説明

半導電性ローラ

【課題】非多孔質のローラ本体を備えるとともに、前記ローラ本体が柔軟であり、例えば現像ローラとして用いた際にはトナー帯電量が高い上、ローラ本体へのトナーの付着による画像濃度の低下等を生じにくく、しかも画像耐久性等にも優れた半導電性ローラを提供する。
【解決手段】半導電性ローラ1は、ゴム分として、スチレンブタジエンゴム、およびエピクロルヒドリンゴムを含むゴム組成物を用いて非多孔質のローラ本体2を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばレーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の、電子写真法を利用した画像形成装置において、現像ローラや帯電ローラ等として好適に用いることができる半導電性ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真法を利用した前記各種の画像形成装置においては、高速化、高画質化、カラー化、小型化といった要求に対応するために種々の改良が進んでいる。
これらの改良において鍵となるのがトナーである。すなわち、前記種々の要求を満足するために必要となるのが、トナーの微細化、トナー粒径の均一化、およびトナー形状の球形化である。
【0003】
トナーの微細化については、平均粒径が10μm以下、さらには5μm以下といった微細なトナーが開発されるに至っている。またトナー形状の球形化については、真球度が99%を上回るトナーが開発されている。
さらに形成画像のより一層の高画質化を求めて、従来の粉砕トナーに代えて、重合トナーが主流となりつつある。かかる重合トナーは、特にデジタル情報を画像形成する際にドットの再現性が非常によく、高画質な画像が得られるという利点がある。
【0004】
画像形成装置においては、感光体の表面を一様に帯電させるための帯電ローラや、前記帯電させた感光体の表面を露光して形成される静電潜像をトナー像に現像するための現像ローラなどが用いられる。
前記現像ローラや帯電ローラとしては、例えばゴム分に導電性カーボンブラック等の電子導電性付与剤を配合したゴム組成物の架橋物からなるローラ本体を備えるとともに、前記ローラ本体の中心に金属等からなるシャフトを挿通したものが一般的に用いられる。
【0005】
このうち現像ローラとしては、前記トナーの微細化、均一化、球形化や、あるいは重合トナーへの移行の流れに対応して、前記トナーに高い帯電性を付与できる上、ローラ本体にトナーを付着させることなく効率的に、静電潜像をトナー像に現像するために、ローラ抵抗値が10Ω以下に調整された半導電性ローラを用いるのが有効である。
また帯電ローラとしても、感光体の表面等を、できるだけ低い消費電力で、効率よく短時間で帯電させるために、ローラ抵抗値が前記範囲内に調整された半導電性ローラを用いるのが効果的である。
【0006】
前記半導電性ローラに課される様々な要求に対応するため、例えばゴム組成物を構成するゴム分の種類、添加剤の種類や配合、構造等が種々検討されている。
例えば、半導電性ローラをできるだけ生産性良く、低コストで製造するためには、ローラ本体を、非多孔質でかつ単層構造に形成するのが好ましい。
また、かかる非多孔質で単層構造のローラ本体を備えた半導電性ローラを現像ローラとして用いた際のトナー帯電量の低下を抑制して画質のよい画像を形成するために、ゴム分としては、例えばクロロプレンゴムやエピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性ゴムの使用が検討されている。
【0007】
しかし、ゴム分としてイオン導電性ゴムを使用したゴム組成物からなるローラ本体を備えた半導電性ローラを、実際に現像ローラとして使用して画像形成すると、前記ローラ本体へのトナーの付着による形成画像の画像濃度の低下が発生する。
そこで特許文献1においては、前記トナーの付着による画像濃度の低下を抑制して適度の画像濃度を確保するため、前記ゴム組成物に、トナーの付着を防止する機能を有する充填剤(酸化チタン等)を配合することが提案されているが、前記充填剤を少量配合しただけでは、前記効果は十分には得られない。
【0008】
しかし、前記効果が十分に得られる範囲まで充填剤の配合量を増加させるとローラ本体の硬度が上昇して、別の新たな問題を生じる。すなわちトナーの劣化を生じやすくなって画像耐久性が低下したり、感光体の表面にローラ本体を圧接させた際のニップ幅が狭くなって形成画像の画質が低下したりする。
なお画像耐久性とは、同じトナーを繰り返し画像形成に使用した際に、形成画像の画質をどれだけの間、良好に維持できるかを表す指標である。1回の画像形成には、画像形成装置の現像部に収容されたトナーのごく一部しか使用されず、残りの大部分のトナーは現像部内を繰り返し循環する。そのため現像部内に設けられてトナーと繰り返し接触する現像ローラが、前記トナーにどれだけダメージを与えるか、あるいは与えないかが、画像耐久性を向上する上での大きな鍵となる。
【0009】
画像耐久性が低下すると、形成画像にカブリが発生しやすくなる。カブリとは、劣化したトナートナーが、形成画像の余白部分にも拡がって画質を低下させる現象である。
ゴム組成物に発泡剤を配合する等してローラ本体を多孔質構造として、柔軟性を付与することも考えられるが、かかる多孔質のローラ本体は、非多孔質のものよりも耐久寿命が短いため、比較的短期間でヘタリ等を生じて交換しなければならなくなるという問題がある。
【0010】
特許文献2においては、互いに非相溶であるアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)とスチレンブタジエンゴム(SBR)の混合物からなる海島構造を有し、かつイオン導電化剤を含有させた表面層を、導電性弾性体層の外周面に積層した2層構造のローラ本体を備えた半導電性ローラが提案されている。
前記イオン導電化剤としては、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カルシウム、長鎖アルキル4級アンモニウム過塩素酸塩等が例示されている。
【0011】
前記抵抗層の構成を採用して単層構造の半導電性ローラを形成することが考えられる。その場合、前記イオン導電化剤によって低いローラ抵抗値を維持しながら、イオン導電性ゴムを含まないためトナーの付着を防止することができる。
しかし前記抵抗層の構成では、例えば電界をかけ続けた際や高温に曝された際等に、前記イオン導電化剤が表面に染み出しやすく、染み出したイオン導電化剤が感光体等の表面に移行して形成画像の画質を低下させるという問題を生じる。
