説明

単結晶引上装置および坩堝支持装置

【課題】 より正確に重量を測定することが可能な単結晶引上装置を提供する。
【解決手段】 単結晶引上装置A1は、重量検出手段541を有する支持体5を動かすことにより引上軸3および軸支持部4を動かし、気密容器2内の単結晶1の引き上げを行うものであり、軸支持部4は、引上軸3を支持する本体部41と、本体部41と連結された被支持部43とを具備しており、支持体5は、被支持部43を支持する支持部54と、被支持部43より軸方向z上方に配置された延出部53とを具備しており、延出部53と被支持部43との間に設けられ、軸方向zに伸縮可能な第1の筒体71と、引上軸3を囲むように構成され、軸方向zに伸縮可能であり、軸方向zにおける上端が本体部41に固定された第2の筒体72と、第1の筒体71と第2の筒体72とを連結する配管74を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、シリコンやサファイアなどの単結晶をチョクラルスキー法により製造する際に用いられる単結晶引上装置および坩堝支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、引上軸にかかる重量から単結晶の径を随時算出し、その算出結果に基づいて単結晶の径が所望の値となるように調整する方法が知られている(特許文献1および特許文献2)。これらの方法を実行するには、重量の測定を行いつつ単結晶の引き上げを行うことができる単結晶引上装置が必要となる。図5には、そのような単結晶引上装置の一例を示している。
【0003】
図5に示す単結晶引上装置X1は、単結晶91を気密容器92内に設置された坩堝92aから引き上げるためのものであり、引上軸93と、引上軸93を支持する軸支持部94と、軸支持部94を支持する支持部95と、支持部95を移動させる駆動機構96とを備えている。支持部95には軸支持部94にかかる重量を随時測定するロードセル95aが設置されている。このようにロードセル95aを気密容器92の外側に設置する場合、気密容器92の構造を簡略化しやすくコストの削減を図りやすい利点がある。
【0004】
気密容器92内の気圧を保つために、気密容器92の引上軸93との接触部分には、たとえばシールリング92bが設けられている。このシールリング92bと引上軸93との間の摩擦により、ロードセル95aで検出される重量が不正確になることがあった。
【0005】
このため、たとえば、図6に示すような単結晶引上装置X2が用いられることもあった。単結晶引上装置X2は、気密容器92と軸支持部94との間に、ベローズなどの上下に伸縮可能な筒体97が設けられている。このような構成によれば、単結晶引上装置X1とは異なり、引上軸93に軸方向の摩擦力がかかるのを防ぐことができる。
【0006】
しかしながら、たとえばサファイア単結晶を製造する際には、気密容器92内の気圧を大幅に下げることがある。このような場合、単結晶引上装置X1,X2の双方において、軸支持部94には気密容器92内と大気圧との気圧の差に応じた力が加わり、ロードセル95aで検出される重量が不正確になることがあった。
【0007】
また、たとえば坩堝92a内に単結晶91の原料がどの程度残っているかを確認するために、坩堝92aが重量の測定を行える坩堝支持装置に支持されている場合がある。このような場合おいても、気密容器92内の気圧と外気圧との差が大きいと上記の問題と同様の問題が生じることがあった。
【0008】
さらに、軸方向に長い単結晶を引き上げようとする場合、単結晶引上装置X2においては、筒体97が長く引き伸ばされることになる。このとき、筒体97が軸支持部94を引っ張る力が無視できない大ききになることがあった。このような場合にもロードセル95aで検出される重量が不正確となる問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−120789号公報
【特許文献1】特開2005−231958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、より正確に重量を測定することが可能な単結晶引上装置および坩堝支持装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の側面によって提供される単結晶引上装置は、気密容器と、上記気密容器内で育成された単結晶を引き上げる引上軸と、上記引上軸を支持する軸支持部と、上記軸支持部にかかる重量を検出する重量検出手段を具備し、上記軸支持部を支持する支持体と、を備えており、上記支持体を上記引上軸の軸方向に沿って移動させることにより上記単結晶の引き上げを行う単結晶引上装置であって、上記軸支持部は、上記引上軸を支持する本体部と、上記本体部と連結された被支持部とを具備しており、上記支持体は、上記被支持部を支持する支持部と、上記被支持部よりも上記軸方向上方に配置された延出部と、を具備しており、上記延出部と上記被支持部との間に設けられ、上記軸方向に伸縮可能な第1の筒体と、上記引上軸を囲むように構成され、上記軸方向に伸縮可能であり、上記軸方向における上端が上記本体部に固定された第2の筒体と、上記第1の筒体と上記第2の筒体とを連結する配管を備えていることを特徴とする。