説明

半透過型液晶表示装置用カラーフィルターおよびその製造方法、並びにそれを用いた半透過型液晶表示装置

【課題】反射用領域に光散乱層を有する半透過型カラーフィルターを用いた液晶表示装置において、画面のぎらつきや液晶配向の乱れによる表示不良の生じないカラーフィルターを簡便な加工方法で得る。
【解決手段】反射光による表示と透過光による表示が可能な半透過型液晶表示装置に用いられ、反射光による表示に用いられる反射用領域と透過光による表示に用いられる透過用領域からなりかつ着色層を有してなる複数の画素が透明基板上に2次元的に配されてなる半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板において、該反射用領域の着色層上に光散乱層を有し、該光散乱層上に平坦化層が形成されていることを特徴とする半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型液晶表示と反射型液晶表示の両方の方式を兼ね備えた半透過型液晶表示装置用カラーフィルターおよびその製造方法、並びにそれを用いた半透過型液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶表示装置は軽量、薄型、低消費電力等の特性を生かし、ノートPC、携帯情報端末、デスクトップモニタ、デジタルカメラなど様々な用途で使用されている。バックライトを使用した液晶表示装置においては、低消費電力化を進めるためにバックライト光の利用効率を高めることが求められ、カラーフィルターの高透過率化が要求されている。一方、カラーフィルターの透過率は年々向上しているが、透過率向上による消費電力の大幅な低下は望めなくなってきている。最近では電力消費量の大きなバックライト光源を必要としない反射型液晶表示装置の開発が進められており、透過型液晶表示装置にくらべ約1/7と大幅な消費電力の低減が可能であることが発表されている(例えば非特許文献1参照)。反射型液晶表示装置は、透過型液晶表示装置に比べ低消費電力であり、屋外での視認性に優れるという利点はあるものの、十分な環境光強度が確保されない場所では表示が暗くなってしまい、視認性が極端に悪くなるという問題点がある。暗い環境下でも表示が視認されるようにするために、(1)バックライトを設け、反射層の一部に切り欠きを入れ、一部が透過型表示方式、一部を反射型表示方式とした液晶表示装置、半透過半反射型表示方式(いわゆる半透過半反射型液晶表示装置、以降、単に半透過型液晶表示装置という。例えば、非特許文献2参照)、(2)フロントライトを設けた液晶表示装置などが考案されている。
【0003】
反射層の一部に切り欠きを入れ、バックライトを設けた半透過型液晶表示装置では、バックライト光を利用する透過表示と環境光を利用する反射表示が1画素内に共存するため、環境光強度によらず、視認性のよい表示を行うことが出来る(例えば、特許文献1参照)。しかし、一つの表示装置の中に2種類の表示方式が併存するため、反射表示に必要である機能を表示装置に付与すると、逆に透過表示においては弊害となってしまうこともある。その一つに、透過表示では装置に組み込まれたバックライト光が光源であるのに対し、反射表示では使用する環境により太陽光、室内の蛍光灯など光源が主種様々であることに起因する問題がある。反射表示で使用する光源(太陽光や室内の蛍光灯など)は、通常、点光源や限定された面からの光源であるため、非散乱光である。そのため反射表示では、何らかの手法で非散乱光を散乱光にする必要がある。現在用いられている手法の一つに、前面基板と偏光板フィルムの接着層に粒子を分散させ散乱機能を付与した拡散糊といわれるものがある。この拡散糊は表示装置の全面(透過用領域と反射用領域)に形成されることになる。これは、透過表示においては、拡散糊中に入射した光の偏光面が回転し、偏光が崩される(消偏性)ことによるコントラスト低下の問題を引き起こす。
【0004】
また、以前は、入射した環境光を反射させるための反射膜には、アルミなどの金属を鏡面状にしたものが用いられていたが、現在では、表面を凹凸状に作成した樹脂膜上に金属薄膜を真空で形成した反射膜が用いられるようになってきた。このような凹凸状の反射膜では、光の干渉による虹が発生してしまうため、液晶表示装置の画面がぎらついてしまうという問題もあった。
【0005】
これらの問題を解決するために、反射用領域にのみ透明粒子と透明樹脂からなる光散乱層を形成することが考えられた(例えば、特許文献4参照)。これにより、透過用領域には光散乱層がなくなるため、透過表示のコントラスト低下の問題は解消された。しかしながら、液晶表示装置の画面のぎらつきの解消方法については、詳細な開示がされていなかった。また、光散乱層中には、粒子が分散されているため、膜表面が凸凹し、液晶配向を乱すという問題もあった。
【特許文献1】特開平11−109417号公報(図1)
【特許文献2】特開2005−255325号公報
【特許文献3】特開2002−341128号公報
【特許文献4】特開2005−99268号広報
【非特許文献1】「日経マイクロデバイス別冊フラットパネル・ディスプレイ」、1998年、p.126。
【非特許文献2】「ファインプロセステクノロジージャパン’99、専門技術セミナーテキストA5」、1998年7月2日、p.6。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の欠点に鑑み創案されたもので、反射用領域にのみ光散乱層を有する半透過型カラーフィルターを用いた液晶表示装置において、画面のぎらつきや液晶配向の乱れによる表示不良を生じさせないカラーフィルターを簡便な加工方法で提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、以下のカラーフィルターによって、画面のぎらつきや液晶配向の乱れによる表示不良の生じない液晶表示装置を得ることが可能であることを見いだした。
【0008】
