単結晶試料における面内配向した転位線を有する結晶欠陥のX線トポグラフによる撮影方法
【課題】 基底面内転位などの、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥を、簡易な装置構成により高い分解能で撮影可能なX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法を提供する。
【解決手段】 X線源から放射されたX線を4結晶コリメータを通過させることによって、分解能に異方性がある入射X線を生成し、面内に6回対称反射または4回対称反射を有する単結晶試料について、その等価な回折面のうち、結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度がより垂直に近い回折面からのX線回折像を撮影する。さらに、4結晶コリメータを、入射X線の方向を軸として傾斜させた配置とすることによって、入射X線における発散角が小さい方向を傾斜させて単結晶試料へ入射X線を入射させ、これにより、結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における分解能が高い方向とが成す角度をさらに垂直に近づけてトポグラフ撮影を行う。
【解決手段】 X線源から放射されたX線を4結晶コリメータを通過させることによって、分解能に異方性がある入射X線を生成し、面内に6回対称反射または4回対称反射を有する単結晶試料について、その等価な回折面のうち、結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度がより垂直に近い回折面からのX線回折像を撮影する。さらに、4結晶コリメータを、入射X線の方向を軸として傾斜させた配置とすることによって、入射X線における発散角が小さい方向を傾斜させて単結晶試料へ入射X線を入射させ、これにより、結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における分解能が高い方向とが成す角度をさらに垂直に近づけてトポグラフ撮影を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線トポグラフにより単結晶試料の結晶欠陥を撮影する方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、面内に6回対称反射または4回対称反射を有する単結晶試料について、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥をX線トポグラフにより撮影する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の単結晶材料では、単結晶中に結晶転位などが存在すると材料としての特性が悪化してしまう場合が多い。このため、単結晶材料中に存在する結晶転位などの密度や分布状況を検出、観察する手法が必要である。
【0003】
このような単結晶材料は、その結晶の対称性から様々な結晶形を持つことが知られており、そのような各種の結晶形の結晶中に含まれる結晶転位を検出、観察する手法について多くの研究がなされている。
【0004】
このような単結晶材料の一つに、炭化珪素(SiC)単結晶がある。SiCは、シリコン(Si)に比べて絶縁破壊電界強度が約10倍であり、この他熱伝導率、電子移動度、バンドギャップなどにおいても優れた物性値を有する半導体であることから、従来のSi系パワー半導体素子に比べて飛躍的な性能向上を実現する半導体材料として期待されている。
【0005】
最近では、直径3インチのまでの4H−SiC、6H−SiC単結晶基板が市販されるようになり、Siの性能限界を大幅に超える各種スイッチング素子の報告が相次いでなされるなど、高性能SiC素子の開発が進められている。
【0006】
SiC単結晶を用いてパワー半導体素子を作製する場合、SiC単結晶の拡散係数がきわめて小さいために不純物を深く拡散させることが困難であることから、SiC単結晶基板上に、基板と同一の結晶型で、所定の膜厚およびドーピング濃度を有する単結晶膜をエピタキシャル成長させることが多い。具体的には、昇華法あるいは化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition:CVD)によって得られたバルク単結晶をスライスした基板の
表面に、CVD法によりエピタキシャル単結晶膜を成長させたSiC単結晶基板が使用されている。
【0007】
SiC単結晶には各種ポリタイプ(結晶多型)が存在するが、パワー半導体の開発では、絶縁破壊強度および移動度が高く、異方性が比較的小さい4H−SiCが主に使用されている。エピタキシャル成長を行う結晶面としては、(0001)Si面、(000−1)C面、(11−20)面、(1−100)面、(03−38)面などがあるが、(0001)Si面および(000−1)C面からエピタキシャル成長させる場合には、ステップフロー成長技術によりホモエピタキシャル成長させるために、これらの面を[11−2
0]方向あるいは[01−10]方向に数度傾けた結晶面が使用されることが多い。
【0008】
上記したように、SiCを用いたパワー半導体素子は各種の優れた点を有しているが、新品のSiCバイポーラ素子に通電を開始してから通電時間(積算使用時間)が増えるにしたがって、順方向電圧が増加するという問題点がある。順方向電圧の増加はSiCバイポーラ素子の信頼性を低下させ、SiCバイポーラ素子を組み込んだ電力制御装置の電力損失の増大を引き起こす。
【0009】
この通電による順方向電圧の増加は、次の理由により引き起こされると考えられており、多数の報告がされている(非特許文献1)。図17は、SiC単結晶基板と、ステップフロー成長技術によりその表面から形成したエピタキシャル膜との界面近傍を示した断面図である。同図において35は結晶面((0001)Si面)、θはオフ角であり、8度程度とされることが多い。図示したように、SiC単結晶基板31には結晶欠陥の一種である基底面内転位(basal plane dislocation)33が多数存在している。例えば、(0
001)Si面からオフ角が8度となるように傾けたSiC単結晶基板では、基板表面における基底面内転位密度は、結晶品質にもよるが典型的には102〜104個/cm2とな
る。
【0010】
この(0001)Si面と平行に延びる基底面内転位33はSiC単結晶基板31の表面上に現れ、基底面内転位33のうち数%程度はエピタキシャル成長時にn型エピタキシャル膜32aおよびp型エピタキシャル膜(またはp型注入層)32bに基底面内転位33としてそのまま伝播し、残りはスレッディングエッジ転位34(threading edge dislocation)に変換されてn型エピタキシャル膜32aおよびp型エピタキシャル膜(またはp型注入層)32bに伝播する。
【0011】
pnダイオードなどのバイポーラ素子では、n型エピタキシャル膜と、n型エピタキシャル膜とp型エピタキシャル膜との界面付近またはn型エピタキシャル膜とp型注入層との界面付近が通電時に電子と正孔が再結合する領域となるが、基底面内転位33は、通電時に発生する電子と正孔の再結合エネルギーによって積層欠陥(stacking fault)へと変換される。この積層欠陥は、三角形等の形状を有する面状の欠陥として発生する。
【0012】
基底面内転位は、1/3[11−20]のバーガースベクトルを有しているが、1/3[
10−10]と1/3[01−10]の2本のショックレー型部分転位(Shockley partial dislocation、ショックレー型不完全部分転位とも呼ばれている)に分解した状態で存在
し、これらの部分転位に挟まれる微小領域は積層欠陥を形成する。この積層欠陥はショックレー型積層欠陥と呼ばれている。これらの部分転位のうち一方が電子と正孔との再結合エネルギーによって移動することで積層欠陥面積が拡大すると考えられている。
【0013】
この面状の積層欠陥の面積は、通電時間の増加に伴って拡大する。積層欠陥の領域は、通電時に高抵抗領域として作用するため、積層欠陥の面積拡大に伴ってバイポーラ素子の順方向電圧が増加することになる。
【0014】
このため、予めSiCエピタキシャル膜内における基底面内転位の位置と密度を検出する方法が求められている。従来では、水酸化カリウム(KOH)エッチングと放射光トポグラフによってSiCエピタキシャル膜内における基底面内転位の位置と密度を検出し、その評価を行っていた。
【特許文献1】特開平4−174349号公報
【非特許文献1】ジャーナル オブ アプライド フィジックス(Journal of Applied Physics) ボリューム95 No.3 2004年 1485頁〜1488頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
KOHエッチングは、SiC単結晶の結晶欠陥の評価に用いられ、簡便かつ確実な評価法として用いられている。しかし、主に、Si面のSiC単結晶に対する評価に用いられ、C面のSiC単結晶に対しては、KOHによる表面エッチング評価が困難である。
【0016】
また、KOHエッチングは破壊測定であることから、測定後の試料を素子形成などに使
用することはできない。
SiC単結晶試料の種類に関係なく測定可能であり、且つ非破壊測定が可能な観察方法として、シンクロトロン放射光を使用したトポグラフ測定が知られている。シンクロトロン放射光を使用したトポグラフでは、放射光の優れた平行度(発散が小さい)と高い強度によって、非常に分解能が高いトポグラフ測定ができる。
【0017】
しかし、放射光トポグラフは限られた大型施設でのみ測定可能であることから、簡便な方法ではなかった。
そこで、簡便な実験室タイプのX線トポグラフ装置で基底面内転位を検出する技術が求められていた。実験室タイプのX線トポグラフ装置としては従来から各種のものが知られているが(特許文献1)、このようなX線トポグラフ装置では、点光源から放射状に広がるX線を使用するX線発生装置と試料との距離が短いため、X線ビームは発散X線となる。このため、X線ビームの発散角が大きく(平行度が低く)、高い測定分解能を得ることができない。したがって、従来のこうしたX線トポグラフ装置では、結晶粒界(バウンダリー)、マイクロパイプなどの大型の欠陥は撮影可能であるが、より小さな結晶欠陥や転位についての評価は難しい。例えば、基底面内転位はコントラストが微小であるため、分解能が足りず撮影ができない。
【0018】
本発明は、基底面内転位などの、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥を、簡易な装置構成により高い分解能で撮影可能なX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法は、面内に6回対称反射を有する単結晶試料について、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥をX線トポグラフにより撮影する結晶欠陥の撮影方法であって、
X線源から放射されたX線を4結晶コリメータを通過させることによって、X線の発散方向に異方性がある入射X線を生成し、
