説明

単結晶製造装置および単結晶の製造方法

【課題】監視窓の窓ガラスを湯跳びから保護することができる単結晶製造装置および単結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、原料融液3を収容するルツボ4と、前記原料融液3を加熱するヒーター6と、該ヒーター6と前記ルツボ4を格納するチャンバー2を具備し、該チャンバー2に、チャンバー2内部を監視するための監視窓11が備えられたチョクラルスキー法による単結晶製造装置1であって、前記監視窓11は、外気と遮断するため窓ガラス12が嵌め込まれているとともに、該窓ガラス12のチャンバー2内の内側に前記窓ガラス12を保護する遮蔽板16が開閉可能に備えられているものである単結晶製造装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルツボ中の原料融液からチョクラルスキー(CZ)法により単結晶を製造する際に用いられ、チャンバー内部を監視するための監視窓を備えた単結晶製造装置およびこれを用いた単結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CZ法による単結晶製造において、原料であるシリコン多結晶塊は、チャンバー内部に設けられた石英ルツボ内に充填され、さらに石英ルツボを黒鉛ルツボ内にセットし(これらをまとめてルツボという)、ルツボ外周に配置された黒鉛ヒータからの加熱によって溶融される。このようにして溶融された融液に種結晶を浸しながら回転して引上げることで、単結晶を成長させ、柱状のシリコン単結晶が製造される。
【0003】
この単結晶の引上げにおいては、例えば特許文献1に記載のような監視窓を介して、成長中の単結晶の直径やチャンバー内部の様子等を確認しながら作業が進められる。
【0004】
しかしながら、作業中に監視窓の窓ガラスに汚れや割れが生じることがあり、チャンバー内部の確認等を行いにくくなることがあった。また、この場合、チャンバー内部から窓ガラスを透過する光量が変化するため、単結晶の直径検出に必要なパラメータに影響を及ぼしてしまい、直径制御等が困難となり、操業上問題となることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−194797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが上記の監視窓の窓ガラスの問題について調査を行ったところ、主に原料融液中に生じる原料融液(シリコン)のルツボ内からの跳び出し(湯跳び)が原因であることがわかった。このようにルツボから飛び出したシリコンは単結晶製造装置内の監視窓やその他いろいろな場所に付着し問題を招く。特に監視窓の窓ガラスに関しては、上述した汚れや割れを引き起こしてしまう。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、監視窓の窓ガラスを湯跳びから保護することができる単結晶製造装置および単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも、原料融液を収容するルツボと、前記原料融液を加熱するヒーターと、該ヒーターと前記ルツボを格納するチャンバーを具備し、該チャンバーに、チャンバー内部を監視するための監視窓が備えられたチョクラルスキー法による単結晶製造装置であって、前記監視窓は、外気と遮断するため窓ガラスが嵌め込まれているとともに、該窓ガラスのチャンバー内の内側に前記窓ガラスを保護する遮蔽板が開閉可能に備えられているものであることを特徴とする単結晶製造装置を提供する。
【0009】
このような単結晶製造装置であれば、監視窓に嵌め込まれた窓ガラスのチャンバー内の内側に遮蔽板が備えられているので、ルツボから原料融液が湯跳びしても、遮蔽板で簡単に防ぐことができ、窓ガラスを湯跳びした原料融液から保護することが可能である。
したがって、従来のように湯跳びした原料融液によって窓ガラスが汚れたり割れたりするのを防ぎ、その結果、十分な視野を確保することができ、単結晶の育成時、直径検出等の作業の妨げになるのを防ぐことができる。
【0010】
さらには、この遮蔽板は開閉可能に備えられているので、状況に応じて遮蔽板を開閉動することが可能である。
例えば、原料溶融中は遮蔽板を閉じて、上記のように湯跳びした原料融液が窓ガラスまで達するのを防ぐことができるし、また、遮蔽板を開けて、チャンバー内部の監視や単結晶の直径検出等を行うにあたって必要な視野を得ることができる。
【0011】
