印刷システム、プログラム、及び、印刷装置
【課題】メモリー容量を削減すること。
【解決手段】インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶノズル列の一部のノズル群により形成する第1画像と別の一部のノズル群により形成する第2画像を重ねて媒体に印刷する場合に、或る画像形成動作において第1画像を形成するノズルの範囲を示す情報を第1のテーブルに記憶させ、第1のテーブルに記憶された範囲に、第1画像を形成する一部のノズル群に対する第2画像を形成する別の一部のノズル群の所定方向のずらし量を加算し、或る画像形成動作において、第2画像を形成するノズルの範囲を算出し、当該範囲を示す情報を第2のテーブルに記憶させ、第1のテーブル及び第2のテーブルに記憶された情報に基づいて印刷データを作成する印刷システム。
【解決手段】インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶノズル列の一部のノズル群により形成する第1画像と別の一部のノズル群により形成する第2画像を重ねて媒体に印刷する場合に、或る画像形成動作において第1画像を形成するノズルの範囲を示す情報を第1のテーブルに記憶させ、第1のテーブルに記憶された範囲に、第1画像を形成する一部のノズル群に対する第2画像を形成する別の一部のノズル群の所定方向のずらし量を加算し、或る画像形成動作において、第2画像を形成するノズルの範囲を算出し、当該範囲を示す情報を第2のテーブルに記憶させ、第1のテーブル及び第2のテーブルに記憶された情報に基づいて印刷データを作成する印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システム、プログラム、及び、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の一つとして、インクを吐出するノズルが所定方向に並んだノズル列を所定方向と交差する移動方向に移動しながらノズルからインクを吐出して画像を形成する画像形成動作と、所定方向である搬送方向に媒体を搬送する搬送動作を繰り返すインクジェットプリンター(以下、プリンター)が知られている。
【0003】
プリンターは、プリンタードライバーが作成した印刷データに基づいて印刷を実施する。プリンタードライバーは、印刷データの作成において、複数の画素データから構成されるマトリクス状の画像データを、各ノズルに割り付ける順に並べ替える処理(ノズル割り付け処理)を実施する。そのために、画像形成動作ごとに、ノズルと、そのノズルが形成すべきラスターライン(移動方向に沿うドット列)の位置とを対応付ける処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−264054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリンターは、2種類の画像、例えば、主画像と背景画像を重ねて印刷する場合に、1つのノズル列に主画像データと背景画像データを割り付けることがある。この場合、各画像データを割り付けるノズルの範囲を知る必要がある。ただし、各画像を印刷するノズル群ごとに、使用ノズルの範囲を決定するためのパラメーターを印刷システムが記憶していると、メモリー容量が増大してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、印刷データを作成するために使用するパラメーターを記憶するメモリー容量を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する為の主たる発明は、(A)印刷制御装置と印刷装置を備える印刷システムであって、(B)前記印刷制御装置は、画像データを構成する複数の画素データの並び順を替え、印刷データを作成し、(C)前記印刷装置は、インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶノズル列と、前記印刷データに基づいて、前記ノズル列と媒体との相対位置を前記所定方向と交差する移動方向に相対移動させながら前記ノズルからインクを吐出する画像形成動作と、前記ノズル列と前記媒体の相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる移動動作と、を繰り返し実行させる制御部と、前記ノズル列の一部のノズル群により形成する第1画像と前記ノズル列の別の一部のノズル群により形成する第2画像を重ねて前記媒体に印刷する印刷方法が設定された場合に、前記一部のノズル群と前記別の一部のノズル群のうち、前記所定方向の前記一の方向側に位置するノズル群よりも前記所定方向の他の方向側に位置するノズル群に先に、前記媒体の所定領域に対してインクを吐出させる制御部と、を有し、(D)前記印刷制御装置と前記印刷装置のうちの少なくとも一方が、前記第1画像を形成する前記一部のノズル群に対する前記第2画像を形成する前記別の一部のノズル群の前記所定方向のずらし量を記憶し、を有し、(E)前記印刷制御装置は、或る画像形成動作において、画像を印刷する各前記ノズルによってドットが形成される前記媒体上の前記所定方向の位置を規定する為の情報と、前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲を示す情報とを、第1のテーブルに記憶させ、前記第1のテーブルに記憶された前記範囲に前記ずらし量を加算し、前記或る画像形成動作において、前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲を算出し、当該範囲を示す情報を第2のテーブルに記憶させ、前記第1のテーブル及び前記第2のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する前記画素データを前記画像データの中から抽出して、前記或る画像形成動作を実施するための前記印刷データを作成する(F)ことを特徴とする印刷システムである。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1Aはプリンターの全体構成ブロック図であり、図1Bはプリンターの斜視図である。
【図2】ヘッドの下面に設けられるノズルの配列を示す図である。
【図3】図3A及び図3Bはインターレース印刷の説明図である。
【図4】上端印刷及び下端印刷の説明図である。
【図5】図5Aから図5Eは上端印刷のパス1に対するスケジューリングテーブルの作成処理を説明する図である。
【図6】図6Aから図6Cは通常印刷のパス4〜6に対するスケジューリングテーブルの作成処理の説明図である。
【図7】図7Aから図7Cはダミースケジューリングテーブルを説明するための概念図である。
【図8】図8Aから図8Cは下端印刷のスケジューリングテーブルを説明する図である。
【図9】プリンターが有する印刷モードを説明する図である。
【図10】表刷りモードの印刷方法を説明する図である。
【図11】表刷りモードの印刷方法を説明する図である。
【図12】図12A及び図12Bは媒体の上端部を印刷する参考例である。
【図13】ノズル割り付け処理の流れを示す図であり、
【図14】表刷りモードの印刷方法に対するノズル領域を示す図である。
【図15】図15Aから図15Dはノズル割り付け処理にて使用するパラメーターを示す図である。
【図16】通常印刷のパス10におけるヘッドテーブルとノズルテーブルを示す図である。
【図17】上端印刷のパス6におけるヘッドテーブルとノズルテーブルを示す図である。
【図18】上端印刷の次のパス7におけるヘッドテーブルとノズルテーブルを示す図である。
【図19】下端印刷のパス22におけるヘッドテーブルとノズルテーブルを示す図である。
【図20】下端印刷の最終パス28におけるヘッドテーブルとノズルテーブルを示す図である。
【図21】画像データの並べ替え・抽出処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0010】
即ち、(A)印刷制御装置と印刷装置を備える印刷システムであって、(B)前記印刷制御装置は、画像データを構成する複数の画素データの並び順を替え、印刷データを作成し、(C)前記印刷装置は、インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶノズル列と、前記印刷データに基づいて、前記ノズル列と媒体との相対位置を前記所定方向と交差する移動方向に相対移動させながら前記ノズルからインクを吐出する画像形成動作と、前記ノズル列と前記媒体の相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる移動動作と、を繰り返し実行させる制御部と、前記ノズル列の一部のノズル群により形成する第1画像と前記ノズル列の別の一部のノズル群により形成する第2画像を重ねて前記媒体に印刷する印刷方法が設定された場合に、前記一部のノズル群と前記別の一部のノズル群のうち、前記所定方向の前記一の方向側に位置するノズル群よりも前記所定方向の他の方向側に位置するノズル群に先に、前記媒体の所定領域に対してインクを吐出させる制御部と、を有し、(D)前記印刷制御装置と前記印刷装置のうちの少なくとも一方が、前記第1画像を形成する前記一部のノズル群に対する前記第2画像を形成する前記別の一部のノズル群の前記所定方向のずらし量を記憶し、を有し、(E)前記印刷制御装置は、或る画像形成動作において、画像を印刷する各前記ノズルによってドットが形成される前記媒体上の前記所定方向の位置を規定する為の情報と、前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲を示す情報とを、第1のテーブルに記憶させ、前記第1のテーブルに記憶された前記範囲に前記ずらし量を加算し、前記或る画像形成動作において、前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲を算出し、当該範囲を示す情報を第2のテーブルに記憶させ、前記第1のテーブル及び前記第2のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する前記画素データを前記画像データの中から抽出して、前記或る画像形成動作を実施するための前記印刷データを作成する、(F)ことを特徴とする印刷システムである。
このような印刷システムによれば、印刷データを作成するために使用するパラメーターを記憶するメモリー容量を削減することができる。
【0011】
かかる印刷システムであって、前記印刷制御装置と前記印刷装置のうちの少なくとも一方が、前記或る画像形成動作において前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲を規定する為の情報を、記憶すること。
このような印刷システムによれば、第1画像を形成するノズルの範囲を規定することができる。
【0012】
かかる印刷システムであって、前記印刷制御装置は、前記第1のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する前記画素データを前記第1画像の前記画像データの中から抽出し、且つ、前記第2のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する前記画素データを前記第2画像の前記画像データの中から抽出し、前記第1画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データにて前記前記第1画像を形成する前記ノズルからインクが吐出され、且つ、前記第2画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データにて前記第2画像を形成する前記ノズルからインクが吐出されるように、前記画素データの並び順を替えること。
このような印刷システムによれば、1つのノズル列に異なる種類の画像データを割り付けることができる。
【0013】
かかる印刷システムであって、前記印刷制御装置は、前記ノズル列において前記所定方向の前記一の方向側に位置する前記ノズルに割り付ける前記画素データから順に並べ、前記媒体の所定領域に対して前記第1画像よりも先に前記第2画像を印刷する印刷モードの場合、前記印刷制御装置は、前記第2のテーブルよりも先に前記第1のテーブルを参照し、前記第1画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データの後に、前記第2画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データを並べ、前記媒体の所定領域に対して前記第2画像よりも先に前記第1画像を印刷する印刷モードの場合、前記印刷制御装置は、前記第1のテーブルよりも先に前記第2のテーブルを参照し、前記第2画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データの後に、前記第1画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データを並べること。
このような印刷システムによれば、1つのノズル列に異なる種類の画像データを割り付けることができる。
【0014】
かかる印刷システムであって、前記印刷制御装置は、前記或る画像形成動作にて前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲として、前記第1画像を形成する前記ノズルのうちの前記所定方向における最も前記一の方向側に位置する前記ノズルである第1ノズルと、前記第1画像を形成する前記ノズルのうちの前記所定方向における最も前記他の方向側に位置する前記ノズルである第2ノズルとを、前記第1のテーブルに記憶させ、前記或る画像形成動作にて前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲として、前記第1ノズルに前記ずらし量を加算した前記ノズルと、前記第2ノズルに前記ずらし量を加算した前記ノズルとを、前記第2のテーブルに記憶させること。
このような印刷システムによれば、第2画像を形成するノズルの範囲を算出する処理を容易にすることができる。
【0015】
かかる印刷システムであって、前記印刷制御装置は、前記或る画像形成動作にて前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲として、前記第1画像を形成する各前記ノズルの種類を前記第1のテーブルに記憶させ、前記或る画像形成動作にて前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲として、前記第1画像を形成する前記ノズルのうちの前記所定方向における最も前記一の方向側に位置する前記ノズルに前記ずらし量を加算した前記ノズルと、前記第1画像を形成する前記ノズルのうちの前記所定方向における最も前記他の方向側に位置する前記ノズルに前記ずらし量を加算した前記ノズルとを、前記第2のテーブルに記憶させること。
このような印刷システムによれば、第2のテーブルの作成処理を容易にでき、メモリー容量を削減することができる。
【0016】
かかる印刷システムであって、前記第1画像と前記第2画像は同じ画像であること。
このような印刷システムによれば、滲みを抑制しつつ画像を濃く印刷することができる。
【0017】
また、インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶノズル列と媒体との相対位置を前記所定方向と交差する移動方向に相対移動させながら前記ノズルからインクを吐出する画像形成動作と、前記ノズル列と前記媒体の相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる移動動作と、を繰り返す印刷装置が、前記ノズル列の一部のノズル群により形成する第1画像と前記ノズル列の別の一部のノズル群により形成する第2画像を重ねて前記媒体に印刷する印刷方法が設定された場合に、前記一部のノズル群と前記別の一部のノズル群のうち、前記所定方向の前記一の方向側に位置するノズル群よりも前記所定方向の他の方向側に位置するノズル群に先に、前記媒体の所定領域に対してインクを吐出するための印刷データを、コンピューターに作成させるためのプログラムであって、或る画像形成動作において、画像を印刷する各前記ノズルによってドットが形成される前記媒体上の前記所定方向の位置を規定する為の情報と、前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲を示す情報とを、第1のテーブルに記憶させることと、前記第1のテーブルに記憶された前記範囲に、前記第1画像を形成する前記一部のノズル群に対する前記第2画像を形成する前記別の一部のノズル群の前記所定方向のずらし量を加算し、前記或る画像形成動作において、前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲を算出し、当該範囲を示す情報を第2のテーブルに記憶させることと、前記第1のテーブル及び前記第2のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する画素データを画像データの中から抽出して、前記或る画像形成動作を実施するための前記印刷データを作成することと、を前記コンピューターに実行させるためのプログラムである。
このようなプログラムによれば、印刷データを作成するために使用するパラメーターを記憶するメモリー容量を削減することができる。
【0018】
また、インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶノズル列と、印刷データに基づいて、前記ノズル列と媒体との相対位置を前記所定方向と交差する移動方向に相対移動させながら前記ノズルからインクを吐出する画像形成動作と、前記ノズル列と前記媒体の相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる移動動作と、を繰り返し実行させる制御部であって、前記ノズル列の一部のノズル群により形成する第1画像と前記ノズル列の別の一部のノズル群により形成する第2画像を重ねて前記媒体に印刷する印刷方法が設定された場合に、前記一部のノズル群と前記別の一部のノズル群のうち、前記所定方向の前記一の方向側に位置するノズル群よりも前記所定方向の他の方向側に位置するノズル群に先に、前記媒体の所定領域に対してインクを吐出させる制御部と、を有し、前記制御部は、或る画像形成動作において、画像を印刷する各前記ノズルによってドットが形成される前記媒体上の前記所定方向の位置を規定する為の情報と、前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲を示す情報とを、第1のテーブルに記憶させ、前記第1のテーブルに記憶された前記範囲に、前記第1画像を形成する前記一部のノズル群に対する前記第2画像を形成する前記別の一部のノズル群の前記所定方向のずらし量を加算し、前記或る画像形成動作において、前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲を算出し、当該範囲を示す情報を第2のテーブルに記憶させ、前記第1のテーブル及び前記第2のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する画素データを画像データの中から抽出して、前記或る画像形成動作を実施するための前記印刷データを作成する、ことを特徴とする印刷装置である。
【0019】
このような印刷装置によれば、印刷データを作成するために使用するパラメーターを記憶するメモリー容量を削減することができる。
【0020】
===印刷システムについて===
図1Aは、プリンター1の全体構成ブロック図であり、図1Bは、プリンター1の斜視図である。以下、インクジェットプリンター(プリンター1)とコンピューター60が接続された印刷システムを例に挙げて実施形態を説明する。コンピューター60は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるための印刷データをプリンター1に出力する。
【0021】
コントローラー10(制御部)は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11はコンピューター60とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12はプリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13はCPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12はユニット制御回路14により各ユニットを制御する。なお、プリンター1内の状況を検出器群50が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0022】
搬送ユニット20は、媒体Sを印刷可能な位置に送り込み、印刷時には搬送方向(所定方向)に所定の搬送量で媒体Sを搬送させるものである。
キャリッジユニット30は、ヘッド41を搬送方向と交差する移動方向に移動させるためのものであり、キャリッジ31を有する。
【0023】
ヘッドユニット40は、媒体Sにインクを吐出するためのものであり、ヘッド41を有する。ヘッド41はキャリッジ31によって移動方向に移動する。ヘッド41の下面には、インク吐出部であるノズルが複数設けられ、各ノズルには、インクが入った圧力室が設けられている。なお、ノズルからのインク吐出方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけて圧力室を膨張・収縮させることによりインクを吐出するピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によってインクを吐出させるサーマル方式でもよい。
【0024】
図2は、ヘッド41の下面に設けられるノズルの配列を示す図である。なお、図はヘッド41の上面から仮想的にノズルを見た図である。ヘッド41の下面には、180個のノズルが搬送方向に所定の間隔(ノズルピッチd)で並んだノズル列が5列形成されている。図示するように、ブラックインクを吐出するブラックノズル列K・シアンインクを吐出するシアンノズル列C・マゼンタインクを吐出するマゼンタノズル列M・イエローインクを吐出するイエローノズル列Y・白インクを吐出するホワイトノズル列Wが、移動方向に並んでいる。なお、各ノズル列が有する180個のノズルに対して、搬送方向の下流側(一の方向側に相当)のノズルから順に小さい番号を付す(#1〜#180)。
【0025】
このようなプリンター1では、移動方向に沿って移動するヘッド41からインク滴を断続的に吐出させて媒体上にドットを形成するドット形成処理と、媒体をヘッド41に対して搬送方向に搬送する搬送処理とが繰り返される。そうすることで、先のドット形成処理により形成されたドットの位置とは異なる媒体上の位置に、後のドット形成処理にてドットを形成することができ、媒体上に2次元の画像を印刷することができる。なお、ヘッド41がインク滴を吐出しながら移動方向に1回移動する動作(1回のドット形成処理)を「パス」と呼ぶ。
【0026】
<プリンタードライバーについて>
コンピューター60には、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換し、印刷データをプリンター1に出力するためのプログラム(プリンタードライバー)がインストールされている。プリンタードライバーは、CD−ROMなどの記録媒体(コンピューターが読み取り可能な記録媒体)に記録されていたり、インターネットを介してコンピューターにダウンロード可能であったりする。なお、プリンタードライバーは、メモリーに記憶されたプログラムに従って、コンピューター60のハードウェア資源を利用して、以下の処理を実行する。
【0027】
以下、印刷データの作成フローを説明する。プリンタードライバーは、まず、解像度変換処理を実施する。解像度変換処理は、アプリケーションプログラムから出力された画像データを、媒体に印刷する際の解像度に変換する処理である。なお、解像度変換処理後の画像データは、RGB色空間により表される多階調(例えば256階調)のRGBデータである。画像データは、印刷画像を構成する画素に関する画素データから構成される。
【0028】
次に、プリンタードライバーは色変換処理を実施する。色変換処理は、プリンター1にて印刷可能なように、プリンター1が有するインクの色に応じて、RGBデータをCMYK色空間により表されるCMYKデータに変換する処理である。その後、プリンタードライバーはハーフトーン処理を実施する。ハーフトーン処理は、高階調数のデータを、プリンターが形成可能な階調数のデータに変換する処理である。例えば、ハーフトーン処理により、256階調を示すデータが、4階調を示す2ビットデータに変換される。ハーフトーン処理後の画素データは、画素に対応する媒体上の領域に形成するドットに関するデータである。例えば、4階調の画素データであれば、「大ドット形成」「中ドット形成」「小ドット形成」「ドット無し」の何れかが示される。なお、アプリケーションプログラムから出力された画像データだけでなく、例えば、白インクにより背景画像を印刷する場合には、プリンタードライバーによって、背景画像用のデータ(4階調のWデータ)が作成される。
【0029】
最後にプリンタードライバーは、ノズル割り付け処理を実施する。ノズル割り付け処理は、マトリクス状に配置された画素データから構成される画像データを、プリンターに転送すべきデータ順に並び替える処理である(詳細は後述)。プリンタードライバーは、これらの処理を経て作成された印刷データをプリンター1に送信する。プリンター1は受信した印刷データに基づき、印刷を実施する。
【0030】
===参考実施形態===
<印刷方法>
本実施形態を説明する前に参考実施形態を説明する。参考実施形態では、ホワイトノズル列Wを使用することなく、4色のノズル列(YMCK)を使用して、インターレース印刷により、媒体上に1種類の画像を印刷する。また、4色のノズル列がそれぞれ画像を印刷するために使用するノズル(使用ノズル)の範囲は同じである。
【0031】
図3A及び図3Bは、インターレース印刷の説明図である。図3Aはパス1〜パス5のドット形成の様子を示し、図3Bはパス1〜パス6のドット形成の様子を示す。4色ノズル列(YMCK)のうちの一つのノズル列を代表して示し、ノズル列に属するノズル数も少なくする。図中の黒丸で示されるノズルはインクを吐出可能なノズル(使用ノズル)であり、白丸で示されるノズルはインク吐出不可なノズル(不使用ノズル)である。また、説明のため、ヘッドを搬送方向上流側に移動させて図を示す。黒丸ドットは、最後のパスで形成されるドットであり、白丸ドットは、それ以前のパスで形成されたドットである。
【0032】
「インターレース印刷」とは、1回のパスで記録されるラスターライン(移動方向に沿うドット列)の間にそのパスで記録されないラスターラインが挟まれる印刷方法である。インターレース印刷では、媒体が搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、各ノズルが、その直前のパスで記録されたラスターラインのすぐ上のラスターラインを記録する。このように搬送量を一定にして記録を行うためには、(1)インクを吐出可能なノズル数N(整数)がノズルピッチk・Dのkと互いに素の関係にあること(kが2以上)、(2)搬送量FはN・Dに設定されること、が条件となる。図3では、ノズルピッチを3・Dとし、kが3なので、Nとkが互いに素の関係を満たすため、6個のノズルのうちの5個のノズル(♯1〜♯5)を用いる。また、5個のノズルが用いられるため、紙は搬送量5・Dにて搬送される。
【0033】
その結果、図示するように、最初のラスターラインをパス1のノズル♯1が形成し、2番目のラスターラインをパス1のノズル♯2が形成し、3番目のラスターラインをパス2のノズル♯1が形成し、4番目のラスターラインをパス1のノズル♯3が形成する。そして、5番目以降のラスターラインから搬送方向に連続してラスターラインが形成される。このように、1〜4番目のラスターラインは搬送方向に連続して形成されていない。同様に、インターレース印刷の最後でも、一部のラスターラインが連続して形成されないことがある。そこで、プリンター1は、上端印刷、及び、下端印刷を行うことにより、搬送方向に連続するラスターラインを形成する。
【0034】
図4は、上端印刷及び下端印刷の説明図である。パス1〜パス3までが上端印刷であり、パス4〜パス9までが通常印刷であり、パス10〜パス12までが下端印刷である。上端印刷及び下端印刷では媒体搬送量をDとする。図示するように上端印刷・下端印刷を行うことにより、1番目のラスターラインから最後のラスターラインまで搬送方向に連続するラスターラインを形成することができる。
【0035】
ところで、通常印刷ではノズル♯1〜♯5が使用ノズルであるにもかかわらず、上端印刷のパス1のノズル♯5は不使用ノズルである。仮にパス1のノズル♯5からインクを吐出して13番目のラスターラインを形成すると、パス5のノズル♯1が同じラスターラインを形成するので、13番目のラスターラインが2重に形成されてしまい、他のラスターラインと比べて濃く形成されてしまう。ここでは、通常印刷のパス5のノズル♯1を優先し、パス1のノズル♯5を不使用ノズルとしている。このように、上端印刷を行うパスのノズルよりも、通常印刷を行うパスのノズルを優先することにより、通常印刷により形成されるラスターラインが多くなり、印刷画像の画質が向上する。下端印刷でもパス11のノズル♯1〜♯3、及び、パス12のノズル♯1を不使用ノズルとする。このように、上端印刷や下端印刷を行うと、インクを吐出すべきでないノズル(不使用ノズル)が出現する。このため、プリンタードライバーは、印刷データの作成時に、不使用ノズルを決定する必要がある。
【0036】
<ノズル割り付け処理>
この参考実施形態では、プリンタードライバーは、ノズル割り付け処理に際し、スケジューリングテーブルを作成する。スケジューリングテーブルは、ラスターラインの位置(番号)と、ラスターラインを作成するノズルを対応付けたテーブルである。プリンタードライバーは、このスケジューリングテーブルを作成することによって、どのノズルを使用ノズルとし、また、どのノズルを不使用ノズルにするのかを決定する。プリンタードライバーは、あるパスの各ノズルと、その各ノズルが形成すべきラスターラインの位置とを対応付ける際に、そのパスにて各ノズルが対応するラスターラインの位置と、他のパスにて各ノズルが対応するラスターラインの位置とを比較し(仮想的な印刷を行い)、スケジューリングテーブルを作成する。
【0037】
図5A〜図5Eは、上端印刷のパス1に対するスケジューリングテーブルの作成処理を説明する図である。各図の下には、作成中のスケジューリングテーブルの様子が示されており、各図の上には、スケジューリングテーブル作成時の処理の概念図が示されている。なお、プリンタードライバーは、仮想的な上端印刷のパラメーターと仮想的な通常印刷のパラメーター(ノズルピッチ、搬送量、開始位置など)を用いて、スケジューリングテーブルを作成する。
【0038】
図5Aに示すように、プリンタードライバーは、まず、仮想的な上端印刷のパラメーターにより、該当パスm(図はパス1)のノズル♯1〜#5までの位置(対応するラスターラインの媒体上の位置)を算出する。次に、プリンタードライバーは、次のパス(図はパス2)のノズル♯1〜#5の位置を算出する。プリンタードライバーは、次のパスのノズル#1〜#5の各位置lがスケジューリングテーブルに登録されている場合、位置lのスケジューリングデータを消去する。これをパス1の各ノズル#1〜#5の位置の範囲とパス1以降の各ノズルの位置とが重複しなくなるまで、繰り返し実行される。つまり、上端印刷では、パスmのノズルの位置と、パスm以降のノズルの位置とが比較され、位置が一致するものがあれば、その位置のスケジューリングデータが消去される。
