説明

印刷基板の製造方法

【課題】並列する複数の微細配線部及び全面印刷面として形成される広域部が併存する導電配線を備え、微細配線部および広域部のいずれも、スクリーン印刷形成可能とする。
【解決手段】並列する微細配線部パターン23と、広域部パターン24を有し、上記広域部パターン24は広域部用開口部25と広域部用遮蔽部26とに区画されて構成されるスクリーン版21を用い、基材27に対しスクリーン印刷を施し、微細配線部を転写形成するとともに上記広域部用開口部25に対面する基材27上に転写領域31を形成し、且つ、上記広域部用遮蔽部26に対面する基材27上に非転写領域32を形成し、その後、非転写領域32の周囲に存在する転写領域31を形成するペーストのレベリング作用にて非転写領域32を埋め込み、広域部33を外縁内領域が実質的に全面印刷面として印刷基板を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷により形成される導電配線を備える印刷基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント基板やタッチパネル部材などの電子部材に設けられる導電配線の形成を、導電材料を含有する導電性ペーストを用い、スクリーン印刷により実施する技術が知られている。スクリーン印刷は、開口部と遮蔽部を有するスクリーン版を基材上に設置し、該スクリーン版上にペーストをのせ、次いで上記スクリーン版上にスキージを押し当てた状態で一定方向に移動させることにより、スクリーン版の開口部からペーストを基材方向に吐出させ、上記基材面にペーストを転写して印刷を行う方式である。上記スクリーン版の一般的な態様を示すために、スクリーン版の上面図を図6に示す。図6に示されるスクリーン版91は、ステンレスなどからなる内紗92とその周囲を囲むポリエステルなどからなる外紗93、さらにその周囲に設けられるアルミなどからなる枠体94から構成されている。外紗93が省略され、枠体94に直接に内紗92が取り付けられてもよい。そして、基材面に転写領域および非転写領域からなる所望のパターンでペーストを転写するために、内紗92内に非転写領域として乳剤部95を形成し、所望の転写パターンを形成する。乳剤部95が存在しない内紗92面であって、被転写体と面する領域が、ペーストが透過する開口部に相当する。
【0003】
印刷基板の製造において、スクリーン印刷により導電配線を形成することは、設備や経費が安価であること、導電性ペーストを用いた場合であっても比較的厚膜な導電性膜の形成が可能であること、生産性が高いことなどの優位性がある。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、スクリーン印刷により導電配線などを形成するために用いられる、スクリーンマスクの発明が開示されている。特許文献1に開示の発明は、スクリーン印刷における印刷厚みを部分的に所望の値に制御することを目的とすることが記載されている。具体的には、金属ナノペーストを用いて配線のスクリーン印刷を行った場合、単位面積あたりのマスク開口率が増えるにつれ、印刷物の膜厚が厚くなる傾向にあるため、一定面積範囲あたりのマスクの開口率を調整して印刷物の膜厚を均一化する技術が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、印刷されたインクパターンの膜厚が各部一様となることを目的とした、スクリーン印刷用マスクの発明が開示されている。特許文献2に開示のスクリーン印刷用マスクには、パターン状に形成された遮蔽用乳剤層と、インキ通過用開口が設けられている。そして、上記インキ通過用開口内に乳剤層の島が分布形状されることによって、スクリーン印刷時に、スキージの押圧によるスクリーン紗の変形量の差を抑制し、印刷されたインクパターンの膜厚が各部一様にして得られると説明されている。また乳剤層の島が分布形状されたパターンでは、印刷直後は、島が無インクパターンとして残るが、インクのレベリング作用により上記島にインクが流入し埋め込まれると説明されている。
【0006】
ところで、電子デバイスの小型化、軽量化などの要望に答えるために、電子デバイスに搭載される印刷基板についても小型化、軽量化が図られている。また、表示装置や操作画面を備える電子デバイスにおいては、一定の規格内において、その意匠性や操作性を向上する等の観点から、表示領域をなるべく大きく確保し、その分、非表示領域を狭くするという設計が求められる場合がある。上記要望を勘案し、種々の印刷基板において、非表示領域に相当する領域において形成される導電配線をより小さい面積に集約することが求められている。
【0007】
上記印刷基板の例として、図7、図8を用い、タッチパネル部材を例に説明する。図7は、第一電極基板101と、第二電極基板102とが積層されてなる静電容量式タッチパネルに用いられるタッチパネル部材100の斜視図である。第一電極基板101は、透明基材107上に、矢印で示す左右方向に伸長する複数の第一電極部103が設けられ、第一電極部103の一端と電気的に接続される複数の第一取出し配線104が設けられている。第一電極部あるいは後述する第二電極部111(図8参照)は、一般的にはITOやIZOなどが採用されているが、導電性ワイヤを配設して電極部とするなど、その態様は選択可能である。第一取出し配線104の一端には、第一電極部接続用広域部105が設けられており、第一電極部接続用広域部105を介して第一電極部103と電気的に接続されている。一方、タッチパネル部材100と外部電極との導通を可能とするために、第一取出し配線104の他端には、第一外部電極接続部材接続用広域部106が設けられている。また、第一電極部接続用広域部105と第一外部電極接続部材接続用広域部106との間は、直線状に伸長する配線部109が設けられており、隣り合う第一取り出し配線104において複数の配線部109が並列している。外部電極接続部材としては、例えば、フレキシブル基板、フレキシブル回路、フレキシブルフラットケーブルなどが相当する。尚、図1において第一電極部103の一端には、第一取出し配線104と接続されていない広域部が形成されているが、これは任意の設計である。
【0008】
第一電極基板101は、面内において境界線108を境に、内側が操作領域(表示領域)、外側が非操作領域(非表示領域)に相当し、第一電極部103は主として操作領域に形成され、一方、第一取出し配線104は非操作領域に形成されており、限られた領域内に密に導電配線が集約されている。かかる事情は後述する第二基板についても同様である。
【0009】
図8は、第二電極基板102の部分拡大図である。第二電極基板102は、透明基板110上に、第一電極部103(図7参照)と略直行する方向に伸長する複数の第二電極部111が設けられ、第二電極部111の一端と電気的に接続される複数の第二取出し配線112が設けられている。第二取出し配線112の一端には、第二電極部接続用広域部113が設けられており、第二電極部接続用広域部113を介して第二電極部111と電気的に接続されている。一方、タッチパネル部材100と外部電極との導通を可能とするために、第二取出し配線112の他端には、第二外部電極接続部材接続用広域部114が設けられている。また、第二電極部接続用広域部113と第二外部電極接続部材接続用広域部114との間は、直線状に伸長する配線部115が設けられており、隣り合う第二取り出し配線112において複数の配線部115が並列している。
