説明

単結晶基板にエッチングすることによってインクジェット・デバイスのノズル及びインク室を形成する方法

インクジェット・デバイスのノズル(32)及びインク室を形成する方法であり、ノズル通路(28)は、基板(10)を方向性を持つ第1エッチング工程にその基板の片側からさらすことによって形成され、第2エッチング工程は、ノズル通路(28)の内部の部分を拡大するためにその基板の同じ側から適用され、従ってそのノズルに隣り合わせるインク室の少なくとも1部分を形成する空洞(30)を形成し、その空洞(30)の形状は、基板(10)の反対側にエッチング停止層(18)の下に埋められたエッチング加速層(14)を供給することによって、及び第2エッチング工程がエッチング加速層の中へ進むことを可能にすることによって制御され、以下のステップ:基板(10)においてノズルが形成されるべき側に環状溝を形成するステップ、及び第2エッチング工程に対して耐久性を持つようにその溝の壁を不動態化するステップ、が第1エッチング工程に先立つことを特徴とし、その溝によって取り囲まれる材料は第1エッチング工程において除去されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット・デバイスのノズル及びインク室を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズル通路は、基板を、方向性のある第1エッチング工程にその基板の一面からさらすことによって形成され、第2エッチング工程は、ノズル通路の内部の部分を拡大するためにその基板の同じ側から適用され、それによってそのノズルに隣り合わせるインク室の少なくとも一部分を形成する空洞を形成する。その空洞の形状は、基板の反対側にエッチング停止層の下に埋められたエッチング加速層を供給することによって、及び第2エッチング工程がエッチング加速層の中へ進むことを可能にすることによって制御される。
【0003】
上記に示される種類の方法は、特許文献1によって知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1,138,492号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ノズル通路の形状及び配置をより適切に制御することを可能にする種類の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従って、上記の目的は、以下における:
‐基板においてノズルが形成されるべき側に環状溝を形成するステップ、及び
‐第2エッチング工程に対して耐久性を持つようにその溝の壁を不動態化するステップ、
が第1エッチング工程の前に行われる方法によって成し遂げられ、その溝によって取り囲まれる材料は第1エッチング工程において除去される。
【0007】
その溝によって取り囲まれる材料が除去され、ノズル通路が第1エッチング工程において形成されたとき、そのノズル通路のノズル形成端の位置、周囲の形状及び深さは、その溝によって正確に定められる。エッチング加速層は、ノズルの反対側において平坦層(すなわち、エッチング停止層の一部分)によって境界が定められる空洞が得られるように、第2エッチング工程がエッチング停止層の境界線に沿って迅速に進むようにする。ノズル通路及び空洞を形成するために2つのエッチング工程は、基板の同じ側から実施されてもよいことから、ノズル及び空洞の位置合わせはかなり容易になる。
【0008】
本発明の望ましい実施形態は、従属項において示されている。
【0009】
空洞の境界を定めるエッチング停止層の部分は、薄膜又は薄膜の少なくとも一部分を形成してもよく、アクチュエータの力は、その薄膜又はその少なくとも一部分を通ってインク室におけるインク上に伝達される。
【0010】
第2エッチング工程は、望ましくは、エッチング速度が基板の結晶の方向に依存する異方性工程であるのがよい。その結果、適切な結晶方位を持つ単結晶基板を使用することによって、壁がノズルに向かって先細くなるピラミッド形状の空洞を得ることが可能である。
【0011】
次に、本発明は、ノズル方向に垂直な方向におけるインク室の拡大が制御され、特に、ノズル通路が第1エッチング工程においてエッチングされる深さを制御することによって限定されてもよいという特有の利点を有する。例えば、そのノズル通路がエッチング加速層に実際に到達するような深さまでエッチングされる場合、そのエッチング加速層は、第2エッチング工程が比較的短時間で停止されるように、比較的速くエッチングされ、それは基板の厚さにかかわらず、インク室の断面積を小さくする。そのインク室の小さい断面積と基板の大きい厚さとの組み合わせは、枚葉式ウェハーにおいて形成されるインクジェット・デバイスのアレイにおけるインク室が、高密度のアクチュエータを可能にし、高い印刷解像度に至るように十分に大きい容積を持ち、それにかかわりなく狭い空間で配置されてもよいという利点を有する。
【0012】
本発明の望ましい実施形態は、図表と併せてこれから説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】インクジェット・デバイスが本発明による方法によって形成される基板の一部分の断面図である。
【図2】インクジェット・デバイスが本発明による方法によって形成される基板の一部分の断面図である。
【図3】インクジェット・デバイスが本発明による方法によって形成される基板の一部分の断面図である。
【図4】インクジェット・デバイスが本発明による方法によって形成される基板の一部分の断面図である。
【図5】インクジェット・デバイスが本発明による方法によって形成される基板の一部分の断面図である。
【図6】インクジェット・デバイスが本発明による方法によって形成される基板の一部分の断面図である。
