説明

単層プリズムシートおよび複合プリズムシート

【課題】自己支持性を有する表面にプリズム形状が賦与された単層架橋フイルムであって、光学的ロスが少なく、透明性、表面硬度、光学等方性に優れ、正面輝度向上効果が大きい単層プリズムシートを提供すること。
【解決手段】ビニルエステル組成物を主たる構成成分とし、表面にプリズム形状が形成されてなる単層プリズムシートであって、ビニルエステル組成物、更には多官能アクリレートを併用したシートの片面に、その断面形状が頂角70〜110°の三角形をなす三角柱状のプリズムをピッチ100μm以下で複数並列に設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にプリズム形状が形成された単層プリズムシートおよびその片面に反射防止層を設けた複合プリズムシートに関し、更に詳しくは透明性に優れ、正面輝度向上効果が大きく、かつ表面硬度にも優れたプリズムシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置は、ノートパソコンやデスクトップのパソコンのモニターや携帯電話、テレビなど種々の分野で幅広く使用されてきており、その需要は急激に伸びている。液晶表示部は、基本的にバックライト部と液晶表示素子部とから構成されており、バックライト部としては導光体の側面に光源を設けたエッジライト方式や表示素子の真下に光源を設けた直下型バックライト方式があり、画面の大きさに合わせて使い分けられている。このエッジライト方式や直下型バックライト方式においては、正面輝度を向上させる目的で特定形状のプリズムを多数形成したプリズムシートが用いられている。(特許文献1)
プリズムシートの構成は、基材フィルムとしてプライマー層を設けたポリエステルフィルムが主に用いられ(特許文献2参照)、そのプライマー層を介して主にアクリル系組成物を塗布し、プリズム形状を賦与しつつ、紫外線や電子線で硬化させることによって形成している。しかしながら基材にPETフィルムを用いた場合には、プリズム層との接着性を向上させるためにプライマー層が必要となり、実質的に3層以上から構成されることになる。このような多層の構成では、それぞれの屈折率差により、その界面での反射が発生したり、基材のポリエステルフィルムが高度に結晶配向しているために高い屈折率に起因する反射光によるロスが発生し、実質的に光線透過率が低下し、輝度向上を阻害していた。またプリズム層形成時の紫外線によるプライマー層の劣化、およびディスプレイとして長期に使用した場合の光源からの紫外線によるプライマー層や基材フィルムの劣化に接着性が低下したり、画像が黄変したりする問題があった。プリズム層形成組成物のみで単独シート化するのが理想的であるが現状のプリズム形成組成物のみでは自己支持性に問題があり、単独シートとして使用に耐えるものでは無い。
【特許文献1】特開平6−67004号公報
【特許文献2】特開2001−166116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来技術における上記の欠点、多層構成により欠点を改良し、具体的には自己支持性を有する表面にプリズム形状が賦与された単層架橋フィルムであって、光学的ロスが少なく、透明性、表面硬度、光学等方性に優れ、正面輝度向上効果が大きいものとする事ができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
かかる目的を達成するため本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、以下の手段により、目的を達成しうることを見いだしたものである。
即ち、本発明は
(1)ビニルエステル組成物を主たる構成成分とし、表面にプリズム形状が形成されてなる単層プリズムシート、
(2)プリズム形状がシートの少なくとも片面に形成され、その断面形状が頂角70〜110°の三角形をなす三角柱状のプリズムをピッチ100μm以下で複数並列に設けてなる(1)記載の単層プリズムシート、
(3)レターデーションが5nm以下である(1)または(2)記載の単層プリズムシート、
(4)フィルム構成組成物中に多官能アクリレートを含有する(1)〜(3)のいずれか単層プリズムシート、
(5)鉛筆硬度がH以上である(1)〜(4)のいずれか記載の単層プリズムシート、
(6)単層プリズムシートのプリズム形状を有する表面と反対面に反射防止層を設けたことを特徴とする(1)〜(5)のいずれか記載の複合プリズムシートに関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の単層プリズムシートおよび複合プリズムシートは、上記の構成にすることにより、正面輝度向上効果が大きく、透明性、光学的等方性、表面硬度に優れ、工程数を低減できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のプリズムシートは、ビニルエステル組成物(a)を主成分とする単層シートである。
【0007】
単層プリズムシートとは、本発明の表面のプリズム形状部分も含めて同一の組成物から形成されていることを意味する。ここで主成分とはシート形成組成物中に60重量%以上、好ましくは70重量%以上含有することをいう。
【0008】