【0010】
図8から理解されるように、非操作領域に集約される導電配線において、並列する複数の第二取出し配線112は、非操作領域の面積が縮小されるほど密な配線を強いられ、微細な配線パターンに設計せざるを得ない。このように、タッチパネル部材においても、より操作領域の面積を拡大し、且つ、非操作領域の面積を小さくする設計が求められているため、取出し配線の微細パターン化への対応が要求される。
【0011】
一方、第二電極部材接続用広域部113は、第二電極部111と第二取出し配線112のいずれともに接続され、また、第二外部電極接続部材接続用広域部114は異方性導電性フィルム(AFC)や、異方性導電性ペーストを用いフレキシブルプリント基板(FPC)などと接着され、これによって外部電極と、第二取出し配線112との導通を可能とする。しかも、一般的なタッチパネル部材において、取出し配線および電極部接続用広域部は導電性ペーストからなるところ、電極部はITOなどからなり、また、外部電極接続部材はFPCなどからなるため、取り出し配線の両端における広域部では、それぞれ異なる材料との電気的接続が求められている。したがって、組み合わせの異なる材料間のいずれの部分でも充分な電気信頼性を確保する必要があり、電極部材接続用広域部113および/または外部電極接続部材接続用広域部114は、取出し配線112の線幅よりも、縦方向および横方向ともに大きく設計され、且つ、べた形成され、これによって、第二電極部111の端部および/または外部電極接続部材との積層面積を充分に確保可能に設計している。
【0012】
あるいは、図7に示す第一電極基板101と第二電極基板102とが上下、入れ替わった積層態様であってもよく、また一枚の基材の一方側の面に第一電極を形成し、他方側面に第二電極を形成することも可能である。
【0013】
尚、並列する複数の微細配線部とべた形成される広域部とを並存して設けるパターンの導電配線は、タッチパネル部材に特有なものではなく、広域部と微細配線部とが連続するか否かを問わず、一般的な印刷基板における導電配線においても汎用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】PCT/JP2006/316089
【特許文献2】特開平5−124370
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、導電配線を備える印刷基板において、限られた領域に、並列する複数の微細配線部と広域部とを有する導電配線を集約しようとすると、配線の電気信頼性が低下する傾向にあり問題であった。上記電気信頼性の低下は、特に微細配線部のピッチが小さくなるにつれて増大する傾向にあった。
【0016】
従来技術の問題点をより具体的に説明するために、図4に従来技術に用いられるスクリーン版の例を示す。図4に示されるスクリーン版41は、乳剤部42と、配線ピッチ200μm以下の複数の微細配線部パターン43、縦サイズおよび横サイズのいずれもが上記微細配線部パターン43の線幅よりも大きい広域部パターン44および広域部パターン45を備える。微細配線部パターン43、広域部パターン44、45はいずれも開口部である。かかるスクリーン版41を用いて適当な基材にスクリーン印刷を行うと、形成された印刷基板の電気信頼性が不良となる傾向にある。尚、スクリーン版41は、スクリーン版の内紗面の主要部のみを選択的に示すものである。
【0017】
本発明者らは、上記電気信頼性の低下の原因を探求し、以下の具体的課題を見出した。第一に、微細配線部パターン43で設計される微細配線部をクリアに形成しようとすると、広域部パターン44、45を介して転写形成される広域部にランダムな欠け部分が発生し電気信頼性を損なう傾向にあり、例えば、導電配線の導通性能の低下などが生じる場合があった。広域部パターン44を介して転写形成された広域部の欠けの状態を示す写真を図5Aに、広域部パターン45を介して転写形成された広域部の欠けの状態を示す写真を図5Bに示す。尚、図5A、図5Bにおいて、黒い領域が、転写された広域部であり、該広域部中に視認される白い領域が「欠け」である。
【0018】
第二に、形成される広域部の欠けの問題が生じないような条件でスクリーン印刷を実施すると、微細配線部パターン43を介して転写形成される、並列する複数の微細配線部間にペーストの滲みが発生し電気信頼性を損なう傾向にあり、例えば、ショートなどが生じる場合があった。微細配線部パターン43を介して転写形成された並列する複数の微細配線部の側面ラインに滲みが生じている状態を示す写真を図5Cに示す。
【0019】
即ち、印刷基板の電気信頼性の低下の問題は、並列する複数の微細配線部とべた形成される広域部と、が併存する導電配線をスクリーン印刷により印刷形成するにおいて、微細配線部および広域部のいずれもが良好に印刷形成されることの困難性に起因し、一方を優先すると他方に欠陥が生じることにより、電気信頼性の優れた印刷基板の製造が困難であるという課題があることがわかった。
【0020】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、並列する複数の微細配線部および実質的に全面印刷面として形成される広域部が併存する導電配線を備える印刷基板に関し、該微細配線部および該広域部のいずれもが、電気信頼性に足る程度にスクリーン印刷により印刷形成可能とする印刷基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
即ち、本発明は、
(1)基材上に、並列する複数の微細配線部および外縁内領域が実質的に全面印刷面として形成される広域部を含む導電配線を、スクリーン印刷で印刷形成することにより印刷基板を製造する方法であって、
上記スクリーン印刷に用いるスクリーン版は、上記並列する複数の微細配線部に対応する微細配線部パターンと、上記広域部に対応する広域部パターンを有し、
上記微細配線部パターンは、配線部用開口部が配線ピッチ200μm以下の間隔で並列して構成されており、
上記広域部パターンは、広域部用開口部と広域部用遮蔽部とに区画されて構成されており、
上記スクリーン版を用いて上記基材に対しスクリーン印刷を施し、
基材上に、並列する複数の微細配線部を転写形成するとともに、
上記広域部用開口部に対面する基材上に転写領域を形成し、且つ、上記広域部用遮蔽部に対面する基材上に非転写領域を形成し、その後、非転写領域の周囲に存在する転写領域を形成するペーストのレベリング作用によって、該非転写領域を埋め込み、上記広域部を外縁内領域が実質的に全面印刷面として形成することを特徴とする印刷基板の製造方法、