6回対称反射の等価な回折面のうち、前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度が試料面内において30度以上となる回折面からのX線回折像を撮影することを特徴とする。
【0020】
上記の6回対称反射の等価な回折面のうち、前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度が試料面内において60度以上となる回折面からのX線回折像を撮影することが特に好ましい。
【0021】
また、上記の6回対称反射の等価な回折面のうち、前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度が試料面内において最も垂直に近くなる回折面からのX線回折像を撮影することが特に好ましい。
【0022】
上記の発明では、X線入射側に配置された4結晶コリメータによって、一方の方向に充分に発散角が小さく高い平行度をもち、分解能に異方性がある入射X線が生成される。そして、単結晶試料の6回対称軸と垂直な面内における角度配置を、60度回転する毎に現れる6つの回折面のうち、結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における発散角が小さい(分解能が高い)方向とが成す角度が試料面内において30度以上である回折面でX線が回折される配置としたので、転位線の方向と、発散角が大きく分解能が低いためにぼやける像の方向とが近接し、転位線の線幅方向のコントラストが出易くなる。
【0023】
特に、結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における発散角が小さい(分解能が高い)方向とが成す角度を試料面内において60度以上とすることで、これらが成す角度が広い
場合には観察できないSiCエピタキシャル膜等の基底面内転位が明確に観察できるようになる。
【0024】
このように上記の発明では、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥を高い分解能で撮影することができる。
また、X線源としてローター型ターゲットやX線管球を用いた簡易な構成の装置で撮影が可能であり、放射光トポグラフのように大型施設での測定が必要ではなく、実験室などの任意の場所で簡便に測定することができる。
【0025】
本発明のX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法は、面内に4回対称反射を有する単結晶試料について、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥をX線トポグラフにより撮影する結晶欠陥の撮影方法であって、
X線源から放射されたX線を4結晶コリメータを通過させることによって、分解能に異方性がある入射X線を生成し、
4回対称反射の等価な回折面のうち、前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度が試料面内において最も垂直に近くなる回折面からのX線回折像を撮影することを特徴とする。
【0026】
上記の発明では、X線入射側に配置された4結晶コリメータによって、一方の方向に充分に発散角が小さく高い平行度をもち分解能に異方性がある入射X線が生成される。そして、単結晶試料の4回対称軸と垂直な面内における角度配置を、90度回転する毎に現れる4つの回折面のうち、結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における発散角が小さい(分解能が高い)方向とが成す角度が試料面内において最も垂直になる配置とした状態でトポグラフ撮影を行うようにしたので、転位線の方向と、発散角が大きく分解能が低いためにぼやける像の方向とが近接し、転位線の線幅方向のコントラストが出易くなる。
【0027】
このように上記の発明では、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥を高い分解能で撮影することができる。
また、X線発生装置としては、ローター型ターゲットやX線管球を光源とした簡易な構成の装置で撮影が可能であり、放射光トポグラフのように大型施設での測定が必要ではなく、実験室などの任意の場所で簡便に測定することができる。
【0028】
また、X線源としてローター型ターゲットやX線管球を用いた簡易な構成の装置で撮影が可能であり、放射光トポグラフのように大型施設での測定が必要ではなく、実験室などの任意の場所で簡便に測定することができる。
【0029】
上記の発明において、前記4結晶コリメータを、前記入射X線の方向を軸として傾斜させた配置とすることによって、前記入射X線における発散角が小さい方向を傾斜させて前記単結晶試料へ前記入射X線を入射させ、これにより、前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度をさらに垂直に近くしてトポグラフ撮影を行うことが好ましい。
【0030】
6回対称反射または4回対称反射の周期性により、結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度は所定の角度に制限される。しかし上記のように、4結晶コリメータを入射X線の方向を軸として適切な角度に傾斜させた配置とすることで、結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における分解能が高い方向とが成す角度をさらに垂直に近くすることができる。
【0031】
したがって、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥をさらに高い分解能で撮影することができる。このように4結晶コリメータを入射X線の方向を軸として傾斜させるこ
とで、結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における発散角が小さい(分解能が高い)方向とを実質的に同一方向とし、最も高い分解能で撮影することも可能である。
【0032】
また、前記入射X線の方向を軸として前記4結晶コリメータと同一の角度に傾斜したスリットをX線の入射側に配置し、該スリットにX線を通過させることが好ましい。
このようにすることで、X線に起因するノイズが充分に除去されて分解能がさらに向上する。
【0033】
上記の発明は、単結晶基板の表面から成長させたエピタキシャル膜、例えば、炭化珪素エピタキシャル膜に含まれる面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥の撮影に好適である。
【0034】
転位線を有する結晶欠陥の具体例としては、基底面内転位を挙げることができる。
また、単結晶基板の表面から成長させたエピタキシャル膜を透過配置で撮影する場合、単結晶基板を裏面から研削して予めその厚さを薄くすることが好ましい。
【0035】
このようにすることで、X線が単結晶基板の内部を通過することによる、単結晶基板の厚みや単結晶基板内の欠陥に基づく分解能の低下を抑制することができ、高い分解能が得られる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥を、簡易な装置構成により高い分解能で撮影することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照しながら、実施例に基づき本発明について説明する。
[実施例1]
図1は、本実施例において用いられるX線トポグラフ装置を示した斜視図、図2は、図1のX線トポグラフ装置の正面図である。
【0038】
本実施例では、六方晶四回周期型のSiC単結晶(4H−SiC)基板の表面にステップフロー成長技術により成膜したSiCエピタキシャル膜を試料として用いている。この試料は、c軸に対して垂直な面である(0001)面を結晶面とし、<11−20>方向へ8度のオフ角で切り出したSiC単結晶基板の表面からCVDによりエピタキシャル膜をステップフロー成長させたものである。この場合、SiC単結晶基板から引き継がれた基底面内転位はステップフロー成長の進行に伴って<11−20>方向へ延びていく。
【0039】
本実施例では、図1および図2に示したX線トポグラフ装置1を用いてSiC単結晶試料11に含まれる<11−20>方向へ延びる基底面内転位を撮影する。このX線トポグラフ装置1では、X線発生装置2から放射されたX線が、X線入射側に配置された4結晶コリメータ3に入射され、一方向(Y方向)に発散角が小さい(高い平行度をもつ)入射X線5が生成される。
【0040】
図1および図2では、ゴニオメータ7に固定されたSiC単結晶試料11に対して入射するX線と回折したX線とを含む平面と、4結晶コリメータ7の内部における入射X線と回折X線とを含む平面とが一致している。(本明細書ではこの配置関係を基準とする。4結晶コリメータを回転する等によって、4結晶コリメータ7内部の入射X線と回折X線とを含む平面と、試料に対して入射するX線と回折したX線を含む平面とが一致せずに角度をもつ場合には、XY方向または4結晶コリメータを「傾斜」させると表現する)。
【0041】
X線発生装置2としては、X線源としてローター型ターゲットを備えたもの、あるいはX線管球を備えたものなどを用いることができる。充分な強度を得るためには、ローター型ターゲットを備えたものを用いることが好ましく、本実施例では18kWローターを使用している。ターゲットとしては、本実施例のように反射配置での撮影を行う場合には銅(Cu)などが用いられる。また、透過配置での撮影を行う場合には、透過力の大きい短波長のX線を発生させるモリブテン(Mo)などが用いられる。
【0042】
4結晶コリメータ3は、単結晶による反射を4回させる構造をしている。反射面としては、Si、Geなどの低指数面が利用可能であるが、本実施例では分解能と強度が特に高い入射X線が得られるSi(220)面を反射面としたものを使用している。
【0043】
4結晶コリメータ3を通過させることによって、4結晶コリメータ3から出射したX線の発散角は小さくなり平行度は向上する。但し、平行度が向上する度合いは、X線のビーム方向と垂直な面内における図1のX方向とY方向で異なる。Y方向の発散角は小さく抑えられ、平行度は、X方向のそれに比べて非常に高くなる。言い換えれば、Y方向の分解能は、X方向のそれに比べて非常に高くなる。
【0044】
ゴニオメータ7は、SiC単結晶試料11を固定し、所定の軸を中心とした回転等によりSiC単結晶試料11の配置を調節するものである。SiC単結晶試料を固定し、その配置を調節する手段としては、公知である各種の装置を使用できる。なお、本実施例のように(0001)面に対してオフ角をもつ単結晶基板を使用する場合、撮影を簡便にするために、オフ角と同一角度をもつ治具をゴニオメータに取り付けると良い。
【0045】
4結晶コリメータ3からの入射X線5は、ゴニオメータ7に固定されたSiC単結晶試料11に入射される。ブラッグ角θは、回折面の面間隔とX線の波長によって決定される。一例を挙げれば、Cuからの波長1.541ÅのX線を用いて、回折面を(11−28)面と6回対称反射について等価な面とした場合におけるブラッグ角θは52.17度である。
【0046】
