説明

印刷媒体上へのデータの記録および印刷媒体上に記録されたデータの復元

【課題】印刷媒体上にデータを記録する場合に、必要な印刷媒体上の領域をより小さくすると共に、印刷媒体上に記録されたデータの復元の精度を向上させることを可能とする。
【解決手段】デジタルデータを印刷媒体上に記録する装置は、デジタルデータを構成するビット列が取り得る複数の値のそれぞれをインク色とドットサイズとの組み合わせで特定されるドット種類に対応付けることにより、デジタルデータを一連のドット種類を表すコードデータに変換する。さらに、この装置は、コードデータの表す一連のドット種類のドットを印刷媒体上に形成することにより、デジタルデータを記録するための機械読み取り可能な視覚コードを印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データを印刷媒体上に記録すると共に、印刷媒体上に記録されたデータを復元する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばカラーバーコードのように、ビット列と色とを対応付けて印刷を行うことにより、印刷媒体上にデータを記録する技術が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−67191
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、例えばインクジェットプリンタのように面積階調で複数の色を表現するプリンタを用いて印刷媒体上へのデータの記録を行う場合、印刷媒体上にデータの記録のための大きな領域が必要となるという問題があった。
【0005】
また、複数の色を表現するために印刷媒体上にインクドットを重ねて形成した場合、にじみ等の影響によって色の判別が困難となり、印刷媒体上に記録されたデータを精度良く復元することが困難となる場合があるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、印刷媒体上にデータを記録する場合に、必要な印刷媒体上の領域をより小さくすると共に、印刷媒体上に記録されたデータの復元の精度を向上させることを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の第1の装置は、
デジタルデータを印刷媒体上に記録する装置であって、
前記デジタルデータを構成するビット列が取り得る複数の値のそれぞれを少なくともドットサイズで特定されるドット種類に対応付けることにより、前記デジタルデータを一連のドット種類を表すコードデータに変換する符号化部と、
前記コードデータの表す一連のドット種類のドットを前記印刷媒体上に形成することにより、前記デジタルデータを記録するための機械読み取り可能な視覚コードを印刷する印刷部と、を備える。
【0008】
この装置では、デジタルデータを構成するビット列が取り得る複数の値のそれぞれを少なくともドットサイズで特定されるドット種類に対応付けることにより、デジタルデータを一連のドット種類を表すコードデータに変換する符号化が行われる。そして、コードデータの表す一連のドット種類のドットを印刷媒体上に形成することにより、デジタルデータを記録するための視覚コードの印刷が行われる。このように、この装置では、視覚コードを構成するドット種類自体にデジタルデータを構成するビット列の値が対応付けられるため、デジタルデータの記録のために要する印刷媒体上の領域をより小さくすることができる。
【0009】
また、この装置では、視覚コードを構成するドット種類自体にデジタルデータを構成するビット列の値が対応付けられるため、視覚コードの印刷の際に複数のインクドットが重なって形成されることがない。そのため、デジタルデータの復元の際に、にじみ等の影響によって色の判別が困難となることがなく、印刷媒体上に記録されたデータの復元の精度を向上させることができる。
【0010】
上記装置において、
前記ドット種類は、インク色と前記ドットサイズとの組み合わせで特定されるものとしてもよい。
【0011】
このようにすれば、1ドットに対してより多くの情報を含ませることができることから、より長いビット列への対応が可能となる。
【0012】
上記装置において、
前記印刷部は、前記デジタルデータを構成するビット列が取り得る複数の値と前記ドット種類との対応を定義する機械読み取り可能な対応情報を、前記印刷媒体上に印刷するとしてもよい。
【0013】
このようにすれば、デジタルデータの復元の際に、必要な情報をすべて印刷媒体上から取得して処理を実行することができる。
【0014】
また、上記装置において、
前記印刷部は、前記デジタルデータを構成するビット列が取り得る複数の値と前記ドット種類との対応を定義する所定の対応テーブルを特定する機械読み取り可能なテーブル特定情報を、前記印刷媒体上に印刷するとしてもよい。
【0015】
このようにすれば、デジタルデータの復元の際に、適切な対応テーブルを用いて正確にデータを復元することができる。