(3)上記広域部パターンにおける広域部用遮蔽部として、線状遮蔽部を含み、該線状遮蔽部の線幅が、上記微細配線部パターンにおける隣り合う配線部用開口部間の距離より小さいことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の印刷基板の製造方法、
(4)上記広域部パターンにおける広域部用遮蔽部として、島状遮蔽部を含み、上記島状遮蔽部の上面視上の最大径が、上記微細配線部パターンにおける隣り合う配線部用開口部間の距離より小さいことを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の印刷基板の製造方法、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の製造方法であれば、並列する複数の微細配線部とべた形成される広域部とが併存する導電配線をスクリーン印刷により印刷形成するに際し、微細配線部間に滲みが発生せず、電気信頼性に足る微細配線部を形成するとともに、外縁内領域が実質的に全面印刷面として形成される広域部についても欠けの問題が発生せず電気信頼性に足る広域部を形成することが可能である。したがって、本発明の製造方法によれば、並列する複数の微細配線部と外縁内領域が実質的に全面印刷面として形成される広域部とが併存する導電配線を備え、電気信頼性に優れる印刷基板を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に用いられるスクリーン版の一実施態様を示す上面図である。
【図2】本発明に用いられるスクリーン版において広域部パターンの区画態様の例を示す模式図である。
【図3】本発明の製造方法の一実施態様を説明する工程説明図である。
【図4】従来技術において用いられるスクリーンの上面図である。
【図5】従来の印刷基板における印刷時の欠け、または滲みの状態を示す写真である。
【図6】一般的な態様のスクリーン版の上面図である。
【図7】タッチパネル部材の斜視図である。
【図8】図1に示すタッチパネル部材において、第二基板の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の印刷基板の製造方法について説明する。本発明は、基材上に、並列する複数の微細配線部および外縁内領域が実質的に全面印刷面として形成される広域部を含む導電配線を、スクリーン印刷で印刷形成することにより印刷基板を製造する方法に関する。尚、本明細書の以下の説明において、「外縁内領域が実質的に全面印刷面として形成される」ことを、慣用的に「べた形成される」と言う場合がある。本発明において基材上に形成される微細配線とは、本発明に用いられるスクリーン版において配線ピッチ200μm以下の微細配線部パターンにより転写形成された配線のことを意味する。また本発明において基材上に形成される広域部とは、他の導電部または電極との接続を容易にするために配線部の端部または配線部間において設けられる、所謂、パッド部を含み、配線部に対して広い面積で形成された領域を含む。そして、該広域部は、広域部用開口部と広域部用遮蔽部とに区画されて構成される広域部パターンによって転写され、その後、ペーストのレベリング作用によってべた形成された領域を意味する。尚、以下に示す実施の形態や種々の例示は、本発明を限定するものではなく、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜の設計変更を含む。
【0025】
[スクリーン版]
本発明に用いられるスクリーン版は、並列する複数の微細配線部に対応する微細配線部パターンと、上記広域部に対応する広域部パターンを有し、上記微細配線部パターンは、配線部用開口部が配線ピッチ200μm以下の間隔で並列して構成されており、広域部用開口部と広域部用遮蔽部とに区画されて構成される。本発明における広域部パターンは、任意の形状をとることができ、他の導電部または電極との接続を容易にするために配線部の端部または配線部間において設けられる、所謂、パッド部を形成するためのパターンを含む。上記広域部パターンの外縁が、例えば、四辺形状であれば、対面する2辺の距離のいずれもが、微細配線部の線幅より大きく、また円形状であれば、その直径が微細配線部の線幅より大きく、また楕円形状であれば、長軸および短軸のいずれもが微細配線部の線幅より大きく、三角形状であれば、各辺とこれに対向する頂点との距離が微細配線部の線幅より大きいものであることが一般的である。
上記スクリーン版の構成は、基材上に、並列する複数の微細な配線部と、該配線部の線幅よりも、実質的に幅広と理解される広域部とが併存する導電配線を備え、且つ、導通性能に優れる印刷基板を製造することを可能とするために設定された。
【0026】
図1に本発明に用いられるスクリーン版の一実施態様における乳剤部と開口部のパターンを示す。尚、図1に示すスクリーン版は、内紗領域のみを選択的に示すものであって、その周囲の構造(一般的には外紗、枠体)については図示省略する。後段にて示すスクリーン版についても同様である。図1は、スクリーン版1について、乳剤が設けられておらず開口しているパターン領域を斜線で示し、乳剤が設けられている部分は、白色で示している。スクリーン版1は、並列する複数の微細配線部パターン2と、外縁が四角形状の広域部(1)パターン3と、微細配線部パターン2に連続し、y方向に伸長する太線状の広域部(2)パターン4とを有する。広域部(1)パターン3は、外縁四角形状内において、x軸方向に伸長する細線状の広域部(1)用遮蔽部6と、その周囲において開口する広域部(1)用開口部5とから構成されている。また、広域部(2)パターン4は、太線状の領域内において、幅方向略中央であってy軸方向に伸長する広域部(2)用遮蔽部8と、その周囲において開口する広域部(2)用開口部7とから構成されている。
【0027】
本発明において、微細配線部パターン2は、配線ピッチ200μm以下に設計される。即ち、微細配線部パターン2の線幅cと、微細配線部パターン2間の距離fとの和が、200μm以下である。このような配線ピッチを特定することにより、導電配線内に、実質的に本発明の課題が発生する可能性のある微細配線部パターンを対象に限定するものである。本発明における微細配線部パターンは、さらに配線ピッチ150μm以下、特には配線ピッチ100μm以下を対象とすることができる。即ち本発明であれば、従来、滲みなどの問題で、べた形成される広域部との並存が困難であった並列する複数の微細配線部パターンを、該広域部と並存させつつ、電気信頼性に優れた導電配線を備える印刷基板を製造することが可能である。
【0028】
本発明における微細配線部パターンは、配線ピッチ200μm以下で定義される範囲において、線幅および隣り合う微細配線部パターン間の距離を任意に決定してよい。即ち、微細配線部パターン間の距離は200μm未満において任意である。一般的には、隣り合う微細配線部パターン間の距離が小さいほど、印刷形成された微細配線部間における滲みの問題により電気信頼性を損なう虞が大きい。
あるいは、隣り合う微細配線部パターン間の距離がより小さいスクリーン版を用いて、電気信頼性の虞のない微細配線部を形成可能とした場合に、該スクリーン版において並存する広域部パターンにより印刷形成される広域部における欠けの問題が発生しやすい。
