説明

半田印刷装置および半田印刷方法

【課題】 配線基板の微細な接続パッドに確実に半田を塗付することが可能であり、且つ、既存の装置に改良を施して低コストに実現可能な半田印刷装置および半田印刷方法を提供する。
【解決手段】 電子部品の端子を半田接続するためのパッド部が形成された配線基板20の上に、半田の印刷パターンが貫通孔12,12の形態で形成された平板状のマスク10を載せ、このマスク10の上からペースト状の半田Hを摺り込み、その後、マスク10を配線基板20から剥離させることで前記配線基板20のパッド部に半田が塗付された状態にする半田印刷装置および半田印刷方法である。そして、マスク10の上からペースト状の半田Hを摺り込むスクィージ30にエア流出手段41を設け、半田Hを摺り込む際に半田Hを摺り込んでいく向きで且つマスク10の面に対して斜め方向からマスク10の面に圧縮空気を流出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配線基板上にペースト状の半田を印刷する半田印刷装置および半田印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装型の電子部品を配線基板上に実装する製造ラインには、先ず、配線基板の接続パッドの上にペースト状のクリーム半田を所定量塗付する工程が設けられる。クリーム半田を塗付した後、電子部品を配線基板上の所定箇所に載置し、その後、加熱および冷却を行うことでクリーム半田が固まって電子部品を配線基板上に実装することが出来る。
【0003】
従来、配線基板上にクリーム半田を塗付する工程においては、一般に特許文献1に開示されるような半田印刷装置が用いられていた。かかる半田印刷装置においては、図6(a)に示すように、先ず、半田の塗付パターン(貫通孔12,12…)が形成されたマスク10を配線基板20上に載せ、その上からクリーム半田Hをスクィージ(SQUEEGEE)と呼ばれる摺込み体80により摺り込んで、マスク10のパターンに半田Hを充填する。その後、マスク10を配線基板20上から剥離させることで、配線基板20の接続パッド上にクリーム半田Hが塗布された状態になる。
【0004】
また、配線基板上に半田を塗付するのと類似の技術として、デバイスの接続端子に半田バンプを形成する技術(特許文献2〜5)もある。
【特許文献1】特開平08−150697号公報
【特許文献2】特開平10−107413号公報
【特許文献3】国際公開第00/10369号パンフレット
【特許文献4】特開2002−111192号公報
【特許文献5】特開2003−332723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子部品の小型化や端子部分の縮小化が進み、それにより配線基板の接続パッドの面積も小さくなってきている。そのため、半田印刷装置で使われるマスク10のパターンも微細になり、半田Hを配線基板20上まで通すマスク10の貫通孔12,12…の径が小さくなってきている。
【0006】
このようにマスク10の貫通孔12,12…の径が小さくなると、クリーム半田Hをスクィージ80で摺り込んだ際に、図6(b)に示すように、貫通孔12,12…に空気溜まりF,Fが生じて配線基板20の接続パッドに塗付される半田Hの量が少なくなったり、或いは、接続パッドに全く半田Hが塗付されないと云った問題が発生しやすくなる。そして、このような半田Hの塗付不良を見逃すと、実装する電子部品の接続不良を招いてしまう。
【0007】
本発明者らは、このような半田の塗付不良をなくすために、半田を摺り込む際に室内或いは作業ボックスを減圧することでマスクの貫通孔に生じる空気溜まりを無くすことを検討した。しかしながら、このような手段を現存の生産ラインに適用するには、多大なコストが生じてしまい現実的でないと考えられた。
【0008】
この発明の目的は、配線基板の微細な接続パッドに確実に半田を塗付することが可能であり、且つ、既存の装置に改良を施して低コストに実現可能な半田印刷装置および半田印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、電子部品の端子を半田接続するためのパッド部が形成された配線基板の上に、半田の印刷パターンが貫通孔の形態で形成された平板状のマスクを載せ、このマスクの上からペースト状の半田を摺り込み、その後、マスクを配線基板から剥離させることで前記配線基板のパッド部に半田が塗付された状態にする半田印刷装置において、前記マスクの上でペースト状の半田を摺り込む摺込み体に、半田を摺り込む部分の上方に、半田を摺り込んでいく向きで且つ前記マスクの面に対して斜め方向から前記マスクの面に圧縮空気を流出するエア流出手段を設ける。