【0016】
また、上記装置で、ドット種類をインク色と前記ドットサイズとの組み合わせで特定されるものとした構成において、
前記印刷部は、複数段階のドットサイズのドットを形成可能であり、
前記符号化部は、同一のインク色でドットサイズが1段階異なる2つのドット種類のそれぞれに互いに1ビットのみ相違するビット列の値が対応付けられるように、前記デジタルデータの前記コードデータへの変換を行うとしてもよい。
【0017】
このようにすれば、デジタルデータの復元の際に、誤り訂正の精度をより向上させることができる。
【0018】
また、上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の第2の装置は、
印刷媒体上に記録されたデジタルデータを復元する装置であって、
前記印刷媒体上に印刷された前記デジタルデータを記録するための機械読み取り可能な視覚コードを読み取る読み取り部と、
読み取られた前記視覚コードを構成する複数のインクドットのそれぞれについて、少なくともドットサイズで特定されるドット種類を判別することにより、一連のドット種類を表すコードデータを生成する判別部と、
前記コードデータの表す一連のドット種類のそれぞれをビット列が取り得る値に対応付けることにより、前記コードデータを前記デジタルデータに変換する復号部と、を備える。
【0019】
この装置では、印刷媒体上に印刷されたデジタルデータを記録するための視覚コードを構成する複数のインクドットのそれぞれについて、ドット種類を判別することにより、一連のドット種類を表すコードデータが生成される。また、コードデータの表す一連のドット種類のそれぞれをビット列が取り得る値に対応付けることにより、コードデータのデジタルデータへの変換が行われる。このように、この装置では、ドット種類自体にビット列が取り得る値が対応付けられた視覚コードからデジタルデータを復元することができるため、印刷媒体上のより小さい領域に記録されたデジタルデータの復元を行うことができる。
【0020】
また、この装置では、ドット種類自体にビット列が取り得る値が対応付けられた視覚コードからデジタルデータを復元することができるため、視覚コードにおいて複数のインクドットが重なって形成されることによるにじみ等の影響によって色の判別が困難となることがなく、印刷媒体上に記録されたデータの復元の精度を向上させることができる。
【0021】
上記装置において、
前記ドット種類は、インク色と前記ドットサイズとの組み合わせで特定されるものとしてもよい。
【0022】
このようにすれば、1ドットに対してより多くの情報を含ませることができることから、より長いビット列への対応が可能となる。
【0023】
上記装置において、
前記読み取り部は、前記視覚コードの印刷解像度よりも細かい解像度で、前記視覚コードの読み取りを行うとしてもよい。
【0024】
このようにすれば、データ復元の精度を向上させることができる。
【0025】
また、上記装置において、
前記印刷媒体には、前記デジタルデータを構成するビット列が取り得る複数の値と前記ドット種類との対応を定義する機械読み取り可能な対応情報が印刷されており、
前記読み取り部は、前記対応情報を読み取り、
前記復号部は、読み取られた前記対応情報を用いて、前記コードデータの前記デジタルデータへの変換を行うとしてもよい。
【0026】
このようにすれば、必要な情報をすべて印刷媒体上から取得してデジタルデータの復元を行うことができる。
【0027】
また、上記装置において、
前記印刷媒体には、前記デジタルデータを構成するビット列が取り得る複数の値と前記ドット種類との対応を定義する所定の対応テーブルを特定する機械読み取り可能なテーブル特定情報が印刷されており、
前記読み取り部は、前記テーブル特定情報を読み取り、
前記復号部は、読み取られた前記テーブル特定情報により特定された前記所定の対応テーブルを用いて、前記コードデータの前記デジタルデータへの変換を行うとしてもよい。
【0028】
このようにすれば、適切な対応テーブルを用いて正確にデジタルデータの復元を行うことができる。
【0029】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、データ記録方法および装置、データ復元方法および装置、データ記録のための印刷データ生成方法および装置、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.変形例:
【0031】
A.第1実施例:
図1は、本発明の第1実施例としてのデータ記録・復元システムの構成を概略的に示す説明図である。本実施例のデータ記録・復元システム10は、コンピュータ100と、コンピュータ100に接続されたプリンタ300およびスキャナ400と、を備えている。
【0032】
コンピュータ100は、CPU110と、液晶モニタ等の表示部120と、キーボードやマウス等の操作部130と、ハードディスクドライブ等の外部記憶装置140と、インターフェイス部(I/F部)150と、ROMやRAM等の内部記憶装置200と、を備えている。コンピュータ100の各構成要素は、バス160を介して互いに接続されている。