【0012】
特許文献3においては、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、NBR、およびSBRの混合物からなり、導電性カーボンブラック(カーボン導電性物質)を含有させた弾性層の外周面に、フッ素系材料からなる表面層を積層した2層構造のローラ本体を備えた半導電性ローラが提案されている。
しかし導電剤として導電性カーボンブラックのみを使用して電子導電性を付与した場合は、上記のようにその外周面を表面層で被覆する等、積層構造にしなければ、ローラ抵抗値を安定させることができない。すなわちローラ本体を単層構造にすることはできず、製造工程や使用材料が増加する分、半導電性ローラの生産性が低下するとともに製造コストが高くつくという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−72445号公報
【特許文献2】特開平9−114189号公報
【特許文献3】特開2002−278320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、非多孔質のローラ本体を備えるとともに、前記ローラ本体が柔軟であり、例えば現像ローラとして用いた際にはトナー帯電量が高い上、ローラ本体へのトナーの付着による画像濃度の低下等を生じにくく、しかも画像耐久性等にも優れた半導電性ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、発明者は、ローラ本体のもとになるゴム組成物のうち特にゴム分の組み合わせについて検討した結果、前記ゴム分として、SBRを、イオン導電性ゴムのうちエピクロルヒドリンゴムと併用すればよいことを見出した。
前記SBRは、他のゴム分、例えばNBR等と比べて電気抵抗値が低いため、同じローラ抵抗値を有するローラ本体を形成するために必要なエピクロルヒドリンゴムの配合割合を少なくできる。
【0016】
そのため、前記2種のゴム分を併用して非多孔質のローラ本体を形成すると、前記ローラ本体を備えた半導電性ローラを現像ローラとして用いた際に、良好なトナー帯電量を維持しながら、主にエピクロルヒドリンゴムが原因で発生するローラ本体へのトナーの付着による画像濃度の低下等を抑制することができる。
またそのため、充填剤の配合量を極力少なくして、非多孔質にも拘らずローラ本体の良好な柔軟性を維持することもでき、トナーの劣化を生じにくくして画像耐久性を向上したり、形成画像の画質が低下するのを抑制したりすることが可能となる。
【0017】
したがって本発明は、ゴム分として、スチレンブタジエンゴム、およびエピクロルヒドリンゴムを含むゴム組成物からなる非多孔質のローラ本体を備えることを特徴とする半導電性ローラである。
前記スチレンブタジエンゴムの配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり10質量部以上、80質量部以下であるのが好ましい。
【0018】
配合割合が前記範囲未満では、相対的にエピクロルヒドリンゴムの量が多くなるため、現像ローラとして使用した際に、ローラ本体にトナーが付着しやすくなって、形成画像の画像濃度が低下するおそれがある。
一方、前記範囲を超える場合には、相対的にエピクロルヒドリンゴムの量が少なくなるためローラ抵抗値が上昇して、現像ローラとして使用した際に、トナー帯電量が低下するおそれがある。
【0019】
前記ゴム組成物は、ゴム分として、さらにNBR、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、およびアクリルゴム(ACM)からなる群より選ばれた少なくとも1種の極性ゴムをも含んでいるのが好ましい。前記極性ゴムを併用することで、ローラ本体のローラ抵抗値を微調整することができる。
また前記ゴム組成物は、ゴム分として、さらにEPDMをも含んでいるのが好ましい。前記EPDMを併用することで、画像形成装置内での使用時に、熱や水、オゾン等による半導電性ローラの劣化を抑制することができる。
【0020】
先に説明したように、半導電性ローラをできるだけ生産性良く、低コストで製造するためには、ローラ本体を、非多孔質でかつ単層構造に形成するのが好ましく、本発明においても、従来同様にローラ本体を非多孔質で、かつ基本的には単層構造に形成するのが好ましい。ただし、前記ローラ本体の外周面には酸化膜を形成してもよい。
酸化膜を形成すると、前記酸化膜が誘電層として機能して半導電性ローラの誘電正接を低減できる。また現像ローラとして使用した場合は酸化膜が低摩擦層となることでトナーの付着をさらに抑制できる。
【0021】
しかも酸化膜は、例えば酸化性雰囲気中で紫外線照射等するだけで簡単に形成できるため、半導電性ローラの生産性が低下したり製造コストが高くついたりするのを極力抑制することもできる。
前記本発明の半導電性ローラは、以上で説明したように、電子写真法を利用した画像形成装置内で、感光体の表面に形成される静電潜像を、帯電させたトナーによってトナー像に現像するための現像ローラとして用いるのが好ましい。
【0022】
ただし本発明の半導電性ローラは、前記画像形成装置内で感光体の表面を一様に帯電させるための帯電ローラ等として使用することもできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、非多孔質のローラ本体を備えるとともに、前記ローラ本体が柔軟であり、例えば現像ローラとして用いた際にはトナー帯電量が高い上、ローラ本体へのトナーの付着による画像濃度の低下等を生じにくく、しかも画像耐久性等にも優れた半導電性ローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の半導電性ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】前記半導電性ローラのローラ抵抗値を測定する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の半導電性ローラは、ゴム分として、スチレンブタジエンゴム、およびエピクロルヒドリンゴムを含むゴム組成物からなる非多孔質のローラ本体を備えることを特徴とする。
(SBR)
SBRとしては、スチレンと1,3−ブタジエンとを乳化重合法、溶液重合法等の種々の重合法によって共重合させて合成される種々のSBRがいずれも使用可能である。またSBRとしては伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、このいずれも使用可能である。
