説明

印刷方法および大豆油誘導体含有エネルギー硬化性新聞インク

大豆油などの天然油のアクリレート官能基誘導体と、1以上のさらなるアクリレート官能基物質とを含有するエネルギー硬化性インク組成物は、低温硬化リソグラフ印刷機での印刷に好適であり、印刷機上に配設された化学線照射源に曝すことによって硬化される。印刷機は、吸収性のロール紙への低温硬化性インクの印刷と、非吸収性または半吸収性のロール紙へのエネルギー硬化性インクの印刷とに使用することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、第1の側面においてはリソグラフ印刷法に関し、第2の側面においてはエネルギー硬化性インク組成物および方法に関する。
【0002】
発明の背景
新聞は、ほとんど、吸収性の用紙に浸透することによって硬化する低温硬化性インクを用いて、リソグラフ法で印刷されている。リソグラフ低温硬化印刷機は、通常、CMYK印刷のための4つの積層ユニットを有するたて型輪転印刷機として構成される。ユニット印刷機も使用される。各色はそれぞれ前の色に重なり、順に用紙に浸み込んで、硬化して印刷物を形成する。
【0003】
毎日の新聞を印刷する印刷機は、そのために相当な印刷時間を充てるが、より小さな町および市のために、1週間に1回または2週間に1回発行される新聞を印刷する印刷機には、かなりの稼動停止時間が存在する。印刷機は高額の投資の典型であり、利用可能な時間を埋めるに足るだけの業務があることが望ましい。したがって、印刷機は、折込み物、表紙およびカラー広告などの他の業務を求めてもよい。しかし、これらの印刷業務のほとんどは、より良好な見た目、またはより良好な印刷品質の印刷物を提供するために、表面処理された用紙に印刷する熱硬化装置を必要とする。低温硬化処理は、表面処理されていない(したがって吸収性の)用紙にのみ印刷することができる。
【0004】
熱硬化性インクを印刷するように印刷機を変更するには、加えるべき重大な追加装置、特に、オーブンおよび溶媒の回収または焼却の装置が必要になる。このためには、多くの出費が加わり、また、多くの追加空間が必要になる。紫外線硬化性(UV硬化性)リソグラフインクが、次の色の付着の前にインクを硬化させるために、各印刷ユニットの後にUVランプを備える標準的なインライン印刷機を用いて印刷されてきた。しかし、各印刷ユニットの後にインクを硬化させるようにたて型輪転印刷機を変更することは、たとえ可能であったとしても、困難であり、費用を要する。
【0005】
発明の要約
本発明は、天然油のアクリレート官能基誘導体、特に、大豆油のアクリレート官能基誘導体、および、1以上のさらなるアクリレート官能基物質を含有するエネルギー硬化性インク組成物を提供する。種々の実施形態において、組成物は大豆成分、少なくとも7重量%の、特に大豆の、天然油を有する。インク組成物は、電子線照射によって硬化させるか、インクにさらに光重合開始剤が含まれる場合は、紫外線(UV)照射によって硬化させることができる。本発明のインクは、天然物材料である、食物源からの天然油または大豆油を使用する。このインクは、改善された特性、特に優れた色濃度耐久性、インク/水バランス、および滑らかさを提供する。
【0006】
本発明はまた、リソグラフ印刷機での印刷の一方法を提供し、この方法においては、低温硬化性インクが吸収性の基材に印刷され、その後、天然油のアクリレート官能基誘導体、特に大豆油のアクリレート官能基誘導体と、1以上のアクリレート官能基オリゴマーとを含有するエネルギー硬化性インクが非吸収性または半吸収性の基材に印刷されて、化学線照射によって硬化される。化学線照射は、電子線照射、または、エネルギー硬化性インクに光重合開始剤が含まれる場合は、紫外線照射である。種々の実施形態において、オリゴマーは、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、およびこれらの組合せから、選択することができる。
【0007】
本発明は、また、化学線照射源、特に電子線照射源または紫外線照射源を備える新聞低温硬化リソグラフ印刷機を提供する。この印刷機は、大豆油のアクリレート官能基誘導体と、1以上のアクリレート官能基オリゴマーとを含有するエネルギー硬化性インク組成物を印刷するのに適している。
【0008】
一実施形態において、本発明は、印刷機ユニットから出るロール紙と、その印刷機によって印刷されるエネルギー硬化性インクとに、化学線照射を当てるための、電子線照射源または紫外線照射源などの化学線照射源を備えたたて型輪転印刷機を提供する。
【0009】