本発明のカラーフィルターおよびその製造方法、およびそれを用いた半透過型液晶表示装置は、以下の構成を有するものである。
【0009】
すなわち、
(1)反射光による表示と透過光による表示が可能な半透過型液晶表示装置に用いられ、反射光による表示に用いられる反射用領域と透過光による表示に用いられる透過用領域からなりかつ着色層を有してなる複数の画素が透明基板上に2次元的に配されてなる半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板において、該反射用領域の着色層上に光散乱層を有し、該光散乱層上に平坦化層が形成されていることを特徴とする半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
(2)前記光散乱層が、マトリックス材料と該マトリックス材料とは屈折率の異なる粒子が分散されてなることを特徴とする(1)に記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
(3)前記平坦化層が光散乱層上にのみ形成されていることを特徴とする(1)または(2)に記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
(4)前記光散乱層中に分散されている粒子の平均一次粒子径が1.5μm以上3μm以下であることを特徴とする(2)〜(3)のいずれかに記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
(5)前記光散乱層のマトリックス材料が非感光性であることを特徴とする(2)〜(4)のいずれかに記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
(6)前記光散乱層のマトリックス材料が熱硬化性アクリル樹脂で形成され、前記平坦化層が感光性樹脂を光硬化させて形成されたものであることを特徴とする(2)〜(5)のいずれかに記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
(7)前記光散乱層のマトリックス材料が非感光性ポリイミド樹脂で形成され、前記平坦化層が感光性樹脂を光硬化させて形成されたものであることを特徴とする(2)〜(5)のいずれかに記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
(8)前記光散乱層中に分散されている粒子の屈折率(n1)、光散乱層のマトリックス材料の屈折率(n2)と平坦化層の屈折率(n3)が以下の関係であることを特徴とする(2)〜(7)のいずれかに記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
【0010】
【数1】

【0011】
【数2】

【0012】
(9)前記光散乱層と平坦化層の積層構造の膜厚が1.5μm以上3.0μm以下であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
(10)前記光散乱層のマトリックス材料部分の膜厚が1.0μm以下であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
(11)前記平坦化層が感光性アクリル樹脂と該感光性アクリル樹脂より屈折率が高く平均1次粒子径が0.1μm以下である無機粉体が分散されてなることを特徴とす(1)〜(10)のいずれかに記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
(12)反射光による表示と透過光による表示が可能な半透過型液晶表示装置に用いられ、反射光による表示に用いられる反射用領域と透過光による表示に用いられる透過用領域からなりかつ着色層を有してなる複数の画素が透明基板上に2次元的に配されてなる半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板の製造方法であって、下記(A)、(B)、(C)および(D)の工程を順次行うことを特徴とする半透過型液晶表示装置用カラーフィルターの製造方法。
(A)透明基板上に着色層からなる画素を形成する工程、
(B)非感光性光散乱層形成用組成物を塗布し乾燥する工程、
(C)該非感光性光散乱層上に感光性の平坦化層形成用組成物を塗布し乾燥する工程、
(D)着色層、光散乱層および平坦化層が積層された基板を、露光、現像して、反射用領域の画素上にのみ光散乱層と平坦化層を形成する工程、
を含むことを特徴とする半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板の製造方法。
(13)(1)〜(11)に記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板または請求項12に記載の製造方法によって得られた半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板と反射用領域にのみ表面が凹凸形状である反射層を有する駆動素子側基板の間に液晶を狭持してなる半透過型液晶表示装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述のごとく構成したので、画面のぎらつきや液晶配向の乱れによる表示不良の生じない半透過型液晶表示装置用カラーフィルターを簡便な加工で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
本発明のカラーフィルターは、1画素内に反射用領域と透過用領域を持つ半透過型液晶表示装置用カラーフィルターであり、反射用領域にのみ光散乱層が形成され、その光散乱層上には平坦化層が積層された構造であることが重要である。ここで、半透過型液晶表示装置とは、対向基板あるいはカラーフィルターの反射領域には外光を反射させるための反射膜を備え、透過領域にはそのような反射膜がないことを特徴とする液晶表示装置である。カラーフィルターの形成は、ガラス、高分子フィルム等の透明基板側に限定されず、駆動素子側基板にも行うことができる。カラーフィルターのパターン形状については、ストライプ状、アイランド状などがあげられるが特に限定されるものではない。また、必要に応じてカラーフィルター上に柱状の固定式スペーサーが配置されていてもよい。