【0026】
さらにSBRとしては、スチレン含量によって分類される高スチレンタイプ、中スチレンタイプ、および低スチレンタイプのSBRがいずれも使用可能である。スチレン含量や架橋度を変更することで、ローラ本体の各種物性を調整することができる。
これらSBRの1種または2種以上を使用することができる。
SBRの配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり10質量部以上であるのが好ましく、80質量部以下であるのが好ましい。
【0027】
配合割合が前記範囲未満では、相対的にエピクロルヒドリンゴムの量が多くなるため、現像ローラとして使用した際に、ローラ本体にトナーが付着しやすくなって、形成画像の画像濃度が低下するおそれがある。
一方、前記範囲を超える場合には、相対的にエピクロルヒドリンゴムの量が少なくなるためローラ抵抗値が上昇して、現像ローラとして使用した際に、トナー帯電量が低下するおそれがある。
【0028】
(エピクロルヒドリンゴム)
エピクロルヒドリンゴムとしては、繰り返し単位としてエピクロルヒドリンを含む種々の重合体が挙げられる。
前記エピクロルヒドリンゴムとしては、例えばエピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド二元共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル二元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、およびエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体等の1種または2種以上が挙げられる。
【0029】
特にエピクロルヒドリンゴムとしては、エチレンオキサイドを含む共重合体が好ましく、かかる共重合体におけるエチレンオキサイド含量は30〜95モル%、中でも55〜95モル%、特に60〜80モル%であるのが好ましい。
エチレンオキサイドは電気抵抗値を下げる働きがあるが、エチレンオキサイド含量が前記範囲未満であると、かかる電気抵抗値の低減効果が小さい。一方、エチレンオキサイド含量が前記範囲を超える場合には、エチレンオキサイドの結晶化が起こり分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、逆に電気抵抗値が上昇する傾向がある。また、架橋後のローラ本体の硬度が上昇したり、架橋前のゴム組成物の、加熱溶融時の粘度が上昇したりするおそれもある。
【0030】
前記エピクロルヒドリンゴムとしては、特にエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)が好ましい。
前記ECOにおけるエチレンオキサイド含量は30〜80モル%、特に50〜80モル%であるのが好ましい。またエピクロルヒドリン含量は20〜70モル%、特に20〜50モル%であるのが好ましい。
【0031】
またエピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)を用いることもできる。
前記GECOにおけるエチレンオキサイド含量は30〜95モル%、特に60〜80モル%であるのが好ましい。またエピクロルヒドリン含量は4.5〜65モル%、特に15〜40モル%以上であるのが好ましい。さらにアリルグリシジルエーテル含量は0.5〜10モル%、特に2〜6モル%であるのが好ましい。
【0032】
なおGECOとしては、前記3種の単量体を共重合させた狭義の意味での共重合体のほかに、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体(ECO)をアリルグリシジルエーテルで変性した変性物も知られており、本発明ではいずれの共重合体も使用可能である。
エピクロルヒドリンゴムの配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり5質量部以上であるのが好ましく、40質量部以下であるのが好ましい。
【0033】
配合割合が前記範囲未満ではローラ抵抗値が上昇して、現像ローラとして使用した際に、トナー帯電量が低下するおそれがある。
一方、前記範囲を超える場合には、現像ローラとして使用した際に、ローラ本体にトナーが付着しやすくなって、形成画像の画像濃度が低下するおそれがある。
(極性ゴム)
極性ゴムを配合すると、ローラ本体のローラ抵抗値を微調整することができる。前記極性ゴムとしては、例えばNBR、CR、BR、ACMの1種または2種以上が挙げられる。
【0034】
特にNBRが好ましい。NBRとしては、アクリロニトリル含量によって分類される低ニトリルNBR、中ニトリルNBR、中高ニトリルNBR、高ニトリルNBR、および極高ニトリルNBRがいずれも使用可能である。
ゴム組成物は、前記極性ゴム(P)を、SBR(S)に対して、質量比で、式(2):
S>P (2)
を満足する範囲で含んでいるのが好ましい。
【0035】
式(2)を満足しない場合には、相対的にSBRの量が少なくなって、前記SBRを配合することによる、先に説明した効果が十分に得られないおそれがある。
極性ゴムの配合割合は、前記式(2)を満足する範囲内で、目的とするローラ本体のローラ抵抗値に応じて任意に設定できるが、特にゴム分の総量100質量部あたり5質量部以上であるのが好ましく、40質量部以下であるのが好ましい。
【0036】
配合割合が前記範囲未満では、ローラ本体のローラ抵抗値を微調整する効果が十分に得られないおそれがある。
また前記範囲を超える場合には、相対的にSBRの量が少なくなって、前記SBRを配合することによる、先に説明した効果が十分に得られないおそれがある。また相対的にエピクロルヒドリンゴムの量が少なくなるためローラ抵抗値が上昇して、現像ローラとして使用した際に、トナー帯電量が低下するおそれもある。
【0037】
(EPDM)
EPDMを配合すると、画像形成装置内での使用時に、熱や水、オゾン等による半導電性ローラの劣化を抑制することができる。
EPDMとしては、エチレンとプロピレンに少量の第3成分(ジエン分)を加えることで主鎖中に二重結合を導入した種々のEPDMが、いずれも使用可能である。前記EPDMとしては、前記第3成分の種類や量の違いによる様々な製品が提供されている。代表的な第3成分としては、例えばエチリデンノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン(1,4−HD)、ジシクロペンタジエン(DCP)等が挙げられる。重合触媒としてはチーグラー触媒を使用するのが一般的である。
