説明

単量体インスリン

本発明は、新規な単量体インスリン(B27K-DTrI、B27K-デスぺプチド-インスリン)、その組成物及び調製方法を提供する。非常に純粋なB27K-DTrI-インスリンは単量体(高濃度、生理的pHにおいて非会合性)であり、生体内生物活性は未変性インスリンの80%である。B27K-K-DtrI-インスリンは、従来技術において既知の効率の悪い酵素ぺプチド転移の代わりに酵母によって分泌された単量体インスリン前駆体の酵素切断により生産することができる。新規な方法は、全収率を上げ、工業化生産に有利である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
背景
本発明は医療分野と医薬分野に関する。更に詳細には、本発明は、新規なインスリンB鎖、そのB鎖を含有する単量体インスリン分子、その単量体インスリンを含有する医薬組成物、その単量体インスリンの調製及び適用に関する。
発明の背景
糖尿病は、世界中で増大している国民の健康の脅威である。高血糖症により、死亡率の主な原因であるさまざまな糖尿病合併症が生じる。厳しい血清グルコース制御は、糖尿病の末期の合併症を予防し延期するための最も重要な要因である。The effect of intensive treatment of diabetes on the development and progression of long-term complications in insulin-dependent diabetes mellins. The Diabetes Control and Complications Trial Research Group. N Engl. J Med., 1993 329 (14)p.977-86を参照のこと。
1920年代にインスリンが発見されて以来、代わりのきかない薬剤として糖尿病の治療に用いられてきた。正常なヒト体内でのインスリンの分泌は、血中グルコース濃度によって調整される。血清インスリン濃度は、食後の30-60分に最大まで上昇し、4-5時間後に、ベースレベルに回復するので、食物摂取に起因する血中グルコース濃度のかなりの変動が回避される。レギュラーインスリン製剤又は投与は、自然な生理的インスリン分泌の過程を模倣することができない。それ故、食後に血清グルコースの上昇を効果的に制御することができず、結果として低血糖症の危険がある。その理由は、インスリンが中性媒質中ではl00nMを超える濃度で2量体と6量体の形で存在し、単量体に解離した後に特定のレセプターに結合することによって作用するという点にある。インスリン分子間のこの会合は、インスリンの安定性を強化し、血清グルコースの正確で可撓性の調節を確実にする。しかしながら、インスリンの吸収に対して障害がある。6量体の形で存在するインスリン製剤は、50,000〜100,000倍までの希釈によって注射した後に2量体のインスリンに、その後、単量体のインスリンに変換されるまで毛細血管を通って血液へ吸収されない。筋肉内又は皮下での多重希釈は、遅く且つ長い過程であり、50%のインスリンが2-4時間以内に吸収されるだけである。インスリン製剤の皮下注射の90-120分後に、血中のインスリン濃度は比較的低いピークに達し、後に急速に低下することができない。Brange, J. & A. Volund, Insulin analogs with improved pharmacokinetic profiles. Adv Drug Deliv. Rev, 1999.35(2-3)307-335を参照のこと。
【0002】
中性媒体中で自己会合の傾向が低いインスリンは、単量体インスリンと名付けられている。単量体インスリンは、注射後、より短い時間内に多重希釈と作用を含まずに急速に吸収することができる。それ故、単量体インスリンは、糖尿病用薬剤の新規に創製する主な標的の1つになってきた。リスプロ、Eli Lilly Co.によって開発された単量体インスリンは、1996年にヨーロッパやアメリカでの臨床試験に非常に効果的であることがわかった。皮下注射の15分後に効能を現し、1時間後に血中濃度が最大に達し、2-4時間後に正常レベルまで回復した。食後15分にリスプロを投与すると、食前20分のレギュラーインスリンと同程度の効果がある。現在、他の単量体インスリン、Novo Co.のアスパルトは臨床試験中である。Yajo,Z. & W.C. Duckworth, Genetically engineered insulin analogs: diabetes in the new millennium. Pharmacol. Rev, 2000.52(1)1-9を参照のこと。
我々は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces Cerevisiae)から単量体インスリン前駆体(MP)を分泌させることによって、次に酵素のペプチド転移によって単量体インスリン、DPI(デスペンタペプチドインスリン)又はDTI(デステトラぺプチドインスリン)を調製する方法を研究した。Cui, D. F. Li. M.Y., Zhang,Y.S. & Feng, Y.M. Monomeric destetrapeptide human insulin from a precursor expressed in saccharomyces cerevisiae. J Pept. Res., 2001 .57(3)188-92を参照のこと。[中国特許第ZL98 1109I2.8号にも開示されている]。しかしながら、単量体インスリンは、その方法においては次の欠点があることから大規模に生産することができない。(1)化学ペプチド合成を必要とする、例えば、GFFY(But)Obut;(2)トリプシンによる酵素ぺプチド転移後の収率が80%より低い;(3)酵素ペプチド転移後の中間体が強酸、例えば、TFAで処理して保護基を取り除くことを必要とする;(4)方法が複雑であり、化学副反応が存在する。従って、大規模且つ簡便な調製で生産し得る新規な単量体インスリンを開発することは、この分野では緊急の仕事である。