【0016】
光散乱層が形成される位置は、着色層上が好ましく用いられる。着色層上とは、着色層と光散乱層が接していなければならないということではなく、着色層と光散乱層の間に他の層が形成されていてもよい。ここでいう着色層とは、着色成分を含む樹脂層のことであり、少なくとも赤、緑、青の3色の色画素から構成される。着色成分としては、有機顔料、無機顔料、染料問わず着色剤全般を使用することができる。樹脂成分としては、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の材料が好ましく用いられる。感光性、非感光性のどちらの材料でも使用することが可能である。着色層の形成方法としては、フォトリソグラフィ法、転写法、インクジェット法などを用いることができる。
【0017】
光散乱層は、マトリックス材料中にマトリックス材料と屈折率の異なる粒子が分散されていることが好ましい。マトリックス材料中に光拡散の粒子を含むことで、正反射成分による表示のギラツキを押さえ、良好な表示特性を得ることができ、かつ透過用領域には光散乱層は存在しないので光散乱せずに効率的にバックライトを使用することができる。マトリックス材料としては、所望の屈折率が得られる材料ならば用いることが可能であり、透明樹脂のみを用いてもよいが、透明樹脂にナノオーダーの無機粉体を分散させ、屈折率を調整した材料も用いることができる。ここで「透明」とは、具体的には可視光領域の平均透過率が80%以上であることをいう。透明樹脂としては、感光性、非感光性のどちらも使用することができる。感光性樹脂材料としてはポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の材料が使用でき、アクリル系樹脂が好ましく用いられる。感光性アクリル系樹脂としては、感光性を持たせるため、少なくともアクリル系ポリマー、アクリル系多官能モノマーあるいはオリゴマー、光重合開始剤を含有させた構成を有するのが一般的であるがエポキシモノマーを加えたいわゆるアクリルエポキシ樹脂としてもよい。非感光性樹脂材料としてはポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の材料が使用でき、ポリイミド系樹脂とアクリル系樹脂が好ましく用いられる。透明樹脂にナノオーダーの無機粉体を分散させる場合、無機粉体としては、Al、ZnO、TiO、SiOなどが使用できる。透明樹脂とナノオーダーの無機粉体の好ましい組み合わせとしては、アクリル系樹脂に酸化チタンを分散させた材料があげられる。アクリル系樹脂の屈折率は、1.5程度であるが、酸化チタンを分散させることにより、1.8近くまで大きくすることができる。これにより、アクリル系樹脂を高屈折率マトリックス材料とすることができる。
【0018】
光散乱のための粒子としてはシリカ、アルミナ、チタニアなどの無機酸化物粒子、金属粒子、アクリル、メラミン、スチレン、シリコーン、フッ素含有ポリマーなどの樹脂粒子などの材料を使用することができる。光拡散粒子の平均一次粒子径としては1.5〜3μmの範囲で用いることが好ましい。平均一次粒子径が1.5μmより小さくなると、光干渉による虹が発生し、液晶表示画面がぎらついてしまい、3μmより大きくなると、光散乱層として許容される膜厚の範囲では、いくら平坦化層を塗布しても平坦性を得ることが難しくなる。特に、光散乱のための粒子の粒子径が光散乱層のマトリックス材料部分の膜厚の3.0倍程度までである場合は平坦化層により、特に平坦性が高くなるのでより好ましい。ここで光散乱層のマトリックス材料部分の膜厚とは、光散乱層を構成するマトリックス材料部分のみで形成された部分(粒子の存在しない部分)の膜厚をさす。模式図を図1に示す。光散乱層と平坦化層の積層構造の膜厚としては、液晶層の厚みより小さい、特に、液晶層の厚みの1/4〜3/4の範囲内であることが好ましい。
【0019】
逆に膜厚が、液晶層の厚みの3/4以上の厚膜となると、反射用領域の液晶層が薄くなってしまい、表示不良となってしまう。また、光散乱層と平坦化層の積層構造の膜厚が1.5μm以上3.0μm以下の範囲で液晶の配向不良を生じさせない程度の平坦化度を得るためには、マトリックス材料部分の膜厚を1.0μm以下にすることが特に好ましい。マトリックス材料部分の膜厚が1.0μmを越えると、平坦化層との積層膜厚が1.5μmで表面を平坦にすることが困難になる。表示パネルにしたときに液晶の配向ムラなどによる表示不良が生じない程度の平坦性は表示モードにより異なるが、平坦化層内の膜厚段差は、0.5μm以下であることが好ましい。ここで、本発明でいう「平坦」とは、全く凹凸のない膜のことをいうのではなく、液晶の配向ムラなどによる表示不良が生じない程度の平坦性があれば、平坦であるとしている。従って、膜厚段差が0.5μm以下であれば、本発明では平坦であるといえる。
【0020】
平坦化層には、エポキシ膜、アクリルエポキシ膜、アクリル膜、シロキサンポリマ系の膜、ポリイミド膜、ケイ素含有ポリイミド膜、ポリイミドシロキサン膜、また透明樹脂に無機粉体を分散させた材料などいずれを用いてもよい。光散乱層中の散乱粒子と屈折率を異ならせることが必要とされるので、屈折率の高いポリイミド膜、透明樹脂に無機粉体を分散させた材料を用いることが特に好ましい。無機粉体としては、Al、ZnO、TiO、SiOなどが使用できる。無機粉体は、屈折率が高く、また光吸収端が400nm(可視光領域以下)以下であり、また汎用性が高いものを選択することが好ましい。特にアクリル系樹脂に酸化チタンを分散させた材料は、酸化チタンの屈折率が2.5程度と高いため、その添加量を変化させることによりアクリル系樹脂の屈折率を1.5〜1.8近くまで変化させることができ、特に好ましい。また、酸化チタンは、光吸収端が360nmであるため、可視光領域での透明性が高く、また汎用性も高いため好ましく用いることができる。ここで、屈折率は、プリズムカップリング法などを用いて測定することができる。また、無機粉体の平均1次粒子径は、0.1μm以下であることが好ましい。無機粉体の平均1次粒子径が、0.1μm以下であると、平坦化層の平坦性を損なうことがない。0.1μmを越えると、平坦化層自身に、凹凸が生じてしまうため好ましくない。