【0038】
EPDMの配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり5質量部以上であるのが好ましく、20質量部以下であるのが好ましい。
配合割合が前記範囲未満では、前記EPDMを配合することによる、先に説明した効果が十分に得られないおそれがある。
また前記範囲を超える場合には、相対的にSBRの量が少なくなって、前記SBRを配合することによる、先に説明した効果が十分に得られないおそれがある。また相対的にエピクロルヒドリンゴムの量が少なくなるためローラ抵抗値が上昇して、現像ローラとして使用した際に、トナー帯電量が低下するおそれもある。
【0039】
(架橋剤、促進剤、促進助剤)
ゴム組成物には、ゴム分を架橋させるための架橋剤、促進剤、促進助剤等が配合される。
前記のうち架橋剤としては、例えば硫黄系架橋剤、チオウレア系架橋剤、トリアジン誘導体系架橋剤、過酸化物系架橋剤、各種モノマー等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄や有機含硫黄化合物等が挙げられる。また有機含硫黄化合物等としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、N,N−ジチオビスモルホリン等が挙げられる。
チオウレア系架橋剤としては、例えばテトラメチルチオウレア、トリメチルチオウレア、エチレンチオウレア、(C2n+1NH)C=S〔式中、nは1〜10の整数を示す。〕で表されるチオウレア等が挙げられる。
【0041】
過酸化物系架橋剤としてはベンゾイルペルオキシド等が挙げられる。
架橋剤としては、硫黄とチオウレア類とを併用するのが好ましい。
前記併用系において硫黄の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上、特に0.2質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に2質量部以下であるのが好ましい。
【0042】
配合割合が前記範囲未満では、ゴム組成物の全体での架橋速度が遅くなり、架橋に要する時間が長くなって半導電性ローラの生産性が低下するおそれがある。また前記範囲を超える場合には架橋後のローラ本体の圧縮永久ひずみが大きくなったり、過剰の硫黄がローラ本体の外周面にブルームしたりするおそれがある。
またチオウレア類の配合割合は、ゴム分の総量100gあたりのモル数で表して0.0009モル以上、特に0.0015モル以上であるのが好ましく、0.0800モル以下、特に0.0400モル以下であるのが好ましい。
【0043】
チオウレア類の配合割合を前記範囲内とすることにより、ブルームや感光体汚染を起こしにくくできる上、ゴムの分子運動をあまり妨げないため、半導電性ローラのローラ抵抗値をより低くすることができる。
なお、前記範囲内でチオウレア類の配合割合を増やして架橋密度を高めるほど、ローラ抵抗値を低下させることができる。
【0044】
すなわち、ゴム分の総量100gあたりのチオウレア類の配合割合が0.0009モル未満ではローラ本体の圧縮永久ひずみを改善しにくく、またローラ抵抗値を十分に低下させることができない。―方、0.0800モルを超えるとブルームや感光体汚染を生じたり、破断伸び等の機械的物性が低下したりしやすい。
架橋剤の種類に応じて、さらに促進剤や促進助剤を配合してもよい。
【0045】
促進剤としては、例えば消石灰、マグネシア(MgO)、リサージ(PbO)等の無機促進剤や、下記の有機促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。
また有機促進剤としては、例えば1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩等のグアニジン系促進剤;2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系促進剤;N−シクロへキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系促進剤;チオウレア系促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。
【0046】
促進剤は、種類によってその機能が異なっているため、2種以上の促進剤を併用するのが好ましい。
個々の促進剤の配合割合は、その種類によって個別に設定できるが、通常はゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上、特に0.5質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に2質量部以下であるのが好ましい。
【0047】
促進助剤としては、亜鉛華等の金属化合物;ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸、その他従来公知の促進助剤の1種または2種以上が挙げられる。
促進助剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上、特に0.5質量部以上であるのが好ましい。
(その他)
ゴム組成物には、さらに必要に応じて各種の添加剤を配合してもよい。前記添加剤としては、例えば受酸剤、可塑成分(可塑剤、加工助剤等)、劣化防止剤、充填剤、スコーチ防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤、気泡防止剤、共架橋剤等が挙げられる。
【0048】
このうち受酸剤は、ゴム分の架橋時にエピクロルヒドリンゴムから発生する塩素系ガスの、ローラ本体内への残留と、それによる架橋阻害や感光体の汚染等を防止するために機能する。
前記受酸剤としては、酸受容体として作用する種々の物質を用いることができるが、分散性に優れていることからハイドロタルサイト類またはマグサラットが好ましく、特にハイドロタルサイト類が好ましい。
【0049】
また、前記ハイドロタルサイト類等を酸化マグネシウムや酸化カリウムと併用するとより高い受酸効果を得ることができ、感光体の汚染をより一層確実に防止できる。
前記受酸剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.2質量部以上、特に1質量部以上であるのが好ましく、10質量部以下、特に5質量部以下であるのが好ましい。