【図7】インクジェット・デバイスが本発明による方法によって形成される基板の一部分の断面図である。
【図8】インクジェット・デバイスが本発明による方法によって形成される基板の一部分の断面図である。
【図9】インクジェット・デバイスが本発明による方法によって形成される基板の一部分の断面図である。
【図10】インクジェット・デバイスが本発明による方法によって形成される基板の一部分の断面図である。
【図11】インクジェット・デバイスが本発明による方法によって形成される基板の一部分の断面図である。
【図12】インクジェット・デバイスが本発明による方法によって形成される基板の一部分の断面図である。
【図13】図1‐12において説明された方法によって形成されるインク室の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0014】
図1は、単結晶シリコンウェハーによって形成される基板10の一部分の断面図を示す。
【0015】
図2に示されるように、例えばポリシリコンなどのエッチング加速層14が、基板10の上面に(例えばスパッタリングによって)塗布される。次に、層14の一部分がレジスト16(図3)で覆われ、そのポリシリコン層14がレジスト16によって保護されていない箇所(図4)がエッチングされる。この目的を達成するために、RIEエッチング工程が採用されてもよく、その持続期間はポリシリコンがレジストによって保護されていない箇所から完全に除去されるように選択されるが、基板10のコア材料の過度なエッチングは最小限に減らされる。
【0016】
次に、レジスト16が剥がされ(図5)、エッチング加速層14は、図6に示されるようにエッチング停止層18に埋められる。層18は、LPCVDで塗布されるSiRN層である。
【0017】
次に、図7に示されるように、環状溝38が基板10の底面に、従来のフォトリソグラフィ法によって形成される。そして、基板全体が、保護性酸化層40(図8)が基板10の底面及び環状溝38の内部壁上に形成されるように、酸化性雰囲気にさらされる。さらに、SiRN層42がLPCVDによって酸化層40上に形成され、それは、また層18の厚さも増加させる。
【0018】
示される例において、インクジェット・デバイスに対するアクチュエータ44が、エッチング加速層14の上の層18の上に形成される。例えば、アクチュエータ44は、その層18の表面上に1つずつ形成される電極及び圧電物質の層を持つ圧電アクチュエータであってもよい。
【0019】
次に、適切なマスク(非表示)が一時的に層42の底面上に形成された後に、ノズル通路28が、深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)によって形成される。このエッチング工程は、溝38によって取り囲まれている基板10の部分を特に除去するが、酸化層40は、その溝の壁上に残る。
【0020】
次に、図10に示されるように、KOHウェット・エッチング工程が適用される。示される例において、基板10は、<100>ウェハーである。KOHエッチング工程のエッチング速度は、結晶の<111>方向において最も遅い。その結果として、ノズル通路28のSi基板を通り抜ける部分は、空洞30を形成するように拡大され、その壁は、基板の表面(<100>面)に対して54.74°の角度を形成し、従って、ノズル通路28の軸に対して35.26°の角度を形成する<111>面によって形成される。
【0021】
一方、SiRN層42及び18及び酸化層40は、ノズル通路28の層42及び溝38によって取り囲まれている材料を通り抜ける部分は拡張されず、均一の断面積を持つ真っ直ぐのノズル32を形成するように、このエッチング工程によっては実質的に影響を受けない。このノズル32の長さは、層42の厚さ及び溝38の深さを適切に選択することによって精細に制御されることが分かるであろう。
【0022】
ウェット・エッチング工程におけるエッチング液は、シリコン基板10にノズル32を通してのみアクセスが可能であることから、そのエッチング工程は、このノズルの内部の端から開始され、それは空洞30のピラミッド形状をもたらし、空洞30の壁は、まさにノズル32に向かって先細くなる。この方法は、従って、空洞30(すなわち、インク室)がノズル32に向かって先細くなる結晶面によって定められる非常に滑らかな壁を持ち、この壁の漸減は、本質的に、高精度でノズル上に中心が置かれる。これは、インクジェット・デバイスの高度な及び再生可能な質を保証する。
【0023】
ノズル通路28(図9)は基板10の全体の厚さを横切ってエッチング加速層14に到達することから、KOHエッチングは、そのノズル通路の全体の長さから前進し、さらに、特にエッチング加速層14において高いエッチング速度で前進する。そうすることによって、空洞30は、最終的に図10に示されるひし形の形状を取る。その(非常に薄い)エッチング加速層14は、空洞30の上部の壁34が層14によって覆われているエッチング停止層18の部分によって形成されるように、この工程において除去される。
【0024】
さらに、図1から10までにおいて示されている断面において、エッチング加速層14は、この断面において、空洞30がまた、ノズル32に関して対称性のある形状も取るように、ノズル通路28に関して対称性を持つ。空洞30の正確な3次元形状は、図13においてさらに明確に示される。
【0025】
図10において、アクチュエータ44は、空洞30の上部の壁34に位置する。圧電アクチュエータ44が曲げるモードにおいて変形するタイプである場合、壁34はアクチュエータ44によって曲げられる柔軟な薄膜として作用する。
【0026】