【0003】
発明の概要
本発明の1つの目的は、大規模且つ簡便な方法で生産し得る新規な単量体インスリンを提供することである。本発明の他の目的は、単量体インスリンを含有する医薬組成物を提供することである。更に、本発明は、単量体インスリン及び医薬組成物の調製と適用を提供することを目標とするものである。本発明の第一態様は、次のアミノ酸配列を有するインスリンB鎖を提供するものである。
F V N Q H L C G S H L V E A L Y L V C G E R X23X24X25X26Y27(配列番号l)
(ここで、X23、X24、X25、X26は、個々に独立し、Gly、Ala、Asp、Glu、Asn、Gln、Ser、Thr、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Pro、Met、His、Valからなるアミノ酸の群より選ばれるか又は存在せず、且つ個々に独立したアミノ酸の多くても1つは存在せず; 更に、Y27はLysか又はArgである。)
一好適実施態様においては、Y27はLysである。他の好適実施態様においては、X23X24X25X26はGFFYである。本発明の第二態様は、上記のB鎖を有するインスリン分子を提供するものである。一好適実施態様においては、インスリンは単量体である。
他の好適実施態様においては、前記インスリン配列は次の通りである。
A鎖: G I V E Q C C T S I C S L Y Q L E N Y C N (配列番号2)
B鎖: F V N Q H L C G S H L V E A L Y L V C G E R X23X24X25X26Y27
(ここで、X23、X24、X25、Y26、Y27は上で定義した通りである。)
本発明の第三態様は、本発明に記載された単量体インスリンと薬学的に許容しうる担体を含有する医薬組成物を提供するものである。
本発明の第四態様は、アミノ末端からカルボキシル末端まで、B鎖、結合ペプチド、インスリンA鎖を含有する単量体インスリン前駆体を提供するものである。ここで、結合ペプチドはAla-Ala-Lysである。
本発明の第五態様は、インスリンB鎖又は単量体インスリン前駆体をエンコードしているDNAを提供するものである。また、DNAを含有するベクター及びDNA又はベクターを含有するホスト細胞を提供する。
本発明の第六態様は、インスリンを調製する方法を提供するものであり、次の工程が含まれる。
(a) 単量体インスリン前駆体をエンコードしているDNAを含有するホスト細胞を発現条件下で培養する工程であって、該単量体インスリンが発現される前記工程;
前駆体はアミノ末端からカルボキシル末端まで、インスリンB鎖、結合ペプチド、インスリンA鎖を含有し、ここで、インスリンB鎖は次のアミノ酸配列を有する。
F V N Q H L C G S H L V E A L Y L V C G E R X23X24X25X26Y27
(ここで、X23、X24、X25、X26、Yは上で定義した通りである。)
(b) 単量体インスリン前駆体を精製する工程;
(c) 単量体インスリン前駆体をトリプシンで酵素切断する工程;
(d) 単量体インスリンを得る工程。
【0004】
詳細な説明
インスリンB鎖のC末端にアルカリ性アミノ酸を付加すると、その活性に影響を及ぼさずにインスリン類似体の生産工程が簡易化される。例えば、DTI(デステトラぺプチド-(B27-30)-インスリン)中に他のアルカリ性アミノ酸を加えることによって得られたインスリン類似体B27K-DTrIは、単量体インスリンの性質を有するだけでなく、未変性インスリンの80%の生体内の生物活性も有する。従って、従来の技術を用いた酵素ぺプチド転移の代わりに酵母によって分泌された単量体インスリン前駆体の酵素切断によりB27K-DTrIを得る方法は、全収率を上げ、工業化生産に有利である。本発明に用いられる“DOI”という用語は、デスオクタぺプチド-(B23-30)インスリンを意味する。本発明に用いられる“B27K-DTrI”という用語は、デストリぺプチドを意味し、B鎖内の27位のアミノ酸はLysである。塩基構造は、次の通りである。
F V N Q H L C G S H L V E A L Y L V C G E R X23X24X25X26Y27 (配列番号1)
ここで、X23、X24、X25、X26は個々に独立し、Gly、Ala、Asp、Glu、Asn、Gln、Ser、Thr、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Pro、Met、His、Valからなるアミノ酸の群より選ばれるか又は存在しない(即ち、空である)。アミノ酸X23、X24、X25、X26の中で多くても1つの存在しないアミノ酸が許容される。Y27は、Lysか又はArgであるように選ばれる。研究によると、最初の25アミノ酸(第23位から、アミノ酸は任意により変えることができる)を含むならば、インスリンは特定の活性を有する。本発明においては、23位-26位のアミノ酸を変えることができる。変更したアミノ酸は、好ましくは、Lys、Arg、Cys以外のアミノ酸のいずれか1つ、特にL-アミノ酸である。
本発明のペプチドは、B27K-DtrI、B27K-DtrIを含有するインスリン、対応する単量体インスリン前駆体(MIP)を意味する。本発明のペプチドは、組換えペプチド、合成ペプチド又は好ましくは組換えポリぺプチドを包含し、化学的に合成されることができ、原核ホスト又は真核ホスト(例えば、バクテリア、酵母、高等植物、昆虫、哺乳動物細胞)から得ることもできる。
本発明のポリヌクレオチドは、DNA形又はRNA形のどちらでもあり得る。DNAは、一本鎖又は二本鎖であり得る。DNAは、コーディング鎖であり得るか又はあり得ない。本発明のB27K-DTrIのヌクレオチド配列の全長又は断片は、PCR増幅、組換え工学又は合成によって得ることができる。関連した配列は、まず最初に合成によって得ることができる。通常、小断片は、最初に合成され、それから、全長を得るために結合される。