【0050】
配合割合が前記範囲未満では、受酸剤を含有させることによる前記効果が十分に得られないおそれがある。また前記範囲を超える場合には、架橋後のローラ本体の硬さが上昇するおそれがある。
可塑剤としては、例えばジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、トリクレジルホスフェート等の各種可塑剤やワックス等が挙げられる。
【0051】
また加工助剤としてはステアリン酸等の脂肪酸などが挙げられる。
これら可塑成分の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり5質量部以下であるのが好ましい。例えばローラ本体の外周面に、必要に応じて酸化膜を形成する際にブリードを生じたり、画像形成装置への装着時や運転時に感光体の汚染を生じたりするのを防止するためである。かかる目的に鑑みると、可塑成分としては極性ワックスを使用するのが特に好ましい。
【0052】
劣化防止剤としては、各種の老化防止剤や酸化防止剤等が挙げられる。
このうち酸化防止剤は、半導電性ローラのローラ抵抗値の環境依存性を低減するとともに、連続通電時のローラ抵抗値の上昇を抑制する働きをする。前記酸化防止剤としては、例えばジエチルジチオカルバミン酸ニッケル〔大内新興化学工業(株)製のノクラック(登録商標)NEC−P〕、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル〔大内新興化学工業(株)製のノクラックNBC〕等が挙げられる。
【0053】
ローラ本体の外周面に酸化膜を形成する場合で、ゴム組成物に酸化防止剤を配合する場合は、前記酸化膜の形成が効率よく進むように、前記酸化防止剤の配合割合を適宜設定するのが好ましい。
充填剤としては、例えば酸化亜鉛、シリカ、カーボン、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン等の1種または2種以上が挙げられる。
【0054】
充填剤を配合することにより、ローラ本体の機械的強度等を向上できる。また充填剤として酸化チタンを配合することにより、トナーの付着を抑制することもできる。
また充填剤として導電性カーボンブラックを用いて、ローラ本体に電子導電性を付与することもできる。
充填剤の配合割合は、非多孔質のローラ本体に良好な柔軟性を付与することを考慮すると、ゴム分の総量100質量部あたり50質量部以下、特に10質量部以下であるのが好ましい。
【0055】
スコーチ防止剤としては、例えばN−シクロへキシルチオフタルイミド、無水フタル酸、N−ニトロソジフエニルアミン、2,4−ジフエニル−4−メチル−1−ペンテン等の1種または2種以上が挙げられる。特にN−シクロへキシルチオフタルイミドが好ましい。
スコーチ防止剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に1質量部以下であるのが好ましい。
【0056】
共架橋剤とは、それ自体が架橋するとともにゴム分とも架橋反応して全体を高分子化する働きを有する成分を指す。
前記共架橋剤としては、例えばメタクリル酸エステルや、あるいはメタクリル酸またはアクリル酸の金属塩等に代表されるエチレン性不飽和単量体、1,2−ポリブタジエンの官能基を利用した多官能ポリマ類、ジオキシム等の1種または2種以上が挙げられる。
【0057】
このうちエチレン性不飽和単量体としては、例えば
(a) アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸類、
(b) マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸類、
(c) 前記(a)(b)の不飽和カルボン酸類のエステルまたは無水物、
(d) 前記(a)〜(c)の金属塩、
(e) 1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどの脂肪族共役ジエン、
(f) スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物、
(g) トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ビニルピリジンなどの複素環を有するビニル化合物、
(h) その他、(メタ)アクリロニトリルもしくはα−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、アクロレイン、ホルミルステロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン
等の1種または2種以上が挙げられる。
【0058】
また前記(c)の不飽和カルボン酸類のエステルとしては、モノカルボン酸類のエステルが好ましい。
前記モノカルボン酸類のエステルとしては、例えば
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ぺンチル(メタ)アクリレート、i−ぺンチル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;
アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル;
べンジル(メタ)アクリレート、ベンゾイル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートなどの芳香族環を有する(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレート、メタグリシジル(メタ)アクリレート、エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基を有する(メタ)アクリレート;
N−メチロール(メタ)アクリルアミド、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、テトラハイドロフルフリルメタクリレートなどの各種官能基を有する(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンジメタクリレート(EDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、イソブチレンエチレンジメタクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート;