ここで、ビニルエステル組成物(a)とは、エポキシ基の開環反応により生成した2級水酸基と、(メタ)アクリロイル基とを同一分子中に共有する一連のオリゴアクリレートをビニルエステルと定義し、本発明において好適に用いられるビニルエステル組成物(a)は、ビスフェノール型または脂環式のエポキシ化合物と、アクリル酸またはメタクリル酸とをエステル化反応させて得られるものである。ビスフェノール型または脂環式エポキシ化合物としては、以下の様なものが例示できる。
【0009】
ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンとの反応物、水素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物、シクロヘキサンジメタノールとエピクロルヒドリンとの反応物、ノルボルナンジアルコールとエピクロルヒドリンとの反応物、テトラブロモビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物、トリシクロデカンジメタノールとエピクロルヒドリンとの反応物、アリサイクリックジエポキシアジペート、アリサイクリックジエポキシカーボネート、アリサイクリックジエポキシアセタール、アリサイクリックジエポキシカルボキシレート。
【0010】
次に本発明においては、シートの硬度およびプリズム形状の形態維持性を向上させる目的で多官能アクリレート(b)を併用するのが好ましい。多官能アクリレートとは、一分子中に、3(より好ましくは4または5)個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する組成物であって、具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。また、市販されている多官能アクリル系組成物としては三菱レーヨン株式会社;(商品名”ダイヤビーム”シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名”デナコール”シリーズなど)、新中村株式会社;(商品名”NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名”UNIDIC”など)、東亜合成化学工業株式会社;(”アロニックス”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(”ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名”KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名”ライトエステル”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
【0011】
多官能アクリレートの配合量は、上記のビニルエステル組成物100重量部に対し、5〜50重量部、好ましくは10〜30重量部、更に好ましくは15〜25重量部であり、5重量部未満ではプリズム形状が不安定になったり、表面硬度が不足し、50重量部以上ではシートの伸度が低下してもろさが発現し自己支持性に問題が生じる。本発明の単層プリズムシートの表面硬度は耐擦傷性の点から鉛筆硬度は、H以上、好ましくは2H以上であるのが望ましい。
【0012】
また、上記のビニルエステル組成物、多官能アクリレートの混合物以外に以下のような化合物を本発明の効果を阻害しない範囲内で低粘度化などの目的で使用しても良い。
【0013】
アリルエステルモノマ−:オルソフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、コハク酸ジアリル。
アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマー:メチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジメタクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリンジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2,6−ジブロム−4−tert−ブチルフェニルアクリレート、各種のウレタンアクリレート、エポキシアクリレート。
【0014】
本発明のビニルエステル組成物を架橋させる方法としては、加熱または電離線照射のいずれかの方法または両者を併用して用いることができる。また、本発明でいう電離線とは、電子線あるいは紫外線などをさす。加熱硬化する場合は、開始剤として有機過酸化物を用いるのが有効である。有機過酸化物としては、ジアルキルパーオキサイド、アシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシエステルなど公知のものを使用することができ、具体的には以下に示すようなものが例示しうる。ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイル)パーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1,3,3−トリメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、2,5−ジメチル−2,5−ジブチルパーオキシヘキサン。また、電子線以外の電離線、例えば紫外線により架橋する場合は、開始剤として、以下に例示するような公知の光重合開始剤を使用することができる。2,2−ジメトキシ−1,2−ジゲニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ベゾフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モンフォリノプロパノン−1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド。また必要に応じて架橋促進剤を添加することもできる。