【0021】
光散乱層中に分散されている粒子の屈折率をn1、マトリックス材料の屈折率をn2、平坦化層の屈折率をn3とした場合、n1、n2、n3は以下の関係式を満たすことが好ましい。
【0022】
【数1】

【0023】
【数2】

【0024】
光散乱層中に分散されている粒子とマトリックス材料の屈折率の差の絶対値が、0.05より小さいと、マトリックス材料と粒子の界面で光散乱が十分生じず、正反射成分による表示のギラツキを押さえることができない。また、光散乱層と平坦化層の積層構造の膜厚を1.5μmと薄膜化するためには、光散乱層のマトリックス材料部分の膜厚を1.0μm以下とすることが必要となってくる。マトリックス材料部分の膜厚が1.0μm以下の場合、光散乱層中の散乱粒子とマトリックス材料との界面が少なくなるため、光散乱層のみでは散乱特性が不十分となる場合がある。また、光散乱膜表面は、マトリックス材料部分の膜厚に比べ、散乱粒子の平均一次粒子径の方が大きくなるため、散乱粒子による凹凸が多数生じる。そこで、散乱粒子と平坦化層の屈折率の差の絶対値が、0.05以上となるように平坦化層を選択すると、平坦化層と散乱粒子の界面でも光が散乱され、光散乱層のみで散乱特性が不十分な場合、散乱特性を向上させることが可能となる。
【0025】
マトリックス材料として、非感光性のポリイミド樹脂(屈折率1.7程度)を選択した場合は、高架橋のアクリル粒子、メラミン粒子、シリコーン粒子、フッ素含有ポリマー粒子(屈折率1.4〜1.5)などマトリックス材料と屈折率差がでる粒子が好ましく用いられる。マトリックス材料として、感光性または熱硬化性(非感光性)のアクリル系樹脂(屈折率1.5)を選択した場合は、メラミン粒子、シリコーン粒子、フッ素含有ポリマー粒子(屈折率1.4〜1.45)などマトリックス材料と屈折率差がでる粒子が好ましく用いられる。マトリックス材料がアクリル樹脂のみである場合は、屈折率差が0.05未満であるアクリル粒子を用いても、所望の散乱特性を得ることができないため用いることができないが、アクリル樹脂に酸化チタンを分散すれば、マトリックス材料の屈折率が高くなり、屈折率差が0.05以上となるためアクリル粒子と組み合わせることもできる。
【0026】
光散乱層と平坦化層の組み合わせとしては、光散乱層に非感光性または感光性材料、平坦化層に感光性材料とするのが好ましい。最上層の平坦化層が感光性材料であることで、下層光散乱層との一括現像ができ、製造工程の増加を抑えることが可能となる。例えば、着色層上に光散乱粒子を含む非感光性透明樹脂または感光性透明樹脂からなる光散乱層形成用組成物を塗布、乾燥し、未硬化の状態で、上部に未硬化の感光性透明樹脂からなる平坦化層形成用組成物を積層して、露光、現像を行いフォトリソ加工することで反射用領域にのみ光散乱層と平坦化層を同時に加工することができる。特に、光散乱層を非感光透明樹脂とした場合、平坦化層の感光性透明樹脂がフォトレジストの役割も担うため、フォトリソ加工後に感光性透明樹脂を剥離することなく、光散乱層と平坦化層の積層構造を作製することが可能であり、フォトレジスト剥離工程が短縮できるので好ましい。
【0027】
現像時に用いるアルカリ現像液は有機アルカリ現像液と無機アルカリ現像液のどちらも用いることができる。無機アルカリ現像液では炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの水溶液などが好適に用いられる。有機アルカリ現像液ではテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、メタノールアミンなどのアミン系水溶液が好適に用いられる。現像液には現像の均一性を上げるために界面活性剤を添加することが好ましい。アルカリ現像はディップ現像、シャワー現像、パドル現像などの方法が可能である。現像後はアルカリ現像液を除去するために純水洗浄を行う。シャワー現像では最適な画素形状になるようにシャワー圧力を調整することが好ましい。シャワー圧力が弱いと、画素の解像度が低下する。シャワー圧力が強いと画素が基板から剥がれることがある。シャワーの圧力は0.05〜5MPaが好ましい。
【0028】
外光を利用するための反射膜が形成される基板は、カラーフィルター側基板、カラーフィルターに対向する基板のいずれでもよいが、本発明の効果を十分に発揮するためには、カラーフィルターに対向する基板に形成されることが好ましい。本発明のカラーフィルターは、反射膜が凹凸形状を有している場合に特にその効果を発揮する。凹凸形状の反射膜の形成方法は、感光性樹脂をハーフトーンマスクなどを用いて、凹凸形状とした後、蒸着法やスパッタリング法などによってアルミニウムなどを薄膜状に製膜し、これにフォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることによって反射用領域にのみ形成する方法があるが、これに限定されるものではない。
【0029】
本発明のカラーフィルターは、液晶表示装置の駆動方法、表示方式にも限定されず、アクティブマトリクス方式、パッシブマトリクス方式、TNモード、STNモード、ECBモード、OCB、VAモードなど種々の液晶表示装置に適用される。また、液晶表示装置の構成、例えば偏光板の数等にも限定されずに使用することができる。
【0030】
