説明

印刷制御装置

【課題】 光学的読取手段を用いて読取可能な符号化パターン、及びフォームの生成が可能なプリンタドライバに於いて、プリンタの低価格化を可能にし、且つ、印刷のための時間を短縮化すること。
【解決手段】 Escape命令受信処理部21は、カラー印刷の色指定モードの設定要求を受け入れて、CMYモード設定応答処理部23、Kモード設定応答処理部24及びCMYKモード設定応答処理部24の何れかを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルペンを用いた筆跡記録システムにおける、符号化パターン、及びフォームを生成する印刷制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルペンを用いた筆跡認識システムでは、デジタルペンが移動する軌跡を情報化するために、紙面上に特殊な符号が印刷された符号化パターンを必要とする。また、この符号化パターンと共に、所定のアプリケーションにより作成された文章や図形等からなる画像データであるフォームが印刷される。
【0003】
符号化パターンは、黒色(K)で形成される。その理由は、その上を移動するデジタルペンが符号化パターンを光無反射スポットとして光学的に読み取るためである。よって、フォームは、黒色以外の色彩(YMC)で形成される。その理由は、ユーザの目視により検出されるが、その上を移動するデジタルペンには検出され難いことが好ましいからである。
【0004】
従来の、デジタルペンを用いた筆跡認識システムの概要について説明する。
図11はデジタルペンの概念図である。
図に示すように、デジタルペン1は読み取りセンサ2を内蔵し、コンピュータ3に無線インターフェース4を介して接続される。デジタルペン1による読み取り情報はコンピュータ3に対して無線インターフェース4を介して送信される。コンピュータ3上では、オペレーティングシステム5上のアプリケーション6が、デジタルペン1による読み取り情報を処理し、デジタルペン1の操作によって記録された筆跡として記録する。アプリケーション6は、その筆跡情報を保持し、文字あるいは図形として処理することにより、各種の情報に変換して利用する。
【0005】
図12は、従来の筆跡認識システムの説明図である。
従来、Windows(登録商標)のオペレーティングシステム11では、符号化パターン、及びフォームを生成するために、PostScript言語を用いた印刷データと、PostScript言語に対応するデジタルプリンタ14とを使用する必要があった。PostScript言語に於いては、印刷データの表現にCMYK色空間を用いることが出来る。これにより、アプリケーション12がCMYK色空間により表現された符号化パターン(K)とフォーム(CMY)とを印刷データコマンドとして作成する。更に、オペレーティングシステム11上で動作するPostScript言語に対応したプリンタドライバ13に対して、印刷データコマンドを加工せず通過させる指示(パススルー方式)を行うことで、フォームのCMYのみによる印刷と、符号化パターンのKのみによる印刷を実現していた。
【特許文献1】特表2003−511761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この方式では、デジタルプリンタ14がPostScript言語に対応している必要がある。また、オペレーティングシステム11上で動作する当該プリンタに対するプリンタドライバ13はPostScript言語に対応し、かつパスススルー方式に対応している必要がある。PostScript言語に対応したデジタルプリンタは、言語データを処理するための高速なプロセッサが必要であり、高価である。また、PostScript言語から印刷イメージの変換の処理をプリンタ側で行うことから、印刷のための時間が多く必要になるという解決すべき課題が残されていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光学的読取手段を用いて読取可能な符号化パターン、及びフォームの生成が可能な印刷制御装置であって、カラー印刷の色指定モードの設定要求を受け入れて、該設定されたカラーモードに設定するEscape命令受信処理部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