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記第1の筒体は、上記被支持部に固定される第1の固定環を有しており、上記第2の筒体は、上記本体部に固定される第2の固定環を有しており、上記第1と第2の固定環の内径が同一である。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記支持体は、上記引上軸を挿通させる開口を有する台部を具備しており、上記第2の筒体の上記軸方向における下端が上記台部に固定されており、上記台部と上記気密容器との間に設けられており、かつ上記引上軸を囲むように構成された第3の筒体を備えている。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記配管は、上記延出部と上記第2の固定環とを繋ぐように設けられている。
【0015】
別の好ましい実施形態においては、上記第3の筒体は、上記台部に固定される第3の固定環を有しており、上記配管は、上記延出部と上記第3の固定環とを繋ぐように設けられている。
【0016】
より好ましい実施形態においては、上記第1の筒体は、上記軸方向視において上記引上軸と重なる位置に配置されている。
【0017】
本発明の第2の側面によって提供される坩堝支持装置は、気密容器と、上記気密容器内に収容された坩堝と、上記坩堝を支持する支持軸と、上記支持軸を支持する軸支持部と、上記軸支持部にかかる重量を検出する重量検出手段を具備し、上記軸支持部を支持する支持体と、を備えた坩堝支持装置であって、上記軸支持部は、上記支持軸を支持する本体部と、上記本体部と連結された被支持部とを具備しており、上記支持体は、上記被支持部を支持する支持部と、上記被支持部よりも上記軸方向下方に配置された延出部とを具備しており、上記延出部と上記被支持部との間に設けられ、上記軸方向に伸縮可能な第1の筒体と、上記支持軸を囲むように構成され、上記軸方向に伸縮可能であり、上記軸方向における下端が上記本体部に固定された第2の筒体と、上記第1の筒体と上記第2の筒体とを連結する配管と、を備えていることを特徴とする。
【0018】
好ましい実施形態においては、上記第1の筒体は、上記被支持部に固定される第1の固定環を有しており、上記第2の筒体は、上記本体部に固定される第2の固定環を有しており、上記第1と第2の固定環の内径が同一である。
【0019】
好ましい実施形態においては、上記支持体は、上記支持軸を挿通させる開口を有する台部を具備しており、上記第2の筒体の上記軸方向における上端が上記台部に固定されており、上記台部と上記気密容器との間に設けられており、かつ上記支持軸を囲むように構成された第3の筒体を備えている。
【0020】
好ましい実施形態においては、上記配管は、上記延出部と上記第2の固定環とを繋ぐように設けられている。
【0021】
別の好ましい実施形態においては、上記第3の筒体は、上記台部に固定される第3の固定環を有しており、上記配管は、上記延出部と上記第3の固定環とを繋ぐように設けられている。
【0022】
より好ましい実施形態においては、上記第1の筒体は、上記軸方向視において上記支持軸と重なる位置に配置されている。
【0023】
このような構成によれば、上記気密容器内の気密性を確保するためには、上記引上軸ないし支持軸を囲む上記第2の筒体および上記第2の筒体に上記配管で連結された上記第1の筒体の内側を外気と遮断する必要がある。このため、上記第1の筒体および上記第2の筒体の内部の気圧は上記機密容器内の気圧と等しくなる。上記気密容器内の気圧と外気圧との間に差が生じた場合、上記被支持体には上記第1の筒体の内側の気圧と外気圧との差に応じた力が加わる。上記第1の筒体内の気圧が外気圧よりも小さい場合には、上記被支持体は外気により押し上げられることになる。同時に、上記本体部には上記第2の筒体の内側の気圧と外気圧との差に応じた力が加わる。上記第2の筒体内の気圧が外気圧よりも小さい場合には、上記本体部が外気により押し下げられることになる。すなわち、外気から上記軸支持部にかかる力は上下で打ち消しあうことになる。好ましい実施の形態におけるように、第1,第2の固定環の内径が等しい場合には、上記本体部にかかる力と上記被支持部にかかる力とが完全に相殺し合い、上記軸支持部にかかる大気の影響を無視することができる。このため、本発明によれば、上記気密容器内の気圧が変動しても、その影響を受けることなく上記軸支持部にかかる重量を検出することができる。従って、本発明により提供される単結晶引上装置は、上記単結晶の重量をより正確に測定できるため、より確実に上記単結晶の直径を所望の値に近付けることができる。また、本発明により提供される坩堝支持装置はより正確に坩堝の重量を測定することができる。