このとき、前記遮蔽板は石英材からなるものとすることができる。
このようなものであれば、遮蔽板が閉じられた状態であっても、窓ガラス及び遮蔽板を介してチャンバー内部の様子を監視することができる。しかも同時に窓ガラスへの湯跳びを防ぐことができる。
【0012】
また、前記遮蔽板は、一端に取り付けられた軸棒の自転により回転させる回転方式か、遮蔽板自体のスライドによるシャッター方式か、遮蔽板の一面に取り付けられたワイヤーの弛張により回転させるワイヤー方式のいずれかによって開閉動されるものとすることができる。
これらの方式であれば、簡便に遮蔽板を開閉動することができる。
【0013】
そして、本発明は、このような単結晶製造装置を用い、前記遮蔽板を閉じたまま、少なくとも原料を溶融する工程を行い、前記遮蔽板を開けて、前記監視窓を介して単結晶の直径を監視しつつ原料融液から単結晶を育成する工程を行うことを特徴とする単結晶の製造方法を提供する。
【0014】
このような単結晶の製造方法であれば、原料を溶融する工程など湯跳びが起こる可能性がある工程において、たとえ原料融液がルツボから湯跳びしても、閉じたままの遮蔽板によって、湯跳びした原料融液が監視窓の窓ガラスにまで達して付着し、汚れや割れが発生するのを防ぐことができる。したがって、その後の単結晶を育成する工程では、遮蔽板を開けて、汚れ、割れのない窓ガラスから、十分な視野を確保しつつ単結晶の直径を監視しながら所望の単結晶を育成することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、遮蔽板によって、ルツボから湯跳びした原料融液が監視窓の窓ガラスにまで達して付着するのを防止することができ、窓ガラスの汚れや割れの発生を簡単に防ぐことが可能である。
さらには、遮蔽板を状況に応じて開閉動させる、すなわち、原料溶融工程など湯跳びが起こる可能性がある工程では遮蔽板を閉じて湯跳びから窓ガラスを保護し、結晶成長工程では遮蔽板を開けて直径検出に必要な視野を十分に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の単結晶製造装置の一例を示す概略図である。
【図2】遮蔽板自体((A)上面図、(B)下面図、(C)断面図)の一例を示す概略図である。
【図3】遮蔽板、窓ガラスをはずしたときの監視窓((A)上面図、(B)断面図)の一例を示す概略図である。
【図4】回転式の遮蔽板を備えた監視窓((A)上面図、(B)断面図)の一例を示す概略図である。
【図5】シャッター方式の遮蔽板を備えた監視窓の一例を示す。
【図6】(A)遮蔽板自体、(B)ワイヤー方式の遮蔽板を備えた監視窓の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
従来のCZ単結晶製造装置では、ルツボから監視窓への原料融液の湯跳び対策がなかったため、湯跳びした原料融液が監視窓の窓ガラスに付着して汚染されたり、熱衝撃による割れが発生する恐れがあった。
【0018】
特には、直径検出用の監視窓が操業時に汚れた場合、視野欠けや、窓ガラスを透過する光量が変化し直径制御用のパラメータの閾値変化等を招き、操業上大きな問題となる。時には操業を継続できない場合もあった。
【0019】
そこで本発明者らは、監視窓の窓ガラスを湯跳びから保護するために、監視窓の窓ガラスに対して、チャンバー内の内側に遮蔽板を備えることに想到した。このような遮蔽板を備えた単結晶製造装置であれば、遮蔽板によって湯跳びした原料融液が窓ガラスに達するのを簡単に防止することができる。その結果、上記の操業上の問題が生じるのを防ぐことができる。
【0020】
また、遮蔽板が開閉可能なものとすることによって、操業中、必要に応じて遮蔽板を開閉動することができる。例えば原料の溶融工程では湯跳び防止のために遮蔽板を閉じ、結晶育成工程では遮蔽板を開けて十分な視野を確保し、直径検出をより正確に行うことができる。
【0021】
これらのことを見出し、また、これらによって本発明者らは所望の単結晶をより効率良く、より正確に得ることが可能になることを見出して本発明を完成させた。
【0022】
以下、本発明の単結晶製造装置およびこれを用いた単結晶の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、本発明の単結晶製造装置の一例を示す概略図である。引上げる単結晶としては、例えばシリコン単結晶が挙げられる。
本発明の単結晶製造装置1は、チャンバー2内に、原料融液(シリコン融液)3を収容するルツボ(石英ルツボおよびこれを保護する黒鉛ルツボ)4が支持軸5で支持されており、ルツボ駆動機構(不図示)により上下動及び回転動が自在に行えるようになっている。