SiC単結晶試料11からの回折X線6による回折像は、フィルム8に記録される。単結晶試料の結晶格子に全く乱れが含まれないのであれば、試料全面のどの場所から回折したX線も同一の強度であることから、回折像にはコントラストが現れない。しかし、単結晶中に欠陥が含まれると、その部分からのX線が乱されて回折像にコントラストが生じ、これによって面内の欠陥分布がコントラストとして記録されることになる。
【0047】
回折像を記録する媒体には、従来からX線トポグラフに使用されている各種の記録媒体が使用できるが、記録媒体としてフィルムを使用する場合、高い分解能を得るためには塗布してある感光粒子の粒子径が小さいものが好ましい。高い分解能を得るためには、特に原子核乾板を用いることが好ましい。
【0048】
トポグラフの撮影は、試料と記録媒体とを同期させて移動させながら、試料の広い面積を測定する方法(いわゆるトラバース測定)で行うことができる。後述の実施例4ならびに図15では、SiC単結晶試料11とフィルム8とを同期させながら移動させて撮影を行っている。
【0049】
トラバース測定の他に、固定位置での撮影を行い、試料と記録媒体とを同期させて数ミリ移動した後、同様に固定位置での撮影を行うことを繰り返す方法で試料全面の撮影を行ってもよい。この方法によれば、移動によってトポグラフのコントラストが消し合ってしまうことを回避できるため、良好なコントラストを得ることができる。実施例1〜3ならびに図13,14では、この方式で撮影を行っている。
【0050】
なお、図示は省略するが、SiC単結晶試料11とフィルム8との間に、これらと同期して移動するスリットを配置してもよい。スリットを設けることで、ノイズを低減させることができる。
【0051】
図1のような実験室タイプのX線トポグラフ装置において、4結晶コリメータを設置せずに撮影を行うと、分解能が低いため4H−SiC単結晶膜の基底面内転位はトポグラフ像として現れない。さらに、通常の配置である図5(a)に示した配置(図5(a)〜図5(c)において、左側は試料上面から見た図、右側は紙面に向かってX線入射側から見た図である)、すなわち入射X線方向21と、試料面12のステップフロー方向22(<
11−20>方向)とが平行である配置(厳密には、入射X線方向21の試料面上への投
影方向とステップフロー方向のなす角度が、試料面内において平行である配置であるが、入射X線が試料表面に対して水平に近い小さな角度で入射することから、上記のような表
現を使用する。)では、4結晶コリメータを設置した図1の装置を用いても、図13(a)のトポグラフ像に示したように基底面内転位は全く観察されない。
【0052】
ところが、図5(b)に示したように、試料面12をc軸を軸として60度回転させ、(11−28)反射と等価な反射面によるトポグラフ像を撮影すると、図13(b)のトポグラフ像に示したように基底面内転位が明確に観察される(なお、図13(a)と図13(b)は試料面の同一箇所において撮影したものである)。SiC単結晶膜の試料面におけるさらに広い領域を撮像したトポグラフ像を図14に示した。このように、試料面内の複数の箇所に存在する基底面内転位が明確に撮影されていることがわかる。
【0053】
上記の結果を、図3〜図5を参照しながら模式的に説明する。本来、点状の欠陥については、X線の分解能に異方性が無ければ点または丸のコントラスト像が得られると考えられる。しかし、X線の分解能に異方性があると、分解能が高い方向には像が広がらないが、分解能の低い方向には像が広がるため、欠陥は図3のように楕円状の像として観察される。したがって、図3に示したように、点状のコントラストをもつ転位は、A,B,Cのように試料面に対するX線の入射方向を変化させても、楕円の延びる方向が回転する程度で、像自体には大きな影響がない。
【0054】
しかし、<11−20>方向に延びる基底面内転位のような線状の欠陥では、分解能に異方性をもつX線の入射方向によって、現れるコントラストが異なる。X線の入射方向とステップフロー方向とが成す角度が試料面内において0度である図3のAの場合には、図5(a)にも示したように分解能が高いY方向と基底面内転位13の転位線の方向とが互いに平行になり、転位線の線幅方向の分解能が最も低い配置となる。
【0055】
これに対して、図3のAの配置からc軸を軸として60度回転させた図3のBの配置、すなわちX線の入射方向とステップフロー方向とが成す角度が試料面内において60度である場合には、図5(b)にも示したように、分解能が高いY方向と基底面内転位13の転位線の方向とが成す角度が試料面内において60度となり、転位線のコントラストが広がる方向と転位線の方向が近接することによって、転位線の線幅方向のぶれたイメージが重なってくる。これによって、図13(b)のように基底面内転位のコントラスト像が現れるようになる。
【0056】
基底面内転位を最も高い分解能で観察可能な配置は、6回対称反射の周期性を考慮しなければ図3のCの配置になる。すなわち、図5(c)にも示したように、この配置では分解能が高いY方向と基底面内転位13の転位線の方向とが垂直となるため、転位線の線幅方向の分解能が最も高くなる。
【0057】
図4に、試料のステップフロー方向と入射X線方向とを固定した場合における、転位線の方向によるコントラストの出方を示した。このように、回折ベクトルと転位線とが成す角度が試料面内において90度に近づくほどコントラストが出易くなる。
【0058】
しかし実際には、4H−SiCのような六方晶の単結晶では面内に6回対称をもつため、図3のAの配置とBの配置は等価であるが、Cの配置は等価ではない。すなわち、C軸について60度回転する毎に周期的に等価な回折面が現れるため、分解能が高いX方向と転位線の方向とが同一となる図3のCの配置では測定ができない。例えば、<11−20>方向にオフ角をもつ4H−SiC単結晶試料を用いて(11−28)面と等価な回折面で測定を行う場合、試料の面内回転が0度、60度、120度など、60度毎に決まっているので、<11−20>方向に延びる基底面内転位の転位線方向と分解能が高いX方向とを一致させた配置で測定することはできない。したがって、実際的に分解能が最も高くなるBの配置で撮影を行う。
【0059】
すなわち、前述した基準配置において、SiC単結晶試料の面内回転についての角度配置を、結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における発散角が小さい(分解能が高い)方向とが成す角度が試料面内において30度以上である6回対称反射の対称性に応じた配置とした状態でトポグラフ撮影を行う。特に好ましくは、結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における発散角が小さい(分解能が高い)方向とが成す角度が試料面内において60度以上である配置、すなわち結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における発散角が小さい(分解能が高い)方向とが成す角度が試料面内において最も垂直に近くなる配置とした状態でトポグラフ撮影を行う。
[実施例2]
本実施例では、図1に示した構成と同一の装置を用いて測定を行うが、図6の斜視図および図7の正面図に示したように、4結晶コリメータ3を、入射X線5の方向を軸として傾斜させた配置としている。図6の傾斜角度αは、30度である。
【0060】
X線回折ベクトルに対するSiC単結晶試料11の面内方向の角度配置は、c軸を軸として60度回転させた配置、すなわち図3のBおよび図5(b)に示した配置としている。
【0061】
4結晶コリメータ3の配置が図1のような基準配置である場合には、図3のBおよび図5(b)に示したように、分解能が高いY方向と基底面内転位の転位線の方向とが成す角度は試料面内において60度となる。
【0062】
しかし本実施例では、4結晶コリメータ3を30度傾斜させることによって、回折ベクトルの方向を変えずに分解能が高い方向を30度傾斜させているので(図6では傾斜後の分解能が高い方向をY’方向、それと垂直な分解能が低い方向をX’方向と表している)、擬似的に図3のCおよび図5(c)に示した面内回転90度の配置となる。すなわち、基底面内転位の転位線方向と分解能が高いY’方向とが垂直の向きとなるので、最も高い分解能での測定が可能になる。
【0063】
図9に、4結晶コリメータ3の配置を基準配置(傾斜角0度)とした場合と、本実施例のように4結晶コリメータ3を30度傾斜させた場合とについて、入射X線方向と転位線
とが成す角度を変えた場合の基底面内転位のコントラストを模式的に示した。このように、4結晶コリメータ3を30度傾斜させた場合では、(11−28)面と等価な回折面が現れる面内回転60度の配置において、転位線方向と分解能が高い方向とが同一となり、最も分解能が高い配置での測定が可能になる。分解能が高いY’方向と転位線の方向との関係を説明する図5と同様な図を図10に示した。
【0064】
なお、図6において、4結晶コリメータ3から出射されたX線を発散X線として考えると、X線束におけるX方向の中心から外れた位置では、試料位置での回折角度が若干異なってくるが、4結晶コリメータ3を通過した後のX線は、Y’方向には発散角が小さく抑えられ平行度が向上しているので、ある程度平行X線として考えることができ、X線束のX方向の中心から外れた位置でもトポグラフ像を得ることができる。
【0065】
また、図8に示したように、入射X線5の方向を軸として4結晶コリメータ3と同一の角度に傾斜したスリット4をX線の入射側に配置することによって、ノイズを低減させることができる。
[実施例3]
本実施例では、面内に4回対称反射を有するSiC単結晶試料を用いて、上述した実施例で用いたものと同様な装置を用いてX線トポグラフを撮影する。図16(a)に示したような6回対称反射を有する単結晶試料では、C軸を軸として回転すると60度毎に等価な回折面が6回現れるが、面内に4回対称反射を有する正方晶、立方晶などの単結晶試料では、c軸を軸として回転すると0度、90度、180度、270度において等価な回折面が4回現れる。
【0066】
このため、図3を例とすると同図のAの配置とCの配置が等価な配置となる。したがって、これらの等価な配置のうち、4結晶コリメータを通過した異方性をもつX線の発散角が小さい(分解能が高い)方向と、SiC単結晶試料の面内に含まれる基底面内転位の転位線の方向とが成す角度が試料面内においてより垂直に近くなる配置を選択して撮影を行う。
【0067】
また、図5を例とすると、4回対称反射を有するSiC単結晶試料では図5(a)の配置と図5(c)の配置が等価になるので、図5(c)の配置を選択して撮影を行う。図5では、図5(c)の配置においてX線の発散角が小さい(分解能が高い)方向と、転位線の方向とが垂直になっているが、c軸を軸とした面内回転0度の配置と、面内回転90度の配置のいずれにおいてもこれらの方向が同一とならない場合には、転位線の方向と成す角度がより垂直に近い方の配置を選択して撮影を行う。
【0068】
さらに、実施例2の場合と同様に、入射X線における分解能が高い方向を適切な角度に傾斜させることで、入射X線における分解能が高い方向と、SiC単結晶試料の面内に含まれる基底面内転位の転位線の方向とが成す角度をより垂直に近づけることができる。
