半晶質ポリマーを最上部フィルムとして使用する耐久性インモールド装飾積層体
本明細書は、半晶質ポリマーを最上部フィルムに使用して製造する耐久性インモールド装飾(IMD)積層体を開示する。半晶質ポリマーの結晶性構造または結晶含有量は、耐薬品性および耐掻傷性を向上させる、プロセス後の処理によって最適化することができる。このプロセス後の処理は、フィルム製造後、積層体のインモールドプロセス中、または積層体のインモールドプロセス後に行うことができる。この処理は、フィルム表面全体または離散した領域に適用することができ、処理の深さもフィルムの最上面から底面までの範囲にできる。このプロセス後の処理には、最上部フィルムの外観の変化が伴う場合があり、これによりIMD製品の装飾光沢の外観を調節できる。60度光沢度の値が90超の耐久性IMD積層体、および該積層体を製造するプロセスも開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性インモールド装飾(IMD)製品および/または、特に、半晶質ポリマーを使用して製造された最上部フィルムを備える耐久性インモールド装飾(IMD)製品用の装飾積層体に関する。とりわけ、これらのポリマーから製造した該最上部フィルムは、インモールドプロセスによって深絞り比で容易に加工することができる。また、該最上部フィルムの耐薬品性および耐掻傷性は、該ポリマーフィルムに更に結晶性をもたらすプロセス後の処理によって、著しく向上する。このプロセス後の処理には、フィルムの外観の変化を伴う場合があり、これによりIMD製品の装飾光沢の外観を調節できる。
【背景技術】
【0002】
インモールド装飾(IMD)は、例えば、電子部品の実装、医療機器、家庭用容器等の用途の3次元プラスチック製品の製造および装飾において一般的である。IMDは通常、優れた美観と長期耐久性を呈する製品を製造する低コストのプロセスである。IMDプロセスで好適に使用される一般的な装飾積層体には、最上面および底面を有する最上部フィルム、および装飾光沢模様が含まれる。装飾光沢模様は通常、最上部フィルムの底面に印刷され、長期耐久性のために、最上部フィルムで保護される。装飾光沢模様を、熱成形や射出成形等における損傷から保護するために、光沢模様の上に、すなわち、装飾光沢模様の裏面または反対面に、任意の熱可塑性層を形成することができる。最上部フィルムを、例えば、ハンドリング中およびプロセス中の掻傷から保護するために、最上部フィルムの最上面に任意のキャリアフィルムを配置できる。一般に、このキャリアフィルムはIMD積層プロセスの前または後に剥離する。実際には、該IMD積層体を熱成形し、トリミングし、射出成形用の金型に配置して、表面が該積層体で装飾された3次元の部品または製品を生成する。
【0003】
多くの場合、例えば、自動車の装飾等に使用するIMD製品は、厳格な一連の検査規格を満たすことが望ましいが、これは積層体の設計者および部品メーカーにとって、材料の選定および加工における大きな課題となる場合がある。この基準には通常、美観、耐薬品性、掻傷および傷への耐性、および、熱成形、トリミング、射出成形を含むインモールドプロセスにおける加工の容易性が含まれる。こうした特性の大部分は、もっぱら、またはかなりの割合で、積層体内の最上部フィルムによって決定される。最上部フィルムは、使用時に外的環境に直接的に曝露されるため、耐薬品性および耐掻傷性は主に最上部フィルムによって決定される。その一方で、光学的透明度、表面粗さ、フィルム厚および寸法安定性は、光沢等の美観、画像の奥行き、および画像の鮮明度(Distinctiveness Of Image (DOI))に大きく影響する。最上部フィルムは、積層体の加工性においても大きな役割を果たす。多くの場合、最上部フィルムは、成形温度で損傷なく300%までの伸張に耐え、明確に隅部が画定された金型の形状に適合し、亀裂なくかつ多量の粉塵を発生させることなく、室温でトリミングできることが望ましい。
【0004】
IMD積層体を製造するための最上部フィルムとしては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル、ポリフッ化ビニリデンとアクリルの混合物、セルロース等の多くの材料が使用されてきた。これらの材料はそれぞれ一定の望ましい品質を備えているが、相手先商標製品製造企業(OEM)の多くが要望するレベルですべての品質を満たすものは無いのが一般的である。特に、これらのフィルムは、ガソリン、一般の薬品、および化粧品への曝露を含む耐薬品性試験後に、ある程度の損傷を示す傾向がある。とりわけ、高温下で行われる液体虫除け剤および液体日焼け止めローションの試験に耐えるのは、非常に困難である。このような試験によって最上部フィルムが受けた損傷は、下部の装飾光沢の外観に悪影響を及ぼす。
【0005】
より耐久性の高いIMD製品を製造するために、PCやPMMA等の保護膜が幾つかの最上部フィルムの表面に付されてきた。しかし、幾つかの耐薬品性試験中に、試験液が保護膜を通過して浸透し、下の基体(すなわち、最上部フィルム)を損傷する可能性がある。更に、保護膜は基体よりも多様な熱特性および機械的特性を有する場合があり、積層体が過酷な伸張を(特に深絞り領域で)受ける熱加工工程中に、収縮、亀裂および層間剥離が起きることが多い。この亀裂の問題に対処するために、熱および照射硬化プロセス、または照射および熱硬化プロセス等の2工程連続の硬化プロセスが、最上部フィルムまたは保護膜の製造において使用されてきた。最初の工程で、最上部フィルムまたは保護膜が部分的にだけ硬化されるため、一定の柔軟性が残る。その後、印刷、熱成形、トリミングおよび射出成形を経て、フィルムは照射または熱に再び曝露されて表面が硬化される。しかし、このような連続プロセスには欠点がある。第一に、最後の硬化は一般に固体材料上で行われ、通常、活性点は固体媒体内での移動性が非常に限定されるため、硬化による架橋反応の量が極めて限定的となる。第二に、この2工程プロセスによって、積層体の熱加工後に通常は顧客が行わなければならない追加の工程が加わり、コスト上昇を招くことが多い。更に、照射によって硬化されるフィルムまたは保護膜は、熱加工中に過度の収縮が起きることが多く、そのようなフィルムを使用して製造された製品は加工しにくい。
【0006】
上記の問題に対処するには、高度な美観を備える装飾積層体および/または該装飾積層体から耐久性IMD製品を製造するために、優れた耐薬品性および耐掻傷性を有しながら加工が容易である新しい最上部フィルムが望まれる。従って、本明細書で開示するフィルムは、半晶質ポリマーから製造し、IMD積層体および該IMD積層体で製造される耐久性IMD製品用の最上部フィルムとして使用するフィルムである。この開示する最上部フィルムは、容易に熱形成することができ、その化学的特性および耐掻傷性は、最上部フィルムの結晶含有量を増加させるプロセス後の処理によって、著しく向上する傾向にある。このプロセス後の処理には、最上部フィルムの外観の変化を伴う場合があり、これによりIMD製品の装飾光沢の外観を調節できる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によれば、インモールド装飾(IMD)積層体は、最上部フィルムおよび装飾光沢模様を含んで提供され、その最上部フィルムが、脂環式ポリアミド、芳香族ポリアミド、およびポリエステルからなる群から選択された半晶質ポリマーである。
【0008】
他の実施形態によれば、装飾積層体を製造する方法は、半晶質ポリマーフィルムを調製する工程と、装飾光沢模様を半晶質ポリマーフィルムの底面に印刷する工程と、半晶質ポリマーフィルムの結晶性構造を最適化する工程とを含んで提供される。
【0009】
本明細書で開示する本発明の主題の多数の効果および利点は、本明細書を通読し理解することで当業者には明らかになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本明細書で開示する本発明の主題は、多様な構成要素および構成要素の配置、多様な工程および工程の配置の形を取り得る。各図は好適な実施形態を例示することのみを目的とし、限定するものとは解釈されない。また、自明なように、各図は原寸に比例するものではない。
【0011】
【図1】本発明の主題にかかるIMD積層体の一例を示す概略図であり、例示する実施形態は、その底面に装飾光沢模様を適用した最上部フィルムを含む。
【0012】
【図2】本発明の主題にかかるIMD積層体の別の一例を示す概略図であり、例示する実施形態は、任意の熱可塑性層を含む。
【0013】
【図3】本発明の主題にかかるIMD積層体の最上部フィルムに適用するプロセス後の処理の多様な適用パターンを示す概略図である。
【0014】
【図4】本発明の主題にかかるIMD積層体の別の一例を示す概略図であり、例示する実施形態は、最上部フィルムの最上面上にテクスチャーを含む。
【0015】
【図5】本発明の主題にかかるIMD積層体の最上部フィルムに使用する材料の一例の構造を示す概略図である。
【0016】
【図6】本発明の主題に従って製造された最上部フィルム(すなわち、実施例1)の試料の一例から得られたDSC測定値を示すグラフである。
【0017】
【図7】本発明の主題に従って製造された最上部フィルム(すなわち、実施例1)の試料の一例から得られたDMA測定値を示すグラフである。
【0018】
【図8】本発明の主題に従って製造された最上部フィルム(すなわち、実施例1)の試料の一例から得られた応力・ひずみ測定値を示すグラフである。
【0019】
【図9】本発明の主題に従って製造された最上部フィルム(すなわち、実施例1)の試料の一例から得られたDMA測定値を示すグラフである。
【0020】
【図10】本発明の主題に従って製造された最上部フィルム(すなわち、実施例1)の試料の一例から得られたE'測定値を示すグラフである。
【0021】
【図11】本発明の主題に従って製造された最上部フィルム(すなわち、実施例1)の試料の一例から得られた応力・ひずみ測定値を示すグラフである。
【0022】
【図12】本発明の主題に従って製造された最上部フィルム(すなわち、実施例1)の試料の一例から得られたDSC測定値を示すグラフである。
【0023】
【図13】本発明の主題に従って製造された最上部フィルム(すなわち、実施例2)の試料の一例から得られた光学的特性の測定値を示すグラフである。
【0024】
【図14】本発明の主題に従って製造された最上部フィルム(すなわち、実施例2)の試料の一例から得られた硬度の測定値を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本明細書は、明確化および簡潔化のために、当業者に公知の構造的要素や機能的要素、関連する標準、規格、プロセス、その他の構成要素を参照するものとし、それらが本明細書に示す好適な実施形態に従って、またはこれに適合させるために変更または修正されている場合を除き、それらの構成または運用について詳細に説明しないものとする。
【0026】
本明細書は、半晶質ポリマーを最上部フィルムとして使用して製造する耐久性インモールド装飾(IMD)積層体を開示する。半晶質ポリマーの結晶性構造および/または結晶含有量は、耐薬品性および耐掻傷性を更に向上させるプロセス後の処理によって任意で最適化できる。プロセス後の処理は、最上部フィルムの製造後、積層体の製造中、インモールドプロセス中、またはインモールドプロセス後等、プロセスのあらゆる段階で行うことができる。この処理は、最上部フィルムの表面全体、最上部フィルムの厚さ全体にも、離散した領域にも適用できる。プロセス後の処理には、最上部フィルムの外観の変化を伴う場合があり、これによりIMD製品の装飾光沢の外観を調節できる。また、耐久性IMD積層体および該積層体を製造するプロセスも開示する。
【0027】
本開示にかかる最上部フィルムとして好適な、および/または、本明細書で開示する、結晶性構造および/または結晶含有量を最適化するためのプロセス後の処理に好適なポリマーには、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PMMA、ポリアミド(PA)等が含まれる。これらのポリマーのうち、脂環式ポリアミドまたは芳香族ポリアミドおよびアモルファス(非結晶)PET(a−PET)は、特に好適である。一つの好適な実施形態では、半晶質ポリマーは、樹脂から押出成形されたポリアミドフィルム、すなわち、脂環式ポリアミドまたは芳香族ポリアミドで構成される。このような樹脂は市販されており、例えば、エボニックデグサ社からTROGAMID(登録商標)の名称で製造および/または提供される樹脂がある。別の好適な実施形態では、半晶質ポリマーは非結晶ポリエチレンテレフタレートで構成される。プロセス後の処理は、様々な手段で、装飾積層体の加工前、加工中、加工後のいずれでも適切に行うことができる。このプロセス後の処理には、最上部フィルムの外観の変化を伴う場合があり、これによりIMD製品の装飾光沢の外観も調節できる。
【0028】
本発明の主題を展開するにあたり、多様な試料を調製し、試験する。試料の調製方法および試験方法を以下に示す。
【0029】
試験および/または試料調製方法の説明:
【0030】
次の試験によって、最上部フィルムの試料の性能を評価する。
【0031】
1. 光学的試験:
【0032】
Perkin−Elmer UV/Vis spectrometer(Lambada 20)を用いて、光透過率および光吸収のスペクトルを記録する。光透過率%、曇り度%および透明度%は、Gardener Haze−Guard−Plus計器を用いて記録する。光沢測定はBYK Gardener光沢計(Micro−TRI−gloss)を用いて角度60度で行う。光沢測定については、試料を白紙束の上に配置する。曇り度%および光沢測定については、少なくとも3つの試験を異なる領域で行い、平均値を報告する。
【0033】
2. 耐薬品性試験:
【0034】
イソプロパノールおよびトルエン試験:試料の小片を密閉した瓶の中でイソプロパノール(IPA)およびトルエンにそれぞれ1時間浸す。試験後、試料を瓶から取り出し、IPAで洗浄し、光学的透明度の変化、しみ、破損等の損傷がないか目視点検を行う。
【0035】