【0024】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に基づく単結晶引上装置を示す構成図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に基づく単結晶引上装置を示す構成図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に基づく坩堝支持装置を示す構成図である。
【図4】本発明の第4の実施形態に基づく坩堝支持装置を示す構成図である。
【図5】従来の単結晶引上装置の一例を示す構成図である。
【図6】従来の単結晶引上装置の別の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0027】
図1は、本発明の第1の実施形態に基づく単結晶引上装置を示している。図1に示す単結晶引上装置A1は、単結晶1、気密容器2、引上軸3、軸支持部4、支持体5、駆動機構6、筒体71,72,73、および、配管74を備えている。図1におけるz方向は、引上軸3の軸方向であり、単結晶引上装置A1はz方向に沿って単結晶1を引き上げるものである。x方向はz方向と直交する方向であり、図1におけるx方向右側の端には単結晶引上装置A1を保持する基柱(図1中斜線部)がある。基柱は、たとえば単結晶引上装置A1を回転あるいは水平に移動させることが可能な大型機材に固定されているものである。本実施形態では、単結晶1がサファイア単結晶である場合について説明を行う。
【0028】
単結晶1は、引上軸3の先端に取り付けられた種結晶を成長させることにより形成されるものであり、引上軸3から遠ざかるにつれてその径が徐々に大きくなる首部11と、直径がほぼ一定となる直胴部12とを備えている。
【0029】
気密容器2は、引上軸3を通すための開口部21を有しており、坩堝22を収容している。坩堝22は、たとえばイリジウム製であり、サファイアの原料であるアルミナが充填されている。坩堝22は、たとえば気密容器2の外側に設置される図示しない抵抗加熱装置により加熱され、アルミナの融点を上回る2000〜2200℃となる。抵抗加熱装置は、たとえば図示しない演算装置に接続されており、単結晶1の重量に応じた制御を受ける。この演算装置は、直胴部12の直径が所望の値となるように、坩堝22内のアルミナの温度の調整を行う。この気密容器2の内側の圧力は、たとえば0.1kPa〜3kPaとなる。
【0030】
引上軸3は、単結晶1を回転させつつ引き上げるためのものであり、z方向における上端部には下の部分よりも太くなるように形成された太径部31が設けられている。この太径部31は、図示しない回転モータにベルトを介して連結されている。さらに、太径部31は軸支持部4に支持されている。なお回転モータも上述の演算手段により制御されるものである。
【0031】
軸支持部4は、z方向に対して直交する板面を有する板状に形成された本体部41と、本体部41からz方向に起立する連結部42と、連結部42のz方向上端からx方向に突出する被支持部43とを備えている。本体部41は、引上軸3の細い部分を挿通させる貫通孔を有している。この貫通孔は引上軸3の太径部31を通さない径となるように形成されており、本体部41は引上軸3を回転可能に支持している。連結部42は、本体部41のx方向における図1中左端と、被支持部43の図1中左端とを繋ぎ合わせるように形成された板状あるいは棒状の部材である。被支持部43は、本体部41と平行な板状に形成されている。
【0032】
支持体5は、駆動機構6に連結された台部51、台部51からz方向に起立する支柱52、支柱52の図1中上端から延出する延出部53、および、軸支持部4を支持する支持部54を備えている。台部51には、引上軸3を通すための開口が形成されている。台部51は駆動機構6の動作に従いz方向に上下する。支柱52のz方向における下端は台部51に固定されており、支柱52は台部51と一体となって上下に移動する。延出部53は、本体部41と対向する板状に形成されている。延出部53には、z方向に貫通する細孔531が形成されている。支持部54は、本体部41と対向する板状に形成されており、図1に示すように被支持部43をz方向下側から支持する部分である。この支持部54の上面にはロードセル541が搭載されている。ロードセル541は、本発明における重量検出手段であり、本体部41にかかる重量を随時測定する。上述した演算装置は、このロードセル541が測定する重量を用いて発熱抵抗装置等の制御を行う。