【0015】
本発明においては、電離線により架橋させてシート化する方法が好ましい。以下にそのシート化する具体例を示す。上記(a)、(b)を含む液状樹脂組成物を、連続的に駆動する所望のプリズムパターンに対応した凹凸構造が形成されたドラム上、あるいは無端のベルトに流延してドラムもしくはベルト上で電離線を照射して、樹脂組成物を架橋させ、得られたシートをドラムもしくは該ベルトから連続的に剥離し巻き取る工程である。この工程を適用する場合、ドラムもしくはベルト上に均一な膜を形成する必要があり、液状組成物をシート状に供給する方法としては、ダイコート方式、コンマコート方式が好ましい。また賦与した形状を破損やゆがみが無いように剥離する必要があり、そのためにはドラムやベルト表面を易剥離処理しておくのが好ましく、シリコーンやフッ素化合物による表面処理を施すのが好ましい。シートの厚みは形成するプリズム層の厚みに応じて適宜選択する必要があり、少なくともプリズム層形成部分の厚みと同等以上の非プリズム形成層厚みとするのが好ましい。非プリズム形成層厚みが薄すぎる場合にはシートがプリズム形状の溝に沿って破損する場合がある。
本発明で用いられる単層プリズムシートの総厚みは、使用される用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度やハンドリング性などの点から、好ましくは100〜500μm、より好ましくは150〜300μmであるのがプリズム形状賦与後の自己支持性、その後の加工工程でのハンドリング性の点で好ましい。
【0016】
本発明の単層プリズムシートは、その表面にプリズム形状を複数並列に設けてなるものであり、液晶表示素子の上にプリズムを複数並列に設けることにより、光の拡散を抑制し、輝度の高い指向性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
【0017】
本発明のプリズムシートについて図1、2を用いて説明する。本発明におけるプリズム形状とは、図1に示すような、一連の細長い三角柱状で断面が三角形である形状をいう。また、本発明のピッチは、図2の(a)の部分をさし、三角柱状のプリズムの谷部から谷部までの最短距離をいう。
【0018】
プリズムの形状としては、その断面形状が三角形をなし、その頂角を70°〜110°好ましくは75〜95°とするのが好ましい。頂角が70°未満では、指向性が顕著になりすぎ正面以外から見た場合には画面が暗くなる場合があり、逆に110°を超えると光の集光性が低下し全体の輝度向上効果は低下する場合がある。
【0019】
本発明のピッチとしては、好ましくは100μm以下、更に好ましくは70〜90μmであるのがカラーフィルターの画素ごとの輝度ムラやモアレの発生を抑制できるだけではなく輝度の大きなプリズムシートとすることができるので好ましい。特に70〜90μmとした場合には輝度向上効果の優れたものとすることができる。
【0020】
また、本発明のシートの鉛筆硬度は、HEIDON(新東化学株式会社)を用いてJIS−K5400(1990)に従って測定したものであり、三角柱状のプリズムの尾根部に並行な方向を測定方向とし、プリズム面を測定した値が耐擦傷性の観点からH以上、好ましくは2H以上が望ましい。
【0021】
本発明の単層プリズムシートは、レターデーション(Re)が5nm以下、即ち0〜5nm、好ましくは0〜2nmであることが好ましく、これにより光学的に等方な基材を得ることができる。本発明でいうレターデーションとは、シート面内のレターデーションのことであり、面内の主屈折率をn、nとし、シートの厚さをd(nm)とすると、Re=|n−n|×dで求めることができる。シートの厚さは非プリズム形成層の厚さとする。Reは、市販の自動複屈折計(王子計測社製、「KOBRA−21ADH」)を用いて測定することができる。
【0022】
本発明において該液状樹脂組成物を、連続的に駆動する回転するドラム上、あるいは無端のベルトに流延してこれを架橋させ、得られたフィルムをドラムから、もしくは該ベルトから連続的に剥離し巻き取ることにより得られるが、ドラム上あるいは、ベルト上において、フィルムが滑ると分子配向を生じ、レターデーションが大きくなるため、液状樹脂組成物の中央部と端部とをドラム上へ実質的に同時に着地させ、大きなせん断力を加えないようにすることがレターデーションを5nm以下とするために重要である。
【0023】