反射用領域に光散乱層を有する本発明のカラーフィルターを用いて作成した半透過型液晶表示装置の一例について述べる。カラーフィルター上に、ITO膜などの透明電極を製膜する。次に、このカラーフィルター基板と、反射用領域にのみ反射膜が形成され、反射膜上の透明絶縁膜、さらにその上にITO膜などの透明電極が形成された対向基板とを、さらにそれらの基板上に設けられた液晶配向のためのラビング処理を施した液晶配向膜、およびセルギャップ保持のためのスペーサーを介して、対向させてシールし貼りあわせる。なお、対向基板上には、反射膜、透明電極以外に、薄膜トランジスタ(TFT)素子や薄膜ダイオード(TFD)素子、および走査線、信号線などを設け、TFT液晶表示装置や、TFD液晶表示装置を作成することができる。次に、シール部に設けられた注入口から液晶を注入した後に、注入口を封止する。つぎに、ICドライバー等を実装することによりモジュールが作製することができる。これにより作製された液晶表示装置の例を図2に示す。
【実施例】
【0031】
<測定法>
屈折率:メトリコン社製、プリズムカプラ測定装置“PC−2000”を用いて測定した。
画素の膜厚:(株)東京精密製、表面粗さ計“サーフコム130A”を用いて測定した。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0032】
A.ポリアミック酸溶液の作製
4,4′−ジアミノジフェニルエーテル 95.1gおよびビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン 6.2gをγ−ブチロラクトン 525g、N−メチル−2−ピロリドン 220gと共に仕込み、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物 144.1gを添加し、70℃で3時間反応させた後、無水フタル酸 3.0gを添加し、さらに70℃で2時間反応させ、25重量%のポリアミック酸溶液(PAA)を得た。
【0033】
B.非感光性光散乱層用ペーストの作製
ポリアミック酸溶液(PAA) 16.0gをγ−ブチロラクトン 24.0gで希釈し、そこに表1に示す粒子を0.6g添加し、ロータリーシェーカーにより30分分散し、非感光性光散乱層用ペースト(RPI−1、2、3、4、5、6)を得た。また、屈折率測定用にポリアミック酸溶液(PAA) 16.0gをγ−ブチロラクトン 24.0gで希釈し、ロータリーシェーカーにより30分分散し、屈折率測定用ペースト(test−1)を得た。
【0034】
【表1】

【0035】
C.感光性平坦化層用ペーストの作製
アクリル共重合体溶液(ダイセル化学工業株式会社製サイクロマーP、ACA−250、43wt%溶液)7.4g、多官能モノマーとしてペンタエリスリトールテトラメタクリレート3.2g、光重合開始剤として“イルガキュア”369 1.6gにシクロペンタノン28.0gを加え、濃度20重量%の感光性平坦化層用ペースト(AC−1)を得た。
アクリル共重合体溶液(ダイセル化学工業株式会社製サイクロマーP、ACA−250、43wt%溶液)4.1g、多官能モノマーとしてペンタエリスリトールテトラメタクリレート1.8g、平均1次粒子径が10nmである酸化チタン粒子5.5g、光重合開始剤として“イルガキュア”369 1.6gにシクロペンタノン28.0gを加え、濃度20重量%の感光性平坦化層用ペースト(AC−2)を得た。
【0036】
D.感光性光散乱層用ペーストの作製
アクリル共重合体溶液(ダイセル化学工業株式会社製サイクロマーP、ACA−250、43wt%溶液)7.4g、多官能モノマーとしてペンタエリスリトールテトラメタクリレート3.2g、光重合開始剤として“イルガキュア”369 1.6gにシクロペンタノン28.0gを加え、さらに平均一次粒子径2.0μmのシリコーン粒子を2.8g添加して、濃度20重量%の感光性光散乱層用ペースト(RAC−1)を得た。
【0037】
E.熱硬化性(非感光性)光散乱層用ペーストの作製
アクリル共重合体溶液(ダイセル化学工業株式会社製サイクロマーP、ACA−250、43wt%溶液)7.4g、多官能モノマーとしてペンタエリスリトールテトラメタクリレート3.2gにシクロペンタノン28.0gを加え、さらに平均一次粒子径2.0μmのシリコーン粒子を2.8g添加して、濃度20重量%の感光性光散乱層用ペースト(RAC−2)を得た。
アクリル共重合体溶液(ダイセル化学工業株式会社製サイクロマーP、ACA−250、43wt%溶液)3.8g、多官能モノマーとしてペンタエリスリトールテトラメタクリレート1.6g、さらに平均一次粒子径10nmである酸化チタン粒子5.0gにシクロペンタノン28.0gを加え、さらに平均1次粒子径1.5μmのアクリル粒子を0.8g添加して、濃度20重量%の感光性光散乱層用ペースト(RAC−3)を得た。
アクリル共重合体溶液(ダイセル化学工業株式会社製サイクロマーP、ACA−250、43wt%溶液)7.4g、多官能モノマーとしてペンタエリスリトールテトラメタクリレート3.2gにシクロペンタノン28.0gを加え、さらに平均一次粒子径1.5μmのアクリル粒子を2.8g添加して、濃度20重量%の感光性光散乱層用ペースト(RAC−4)を得た。
【0038】
(屈折率の測定)
test−1、AC−1、2をシリコンウェハー上に塗布し、膜厚2μmの塗膜を形成した。全ての塗膜について屈折率を測定した。測定結果を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
また、散乱粒子であるシリコーン粒子、アクリル粒子の屈折率を表3に示す。
【0041】
【表3】

【0042】
実施例1
(カラーフィルターの作成)
樹脂ブラックマトリクスが膜厚2.0μmでパターン加工されたガラス基板上に赤色着色層用の赤レジストを塗布し、露光、現像により所望の位置にパターン加工し、膜厚2.0μmの赤画素を形成した。同様に緑画素、青画素をパターン加工し、赤、青、緑画素からなるカラーフィルターを完成した。
【0043】