【0033】
駆動機構6は、たとえばサーボモータによって回転させられるスクリューシャフトを有するものであり、スクリューシャフトの回転に伴ってz方向に上下する可動部61を備えている。可動部61は支持体5に連結されている。このような駆動機構6では、サーボモータの動作を制御することで、支持体5の上昇速度は自在に調整することが可能である。上述した演算装置は、直胴部12の直径が所望の値となるように、駆動機構6の動作も調整する。
【0034】
筒体71は、たとえばベローズであり、延出部53と被支持部43との間に設けられている。筒体71のz方向上端には固定環711が設けられており、延出部53の下面に気密を保つように固定されている。筒体71のz方向下端には固定環712が設けられており、被支持部43の上面に気密を保つように固定されている。この筒体71は、固定環711,712の間の部分が上下に伸縮可能に構成されている。なお、筒体71は、ロードセル541がz方向に変形する長さ分だけ伸縮可能であればよく、具体的には、その伸縮幅は1〜2mm程度である。
【0035】
筒体72は、たとえばベローズであり、引上軸3を囲むように本体部41と台部51との間に設けられている。筒体72のz方向上端には固定環721が設けられており、本体部41の下面に気密を保つように固定されている。筒体72のz方向下端には固定環722が設けられており、台部51の開口を囲み気密を保つように台部51に固定されている。この筒体72は、固定環721,722の間の部分が上下に伸縮可能に構成されている。なお、筒体72は、ロードセル541がz方向に変形する長さ分だけ伸縮可能であればよく、具体的には、その伸縮幅は0.1mm程度である。
【0036】
固定環711,712,721,722は、いずれもz方向視円環状であり、その内径は一致しているのが望ましい。
【0037】
筒体73は、たとえばベローズであり、引上軸3を囲むように気密容器2と台部51との間に設けられている。筒体73は、z方向における上下に固定環731,732を有しており、固定環731,732の間の部分が上下に伸縮可能に構成されている。筒体73は、坩堝22から引き上げられる単結晶1の長さ分だけ伸縮可能であり、具体的には、その伸縮幅は300mm程度である。
【0038】
固定環731は、台部51の下面に気密を保つように固定されており、固定環732は気密容器2の開口部21に気密を保つように固定されている。固定環731には内部に繋がる細孔733が設けられている。この細孔733は配管74に接続されている。
【0039】
筒体72および筒体73の内側の空間は外気から遮断されており、気密容器2の内部空間と同じ気圧となる。
【0040】
配管74は、細孔733と細孔531との間を繋ぐように設けられている。この配管74により、筒体71の内側の気圧は、筒体72および筒体73の内側の空間と同じ、すなわち、気密容器2内の気圧と同じとなる。
【0041】
次に、本実施形態の単結晶引上装置A1の作用について説明する。
【0042】
このような単結晶引上装置A1においては、軸支持部4の下端には筒体72が、軸支持部4の上端には筒体71が取り付けられており、筒体71,72の内圧が同一となっている。本実施形態では、筒体71,72の内圧は気密容器2内の気圧と同じであり、大気圧に比べて小さくなっている。このため、本体部41には、筒体72の内側の空間との接触面積に、大気圧と気密容器2内の気圧との差をかけただけの力がz方向下方に向けて加わることになる。逆に、被支持部43には、筒体71の内側の空間との接触面積に、大気圧と気密容器2内の気圧との差をかけただけの力がz方向上方に向けて加わることになる。本実施形態では、固定環712,721は同じ内径を有するため、これらの上下にかかる力は等しい大きさのものとなる。従って、本発明によれば、大気圧と気密容器2内の気圧との差が軸支持部4に及ぼす力を相殺することができ、ロードセル541に予期せぬ力がかかるのを防ぎ、より正確に単結晶1の重量を測定することができる。本発明は、気密容器2内の気圧が変動する場合には特に有用である。
【0043】
本実施形態によれば、筒体71,72は、ロードセル541が被支持体43にかかる重みによりz方向に縮むように変形する分の長さだけ伸縮する。この変形量は微小であり、筒体71,72が軸支持部4に及ぼす力は小さく、単結晶1の重量測定を妨げるものとはならない。筒体73は軸支持部4ではなく台部51に固定されているため、その変形により軸支持部4が力を受けることはない。
【0044】