[実施例4]
本実施例では、測定対象の試料および測定方法の基本的な構成は上述した各実施例と同様であるが、図11に示したように、透過配置での測定を行う装置構成としている。回折面は(11−20)面と等価な面とし、基板の裏面側からX線を入射させてSiCエピタキシャル膜の表面側に透過した透過回折X線6’による回折像をフィルム8に取り出している。
【0069】
SiC単結晶基板の表面から成長させたエピタキシャル膜を透過配置で撮影する場合、図12(a)に示したように、X線がSiC単結晶基板31の内部を通過するので、試料の厚みの影響で分解能が低下し、さらに、SiC単結晶基板31の内部の欠陥情報が同時にトポグラフ像として写ってしまうことから、良好な分解能が得られない。このため、SiC単結晶基板31の表面から成長させたエピタキシャル膜32の結晶性の評価では、有効な情報が得られにくい。
【0070】
そこで本実施例では、透過配置のトポグラフによってエピタキシャル膜中の結晶欠陥を高分解能で観察するために、図12(b)に示したように、SiC単結晶基板31を裏面から研削して、基板の一部を除去している。
【0071】
一例としては、厚さ350μmのSiC単結晶基板の上に、厚さ100μmのエピタキシャル膜を成膜した基板について、SiC単結晶基板を厚さ100μmとなるまで裏面側から研削する。
【0072】
このようにSiC単結晶基板の厚さを予め薄くしてからトポグラフ測定を行うことで、エピタキシャル膜中に存在する基底面転位などの欠陥を高い分解能で撮影することができる。
【0073】
図15に、SiC単結晶基板を研削した場合と、SiC単結晶基板を研削せずにそのまま撮影を行った場合における、(1−100)面による透過配置でのトポグラフ像を示した。図15(a)はSiC単結晶基板を研削した場合のトポグラフ像、図15(b)はSiC単結晶基板を研削せずにそのまま撮影を行った場合のトポグラフ像である。
【0074】
このように、SiC単結晶基板を研削した図15(a)のトポグラフ像では、ノイズとなっていたSiC単結晶基板中の転位網の影が大幅に減少し、成長結晶中の転位の解析が容易となることがわかる。
【0075】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変形、変更が可能である。
例えば、上述した実施例では主として4H−SiC単結晶膜を試料とした場合を説明したが、この他の6回対称反射を有する結晶型、例えば、6H−SiC(六回周期型−六方晶)などの結晶型、さらに3回対称反射を有する結晶型、例えば(1,1,1)3C−SiC(三回周期型−立方晶)のSiC単結晶膜を試料とすることができる。
【0076】
また、撮影対象の単結晶試料はSiCに限らず、6回対称反射4回対称反射または3回対称反射を有し、その他の組成をもつ単結晶の面内に含まれる転位線をもつ結晶欠陥の撮影にも本発明を適用できる。このような単結晶試料としては、各種の半導体単結晶試料、例えば、GaAs、Siなどの単結晶基板から成長させたGaAsエピタキシャル膜、InGaAsエピタキシャル膜、AlGaAsエピタキシャル膜、InPエピタキシャル膜およびGaNエピタキシャル膜、AlNエピタキシャル膜などを挙げることができる。
【0077】
また、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥は、基本的には基底面内転位であるが、他の種類である同様の結晶欠陥の撮影にも本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、実施例1において用いられるX線トポグラフ装置を示した斜視図である。
【図2】図2は、図1のX線トポグラフ装置の正面図である。
【図3】図3は、入射X線方向と転位線とが成す角度を変えた際の、各角度における基底面内転位のコントラストを示した図である。
【図4】図4は、試料のステップフロー方向と入射X線方向とを固定した場合における、転位線の方向によるコントラストの出方を示した図である。
【図5】図5は、入射X線における発散角が異なる(分解能が異なる)各方向と、SiC単結晶試料の基底面内転位の転位線との角度配置を示した図であり、図5(a)は面内回転0度の配置、図5(b)は面内回転60度の配置、図5(c)は面内回転90度の配置の場合を示している。なお、左側は試料上面から見た図、右側は紙面に向かってX線入射側から見た図である。
【図6】図6は、実施例1において用いられるX線トポグラフ装置を示した斜視図である。
【図7】図7は、図6のX線トポグラフ装置の正面図である。
【図8】図8は、図6のX線トポグラフ装置において、入射X線の方向を軸として4結晶コリメータと同一の角度に傾斜したスリットをX線の入射側に配置した図である。
【図9】図9は、4結晶コリメータの配置を基準配置(傾斜角0度)とした場合と、4結晶コリメータを30度傾斜させた場合とについて、入射X線方向と転位線とが成す角度を変えた場合の基底面内転位のコントラストを示した図である。
【図10】図10は、入射X線における分解能が異なる各方向と、SiC単結晶試料の基底面内転位の転位線との角度配置を示した図5と同様の図である。
【図11】図11は、透過配置で撮影を行う構成としたX線トポグラフ装置の正面図である。
【図12】図12は、図11の装置で撮影を行うSiC単結晶試料における単結晶基板を研削する前後の状態を示した断面図であり、図12(a)は研削前の状態、図12(b)は研削後の状態を示している。
【図13】図13(a)は、図1の装置において4結晶コリメータを設置してステップフロー方向と入射X線方向が平行な配置(図5(a)の配置)において撮影を行った4H−SiCのX線トポグラフ像、図13(b)は、図1の装置を用いて面内回転60度の配置にて撮影を行った図13(a)と同一箇所における4H−SiCのX線トポグラフ像(図5(b)の配置と等価)である。
【図14】図14は、図1の装置を用いて、本発明の方法によって4H−SiCのSiCエピタキシャル膜を撮像したX線トポグラフ像である。
【図15】図15(a)は、図11の装置を用いて、単結晶基板を研削した試料を撮像したX線トポグラフ像、図15(b)は、単結晶基板を研削せずに試料を撮像したX線トポグラフ像である。
【図16】図16は、単結晶における対称性を有する方向の表記を説明する図であり、図16(a)は6回対称を有する単結晶の場合、図16(b)は4回対称を有する単結晶の場合を示した図である。
【図17】図17は、SiC単結晶基板と、ステップフロー成長技術によりその表面から形成したエピタキシャル膜との界面近傍を示した断面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 X線トポグラフ装置
2 X線発生装置
3 4結晶コリメータ
4 スリット
5 入射X線
6 回折X線
6’ 透過回折X線
7 ゴニオメータ
8 フィルム
11 SiC単結晶試料
12 試料面
13 転位線
21 入射X線方向
22 ステップフロー方向
31 SiC単結晶基板
32a n型エピタキシャル膜
32b p型エピタキシャル膜(またはp型注入層)
33 ベーサルプレーン転位
34 スレッディングエッジ転位
35 結晶面
θ オフ角
α 傾斜角
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線トポグラフにより単結晶試料の結晶欠陥を撮影する方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、面内に6回対称反射または4回対称反射を有する単結晶試料について、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥をX線トポグラフにより撮影する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の単結晶材料では、単結晶中に結晶転位などが存在すると材料としての特性が悪化してしまう場合が多い。このため、単結晶材料中に存在する結晶転位などの密度や分布状況を検出、観察する手法が必要である。
【0003】
このような単結晶材料は、その結晶の対称性から様々な結晶形を持つことが知られており、そのような各種の結晶形の結晶中に含まれる結晶転位を検出、観察する手法について多くの研究がなされている。
【0004】
このような単結晶材料の一つに、炭化珪素(SiC)単結晶がある。SiCは、シリコン(Si)に比べて絶縁破壊電界強度が約10倍であり、この他熱伝導率、電子移動度、バンドギャップなどにおいても優れた物性値を有する半導体であることから、従来のSi系パワー半導体素子に比べて飛躍的な性能向上を実現する半導体材料として期待されている。
【0005】
最近では、直径3インチのまでの4H−SiC、6H−SiC単結晶基板が市販されるようになり、Siの性能限界を大幅に超える各種スイッチング素子の報告が相次いでなされるなど、高性能SiC素子の開発が進められている。
【0006】
SiC単結晶を用いてパワー半導体素子を作製する場合、SiC単結晶の拡散係数がきわめて小さいために不純物を深く拡散させることが困難であることから、SiC単結晶基板上に、基板と同一の結晶型で、所定の膜厚およびドーピング濃度を有する単結晶膜をエピタキシャル成長させることが多い。具体的には、昇華法あるいは化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition:CVD)によって得られたバルク単結晶をスライスした基板の
表面に、CVD法によりエピタキシャル単結晶膜を成長させたSiC単結晶基板が使用されている。
【0007】
SiC単結晶には各種ポリタイプ(結晶多型)が存在するが、パワー半導体の開発では、絶縁破壊強度および移動度が高く、異方性が比較的小さい4H−SiCが主に使用されている。エピタキシャル成長を行う結晶面としては、(0001)Si面、(000−1)C面、(11−20)面、(1−100)面、(03−38)面などがあるが、(0001)Si面および(000−1)C面からエピタキシャル成長させる場合には、ステップフロー成長技術によりホモエピタキシャル成長させるために、これらの面を[11−2
0]方向あるいは[01−10]方向に数度傾けた結晶面が使用されることが多い。
【0008】
上記したように、SiCを用いたパワー半導体素子は各種の優れた点を有しているが、新品のSiCバイポーラ素子に通電を開始してから通電時間(積算使用時間)が増えるにしたがって、順方向電圧が増加するという問題点がある。順方向電圧の増加はSiCバイポーラ素子の信頼性を低下させ、SiCバイポーラ素子を組み込んだ電力制御装置の電力損失の増大を引き起こす。
【0009】
この通電による順方向電圧の増加は、次の理由により引き起こされると考えられており、多数の報告がされている(非特許文献1)。図17は、SiC単結晶基板と、ステップフロー成長技術によりその表面から形成したエピタキシャル膜との界面近傍を示した断面図である。同図において35は結晶面((0001)Si面)、θはオフ角であり、8度程度とされることが多い。図示したように、SiC単結晶基板31には結晶欠陥の一種である基底面内転位(basal plane dislocation)33が多数存在している。例えば、(0