所定のカラーモードに設定するEscape命令受信処理部を備えることにより、非PostScriptプリンタを用いて、デジタルペンの認識性を保ちつつ、デジタルペンのためのフォームと符号パターンを含む印刷をおこなうことが出来るので、プリンタは言語データを処理するための高速なプロセッサを必要としなくなり、低価格化が可能になるという効果を得る。更に、印刷データの変換の処理をコンピュータ側で実行するので、印刷のための時間を短縮化できるという効果を得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、実施例1の印刷制御装置の構成のブロック図である。
図に示すように、コンピュータ20は、インターフェース16を介してプリンタ50と接続されている。コンピュータ20にはオペレーティングシステム11がインストールされている。このオペレーティングシステム11上では、符号化パターン及びフォームを印刷することの出来るアプリケーション12が動作する。
【0011】
同じくオペレーティングシステム11上にはプリンタ50に対応したプリンタドライバ100がインストールされ、GDI(Graphics Device Interface)15からの印刷指示により、プリンタ50に対して印刷データ(ビットマップデータ)を出力する。プリンタ50はプリンタドライバ100から出力された印刷データ(ビットマップデータ)を処理する。アプリケーション12はGDI15を仲介してプリンタドライバ100に対して印刷指示を行う。ここでGDI15は、グラフィックス処理においてアプリケーション12とプリンタドライバ100との橋渡しの役割を分担する部分である。
【0012】
コンピュータ20に対して、通常、複数の各種プリンタを接続することが可能であり、プリンタが対応する言語は様々であるが、オペレーティングシステム11上には、接続されたプリンタの種類に各々対応したプリンタドライバが1対1でインストールされていなければならない。1例として図には本実施例による、CMYK分離対応が可能な非PostScript、デジタルペン対応のプリンタドライバ100を介したプリンタ50のほかに、CMYK分離対応が不可能な非PostScript、デジタルペン非対応のプリンタドライバ200を介したプリンタ50と、従来技術で説明したパススルー対応可能なプリンタドライバ13を介したデジタルプリンタ14とが記載されているが、これらの部分は後に動作説明のなかで必要になる部分であり、本実施の構成及び機能の説明には直接関係しないのでここでは説明を省略する。
【0013】
ここで、プリンタ50は、既にビットマップ変換された印刷データを受信して印刷する汎用のプリンタであり、従来技術で説明したPostScript言語を用いた印刷データによるPostScript言語に対応するデジタルプリンタ14とは異なる。
【0014】
本発明による印刷制御装置としてのプリンタドライバ100とGDI15のインターフェース17では、Windowsで定義されている一般の描画命令の他、プリンタドライバ固有のデータ送受信のインターフェースが用意されている。これをEscape命令と呼び、プリンタドライバが固有に定義する番号を指定し、GDI15を仲介してアプリケーション12がEscape命令を発効することで、プリンタドライバ固有の情報の取得、または動作の指示を行うことができる。ここで、プリンタドライバ100の機能について詳細に説明する。
【0015】
図2は、実施例1のプリンタドライバの機能ブロック図である。
図に示すように、デジタルペン対応のフォーム印刷に対応した本実施例によるプリンタドライバ100は、Escape命令を受信した際に処理を行うブロックとしてEscape命令受信処理部21を備える。
【0016】
更に、Escape命令受信処理部21は、その内部に各種命令に対応して応答する対応可否情報応答処理部22と、CMYモード設定応答処理部23と、Kモード設定応答処理部24と、CMYKモード(通常の印刷モード)設定応答処理部25とを有する。
【0017】
また、フォーム部分の印刷において、通常印刷で用いるRGB色空間からCMYK色空間への変換を行うためのCMYKモード用カラープロファイル29を有するとともに、Kを使用せずCMY色のみでRGB色空間からCMYK色空間へ変換を行うためのCMYモード用カラープロファイル30、同じくCMYを使用せずKのみでの変換を行うKモード用カラープロファイル31を有する。これらのうちいずれか一つの変換プロファイルを用いて色変換が実行されることになる。
【0018】
GDI15からの描画命令に対して、描画命令受信処理部26は、RGB→CMYK色空間カラー変換モジュール27により、色変換を行いつつページバッファ32にビットマップデータの描画を行う。この際に使用される色変換プロファイルは、カラープロファイル選択処理部28が、CMYモード設定応答処理部23、Kモード設定応答処理部24、CMYKモード設定応答処理部25によって設定された現在のモードに適したプロファイルのいずれか一つを選択する。