これに対し、本発明はこれらの問題を解決可能とするものであって、特に、隣り合う微細配線部パターン間距離150μm以下、さらには、隣り合う微細配線部パターン間距離100μm以下、あるいは特に隣り合う微細配線部パターン間距離60μm以下といった、従来技術においては厳しいと考えられるパターン設計で作成されたスクリーン版を用いる場合に、本発明の実施は好適である。
【0029】
一方、広域部(1)パターン3の縦方向のサイズaおよび横方向のサイズb、並びに、広域部(2)パターン4の縦方向のサイズdおよび横方向のサイズeは、いずれも、上記線幅cよりも大きい。したがって、これらのパターンは、本発明において広域部として取り扱われる。即ち、本発明において、並列する複数の微細配線部パターンとは、配線ピッチ200μm以下に設計されたパターンを意味し、一方、微細配線部パターンにおける線幅と比較して、実質的に線幅の太いパターンは広域部として扱い得る。あるいは、不定形のパターン形状であっても、縦方向の最大サイズと横方向の最大サイズのいずれもが微細配線部パターンの線幅よりも大きければ、本発明における広域部として理解してもよい。ただし、本発明は、並列する複数の微細配線部と、べた形成される広域部とが並存し、且つ、電気信頼性の良好な印刷基板を提供することを目的とするため、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、1つのスクリーン版に、広域部用開口部と広域部用遮蔽部とに区画された広域部パターンと、そのような区画のない広域部パターンが存在することも許容する。
【0030】
尚、本発明に用いられるスクリーン版において、配線ピッチ200μm以下の並列する複数の微細配線部パターンが2種以上ある場合には、それらのうちの線幅が最大の微細配線部パターンに着眼し、その最大の線幅よりも縦方向のサイズおよび横方向のサイズのいずれもが大きいパターンを広域部パターンとして理解してよい。
【0031】
図1に示す広域部(1)パターン3および広域部(2)パターン4は、それぞれ、線状の広域部用遮蔽部6、8がパターン内に設けられた態様を示した。しかし、本発明における広域部用遮蔽部は線状に限らず、広域部パターンにおける広域部用開口部と広域部用遮蔽部の区画態様は、任意である。広域部パターンの異なる区画態様の例を図2に示す。図2A〜2Dは、いずれも広域部(1)パターン3のみを示し、図1に示される区画態様以外の広域部用開口部および広域部用遮蔽部を示すものである。広域部(1)パターン3は、図2Aに示すように島状に乳剤部が形成されてなる広域部用遮蔽部12が複数設けられ、その周囲に広域部用開口部11が設けられても良い。また図2Bに示すように細線状の四角枠形状に乳剤部が形成されてなる広域部用遮蔽部14に加え、上記四角枠形状内の中心にもx軸方向に伸長する線状の広域部用遮蔽部14’が設けられ、その周囲に広域部用開口部13、13’が設けられても良い。即ち、広域部パターン内において設けられる広域部用遮蔽部は、複数の同形状の乳剤部であってもよいし、あるいは異なる形状の乳剤部が組み合わされていてもよい。あるいはまた図2Cに示すように太線状であって一方方向に伸長する広域部用開口部15が並列され、隣り合う広域部用開口部15間に一定距離を確保する細線状の乳剤部からなる広域部用遮蔽部16を設けてなる区画態様であってもよい。このように、広域部パターンを区画する広域部用開口部が複数、独立して設けられ、その間を広域部用遮蔽部としてもよい。あるいはまた、図2Dに示すように、櫛歯状の広域部用開口部17を設け、櫛歯間を広域部用遮蔽部18としてもよい。
【0032】
以上のとおり例示される、本発明における広域部パターンは、本発明の製造方法により、結果としてべた形成を予定される領域に対し、意図的に広域部用開口部と広域部用遮蔽部に区画するものである。このように広域部パターンを区画することによって、並列する複数の微細配線部パターンをクリアに形成するとともに、べた形成される広域部においても、欠けなどの問題を防止し、優れた電気信頼性を得ることが可能である。したがって、上記趣旨に逸脱しない範囲において、広域部パターンの区画態様は、任意に設計してよい。
【0033】
また、広域部パターン内に設けられる広域部用開口部および広域部遮蔽部のサイズは、特に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜設計してよい。ただし、本発明における広域部用遮蔽部は、スクリーン印刷により非転写領域を形成するためのパターンではあるが、該非転写領域は、後述するとおり、スクリーン印刷実施後、周囲の転写領域を形成するペーストのレベリング作用によって、埋め込まれることが予定される領域である。したがって、このようの非転写領域の埋め込みを可能とするよう、充分にスクリーン版、ペースト、基材の被転写面の性状などの条件を勘案して、本発明を実施することが重要である。
【0034】
上述する非転写領域の埋め込みに関し、広域部パターンの望ましい設計について、図1を用いて説明する。広域部(1)用遮蔽部6は、線状遮蔽部であるところ、広域部(1)用遮蔽部6の伸長方向に対し略垂直な方向において示される線幅を、微細配線部パターン2間における距離fより小さく設計することが好ましい。
本発明の実施における好ましい態様の1つとしては、並列する複数の微細配線部パターン2により滲みによるショートの問題が発生しない微細配線部を形成するために、好ましいペーストや基材が選択されてよい。この場合に、スクリーン印刷後のペーストのレベリング作用により広域部(1)用遮蔽部6の存在により形成された非転写領域を周囲のペーストで埋め込んで、実質的に広域部(1)をべた形成するためには、広域部(1)用遮蔽部6の線幅を、隣り合う微細配線部パターン2間における距離fより小さくすることによって、上記非転写領域の埋め込みを容易にすることができるからである。
【0035】
あるいは広域部(1)用遮蔽部が、図2Aに示すように島状の広域部用遮蔽部12である場合には、島状である広域部用遮蔽部12の上面視上の最大径が、隣り合う微細配線部パターン2間の距離fより小さくなるよう設計することによって、上述と同様の理由から、非転写領域の埋め込みを容易にすることができる。
【0036】
ただし、上記非転写領域の埋め込みに関し、上述する説明は、本発明を限定するものではない。非転写領域の埋め込みを容易にするための他の態様としては、例えば、本発明に用いられる基材の被転写面においてペーストとの濡れ性を勘案し、並列する複数の微細配線部パターンが対面する領域を形成する素材あるいは性状と、広域部パターンが対面する領域を形成する素材あるいは性状を異なるものとしてもよい。例えば、基材の被転写面において、広域部パターンが対面する領域を形成する素材として、ペーストがより滑りやすい、即ち、レベリング作用が大きくなるような素材を選択してもよい。より具体的には、上記非転写領域の埋め込みを容易にするために、(1)樹脂、ガラス、金属などの任意の素材よりなる基材を選択し、被転写面において、広域部パターンに対面する領域に、ペーストとの濡れ性をより強くする材料を積層させて、レベリング作用を促すとともに、微細配線部パターンに対面する領域には、相対的にペーストとの濡れ性の小さい材料を積層させる態様、(2)任意の基材を選択し、広域部パターンに対面する領域は基材自体とし、一方、当該基材において、微細配線部パターンに対面する領域には、当該基材に対し相対的にペーストとの濡れ性の小さい材料を積層させる態様、(3)任意の基材を選択し、微細配線部パターンに対面する領域は基材自体とし、一方、当該基材において、広域部パターンに対面する領域には、当該基材に対し相対的にペーストとの濡れ性の大きい材料を積層させる態様、あるいは、(4)基材の被転写面における特定領域ごとのペーストのレベリング作用の調整のため、化学処理などの基材面処理を施すことにより選択的に非転写面の性状を変更させる態様などが挙げられる。