また厚みのムラが大きい場合など、フィルムの硬化速度に差が生じるようになり、レターデーションが大きくなるため、できるだけ厚みムラを小さくするのが好ましい。また、通常一般の熱可塑性ポリマーでは線状で長い高分子であるため、成形加工するときに、大きなせん断力が働き、分子鎖の配向が不可避となるが本発明の樹脂組成物を用いることにより液体状態から一挙に3次元架橋反応が進むため、原理的にモノマーユニットが全くランダムな方向を保ったまま構造中に固定されることとなり、面内のレターデーションを小さくすることができる。
【0024】
本発明のプリズムシート中には、本発明の効果を阻害しない範囲内で各種の添加剤や樹脂組成物、架橋剤などを含有しても良い。例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機、無機の粒子(例えば例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、金属微粉末など)、顔料、染料、帯電防止剤、核剤、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、ワックス組成物、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化、アルキロール化された尿素系架橋剤、アクリルアミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを挙げることができる。
【0025】
本発明の単層プリズムシートはそのままでも十分な機能を有するが更に好ましい形態としては、非プリズム形成面に反射防止層を設けることによって、さらなる輝度向上を達成することができる。反射防止膜の構成としては種々のものがあるが、本発明のシートの少なくとも片面に低屈折率層の形成、好ましくは高屈折率層、低屈折率層の順に積層されたものが望ましい。高屈折率層を構成する成分の好ましい組成物は、電子線または紫外線などを照射することによって硬化する透明な組成物と高屈折微粒子より構成されるものが好適である。特に(メタ)アクリロイル基が分子内に2個以上の多官能(メタ)アクリレート化合物、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートや、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)−イソシアヌル酸エステルトリ(メタ)アクリレートなどの3官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。また高屈折微粒子の分散性を向上させるため、カルボキシル基やリン酸基、スルホン酸基等の酸性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物、具体的には、酸性官能基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸などの不飽和カルボン酸、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等のリン酸(メタ)アクリル酸エステル、2−スルホエステル(メタ)アクリレート等、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合などの極性をもった結合を有する(メタ)アクリレート化合物、特にウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等の、ウレタン結合を有している樹脂は極性が高く粒子の分散性が良くなるので特に好ましい。
【0026】
高屈折率層に含まれる粒子としては、金属微粒子、あるいは金属酸化物粒子、なかでも金属酸化物微粒子は透明性と屈折率のバランスが良く好ましい。金属酸化物微粒子としてはアンチモン含有酸化スズ粒子(ATO)、スズ含有酸化アンチモン粒子、スズ含有酸化インジウム粒子(ITO)、
酸化スズ/酸化アルミニウム粒子、酸化アンチモン粒子等が特に好ましく、より好ましくはスズ含有酸化インジウム粒子(ITO)、アンチモン含有酸化スズ粒子(ATO)である。
【0027】
上記粒子は、平均1次粒子径(BET法により測定される球相当径)が0.5μm以下の粒子が好適に使用されるが、より好ましくは0.001〜0.3μm、さらに好ましくは0.005〜0.2μmの粒子径のものが好適に用いられる。高屈折率層形成において好ましく使用される溶剤は、塗布性を改善し、また金属化合物粒子の分散性を改善するために配合するものであり、粒子分散マトリックス組成物を溶解するものであれば、従来から公知の各種有機溶媒を使用することができる。具体的には、例えば、メタノールや、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサンノン、酢酸ブチル、イソプロピルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセチルアセトン、アセチルアセトン等を挙げることができる。これらは単一で使用してもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0028】
また有機溶剤の量は、塗布手段や、印刷手段に応じ作業性の良い状態の粘度に組成物がなるように任意の量を配合すればよいが、通常、粘度が100mPa/s以下、好ましくは30mPa/s以下、更に好ましくは10mPa以下であるのが望ましい。