【0039】
図5Bは、パス1のスケジューリングテーブルに対して、パス2のノズル位置を比較する様子を示す。比較の結果、位置が一致するものがないので、スケジューリングテーブルは図5Aのものと変化はない。図5Cは、パス2の比較が終了したときまでのスケジューリングテーブルに対して、パス3のノズル位置を比較する様子を示す。比較の結果、位置が一致するものがないので、スケジューリングテーブルは図5Aのものと変化はない。図5Dは、パス3の比較が終了したときまでのスケジューリングテーブルに対して、パス4のノズル位置を比較する様子を示す。なお、パス4は通常印刷に属するので、パス4の各ノズルの位置は、仮想的な通常印刷のパラメーターから算出される。比較の結果、位置が一致するものがないので、スケジューリングテーブルは図5Aのものと変化はない。
【0040】
図5Eは、パス4の比較が終了したときまでのスケジューリングテーブルに対して、パス5のノズルの位置を比較する様子を示す。パス5のノズル♯1は13番目のラスターラインの位置にあり、スケジューリングテーブルには「位置:13」のスケジューリングデータが既に登録されているので、プリンタードライバーは、このスケジューリングデータを消去する。こうして、上端印刷の各パスのスケジューリングテーブルを作成する。
【0041】
図6A〜図6Cは、通常印刷のパス4〜6に対するスケジューリングテーブルの作成処理の説明図である。各図の下には、パス4〜パス6のスケジューリングテーブルが示され、各図の上には、スケジューリングテーブル作成時の処理内容の概念図が示されている。
【0042】
プリンタードライバーは、通常印刷の各パスm(図はパス4〜6)の各ノズル#1〜#5の位置lを算出する。各ノズル#iの位置lは、仮想的な通常印刷のパラメーターに基づき算出される。そして、プリンタードライバーは、位置lとノズル#iとを対応付けて、スケジューリングテーブルに登録する。この参考実施形態では、上端・下端印刷で形成されるラスターラインよりも通常印刷のラスターラインを優先させるため、上端印刷のように該当パスの各ノズルの位置と他のパスのノズルの位置とを比較しない。
【0043】
図7Aから図7Cは、ダミースケジューリングテーブルを説明するための概念図である。下端印刷の場合、上記の上端印刷や通常印刷の場合とは異なり、各パスのスケジューリングテーブルを作成する前に、ダミースケジューリングテーブルを作成し、このダミースケジューリングテーブルに基づいて各パスのスケジューリングテーブルを作成する。ダミースケジューリングテーブルは、通常印刷の最後のパス(図ではパス9)の後も通常印刷が行われたと仮定し、その後のパスによって形成されるラスターラインの位置を示すものである。このため、ダミースケジューリングテーブルの作成処理の際には、仮想的な通常印刷のパラメーターが用いられる。ダミースケジューリングテーブルの位置が、通常印刷を実施した場合に形成されるラスターラインの位置であり、下端印刷で形成すべきラスターラインの位置である。そのため、ダミースケジューリングテーブルでは、ノズル番号と位置を対応付けることなく、位置だけを示す。ダミースケジューリングテーブルに登録された位置が、印刷領域外の位置に到達するまで、ダミースケジューリングテーブルが作成される。
【0044】
図8Aから図8Cは、下端印刷のスケジューリングテーブルを説明する図である。プリンタードライバーは、下端印刷の各パスのノズルの位置とダミースケジューリングテーブルに登録された位置とを比較し、ダミースケジューリングテーブルに登録されている位置のデータだけスケジューリングテーブルに登録し、そうでないデータは削除する。
【0045】
まず、プリンタードライバーは、仮想的な下端印刷のパラメーター(ノズルピッチ、搬送量、開始位置など)に基づき、下端印刷の該当パスmの各ノズル♯iの位置lを算出する。次に、プリンタードライバーは、算出された下端印刷の各ノズル♯iの位置lとダミースケジューリングテーブルの位置とを比較し、算出された位置lがダミースケジューリングテーブルに登録されている位置と一致するか否かを比較する。ダミースケジューリングテーブルに位置lが存在する場合、下端印刷において位置lのラスターラインを形成するために、プリンタードライバーは、パスmのスケジューリングテーブルに、位置lとノズル♯iとを対応付けて登録する。そして、プリンタードライバーは、ダミースケジューリングテーブルから位置lの登録を削除する。一方、ダミースケジューリングテーブルに位置lが存在しない場合、下端印刷において位置lのラスターラインを形成する必要がないので、プリンタードライバーは、スケジューリングテーブルの登録処理を行わない。
【0046】
図8では、ダミースケジューリングテーブルの登録内容(位置l)を丸印で示し、黒丸は登録されている位置を示し、白丸は形成するノズルが登録されたため削除された位置を示している。図8Aに示されるように、パス10のノズル♯1〜ノズル♯5の位置は、それぞれダミースケジューリングテーブルに登録されている。このため、パス10のスケジューリングテーブルには、図8Aに示される通りの5ノズル分の情報が記憶される。そして、パス10で位置が一致したダミースケジューリングテーブルの5個の位置が削除される(白丸に変更される)。そして、パス11の各ノズルの位置とダミースケジューリングテーブルとを比較した結果、パス11のスケジューリングテーブルには2個の情報が記憶され、パス12のスケジューリングテーブルには4個の情報が記憶される。こうして下端印刷のスケジューリングテーブルが作成される。
【0047】
つまり、参考実施形態では、ノズル割り付け処理に際し、プリンタードライバーが、上端・下端印刷、及び、通常印刷の各パスに対して、スケジューリングテーブルを作成し、各パスにてラスターラインを形成するノズル(使用ノズル)と、各使用ノズルが形成すべきラスターラインの位置とを対応付ける。その結果、マトリクス状の画像データから各パスで使用する画素データを抽出することができ、抽出した画素データを各パスの使用ノズルに割り付ける順に並べ替える処理を実施することができる。
【0048】
===本実施形態===
<印刷モード>
図9は、本実施形態のプリンター1が有する印刷モードを説明する図である。プリンター1は、4色のインク(YMCK)によって印刷する主画像と、背景画像とを重ねて印刷する印刷方法が設定された場合に、図示する「表刷りモード」と「裏刷りモード」の何れかのモードを設定する。表刷りモードは、主画像を印刷面側から見るように印刷するモードである。この場合、媒体の所定領域に対して主画像よりも背景画像が先に印刷される。一方、裏刷りモードは、透明媒体を使用する場合に実施され、主画像を印刷面と反対側から見るように印刷するモードである。この場合、媒体の所定領域に対して背景画像よりも主画像が先に印刷される。
【0049】
本実施形態では、白インクに4色インク(YMCK)のうちの少なくとも1色を混ぜて、白色の色味を調整した背景画像(以下、調色背景画像とも言う)を印刷する。このように、調色背景画像と主画像を重ねて印刷することで、発色性の良い画像を印刷することができる。また、媒体が透明である場合には、主画像と背景画像を重ねて印刷することで、印刷物の反対側が透けてしまうことを防止できる。
【0050】
<印刷方法>
図10及び図11は、主画像と調色背景画像を重ねて印刷する表刷りモードの印刷方法を説明する図である。図10は、媒体の搬送方向下流側の端部である上端部を印刷する「上端印刷」と、媒体の端部以外の中央部を印刷する「通常印刷」の様子を示す。図11は、通常印刷と、媒体の搬送方向上流側の端部である下端部を印刷する「下端印刷」の様子を示す。図中では、ノズル列に属するノズル数を24個に減らして描き、4色インク(YMCK)を吐出するノズル列をまとめて「カラーノズル列Co」と示す。
【0051】
以下では、表刷りモードの印刷方法(図9の左図)を例に挙げて説明する。表刷りモードでは、調色背景画像を主画像よりも先に媒体に印刷する。よって、調色背景画像を印刷する使用ノズルを、主画像を印刷する使用ノズルよりも搬送方向の上流側のノズルとする。図10の左図のヘッド41は、通常印刷時の使用ノズルを示す図である。ホワイトノズル列Wの上流側のノズル群(#16〜#24)、及び、カラーノズル列Coの上流側のノズル群(#16〜#24)を、調色背景画像用の使用ノズル(○)とする。一方、カラーノズル列Coの下流側のノズル群(#1〜#9)を、主画像用の使用ノズル(▲)とする。このように、調色背景画像用の使用ノズルを主画像用の使用ノズルよりも搬送方向上流側のノズルに設定することで、媒体の所定領域に対して主画像よりも先に調色背景画像を印刷することができる。また、調色背景画像を印刷するパスと主画像を印刷するパスとを異ならせることができ、画像の滲みを抑制することができる。
【0052】
具体的な印刷については図10の右図に示す。図10の右図は、各パスのノズルの位置関係を示す図である。実際の印刷ではヘッドに対して媒体が搬送方向下流側に搬送されるが、説明のため、図中ではヘッドを搬送方向上流側に遷移させる。また、図中では、調色背景画像用の使用ノズル(○)と主画像用の使用ノズル(▲)を1つのノズル列で示す。そして、ラスターライン(移動方向に沿うドット列)が搬送方向に並ぶ間隔(以下、「ノズル間ピッチ」)を、ノズルピッチと等しい長さ「1・d」とする。よって、ノズルピッチd内に形成されるラスターライン数(以下、「ノズル間ピッチ数」と言う)は「1」となる。
【0053】
そして、通常印刷では、1回の媒体搬送量をノズルピッチdの3倍の長さである「3d」とする。即ち、通常印刷では、ヘッド41を移動方向に移動させながら、上流側のノズル群(○)で調色背景画像を印刷し、下流側のノズル群(▲)で主画像を印刷する画像形成動作と、搬送量3dで媒体を搬送する搬送動作とが、繰り返し実施される。その結果、通常印刷では、パスごとに、図中の太枠で囲う画像領域が完成する。1回の媒体搬送量がノズルピッチの3倍であり、ノズル間ピッチ数が1であるため、1回のパスごとに3つのラスターラインが完成する。これは、太枠内において搬送方向にノズルが3つ並んでいることからも分かる。つまり、通常印刷では、あるパスで形成される画像の搬送方向上流側(又は下流側)の端部と、その次のパスで形成される画像の上流側(又は下流側)の端部とのずれ量が、3つのラスターライン分の長さとなる。
【0054】
また、図中の太枠内において、移動方向の左側から順に3つの調色背景画像用の使用ノズル(○)と3つの主画像用の使用ノズル(▲)が並んでいる。この事から、調色背景画像を構成する1つのラスターラインが3回のパス(3つのノズル)で印刷され、主画像を構成する1つのラスターラインが3回のパス(3つのノズル)で印刷される事が分かる。このように、1つのラスターラインを複数のノズルで印刷すると(所謂オーバーラップ印刷を実施すると)、不良ノズルが生じたとしても印刷画像の劣化を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、主画像用の使用ノズル(#1〜#9)と背景画像用の使用ノズル(#16〜#24)の間に、インクを吐出しない「乾燥用ノズル(×,#10〜#15)」を設ける。そうすることで、媒体の所定領域は、調色背景画像用の使用ノズルと対向した後に、乾燥用ノズルと対向し、その後に主画像用の使用ノズルと対向することになる。よって、媒体の所定領域が乾燥用ノズルと対向する時間分だけ、背景画像の乾燥時間を確保することができ、画像の滲みを抑制することができる。なお、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さ(図10では6d)は、通常印刷時の媒体搬送量(3d)の整数倍(2倍)であることが好ましい。そうすることで、媒体が乾燥用ノズルと対向するパス数、即ち、乾燥時間を一定にすることができ、画像の濃度むらを抑制できる。
【0056】
次に、上端印刷について説明する。図10に示すように、上端印刷の媒体搬送量dを通常印刷の媒体搬送量3dよりも短くする。なお、あるパスの前後のパスのうちの少なくとも一方の媒体搬送量が、通常印刷時の媒体搬送量3dよりも短い場合、そのパスは上端印刷とする。そのため、図10ではパス1〜パス8を上端印刷とする。
【0057】
ところで、通常印刷では、図10の左図に示すように、カラーノズル列Coの搬送方向下流側のノズル群(#1〜#9)を主画像用の使用ノズルとし、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向上流側のノズル群(#16〜#24)を調色背景画像用の使用ノズルとしている。しかし、上端印刷時には、通常印刷時の調色背景画像用の使用ノズル(#16〜#24)よりも搬送方向下流側のノズルを使用して、調色背景画像が印刷される。例えば、図10のパス1ではノズル#8〜#10を使用して調色背景画像が印刷される。
【0058】
図12A及び図12Bは、媒体の上端部を印刷する参考例の印刷方法を示す図である。図12Aでは、本実施形態の上端印刷と同様に、媒体搬送量(d)が通常印刷時の媒体搬送量(3d)よりも短い。ただし、図12Aの上端印刷では、調色背景画像用の使用ノズルを通常印刷と同じにする。即ち、調色背景画像用の使用ノズルを上流側のノズル(#16〜#24)に固定し、主画像用の使用ノズルを下流側のノズル(#1〜#9)に固定する。表刷りモードの印刷開始時には、媒体の上端部と調色背景画像用の使用ノズルとが対向する。そのため、上端印刷時においても、調色背景画像用の使用ノズルを上流側のノズルに設定してしまうと、ヘッド41に対する媒体の印刷開始位置が比較的に上流側になってしまう。図12Aでは、ノズル#18の位置が印刷開始位置となる。その結果、ヘッド41からの媒体のはみ出し量が多くなったり、媒体の余白量が多くなったりしてしまう。
【0059】
また、図12Bの参考例では、媒体の上端部を印刷する際にも媒体搬送量を短くすることなく、通常印刷時の媒体搬送量3dとする。即ち、印刷開始時から通常印刷を実施し、印刷可能領域よりも上流側に位置するノズルからインクを吐出する。そのため、図12Aと同様に媒体の上端部を印刷する際にも、通常印刷時の調色背景画像用の使用ノズル(#16〜#24)、即ち、上流側のノズル群を使用することになる。よって、ヘッド41に対する媒体の印刷開始位置が比較的に上流側になってしまう。図12Bではノズル#22の位置が印刷開始位置となり、印刷開始位置が図12Aの参考例よりも更に搬送方向上流側になってしまう。
【0060】
そこで、本実施形態では、媒体の上端部を印刷する際に、通常印刷時の調色背景画像用の使用ノズル(#16〜#24)よりも搬送方向下流側のノズルを使用して調色背景画像を印刷し、搬送量(d)を通常印刷時の媒体搬送量(3d)よりも短くする。そうすることで、ヘッド41に対する媒体の印刷開始位置を比較的に下流側にすることができ、ヘッド41からの媒体はみ出し量や媒体余白量を少なくすることができる。
【0061】
ところで、画像全域において、背景画像を印刷してから主画像を印刷するまでの時間間隔、即ち、乾燥時間を一定にすることが好ましい。そうすることで、画像に濃度むらが生じてしまうことを抑制できる。そのために、上端印刷と通常印刷においてドット発生の仕方を同じにする(ドット記録方法を同じにする)。ドット発生の仕方を同じにするとは、上端印刷と通常印刷において、あるパスで形成される画像の搬送方向上流側の端部と、その次のパスで形成される画像の搬送方向上流側の端部との、搬送方向のずれ量を一定にする。
【0062】
図10の通常印刷では、媒体搬送量がノズルピッチの3倍であり、ノズル間ピッチ数が1であるため、前後のパスで形成される各画像の上流側端部のずれ量が3つのラスターライン分の長さとなる。よって、上端印刷においても、前後のパスで形成される各画像の上流側端部のずれ量を3つのラスターライン分の長さにする。ただし、上端印刷では通常印刷に比べて媒体搬送量が短い。そこで、上端印刷では、図10に示すようにパスごとに、調色背景画像用の使用ノズル(○)の数を増やし、また、調色背景画像用の使用ノズルの位置を搬送方向上流側にずらす。
【0063】
上端印刷時の媒体搬送量がノズルピッチdの1倍の長さであるため、調色背景画像用の使用ノズルの位置(最上流側の使用ノズルの位置)を2ノズル分だけ上流側にずらす。例えば、図10のパス1ではノズル#8から「#10」で調色背景画像を印刷し、パス2ではノズル#7から「#12」で調色背景画像を印刷し、パス3ではノズル#6から「#14」で調色背景画像を印刷する。そうすることで、上端印刷においても、前後のパスで形成される各画像の上流側端部のずれ量を3つのラスターライン分の長さにすることができる。つまり、上端印刷時の媒体搬送量dと、上端印刷時にパスごとに使用ノズルの位置(最上流側の使用ノズルの位置)を上流側にずらす量2dとの合計量を、通常印刷時の媒体搬送量3dと等しくする。
【0064】
同様に、下端印刷(図11)においても媒体搬送量dを通常印刷時の媒体搬送量3dよりも短くする。また、印刷終了時に媒体は主画像用の使用ノズル(▲)と対向することになる。そのため、仮に、下端印刷においても通常印刷と同様に搬送方向下流側のノズル(#1〜#9)にて主画像を印刷したとすると、印刷終了位置が比較的に下流側になってしまう。そこで、本実施形態の下端印刷(図11)では、通常印刷時の主画像用の使用ノズル(#1〜#9)よりも搬送方向上流側のノズルを使用して主画像を印刷する。そうすることで、ヘッド41に対する媒体の印刷終了位置を比較的に上流側にすることができる。
【0065】
また、下端印刷においても、通常印刷と同じドット発生の仕方にする(同じドット記録方法にする)。ドット発生の仕方を同じにするとは、下端印刷と通常印刷において、あるパスで形成される画像の搬送方向下流側の端部と、その次のパスで形成される画像の搬送方向下流側の端部との、搬送方向のずれ量を一定にする。例えば、図11の通常印刷では、前後のパスで形成される画像の下流側端部のずれ量が、3つのラスターライン分の長さに相当する。ただし、下端印刷では通常印刷に比べて媒体搬送量が短い。そこで、下端印刷では、図11に示すように、パスごとに、主画像用の使用ノズルの数(▲)を減らし、また、主画像用の使用ノズルの位置を搬送方向上流側にずらす。
【0066】
具体的には、下端印刷時の媒体搬送量がノズルピッチdの1倍の長さであるため、主画像用の使用ノズルの位置(最下流側の使用ノズルの位置)を2ノズル分だけ上流側にずらす。例えば、図11のパス23ではノズル「#11」から#19で主画像を印刷し、パス24ではノズル「#13」から#18で主画像を印刷し、パス25ではノズル「#15」から#17で主画像を印刷する。そうすることで、下端印刷においても通常印刷と同様に、前後のパスで形成される画像の下流側端部のずれ量を3つのラスターライン分の長さにすることができる。つまり、下端印刷時の媒体搬送量dと、下端印刷時にパスごとに使用ノズルの位置(最下流側の使用ノズルの位置)を上流側にずらす量2dとの合計量を、通常印刷時の媒体搬送量3dと等しくする。
【0067】
なお、ここまで、表刷りモード(図9の左)の印刷方法を例に挙げている。裏刷りモード(図9の右)では、表刷りモードとノズルの位置が逆になるだけであるため、説明は省略する。例えば、裏刷りモードでは、通常印刷時の背景画像用の使用ノズルが搬送方向下流側のノズル群(図10ではノズル#1〜#9)となり、主画像用の使用ノズルが搬送方向上流側のノズル群(#16〜#24)となる。
【0068】
<ノズル割り付け処理について>
本実施形態の印刷方法(図10,図11)は、4色インク(YMCK)による主画像と、白インク(W)に4色インクのうちの少なくとも1色を加えて白色の色味を調整した調色背景画像とを、重ねて媒体に印刷する印刷方法である。そして、主画像を印刷するノズル群と調色背景画像を印刷するノズル群のうち、搬送方向上流側に位置する方のノズル群にて、媒体の所定領域に対して先に画像を印刷する。また、上端・下端印刷と通常印刷とにおいて媒体搬送量を異ならせる。そして、上端・下端印刷と通常印刷とにおいてドットの発生の仕方を同じにする。また、主画像のドット発生の仕方と調色背景画像のドット発生の仕方は同じである(印刷解像度や通常印刷時の使用ノズル数、オーバーラップ数などが同じである)。以下、このような印刷方法が設定された場合のノズル割り付け処理について説明する。
【0069】
プリンタードライバーは、ノズル割り付け処理において、マトリクス状に画素データが並んだ画像データの中からパスごとに使用する画素データを抽出し、ノズル列の各ノズルにデータを割り付ける順に抽出した画素データを並び替える。そのために、プリンタードライバーは、パスごとに、ノズル列に属する各ノズルが、画像を形成するために使用する使用ノズルか、それとも不使用ノズルであるかを判別し、また、各使用ノズルと、各使用ノズルが形成すべきラスターラインの位置とを対応付ける必要がある。なお、ラスターラインの位置とは、そのラスターラインが形成される媒体上の搬送方向の位置である。ここでは、搬送方向下流側(媒体の上端部側)のラスターラインの位置Lから順に小さい番号を付す。なお、印刷可能領域内のラスターラインのうちの最下流側のラスターラインの位置を0(L0)とし、0番のラスターラインと呼ぶ。また、0番のラスターラインよりも下流側のラスターラインの位置は負の値とする。
【0070】
図13は、プリンタードライバーがノズル割り付け処理にて実施する処理の流れを示す図であり、図14は、調色背景画像に主画像を重ねる表刷りモードの印刷方法に対して設定されるノズル領域を説明する図であり、図15Aから図15Dは、ノズル割り付け処理にて使用するパラメーターを示す図である。以下、調色背景画像に主画像を重ねる表刷りモードの印刷方法を例に挙げて説明する。この場合、図14に示すように、各ノズル列(KCMYW)に対してノズル領域1〜9が設定される。なお、図14に示すノズル領域は、通常印刷時のノズル領域であり、1つのノズル列に属するノズル数を減らして説明する(#1〜#26)。
【0071】
主画像を印刷するノズルのうち、ブラックノズルが「ノズル領域1」に、シアンノズルが「ノズル領域3」に、マゼンタノズルが「ノズル領域5」に、イエローノズルが「ノズル領域7」に設定される。そして、調色背景画像を印刷するノズルのうち、ブラックノズルが「ノズル領域2」に、シアンノズルが「ノズル領域4」に、マゼンタノズルが「ノズル領域6」に、イエローノズルが「ノズル領域8」に、白ノズルが「ノズル領域9」に設定される。通常印刷時には、主画像を印刷するノズル領域1,3,5,7に属するノズルがノズル#1〜#12となり、4色ノズル列(KCMY)のノズル#1〜#12によって主画像が印刷され、調色背景画像を印刷するノズル領域2,4,6,8,9に属するノズルがノズル#15〜#26となり、5色のノズル列(KCMYW)のノズル#15〜#26によって調色背景画像が印刷される。なお、ホワイトノズル列Wは主画像を印刷しないため、1つのノズル領域だけが設定される。
【0072】
これらのノズル領域1〜9の中から「基準ノズル領域」が設定される。ここでは、ノズル領域1〜9のうち、搬送方向の最下流側のノズル領域が基準ノズル領域に設定されるとする。本実施形態のヘッド41(図2)では、全てのノズル列(KCMYW)の搬送方向の位置が等しいため、ブラックノズル列Kのノズル領域1を基準ノズル領域に設定する。
【0073】
図15Aに示すテーブルは、各ノズル領域に割り付けるデータの種類と、基準ノズル領域1に対する他のノズル領域2〜9の「ずらし量」とを記憶している。「ずらし量」は、通常印刷における基準ノズル領域1の使用ノズル(#1〜#12)に対する他のノズル領域2〜9の使用ノズルの搬送方向のずれ量である。例えば、同じ主画像を印刷する基準ノズル領域1の使用ノズル(#1〜#12)とノズル領域3の使用ノズル(#1〜#12)のずらし量は「0」である。一方、背景画像を印刷するノズル領域4の使用ノズル(#15〜#26)は、基準ノズル領域1の使用ノズルに対して14個のノズル分だけ搬送方向上流側にずれているため、ずらし量は「14」である。即ち、ずらし量は、通常印刷時の或るノズル領域の使用ノズルのうちの開始ノズルの番号(又は終了ノズルの番号)から、通常印刷時の基準ノズル領域の使用ノズルのうちの開始ノズルの番号(又は終了ノズルの番号)を、減算した値である。例えば、ノズル領域3のずらし量は「ノズル#1−ノズル#1」により「0」と算出され、ノズル領域4のずらし量は、「ノズル#15−ノズル#1」により「14」と算出される。
【0074】
なお、図15A〜図15Dに示すパラメーターテーブルは、例えば、プリンター1のメモリー13が記憶しても良いし、プリンタードライバーがコンピューター60にインストールされた際にコンピューター60のメモリーが記憶しても良い。また、本実施形態では、図14に示すように、主画像用の使用ノズル(#1〜#12)と調色背景画像用の使用ノズル(#15〜#26)の間に、インクを吐出しない2つの乾燥用ノズル(#13〜#14)を設ける。ただし、説明の簡略のため、ここでは乾燥用ノズルは何れのノズル領域にも属さず、また、乾燥用ノズルでノズル領域を構成することもないとする。
【0075】
プリンタードライバーは、ハーフトーン処理後、印刷順のパスごとに、ノズル割り付け処理を実施する。本実施形態では、全てのパスのノズル割り付け処理を終える前に、ノズル割り付け処理を終えたパスの印刷データをプリンター1に送信する。そうすることで、印刷を早く開始することができ、また、全てのパスのパスごとの印刷データを記憶する必要がない為、コンピューター60のメモリー容量を小さくすることができる。ただし、これに限らず、全てのパスのノズル割り付け処理を終了した後に、印刷データをまとめてプリンター1に送信してもよい。以下、上端・下端印刷および通常印刷のノズル割り付け処理について具体的に説明する。本来、プリンタードライバーは、上端印刷のパスから順にノズルの割り付け処理を実施するが、ここでは、説明の容易のために、まず、通常印刷の処理を説明する。
【0076】
<<通常印刷>>
図16は、通常印刷のパス10におけるヘッドテーブル(第1のテーブルに相当)とノズルテーブル(第2のテーブルに相当)を示す図である。図16の左図では、ノズル領域1,2を有するブラックノズル列Kがパスごとに搬送方向上流側へ遷移する様子を示す。上端印刷はパス1〜9までであり、パス10から通常印刷が開始する。プリンタードライバーは、パス10のノズル割り付け処理のために、まず、基準ノズル領域(ノズル領域1)に関するヘッドテーブルを作成する(図13のS001)。
【0077】
ヘッドテーブルには、図示するように、ヘッド位置、水平位置、ノズルの種別、開始ノズル及び終了ノズルが、記憶される。まず、プリンタードライバーは、該当パスのヘッド位置を算出し、ヘッドテーブルに記憶させる(格納する)。ヘッド位置とは、該当パス(図ではパス10)において、基準ノズル領域が属するノズル列(ブラックノズル列)の1番ノズル(#1)が対応するラスターラインの位置L(番号)である。ここでは、印刷開始のラスターラインの位置を「位置0」とする。なお、図16のノズル列の遷移図において、各パスのノズル列の上に記された数字が各パスのヘッド位置に相当する。
【0078】
図15Cは、通常印刷のヘッドテーブルを作成するためのパラメーターテーブルである。パラメーターテーブルの「開始ヘッド位置」は、通常印刷の最初のパス(ここではパス10)のヘッド位置を示す。図16はパス10のヘッドテーブルであるため、プリンタードライバーは、ヘッド位置として開始ヘッド位置「3」をそのまま、ヘッドテーブルに記憶させる。通常印刷の最初のパス以降のヘッド位置は、開始ヘッド位置(3)と、媒体搬送量(3d)と、ノズル間ピッチ(1d)によって、算出される。なお、ノズル間ピッチはラスターラインが形成される搬送方向の間隔であり、搬送方向の印刷解像度に相当する長さである。具体的には、通常印刷の或るパスXのヘッド位置は、「開始ヘッド位置+(媒体搬送量/ノズル間ピッチ)×(パスX−パス10)」によって算出される。例えば、次のパス11のヘッド位置は「6(=3+(3d/1d)×(11−10))」と算出される。
【0079】
次に、プリンタードライバーは、該当パスの「水平位置」をヘッドテーブルに記憶させる。図16に示す印刷方法では、搬送方向の所定の位置を使用ノズル(斜線部分)が4回通過している。これは、各画像を構成する1つのラスターラインが4個のノズルで形成されること(オーバーラップ数が4であること)を示している。よって、同じラスターラインを形成するノズルが同じ画素にドットを形成しないように水平位置を設定する。水平位置は、ラスターラインを形成するためのラスターデータ(画像データ上にて移動方向に対応する方向に並ぶ画素データ群)において、該当パスのノズルに割り付ける画素データの種類(位置)を示す情報である。ここではオーバーラップ数を4としているため、図15Cのパラメーターテーブルに示すように、水平位置を示す情報も1〜4となる。プリンタードライバーは、通常印刷の最初のパス10から順に、パラメーターテーブルに記憶されている水平位置を「2,3,4,1」の周期に基づき、該当パスの水平位置を決定し、ヘッドテーブルに記憶させる。図11のパス10のヘッドテーブルは水平位置を2と記憶する。
【0080】
次に、プリンタードライバーは、「ノズル種別(ノズル種類)」をヘッドテーブルに記憶させる。ノズル種別は、基準ノズル領域に属するノズル#1〜#12が「使用ノズル」であるのか、「不使用ノズル」であるのかを示す。そのために、プリンタードライバーは、図15Cのパラメーターテーブルの「開始ノズル番号」と「終了ノズル番号」を参照し、基準ノズル領域の各ノズル#1〜#12が使用ノズルか否かをヘッドテーブルに記憶させる。図15Cでは、開始ノズル番号がノズル#1であり、終了ノズル番号がノズル#12であるため、図16のヘッドテーブルでは、全てのノズル#1〜#12が「使用ノズル」と記憶される。
【0081】
なお、ここでは、基準ノズル領域に属する全てのノズル#1〜#12が使用ノズルとなっているが、この場合に限られない。プリンターや印刷方法によっては、ノズル列の端部ノズルを使用しないとし、端部ノズルが不使用ノズルとしてヘッドテーブルに記憶される場合もある。また、ここでは、全てのラスターラインを複数のノズルで印刷するが、これに限らず、一部のラスターラインだけを複数のノズルで印刷し、別の一部のラスターラインを1つのノズルで印刷する印刷方法(所謂、部分オーバーラップ印刷)を実施する場合がある。この場合に、ノズルによってドットを形成する位置が異なるため、ヘッドテーブルのノズル種別において、例えば、複数のノズルでラスターラインを形成するノズルを「オーバーラップノズル」と記憶させ、1つのノズルでラスターラインを形成するノズルを「通常ノズル」と記憶させることで、ノズルの種類を区別することができる。また、背景画像用の使用ノズルと主画像用の使用ノズルの間に位置する乾燥用ノズル(図14の#13,#14)を基準ノズル領域に含めてもよく、ノズル種別において、ノズル#1〜#12を使用ノズルと記憶させ、ノズル#13,#14を乾燥用ノズル(不使用ノズル)と記憶させてもよい。
【0082】
最後に、プリンタードライバーは、「開始ノズル及び終了ノズル」をヘッドテーブルに記憶させる。プリンタードライバーは、ノズル種別を参照し、基準ノズル領域に属するノズル#1〜#12のうちの最下流側の使用ノズル(図16ではノズル#1)を「開始ノズル」としてヘッドテーブルに記憶させ、ノズル#1〜#12のうちの最上流側の使用ノズル(図16ではノズル#12)を「終了ノズル」としてヘッドテーブルに記憶させる。
【0083】