図11に示されるさらなる工程ステップにおいて、インク供給通路46が上部のエッチング停止層18及び基板の一部を通って(すなわちノズル32の反対側から)DRIEによって、上部の壁34からはずれているが空洞30の最大の断面を交差する位置において形成される。エッチング時間を制御することによって、通路46の深さは、それが止まり穴を形成せずに空洞30と連通するように制御される。任意に、インク供給通路46の断面が完全に空洞30の外周に含まれる場合、エッチング停止層18によって形成される上部の壁を含んだ空洞の内部の壁は、ノズル32によって酸化され、それによってインク供給通路46が形成されるエッチング工程に対するエッチング停止を形成してもよい。次に、インク供給通路46と空洞30との間の連通は、エッチング停止を形成した酸化層を除去することによって確立される。
【0027】
最後に、SiRN層42及び酸化層40が図12に示される完成品を得るように除去される。
【0028】
図8に続くステップにおいて、アクチュエータ44は処理媒体の攻撃に対し必要な限り保護されるべきである。代替として、アクチュエータ44は、最終段階においてのみ形成されてもよく、あるいは個別に形成され、次にインクジェット・デバイスに接着されてもよい。
【0029】
図12は、ノズル32及び空洞30をインク室として含む単一のインクジェット・デバイスのみを示す一方、この図に示されている基板10の部分は、より多くの数のインクジェット・デバイスが2次元アレイにおいて形成されるより大きなウェハーの部分を形成し、その2次元アレイは、次に複数のマルチノズル・インクジェット・アレイを形成するようにダイスカットされてもよいことが分かる。そのようなアレイにおいて、隣り合わせるノズル32間の距離は、そのインクジェット・デバイスの印刷解像度を決定する。この状況において、上記に記載された方法は、基板10が例えば300μmなどの比較的大きい厚さを持っていても、空洞30は、その基板の厚さの方向において主に拡大し、ノズル32の方向に垂直な方向において比較的小さい寸法を持つ。結果として、空洞30は、高密度及びそれに応じて小さいノズルからノズルまでの距離で配置できる。
【0030】
さらに、図12において示されていないが、フィルター室が空洞30と連通してもよい。次に、インクがそのフィルター室へ供給され、層18の中にエッチングされたフィルター・パターンによってフィルターされてもよく、インクは次に、空洞30の中へ入り、ノズルを通ってそこから放出される。空洞30の壁34は、空洞30の容積を減少させ、従ってインク液滴を、ノズル32を通して放出するように、アクチュエータによって曲げられ得る薄膜として働いてもよい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット・デバイスのノズル及びインク室を形成する方法であり、ノズル通路は、基板を方向性のある第1エッチング工程に該基板の片側からさらすことによって形成され、第2エッチング工程は、前記ノズル通路の内部の部分を拡大するために前記基板の同じ側から適用されることから、前記ノズルに隣り合わせる前記インク室の少なくとも一部分を形成する空洞を形成し、該空洞の形状は、前記基板の反対側においてエッチング停止層の下に埋められたエッチング加速層を供給することによって、及び前記第2エッチング工程が前記エッチング加速層の中へ進むことを可能にすることによって制御され、以下:
‐前記基板において前記ノズルが形成されるべき側に環状溝を形成するステップ、及び
‐前記第2エッチング工程に対して耐久性を持つように、前記溝の壁を不動態化するステップ、
が前記第1エッチング工程に先行することを特徴とし、前記溝によって取り囲まれる材料は、該第1エッチング工程において除去されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であり、前記基板は単結晶によって形成され、前記第2エッチング工程は、前記基板の異なる結晶学的方向に対して異なるエッチング速度を持つ工程であり、前記ノズル通路は、該エッチング速度が最も遅い結晶学的方向に関して傾いた方向に形成されることから、前記ノズルに向かって先細くなる壁を持つ空洞を形成する、方法。
【請求項3】
前記第2エッチング工程がウェット・エッチング工程である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エッチング工程がKOHウェット・エッチング工程である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
圧電アクチュエータの少なくとも1つの構成部品が、前記エッチング加速層を覆う前記エッチング停止層の一部分上に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2エッチング工程の後に、インク供給通路が前記エッチング停止層及び前記基板の一部分を通ってエッチングすることによって形成され、従って前記空洞と連通する通路を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記エッチング加速層がポリシリコンの層である、請求項1に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−521816(P2011−521816A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512140(P2011−512140)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056925
【国際公開番号】WO2009/147231
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(593016732)オセ−テクノロジーズ ビーブイ (103)
【Fターム(参考)】