【0005】
一旦配列が得られると、配列を組換え工学によって大規模に生産することができる。通常、配列はベクター中でクローン化され、ホスト細胞に移され、次に慣用手段によって生産される。得られた配列は、増殖の後、ホスト細胞から精製される。本発明においては、B27K-DTrIポリヌクレオチド配列は、組換え発現ベクターへ挿入することができる。“組換え発現ベクター”という用語は、細菌性プラスミド、バクテリオファージ、酵母プラスミド、植物細胞ウイルス、哺乳類細胞ウイルス、例えば、アデノウィルス、レトロウイルス又はこの分野では周知である他のベクターを意味する。
要約すると、複製し、安定なままであることができるあらゆるプラスミドやベクターが使用し得る。発現ベクターの1つの重要な特徴は、それが通常複製起点、プロモーター、マーカー、遺伝子、翻訳制御成分を含有するということである。
B27K-DTrIコーディングDNA配列と適切な転写/翻訳制御信号を含有する発現ベクターは、この分野の当業者になじみのある方法で構築し得る。これらの方法は、生体内組換体DNA法、DNA合成、生体内の組換等を含んでいる。DNA塩基配列は、mRNAの合成を導くために、発現ベクター中の適当なプロモーターに、効果的に結合し得る。これらのプロモーターの典型例は: 大腸菌(E.coli)のプロモーター(CMV最初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、初期や後期のSV40プロモーター、原核細胞又は真核細胞中又はウイルス中である制御可能な遺伝子によって発現される他のプロモーターを含む真核プロモーター)のlac又はtrpプロモーターである。発現ベクターも、翻訳開始と転写ターミネータのリボソーム結合部位を含んでいる。
更に、発現ベクターは、優先して、形質転換ホスト細胞を選ぶ表現型特性を与えるための1種以上の選択マーカー遺伝子、例えば、真核細胞培養についてはジヒドロ葉酸還元酵素、大腸菌についてはネオマイシン抵抗性や緑色フルオレセインタンパク質(GFP)又はテトラシン、アンピシリンを含有する。
適当なDNA配列と上記プロモーター配列又は制御配列を含有するベクターは、タンパク質を発現させることができる適当なホスト細胞を形質転換するために使用し得る。
【0006】
ホスト細胞は、原核細胞、細菌細胞; 又は、下等真核細胞、例えば、酵母細胞; 又は高等真核細胞、例えば、哺乳動物細胞であり得る。典型例は、大腸菌、ストレプトマイセス(Streptomyces); 真菌細胞、例えば、酵母; 植物細胞; ショウジョウバエS2又はS9の昆虫; CHO、COS等を含む動物細胞である。
組み換えDNAのホスト細胞への添加は、この分野の当業者になじみのある従来の技術によって行うことができる。ホストが大腸菌のような原核生物である場合、DNAを吸収することができるコンピテント細胞は成長の指数増殖期後に集めることができ、それからCaCl2で処理される。これらの工程はこの分野では周知である。他の方法は、CaCl2の代わりにMgCl2を用いるものである。必要であれば、エレクトロポレーションも形質転換の間、適用することができる。ホストが真核生物である場合、次のDNAトランスフェクション法: リン酸カルシウム共沈殿、微量注射、エレクトロポレーション、リポソーム取り込み等を含む従来法が使用し得る。
このように得られた形質転換因子を、本発明の遺伝子によってエンコードされたペプチドを発現させるために慣用的に培養することができる。培養に用いられる培養液は、用いられるホスト細胞に従って種々の慣用の培養液より選ばれる。培養は、ホスト細胞の成長に適した条件下で行われる。ホスト細胞が特定の細胞密度に増大するにつれて、選択されたプロモーターは、適切な方法(温度スイッチング又は化学誘導)によって誘発されて更に細胞を培養する。
上記方法の組換えペプチドは、細胞中で発現させることができ、細胞から分泌させることもできる。必要であれば、組換えタンパク質を精製するためにぺプチドの物理的性質、化学的性質、他の性質に従って種々の分離法を用いることができる。これらの方法は、この分野では周知である。これらの方法の例としては、慣用のリパトリエーション、タンパク質沈殿剤(塩析)、遠心、パーミエーション、超遠心、サイズ排除クロマトグラフィー(ゲル電気泳動)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、HPLC、他のさまざまな液相クロマトグラフィー法及びその組合せが挙げられるが、これらに制限されない。
一好適例においては、、B27K-DTrIは単量体インスリン前駆体の形でまず発現され、次に酵素切断処理後に得られる。単量体インスリン前駆体は、アミノ末端からカルボキシル末端まで、本発明のインスリンB鎖、結合ペプチド、インスリンA鎖を含有する。結合機能があれば、結合ペプチドが特に選択されず、A鎖に結合されるアミノ酸残基はLys又はArgである。一種の結合ペプチドの例は、(A1a)2-5lys、例えば、Ala-Ala-Lysである。Lys及び/又はArgを切断するために用いられるあらゆる酵素、例えば、トリプシンが酵素切断処理に使用し得る。切断の条件は、用いられる酵素に従って変わる。条件の一例は、溶媒:0.02-0.05Mのトリス緩衝液、pH: 7-8、基質濃度、約5mg/mlトリプシンの重量、基質の約1/50、4-25℃、1-6時間である。MIPを酵素切断した後、産物、本発明のB27K-DTrIは、サイズ排除クロマトグラフィーで精製される。
【0007】