等の1種または2種以上が挙げられる。
【0059】
前記各成分を含むゴム組成物は、従来同様に調製できる。まずゴム分を、所定の割合で配合して素練りし、次いで架橋成分以外の添加剤を加えて混練した後、最後に架橋成分を加えて混練することでゴム組成物が得られる。前記混練には、例えばニーダ、バンバリミキサ、押出機等を用いることができる。
〈半導電性ローラ〉
図1は、本発明の半導電性ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
【0060】
図1を参照して、この例の半導電性ローラ1は、前記ゴム組成物からなる円筒状のローラ本体2と、前記ローラ本体2の中心の通孔3に挿通されたシャフト4とを備えている。
ローラ本体2は非多孔質に形成される。またローラ本体2は、半導電性ローラ1をできるだけ生産性良く、低コストで製造するため、基本的には図に示すように単層構造に形成するのが好ましい。
【0061】
しかしローラ本体2は、場合によっては、外周面5側の外層とシャフト4側の内層の2層構造に形成してもよい。その場合は、少なくとも外層を前記ゴム組成物によって形成すればよい。
シャフト4は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属によって一体に形成される。ローラ本体2とシャフト4とは、例えば導電性を有する接着剤等により電気的に接合されると共に機械的に固定されて一体に回転される。
【0062】
ローラ本体2の外周面5には、図中に拡大して示すように酸化膜6を設けてもよい。
酸化膜6を形成すると、前記酸化膜6が誘電層として機能して半導電性ローラ1の誘電正接を低減できる。また現像ローラとして使用した場合は酸化膜6が低摩擦層となることでトナーの付着をさらに抑制できる。
しかも酸化膜6は、例えば酸化性雰囲気中で紫外線照射等するだけで簡単に形成できるため、半導電性ローラの生産性が低下したり製造コストが高くついたりするのを極力抑制することもできる。
【0063】
ただし酸化膜6は形成しなくてもよい。
前記半導電性ローラ1は、先に説明した各成分を含むゴム組成物を用いて、従来同様に製造することができる。
すなわちゴム組成物を、押出成形機を用いて混練しながら加熱して溶融させた状態で、前記ローラ本体2の断面形状、すなわち円環状に対応するダイを通して長尺の円筒状に押出成形する。
【0064】
次いで冷却して固化させたのち、通孔3に加硫用の仮のシャフトを挿通して加硫缶内で加熱して加硫させる。
次いで外周面に導電性の接着剤を塗布したシャフト4に装着しなおして、前記接着剤が熱硬化性接着剤である場合は加熱により前記熱硬化性接着剤を硬化させてローラ本体2とシャフト4とを電気的に接合するとともに機械的に固定する。
【0065】
そして必要に応じてローラ本体2の外周面5を所定の表面粗さになるように研磨し、さらに必要に応じて紫外線を照射する等して酸化させて、前記外周面5を被覆する酸化膜6を生成させる。これにより図1に示す半導電性ローラ1が製造される。
前記半導電性ローラ1は、例えばレーザープリンタ等の、電子写真法を利用した画像形成装置に組み込んで、感光体の表面に形成される静電潜像を、帯電させたトナーによってトナー像に現像するための現像ローラとして好適に使用することができる。
【0066】
その場合は、トナー帯電量が高い上、ローラ本体へのトナーの付着による画像濃度の低下等を生じにくく、しかも画像耐久性等にも優れた現像ローラとすることができる。
また前記半導電性ローラ1は、オナジク画像形成装置に組み込んで、感光体の表面を一様に帯電させるための帯電ローラ等として使用することもできる。
ローラ本体2の厚みは、例えば現像ローラとして使用する場合、前記現像ローラの小型化、軽量化を図りながら適度なニップ厚を確保するために、0.5mm以上、中でも1mm以上、特に2mm以上であるのが好ましく、10mm以下、中でも7mm以下、特に5mm以下であるのが好ましい。
【0067】
また、ローラ本体のショアA硬さは60以下、特に50以下であるのが好ましい。
ショアA硬さが前記範囲を超えるローラ本体は柔軟性が不足し、広いニップ幅を確保してトナーの現像効率を向上する効果や、トナーへのダメージを低減して画像耐久性を向上する効果が十分に得られないおそれがある。
なおローラ本体2に適度な強度を付与して、例えば前記ローラ本体2の両端からトナーが漏出するのを防止するためにその外周面5に摺接されるシール部等に対する適度な耐摩耗性等を付与することを考慮すると、ローラ本体2のショアA硬さは、前記範囲内でも35以上であるのが好ましい。
【0068】
前記ショアA硬さを、本発明では日本工業規格JIS K6253に記載の測定方法に則って温度23℃、両端荷重1000gの条件で測定した値でもって表すこととする。
また半導電性ローラ1は、温度23℃、相対湿度55%の条件下で測定される、印加電圧100Vでのローラ抵抗値が10Ω以上、特に106.5Ω以上であるのが好ましく、10Ω以下、特に10Ω以下であるのが好ましい。
【0069】
ローラ抵抗値が前記範囲未満である低抵抗の半導電性ローラ1は、トナーのチャージをリークしやすく、例えば形成画像の面方向にチャージがリークすることで形成画像の解像度等が低下するおそれがある。
またローラ抵抗値が前記範囲を超える高抵抗の半導電性ローラ1では、十分な画像濃度を有する画像を形成できないという問題を生じる。
【0070】
なおローラ抵抗値は、ローラ本体2の外周面5に酸化膜6を形成する場合は、前記酸化膜6を形成した状態でのローラ抵抗値である。
図2は、半導電性ローラ1のローラ抵抗値を測定する方法を説明する図である。
図1、図2を参照して、本発明では前記ローラ抵抗値を、下記の方法で測定した値でもって表すこととする。
【0071】
すなわち一定の回転速度で回転させることができるアルミニウムドラム7を用意し、前記アルミニウムドラム7の外周面8に、その上方から、ローラ抵抗値を測定する半導電性ローラ1の、ローラ本体2の外周面5を当接させる。
また前記半導電性ローラ1のシャフト4と、アルミニウムドラム7との間に直流電源9、および抵抗10を直列に接続して計測回路11を構成する。直流電源9は、(−)側をシャフト4、(+)側を抵抗10と接続する。抵抗10の抵抗値rは、ローラの抵抗値に応じて10Ω〜10Ωの範囲で調整する。
【0072】
次いでシャフト4の両端部にそれぞれ500gの荷重Fをかけてローラ本体2をアルミニウムドラム7に圧接させた状態で、前記アルミニウムドラム7を回転(回転数:30rpm)させながら、前記両者間に、直流電源9から直流100Vの印加電圧Eを印加した際に、抵抗10にかかる検出電圧Vを計測する。