本発明により提供される単結晶引上装置A1は、気密容器2内の気圧にも筒体73の伸縮にも影響されずに単結晶1の重量を正確に測定できるため、単結晶1の直胴部12の直径を正確に算出することができる。このため、単結晶1の形状を左右する坩堝22の温度、駆動機構6による引き上げ速度、および引上軸3の回転速度を適切に調整することができ、より確実に望む形状の単結晶1を引き上げることが可能である。
【0045】
図2〜図4は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0046】
図2には、本発明の第2の実施形態に基づく単結晶引上装置を示している。図2に示す単結晶引上装置A2は、筒体72,73のかわりに筒体75が設けられており、その他の主たる構成は単結晶引上装置A1と同様である。以下、単結晶引上装置A2の単結晶引上装置A1との異なる部分について説明を行う。
【0047】
筒体75は、たとえばベローズであり、引上軸3を囲むように本体部41と気密容器2との間に設けられている。筒体75は、z方向における上下に固定環751,752を有しており、固定環751,752の間の部分が上下に伸縮可能に構成されている。筒体75は、坩堝22から引き上げられる単結晶1の長さ分伸縮可能であり、具体的には、その伸縮幅は1〜2mm程度である。
【0048】
固定環751は、本体部41の下面に気密を保つように固定されており、固定環752は気密容器2の開口部21に気密を保つように固定されている。固定環751には内部に繋がる細孔753が設けられている。この細孔753は配管74に接続されている。固定環751は、z方向視円環状に形成されており、その内径は固定環711の内径と一致しているのが望ましい。
【0049】
本実施形態では、台部51には引上軸3だけでなく筒体75を挿通させる開口が設けられている。
【0050】
このような構成においても、筒体71,75の内圧は機密容器2の内圧と等しくなっている。このため、大気圧と気密容器2内の気圧との差が軸支持部4に及ぼす力を相殺することができ、ロードセル541に予期せぬ力がかかるのを防ぎ、より正確に単結晶1の重量を測定することができる。
【0051】
このような単結晶引上装置A2は、たとえば、比較的短い単結晶1を引き上げる際に有用である。
【0052】
図3には、本発明の第3の実施形態に基づく坩堝支持装置を示している。図3に示す坩堝支持装置A3は、たとえば上述した単結晶引上装置A1,A2と併用されるものである。図3に示す坩堝支持装置A3は、気密容器2内に設置された坩堝22の重量を測定しつつ支持するためのものである。坩堝支持装置A3は、支持軸3’、軸支持部4’、支持体5’、駆動機構6’、筒体76,77、および、配管74’を備えている。この坩堝支持装置A3は、たとえば、基柱に固定されている。
【0053】
本実施形態における気密容器2は、単結晶引上装置A1における気密容器2の構成に加え、坩堝22を支持するための支持軸3’を通すための開口部24を備えている。なお、図3では、引上軸3に支持された種結晶13を坩堝22に浸す前の状態を示している。種結晶13はたとえばサファイア単結晶である。
【0054】
支持軸3’は、坩堝22を支持するためのものであり、z方向における下端部にフランジ32が設けられている。このフランジ32は、たとえばネジにより、軸支持部4’に固定されている。
【0055】
軸支持部4’は、z方向に対して直交する板面を有する板状に形成された本体部44と、本体部44からz方向に突出する連結部45と、連結部45の下端からx方向に突出する被支持部46とを備えている。本体部44は、支持軸3’を挿通させる貫通孔を有しており、z方向下面がフランジ32のz方向上面に当接している。連結部45は、本体部44のx方向における図3中左端と、被支持部46の図3中左端とを繋ぎ合わせるように形成された板状あるいは棒状の部材である。被支持部46は、本体部44と平行な板状に形成されている。
【0056】
支持体5’は、駆動機構6’に連結された台部55、台部55からz方向に突出する支柱56、支柱56の図3中下端から延出する延出部57、および、軸支持部4’を支持する支持部58を備えている。台部55には、支持軸3’を通すための開口が形成されている。台部55は駆動機構6’の動作に従いz方向に上下する。支柱56のz方向における上端は台部55に固定されており、支柱56は台部55と一体となって上下に移動する。延出部57は、本体部44と対向する板状に形成されている。延出部57には、z方向に貫通する細孔571が形成されている。支持部58は、本体部44と対向する板状に形成されており、その下面にはロードセル581が設けられている。支持部58は、ロードセル581を介して被支持部46を保持している。ロードセル581は、本発明における重量検出手段であり、吊り下げている本体部44にかかる重量を随時測定する。ロードセル581が測定した重量から、図示しない演算手段は坩堝22の重量を算出し、さらに坩堝22内に残留しているアルミナの量を算出することができる。