虫除け剤試験:本試験はDeep Woods(ウィスコンシン州S.C.Johnson&Son社)液体虫除け剤を使用して、Ford DVM−0039−MAの手順に従って行う。製品Deep Woodsはイソプロパノール内に25%のN,N,−ジエチル−m−トルアミド(DEET)を含有する。試験は室温と高温の両方で1時間行う。フィルム表面上に2x2インチの四角の布(ペンシルベニア州TESTFABRICS社)を載置する。トランスファーピペットを使用して、布上の同じ領域にDeep Woods液3滴を滴下する。アルミ板を布上に載置し、該アルミ板上に、液体を滴下した領域の上になるように500gの重りを載置する。室温での試験については、試料を室温で1時間置く。高温での試験については、試料を所望の温度に設定した換気式の熱炉内に1時間置く。試験後、布を除去して、フィルムを洗浄液で十分に洗い、拭いて乾燥させ、表面に膨張、しみ、布の跡等の損傷がないか目視点検を行う。その結果に対して1から5の等級を付けて評価する。「1」を最高(全く損傷なし)とし、「5」を最低とする。
【0036】
日焼け止めローション試験:本試験は、アヴォベンゾン含有のCoppertone 50 SPF(テネシー州Schering−Plough Health Care Products社)日焼け止めを使用して、Ford DVM−0036−MAの手順に従って行う。試験は室温と高温の両方で1時間行う。フィルム表面上に2x2インチの四角の布(ペンシルベニア州TESTFABRICS社)を載置する。布上にCoppertoneペースト1滴を滴下する。アルミ板を布上に載置し、該アルミ板上に、液体を滴下した領域の上になるように500gの重りを載置する。室温での試験については、試料を室温で1時間置く。高温での試験については、試料を所望の温度に設定した換気式の熱炉内に1時間置く。試験後、布を除去して、フィルムを洗浄液で十分に洗い、拭いて乾燥させ、表面に膨張、しみ、布の跡等の損傷がないか目視点検を行う。その結果に対して1から5の等級を付けて評価する。「1」を最高(全く損傷なし)とし、「5」を最低とする。
【0037】
日焼け止めローションおよび虫除け剤耐性試験:本試験は、GM GMW14445の手順に従って行う。試験溶液は、同じ重量部のDEET、3−(4−メトキシフェニル)−2−プロペネシド−2−エチル−ヘキシルエステル(メトキシ桂皮酸オクチル)、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸2−エチルヘキシル(オクトクリレン)および3,3,5−トリメチルシクロヘキシルサリチラート(ホモサラート)で作る。トランスファーピペットを使用して、試験試料の表面上の3箇所以上の異なる場所に試験液(約50μl)数滴を滴下する。試験試料を80±3℃の熱炉内に1時間置く。炉から取り出した試料を、室温になるまで冷却し、洗浄剤で洗い、拭いて乾燥させ、膨張、ふくれ、しわ、しみ等の損傷がないか目視点検を行う。その結果に対して1から5の等級を付けて評価する。「1」を最高(全く損傷なし)とし、「5」を最低とする。
【0038】
消臭剤試験:車用消臭剤「Royal Pine」をフィルム試料に直接接触させて、アルミ板で覆う。500gの重りをアルミ板に載せ、20時間置く。試験後、試料に膨張、しみ等の損傷がないか目視点検を行う。
【0039】
3. 動的粘弾性測定:
【0040】
TA Instrument RSA III計器を使用して、直角ねじれ形状について試料の特性を明らかにする。5mm×14mm、厚さ300mmの最上部フィルムの試料片を使用する。試験は、3℃/ステップの速度および10rad/秒の周波数で、25℃〜240℃の範囲の温度掃引により行う。G'、G"およびタンデルタを、温度の関数として記録する。
【0041】
4. 応力・ひずみ測定:
【0042】
応力・ひずみ測定を行って、最上部フィルムの試料の熱成形特性を評価する。DSCによって測定したポリマーフィルムのガラス転移温度と、該フィルムの融点との間の温度で、300mm/分でInstron 4501上にフィルムを伸張する。伸張された長さ(ΔL)を初めの長さ(Lo)で割った比率として定義される応力・ひずみ%の曲線が、熱成形の性能を評価するために多様な温度で記録される。
【0043】
5. 熱成形試験:
【0044】
真空熱成形試験は、低速炉設定(SEJI条件)を備えたMAACO真空成形装置で行う。長さ11インチ、幅4インチ、奥行1インチの熱成形プラテンを使用する。赤外線センサーをフィルムの中央にテープで留めて、これによって、フィルムが加熱温度に到達すると熱成形プロセスが自動的に開始する。熱成形後、隅部の絞り比および鋭利度を検査して、熱成形の品質を評価する。
【0045】
6. DSC測定:
【0046】
TA Instruments DSC Q2000を使用して、ガラス転移温度(Tg)、低温結晶化温度(Tc)および融点(Tm)を測定し、試料の特性を明らかにする。測定はアルミ試料皿と、パージガスとして液体窒素を使用して行う。1.5mg〜2.2mgの試料をアルミ皿に載せ、60秒ごとに±0.796℃で変調させる。0℃〜300℃の昇温を5℃/分の昇温速度で行う。TcおよびTmの分析を熱流量に基づいて行う。
【0047】
7. グラビア印刷:
【0048】
実験室規模のグラビア印刷校正機(英国 K Printing Proofer、RK Print Coat Instruments社)を使用して、半晶質の最上部フィルム上に画像を印刷する。木目調の画像および無地の層を、Avery Performance Film Division製の溶剤ベースグラビア用印刷インクを使用して印刷する。印刷後、試料を熱炉内に配置して溶剤を乾燥させる。
【0049】
図1には、本発明の主題の好適な実施形態に従って、半晶質ポリマーを最上部フィルム12として使用して製造した耐久性インモールド装飾(IMD)積層体10の一例が示されている。図に示すように、最上部フィルム12の裏面または底面12aに装飾光沢模様14が印刷その他の方法で適用されている。
【0050】
最上部フィルム12に使用する半晶質ポリマーの結晶性構造および/または結晶含有量は、耐薬品性および/または耐掻傷性の一層の向上をもたらすプロセス後の処理によって、適切に最適化される。プロセス後の処理に好適なポリマーには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、PMMA、ポリアミド等が含まれる。これらのポリマーのうち、脂環式ポリアミドまたは芳香族ポリアミド(例えば、TROGAMID(登録商標)等)およびアモルファス(非結晶)PETは、特に好適である。これらの種類のポリマーは、優れた光学的透明度、ガソリンおよび一般的な有機溶剤に対する高い耐性、優れた耐掻傷性を備え、インモールドプロセスによって容易に加工することができる。任意で、熱安定剤やUV安定剤、顔料や加工助剤等の添加剤を、最上部フィルム12に使用する半晶質ポリマーに加えてもよい。
【0051】
半晶質最上部フィルム12の厚さは0.1μm〜5mmが望ましく、0.1mil〜20milが更に望ましく、0.1mil〜15milが最も望ましい。図示しないが、任意で、除去可能な保護キャリアフィルムをフィルム12の最上面12b、または最上面および底面(12bおよび12a)の両方に配置または貼付して、例えば、輸送中、ハンドリング中、および後続の各加工工程中に掻傷からフィルム12を保護することができる。このキャリアフィルムは、装飾光沢模様14の印刷前、装飾光沢模様14の印刷後かつ熱成形前、またはインモールドプロセス後に除去できる。最上部フィルム12が、例えば1mil未満等のように比較的薄い場合、キャリアフィルムは、最上部フィルムがフィルム製造工程中または後続の各加工工程中に破損しないよう十分な強度を与えるための支持体として機能する。
【0052】
半晶質ポリマーフィルム12に接触する保護キャリアフィルムの表面は、平滑であってもテクスチャーを有していてもよい。ただし、平滑な表面は押出半晶質ポリマーフィルム12の表面粗さを、ひいては、光学的光沢度を改善させる。このため、キャリアフィルムの表面粗さは100nm未満が望ましく、30nm未満が更に望ましく、15nm未満が最も望ましい。その一方で、表面にテクスチャーを有するキャリアフィルムは、キャリアフィルムの表面上に形成された所望のテクスチャーを半晶質フィルム12に直接転写するために使用できる。テクスチャーは、エッチング、印刷、エンボス、機械的ブラシ等によって適切に作製できる。
【0053】
任意で、装飾光沢模様14の印刷前に半晶質ポリマーフィルム12の底面12aに下塗層(図示せず)を形成し、印刷された装飾光沢模様14に対する親和性および粘着性を高めることができる。あるいは、半晶質ポリマーフィルム12の底面12aを、プラズマ、コロナ、火炎等の技法によって処理し、印刷されたインク層14の粘着性を高めることができる。
【0054】
装飾光沢模様14は、水性、溶剤系またはUV硬化性インクを使用したグラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷等の従来のあらゆる印刷技法によって、あるいは、溶剤系インクおよびUV硬化性インクによるインクジェット印刷、トナーカートリッジを使用したレーザー印刷、染料昇華等を利用したデジタル印刷によって、半晶質ポリマーフィルム12の底面12a上に適切に印刷できる。装飾光沢模様は、従来の印刷技法を利用して、木目インク層、メタリックインク層、背景色層等を含むがこれらに限定されない複数の層で構成してもよい。任意の熱可塑性層20(図2に例示する)が無い場合、射出成形プロセスに耐えられる特殊高温インクが好適に採用される。好適な印刷用インクの例としては、Proell製のスクリーン印刷用NORIPHAN(登録商標)インクおよびAvery Dennison Performance Film Division製の溶剤ベースグラビア印刷用インクがある。最上部フィルム12(例えば、TROAMID(登録商標)および/または同様の樹脂用に製造されたもの)は、その耐高温性のため、特にレーザーおよび染料昇華印刷に好適である。このような実施形態において、染料昇華印刷ではインクがフィルム12内部に拡散するので、装飾パターンはフィルム12の最上面または底面(12bまたは12a)のいずれかに印刷すればよい。任意で、装飾光沢模様14は更に、レーザーやプラズマ技法等を利用して、エッチングによって作製することができる。
【0055】
次に図2を参照して、代表的な一実施形態において、コーティング、熱ラミネートによって、または接着剤(図示せず)を介してのいずれかによって装飾光沢模様14の底面14aに任意の熱可塑性層20を形成できる。この熱可塑性層20は幾つかの機能を果たす。例えば、高温かつ高圧で行われる射出成形中に、射出樹脂によって印刷用インクが落ちないよう保護したり、この射出樹脂に対して優れた接着性を確保したりする。また、補色層として機能し、熱成形後、特に深絞り成形後に装飾光沢の色が影響を受けないようにする場合もある。この理由から、熱可塑性層20に使用する色は装飾光沢14の色に近くてもよい。更に、熱可塑性層20は不透明層として機能し、射出樹脂の色および射出樹脂から生じる欠陥が装飾光沢14に悪影響を与えないようにする場合もある。
【0056】
半晶質ポリマーフィルム12が薄く、十分な強度を持たない実施形態において、熱可塑性層20は更に積層体10に対して剛性を加え、積層体10が破損なく熱成形およびトリミングプロセスを受けられるようにする。好適な熱可塑性層20としては、アクリロニトリル−ブチレン−スチレン(ABS)、PC、ポリアミド、ポリエステル、アクリル等が含まれるがこれらに限定されない。ABSは、その低コスト性、耐高温性、およびABSとABS/PCのブレンドをベースとする射出成形樹脂に対する良好な接着性の理由から、特に好適である。任意の熱可塑性層20の厚さの範囲は0.1μm〜20milで、1μm〜17milが望ましい。積層体10は、適切に従来の熱成形およびトリミングの方法を利用して加工され、その裏面10aから射出成形される。
【0057】
任意で、半晶質ポリマーフィルム12は単一のフィルムとして、または、図2に例示するような多層フィルムの最上層として使用できる。多層フィルムでは、半晶質ポリマーフィルム12は基体および/または下層を化学的損傷および掻傷から保護する。多層フィルムは、熱ラミネート、接着剤の使用、共押出等の様々な技法によって、任意で製造することができる。ポリアミド、PC、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、アクリルおよびメタクリルポリマーまたはコポリマー、ABS等の多数の熱可塑性ポリマー材料を基体として使用できる。基体の厚さの範囲は1mil〜50milが望ましく、2mil〜20milが更に望ましく、5mil〜15milが最も望ましい。
【0058】
保護キャリアフィルム(図示せず)を、例えば、輸送中、ハンドリング中の掻傷から表面12bを保護するために、任意で半晶質ポリマーフィルム12の表面12bに配置および/または貼付することができる。好適な保護ポリマーキャリアフィルムには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等が含まれる。保護キャリアフィルムは、積層体10の製造前、積層体10の製造後かつインモールドプロセス前、または積層体10のインモールドプロセス後に除去できる。
【0059】
本明細書において上述したように、半晶質ポリマーフィルム12は、結晶化度および結晶含有量を最適化するために任意で処理することができ、この処理によって耐薬品性および耐掻傷性が向上する。半晶質ポリマーフィルム12の処理は、最上部フィルムの表面全体に実施するか、離散した領域に実施するかを選択でき、処理の深さも最上面から底面に至る範囲内で、規則的な配置でも不規則的な配置でも任意に適用することができる。処理の多様な適用パターンの例を図3に示す。斜線部分は、処理を施したフィルム12の領域を表す。自明なように、離散した領域への処理によって、異なる物理的および/または化学的特性を持つ各領域が作られ、図に示すように、処理された領域はフィルム面の上方の場合もあり、下方の場合もある。
【0060】
上記の最適化を行うために、対流加熱による熱処理が任意で用いられるが、当然のことながら、これに代わる他の様々な技法で半晶質フィルム12の処理を実施してもよい。例えば、金属表面からの接触加熱、赤外線またはレーザーの照射、プラズマ処理等によって実施できる。これらの技法のうち、対流加熱は、フィルム12の表面および化学的組成に対して重大な損傷を与えないので好適である。
【0061】
任意で、離散処理は、パターン付きマスクによる加熱やエンボス等によって、エネルギー源を集中させて行う。処理の深さは処理領域にもたらされる総エネルギーによって適切に制御される。
【0062】
好適な一実施形態において、処理をライン内で実施するために、フィルム12を押し出しする押出ラインに処理装置を統合する。例えば、熱処理を実施するために、押出の最後に熱炉または赤外線ヒーターを加えることができる。