前記検出電圧Vと印加電圧E(=100V)とから、半導電性ローラ1のローラ抵抗値Rは、基本的に式(i′):
R=r×E/(V−r) (i′)
によって求められる。ただし式(i′)中の分母中の−rの項は微小とみなすことができるため、本発明では式(i):
R=r×E/V (i)
によって求めた値でもって半導電性ローラ1のローラ抵抗値とすることとする。測定の条件は、先に説明したように温度23℃、相対湿度55%である。
【0073】
またローラ本体2は、半導電性ローラ1の用途等に応じて任意の圧縮永久ひずみを有するように調整できる。
半導電性ローラ1のローラ抵抗、ローラ本体2のショアA硬さ、および圧縮永久ひずみ等の各特性を調整するためには、例えばゴム組成物を構成する各成分の種類や配合割合等を調整すればよい。
【0074】
具体的には、例えばゴム分としてのSBRやエピクロルヒドリンゴム、あるいは極性ゴムの種類、組み合わせ、および配合割合を調整したり、前記ゴム分を架橋させるための架橋成分の種類、組み合わせ、および量を調整したり、添加剤の種類、組み合わせ、および量を調整したりすればよい。
本発明の半導電性ローラは、前記現像ローラや帯電ローラ等として、例えばレーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の、電子写真法を利用した画像形成装置に好適に使用できる他、前記画像形成装置において、転写ローラ、クリーニングローラ等として用いることもできる。
【実施例】
【0075】
〈実施例1〉
(ゴム組成物の調製)
ゴム分として、SBR〔JSR(株)製のJSR1502〕80質量部と、GECO〔ダイソー(株)製のエピオン(登録商標)ON301、EO/EP/AGE=73/23/4(モル比)〕20質量部とを配合した。ゴム分の総量100質量部あたりの、SBRの配合割合は80質量部であった。
【0076】
前記ゴム分合計100質量部を、バンバリミキサを用いて素練りしながら、下記表1に示す各成分のうち架橋成分以外を加えて混練した後、最後に架橋成分を加えてさらに混練してゴム組成物を調製した。
【0077】
【表1】

【0078】
表1中の各成分は下記のとおり。
硫黄系架橋剤:粉末硫黄
チオウレア類:エチレンチオウレア〔2−メルカプトイミダゾリン、川口化学工業(株)製のアクセル(登録商標)22−S〕
促進剤DM:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド〔チアゾール系促進剤、大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)DM〕
促進剤TS:テトラメチルチウラムモノスルフィド〔チウラム系促進剤、大内新興化学工業(株)製のノクセラーTS〕
促進剤DT:1,3−ジ−o−トリルグアニジン〔グアニジン系促進剤、大内新興化学工業(株)製のノクセラーDT〕
導電性充填剤:導電性カーボンブラック〔電気化学工業(株)製のデンカブラック(登録商標)〕
受酸剤:ハイドロタルサイト類〔協和化学工業(株)製のDHT−4A(登録商標)−2〕
表中の質量部は、前記ゴム分の総量100質量部あたりの質量部である。
【0079】
(半導電性ローラの作製)
前記ゴム組成物を押出成形機に供給して外径φ17.0mm、内径φ6.2mmの円筒状に押出成形した後、前記筒状体を、外径φ7.5mmの架橋用の仮のシャフトに装着して加硫缶内で160℃×1時間架橋させた。
次いで前記筒状体を、外周面に導電性の熱硬化性接着剤を塗布した外径φ10mmのシャフトに装着し直して、オーブン中で160℃に加熱して前記シャフトに接着したのち両端をカットし、外周面を、円筒研磨機を用いてトラバース研磨したのち仕上げとして鏡面研磨をして外径がφ16.0mm(公差0.05)になるように仕上げて、前記シャフトと一体化されたローラ本体を形成した。
【0080】
前記ローラ本体の外周面の表面粗さRzは、日本工業規格JIS B0601−1994に従って測定したところ5±2μmであった。
次いで、研磨後のローラ本体の外周面を水洗いしたのち、UVランプから前記外周面までの距離が10cmになるように設定して紫外線照射装機〔セン特殊光源(株)製のPL21−200〕にセットし、シャフトを中心として90°ずつ回転させながら、波長184.9nmと253.7nmの紫外線を5分間ずつ照射することで前記外周面に酸化膜を形成して半導電性ローラを製造した。
【0081】
〈実施例2〉
ゴム分として、前記SBR70質量部、GECO20質量部、およびCR〔昭和電工(株)製のショウプレン(登録商標)WRT〕10質量部を配合したこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。ゴム分の総量100質量部あたりの、SBRの配合割合は70質量部であった。
【0082】
〈実施例3〉
SBRの量を50質量部、CRの量を30質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。ゴム分の総量100質量部あたりの、SBRの配合割合は50質量部であった。
〈実施例4〉
SBRの量を10質量部、CRの量を70質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。ゴム分の総量100質量部あたりの、SBRの配合割合は10質量部であった。
【0083】
〈実施例5〉
SBRの量を5質量部、CRの量を75質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。ゴム分の総量100質量部あたりの、SBRの配合割合は5質量部であった。
〈実施例6〉
ゴム分として、前記SBR70質量部、GECO20質量部、およびNBR〔中高ニトリルゴム、日本ゼオン(株)製のNipol(登録商標)401LL〕10質量部を配合したこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。ゴム分の総量100質量部あたりの、SBRの配合割合は70質量部であった。
【0084】
〈実施例7〉
ゴム分として、前記SBR70質量部、GECO20質量部、およびEPDM〔住友化学(株)製のエスプレン(登録商標)EPDM505A〕10質量部を配合したこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。ゴム分の総量100質量部あたりの、SBRの配合割合は70質量部であった。
【0085】
〈比較例1〉