前記カラーフィルター上に熱処理後のマトリックス材料部分の膜厚が1.0μmになるように非感光性光散乱層用ペースト(RPI−1)をスピンナーで塗布し、120℃のオーブンで20分乾燥した。該塗膜の上に反射用領域の画素の中央での熱処理後の膜厚が3.0μm(着色層上から膜厚であり、RPI−1との合計)になるように感光性平坦化層用ペースト(AC−1)をスピンナーで塗布し、80℃のオーブンで10分熱処理した。キャノン(株)製紫外線露光機“PLA−501F”を用い、クロム製のフォトマスクを介して100mJ/cm(365nmの紫外線強度)露光した。このとき用いたフォトマスクは、反射用領域のみ開口部があるものであった。露光後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの2.25%の水溶液からなる現像液に浸漬し、RPI−1およびAC−1から得た光散乱層と平坦化層を同時に現像した。現像後に240℃のオーブンで30分熱処理をして反射用領域にのみ光散乱層と平坦化層の積層構造を得た。
得られたカラーフィルターの構成断面図を模式的に図3に示す。
【0044】
実施例2
非感光性光散乱層用ペーストがRPI−2であること以外実施例1と同様にカラーフィルターを作製した。
【0045】
実施例3
樹脂ブラックマトリクスが膜厚2.0μmでパターン加工されたガラス基板上に赤色着色層用の赤レジストを塗布し、露光、現像により所望の位置にパターン加工し、膜厚2.0μmの赤画素を形成した。同様に緑画素、青画素をパターン加工し、赤、青、緑画素からなるカラーフィルターを完成した。
前記カラーフィルター上に熱処理後のマトリックス材料部分の膜厚が0.3μmになるように非感光性光散乱層用ペースト(RPI−2)をスピンナーで塗布し、120℃のオーブンで20分乾燥した。該塗膜の上に反射用領域の画素の中央での熱処理後の膜厚が1.5μm(着色層上から膜厚であり、RPI−2との合計)になるように感光性平坦化層用ペースト(AC−2)をスピンナーで塗布し、80℃のオーブンで10分熱処理した。キャノン(株)製紫外線露光機“PLA−501F”を用い、クロム製のフォトマスクを介して100mJ/cm(365nmの紫外線強度)露光した。このとき用いたフォトマスクは、反射用領域のみ開口部があるものであった。露光後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの2.25%の水溶液からなる現像液に浸漬し、RPI−2およびAC−2から得た光散乱層と平坦化層を同時に現像した。現像後に240℃のオーブンで30分熱処理をして反射用領域にのみ光散乱層と平坦化層の積層構造を得た。
【0046】
実施例4
非感光性光散乱層用ペーストがRPI−3であること以外実施例1と同様にカラーフィルターを作製した。
【0047】
実施例5
非感光性光散乱層用ペーストがRPI−5であること以外実施例1と同様にカラーフィルターを作製した。
【0048】
実施例6
樹脂ブラックマトリクスが膜厚2.0μmでパターン加工されたガラス基板上に赤色着色層用の赤レジストを塗布し、露光、現像により所望の位置にパターン加工し、膜厚2.0μmの赤画素を形成した。同様に緑画素、青画素をパターン加工し、赤、青、緑画素からなるカラーフィルターを完成した。
前記カラーフィルター上に熱処理後のマトリックス材料部分の膜厚が1.5μmになるように非感光性光散乱層用ペースト(RAC−2)をスピンナーで塗布し、80℃のオーブンで10分乾燥した。該塗膜の上に反射用領域の画素の中央での熱処理後の膜厚が3.0μm(着色層上から膜厚であり、RAC−2との合計)になるように感光性平坦化層用ペースト(AC−1)をスピンナーで塗布し、80℃のオーブンで10分熱処理した。キャノン(株)製紫外線露光機“PLA−501F”を用い、クロム製のフォトマスクを介して100mJ/cm(365nmの紫外線強度)露光した。このとき用いたフォトマスクは、反射用領域のみ開口部があるものであった。露光後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの2.25%の水溶液からなる現像液に浸漬し、RAC−2およびAC−1から得た光散乱層と平坦化層を同時に現像した。現像後に240℃のオーブンで30分熱処理をして反射用領域にのみ光散乱層と平坦化層の積層構造を得た。
【0049】
実施例7
非感光性光散乱層用ペーストがRAC−3であること以外実施例1と同様にカラーフィルターを作製した。
【0050】
実施例8
樹脂ブラックマトリクスが膜厚2.0μmでパターン加工されたガラス基板上に赤色着色層用の赤レジストを塗布し、露光、現像により所望の位置にパターン加工し、膜厚2.0μmの赤画素を形成した。同様に緑画素、青画素をパターン加工し、赤、青、緑画素からなるカラーフィルターを完成した。
前記カラーフィルター上に熱処理後のマトリックス材料部分の膜厚が1.5μmになるように感光性光散乱層用ペースト(RAC−1)をスピンナーで塗布し、90℃のオーブンで10分乾燥した。キャノン(株)製紫外線露光機“PLA−501F”を用い、クロム製のフォトマスクを介して100mJ/cm(365nmの紫外線強度)露光した。このとき用いたフォトマスクは、反射用領域のみ開口部があるものであった。露光後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの2.25%の水溶液からなる現像液に浸漬した。現像後に240℃のオーブンで30分熱処理をして反射用領域にのみ光散乱層を形成した。
該基板上に熱処理後の膜厚が1.5μmになるように感光性平坦化層用ペースト(AC−1)をスピンナーで塗布し、80℃のオーブンで10分熱処理した。キャノン(株)製紫外線露光機“PLA−501F”を用い、100mJ/cm(365nmの紫外線強度)露光した。露光後に240℃のオーブンで30分熱処理をしてカラーフィルター全面に平坦化層を形成した。
得られたカラーフィルターの構成断面図を模式的に図4に示す。
【0051】
実施例9