【0029】
低屈折率層としては、シランカップリング剤〔1〕、アルコキシシリル基を有するフッ素樹脂〔2〕を含むことが好ましい。シランカップリング剤〔1〕成分としては、一般式R(1)R(2)SiX4−(a+b) で表される化合物ないしはその加水分解生成物である。ここで、R(1)、R(2)は各々アルキル基、アルケニル基、アリル基、またはハロゲン基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、メタクリルオキシ基、ないしシアノ基を有する炭化水素である。Xはアルコキシ基、ハロゲン基ないしアシル基から選ばれた加水分解可能な置換基である。a、bは各々0、1または2であり、かつa+bが1,2または3である。アルコキシシリル基を有するフッ素樹脂〔2〕は、一般式R(3)R(4)SiX4−(c+d)で表される化合物ないしはその加水分解生成物である。ここで、R(3)、R(4)、は各々フッ素置換したアルキル基、アルケニル基、アリル基、メタクリルオキシ基、ないし(メタ)アクリロイル基を有する炭化水素基である。Xはアルコキシ基、ハロゲン基ないしアシル基から選ばれた加水分解可能な置換基である。c、dは各々0,1,2または3であり、かつc+dが1,2または3である。本発明では低屈折率層を形成する際に、さらに必要に応じて、例えば、重合禁止剤、酸化防止剤、分散剤、レベリング剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0030】
また本発明の低屈折率層には、硬度を高めるために、シリカ微粒子〔3〕を併用するのが好ましい。シリカ微粒子〔3〕成分は、乾式シリカ、湿式シリカ、コロイド状に分散したシリカ微粒子等が挙げられるが、粒度分布が揃っている球状シリカ微粒子を含有させるのが好ましい。該シリカ微粒子〔3〕の粒径は平均1次粒子径(球相当径:BET法)が0.001〜0.2μmのものが一般的に使用できるが好ましくは0.005〜0.15μmの粒子径のものが好適に用いられる。
【0031】
上記のシリカ微粒子は更なる低屈折率化の方法としてシェルコア構造を有し、内部が空洞化されたものが特に好ましい。その場合、シリカ微粒子の空洞化率としては5%以上が好ましく、30%以上がさらに好ましい。
【0032】
このような中空粒子の例としては、例えば、特開2001−233611号公報、J.Am.Chem.soc.2003、125,316−317などの公知文献に記載されている。
【0033】
また、低屈折率層を形成する場合には、シランカップリング剤〔1〕、アルコキシシリル基を有するフッ素樹脂〔2〕、もしくは、あらかじめこれらの混合物を共重合させたもの、および必要に応じて、シリカ微粒子〔3〕を含有する組成物を、メタノールやエタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、イソプロピルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセチルアセトン、アセチルアセトンから選ばれる少なくとも1種以上の溶剤に分散させた液を、塗布した後、乾燥・硬化させ、低屈折率層を形成する方法をとることが好ましい。これにより低屈折率化と共に耐擦傷性を高くすることができる。
【0034】
硬化触媒としては、シランカップリング剤〔1〕の縮合反応を促進するものが好ましく、このようなものとして酸化合物を挙げることができる。これらの中で、ルイス酸化合物が好ましい。ルイス酸化合物の例として、アセトアセトキシアルミニウム等の金属アルコキシドや金属キレートなどを挙げることができる。この硬化触媒の量は、適宜決定することができるが、例えば、シランカップリング剤〔1〕100重量部に対して、通常0.1〜1.0重量部である。
【0035】
次に本発明の単層プリズムシートの製造方法について説明するがこれに限定するものではない。本シートを構成する上記の(a)、(b)を含む液状樹脂組成物を、頂角が、70〜110°の三角柱状のプリズムがピッチ100μm以下で複数並列に設けられている離型処理が施された金型ドラム上、あるいは同様の形状を有する無端のベルト上へダイコート方式やコンマコート方式を用いて流延した後、紫外線もしくは電子線を照射して硬化させ、硬化後のシートをドラムもしくはベルトから剥離することによって製造される。上記金型は、電気鋳造あるいは、フォトリソグラフィーなどの方法により、上記形状を持つ金型ドラムあるいは、無端のベルトを精度よく作製することができる。
【0036】
本発明の単層プリズムシートは、サイドライト型もしくは直下型バックライトの上に設置された液晶表示素子の上に設置して使用することができる。プリズムの設けられた側と液晶表示素子が相対するようにプリズムシートを液晶表示素子の上に設置するとよい。
【0037】
[特性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。 (1)レターデーション
王子計測(株)社製の自動複屈折計(KOBRA−21ADH)を用い、低位相差モードで測定した。測定は10回行い、それらの平均値を用いた。
【0038】
(2)鉛筆硬度
HEIDON(新東科学株式会社製)を用いてJIS K−5400(1990)に従って測定した。三角柱状のプリズムの尾根部に並行な方向を測定方向とし、プリズム面側を測定したものである。