【0023】
ルツボ4の外側には抵抗加熱式のヒーター6が配設され、ヒーター6の外側には断熱材7が配設されており、これらはそれぞれルツボ4と同心円状に配設されている。また、ルツボ4の中心軸上にはワイヤー8の下端部にシードチャック9を介して種結晶10が取り付けられている。
【0024】
また、チャンバー2には監視窓11が備えられている。この監視窓11からチャンバー2の内部を監視することが可能である。特には、育成中の単結晶13を観察することができるように設けられている。この監視窓11は、図1に示すように、例えば筒型の窓枠を有するものとすることができ、その端には外気と遮断するための窓ガラス12が嵌め込まれている。
【0025】
そして、炉外には単結晶13を監視するカメラ14や、該カメラ14につながれた直径制御装置15が設けられている。カメラ14によって単結晶13を観察し、得られた観察データを基にして、直径制御装置15によってワイヤー8の引上げや支持軸5によるルツボ4の回転・上下動、及びヒータ供給電力等が調節され、単結晶13の直径を制御することができる。
【0026】
監視窓11の数は特に限定されず、カメラ14用のものの他、例えば、人が目視によりチャンバー内や単結晶の観察ができるように別途設けることができる。必要に応じてチャンバー2に複数設けることが可能である。
【0027】
また、監視窓11には遮蔽板16が備えられている。この遮蔽板16は窓ガラス12を湯跳びした原料融液から窓ガラス12を保護するためのものであり、扉のように開閉可能に備えられている。チャンバー内に備えられ、窓ガラス12よりもチャンバーの内側に位置している。例えば図1に示すように筒型の窓枠の内部に設けることができる。この遮蔽板16の開閉動によって、チャンバー内部(ルツボ4内の原料融液3)から窓ガラス12への経路(窓ガラス12への湯跳びの経路)を開け閉めすることができ、窓ガラス12を保護することができる。
【0028】
なお、遮蔽板16の材料としては例えば石英材があげられる。このようなものであれば、遮蔽板16を閉じた状態であってもチャンバー内部を監視することができる。当然、これに限定されず、耐熱性、発塵性等を勘案してその都度適切なものを用いることができる。
【0029】
ここで、監視窓11に備えられた遮蔽板16について、いくつか例を挙げて、その構造をより具体的に説明する。なお、本発明は、後述する例に限定されるものではなく、開閉可能で、湯跳びした原料融液から窓ガラス12を保護できるものであれば良い。
【0030】
(回転方式の遮蔽板)
まず、一端に軸棒が取り付けられており、その軸棒を自転させることによって遮蔽板全体を回転させる回転方式で開閉動が行われる場合の機構について説明する。
図2に遮蔽板自体((A)上面図、(B)下面図、(C)断面図)、図3に遮蔽板、窓ガラスをはずしたときの監視窓((A)上面図、(B)断面図)、図4に回転式の遮蔽板を備えた監視窓((A)上面図、(B)断面図)の一例を示す。
【0031】
図2(A)−(C)に示すように、遮蔽板16である石英板の一端に軸棒17(例えばSUS等からなる)が一体となって取り付けられており、軸棒17を回転(自転)させることによって遮蔽板16を回転させることができる。遮蔽板16の軸棒17が取り付けられた側は、後述する載置台上で回転可能なように丸みを帯びている。
【0032】
図3(A)(B)に示すように、窓枠18の内側には、向かい合って一対の載置台19が設けられている。一方の載置台には窪みが形成されており、遮蔽板16を載置した際には、上記丸みを帯びた箇所が自転可能に嵌まるようになっている。また、他方の載置台は、遮蔽板16が閉じた場合に、丸みを帯びた箇所の反対側の縁を支えるためのものである。
【0033】
図4(A)(B)に示すように、図3の監視窓11に図2の遮蔽板16を備えた場合、軸棒17の自転によって遮蔽板16の全体を載置台19上で回転させることができる。これによって、窓枠18の内側(窓ガラス12への湯跳びの経路)を閉じたり開けたりすることが可能である。
なお、ハンドル20を軸棒17に設けておくと回転させやすい。
【0034】
(シャッター方式の遮蔽板)
次に、遮蔽板をスライドさせるシャッター方式で開閉動が行われる場合の機構について説明する。
図5にシャッター方式の遮蔽板を備えた監視窓の一例を示す。