【0033】
インターフェイス部150は、ケーブルを介してプリンタ300およびスキャナ400等の外部機器と接続され、外部機器との間で情報のやり取りを行う。例えば、インターフェイス部150は、プリンタ300に対し画像を印刷するための印刷データを供給する。また、インターフェイス部150は、スキャナ400により生成された画像データを取得する。なお、インターフェイス部150は、ネットワークと接続され、ネットワークを介した情報のやり取りを行うとしてもよい。
【0034】
内部記憶装置200には、データ記録処理部210と、データ復元処理部220と、が格納されている。データ記録処理部210およびデータ復元処理部220は、所定のオペレーティングシステムの下で、後述のデータ記録処理およびデータ復元処理を実行するためのコンピュータプログラムである。CPU110は、内部記憶装置200からこれらのコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、後述のデータ記録処理およびデータ復元処理を実現する。
【0035】
データ記録処理部210は、データの符号化を行う符号化処理部212と、プリンタ300を制御して印刷を実行させる印刷処理部214と、をモジュールとして含んでいる。また、データ復元処理部220は、スキャナ400を制御して画像等の読み取りを実行させる読み取り処理部222と、画像を構成するインクドットについての判別処理を行う判別処理部224と、データの復号を行う復号処理部226と、をモジュールとして含んでいる。これらの各部の機能の詳細については、後述のデータ記録処理およびデータ復元処理の説明において詳述する。なお、データ記録処理部210およびデータ復元処理部220に含まれる各モジュールは、データ記録処理部210およびデータ復元処理部220から独立した構成であるとしてもよい。
【0036】
内部記憶装置200には、また、対応テーブルCTが格納されている。対応テーブルCTは、デジタルデータを構成するビット列が取り得る複数の値と、プリンタ300による印刷に用いられるインク色とドットサイズとの組み合わせで特定される複数のドット種類と、の対応を定義するテーブルである。対応テーブルCTの詳細については後述する。
【0037】
プリンタ300は、インク滴を印刷媒体上に吹き付けてインクドットを形成することにより印刷を行うインクジェットプリンタである。本実施例のプリンタ300は、4色のインク(シアン(c)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K))による4つのドットサイズ(小さい順に「SIZE1」,「SIZE2」,「SIZE3」,「SIZE4」と表す。)のインクドットを用いて、印刷を行うことが可能である。
【0038】
スキャナ400は、印刷用紙等の印刷媒体上に形成された画像や文字を読み取り、読み取った画像等を表すデータを生成するイメージスキャナである。本実施例のスキャナ400は、プリンタ300が後述のデータ記録コードDRCを印刷する際の印刷解像度よりも細かい解像度で画像等の読み取りを行うことが可能なスキャナである。スキャナ400は、プリンタ300の上記印刷解像度の4倍以上細かい解像度で画像等の読み取りを行うことが可能であることが好ましい。
【0039】
図2は、本実施例のデータ記録・復元システム10によるデータ記録処理の流れを示すフローチャートである。本実施例のデータ記録処理は、デジタルデータを印刷媒体上に記録する処理である。
【0040】
ステップS110では、データ記録処理部210(図1)が、対象データを取得する。対象データは、印刷媒体上への記録の対象となるデジタルデータである。対象データは、任意のデジタルデータであり、例えば画像(静止画像や動画像)を表す画像データであってもよく、音声を表す音声データであってもよく、テキストを表すテキストデータであってもよい。データ記録処理部210は、インターフェイス部150を介して外部から対象データを取得するとしてもよいし、外部記憶装置140や内部記憶装置200に格納された対象データを取得するとしてもよい。
【0041】
ステップS120では、データ記録処理部210の符号化処理部212(図1)が、対象データの符号化を行う。対象データの符号化は、対象データを構成するビット列が取り得る複数の値のそれぞれを、プリンタ300における印刷に用いられるインク色とドットサイズとの組み合わせで特定されるドット種類に対応付けることにより、対象データを一連のドット種類を表すコードデータに変換する処理である。対象データの符号化は、ドット種類と対象データを構成するビット列が取り得る値との対応を定義する対応テーブルCT(図1)を用いて行われる。
【0042】