【0039】
(3)輝度特性
表面輝度7000cd/mの性能を有するサイドライト型のバックライトを用いた液晶表示装置を用いて、プリズムを設けた面が液晶表示部分に相対するように設置して正面での表面輝度を測定した。なお、プリズムシートを用いない場合の表面輝度は200cd/mであった。
【0040】
(4)全光線透過率
全自動直読ヘイズコンピューターHGM−2DP(スガ試験機(株)製)を用いて可視光域におけるシートの厚み方向の全光線透過率の平均値を求めた。測定は10点の平均値とした。
【0041】
(5)自己支持性
単層プリズムシートをプリズムの形成方向と並行に直径30mmの棒に巻き付け、プリズム部の破損状態を目視観察した。プリズム部が割れたり、シートが破損しない場合を自己支持性ありと判定した。
【0042】
(6)プリズムのピッチ、頂角の測定
ピッチ、頂角の測定は、断面切削を行い、直接断面形状を観察することにより求めた。具体的方法を下記する。まずプリズムシートの断面切削は、ミクロトーム((株)日本ミクロトーム研究所製)により、室温下で、プリズムの尾根を含む面に対して垂直に、プリズム断面が三角形となる方向に切削した。また、この断面を光学顕微鏡(ライカマイクロシステムズ(株)製 ライカDMLB HC)倍率100倍)で観察し、付属のデジタルカメラにより観察像を撮影した。得られた画像から読みとった値を、実際の長さに換算し、プリズムのピッチを算出した。また、頂角は、得られた画像を測定し、角度を算出した。ピッチ、頂角ともに、10点測定し、それらの平均値を用いた。
【0043】
(7)屈折率の測定
JIS K 7105(1981)に基づき、アッベ屈折率計((株)アタゴ社製)を用いて測定を行った。測定は10回行い、それらの平均値を用いた。
【実施例】
【0044】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0045】
<単層プリズムシート用樹脂組成物の作製>
(1)ビニルエステル組成物A
温度計、撹拌装置、分留コンデンサー、ガス導入管を取り付けた1Lのフラスコに、ビスフェノールAジエポキシ化合物 374.4g(1.20モル)、メタクリル酸 206.4g(2.4モル)、オクチル酸クロム 1.5g、亜リン酸0.15g、ハイドロキノン0.2gを加え、窒素ガスを吹き込みながら120〜125℃で2時間反応を行った。酸価11.0となった段階で、フラスコ内樹脂を金属製バットに注入し、冷却したところ無色透明なビニルエステル組成物Aが得られた。
このビニル組成物Aを主成分とする以下の組成物(B1〜B4)およびビニルエステル組成物を含まない組成物(C,D)を調合した。
<B1>
組成物A 85重量部
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 15重量部
硬化触媒(イルガキュア184:長瀬産業(株)製) 1重量部
<B2>
組成物A 70重量部
トリメチロールプロパントリアクリレート 20重量部
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 10重量部
硬化触媒(イルガキュア184) 1重量部
<B3>
組成物A 80重量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 10重量部
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 10重量部 硬化触媒(イルガキュア184) 1重量部
<B4>
組成物A 70重量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 20重量部
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 10重量部
硬化触媒(イルガキュア184) 1重量部
<C>
トリメチロールプロパンジアクリレート 50重量部
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 50重量部
硬化触媒(イルガキュア184) 1重量部
<D>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 40重量部
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 40重量部
トリメチロールプロパンジアクリレート 20重量部
硬化触媒(イルガキュア184) 1重量部。
【0046】
(実施例1〜5,比較例1,2)
上記組成物A(実施例1)、B1〜B4(実施例2〜5)、C(比較例1),D(比較例2)を用いて頂角75°、ピッチ75μm、総シート厚み200μmの単層プリズムシートを作成した。シートの作成は、成形後のプリズムの頂角およびピッチとなるように成形された離型平板金型上へ上記組成物をアプリケーターにて塗工後、積算照射強度が1000mJ/cmとなる紫外線を照射して硬化させ、金型から剥離して単層プリズムシートを得た。
【0047】
(実施例6,7)
実施例4(B3組成物)を用い、プリズムの頂角、ピッチを変更した以外は同様にして単層プリズムシートを作成した。
【0048】
(比較例3)