【0057】
駆動機構6’は、たとえばサーボモータによって回転させられるスクリューシャフトを有するものであり、スクリューシャフトの回転に伴ってz方向に上下する可動部62を備えている。可動部62は支持体5’に連結されている。なお、坩堝22を上下に移動させる必要が無い場合には、駆動機構6’を用いずに支持体5’を直接に基柱に固定しても構わない。
【0058】
筒体76は、たとえばベローズであり、延出部57と被支持部46との間に設けられている。筒体76のz方向上端には固定環761が設けられており、被支持部46の下面に気密を保つように固定されている。筒体76のz方向下端には固定環762が設けられており、延出部57の上面に気密を保つように固定されている。この筒体76は、固定環761,762の間の部分が上下に伸縮可能に構成されている。なお、筒体76は、ロードセル581がz方向に変形する長さ分だけ伸縮可能であればよく、具体的には、その伸縮幅は1〜2mm程度である。
【0059】
筒体76の内側の空間は外気から遮断されており、気密容器2の内部空間と同じ気圧となる。
【0060】
筒体77は、たとえばベローズであり、支持軸3’を囲むよう気密容器2と本体部44との間に設けられている。筒体77のz方向上端には固定環771が設けられており、下端には固定環772が設けられている。固定環771は、気密容器2内部の気密を保つように開口部24の外側に固定されている。固定環772は、本体部44の貫通孔を囲み気密を保つように本体部44に固定されている。筒体77は、固定環771,772の間の部分が上下に伸縮可能に構成されている。なお、筒体77の伸縮幅は、駆動機構6’が上下動する長さに応じて定められる。駆動機構6’を用いずに支持体5’を直接基柱に固定する場合には、ロードセル581がz方向に変形する長さ分だけ伸縮可能であればよい。
【0061】
固定環761,762,771,772は、いずれもz方向視円環状であり、その内径は一致しているのが望ましい。
【0062】
固定環772には、内部に繋がる細孔773が設けられている。この細孔773は、配管74’に接続されている。
【0063】
配管74’は、細孔773と細孔571との間を繋ぐように設けられている。この配管74’により、筒体76の内側の気圧は、筒体77の内側の空間と同じ、すなわち、気密容器2内の気圧と同じとなる。
【0064】
次に、本実施形態の坩堝支持装置A3の作用について説明する。
【0065】
このような坩堝支持装置A3においては、軸支持部4’の上端には筒体77が、軸支持部4’の下端には筒体76が取り付けられており、筒体76,77の内圧が同一となっている。本実施形態では、筒体76,77の内圧は気密容器2内の気圧と同じであり、大気圧に比べて小さくなっている。このため、被支持部46には、筒体76の内側の空間との接触面積に、大気圧と気密容器2内の気圧との差をかけただけの力がz方向上方に向けて加わることになる。逆に、本体部44には、筒体77の内側の空間との接触面積に、大気圧と気密容器2内の気圧との差をかけただけの力がz方向下方に向けて加わることになる。本実施形態では、固定環761,762,771,772は同じ内径を有するため、これらの上下にかかる力は等しい大きさのものとなる。従って、本発明によれば、大気圧と気密容器2内の気圧との差が軸支持部4’に及ぼす力を相殺することができ、ロードセル581に予期せぬ力がかかるのを防ぎ、より正確に坩堝22の重量を測定することができる。本発明は、気密容器2内の気圧が変動する場合には特に有用である。
【0066】
このような坩堝支持装置A3を用いると、坩堝22の重量を正確に測定することができるため、坩堝22内に残留する材料の量をより正確に算出することができる。このため、坩堝22内の材料の量が想定外のタイミングで足りなくなることがなく、円滑に単結晶の育成を進めることができる。
【0067】
図4には、本発明の第4の実施形態に基づく坩堝支持装置を示している。図4に示す坩堝支持装置A4は、筒体77のかわりに筒体78,79が設けられており、その他の主たる構成は坩堝支持装置A3と同様である。以下、坩堝支持装置A4の坩堝支持装置A3との異なる部分について説明を行う。
【0068】
本実施形態では、気密容器2内でシリコン単結晶を育成する場合を例示する。坩堝22はたとえば石英製であり、シリコン原料融液が充填される。引上軸3に取り付けられる種結晶13はシリコンである。なお、引上軸3を引き上げるための装置として単結晶引上装置A1,A2を用いても構わない。
【0069】