本発明は、また、本発明のB27K-DTrIペプチドの安全で効果的な用量と薬学的に許容しうる担体又は賦形剤を含有する医薬組成物を提供する。賦形剤の種類としては、生理食塩水、緩衝液、グルコース、水、グリセロール、エタノール又はその化合物が含まれる(が、これらに制限されない)。薬剤調製と薬剤送達法は、適合しなければならない。本発明の医薬組成物は、例えば、生理食塩液又はグルコース及び他の共同補助剤を含有する水溶液中で従来の方法で調製された注射用の投薬へ製造することができる。錠剤やカプセルのような医薬組成物も、従来の方法で調製することができる。注射用の投薬、液剤、錠剤、カプセル剤を含むこれらの剤形の全ては、無菌条件下で製造される。活性成分の送達量は治療に有効な量、例えば、約lμg/kg(重量)-約5mg/kg(重量)である。本発明のペプチドは、同様に他の薬剤と共に用いることができる。本発明の医薬組成物は、糖尿病やその合併症を処理するために用いることができる。哺乳動物へのB27K-DTrIタンパク質の安全で効果的な用量は、通常は少なくともl0μg/kg(重量)で、通常は1Omg/kg(重量)を超えず、好ましい用量は約lOμg/kg(重量)-100μg/kg(重量)である。確かに、薬剤を送達する場合、送達法、患者の健康状態等を考慮に入れられなければならないが、これは医師の責務に当たる。本発明の単量体インスリンは、単独で用いられるだけでなく、糖尿病を治療するための他の薬剤(例えば、他のインスリン)と共に用いられる。
本発明に主な利点は、次のことにある。
本発明のインスリンは単量体特性が強い。
本発明の単量体インスリンは、酵素ペプチド転移又は再生せずに単量体インスリン前駆体から、一段酵素切断によって得ることができる。
注射によって送達されない場合のインスリンを含有する医薬組成物のバイオアベイラビリティが高い。
次の実施例は、本発明を更に説明するために引用されるがそれに限定されない。具体的な条件が述べられていない場合、SambrookによるMolecule Cloning: Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001)に詳述されるか又は製造業者によって示された通常の要求があてはまる。
【0008】
実施例1 DOIの調製
613mgの亜鉛を含まないブタインスリンを127mlの0.05モル/lホウ砂溶液(0.001M CaCl2を含有する)、pH 8.9に溶解した。その溶液を水浴中で3時間37℃で撹拌し、その後24.5mgの結晶のトリプシンを添加し、次に、主ピークをプールし(図1)、水に対して透析し、溶液をDEAE-セファデックスA25イオン交換カラムで精製した後、凍結乾燥した。セファデックスG25による脱塩の後、DOIをこのようにして得た。
実施例2 GFFYK(Boc)Obutの調製
2.1 Boc-Phe-Osuの調製
3.18gのBoc-Phe(12ミリモル)と等モルのN-ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)を15mlのTHFに相互に溶解した。反応混合液を塩氷浴(-5℃)で10分間保ち、次に2mlの無水テトラヒドロフラン(THF)に溶解した等モル量のジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCI)を-5℃で磁気撹拌しながら反応瓶へゆっくりと滴下した。-5℃で2時間を超える時間撹拌した後、その溶液を4℃で一晩放置した。生成した尿素を3層ろ紙でろ過して分離し、ろ液は白色固形物であった。残留物を15mlのイソプロパノールで溶解し、室温で、再結晶し、洗浄し乾燥した後に2.5g(53%)の生成物を得た。生成物の融点は138-140℃であり、薄層クロマトグラフィー(3/7系)において均一あった。展開液は、3容量の溶液A(ピリジン/酢酸/水4:1:1.5容量)と7容量の溶液B(酢酸エチル/イソプロパノール10:4容量)の混合物とした。クロマトグラムを塩素-デンプン-KIで染色した。
2.2 (TFA)Phe-Tyr-OC2H5の調製
5.97 g(16.5ミリモル)のBoc-Phe-Osuと等モルのHCl-Tyr-OC2H5を80mlの無水酢酸エチルに相互に溶解し、ほぼ等モルのN-メチルモルホリンでpH8に中和した。その反応混合液を室温で一晩撹拌し、10%クエン酸、1%の炭酸カリウム、飽和塩化ナトリウムでそれぞれ3回洗浄した。残留物を無水硫酸ナトリウムで2時間乾燥し、更にまた、非常に少量に回転蒸発させた。生成物を石油エーテルで結晶化し、洗浄し乾燥した後に6.1g(81%)を得た。生成物の融点は126-128℃であり、薄層クロマトグラフィー(3/7系)において均一であった。結晶を50mlのジクロロメタン(DCM)に溶解し、25mlのトリフルオロ酢酸(TFA)をその溶液に滴下した。室温で35分間撹拌した後に、その溶液を減圧下で濃縮して溶媒を取り除いた。DCMで5回を超える洗浄後、生成物(TFA)Phe-Tyr-OC2H5をこのようにして得た。
【0009】
2.3 (TFA) Phe-Phe-Tyr-OC2H5の調製
13ミリモル(TFA)-Phe-TyrOC2H5を20mlの無水THF(溶媒)に溶解し、5.4mlのN-メチルモルホリンでpH7に中和した。その溶液を塩氷浴に保った。次に、等モル量のBoc-Phe-OSuを35mlの無水THFに溶解し、(TFA)-Phe-Tyr-OC2H5溶液に滴下し、反応溶液をN-メチルモルホリンで中性pHに保った。反応混合液を室温で一晩撹拌した。粉末に回転蒸発させた後、混合物を酢酸エチルで溶解し、10%のクエン酸、1%の炭酸カリウム、飽和塩化ナトリウムでそれぞれ3回洗浄した。残留物を無水硫酸ナトリウムで2時間の乾燥し、更にまた、非常に少量に回転蒸発させた。粗生成物Boc-Phe-Phe-Tyr-OC2H5を多量のエーテルで結晶化して2g(30%)を得た。生成物の融点は、106-108℃であり、薄層クロマトグラフィー(3/7系)において均一であった。全ての生成物を25mlのDCMに溶解し、25mlのTFAをその溶液へ滴下した。室温で30分間撹拌した後に、その溶液を減圧下で濃縮して溶媒を取り除いた。DCMで5回を超えて洗浄した後に、生成物(TFA)Phe-Phe-Tyr-OC2H5をこのようにして得た。
2.4 Z-Gly-Osuの調製