【0063】
あるいは、プロセス後の処理を装飾光沢14の印刷中に実施する。この場合、印刷用インクの乾燥、レーザーエッチング等によってフィルムを加熱する。このような処理の利点は、別個の処理工程が不要になることである。
【0064】
あるいは、プロセス後の処理を積層体のインモールドプロセス中に実施する。この場合も別個の処理工程が不要になる。実際に、厚さ6milおよび12milの(例えば、TROGAMID(登録商標)樹脂で製造された)最上部フィルム12を本明細書に記載する条件下で熱成形した後、耐薬品性の向上が観察された。
【0065】
別の一実施形態において、ドット、四角形、プライム等のテクスチャー12cを半晶質ポリマーフィルム12の最上面12b、または最上面と底面(12bおよび12a)の両方に作製して、異なる美観を実現する。この例を図4に示す。テクスチャー12cを構成するのは、規則的なパターンでも不規則的なパターンでもよい。このようなテクスチャー12cは、印刷、エンボス、複製、エッチング等で作製できる。テクスチャー12cは任意で、積層体10のインモールドプロセス中に半晶質ポリマーフィルム12の最上面12b上に、例えば、金型の表面テクスチャーを複製することによって作製する。
【実施例】
【0066】
[実施例1:半晶質ポリアミドフィルム]
【0067】
耐久性IMD製品を製造するための積層体10の最上部フィルム12の最初の実施例として、半晶質、微晶性ポリアミドフィルムが、ポリアミド族の材料に属する樹脂から押出成形され、脂環式ジアミンおよびドデカン二酸の縮合反応によって製造される。図5にその構造を示す。本実施例では、TROGAMID(登録商標)樹脂を使用する。脂環式セグメントの存在によって、この材料は微晶質のみであり、この材料から製造されるフィルムは無色透明である。サブミクロンの結晶の存在によって、このフィルムは一般の薬品に対して高い耐性があり、一般的なアクリルフィルムおよびポリカーボネートフィルムよりも耐摩耗性が高く、なおかつインモールドプロセスによって容易に加工できる。様々な厚さのフィルムを押出成形によって製造できる。
【0068】
実施例1に従って製造されるフィルムの主要な特性の一部を表1に示す。
【表1】
【0069】
実施例1のフィルムは、ガラスに匹敵する高い光透過率%を特徴とする優れた光学的透明度を有する。このフィルムのガラス転移温度(Tg)は約140℃、低温結晶化温度は約160℃、融点は約250℃である。結晶の寸法が可視光よりも小さいため、結晶の存在がフィルムの光学的透明度に悪影響を及ぼさない。また、このフィルムは、PMMAおよびPCと同等またはそれを上回る優れた耐摩耗性および耐掻傷性を示す。ガラス転移温度(Tg)と融点(Tm)との差が大きいため、後続の各プロセス工程の操作範囲が広くなる。実施例1の材料は、アルコール(IPA)、アセトン、トルエン、キシレン等の一般的な有機溶剤および薬品に対して優れた耐性を示す。実施例1の樹脂の密度は1.02g/cm3で、アクリル材料およびポリカーボネート材料よりも約20〜30%低いので、軽量の装飾製品を製造するには極めて好適である。
【0070】
実施例1にかかる薄いフィルムは、TROGAMID(登録商標)樹脂、特に、製品コードCX7323で指定されるTROGAMID(登録商標)樹脂の押出によって得られる。このようなフィルム(12mil厚)の1つのDSC曲線を図6に示す。フィルムのガラス転移温度は約133℃、低温結晶化温度は約159℃、融点は約246℃である。これらの値は表1に示す値と同等である。押出フィルムのDMA測定(図7に示す)が示すTgは142℃であり、これはDSC測定で得られた値よりも高く、表1に示す値により近い。DSCとDMAで測定したTg値が異なるのは、測定中の加熱速度および試験頻度が異なるためである。
【0071】
図7に示すように、E'は、ガラス転移温度周辺でのフィルムの軟化のため、約130℃から減少し始める。E'は150℃周辺で最低値に到達し、更に温度が170℃に上昇するにつれて増大する。その後、E'は約220℃になるまで比較的安定を維持し、融点付近で再び減少する。150℃後のE'の増加は、加熱による結晶化の増大に起因する。170℃〜220℃のE'値の変動は、結晶化の増大による増加と、熱が誘導した軟化による減少との、2つの反対の効果を反映している。
【0072】
実施例1のフィルムの熱成形特性を、特に、フィルムがより硬化する熱処理後に評価するために、応力・ひずみ試験を実施例1の元のフィルムおよび実施例1の熱処理したフィルム(ここでも12mil厚)の両方に対して実施する。試験はInstron 4501上で150℃と190℃との間の温度で実施する。幅12.5mm、長さ50.8mmのフィルム細片を300mm/分の速度で伸張し、応力・ひずみ%曲線を記録する。図8に示すように、フィルムは150℃と190℃との間の温度で破損なく応力300%超まで伸張できる。フィルムには試料ホルダから外した後の収縮は全く見られないか、ほとんど見られなかった。この特性は、プロセス後の収縮が、亀裂、層間剥離、変形、画像の歪み等の多くの悪影響をもたらすIMD製品においては極めて重要である。150℃で伸張したフィルムは、温度上昇に伴って応力が継続的に増大する。しかし、160℃〜190℃で伸張したフィルムは、応力曲線はより複雑になる。この後者の現象も、軟化による減少と、伸張および加熱の両方が誘導した更なる結晶化による増大との、2つの反対の効果を反映している。
【0073】
真空熱成形試験は6milおよび12mil厚の実施例1のフィルムを使用してMAACO熱成形装置上で行う。長さ11インチ、幅4インチ、奥行1インチのプラテンを使用する。試験は、加熱温度180℃〜200℃、加熱時間19秒、熱成形時間15秒、プラテン圧50psiの条件下で行う。フィルムが加熱温度に到達すると、フィルムの中央にテープで留めた赤外線センサーが熱成形プロセスを自動的に開始する。両方のフィルムは、明確に隅部が画定された3次元形状に成形される。
【0074】
その優れた耐熱性のために、実施例1のフィルムはレーザーおよび染料昇華の方法による印刷に特に好適である。また、ガラス転移温度が高いため、溶剤ベースのインクを使用した印刷中および乾燥中の寸法安定性に優れ、1つのインク層の後で別のインク層が印刷される際に位置合わせが良好となる。フィルムの硬い表面は、後続のプロセス工程中の変形および粗面処理にも耐える。
【0075】
後処理による耐薬品性の向上
【0076】
自動車用途に関しては、最上部フィルム12がガソリンおよび一般の薬品だけでなく、液体虫除け剤、日焼け止めローション、消臭剤等の化粧品に対しても優れた耐性を持つという点でも好適である。これらの化粧品に対する実施例1のフィルムの耐性を表2に示す。比較のために、Sabic Groupから入手するPCフィルム(LEXAN(登録商標) 8010)およびMacDermid社から入手する保護膜層付きPCフィルム(XTRAFORM(登録商標))の試験も行う。これらのフィルムはすべて、室温での虫除け剤および日焼け止めローションに優れた耐性を示すのに対して、PCフィルムおよび保護膜付きPCフィルムは74℃での虫除け剤および日焼け止めローションから重度の損傷を受け、どちらも損傷度の等級「5」を示す。その一方で実施例1のフィルムは、74℃での日焼け止めローションに優れた耐性を示すものの、74℃での虫除け剤からは、損傷度の軽い等級「3」ではあるが、損傷を受ける。
【表2】
【0077】
明らかに、虫除け剤試験は、特に高温のプラスチックフィルムに対して極めて厳しいものである。これは、DEET化合物がプラスチック材料を軟化する可能性があり、試験布のパターンの跡がポリマー表面に付き易いためである。多層フィルムについては、DEET化合物が最上層を通過して浸透し、層間剥離を引き起こし、下の基体を損傷する可能性さえある。こうした悪影響を理由として、現在市販されているIMD製品の多くは虫除け剤試験に十分に耐えられない。
【0078】
実施例1のフィルムの液体虫除け剤に対する耐性を更に高めるために、160℃〜190℃の温度範囲で、熱炉内で3分〜10分間熱処理を行う。熱処理後、耐薬品性、光学的透明度、耐掻傷性および熱成形の特性を明らかにした。この結果を表3にまとめる。
【表3】
【0079】
110℃〜150℃の温度で10分間の熱処理後、有意な改善は見られなかった。処理温度を160℃に上げて7分間、または190℃に上げて5分間行ったが、それでも有意な改善は見られなかった。しかし、処理時間を160℃で10分間、190℃で7分間、10分間に延ばしたところ、実施例1のフィルムは74℃の液体虫除け剤に対して完全な耐性を示すようになった。このとき、日焼け止めローションに対する耐性は最適を保っており、すなわち追加処理による悪影響は受けなかった。
【0080】
後処理による光学的特性の変化
【0081】
実施例1のフィルムを160℃および190℃で10分間熱処理を行う前および行った後の曇り度%および透過率%の変化を比較し、表4に報告する。熱処理によって、耐薬品性に有意な改善が見られ、上記の処理条件下で、曇り度%および透過率%は基本的に変化しなかった。従って、処理されたフィルム内の結晶の寸法は可視光の波長未満を維持したことが示唆される。
【表4】
【0082】
しかし、170℃での処理時間を30分間超にまで延ばすと、フィルムがわずかに黄変することに注目すべきである。
【0083】
後処理による耐掻傷性の向上
【0084】
処理後の機械的特性の変化をDMAで測定する。170℃で10分間処理したフィルムのE'、E"およびタンデルタを図9に示す。元のフィルムと比較して、処理したフィルムのTgは、更なる結晶化によって約142℃から約144℃に上昇した。また、後処理による実施例1のフィルムの硬化も、上記で観察された耐薬品性の向上に関連する。
【0085】
異なる環境下で処理したフィルムが類似の結果を示しており(図10参照)、これは160℃で10分間処理した後に、ポリマー鎖の転位が最大に到達したことを示唆している。
【0086】
異なる温度での応力・ひずみ曲線も測定し、160℃〜190℃で10分間の後処理を行った後の実施例1のフィルムの熱成形性能を評価した。図8に示す元のフィルムと比較して、上記の温度で処理されたフィルムは、かなり高い応力と、試験を150℃で実施した際に約100%の伸張を行った後の最大セル負荷を超える力を示した。このため、試験温度を180℃および230℃にそれぞれ上昇させた。これらの温度では、フィルムは最大セル負荷を超えることなく300%を超えて伸張できる(図11参照)。300%の伸張後であっても、フィルムは無色透明のままであり、力を解除するとごくわずかな収縮を示した。
【0087】
実施例1のフィルムの耐薬品性の改善は、熱成形によっても観察された。10mil厚の実施例1のフィルムに対して約400°Fで真空熱成形を行った。GMW14445試験溶液に対する耐性の等級は、熱成形前の「3」から熱成形後の「1」に改善した。
【0088】
熱処理後の熱特性の変化をDSCで測定した。170℃で10分間の処理後(図12参照)、低温結晶化が完全に消失した。更に、一次ガラス転移温度は約133℃から約138℃に上昇し、二次ガラス転移温度はそれよりかなり高く、処理条件に応じて約171℃から約191℃の範囲で、表5に報告するとおり観察された。元のフィルムは、低温結晶化に関連する16.55J/gの融解熱および32.91J/gの総融解熱を示した(表5)。この結果は、低温結晶化前の元のフィルムに対する融解熱は16.36J/gでしかなかったことを示している。熱処理後、低温結晶化は消失し(図12参照)、約30J/gの融解熱が測定された(表5)。これは、熱処理によってフィルム内の結晶化度が最大化されたことを示している。
【表5】
【0089】
[実施例2:非結晶PETフィルム]
【0090】
別の実施例では、半晶質ポリマーフィルム12をアモルファス(非結晶)PET、すなわちa−PETから調製する。非結晶PETフィルムは高い光学的透明度を有し、複雑な3次元形状に容易に加工できる。こうした特性から、a−PETは食品および飲料の包装に広く利用されている。また、非結晶PETは、最も広く再生されるプラスチック材料の一つでもある。多様な色のフィルムが市販されている。
【0091】
ポリエチレン、ポリプロピレン、実施例1等の他の半晶質ポリマーと比較して、a−PETの結晶化の速度は緩やかであるため、融解物を急冷することによって完全に非晶質のPETを得られる。a−PETフィルムの結晶化は加熱、伸張、または溶剤への曝露で誘発される。熱処理では、結晶化は120℃周辺で始まり、熱特性および機械的特性が劇的に変化する。例えば、ガラス転移点は67℃から81℃に上昇し[J.Brandrup、E.H.Immergut、Polymer HandBook、New York、Interscience Publishers、1966]、フィルムは硬化し、溶剤への耐性が高まる。処理されたフィルム内では核生成および球状結晶の形成が観察される[E.A.Collins、J.Bares、F.W.Billmeyer、JR.、Experiments in Polymer Science、John Wiley&Sons Inc.、New York、1973]。
【0092】
広範囲の温度および処理時間にわたる熱処理後にも光学的特性が基本的には変化しなかった実施例1のフィルムと比較して、非結晶PETフィルムの光学的特性は熱処理後に容易に変化する。例として、Hop Industriesから入手した、115℃で処理した10mil厚のa−PETの光学的特性における変化を図13に示す。処理時間が3分未満ではフィルムは透明のままで、その後、曇り度%が処理時間に対してほぼ直線的に増加し、10分以内に50%超に達する。曇り度%の増加に伴い透過率%が減少する。処理温度を120℃に上げると、約5分後にフィルムは半透明となり、30分後に白濁色に変わる。処理条件による光学的特性の変化は、a−PETを最上部フィルムとして製造されたIMD製品の装飾光沢を、処理によって調節できることを示唆している。例えば、元の鮮明な画像はa−PETの最上部フィルムを120℃で5分間処理することで見えにくくすることができ、30分間の処理後には全く見えなくなり、白色無地に変えることができる。離散した領域にのみこの処理を行った場合、装飾光沢を処理済み領域では鮮明度を落としながら、未処理領域では鮮明なままとすることができる。
【0093】
後処理による耐薬品性の向上
【0094】