非感光性光散乱層用ペーストがRPI−4であること以外実施例1と同様にカラーフィルターを作製した。
【0052】
実施例10
非感光性光散乱層用ペーストがRPI−6であること以外実施例1と同様にカラーフィルターを作製した。
【0053】
実施例11
感光性平坦化層用ペーストがAC−1であること以外実施例3と同様にカラーフィルターを作製した。
【0054】
実施例12
樹脂ブラックマトリクスが膜厚2.0μmでパターン加工されたガラス基板上に赤色着色層用の赤レジストを塗布し、露光、現像により所望の位置にパターン加工し、膜厚2.0μmの赤画素を形成した。同様に緑画素、青画素をパターン加工し、赤、青、緑画素からなるカラーフィルターを完成した。
前記カラーフィルター上に熱処理後のマトリックス材料部分の膜厚が1.3μmになるように非感光性光散乱層用ペースト(RPI−1)をスピンナーで塗布し、120℃のオーブンで20分乾燥した。該塗膜の上に反射用領域の画素の中央での熱処理後の膜厚が1.5μm(着色層上から膜厚であり、RPI−1との合計)になるように感光性平坦化層用ペースト(AC−1)をスピンナーで塗布し、80℃のオーブンで10分熱処理した。キャノン(株)製紫外線露光機“PLA−501F”を用い、クロム製のフォトマスクを介して100mJ/cm(365nmの紫外線強度)露光した。このとき用いたフォトマスクは、反射用領域のみ開口部があるものであった。露光後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの2.25%の水溶液からなる現像液に浸漬し、RPI−1およびAC−1から得た光散乱層と平坦化層を同時に現像した。現像後に240℃のオーブンで30分熱処理をして反射用領域にのみ光散乱層と平坦化層の積層構造を得た。
【0055】
実施例13
光散乱層と平坦化層の積層構造の膜厚が1.0μmであること以外実施例3と同様にカラーフィルターを作製した。
【0056】
実施例14
光散乱層と平坦化層の積層構造の膜厚が4.0μmであること以外実施例3と同様にカラーフィルターを作製した。
【0057】
実施例15
非感光性光散乱層用ペーストがRAC−4であること以外実施例1と同様にカラーフィルターを作製した。
【0058】
比較例1
樹脂ブラックマトリクスが膜厚2.0μmでパターン加工されたガラス基板上に赤色着色層用の赤レジストを塗布し、露光、現像により所望の位置にパターン加工し、膜厚2.0μmの赤画素を形成した。同様に緑画素、青画素をパターン加工し、赤、青、緑画素からなるカラーフィルターを完成した。
前記カラーフィルター上に熱処理後のマトリックス材料部分の膜厚が1.5μmになるように非感光性光散乱層用ペースト(RPI−1)をスピンナーで塗布し、120℃のオーブンで20分乾燥した。この上にポジ型フォトレジスト(東京応化株式会社製“OFPR−800”)を塗布し、90℃で10分オーブン乾燥した。キャノン株式会社製紫外線露光機“PLA−501F”を用い、クロム製のフォトマスクを介して100mJ/cm(365nmの紫外線強度)露光した。このとき用いたフォトマスクは、反射用領域のみ開口部があるものであった。露光後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの2.0%の水溶液からなる現像液に浸漬し、フォトレジストの現像、ポリアミック酸の塗膜のエッチングを同時に行った。エッチング後不要となったフォトレジスト層をアセトンで剥離し、240℃で30分熱処理し、光散乱層を得た。
実施例1〜15および比較例1で得られた光散乱層と平坦化層の屈折率を表4に示す。
【0059】
【表4】

【0060】
(表面段差の測定)
実施例1〜15および比較例1で得られた光散乱層と平坦化層の積層構造の塗膜表面の段差を測定した結果を表5に示す。
【0061】
【表5】

【0062】
(カラーフィルター画素上の膜の形成)
実施例1〜15および比較例1で得られたカラーフィルター上に、ITO膜を膜厚0.14μmとなるようにスパッタリングした。
【0063】
(液晶表示装置の作製)
別途、無アルカリガラス上にTFT素子を形成した後、ハーフトーンマスクを用いて、感光性樹脂を凹凸形状とし、蒸着法によってアルミニウムを薄膜状に製膜し、これにフォトリソグラフィ法を用いて反射用領域にのみ凹凸状の反射膜をパターニングした。反射膜上に透明絶縁膜、さらにその上にITO膜の透明電極を形成した基板を対向基板として用意し、実施例1〜15および比較例1で作製したカラーフィルター基板と対向基板とに配向膜を印刷しラビングして配向させた。これら2つの基板の一方にマイクロロッドを練り込んだシール剤を印刷し、5μmの厚さのビーズスペーサーを散布した後、2つの基板を貼り合わせた。次に、4V駆動対応のTN液晶(屈折率異方性Δn〜0.1)を注入して液晶注入口を封口剤で塞いだ。液晶を注入した液晶セルを、直交した偏光フィルムで挟み、評価用の液晶セルを作製した。該液晶セルにICドライバー等を実装することにより、液晶表示装置を完成させた。
【0064】
実施例1〜15および比較例1で作製したカラーフィルターを用いた半透過型液晶表示装置について、屋外の環境光下と屋内でのバックライト点灯状態で比較した。
【0065】
比較例1を用いた半透過型液晶表示装置は、光散乱層上に平坦化層を塗布していないため、表面段差が大きく、液晶の配向不良が生じていたため、液晶の配向不良によると思われる輝点があり、表示特性が悪かった。
【0066】
実施例1〜8のカラーフィルターを用いた半透過型液晶表示装置は、透過表示が主流となる屋内で用いた場合は、明暗がくっきりしており良好な表示特性であり、また、反射表示が主流となる屋外で用いた場合は、明るく、さらにぎらつきもなく、良好な表示特性であった。実施例9、11、15のカラーフィルターを用いた半透過型液晶表示装置は、反射表示が主流となる屋外で用いた場合に、実施例1〜8に比べぎらつきを消す効果が低かった。また、実施例10、12、13、14のカラーフィルターを用いた半透過型液晶表示装置は、比較例1ほどではないが、実施例1〜8に比べ、良好な表示特性とはいえなかった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】光散乱層のマトリックス材料部分を示す模式図