001)Si面からオフ角が8度となるように傾けたSiC単結晶基板では、基板表面における基底面内転位密度は、結晶品質にもよるが典型的には102〜104個/cm2とな
る。
【0010】
この(0001)Si面と平行に延びる基底面内転位33はSiC単結晶基板31の表面上に現れ、基底面内転位33のうち数%程度はエピタキシャル成長時にn型エピタキシャル膜32aおよびp型エピタキシャル膜(またはp型注入層)32bに基底面内転位33としてそのまま伝播し、残りはスレッディングエッジ転位34(threading edge dislocation)に変換されてn型エピタキシャル膜32aおよびp型エピタキシャル膜(またはp型注入層)32bに伝播する。
【0011】
pnダイオードなどのバイポーラ素子では、n型エピタキシャル膜と、n型エピタキシャル膜とp型エピタキシャル膜との界面付近またはn型エピタキシャル膜とp型注入層との界面付近が通電時に電子と正孔が再結合する領域となるが、基底面内転位33は、通電時に発生する電子と正孔の再結合エネルギーによって積層欠陥(stacking fault)へと変換される。この積層欠陥は、三角形等の形状を有する面状の欠陥として発生する。
【0012】
基底面内転位は、1/3[11−20]のバーガースベクトルを有しているが、1/3[
10−10]と1/3[01−10]の2本のショックレー型部分転位(Shockley partial dislocation、ショックレー型不完全部分転位とも呼ばれている)に分解した状態で存在
し、これらの部分転位に挟まれる微小領域は積層欠陥を形成する。この積層欠陥はショックレー型積層欠陥と呼ばれている。これらの部分転位のうち一方が電子と正孔との再結合エネルギーによって移動することで積層欠陥面積が拡大すると考えられている。
【0013】
この面状の積層欠陥の面積は、通電時間の増加に伴って拡大する。積層欠陥の領域は、通電時に高抵抗領域として作用するため、積層欠陥の面積拡大に伴ってバイポーラ素子の順方向電圧が増加することになる。
【0014】
このため、予めSiCエピタキシャル膜内における基底面内転位の位置と密度を検出する方法が求められている。従来では、水酸化カリウム(KOH)エッチングと放射光トポグラフによってSiCエピタキシャル膜内における基底面内転位の位置と密度を検出し、その評価を行っていた。
【特許文献1】特開平4−174349号公報
【非特許文献1】ジャーナル オブ アプライド フィジックス(Journal of Applied Physics) ボリューム95 No.3 2004年 1485頁〜1488頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
KOHエッチングは、SiC単結晶の結晶欠陥の評価に用いられ、簡便かつ確実な評価法として用いられている。しかし、主に、Si面のSiC単結晶に対する評価に用いられ、C面のSiC単結晶に対しては、KOHによる表面エッチング評価が困難である。
【0016】
また、KOHエッチングは破壊測定であることから、測定後の試料を素子形成などに使
用することはできない。
SiC単結晶試料の種類に関係なく測定可能であり、且つ非破壊測定が可能な観察方法として、シンクロトロン放射光を使用したトポグラフ測定が知られている。シンクロトロン放射光を使用したトポグラフでは、放射光の優れた平行度(発散が小さい)と高い強度によって、非常に分解能が高いトポグラフ測定ができる。
【0017】
しかし、放射光トポグラフは限られた大型施設でのみ測定可能であることから、簡便な方法ではなかった。
そこで、簡便な実験室タイプのX線トポグラフ装置で基底面内転位を検出する技術が求められていた。実験室タイプのX線トポグラフ装置としては従来から各種のものが知られているが(特許文献1)、このようなX線トポグラフ装置では、点光源から放射状に広がるX線を使用するX線発生装置と試料との距離が短いため、X線ビームは発散X線となる。このため、X線ビームの発散角が大きく(平行度が低く)、高い測定分解能を得ることができない。したがって、従来のこうしたX線トポグラフ装置では、結晶粒界(バウンダリー)、マイクロパイプなどの大型の欠陥は撮影可能であるが、より小さな結晶欠陥や転位についての評価は難しい。例えば、基底面内転位はコントラストが微小であるため、分解能が足りず撮影ができない。
【0018】
本発明は、基底面内転位などの、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥を、簡易な装置構成により高い分解能で撮影可能なX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法は、面内に6回対称反射を有する単結晶試料について、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥をX線トポグラフにより撮影する結晶欠陥の撮影方法であって、
X線源から放射されたX線を4結晶コリメータを通過させることによって、X線の発散方向に異方性がある入射X線を生成し、
6回対称反射の等価な回折面のうち、前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度が試料面内において30度以上となる回折面からのX線回折像を撮影することを特徴とする。
【0020】
上記の6回対称反射の等価な回折面のうち、前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度が試料面内において60度以上となる回折面からのX線回折像を撮影することが特に好ましい。
【0021】
また、上記の6回対称反射の等価な回折面のうち、前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度が試料面内において最も垂直に近くなる回折面からのX線回折像を撮影することが特に好ましい。
【0022】
上記の発明では、X線入射側に配置された4結晶コリメータによって、一方の方向に充分に発散角が小さく高い平行度をもち、分解能に異方性がある入射X線が生成される。そして、単結晶試料の6回対称軸と垂直な面内における角度配置を、60度回転する毎に現れる6つの回折面のうち、結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における発散角が小さい(分解能が高い)方向とが成す角度が試料面内において30度以上である回折面でX線が回折される配置としたので、転位線の方向と、発散角が大きく分解能が低いためにぼやける像の方向とが近接し、転位線の線幅方向のコントラストが出易くなる。
【0023】
特に、結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における発散角が小さい(分解能が高い)方向とが成す角度を試料面内において60度以上とすることで、これらが成す角度が広い
場合には観察できないSiCエピタキシャル膜等の基底面内転位が明確に観察できるようになる。
【0024】
このように上記の発明では、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥を高い分解能で撮影することができる。
また、X線源としてローター型ターゲットやX線管球を用いた簡易な構成の装置で撮影が可能であり、放射光トポグラフのように大型施設での測定が必要ではなく、実験室などの任意の場所で簡便に測定することができる。
【0025】
本発明のX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法は、面内に4回対称反射を有する単結晶試料について、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥をX線トポグラフにより撮影する結晶欠陥の撮影方法であって、
X線源から放射されたX線を4結晶コリメータを通過させることによって、分解能に異方性がある入射X線を生成し、
4回対称反射の等価な回折面のうち、前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度が試料面内において最も垂直に近くなる回折面からのX線回折像を撮影することを特徴とする。
【0026】
上記の発明では、X線入射側に配置された4結晶コリメータによって、一方の方向に充分に発散角が小さく高い平行度をもち分解能に異方性がある入射X線が生成される。そして、単結晶試料の4回対称軸と垂直な面内における角度配置を、90度回転する毎に現れる4つの回折面のうち、結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における発散角が小さい(分解能が高い)方向とが成す角度が試料面内において最も垂直になる配置とした状態でトポグラフ撮影を行うようにしたので、転位線の方向と、発散角が大きく分解能が低いためにぼやける像の方向とが近接し、転位線の線幅方向のコントラストが出易くなる。
【0027】
このように上記の発明では、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥を高い分解能で撮影することができる。
また、X線発生装置としては、ローター型ターゲットやX線管球を光源とした簡易な構成の装置で撮影が可能であり、放射光トポグラフのように大型施設での測定が必要ではなく、実験室などの任意の場所で簡便に測定することができる。
【0028】
また、X線源としてローター型ターゲットやX線管球を用いた簡易な構成の装置で撮影が可能であり、放射光トポグラフのように大型施設での測定が必要ではなく、実験室などの任意の場所で簡便に測定することができる。
【0029】
上記の発明において、前記4結晶コリメータを、前記入射X線の方向を軸として傾斜させた配置とすることによって、前記入射X線における発散角が小さい方向を傾斜させて前記単結晶試料へ前記入射X線を入射させ、これにより、前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度をさらに垂直に近くしてトポグラフ撮影を行うことが好ましい。
【0030】
6回対称反射または4回対称反射の周期性により、結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度は所定の角度に制限される。しかし上記のように、4結晶コリメータを入射X線の方向を軸として適切な角度に傾斜させた配置とすることで、結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における分解能が高い方向とが成す角度をさらに垂直に近くすることができる。
【0031】
したがって、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥をさらに高い分解能で撮影することができる。このように4結晶コリメータを入射X線の方向を軸として傾斜させるこ
とで、結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における発散角が小さい(分解能が高い)方向とを実質的に同一方向とし、最も高い分解能で撮影することも可能である。
【0032】