こうして作成されたヘッドテーブルにより、プリンタードライバーは、基準ノズル領域の各使用ノズルと、各使用ノズルが形成すべきラスターラインの位置(番号)とを対応付けることができる。即ち、ブラックの主画像データから該当パス(図ではパス10)にて印刷する画素データを抽出し、基準ノズル領域が属するブラックノズル列Kのノズルに画素データを割り付けることができる(並べ替えることができる)。
【0084】
次に、プリンタードライバーは、基準ノズル領域に関して作成したヘッドテーブルに基づき、他のノズル領域2〜9に関する「ノズルテーブル」を作成する(図13のS002)。図16には、基準ノズル領域と同じブラックノズル列Kに属するノズル領域2のノズルテーブルを示す。プリンタードライバーは、まず、ノズルテーブルに、ヘッドテーブルと同じヘッド位置(図16では3)と水平位置(図16では2)を記憶させる。
【0085】
次に、プリンタードライバーは、ノズル領域2の「開始ノズル及び終了ノズル」をヘッドテーブルに記憶させる。そのために、プリンタードライバーは、ヘッドテーブルの「開始ノズル及び終了ノズル」と、図15Aのパラメーターテーブルの「ずらし量」とを参照する。ずらし量は、基準ノズル領域の使用ノズルに対する他のノズル領域の使用ノズルの搬送方向上流側へのずれ量である。よって、プリンタードライバーは、ヘッドテーブルに記憶された「開始ノズル」にずらし量を加算したノズルを、ノズル領域2の「開始ノズル」として算出し、ヘッドテーブルに記憶された「終了ノズル」にずらし量を加算したノズルを、ノズル領域2の「終了ノズル」として算出する。例えば、パラメーターテーブル(図15A)によれば、ノズル領域2のずらし量は「14(ノズル14個分)」である。図16のパス10では、ヘッドテーブルに記憶された開始ノズルが「#1」であり、終了ノズルが「#12」である。よって、ノズル領域2のノズルテーブルには、開始ノズルが「ノズル#15(=#1+14)」と記憶され、終了ノズルが「ノズル#26(=#12+14)」と記憶される。
【0086】
最後に、プリンタードライバーは、「ノズル種別へのアドレス」をノズルテーブルに記憶させる。ノズル種別へのアドレスとは、ノズル領域2の使用ノズルのうちの最下流側ノズル、即ち、開始ノズル(図16ではノズル#15)が対応する基準ノズル領域のノズル番号(図16ではノズル#1)を示す。なお、通常印刷時の基準ノズル領域に属するノズルのうちの下流側からN番目のノズルと、通常印刷時の別のノズル領域に属するノズルのうちの下流側からN番目のノズルとが、対応関係にある。後の処理において、ノズル領域2のノズルに印刷データを割り付ける際に、プリンタードライバーは、ノズル領域2に関するノズルテーブルの「開始ノズル」と「ノズル種別へのアドレス」に基づき、ヘッドテーブルのノズルの種別を参照し、ノズル領域2に属するノズルの種別を判別することが出来る。例えば、図16では、ノズル領域2の開始ノズルがノズル#15であり、ノズル種別へのアドレスがノズル#1である。ゆえに、プリンタードライバーは、ヘッドテーブルの「ノズル種別」のノズル#1に関する情報を参照した結果、「使用ノズル」と記憶されているため、ノズル領域2のノズル#15も「使用ノズル」と判別できる。そして、プリンタードライバーは、順に、ノズル領域2のノズル#16に関しては、ヘッドテーブルのノズル種別のノズル#2に関する情報を参照する。このように、「ノズル種別へのアドレス」をノズルテーブルに記憶することで、ノズル領域2に属するノズルに関する「ノズル種別」を記憶しなくとも、ノズル領域2に属するノズルの種類を判別できる。
【0087】
こうしてノズル領域2に関するノズルテーブルが作成された後、プリンタードライバーは、他のノズル領域3〜9に関するノズルテーブルも作成する。なお、図15Aに示すように、シアンノズル列Cのノズル領域3のずらし量は「0」であるため、ノズル領域3と基準ノズル領域では、開始ノズル及び終了ノズルが同じとなる。また、ホワイトノズル列Wのノズル領域9のずらし量は「14」であるため、ノズル領域9とノズル領域2では、開始ノズル及び終了ノズルが同じとなる。こうして作成されたノズルテーブルにより、プリンタードライバーは、各ノズル領域の各使用ノズルと、各使用ノズルが形成すべきラスターラインの位置(番号)とを対応付けることができる。
【0088】
該当パスのヘッドテーブル及び各ノズル領域2〜9に関するノズルテーブルの作成が終了した後、プリンタードライバーは、画像データの中から該当パスにて印刷に使用する画素データを抽出し、ノズルに割り付ける順に抽出した画素データを並び替え(図13のS003、詳細は後述)、並び替えた印刷データをプリンター1に送信する。その後、プリンタードライバーは、次のパスのヘッドテーブル及びノズルテーブルを作成する。なお、通常印刷におけるヘッドテーブル及びノズルテーブルの作成処理は、通常印刷のパスが終了するまで実施される。図15Cのパラメーターテーブルには、通常印刷の「終了ヘッド位置(30)」が記憶されている。終了ヘッド位置は、通常印刷の最後のパスにおけるヘッド位置である。よって、ヘッド位置が終了ヘッド位置に達した時、プリンタードライバーは次のパスから下端印刷の処理を実施する。
【0089】
以上をまとめると、本実施形態の印刷方法では(図10・図11)、2種類の画像(主画像・背景画像)を重ねて印刷し、また、乾燥時間を確保するために、媒体の所定領域に対して2種類の画像を異なるパスにて印刷する。そのため、媒体の所定領域に対して先に印刷する画像のノズルを、後に印刷する画像のノズルよりも、搬送方向上流側に位置するノズルとする。即ち、主画像を印刷するノズル列(KCMY)と背景画像を印刷するノズル列(主にW)によって使用ノズルの範囲(画像を形成するノズルの範囲)が異なる。つまり、ノズル列によって使用ノズルの範囲が異なる。そのため、仮に、ノズル列(KCMYW)ごとに、使用ノズルの範囲(ノズル種別・開始ノズル及び終了ノズル)を記憶したヘッドテーブルを作成しようとすると、ヘッドテーブルを作成するためのパラメーターテーブル(例:図15C)のメモリー容量が増大してしまう。
【0090】
そこで、本実施形態では、基準となるノズル列(基準ノズル領域が属するノズル列)の使用ノズルの範囲に対して、他のノズル列の使用ノズルの範囲が搬送方向にずれた量である「ずらし量」を、印刷システム(プリンター1又はコンピューター)のメモリーに記憶させる。そうすることで、他のノズル列の使用ノズルの範囲を印刷システムに記憶させなくとも、基準となるノズル列の使用ノズルの範囲にずらし量を加算することで、他のノズル列の使用ノズルの範囲を算出することができる。その結果、使用ノズルの範囲(例:図15Cの開始ノズル番号・終了ノズル番号)を記憶するパラメーターテーブル、即ち、ヘッドテーブルを作成するためのパラメーターテーブルのメモリー容量を削減できる。
【0091】
また、本実施形態の印刷方法では、1つのノズル列に2種類の画像データを割り付ける。前述の参考実施形態では、1つのノズル列に割り付けられる画像データは1種類であるため(主画像データだけであるため)、参考実施形態の処理を本実施形態のノズル割り付け処理にそのまま適用することは出来ない。
【0092】
そこで、本実施形態では、一方の画像(例:主画像)を印刷するノズル領域(基準ノズル領域)の使用ノズルの範囲に対して、他方の画像(例:調色背景画像)を印刷するノズル領域の使用ノズルの範囲が搬送方向にずれた量である「ずらし量」を、印刷システムのメモリーに記憶させる。そうすることで、基準ノズル領域ではない他のノズル領域の使用ノズルの範囲を印刷システムに記憶させなくとも、基準ノズル領域の使用ノズルに一方の画像データを割り付けることができ、基準ノズル領域の使用ノズルの範囲にずらし量を加算した他方のノズル領域の使用ノズルに、他方の画像データを割り付けることができる。その結果、1つのノズル列に2種類の画像データを割り付けつつ、使用ノズルの範囲を記憶するパラメーターテーブル、即ち、ヘッドテーブルを作成するためのパラメーターテーブルのメモリー容量を削減できる。
【0093】
また、本実施形態のヘッドテーブルは、使用ノズルの範囲を示す情報(画像を形成するノズルの範囲を示す情報に相当)として、基準ノズル領域に属するノズル(#1〜#12)ごとに「ノズル種別(例えば、使用ノズル・不使用ノズル)」を記憶する。ただし、基準ノズル領域外の他のノズル領域2〜9に関するノズルテーブルは、そのノズル領域に属するノズルごとに「ノズル種別」を記憶することはなく、使用ノズルのうちの「開始ノズル及び終了ノズル」だけを記憶する。図16では、ノズル領域に属するノズル数を減らしているが、実際のノズル数は多く、ノズル領域に属するノズルごとにノズル種別をヘッドテーブルに記憶させる処理は煩雑であり、ヘッドテーブルのメモリー容量は大きくなる。つまり、基準ノズル領域以外のノズル領域2〜9に関するノズルテーブルに、ノズル種別を記憶させないことによって、ヘッドテーブルに比べて、ノズルテーブルの作成処理が容易となり、また、ノズルテーブルのメモリー容量を小さくすることができる。ただし、基準ノズル領域以外のノズル領域2〜9のノズルテーブルには「ノズル種別へのアドレス」を記憶させているため、プリンタードライバーは、基準ノズル領域にて対応するノズルのノズル種別を参照し、他のノズル領域2〜9のノズル種別を知ることができる。
【0094】
また、本実施形態のヘッドテーブルは、使用ノズルの範囲を示す情報として、ノズルごとに記憶した「ノズル種別」の他に、使用ノズルのうちの「開始ノズル及び終了ノズル」も記憶する。こうすることで、プリンタードライバーは、基準ノズル領域以外の他のノズル領域2〜9のノズルテーブルにおける「開始ノズル及び終了ノズル」を算出する際に、ヘッドテーブルの「ノズル種別」を参照し、使用ノズルのうちの最下流側のノズル(開始ノズル)と最上流側のノズル(終了ノズル)を抽出する必要がなくなる。仮に、ヘッドテーブルにノズル種別しか記憶されていないとすると、複数のノズル領域2〜9のノズルテーブルを作成する都度、ヘッドテーブルの「ノズル種別」から開始ノズルと終了ノズルを抽出することになってしまう。即ち、ヘッドテーブルに使用ノズルのうちの「開始ノズル及び終了ノズル」も記憶することによって、プリンタードライバーは、ヘッドテーブルの「開始ノズル及び終了ノズル」にずらし量を加算するだけで、ノズルテーブルの「開始ノズル及び終了ノズル」を算出することができる。その結果、ノズルテーブルの作成処理を容易にすることができる。
【0095】
<<上端印刷>>
ところで、前述の参考実施形態の印刷方法は(図4)、通常印刷で埋めることができないドットを上端・下端印刷で記録する印刷方法である。そのため、例えば、図4に示すように通常印刷では、前後のパスで形成される画像の(上流側又は下流側の)端部のずれ量が一定である。しかし、例えば、図4の上端印刷では、パス1で形成される画像の上流側端部の方がパス2で形成される画像の上流側端部よりも上流側に位置し、下端印刷では、パス11で形成される画像の下流側端部の方がパス12で形成される画像の下流側端部よりも上流側に位置しており、参考実施形態では、上端・下端印刷と通常印刷においてドットの発生の仕方が異なる。そのため、参考実施形態のノズル割り付け処理を本実施形態のノズル割り付け処理にそのまま適用することは出来ない。仮に、参考実施形態のノズル割り付け処理を適用してしまうと、例えば、図10のパス1においてノズル#11以降のノズルからもインクが吐出される虞があり、上端・下端印刷と通常印刷とにおいてドット発生の仕方を同じにすることが出来なくなってしまう。
【0096】
また、本実施形態の印刷方法では、上端・下端印刷と通常印刷とにおいてドット発生の仕方を同じにするものの、ヘッド41に対する印刷開始位置を出来る限り搬送方向下流側にするために、上端・下端印刷の媒体搬送量を通常印刷の媒体搬送量よりも短くする。そのため、印刷開始時から通常印刷を実施する図12Bとは異なり、図10や図11、図12Aでは印刷可能領域内に位置するノズルであっても不使用ノズルが存在する。そのため、プリンタードライバーは、ノズル割り付け処理に際し、各ノズルが使用ノズルか不使用ノズルかを判断する必要がある。
【0097】
そこで、本実施形態では、媒体の上端部及び下端部を印刷する際にも通常印刷が実施されると想定した「仮想印刷」と、媒体の上端部及び下端部を印刷する際には上端・下端印刷が実施されると想定した「実際の印刷」と、の両方の印刷に基づいて、上端・下端印刷にて画像を形成するノズルの範囲(使用ノズルの範囲)を決定する。つまり、仮想印刷で画像を形成するノズルを、実際の印刷のヘッドのノズルに置き換える。なお、上端・下端印刷と通常印刷のドット発生の仕方を同じにするためには、仮想印刷においてノズルが位置する搬送方向の位置に、実際の印刷のノズルも位置させる必要がある。即ち、仮想印刷で形成されるラスターラインの位置に実際の印刷のノズルを位置させて、ラスターラインを形成する必要がある。そのため、通常印刷の搬送量(3d)と上端・下端印刷の搬送量(1d)の差を、ノズルピッチ(d)の整数倍の長さにするとよい。
【0098】
まず、上端印刷時のヘッドテーブル及びノズルテーブルの作成処理について説明する。
図17は、上端印刷のパス6におけるヘッドテーブルとノズルテーブルを示す図である。図17の左図では、ノズル領域1(基準ノズル領域)及びノズル領域2が属するブラックノズル列Kの遷移図を示す。ここで、図中の実線で示したブラックノズル列Kの位置が、実際の上端印刷におけるブラックノズル列Kの位置であり、図中の点線で示したブラックノズル列Kの位置が、仮想印刷におけるブラックノズル列Kの位置である。実際の上端印刷では、上端印刷の最後のパスからブラックノズル列Kを実際の印刷の搬送量(1d)で遷移させる。例えば、図17では、上端印刷の最後のパス9のヘッド位置が「0」である。本実施形態では、上端印刷の媒体搬送量とノズル間ピッチ(ラスターラインの搬送方向の間隔)が等しいため(共に1d)、実際の上端印刷のパス8のヘッド位置は「−1」となる。一方、仮想印刷では、上端印刷の最後のパスからブラックノズル列Kを通常印刷の搬送量(3d)で遷移させる。そのため、仮想印刷のパス8のヘッド位置が「−3」となる。
【0099】
言い換えると、仮想印刷では、媒体の上端部を通常印刷で印刷し、通常印刷の最初のパス(又は上端印刷の最後のパス)のヘッド41の搬送方向の位置を所定位置に到達させ、実際の印刷では、媒体の上端部を上端印刷で印刷し、通常印刷の最初のパス(又は上端印刷の最後のパス)のヘッド41の搬送方向の位置を同じ所定の位置に到達させる。
【0100】
また、前述の通常印刷では、ノズル列ごと、割り付ける画像データごとに設定したノズル領域1〜9(図14)が変動することなく、各ノズル領域に属するノズルが一定である。これに対して、本実施形態の上端印刷では、図10に示すように、搬送方向下流側のノズルも使用して背景画像を印刷し、背景画像を印刷するノズルを徐々に上流側にずらしていく。そのため、実際の上端印刷では、背景画像を印刷するノズル領域に属するノズルが変動する。一方、仮想印刷では、背景画像を印刷するノズル領域に属するノズルは変動せず、仮想印刷のヘッドにおける搬送方向上流側のノズル(#15〜#26)が、背景画像用の使用ノズルとなる。
【0101】
プリンタードライバーは、まず、仮想印刷のヘッドにおける基準ノズル領域(ブラックノズル列Kの主画像を印刷するノズル群)に関するヘッドテーブルを作成する(図13のS001)。はじめに、プリンタードライバーは、該当パス(図17はパス6)の仮想印刷におけるヘッド位置と実際の印刷におけるヘッド位置とを算出する。なお、ヘッド位置は、前述のように、基準ノズル領域が属するノズル列の1番ノズル#1が対応するラスターラインの位置である。プリンタードライバーは、上端仮想印刷のパラメーターテーブル(図15B)に記憶されている開始ヘッド位置(−24)と、搬送量(3・d)と、ノズル間ピッチ(1・d)に基づき、仮想印刷のヘッド位置を算出する。開始ヘッド位置(−24)は、上端仮想印刷の最初のパス1におけるヘッド位置である。よって、仮想印刷のあるパスXのヘッド位置は、「開始ヘッド位置+(媒体搬送量/ノズル間ピッチ)×(パスX−1)」により算出される。図17の例はパス6であるため、ヘッド位置は「−9(=−24+(3d/1d)×(6−1))」と算出される。
【0102】
同様に、プリンタードライバーは、実際の上端印刷のパラメーターテーブル(図15B)に記憶されている開始ヘッド位置(−8)と、搬送量(1・d)と、ノズル間ピッチ(1・d)に基づき、実際の印刷のヘッド位置を算出する。図17の例はパス6であるため、ヘッド位置は「−3(=−8+(1d/1d)×(6−1))」と算出される。そして、プリンタードライバーは、仮想印刷のヘッド位置(−9)と実際の印刷のヘッド位置(−3)の両方を、ヘッドテーブルに記憶させる。
【0103】
次に、プリンタードライバーは、図15Bの上端仮想印刷のパラメーターテーブルを参照し、水平位置とノズルの種別を、ヘッドテーブルに記憶させる。この処理は、通常印刷と同様であり、図17のパス6の例では、水平位置が2となり、ノズル種別においてノズル#1〜ノズル#12が使用ノズルとして記憶される。なお、これは、仮想印刷のヘッドにおけるノズル#1〜#12が使用ノズルであることを示している。
【0104】
その後、プリンタードライバーは、仮想印刷におけるヘッド位置と実際の印刷におけるヘッド位置の差を算出し、その差をヘッドテーブルに記憶させる。図17のパス6では、仮想印刷と実際の印刷のヘッド位置の差は、「−6(=−9−(−3))」となる。最後に、プリンタードライバーは、ノズル種別に基づき、使用ノズルのうちの最下流側のノズルを開始ノズル(図ではノズル#1)とし、使用ノズルのうちの最上流側のノズルを終了ノズル(図ではノズル#12)として、ヘッドテーブルに記憶させる。こうして仮想印刷の基準ノズル領域に関するヘッドテーブルの作成が終了する。
【0105】
次に、プリンタードライバーは、実際の印刷における基準ノズル領域、及び、他のノズル領域2〜9に関するノズルテーブルを作成する。以下、実際の印刷における基準ノズル領域(ブラックノズル列のうちの主画像を印刷するノズル)のノズルテーブルの作成について説明する。まず、プリンタードライバーは、ヘッドテーブルを参照し、実際の印刷のヘッド位置「−3」と水平位置「2」とを、ノズルテーブルに記憶させる。
【0106】
その後、プリンタードライバーは、実際の印刷における基準ノズル領域の開始ノズル及び終了ノズルを算出する。ヘッドテーブルに記憶されているように、仮想印刷と実際の印刷とのヘッド位置の差は「−6」であり、仮想印刷のノズルに対して実際の印刷のノズルは、6個のラスターライン分の長さだけ搬送方向の上流側に位置している。よって、ヘッドテーブルに記憶された仮想印刷における開始ノズル「#1」を、ヘッド位置の差(−6)と、ノズル間ピッチ数(1)とに基づいて、実際の印刷における開始ノズルに置き換える。実際の印刷における開始ノズルは、「仮想印刷の開始ノズル+(ヘッド位置の差/ノズル間ピッチ数)」によって算出される。図17の例では、基準ノズル領域の開始ノズルが「#−5(=#1+(−6)/1)」と算出される。同様に、ヘッドテーブルに記憶された終了ノズル「#12」は、実際の印刷の終了ノズルでは「#6(=#12+(−6)/1)」と算出される。
【0107】
つまり、上端印刷においても通常印刷と同様のドット発生の仕方にするためには、仮想印刷における基準ノズル領域の使用ノズルにてドットを記録すればよく、仮想印刷における使用ノズルを実際の印刷のノズルに置き換える。図17の例では、仮想印刷における基準ノズル領域の使用ノズル「#1〜#12」が、実際の印刷における使用ノズル「#−5〜#6」に置き換えられる。ただし、実際のヘッドには、負の値のノズルは存在せず、1番ノズルから存在するため1番ノズル以降を使用ノズルとし、且つ、印字可能領域内に位置するノズルを使用ノズルとする。なお、本実施形態では、印刷開始のラスターラインを「0番」とする。
【0108】
そこで、プリンタードライバーは、ヘッド位置に基づき、印字可能領域内に位置するノズル番号を算出する。図17では、実際の印刷におけるヘッド位置が「−3」であり、ノズル#1が−3番のラスターライン(印刷領域外)に対応することが分かる。そして、0番のラスターライン以降(0番よりも上流側のラスターライン)が印字可能領域内のラスターラインとなる。ゆえに、印字可能領域内の最下流側の使用ノズルは、「(印字開始のラスターライン−ヘッド位置)/ノズル間ピッチ数+1」によって算出することができる。図17の例では、ノズル#4(={0−(−3)}/1+1)が、印字可能領域内に位置する。そのため、プリンタードライバーは、実際の印刷における基準ノズル領域の使用ノズルのうち、開始ノズルがノズル#4であり、終了ノズルがノズル#6であると算出することができ、この情報をノズルテーブルに記憶させる。なお、図17の左下には、基準ノズル領域に関して、仮想印刷におけるノズルと、実際の印刷におけるノズルと、ラスターラインの位置(L)とを対応付けた図を示す。この図からも、印字可能領域内に位置する使用ノズルがノズル#4〜#6であることが分かる。
【0109】
最後に、プリンタードライバーは、「ノズル種別へのアドレス」を算出し、基準ノズル領域のノズルテーブルに記憶させる。図17の基準ノズル領域の例では、仮想印刷から実際の印刷に置き換える際に使用ノズルの数が減り、開始ノズルがノズル#4である。そのため、ノズル種別へのアドレスは、実際の印刷の開始ノズル#4が仮想印刷のヘッドにて対応するノズルとなる。よって、プリンタードライバーは、ノズル種別へのアドレスを、「印字可能領域内の開始ノズル番号−開始ノズル番号+1」によって算出することが出来る。図17では、印字開始位置を考慮しなければ、前述のように、ノズル#−5が開始ノズルとなる。ゆえに、ノズル種別へのアドレスは、「ノズル#10(=#4−(#−5)+1)」と算出される。これにより、プリンタードライバーは、例えば、開始ノズル#4のノズル種別がヘッドテーブルに記憶されたノズル#10のノズル種別(使用ノズル)であり、ノズル#5のノズル種別がヘッドテーブルに記憶されたノズル#11のノズル種別であると判断できる。
【0110】
こうして、実際の印刷における基準ノズル領域に関するノズルテーブルが作成された後、プリンタードライバーは、実際の印刷における他のノズル領域2〜9に関してもノズルテーブルを作成する。図17にて、実際の印刷におけるノズル領域2のノズルテーブルを示す。まず、プリンタードライバーは、ヘッドテーブルに記憶された実際の印刷のヘッド位置(−3)及び水平位置(2)を、ノズル領域2に関するノズルテーブルに記憶させる。
【0111】
次に、プリンタードライバーは、ノズル領域2に関する開始ノズル及び終了ノズルを算出する。ヘッドテーブルに記憶された開始ノズル及び終了ノズルは、仮想印刷における基準ノズル領域の使用ノズルの範囲を示す。図15Aのパラメーターテーブルに示すように、ノズル領域2の使用ノズルは、基準ノズル領域の使用ノズルに対して搬送方向の上流側にずらし量「14(14個のラスターライン分の長さ)」だけずれる。そのため、プリンタードライバーは、ヘッドテーブルの開始ノズル(#1)とずらし量(14)とノズル間ピッチ数(1)とに基づいて、仮想印刷におけるノズル領域2の開始ノズルを「ノズル#15(=#1+(14/1))」と算出する。同様に、プリンタードライバーは、ヘッドテーブルの終了ノズル(#12)とずらし量(14)とノズル間ピッチ数(1)とに基づいて、仮想印刷におけるノズル領域2の終了ノズルを「ノズル#26(=#12+(14/1))」と算出する。
【0112】
こうして算出された仮想印刷におけるノズル領域2の開始ノズル(#15)及び終了ノズル(#26)を、実際の印刷のノズルに置き換える。ヘッドテーブルに記憶されているように、仮想印刷と実際の印刷におけるヘッド位置の差が「−6(6個のラスターライン分の長さ)」であり、ノズル間ピッチ数が「1」である。そのため、プリンタードライバーは、「実際の印刷の使用ノズル=仮想印刷の使用ノズル+(ヘッド位置の差/ノズル間ピッチ数)」により、実際の印刷における開始ノズル及び終了ノズルを算出することができる。図17のノズル領域2の例では、仮想印刷の開始ノズルが「ノズル#15」であるため実際の印刷の開始ノズルが「ノズル#9(=#15+{(−6)/1})」となり、仮想印刷の終了ノズルが「ノズル#26」であるため実際の印刷の終了ノズルが「ノズル#20(=#26+{(−6)/1})」となる。
【0113】
そして、ノズル領域2では、実際の印刷の使用ノズル(#9〜#26)が全て印字可能領域内に位置するため、プリンタードライバーは、ノズル種別へのアドレスを、ヘッドテーブルの使用ノズルのうちの最下流側のノズル「#1」とする。これにより、プリンタードライバーは、例えば、開始ノズル#9のノズル種別がヘッドテーブルに記憶されたノズル#1のノズル種別であり、ノズル#10のノズル種別がヘッドテーブルに記憶されたノズル#2のノズル種別であると判断できる。こうして、プリンタードライバーは、ノズル領域2に関するノズルテーブルの作成を終了する。
【0114】
図18は、上端印刷の次のパス7におけるヘッドテーブルとノズルテーブルを示す図である。プリンタードライバーは、前述のパスと同様に、まず、仮想印刷の基準ノズル領域に関するヘッドテーブルを作成する。パス7における仮想印刷のヘッド位置は「−6(=−24+(3d/1d)×(7−1))」と算出され、実際の印刷のヘッド位置は「−2(=−8+(1d/1d)×(7−1))」と算出される。よって、パス7における仮想印刷と実際の印刷のヘッド位置の差は−4(=(−6)−(−2))となる。
【0115】
そして、基準ノズル領域の仮想印刷における開始ノズル(#1)及び終了ノズル(#12)を、実際の印刷におけるノズルに置き換える。仮想印刷の開始ノズルが「#1」であり、ヘッド位置の差が「−4」であり、ノズル間ピッチ数が「1」であるため、実際の印刷の開始ノズルは「#−3(=#1+(−4/1))」と算出される。同様に、実際の印刷の終了ノズルは、「#8(=#12+(−4/1))」と算出される。ただし、1番以降のノズル#1、及び、印字可能領域内のノズルを使用ノズルとしなければならない。そのため、開始ノズルは「#3(=(印字開始のラスターライン−ヘッド位置)+1=(0−(−2)+1))」と算出される。こうして、パス7の基準ノズル領域の開始ノズル#3、及び、終了ノズル#8が算出される。そして、ノズル種別へのアドレスは、「ノズル#7(=印字可能領域内の開始ノズル番号−開始ノズル番号+1=#3−(#−3)+1)」と算出される。
【0116】
このように、上端印刷と通常印刷で媒体搬送量は異なるが、上端印刷と通常印刷でドット発生の仕方を同じにする。そのため、媒体の上端部も通常印刷で印刷されたと想定した仮想印刷に関して、まず、基準ノズル領域のヘッドテーブルを作成する(使用ノズルの範囲(ノズル種別や開始ノズル及び終了ノズル)を決定する)。そして、仮想印刷のヘッド位置と実際の印刷のヘッド位置の差に基づき、仮想印刷における使用ノズルの範囲を、実際の印刷における使用ノズルの範囲に置き換える。ただし、印字可能領域外に位置するノズルも使用ノズルとして算出される場合があるため、印字可能領域内に位置するノズルを使用ノズルとする。
【0117】
また、仮想印刷における基準ノズル領域に関してヘッドテーブルを作成するため(使用ノズルの範囲を決定するため)、基準ノズル領域とは異なる画像を印刷するノズル領域(ここでは図14のノズル領域2,4,6,8,9)では、通常印刷時における基準ノズル領域とのずらし量(14)を、仮想印刷における基準ノズル領域の使用ノズルの範囲に加算する。こうすることで、上端印刷と通常印刷でドット発生の仕方を同じにすることができる。
【0118】
<<下端印刷>>
次に、下端印刷時のヘッドテーブル及びノズルテーブルを作成処理について説明する。下端印刷においても上端印刷と同様に、媒体の下端部を印刷する際にも通常印刷が実施されると想定した「仮想印刷」と、媒体の下端部を印刷する際に下端印刷が実施されると想定した「実際の印刷」と、の両方の印刷に基づいて、下端印刷にて画像を形成するノズルの範囲(使用ノズルの範囲)を決定する。つまり、仮想印刷で画像を形成するノズルを、実際の印刷のヘッドのノズルに置き換える。
【0119】
また、前述の通常印刷では、ノズル列ごと、割り付ける画像データごとに設定したノズル領域1〜9(図14)が変動することなく、各ノズル領域に属するノズルが一定である。これに対して、下端印刷では、図11に示すように、搬送方向上流側のノズルも使用して主画像を印刷し、主画像を印刷するノズルを徐々に上流側にずらしていく。そのため、実際の下端印刷では、主画像を印刷するノズル領域に属するノズルが変動する。一方、仮想印刷では、主画像を印刷するノズル領域に属するノズルは変動せず、仮想印刷のヘッドにおける搬送方向下流側のノズル(#1〜#12)が、主画像用の使用ノズルとなる。
【0120】
図19は、下端印刷のパス22におけるヘッドテーブルとノズルテーブルを示す図である。図19の左図は、ノズル領域1(基準ノズル領域)及びノズル領域2が属するブラックノズル列Kの遷移図である。図中にて実線で示したブラックノズル列Kの位置が実際の下端印刷におけるブラックノズル列Kの位置であり、点線で示したブラックノズル列Kの位置が仮想印刷におけるブラックノズル列Kの位置である。下端印刷の媒体搬送量が1dであり、ノズル間ピッチが1dであるため、実際の印刷(実線)のブラックノズル列の位置は1個のラスターライン分ずつ搬送方向上流側にずれている。一方、仮想印刷では、通常印刷の終了後も下端印刷を行わずに、通常印刷を継続させる印刷である。また、通常印刷の媒体搬送量は3・dであり、ノズル間ピッチが1dであるため、図示するように仮想印刷(点線)のブラックノズル列の位置は、3個のラスターライン分ずつ搬送方向上流側にずれている。
【0121】
プリンタードライバーは、まず、仮想印刷における基準ノズル領域(ブラックノズル列Kの主画像を印刷するノズル群)に関してヘッドテーブルを作成する。そして、そのヘッドテーブルに基づいて、実際の印刷における基準ノズル領域、及び、実際の印刷における他のノズル領域2〜9に関する各ノズルテーブルを作成する。
【0122】
まず、プリンタードライバーは、図15Dのパラメーターテーブルを参照し、該当パスの仮想印刷におけるヘッド位置、及び、実際の印刷のヘッド位置を算出する。プリンタードライバーは、あるパスXのヘッド位置を、「開始ヘッド位置+(媒体搬送量/ノズル間ピッチ)×(パスX−パス20)」により算出する。図19の例はパス22であるため、仮想印刷のヘッド位置は「39(=33+(3d/1d)×(22−20))」と算出される。同様に、実際の印刷のヘッド位置は「35(=33+(1d/1d)×(22−20))」と算出される。そして、プリンタードライバーは、図15Dのパラメーターテーブルを参照し、ヘッドの水平位置(図19では2)と、ノズル種別(図19ではノズル#1〜#12が使用ノズル)を、ヘッドテーブルに記憶させる。
【0123】
その後、プリンタードライバーは、仮想印刷におけるヘッド位置と実際の印刷におけるヘッド位置の差を算出し、その差をヘッドテーブルに記憶させる。例えば、図19のパス22では、仮想印刷と実際の印刷のヘッド位置の差は、「4(=39−35)」となる。最後に、プリンタードライバーは、ノズル種別に基づき、仮想印刷における使用ノズルのうちの最下流側のノズルを開始ノズル(図19ではノズル#1)とし、仮想印刷における使用ノズルのうちの最上流側のノズルを終了ノズル(図19ではノズル#12)として、ヘッドテーブルに記憶させる。
【0124】