筒体78は、たとえばベローズであり、支持軸3’を囲むように本体部44と台部55の間に設けられている。筒体78のz方向上端には固定環781が設けられており、台部55の開口を囲み気密を保つように固定されている。筒体78のz方向下端には固定環782が設けられており、本体部44の上面に気密を保つように固定されている。この筒体78は、固定環781,782の間の部分が上下に伸縮可能に構成されている。なお、筒体78は、ロードセル581がz方向に変形する長さ分だけ伸縮可能であればよく、具体的には、その伸縮幅は0.1mm程度である。
【0070】
筒体79は、たとえばベローズであり、支持軸3’を囲むように気密容器2と台部55との間に設けられている。筒体79は、z方向における上下に固定環791,792を有しており、固定環791,792の間の部分が上下に伸縮可能に構成されている。なお、筒体79の伸縮幅は、駆動機構6’が上下動する長さに応じて定められる。
【0071】
固定環791は、気密容器2の開口部24に気密を保つように固定されており、固定環792は台部55の上面に気密を保つように固定されている。固定環792には内部に繋がる細孔793が設けられている。この細孔793は配管74’に接続されている。
【0072】
本実施形態では、固定環761,762,781,782がいずれもz方向視円環状であり、その内径は一致しているのが望ましい。
【0073】
筒体78および筒体79の内側の空間は外気から遮断されており、気密容器2の内部空間と同じ気圧となる。さらに、それらの空間と筒体76の内側とは配管74’を通じて繋がっているため、筒体76の内部空間も気密容器2の内部と同じ気圧となる。
【0074】
このような構成の坩堝支持装置A4は、坩堝支持装置A3と同様に、軸支持部4’にかかる外気からの圧力を相殺することが可能であり、ロードセル581に予期せぬ力がかかるのを防ぎ、より正確に坩堝22の重量を測定することができる。
【0075】
本実施形態の構成によると、駆動機構6’がz方向に移動する場合には筒体79が変形する。筒体79の変形よる力は台部55に掛かり、軸支持部4’には掛からない。このため、ロードセル581は駆動機構6’を上下させた場合にも正確に坩堝22の重量を測定することができる。
【0076】
本発明の範囲は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る単結晶引上装置および坩堝支持装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。たとえば、上述した単結晶引上装置A1,A2および坩堝支持装置A3では、サファイアの単結晶を成長させる場合を示しているが、シリコンなどの単結晶を成長させる装置においても本発明は利用可能である。また、坩堝支持装置A4ではシリコン単結晶を成長させる場合を示しているが、サファイアなどの他の単結晶を成長させる場合にも利用可能である。
【0077】
また、図1および図2においては、簡略化のためにロードセル541を単体しか示していないが、ロードセルは支持部54上に何個配置されていても構わない。なお、図3および図4におけるロードセル581についても同様である。
【0078】
さらに、上述した実施形態では、連結部42が本体部41から起立するように形成されているが、連結部42が本体部41から水平に延びていても構わない。この場合、被支持部43が本体部41と同じ高さ位置となることも有り得る。このとき、延出部53および支持部54をz方向視において本体部41と重ならない位置に形成することで、好ましく被支持部43を支持部54で支持することが可能である。このような構成は、たとえば支持体5のz方向長さを短縮したいときなどに有効である。
【0079】
またさらに、坩堝支持装置A3,A4においては、種結晶13を坩堝22に浸すことにより単結晶を育成する場合を示しているが、本発明にかかる坩堝支持装置はこの場合に限定されず、坩堝を気密容器内で用いる構成であれば利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
A1,A2 単結晶引上装置
A3,A4 坩堝支持装置
x 方向
z (軸)方向
1 単結晶
11 首部
12 直胴部
13 種結晶
2 気密容器
21,24 開口部
22 坩堝
3 引上軸
3’ 支持軸
31 太径部
32 フランジ
4,4’ 軸支持部
41,44 本体部
42,45 連結部
43,46 被支持部
5,5’ 支持体
51,55 台部
52,56 支柱
53,57 延出部
531,571 細孔
54,58 支持部
541,581 ロードセル(重量検出手段)
6,6’ 駆動機構
61,62 可動部
71,76 (第1の)筒体
711,712,761,762 固定環
72,78 (第2の)筒体
721,722,781,782 固定環
73,79 (第3の)筒体
731,732,791,792 固定環
733,793 細孔
74,74’ 配管