ゴム分として、前記NBR30質量部、GECO20質量部、およびCR50質量部を配合したこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
〈比較例2〉
ゴム分として、前記GECO20質量部と、CR80質量部とを配合したこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
【0086】
〈ショアA硬さの測定〉
実施例、比較例で作製した半導電性ローラの、ローラ本体のショアA硬さを、日本工業規格JIS K6253に記載の測定方法に則って温度23℃、両端荷重1000gの条件で測定した。
〈実機試験〉
実施例、比較例で作製した半導電性ローラを、市販のレーザープリンタ用のカートリッジ(トナーを収容したトナー容器、感光体、および現像ローラが一体になったもの)の、既設の現像ローラと交換して、温度23℃、相対湿度55%の常温、常湿環境下で下記の試験を実施した。なおレーザープリンタは、プラス帯電の粉砕タイプの非磁性1成分トナーを使用するもので、印字速度は毎分26枚(26ppm)、5%濃度の画像を連続的に形成可能な設定枚数(プリンタライフ)は2600枚である。
【0087】
(画像濃度測定)
前記半導電性ローラを新たにカートリッジに組み込むとともに、前記カートリッジをレーザープリンタに装着した初期状態のレーザープリンタを用いて、5%濃度の画像を5枚連続して画像形成し、その直後に黒ベタ画像を1枚画像形成した。
形成した黒ベタ画像上の任意の5点で、反射濃度計〔TECHKON社製のテシコンRT120とライトテーブルLP20の組み合わせ〕を用いて測定し、その平均値を求めるとともに、下記の基準で画像濃度を評価した。
【0088】
◎:2.2以上。極めて良好。
○:1.8以上、2.2未満。良好。
△:1.7以上、1.8未満。実用レベル。
×:1.7未満。不良
(画像耐久性試験)
前記画像濃度を測定後、引き続いて1%濃度の画像を連続して画像形成し、500枚ごとに画像を観察して、余白部分にカブリが発生したか否かを判定した。この操作を、前記プリンタライフまで繰り返した後、下記の基準で画像耐久性を評価した。
【0089】
○:プリンタライフまでカブリは発生しなかった。画像耐久性良好。
×:プリンタライフまでにカブリが発生した。画像耐久性不良。
(トナー帯電量測定)
前記初期状態のレーザープリンタを用いて白ベタ画像(白紙)を1枚画像形成した後にカートリッジを取り出し、前記カートリッジに組み込んだ実施例、比較例の半導電性ローラに対して上方から吸引型帯電量測定器〔トレック社製のQ/M METER Model 210HS−2〕を用いてトナーを吸引して帯電量(μC)とトナー質量(mg)とを測定した。そして前記帯電量(μC)とトナー質量(mg)とから、単位質量あたりのトナー帯電量(μC/g)を求めて初期帯電量Tとした。
【0090】
また、引き続いて白ベタ画像を2000枚連続して画像形成した後に再び帯電量(μC)とトナー質量(mg)とを測定し、単位質量あたりのトナー帯電量(μC/g)を求めて耐久後帯電量T2000とした。
〈ローラ抵抗値の測定〉
実施例、比較例で作製した半導電性ローラのローラ抵抗値を、先に説明した測定方法によって測定した。なお表2、3ではローラ抵抗値をlogR値で示している。
【0091】
以上の結果を表2、3に示す。
【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
表3の比較例1、2の結果より、ゴム分として、SBRに代えて、極性ゴムとしてのCR、NBRをGECOと組み合わせた場合には、前記SBRによる、ローラ本体へのトナーの付着による画像濃度の低下を抑制する効果が得られないことが判った。
これに対し表2、表3の実施例1〜7の結果より、ゴム分として、前記SBRとGECOとを組み合わせることで、良好なトナー帯電量を維持しながら、ローラ本体へのトナーの付着による画像濃度の低下を抑制できることが判った。
【0095】
また実施例1〜6の結果より、SBRの配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり10質量部以上、80質量部以下であるのが好ましいことが判った。
また、前記実施例1と実施例2〜6の結果より、ゴム分としてさらに極性ゴムを配合するとローラ抵抗値を微調整できること、前記極性ゴムの配合割合はSBRの配合割合よりも少なく、かつゴム分の総量100質量部あたり5質量部以上、40質量部以下であるのが好ましいことが判った。
【符号の説明】
【0096】
1 半導電性ローラ
2 ローラ本体
3 通孔
4 シャフト
5 外周面
6 酸化膜
7 アルミニウムドラム
8 外周面
9 直流電源
10 抵抗
11 計測回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム分として、スチレンブタジエンゴム、およびエピクロルヒドリンゴムを含むゴム組成物からなる非多孔質のローラ本体を備えることを特徴とする半導電性ローラ。
【請求項2】
前記スチレンブタジエンゴムの配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり10質量部以上、80質量部以下である請求項1に記載の半導電性ローラ。
【請求項3】
前記ゴム組成物は、ゴム分として、さらにアクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、およびアクリルゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種の極性ゴムをも含んでいる請求項1または2に記載の半導電性ローラ。
【請求項4】
前記ゴム組成物は、ゴム分として、さらにエチレンプロピレンジエンゴムをも含んでいる請求項1または2に記載の半導電性ローラ。
【請求項5】
前記ローラ本体は、外周面に酸化膜を備えている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の半導電性ローラ。
【請求項6】
電子写真法を利用した画像形成装置内で、感光体の表面に形成される静電潜像を、帯電させたトナーによってトナー像に現像するための現像ローラとして用いる請求項1ないし5のいずれか1項に記載の半導電性ローラ。

【図1】
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【図2】
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