120℃で5分間処理した後の虫除け剤および日焼け止めローションへの耐性の変化を表6に示す。元のa−PETフィルムは高温下であっても液体日焼け止めに対して優れた耐性を示し、室温の液体虫除け剤にも耐性を示す。しかし、74℃で1時間の試験後、おそらくは、液体虫除け剤の含有物によって誘発された結晶化によって、木のような模様が最上部表面に生じた。a−PETフィルムを120℃で10分間処理することによって、フィルムは白濁色になり、PETフィルムは液体虫除け剤に完全な耐性を持つようになった。
【表6】
【0095】
後処理による耐掻傷性の向上
【0096】
異なる条件下で熱処理した後のa−PETの微小硬さの変化を図14に示す。Hu kおよびHu polの両方で表す平均硬さは熱処理後に、特に再結晶化が開始する120℃で向上した。フィルムの鉛筆硬度は125℃で5分間の熱処理後に「B」から「H」に向上した。硬度の向上はより優れた耐掻傷性をもたらす。
【0097】
[実施例3:実施例1を最上部フィルムとして使用して製造する装飾積層体]
【0098】
実施例3では12mil厚の実施例1のフィルムを使用する。特に、フィルム材料はエボニックデグサ社から入手したTROGAMID(登録商標)を使用する。フィルムには紫外線照射への耐性を高めるための紫外線吸収剤が含まれる。かかるフィルムはGardener micro−gloss meterを使用した測定で60度光沢度157を示す。94.0gのシクロヘキサノン溶剤に6.0gのポリウレタン樹脂(Noveon社 ESTANE(登録商標)5715)を溶解して、プライマ溶液を調製する。溶剤ベースのグラビア印刷用黒色インク(L62543)をAvery Performance Film Divisionから入手する。6.0gの3−アミノプロピルトリエトキシ−シラン(Sigma Aldrich)を30.0gの無水エチルアルコール(Sigma Aldrich)に混ぜて、接着促進溶剤を調製する。この接着促進溶剤をグラビアインクと重量比1対4で混合する。連続的な下塗層をまず最上部フィルム上に、プライマ溶液を使用し、実験室規模のK Printing Prooferを使用するグラビア印刷で印刷し、100℃で10分間乾燥させる。連続的なインク層を、下塗りされた表面上に実験室規模のK Printing Prooferを使用してグラビア印刷し、再度、100℃で10分間乾燥させた。こうして印刷された表面は、60度光沢度約91を示した。印刷済みフィルムは、Avery Performance Film Divisionから入手した17mil厚の茶色のABSフィルムに熱的に積層される。このABSフィルムは完全に不透明で、Hunterlab ColorQUEST Spectrocolorimeter (Hunter Associates Laboratory社)を使用した測定による光学濃度は6.0に近い。積層ローラーによる損傷から最上部フィルムを保護するために、最上部フィルムの印刷されていない表面に、厚さ2milのPET保護フィルム(DuPont社 Melinex(登録商標) PET)を載置する。積層は温度340°F〜360°F、圧力30Psi、速度0.5mm/秒で行う。室温にまで冷却した後、PET保護フィルムを除去して装飾積層体を得た。積層体の60度光沢度は90超であった。
【0099】
[実施例4:a−PETを最上部フィルムとして製造する装飾積層体]
【0100】
Hop Industries社(ニュージャージー州ガーフィールド)から入手した10mil厚のa−PETフィルムを用意する。フィルムには第一および第二の両主要表面に光沢がある。フィルムはGardener Haze−Guard−Plus計器を使用して測定した曇り度の値は2.3%、光透過率は92.7%で、60度光沢度の値は150である。黒色の木目調の画像をa−PET表面上にK Printing Proofer機器およびAvery Performance Film Divisionから入手したグラビア印刷用黒色インク(L62543)を使用して印刷する。印刷済み試料を60℃の熱炉で10分間乾燥させる。かかる装飾積層体の60度光沢度は136であった。乾燥後、無地背景色の2層を、木目調の層に対して一度に1層ずつ印刷して乾燥させ、木目調の画像を作り上げる。新しい積層体の60度光沢度は100近くであった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性インモールド装飾(IMD)製品および/または、特に、半晶質ポリマーを使用して製造された最上部フィルムを備える耐久性インモールド装飾(IMD)製品用の装飾積層体に関する。とりわけ、これらのポリマーから製造した該最上部フィルムは、インモールドプロセスによって深絞り比で容易に加工することができる。また、該最上部フィルムの耐薬品性および耐掻傷性は、該ポリマーフィルムに更に結晶性をもたらすプロセス後の処理によって、著しく向上する。このプロセス後の処理には、フィルムの外観の変化を伴う場合があり、これによりIMD製品の装飾光沢の外観を調節できる。
【背景技術】
【0002】
インモールド装飾(IMD)は、例えば、電子部品の実装、医療機器、家庭用容器等の用途の3次元プラスチック製品の製造および装飾において一般的である。IMDは通常、優れた美観と長期耐久性を呈する製品を製造する低コストのプロセスである。IMDプロセスで好適に使用される一般的な装飾積層体には、最上面および底面を有する最上部フィルム、および装飾光沢模様が含まれる。装飾光沢模様は通常、最上部フィルムの底面に印刷され、長期耐久性のために、最上部フィルムで保護される。装飾光沢模様を、熱成形や射出成形等における損傷から保護するために、光沢模様の上に、すなわち、装飾光沢模様の裏面または反対面に、任意の熱可塑性層を形成することができる。最上部フィルムを、例えば、ハンドリング中およびプロセス中の掻傷から保護するために、最上部フィルムの最上面に任意のキャリアフィルムを配置できる。一般に、このキャリアフィルムはIMD積層プロセスの前または後に剥離する。実際には、該IMD積層体を熱成形し、トリミングし、射出成形用の金型に配置して、表面が該積層体で装飾された3次元の部品または製品を生成する。
【0003】
多くの場合、例えば、自動車の装飾等に使用するIMD製品は、厳格な一連の検査規格を満たすことが望ましいが、これは積層体の設計者および部品メーカーにとって、材料の選定および加工における大きな課題となる場合がある。この基準には通常、美観、耐薬品性、掻傷および傷への耐性、および、熱成形、トリミング、射出成形を含むインモールドプロセスにおける加工の容易性が含まれる。こうした特性の大部分は、もっぱら、またはかなりの割合で、積層体内の最上部フィルムによって決定される。最上部フィルムは、使用時に外的環境に直接的に曝露されるため、耐薬品性および耐掻傷性は主に最上部フィルムによって決定される。その一方で、光学的透明度、表面粗さ、フィルム厚および寸法安定性は、光沢等の美観、画像の奥行き、および画像の鮮明度(Distinctiveness Of Image (DOI))に大きく影響する。最上部フィルムは、積層体の加工性においても大きな役割を果たす。多くの場合、最上部フィルムは、成形温度で損傷なく300%までの伸張に耐え、明確に隅部が画定された金型の形状に適合し、亀裂なくかつ多量の粉塵を発生させることなく、室温でトリミングできることが望ましい。
【0004】
IMD積層体を製造するための最上部フィルムとしては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル、ポリフッ化ビニリデンとアクリルの混合物、セルロース等の多くの材料が使用されてきた。これらの材料はそれぞれ一定の望ましい品質を備えているが、相手先商標製品製造企業(OEM)の多くが要望するレベルですべての品質を満たすものは無いのが一般的である。特に、これらのフィルムは、ガソリン、一般の薬品、および化粧品への曝露を含む耐薬品性試験後に、ある程度の損傷を示す傾向がある。とりわけ、高温下で行われる液体虫除け剤および液体日焼け止めローションの試験に耐えるのは、非常に困難である。このような試験によって最上部フィルムが受けた損傷は、下部の装飾光沢の外観に悪影響を及ぼす。
【0005】
より耐久性の高いIMD製品を製造するために、PCやPMMA等の保護膜が幾つかの最上部フィルムの表面に付されてきた。しかし、幾つかの耐薬品性試験中に、試験液が保護膜を通過して浸透し、下の基体(すなわち、最上部フィルム)を損傷する可能性がある。更に、保護膜は基体よりも多様な熱特性および機械的特性を有する場合があり、積層体が過酷な伸張を(特に深絞り領域で)受ける熱加工工程中に、収縮、亀裂および層間剥離が起きることが多い。この亀裂の問題に対処するために、熱および照射硬化プロセス、または照射および熱硬化プロセス等の2工程連続の硬化プロセスが、最上部フィルムまたは保護膜の製造において使用されてきた。最初の工程で、最上部フィルムまたは保護膜が部分的にだけ硬化されるため、一定の柔軟性が残る。その後、印刷、熱成形、トリミングおよび射出成形を経て、フィルムは照射または熱に再び曝露されて表面が硬化される。しかし、このような連続プロセスには欠点がある。第一に、最後の硬化は一般に固体材料上で行われ、通常、活性点は固体媒体内での移動性が非常に限定されるため、硬化による架橋反応の量が極めて限定的となる。第二に、この2工程プロセスによって、積層体の熱加工後に通常は顧客が行わなければならない追加の工程が加わり、コスト上昇を招くことが多い。更に、照射によって硬化されるフィルムまたは保護膜は、熱加工中に過度の収縮が起きることが多く、そのようなフィルムを使用して製造された製品は加工しにくい。
【0006】
上記の問題に対処するには、高度な美観を備える装飾積層体および/または該装飾積層体から耐久性IMD製品を製造するために、優れた耐薬品性および耐掻傷性を有しながら加工が容易である新しい最上部フィルムが望まれる。従って、本明細書で開示するフィルムは、半晶質ポリマーから製造し、IMD積層体および該IMD積層体で製造される耐久性IMD製品用の最上部フィルムとして使用するフィルムである。この開示する最上部フィルムは、容易に熱形成することができ、その化学的特性および耐掻傷性は、最上部フィルムの結晶含有量を増加させるプロセス後の処理によって、著しく向上する傾向にある。このプロセス後の処理には、最上部フィルムの外観の変化を伴う場合があり、これによりIMD製品の装飾光沢の外観を調節できる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によれば、インモールド装飾(IMD)積層体は、最上部フィルムおよび装飾光沢模様を含んで提供され、その最上部フィルムが、脂環式ポリアミド、芳香族ポリアミド、およびポリエステルからなる群から選択された半晶質ポリマーである。
【0008】
他の実施形態によれば、装飾積層体を製造する方法は、半晶質ポリマーフィルムを調製する工程と、装飾光沢模様を半晶質ポリマーフィルムの底面に印刷する工程と、半晶質ポリマーフィルムの結晶性構造を最適化する工程とを含んで提供される。
【0009】
本明細書で開示する本発明の主題の多数の効果および利点は、本明細書を通読し理解することで当業者には明らかになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本明細書で開示する本発明の主題は、多様な構成要素および構成要素の配置、多様な工程および工程の配置の形を取り得る。各図は好適な実施形態を例示することのみを目的とし、限定するものとは解釈されない。また、自明なように、各図は原寸に比例するものではない。
【0011】
【図1】本発明の主題にかかるIMD積層体の一例を示す概略図であり、例示する実施形態は、その底面に装飾光沢模様を適用した最上部フィルムを含む。
【0012】
【図2】本発明の主題にかかるIMD積層体の別の一例を示す概略図であり、例示する実施形態は、任意の熱可塑性層を含む。
【0013】
【図3】本発明の主題にかかるIMD積層体の最上部フィルムに適用するプロセス後の処理の多様な適用パターンを示す概略図である。
【0014】
【図4】本発明の主題にかかるIMD積層体の別の一例を示す概略図であり、例示する実施形態は、最上部フィルムの最上面上にテクスチャーを含む。
【0015】
【図5】本発明の主題にかかるIMD積層体の最上部フィルムに使用する材料の一例の構造を示す概略図である。
【0016】
【図6】本発明の主題に従って製造された最上部フィルム(すなわち、実施例1)の試料の一例から得られたDSC測定値を示すグラフである。
【0017】
【図7】本発明の主題に従って製造された最上部フィルム(すなわち、実施例1)の試料の一例から得られたDMA測定値を示すグラフである。
【0018】
【図8】本発明の主題に従って製造された最上部フィルム(すなわち、実施例1)の試料の一例から得られた応力・ひずみ測定値を示すグラフである。
【0019】
【図9】本発明の主題に従って製造された最上部フィルム(すなわち、実施例1)の試料の一例から得られたDMA測定値を示すグラフである。
【0020】
【図10】本発明の主題に従って製造された最上部フィルム(すなわち、実施例1)の試料の一例から得られたE'測定値を示すグラフである。
【0021】
【図11】本発明の主題に従って製造された最上部フィルム(すなわち、実施例1)の試料の一例から得られた応力・ひずみ測定値を示すグラフである。
【0022】
【図12】本発明の主題に従って製造された最上部フィルム(すなわち、実施例1)の試料の一例から得られたDSC測定値を示すグラフである。
【0023】
【図13】本発明の主題に従って製造された最上部フィルム(すなわち、実施例2)の試料の一例から得られた光学的特性の測定値を示すグラフである。
【0024】
【図14】本発明の主題に従って製造された最上部フィルム(すなわち、実施例2)の試料の一例から得られた硬度の測定値を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本明細書は、明確化および簡潔化のために、当業者に公知の構造的要素や機能的要素、関連する標準、規格、プロセス、その他の構成要素を参照するものとし、それらが本明細書に示す好適な実施形態に従って、またはこれに適合させるために変更または修正されている場合を除き、それらの構成または運用について詳細に説明しないものとする。
【0026】
本明細書は、半晶質ポリマーを最上部フィルムとして使用して製造する耐久性インモールド装飾(IMD)積層体を開示する。半晶質ポリマーの結晶性構造および/または結晶含有量は、耐薬品性および耐掻傷性を更に向上させるプロセス後の処理によって任意で最適化できる。プロセス後の処理は、最上部フィルムの製造後、積層体の製造中、インモールドプロセス中、またはインモールドプロセス後等、プロセスのあらゆる段階で行うことができる。この処理は、最上部フィルムの表面全体、最上部フィルムの厚さ全体にも、離散した領域にも適用できる。プロセス後の処理には、最上部フィルムの外観の変化を伴う場合があり、これによりIMD製品の装飾光沢の外観を調節できる。また、耐久性IMD積層体および該積層体を製造するプロセスも開示する。