図3は、対応テーブルCTの一例を示す説明図である。図3に示すように、対応テーブルCTにおいて、4つのインク色(C,M,Y,K)のそれぞれは、固有の2ビットのビット列の値に対応付けられている。同様に、対応テーブルCTにおいて、4つのドットサイズ(SIZE1〜4)のそれぞれは、固有の2ビットのビット列の値に対応付けられている。なお、図3に示すように、本実施例に用いる対応テーブルCTは、ドットサイズが1段階異なる2つのドットサイズのそれぞれが、互いに1ビットのみ相違するビット列の値に対応付けられるようなテーブルとなっている。
【0043】
図4は、対象データの符号化方法の一例を示す説明図である。図4の最上段には、対象データを構成するビット列の一部を例示している。図4の例では、対象データは4ビットのビット列(以下「単位ビット列UBQ」と呼ぶ)毎に区切られ、各単位ビット列UBQは、対応テーブルCT(図3)に従い複数のドット種類の内の1つを表すコードデータに変換される。より詳細には、各単位ビット列UBQの上位2ビットがインク色に変換され、下位2ビットがドットサイズに変換される。例えば、「0110」という単位ビット列UBQは、上位2ビットの値が「01」であるためマゼンタ(M)に変換され、下位2ビットの値が「10」であるためSIZE4のドットサイズに変換される。従って、「0110」という値の単位ビット列UBQは、マゼンタのSIZE4のドット種類を表すコードデータに変換される。同様に、例えば「1001」という値の単位ビット列UBQは、イエローのSIZE2のドット種類を表すコードデータに変換され、「0011」という値の単位ビット列UBQは、シアンのSIZE3のドット種類を表すコードデータに変換される。このような変換を対象データを構成するすべての単位ビット列UBQに対して行うことにより、対象データを一連のドット種類を表すコードデータに符号化することができる。
【0044】
なお、符号化処理部212による対象データの符号化は、誤り訂正可能な符号を用いて行うことが好ましい。誤り訂正可能な符号としては、例えば、リードソロモン符号がある。
【0045】
ステップS130(図2)では、印刷処理部214(図1)が、ステップS120における符号化により生成された一連のドット種類を表すコードデータに基づき、データ記録コードDRCの印刷を行う。図5は、データ記録コードDRCの一例を示す説明図である。図5には、印刷媒体PM上に印刷されたデータ記録コードDRCの一部を拡大して示している。図5に示すように、データ記録コードDRCは、印刷画素PX(図5において破線で囲んで示す)のそれぞれに形成された複数のドット種類のインクドットDによって構成された視覚コード(画像)である。印刷処理部214は、プリンタ300を制御して、一連のドット種類を表すコードデータに従いインクドットDを順番に印刷媒体PM上に形成させることにより、データ記録コードDRCの印刷を行う。
【0046】
なお、データ記録コードDRCは、後述のデータ復元処理の際の位置決めのための図示しない基準マークを含んでいる。基準マークは、例えば、対象データの記録に直接使用しないインク色やドットサイズのインクドットを用いて印刷される。また、ステップS130では、印刷媒体PM上に、ステップS120における符号化に用いた対応テーブルCTを特定するための機械読み取り可能な対応テーブル識別子CTIも印刷される(図5)。
【0047】
以上説明したデータ記録処理により、対象データが印刷媒体PM上にデータ記録コードDRCという形で記録される。
【0048】
図6は、本実施例のデータ記録・復元システム10によるデータ復元処理の流れを示すフローチャートである。本実施例のデータ復元処理は、印刷媒体PM上に記録された対象データを復元する処理である。
【0049】
ステップS210では、読み取り処理部222(図1)が、スキャナ400を制御して、印刷媒体PM上に印刷されたデータ記録コードDRCおよび対応テーブル識別子CTI(図5参照)を読み取る。本実施例では、読み取り処理部222によるデータ記録コードDRCの読み取りは、プリンタ300がデータ記録コードDRC(図5)を印刷する際の印刷解像度よりも細かい解像度で行われる。読み取り処理部222によるデータ記録コードDRCの読み取りは、プリンタ300の上記印刷解像度の4倍以上細かい解像度で行われることが好ましい。読み取り処理部222による読み取りにより生成された読み取りデータは、内部記憶装置200内の所定の領域に格納される。
【0050】
ステップS220では、判別処理部224(図1)が、データ記録コードDRCの読み取りにより生成された読み取りデータを用いてドットの判別を行い、一連の複数のドット種類を表すコードデータを生成する。ドットの判別は、読み取りデータからデータ記録コードDRCを構成する複数のインクドットDを検出すると共に、検出されたインクドットDのそれぞれについてドット種類(インク色およびドットサイズ)を判別する処理である。判別処理部224は、まずデータ記録コードDRCに含まれる基準マークを検出して位置決めを行い、その後、データ記録コードDRCの印刷画素PX毎に、インクドットDのインク色およびサイズを判別する。
【0051】