本明細書で使用する不定冠詞(「a」および「an」)は、「少なくとも1つ」の要素が存在すること、可能なときには、そのような要素が複数存在してもよいことを示す。数値に用いられるときの「約」は、計算または測定が、その数値中の僅かな不正確さを許容すること(その数値の厳密さに対して接近の余地があること;近似的にまたは合理的にその数値に近いこと;おおよそであること)を示す。何らかの理由で、「約」によってもたらされる不正確さが、この技術分野においてこの普通の意味を有するとどうしても理解されない場合には、明細書において使用する「約」は、その数値に最大5%の変動があり得ることを示す。数値範囲は、両端値およびその範囲内の各数値のみならず、その範囲内の任意の2つの数値を両端値とする全ての内包範囲をも開示すると、理解すべきである。
【0010】
好ましい実施形態の詳細な説明
以下の好ましい実施形態の説明は、本来単なる例示であり、本発明、その応用、または使用を限定することを意図するものではない。
【0011】
エネルギー硬化性インク組成物は、天然に産する油のアクリレート官能基誘導体(「油アクリレート」)、および、1以上のさらなるアクリレート官能基物質を含有する。天然に産する油の例には、亜麻仁油、キリ油、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ピーナツ油および大豆油が含まれる。油アクリレートの組合せを使用してもよい。種々の実施形態では、インク組成物は、約7重量%〜約12重量%の油アクリレートを含有する。
【0012】
特に好ましい実施形態においては、エネルギー硬化性インク組成物は、大豆油のアクリレート官能基誘導体(「大豆アクリレート」)および1以上のさらなるアクリレート官能基物質を含有する。種々の実施形態において、インク組成物は、好ましくは少なくとも約7重量%の大豆アクリレートを、より好ましくは少なくとも約8重量%の大豆アクリレートを、さらに好ましくは少なくとも約9重量%の大豆アクリレートを含有する。インク組成物は、好ましくは約12重量%までの大豆アクリレートを、より好ましくは約10重量%までの大豆アクリレートを含有する。
【0013】
大豆油または他の天然油のアクリレート官能基誘導体は、油成分にアクリル酸またはアクリル酸の官能基誘導体と反応する官能基を付加することによって、種々の手段によって調製することができる。ある実施形態では、油は不飽和油であり、エポキシ化され、次いでアクリル酸でエステル化されて油アクリレートとなる。好ましい実施形態においては、エポキシ化された大豆油は、アクリル酸と反応させられて、エポキシ化大豆油アクリレートとして知られるβ−ヒドロキシアクリレートエステルになる。エポキシ化された大豆油およびそのアクリレートは、共に市販されている。大豆油などのアクリル化脂肪油の調製は、Hodakowskiらの米国特許第4119640号明細書に記載されており、該特許は参照によって本明細書に組み込まれる。アクリレート官能基大豆油誘導体を合成する他の方法、たとえば、アクリル酸とのエステル交換、またはエポキシ化大豆油のt−ブチルアミノエチル アクリレートとの反応なども、実施可能である。
【0014】
油アクリレートに加え、本発明のエネルギー硬化性リソグラフインクはまた、1以上のアクリレート官能基物質を含有し、その物質はアクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーであってよい。好ましくは、インクは少なくとも1以上のアクリレートオリゴマーを含有する。アクリレートモノマーおよびオリゴマーは、リソグラフ印刷に適する粘度を示すように選択され、配分されるべきである。一般に、アクリレート物質はメタクリレートまたはビニル物質よりも好ましい。アクリレート物質がより速い硬化速度を有するからである。ただし、組成物は、メタクリレート官能基モノマーおよび/またはビニル官能基モノマーも含有してかまわない。
【0015】
インク組成物中のモノマーは、モノエチレン官能基性またはポリエチレン官能基性でよく、好ましくは、二官能基性、三官能基性および/または四官能基性モノマーが含まれる。アクリレートモノマーの適切な例は、これらに限定されるわけではないが、ネオペンチルグリコール ジアクリレート、ペンタエリトリトール テトラアクリレート、トリメチロールプロパン トリアクリレート、ヘキサンジオール ジアクリレート、イソボルニル アクリレート、ビスフェノールAエポキシ ジアクリレート、トリエチレングリコール ジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールA ジアクリレート、トリプロピレングリコール ジアクリレート、エトキシ化ヘキサンジオール ジアクリレート、プロポキシル化グリセリル トリアクリレートなどである。これらを組合せて使用してもよい。
【0016】