【0019】
CMYモードで描画された場合には、ページバッファ32のうちC、M、Yプレーンのみに描画され、Kモードで描画された場合にはページバッファ32のうちKプレーンのみに描画される。ページバッファ32に描画された内容は、インターフェース16を介してプリンタ50に送信される。
【0020】
以上説明した実施例1の印刷制御装置は以下のように動作する。
最初にアプリケーション12が、コンピュータ20に接続されているプリンタ(図1ではプリンタドライバ100と接続するプリンタ50、プリンタドライバ200と接続するプリンタ50、及びプリンタドライバ13と接続するデジタルプリンタ14)の内から印刷時にデジタルペン用の符号パターンを含むフォーム印刷に対応出来るプリンタ(及びプリンタドライバ)を選択する動作について説明し、続いて、選択されたプリンタ(及びプリンタドライバ)を用いて印刷処理(アプリケーション処理、及びプリンタドライバ処理)を実行する動作について説明する。
【0021】
図3は、実施例1の候補印刷先選択処理のフローチャートである。
図1及び図2を併用しながらステップS1−1からステップS1−7までステップ順にアプリケーション12がコンピュータ20に接続されているプリンタドライバ及びプリンタの中から上記本実施例で説明したデジタルペン用の符号化パターンを含むフォーム印刷が可能なプリンタドライバ及びプリンタを選択する動作について説明する。ここでは1例として図1における非PostScript言語対応プリンタドライバ200及びプリンタ50の系統は、デジタルペン用の符号化パターンが印刷不可能であり、PostScript言語に対応したプリンタドライバ13とデジタルプリンタ14の系統は、従来技術で説明したパススルー対応で印刷可能な系統であると仮定する。
【0022】
ステップS1−1
アプリケーション12は、オペレーティングシステム11に搭載されている全てのプリンタドライバに対して個々にEscape命令を送出し、印刷時にデジタルペン用の符号化パターンを含むフォーム印刷に関してパススルー対応可能か否かを問い合わせる。
【0023】
ステップS1−2
パススルー対応可能な場合にはステップS1−6へ進み、パススルー対応不可能な場合にはステップS1−3へ進む。ここでは図1の仮定によればPostScript言語に対応したプリンタドライバ13とデジタルプリンタ14の系統の場合のみステップS1−6へ進み、残りの系統ではステップS1−3へ進むことになる。尚、Escape命令に対する応答にはパススルー対応の可否が含まれている。
【0024】
ステップS1−3
アプリケーション12は、該当するプリンタドライバに対してEscape命令を送出し、CMYK分離対応が可能か否かを問い合わせる。
【0025】
ステップS1−4
CMYK分離対応が可能な場合にはステップS1−5へ進み、不可能な場合にはステップS1−6へ進む。ここでは図1の仮定によればCMYK分離印刷に対応したプリンタドライバ100とプリンタ50の系統(上記本実施例による系統)の場合のみステップS1−5へ進むことになる。
【0026】
ステップS1−5
アプリケーション12は、印刷時にデジタルペン用の符号化パターンを含むフォーム印刷に対応したプリンタ及びプリンタドライバであるかを判断し、対応したプリンタのみ印刷先の選択枝として設定する。
【0027】
ステップS1−6
アプリケーション12は、ステップS1−1からステップS1−6を繰り返し、オペレーティングシステム11に搭載されている全てのプリンタドライバの検査が完了すればステップS1−7へ進む。
【0028】
ステップS1−7
アプリケーション12は、デジタルペン用の符号化パターンが印刷可能なプリンタドライバに対応するプリンタのみを候補印刷先として図示しないディスプレイに表示してフローを終了する。オペレータは表示されたプリンタを選択し、印刷指示を行うことになる。ここでは、図1の仮定によりプリンタドライバ100に対応するデジタルプリンタ50が表示されることになる。
【0029】
図4は、実施例1のアプリケーション処理(印刷処理)のフローチャートである。
図1及び図2を併用しながらステップS2−1からステップS2−10までステップ順にアプリケーション処理(印刷処理)について説明する。
【0030】
ステップS2−1
オペレータは、図示しないディスプレイに表示されている(上記ステップS1−7)プリンタの中から印刷処理を実行させるプリンタを選択する。図1の仮定によればプリンタドライバ100に対応するプリンタ50が選択されることになる。
【0031】
ステップS2−2
アプリケーション12は、GDI15に対してジョブの開始を通知する。
【0032】