【0037】
上述するとおり、本発明に用いられるスクリーン版は、配線ピッチ200μm以下の複数の微細配線部パターンを備える。したがって、かかる微細配線部パターンにおける良好な転写を実現するという観点からは、用いられるスクリーン版は、400メッシュ以上であることが好ましい。また、400メッシュ以上であって、その耐久性を良好に維持するために、ステンレスメッシュが好ましく選択される。尚、本明細書においてメッシュとは、1インチあたりのワイヤの本数を意味する。
一般的に、高強度メッシュのスクリーン版を用いてスクリーン印刷を行う場合には、スクリーン版の設置時に基材面とのギャップを大きく設定し、スキージ通過後に基材面とスクリーン版とを離れさせやすくする。このような印刷条件は、微細配線の形成には好ましいものの、例えば150μm×150μm程度の領域をべたに印刷形成しようとすると、メッシュの交点部に応じる部分などに、所謂、欠けが発生する場合があった。しかしながら、本発明の製造方法によれば、配線ピッチ200μm以下の複数の微細配線部パターンにより良好に微細配線を印刷形成するとともに、広域部についても欠けのない電気信頼性を満足させる印刷形成を実現可能である。したがって、400メッシュ以上の高メッシュであって、ステンレスメッシュが採用されるスクリーン版を使用し、配線ピッチ200μm以下の複数の微細配線と広域部の併存する導電配線を備える印刷基板を製造することが可能である。
【0038】
以上に本発明に用いられるスクリーン版における配線ピッチ200μm以下の複数の微細配線部パターンおよび広域部パターン、およびこれらによって印刷形成される微細配線部と広域部について説明した。本発明に用いられるスクリーン版は、本発明に特定されるパターンを備えることが可能なものであれば、その他の構成については特に限定されず、スクリーン版として公知のものを適宜選択して使用し得る。
【0039】
また本発明に用いられるスクリーン版は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述する配線ピッチ200μm以下の複数の微細配線部パターンおよび広域部パターン以外のパターンをさらに含んでいてもよい。
【0040】
[ペースト]
本発明の製造方法に用いられるペーストは、一般的なスクリーン版に用いられるいずれかのペーストから任意に選択することができる。本発明に用いられるスクリーン版には、上述する微細配線部パターンと広域部パターンとが併存するところ、ペーストの選択は、例えば微細配線部パターンによる微細配線部の印刷形成に適した材料が含まれるペーストあるいは高粘度のペーストを好ましく選択することができる。
微細配線部の印刷形成に適したペーストを選択し、これを用いて広域部をもスクリーン印刷した場合に、従来であれば、印刷形成された広域部に欠けが発生するという問題があったが、本発明であれば、上述するスクリーン版を用いることによって、広域部の欠けの問題を防止することが可能であり、したがって、微細配線部の印刷形成に適したペーストを選択することができる。所望のピッチの微細配線部パターンにより微細配線部を印刷形成したときに、実質的に隣り合う微細配線部間に滲みの問題の生じないペーストを予備実験において選択し、当該ペーストを用いて本発明を実施してもよい。
【0041】
本発明は、導電配線を備える印刷基板を製造する方法であるため、用いられるスクリーン印刷用のペーストには、導電性材料が含有される。上記導電性材料としては、任意の金属粒子が一般的であり、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)、プラチナ(Pt)、アルミニウム(Al)又はこれらの金属のうちのいずれか2種類以上の金属を含む合金、例えばAPC(銀、パラジウム、銅の合金)、MAM(モリブデン、アルミニウム、モリブデンの合金)などが挙げられるが、これに限定されない。特に銀粒子が、ペースト100質量部に対し、70〜99質量部程度含有される銀ペーストは、150〜300Pa・s範囲(ブルックフィールド粘度計、測定回転数5rpm)の高粘度を示すことが可能である。このような高粘度のペーストは、配線ピッチ200μm以下の複数の微細配線部パターンを転写することに適しており、本発明においても好ましく使用される。また、上述するスクリーン版を用いる本発明の製造方法であれば、上記銀ペーストのごとく高粘度のペーストを用いても、欠けがなく電気信頼性に足る広域部を印刷形成することが可能である。
【0042】
上記ペーストに含有される金属粒子の粒径は特に限定されない。数十nm〜数百nm程度の粒径の金属微粒子を1種選択してもよいし、あるいは、上記範囲において異なる粒径の金属粒子を混合させてもよい。中でも、数百nm程度、特には100〜300nm程度の銀粒子などの金属微粒子と、数μm程度、特には1μm〜3μm程度の銀粒子などの金属粒子を混合させてなるペーストは、配線ピッチ200μm以下の複数の微細配線部パターンにより、電気信頼性の良好な並列する複数の微細配線部を印刷形成することに適し、且つ、形成された導電配線の電気抵抗率を下げる効果があるため、本発明に用いられるペーストとして好ましい。尚、上記金属微粒子は、平均一次粒径が、数十nm〜数百nm、特には100〜300nm程度のサイズの金属微粒子を意味し、これらがペースト内において凝集して二次粒子となっている場合であっても、凝集前の金属微粒子の粒径を意味する。
【0043】
上述に示す、粒径の異なる金属粒子の組み合わせからなるペーストは、上述する、ステンレス製などの高強度、高メッシュのスクリーン版との相性がよく、例えば、取出し配線として、並列する複数の微細配線部、並びに、べた形成される電極部接続用広域部および/または外部電極接続部材接続用広域部の併存する導電配線を備えるタッチパネル部材を良好に製造することができる。
【0044】