アクリレートオリゴマーの適切な例は、これらに限定されるわけではないが、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、およびウレタンアクリレートである。このようなオリゴマーは周知であり、多くの文献に詳細に記述されている。多くが市販されている。一般に、アクリレート官能基オリゴマーは、アクリル酸などのアクリレートモノマーに対して反応性の1以上の官能基を有する化合物つまりオリゴマー物質を調製することによって、形成することができる。アクリレートオリゴマーは、通常、500〜5000の数平均分子量を有する。
【0017】
ポリエステルアクリレートは、たとえば、アクリル酸および/またはアクリル酸のヒドロキシアルキルエステルを反応物質として用いるポリエステルオリゴマーの合成によって、調製することができる。しかしながら、好ましくは、ポリエステルアクリレートはヒドロキシ官能基ポリエステルのアクリル化によって調製する。未反応のアクリル酸は、洗浄、希釈、または、好ましくは、たとえばトリフェニルホスフィンなどの適切な触媒を用いた、等量のモノエポキシドもしくはジエポキシド化合物との反応によって、生成物から除去してもよい。
【0018】
ポリエーテルアクリレートは、ヒドロキシ官能基ポリエーテルをアクリル酸でエステル化することによって調製することができる。ヒドロキシ官能基ポリエーテルは、二水酸基性および/またはより高い多水酸基性アルコールを、周知の方法に従って、所望量のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドと反応させることによって調製することができる。テトラヒドロフランまたはブチレンオキシドの重合生成物を使用することも可能である。
【0019】
エポキシアクリレートは、アクリル酸を、エポキシ樹脂たとえばビスフェノールA系のエポキシ樹脂との付加反応に付することによって、調製することができる。
【0020】
ポリウレタンアクリレートは、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートを、ジオール、ポリオール、ジアミン、ポリアミン(これは尿素基を与える)および/またはアルカノールアミンの群から選ばれる1以上の鎖延長剤と反応させ、次いで、残余の遊離イソシアネート基の一部または全部を、少なくとも1種のヒドロキシアルキル アクリレートまたはアミノアルキル アクリレートと反応させることによって、得ることができる。まず、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートのイソシアネート基の一部を、少なくとも1種のヒドロキシアルキル アクリレートと反応させ、次いで、残余のイソシアネート基を鎖延長剤と反応させることによって、ポリウレタンアクリレートを調製することも可能である。
【0021】
インクは、さらに、メタクリレートモノマーおよびオリゴマーならびにビニルモノマーおよびオリゴマーなどの、エチレン様不飽和反応物質を含有してもよい。含有する場合、これらのさらなる物質は、反応性が低いため、通常少量で使用される。
【0022】
所望の色を提供する1以上の顔料をインクに含有させる。適切な顔料の例は、これらに限定されるわけではないが、カーボンブラック、二酸化チタン、黒色酸化鉄などの無機顔料、ならびに、リソールレッド(たとえば、カルシウムリソールレッド、バリウムリソールレッド)、ルビンレッドならびにナフトールレッド、オレンジおよびブラウンなどのアゾ顔料、ジアリライドイエローなどのモノアリライドおよびジアリライド顔料、フタロシアニンブルーおよびグリーン顔料、アゾメチン顔料、メチン顔料、アントラキノン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインディゴ顔料、イミノイソインドリン顔料、イミノイソインドリノン顔料、キナクリドンレッドおよびバイオレットなどのキナクリドン顔料、フラバントロン顔料、インダントロン顔料、アントラピリミジン顔料、カルバゾールバイオレットなどのカルバゾール顔料、ベンズイミダゾロンイエロー、トリルオレンジ、ナフトールオレンジ、ならびに、キノフタロン顔料などの有機顔料である。これらの顔料は単独で使用してもよく、組合わせて使用してもよい。
【0023】
インクは、この技術分野で公知の所望の添加物を含有してもよい。他の添加物の具体例は、これらに限定されるわけではないが、界面活性剤、湿潤剤、ワックス、乳化剤、分散剤、および酸化防止剤、固化防止剤、ならびに、他の流動性調整剤、光沢増強剤、および沈降防止剤である。含有する場合、添加物を、通常、少なくともインク組成物の約0.001%の量で含有し、インク組成物の約7重量%以上の量で含有してもよい。
【0024】
適用されたインクは、化学線照射で硬化される。インクがさらに光重合開始剤を含有する場合、インクは、紫外線(UV)照射によって硬化させることができる。酸化鉄またはガリウムまたはバナジウムをドープした水銀ランプおよび塩化キセノンランプなどの、種々のUV光源が利用可能である。電子線源もまた好ましい。