次に、プリンタードライバーは、実際の印刷における基準ノズル領域に関するノズルテーブルを作成する。ヘッド位置(35)及び水平位置(2)はヘッドテーブルと同じ情報となる。そして、プリンタードライバーは、仮想印刷における開始ノズル及び終了ノズルを、実際の印刷における開始ノズル及び終了ノズルに置き換える。ヘッドテーブルに記憶されているように、仮想印刷と実際の印刷のヘッド位置の差は「4(4個のラスターライン分の長さ)」であり、ノズル間ピッチ数は「1」である。よって、実際の印刷における開始ノズルは、「仮想印刷の開始ノズル+(ヘッド位置の差/ノズル間ピッチ数)」により算出することができ、実際の印刷における終了ノズルは、「仮想印刷の終了ノズル+(ヘッド位置の差/ノズル間ピッチ数)」により算出することができる。図19の例では、実際の印刷における開始ノズルが「#5(=#1+(4/1))」と算出され、実際の印刷における終了ノズルが「#16(=#12+(4/1))」と算出される。
【0125】
実際の印刷に置き換えた基準ノズル領域の使用ノズル(#5〜#16)は、全て印字可能領域内に位置するため、プリンタードライバーは、開始ノズルをノズル#5とし、終了ノズルをノズル#16として、ノズルテーブルに記憶させる。なお、下端印刷では、開始ノズルが常に、仮想印刷における基準ノズル領域の開始ノズル(最下流側のノズル#1)に対応するため、ノズル種別へのアドレスはノズル#1となる。こうして、実際の印刷における基準ノズル領域のノズルテーブルが作成される。
【0126】
同様にして、プリンタードライバーは、実際の印刷における他のノズル領域2〜9に関してもノズルテーブルを作成する。図19にはノズル領域2のノズルテーブルを例示する。プリンタードライバーは、まず、ヘッドテーブルに記憶されたヘッド位置(35)、及び、水平位置(2)を、ノズルテーブルに記憶させる。次に、プリンタードライバーは、ノズル領域2の開始ノズル及び終了ノズルを算出する。ヘッドテーブルに記憶された開始ノズル及び終了ノズルは、基準ノズル領域の仮想印刷における開始ノズル及び終了ノズルである。よって、プリンタードライバーは、図15Aのパラメーターテーブルを参照し、ヘッドテーブルの開始ノズル(#1)とずらし量(14)に基づいて、仮想印刷におけるノズル領域2の開始ノズルを「ノズル#15(=#1+(14/1))」と算出する。同様に、ヘッドテーブルの終了ノズル(#12)とずらし量(14)に基づいて、仮想印刷におけるノズル領域2の終了ノズルを「ノズル#26(=#12+(14/1))」と算出する。
【0127】
その後、プリンタードライバーは、仮想印刷と実際の印刷のヘッド位置の差「4」とノズル間ピッチ数「1」とに基づき、仮想印刷におけるノズル領域2の開始ノズル(#15)及び終了ノズル(#26)を、実際の印刷のノズルに置き換える。プリンタードライバーは、実際の印刷の開始ノズルを「ノズル#19(=#15+(4/1))」と算出し、実際の印刷の終了ノズルを「ノズル#30(=#26+(4/1))」と算出する。ただし、ノズル列に属するノズル数は26個であるため(#1〜#26)、ノズル#27以降のノズルは存在せず、使用ノズルの範囲に入らない。また、印刷領域外に位置するノズルは使用ノズルにする必要がない。そこで、プリンタードライバーは、図15Dのパラメーターテーブルの印字終了のラスターライン番号(58番)を参照し、59番以降のラスターラインに対応付けられるノズルは不使用ノズルとする。図19の左下には、ノズル領域2(ずらし量14)に関して、仮想印刷のノズルと実際の印刷のノズルとラスターラインの番号(L)との対応関係を示す。
【0128】
ヘッド位置が、ノズル#1に対応するラスターライン番号に相当するため、プリンタードライバーは、印字可能領域内に位置する最終ノズルを「(印字終了ラスターライン−ヘッド位置)/ノズル間ピッチ数+1」によって算出することができる。図19のノズル領域2の例では、印字終了のラスターラインが58番であり、ヘッド位置が35であり、ノズル間ピッチ数が1であるため、印字可能領域内に位置する最終ノズルは「#24(=(58−35)/1+1)」となる。そして、プリンタードライバーは、開始ノズルをノズル#19とし、終了ノズルをノズル#24として、また、ノズル種別へのアドレスをノズル#1として、ノズル領域2のノズルテーブルに記憶させる。こうして、実際の印刷におけるノズル領域2のノズルテーブルが作成される。
【0129】
図20は、下端印刷の最終パス28におけるヘッドテーブルとノズルテーブルを示す図である。プリンタードライバーは、前述の例と同様に、まず、仮想印刷における基準ノズル領域に関するヘッドテーブルを作成する。パス28における仮想印刷のヘッド位置は「57(=33+(3d/1d)×(28−20))」と算出され、実際の印刷のヘッド位置は「41(=33+(1d/1d)×(28−20))」と算出される。よって、パス28における仮想印刷と実際の印刷のヘッド位置の差は16(=57−41)となる。仮想印刷における基準ノズル領域の開始ノズルはノズル#1であり、終了ノズルはノズル#12である。
【0130】
この場合、実際の印刷における基準ノズル領域に関して、開始ノズルはノズル#17(=#1+16/1)と算出され、終了ノズルはノズル#28(=#12+16/1)と算出される。ノズル#26以降は存在せず、印字終了のラスターライン番号は58番である。図20の場合、印字可能領域内に位置する最終ノズルが「#18(=(58−41)/1+1」と算出される。よって、実際の印刷における基準ノズル領域のノズルテーブルにおいて、開始ノズルはノズル#17と記憶され、終了ノズルはノズル#18と記憶される。なお、図20の左下に、基準ノズル領域に関して、仮想印刷のノズルと実際の印刷のノズルとラスターラインの位置(L)との対応関係を示す。
【0131】
また、実際の印刷における基準ノズル領域の使用ノズルにおいても、印刷領域外に位置するノズルが存在したため、基準ノズル領域よりも搬送方向上流側に使用ノズルがずれているノズル領域2に関しては、使用ノズルが存在しない。この場合、図20に示すようにノズル領域2の開始ノズル及び終了ノズルはノズル#0となり、また、ノズル種別へのアドレスもノズル#0となる。
【0132】
このように、下端印刷と通常印刷で媒体搬送量は異なるが、下端印刷と通常印刷でドット発生の仕方を同じにする。そのため、媒体の下端部も通常印刷で印刷されたと想定した仮想印刷に関して、まず、基準ノズル領域のヘッドテーブルを作成する(使用ノズルの範囲(ノズル種別や開始ノズル及び終了ノズル)を決定する)。そして、仮想印刷のヘッド位置と実際の印刷のヘッド位置の差に基づき、仮想印刷における使用ノズルの範囲を、実際の印刷における使用ノズルの範囲に置き換える。ただし、印字可能領域外に位置するノズルも使用ノズルとして算出される場合があるため、印字可能領域内に位置するノズルを使用ノズルとする。
【0133】
また、仮想印刷における基準ノズル領域に関してヘッドテーブルを作成するため(使用ノズルの範囲を決定するため)、基準ノズル領域とは異なる画像を印刷するノズル領域では、通常印刷時における基準ノズル領域とのずらし量(14)を、仮想印刷における基準ノズル領域の使用ノズルの範囲に加算する。こうすることで、下端印刷と通常印刷でドット発生の仕方を同じにすることができる。
【0134】
ところで、前述の参考実施形態では、下端印刷にてインクを吐出ノズル(使用ノズル)とそうでないノズル(不使用ノズル)を決定するために、図7に示すように、ダミーのスケジューリングテーブルを作成している。そして、図8に示すように、媒体の下端部を通常印刷で印刷した場合に形成されるラスターラインの位置(ダミーのスケジューリングテーブルで登録された位置)を、下端印刷時に通過するノズルを使用ノズルとしている。これに対して本実施形態では、媒体の下端部を通常印刷で印刷した場合に形成されるラスターラインの位置を算出する必要がなく、即ち、ダミーのスケジューリングテーブル(図7)を作成する必要がない。ゆえに、本実施形態では、参考実施形態に比べて、ダミーのスケジューリングテーブルを作成しない分だけ、ノズル割り付け処理の時間を短縮でき、処理に必要なメモリー容量も削減することができる。
【0135】
<<抽出・並べ替え処理>>
図21Aは、マトリクス状の画像データ(ハーフトーン処理後の画像データ)を示す図である。図中の正方形は画像を構成する画素を示し、画素の中に記された数字が画素データに相当する。移動方向に並ぶ画素データによって、1つのラスターラインが印刷される。この移動方向に並ぶ画素データ群をラスターデータと呼ぶ。そして、図示するように、搬送方向下流側に位置するラスターデータから順に小さい番号を付す。画像データのうち、最下流側に位置するラスターデータを0番目のラスターデータとし、0番目のラスターライン(印刷開始位置のラスターライン)を形成するデータとする。
【0136】
そして、プリンタードライバーは、パスごとに作成されたヘッドテーブル及びノズルテーブルに基づき、このマトリクス状の画像データの中から、該当パスで使用する画素データを抽出し、ノズルに割り付ける順に並び替える(図13のS003)。なお、本実施形態では媒体に2種類の画像(主画像・背景画像)を重ねて印刷するため、2種類の画像データ(主画像データ・背景画像データ)が作成される。また、各画像データは色ごとに作成される。
【0137】
図21B〜図21Fは、上端印刷のパス6(図17)の印刷データをブラックノズル列Kに割り付ける様子を示す図である。コンピューター60には、ブラックノズル列Kの各ノズル(#1〜#26)の印刷データ(画素データ)をそれぞれ記憶させる記憶領域(バッファ)が設けられ、プリンタードライバーはこの記憶領域に、抽出した画素データなどを記憶させる。プリンタードライバーは、パス6の基準ノズル領域に関するノズルテーブル(図17)を参照する。図17に示すように開始ノズルがノズル#4からであるため、プリンタードライバーは、ノズル#1〜#3が不使用ノズルであると判断し、ノズル#1〜#3に対応する各記憶領域に「NULLデータ」を記憶させる(図21B)。
【0138】
次に、プリンタードライバーは、開始ノズルが#4であり、ノズル種別へのアドレスがノズル#10であるため、ヘッドテーブルのノズル#10のノズル種別を参照し、ノズル#4が使用ノズルであると判断する。そこで、プリンタードライバーは、図15Aのパラメーターテーブルを参照し、基準ノズル領域(ノズル領域1)に割り付けるデータは、ブラックの主画像データであると判断する。また、プリンタードライバーは、ノズルテーブルに記憶されたヘッド位置「−3」に基づいて、ノズル#4に割り付けるべきラスターデータが0番であると判断する。そうして、プリンタードライバーは、ブラックの主画像データから0番のラスターデータを抽出し、ノズル#4に対応する記憶領域に抽出したデータを記憶させる。なお、本実施形態の印刷方法では、1つのラスターラインを複数のノズルで形成するため、プリンタードライバーはノズルテーブルに記憶された水平位置(図17では2)に対応する画素データだけを抽出する。プリンタードライバーは、この処理を終了ノズル#6まで繰り返し行う(図21C)。なお、プリンタードライバーは、ヘッドテーブルのノズル#11のノズル種別を参照し、ノズル#5が使用ノズルであると判断し、ヘッドテーブルのノズル#12のノズル種別を参照し、ノズル#6が使用ノズルであると判断する。
【0139】
本実施形態の印刷方法では、図14に示すように主画像を印刷するノズルと背景画像を印刷するノズルの間に2個の乾燥用ノズル(図14ではノズル#13,#14)を設ける。よって、プリンタードライバーは、主画像を印刷するノズル(#4〜#6)と搬送方向上流側に並ぶ2個のノズル(#7,#8)の記憶領域にNULLデータを記憶させる(図21D)。
【0140】
次に、プリンタードライバーは、パス6のノズル領域2に関するノズルテーブルを参照する。図17の例では、ノズル#9から開始ノズルであり、ノズル種別へのアドレスがノズル#1を示す。よって、プリンタードライバーは、ヘッドテーブルのノズル#9のノズル種別を参照し、ノズル#9が使用ノズルであると判断する。この際に、プリンタードライバーは、図15Aのパラメーターテーブルを参照し、ノズル領域2に割り付けるデータは、ブラックの調色背景画像データであると判断する。また、プリンタードライバーは、ノズルテーブルに記憶されたヘッド位置「−3」に基づいて、ノズル#9に割り付けるべきラスターデータが5番であると判断する。そうして、プリンタードライバーは、調色背景画像データの中から5番のラスターデータを抽出し、ノズル#9の記憶領域に記憶させる。これらの処理を、プリンタードライバーは終了ノズル#20まで繰り返し実施する(図21E)。
【0141】
そして、プリンタードライバーは、ノズル領域2の終了ノズル(図17ではノズル#20)よりも搬送方向上流側のノズル(#21〜#26)の記憶領域には、NULLデータを記憶させる(図21F)。こうして、プリンタードライバーは、上端印刷のパス6のブラックノズル列Kに割り付ける印刷データの並べ替え(ノズル割り付け処理)を終了する。このパス6のブラックノズル列Kに割り付けられた印刷データは、プリンタードライバーによってプリンター1に送信され、プリンター1は受信した印刷データに基づき、パス6においてブラックノズル列Kからインクを吐出させる。
【0142】
このように、1つのノズル列(ブラックノズル列K)に2種類の画像データを割り付ける場合であっても、プリンタードライバーがノズル領域ごとに、例えば、図15Aのパラメーターテーブルを参照するなどして、主画像を印刷する使用ノズルには主画像データを割り付け、調色背景画像を印刷する使用ノズルには調色背景画像データを割り付けることができる。また、図15Aのパラメーターテーブルを参照するに限らず、例えば、搬送方向下流側のノズルに割り付けるデータから順に並べるとすると、表刷りモードの場合には、プリンタードライバーは、背景画像のテーブルよりも先に主画像のテーブルを参照し、先に参照したテーブルの使用ノズルに主画像データを割り付け、後に参照したテーブルの使用ノズルに背景画像データを割り付けると既定してもよい。逆に、裏刷りモードの場合には、プリンタードライバーは、主画像のテーブルよりも先に背景画像のテーブルを参照し、先に参照したテーブルの使用ノズルに背景画像データを割り付け、後に参照したテーブルの使用ノズルに主画像データを割り付けると既定してもよい。こうすることで、1つのノズル列に2種類の画像データを割り付けることができる。なお、搬送方向上流側のノズルに割り付けるデータから順に並べるとすると、逆のテーブルから先に参照し、データの割り付け順も逆になる。
【0143】
以上、本実施形態では、プリンタードライバーがノズルの割り付け処理を実施するため、プリンタードライバーをインストールしたコンピューターが印刷制御装置に該当し、プリンターが印刷装置に該当する。ただし、これに限らず、プリンタードライバーの処理をプリンター1内のコントローラー10に実施させてもよく、この場合、プリンター1のコントローラー10が制御部に該当し、プリンター1単体が印刷装置に該当する。
【0144】
===変形例===
前述の実施形態では、使用ノズルと、その使用ノズルが印刷するラスターラインの位置とを対応付ける情報(画像を形成する各ノズルによってドットが形成される媒体上の搬送方向の位置を規定する為の情報)として、ヘッド位置(基準ノズル領域が属するノズル列のノズル#1が対応するラスターラインの位置)をヘッドテーブルに記憶させているが、これに限らない。例えば、ノズル#1以外の他のノズルが対応するラスターラインの位置をヘッドテーブルに記憶させてもよいし、ヘッドの端部の位置をヘッドテーブルに記憶させてもよい。
【0145】
前述の実施形態では、図2に示すように、全てのノズル列(KCMYW)の搬送方向の位置が等しいため、異なるノズル列間にて対応するノズル(同じ番号のノズル#i)に割り付けられるラスターラインの位置(ラスターデータの位置)が等しい。そのため、基準ノズル領域が属するブラックノズル列Kではない別のノズル列(CMYW)においても、ヘッドテーブルに記憶されたブラックノズル列Kの位置(ヘッド位置)に基づき、各ノズルとラスターラインの位置を対応付けることができる。しかし、これに限らず、各ノズル列が搬送方向にずれる場合がある。この場合、基準ノズル領域が属するブラックノズル列のあるノズル#iに対する他のノズル列の対応するノズル#i(同じ番号のノズル)のずれ量(例えば、何個のラスターライン分だけずれるか)を記憶するとよい。そして、このずれ量を考慮して、ノズルとラスターラインの位置とを対応付けるとよい。
【0146】
前述の実施形態では、ヘッドテーブルにもノズルテーブルにも、ヘッド位置と水平位置を記憶させているが、これに限らない。例えば、ヘッドテーブルにだけ、ヘッド位置と水平位置を記憶させてもよい。
前述の実施形態では、搬送方向下流側のノズル群を基準ノズル領域に設定しているが、これに限らず、搬送方向上流側のノズル群(例えば、図14のノズル領域2)を基準ノズル領域に設定してもよい。
【0147】
前述の実施形態では、媒体に2種類の画像(背景画像・主画像)を重ねて印刷しているが、これに限らない。例えば、透明フィルムの媒体に、主画像を印刷し、その上に背景画像を印刷し、再び主画像を重ねて印刷することで、両面から視認する画像を印刷してもよい。また、媒体に背景画像を印刷し、その上に主画像を印刷し、コーディングを塗布してもよい。即ち、媒体に3種類、或いはそれ以上の数の画像を重ねて印刷してもよい。このような場合、ノズル列(1つまたは複数のノズル列)を、重ねる画像の数のノズル領域に分け、その中から基準ノズル領域を設定し、基準ノズル領域に対する他の複数のノズル領域の各ずらし量を記憶させるとよい。
【0148】
前述の実施形態では、図10や図11に示すように、上端・下端印刷と通常印刷の記録方法を同じにし、上端・下端印刷と通常印刷にて媒体搬送量を異ならせている。また、背景画像と主画像を印刷するノズルを固定することなく、上端印刷では搬送方向下流側のノズルを使用して先の画像(図10は背景画像)を印刷し、下端印刷では搬送方向上流側のノズルを使用して後の画像(図11は主画像)を印刷している。ただし、これに限らず、図12Aに示すように、背景画像と主画像を印刷するノズルを固定してもよい。この場合、前述の実施形態と比べて、仮想印刷のヘッド位置と実際の印刷のヘッド位置とのずれ量を小さくすればよい。また、図12Bに示すように、上端・下端印刷を実施せず、通常印刷だけを実施してもよい。この場合、印刷領域内のラスターラインが割り付けられるノズルを使用ノズルに設定すればよい。そのため、図12Bの印刷の場合には、前述の実施形態のように、仮想印刷における使用ノズルの範囲に、仮想印刷と実際の印刷とのヘッド位置のずれ量を加算して、上端・下端印刷の使用ノズルの範囲を算出する必要がない(仮想印刷で使用するノズルを実際の印刷のノズルに置き換える必要がない)。
【0149】
前述の実施形態では、1つのノズル列に2種類の異なる画像データ(主画像データと調色背景画像データ)を割り付けているが、これに限らない。例えば、モノクロ印刷で、画像を滲ませずに、ブラックの濃度を濃くして印刷するために、同じ画像を2回のパスに分けて重ねて印刷する場合がある。この場合、ブラックノズル列の搬送方向下流側ノズル群と搬送方向上流側ノズル群に各々割り付ける画像データは同じであるが、搬送方向下流側ノズル群と搬送方向上流側ノズル群とにおいて、使用ノズルの範囲が異なる。そこで、搬送方向下流側ノズル群を基準ノズル領域と設定し、搬送方向下流側ノズル群に対する搬送方向上流側ノズル群の搬送方向のずらし量を記憶させるとよい。そうすることで、搬送方向下流側ノズル群に関してヘッドテーブルを作成し(使用ノズルの範囲を算出し)、そのヘッドテーブルとずらし量とに基づいて搬送方向上流側ノズル群のノズルテーブルを作成することができる(使用ノズルの範囲を算出することができる)。その結果、ヘッドテーブルを作成するためのパラメーターテーブルのメモリー容量を削減することができる。
【0150】
===その他の実施の形態===
上記の各実施形態は、主としてインクジェットプリンターを有する印刷システムについて記載されているが、ノズル割り付け処理等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0151】
<背景画像について>
前述の実施形態では、白インクによって背景画像を印刷するとしているがこれに限らず、白以外の色インク(例えば、メタリック系のインク)によって背景画像を印刷してもよい。また、4色インク(YMCK)に白インクを加えて主画像を印刷してもよい。
【0152】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、ヘッドを移動方向に移動しながら単票紙に画像を形成する動作と、ヘッドに対して単票紙を移動方向と交差する搬送方向に搬送する動作と、を繰り返すプリンターを例に挙げているが、これに限らない。例えば、印刷領域に搬送された連続用紙に対して、ヘッドユニットを媒体搬送方向に移動しながら画像を形成する動作と、ヘッドユニットを紙幅方向に移動する動作と、を繰り返して画像を形成し、その後、未だ印刷されていない媒体部分を印刷領域に搬送するプリンターであってもよい。
【符号の説明】
【0153】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、20 搬送ユニット、30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、40 ヘッドユニット、41 ヘッド、50 検出器群、60 コンピューター
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システム、プログラム、及び、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の一つとして、インクを吐出するノズルが所定方向に並んだノズル列を所定方向と交差する移動方向に移動しながらノズルからインクを吐出して画像を形成する画像形成動作と、所定方向である搬送方向に媒体を搬送する搬送動作を繰り返すインクジェットプリンター(以下、プリンター)が知られている。
【0003】
プリンターは、プリンタードライバーが作成した印刷データに基づいて印刷を実施する。プリンタードライバーは、印刷データの作成において、複数の画素データから構成されるマトリクス状の画像データを、各ノズルに割り付ける順に並べ替える処理(ノズル割り付け処理)を実施する。そのために、画像形成動作ごとに、ノズルと、そのノズルが形成すべきラスターライン(移動方向に沿うドット列)の位置とを対応付ける処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−264054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリンターは、2種類の画像、例えば、主画像と背景画像を重ねて印刷する場合に、1つのノズル列に主画像データと背景画像データを割り付けることがある。この場合、各画像データを割り付けるノズルの範囲を知る必要がある。ただし、各画像を印刷するノズル群ごとに、使用ノズルの範囲を決定するためのパラメーターを印刷システムが記憶していると、メモリー容量が増大してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、印刷データを作成するために使用するパラメーターを記憶するメモリー容量を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する為の主たる発明は、(A)印刷制御装置と印刷装置を備える印刷システムであって、(B)前記印刷制御装置は、画像データを構成する複数の画素データの並び順を替え、印刷データを作成し、(C)前記印刷装置は、インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶノズル列と、前記印刷データに基づいて、前記ノズル列と媒体との相対位置を前記所定方向と交差する移動方向に相対移動させながら前記ノズルからインクを吐出する画像形成動作と、前記ノズル列と前記媒体の相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる移動動作と、を繰り返し実行させる制御部と、前記ノズル列の一部のノズル群により形成する第1画像と前記ノズル列の別の一部のノズル群により形成する第2画像を重ねて前記媒体に印刷する印刷方法が設定された場合に、前記一部のノズル群と前記別の一部のノズル群のうち、前記所定方向の前記一の方向側に位置するノズル群よりも前記所定方向の他の方向側に位置するノズル群に先に、前記媒体の所定領域に対してインクを吐出させる制御部と、を有し、(D)前記印刷制御装置と前記印刷装置のうちの少なくとも一方が、前記第1画像を形成する前記一部のノズル群に対する前記第2画像を形成する前記別の一部のノズル群の前記所定方向のずらし量を記憶し、を有し、(E)前記印刷制御装置は、或る画像形成動作において、画像を印刷する各前記ノズルによってドットが形成される前記媒体上の前記所定方向の位置を規定する為の情報と、前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲を示す情報とを、第1のテーブルに記憶させ、前記第1のテーブルに記憶された前記範囲に前記ずらし量を加算し、前記或る画像形成動作において、前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲を算出し、当該範囲を示す情報を第2のテーブルに記憶させ、前記第1のテーブル及び前記第2のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する前記画素データを前記画像データの中から抽出して、前記或る画像形成動作を実施するための前記印刷データを作成する(F)ことを特徴とする印刷システムである。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1Aはプリンターの全体構成ブロック図であり、図1Bはプリンターの斜視図である。
【図2】ヘッドの下面に設けられるノズルの配列を示す図である。
【図3】図3A及び図3Bはインターレース印刷の説明図である。
【図4】上端印刷及び下端印刷の説明図である。
【図5】図5Aから図5Eは上端印刷のパス1に対するスケジューリングテーブルの作成処理を説明する図である。
【図6】図6Aから図6Cは通常印刷のパス4〜6に対するスケジューリングテーブルの作成処理の説明図である。
【図7】図7Aから図7Cはダミースケジューリングテーブルを説明するための概念図である。
【図8】図8Aから図8Cは下端印刷のスケジューリングテーブルを説明する図である。
【図9】プリンターが有する印刷モードを説明する図である。
【図10】表刷りモードの印刷方法を説明する図である。
【図11】表刷りモードの印刷方法を説明する図である。
【図12】図12A及び図12Bは媒体の上端部を印刷する参考例である。
【図13】ノズル割り付け処理の流れを示す図であり、
【図14】表刷りモードの印刷方法に対するノズル領域を示す図である。
【図15】図15Aから図15Dはノズル割り付け処理にて使用するパラメーターを示す図である。
【図16】通常印刷のパス10におけるヘッドテーブルとノズルテーブルを示す図である。
【図17】上端印刷のパス6におけるヘッドテーブルとノズルテーブルを示す図である。
【図18】上端印刷の次のパス7におけるヘッドテーブルとノズルテーブルを示す図である。
【図19】下端印刷のパス22におけるヘッドテーブルとノズルテーブルを示す図である。
【図20】下端印刷の最終パス28におけるヘッドテーブルとノズルテーブルを示す図である。
【図21】画像データの並べ替え・抽出処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0010】
即ち、(A)印刷制御装置と印刷装置を備える印刷システムであって、(B)前記印刷制御装置は、画像データを構成する複数の画素データの並び順を替え、印刷データを作成し、(C)前記印刷装置は、インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶノズル列と、前記印刷データに基づいて、前記ノズル列と媒体との相対位置を前記所定方向と交差する移動方向に相対移動させながら前記ノズルからインクを吐出する画像形成動作と、前記ノズル列と前記媒体の相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる移動動作と、を繰り返し実行させる制御部と、前記ノズル列の一部のノズル群により形成する第1画像と前記ノズル列の別の一部のノズル群により形成する第2画像を重ねて前記媒体に印刷する印刷方法が設定された場合に、前記一部のノズル群と前記別の一部のノズル群のうち、前記所定方向の前記一の方向側に位置するノズル群よりも前記所定方向の他の方向側に位置するノズル群に先に、前記媒体の所定領域に対してインクを吐出させる制御部と、を有し、(D)前記印刷制御装置と前記印刷装置のうちの少なくとも一方が、前記第1画像を形成する前記一部のノズル群に対する前記第2画像を形成する前記別の一部のノズル群の前記所定方向のずらし量を記憶し、を有し、(E)前記印刷制御装置は、或る画像形成動作において、画像を印刷する各前記ノズルによってドットが形成される前記媒体上の前記所定方向の位置を規定する為の情報と、前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲を示す情報とを、第1のテーブルに記憶させ、前記第1のテーブルに記憶された前記範囲に前記ずらし量を加算し、前記或る画像形成動作において、前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲を算出し、当該範囲を示す情報を第2のテーブルに記憶させ、前記第1のテーブル及び前記第2のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する前記画素データを前記画像データの中から抽出して、前記或る画像形成動作を実施するための前記印刷データを作成する、(F)ことを特徴とする印刷システムである。
このような印刷システムによれば、印刷データを作成するために使用するパラメーターを記憶するメモリー容量を削減することができる。
【0011】
かかる印刷システムであって、前記印刷制御装置と前記印刷装置のうちの少なくとも一方が、前記或る画像形成動作において前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲を規定する為の情報を、記憶すること。
このような印刷システムによれば、第1画像を形成するノズルの範囲を規定することができる。
【0012】
かかる印刷システムであって、前記印刷制御装置は、前記第1のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する前記画素データを前記第1画像の前記画像データの中から抽出し、且つ、前記第2のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する前記画素データを前記第2画像の前記画像データの中から抽出し、前記第1画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データにて前記前記第1画像を形成する前記ノズルからインクが吐出され、且つ、前記第2画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データにて前記第2画像を形成する前記ノズルからインクが吐出されるように、前記画素データの並び順を替えること。
このような印刷システムによれば、1つのノズル列に異なる種類の画像データを割り付けることができる。
【0013】