10gの(47ミリモル)Z-Glyと等モル量のHosuを100mlの無水THF(溶媒)に相互に溶解した。反応混合液は、塩氷浴(-5℃)で10分間保ち、次に2mlの無水THFに溶解した等モル量のDCCIを-5℃で磁気撹拌しながら反応瓶へ徐々に滴下した。-5℃で2時間撹拌した後に、その溶液を4℃で一晩放置した。生成した尿素を3層フィルタでろ過することにより分離し、回転蒸発後、ろ液はわずかに油性になった。残留物は少量のDCMに溶解し、次に多量のエーテルを加え、黄色沈殿が生じるまでろ液を瓶壁に対して擦り、溶液が透明になった。その透明溶液を注ぎ、室温で放置した。生成物を結晶化し、ろ過により集め、洗浄し乾燥した後に、6.5g(46%)の生成物を得る。生成物の融点は、100-102℃であり、薄層クロマトグラフィー(3/7系)で均一であった。
2.5 Z-Gly-Phe-Phe-Tyr-OC2H5の調製
3.3gミリモルの(TFA)Phe-Phe-TyrOC2H5と5ミリモルの Z-Gly-Osuを10mlの無水THF(溶媒)に相互に溶解した。その溶液をN-メチルモルホリンpH8.0で中和し、次に室温で72時間撹拌した。粉末に回転蒸発させた後、その粉末を酢酸エチルに溶解し、10%クエン酸、1%炭酸カリウム、飽和塩化ナトリウムで順次3回洗浄した。残留物を無水硫酸ナトリウムで2時間乾燥し、更にまた、非常に少量に回転蒸発させた。次にその溶液は透明から濁り、次に多量のエーテルを添加した後、再び透明になった。室温で72時間放置した後にグレーイエローの沈殿が生じた。エーテルで洗浄し乾燥した後、沈殿は2g(87%)であり、沈殿の融点は、148-151℃であった。薄層クロマトグラフィー(3/7系)で生成物は均一であった。
【0010】
2.6 Z-Gly-Phe-Phe-Tyr-NHNH2の調製
15ミリモルの85%ヒドラジン水和物を9mlの無水メタノール中の2g(2.9ミリモル)のZ-Gly-Phe-Phe-Tyr-OC2H5の溶液に添加した。反応混合物を2時間還流し、次に室温に冷却した。直ちに生じた結晶を集め、10mlの無水エーテル、10mlのメタノール/エーテル(5v/5v)、水でpH7に洗浄した。乾燥後の粗収量は、1.29g(65%)であり、生成物は、薄層クロマトグラフィー(3/7系)において均一であった。
2.7 Z-Gly-Phe-Phe-Tyr-Lys(Boc)Obutの調製
37gの亜硝酸ナトリウムを150mlの蒸留水に溶解し、38gのter-ブチルアルコールをその溶液に添加した。反応混合液を氷浴中で10分間保ち、次に60mlの35%硫酸を磁気撹拌しながら反応瓶に徐々に滴下した。氷浴中で30分を超える間撹拌した後、その溶液を15分間放置し、次に上清を5%の重炭酸ナトリウムで3回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、30mlの亜硝酸ter-ブチルを得た。1.25g(1.9ミリモル)のZ-Gly-Phe-Phe-TyrNHNH2を加熱により8mlの無水DMFに溶解した。2mlの2N HCl/THF(4ミリモル)溶液に添加し、反応混合液を-20℃に保ち、次に0.3mlの亜硝酸ter-ブチル(2.5ミリモル)を溶液に徐々に滴下し、10分間振盪し、-20℃に予め冷却した10mlの無水酢酸エチルをその溶液に添加した。混合液を-30℃に冷却した。0.65g(1.9ミリモル)の(HCl)Lys(Boc)Obutを7mlの無水DMFに溶解し、247μlのトリエチルアミンをその溶液に添加した後、-30℃に冷却し、次に-20℃に予め冷却した溶液と10mlの無水酢酸エチルを上の混合液に連続して添加した。pHを8に調整するためにトリエチルアミンを添加し、次に4℃で30分間振盪した後にその混合液を4℃で72時間放置した。粉末に回転蒸発させた後、残留物を酢酸エチルで溶解し、次に10%クエン酸、1%炭酸カリウム、飽和塩化ナトリウムで順次3回洗浄した。残留物を無水硫酸ナトリウムで2時間乾燥し、更にまた、油状物に蒸発させた。生成物を3倍量のエーテルで結晶化し、冷酢酸エチル、冷エーテルで洗浄し乾燥した後に、1g(56%)を得た。生成物の融点は160-162℃であり、薄層クロマトグラフィー(3/7系)において均一であった。
2.8 Gly-Phe-Phe-Tyr-Lys(Boc)Obutの調製
0.56gのZ-Gly-Phe-Phe-TyrLys(Boc)Obutを90mlの無水メタノールに溶解し、その溶液を氷酢酸でpH3.0に調整した。0.12gのPd炭素を添加した。その反応溶液を撹拌し、水素と6時間混合した。次にその溶液をケイソウ土でろ過した。(クロロホルムに浸漬した後、Pd炭素を捨て)、ろ液を回転蒸発により乾燥した。酢酸エチルで繰り返し洗浄した後、薄層クロマトグラフィー(3/7系)において均一であり、図2に示されるようにニンヒドリンで染色されることができる生成物(収率93%)を得た。HPLCは、図3に示されるように均一だった。アミノ酸の解析値は、理論値: Gly1.2(1.0); Tyr1.0(1.0); Phe2.2(2.0); Lys1(1.0)に対応した。
【0011】
実施例3. B27K-DTrIの調製
0.237g(0.172ミリモル)のGly-Phe-Phe-TyrLys(Boc)Obutを50℃に加温することにより0.26mlのジメチルスルホン(DMSO)に溶解した。次に、その溶液を37℃の水浴でインキューベートしてから、86mg(0.0172ミリモル)のDOIをその溶液に徐々に添加した。1.82mlの1-4ブタンジオールと37℃に予熱した0.52mlの水をその反応溶液に添加し、5μlのN-メチルモルホリンでpH6.5に調整した。7.8mgのTPCK-トリプシンを添加し、反応混合物を30℃でインキューベートした。2時間と4時間後に、4.5mgのTPCK-トリプシンを各時間に添加した。20時間後に、1.1mlの氷酢酸を添加し、1モル/lのHClでpH3に調整することにより反応を終了した。反応混合物を、溶離剤として30%酢酸を有するセファデックスG50微細カラムクロマトグラフィーで精製した。76mg(収率80%)のB27K-DTrI(Boc)Obutの粗生成物を得た(図5)。粗生成物をC8 RP-HPLCで精製し(図6)、冷アセトンで洗浄して、乾燥した。乾燥生成物を3mg/mlの濃度まで無水TFAに溶解した。10℃で1時間放置した後、TFAを排除し、残留物をジクロロメタンで完全に洗浄した。生成物をC8 RP-HPLCで精製してB27K-DTrIを得た(図7)。試料は、pH 8.3 PAGE(図4)及びC18HPLC(図8)において均一であった。エレクトロスプレー質量分析で分子量を求めると5509Daであり(図9)、誤差0.01%だけ理論上の分子量5508.3と異なった。14のN末端残基と2つのC末端残基の配列が正しいことがと決定された(表1)。これらのデータは、電荷、試料の親水性と疎水性の性質が全て均一であり、タンパク質配列が設計された配列と一致していることを示している。
