
温度30±1℃、相対湿度80±1%の高温高湿環境下、前記と同じレーザープリンタを用いて、5%濃度の画像を15秒間に1枚画像形成する間欠通紙(先の画像形成が完全に終了した後に、一旦停止時間を設けて再び画像形成する)を1日に1500回実施し、トナー切れて停止した際の画像におけるかぶりの有無を目視にて観察して、下記の基準で耐久性を評価した。
【0087】
かぶりなし、もしくは目視では観察できない程度の僅かなかぶりあり:段階1。
紙面端部に僅かなかぶりあり:段階2。
紙面端部に明確なかぶり:段階3。
紙面全面に僅かなかぶりあり:段階4。
紙面全面に明確なかぶりあり:段階5。
【0088】
そして段階1をきわめて良好(◎)、段階2を良好(○)、段階3〜5を不良(×)として評価した。
以上の結果を表3、表4に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
【表4】

【0091】
表3、表4の比較例1〜4、実施例1〜7の結果より、ベースポリマとして(1)〜(3)の3種のゴムを組み合わせ、かつその質量比(C+E)/Nを10/90〜80/20の範囲内とするとともに、ローラ本体のショアA硬さを60以下、半導電性ローラのローラ抵抗を10Ω以上、10Ω以下とすることにより、前記半導電性ローラを現像ローラとして使用した際に、現像効率を高めて初期画像の画質を向上できるとともに、トナーを使い切る前にかぶり等の画像不良が生じるのを防止できることが確認された。
【符号の説明】
【0092】
1 半導電性ローラ
2 ローラ本体
3 通孔
4 シャフト
5 外周面
6 酸化膜
7 アルミニウムドラム
8 外周面
9 直流電源
10 抵抗
11 計測回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも最外層が半導電性ゴム組成物の架橋物で形成されたローラ本体を有する半導電性ローラであって、
前記半導電性ゴム組成物はベースポリマを含み、前記ベースポリマは、
(1) 液状ニトリルゴムと固形ニトリルゴムとの混合ゴムN、
(2) クロロプレンゴムC、および
(3) エピクロルヒドリンゴムE、
の、質量比(C+E)/N=10/90〜80/20の混合物であるとともに、前記ベースポリマの総量中に占める前記クロロプレンゴムの割合が5質量%以上、前記エピクロルヒドリンゴムの割合が5質量%以上であり、
前記ローラ本体のショアA硬さは60以下で、かつ前記半導電性ローラは、印加電圧5Vでのローラ抵抗が10Ω以上、10Ω以下であることを特徴とする半導電性ローラ。
【請求項2】
前記ローラ本体は前記架橋物にて一体に形成されており、前記ローラ本体の外周面には、紫外線照射による酸化膜が形成されている請求項1記載の半導電性ローラ。
【請求項3】
電子写真法を利用した画像形成装置に用いるトナー搬送ローラであって、請求項1または2に記載の半導電性ローラからなることを特徴とするトナー搬送ローラ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−22193(P2012−22193A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160806(P2010−160806)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】