また、本発明に用いられるペーストには、金属粒子に加え、バインダーとして樹脂材料が含有されることが好ましい。上記樹脂材料の例としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、オリゴエステルアクリレート樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイドトリアジン樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、オキサジン樹脂、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、ケトン樹脂、ポリスチレン、ポリエステルなどを挙げることができ、また上述される樹脂を含む任意の樹脂から選択された2種以上の樹脂を組み合わせ含有させてもよい。より好ましい樹脂の例としては、低温焼成が可能であるという点よりビスフェノールエポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、もしくはそれらの混同樹脂が好ましく使用される。これらは、90〜150℃程度の低温焼成が可能である。
ところで本発明の製造方法により形成された印刷基板は、例えばタッチパネル部材として好適に使用可能である。タッチパネル部材に代表される多くの印刷基板は薄膜軽量化が求められており、これを可能にするために基材として樹脂フィルムを選択し得る。このように樹脂フィルム基材が使用される場合には、特に、低温焼成可能なペーストを用いることにより、ペースト焼成時の熱による樹脂フィルム基材へダメージを最小限にした配線形成が可能となる。
また、本発明においても用いられるペーストにおいて、含有される金属粒子と、バインダーとの組み合わせの関係では、低抵抗化と耐腐食性の観点から金属粒子として銀粒子を含み、且つ、バインダーである樹脂材料として接着力が高いために各種基材との密着性が高いという観点から、ビスフェノールエポキシ樹脂を含むエポキシ系樹脂が選択されてなる組み合わせが好ましい。
【0045】
本発明に用いられるペーストには、上述する金属粒子、樹脂材料以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、硬化材などの任意の材料が含有されてよい。また、ペーストに含まれる金属粒子を含む構成材料の配合量は、特に限定されず、一般的にスクリーン印刷に適用可能とされるペーストの配合に倣うことができる。上述するペーストに含まれる材料は、適当な液に混練され、適当な粘度に調製され、本発明に用いられるペーストが調製される。あるいは、市販のペーストを適宜選択して用いてもよい。
【0046】
[基材]
本発明に用いられる基材は、スクリーン印刷の被転写面として適当な基材面を備えているものであればよく、特に限定されない。例えば、樹脂材料、ガラス材料、金属材料などからなる基材、あるいはそれらの基材上に、任意の層や部材が設けられているもの、あるいは基材面が化学処理されているものなど、いずれのものであってもよく、本発明によって製造される印刷基板の使用が予定されるデバイスの種類、あるいは用いられるペーストとの相性などを勘案して選択してよい。特に本発明により製造される印刷基板がタッチパネルや表示装置などに用いられることが予定される場合には、基材は透明性のあるものを選択することが一般的である。
【0047】
例えば、本発明によってタッチパネル部材に用いられる印刷基板を製造する場合には、上記基材としては、透明樹脂フィルムや薄膜ガラス、あるいはこれらの上に無機材料層(例えばSiOやSiNなど)を形成した基材を好適に使用することができる。特に、銀ペーストを用い、無機材料層を備える基材面に取出し配線を印刷形成することは、従来から試みられているが、スクリーン印刷の観点で、上記銀ペーストと上記無機材料層を備える基材とは相性が良いとはいえず、微細配線部と広域部とが併存する導電配線(即ち、取出し配線)において滲みや欠けの問題があった。しかし本発明の製造方法によれば、それらの問題が改善され、銀ペーストと無機材料層を備える基材とのを用いても導通性の優れた印刷基板を製造することが可能となった。
【0048】
尚、タッチパネル部材に、本発明により製造される印刷基板が用いられる場合、まずタッチパネル部材の基材として好適な透明フィルムやガラス基材を選択し、該基材上に本発明の実施により取出し配線を備える印刷基板を製造し、次いで、該印刷基板の印刷面側であって、タッチパネル部材の表示領域に相当する領域に、ITOやIZO等の電極層を形成してもよい。あるいは、透明フィルムやガラス基材上の表示領域に相当する領域に先に透明電極層を形成し、該透明電極層を備える基材を本発明の基材として用い、本発明の実施によりさらに取出し配線を備えたタッチパネル部材である印刷基板を製造してもよい。
【0049】
[本発明における製造方法の工程について]
次に本発明の製造方法を、本発明の製造方法の工程説明図である図3を用いて順に説明する。
【0050】
(工程1)
準備段階として、スクリーン印刷に用いられるスクリーン版、ペースト、基材を準備する。尚、ペーストは、所望の配線ピッチで並列する複数の微細配線部を良好に形成可能であることを事前に確認し、選択した。本説明では、図3Aに示すスクリーン版21を用いて説明する。スクリーン版21は、配線ピッチ200μm以下の並列する複数の微細配線部パターン23が開口部として設けられ、且つ、広域部パターン24が設けられて、周囲は乳剤によって遮蔽された乳剤部22が形成されている。広域部パターン24は、広域部用開口部25と細線状の広域部用遮蔽部26より区画されている。広域部用遮蔽部26の線幅は、隣り合う微細配線部パターン23間の距離よりも小さく設計されている。
【0051】
(工程2)
図3Aに示されるスクリーン版21のA−A断面部分を用いて、図3Bに本発明のスクリーン印刷の工程を説明する。図3Bに示すとおり、基材27上に、スクリーン版21を設置し、ペースト29をスクリーン版21上に吐出して、スクレッパー28によりスクリーン版21面上に展開し、ペーストを開口部に充填する。図示省略するが、その後、スキージをスクリーン版21面にあて、基材27面方向に圧力をかけながら、スクリーン版27の開口部に充填されているペースト29を基材27面に転写する。転写終了後、基材27面上からスクリーン版21を取り除く。
【0052】
上記工程2の終了において得られた印刷物34の断面図を図3Cに示す。スクリーン印刷後において、基材27上には複数の並列する微細配線部30および広域部用開口部25を介してペースト29が転写されてなる、転写領域31が形成されている。転写領域31間には、広域部用遮蔽部26の存在によりなる非転写領域32が存在する。上述のとおり、本発明の製造方法では、べた形成される広域部の形成にあたり、まずスクリーン印刷において、転写領域および非転写領域の組み合わせからなる広域部前駆部36を形成する。即ち、スクリーン印刷によって直接にべた形成される広域部を転写形成することを避けるのである。そのため、並列する複数の微細配線部の形成に適した高粘度のペーストを選択した場合であっても、広域部に欠けの問題が発生することを防止することができる。
【0053】
(工程3)