遮蔽板16には、その一端から伸びるように軸棒17’が取り付けられている。一方、窓枠18の側面には通路21が設けられている。通路21はさらに蛇腹部材につながっている。蛇腹部材の端部には平板部材が取り付けられており、軸棒17’は、遮蔽板16をスライドさせやすいように平板部材とながっている。
【0035】
そして、遮蔽板16は通路21内に配設されており、平板部材を押し引きすることで、軸棒17’を介して窓枠18の内側と通路21との間をスライドして往復移動することが可能である。
平板部材を押して蛇腹を縮めることで、遮蔽板16が窓枠18の内側にスライドさせることができ、シャッターのように窓ガラス12への湯跳びの経路を閉じることができる。一方、平板部材を引いて蛇腹を伸ばすことで、通路21内に遮蔽板16をスライドさせることができ、上記経路を開けることができる。
【0036】
(ワイヤー方式の遮蔽板)
また、遮蔽板の一面にワイヤーを取り付け、該ワイヤーを弛張させることで遮蔽板全体を回転させるワイヤー方式で開閉動が行われる場合の機構について説明する。
図6(A)に遮蔽板自体、図6(B)にワイヤー方式の遮蔽板を備えた監視窓の一例を示す。
図6(A)に示すように遮蔽板16は軸棒17’’が嵌合された軸受け22を両側に有している。
【0037】
そして、図6(B)に示すように、載置台19’に嵌められた軸棒17’’を中心として遮蔽板16が回転可能になっている。遮蔽板16の一面(窓ガラス12側)にはタングステンワイヤーが取り付けられており、炉外に配置されたワイヤーを巻き取る装置(あるいはワイヤーをスライドさせる装置)によって、ワイヤーを引っ張ったり緩めたりすることができる。同時に、このワイヤーの弛張によって、ワイヤーが取り付けられた遮蔽板16を回転させることができ、窓ガラス12への湯跳びの経路の開閉動を自在に行うことが可能である。閉じたときは、他方の載置台19’上へ遮蔽板16の一端が載る。
【0038】
以上のような本発明の単結晶製造装置1であれば、遮蔽板16によって、ルツボ4から湯跳びした原料融液が窓ガラス12まで達するのを防止することができる。したがって、湯跳びした原料融液による窓ガラス12の汚れや割れが生じるのを防ぐことができる。このように窓ガラス12への悪影響を妨げることができるため、特には、画像処理装置等を用いて、窓ガラス12を通して、育成する単結晶13の直径の検出、湯面やメニスカスリング、その他の明るさや色を抽出してデータ処理し、単結晶の製造条件を制御している場合に有効である。
【0039】
次に、上記単結晶製造装置1を用いた本発明の単結晶の製造方法について説明する。なお、ここでは図2−4に示す回転式の遮蔽板を用いた例を挙げて説明するが、特にこれに限定されるわけではない。
まず、原料をルツボ4内に投入し、ヒーター6を用いて原料を溶融する。この原料の溶融工程においては、すでに溶けた原料融液に未溶融の原料塊が落下する等により、原料融液が湯跳びすることがあり、予め軸棒17を自転させて遮蔽板16を閉じた状態にしておく。すなわち、窓ガラス12への湯跳びの経路を閉じておく。
【0040】
これによって、湯跳びが発生した場合であっても、湯跳びした原料融液は遮蔽板16に付着するだけで、さらに奥の窓ガラス12まで達するのを防止することができる。すなわち、窓ガラス12が湯跳びして付着した原料融液により汚れてしまったり、あるいはその熱によって割れが生じるのを防ぐことができる。
【0041】
次に、遮蔽板16を開けて、シードチャック9に取り付けられた種結晶10を原料融液3に浸漬し、引上げ機構により種結晶10を所望の方向に回転させながら静かにワイヤー8を巻き上げ、種結晶10の先端部に単結晶13を成長させる。
【0042】
このとき、所望の直径と結晶品質を得るため、融液面の高さが常に一定位置に保たれるように結晶の成長に合わせてルツボ4を原料減少による融液面の下降分を補填するように上昇させたり、ワイヤー8による引き上げ速度およびヒーター6による温度を調節する。
【0043】
特には、カメラ14を用いて監視窓11を介して単結晶13を監視し、カメラ14で得られたデータから直径制御装置15等により、単結晶13の直径が所望の値になるように、ワイヤ8の引上げ速度やルツボ4の支持軸5の上下動、ヒーター6のパワーを調節することにより制御することができる。
【0044】
ここで、監視窓11の窓ガラス12は前記原料溶融工程で遮蔽板16を閉じていたために汚れ等生じておらず、また、単結晶育成工程に入る段階では遮蔽板16を開けることで、遮蔽板16が例え汚れたとしても邪魔にならず、汚れ等が生じていない窓ガラス12を通してカメラ14により単結晶13を観察することが可能である。
【0045】