【0025】
適切な光重合開始剤の例は、これらに限定されるわけではないが、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン、たとえば1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンまたは2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパノンなどのアセトフェノン誘導体、ジアルコキシアセトフェノン、たとえば(4-モルホリノ-ベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジ-メチルアミノ-プロパンまたは(4-メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノ-エタンなどのα-ヒドロキシ-またはα-アミノ-アセトフェノン、4-アロイル−1,3-ジオキソラン、たとえば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンなどのベンゾインアルキルエーテルおよびベンジルケタール、たとえば2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシドなどのモノアシルホスフィンオキシド、たとえばビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチル-ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-(2-メチルプロパ-1-イル)-ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニル-ホスフィンオキシドなどのビスアシルホスフィンオキシド、ならびに、トリスアシルホスフィンオキシドである。ある場合には、2以上の光重合開始剤の混合物を使用することが有利であり、たとえば、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチル-ホスフィンオキシドまたはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシドと、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトンまたはヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパノンまたは2-メトキシ-1-フェニル-エタン-1,2-ジオンと、チオキサントンとの混合物を使用する。1または複数の光重合開始剤は、インクの約4重量%〜約20重量%、好ましくは、約5重量%〜約10重量%の量で含めることができる。
【0026】
エネルギー硬化性インクを紫外線照射によって硬化させるとき、1または複数の光重合開始剤と共に、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジル(ジベンゾイル)、ジフェニルジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジアセチル、アゾビスイソブチロニトリル、2-メチル-アントラキノン、2-エチル-アントラキノン、または2-t-ブチル-アントラキノンなどの光増感剤を加えることによって、硬化時間を短縮することが可能である。光増感剤は、好ましくは、組成物の重量に基づき最大で5重量%含有させてよい。
【0027】
本発明のインクは、好ましくは、インクを硬化させるための化学線照射源が増設された低温硬化印刷機を用いて、基材にリソグラフ印刷される。適切な基材には、たとえば、表面処理された紙および表面処理されていない紙が含まれる。したがって、印刷機は、新聞インクで新聞を印刷するなどの低温硬化印刷業務の印刷に使用し、次いで、本発明のエネルギー硬化性大豆油含有インクを用いて表面処理された用紙に印刷するために使用することができる。インクを硬化させるための化学線照射源は、印刷機へのかなり廉価で小型の付加物である。種々の好ましい実施形態においては、少なくとも1つのUVランプが、基材に印刷された後のエネルギー硬化性インクを硬化させる位置に設置される。好ましくは、少なくとも1つの化学線照射源(好ましくはUVランプ)が、ロール紙の両側それぞれに設置される。
【0028】