75,77 (第2の)筒体
751,752,771,772 固定環
753,773 細孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密容器と、
上記気密容器内で育成された単結晶を引き上げる引上軸と、
上記引上軸を支持する軸支持部と、
上記軸支持部にかかる重量を検出する重量検出手段を具備し、上記軸支持部を支持する支持体と、
を備えており、
上記支持体を上記引上軸の軸方向に沿って移動させることにより上記単結晶の引き上げを行う単結晶引上装置であって、
上記軸支持部は、上記引上軸を支持する本体部と、上記本体部と連結された被支持部とを具備しており、
上記支持体は、上記被支持部を支持する支持部と、上記被支持部よりも上記軸方向上方に配置された延出部とを具備しており、
上記延出部と上記被支持部との間に設けられ、上記軸方向に伸縮可能な第1の筒体と、
上記引上軸を囲むように構成され、上記軸方向に伸縮可能であり、上記軸方向における上端が上記本体部に固定された第2の筒体と、
上記第1の筒体と上記第2の筒体とを連結する配管と、を備えていることを特徴とする、単結晶引上装置。
【請求項2】
上記第1の筒体は、上記被支持部に固定される第1の固定環を有しており、
上記第2の筒体は、上記本体部に固定される第2の固定環を有しており、
上記第1と第2の固定環の内径が同一である、請求項1に記載の単結晶引上装置。
【請求項3】
上記支持体は、上記引上軸を挿通させる開口を有する台部を具備しており、
上記第2の筒体の上記軸方向における下端が上記台部に固定されており、
上記台部と上記気密容器との間に設けられており、かつ上記引上軸を囲むように構成された第3の筒体を備えている、請求項1または2に記載の単結晶引上装置。
【請求項4】
上記配管は、上記延出部と上記第2の固定環とを繋ぐように設けられている、請求項2に記載の単結晶引上装置。
【請求項5】
上記第3の筒体は、上記台部に固定される第3の固定環を有しており、
上記配管は、上記延出部と上記第3の固定環とを繋ぐように設けられている、請求項3に記載の単結晶引上装置。
【請求項6】
上記第1の筒体は、上記軸方向視において上記引上軸と重なる位置に配置されている、請求項1ないし5のいずれかに記載の単結晶引上装置。
【請求項7】
気密容器と、
上記気密容器内に収容された坩堝と、
上記坩堝を支持する支持軸と、
上記支持軸を支持する軸支持部と、
上記軸支持部にかかる重量を検出する重量検出手段を具備し、上記軸支持部を支持する支持体と、
を備えた坩堝支持装置であって、
上記軸支持部は、上記支持軸を支持する本体部と、上記本体部と連結された被支持部とを具備しており、
上記支持体は、上記被支持部を支持する支持部と、上記被支持部よりも上記軸方向下方に配置された延出部とを具備しており、
上記延出部と上記被支持部との間に設けられ、上記軸方向に伸縮可能な第1の筒体と、
上記支持軸を囲むように構成され、上記軸方向に伸縮可能であり、上記軸方向における下端が上記本体部に固定された第2の筒体と、
上記第1の筒体と上記第2の筒体とを連結する配管と、を備えていることを特徴とする、坩堝支持装置。
【請求項8】
上記第1の筒体は、上記被支持部に固定される第1の固定環を有しており、
上記第2の筒体は、上記本体部に固定される第2の固定環を有しており、
上記第1と第2の固定環の内径が同一である、請求項7に記載の坩堝支持装置。
【請求項9】
上記支持体は、上記支持軸を挿通させる開口を有する台部を具備しており、
上記第2の筒体の上記軸方向における上端が上記台部に固定されており、
上記台部と上記気密容器との間に設けられており、かつ上記支持軸を囲むように構成された第3の筒体を備えている、請求項7または8に記載の坩堝支持装置。
【請求項10】
上記配管は、上記延出部と上記第2の固定環とを繋ぐように設けられている、請求項8に記載の坩堝支持装置。
【請求項11】
上記第3の筒体は、上記台部に固定される第3の固定環を有しており、
上記配管は、上記延出部と上記第3の固定環とを繋ぐように設けられている、請求項9に記載の坩堝支持装置。
【請求項12】
上記第1の筒体は、上記軸方向視において上記支持軸と重なる位置に配置されている、請求項7ないし11のいずれかに記載の坩堝支持装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−82087(P2012−82087A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228133(P2010−228133)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000153672)株式会社住友金属ファインテック (35)
【Fターム(参考)】