したがって、単結晶13等、チャンバー内部の状況をカメラ14を通して正確に得ることができ、この正確なデータに基づいて単結晶13の製造条件を制御することができるため、育成する単結晶13を所望の品質通りに製造することが可能である。しかも、遮蔽板16の開閉の制御だけで良いので実に簡便である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例)
図1に示す本発明の単結晶製造装置1を用い、本発明の単結晶製造方法によりシリコン単結晶を製造した。なお、遮蔽板16は回転式のものを用いた。
まず、遮蔽板16を閉じ、ルツボ4中にシリコン原料を投入してヒーター6によって溶融した。そして、溶融後に遮蔽板16を開き、監視窓11の窓ガラス12を介してカメラ14によりチャンバー内部、シリコン単結晶を監視しつつ、直径を制御してシリコン単結晶を製造した。
【0047】
このようなシリコン単結晶の製造を50バッチ行ったところ、原料の溶融工程中に湯跳びした原料融液の付着によって遮蔽板16が汚れたものの、窓ガラス12が汚れたり割れたりすることはなかった。すなわち、いずれのバッチにおいても、遮蔽板16によって窓ガラス12を保護することができた。このため、シリコン単結晶を育成する工程では、窓ガラス12において視野欠けや光量の変化が生ずることもなく、直径の制御等、効率よく正確に作業を行うことができ、所望のシリコン単結晶を得ることができた。
【0048】
(比較例)
遮蔽板を備えていない従来の単結晶製造装置を用いてシリコン単結晶を製造した。なお、遮蔽板の開閉動以外は実施例1と同様の方法である。
【0049】
本発明のような窓ガラスを保護する遮蔽板がなく、10バッチ中3バッチにおいて、湯跳びした原料融液が窓ガラス12に付着して汚れが生じてしまった。この汚れにより直径の検出に影響が生じてしまったため、カメラ14の配置や設定の調整が必要となった。
【0050】
以上のように、本発明の単結晶製造装置や単結晶の製造方法によって、特に原料の溶融工程における湯跳びした原料融液から監視窓の窓ガラスを保護することができる。それによって、付着した原料融液を原因とする窓ガラスの汚れや割れを防ぐことができる。そして該窓ガラスを通して正確に、効率良くチャンバー内部の情報を得ることができ、所望の品質の単結晶を製造することが可能である。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0052】
1…単結晶製造装置、 2…チャンバー、 3…原料融液、 4…ルツボ、
5…支持軸、 6…ヒーター、 7…断熱材、 8…ワイヤー、
9…シードチャック、 10…種結晶、 11…監視窓、 12…窓ガラス、
13…単結晶、 14…カメラ、 15…直径制御装置、 16…遮蔽板、
17、17’、17’’…軸棒、 18…窓枠、 19、19’…載置台、
20…ハンドル、 21…通路、 22…軸受け。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、原料融液を収容するルツボと、前記原料融液を加熱するヒーターと、該ヒーターと前記ルツボを格納するチャンバーを具備し、該チャンバーに、チャンバー内部を監視するための監視窓が備えられたチョクラルスキー法による単結晶製造装置であって、
前記監視窓は、外気と遮断するため窓ガラスが嵌め込まれているとともに、該窓ガラスのチャンバー内の内側に前記窓ガラスを保護する遮蔽板が開閉可能に備えられているものであることを特徴とする単結晶製造装置。
【請求項2】
前記遮蔽板は石英材からなるものであることを特徴とする請求項1に記載の単結晶製造装置。
【請求項3】
前記遮蔽板は、一端に取り付けられた軸棒の自転により回転させる回転方式か、遮蔽板自体のスライドによるシャッター方式か、遮蔽板の一面に取り付けられたワイヤーの弛張により回転させるワイヤー方式のいずれかによって開閉動されるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の単結晶製造装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の単結晶製造装置を用い、前記遮蔽板を閉じたまま、少なくとも原料を溶融する工程を行い、前記遮蔽板を開けて、前記監視窓を介して単結晶の直径を監視しつつ原料融液から単結晶を育成する工程を行うことを特徴とする単結晶の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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