印刷機上での被印刷体の処理中に被印刷体上の印刷エラーの発生を検出する方法
【課題】被印刷体を印刷機上で処理中にその被印刷体上の印刷エラーの発生を検出する方法、エキスパート・システム、及びエキスパート・システムを備えた印刷機に関する。
【解決手段】被印刷体の処理中に印刷機の動作をモニタするために印刷機の機能的構成要素に複数のセンサを取り付け、かつ被印刷体上の印刷エラーの発生につながるかつながる可能性のある印刷機の特徴的動作、または被印刷体の良好な印刷品質につながるかつながる可能性のある印刷機の特徴的動作の発生を決定するために、印刷機の動作のイン-ライン分析を行なう工程を含む方法が記載されている。印刷機の動作のイン-ライン分析には、印刷機の動作のファジー・パターン分類を行なうことが含まれることが好ましい。提案される方法の一実施形態によれば、印刷機の動作のイン-ライン分析は、被印刷体のイン-ライン光学的検査に組み合わされる。
【解決手段】被印刷体の処理中に印刷機の動作をモニタするために印刷機の機能的構成要素に複数のセンサを取り付け、かつ被印刷体上の印刷エラーの発生につながるかつながる可能性のある印刷機の特徴的動作、または被印刷体の良好な印刷品質につながるかつながる可能性のある印刷機の特徴的動作の発生を決定するために、印刷機の動作のイン-ライン分析を行なう工程を含む方法が記載されている。印刷機の動作のイン-ライン分析には、印刷機の動作のファジー・パターン分類を行なうことが含まれることが好ましい。提案される方法の一実施形態によれば、印刷機の動作のイン-ライン分析は、被印刷体のイン-ライン光学的検査に組み合わされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、印刷機で処理される被印刷体(printed substrates)の品質の検査に関する。より詳細には、本発明は、被印刷体(例えば印刷された枚葉紙(sheets)またはウエブ(webs))のイン-ライン検査、即ち印刷機で被印刷体が処理されている間に被印刷体上の印刷エラーの発生を検出する方法に関する。本発明は特に、有価証券、とりわけ銀行券製造用の被印刷体上の印刷エラーの発生の検出を対象とする。
【背景技術】
【0002】
印刷物を製造中に、一定レベルの印刷の質が保証されるような処置が代表例として取られる。これは特に、最終製品(即ち銀行券、有価証券等)の到達すべき品質基準が非常に高いセキュリティ(security)印刷の分野に当てはまる。印刷物の品質検査は、通常は印刷物の光学的検査に限定される。このような光学的検査は、オフ-ライン・プロセスとして実施すること、即ち印刷物が印刷機で処理された後に実施すること、またはイン-ライン・プロセスとして実施すること、即ち印刷運転が行なわれている印刷機上で実施することができるが、後者のほうが多い。
【0003】
印刷物全般の検査に基本的に適した光学的検査システムは市場ですでに入手できる。こうした検査システムは、代表例として、閾値に基づく古典的検査法と現在では呼ばれる方法に基づいていて、RGBドメインで動作する。このような検査法は、例えばアメリカ合衆国特許第5,384,859号と第5,317,390号に開示されている。これら公報には、いわゆるアイコン画素差検査法または閾値検査法、即ち印刷物のサンプル画像と参照画像との間の画素密度の差の分析に基づく検査法が開示されている。閾値パラメータは、通常、いくつかのマスター画像の比較に基づいて定義され、それによって画像の局所領域における平均値または標準偏差が決定されて対応する閾値または許容誤差を割り当てられる。次にこれらの値と許容誤差が、検査される材料のサンプル画像について測定された実際の画像値と比較される。
【0004】
上記の閾値検査法は、以下に詳しく説明するようにいくつかの欠点を有する。これら検査法は、有価証券の検査に適するようにできるが、一定条件下においてである。閾値に基づく検査法は、有価証券の検査に直接的には適用されない。というのも、有価証券は、商業印刷では代表例として用いられていない特殊印刷法(例えば凹版印刷)を利用して印刷されるからである。従って閾値に基づく従来検査法は、有価証券に印刷される特別の特徴に適するようにされなければならない。
【0005】