かかる印刷システムであって、前記印刷制御装置は、前記ノズル列において前記所定方向の前記一の方向側に位置する前記ノズルに割り付ける前記画素データから順に並べ、前記媒体の所定領域に対して前記第1画像よりも先に前記第2画像を印刷する印刷モードの場合、前記印刷制御装置は、前記第2のテーブルよりも先に前記第1のテーブルを参照し、前記第1画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データの後に、前記第2画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データを並べ、前記媒体の所定領域に対して前記第2画像よりも先に前記第1画像を印刷する印刷モードの場合、前記印刷制御装置は、前記第1のテーブルよりも先に前記第2のテーブルを参照し、前記第2画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データの後に、前記第1画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データを並べること。
このような印刷システムによれば、1つのノズル列に異なる種類の画像データを割り付けることができる。
【0014】
かかる印刷システムであって、前記印刷制御装置は、前記或る画像形成動作にて前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲として、前記第1画像を形成する前記ノズルのうちの前記所定方向における最も前記一の方向側に位置する前記ノズルである第1ノズルと、前記第1画像を形成する前記ノズルのうちの前記所定方向における最も前記他の方向側に位置する前記ノズルである第2ノズルとを、前記第1のテーブルに記憶させ、前記或る画像形成動作にて前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲として、前記第1ノズルに前記ずらし量を加算した前記ノズルと、前記第2ノズルに前記ずらし量を加算した前記ノズルとを、前記第2のテーブルに記憶させること。
このような印刷システムによれば、第2画像を形成するノズルの範囲を算出する処理を容易にすることができる。
【0015】
かかる印刷システムであって、前記印刷制御装置は、前記或る画像形成動作にて前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲として、前記第1画像を形成する各前記ノズルの種類を前記第1のテーブルに記憶させ、前記或る画像形成動作にて前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲として、前記第1画像を形成する前記ノズルのうちの前記所定方向における最も前記一の方向側に位置する前記ノズルに前記ずらし量を加算した前記ノズルと、前記第1画像を形成する前記ノズルのうちの前記所定方向における最も前記他の方向側に位置する前記ノズルに前記ずらし量を加算した前記ノズルとを、前記第2のテーブルに記憶させること。
このような印刷システムによれば、第2のテーブルの作成処理を容易にでき、メモリー容量を削減することができる。
【0016】
かかる印刷システムであって、前記第1画像と前記第2画像は同じ画像であること。
このような印刷システムによれば、滲みを抑制しつつ画像を濃く印刷することができる。
【0017】
また、インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶノズル列と媒体との相対位置を前記所定方向と交差する移動方向に相対移動させながら前記ノズルからインクを吐出する画像形成動作と、前記ノズル列と前記媒体の相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる移動動作と、を繰り返す印刷装置が、前記ノズル列の一部のノズル群により形成する第1画像と前記ノズル列の別の一部のノズル群により形成する第2画像を重ねて前記媒体に印刷する印刷方法が設定された場合に、前記一部のノズル群と前記別の一部のノズル群のうち、前記所定方向の前記一の方向側に位置するノズル群よりも前記所定方向の他の方向側に位置するノズル群に先に、前記媒体の所定領域に対してインクを吐出するための印刷データを、コンピューターに作成させるためのプログラムであって、或る画像形成動作において、画像を印刷する各前記ノズルによってドットが形成される前記媒体上の前記所定方向の位置を規定する為の情報と、前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲を示す情報とを、第1のテーブルに記憶させることと、前記第1のテーブルに記憶された前記範囲に、前記第1画像を形成する前記一部のノズル群に対する前記第2画像を形成する前記別の一部のノズル群の前記所定方向のずらし量を加算し、前記或る画像形成動作において、前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲を算出し、当該範囲を示す情報を第2のテーブルに記憶させることと、前記第1のテーブル及び前記第2のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する画素データを画像データの中から抽出して、前記或る画像形成動作を実施するための前記印刷データを作成することと、を前記コンピューターに実行させるためのプログラムである。
このようなプログラムによれば、印刷データを作成するために使用するパラメーターを記憶するメモリー容量を削減することができる。
【0018】
また、インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶノズル列と、印刷データに基づいて、前記ノズル列と媒体との相対位置を前記所定方向と交差する移動方向に相対移動させながら前記ノズルからインクを吐出する画像形成動作と、前記ノズル列と前記媒体の相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる移動動作と、を繰り返し実行させる制御部であって、前記ノズル列の一部のノズル群により形成する第1画像と前記ノズル列の別の一部のノズル群により形成する第2画像を重ねて前記媒体に印刷する印刷方法が設定された場合に、前記一部のノズル群と前記別の一部のノズル群のうち、前記所定方向の前記一の方向側に位置するノズル群よりも前記所定方向の他の方向側に位置するノズル群に先に、前記媒体の所定領域に対してインクを吐出させる制御部と、を有し、前記制御部は、或る画像形成動作において、画像を印刷する各前記ノズルによってドットが形成される前記媒体上の前記所定方向の位置を規定する為の情報と、前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲を示す情報とを、第1のテーブルに記憶させ、前記第1のテーブルに記憶された前記範囲に、前記第1画像を形成する前記一部のノズル群に対する前記第2画像を形成する前記別の一部のノズル群の前記所定方向のずらし量を加算し、前記或る画像形成動作において、前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲を算出し、当該範囲を示す情報を第2のテーブルに記憶させ、前記第1のテーブル及び前記第2のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する画素データを画像データの中から抽出して、前記或る画像形成動作を実施するための前記印刷データを作成する、ことを特徴とする印刷装置である。
【0019】
このような印刷装置によれば、印刷データを作成するために使用するパラメーターを記憶するメモリー容量を削減することができる。
【0020】
===印刷システムについて===
図1Aは、プリンター1の全体構成ブロック図であり、図1Bは、プリンター1の斜視図である。以下、インクジェットプリンター(プリンター1)とコンピューター60が接続された印刷システムを例に挙げて実施形態を説明する。コンピューター60は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるための印刷データをプリンター1に出力する。
【0021】
コントローラー10(制御部)は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11はコンピューター60とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12はプリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13はCPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12はユニット制御回路14により各ユニットを制御する。なお、プリンター1内の状況を検出器群50が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0022】
搬送ユニット20は、媒体Sを印刷可能な位置に送り込み、印刷時には搬送方向(所定方向)に所定の搬送量で媒体Sを搬送させるものである。
キャリッジユニット30は、ヘッド41を搬送方向と交差する移動方向に移動させるためのものであり、キャリッジ31を有する。
【0023】
ヘッドユニット40は、媒体Sにインクを吐出するためのものであり、ヘッド41を有する。ヘッド41はキャリッジ31によって移動方向に移動する。ヘッド41の下面には、インク吐出部であるノズルが複数設けられ、各ノズルには、インクが入った圧力室が設けられている。なお、ノズルからのインク吐出方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけて圧力室を膨張・収縮させることによりインクを吐出するピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によってインクを吐出させるサーマル方式でもよい。
【0024】
図2は、ヘッド41の下面に設けられるノズルの配列を示す図である。なお、図はヘッド41の上面から仮想的にノズルを見た図である。ヘッド41の下面には、180個のノズルが搬送方向に所定の間隔(ノズルピッチd)で並んだノズル列が5列形成されている。図示するように、ブラックインクを吐出するブラックノズル列K・シアンインクを吐出するシアンノズル列C・マゼンタインクを吐出するマゼンタノズル列M・イエローインクを吐出するイエローノズル列Y・白インクを吐出するホワイトノズル列Wが、移動方向に並んでいる。なお、各ノズル列が有する180個のノズルに対して、搬送方向の下流側(一の方向側に相当)のノズルから順に小さい番号を付す(#1〜#180)。
【0025】
このようなプリンター1では、移動方向に沿って移動するヘッド41からインク滴を断続的に吐出させて媒体上にドットを形成するドット形成処理と、媒体をヘッド41に対して搬送方向に搬送する搬送処理とが繰り返される。そうすることで、先のドット形成処理により形成されたドットの位置とは異なる媒体上の位置に、後のドット形成処理にてドットを形成することができ、媒体上に2次元の画像を印刷することができる。なお、ヘッド41がインク滴を吐出しながら移動方向に1回移動する動作(1回のドット形成処理)を「パス」と呼ぶ。
【0026】
<プリンタードライバーについて>
コンピューター60には、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換し、印刷データをプリンター1に出力するためのプログラム(プリンタードライバー)がインストールされている。プリンタードライバーは、CD−ROMなどの記録媒体(コンピューターが読み取り可能な記録媒体)に記録されていたり、インターネットを介してコンピューターにダウンロード可能であったりする。なお、プリンタードライバーは、メモリーに記憶されたプログラムに従って、コンピューター60のハードウェア資源を利用して、以下の処理を実行する。
【0027】
以下、印刷データの作成フローを説明する。プリンタードライバーは、まず、解像度変換処理を実施する。解像度変換処理は、アプリケーションプログラムから出力された画像データを、媒体に印刷する際の解像度に変換する処理である。なお、解像度変換処理後の画像データは、RGB色空間により表される多階調(例えば256階調)のRGBデータである。画像データは、印刷画像を構成する画素に関する画素データから構成される。
【0028】
次に、プリンタードライバーは色変換処理を実施する。色変換処理は、プリンター1にて印刷可能なように、プリンター1が有するインクの色に応じて、RGBデータをCMYK色空間により表されるCMYKデータに変換する処理である。その後、プリンタードライバーはハーフトーン処理を実施する。ハーフトーン処理は、高階調数のデータを、プリンターが形成可能な階調数のデータに変換する処理である。例えば、ハーフトーン処理により、256階調を示すデータが、4階調を示す2ビットデータに変換される。ハーフトーン処理後の画素データは、画素に対応する媒体上の領域に形成するドットに関するデータである。例えば、4階調の画素データであれば、「大ドット形成」「中ドット形成」「小ドット形成」「ドット無し」の何れかが示される。なお、アプリケーションプログラムから出力された画像データだけでなく、例えば、白インクにより背景画像を印刷する場合には、プリンタードライバーによって、背景画像用のデータ(4階調のWデータ)が作成される。
【0029】
最後にプリンタードライバーは、ノズル割り付け処理を実施する。ノズル割り付け処理は、マトリクス状に配置された画素データから構成される画像データを、プリンターに転送すべきデータ順に並び替える処理である(詳細は後述)。プリンタードライバーは、これらの処理を経て作成された印刷データをプリンター1に送信する。プリンター1は受信した印刷データに基づき、印刷を実施する。
【0030】
===参考実施形態===
<印刷方法>
本実施形態を説明する前に参考実施形態を説明する。参考実施形態では、ホワイトノズル列Wを使用することなく、4色のノズル列(YMCK)を使用して、インターレース印刷により、媒体上に1種類の画像を印刷する。また、4色のノズル列がそれぞれ画像を印刷するために使用するノズル(使用ノズル)の範囲は同じである。
【0031】
図3A及び図3Bは、インターレース印刷の説明図である。図3Aはパス1〜パス5のドット形成の様子を示し、図3Bはパス1〜パス6のドット形成の様子を示す。4色ノズル列(YMCK)のうちの一つのノズル列を代表して示し、ノズル列に属するノズル数も少なくする。図中の黒丸で示されるノズルはインクを吐出可能なノズル(使用ノズル)であり、白丸で示されるノズルはインク吐出不可なノズル(不使用ノズル)である。また、説明のため、ヘッドを搬送方向上流側に移動させて図を示す。黒丸ドットは、最後のパスで形成されるドットであり、白丸ドットは、それ以前のパスで形成されたドットである。
【0032】
「インターレース印刷」とは、1回のパスで記録されるラスターライン(移動方向に沿うドット列)の間にそのパスで記録されないラスターラインが挟まれる印刷方法である。インターレース印刷では、媒体が搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、各ノズルが、その直前のパスで記録されたラスターラインのすぐ上のラスターラインを記録する。このように搬送量を一定にして記録を行うためには、(1)インクを吐出可能なノズル数N(整数)がノズルピッチk・Dのkと互いに素の関係にあること(kが2以上)、(2)搬送量FはN・Dに設定されること、が条件となる。図3では、ノズルピッチを3・Dとし、kが3なので、Nとkが互いに素の関係を満たすため、6個のノズルのうちの5個のノズル(♯1〜♯5)を用いる。また、5個のノズルが用いられるため、紙は搬送量5・Dにて搬送される。
【0033】
その結果、図示するように、最初のラスターラインをパス1のノズル♯1が形成し、2番目のラスターラインをパス1のノズル♯2が形成し、3番目のラスターラインをパス2のノズル♯1が形成し、4番目のラスターラインをパス1のノズル♯3が形成する。そして、5番目以降のラスターラインから搬送方向に連続してラスターラインが形成される。このように、1〜4番目のラスターラインは搬送方向に連続して形成されていない。同様に、インターレース印刷の最後でも、一部のラスターラインが連続して形成されないことがある。そこで、プリンター1は、上端印刷、及び、下端印刷を行うことにより、搬送方向に連続するラスターラインを形成する。
【0034】
図4は、上端印刷及び下端印刷の説明図である。パス1〜パス3までが上端印刷であり、パス4〜パス9までが通常印刷であり、パス10〜パス12までが下端印刷である。上端印刷及び下端印刷では媒体搬送量をDとする。図示するように上端印刷・下端印刷を行うことにより、1番目のラスターラインから最後のラスターラインまで搬送方向に連続するラスターラインを形成することができる。
【0035】
ところで、通常印刷ではノズル♯1〜♯5が使用ノズルであるにもかかわらず、上端印刷のパス1のノズル♯5は不使用ノズルである。仮にパス1のノズル♯5からインクを吐出して13番目のラスターラインを形成すると、パス5のノズル♯1が同じラスターラインを形成するので、13番目のラスターラインが2重に形成されてしまい、他のラスターラインと比べて濃く形成されてしまう。ここでは、通常印刷のパス5のノズル♯1を優先し、パス1のノズル♯5を不使用ノズルとしている。このように、上端印刷を行うパスのノズルよりも、通常印刷を行うパスのノズルを優先することにより、通常印刷により形成されるラスターラインが多くなり、印刷画像の画質が向上する。下端印刷でもパス11のノズル♯1〜♯3、及び、パス12のノズル♯1を不使用ノズルとする。このように、上端印刷や下端印刷を行うと、インクを吐出すべきでないノズル(不使用ノズル)が出現する。このため、プリンタードライバーは、印刷データの作成時に、不使用ノズルを決定する必要がある。
【0036】
<ノズル割り付け処理>
この参考実施形態では、プリンタードライバーは、ノズル割り付け処理に際し、スケジューリングテーブルを作成する。スケジューリングテーブルは、ラスターラインの位置(番号)と、ラスターラインを作成するノズルを対応付けたテーブルである。プリンタードライバーは、このスケジューリングテーブルを作成することによって、どのノズルを使用ノズルとし、また、どのノズルを不使用ノズルにするのかを決定する。プリンタードライバーは、あるパスの各ノズルと、その各ノズルが形成すべきラスターラインの位置とを対応付ける際に、そのパスにて各ノズルが対応するラスターラインの位置と、他のパスにて各ノズルが対応するラスターラインの位置とを比較し(仮想的な印刷を行い)、スケジューリングテーブルを作成する。
【0037】
図5A〜図5Eは、上端印刷のパス1に対するスケジューリングテーブルの作成処理を説明する図である。各図の下には、作成中のスケジューリングテーブルの様子が示されており、各図の上には、スケジューリングテーブル作成時の処理の概念図が示されている。なお、プリンタードライバーは、仮想的な上端印刷のパラメーターと仮想的な通常印刷のパラメーター(ノズルピッチ、搬送量、開始位置など)を用いて、スケジューリングテーブルを作成する。
【0038】
図5Aに示すように、プリンタードライバーは、まず、仮想的な上端印刷のパラメーターにより、該当パスm(図はパス1)のノズル♯1〜#5までの位置(対応するラスターラインの媒体上の位置)を算出する。次に、プリンタードライバーは、次のパス(図はパス2)のノズル♯1〜#5の位置を算出する。プリンタードライバーは、次のパスのノズル#1〜#5の各位置lがスケジューリングテーブルに登録されている場合、位置lのスケジューリングデータを消去する。これをパス1の各ノズル#1〜#5の位置の範囲とパス1以降の各ノズルの位置とが重複しなくなるまで、繰り返し実行される。つまり、上端印刷では、パスmのノズルの位置と、パスm以降のノズルの位置とが比較され、位置が一致するものがあれば、その位置のスケジューリングデータが消去される。
【0039】
図5Bは、パス1のスケジューリングテーブルに対して、パス2のノズル位置を比較する様子を示す。比較の結果、位置が一致するものがないので、スケジューリングテーブルは図5Aのものと変化はない。図5Cは、パス2の比較が終了したときまでのスケジューリングテーブルに対して、パス3のノズル位置を比較する様子を示す。比較の結果、位置が一致するものがないので、スケジューリングテーブルは図5Aのものと変化はない。図5Dは、パス3の比較が終了したときまでのスケジューリングテーブルに対して、パス4のノズル位置を比較する様子を示す。なお、パス4は通常印刷に属するので、パス4の各ノズルの位置は、仮想的な通常印刷のパラメーターから算出される。比較の結果、位置が一致するものがないので、スケジューリングテーブルは図5Aのものと変化はない。
【0040】
図5Eは、パス4の比較が終了したときまでのスケジューリングテーブルに対して、パス5のノズルの位置を比較する様子を示す。パス5のノズル♯1は13番目のラスターラインの位置にあり、スケジューリングテーブルには「位置:13」のスケジューリングデータが既に登録されているので、プリンタードライバーは、このスケジューリングデータを消去する。こうして、上端印刷の各パスのスケジューリングテーブルを作成する。
【0041】
図6A〜図6Cは、通常印刷のパス4〜6に対するスケジューリングテーブルの作成処理の説明図である。各図の下には、パス4〜パス6のスケジューリングテーブルが示され、各図の上には、スケジューリングテーブル作成時の処理内容の概念図が示されている。
【0042】
プリンタードライバーは、通常印刷の各パスm(図はパス4〜6)の各ノズル#1〜#5の位置lを算出する。各ノズル#iの位置lは、仮想的な通常印刷のパラメーターに基づき算出される。そして、プリンタードライバーは、位置lとノズル#iとを対応付けて、スケジューリングテーブルに登録する。この参考実施形態では、上端・下端印刷で形成されるラスターラインよりも通常印刷のラスターラインを優先させるため、上端印刷のように該当パスの各ノズルの位置と他のパスのノズルの位置とを比較しない。
【0043】
図7Aから図7Cは、ダミースケジューリングテーブルを説明するための概念図である。下端印刷の場合、上記の上端印刷や通常印刷の場合とは異なり、各パスのスケジューリングテーブルを作成する前に、ダミースケジューリングテーブルを作成し、このダミースケジューリングテーブルに基づいて各パスのスケジューリングテーブルを作成する。ダミースケジューリングテーブルは、通常印刷の最後のパス(図ではパス9)の後も通常印刷が行われたと仮定し、その後のパスによって形成されるラスターラインの位置を示すものである。このため、ダミースケジューリングテーブルの作成処理の際には、仮想的な通常印刷のパラメーターが用いられる。ダミースケジューリングテーブルの位置が、通常印刷を実施した場合に形成されるラスターラインの位置であり、下端印刷で形成すべきラスターラインの位置である。そのため、ダミースケジューリングテーブルでは、ノズル番号と位置を対応付けることなく、位置だけを示す。ダミースケジューリングテーブルに登録された位置が、印刷領域外の位置に到達するまで、ダミースケジューリングテーブルが作成される。
【0044】
図8Aから図8Cは、下端印刷のスケジューリングテーブルを説明する図である。プリンタードライバーは、下端印刷の各パスのノズルの位置とダミースケジューリングテーブルに登録された位置とを比較し、ダミースケジューリングテーブルに登録されている位置のデータだけスケジューリングテーブルに登録し、そうでないデータは削除する。
【0045】
まず、プリンタードライバーは、仮想的な下端印刷のパラメーター(ノズルピッチ、搬送量、開始位置など)に基づき、下端印刷の該当パスmの各ノズル♯iの位置lを算出する。次に、プリンタードライバーは、算出された下端印刷の各ノズル♯iの位置lとダミースケジューリングテーブルの位置とを比較し、算出された位置lがダミースケジューリングテーブルに登録されている位置と一致するか否かを比較する。ダミースケジューリングテーブルに位置lが存在する場合、下端印刷において位置lのラスターラインを形成するために、プリンタードライバーは、パスmのスケジューリングテーブルに、位置lとノズル♯iとを対応付けて登録する。そして、プリンタードライバーは、ダミースケジューリングテーブルから位置lの登録を削除する。一方、ダミースケジューリングテーブルに位置lが存在しない場合、下端印刷において位置lのラスターラインを形成する必要がないので、プリンタードライバーは、スケジューリングテーブルの登録処理を行わない。
【0046】
図8では、ダミースケジューリングテーブルの登録内容(位置l)を丸印で示し、黒丸は登録されている位置を示し、白丸は形成するノズルが登録されたため削除された位置を示している。図8Aに示されるように、パス10のノズル♯1〜ノズル♯5の位置は、それぞれダミースケジューリングテーブルに登録されている。このため、パス10のスケジューリングテーブルには、図8Aに示される通りの5ノズル分の情報が記憶される。そして、パス10で位置が一致したダミースケジューリングテーブルの5個の位置が削除される(白丸に変更される)。そして、パス11の各ノズルの位置とダミースケジューリングテーブルとを比較した結果、パス11のスケジューリングテーブルには2個の情報が記憶され、パス12のスケジューリングテーブルには4個の情報が記憶される。こうして下端印刷のスケジューリングテーブルが作成される。
【0047】
つまり、参考実施形態では、ノズル割り付け処理に際し、プリンタードライバーが、上端・下端印刷、及び、通常印刷の各パスに対して、スケジューリングテーブルを作成し、各パスにてラスターラインを形成するノズル(使用ノズル)と、各使用ノズルが形成すべきラスターラインの位置とを対応付ける。その結果、マトリクス状の画像データから各パスで使用する画素データを抽出することができ、抽出した画素データを各パスの使用ノズルに割り付ける順に並べ替える処理を実施することができる。
【0048】
===本実施形態===
<印刷モード>
図9は、本実施形態のプリンター1が有する印刷モードを説明する図である。プリンター1は、4色のインク(YMCK)によって印刷する主画像と、背景画像とを重ねて印刷する印刷方法が設定された場合に、図示する「表刷りモード」と「裏刷りモード」の何れかのモードを設定する。表刷りモードは、主画像を印刷面側から見るように印刷するモードである。この場合、媒体の所定領域に対して主画像よりも背景画像が先に印刷される。一方、裏刷りモードは、透明媒体を使用する場合に実施され、主画像を印刷面と反対側から見るように印刷するモードである。この場合、媒体の所定領域に対して背景画像よりも主画像が先に印刷される。
【0049】
本実施形態では、白インクに4色インク(YMCK)のうちの少なくとも1色を混ぜて、白色の色味を調整した背景画像(以下、調色背景画像とも言う)を印刷する。このように、調色背景画像と主画像を重ねて印刷することで、発色性の良い画像を印刷することができる。また、媒体が透明である場合には、主画像と背景画像を重ねて印刷することで、印刷物の反対側が透けてしまうことを防止できる。
【0050】
<印刷方法>
図10及び図11は、主画像と調色背景画像を重ねて印刷する表刷りモードの印刷方法を説明する図である。図10は、媒体の搬送方向下流側の端部である上端部を印刷する「上端印刷」と、媒体の端部以外の中央部を印刷する「通常印刷」の様子を示す。図11は、通常印刷と、媒体の搬送方向上流側の端部である下端部を印刷する「下端印刷」の様子を示す。図中では、ノズル列に属するノズル数を24個に減らして描き、4色インク(YMCK)を吐出するノズル列をまとめて「カラーノズル列Co」と示す。
【0051】
以下では、表刷りモードの印刷方法(図9の左図)を例に挙げて説明する。表刷りモードでは、調色背景画像を主画像よりも先に媒体に印刷する。よって、調色背景画像を印刷する使用ノズルを、主画像を印刷する使用ノズルよりも搬送方向の上流側のノズルとする。図10の左図のヘッド41は、通常印刷時の使用ノズルを示す図である。ホワイトノズル列Wの上流側のノズル群(#16〜#24)、及び、カラーノズル列Coの上流側のノズル群(#16〜#24)を、調色背景画像用の使用ノズル(○)とする。一方、カラーノズル列Coの下流側のノズル群(#1〜#9)を、主画像用の使用ノズル(▲)とする。このように、調色背景画像用の使用ノズルを主画像用の使用ノズルよりも搬送方向上流側のノズルに設定することで、媒体の所定領域に対して主画像よりも先に調色背景画像を印刷することができる。また、調色背景画像を印刷するパスと主画像を印刷するパスとを異ならせることができ、画像の滲みを抑制することができる。
【0052】
具体的な印刷については図10の右図に示す。図10の右図は、各パスのノズルの位置関係を示す図である。実際の印刷ではヘッドに対して媒体が搬送方向下流側に搬送されるが、説明のため、図中ではヘッドを搬送方向上流側に遷移させる。また、図中では、調色背景画像用の使用ノズル(○)と主画像用の使用ノズル(▲)を1つのノズル列で示す。そして、ラスターライン(移動方向に沿うドット列)が搬送方向に並ぶ間隔(以下、「ノズル間ピッチ」)を、ノズルピッチと等しい長さ「1・d」とする。よって、ノズルピッチd内に形成されるラスターライン数(以下、「ノズル間ピッチ数」と言う)は「1」となる。
【0053】
そして、通常印刷では、1回の媒体搬送量をノズルピッチdの3倍の長さである「3d」とする。即ち、通常印刷では、ヘッド41を移動方向に移動させながら、上流側のノズル群(○)で調色背景画像を印刷し、下流側のノズル群(▲)で主画像を印刷する画像形成動作と、搬送量3dで媒体を搬送する搬送動作とが、繰り返し実施される。その結果、通常印刷では、パスごとに、図中の太枠で囲う画像領域が完成する。1回の媒体搬送量がノズルピッチの3倍であり、ノズル間ピッチ数が1であるため、1回のパスごとに3つのラスターラインが完成する。これは、太枠内において搬送方向にノズルが3つ並んでいることからも分かる。つまり、通常印刷では、あるパスで形成される画像の搬送方向上流側(又は下流側)の端部と、その次のパスで形成される画像の上流側(又は下流側)の端部とのずれ量が、3つのラスターライン分の長さとなる。
【0054】
また、図中の太枠内において、移動方向の左側から順に3つの調色背景画像用の使用ノズル(○)と3つの主画像用の使用ノズル(▲)が並んでいる。この事から、調色背景画像を構成する1つのラスターラインが3回のパス(3つのノズル)で印刷され、主画像を構成する1つのラスターラインが3回のパス(3つのノズル)で印刷される事が分かる。このように、1つのラスターラインを複数のノズルで印刷すると(所謂オーバーラップ印刷を実施すると)、不良ノズルが生じたとしても印刷画像の劣化を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、主画像用の使用ノズル(#1〜#9)と背景画像用の使用ノズル(#16〜#24)の間に、インクを吐出しない「乾燥用ノズル(×,#10〜#15)」を設ける。そうすることで、媒体の所定領域は、調色背景画像用の使用ノズルと対向した後に、乾燥用ノズルと対向し、その後に主画像用の使用ノズルと対向することになる。よって、媒体の所定領域が乾燥用ノズルと対向する時間分だけ、背景画像の乾燥時間を確保することができ、画像の滲みを抑制することができる。なお、乾燥用ノズルが属する領域の搬送方向の長さ(図10では6d)は、通常印刷時の媒体搬送量(3d)の整数倍(2倍)であることが好ましい。そうすることで、媒体が乾燥用ノズルと対向するパス数、即ち、乾燥時間を一定にすることができ、画像の濃度むらを抑制できる。
【0056】
次に、上端印刷について説明する。図10に示すように、上端印刷の媒体搬送量dを通常印刷の媒体搬送量3dよりも短くする。なお、あるパスの前後のパスのうちの少なくとも一方の媒体搬送量が、通常印刷時の媒体搬送量3dよりも短い場合、そのパスは上端印刷とする。そのため、図10ではパス1〜パス8を上端印刷とする。