Phe Val Asn Gln His Leu Cys Gly Ser His Leu Val Glu Ala Leu Tyr
1 5 10 15
Leu Val Cys Gly Glu Arg Gly Phe Phe Tyr Lys
20 25
(配列番号5)。
【0012】
表1 B27K-DtrIのN末端とC末端配列(N末端→C末端)

【0013】
実施例4.自己会合特性の決定
B27K-DTrIの単量体挙動をスーパーデックス75(HR 10/30)カラムを用いてサイズ排除クロマトグラフィーで求め、PBS(リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4)で溶出した。室温で280nmにおいて流速0.4ml/min(充填容量0.1ml)が検出された。分子均一性を対称因子Fsで測定した。Fs=W0.05h/2A、ここで、W0.05は0.05のピーク高さでのバンド幅であり、Aは0.05のピーク高さでの前半ピークの幅である。平均分子量の変化を分配係数Kavとタンパク質濃度をプロットすることにより測定した。Kav=(Vr-V0)/(Vc-Vo)、ここで、Vrは、保持容量である、Voはボイド容量であり、Vcは総容積である。スーパーデックス75カラムによる保持時間は図10Aに示されるように亜鉛を含まないインスリン制御の濃度の増加と共に低下した。B27K-DTrIの保持時間は、図10Bに示されるようにタンパク質濃度から独立している。インスリンのFs値は、400μモル/l(図10C)より高い濃度で顕著に増加し、インスリンのKav値は、濃度(図10D)の増加と共に低下した。一方、B27K-DTrIの保持時間とピークの形はタンパク質濃度の増加と共に変化しなかった。リスプロ(B28Lys、B29Proインスリン)、DPI(デスペンタペプチドインスリン)、B27K-DTrIの単量体挙動を、スーパーデックス75カラムにより同じ濃度(80μモル/l)で比較した。B27K-DTrIとリスプロインスリンのKav値は、それぞれ0.51と0.48であった(図12)。
実施例5 生物学的活性試験
5.1 マウス痙攣試験(中国薬局方、1985、付録100頁)
雄クンミンマウス(体重27-30g)を各グループが24匹の4つのグループにランダムに分け、実験前の2時間絶食した。試料は、生理食塩水に溶解し、pH 5.0、塩酸で調整した、1OD280nm=1mg/l。試料の効力は規格品のそれの80%であると推定され、高用量は0.09U/mlであり、低用量は0.045U/mlであり、溶媒は生理的食塩水であり、塩酸でpH2.5に調整した。各々のマウスに25℃で15分以内に0.3mlを皮下投与し、次にこれらのマウスを、90分の所見について37℃に保ち、痙攣、死、仰向きにされたときに、向きを変えることができなかった全てが陽性反応であるとみなされる。データを定性反応試験で求めた。
5.2 マウス血漿グルコース低下試験(中国薬局方、2000、付録106頁)
雄クンミンマウス(体重28-30g)を各グループが10匹の4つのグループにランダムに分けた。試料の効力は規格品の80%であると推定され、高用量は0.07U/mlであり、低用量は0.035U/mlであり、溶媒は生理的食塩水であり、塩酸でpH2.5に調整した。各マウスに0.25mlの試料を25℃で皮下投与し、眼静脈叢から血液試料を採取して注射の40分間後の血糖を求めた。二重交差に従って3時間後に各マウスに第二回目の薬剤を投与し(試験において試料の高用量は、以前に規格品の低用量によるグループに投与した)、40分間の後に血糖を試験した。データは、定量反応試験で求めた。マウス痙攣試験による生物活性は21U/mgであり、FL%は23.5%(<30%)(表2)である;マウス血漿グルコース低下試験による生物活性は23U/mgであり、FL%は11.9%(<25%)(表3)である; 実験に用いた規格品は、NICPBP(The National Institute for the Control of Pharmaceutical and Biological Products)によって得られた27U/mgインスリンである。2つの試験法からの結果は、相互に一致し、B27K-DTrIの生物活性は、未変性インスリンの80%である。
【0014】
表2
マウス痙攣試験による生物活性(中国薬局方、1985)






【0015】
表2
マウス血漿グルコース低下試験によるB27K-DtrIの生物活性
(中国薬局方、2000)

【0016】
実施例6
遺伝子工学により発現したB27K-DTrI
この実験においては、MIP構造が生合成後のインスリン折畳みや正しいジスルフィド結合の形成に有効であることから、MIP(単量体インスリン前駆体)をC末端とN末端を結合ペプチド(例えば 、Ala-Ala-Lys)で結合することによって構築した。工程は、以下の通りである:
シグナルペプチド配列(α-MFL、α-交配因子リーダー)を、化学合成から得られたMIP遺伝子(下記配列番号 3を参照のこと)の5'末端に添加し、次に、遺伝子をpPIC9Kプラスミドにクローン化してEcoRIとNotIの酵素の切断部位を用いてpPIC9K/MIPを得た。次にpPIC9K/MIPを直線化で処理した後に酵母P.pastorisへ移し、スポットハイブリダイゼーションを用いては、高コピー株をスクリーニングした。
配列番号3:
ttc gtt aac caa cac ttg tgc ggt tcc cac ttg gtt gag gct ttg tac 48
Phe Val Asn Gln His Leu Cys Gly Ser His Leu Val Glu Ala Leu Tyr
1 5 10 15
ttg gtt tgc ggt gaa aga ggt ttc ttc tac aag gct gct aag ggt att 96
Leu Val Cys Gly Glu Arg Gly Phe Phe Tyr Lys Ala Ala Lys Gly Ile
20 25 30
gtc gaa caa tgc tgt acc tcc atc tgc tcc ttg tac caa ttg gaa aac 144
Val Glu Gln Cys Cys Thr Ser Ile Cys Ser Leu Tyr Gln Leu Glu Asn
35 40 45
tac tgc aac 153
Tyr Cys Asn
50
【0017】
高密度発酵後、MIPを生成物から疎水性クロマトグラフィーにより得た。アミノ酸配列を配列番号4に示した。
Phe Val Asn Gln His Leu Cys Gly Ser His Leu Val Glu Ala Leu Tyr
1 5 10 15
Leu Val Cys Gly Glu Arg Gly Phe Phe Tyr Lys Ala Ala Lys Gly Ile
20 25 30
Val Glu Gln Cys Cys Thr Ser Ile Cys Ser Leu Tyr Gln Leu Glu Asn
35 40 45
Tyr Cys Asn
50
MIPをトリプシンで酵素切断(溶媒: 0.03Mトリス緩衝液、pH: 7.5、20℃、2時間)し、次にサイズ排除クロマトグラフィーにより非常に純粋なB27K-DTrI(図13の構造)を得た。
考察
同じ技術的方法において他の酵母発現系又は分泌大腸菌発現系によりB27K-DTrIを発現させることができる。中国特許出願第98 1 10912.8号に開示されたDTIの調製と比較してこの技術的方法は、従来の手法でのペプチドGFFY(But)OButの化学合成、酵素によるペプチド転移、HPLC分離等の過度に精巧な工程を省き、結果として、大差で収率を上げ、工業化生産により適している。2つの方法間の比較を図14に示す。
引用した従来技術は、本願明細書に含まれるものとする。
実施例及び考察は、本発明を例示するものとみなされ、多くの変更が当業者に生じるので、本発明を記載されている実施例に限定するものではない。全ての適切な変更や等価物は、請求項の範囲の範囲内に包含する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】DEAE-セファデックスA25によるDOIの精製を示す図である。移動層は、40%イソプロパノールを含有するpH7.3、50ミリモル/lのトリス緩衝液を有する; 溶離勾配は最初から最後まで0.05-0.2モル/lのNaCl。主ピークは、DOIである。横座標は溶出量であり、縦座標は280nmにおける吸光度である。
【図2】Gly-Phe-Phe-Tyr-Ls(Boc)Obutの薄層クロマトグラフィーを示す写真である; 左側に粗生成物; 右側に精製生成物。展開液は、3容量の溶液A(ピリジン/酢酸/水4:1:1.5容量)と7容量の溶液B(酢酸エチル/イソプロパノールl0:4容量)の混合物とした。クロマトグラムを塩素-デンプン-Klで染色した。
【図3】Gly-Phe-Tyr-Lys(Boc)ObutのRP-HPLC分析、C8カラム(Beckman、4.6×250mm)を示すグラフであり、移動相の溶液Aは0.1%TFAを含む水であり、溶液Bは0.1%のTFAを含む70%のアセトニトリルとした。溶離勾配は、0-100%/(0-50分)であり、流速1 ml/分である。横座標は溶離時間であり、縦座標は280nmにおける吸光度である。
【図4】クーマシーブリリアントブルーで染色した、ゲル濃度がl5%のpH8.3におけるポリアクリルアミドゲル電気泳動を示す写真である。左から右にそれぞれDOI、酵素反応溶液、B27K-DTrI純粋生成物、ブタインスリンである。
【図5】セファデックスG50(f)カラム(1.6×60cm)による酵素反応溶液の分離を示すグラフであり、移動層は30%酢酸であり、ピーク2はB27K-DTrIとDOIの混合物である。横座標は溶出量であり、縦座標は28Onmにおける吸光度である。
【図6】B27K-DTrI(Boc)Obut、C8カラム(Beckman、10×250mm)のRP-HPLC分離プロファイルを示すグラフであり、移動層の溶液Aは0.1%TFAを含む水であり、溶液Bは0.1%のTFAを含む70%アセトニトリルとした。溶離勾配10-60%の溶液B/(10-40分)、流速2ml/min。ピーク1はDOIであり、ピーク2はB27K-DTrI(Boc)Obutであり、ピーク3はGly-Phe-Phe-Tyr-Ls(Boc)Obutである。横座標は溶離時間であり、縦座標は280nmにおける吸光度である。
【図7】B27K-DTrI、C8カラム(Beckman、10×250mm)を示すグラフであり、移動層の溶液Aは0.1%TFAを含む水であり、溶液Bは0.1%のTFAを含む70%アセトニトリルとした。溶離勾配10-60%溶液B/(10-40分)、流速2ml/min。主ピークはB27K-DTrIである。横座標は溶離時間であり、縦座標は280nmにおける吸光度である。
【図8】B27K-DTrI HIPLC分析プロファイル、C8カラム(Beckman、4.6×250mm)を示すグラフであり、移動層の溶液Aは0.1%TFAを含む水であり、溶液Bは0.1%TFAを含む70%アセトニトリルとした。溶離勾配30-70%の溶液B/(10-40分)、流速lml/min。主ピークは、B27K-DTrIである。横座標は溶離時間であり、縦座標は230nmにおける吸光度である。