ステップS2−3
アプリケーション12は、GDI15に対して頁の開始を通知する。
【0033】
ステップS2−4
アプリケーション12は、フォーム印刷のため、GDIに対してEscape命令を発効し、プリンタドライバ100のCMYモード設定応答処理部23に対してCMYモードへの印刷モード設定を指示する。このフローについては後に他のフローチャートを用いて再度詳細に説明する。
【0034】
ステップS2−5
アプリケーション12は、フォームの描画をGDIに対して行い、プリンタドライバ13ではRGB色空間にて描画されたデータをCMY色空間に変換してビッマップデータとしてページバッファ32のC,M,Y,領域に描画させる。
【0035】
ステップS2−6
アプリケーション12は、符号化パターンデータ印刷のため、GDIに対してEscape命令を発効し、プリンタドライバ100のKモード設定応答処理部24に対してKモードへの印刷モード設定を指示する。このフローについては後に他のフローチャートを用いて再度詳細に説明する。
【0036】
ステップS2−7
アプリケーション12は、符号化パターンデータの描画をGDIに対して行い、プリンタドライバ100ではRGB色空間にて描画されたデータをK色空間に変換してビットマップデータとしてページバッファ32のK領域に描画させる。
【0037】
ステップS2−8
アプリケーション12は、1ページ分のフォームと符号化パターンを描画完了後、GDI15にページの終了を通知する。
【0038】
ステップS2−9
アプリケーション12は、ステップS2−3からステップS2−8を繰り返し、全ページ分の描画が終了したらステップS2−10へ進む。
【0039】
ステップS2−10
アプリケーション12は、ジョブ終了をオペレーティングシステム11に通知しフローを終了する。作成されたビットマップデータは、プリンタへ送信され、印刷出力されることになる。
【0040】
図5は、実施例1のプリンタドライバのEscape受信処理のフローチャートである。
この図は、上記ステップS2−4又はステップS2−6で説明したフローについてのプリンタドライバの処理に関するフローチャートである。図1、図2を併用しながらステップS3−1からステップS3−6までステップ順に説明する。
【0041】
ステップS3−1
プリンタドライバ100のEscape命令受信処理部21は、GDI15からEscape命令を受信する。
【0042】
ステップS3−2
プリンタドライバ100のEscape命令受信処理部21は、Escape命令の種別を判定し、CMYモード移行処理の場合にはステップS3−3へ進み、Kモード移行処理の場合にはステップS3−4へ進み、CMYKモード移行処理の場合にはステップS3−3へ進み、対応可否問い合わせ指示の場合にはステップS3−6へ進む。
【0043】
ステップS3−3
プリンタドライバ100のCMYモード設定応答処理部23は、CMYモードへ移行してフローを終了する。このステップは上記ステップS2−4の場合が該当する。
【0044】
ステップS3−4
プリンタドライバ100のKモード設定応答処理部24は、Kモードへ移行してフローを終了する。このステップは上記ステップS2−6の場合が該当する。
【0045】
ステップS3−5
プリンタドライバ100のCMYKモード設定応答処理部25は、CMYKモードへ移行してフローを終了する。このステップは図示しない通常印刷の場合が該当する。
【0046】
ステップS3−6
プリンタドライバ100の対応可否情報応答処理部22は、CMYK分離対応可能である旨GDI15へ返信してフローを終了する。
【0047】
図6は、実施例1のプリンタドライバの描画命令受信処理のフローチャートである。
この図は、上記ステップS2−5又はステップS2−7で説明したフローについてのプリンタドライバの処理に関するフローチャートである。図1、図2を併用しながらステップS4−1からステップS4−7までステップ順に説明する。
【0048】
ステップS4−1
プリンタドライバ100の描画命令受信処理部26は、GDI15から描画命令を受信する。
【0049】
ステップS4−2
プリンタドライバ100の描画命令受信処理部26は、現在設定されている描画モードを判定し(上記図5で設定されている)、CMYKモードの場合にはステップS4−3へ進み、CMYモードの場合にはステップS4−4へ進み、Kモードの場合にはステップS4−5へ進む。
【0050】
ステップS4−3
プリンタドライバ100の描画命令受信処理部26は、カラープロファイル選択処理部28を介してCMYKモード用カラープロファイル29を選択してステップS4−6へ進む。このステップは、デジタルペン用符号化パターンを印刷しない通常の印刷処理の場合が該当する。