【0027】
本開示にかかる最上部フィルムとして好適な、および/または、本明細書で開示する、結晶性構造および/または結晶含有量を最適化するためのプロセス後の処理に好適なポリマーには、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PMMA、ポリアミド(PA)等が含まれる。これらのポリマーのうち、脂環式ポリアミドまたは芳香族ポリアミドおよびアモルファス(非結晶)PET(a−PET)は、特に好適である。一つの好適な実施形態では、半晶質ポリマーは、樹脂から押出成形されたポリアミドフィルム、すなわち、脂環式ポリアミドまたは芳香族ポリアミドで構成される。このような樹脂は市販されており、例えば、エボニックデグサ社からTROGAMID(登録商標)の名称で製造および/または提供される樹脂がある。別の好適な実施形態では、半晶質ポリマーは非結晶ポリエチレンテレフタレートで構成される。プロセス後の処理は、様々な手段で、装飾積層体の加工前、加工中、加工後のいずれでも適切に行うことができる。このプロセス後の処理には、最上部フィルムの外観の変化を伴う場合があり、これによりIMD製品の装飾光沢の外観も調節できる。
【0028】
本発明の主題を展開するにあたり、多様な試料を調製し、試験する。試料の調製方法および試験方法を以下に示す。
【0029】
試験および/または試料調製方法の説明:
【0030】
次の試験によって、最上部フィルムの試料の性能を評価する。
【0031】
1. 光学的試験:
【0032】
Perkin−Elmer UV/Vis spectrometer(Lambada 20)を用いて、光透過率および光吸収のスペクトルを記録する。光透過率%、曇り度%および透明度%は、Gardener Haze−Guard−Plus計器を用いて記録する。光沢測定はBYK Gardener光沢計(Micro−TRI−gloss)を用いて角度60度で行う。光沢測定については、試料を白紙束の上に配置する。曇り度%および光沢測定については、少なくとも3つの試験を異なる領域で行い、平均値を報告する。
【0033】
2. 耐薬品性試験:
【0034】
イソプロパノールおよびトルエン試験:試料の小片を密閉した瓶の中でイソプロパノール(IPA)およびトルエンにそれぞれ1時間浸す。試験後、試料を瓶から取り出し、IPAで洗浄し、光学的透明度の変化、しみ、破損等の損傷がないか目視点検を行う。
【0035】
虫除け剤試験:本試験はDeep Woods(ウィスコンシン州S.C.Johnson&Son社)液体虫除け剤を使用して、Ford DVM−0039−MAの手順に従って行う。製品Deep Woodsはイソプロパノール内に25%のN,N,−ジエチル−m−トルアミド(DEET)を含有する。試験は室温と高温の両方で1時間行う。フィルム表面上に2x2インチの四角の布(ペンシルベニア州TESTFABRICS社)を載置する。トランスファーピペットを使用して、布上の同じ領域にDeep Woods液3滴を滴下する。アルミ板を布上に載置し、該アルミ板上に、液体を滴下した領域の上になるように500gの重りを載置する。室温での試験については、試料を室温で1時間置く。高温での試験については、試料を所望の温度に設定した換気式の熱炉内に1時間置く。試験後、布を除去して、フィルムを洗浄液で十分に洗い、拭いて乾燥させ、表面に膨張、しみ、布の跡等の損傷がないか目視点検を行う。その結果に対して1から5の等級を付けて評価する。「1」を最高(全く損傷なし)とし、「5」を最低とする。
【0036】
日焼け止めローション試験:本試験は、アヴォベンゾン含有のCoppertone 50 SPF(テネシー州Schering−Plough Health Care Products社)日焼け止めを使用して、Ford DVM−0036−MAの手順に従って行う。試験は室温と高温の両方で1時間行う。フィルム表面上に2x2インチの四角の布(ペンシルベニア州TESTFABRICS社)を載置する。布上にCoppertoneペースト1滴を滴下する。アルミ板を布上に載置し、該アルミ板上に、液体を滴下した領域の上になるように500gの重りを載置する。室温での試験については、試料を室温で1時間置く。高温での試験については、試料を所望の温度に設定した換気式の熱炉内に1時間置く。試験後、布を除去して、フィルムを洗浄液で十分に洗い、拭いて乾燥させ、表面に膨張、しみ、布の跡等の損傷がないか目視点検を行う。その結果に対して1から5の等級を付けて評価する。「1」を最高(全く損傷なし)とし、「5」を最低とする。
【0037】
日焼け止めローションおよび虫除け剤耐性試験:本試験は、GM GMW14445の手順に従って行う。試験溶液は、同じ重量部のDEET、3−(4−メトキシフェニル)−2−プロペネシド−2−エチル−ヘキシルエステル(メトキシ桂皮酸オクチル)、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸2−エチルヘキシル(オクトクリレン)および3,3,5−トリメチルシクロヘキシルサリチラート(ホモサラート)で作る。トランスファーピペットを使用して、試験試料の表面上の3箇所以上の異なる場所に試験液(約50μl)数滴を滴下する。試験試料を80±3℃の熱炉内に1時間置く。炉から取り出した試料を、室温になるまで冷却し、洗浄剤で洗い、拭いて乾燥させ、膨張、ふくれ、しわ、しみ等の損傷がないか目視点検を行う。その結果に対して1から5の等級を付けて評価する。「1」を最高(全く損傷なし)とし、「5」を最低とする。
【0038】
消臭剤試験:車用消臭剤「Royal Pine」をフィルム試料に直接接触させて、アルミ板で覆う。500gの重りをアルミ板に載せ、20時間置く。試験後、試料に膨張、しみ等の損傷がないか目視点検を行う。
【0039】
3. 動的粘弾性測定:
【0040】
TA Instrument RSA III計器を使用して、直角ねじれ形状について試料の特性を明らかにする。5mm×14mm、厚さ300mmの最上部フィルムの試料片を使用する。試験は、3℃/ステップの速度および10rad/秒の周波数で、25℃〜240℃の範囲の温度掃引により行う。G'、G"およびタンデルタを、温度の関数として記録する。
【0041】
4. 応力・ひずみ測定:
【0042】
応力・ひずみ測定を行って、最上部フィルムの試料の熱成形特性を評価する。DSCによって測定したポリマーフィルムのガラス転移温度と、該フィルムの融点との間の温度で、300mm/分でInstron 4501上にフィルムを伸張する。伸張された長さ(ΔL)を初めの長さ(Lo)で割った比率として定義される応力・ひずみ%の曲線が、熱成形の性能を評価するために多様な温度で記録される。
【0043】
5. 熱成形試験:
【0044】
真空熱成形試験は、低速炉設定(SEJI条件)を備えたMAACO真空成形装置で行う。長さ11インチ、幅4インチ、奥行1インチの熱成形プラテンを使用する。赤外線センサーをフィルムの中央にテープで留めて、これによって、フィルムが加熱温度に到達すると熱成形プロセスが自動的に開始する。熱成形後、隅部の絞り比および鋭利度を検査して、熱成形の品質を評価する。
【0045】
6. DSC測定:
【0046】
TA Instruments DSC Q2000を使用して、ガラス転移温度(Tg)、低温結晶化温度(Tc)および融点(Tm)を測定し、試料の特性を明らかにする。測定はアルミ試料皿と、パージガスとして液体窒素を使用して行う。1.5mg〜2.2mgの試料をアルミ皿に載せ、60秒ごとに±0.796℃で変調させる。0℃〜300℃の昇温を5℃/分の昇温速度で行う。TcおよびTmの分析を熱流量に基づいて行う。
【0047】
7. グラビア印刷:
【0048】
実験室規模のグラビア印刷校正機(英国 K Printing Proofer、RK Print Coat Instruments社)を使用して、半晶質の最上部フィルム上に画像を印刷する。木目調の画像および無地の層を、Avery Performance Film Division製の溶剤ベースグラビア用印刷インクを使用して印刷する。印刷後、試料を熱炉内に配置して溶剤を乾燥させる。
【0049】
図1には、本発明の主題の好適な実施形態に従って、半晶質ポリマーを最上部フィルム12として使用して製造した耐久性インモールド装飾(IMD)積層体10の一例が示されている。図に示すように、最上部フィルム12の裏面または底面12aに装飾光沢模様14が印刷その他の方法で適用されている。
【0050】
最上部フィルム12に使用する半晶質ポリマーの結晶性構造および/または結晶含有量は、耐薬品性および/または耐掻傷性の一層の向上をもたらすプロセス後の処理によって、適切に最適化される。プロセス後の処理に好適なポリマーには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、PMMA、ポリアミド等が含まれる。これらのポリマーのうち、脂環式ポリアミドまたは芳香族ポリアミド(例えば、TROGAMID(登録商標)等)およびアモルファス(非結晶)PETは、特に好適である。これらの種類のポリマーは、優れた光学的透明度、ガソリンおよび一般的な有機溶剤に対する高い耐性、優れた耐掻傷性を備え、インモールドプロセスによって容易に加工することができる。任意で、熱安定剤やUV安定剤、顔料や加工助剤等の添加剤を、最上部フィルム12に使用する半晶質ポリマーに加えてもよい。
【0051】
半晶質最上部フィルム12の厚さは0.1μm〜5mmが望ましく、0.1mil〜20milが更に望ましく、0.1mil〜15milが最も望ましい。図示しないが、任意で、除去可能な保護キャリアフィルムをフィルム12の最上面12b、または最上面および底面(12bおよび12a)の両方に配置または貼付して、例えば、輸送中、ハンドリング中、および後続の各加工工程中に掻傷からフィルム12を保護することができる。このキャリアフィルムは、装飾光沢模様14の印刷前、装飾光沢模様14の印刷後かつ熱成形前、またはインモールドプロセス後に除去できる。最上部フィルム12が、例えば1mil未満等のように比較的薄い場合、キャリアフィルムは、最上部フィルムがフィルム製造工程中または後続の各加工工程中に破損しないよう十分な強度を与えるための支持体として機能する。
【0052】
半晶質ポリマーフィルム12に接触する保護キャリアフィルムの表面は、平滑であってもテクスチャーを有していてもよい。ただし、平滑な表面は押出半晶質ポリマーフィルム12の表面粗さを、ひいては、光学的光沢度を改善させる。このため、キャリアフィルムの表面粗さは100nm未満が望ましく、30nm未満が更に望ましく、15nm未満が最も望ましい。その一方で、表面にテクスチャーを有するキャリアフィルムは、キャリアフィルムの表面上に形成された所望のテクスチャーを半晶質フィルム12に直接転写するために使用できる。テクスチャーは、エッチング、印刷、エンボス、機械的ブラシ等によって適切に作製できる。
【0053】
任意で、装飾光沢模様14の印刷前に半晶質ポリマーフィルム12の底面12aに下塗層(図示せず)を形成し、印刷された装飾光沢模様14に対する親和性および粘着性を高めることができる。あるいは、半晶質ポリマーフィルム12の底面12aを、プラズマ、コロナ、火炎等の技法によって処理し、印刷されたインク層14の粘着性を高めることができる。
【0054】
装飾光沢模様14は、水性、溶剤系またはUV硬化性インクを使用したグラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷等の従来のあらゆる印刷技法によって、あるいは、溶剤系インクおよびUV硬化性インクによるインクジェット印刷、トナーカートリッジを使用したレーザー印刷、染料昇華等を利用したデジタル印刷によって、半晶質ポリマーフィルム12の底面12a上に適切に印刷できる。装飾光沢模様は、従来の印刷技法を利用して、木目インク層、メタリックインク層、背景色層等を含むがこれらに限定されない複数の層で構成してもよい。任意の熱可塑性層20(図2に例示する)が無い場合、射出成形プロセスに耐えられる特殊高温インクが好適に採用される。好適な印刷用インクの例としては、Proell製のスクリーン印刷用NORIPHAN(登録商標)インクおよびAvery Dennison Performance Film Division製の溶剤ベースグラビア印刷用インクがある。最上部フィルム12(例えば、TROAMID(登録商標)および/または同様の樹脂用に製造されたもの)は、その耐高温性のため、特にレーザーおよび染料昇華印刷に好適である。このような実施形態において、染料昇華印刷ではインクがフィルム12内部に拡散するので、装飾パターンはフィルム12の最上面または底面(12bまたは12a)のいずれかに印刷すればよい。任意で、装飾光沢模様14は更に、レーザーやプラズマ技法等を利用して、エッチングによって作製することができる。
【0055】
次に図2を参照して、代表的な一実施形態において、コーティング、熱ラミネートによって、または接着剤(図示せず)を介してのいずれかによって装飾光沢模様14の底面14aに任意の熱可塑性層20を形成できる。この熱可塑性層20は幾つかの機能を果たす。例えば、高温かつ高圧で行われる射出成形中に、射出樹脂によって印刷用インクが落ちないよう保護したり、この射出樹脂に対して優れた接着性を確保したりする。また、補色層として機能し、熱成形後、特に深絞り成形後に装飾光沢の色が影響を受けないようにする場合もある。この理由から、熱可塑性層20に使用する色は装飾光沢14の色に近くてもよい。更に、熱可塑性層20は不透明層として機能し、射出樹脂の色および射出樹脂から生じる欠陥が装飾光沢14に悪影響を与えないようにする場合もある。
【0056】
半晶質ポリマーフィルム12が薄く、十分な強度を持たない実施形態において、熱可塑性層20は更に積層体10に対して剛性を加え、積層体10が破損なく熱成形およびトリミングプロセスを受けられるようにする。好適な熱可塑性層20としては、アクリロニトリル−ブチレン−スチレン(ABS)、PC、ポリアミド、ポリエステル、アクリル等が含まれるがこれらに限定されない。ABSは、その低コスト性、耐高温性、およびABSとABS/PCのブレンドをベースとする射出成形樹脂に対する良好な接着性の理由から、特に好適である。任意の熱可塑性層20の厚さの範囲は0.1μm〜20milで、1μm〜17milが望ましい。積層体10は、適切に従来の熱成形およびトリミングの方法を利用して加工され、その裏面10aから射出成形される。