現在の技術によれば、アイコン閾値画像処理法(上記のアメリカ合衆国特許第5,384,859号と第5,317,390号に記載されている)が、高生産性から通常に利用されている。しかしこれらの方法には欠点がある。製造プロセス中に大きいが許容可能な変動があるため、コントラストの突然の変化が存在する検査画像の領域内にニセのエラーが検出される可能性がある。このようなニセのエラーの発生を防止するため、コントラストの突然の変化に特徴付けられる領域は代表例としてエラー検出されないようにして(即ちこのような領域には大きな許容誤差を割り当て)、検査プロセスを安定化させることができる。従ってコントラストの突然の変化がある領域におけるエラー検出はほぼ不可能になる。
【0006】
他の光学的検査法も従来技術で知られている。例えばヨーロッパ特許第0 730 959号と第0 985 531号には、被印刷体に起こりうる変形を考慮した“弾性”モデルに基づく検査法が開示されている。人間の視覚による認知を原始的な方法で真似た知覚検査法も、国際出願WO 2004/017034とドイツ国特許出願第102 08 285号によって既知である。画像パターンの統計的分析に基づく統計的方法も従来技術で知られているが、十分に満足のゆく性能は見られていない。
【0007】
上記の光学的検査法は、定義により、印刷物の光学的品質の検査に限定される。例えば、印刷された材料の表面に付着したインキが多すぎるか少なすぎるか、付着したインキの密度が許容できるかどうか、付着したインキの空間的分布が正しいかどうか等である。こうしたシステムは印刷エラーを比較的効率的に検出するのに適しているが、徐々に形成されていく印刷エラーを早期に検出することはできない。このような印刷エラーは突然には起こらず、徐々に蓄積されていく。こうした印刷エラーは代表例として、印刷機の動作が徐々に劣化または偏向によって起こる。光学的検査システムは本質的に検査許容誤差を持っているため、印刷エラーは、一定期間を経過してその光学的検査システムの許容誤差を超えたときにのみ検出される。
【0008】
印刷機の熟練工は、印刷エラーの発生につながる可能性のある印刷機の動作の悪化または偏向を、例えば印刷機が発する特徴的ノイズに基づいて識別できる。しかしこの能力は、印刷機をことする技術者の実体験、ノウハウ、注意力に大きく依存する。更に、印刷機の動作のこうした変化を検出する能力は、作業者の変動(例えばスタッフの再配置、キーパーソンの離脱または退職等)に本質的に依存する。加えて、この技術熟練は人が基本であるため、時間の経過により知識が失われる危険性が大きい。可能な唯一の処方箋は、あらゆる形態の重要な技術的知識を確実に保存し、技術者に適切な訓練を施すことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】アメリカ合衆国特許第5,384,859号
【特許文献2】アメリカ合衆国特許第5,317,390号
【特許文献3】ヨーロッパ特許第0 730 959号
【特許文献4】ヨーロッパ特許第0 985 531号
【特許文献5】ドイツ国特許出願第102 08 285号
【特許文献6】特開平4−299147号
【特許文献7】国際公報第2005−104034号
【特許文献8】特開平11−77978号
【特許文献9】実開平8−498号
【特許文献10】特開昭63−137846号
【特許文献11】特開平6−286275号
【特許文献12】特開平110198349号
【特許文献13】特開平7−164619号
【特許文献14】特開2002−316405号
【特許文献15】特開平3−264359号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、印刷された最終製品の光学的検査に限定されず、光学的品質基準以外の因子を考慮できる改善された検査システムが必要とされている。
【0011】
従って本発明の全般的な目的は、既知検査技術を改良し、印刷機、特に銀行券や有価証券等の製造中に利用される支持体を処理する設計の印刷機によって処理される被印刷体の品質の包括的制御を確実にできる検査法を提案することである。
【0012】
更に、本発明の目的は、印刷機の操作を促進するように設計されたエキスパート・システムとして実現するのに適した方法を提案することである。この文脈で、印刷エラーの発生予測に適したエキスパート・システムを実現できる方法を提案すること、および/または印刷エラーが発生した場合に印刷エラーの蓋然性の高い原因(likely cause)の説明を提供することが特に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的は、添付の請求項に記載されている方法とエキスパート・システムによって実現される。