また、前記入射X線の方向を軸として前記4結晶コリメータと同一の角度に傾斜したスリットをX線の入射側に配置し、該スリットにX線を通過させることが好ましい。
このようにすることで、X線に起因するノイズが充分に除去されて分解能がさらに向上する。
【0033】
上記の発明は、単結晶基板の表面から成長させたエピタキシャル膜、例えば、炭化珪素エピタキシャル膜に含まれる面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥の撮影に好適である。
【0034】
転位線を有する結晶欠陥の具体例としては、基底面内転位を挙げることができる。
また、単結晶基板の表面から成長させたエピタキシャル膜を透過配置で撮影する場合、単結晶基板を裏面から研削して予めその厚さを薄くすることが好ましい。
【0035】
このようにすることで、X線が単結晶基板の内部を通過することによる、単結晶基板の厚みや単結晶基板内の欠陥に基づく分解能の低下を抑制することができ、高い分解能が得られる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥を、簡易な装置構成により高い分解能で撮影することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照しながら、実施例に基づき本発明について説明する。
[実施例1]
図1は、本実施例において用いられるX線トポグラフ装置を示した斜視図、図2は、図1のX線トポグラフ装置の正面図である。
【0038】
本実施例では、六方晶四回周期型のSiC単結晶(4H−SiC)基板の表面にステップフロー成長技術により成膜したSiCエピタキシャル膜を試料として用いている。この試料は、c軸に対して垂直な面である(0001)面を結晶面とし、<11−20>方向へ8度のオフ角で切り出したSiC単結晶基板の表面からCVDによりエピタキシャル膜をステップフロー成長させたものである。この場合、SiC単結晶基板から引き継がれた基底面内転位はステップフロー成長の進行に伴って<11−20>方向へ延びていく。
【0039】
本実施例では、図1および図2に示したX線トポグラフ装置1を用いてSiC単結晶試料11に含まれる<11−20>方向へ延びる基底面内転位を撮影する。このX線トポグラフ装置1では、X線発生装置2から放射されたX線が、X線入射側に配置された4結晶コリメータ3に入射され、一方向(Y方向)に発散角が小さい(高い平行度をもつ)入射X線5が生成される。
【0040】
図1および図2では、ゴニオメータ7に固定されたSiC単結晶試料11に対して入射するX線と回折したX線とを含む平面と、4結晶コリメータ7の内部における入射X線と回折X線とを含む平面とが一致している。(本明細書ではこの配置関係を基準とする。4結晶コリメータを回転する等によって、4結晶コリメータ7内部の入射X線と回折X線とを含む平面と、試料に対して入射するX線と回折したX線を含む平面とが一致せずに角度をもつ場合には、XY方向または4結晶コリメータを「傾斜」させると表現する)。
【0041】
X線発生装置2としては、X線源としてローター型ターゲットを備えたもの、あるいはX線管球を備えたものなどを用いることができる。充分な強度を得るためには、ローター型ターゲットを備えたものを用いることが好ましく、本実施例では18kWローターを使用している。ターゲットとしては、本実施例のように反射配置での撮影を行う場合には銅(Cu)などが用いられる。また、透過配置での撮影を行う場合には、透過力の大きい短波長のX線を発生させるモリブテン(Mo)などが用いられる。
【0042】
4結晶コリメータ3は、単結晶による反射を4回させる構造をしている。反射面としては、Si、Geなどの低指数面が利用可能であるが、本実施例では分解能と強度が特に高い入射X線が得られるSi(220)面を反射面としたものを使用している。
【0043】
4結晶コリメータ3を通過させることによって、4結晶コリメータ3から出射したX線の発散角は小さくなり平行度は向上する。但し、平行度が向上する度合いは、X線のビーム方向と垂直な面内における図1のX方向とY方向で異なる。Y方向の発散角は小さく抑えられ、平行度は、X方向のそれに比べて非常に高くなる。言い換えれば、Y方向の分解能は、X方向のそれに比べて非常に高くなる。
【0044】
ゴニオメータ7は、SiC単結晶試料11を固定し、所定の軸を中心とした回転等によりSiC単結晶試料11の配置を調節するものである。SiC単結晶試料を固定し、その配置を調節する手段としては、公知である各種の装置を使用できる。なお、本実施例のように(0001)面に対してオフ角をもつ単結晶基板を使用する場合、撮影を簡便にするために、オフ角と同一角度をもつ治具をゴニオメータに取り付けると良い。
【0045】
4結晶コリメータ3からの入射X線5は、ゴニオメータ7に固定されたSiC単結晶試料11に入射される。ブラッグ角θは、回折面の面間隔とX線の波長によって決定される。一例を挙げれば、Cuからの波長1.541ÅのX線を用いて、回折面を(11−28)面と6回対称反射について等価な面とした場合におけるブラッグ角θは52.17度である。
【0046】
SiC単結晶試料11からの回折X線6による回折像は、フィルム8に記録される。単結晶試料の結晶格子に全く乱れが含まれないのであれば、試料全面のどの場所から回折したX線も同一の強度であることから、回折像にはコントラストが現れない。しかし、単結晶中に欠陥が含まれると、その部分からのX線が乱されて回折像にコントラストが生じ、これによって面内の欠陥分布がコントラストとして記録されることになる。
【0047】
回折像を記録する媒体には、従来からX線トポグラフに使用されている各種の記録媒体が使用できるが、記録媒体としてフィルムを使用する場合、高い分解能を得るためには塗布してある感光粒子の粒子径が小さいものが好ましい。高い分解能を得るためには、特に原子核乾板を用いることが好ましい。
【0048】
トポグラフの撮影は、試料と記録媒体とを同期させて移動させながら、試料の広い面積を測定する方法(いわゆるトラバース測定)で行うことができる。後述の実施例4ならびに図15では、SiC単結晶試料11とフィルム8とを同期させながら移動させて撮影を行っている。
【0049】
トラバース測定の他に、固定位置での撮影を行い、試料と記録媒体とを同期させて数ミリ移動した後、同様に固定位置での撮影を行うことを繰り返す方法で試料全面の撮影を行ってもよい。この方法によれば、移動によってトポグラフのコントラストが消し合ってしまうことを回避できるため、良好なコントラストを得ることができる。実施例1〜3ならびに図13,14では、この方式で撮影を行っている。
【0050】
なお、図示は省略するが、SiC単結晶試料11とフィルム8との間に、これらと同期して移動するスリットを配置してもよい。スリットを設けることで、ノイズを低減させることができる。
【0051】
図1のような実験室タイプのX線トポグラフ装置において、4結晶コリメータを設置せずに撮影を行うと、分解能が低いため4H−SiC単結晶膜の基底面内転位はトポグラフ像として現れない。さらに、通常の配置である図5(a)に示した配置(図5(a)〜図5(c)において、左側は試料上面から見た図、右側は紙面に向かってX線入射側から見た図である)、すなわち入射X線方向21と、試料面12のステップフロー方向22(<
11−20>方向)とが平行である配置(厳密には、入射X線方向21の試料面上への投
影方向とステップフロー方向のなす角度が、試料面内において平行である配置であるが、入射X線が試料表面に対して水平に近い小さな角度で入射することから、上記のような表
現を使用する。)では、4結晶コリメータを設置した図1の装置を用いても、図13(a)のトポグラフ像に示したように基底面内転位は全く観察されない。
【0052】
ところが、図5(b)に示したように、試料面12をc軸を軸として60度回転させ、(11−28)反射と等価な反射面によるトポグラフ像を撮影すると、図13(b)のトポグラフ像に示したように基底面内転位が明確に観察される(なお、図13(a)と図13(b)は試料面の同一箇所において撮影したものである)。SiC単結晶膜の試料面におけるさらに広い領域を撮像したトポグラフ像を図14に示した。このように、試料面内の複数の箇所に存在する基底面内転位が明確に撮影されていることがわかる。
【0053】
上記の結果を、図3〜図5を参照しながら模式的に説明する。本来、点状の欠陥については、X線の分解能に異方性が無ければ点または丸のコントラスト像が得られると考えられる。しかし、X線の分解能に異方性があると、分解能が高い方向には像が広がらないが、分解能の低い方向には像が広がるため、欠陥は図3のように楕円状の像として観察される。したがって、図3に示したように、点状のコントラストをもつ転位は、A,B,Cのように試料面に対するX線の入射方向を変化させても、楕円の延びる方向が回転する程度で、像自体には大きな影響がない。
【0054】
しかし、<11−20>方向に延びる基底面内転位のような線状の欠陥では、分解能に異方性をもつX線の入射方向によって、現れるコントラストが異なる。X線の入射方向とステップフロー方向とが成す角度が試料面内において0度である図3のAの場合には、図5(a)にも示したように分解能が高いY方向と基底面内転位13の転位線の方向とが互いに平行になり、転位線の線幅方向の分解能が最も低い配置となる。
【0055】
これに対して、図3のAの配置からc軸を軸として60度回転させた図3のBの配置、すなわちX線の入射方向とステップフロー方向とが成す角度が試料面内において60度である場合には、図5(b)にも示したように、分解能が高いY方向と基底面内転位13の転位線の方向とが成す角度が試料面内において60度となり、転位線のコントラストが広がる方向と転位線の方向が近接することによって、転位線の線幅方向のぶれたイメージが重なってくる。これによって、図13(b)のように基底面内転位のコントラスト像が現れるようになる。
【0056】
基底面内転位を最も高い分解能で観察可能な配置は、6回対称反射の周期性を考慮しなければ図3のCの配置になる。すなわち、図5(c)にも示したように、この配置では分解能が高いY方向と基底面内転位13の転位線の方向とが垂直となるため、転位線の線幅方向の分解能が最も高くなる。
【0057】
図4に、試料のステップフロー方向と入射X線方向とを固定した場合における、転位線の方向によるコントラストの出方を示した。このように、回折ベクトルと転位線とが成す角度が試料面内において90度に近づくほどコントラストが出易くなる。
【0058】
しかし実際には、4H−SiCのような六方晶の単結晶では面内に6回対称をもつため、図3のAの配置とBの配置は等価であるが、Cの配置は等価ではない。すなわち、C軸について60度回転する毎に周期的に等価な回折面が現れるため、分解能が高いX方向と転位線の方向とが同一となる図3のCの配置では測定ができない。例えば、<11−20>方向にオフ角をもつ4H−SiC単結晶試料を用いて(11−28)面と等価な回折面で測定を行う場合、試料の面内回転が0度、60度、120度など、60度毎に決まっているので、<11−20>方向に延びる基底面内転位の転位線方向と分解能が高いX方向とを一致させた配置で測定することはできない。したがって、実際的に分解能が最も高くなるBの配置で撮影を行う。