【0057】
ところで、通常印刷では、図10の左図に示すように、カラーノズル列Coの搬送方向下流側のノズル群(#1〜#9)を主画像用の使用ノズルとし、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向上流側のノズル群(#16〜#24)を調色背景画像用の使用ノズルとしている。しかし、上端印刷時には、通常印刷時の調色背景画像用の使用ノズル(#16〜#24)よりも搬送方向下流側のノズルを使用して、調色背景画像が印刷される。例えば、図10のパス1ではノズル#8〜#10を使用して調色背景画像が印刷される。
【0058】
図12A及び図12Bは、媒体の上端部を印刷する参考例の印刷方法を示す図である。図12Aでは、本実施形態の上端印刷と同様に、媒体搬送量(d)が通常印刷時の媒体搬送量(3d)よりも短い。ただし、図12Aの上端印刷では、調色背景画像用の使用ノズルを通常印刷と同じにする。即ち、調色背景画像用の使用ノズルを上流側のノズル(#16〜#24)に固定し、主画像用の使用ノズルを下流側のノズル(#1〜#9)に固定する。表刷りモードの印刷開始時には、媒体の上端部と調色背景画像用の使用ノズルとが対向する。そのため、上端印刷時においても、調色背景画像用の使用ノズルを上流側のノズルに設定してしまうと、ヘッド41に対する媒体の印刷開始位置が比較的に上流側になってしまう。図12Aでは、ノズル#18の位置が印刷開始位置となる。その結果、ヘッド41からの媒体のはみ出し量が多くなったり、媒体の余白量が多くなったりしてしまう。
【0059】
また、図12Bの参考例では、媒体の上端部を印刷する際にも媒体搬送量を短くすることなく、通常印刷時の媒体搬送量3dとする。即ち、印刷開始時から通常印刷を実施し、印刷可能領域よりも上流側に位置するノズルからインクを吐出する。そのため、図12Aと同様に媒体の上端部を印刷する際にも、通常印刷時の調色背景画像用の使用ノズル(#16〜#24)、即ち、上流側のノズル群を使用することになる。よって、ヘッド41に対する媒体の印刷開始位置が比較的に上流側になってしまう。図12Bではノズル#22の位置が印刷開始位置となり、印刷開始位置が図12Aの参考例よりも更に搬送方向上流側になってしまう。
【0060】
そこで、本実施形態では、媒体の上端部を印刷する際に、通常印刷時の調色背景画像用の使用ノズル(#16〜#24)よりも搬送方向下流側のノズルを使用して調色背景画像を印刷し、搬送量(d)を通常印刷時の媒体搬送量(3d)よりも短くする。そうすることで、ヘッド41に対する媒体の印刷開始位置を比較的に下流側にすることができ、ヘッド41からの媒体はみ出し量や媒体余白量を少なくすることができる。
【0061】
ところで、画像全域において、背景画像を印刷してから主画像を印刷するまでの時間間隔、即ち、乾燥時間を一定にすることが好ましい。そうすることで、画像に濃度むらが生じてしまうことを抑制できる。そのために、上端印刷と通常印刷においてドット発生の仕方を同じにする(ドット記録方法を同じにする)。ドット発生の仕方を同じにするとは、上端印刷と通常印刷において、あるパスで形成される画像の搬送方向上流側の端部と、その次のパスで形成される画像の搬送方向上流側の端部との、搬送方向のずれ量を一定にする。
【0062】
図10の通常印刷では、媒体搬送量がノズルピッチの3倍であり、ノズル間ピッチ数が1であるため、前後のパスで形成される各画像の上流側端部のずれ量が3つのラスターライン分の長さとなる。よって、上端印刷においても、前後のパスで形成される各画像の上流側端部のずれ量を3つのラスターライン分の長さにする。ただし、上端印刷では通常印刷に比べて媒体搬送量が短い。そこで、上端印刷では、図10に示すようにパスごとに、調色背景画像用の使用ノズル(○)の数を増やし、また、調色背景画像用の使用ノズルの位置を搬送方向上流側にずらす。
【0063】
上端印刷時の媒体搬送量がノズルピッチdの1倍の長さであるため、調色背景画像用の使用ノズルの位置(最上流側の使用ノズルの位置)を2ノズル分だけ上流側にずらす。例えば、図10のパス1ではノズル#8から「#10」で調色背景画像を印刷し、パス2ではノズル#7から「#12」で調色背景画像を印刷し、パス3ではノズル#6から「#14」で調色背景画像を印刷する。そうすることで、上端印刷においても、前後のパスで形成される各画像の上流側端部のずれ量を3つのラスターライン分の長さにすることができる。つまり、上端印刷時の媒体搬送量dと、上端印刷時にパスごとに使用ノズルの位置(最上流側の使用ノズルの位置)を上流側にずらす量2dとの合計量を、通常印刷時の媒体搬送量3dと等しくする。
【0064】
同様に、下端印刷(図11)においても媒体搬送量dを通常印刷時の媒体搬送量3dよりも短くする。また、印刷終了時に媒体は主画像用の使用ノズル(▲)と対向することになる。そのため、仮に、下端印刷においても通常印刷と同様に搬送方向下流側のノズル(#1〜#9)にて主画像を印刷したとすると、印刷終了位置が比較的に下流側になってしまう。そこで、本実施形態の下端印刷(図11)では、通常印刷時の主画像用の使用ノズル(#1〜#9)よりも搬送方向上流側のノズルを使用して主画像を印刷する。そうすることで、ヘッド41に対する媒体の印刷終了位置を比較的に上流側にすることができる。
【0065】
また、下端印刷においても、通常印刷と同じドット発生の仕方にする(同じドット記録方法にする)。ドット発生の仕方を同じにするとは、下端印刷と通常印刷において、あるパスで形成される画像の搬送方向下流側の端部と、その次のパスで形成される画像の搬送方向下流側の端部との、搬送方向のずれ量を一定にする。例えば、図11の通常印刷では、前後のパスで形成される画像の下流側端部のずれ量が、3つのラスターライン分の長さに相当する。ただし、下端印刷では通常印刷に比べて媒体搬送量が短い。そこで、下端印刷では、図11に示すように、パスごとに、主画像用の使用ノズルの数(▲)を減らし、また、主画像用の使用ノズルの位置を搬送方向上流側にずらす。
【0066】
具体的には、下端印刷時の媒体搬送量がノズルピッチdの1倍の長さであるため、主画像用の使用ノズルの位置(最下流側の使用ノズルの位置)を2ノズル分だけ上流側にずらす。例えば、図11のパス23ではノズル「#11」から#19で主画像を印刷し、パス24ではノズル「#13」から#18で主画像を印刷し、パス25ではノズル「#15」から#17で主画像を印刷する。そうすることで、下端印刷においても通常印刷と同様に、前後のパスで形成される画像の下流側端部のずれ量を3つのラスターライン分の長さにすることができる。つまり、下端印刷時の媒体搬送量dと、下端印刷時にパスごとに使用ノズルの位置(最下流側の使用ノズルの位置)を上流側にずらす量2dとの合計量を、通常印刷時の媒体搬送量3dと等しくする。
【0067】
なお、ここまで、表刷りモード(図9の左)の印刷方法を例に挙げている。裏刷りモード(図9の右)では、表刷りモードとノズルの位置が逆になるだけであるため、説明は省略する。例えば、裏刷りモードでは、通常印刷時の背景画像用の使用ノズルが搬送方向下流側のノズル群(図10ではノズル#1〜#9)となり、主画像用の使用ノズルが搬送方向上流側のノズル群(#16〜#24)となる。
【0068】
<ノズル割り付け処理について>
本実施形態の印刷方法(図10,図11)は、4色インク(YMCK)による主画像と、白インク(W)に4色インクのうちの少なくとも1色を加えて白色の色味を調整した調色背景画像とを、重ねて媒体に印刷する印刷方法である。そして、主画像を印刷するノズル群と調色背景画像を印刷するノズル群のうち、搬送方向上流側に位置する方のノズル群にて、媒体の所定領域に対して先に画像を印刷する。また、上端・下端印刷と通常印刷とにおいて媒体搬送量を異ならせる。そして、上端・下端印刷と通常印刷とにおいてドットの発生の仕方を同じにする。また、主画像のドット発生の仕方と調色背景画像のドット発生の仕方は同じである(印刷解像度や通常印刷時の使用ノズル数、オーバーラップ数などが同じである)。以下、このような印刷方法が設定された場合のノズル割り付け処理について説明する。
【0069】
プリンタードライバーは、ノズル割り付け処理において、マトリクス状に画素データが並んだ画像データの中からパスごとに使用する画素データを抽出し、ノズル列の各ノズルにデータを割り付ける順に抽出した画素データを並び替える。そのために、プリンタードライバーは、パスごとに、ノズル列に属する各ノズルが、画像を形成するために使用する使用ノズルか、それとも不使用ノズルであるかを判別し、また、各使用ノズルと、各使用ノズルが形成すべきラスターラインの位置とを対応付ける必要がある。なお、ラスターラインの位置とは、そのラスターラインが形成される媒体上の搬送方向の位置である。ここでは、搬送方向下流側(媒体の上端部側)のラスターラインの位置Lから順に小さい番号を付す。なお、印刷可能領域内のラスターラインのうちの最下流側のラスターラインの位置を0(L0)とし、0番のラスターラインと呼ぶ。また、0番のラスターラインよりも下流側のラスターラインの位置は負の値とする。
【0070】
図13は、プリンタードライバーがノズル割り付け処理にて実施する処理の流れを示す図であり、図14は、調色背景画像に主画像を重ねる表刷りモードの印刷方法に対して設定されるノズル領域を説明する図であり、図15Aから図15Dは、ノズル割り付け処理にて使用するパラメーターを示す図である。以下、調色背景画像に主画像を重ねる表刷りモードの印刷方法を例に挙げて説明する。この場合、図14に示すように、各ノズル列(KCMYW)に対してノズル領域1〜9が設定される。なお、図14に示すノズル領域は、通常印刷時のノズル領域であり、1つのノズル列に属するノズル数を減らして説明する(#1〜#26)。
【0071】
主画像を印刷するノズルのうち、ブラックノズルが「ノズル領域1」に、シアンノズルが「ノズル領域3」に、マゼンタノズルが「ノズル領域5」に、イエローノズルが「ノズル領域7」に設定される。そして、調色背景画像を印刷するノズルのうち、ブラックノズルが「ノズル領域2」に、シアンノズルが「ノズル領域4」に、マゼンタノズルが「ノズル領域6」に、イエローノズルが「ノズル領域8」に、白ノズルが「ノズル領域9」に設定される。通常印刷時には、主画像を印刷するノズル領域1,3,5,7に属するノズルがノズル#1〜#12となり、4色ノズル列(KCMY)のノズル#1〜#12によって主画像が印刷され、調色背景画像を印刷するノズル領域2,4,6,8,9に属するノズルがノズル#15〜#26となり、5色のノズル列(KCMYW)のノズル#15〜#26によって調色背景画像が印刷される。なお、ホワイトノズル列Wは主画像を印刷しないため、1つのノズル領域だけが設定される。
【0072】
これらのノズル領域1〜9の中から「基準ノズル領域」が設定される。ここでは、ノズル領域1〜9のうち、搬送方向の最下流側のノズル領域が基準ノズル領域に設定されるとする。本実施形態のヘッド41(図2)では、全てのノズル列(KCMYW)の搬送方向の位置が等しいため、ブラックノズル列Kのノズル領域1を基準ノズル領域に設定する。
【0073】
図15Aに示すテーブルは、各ノズル領域に割り付けるデータの種類と、基準ノズル領域1に対する他のノズル領域2〜9の「ずらし量」とを記憶している。「ずらし量」は、通常印刷における基準ノズル領域1の使用ノズル(#1〜#12)に対する他のノズル領域2〜9の使用ノズルの搬送方向のずれ量である。例えば、同じ主画像を印刷する基準ノズル領域1の使用ノズル(#1〜#12)とノズル領域3の使用ノズル(#1〜#12)のずらし量は「0」である。一方、背景画像を印刷するノズル領域4の使用ノズル(#15〜#26)は、基準ノズル領域1の使用ノズルに対して14個のノズル分だけ搬送方向上流側にずれているため、ずらし量は「14」である。即ち、ずらし量は、通常印刷時の或るノズル領域の使用ノズルのうちの開始ノズルの番号(又は終了ノズルの番号)から、通常印刷時の基準ノズル領域の使用ノズルのうちの開始ノズルの番号(又は終了ノズルの番号)を、減算した値である。例えば、ノズル領域3のずらし量は「ノズル#1−ノズル#1」により「0」と算出され、ノズル領域4のずらし量は、「ノズル#15−ノズル#1」により「14」と算出される。
【0074】
なお、図15A〜図15Dに示すパラメーターテーブルは、例えば、プリンター1のメモリー13が記憶しても良いし、プリンタードライバーがコンピューター60にインストールされた際にコンピューター60のメモリーが記憶しても良い。また、本実施形態では、図14に示すように、主画像用の使用ノズル(#1〜#12)と調色背景画像用の使用ノズル(#15〜#26)の間に、インクを吐出しない2つの乾燥用ノズル(#13〜#14)を設ける。ただし、説明の簡略のため、ここでは乾燥用ノズルは何れのノズル領域にも属さず、また、乾燥用ノズルでノズル領域を構成することもないとする。
【0075】
プリンタードライバーは、ハーフトーン処理後、印刷順のパスごとに、ノズル割り付け処理を実施する。本実施形態では、全てのパスのノズル割り付け処理を終える前に、ノズル割り付け処理を終えたパスの印刷データをプリンター1に送信する。そうすることで、印刷を早く開始することができ、また、全てのパスのパスごとの印刷データを記憶する必要がない為、コンピューター60のメモリー容量を小さくすることができる。ただし、これに限らず、全てのパスのノズル割り付け処理を終了した後に、印刷データをまとめてプリンター1に送信してもよい。以下、上端・下端印刷および通常印刷のノズル割り付け処理について具体的に説明する。本来、プリンタードライバーは、上端印刷のパスから順にノズルの割り付け処理を実施するが、ここでは、説明の容易のために、まず、通常印刷の処理を説明する。
【0076】
<<通常印刷>>
図16は、通常印刷のパス10におけるヘッドテーブル(第1のテーブルに相当)とノズルテーブル(第2のテーブルに相当)を示す図である。図16の左図では、ノズル領域1,2を有するブラックノズル列Kがパスごとに搬送方向上流側へ遷移する様子を示す。上端印刷はパス1〜9までであり、パス10から通常印刷が開始する。プリンタードライバーは、パス10のノズル割り付け処理のために、まず、基準ノズル領域(ノズル領域1)に関するヘッドテーブルを作成する(図13のS001)。
【0077】
ヘッドテーブルには、図示するように、ヘッド位置、水平位置、ノズルの種別、開始ノズル及び終了ノズルが、記憶される。まず、プリンタードライバーは、該当パスのヘッド位置を算出し、ヘッドテーブルに記憶させる(格納する)。ヘッド位置とは、該当パス(図ではパス10)において、基準ノズル領域が属するノズル列(ブラックノズル列)の1番ノズル(#1)が対応するラスターラインの位置L(番号)である。ここでは、印刷開始のラスターラインの位置を「位置0」とする。なお、図16のノズル列の遷移図において、各パスのノズル列の上に記された数字が各パスのヘッド位置に相当する。
【0078】
図15Cは、通常印刷のヘッドテーブルを作成するためのパラメーターテーブルである。パラメーターテーブルの「開始ヘッド位置」は、通常印刷の最初のパス(ここではパス10)のヘッド位置を示す。図16はパス10のヘッドテーブルであるため、プリンタードライバーは、ヘッド位置として開始ヘッド位置「3」をそのまま、ヘッドテーブルに記憶させる。通常印刷の最初のパス以降のヘッド位置は、開始ヘッド位置(3)と、媒体搬送量(3d)と、ノズル間ピッチ(1d)によって、算出される。なお、ノズル間ピッチはラスターラインが形成される搬送方向の間隔であり、搬送方向の印刷解像度に相当する長さである。具体的には、通常印刷の或るパスXのヘッド位置は、「開始ヘッド位置+(媒体搬送量/ノズル間ピッチ)×(パスX−パス10)」によって算出される。例えば、次のパス11のヘッド位置は「6(=3+(3d/1d)×(11−10))」と算出される。
【0079】
次に、プリンタードライバーは、該当パスの「水平位置」をヘッドテーブルに記憶させる。図16に示す印刷方法では、搬送方向の所定の位置を使用ノズル(斜線部分)が4回通過している。これは、各画像を構成する1つのラスターラインが4個のノズルで形成されること(オーバーラップ数が4であること)を示している。よって、同じラスターラインを形成するノズルが同じ画素にドットを形成しないように水平位置を設定する。水平位置は、ラスターラインを形成するためのラスターデータ(画像データ上にて移動方向に対応する方向に並ぶ画素データ群)において、該当パスのノズルに割り付ける画素データの種類(位置)を示す情報である。ここではオーバーラップ数を4としているため、図15Cのパラメーターテーブルに示すように、水平位置を示す情報も1〜4となる。プリンタードライバーは、通常印刷の最初のパス10から順に、パラメーターテーブルに記憶されている水平位置を「2,3,4,1」の周期に基づき、該当パスの水平位置を決定し、ヘッドテーブルに記憶させる。図11のパス10のヘッドテーブルは水平位置を2と記憶する。
【0080】
次に、プリンタードライバーは、「ノズル種別(ノズル種類)」をヘッドテーブルに記憶させる。ノズル種別は、基準ノズル領域に属するノズル#1〜#12が「使用ノズル」であるのか、「不使用ノズル」であるのかを示す。そのために、プリンタードライバーは、図15Cのパラメーターテーブルの「開始ノズル番号」と「終了ノズル番号」を参照し、基準ノズル領域の各ノズル#1〜#12が使用ノズルか否かをヘッドテーブルに記憶させる。図15Cでは、開始ノズル番号がノズル#1であり、終了ノズル番号がノズル#12であるため、図16のヘッドテーブルでは、全てのノズル#1〜#12が「使用ノズル」と記憶される。
【0081】
なお、ここでは、基準ノズル領域に属する全てのノズル#1〜#12が使用ノズルとなっているが、この場合に限られない。プリンターや印刷方法によっては、ノズル列の端部ノズルを使用しないとし、端部ノズルが不使用ノズルとしてヘッドテーブルに記憶される場合もある。また、ここでは、全てのラスターラインを複数のノズルで印刷するが、これに限らず、一部のラスターラインだけを複数のノズルで印刷し、別の一部のラスターラインを1つのノズルで印刷する印刷方法(所謂、部分オーバーラップ印刷)を実施する場合がある。この場合に、ノズルによってドットを形成する位置が異なるため、ヘッドテーブルのノズル種別において、例えば、複数のノズルでラスターラインを形成するノズルを「オーバーラップノズル」と記憶させ、1つのノズルでラスターラインを形成するノズルを「通常ノズル」と記憶させることで、ノズルの種類を区別することができる。また、背景画像用の使用ノズルと主画像用の使用ノズルの間に位置する乾燥用ノズル(図14の#13,#14)を基準ノズル領域に含めてもよく、ノズル種別において、ノズル#1〜#12を使用ノズルと記憶させ、ノズル#13,#14を乾燥用ノズル(不使用ノズル)と記憶させてもよい。
【0082】
最後に、プリンタードライバーは、「開始ノズル及び終了ノズル」をヘッドテーブルに記憶させる。プリンタードライバーは、ノズル種別を参照し、基準ノズル領域に属するノズル#1〜#12のうちの最下流側の使用ノズル(図16ではノズル#1)を「開始ノズル」としてヘッドテーブルに記憶させ、ノズル#1〜#12のうちの最上流側の使用ノズル(図16ではノズル#12)を「終了ノズル」としてヘッドテーブルに記憶させる。
【0083】
こうして作成されたヘッドテーブルにより、プリンタードライバーは、基準ノズル領域の各使用ノズルと、各使用ノズルが形成すべきラスターラインの位置(番号)とを対応付けることができる。即ち、ブラックの主画像データから該当パス(図ではパス10)にて印刷する画素データを抽出し、基準ノズル領域が属するブラックノズル列Kのノズルに画素データを割り付けることができる(並べ替えることができる)。
【0084】
次に、プリンタードライバーは、基準ノズル領域に関して作成したヘッドテーブルに基づき、他のノズル領域2〜9に関する「ノズルテーブル」を作成する(図13のS002)。図16には、基準ノズル領域と同じブラックノズル列Kに属するノズル領域2のノズルテーブルを示す。プリンタードライバーは、まず、ノズルテーブルに、ヘッドテーブルと同じヘッド位置(図16では3)と水平位置(図16では2)を記憶させる。
【0085】
次に、プリンタードライバーは、ノズル領域2の「開始ノズル及び終了ノズル」をヘッドテーブルに記憶させる。そのために、プリンタードライバーは、ヘッドテーブルの「開始ノズル及び終了ノズル」と、図15Aのパラメーターテーブルの「ずらし量」とを参照する。ずらし量は、基準ノズル領域の使用ノズルに対する他のノズル領域の使用ノズルの搬送方向上流側へのずれ量である。よって、プリンタードライバーは、ヘッドテーブルに記憶された「開始ノズル」にずらし量を加算したノズルを、ノズル領域2の「開始ノズル」として算出し、ヘッドテーブルに記憶された「終了ノズル」にずらし量を加算したノズルを、ノズル領域2の「終了ノズル」として算出する。例えば、パラメーターテーブル(図15A)によれば、ノズル領域2のずらし量は「14(ノズル14個分)」である。図16のパス10では、ヘッドテーブルに記憶された開始ノズルが「#1」であり、終了ノズルが「#12」である。よって、ノズル領域2のノズルテーブルには、開始ノズルが「ノズル#15(=#1+14)」と記憶され、終了ノズルが「ノズル#26(=#12+14)」と記憶される。
【0086】
最後に、プリンタードライバーは、「ノズル種別へのアドレス」をノズルテーブルに記憶させる。ノズル種別へのアドレスとは、ノズル領域2の使用ノズルのうちの最下流側ノズル、即ち、開始ノズル(図16ではノズル#15)が対応する基準ノズル領域のノズル番号(図16ではノズル#1)を示す。なお、通常印刷時の基準ノズル領域に属するノズルのうちの下流側からN番目のノズルと、通常印刷時の別のノズル領域に属するノズルのうちの下流側からN番目のノズルとが、対応関係にある。後の処理において、ノズル領域2のノズルに印刷データを割り付ける際に、プリンタードライバーは、ノズル領域2に関するノズルテーブルの「開始ノズル」と「ノズル種別へのアドレス」に基づき、ヘッドテーブルのノズルの種別を参照し、ノズル領域2に属するノズルの種別を判別することが出来る。例えば、図16では、ノズル領域2の開始ノズルがノズル#15であり、ノズル種別へのアドレスがノズル#1である。ゆえに、プリンタードライバーは、ヘッドテーブルの「ノズル種別」のノズル#1に関する情報を参照した結果、「使用ノズル」と記憶されているため、ノズル領域2のノズル#15も「使用ノズル」と判別できる。そして、プリンタードライバーは、順に、ノズル領域2のノズル#16に関しては、ヘッドテーブルのノズル種別のノズル#2に関する情報を参照する。このように、「ノズル種別へのアドレス」をノズルテーブルに記憶することで、ノズル領域2に属するノズルに関する「ノズル種別」を記憶しなくとも、ノズル領域2に属するノズルの種類を判別できる。
【0087】
こうしてノズル領域2に関するノズルテーブルが作成された後、プリンタードライバーは、他のノズル領域3〜9に関するノズルテーブルも作成する。なお、図15Aに示すように、シアンノズル列Cのノズル領域3のずらし量は「0」であるため、ノズル領域3と基準ノズル領域では、開始ノズル及び終了ノズルが同じとなる。また、ホワイトノズル列Wのノズル領域9のずらし量は「14」であるため、ノズル領域9とノズル領域2では、開始ノズル及び終了ノズルが同じとなる。こうして作成されたノズルテーブルにより、プリンタードライバーは、各ノズル領域の各使用ノズルと、各使用ノズルが形成すべきラスターラインの位置(番号)とを対応付けることができる。
【0088】
該当パスのヘッドテーブル及び各ノズル領域2〜9に関するノズルテーブルの作成が終了した後、プリンタードライバーは、画像データの中から該当パスにて印刷に使用する画素データを抽出し、ノズルに割り付ける順に抽出した画素データを並び替え(図13のS003、詳細は後述)、並び替えた印刷データをプリンター1に送信する。その後、プリンタードライバーは、次のパスのヘッドテーブル及びノズルテーブルを作成する。なお、通常印刷におけるヘッドテーブル及びノズルテーブルの作成処理は、通常印刷のパスが終了するまで実施される。図15Cのパラメーターテーブルには、通常印刷の「終了ヘッド位置(30)」が記憶されている。終了ヘッド位置は、通常印刷の最後のパスにおけるヘッド位置である。よって、ヘッド位置が終了ヘッド位置に達した時、プリンタードライバーは次のパスから下端印刷の処理を実施する。
【0089】
以上をまとめると、本実施形態の印刷方法では(図10・図11)、2種類の画像(主画像・背景画像)を重ねて印刷し、また、乾燥時間を確保するために、媒体の所定領域に対して2種類の画像を異なるパスにて印刷する。そのため、媒体の所定領域に対して先に印刷する画像のノズルを、後に印刷する画像のノズルよりも、搬送方向上流側に位置するノズルとする。即ち、主画像を印刷するノズル列(KCMY)と背景画像を印刷するノズル列(主にW)によって使用ノズルの範囲(画像を形成するノズルの範囲)が異なる。つまり、ノズル列によって使用ノズルの範囲が異なる。そのため、仮に、ノズル列(KCMYW)ごとに、使用ノズルの範囲(ノズル種別・開始ノズル及び終了ノズル)を記憶したヘッドテーブルを作成しようとすると、ヘッドテーブルを作成するためのパラメーターテーブル(例:図15C)のメモリー容量が増大してしまう。
【0090】
そこで、本実施形態では、基準となるノズル列(基準ノズル領域が属するノズル列)の使用ノズルの範囲に対して、他のノズル列の使用ノズルの範囲が搬送方向にずれた量である「ずらし量」を、印刷システム(プリンター1又はコンピューター)のメモリーに記憶させる。そうすることで、他のノズル列の使用ノズルの範囲を印刷システムに記憶させなくとも、基準となるノズル列の使用ノズルの範囲にずらし量を加算することで、他のノズル列の使用ノズルの範囲を算出することができる。その結果、使用ノズルの範囲(例:図15Cの開始ノズル番号・終了ノズル番号)を記憶するパラメーターテーブル、即ち、ヘッドテーブルを作成するためのパラメーターテーブルのメモリー容量を削減できる。
【0091】
また、本実施形態の印刷方法では、1つのノズル列に2種類の画像データを割り付ける。前述の参考実施形態では、1つのノズル列に割り付けられる画像データは1種類であるため(主画像データだけであるため)、参考実施形態の処理を本実施形態のノズル割り付け処理にそのまま適用することは出来ない。
【0092】
そこで、本実施形態では、一方の画像(例:主画像)を印刷するノズル領域(基準ノズル領域)の使用ノズルの範囲に対して、他方の画像(例:調色背景画像)を印刷するノズル領域の使用ノズルの範囲が搬送方向にずれた量である「ずらし量」を、印刷システムのメモリーに記憶させる。そうすることで、基準ノズル領域ではない他のノズル領域の使用ノズルの範囲を印刷システムに記憶させなくとも、基準ノズル領域の使用ノズルに一方の画像データを割り付けることができ、基準ノズル領域の使用ノズルの範囲にずらし量を加算した他方のノズル領域の使用ノズルに、他方の画像データを割り付けることができる。その結果、1つのノズル列に2種類の画像データを割り付けつつ、使用ノズルの範囲を記憶するパラメーターテーブル、即ち、ヘッドテーブルを作成するためのパラメーターテーブルのメモリー容量を削減できる。
【0093】
また、本実施形態のヘッドテーブルは、使用ノズルの範囲を示す情報(画像を形成するノズルの範囲を示す情報に相当)として、基準ノズル領域に属するノズル(#1〜#12)ごとに「ノズル種別(例えば、使用ノズル・不使用ノズル)」を記憶する。ただし、基準ノズル領域外の他のノズル領域2〜9に関するノズルテーブルは、そのノズル領域に属するノズルごとに「ノズル種別」を記憶することはなく、使用ノズルのうちの「開始ノズル及び終了ノズル」だけを記憶する。図16では、ノズル領域に属するノズル数を減らしているが、実際のノズル数は多く、ノズル領域に属するノズルごとにノズル種別をヘッドテーブルに記憶させる処理は煩雑であり、ヘッドテーブルのメモリー容量は大きくなる。つまり、基準ノズル領域以外のノズル領域2〜9に関するノズルテーブルに、ノズル種別を記憶させないことによって、ヘッドテーブルに比べて、ノズルテーブルの作成処理が容易となり、また、ノズルテーブルのメモリー容量を小さくすることができる。ただし、基準ノズル領域以外のノズル領域2〜9のノズルテーブルには「ノズル種別へのアドレス」を記憶させているため、プリンタードライバーは、基準ノズル領域にて対応するノズルのノズル種別を参照し、他のノズル領域2〜9のノズル種別を知ることができる。
【0094】
また、本実施形態のヘッドテーブルは、使用ノズルの範囲を示す情報として、ノズルごとに記憶した「ノズル種別」の他に、使用ノズルのうちの「開始ノズル及び終了ノズル」も記憶する。こうすることで、プリンタードライバーは、基準ノズル領域以外の他のノズル領域2〜9のノズルテーブルにおける「開始ノズル及び終了ノズル」を算出する際に、ヘッドテーブルの「ノズル種別」を参照し、使用ノズルのうちの最下流側のノズル(開始ノズル)と最上流側のノズル(終了ノズル)を抽出する必要がなくなる。仮に、ヘッドテーブルにノズル種別しか記憶されていないとすると、複数のノズル領域2〜9のノズルテーブルを作成する都度、ヘッドテーブルの「ノズル種別」から開始ノズルと終了ノズルを抽出することになってしまう。即ち、ヘッドテーブルに使用ノズルのうちの「開始ノズル及び終了ノズル」も記憶することによって、プリンタードライバーは、ヘッドテーブルの「開始ノズル及び終了ノズル」にずらし量を加算するだけで、ノズルテーブルの「開始ノズル及び終了ノズル」を算出することができる。その結果、ノズルテーブルの作成処理を容易にすることができる。
【0095】
<<上端印刷>>
ところで、前述の参考実施形態の印刷方法は(図4)、通常印刷で埋めることができないドットを上端・下端印刷で記録する印刷方法である。そのため、例えば、図4に示すように通常印刷では、前後のパスで形成される画像の(上流側又は下流側の)端部のずれ量が一定である。しかし、例えば、図4の上端印刷では、パス1で形成される画像の上流側端部の方がパス2で形成される画像の上流側端部よりも上流側に位置し、下端印刷では、パス11で形成される画像の下流側端部の方がパス12で形成される画像の下流側端部よりも上流側に位置しており、参考実施形態では、上端・下端印刷と通常印刷においてドットの発生の仕方が異なる。そのため、参考実施形態のノズル割り付け処理を本実施形態のノズル割り付け処理にそのまま適用することは出来ない。仮に、参考実施形態のノズル割り付け処理を適用してしまうと、例えば、図10のパス1においてノズル#11以降のノズルからもインクが吐出される虞があり、上端・下端印刷と通常印刷とにおいてドット発生の仕方を同じにすることが出来なくなってしまう。
【0096】
また、本実施形態の印刷方法では、上端・下端印刷と通常印刷とにおいてドット発生の仕方を同じにするものの、ヘッド41に対する印刷開始位置を出来る限り搬送方向下流側にするために、上端・下端印刷の媒体搬送量を通常印刷の媒体搬送量よりも短くする。そのため、印刷開始時から通常印刷を実施する図12Bとは異なり、図10や図11、図12Aでは印刷可能領域内に位置するノズルであっても不使用ノズルが存在する。そのため、プリンタードライバーは、ノズル割り付け処理に際し、各ノズルが使用ノズルか不使用ノズルかを判断する必要がある。
【0097】