低温硬化性インクをロール紙に印刷するリソグラフ印刷装置はたて型輪転印刷機であり、また、フォーハイタワー、四重積層または4ユニット積層印刷機とも呼ばれる。化学線照射源は、印刷ユニットから出るロール紙に化学線照射を当てるように搭載される。好ましくは、2つの化学線照射源を搭載し、印刷ユニットから出るロール紙の両側それぞれに1つずつ配置する。本発明の処理においては、ロール紙はたて型輪転印刷機に入り、(カラー印刷の処理のための)4つの印刷ユニットを通って印刷機から出て、化学線照射源の傍らを通る。印刷機は、吸収性のロール基材に印刷される低温硬化性リソグラフインク(化学線照射を必要としない)の印刷と、印刷されたインクが搭載照射源からの化学線照射によって硬化される、非吸収性または半吸収性の基材へのエネルギー硬化性インクの印刷の、双方に使用される。照射硬化性インクは、好ましくは油アクリレート、より好ましくは大豆油アクリレートから成るものである。本発明のインクは、当然、この用途に適するが、他のエネルギー硬化性リソグラフインクもまた使用される。印刷機は、低温硬化性インクの印刷と、エネルギー硬化性インクの印刷との間で、徹底的に洗浄されるべきである。照射硬化性インクを印刷するときは、弱酸性の噴水溶液が好ましく使用される。
【0029】
図面を参照すると、4つの印刷ユニットを有するたて型輪転印刷機が示されている。個々の印刷ユニット110は、4つの処理色のうちの1色のインクを施す。ロール紙140は、印刷機のロール紙導入点130にて下方から印刷機100に入り、処理色を印刷する各ユニットを通って、印刷機100の上方から出る。印刷機100から出た後、印刷されたロール紙は、図中UVランプとして示されている化学線照射源120の間を通る。ロール紙140にエネルギー硬化性インクが印刷されるときは、照射源120が駆動され、化学線照射をロール紙の印刷された表面に当ててインクを硬化させる。
【0030】
好ましい実施形態においては、本発明の輪転印刷機は、UV発生源を備える。窒素、二酸化炭素または他の不活性ガスが、線源とロール紙との間に供給される。照射源は、通常、線源を取り囲むとともに、化学線照射をロール紙に当てるためのハウジングを含む。不活性ガスはハウジングに導くことができ、本質的に線源とロール紙との間に捕捉される。不活性雰囲気を維持するために、不活性ガスは漏出に応じて補給される。このように構成された印刷機を使用する処理においては、インクはかなり少量の光重合開始剤を含有すればよい。たとえば、光重合開始剤の量は、酸素含有雰囲気で硬化されるインクと比べて、最大80重量%低減することができる。たとえば、1〜3重量%の光重合開始剤を含有する黒色インクが、これらの条件下で優れた硬化印刷物を提供する。
【0031】
本発明の処理では、リソグラフ輪転印刷機において、光重合開始剤を含有するインクをロール紙に印刷する。ロール紙に印刷されたインクは、UV発生源に曝され、その際、不活性ガスが線源とロール紙との間に供給される。
【0032】
他の好ましい実施形態では、本発明の輪転印刷機は、電子線発生源を備える。ここでも、窒素、二酸化炭素または他の不活性ガスが、線源とロール紙との間の領域に供給される。電子線硬化には光重合開始剤は必要でない。電子線硬化は、UV光エネルギーでの硬化よりも、良好な架橋密度を与える。
【0033】
本発明の処理は、印刷者が、たて型輪転印刷機をより充分に利用し、表面処理紙、スーパーカレンダー仕上紙、および新聞印刷紙を含む広範囲の基材に印刷することを可能にする。エネルギーコストは、従来の熱硬化リソグラフ印刷に関連するものよりも低く、規制排出物もなく、運転費に優れ、臭いが低く、光沢性も高い。
【0034】
本発明は以下の実施例に例示される。これらの実施例は説明のために過ぎず、説明し請求された発明の範囲を限定するものでは決してない。特に示さない限り、「部」は全て重量部である。
【0035】
実施例
エネルギー硬化性インクは、7重量部の光重合開始剤、25重量部のイソボルニル アクリレートおよびトリメチロールプロパン トリアクリレート混合物、25重量部のポリエステルアクリレート、15重量部のビスフェノールA型エポキシアクリレート、8重量部のエポキシ化大豆油のアクリル酸エステル、18重量部のカーボンブラック、5重量部のウレタンアクリレート、ならびに、5重量部のUVインク添加剤混合物を混合することによって調製される。
【0036】
紫外線照射ランプを備える低温硬化リソグラフ印刷機が、新聞の印刷の連続運転に使用される。印刷の完了後、インク注入部内の新聞インクはエネルギー硬化性インクに取り替えられる。次いで、エネルギー硬化性インクで表面処理紙に、折込み物を印刷する。印刷されたインクはランプからの紫外線照射によって硬化される。
【0037】
本発明の説明は本質的に例示に過ぎず、したがって、発明の主旨から逸脱しない変更は本発明の範囲に入る。そのような変更を、本発明の精神および範囲からの逸脱とみなすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に従うたて型輪転印刷機の断面図である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー硬化性インク組成物であって、天然油のアクリレート官能基誘導体と、1以上のさらなるアクリレート官能基物質とを含有し、低温硬化リソグラフ印刷機での印刷に好適であることを特徴とするエネルギー硬化性インク組成物。