【0051】
ステップS4−4
プリンタドライバ100の描画命令受信処理部26は、カラープロファイル選択処理部28を介してCMYモード用カラープロファイル30を選択してステップS4−6へ進む。このステップは、上記ステップS2−4の場合が該当する。
【0052】
ステップS4−5
プリンタドライバ100の描画命令受信処理部26は、カラープロファイル選択処理部28を介してKモード用カラープロファイル31を選択してステップS4−6へ進む。このステップは、上記ステップS2−6の場合が該当する。
【0053】
ステップS4−6
プリンタドライバ100のRGB→CMYK色空間カラー変換モジュール27は、GDIから送出された描画データを上記のステップで選択されたカラープロファイルによりカラー変換する。
【0054】
ステップS4−7
プリンタドライバ100のRGB→CMYK色空間カラー変換モジュール27は変換した描画データをビットマップデータとして該当するページバッファ32へ描画してフローを終了する。
【0055】
以上説明したように、本実施例によれば、非PostScriptプリンタ(ビットマップデータ受信プリンタ)を用いて、デジタルペンの認識性を保ちつつ、デジタルペンのためのフォームと符号パターンを含む印刷をおこなうことが出来るようになる。その結果、プリンタは、言語データを処理するための高速なプロセッサを必要としなくなるので低価格化が可能になるという効果を得る。更に、印刷データの変換の処理をコンピュータ側で実行するので、印刷のための時間を短縮化できるという効果を得る。
【0056】
尚、図1による印刷システムによれば、プリンタドライバ13とデジタルプリンタ14の系統を含んでいるので、従来通りプリンタドライバに対してパススルーモードを指示し、PostScriptコードを生成してプリンタドライバに送信することにより、アプリケーションの生成したPostScriptコードを無加工でそのままプリンタへ送信して所定の目的を達成することも可能である。
【実施例2】
【0057】
本実施例では、符号化パターンがオペレーティングシステム上のGDIに対して、文字として描画される場合におけるドットパターン変換処理の処理時間短縮化に関する。ここで符号化パターンの文字化について説明する。
【0058】
図7は、符号化パターン文字化の説明図である。
符号化パターンのドットは、所定の間隔の格子上に配設される。通常、7×7(ブロック)の中に1個の符号化パターンのためのドットが配設され、符号化パターンを形成するドットパターンとして表現される。このドットパターンには図に示すように、ドットが上下・左右に少しずつズレた5つのパターン(スペースを含めば6つ)がある。これらのドットパターンの組み合わせにより符号化パターンが形成される。ここでは1例として図の上段左から、ドットパターンS、ドットパターンU、ドットパターンD、更に下段左から、ドットパターンC、ドットパターンL、ドットパターンRと命名する。
【0059】
図8は、文字コードと符号化パターンの対応説明図である。
符号化パターンは3つのドットパターンの組み合わせと文字コードと対応させて描画される。一例を示すと、文字コード26(図の縦軸20と横軸5のコラム)は%と表現される。その内容はCCCであり、図7のドットパターンCが横に3個並んでいることを表現している。
【0060】
ドットパターンの3つの組み合わせ要素は96通りあり、アプリケーションはこれら96種の文字コードのいずれかを指定して文字として符号化パターンを描画する。各符号データは各符号化データを点の座標とそれらを結ぶ線や面の方程式等で表したベクタデータであり、ベクタデータをプリンタで印刷するためにページバッファに対してドットパターンとして展開/描画する必要があるが、ベクタデータからドットパターンへの変換(ラスタライズ)はプリンタドライバがオペレーティングシステムの機能を利用して実行される。
【0061】
ドットパターンとして用いられる符号化データは前述の通り空白を除き5種、文字コードとしては96パターン程度であり、またドットのサイズは印刷データにより変化する事は無い。本実施例では、前述のベクタデータからドットパターンへの変換処理に於いて、変換済みのデータをキャッシュとしてプリンタドライバに保持し、前回変換済みの文字コードが再度使用された場合には、変換処理を行わず、キャッシュ内に保持された変換済みドットパターンを再利用する。かかる目的を達成するために、本実施例の印刷制御装置は以下のように構成される。
【0062】