任意の時間経過により、微細配線部30および転写領域31を構成するペースト29のレベリング作用により、転写物は紙面左右方向に広がりをみせる。したがって、スクリーン印刷直後の転写領域31の線幅gは、レベリング作用を受け、線幅がg’と変化する。このときg<g’の関係になる。この結果、非転写領域32は、隣り合う転写領域31を構成するペーストの広がりによって埋め込まれて消失し、べた形成された広域部33が形成される。尚、上記レベリング作用により非転写領域32が周囲の転写領域31を構成するペーストにより埋め込まれ、結果として広域部がべた形成されるように、用いるペースト29のレベリング性や、広域部用遮蔽部26の設けられる基材面の材質、性状などを勘案して広域部用遮蔽部26の線幅の設計がなされることが好ましい。
【0054】
一方、スクリーン印刷直後の微細配線部30の線幅hと、上記レベリング後の微細配線部30の線幅h’とでは、h<h’となるが、並列する複数の微細配線部30は、隣り合う微細配線部30間において滲みが生じない程度に形成される。以上のとおり、本発明の製造方法の実施により、200μmピッチ以下の並列する複数の微細配線部と、べた形成される広域部とが併存する導電配線を備える印刷基板35を製造することができる。印刷基板35は、隣り合う微細配線部間の滲み、広域部の欠けなどの問題が改善され、優れた電気信頼性が示される。
【0055】
上述する本発明の製造方法は、基材の印刷面に面積上の制限があり、配線パターンの集約が求められる印刷基板の製造に好適である。例えば、タッチパネル部材の非操作領域は、所謂、狭額縁化が図られる傾向にあり、そのような制限された非操作領域内に微細配線部と、その端部に連続する広域部を備える取出し配線を備える印刷基板を製造するために、本発明の製造方法は好適である。ただし、本発明の製造方法は、タッチパネル部材に用いられる印刷基板に限られず、液晶表示装置などの表示装置における印刷基板、半導体素子、その他のプリント基板など、種々の分野における印刷基板の製造に適用可能である。
【実施例】
【0056】
(スクリーン版の準備)
スクリーン版1:
縦750mm×横750mmの枠に縦500mm×横500mmの500メッシュが貼られた高強度ステンレススクリーン(アサダメッシュ(株)製、HS−D500、線径19μm)を用い、公知の方法でコンビネーションマスクを形成した。これに、感光剤(乳剤)としてARK(東京プロセスサービス(株)製)を25μm塗布し、図1に示すパターンに倣い、且つ、取出し配線を5本並列させたパターンであって、乳剤部9、広域部(1)用遮蔽部6、広域部(2)用遮蔽部8に相当する領域が開口する露光マスクを用いて露光を行い、次いで、未露光部を純水ガンで飛ばし、本実施例に用いるスクリーン版のパターンを解像し、スクリーン版1を作成した。尚、後述する基材は、1つの印刷基板が3×7に配列される21面取り用の基材を用いるため、上記スクリーン版もこれに対応し、1つのスクリーン版において1つの取り出し配線パターンを3×7に配列させ21面設けた。後述するスクリーン版2、3についても同様に配線パターンは基材の設計にあわせ21面設けた。配線パターンの詳細は、以下のとおりである。尚、微細配線部は配線ピッチ100μmである。
a:1mm
b:3mm
c:40μm
d:3.5mm
e:250μm
f:60μm
広域部(1)用遮蔽部6の線幅:20μm
広域部(1)用遮蔽部6間の距離:80μm
広域部(2)用遮蔽部8の線幅:20μm
【0057】
スクリーン版2:
また、露光マスクを、図4に示すパターンに倣い、且つ、取出し配線を5本並列させたパターンであって、乳剤部42に相当する領域が開口する露光マスクを用いたこと以外は、上記スクリーン版Aと同様の条件で、スクリーン版2を作成した。スクリーン版2は、広域部パターン44、45が開口部になっており、且つ、パターンの詳細な寸法が以下のとおりであること以外はスクリーン版1と同様である。尚、微細配線部は配線ピッチ100μmである。
a:1mm
b:3mm
c:50μm
d:3.5mm
e:250μm
f:50μm
【0058】
スクリーン版3:
また、微細配線部において、c:50μm、f:50μmに変更したこと以外は、スクリーン版1と同様にスクリーン版を作成し、これをスクリーン版3とした。
【0059】
(ペーストの準備)
平均粒径2μmの球状銀粉を65g、平均一次粒径0.1μmの銀微粒子が凝集してなる平均粒径0.8μmの凝集状銀粉を18g、熱硬化性エポキシ樹脂(エピクロン840;DIC(株)製)を2.7g、アクリル樹脂(ダイヤナールBR−75、三菱レイヨン(株)製)を4g、硬化剤としてアミキュアMY−H(味の素ファインテクノ(株)製)を1.3g用い、表1に示す量のジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートとともに3本ロールミルで混練し、表1に示す通りの粘度に調整した導電性ペーストA、Bを得た。
【0060】
【表1】

【0061】
(基材の準備)
実施例および比較例に用いる多面取り用の基材として、300mm×400mmの樹脂フィルム上にアンダーコート層および誘電体層を下地層として設け、さらに操作領域にパターニングされた透明電極層を備えるタッチパネル部材用基材を下記のとおり準備した。尚、上記多面取り用の基材において、1つの印刷基板に相当する基材面は、縦98mm、横52mmとし、その中央に、縦78mm、横45mmの操作領域を設けるよう設計し、その周囲を非操作領域とした。そして上記多面取り用の基材において、上記サイズの基材面を3×7に配列し21面取りできるよう設計した。
厚さ75μmのPETフィルム(東レ(株)製、ルミラーT60)を準備した。次に、光硬化型樹脂剤(東亞合成株式会社製、アロニックスM405)およびエポキシ系硬化剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュア184)をイソブチルアルコールに溶解した溶液を、自動塗工機(松尾産業株式会社製、K303マルチコーター)を用いてバーコート法によりPETフィルムの全面に塗布した。そして、Model LC−6B Benchtop Conveyor(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製)を用いて、溶液の塗布されたPETフィルム面上から波長365nm、積算エネルギー300mJの紫外線を照射して、PETフィルム上に厚さ1μmのアンダーコート層を製膜した。
次に、アンダーコート層を形成したPETフィルムの片面に、厚さ30nmのSiOの薄膜からなる誘電体層をスパッタ法により製膜した。次に、誘電体層上に、厚さ30nmのITO膜をスパッタ法により製膜し、その後、ポジ感光性材料(ローム&ハース社製 S1805)を用いて、カーテンコート法により厚さ1.0μmのポジレジストを製膜した。
そして、上記ポジレジストの上に透明電極のパターンを形成したフォトマスクを所定位置に配置し、フォトマスクの上から、プロキシアライナー((株)大日本科研製、MA5000)により、波長365nm、積算エネルギー300mJの紫外線を照射して、ポジレジストの露光を行った。その後、KOH現像液により、ポジレジストの現像処理を行った。次に、エッチング剤として塩化鉄溶液を用いてITO膜のエッチング処理をして、ITO膜にパターニングを行い、透明電極層を形成した。上記透明電極層は、図8に示すパターンに倣い、棒状の透明電極部が一方方向に並列して構成されるようパターンニングし、各透明電極部を主として操作領域内に5本、形成し、且つ、各透明電極部の端部は非操作領域に伸長させた。その後、NaOH溶液により、ポジレジストを剥離し、基材1を得た。