透明PETフィルム(ルミラーU34:東レ(株)製)を基材とし、その上に上記組成物B3を用いてプリズム層を形成した。プリズム層の形成は、実施例1においてアプリケーターで塗工後、PETフィルムを塗工面に貼り合わせ、PETフィルム面から実施例1と同様に紫外線を照射して硬化させ、金型から剥離した。
【0049】
(実施例8)
低屈折率層積層プリズムシート
<低屈折率塗料の調整>
メチルトリメトキシシラン(信越シリコーン製 KBM−7103)219重量部を20℃±5℃で撹拌しながら、0.5N蟻酸89重量部で加水分解した。60分後にイソプロピルアルコール412重量部を混合して処理液(X1)を調整した。
【0050】
同様に、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン製 KBM−7103)158重量部を30℃±10℃で攪拌しながら、1N蟻酸41重量部で加水分解した。60分後にイソプロピルアルコール521重量部を混合して処理液(X2)を調整した。
【0051】
次に、平均1次粒子径50nmの外殻を有する空隙率30%の中空シリカ粒子(触媒化成工業株式会社製 スルーリア)144重量部、イソプロピルアルコール560重量部からなるシリカスラリー(X3)を準備した。
【0052】
処理液(X1)720重量部、処理液(X2)720重量部、シリカスラリー(X3)704重量部、メタノール356重量部、イソプロピルアルコール4272重量部、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル713重量部を攪拌混合した後、硬化触媒としアセトアセトキシアルミニウムを15重量部添加して再度攪拌混合し、屈折率1.36の塗料を調整した。
上記の低屈折率塗料を実施例4で作製した単層プリズムシートの非プリズム面側に乾燥後の厚みが120nmとなるように塗布し、140℃で3分間乾燥硬化させ、非プリズム面側に低屈折率層を設けたプリズムシートを作成した。
【0053】
(実施例9)
高屈折率層/低屈折率層積層プリズムシート
<高屈折率塗料>
アンチモン含有酸化スズ粒子(ATO)6重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2重量部、メチルエチルケトン54重量部、イソプロピルアルコール38重量部の混合物を撹拌して塗膜屈折率1.61の塗料を調整した。
【0054】
上記の高屈折率塗料を用い、実施例4で作製した単層プリズムシートの非プリズム面側に乾燥後の積層厚みが100nmとなるように塗布し、100℃で1分乾燥後、400mJ/cm2の照射強度の紫外線を照射して硬化させた。その後、高屈折率層上に実施例8と同様にして低屈折率層を形成し、単層プリズムシートの非プリズム面側に反射防止層を設けたプリズムシートを作製した。
【0055】
評価結果を表1に示す。ビニルエステル組成物を用いなかった比較例1,2では自己支持性がなく、所望のプリズム形状が得られない問題が生じた。またPETフィルムとの積層プリズムシートは本発明に比べて輝度の劣るものであった。反射防止層を設けた実施例8,9では更に輝度が向上する効果が発現した。
【0056】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、自己支持性を有し、かつ透明性に優れたプリズムフィルムであり、正面輝度向上効果が大きく、サイドライト型あるいは直下型バックライトを有する液晶表示装置に広く用いることができる。またその優れた輝度特性、光学的等方性から、ノートパソコンなどの薄型液晶表示装置、PDA、携帯ゲーム機などのモバイル用液晶表示装置や、車載テレビやカーナビゲーションなどにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】プリズムシートの一部を示した斜図である。
【図2】プリズムシートの概略的な部分断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルエステル組成物を用いてなり、表面に複数のプリズム形状を有する単層プリズムシート。
【請求項2】
プリズム形状がシートの少なくとも片面に形成され、その断面形状が頂角70〜110°の三角形をなす三角柱状のプリズムをピッチ100μm以下で複数並列に設けてなる請求項1に記載の単層プリズムシート。
【請求項3】
レターデーションが5nm以下である請求項1または2に記載の単層プリズムシート。
【請求項4】
多官能アクリレートを含有してなる請求項1〜3のいずれかに記載の単層プリズムシート。
【請求項5】
鉛筆硬度がH以上である請求項1〜4のいずれかに記載の単層プリズムシート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の単層プリズムシートのプリズム形状を有する表面と反対面に反射防止層を設けた複合プリズムシート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−58863(P2008−58863A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238601(P2006−238601)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】