【0010】
また、エア流出手段として複数の筒状ノズルを前記摺込み体の幅方向に並んで設ける。
【0011】
このような手段によれば、上記の摺込み体により半田を摺り込む際に、前記エア流出手段により半田を摺り込む向きで且つ水平より斜め下方に圧縮空気を流出させることで、摺込み体とエアの流出部分との間の範囲が局所的に減圧された状態になる。それにより半田を摺り込む際にマスクの貫通孔に空気溜まりが生じ難くなり、それによりマスクの貫通孔の径が小さくても確実に半田を配線基板に塗付することが出来る。
【0012】
また、圧縮空気により、半田を摺込む前にマスク上の塵埃を除去することができ、塵埃による半田の塗付不良も回避することが出来る。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に従うと、マスクパターンが微細になっても、半田を確実に配線基板に塗付することが出来るという効果がある。また、半田を摺り込む部屋全体を減圧する場合と比較して、スクィージ(摺込み体)にエアノズルを付加するだけで良いので、既存の生産ラインに適用するのに低コストで実現できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図5の図面に基づいて説明する。
【0015】
図1には、本発明の実施の形態の半田印刷装置による半田の摺込み時の状態の説明図を、図2には、この半田印刷装置のスクィージの正面図を示す。
【0016】
この実施の形態の半田印刷装置は、配線基板20の接続パッドに合わせて半田の印刷パターンが貫通孔12,12…の形態で形成されているマスク10と、このマスク10の上面を摺るように移動してクリーム半田(半田ペースト)Hをマスク10のパターン内に摺り込む摺込み体としてのスクィージ30とを備えている。また、図示は省略するが、この半田印刷装置には、スクィージ30をメタルマスク10の上面に沿って横方向に移動させる駆動機構や、マスク10を配線基板20に載置又は離間させるための機構が備わっている。
【0017】
マスク10は、例えば厚み0.3mm〜0.5mmで、金属製のものである。配線基板20は、図3に示されるように基板21上に接続パッド22,22…が所定の厚みで形成される一方、接続パッド22,22…が形成されない範囲にはレジスト23が同様の厚みで形成されており、マスク10は配線基板20にほぼ面接触されるようになっている。
【0018】
スクィージ30は、図2に示すように、所定の幅を有し、図1に示すように、側方からみてメタルマスク10に当接される先端がやや先細りの形態に形成されたものである。この、スクィージ30の先端部よりやや上方には、複数のエアノズル41,41…が幅方向に並列した状態に設けられ、それぞれがビスNにより固定されている。各エアノズル41は、筒状のノズルで、圧縮空気を出力するコンプレッサ等にエアホース43を介してつながれており、その先端から圧縮空気が流出されるようになっている。
【0019】
各エアノズル41は、スクィージ30が半田を摺込むときに移動する向きで、且つ、水平よりやや下方を向いている。その高さは、メタルマスク10上に摺り込む半田Hがスクィージ30の下端部分で上方にせり上がってきたときに、この半田Hのせり上がり部分がエアの流出径路と余裕を持って重ならない範囲で、且つ、メタルマスク10に近い位置に設定すると良い。
【0020】
次に、上記構成の半田印刷装置を用いた半田印刷方法の説明を行う。
【0021】
図3と図4は、半田印刷処理において半田の摺込み前と後の状態をそれぞれ示す断面図である。
【0022】
この実施の形態の半田印刷装置を用いて半田印刷を行うには、先ず、図3(a)に示すように配線基板20を装置のステージにセットした後、メタルマスク10を配線基板20上に降ろして両者の面を接し合わせる。すると、図3(b)に示すように配線基板20の接続パッド22,22…の上に、メタルマスク10の印刷パターン(貫通孔)12,12…が配置されるように両者が合わせられる。
【0023】
次いで、図1に示すように、メタルマスク10の一端側にクリーム半田Hを盛って駆動機構を作動させてスクィージ30をX方向へ移動させていく。その際、エアノズル41…からは圧縮空気を連続して流出させる。それにより、圧縮空気の流出路とスクィージ30との間が減圧状態となり、クリーム半田Hを摺り込む際に、メタルマスク10の貫通孔12,12…に半田Hがスムースに流入する。また、半田Hが摺り込まれる前に圧縮空気によりメタルマスク10の表面や貫通孔に付着した塵埃を吹き飛ばすので、塵埃による半田Hの塗付不良も回避することが出来る。