ステップS220では、また、判別処理部224が、対応テーブル識別子CTIの読み取りにより生成された読み取りデータに基づき、対応テーブルCTの判別を行う。対応テーブルCTの判別は、対応テーブル識別子CTIを判別することにより、データ記録処理に使用された対応テーブルCTを特定する処理である。
【0052】
ステップS230では、復号処理部226(図1)が、ステップS220で生成されたコードデータの表す一連の複数のドット種類のそれぞれを、ステップS220で特定された対応テーブルCTを用いてビット列が取り得る値に対応付けることにより、対象データの復元を行う。この処理は、データ記録処理における対象データの符号化(図2のステップS120)と逆の処理である。なお、データ記録処理における対象データの符号化が誤り訂正可能な符号を用いて行われている場合には、復号処理部226による対象データの復元の際に誤り訂正が行われる。
【0053】
以上説明したデータ復元処理により、印刷媒体PM上にデータ記録コードDRCという形で記録された対象データを復元することができる。
【0054】
以上説明したように、本実施例のデータ記録・復元システム10では、対象データを構成する単位ビット列UBQの取り得る値のそれぞれを対応テーブルCTを用いてドット種類に対応付けることにより、対象データを一連のドット種類を表すコードデータに変換する符号化が行われる。そして、生成されたコードデータの表す一連のドット種類のインクドットDを印刷媒体PM上に形成してデータ記録コードDRCの印刷を行うことにより、対象データを印刷媒体PM上に記録することができる。このとき、インク色とドットサイズとの組み合わせで特定されるドット種類自体に所定のビット列の値が対応付けられるため、対象データの記録のために要する印刷媒体PM上の領域(データ記録コードDRCの面積)をより小さくすることができる。すなわち、本実施例のデータ記録・復元システム10では、高密度で対象データを印刷媒体PM上に記録することができると共に、高密度で印刷媒体PM上に記録された対象データを復元することができる。
【0055】
また、図5に示すように、データ記録コードDRCにおいては、印刷画素PX毎に1つのインクドットDのみが形成されており、複数のインクドットDが重なって形成されることがない。そのため、データ復元処理の際に、にじみ等の影響によって色の判別が困難となることがなく、印刷媒体PM上に記録された対象データを精度良く復元することが可能である。
【0056】
また、本実施例のデータ記録・復元システム10では、データ記録処理の際に、対象データの符号化に用いられる対応テーブルCTを特定する対応テーブル識別子CTIが印刷媒体PM上に印刷される。そして、データ復元処理の際に、印刷媒体PM上に印刷された対応テーブル識別子CTIに基づき、対象データの復元に用いられる対応テーブルCTが特定される。そのため、本実施例のデータ記録・復元システム10では、データ復元処理の際に、適切な対応テーブルCTを用いて正確に対象データを復元することができる。
【0057】
また、本実施例のデータ記録・復元システム10において、データ記録処理の際に、誤り訂正可能な符号を用いて対象データの符号化が行われた場合には、データ復元処理の際に誤り訂正が行われる。この場合には、データ復元処理のドット判別(図6のステップS220)において判別エラーが発生した場合にも、当該エラーを訂正して対象データを正確に復元することが可能である。
【0058】
なお、データ復元処理のドット判別(図6のステップS220)における判別エラーは、インク色の判別より、ドットサイズの判別において比較的発生しやすいと考えられる。本実施例に用いられる対応テーブルCTは、図3に示すように、ドットサイズが1段階異なる2つのドットサイズのそれぞれが、互いに1ビットのみ相違するビット列の値に対応付けられるようなテーブルとなっている。そのため、仮にドットサイズの判別において、誤ってドットサイズを1段階異なるサイズであると判別してしまった場合でも、発生する誤りは1ビットのみである。従って、本実施例に用いられる対応テーブルCTでは、誤り訂正の精度を向上させることができる。
【0059】
B.第2実施例:
図7は、第2実施例におけるデータ記録処理およびデータ復元処理に用いられる対応テーブルCTの一例を示す説明図である。第2実施例におけるデータ記録処理およびデータ復元処理は、用いられる対応テーブルCTが第1実施例におけるデータ記録処理およびデータ復元処理(図2および図6)とは異なるのみである。
【0060】
第2実施例におけるデータ記録処理およびデータ復元処理に用いられる対応テーブルCTは、ドット種類毎に固有の4ビットのビット列の値が対応付けられている。この点で、インク色毎に固有の2ビットのビット列の値が対応付けられていると共に、ドットサイズ毎に固有の2ビットのビット列の値が対応付けられている第1実施例の対応テーブルCTとは異なっている。
【0061】