【図2】光散乱層が形成されたカラーフィルターを用いた半透過型液晶表示装置の模式断面図
【図3】実施例1のカラーフィルターの模式断面図
【図4】実施例8のカラーフィルターの模式断面図
【符号の説明】
【0068】
1 :透明基板
2 :ブラックマトリックス
3 :光散乱層
4 :平坦化層
5 :反射用領域
6 :透過用領域
7 :画素領域
7B:青画素領域
7G:緑画素領域
7R:赤画素領域
8 :液晶層
9 :反射膜
10:マトリックス材料部分の膜厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射光による表示と透過光による表示が可能な半透過型液晶表示装置に用いられ、反射光による表示に用いられる反射用領域と透過光による表示に用いられる透過用領域からなりかつ着色層を有してなる複数の画素が透明基板上に2次元的に配されてなる半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板において、該反射用領域の着色層上に光散乱層を有し、該光散乱層上に平坦化層が形成されていることを特徴とする半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
【請求項2】
前記光散乱層が、マトリックス材料と該マトリックス材料とは屈折率の異なる粒子が分散されてなることを特徴とする請求項1に記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
【請求項3】
前記平坦化層が光散乱層上にのみ形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
【請求項4】
前記光散乱層中に分散されている粒子の平均一次粒子径が1.5μm以上3μm以下であることを特徴とする請求項2〜3のいずれかに記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
【請求項5】
前記光散乱層のマトリックス材料が非感光性であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
【請求項6】
前記光散乱層のマトリックス材料が熱硬化性アクリル樹脂で形成され、前記平坦化層が感光性樹脂を光硬化させて形成されたものであることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
【請求項7】
前記光散乱層のマトリックス材料が非感光性ポリイミド樹脂で形成され、前記平坦化層が感光性樹脂を光硬化させて形成されたものであることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
【請求項8】
前記光散乱層中に分散されている粒子の屈折率(n1)、光散乱層のマトリックス材料の屈折率(n2)と平坦化層の屈折率(n3)が以下の関係であることを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
【数1】

【数2】

【請求項9】
前記光散乱層と平坦化層の積層構造の膜厚が1.5μm以上3.0μm以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
【請求項10】
前記光散乱層のマトリックス材料部分の膜厚が1.0μm以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
【請求項11】
前記平坦化層が感光性アクリル樹脂と該感光性アクリル樹脂より屈折率が高く平均1次粒子径が0.1μm以下である無機粉体が分散されてなることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板。
【請求項12】
反射光による表示と透過光による表示が可能な半透過型液晶表示装置に用いられ、反射光による表示に用いられる反射用領域と透過光による表示に用いられる透過用領域からなりかつ着色層を有してなる複数の画素が透明基板上に2次元的に配されてなる半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板の製造方法であって、下記(A)、(B)、(C)および(D)の工程を順次行うことを特徴とする半透過型液晶表示装置用カラーフィルターの製造方法。
(A)透明基板上に着色層からなる画素を形成する工程、
(B)非感光性光散乱層形成用組成物を塗布し乾燥する工程、
(C)該非感光性光散乱層上に感光性の平坦化層形成用組成物を塗布し乾燥する工程、
(D)着色層、光散乱層および平坦化層が積層された基板を、露光、現像して、反射用領域の画素上にのみ光散乱層と平坦化層を形成する工程、
を含むことを特徴とする半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜11に記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板または請求項12に記載の製造方法によって得られた半透過型液晶表示装置用カラーフィルター基板と反射用領域にのみ表面が凹凸形状である反射層を有する駆動素子側基板の間に液晶を狭持してなる半透過型液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−287204(P2008−287204A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167235(P2007−167235)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】