【0024】
スクィージ30を一通り移動させると図4(a)に示すように、メタルマスク10のパターン内にクリーム半田が充填された状態になる。そして、この状態でメタルマスク10を配線基板20から剥離させることで、図4(b)に示すように、配線基盤20の接続パッドに所定量のクリーム半田が塗付された状態となる。
【0025】
その後、この配線基板上に例えば表面実装型の電気素子を配して、過熱冷却することで、クリーム半田が固まって配線基板への電気素子の実装が完了する。
【0026】
以上のように、この実施の形態の半田印刷装置および半田印刷方法によれば、メタルマスク10のパターンが微小になってその貫通孔12,12…の径が小さくなっても、空気を大きくかませることなく半田Hをメタルマスク10の貫通孔12,12…の中に摺り込んで配線基板に確実にクリーム半田を塗付することが出来る。
【0027】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、図5のスクィージの正面図に示すように、スクィージ30に設けるエア流出手段は、図2に示したような複数のノズル41を一列に並べたものでなく、幅方向に沿って設けられたスリット45からエアを流出するような構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態の半田印刷装置によるクリーム半田の摺込み時の状態を示す図である。
【図2】図1のスクィージを示す正面図である。
【図3】実施の形態の半田印刷装置を用いた半田印刷処理においてクリーム半田の摺込み前を示す断面図である。
【図4】実施の形態の半田印刷装置を用いた半田印刷処理においてクリーム半田の摺込み後を示す断面図である。
【図5】本発明に係るスクィージのその他の実施の形態を示す正面図である。
【図6】従来の半田印刷装置によるクリーム半田の摺込み過程を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
10 メタルマスク
12 貫通孔
20 配線基板
22 接続パッド
30 スクィージ
41 エアノズル
H クリーム半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の端子を半田接続するためのパッド部が形成された配線基板の上に、半田の印刷パターンが貫通孔の形態で形成された平板状のマスクを載せ、このマスクの上からペースト状の半田を摺り込み、その後、マスクを配線基板から剥離させることで前記配線基板のパッド部に半田が塗付された状態にする半田印刷装置において、
前記マスクの上でペースト状の半田を摺り込む摺込み体には、半田を摺り込む部分の上方において幅方向に並んだ状態に設けられ、半田を摺り込んでいく向きで且つ前記マスクの面に対して斜め方向から前記マスクの面に圧縮空気を流出する複数の筒状ノズルが設けられていることを特徴とする半田印刷装置。
【請求項2】
電子部品の端子を半田接続するためのパッド部が形成された配線基板の上に、半田の印刷パターンが貫通孔の形態で形成された平板状のマスクを載せ、このマスクの上からペースト状の半田を摺り込み、その後、マスクを配線基板から剥離させることで前記配線基板のパッド部に半田が塗付された状態にする半田印刷装置において、
前記マスクの上でペースト状の半田を摺り込む摺込み体には、半田を摺り込む部分の上方に、半田を摺り込んでいく向きで且つ前記マスクの面に対して斜め方向から前記マスクの面に圧縮空気を流出するエア流出手段が設けられていることを特徴とする半田印刷装置。
【請求項3】
前記エア流出手段は、前記摺込み体の幅方向に並んだ状態に設けられた複数の筒状ノズルであることを特徴とする請求項2記載の半田印刷装置。
【請求項4】
半田の印刷パターンが貫通孔の形態で形成された平板状のマスクと、ペースト状の半田を摺り込むとともに半田を摺り込む部分の上方に圧縮空気を流出するエア流出手段が設けられた摺込み体とを有する半田印刷装置を用いて、配線基板の上に半田を印刷する半田印刷方法であって、
配線基板の上に前記マスクを載せた後、前記エア流出手段により半田を摺り込んでいく向きで且つ前記マスクの面に対して斜め方向から前記マスクの面に圧縮空気を流出させながら前記摺込み体によりペースト状の半田を前記マスク上に摺り込み、その後、前記マスクを前記配線基板から剥離させることで前記配線基板上に所定のパターンで半田が塗付された状態にすることを特徴とする半田印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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