【0057】
任意で、半晶質ポリマーフィルム12は単一のフィルムとして、または、図2に例示するような多層フィルムの最上層として使用できる。多層フィルムでは、半晶質ポリマーフィルム12は基体および/または下層を化学的損傷および掻傷から保護する。多層フィルムは、熱ラミネート、接着剤の使用、共押出等の様々な技法によって、任意で製造することができる。ポリアミド、PC、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、アクリルおよびメタクリルポリマーまたはコポリマー、ABS等の多数の熱可塑性ポリマー材料を基体として使用できる。基体の厚さの範囲は1mil〜50milが望ましく、2mil〜20milが更に望ましく、5mil〜15milが最も望ましい。
【0058】
保護キャリアフィルム(図示せず)を、例えば、輸送中、ハンドリング中の掻傷から表面12bを保護するために、任意で半晶質ポリマーフィルム12の表面12bに配置および/または貼付することができる。好適な保護ポリマーキャリアフィルムには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等が含まれる。保護キャリアフィルムは、積層体10の製造前、積層体10の製造後かつインモールドプロセス前、または積層体10のインモールドプロセス後に除去できる。
【0059】
本明細書において上述したように、半晶質ポリマーフィルム12は、結晶化度および結晶含有量を最適化するために任意で処理することができ、この処理によって耐薬品性および耐掻傷性が向上する。半晶質ポリマーフィルム12の処理は、最上部フィルムの表面全体に実施するか、離散した領域に実施するかを選択でき、処理の深さも最上面から底面に至る範囲内で、規則的な配置でも不規則的な配置でも任意に適用することができる。処理の多様な適用パターンの例を図3に示す。斜線部分は、処理を施したフィルム12の領域を表す。自明なように、離散した領域への処理によって、異なる物理的および/または化学的特性を持つ各領域が作られ、図に示すように、処理された領域はフィルム面の上方の場合もあり、下方の場合もある。
【0060】
上記の最適化を行うために、対流加熱による熱処理が任意で用いられるが、当然のことながら、これに代わる他の様々な技法で半晶質フィルム12の処理を実施してもよい。例えば、金属表面からの接触加熱、赤外線またはレーザーの照射、プラズマ処理等によって実施できる。これらの技法のうち、対流加熱は、フィルム12の表面および化学的組成に対して重大な損傷を与えないので好適である。
【0061】
任意で、離散処理は、パターン付きマスクによる加熱やエンボス等によって、エネルギー源を集中させて行う。処理の深さは処理領域にもたらされる総エネルギーによって適切に制御される。
【0062】
好適な一実施形態において、処理をライン内で実施するために、フィルム12を押し出しする押出ラインに処理装置を統合する。例えば、熱処理を実施するために、押出の最後に熱炉または赤外線ヒーターを加えることができる。
【0063】
あるいは、プロセス後の処理を装飾光沢14の印刷中に実施する。この場合、印刷用インクの乾燥、レーザーエッチング等によってフィルムを加熱する。このような処理の利点は、別個の処理工程が不要になることである。
【0064】
あるいは、プロセス後の処理を積層体のインモールドプロセス中に実施する。この場合も別個の処理工程が不要になる。実際に、厚さ6milおよび12milの(例えば、TROGAMID(登録商標)樹脂で製造された)最上部フィルム12を本明細書に記載する条件下で熱成形した後、耐薬品性の向上が観察された。
【0065】
別の一実施形態において、ドット、四角形、プライム等のテクスチャー12cを半晶質ポリマーフィルム12の最上面12b、または最上面と底面(12bおよび12a)の両方に作製して、異なる美観を実現する。この例を図4に示す。テクスチャー12cを構成するのは、規則的なパターンでも不規則的なパターンでもよい。このようなテクスチャー12cは、印刷、エンボス、複製、エッチング等で作製できる。テクスチャー12cは任意で、積層体10のインモールドプロセス中に半晶質ポリマーフィルム12の最上面12b上に、例えば、金型の表面テクスチャーを複製することによって作製する。
【実施例】
【0066】
[実施例1:半晶質ポリアミドフィルム]
【0067】
耐久性IMD製品を製造するための積層体10の最上部フィルム12の最初の実施例として、半晶質、微晶性ポリアミドフィルムが、ポリアミド族の材料に属する樹脂から押出成形され、脂環式ジアミンおよびドデカン二酸の縮合反応によって製造される。図5にその構造を示す。本実施例では、TROGAMID(登録商標)樹脂を使用する。脂環式セグメントの存在によって、この材料は微晶質のみであり、この材料から製造されるフィルムは無色透明である。サブミクロンの結晶の存在によって、このフィルムは一般の薬品に対して高い耐性があり、一般的なアクリルフィルムおよびポリカーボネートフィルムよりも耐摩耗性が高く、なおかつインモールドプロセスによって容易に加工できる。様々な厚さのフィルムを押出成形によって製造できる。
【0068】
実施例1に従って製造されるフィルムの主要な特性の一部を表1に示す。
【表1】
【0069】
実施例1のフィルムは、ガラスに匹敵する高い光透過率%を特徴とする優れた光学的透明度を有する。このフィルムのガラス転移温度(Tg)は約140℃、低温結晶化温度は約160℃、融点は約250℃である。結晶の寸法が可視光よりも小さいため、結晶の存在がフィルムの光学的透明度に悪影響を及ぼさない。また、このフィルムは、PMMAおよびPCと同等またはそれを上回る優れた耐摩耗性および耐掻傷性を示す。ガラス転移温度(Tg)と融点(Tm)との差が大きいため、後続の各プロセス工程の操作範囲が広くなる。実施例1の材料は、アルコール(IPA)、アセトン、トルエン、キシレン等の一般的な有機溶剤および薬品に対して優れた耐性を示す。実施例1の樹脂の密度は1.02g/cm3で、アクリル材料およびポリカーボネート材料よりも約20〜30%低いので、軽量の装飾製品を製造するには極めて好適である。
【0070】
実施例1にかかる薄いフィルムは、TROGAMID(登録商標)樹脂、特に、製品コードCX7323で指定されるTROGAMID(登録商標)樹脂の押出によって得られる。このようなフィルム(12mil厚)の1つのDSC曲線を図6に示す。フィルムのガラス転移温度は約133℃、低温結晶化温度は約159℃、融点は約246℃である。これらの値は表1に示す値と同等である。押出フィルムのDMA測定(図7に示す)が示すTgは142℃であり、これはDSC測定で得られた値よりも高く、表1に示す値により近い。DSCとDMAで測定したTg値が異なるのは、測定中の加熱速度および試験頻度が異なるためである。
【0071】
図7に示すように、E'は、ガラス転移温度周辺でのフィルムの軟化のため、約130℃から減少し始める。E'は150℃周辺で最低値に到達し、更に温度が170℃に上昇するにつれて増大する。その後、E'は約220℃になるまで比較的安定を維持し、融点付近で再び減少する。150℃後のE'の増加は、加熱による結晶化の増大に起因する。170℃〜220℃のE'値の変動は、結晶化の増大による増加と、熱が誘導した軟化による減少との、2つの反対の効果を反映している。
【0072】
実施例1のフィルムの熱成形特性を、特に、フィルムがより硬化する熱処理後に評価するために、応力・ひずみ試験を実施例1の元のフィルムおよび実施例1の熱処理したフィルム(ここでも12mil厚)の両方に対して実施する。試験はInstron 4501上で150℃と190℃との間の温度で実施する。幅12.5mm、長さ50.8mmのフィルム細片を300mm/分の速度で伸張し、応力・ひずみ%曲線を記録する。図8に示すように、フィルムは150℃と190℃との間の温度で破損なく応力300%超まで伸張できる。フィルムには試料ホルダから外した後の収縮は全く見られないか、ほとんど見られなかった。この特性は、プロセス後の収縮が、亀裂、層間剥離、変形、画像の歪み等の多くの悪影響をもたらすIMD製品においては極めて重要である。150℃で伸張したフィルムは、温度上昇に伴って応力が継続的に増大する。しかし、160℃〜190℃で伸張したフィルムは、応力曲線はより複雑になる。この後者の現象も、軟化による減少と、伸張および加熱の両方が誘導した更なる結晶化による増大との、2つの反対の効果を反映している。
【0073】
真空熱成形試験は6milおよび12mil厚の実施例1のフィルムを使用してMAACO熱成形装置上で行う。長さ11インチ、幅4インチ、奥行1インチのプラテンを使用する。試験は、加熱温度180℃〜200℃、加熱時間19秒、熱成形時間15秒、プラテン圧50psiの条件下で行う。フィルムが加熱温度に到達すると、フィルムの中央にテープで留めた赤外線センサーが熱成形プロセスを自動的に開始する。両方のフィルムは、明確に隅部が画定された3次元形状に成形される。
【0074】
その優れた耐熱性のために、実施例1のフィルムはレーザーおよび染料昇華の方法による印刷に特に好適である。また、ガラス転移温度が高いため、溶剤ベースのインクを使用した印刷中および乾燥中の寸法安定性に優れ、1つのインク層の後で別のインク層が印刷される際に位置合わせが良好となる。フィルムの硬い表面は、後続のプロセス工程中の変形および粗面処理にも耐える。
【0075】
後処理による耐薬品性の向上
【0076】
自動車用途に関しては、最上部フィルム12がガソリンおよび一般の薬品だけでなく、液体虫除け剤、日焼け止めローション、消臭剤等の化粧品に対しても優れた耐性を持つという点でも好適である。これらの化粧品に対する実施例1のフィルムの耐性を表2に示す。比較のために、Sabic Groupから入手するPCフィルム(LEXAN(登録商標) 8010)およびMacDermid社から入手する保護膜層付きPCフィルム(XTRAFORM(登録商標))の試験も行う。これらのフィルムはすべて、室温での虫除け剤および日焼け止めローションに優れた耐性を示すのに対して、PCフィルムおよび保護膜付きPCフィルムは74℃での虫除け剤および日焼け止めローションから重度の損傷を受け、どちらも損傷度の等級「5」を示す。その一方で実施例1のフィルムは、74℃での日焼け止めローションに優れた耐性を示すものの、74℃での虫除け剤からは、損傷度の軽い等級「3」ではあるが、損傷を受ける。
【表2】
【0077】
明らかに、虫除け剤試験は、特に高温のプラスチックフィルムに対して極めて厳しいものである。これは、DEET化合物がプラスチック材料を軟化する可能性があり、試験布のパターンの跡がポリマー表面に付き易いためである。多層フィルムについては、DEET化合物が最上層を通過して浸透し、層間剥離を引き起こし、下の基体を損傷する可能性さえある。こうした悪影響を理由として、現在市販されているIMD製品の多くは虫除け剤試験に十分に耐えられない。
【0078】
実施例1のフィルムの液体虫除け剤に対する耐性を更に高めるために、160℃〜190℃の温度範囲で、熱炉内で3分〜10分間熱処理を行う。熱処理後、耐薬品性、光学的透明度、耐掻傷性および熱成形の特性を明らかにした。この結果を表3にまとめる。
【表3】
【0079】
110℃〜150℃の温度で10分間の熱処理後、有意な改善は見られなかった。処理温度を160℃に上げて7分間、または190℃に上げて5分間行ったが、それでも有意な改善は見られなかった。しかし、処理時間を160℃で10分間、190℃で7分間、10分間に延ばしたところ、実施例1のフィルムは74℃の液体虫除け剤に対して完全な耐性を示すようになった。このとき、日焼け止めローションに対する耐性は最適を保っており、すなわち追加処理による悪影響は受けなかった。
【0080】
後処理による光学的特性の変化
【0081】
実施例1のフィルムを160℃および190℃で10分間熱処理を行う前および行った後の曇り度%および透過率%の変化を比較し、表4に報告する。熱処理によって、耐薬品性に有意な改善が見られ、上記の処理条件下で、曇り度%および透過率%は基本的に変化しなかった。従って、処理されたフィルム内の結晶の寸法は可視光の波長未満を維持したことが示唆される。
【表4】
【0082】
しかし、170℃での処理時間を30分間超にまで延ばすと、フィルムがわずかに黄変することに注目すべきである。
【0083】
後処理による耐掻傷性の向上
【0084】
処理後の機械的特性の変化をDMAで測定する。170℃で10分間処理したフィルムのE'、E"およびタンデルタを図9に示す。元のフィルムと比較して、処理したフィルムのTgは、更なる結晶化によって約142℃から約144℃に上昇した。また、後処理による実施例1のフィルムの硬化も、上記で観察された耐薬品性の向上に関連する。
【0085】
異なる環境下で処理したフィルムが類似の結果を示しており(図10参照)、これは160℃で10分間処理した後に、ポリマー鎖の転位が最大に到達したことを示唆している。
【0086】
異なる温度での応力・ひずみ曲線も測定し、160℃〜190℃で10分間の後処理を行った後の実施例1のフィルムの熱成形性能を評価した。図8に示す元のフィルムと比較して、上記の温度で処理されたフィルムは、かなり高い応力と、試験を150℃で実施した際に約100%の伸張を行った後の最大セル負荷を超える力を示した。このため、試験温度を180℃および230℃にそれぞれ上昇させた。これらの温度では、フィルムは最大セル負荷を超えることなく300%を超えて伸張できる(図11参照)。300%の伸張後であっても、フィルムは無色透明のままであり、力を解除するとごくわずかな収縮を示した。
【0087】
実施例1のフィルムの耐薬品性の改善は、熱成形によっても観察された。10mil厚の実施例1のフィルムに対して約400°Fで真空熱成形を行った。GMW14445試験溶液に対する耐性の等級は、熱成形前の「3」から熱成形後の「1」に改善した。
【0088】
熱処理後の熱特性の変化をDSCで測定した。170℃で10分間の処理後(図12参照)、低温結晶化が完全に消失した。更に、一次ガラス転移温度は約133℃から約138℃に上昇し、二次ガラス転移温度はそれよりかなり高く、処理条件に応じて約171℃から約191℃の範囲で、表5に報告するとおり観察された。元のフィルムは、低温結晶化に関連する16.55J/gの融解熱および32.91J/gの総融解熱を示した(表5)。この結果は、低温結晶化前の元のフィルムに対する融解熱は16.36J/gでしかなかったことを示している。熱処理後、低温結晶化は消失し(図12参照)、約30J/gの融解熱が測定された(表5)。これは、熱処理によってフィルム内の結晶化度が最大化されたことを示している。