そこで、本実施形態では、媒体の上端部及び下端部を印刷する際にも通常印刷が実施されると想定した「仮想印刷」と、媒体の上端部及び下端部を印刷する際には上端・下端印刷が実施されると想定した「実際の印刷」と、の両方の印刷に基づいて、上端・下端印刷にて画像を形成するノズルの範囲(使用ノズルの範囲)を決定する。つまり、仮想印刷で画像を形成するノズルを、実際の印刷のヘッドのノズルに置き換える。なお、上端・下端印刷と通常印刷のドット発生の仕方を同じにするためには、仮想印刷においてノズルが位置する搬送方向の位置に、実際の印刷のノズルも位置させる必要がある。即ち、仮想印刷で形成されるラスターラインの位置に実際の印刷のノズルを位置させて、ラスターラインを形成する必要がある。そのため、通常印刷の搬送量(3d)と上端・下端印刷の搬送量(1d)の差を、ノズルピッチ(d)の整数倍の長さにするとよい。
【0098】
まず、上端印刷時のヘッドテーブル及びノズルテーブルの作成処理について説明する。
図17は、上端印刷のパス6におけるヘッドテーブルとノズルテーブルを示す図である。図17の左図では、ノズル領域1(基準ノズル領域)及びノズル領域2が属するブラックノズル列Kの遷移図を示す。ここで、図中の実線で示したブラックノズル列Kの位置が、実際の上端印刷におけるブラックノズル列Kの位置であり、図中の点線で示したブラックノズル列Kの位置が、仮想印刷におけるブラックノズル列Kの位置である。実際の上端印刷では、上端印刷の最後のパスからブラックノズル列Kを実際の印刷の搬送量(1d)で遷移させる。例えば、図17では、上端印刷の最後のパス9のヘッド位置が「0」である。本実施形態では、上端印刷の媒体搬送量とノズル間ピッチ(ラスターラインの搬送方向の間隔)が等しいため(共に1d)、実際の上端印刷のパス8のヘッド位置は「−1」となる。一方、仮想印刷では、上端印刷の最後のパスからブラックノズル列Kを通常印刷の搬送量(3d)で遷移させる。そのため、仮想印刷のパス8のヘッド位置が「−3」となる。
【0099】
言い換えると、仮想印刷では、媒体の上端部を通常印刷で印刷し、通常印刷の最初のパス(又は上端印刷の最後のパス)のヘッド41の搬送方向の位置を所定位置に到達させ、実際の印刷では、媒体の上端部を上端印刷で印刷し、通常印刷の最初のパス(又は上端印刷の最後のパス)のヘッド41の搬送方向の位置を同じ所定の位置に到達させる。
【0100】
また、前述の通常印刷では、ノズル列ごと、割り付ける画像データごとに設定したノズル領域1〜9(図14)が変動することなく、各ノズル領域に属するノズルが一定である。これに対して、本実施形態の上端印刷では、図10に示すように、搬送方向下流側のノズルも使用して背景画像を印刷し、背景画像を印刷するノズルを徐々に上流側にずらしていく。そのため、実際の上端印刷では、背景画像を印刷するノズル領域に属するノズルが変動する。一方、仮想印刷では、背景画像を印刷するノズル領域に属するノズルは変動せず、仮想印刷のヘッドにおける搬送方向上流側のノズル(#15〜#26)が、背景画像用の使用ノズルとなる。
【0101】
プリンタードライバーは、まず、仮想印刷のヘッドにおける基準ノズル領域(ブラックノズル列Kの主画像を印刷するノズル群)に関するヘッドテーブルを作成する(図13のS001)。はじめに、プリンタードライバーは、該当パス(図17はパス6)の仮想印刷におけるヘッド位置と実際の印刷におけるヘッド位置とを算出する。なお、ヘッド位置は、前述のように、基準ノズル領域が属するノズル列の1番ノズル#1が対応するラスターラインの位置である。プリンタードライバーは、上端仮想印刷のパラメーターテーブル(図15B)に記憶されている開始ヘッド位置(−24)と、搬送量(3・d)と、ノズル間ピッチ(1・d)に基づき、仮想印刷のヘッド位置を算出する。開始ヘッド位置(−24)は、上端仮想印刷の最初のパス1におけるヘッド位置である。よって、仮想印刷のあるパスXのヘッド位置は、「開始ヘッド位置+(媒体搬送量/ノズル間ピッチ)×(パスX−1)」により算出される。図17の例はパス6であるため、ヘッド位置は「−9(=−24+(3d/1d)×(6−1))」と算出される。
【0102】
同様に、プリンタードライバーは、実際の上端印刷のパラメーターテーブル(図15B)に記憶されている開始ヘッド位置(−8)と、搬送量(1・d)と、ノズル間ピッチ(1・d)に基づき、実際の印刷のヘッド位置を算出する。図17の例はパス6であるため、ヘッド位置は「−3(=−8+(1d/1d)×(6−1))」と算出される。そして、プリンタードライバーは、仮想印刷のヘッド位置(−9)と実際の印刷のヘッド位置(−3)の両方を、ヘッドテーブルに記憶させる。
【0103】
次に、プリンタードライバーは、図15Bの上端仮想印刷のパラメーターテーブルを参照し、水平位置とノズルの種別を、ヘッドテーブルに記憶させる。この処理は、通常印刷と同様であり、図17のパス6の例では、水平位置が2となり、ノズル種別においてノズル#1〜ノズル#12が使用ノズルとして記憶される。なお、これは、仮想印刷のヘッドにおけるノズル#1〜#12が使用ノズルであることを示している。
【0104】
その後、プリンタードライバーは、仮想印刷におけるヘッド位置と実際の印刷におけるヘッド位置の差を算出し、その差をヘッドテーブルに記憶させる。図17のパス6では、仮想印刷と実際の印刷のヘッド位置の差は、「−6(=−9−(−3))」となる。最後に、プリンタードライバーは、ノズル種別に基づき、使用ノズルのうちの最下流側のノズルを開始ノズル(図ではノズル#1)とし、使用ノズルのうちの最上流側のノズルを終了ノズル(図ではノズル#12)として、ヘッドテーブルに記憶させる。こうして仮想印刷の基準ノズル領域に関するヘッドテーブルの作成が終了する。
【0105】
次に、プリンタードライバーは、実際の印刷における基準ノズル領域、及び、他のノズル領域2〜9に関するノズルテーブルを作成する。以下、実際の印刷における基準ノズル領域(ブラックノズル列のうちの主画像を印刷するノズル)のノズルテーブルの作成について説明する。まず、プリンタードライバーは、ヘッドテーブルを参照し、実際の印刷のヘッド位置「−3」と水平位置「2」とを、ノズルテーブルに記憶させる。
【0106】
その後、プリンタードライバーは、実際の印刷における基準ノズル領域の開始ノズル及び終了ノズルを算出する。ヘッドテーブルに記憶されているように、仮想印刷と実際の印刷とのヘッド位置の差は「−6」であり、仮想印刷のノズルに対して実際の印刷のノズルは、6個のラスターライン分の長さだけ搬送方向の上流側に位置している。よって、ヘッドテーブルに記憶された仮想印刷における開始ノズル「#1」を、ヘッド位置の差(−6)と、ノズル間ピッチ数(1)とに基づいて、実際の印刷における開始ノズルに置き換える。実際の印刷における開始ノズルは、「仮想印刷の開始ノズル+(ヘッド位置の差/ノズル間ピッチ数)」によって算出される。図17の例では、基準ノズル領域の開始ノズルが「#−5(=#1+(−6)/1)」と算出される。同様に、ヘッドテーブルに記憶された終了ノズル「#12」は、実際の印刷の終了ノズルでは「#6(=#12+(−6)/1)」と算出される。
【0107】
つまり、上端印刷においても通常印刷と同様のドット発生の仕方にするためには、仮想印刷における基準ノズル領域の使用ノズルにてドットを記録すればよく、仮想印刷における使用ノズルを実際の印刷のノズルに置き換える。図17の例では、仮想印刷における基準ノズル領域の使用ノズル「#1〜#12」が、実際の印刷における使用ノズル「#−5〜#6」に置き換えられる。ただし、実際のヘッドには、負の値のノズルは存在せず、1番ノズルから存在するため1番ノズル以降を使用ノズルとし、且つ、印字可能領域内に位置するノズルを使用ノズルとする。なお、本実施形態では、印刷開始のラスターラインを「0番」とする。
【0108】
そこで、プリンタードライバーは、ヘッド位置に基づき、印字可能領域内に位置するノズル番号を算出する。図17では、実際の印刷におけるヘッド位置が「−3」であり、ノズル#1が−3番のラスターライン(印刷領域外)に対応することが分かる。そして、0番のラスターライン以降(0番よりも上流側のラスターライン)が印字可能領域内のラスターラインとなる。ゆえに、印字可能領域内の最下流側の使用ノズルは、「(印字開始のラスターライン−ヘッド位置)/ノズル間ピッチ数+1」によって算出することができる。図17の例では、ノズル#4(={0−(−3)}/1+1)が、印字可能領域内に位置する。そのため、プリンタードライバーは、実際の印刷における基準ノズル領域の使用ノズルのうち、開始ノズルがノズル#4であり、終了ノズルがノズル#6であると算出することができ、この情報をノズルテーブルに記憶させる。なお、図17の左下には、基準ノズル領域に関して、仮想印刷におけるノズルと、実際の印刷におけるノズルと、ラスターラインの位置(L)とを対応付けた図を示す。この図からも、印字可能領域内に位置する使用ノズルがノズル#4〜#6であることが分かる。
【0109】
最後に、プリンタードライバーは、「ノズル種別へのアドレス」を算出し、基準ノズル領域のノズルテーブルに記憶させる。図17の基準ノズル領域の例では、仮想印刷から実際の印刷に置き換える際に使用ノズルの数が減り、開始ノズルがノズル#4である。そのため、ノズル種別へのアドレスは、実際の印刷の開始ノズル#4が仮想印刷のヘッドにて対応するノズルとなる。よって、プリンタードライバーは、ノズル種別へのアドレスを、「印字可能領域内の開始ノズル番号−開始ノズル番号+1」によって算出することが出来る。図17では、印字開始位置を考慮しなければ、前述のように、ノズル#−5が開始ノズルとなる。ゆえに、ノズル種別へのアドレスは、「ノズル#10(=#4−(#−5)+1)」と算出される。これにより、プリンタードライバーは、例えば、開始ノズル#4のノズル種別がヘッドテーブルに記憶されたノズル#10のノズル種別(使用ノズル)であり、ノズル#5のノズル種別がヘッドテーブルに記憶されたノズル#11のノズル種別であると判断できる。
【0110】
こうして、実際の印刷における基準ノズル領域に関するノズルテーブルが作成された後、プリンタードライバーは、実際の印刷における他のノズル領域2〜9に関してもノズルテーブルを作成する。図17にて、実際の印刷におけるノズル領域2のノズルテーブルを示す。まず、プリンタードライバーは、ヘッドテーブルに記憶された実際の印刷のヘッド位置(−3)及び水平位置(2)を、ノズル領域2に関するノズルテーブルに記憶させる。
【0111】
次に、プリンタードライバーは、ノズル領域2に関する開始ノズル及び終了ノズルを算出する。ヘッドテーブルに記憶された開始ノズル及び終了ノズルは、仮想印刷における基準ノズル領域の使用ノズルの範囲を示す。図15Aのパラメーターテーブルに示すように、ノズル領域2の使用ノズルは、基準ノズル領域の使用ノズルに対して搬送方向の上流側にずらし量「14(14個のラスターライン分の長さ)」だけずれる。そのため、プリンタードライバーは、ヘッドテーブルの開始ノズル(#1)とずらし量(14)とノズル間ピッチ数(1)とに基づいて、仮想印刷におけるノズル領域2の開始ノズルを「ノズル#15(=#1+(14/1))」と算出する。同様に、プリンタードライバーは、ヘッドテーブルの終了ノズル(#12)とずらし量(14)とノズル間ピッチ数(1)とに基づいて、仮想印刷におけるノズル領域2の終了ノズルを「ノズル#26(=#12+(14/1))」と算出する。
【0112】
こうして算出された仮想印刷におけるノズル領域2の開始ノズル(#15)及び終了ノズル(#26)を、実際の印刷のノズルに置き換える。ヘッドテーブルに記憶されているように、仮想印刷と実際の印刷におけるヘッド位置の差が「−6(6個のラスターライン分の長さ)」であり、ノズル間ピッチ数が「1」である。そのため、プリンタードライバーは、「実際の印刷の使用ノズル=仮想印刷の使用ノズル+(ヘッド位置の差/ノズル間ピッチ数)」により、実際の印刷における開始ノズル及び終了ノズルを算出することができる。図17のノズル領域2の例では、仮想印刷の開始ノズルが「ノズル#15」であるため実際の印刷の開始ノズルが「ノズル#9(=#15+{(−6)/1})」となり、仮想印刷の終了ノズルが「ノズル#26」であるため実際の印刷の終了ノズルが「ノズル#20(=#26+{(−6)/1})」となる。
【0113】
そして、ノズル領域2では、実際の印刷の使用ノズル(#9〜#26)が全て印字可能領域内に位置するため、プリンタードライバーは、ノズル種別へのアドレスを、ヘッドテーブルの使用ノズルのうちの最下流側のノズル「#1」とする。これにより、プリンタードライバーは、例えば、開始ノズル#9のノズル種別がヘッドテーブルに記憶されたノズル#1のノズル種別であり、ノズル#10のノズル種別がヘッドテーブルに記憶されたノズル#2のノズル種別であると判断できる。こうして、プリンタードライバーは、ノズル領域2に関するノズルテーブルの作成を終了する。
【0114】
図18は、上端印刷の次のパス7におけるヘッドテーブルとノズルテーブルを示す図である。プリンタードライバーは、前述のパスと同様に、まず、仮想印刷の基準ノズル領域に関するヘッドテーブルを作成する。パス7における仮想印刷のヘッド位置は「−6(=−24+(3d/1d)×(7−1))」と算出され、実際の印刷のヘッド位置は「−2(=−8+(1d/1d)×(7−1))」と算出される。よって、パス7における仮想印刷と実際の印刷のヘッド位置の差は−4(=(−6)−(−2))となる。
【0115】
そして、基準ノズル領域の仮想印刷における開始ノズル(#1)及び終了ノズル(#12)を、実際の印刷におけるノズルに置き換える。仮想印刷の開始ノズルが「#1」であり、ヘッド位置の差が「−4」であり、ノズル間ピッチ数が「1」であるため、実際の印刷の開始ノズルは「#−3(=#1+(−4/1))」と算出される。同様に、実際の印刷の終了ノズルは、「#8(=#12+(−4/1))」と算出される。ただし、1番以降のノズル#1、及び、印字可能領域内のノズルを使用ノズルとしなければならない。そのため、開始ノズルは「#3(=(印字開始のラスターライン−ヘッド位置)+1=(0−(−2)+1))」と算出される。こうして、パス7の基準ノズル領域の開始ノズル#3、及び、終了ノズル#8が算出される。そして、ノズル種別へのアドレスは、「ノズル#7(=印字可能領域内の開始ノズル番号−開始ノズル番号+1=#3−(#−3)+1)」と算出される。
【0116】
このように、上端印刷と通常印刷で媒体搬送量は異なるが、上端印刷と通常印刷でドット発生の仕方を同じにする。そのため、媒体の上端部も通常印刷で印刷されたと想定した仮想印刷に関して、まず、基準ノズル領域のヘッドテーブルを作成する(使用ノズルの範囲(ノズル種別や開始ノズル及び終了ノズル)を決定する)。そして、仮想印刷のヘッド位置と実際の印刷のヘッド位置の差に基づき、仮想印刷における使用ノズルの範囲を、実際の印刷における使用ノズルの範囲に置き換える。ただし、印字可能領域外に位置するノズルも使用ノズルとして算出される場合があるため、印字可能領域内に位置するノズルを使用ノズルとする。
【0117】
また、仮想印刷における基準ノズル領域に関してヘッドテーブルを作成するため(使用ノズルの範囲を決定するため)、基準ノズル領域とは異なる画像を印刷するノズル領域(ここでは図14のノズル領域2,4,6,8,9)では、通常印刷時における基準ノズル領域とのずらし量(14)を、仮想印刷における基準ノズル領域の使用ノズルの範囲に加算する。こうすることで、上端印刷と通常印刷でドット発生の仕方を同じにすることができる。
【0118】
<<下端印刷>>
次に、下端印刷時のヘッドテーブル及びノズルテーブルを作成処理について説明する。下端印刷においても上端印刷と同様に、媒体の下端部を印刷する際にも通常印刷が実施されると想定した「仮想印刷」と、媒体の下端部を印刷する際に下端印刷が実施されると想定した「実際の印刷」と、の両方の印刷に基づいて、下端印刷にて画像を形成するノズルの範囲(使用ノズルの範囲)を決定する。つまり、仮想印刷で画像を形成するノズルを、実際の印刷のヘッドのノズルに置き換える。
【0119】
また、前述の通常印刷では、ノズル列ごと、割り付ける画像データごとに設定したノズル領域1〜9(図14)が変動することなく、各ノズル領域に属するノズルが一定である。これに対して、下端印刷では、図11に示すように、搬送方向上流側のノズルも使用して主画像を印刷し、主画像を印刷するノズルを徐々に上流側にずらしていく。そのため、実際の下端印刷では、主画像を印刷するノズル領域に属するノズルが変動する。一方、仮想印刷では、主画像を印刷するノズル領域に属するノズルは変動せず、仮想印刷のヘッドにおける搬送方向下流側のノズル(#1〜#12)が、主画像用の使用ノズルとなる。
【0120】
図19は、下端印刷のパス22におけるヘッドテーブルとノズルテーブルを示す図である。図19の左図は、ノズル領域1(基準ノズル領域)及びノズル領域2が属するブラックノズル列Kの遷移図である。図中にて実線で示したブラックノズル列Kの位置が実際の下端印刷におけるブラックノズル列Kの位置であり、点線で示したブラックノズル列Kの位置が仮想印刷におけるブラックノズル列Kの位置である。下端印刷の媒体搬送量が1dであり、ノズル間ピッチが1dであるため、実際の印刷(実線)のブラックノズル列の位置は1個のラスターライン分ずつ搬送方向上流側にずれている。一方、仮想印刷では、通常印刷の終了後も下端印刷を行わずに、通常印刷を継続させる印刷である。また、通常印刷の媒体搬送量は3・dであり、ノズル間ピッチが1dであるため、図示するように仮想印刷(点線)のブラックノズル列の位置は、3個のラスターライン分ずつ搬送方向上流側にずれている。
【0121】
プリンタードライバーは、まず、仮想印刷における基準ノズル領域(ブラックノズル列Kの主画像を印刷するノズル群)に関してヘッドテーブルを作成する。そして、そのヘッドテーブルに基づいて、実際の印刷における基準ノズル領域、及び、実際の印刷における他のノズル領域2〜9に関する各ノズルテーブルを作成する。
【0122】
まず、プリンタードライバーは、図15Dのパラメーターテーブルを参照し、該当パスの仮想印刷におけるヘッド位置、及び、実際の印刷のヘッド位置を算出する。プリンタードライバーは、あるパスXのヘッド位置を、「開始ヘッド位置+(媒体搬送量/ノズル間ピッチ)×(パスX−パス20)」により算出する。図19の例はパス22であるため、仮想印刷のヘッド位置は「39(=33+(3d/1d)×(22−20))」と算出される。同様に、実際の印刷のヘッド位置は「35(=33+(1d/1d)×(22−20))」と算出される。そして、プリンタードライバーは、図15Dのパラメーターテーブルを参照し、ヘッドの水平位置(図19では2)と、ノズル種別(図19ではノズル#1〜#12が使用ノズル)を、ヘッドテーブルに記憶させる。
【0123】
その後、プリンタードライバーは、仮想印刷におけるヘッド位置と実際の印刷におけるヘッド位置の差を算出し、その差をヘッドテーブルに記憶させる。例えば、図19のパス22では、仮想印刷と実際の印刷のヘッド位置の差は、「4(=39−35)」となる。最後に、プリンタードライバーは、ノズル種別に基づき、仮想印刷における使用ノズルのうちの最下流側のノズルを開始ノズル(図19ではノズル#1)とし、仮想印刷における使用ノズルのうちの最上流側のノズルを終了ノズル(図19ではノズル#12)として、ヘッドテーブルに記憶させる。
【0124】
次に、プリンタードライバーは、実際の印刷における基準ノズル領域に関するノズルテーブルを作成する。ヘッド位置(35)及び水平位置(2)はヘッドテーブルと同じ情報となる。そして、プリンタードライバーは、仮想印刷における開始ノズル及び終了ノズルを、実際の印刷における開始ノズル及び終了ノズルに置き換える。ヘッドテーブルに記憶されているように、仮想印刷と実際の印刷のヘッド位置の差は「4(4個のラスターライン分の長さ)」であり、ノズル間ピッチ数は「1」である。よって、実際の印刷における開始ノズルは、「仮想印刷の開始ノズル+(ヘッド位置の差/ノズル間ピッチ数)」により算出することができ、実際の印刷における終了ノズルは、「仮想印刷の終了ノズル+(ヘッド位置の差/ノズル間ピッチ数)」により算出することができる。図19の例では、実際の印刷における開始ノズルが「#5(=#1+(4/1))」と算出され、実際の印刷における終了ノズルが「#16(=#12+(4/1))」と算出される。
【0125】
実際の印刷に置き換えた基準ノズル領域の使用ノズル(#5〜#16)は、全て印字可能領域内に位置するため、プリンタードライバーは、開始ノズルをノズル#5とし、終了ノズルをノズル#16として、ノズルテーブルに記憶させる。なお、下端印刷では、開始ノズルが常に、仮想印刷における基準ノズル領域の開始ノズル(最下流側のノズル#1)に対応するため、ノズル種別へのアドレスはノズル#1となる。こうして、実際の印刷における基準ノズル領域のノズルテーブルが作成される。
【0126】
同様にして、プリンタードライバーは、実際の印刷における他のノズル領域2〜9に関してもノズルテーブルを作成する。図19にはノズル領域2のノズルテーブルを例示する。プリンタードライバーは、まず、ヘッドテーブルに記憶されたヘッド位置(35)、及び、水平位置(2)を、ノズルテーブルに記憶させる。次に、プリンタードライバーは、ノズル領域2の開始ノズル及び終了ノズルを算出する。ヘッドテーブルに記憶された開始ノズル及び終了ノズルは、基準ノズル領域の仮想印刷における開始ノズル及び終了ノズルである。よって、プリンタードライバーは、図15Aのパラメーターテーブルを参照し、ヘッドテーブルの開始ノズル(#1)とずらし量(14)に基づいて、仮想印刷におけるノズル領域2の開始ノズルを「ノズル#15(=#1+(14/1))」と算出する。同様に、ヘッドテーブルの終了ノズル(#12)とずらし量(14)に基づいて、仮想印刷におけるノズル領域2の終了ノズルを「ノズル#26(=#12+(14/1))」と算出する。
【0127】
その後、プリンタードライバーは、仮想印刷と実際の印刷のヘッド位置の差「4」とノズル間ピッチ数「1」とに基づき、仮想印刷におけるノズル領域2の開始ノズル(#15)及び終了ノズル(#26)を、実際の印刷のノズルに置き換える。プリンタードライバーは、実際の印刷の開始ノズルを「ノズル#19(=#15+(4/1))」と算出し、実際の印刷の終了ノズルを「ノズル#30(=#26+(4/1))」と算出する。ただし、ノズル列に属するノズル数は26個であるため(#1〜#26)、ノズル#27以降のノズルは存在せず、使用ノズルの範囲に入らない。また、印刷領域外に位置するノズルは使用ノズルにする必要がない。そこで、プリンタードライバーは、図15Dのパラメーターテーブルの印字終了のラスターライン番号(58番)を参照し、59番以降のラスターラインに対応付けられるノズルは不使用ノズルとする。図19の左下には、ノズル領域2(ずらし量14)に関して、仮想印刷のノズルと実際の印刷のノズルとラスターラインの番号(L)との対応関係を示す。
【0128】
ヘッド位置が、ノズル#1に対応するラスターライン番号に相当するため、プリンタードライバーは、印字可能領域内に位置する最終ノズルを「(印字終了ラスターライン−ヘッド位置)/ノズル間ピッチ数+1」によって算出することができる。図19のノズル領域2の例では、印字終了のラスターラインが58番であり、ヘッド位置が35であり、ノズル間ピッチ数が1であるため、印字可能領域内に位置する最終ノズルは「#24(=(58−35)/1+1)」となる。そして、プリンタードライバーは、開始ノズルをノズル#19とし、終了ノズルをノズル#24として、また、ノズル種別へのアドレスをノズル#1として、ノズル領域2のノズルテーブルに記憶させる。こうして、実際の印刷におけるノズル領域2のノズルテーブルが作成される。
【0129】
図20は、下端印刷の最終パス28におけるヘッドテーブルとノズルテーブルを示す図である。プリンタードライバーは、前述の例と同様に、まず、仮想印刷における基準ノズル領域に関するヘッドテーブルを作成する。パス28における仮想印刷のヘッド位置は「57(=33+(3d/1d)×(28−20))」と算出され、実際の印刷のヘッド位置は「41(=33+(1d/1d)×(28−20))」と算出される。よって、パス28における仮想印刷と実際の印刷のヘッド位置の差は16(=57−41)となる。仮想印刷における基準ノズル領域の開始ノズルはノズル#1であり、終了ノズルはノズル#12である。
【0130】
この場合、実際の印刷における基準ノズル領域に関して、開始ノズルはノズル#17(=#1+16/1)と算出され、終了ノズルはノズル#28(=#12+16/1)と算出される。ノズル#26以降は存在せず、印字終了のラスターライン番号は58番である。図20の場合、印字可能領域内に位置する最終ノズルが「#18(=(58−41)/1+1」と算出される。よって、実際の印刷における基準ノズル領域のノズルテーブルにおいて、開始ノズルはノズル#17と記憶され、終了ノズルはノズル#18と記憶される。なお、図20の左下に、基準ノズル領域に関して、仮想印刷のノズルと実際の印刷のノズルとラスターラインの位置(L)との対応関係を示す。
【0131】
また、実際の印刷における基準ノズル領域の使用ノズルにおいても、印刷領域外に位置するノズルが存在したため、基準ノズル領域よりも搬送方向上流側に使用ノズルがずれているノズル領域2に関しては、使用ノズルが存在しない。この場合、図20に示すようにノズル領域2の開始ノズル及び終了ノズルはノズル#0となり、また、ノズル種別へのアドレスもノズル#0となる。
【0132】
このように、下端印刷と通常印刷で媒体搬送量は異なるが、下端印刷と通常印刷でドット発生の仕方を同じにする。そのため、媒体の下端部も通常印刷で印刷されたと想定した仮想印刷に関して、まず、基準ノズル領域のヘッドテーブルを作成する(使用ノズルの範囲(ノズル種別や開始ノズル及び終了ノズル)を決定する)。そして、仮想印刷のヘッド位置と実際の印刷のヘッド位置の差に基づき、仮想印刷における使用ノズルの範囲を、実際の印刷における使用ノズルの範囲に置き換える。ただし、印字可能領域外に位置するノズルも使用ノズルとして算出される場合があるため、印字可能領域内に位置するノズルを使用ノズルとする。
【0133】
また、仮想印刷における基準ノズル領域に関してヘッドテーブルを作成するため(使用ノズルの範囲を決定するため)、基準ノズル領域とは異なる画像を印刷するノズル領域では、通常印刷時における基準ノズル領域とのずらし量(14)を、仮想印刷における基準ノズル領域の使用ノズルの範囲に加算する。こうすることで、下端印刷と通常印刷でドット発生の仕方を同じにすることができる。
【0134】
ところで、前述の参考実施形態では、下端印刷にてインクを吐出ノズル(使用ノズル)とそうでないノズル(不使用ノズル)を決定するために、図7に示すように、ダミーのスケジューリングテーブルを作成している。そして、図8に示すように、媒体の下端部を通常印刷で印刷した場合に形成されるラスターラインの位置(ダミーのスケジューリングテーブルで登録された位置)を、下端印刷時に通過するノズルを使用ノズルとしている。これに対して本実施形態では、媒体の下端部を通常印刷で印刷した場合に形成されるラスターラインの位置を算出する必要がなく、即ち、ダミーのスケジューリングテーブル(図7)を作成する必要がない。ゆえに、本実施形態では、参考実施形態に比べて、ダミーのスケジューリングテーブルを作成しない分だけ、ノズル割り付け処理の時間を短縮でき、処理に必要なメモリー容量も削減することができる。
【0135】
<<抽出・並べ替え処理>>
図21Aは、マトリクス状の画像データ(ハーフトーン処理後の画像データ)を示す図である。図中の正方形は画像を構成する画素を示し、画素の中に記された数字が画素データに相当する。移動方向に並ぶ画素データによって、1つのラスターラインが印刷される。この移動方向に並ぶ画素データ群をラスターデータと呼ぶ。そして、図示するように、搬送方向下流側に位置するラスターデータから順に小さい番号を付す。画像データのうち、最下流側に位置するラスターデータを0番目のラスターデータとし、0番目のラスターライン(印刷開始位置のラスターライン)を形成するデータとする。
【0136】
そして、プリンタードライバーは、パスごとに作成されたヘッドテーブル及びノズルテーブルに基づき、このマトリクス状の画像データの中から、該当パスで使用する画素データを抽出し、ノズルに割り付ける順に並び替える(図13のS003)。なお、本実施形態では媒体に2種類の画像(主画像・背景画像)を重ねて印刷するため、2種類の画像データ(主画像データ・背景画像データ)が作成される。また、各画像データは色ごとに作成される。
【0137】
図21B〜図21Fは、上端印刷のパス6(図17)の印刷データをブラックノズル列Kに割り付ける様子を示す図である。コンピューター60には、ブラックノズル列Kの各ノズル(#1〜#26)の印刷データ(画素データ)をそれぞれ記憶させる記憶領域(バッファ)が設けられ、プリンタードライバーはこの記憶領域に、抽出した画素データなどを記憶させる。プリンタードライバーは、パス6の基準ノズル領域に関するノズルテーブル(図17)を参照する。図17に示すように開始ノズルがノズル#4からであるため、プリンタードライバーは、ノズル#1〜#3が不使用ノズルであると判断し、ノズル#1〜#3に対応する各記憶領域に「NULLデータ」を記憶させる(図21B)。
【0138】
次に、プリンタードライバーは、開始ノズルが#4であり、ノズル種別へのアドレスがノズル#10であるため、ヘッドテーブルのノズル#10のノズル種別を参照し、ノズル#4が使用ノズルであると判断する。そこで、プリンタードライバーは、図15Aのパラメーターテーブルを参照し、基準ノズル領域(ノズル領域1)に割り付けるデータは、ブラックの主画像データであると判断する。また、プリンタードライバーは、ノズルテーブルに記憶されたヘッド位置「−3」に基づいて、ノズル#4に割り付けるべきラスターデータが0番であると判断する。そうして、プリンタードライバーは、ブラックの主画像データから0番のラスターデータを抽出し、ノズル#4に対応する記憶領域に抽出したデータを記憶させる。なお、本実施形態の印刷方法では、1つのラスターラインを複数のノズルで形成するため、プリンタードライバーはノズルテーブルに記憶された水平位置(図17では2)に対応する画素データだけを抽出する。プリンタードライバーは、この処理を終了ノズル#6まで繰り返し行う(図21C)。なお、プリンタードライバーは、ヘッドテーブルのノズル#11のノズル種別を参照し、ノズル#5が使用ノズルであると判断し、ヘッドテーブルのノズル#12のノズル種別を参照し、ノズル#6が使用ノズルであると判断する。
【0139】
本実施形態の印刷方法では、図14に示すように主画像を印刷するノズルと背景画像を印刷するノズルの間に2個の乾燥用ノズル(図14ではノズル#13,#14)を設ける。よって、プリンタードライバーは、主画像を印刷するノズル(#4〜#6)と搬送方向上流側に並ぶ2個のノズル(#7,#8)の記憶領域にNULLデータを記憶させる(図21D)。
【0140】
次に、プリンタードライバーは、パス6のノズル領域2に関するノズルテーブルを参照する。図17の例では、ノズル#9から開始ノズルであり、ノズル種別へのアドレスがノズル#1を示す。よって、プリンタードライバーは、ヘッドテーブルのノズル#9のノズル種別を参照し、ノズル#9が使用ノズルであると判断する。この際に、プリンタードライバーは、図15Aのパラメーターテーブルを参照し、ノズル領域2に割り付けるデータは、ブラックの調色背景画像データであると判断する。また、プリンタードライバーは、ノズルテーブルに記憶されたヘッド位置「−3」に基づいて、ノズル#9に割り付けるべきラスターデータが5番であると判断する。そうして、プリンタードライバーは、調色背景画像データの中から5番のラスターデータを抽出し、ノズル#9の記憶領域に記憶させる。これらの処理を、プリンタードライバーは終了ノズル#20まで繰り返し実施する(図21E)。
【0141】