【0059】
すなわち、前述した基準配置において、SiC単結晶試料の面内回転についての角度配置を、結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における発散角が小さい(分解能が高い)方向とが成す角度が試料面内において30度以上である6回対称反射の対称性に応じた配置とした状態でトポグラフ撮影を行う。特に好ましくは、結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における発散角が小さい(分解能が高い)方向とが成す角度が試料面内において60度以上である配置、すなわち結晶欠陥の転位線の方向と、入射X線における発散角が小さい(分解能が高い)方向とが成す角度が試料面内において最も垂直に近くなる配置とした状態でトポグラフ撮影を行う。
[実施例2]
本実施例では、図1に示した構成と同一の装置を用いて測定を行うが、図6の斜視図および図7の正面図に示したように、4結晶コリメータ3を、入射X線5の方向を軸として傾斜させた配置としている。図6の傾斜角度αは、30度である。
【0060】
X線回折ベクトルに対するSiC単結晶試料11の面内方向の角度配置は、c軸を軸として60度回転させた配置、すなわち図3のBおよび図5(b)に示した配置としている。
【0061】
4結晶コリメータ3の配置が図1のような基準配置である場合には、図3のBおよび図5(b)に示したように、分解能が高いY方向と基底面内転位の転位線の方向とが成す角度は試料面内において60度となる。
【0062】
しかし本実施例では、4結晶コリメータ3を30度傾斜させることによって、回折ベクトルの方向を変えずに分解能が高い方向を30度傾斜させているので(図6では傾斜後の分解能が高い方向をY’方向、それと垂直な分解能が低い方向をX’方向と表している)、擬似的に図3のCおよび図5(c)に示した面内回転90度の配置となる。すなわち、基底面内転位の転位線方向と分解能が高いY’方向とが垂直の向きとなるので、最も高い分解能での測定が可能になる。
【0063】
図9に、4結晶コリメータ3の配置を基準配置(傾斜角0度)とした場合と、本実施例のように4結晶コリメータ3を30度傾斜させた場合とについて、入射X線方向と転位線
とが成す角度を変えた場合の基底面内転位のコントラストを模式的に示した。このように、4結晶コリメータ3を30度傾斜させた場合では、(11−28)面と等価な回折面が現れる面内回転60度の配置において、転位線方向と分解能が高い方向とが同一となり、最も分解能が高い配置での測定が可能になる。分解能が高いY’方向と転位線の方向との関係を説明する図5と同様な図を図10に示した。
【0064】
なお、図6において、4結晶コリメータ3から出射されたX線を発散X線として考えると、X線束におけるX方向の中心から外れた位置では、試料位置での回折角度が若干異なってくるが、4結晶コリメータ3を通過した後のX線は、Y’方向には発散角が小さく抑えられ平行度が向上しているので、ある程度平行X線として考えることができ、X線束のX方向の中心から外れた位置でもトポグラフ像を得ることができる。
【0065】
また、図8に示したように、入射X線5の方向を軸として4結晶コリメータ3と同一の角度に傾斜したスリット4をX線の入射側に配置することによって、ノイズを低減させることができる。
[実施例3]
本実施例では、面内に4回対称反射を有するSiC単結晶試料を用いて、上述した実施例で用いたものと同様な装置を用いてX線トポグラフを撮影する。図16(a)に示したような6回対称反射を有する単結晶試料では、C軸を軸として回転すると60度毎に等価な回折面が6回現れるが、面内に4回対称反射を有する正方晶、立方晶などの単結晶試料では、c軸を軸として回転すると0度、90度、180度、270度において等価な回折面が4回現れる。
【0066】
このため、図3を例とすると同図のAの配置とCの配置が等価な配置となる。したがって、これらの等価な配置のうち、4結晶コリメータを通過した異方性をもつX線の発散角が小さい(分解能が高い)方向と、SiC単結晶試料の面内に含まれる基底面内転位の転位線の方向とが成す角度が試料面内においてより垂直に近くなる配置を選択して撮影を行う。
【0067】
また、図5を例とすると、4回対称反射を有するSiC単結晶試料では図5(a)の配置と図5(c)の配置が等価になるので、図5(c)の配置を選択して撮影を行う。図5では、図5(c)の配置においてX線の発散角が小さい(分解能が高い)方向と、転位線の方向とが垂直になっているが、c軸を軸とした面内回転0度の配置と、面内回転90度の配置のいずれにおいてもこれらの方向が同一とならない場合には、転位線の方向と成す角度がより垂直に近い方の配置を選択して撮影を行う。
【0068】
さらに、実施例2の場合と同様に、入射X線における分解能が高い方向を適切な角度に傾斜させることで、入射X線における分解能が高い方向と、SiC単結晶試料の面内に含まれる基底面内転位の転位線の方向とが成す角度をより垂直に近づけることができる。
[実施例4]
本実施例では、測定対象の試料および測定方法の基本的な構成は上述した各実施例と同様であるが、図11に示したように、透過配置での測定を行う装置構成としている。回折面は(11−20)面と等価な面とし、基板の裏面側からX線を入射させてSiCエピタキシャル膜の表面側に透過した透過回折X線6’による回折像をフィルム8に取り出している。
【0069】
SiC単結晶基板の表面から成長させたエピタキシャル膜を透過配置で撮影する場合、図12(a)に示したように、X線がSiC単結晶基板31の内部を通過するので、試料の厚みの影響で分解能が低下し、さらに、SiC単結晶基板31の内部の欠陥情報が同時にトポグラフ像として写ってしまうことから、良好な分解能が得られない。このため、SiC単結晶基板31の表面から成長させたエピタキシャル膜32の結晶性の評価では、有効な情報が得られにくい。
【0070】
そこで本実施例では、透過配置のトポグラフによってエピタキシャル膜中の結晶欠陥を高分解能で観察するために、図12(b)に示したように、SiC単結晶基板31を裏面から研削して、基板の一部を除去している。
【0071】
一例としては、厚さ350μmのSiC単結晶基板の上に、厚さ100μmのエピタキシャル膜を成膜した基板について、SiC単結晶基板を厚さ100μmとなるまで裏面側から研削する。
【0072】
このようにSiC単結晶基板の厚さを予め薄くしてからトポグラフ測定を行うことで、エピタキシャル膜中に存在する基底面転位などの欠陥を高い分解能で撮影することができる。
【0073】
図15に、SiC単結晶基板を研削した場合と、SiC単結晶基板を研削せずにそのまま撮影を行った場合における、(1−100)面による透過配置でのトポグラフ像を示した。図15(a)はSiC単結晶基板を研削した場合のトポグラフ像、図15(b)はSiC単結晶基板を研削せずにそのまま撮影を行った場合のトポグラフ像である。
【0074】
このように、SiC単結晶基板を研削した図15(a)のトポグラフ像では、ノイズとなっていたSiC単結晶基板中の転位網の影が大幅に減少し、成長結晶中の転位の解析が容易となることがわかる。
【0075】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変形、変更が可能である。
例えば、上述した実施例では主として4H−SiC単結晶膜を試料とした場合を説明したが、この他の6回対称反射を有する結晶型、例えば、6H−SiC(六回周期型−六方晶)などの結晶型、さらに3回対称反射を有する結晶型、例えば(1,1,1)3C−SiC(三回周期型−立方晶)のSiC単結晶膜を試料とすることができる。
【0076】
また、撮影対象の単結晶試料はSiCに限らず、6回対称反射4回対称反射または3回対称反射を有し、その他の組成をもつ単結晶の面内に含まれる転位線をもつ結晶欠陥の撮影にも本発明を適用できる。このような単結晶試料としては、各種の半導体単結晶試料、例えば、GaAs、Siなどの単結晶基板から成長させたGaAsエピタキシャル膜、InGaAsエピタキシャル膜、AlGaAsエピタキシャル膜、InPエピタキシャル膜およびGaNエピタキシャル膜、AlNエピタキシャル膜などを挙げることができる。
【0077】
また、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥は、基本的には基底面内転位であるが、他の種類である同様の結晶欠陥の撮影にも本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、実施例1において用いられるX線トポグラフ装置を示した斜視図である。
【図2】図2は、図1のX線トポグラフ装置の正面図である。
【図3】図3は、入射X線方向と転位線とが成す角度を変えた際の、各角度における基底面内転位のコントラストを示した図である。
【図4】図4は、試料のステップフロー方向と入射X線方向とを固定した場合における、転位線の方向によるコントラストの出方を示した図である。
【図5】図5は、入射X線における発散角が異なる(分解能が異なる)各方向と、SiC単結晶試料の基底面内転位の転位線との角度配置を示した図であり、図5(a)は面内回転0度の配置、図5(b)は面内回転60度の配置、図5(c)は面内回転90度の配置の場合を示している。なお、左側は試料上面から見た図、右側は紙面に向かってX線入射側から見た図である。
【図6】図6は、実施例1において用いられるX線トポグラフ装置を示した斜視図である。
【図7】図7は、図6のX線トポグラフ装置の正面図である。
【図8】図8は、図6のX線トポグラフ装置において、入射X線の方向を軸として4結晶コリメータと同一の角度に傾斜したスリットをX線の入射側に配置した図である。
【図9】図9は、4結晶コリメータの配置を基準配置(傾斜角0度)とした場合と、4結晶コリメータを30度傾斜させた場合とについて、入射X線方向と転位線とが成す角度を変えた場合の基底面内転位のコントラストを示した図である。
【図10】図10は、入射X線における分解能が異なる各方向と、SiC単結晶試料の基底面内転位の転位線との角度配置を示した図5と同様の図である。
【図11】図11は、透過配置で撮影を行う構成としたX線トポグラフ装置の正面図である。
【図12】図12は、図11の装置で撮影を行うSiC単結晶試料における単結晶基板を研削する前後の状態を示した断面図であり、図12(a)は研削前の状態、図12(b)は研削後の状態を示している。
【図13】図13(a)は、図1の装置において4結晶コリメータを設置してステップフロー方向と入射X線方向が平行な配置(図5(a)の配置)において撮影を行った4H−SiCのX線トポグラフ像、図13(b)は、図1の装置を用いて面内回転60度の配置にて撮影を行った図13(a)と同一箇所における4H−SiCのX線トポグラフ像(図5(b)の配置と等価)である。
【図14】図14は、図1の装置を用いて、本発明の方法によって4H−SiCのSiCエピタキシャル膜を撮像したX線トポグラフ像である。
【図15】図15(a)は、図11の装置を用いて、単結晶基板を研削した試料を撮像したX線トポグラフ像、図15(b)は、単結晶基板を研削せずに試料を撮像したX線トポグラフ像である。