【0014】
従って、被印刷体を印刷機で処理中にその被印刷体上の印刷エラーの発生を検出する方法であって、印刷機の機能的構成要素に複数のセンサを取り付け、被印刷体の処理中に印刷機の動作をモニタする工程と、印刷機の動作のイン-ライン分析を行なって、印刷機の特徴的で被印刷体上の印刷エラーの発生につながるかつながる可能性のある動作が起こるか、それとも被印刷体の良好な印刷品質につながるかつながる可能性のある印刷機の特徴的動作が起こるかを決定する工程を含む方法が提供される。
【0015】
本発明のこの文脈では、エキスパート・システムは、基本的に、被印刷体の処理中に印刷機の動作をモニタするために印刷機の機能的構成要素に接続された複数のセンサと、そのセンサに接続されていて印刷機の動作のイン-ライン分析を行なう処理システムとを含み、その処理システムは、上記方法を実施できるように構成される。
【0016】
上記方法は、印刷機の動作のイン-ライン分析に、被印刷体のイン-ライン光学的検査を組み合わせることを含むことが好ましい。被印刷体のイン-ライン光学的検査は、(i)印刷機で処理された被印刷体の画像を光学的に取得し、かつ(ii)被印刷体上で起こる可能性のある印刷エラーを識別するために被印刷体に関して取得された画像を処理することを含む。
【0017】
一実施形態によれば、印刷機の間違った動作または異常な動作を決定した上で、印刷エラー発生の可能性のあることを早期に警告するように、印刷機の動作のイン-ライン分析を被印刷体のイン-ライン光学的検査と組み合わせ、他方で取得された画像に印刷エラーがないこと決定する。換言すれば、印刷機の動作がモニタされ、他方で被印刷体が光学的に検査されてその印刷品質がチェックされ、かつ印刷機の動作に欠陥や異常が検出された場合には、印刷エラーが将来発生する可能性があることが早期に示される。この実施形態により印刷エラー発生の可能性があることが早期に警告されるため、印刷機の操作者が印刷機を適切に変更して印刷エラーの発生を防止し、または印刷エラーの実際の発生から印刷機の修理までの時間をできるだけ短くすることができる。
【0018】
別の実施形態によれば、印刷エラーの蓋然性の高い発生原因の表示を提示するように、印刷機の動作のイン-ライン分析を被印刷体のイン-ライン光学的検査と組み合わせる。換言すれば、印刷エラーが光学的検査システムによって検出された場合には、印刷エラーの蓋然的原因もしくは可能原因に関する一つ以上の説明が、被印刷体の処理中に印刷機の動作の分析に基づいて提示されてよい。
【0019】
印刷機の動作の分析は、適切に配置した複数のセンサを用いて印刷機の特徴的動作をモデル化することによって行なうことが好ましい。これらのセンサは印刷機の機能的構成要素の動作パラメータを感知し、そのパラメータが、特徴的動作の代表的パラメータとして利用される。その特徴的動作として、
- 印刷エラーの発生につながるか、つながる可能性のある印刷機の間違った動作または異常な動作、および/または
- 被印刷体の良好な印刷品質につながるか、つながる可能性のある印刷機の正常な動作が含まれる。
【0020】
更に、誤ったエラーまたはニセのエラー(即ち上述の光学的検査システムによって間違って検出されるエラー)を減らし、いわゆるαエラーとβエラーを最適化することを目的として印刷機の特徴的動作をモデル化することができる。αエラーは、良好な枚葉紙の束の中で粗悪な枚葉紙を見いだす確率であると理解され、他方、βエラーは、粗悪な枚葉紙の束の中で良好な枚葉紙を見いだす確率であると理解されている。本発明によれば、複数センサを配置すること(即ち複数の測定チャネルを有するセンサ・システムを用いること)により、αエラーとβエラーを効率的に減らすことができる。
【0021】
この場合、印刷機の機能的構成要素に関して感知された動作パラメータが印刷機の間違った動作または異常な動作を示しているかどうかの決定は、被印刷体が印刷機で処理されている間に印刷機の機能的構成要素の動作パラメータをモニタし、モニタされた動作パラメータが印刷機のモデル化された特徴的動作のうちのいずれか一つを示しているかを決定することによって行なわれる。
【0022】
印刷機の間違った動作または異常な動作のモデル化は、
- 印刷機に起こる可能性のある印刷エラーの複数のクラスを規定し、