本実施例の印刷制御装置と実施例1の印刷制御装置との相違部分は、実施例1におけるプリンタドライバ100(図2)の描画命令受信処理部26が本実施例では描画命令受信処理部40に置き換わったのみで、他の部分は全て実施例1と同様なので、この描画命令受信処理部40のみについて説明する。
【0063】
図9は、実施例2の描画命令受信処理部の機能ブロック図である。
図に示すように、プリンタドライバは、GDIからの描画命令のオブジェクト種別(文字、図形、画像)が何かを判定する描画オブジェクト判別部41と、その判定結果に基づいて処理を行う文字描画処理部42と、図形描画処理部43と、画像描画処理部44とを備える。
【0064】
文字描画処理部42は、文字描画の際に使用するフォントの種別を判定するフォント種別判別部45と、文字コード比較部46と、指定された文字コードから符号化パターンの組み合わせを検索する文字コード・符号化パターン検索処理部47と、符号化パターン検索テーブル48と、文字コードに対応した符号化データのベクタデータからドットパターンを生成するラスタライザ61と、符号化パターンの展開済みドットパターンを保持するキャッシュデータ記憶領域60と、符号化パターンの展開済みドットパターンが既にキャッシュデータ記憶領域内に保持されているか否かを検索するキャッシュ検査部49とを有する。ここでキャッシュデータ記憶領域内には、図7に示すドットバターンの形態に対応するメモリ領域が設けられている。
【0065】
次に本実施例の印刷制御装置の動作について説明する。上記したように、本実施例の印刷制御装置と実施例1の印刷制御装置との相違部分は、実施例1におけるプリンタドライバ100(図2)の描画命令受信処理部26が本実施例では描画命令受信処理部40(図9)に置き換わったのみで、他の部分は全て実施例1と同様なので、ここでは描画命令受信処理部40(図9)の動作のみについて説明し、その他の動作は、全て実施例1の印刷制御装置の動作と同様なので説明を省略する。
【0066】
図10は、実施例2の描画命令受信処理のフローチャートである。
この図は、プリンタドライバがGDI15から描画命令を受信し、描画命令受信処理部が文字コードを受け入れてドットパターンに変換する動作を表している。図7〜図9を併用しながらステップS5−1〜ステップS5−11までステップ順に説明する。
【0067】
ステップS5−1
描画オブジェクトの種別を描画オブジェクト判別部41が判定し、文字の描画であればステップS5−2へ進み、文字以外の場合にはステップS5−12へ進む。
【0068】
ステップS5−2
フォント種別判別部45は、文字の属性として指定されているフォントが符号化パターン用のフォントであるか否かを判定し、符号化パターン用のフォントである場合にはステップS5−3へ進み、そうでない場合にはステップS5−12へ進む。
【0069】
ステップS5−3
文字コード比較部46は、文字コードが有効範囲内であるかどうかを検査し、有効範囲内の場合にはステップS5−4へ進み、そうでない場合にはフローを終了する。
【0070】
ステップS5−4
文字コード・符号化パターン検索処理部47は、一つの文字コードに含まれる3つの符号化パターンを符号化パターン検索テーブル48(図8)から検索して文字コードを符号化パターンコードに変換する。
【0071】
ステップS5−5
キャッシュ検査部49は、各符号化パターンコードが符号化データのベクタデータからドットパターンに変換済みであるかどうか、キャッシュデータ記憶領域60内を検査する。
【0072】
ステップS5−6
各符号化パターンコードが符号化データのベクタデータからドットパターンに変換済みであった場合にはステップS5−9へ進み、変換済でない場合にはステップS5−7へ進む。
【0073】
ステップS5−7
ベクタデータをドットパターンに変換する。
【0074】
ステップS5−8
ラスタライザ61は、変換したドットパターンを、その後同じ符号化パターンが発生した場合に再利用できるように、キャッシュデータ記憶領域60に保存する。
【0075】
ステップS5−9
ラスタライザ61は、キャッシュデータ記憶領域60からドットパターンを取得する。
【0076】
ステップS5−10
3つの符号の全てについてステップS5−5からステップS5−8が繰り返して実行され、3つの符号が全てドットパターンに変換された後ステップS5−11へ進む。
【0077】
ステップS5−11
ラスタライザ61は、1文字に含まれる3つの符号化パターンについての3つのドットパターンをマージしてRGB→CMYK色空間カラー変換モジュール27へ渡す。RGB→CMYK色空間カラー変換モジュール27はRGB→CMYK色空間のカラー変換を行い、ページバッファ32へ描画してフローを終了する。
【0078】
ステップS5−12