例えば、図7に示すように、第2実施例の対応テーブルCTにおいては、シアンのSIZE1のドット種類には「0000」という値のビット列が対応付けられ、シアンのSIZE2のドット種類には「0001」という値のビット列が対応付けられている。なお、図7に示す対応テーブルCTには、ドット種類毎に一意のIDと、各ドット種類に対応付けられたビット列の値の16進数表示が含まれている。
【0062】
図7に示す対応テーブルCTでは、印刷画素PXにドットを形成しない「なし」を含む16種類のドット種類のそれぞれに固有のビット列の値が対応付けられている。このような対応テーブルCTを用いることにより、第1実施例と同様に、4ビットの単位ビット列UBQ(図4参照)毎に、ドット種類への符号化を行うことができる。
【0063】
なお、図7に示す対応テーブルCTでは、例えば、シアン(C)のSIZE4のドット種類やイエロー(Y)のSIZE1および2のドット種類のように、使用されないドット種類を含んでいる。これは、データ復元処理中のドット判別(図6のステップS220)において判別エラーが発生する可能性の高いドット種類を使用しないことにより、ドット判別の精度を向上させるためである。判別エラーが発生する可能性の高いドット種類は、例えば、イエロー(Y)やマゼンタ(M)といった比較的濃度の小さいインク色の小さいドットや、シアン(C)やレッド(R)といった比較的濃度の大きいインク色の大きいドット等である。このように、第2実施例のデータ記録処理およびデータ復元処理では、ドット判別において判別エラーが発生する可能性の高いドット種類を使用しない対応テーブルCTを採用することによって、印刷媒体PM上に記録された対象データを精度良く復元することができる。
【0064】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0065】
C1.変形例1:
上記各実施例におけるデータ記録・復元システム10(図1)の構成はあくまで一例であり、データ記録・復元システム10の構成を他の構成とすることも可能である。例えば、データ記録・復元システム10は、スキャナ400の代わりにデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラを備えるとしてもよい。この場合には、データ復元処理のデータ記録コードDRCおよび対応テーブル識別子CTIの読み取り(図6のステップS210)は、デジタルスチルカメラまたはデジタルビデオカメラを用いて実行される。
【0066】
また、上記各実施例では、データ記録処理およびデータ復元処理の両方がデータ記録・復元システム10により実行されるとしているが、データ記録処理およびデータ復元処理のそれぞれが別のシステムにより実行されるとしてもよい。すなわち、データ記録処理はデータ記録処理部210(図1)およびプリンタ300を備えるデータ記録システムにより実行され、データ復元処理はデータ復元処理部220およびスキャナ400を備えるデータ復元システムにより実行されるとしてもよい。
【0067】
また、上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0068】
C2.変形例2:
上記各実施例では、データ記録処理(図2)のステップS130において、印刷媒体PM上にデータ記録コードDRCと共に対応テーブル識別子CTIも印刷するとしているが(図5参照)、対応テーブル識別子CTIの代わりに対応テーブルCTの内容そのものを示す機械読み取り可能な情報を印刷媒体PM上に印刷するとしてもよい。このようにすれば、データ復元処理の際に、必要な情報をすべて印刷媒体PM上から取得できる。
【0069】
C3.変形例3:
上記各実施例におけるプリンタ300に用いるドット種類は、4つのインク色および4つのドットサイズとしているが、ドット種類はこれに限られるものではない。ドット種類は、インク色とドットサイズの組み合わせで特定されるものとして、インク色の数やドットサイズの数を上記各実施例と異なる構成としてもよい。
【0070】
C4.変形例4:
また、ドット種類をドットサイズだけで特定されるものとすることもできる。第1実施例では、単位ビット列の下位2ビットを変換するための対応づけとして、4つのドットサイズ(SIZE1〜4)のそれぞれは、固有の2ビットのビット列の値に対応付ける構成としていたが、この対応づけの構成をそのまま対象データ全体の変換に用いる構成とすることができる。
【0071】
図8は、変形例4における対象データの符号化方法の一例を示す説明図である。図8の最上段には、対象データを構成するビット列の一部を例示している。図8の例では、対象データは2ビットのビット列(以下「単位ビット列UBQX」と呼ぶ)毎に区切られ、各単位ビット列UBQXは、対応テーブル(図3のドットサイズ部分)に従い複数のドット種類、すなわち複数のドットサイズの内の1つを表すコードデータに変換される。例えば、「10」という単位ビット列UBQXはSIZE4のドットサイズに変換される。従って、「10」という値の単位ビット列UBQXは、SIZE4のドット種類を表すコードデータに変換される。同様に、例えば「01」という値の単位ビット列UBQXは、SIZE2のドット種類を表すコードデータに変換され、「11」という値の単位ビット列UBQXは、SIZE3のドット種類を表すコードデータに変換される。このような変換を対象データを構成するすべての単位ビット列UBQXに対して行うことにより、対象データを一連のドット種類を表すコードデータに符号化することができる。