【図16】図16は、単結晶における対称性を有する方向の表記を説明する図であり、図16(a)は6回対称を有する単結晶の場合、図16(b)は4回対称を有する単結晶の場合を示した図である。
【図17】図17は、SiC単結晶基板と、ステップフロー成長技術によりその表面から形成したエピタキシャル膜との界面近傍を示した断面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 X線トポグラフ装置
2 X線発生装置
3 4結晶コリメータ
4 スリット
5 入射X線
6 回折X線
6’ 透過回折X線
7 ゴニオメータ
8 フィルム
11 SiC単結晶試料
12 試料面
13 転位線
21 入射X線方向
22 ステップフロー方向
31 SiC単結晶基板
32a n型エピタキシャル膜
32b p型エピタキシャル膜(またはp型注入層)
33 ベーサルプレーン転位
34 スレッディングエッジ転位
35 結晶面
θ オフ角
α 傾斜角
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面内に6回対称反射を有する単結晶試料について、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥をX線トポグラフにより撮影する結晶欠陥の撮影方法であって、
X線源から放射されたX線を4結晶コリメータを通過させることによって、X線の発散方向に異方性がある入射X線を生成し、
6回対称反射の等価な回折面のうち、前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度が試料面内において30度以上となる回折面からのX線回折像を撮影することを特徴とするX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【請求項2】
6回対称反射の等価な回折面のうち、前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度が試料面内において60度以上となる回折面からのX線回折像を撮影することを特徴とする請求項1に記載のX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【請求項3】
6回対称反射の等価な回折面のうち、前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度が試料面内において最も垂直に近くなる回折面からのX線回折像を撮影することを特徴とする請求項1または2に記載のX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【請求項4】
面内に4回対称反射を有する単結晶試料について、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥をX線トポグラフにより撮影する結晶欠陥の撮影方法であって、
X線源から放射されたX線を4結晶コリメータを通過させることによって、発散方向に異方性がある入射X線を生成し、
4回対称反射の等価な回折面のうち、前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度が試料面内において最も垂直に近くなる回折面からのX線回折像を撮影することを特徴とするX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【請求項5】
前記4結晶コリメータを、前記入射X線の方向を軸として傾斜させた配置とすることによって、前記入射X線における発散角が小さい方向を傾斜させて前記単結晶試料へ前記入射X線を入射させ、これにより、前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度を試料面内においてさらに垂直に近づけてトポグラフ撮影を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【請求項6】
前記入射X線の方向を軸として前記4結晶コリメータと同一の角度に傾斜したスリットをX線の入射側に配置し、該スリットにX線を通過させることを特徴とする請求項5に記載のX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【請求項7】
前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とを、試料面内において実質的に垂直とすることを特徴とする請求項5または6に記載のX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【請求項8】
前記単結晶試料が、単結晶基板の表面から成長させたエピタキシャル膜であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【請求項9】
前記結晶欠陥が基底面内転位であることを特徴とする請求項8に記載のX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【請求項10】
前記単結晶試料が炭化珪素エピタキシャル膜であることを特徴とする請求項9に記載の
X線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【請求項11】
前記単結晶基板を裏面から研削して予めその厚さを薄くし、該単結晶基板の表面から成長させたエピタキシャル膜を透過配置で撮影することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【請求項1】
面内に6回対称反射を有する単結晶試料について、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥をX線トポグラフにより撮影する結晶欠陥の撮影方法であって、
X線源から放射されたX線を4結晶コリメータを通過させることによって、X線の発散方向に異方性がある入射X線を生成し、
6回対称反射の等価な回折面のうち、前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度が試料面内において30度以上となる回折面からのX線回折像を撮影することを特徴とするX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【請求項2】
6回対称反射の等価な回折面のうち、前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度が試料面内において60度以上となる回折面からのX線回折像を撮影することを特徴とする請求項1に記載のX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【請求項3】
6回対称反射の等価な回折面のうち、前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度が試料面内において最も垂直に近くなる回折面からのX線回折像を撮影することを特徴とする請求項1または2に記載のX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【請求項4】
面内に4回対称反射を有する単結晶試料について、面内方向に配向した転位線を有する結晶欠陥をX線トポグラフにより撮影する結晶欠陥の撮影方法であって、
X線源から放射されたX線を4結晶コリメータを通過させることによって、発散方向に異方性がある入射X線を生成し、
4回対称反射の等価な回折面のうち、前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度が試料面内において最も垂直に近くなる回折面からのX線回折像を撮影することを特徴とするX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【請求項5】
前記4結晶コリメータを、前記入射X線の方向を軸として傾斜させた配置とすることによって、前記入射X線における発散角が小さい方向を傾斜させて前記単結晶試料へ前記入射X線を入射させ、これにより、前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とが成す角度を試料面内においてさらに垂直に近づけてトポグラフ撮影を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【請求項6】
前記入射X線の方向を軸として前記4結晶コリメータと同一の角度に傾斜したスリットをX線の入射側に配置し、該スリットにX線を通過させることを特徴とする請求項5に記載のX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【請求項7】
前記結晶欠陥の転位線の方向と、前記入射X線における発散角が小さい方向とを、試料面内において実質的に垂直とすることを特徴とする請求項5または6に記載のX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【請求項8】
前記単結晶試料が、単結晶基板の表面から成長させたエピタキシャル膜であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【請求項9】
前記結晶欠陥が基底面内転位であることを特徴とする請求項8に記載のX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【請求項10】
前記単結晶試料が炭化珪素エピタキシャル膜であることを特徴とする請求項9に記載の
X線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【請求項11】
前記単結晶基板を裏面から研削して予めその厚さを薄くし、該単結晶基板の表面から成長させたエピタキシャル膜を透過配置で撮影することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のX線トポグラフによる結晶欠陥の撮影方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図15】
【図16】
【図17】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図5】
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【図11】
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【図16】
【図17】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−349481(P2006−349481A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175513(P2005−175513)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
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