【図9】B27K-DTrIエレクトロスプレー質量分析(ESI-MS)を示すグラフであり、エレクトロスプレーの電圧は4.25KVであり、毛管の温度は200℃である。理論上の分子量は5508.3であり、実際の分子量は5509.0であり、誤差は0.01%である。
【図10】亜鉛を含まないブタインスリン(上)とB27K-DTrI(下)のゲルクロマトグラフィー、pH7.4リン酸緩衝生理食塩水、流速O.4ml/minで溶離したスーパーデックス75(HR 10/30)カラムによるタンパク質濃度の影響を示すグラフである; 低濃度から高濃度へのタンパク質濃度は、それぞれ40、80、200、400、600μモル/lである。横座標は溶離時間であり、縦座標は280nmの吸光度である。
【図11】ピーク形(上)と保持時間(下)に対するタンパク質濃度の影響を示す図である。横座標はタンパク質濃度であり、縦座標のFsは対称因子であり、Kavは保持因子である。
【図12】pH7.4リン酸緩衝生理食塩水、流速0.4 ml/minで溶離したスーパーデックス75の(HR 10/30)カラムによる亜鉛を含まないブタインスリン(I)、リスプロ(II)、B27K-DTrI(III)、DPI(IV)のゲル電気泳動を示すグラフである; タンパク質濃度は、80μモル/lである。
【図13】本発明の単量体インスリンを示す基本的構造である。
【図14】本発明のB27K-DTrIの生産工程と中国特許第ZL98 110912.8号に教示された従来技術DTI間の比較を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のアミノ酸配列を含むインスリンB鎖。
F V N Q H L C G S H L V E A L Y L V C G E R X23X24X25X26Y27
(ここで、X23、X24、X25、X26は、個々に独立したアミノ酸であり、Gly、Ala、Asp、Glu、Asn、Gln、Ser、Thr、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Pro、Met、His、Valからなるアミノ酸の群より選ばれるか又は存在せず、且つ個々に独立した該アミノ酸の多くても1つは存在せず; 更に、Y27はLysか又はArgである。)
【請求項2】
Y27がLysである、請求項1記載のインスリンB鎖。
【請求項3】
配列X23X24X25X26がGFFYである、請求項1又は請求項2記載のインスリンB鎖。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のインスリンB鎖を含んでいるインスリン分子。
【請求項5】
インスリンが単量体形である、請求項4記載のインスリン。
【請求項6】
下記構造:
【化1】

(ここで、アミノ酸X23、X24、X25、X26は、個々に独立し、Gly、Ala、Asp、Glu、Asn、Gln、Ser、Thr、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Pro、Met、His、Valからなるアミノ酸の群より選ばれるか又は存在せず、且つ個々に独立した該アミノ酸の多くても1つは存在せず; 更に、Y27はLys又はArgである。)
を有する請求項4又は請求項5記載のインスリン分子。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載のインスリンと薬学的に許容しうる担体を含んでいる医薬組成物。
【請求項8】
アミノ末端からカルボキシル末端まで、請求項1記載のインスリンB鎖、結合ペプチド、インスリンA鎖を含んでいる単量体インスリン前駆体。
【請求項9】
請求項1記載のインスリンB鎖又は請求項8記載の単量体インスリン前駆体をエンコードしているDNAの塩基配列。
【請求項10】
請求項9記載のDNAを含有する発現ベクター。
【請求項11】
請求項10記載の発現ベクター又は請求項9記載のDNAを含有するホスト細胞。
【請求項12】
インスリンを調製する方法であって、
単量体インスリン前駆体をエンコードしているDNAを含有するホスト細胞を発現のために培養する工程であって、前記単量体インスリン前駆体がアミノ末端からカルボキシル末端まで、インスリンB鎖、結合ペプチド、インスリンA鎖を含む該前駆体を発現させ、該インスリンB鎖が次のアミノ酸配列:
F V N Q H L C G S H L V E A L Y L V C G E R X23X24X25X26Y27
(ここで、X23、X24、X25、X26は個々に独立し、Gly、Ala、Asp、Glu、Asn、Gln、Ser、Thr、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Pro、Met、His、Valからなるアミノ酸の群より選ばれるか又は存在せず、且つ個々に独立した該アミノ酸の多くても1つは存在せず; 更に、Y27はLys又はArgであり、結合ペプチドはAla-Ala-Lysである。)
を含有する前記工程;
該単量体インスリン前駆体を精製する工程;
該単量体インスリン前駆体をトリプシンで酵素切断する工程;
該単量体インスリンを精製する工程
を含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2006−508695(P2006−508695A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505153(P2005−505153)
【出願日】平成15年7月17日(2003.7.17)
【国際出願番号】PCT/GB2003/003136
【国際公開番号】WO2004/009629
【国際公開日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(505024040)ジェネメディックス パブリック リミテッド カンパニー (1)
【出願人】(505024095)シャンハイ シーエイエス シェンロンダ バイオテック (グループ) カンパニー (1)
【Fターム(参考)】