描画オブジェクトが符号化パターン文字印刷に合致しない描画オブジェクトまたはフォントの文字なので、図形描画処理部43又は画像描画処理部44により通常の処理が実施されフローは終了する。
【0079】
以上説明したように、本実施例によれば、変換したドットパターンを、その後同じ符号化パターンが発生した場合に再利用できるように、キャッシュデータ記憶領域60に保存することにより、符号化パターンを文字として描画する際に発生するベクタデータ→ドットパターン変換の処理時間の削減が可能になり、高速に印刷を行うことが出来るという効果を得る。
【産業上の利用可能性】
【0080】
図1に示すように、本発明による、非PostScript、デジタルペン対応のプリンタドライバ100を介したプリンタ50の他に、従来技術で説明したパススルー対応可能なプリンタドライバ13を介したデジタルプリンタ14を接続し、適宜使い分けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】実施例1の印刷制御装置の構成のブロック図である。
【図2】実施例1のプリンタドライバの機能ブロック図である。
【図3】実施例1の候補印刷先選択処理のフローチャートである。
【図4】実施例1のアプリケーション処理(印刷処理)のフローチャートである。
【図5】実施例1のプリンタドライバのEscape受信処理のフローチャートである。
【図6】実施例1のプリンタドライバの描画命令受信処理のフローチャートである。
【図7】符号化パターン文字化の説明図である。
【図8】文字コードと符号化パターンの対応説明図である。
【図9】実施例2の描画命令受信処理部の機能ブロック図である。
【図10】実施例2の描画命令受信処理のフローチャートである。
【図11】デジタルペンの概念図である。
【図12】従来の筆跡認識システムの説明図である。
【符号の説明】
【0082】
15 GDI
16 インターフェース
17 インターフェース
21 Escape命令受信処理部
22 対応可否情報応答処理部
23 CMYモード設定応答処理部
24 Kモード設定応答処理部
25 CMYKモード設定応答処理部
26 描画命令受信処理部
27 RGB→CMYK色空間カラー変換モジュール
28 カラープロファイル選択処理部
29 CMYKモード用カラープロファイル
30 CMYモード用カラープロファイル
31 Kモード用カラープロファイル
32 ページバッファ
50 プリンタ
100 プリンタドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラー印刷の色指定モードの設定要求を受け入れて、該設定されたカラーモードに設定するEscape命令受信処理部を備えることを特徴とする印刷制御装置。
【請求項2】
前記Escape命令受信処理部は、
CMYモード、Kモード、CMYKモードの3つのカラー印刷の色指定モードを備えることを特徴とする請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項3】
前記Escape命令受信処理部は、
カラー印刷の色指定モードの設定要求を受け入れて、該設定要求に対する対応の可否を返信する対応可否応答処理手段を更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷制御装置。
【請求項4】
光学的読取手段を用いて読取可能な符号化パターン、及びフォームの生成が可能であることを特徴とする請求項1から請求項3までの何れか一項に記載の印刷制御装置。
【請求項5】
文字データの集合として生成された前記読取可能な符号化パターンにおける、前記文字データに対応するドットパターンを格納する符号化パターン検索テーブルと、
該符号化パターン検索テーブルから前記文字データ毎に対応するドットパターンを検出する文字コード・符号化パターン検索処理部と、
前記文字コード・符号化パターン検索処理部による検索処理の結果を前記文字データ毎に保存し、後に続く文字コードの検索処理に於ける検索を、符号化パターン検索テーブルに優先して受け入れるキャッシュデータ記憶部とを、更に備えることを特徴とする、請求項4に記載の印刷制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−187271(P2009−187271A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26348(P2008−26348)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(594202361)株式会社沖データシステムズ (259)
【Fターム(参考)】