【表5】
【0089】
[実施例2:非結晶PETフィルム]
【0090】
別の実施例では、半晶質ポリマーフィルム12をアモルファス(非結晶)PET、すなわちa−PETから調製する。非結晶PETフィルムは高い光学的透明度を有し、複雑な3次元形状に容易に加工できる。こうした特性から、a−PETは食品および飲料の包装に広く利用されている。また、非結晶PETは、最も広く再生されるプラスチック材料の一つでもある。多様な色のフィルムが市販されている。
【0091】
ポリエチレン、ポリプロピレン、実施例1等の他の半晶質ポリマーと比較して、a−PETの結晶化の速度は緩やかであるため、融解物を急冷することによって完全に非晶質のPETを得られる。a−PETフィルムの結晶化は加熱、伸張、または溶剤への曝露で誘発される。熱処理では、結晶化は120℃周辺で始まり、熱特性および機械的特性が劇的に変化する。例えば、ガラス転移点は67℃から81℃に上昇し[J.Brandrup、E.H.Immergut、Polymer HandBook、New York、Interscience Publishers、1966]、フィルムは硬化し、溶剤への耐性が高まる。処理されたフィルム内では核生成および球状結晶の形成が観察される[E.A.Collins、J.Bares、F.W.Billmeyer、JR.、Experiments in Polymer Science、John Wiley&Sons Inc.、New York、1973]。
【0092】
広範囲の温度および処理時間にわたる熱処理後にも光学的特性が基本的には変化しなかった実施例1のフィルムと比較して、非結晶PETフィルムの光学的特性は熱処理後に容易に変化する。例として、Hop Industriesから入手した、115℃で処理した10mil厚のa−PETの光学的特性における変化を図13に示す。処理時間が3分未満ではフィルムは透明のままで、その後、曇り度%が処理時間に対してほぼ直線的に増加し、10分以内に50%超に達する。曇り度%の増加に伴い透過率%が減少する。処理温度を120℃に上げると、約5分後にフィルムは半透明となり、30分後に白濁色に変わる。処理条件による光学的特性の変化は、a−PETを最上部フィルムとして製造されたIMD製品の装飾光沢を、処理によって調節できることを示唆している。例えば、元の鮮明な画像はa−PETの最上部フィルムを120℃で5分間処理することで見えにくくすることができ、30分間の処理後には全く見えなくなり、白色無地に変えることができる。離散した領域にのみこの処理を行った場合、装飾光沢を処理済み領域では鮮明度を落としながら、未処理領域では鮮明なままとすることができる。
【0093】
後処理による耐薬品性の向上
【0094】
120℃で5分間処理した後の虫除け剤および日焼け止めローションへの耐性の変化を表6に示す。元のa−PETフィルムは高温下であっても液体日焼け止めに対して優れた耐性を示し、室温の液体虫除け剤にも耐性を示す。しかし、74℃で1時間の試験後、おそらくは、液体虫除け剤の含有物によって誘発された結晶化によって、木のような模様が最上部表面に生じた。a−PETフィルムを120℃で10分間処理することによって、フィルムは白濁色になり、PETフィルムは液体虫除け剤に完全な耐性を持つようになった。
【表6】
【0095】
後処理による耐掻傷性の向上
【0096】
異なる条件下で熱処理した後のa−PETの微小硬さの変化を図14に示す。Hu kおよびHu polの両方で表す平均硬さは熱処理後に、特に再結晶化が開始する120℃で向上した。フィルムの鉛筆硬度は125℃で5分間の熱処理後に「B」から「H」に向上した。硬度の向上はより優れた耐掻傷性をもたらす。
【0097】
[実施例3:実施例1を最上部フィルムとして使用して製造する装飾積層体]
【0098】
実施例3では12mil厚の実施例1のフィルムを使用する。特に、フィルム材料はエボニックデグサ社から入手したTROGAMID(登録商標)を使用する。フィルムには紫外線照射への耐性を高めるための紫外線吸収剤が含まれる。かかるフィルムはGardener micro−gloss meterを使用した測定で60度光沢度157を示す。94.0gのシクロヘキサノン溶剤に6.0gのポリウレタン樹脂(Noveon社 ESTANE(登録商標)5715)を溶解して、プライマ溶液を調製する。溶剤ベースのグラビア印刷用黒色インク(L62543)をAvery Performance Film Divisionから入手する。6.0gの3−アミノプロピルトリエトキシ−シラン(Sigma Aldrich)を30.0gの無水エチルアルコール(Sigma Aldrich)に混ぜて、接着促進溶剤を調製する。この接着促進溶剤をグラビアインクと重量比1対4で混合する。連続的な下塗層をまず最上部フィルム上に、プライマ溶液を使用し、実験室規模のK Printing Prooferを使用するグラビア印刷で印刷し、100℃で10分間乾燥させる。連続的なインク層を、下塗りされた表面上に実験室規模のK Printing Prooferを使用してグラビア印刷し、再度、100℃で10分間乾燥させた。こうして印刷された表面は、60度光沢度約91を示した。印刷済みフィルムは、Avery Performance Film Divisionから入手した17mil厚の茶色のABSフィルムに熱的に積層される。このABSフィルムは完全に不透明で、Hunterlab ColorQUEST Spectrocolorimeter (Hunter Associates Laboratory社)を使用した測定による光学濃度は6.0に近い。積層ローラーによる損傷から最上部フィルムを保護するために、最上部フィルムの印刷されていない表面に、厚さ2milのPET保護フィルム(DuPont社 Melinex(登録商標) PET)を載置する。積層は温度340°F〜360°F、圧力30Psi、速度0.5mm/秒で行う。室温にまで冷却した後、PET保護フィルムを除去して装飾積層体を得た。積層体の60度光沢度は90超であった。
【0099】
[実施例4:a−PETを最上部フィルムとして製造する装飾積層体]
【0100】
Hop Industries社(ニュージャージー州ガーフィールド)から入手した10mil厚のa−PETフィルムを用意する。フィルムには第一および第二の両主要表面に光沢がある。フィルムはGardener Haze−Guard−Plus計器を使用して測定した曇り度の値は2.3%、光透過率は92.7%で、60度光沢度の値は150である。黒色の木目調の画像をa−PET表面上にK Printing Proofer機器およびAvery Performance Film Divisionから入手したグラビア印刷用黒色インク(L62543)を使用して印刷する。印刷済み試料を60℃の熱炉で10分間乾燥させる。かかる装飾積層体の60度光沢度は136であった。乾燥後、無地背景色の2層を、木目調の層に対して一度に1層ずつ印刷して乾燥させ、木目調の画像を作り上げる。新しい積層体の60度光沢度は100近くであった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最上部フィルムと、装飾光沢模様とを備えるインモールド装飾積層体であって、前記最上部フィルムは、脂環式ポリアミド、芳香族ポリアミド、およびポリエステルからなる群から選ばれる半晶質ポリマーである、インモールド装飾積層体。
【請求項2】
前記半晶質ポリマーフィルムは、プロセス後の処理を受ける前に部分的に結晶化されている、請求項1に記載のインモールド装飾積層体。
【請求項3】
前記半晶質ポリマーフィルムは、プロセス後の処理を受ける前は全体的に非晶質である、請求項1に記載のインモールド装飾積層体。
【請求項4】
前記半晶質ポリマーフィルムの結晶化度または結晶含有量が、プロセス後の処理の後に著しく増大する、請求項1に記載のインモールド装飾積層体。
【請求項5】
前記半晶質ポリマーフィルムは、脂環式ジアミンとドデカン二酸モノマーとの反応によって製造される、請求項1に記載のインモールド装飾積層体。
【請求項6】
前記半晶質ポリマーフィルムは、非結晶PETである、請求項1に記載のインモールド装飾積層体。
【請求項7】
前記半晶質ポリマーフィルムは、透明なフィルムである、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項8】
前記半晶質ポリマーフィルムは、着色されたフィルムである、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項9】
前記半晶質ポリマーフィルムは、平滑なフィルムである、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項10】
前記半晶質ポリマーフィルムは、テクスチャーを有するフィルムである、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項11】
前記半晶質フィルムは、多層積層体からなる、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項12】
前記半晶質フィルムの厚さが、1mil未満である、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項13】
前記半晶質フィルムの厚さが、5mil未満である、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項14】
前記半晶質フィルムの厚さが、10mil未満である、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項15】
前記半晶質フィルムの厚さが、20mil未満である、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項16】
前記半晶質フィルムの厚さが、5mm以下である、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項17】
前記半晶質フィルムは、押出によって製造される、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項18】
前記半晶質ポリマーフィルムは、ポリマーキャリア上への溶剤塗布によって製造される、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項19】
前記半晶質ポリマーフィルムは、溶剤キャストによって製造される、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項20】
前記テクスチャーは、印刷によって作製される、請求項10に記載の装飾積層体。
【請求項21】
前記テクスチャーは、エンボスによって作製される、請求項10に記載の装飾積層体。
【請求項22】
前記テクスチャーは、エッチングによって作製される、請求項10に記載の装飾積層体。
【請求項23】
前記テクスチャーは、複製によって作製される、請求項10に記載の装飾積層体。
【請求項24】
前記テクスチャーは、機械的ブラシによって作製される、請求項10に記載の装飾積層体。
【請求項25】
前記半晶質ポリマー多層フィルムは、接着剤によって製造される、請求項11に記載の装飾積層体。
【請求項26】
前記半晶質ポリマー多層フィルムは、共押出によって製造される、請求項11に記載の装飾積層体。
【請求項27】
前記半晶質ポリマー多層フィルムは、ポリマー基体フィルムへの押出によって製造される、請求項11に記載の装飾積層体。
【請求項28】
熱可塑性層を更に含む、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項29】
前記熱可塑性層はABSからなる、請求項28に記載の熱可塑性層。
【請求項30】
前記熱可塑性層の厚さが、5mil未満である、請求項28に記載の熱可塑性層。
【請求項31】
前記熱可塑性層の厚さが、20mil未満である、請求項28に記載の熱可塑性層。
【請求項32】
前記熱可塑性層は透明である、請求項28に記載の熱可塑性層。
【請求項33】
前記熱可塑性層は着色されている、請求項28に記載の熱可塑性層。
【請求項34】
前記熱可塑性層は、熱ラミネートによって前記装飾光沢模様に貼付されている、請求項28に記載の装飾積層体。
【請求項35】
前記熱可塑性層は、接着剤によって前記装飾光沢模様に貼付されている、請求項28に記載の装飾積層体。
【請求項36】
前記半晶質フィルムの最上部表面にキャリアフィルムを更に含む、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項37】
前記キャリアフィルムはポリエステルフィルムである、請求項36に記載のキャリアフィルム。
【請求項38】
前記キャリアフィルムはポリアミドフィルムである、請求項36に記載のキャリアフィルム。
【請求項39】
前記キャリアフィルムは熱成形可能である、請求項36に記載のキャリアフィルム。
【請求項40】
前記キャリアフィルムは平滑である、請求項36に記載のキャリアフィルム。
【請求項41】
前記キャリアフィルムの表面粗さが15nm未満である、請求項40に記載のキャリアフィルム。
【請求項42】
前記キャリアフィルムの表面粗さが30nm未満である、請求項40に記載のキャリアフィルム。
【請求項43】
前記キャリアフィルムの表面粗さが100nm未満である、請求項40に記載のキャリアフィルム。
【請求項44】
前記キャリアフィルムはテクスチャーを備える、請求項35に記載のキャリアフィルム。
【請求項45】
前記処理が表面全体に行われる、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項46】
前記処理は離散した領域に対して行われる、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項47】
前記処理の深さが最上面から底面に至る範囲である、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項48】
前記処理された領域がフィルム面の上方である、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項49】