【0072】
上記変形例4におけるドット種類は、4つのドットサイズとしているが、ドットサイズの数を4以外の数とする構成としてもよい。さらには、ドット種類をドットサイズと他のドットを規定するパラメータ(例えば、形状)との組み合わせで特定されるものとしてもよい。
【0073】
C5.変形例5:
また、プリンタ300の印刷に用いられるインクは、染料インクであってもよく、顔料インクであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1実施例としてのデータ記録・復元システムの構成を概略的に示す説明図である。
【図2】データ記録・復元システム10によるデータ記録処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】対応テーブルCTの一例を示す説明図である。
【図4】対象データの符号化方法の一例を示す説明図である。
【図5】データ記録コードDRCの一例を示す説明図である。
【図6】データ記録・復元システム10によるデータ復元処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】第2実施例におけるデータ記録処理およびデータ復元処理に用いられる対応テーブルCTの一例を示す説明図である。
【図8】変形例4における対象データの符号化方法の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0075】
10…データ記録・復元システム
100…コンピュータ
110…CPU
120…表示部
130…操作部
140…外部記憶装置
150…インターフェイス部
160…バス
200…内部記憶装置
210…データ記録処理部
212…符号化処理部
214…印刷処理部
220…データ復元処理部
222…読み取り処理部
224…判別処理部
226…復号処理部
300…プリンタ
400…スキャナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルデータを印刷媒体上に記録する装置であって、
前記デジタルデータを構成するビット列が取り得る複数の値のそれぞれを少なくともドットサイズで特定されるドット種類に対応付けることにより、前記デジタルデータを一連のドット種類を表すコードデータに変換する符号化部と、
前記コードデータの表す一連のドット種類のドットを前記印刷媒体上に形成することにより、前記デジタルデータを記録するための機械読み取り可能な視覚コードを印刷する印刷部と、を備える、装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置であって、
前記ドット種類は、インク色と前記ドットサイズとの組み合わせで特定されるものである、装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の装置であって、
前記印刷部は、前記デジタルデータを構成するビット列が取り得る複数の値と前記ドット種類との対応を定義する機械読み取り可能な対応情報を、前記印刷媒体上に印刷する、装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の装置であって、
前記印刷部は、前記デジタルデータを構成するビット列が取り得る複数の値と前記ドット種類との対応を定義する所定の対応テーブルを特定する機械読み取り可能なテーブル特定情報を、前記印刷媒体上に印刷する、装置。
【請求項5】
請求項2記載の装置であって、
前記印刷部は、複数段階のドットサイズのドットを形成可能であり、
前記符号化部は、同一のインク色でドットサイズが1段階異なる2つのドット種類のそれぞれに互いに1ビットのみ相違するビット列の値が対応付けられるように、前記デジタルデータの前記コードデータへの変換を行う、装置。
【請求項6】
印刷媒体上に記録されたデジタルデータを復元する装置であって、
前記印刷媒体上に印刷された前記デジタルデータを記録するための機械読み取り可能な視覚コードを読み取る読み取り部と、
読み取られた前記視覚コードを構成する複数のインクドットのそれぞれについて、少なくともドットサイズで特定されるドット種類を判別することにより、一連のドット種類を表すコードデータを生成する判別部と、
前記コードデータの表す一連のドット種類のそれぞれをビット列が取り得る値に対応付けることにより、前記コードデータを前記デジタルデータに変換する復号部と、を備える、装置。
【請求項7】
請求項6記載の装置であって、