【0062】
(実施例1)
上述において得た基材を用い、上記スクリーン版1、導電性ペーストAを用い、スクリーン印刷機(ニューロング社製、LS−340VTVA)により非操作領域に、取出し配線を形成して印刷基板を作製し、これを実施例1とした。尚、取り出し配線における電極部接続用広域部と、透明電極部端部との積層は、非操作領域に伸長する透明電極部の先端と、広域部(1)パターン3の微細配線部パターン2側の外縁とが略接する位置に調整した。スクリーン版1における広域部(1)用遮蔽部6の数は、図1に従わず、9個設けた。尚、実施例1および後述する実施例2、比較例1、2は、いずれもタッチパネル部材として使用可能な材料を用いて作成した。
【0063】
(実施例2)
用いるスクリーン版をスクリーン版3に代えたこと以外は、実施例1と同様に印刷基板を作成し、これを実施例2とした。
【0064】
(比較例1)
用いるスクリーン版をスクリーン版2に代えたこと以外は、実施例1と同様に印刷基板を作成し、これを比較例1とした。
【0065】
(比較例2)
導電性ペーストBを用いたこと以外は、比較例1と同様に印刷基板を作成し、これを比較例2とした。
【0066】
(欠陥観察評価)
実施例1、2および比較例1、2は、広域部(1)および(2)のいずれもべた形成されていることを肉眼で確認した。その上で、実施例1、2および比較例1、2について、光学顕微鏡(オリンパス製 MX61L)で微細配線部の滲み、および、広域部のカケの有無を観察した。以下のとおり評価し、結果は、表2に示す。
[微細配線部の滲み]
・微細配線のライン側面に目立った滲みは認められなかった・・・・○
・微細配線のライン側面に顕著な滲みが視認された・・・・×
[広域部(1)、(2)の欠け]
・全体的に欠けの発生は、認められなかった・・・・○
・顕著な欠けの発生が視認された・・・・×
・一部に若干の欠けが発見された・・・・△
【0067】
(配線測定)
三次元座標測定装置(SOKKIA製 AMIC−1300)を用いて、実施例1および比較例1、2の微細配線部の線幅および微細配線部間距離、並びに、広域部(2)の線幅および広域部(2)間の距離を測定した。結果は、表2に示す。
【0068】
表2に示すとおり、配線ピッチ100μmで並列する複数の微細配線部と、広域部とが並存する取り出し配線を備えるタッチパネル部材をスクリーン印刷により製造した場合に、従来のスクリーン版2を用い、比較的高濃度のペーストを用いてスクリーン印刷した比較例1では、隣り合う微細配線部間の滲みの問題はなかったが、広域部に欠けが生じた。一方、従来のスクリーン版2を用い、比較的低濃度のペーストを用いてスクリーン印刷した比較例2では、隣り合う微細配線部間に滲みが発生した。したがって比較例1および2はいずれも、電気信頼性の低下が危惧された。これに対し、実施例1および2では、微細配線部および広域部のいずれも良好に形成することができ、電気信頼性の低下の虞のないタッチパネル部材である印刷基板を製造することができた。
【0069】
【表2】

【符号の説明】
【0070】
1 スクリーン版
2 微細配線部パターン
3 広域部(1)パターン
4 広域部(2)パターン
5 広域部(1)用開口部
6 広域部(1)用遮蔽部
7 広域部(2)用開口部
8 広域部(2)用遮蔽部
9 乳剤部
11、13、15、17 広域部用開口部
12、14、14’、16、18 広域部用遮蔽部
21 スクリーン版
22 乳剤部
23 微細配線部パターン
24 広域部パターン
25 広域部用開口部
26 広域部用遮蔽部
27 基材
28 スクレッパー
29 ペースト
30 微細配線
31 転写領域
32 非転写領域
33 広域部
34 印刷物
35 印刷基板
36 広域部前駆部
41 スクリーン版
42 乳剤部
43 微細配線部パターン
44、45 広域部パターン
91 スクリーン版
92 内紗
93 外紗
94 枠体
95 乳剤部
100 タッチパネル部材
101 第一電極基板
102 第二電極基板
103 第一電極部
104 第一取出し配線
105 第一電極部接続用広域部
106 第一外部電極接続部材接続用広域部
107 透明基材
108 境界線
109 配線部
110 透明基材
111 第二電極部
112 第二取出し配線
113 第二電極部接続用広域部
114 第二外部電極接続部材接続用広域部
115 配線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、並列する複数の微細配線部および外縁内領域が実質的に全面印刷面として形成される広域部を含む導電配線を、スクリーン印刷で印刷形成することにより印刷基板を製造する方法であって、
上記スクリーン印刷に用いるスクリーン版は、上記並列する複数の微細配線部に対応する微細配線部パターンと、上記広域部に対応する広域部パターンを有し、
上記微細配線部パターンは、配線部用開口部が配線ピッチ200μm以下の間隔で並列して構成されており、
上記広域部パターンは、広域部用開口部と広域部用遮蔽部とに区画されて構成されており、
上記スクリーン版を用いて上記基材に対しスクリーン印刷を施し、
基材上に、並列する複数の微細配線部を転写形成するとともに、
上記広域部用開口部に対面する基材上に転写領域を形成し、且つ、上記広域部用遮蔽部に対面する基材上に非転写領域を形成し、その後、非転写領域の周囲に存在する転写領域を形成するペーストのレベリング作用によって、該非転写領域を埋め込み、上記広域部を外縁内領域が実質的に全面印刷面として形成することを特徴とする印刷基板の製造方法。
【請求項2】
上記スクリーン版における、隣り合う微細配線部パターン間の距離が、150μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の印刷基板の製造方法。
【請求項3】
上記広域部パターンにおける広域部用遮蔽部として、線状遮蔽部を含み、該線状遮蔽部の線幅が、上記微細配線部パターンにおける隣り合う配線部用開口部間の距離より小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷基板の製造方法。
【請求項4】
上記広域部パターンにおける広域部用遮蔽部として、島状遮蔽部を含み、上記島状遮蔽部の上面視上の最大径が、上記微細配線部パターンにおける隣り合う配線部用開口部間の距離より小さいことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の印刷基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−45852(P2013−45852A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181862(P2011−181862)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】