前記処理された領域がフィルム面の下方である、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項50】
前記処理は、熱処理で構成される、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項51】
前記処理は溶剤処理で構成される、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項52】
前記処理はプラズマ処理で構成される、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項53】
前記処理はレーザー処理で構成される、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項54】
前記処理は装飾光沢の印刷前に行われる、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項55】
前記処理は装飾光沢の印刷中に行われる、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項56】
前記処理は装飾光沢の印刷後、かつインモールドプロセス前に行われる、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項57】
前記処理はインモールドプロセス中に行われる、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項58】
前記処理はインモールドプロセス後に行われる、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項59】
前記フィルムは、処理温度で50%まで伸張できる、請求項1に記載のフィルム。
【請求項60】
前記フィルムは、処理温度で100%まで伸張できる、請求項1に記載のフィルム。
【請求項61】
前記フィルムは、処理温度で200%まで伸張できる、請求項1に記載のフィルム。
【請求項62】
前記フィルムは、処理温度で300%まで伸張できる、請求項1に記載のフィルム。
【請求項63】
前記装飾光沢模様は、従来の印刷方法によって印刷される、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項64】
前記装飾光沢模様は、デジタル印刷の方法によって印刷される、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項65】
前記装飾光沢模様は、レーザーエッチングによって印刷される、請求項59に記載の装飾積層体。
【請求項66】
前記装飾光沢模様は、染料昇華によって印刷される、請求項59に記載の装飾積層体。
【請求項67】
半晶質ポリマーフィルムを調製する工程と、
前記半晶質ポリマーフィルムの底面上に装飾光沢模様を印刷する工程と、
前記半晶質ポリマーフィルムの結晶性構造を最適化する工程と、
を含む装飾積層体を製造する方法。
【請求項1】
最上部フィルムと、装飾光沢模様とを備えるインモールド装飾積層体であって、前記最上部フィルムは、脂環式ポリアミド、芳香族ポリアミド、およびポリエステルからなる群から選ばれる半晶質ポリマーである、インモールド装飾積層体。
【請求項2】
前記半晶質ポリマーフィルムは、プロセス後の処理を受ける前に部分的に結晶化されている、請求項1に記載のインモールド装飾積層体。
【請求項3】
前記半晶質ポリマーフィルムは、プロセス後の処理を受ける前は全体的に非晶質である、請求項1に記載のインモールド装飾積層体。
【請求項4】
前記半晶質ポリマーフィルムの結晶化度または結晶含有量が、プロセス後の処理の後に著しく増大する、請求項1に記載のインモールド装飾積層体。
【請求項5】
前記半晶質ポリマーフィルムは、脂環式ジアミンとドデカン二酸モノマーとの反応によって製造される、請求項1に記載のインモールド装飾積層体。
【請求項6】
前記半晶質ポリマーフィルムは、非結晶PETである、請求項1に記載のインモールド装飾積層体。
【請求項7】
前記半晶質ポリマーフィルムは、透明なフィルムである、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項8】
前記半晶質ポリマーフィルムは、着色されたフィルムである、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項9】
前記半晶質ポリマーフィルムは、平滑なフィルムである、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項10】
前記半晶質ポリマーフィルムは、テクスチャーを有するフィルムである、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項11】
前記半晶質フィルムは、多層積層体からなる、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項12】
前記半晶質フィルムの厚さが、1mil未満である、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項13】
前記半晶質フィルムの厚さが、5mil未満である、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項14】
前記半晶質フィルムの厚さが、10mil未満である、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項15】
前記半晶質フィルムの厚さが、20mil未満である、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項16】
前記半晶質フィルムの厚さが、5mm以下である、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項17】
前記半晶質フィルムは、押出によって製造される、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項18】
前記半晶質ポリマーフィルムは、ポリマーキャリア上への溶剤塗布によって製造される、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項19】
前記半晶質ポリマーフィルムは、溶剤キャストによって製造される、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項20】
前記テクスチャーは、印刷によって作製される、請求項10に記載の装飾積層体。
【請求項21】
前記テクスチャーは、エンボスによって作製される、請求項10に記載の装飾積層体。
【請求項22】
前記テクスチャーは、エッチングによって作製される、請求項10に記載の装飾積層体。
【請求項23】
前記テクスチャーは、複製によって作製される、請求項10に記載の装飾積層体。
【請求項24】
前記テクスチャーは、機械的ブラシによって作製される、請求項10に記載の装飾積層体。
【請求項25】
前記半晶質ポリマー多層フィルムは、接着剤によって製造される、請求項11に記載の装飾積層体。
【請求項26】
前記半晶質ポリマー多層フィルムは、共押出によって製造される、請求項11に記載の装飾積層体。
【請求項27】
前記半晶質ポリマー多層フィルムは、ポリマー基体フィルムへの押出によって製造される、請求項11に記載の装飾積層体。
【請求項28】
熱可塑性層を更に含む、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項29】
前記熱可塑性層はABSからなる、請求項28に記載の熱可塑性層。
【請求項30】
前記熱可塑性層の厚さが、5mil未満である、請求項28に記載の熱可塑性層。
【請求項31】
前記熱可塑性層の厚さが、20mil未満である、請求項28に記載の熱可塑性層。
【請求項32】
前記熱可塑性層は透明である、請求項28に記載の熱可塑性層。
【請求項33】
前記熱可塑性層は着色されている、請求項28に記載の熱可塑性層。
【請求項34】
前記熱可塑性層は、熱ラミネートによって前記装飾光沢模様に貼付されている、請求項28に記載の装飾積層体。
【請求項35】
前記熱可塑性層は、接着剤によって前記装飾光沢模様に貼付されている、請求項28に記載の装飾積層体。
【請求項36】
前記半晶質フィルムの最上部表面にキャリアフィルムを更に含む、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項37】
前記キャリアフィルムはポリエステルフィルムである、請求項36に記載のキャリアフィルム。
【請求項38】
前記キャリアフィルムはポリアミドフィルムである、請求項36に記載のキャリアフィルム。
【請求項39】
前記キャリアフィルムは熱成形可能である、請求項36に記載のキャリアフィルム。
【請求項40】
前記キャリアフィルムは平滑である、請求項36に記載のキャリアフィルム。
【請求項41】
前記キャリアフィルムの表面粗さが15nm未満である、請求項40に記載のキャリアフィルム。
【請求項42】
前記キャリアフィルムの表面粗さが30nm未満である、請求項40に記載のキャリアフィルム。
【請求項43】
前記キャリアフィルムの表面粗さが100nm未満である、請求項40に記載のキャリアフィルム。
【請求項44】
前記キャリアフィルムはテクスチャーを備える、請求項35に記載のキャリアフィルム。
【請求項45】
前記処理が表面全体に行われる、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項46】
前記処理は離散した領域に対して行われる、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項47】
前記処理の深さが最上面から底面に至る範囲である、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項48】
前記処理された領域がフィルム面の上方である、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項49】
前記処理された領域がフィルム面の下方である、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項50】
前記処理は、熱処理で構成される、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項51】
前記処理は溶剤処理で構成される、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項52】
前記処理はプラズマ処理で構成される、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項53】
前記処理はレーザー処理で構成される、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項54】
前記処理は装飾光沢の印刷前に行われる、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項55】
前記処理は装飾光沢の印刷中に行われる、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項56】
前記処理は装飾光沢の印刷後、かつインモールドプロセス前に行われる、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項57】
前記処理はインモールドプロセス中に行われる、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項58】
前記処理はインモールドプロセス後に行われる、請求項4に記載の装飾積層体。
【請求項59】
前記フィルムは、処理温度で50%まで伸張できる、請求項1に記載のフィルム。
【請求項60】
前記フィルムは、処理温度で100%まで伸張できる、請求項1に記載のフィルム。
【請求項61】
前記フィルムは、処理温度で200%まで伸張できる、請求項1に記載のフィルム。
【請求項62】
前記フィルムは、処理温度で300%まで伸張できる、請求項1に記載のフィルム。
【請求項63】
前記装飾光沢模様は、従来の印刷方法によって印刷される、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項64】
前記装飾光沢模様は、デジタル印刷の方法によって印刷される、請求項1に記載の装飾積層体。
【請求項65】
前記装飾光沢模様は、レーザーエッチングによって印刷される、請求項59に記載の装飾積層体。
【請求項66】
前記装飾光沢模様は、染料昇華によって印刷される、請求項59に記載の装飾積層体。
【請求項67】
半晶質ポリマーフィルムを調製する工程と、
前記半晶質ポリマーフィルムの底面上に装飾光沢模様を印刷する工程と、
前記半晶質ポリマーフィルムの結晶性構造を最適化する工程と、
を含む装飾積層体を製造する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2012−515664(P2012−515664A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546434(P2011−546434)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/021433
【国際公開番号】WO2010/083534
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(504383645)エイブリィ デニソン コーポレーション (4)
【氏名又は名称原語表記】AVERY DENNISON CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/021433
【国際公開番号】WO2010/083534
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(504383645)エイブリィ デニソン コーポレーション (4)
【氏名又は名称原語表記】AVERY DENNISON CORPORATION
【Fターム(参考)】
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