そして、プリンタードライバーは、ノズル領域2の終了ノズル(図17ではノズル#20)よりも搬送方向上流側のノズル(#21〜#26)の記憶領域には、NULLデータを記憶させる(図21F)。こうして、プリンタードライバーは、上端印刷のパス6のブラックノズル列Kに割り付ける印刷データの並べ替え(ノズル割り付け処理)を終了する。このパス6のブラックノズル列Kに割り付けられた印刷データは、プリンタードライバーによってプリンター1に送信され、プリンター1は受信した印刷データに基づき、パス6においてブラックノズル列Kからインクを吐出させる。
【0142】
このように、1つのノズル列(ブラックノズル列K)に2種類の画像データを割り付ける場合であっても、プリンタードライバーがノズル領域ごとに、例えば、図15Aのパラメーターテーブルを参照するなどして、主画像を印刷する使用ノズルには主画像データを割り付け、調色背景画像を印刷する使用ノズルには調色背景画像データを割り付けることができる。また、図15Aのパラメーターテーブルを参照するに限らず、例えば、搬送方向下流側のノズルに割り付けるデータから順に並べるとすると、表刷りモードの場合には、プリンタードライバーは、背景画像のテーブルよりも先に主画像のテーブルを参照し、先に参照したテーブルの使用ノズルに主画像データを割り付け、後に参照したテーブルの使用ノズルに背景画像データを割り付けると既定してもよい。逆に、裏刷りモードの場合には、プリンタードライバーは、主画像のテーブルよりも先に背景画像のテーブルを参照し、先に参照したテーブルの使用ノズルに背景画像データを割り付け、後に参照したテーブルの使用ノズルに主画像データを割り付けると既定してもよい。こうすることで、1つのノズル列に2種類の画像データを割り付けることができる。なお、搬送方向上流側のノズルに割り付けるデータから順に並べるとすると、逆のテーブルから先に参照し、データの割り付け順も逆になる。
【0143】
以上、本実施形態では、プリンタードライバーがノズルの割り付け処理を実施するため、プリンタードライバーをインストールしたコンピューターが印刷制御装置に該当し、プリンターが印刷装置に該当する。ただし、これに限らず、プリンタードライバーの処理をプリンター1内のコントローラー10に実施させてもよく、この場合、プリンター1のコントローラー10が制御部に該当し、プリンター1単体が印刷装置に該当する。
【0144】
===変形例===
前述の実施形態では、使用ノズルと、その使用ノズルが印刷するラスターラインの位置とを対応付ける情報(画像を形成する各ノズルによってドットが形成される媒体上の搬送方向の位置を規定する為の情報)として、ヘッド位置(基準ノズル領域が属するノズル列のノズル#1が対応するラスターラインの位置)をヘッドテーブルに記憶させているが、これに限らない。例えば、ノズル#1以外の他のノズルが対応するラスターラインの位置をヘッドテーブルに記憶させてもよいし、ヘッドの端部の位置をヘッドテーブルに記憶させてもよい。
【0145】
前述の実施形態では、図2に示すように、全てのノズル列(KCMYW)の搬送方向の位置が等しいため、異なるノズル列間にて対応するノズル(同じ番号のノズル#i)に割り付けられるラスターラインの位置(ラスターデータの位置)が等しい。そのため、基準ノズル領域が属するブラックノズル列Kではない別のノズル列(CMYW)においても、ヘッドテーブルに記憶されたブラックノズル列Kの位置(ヘッド位置)に基づき、各ノズルとラスターラインの位置を対応付けることができる。しかし、これに限らず、各ノズル列が搬送方向にずれる場合がある。この場合、基準ノズル領域が属するブラックノズル列のあるノズル#iに対する他のノズル列の対応するノズル#i(同じ番号のノズル)のずれ量(例えば、何個のラスターライン分だけずれるか)を記憶するとよい。そして、このずれ量を考慮して、ノズルとラスターラインの位置とを対応付けるとよい。
【0146】
前述の実施形態では、ヘッドテーブルにもノズルテーブルにも、ヘッド位置と水平位置を記憶させているが、これに限らない。例えば、ヘッドテーブルにだけ、ヘッド位置と水平位置を記憶させてもよい。
前述の実施形態では、搬送方向下流側のノズル群を基準ノズル領域に設定しているが、これに限らず、搬送方向上流側のノズル群(例えば、図14のノズル領域2)を基準ノズル領域に設定してもよい。
【0147】
前述の実施形態では、媒体に2種類の画像(背景画像・主画像)を重ねて印刷しているが、これに限らない。例えば、透明フィルムの媒体に、主画像を印刷し、その上に背景画像を印刷し、再び主画像を重ねて印刷することで、両面から視認する画像を印刷してもよい。また、媒体に背景画像を印刷し、その上に主画像を印刷し、コーディングを塗布してもよい。即ち、媒体に3種類、或いはそれ以上の数の画像を重ねて印刷してもよい。このような場合、ノズル列(1つまたは複数のノズル列)を、重ねる画像の数のノズル領域に分け、その中から基準ノズル領域を設定し、基準ノズル領域に対する他の複数のノズル領域の各ずらし量を記憶させるとよい。
【0148】
前述の実施形態では、図10や図11に示すように、上端・下端印刷と通常印刷の記録方法を同じにし、上端・下端印刷と通常印刷にて媒体搬送量を異ならせている。また、背景画像と主画像を印刷するノズルを固定することなく、上端印刷では搬送方向下流側のノズルを使用して先の画像(図10は背景画像)を印刷し、下端印刷では搬送方向上流側のノズルを使用して後の画像(図11は主画像)を印刷している。ただし、これに限らず、図12Aに示すように、背景画像と主画像を印刷するノズルを固定してもよい。この場合、前述の実施形態と比べて、仮想印刷のヘッド位置と実際の印刷のヘッド位置とのずれ量を小さくすればよい。また、図12Bに示すように、上端・下端印刷を実施せず、通常印刷だけを実施してもよい。この場合、印刷領域内のラスターラインが割り付けられるノズルを使用ノズルに設定すればよい。そのため、図12Bの印刷の場合には、前述の実施形態のように、仮想印刷における使用ノズルの範囲に、仮想印刷と実際の印刷とのヘッド位置のずれ量を加算して、上端・下端印刷の使用ノズルの範囲を算出する必要がない(仮想印刷で使用するノズルを実際の印刷のノズルに置き換える必要がない)。
【0149】
前述の実施形態では、1つのノズル列に2種類の異なる画像データ(主画像データと調色背景画像データ)を割り付けているが、これに限らない。例えば、モノクロ印刷で、画像を滲ませずに、ブラックの濃度を濃くして印刷するために、同じ画像を2回のパスに分けて重ねて印刷する場合がある。この場合、ブラックノズル列の搬送方向下流側ノズル群と搬送方向上流側ノズル群に各々割り付ける画像データは同じであるが、搬送方向下流側ノズル群と搬送方向上流側ノズル群とにおいて、使用ノズルの範囲が異なる。そこで、搬送方向下流側ノズル群を基準ノズル領域と設定し、搬送方向下流側ノズル群に対する搬送方向上流側ノズル群の搬送方向のずらし量を記憶させるとよい。そうすることで、搬送方向下流側ノズル群に関してヘッドテーブルを作成し(使用ノズルの範囲を算出し)、そのヘッドテーブルとずらし量とに基づいて搬送方向上流側ノズル群のノズルテーブルを作成することができる(使用ノズルの範囲を算出することができる)。その結果、ヘッドテーブルを作成するためのパラメーターテーブルのメモリー容量を削減することができる。
【0150】
===その他の実施の形態===
上記の各実施形態は、主としてインクジェットプリンターを有する印刷システムについて記載されているが、ノズル割り付け処理等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0151】
<背景画像について>
前述の実施形態では、白インクによって背景画像を印刷するとしているがこれに限らず、白以外の色インク(例えば、メタリック系のインク)によって背景画像を印刷してもよい。また、4色インク(YMCK)に白インクを加えて主画像を印刷してもよい。
【0152】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、ヘッドを移動方向に移動しながら単票紙に画像を形成する動作と、ヘッドに対して単票紙を移動方向と交差する搬送方向に搬送する動作と、を繰り返すプリンターを例に挙げているが、これに限らない。例えば、印刷領域に搬送された連続用紙に対して、ヘッドユニットを媒体搬送方向に移動しながら画像を形成する動作と、ヘッドユニットを紙幅方向に移動する動作と、を繰り返して画像を形成し、その後、未だ印刷されていない媒体部分を印刷領域に搬送するプリンターであってもよい。
【符号の説明】
【0153】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、20 搬送ユニット、30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、40 ヘッドユニット、41 ヘッド、50 検出器群、60 コンピューター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)印刷制御装置と印刷装置を備える印刷システムであって、
(B)前記印刷制御装置は、画像データを構成する複数の画素データの並び順を替え、印刷データを作成し、
(C)前記印刷装置は、
インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶノズル列と、
前記印刷データに基づいて、前記ノズル列と媒体との相対位置を前記所定方向と交差する移動方向に相対移動させながら前記ノズルからインクを吐出する画像形成動作と、前記ノズル列と前記媒体の相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる移動動作と、を繰り返し実行させる制御部と、
前記ノズル列の一部のノズル群により形成する第1画像と前記ノズル列の別の一部のノズル群により形成する第2画像を重ねて前記媒体に印刷する印刷方法が設定された場合に、前記一部のノズル群と前記別の一部のノズル群のうち、前記所定方向の前記一の方向側に位置するノズル群よりも前記所定方向の他の方向側に位置するノズル群に先に、前記媒体の所定領域に対してインクを吐出させる制御部と、を有し、
(D)前記印刷制御装置と前記印刷装置のうちの少なくとも一方が、前記第1画像を形成する前記一部のノズル群に対する前記第2画像を形成する前記別の一部のノズル群の前記所定方向のずらし量を記憶し、
を有し、
(E)前記印刷制御装置は、
或る画像形成動作において、画像を印刷する各前記ノズルによってドットが形成される前記媒体上の前記所定方向の位置を規定する為の情報と、前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲を示す情報とを、第1のテーブルに記憶させ、
前記第1のテーブルに記憶された前記範囲に前記ずらし量を加算し、前記或る画像形成動作において、前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲を算出し、当該範囲を示す情報を第2のテーブルに記憶させ、
前記第1のテーブル及び前記第2のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する前記画素データを前記画像データの中から抽出して、前記或る画像形成動作を実施するための前記印刷データを作成する、
(F)ことを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷システムであって、
前記印刷制御装置と前記印刷装置のうちの少なくとも一方が、前記或る画像形成動作において前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲を規定する為の情報を、記憶する、
印刷システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の印刷システムであって、
前記印刷制御装置は、
前記第1のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する前記画素データを前記第1画像の前記画像データの中から抽出し、且つ、前記第2のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する前記画素データを前記第2画像の前記画像データの中から抽出し、
前記第1画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データにて前記前記第1画像を形成する前記ノズルからインクが吐出され、且つ、前記第2画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データにて前記第2画像を形成する前記ノズルからインクが吐出されるように、前記画素データの並び順を替える、
印刷システム。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷システムであって、
前記印刷制御装置は、前記ノズル列において前記所定方向の前記一の方向側に位置する前記ノズルに割り付ける前記画素データから順に並べ、
前記媒体の所定領域に対して前記第1画像よりも先に前記第2画像を印刷する印刷モードの場合、前記印刷制御装置は、前記第2のテーブルよりも先に前記第1のテーブルを参照し、前記第1画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データの後に、前記第2画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データを並べ、
前記媒体の所定領域に対して前記第2画像よりも先に前記第1画像を印刷する印刷モードの場合、前記印刷制御装置は、前記第1のテーブルよりも先に前記第2のテーブルを参照し、前記第2画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データの後に、前記第1画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データを並べる、
印刷システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の印刷システムであって、
前記印刷制御装置は、
前記或る画像形成動作にて前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲として、前記第1画像を形成する前記ノズルのうちの前記所定方向における最も前記一の方向側に位置する前記ノズルである第1ノズルと、前記第1画像を形成する前記ノズルのうちの前記所定方向における最も前記他の方向側に位置する前記ノズルである第2ノズルとを、前記第1のテーブルに記憶させ、
前記或る画像形成動作にて前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲として、前記第1ノズルに前記ずらし量を加算した前記ノズルと、前記第2ノズルに前記ずらし量を加算した前記ノズルとを、前記第2のテーブルに記憶させる、
印刷システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の印刷システムであって、
前記印刷制御装置は、
前記或る画像形成動作にて前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲として、前記第1画像を形成する各前記ノズルの種類を前記第1のテーブルに記憶させ、
前記或る画像形成動作にて前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲として、前記第1画像を形成する前記ノズルのうちの前記所定方向における最も前記一の方向側に位置する前記ノズルに前記ずらし量を加算した前記ノズルと、前記第1画像を形成する前記ノズルのうちの前記所定方向における最も前記他の方向側に位置する前記ノズルに前記ずらし量を加算した前記ノズルとを、前記第2のテーブルに記憶させる、
印刷システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか一項に記載の印刷システムであって、
前記第1画像と前記第2画像は同じ画像である、
印刷システム。
【請求項8】
インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶノズル列と媒体との相対位置を前記所定方向と交差する移動方向に相対移動させながら前記ノズルからインクを吐出する画像形成動作と、前記ノズル列と前記媒体の相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる移動動作と、を繰り返す印刷装置が、前記ノズル列の一部のノズル群により形成する第1画像と前記ノズル列の別の一部のノズル群により形成する第2画像を重ねて前記媒体に印刷する印刷方法が設定された場合に、前記一部のノズル群と前記別の一部のノズル群のうち、前記所定方向の前記一の方向側に位置するノズル群よりも前記所定方向の他の方向側に位置するノズル群に先に、前記媒体の所定領域に対してインクを吐出するための印刷データを、コンピューターに作成させるためのプログラムであって、
或る画像形成動作において、画像を印刷する各前記ノズルによってドットが形成される前記媒体上の前記所定方向の位置を規定する為の情報と、前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲を示す情報とを、第1のテーブルに記憶させることと、
前記第1のテーブルに記憶された前記範囲に、前記第1画像を形成する前記一部のノズル群に対する前記第2画像を形成する前記別の一部のノズル群の前記所定方向のずらし量を加算し、前記或る画像形成動作において、前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲を算出し、当該範囲を示す情報を第2のテーブルに記憶させることと、
前記第1のテーブル及び前記第2のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する画素データを画像データの中から抽出して、前記或る画像形成動作を実施するための前記印刷データを作成することと、
を前記コンピューターに実行させるためのプログラム。
【請求項9】
インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶノズル列と、
印刷データに基づいて、前記ノズル列と媒体との相対位置を前記所定方向と交差する移動方向に相対移動させながら前記ノズルからインクを吐出する画像形成動作と、前記ノズル列と前記媒体の相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる移動動作と、を繰り返し実行させる制御部であって、
前記ノズル列の一部のノズル群により形成する第1画像と前記ノズル列の別の一部のノズル群により形成する第2画像を重ねて前記媒体に印刷する印刷方法が設定された場合に、前記一部のノズル群と前記別の一部のノズル群のうち、前記所定方向の前記一の方向側に位置するノズル群よりも前記所定方向の他の方向側に位置するノズル群に先に、前記媒体の所定領域に対してインクを吐出させる制御部と、を有し、
前記制御部は、
或る画像形成動作において、画像を印刷する各前記ノズルによってドットが形成される前記媒体上の前記所定方向の位置を規定する為の情報と、前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲を示す情報とを、第1のテーブルに記憶させ、
前記第1のテーブルに記憶された前記範囲に、前記第1画像を形成する前記一部のノズル群に対する前記第2画像を形成する前記別の一部のノズル群の前記所定方向のずらし量を加算し、前記或る画像形成動作において、前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲を算出し、当該範囲を示す情報を第2のテーブルに記憶させ、
前記第1のテーブル及び前記第2のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する画素データを画像データの中から抽出して、前記或る画像形成動作を実施するための前記印刷データを作成する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項1】
(A)印刷制御装置と印刷装置を備える印刷システムであって、
(B)前記印刷制御装置は、画像データを構成する複数の画素データの並び順を替え、印刷データを作成し、
(C)前記印刷装置は、
インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶノズル列と、
前記印刷データに基づいて、前記ノズル列と媒体との相対位置を前記所定方向と交差する移動方向に相対移動させながら前記ノズルからインクを吐出する画像形成動作と、前記ノズル列と前記媒体の相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる移動動作と、を繰り返し実行させる制御部と、
前記ノズル列の一部のノズル群により形成する第1画像と前記ノズル列の別の一部のノズル群により形成する第2画像を重ねて前記媒体に印刷する印刷方法が設定された場合に、前記一部のノズル群と前記別の一部のノズル群のうち、前記所定方向の前記一の方向側に位置するノズル群よりも前記所定方向の他の方向側に位置するノズル群に先に、前記媒体の所定領域に対してインクを吐出させる制御部と、を有し、
(D)前記印刷制御装置と前記印刷装置のうちの少なくとも一方が、前記第1画像を形成する前記一部のノズル群に対する前記第2画像を形成する前記別の一部のノズル群の前記所定方向のずらし量を記憶し、
を有し、
(E)前記印刷制御装置は、
或る画像形成動作において、画像を印刷する各前記ノズルによってドットが形成される前記媒体上の前記所定方向の位置を規定する為の情報と、前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲を示す情報とを、第1のテーブルに記憶させ、
前記第1のテーブルに記憶された前記範囲に前記ずらし量を加算し、前記或る画像形成動作において、前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲を算出し、当該範囲を示す情報を第2のテーブルに記憶させ、
前記第1のテーブル及び前記第2のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する前記画素データを前記画像データの中から抽出して、前記或る画像形成動作を実施するための前記印刷データを作成する、
(F)ことを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷システムであって、
前記印刷制御装置と前記印刷装置のうちの少なくとも一方が、前記或る画像形成動作において前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲を規定する為の情報を、記憶する、
印刷システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の印刷システムであって、
前記印刷制御装置は、
前記第1のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する前記画素データを前記第1画像の前記画像データの中から抽出し、且つ、前記第2のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する前記画素データを前記第2画像の前記画像データの中から抽出し、
前記第1画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データにて前記前記第1画像を形成する前記ノズルからインクが吐出され、且つ、前記第2画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データにて前記第2画像を形成する前記ノズルからインクが吐出されるように、前記画素データの並び順を替える、
印刷システム。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷システムであって、
前記印刷制御装置は、前記ノズル列において前記所定方向の前記一の方向側に位置する前記ノズルに割り付ける前記画素データから順に並べ、
前記媒体の所定領域に対して前記第1画像よりも先に前記第2画像を印刷する印刷モードの場合、前記印刷制御装置は、前記第2のテーブルよりも先に前記第1のテーブルを参照し、前記第1画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データの後に、前記第2画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データを並べ、
前記媒体の所定領域に対して前記第2画像よりも先に前記第1画像を印刷する印刷モードの場合、前記印刷制御装置は、前記第1のテーブルよりも先に前記第2のテーブルを参照し、前記第2画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データの後に、前記第1画像の前記画像データの中から抽出した前記画素データを並べる、
印刷システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の印刷システムであって、
前記印刷制御装置は、
前記或る画像形成動作にて前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲として、前記第1画像を形成する前記ノズルのうちの前記所定方向における最も前記一の方向側に位置する前記ノズルである第1ノズルと、前記第1画像を形成する前記ノズルのうちの前記所定方向における最も前記他の方向側に位置する前記ノズルである第2ノズルとを、前記第1のテーブルに記憶させ、
前記或る画像形成動作にて前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲として、前記第1ノズルに前記ずらし量を加算した前記ノズルと、前記第2ノズルに前記ずらし量を加算した前記ノズルとを、前記第2のテーブルに記憶させる、
印刷システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の印刷システムであって、
前記印刷制御装置は、
前記或る画像形成動作にて前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲として、前記第1画像を形成する各前記ノズルの種類を前記第1のテーブルに記憶させ、
前記或る画像形成動作にて前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲として、前記第1画像を形成する前記ノズルのうちの前記所定方向における最も前記一の方向側に位置する前記ノズルに前記ずらし量を加算した前記ノズルと、前記第1画像を形成する前記ノズルのうちの前記所定方向における最も前記他の方向側に位置する前記ノズルに前記ずらし量を加算した前記ノズルとを、前記第2のテーブルに記憶させる、
印刷システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか一項に記載の印刷システムであって、
前記第1画像と前記第2画像は同じ画像である、
印刷システム。
【請求項8】
インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶノズル列と媒体との相対位置を前記所定方向と交差する移動方向に相対移動させながら前記ノズルからインクを吐出する画像形成動作と、前記ノズル列と前記媒体の相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる移動動作と、を繰り返す印刷装置が、前記ノズル列の一部のノズル群により形成する第1画像と前記ノズル列の別の一部のノズル群により形成する第2画像を重ねて前記媒体に印刷する印刷方法が設定された場合に、前記一部のノズル群と前記別の一部のノズル群のうち、前記所定方向の前記一の方向側に位置するノズル群よりも前記所定方向の他の方向側に位置するノズル群に先に、前記媒体の所定領域に対してインクを吐出するための印刷データを、コンピューターに作成させるためのプログラムであって、
或る画像形成動作において、画像を印刷する各前記ノズルによってドットが形成される前記媒体上の前記所定方向の位置を規定する為の情報と、前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲を示す情報とを、第1のテーブルに記憶させることと、
前記第1のテーブルに記憶された前記範囲に、前記第1画像を形成する前記一部のノズル群に対する前記第2画像を形成する前記別の一部のノズル群の前記所定方向のずらし量を加算し、前記或る画像形成動作において、前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲を算出し、当該範囲を示す情報を第2のテーブルに記憶させることと、
前記第1のテーブル及び前記第2のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する画素データを画像データの中から抽出して、前記或る画像形成動作を実施するための前記印刷データを作成することと、
を前記コンピューターに実行させるためのプログラム。
【請求項9】
インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶノズル列と、
印刷データに基づいて、前記ノズル列と媒体との相対位置を前記所定方向と交差する移動方向に相対移動させながら前記ノズルからインクを吐出する画像形成動作と、前記ノズル列と前記媒体の相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる移動動作と、を繰り返し実行させる制御部であって、
前記ノズル列の一部のノズル群により形成する第1画像と前記ノズル列の別の一部のノズル群により形成する第2画像を重ねて前記媒体に印刷する印刷方法が設定された場合に、前記一部のノズル群と前記別の一部のノズル群のうち、前記所定方向の前記一の方向側に位置するノズル群よりも前記所定方向の他の方向側に位置するノズル群に先に、前記媒体の所定領域に対してインクを吐出させる制御部と、を有し、
前記制御部は、
或る画像形成動作において、画像を印刷する各前記ノズルによってドットが形成される前記媒体上の前記所定方向の位置を規定する為の情報と、前記第1画像を形成する前記ノズルの範囲を示す情報とを、第1のテーブルに記憶させ、
前記第1のテーブルに記憶された前記範囲に、前記第1画像を形成する前記一部のノズル群に対する前記第2画像を形成する前記別の一部のノズル群の前記所定方向のずらし量を加算し、前記或る画像形成動作において、前記第2画像を形成する前記ノズルの範囲を算出し、当該範囲を示す情報を第2のテーブルに記憶させ、
前記第1のテーブル及び前記第2のテーブルに記憶された前記情報に基づいて、前記或る画像形成動作で使用する画素データを画像データの中から抽出して、前記或る画像形成動作を実施するための前記印刷データを作成する、
ことを特徴とする印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−136501(P2011−136501A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298562(P2009−298562)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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