前記ドット種類は、インク色と前記ドットサイズとの組み合わせで特定されるものである、装置。
【請求項8】
請求項6または7記載の装置であって、
前記読み取り部は、前記視覚コードの印刷解像度よりも細かい解像度で、前記視覚コードの読み取りを行う、装置。
【請求項9】
請求項6または7記載の装置であって、
前記印刷媒体には、前記デジタルデータを構成するビット列が取り得る複数の値と前記ドット種類との対応を定義する機械読み取り可能な対応情報が印刷されており、
前記読み取り部は、前記対応情報を読み取り、
前記復号部は、読み取られた前記対応情報を用いて、前記コードデータの前記デジタルデータへの変換を行う、装置。
【請求項10】
請求項6または7記載の装置であって、
前記印刷媒体には、前記デジタルデータを構成するビット列が取り得る複数の値と前記ドット種類との対応を定義する所定の対応テーブルを特定する機械読み取り可能なテーブル特定情報が印刷されており、
前記読み取り部は、前記テーブル特定情報を読み取り、
前記復号部は、読み取られた前記テーブル特定情報により特定された前記所定の対応テーブルを用いて、前記コードデータの前記デジタルデータへの変換を行う、装置。
【請求項11】
デジタルデータを印刷媒体上に記録する方法であって、
(a)前記デジタルデータを構成するビット列が取り得る複数の値のそれぞれを少なくともドットサイズで特定されるドット種類に対応付けることにより、前記デジタルデータを一連のドット種類を表すコードデータに変換する工程と、
(b)前記コードデータの表す一連のドット種類のドットを前記印刷媒体上に形成することにより、前記デジタルデータを記録するための機械読み取り可能な視覚コードを印刷する工程と、を備える、方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法であって、
前記ドット種類は、インク色と前記ドットサイズとの組み合わせで特定されるものである、方法。
【請求項13】
デジタルデータを印刷媒体上に記録するためのコンピュータプログラムであって、
前記デジタルデータを構成するビット列が取り得る複数の値のそれぞれを少なくともドットサイズで特定されるドット種類に対応付けることにより、前記デジタルデータを一連のドット種類を表すコードデータに変換する符号化機能と、
前記コードデータの表す一連のドット種類のドットを前記印刷媒体上に形成することにより、前記デジタルデータを記録するための機械読み取り可能な視覚コードを印刷する印刷機能と、を、コンピュータに実現させる、コンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13記載のコンピュータプログラムであって、
前記ドット種類は、インク色と前記ドットサイズとの組み合わせで特定されるものである、コンピュータプログラム。
【請求項15】
印刷媒体上に記録されたデジタルデータを復元する方法であって、
(a)前記印刷媒体上に印刷された前記デジタルデータを記録するための機械読み取り可能な視覚コードを読み取る工程と、
(b)読み取られた前記視覚コードを構成する複数のインクドットのそれぞれについて、少なくともドットサイズで特定されるドット種類を判別することにより、一連のドット種類を表すコードデータを生成する工程と、
(c)前記コードデータの表す一連のドット種類のそれぞれをビット列が取り得る値に対応付けることにより、前記コードデータを前記デジタルデータに変換する工程と、を備える、方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法であって、
前記ドット種類は、インク色と前記ドットサイズとの組み合わせで特定されるものである、方法。
【請求項17】
印刷媒体上に記録されたデジタルデータを復元するためのコンピュータプログラムであって、
前記印刷媒体上に印刷された前記デジタルデータを記録するための機械読み取り可能な視覚コードを読み取る読み取り機能と、
読み取られた前記視覚コードを構成する複数のインクドットのそれぞれについて、少なくともドットサイズで特定されるドット種類を判別することにより、一連のドット種類を表すコードデータを生成する判別機能と、
前記コードデータの表す一連のドット種類のそれぞれをビット列が取り得る値に対応付けることにより、前記コードデータを前記デジタルデータに変換する復号機能と、を、コンピュータに実現させる、コンピュータプログラム。
【請求項18】
請求項17記載のコンピュータプログラムであって、
前記ドット種類は、インク色と前記ドットサイズとの組み合わせで特定されるものである、コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−157127(P2007−157127A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306451(P2006−306451)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】