【請求項2】
さらに光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1記載のエネルギー硬化性インク組成物。
【請求項3】
天然油のアクリレート官能基誘導体が、大豆油のアクリレート官能基誘導体を含むことを特徴とする請求項1記載のエネルギー硬化性インク組成物。
【請求項4】
大豆油のアクリレート官能基誘導体がエポキシ化大豆油アクリレートを含むことを特徴とする請求項3記載のエネルギー硬化性インク組成物。
【請求項5】
大豆油のアクリレート官能基誘導体を少なくとも約7重量%含有することを特徴とする請求項3記載のエネルギー硬化性インク組成物。
【請求項6】
大豆油のアクリレート官能基誘導体を多くとも約12重量%含有することを特徴とする請求項3記載のエネルギー硬化性インク組成物。
【請求項7】
天然油のアクリレート官能基誘導体を約7重量%〜約12重量%含有することを特徴とする請求項1記載のエネルギー硬化性インク組成物。
【請求項8】
ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートおよびこれらの組合せから成る群から選択されるアクリレートオリゴマーを含有することを特徴とする請求項1記載のエネルギー硬化性インク組成物。
【請求項9】
低温硬化リソグラフ印刷機によって印刷する方法であって、
低温硬化性新聞インクで新聞紙に印刷するステップと、
大豆油のアクリレート官能基誘導体と、1以上のさらなるアクリレート官能基物質とを含有するエネルギー硬化性インク組成物でロール紙に印刷し、印刷したインクを印刷機上に位置する線源からの化学線照射で硬化させるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
線源が紫外線照射ランプを含むことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
インクがエポキシ化大豆油アクリレートを含有することを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項12】
インクがエポキシ化大豆油アクリレート官能基誘導体を少なくとも約7重量%含有することを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項13】
化学線照射の線源を含むことを特徴とするたて型輪転リソグラフ印刷機。
【請求項14】
化学線照射の線源が、印刷機から出るロール紙に化学線を当てる位置に配設されることを特徴とする請求項13記載のたて型輪転リソグラフ印刷機。
【請求項15】
4つの積層印刷ユニットと、印刷ユニットから出るロール紙の両側それぞれに位置する少なくとも1つの紫外線照射ランプとを含むことを特徴とする請求項13記載のたて型輪転リソグラフ印刷機。
【請求項16】
紫外線の線源を含み、線源とロール紙との間に不活性ガスが供給されることを特徴とするリソグラフ輪転印刷機。
【請求項17】
線源の周囲にハウジングを有し、不活性雰囲気がハウジング内に導入されることを特徴とする請求項16記載のリソグラフ輪転印刷機。
【請求項18】
電子線の線源を含み、線源とロール紙との間に不活性ガスが供給されることを特徴とするリソグラフ輪転印刷機。
【請求項19】
リソグラフ輪転印刷機上での印刷の処理であって、
光重合開始剤を含有するインクをロール紙に印刷し、
紫外線発生源とロール紙との間の領域に不活性ガスを供給して、印刷されたインクを紫外線発生源に曝すことを特徴とする処理。
【請求項20】
インクが光重合開始剤を多くとも約3重量%含有することを特徴とする請求項19記載の処理。

【公表番号】特表2008−516052(P2008−516052A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535820(P2007−535820)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/036030
【国際公開番号】WO2006/042038
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(507114749)フリント グループ インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】FLINT GROUP INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】14909 N.Beck Road Plymouth, MI, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】