- 印刷エラーのそれぞれのクラスに関し、印刷エラーの発生につながるか、つながる可能性のある印刷機の間違った動作または異常な動作を特徴付ける印刷機の動作パラメータを決定し、
- 印刷エラーのそれぞれのクラスに関し、間違った動作または異常な動作を特徴付けると決定される動作パラメータに基づき、印刷機の間違った動作または異常な動作の対応するモデルを規定することを含むことが好ましい。
【0023】
この後者の場合、印刷機の機能的構成要素に関して感知された動作パラメータが、印刷機が間違った動作または異常な動作をしていることを示しているかどうかの決定は、モニタされたその動作パラメータが、印刷機の間違った動作または異常な動作に関して規定されたモデルのうちの任意の一つに対応しているかを決定することによって行なわれる。
【0024】
ファジー・パターン分類技術を利用して機械の動作を分析することが好ましい。換言すれば、ファジー論理規則のセットを利用して印刷機の動作を特徴づけ、印刷機に現われる可能性のあるさまざまなクラスの印刷エラーをモデル化する。これらファジー論理規則が決まると、それを適用して印刷機の動作をモニタし、かつ印刷エラーの発生につながるかつながる可能性のある印刷機の動作により対応する可能性を識別する。
【0025】
本発明の好ましい実施形態は従属項の対象事項である。
【0026】
本発明の他の特徴と利点は、単なる例示として添付図面に示した本発明の実施形態に関する以下の詳細な説明から明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】駆動側から見た彫刻凹版印刷機の側面図である。
【図2】図1に示した彫刻凹版印刷機の印刷ユニットの拡大側面図である。
【図3】印刷機の動作をイン-ライン分析するためのファジー・パターン分類システムの概略図である。
【図4】図1に示した彫刻凹版印刷機での処理中にカメラで撮影した印刷枚葉紙の画像の一例であり、枚葉紙は、光学的品質基準に合致していると考えられる(即ち良好な枚葉紙)。
【図4A】図1に示した彫刻凹版印刷機での処理中にカメラで撮影した印刷枚葉紙の画像の第二の例であり、枚葉紙は、不十分なワイピング圧による印刷エラーを含んでいる。
【図4B】図1に示した彫刻凹版印刷機上での処理中にカメラで撮影した印刷枚葉紙の画像の第三例であり、枚葉紙は、ワイピング・シリンダの表面の湿りによる印刷エラーを含んでいる。
【図4C】図1に示した彫刻凹版印刷機上での処理中にカメラで撮影した印刷枚葉紙の画像の第四例であり、枚葉紙は、ワイピング・シリンダの表面汚れによる印刷エラーを含んでいる。
【図5A】図1と図2に示した彫刻凹版印刷機のワイピング・ユニットの一側から取った写真であり、ワイピング・シリンダの軸受と、印刷機から発生するノイズ/振動を検出するためのセンサ装置を示し、センサ装置は、ワイピング・シリンダの各軸受の上に配置されている。
【図5B】図1と図2に示した彫刻凹版印刷機のワイピング・ユニットの他側から取った写真であり、ワイピング・シリンダの軸受と、印刷機から発生するノイズ/振動を検出するためのセンサ装置を示し、センサ装置は、ワイピング・シリンダの各軸受の上に配置されている。
【図6】ワイピング・シリンダの一つの軸受上で測定された信号を処理することによって得られたいわゆるケプストラムの例である。
【図7】いかにして図6のケプストラムを更に処理し、ケプストラムの選択された値、即ち図6に示した“枚葉紙あたりのケプストラム”の値と“回転あたりのケプストラム”の値の振幅の時間変化に対応する処理済み信号を取り出しうるかをおおまかに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
枚葉紙彫刻凹版印刷機の特定形態の事例において本発明を次に説明する。請求項に記載の本発明は、他のタイプの印刷機に同様に適用できることが理解されるであろう。以下に説明する印刷機は次々に供給される枚葉紙(sheets)の形態の被印刷体を処理するのに適しているが、本発明は、被印刷体が連続的ウエブを形成するウエブ供給印刷機にも適用できることが理解されるであろう。
【0029】
図1は彫刻凹版印刷機1の形態の枚葉紙印刷機を示し、この印刷機は、従来と同様、印刷される枚葉紙を供給するための枚葉紙フィーダ2と、枚葉紙にここでは凹版印刷によって印刷するための印刷ユニット3と、印刷されたばかりの枚葉紙を集収するための枚葉紙送出ユニット4とを含む。印刷ユニット3は凹版印刷に適し、代表的には、インプレッションシリンダ、即ち圧胴7と、凹版刷版を取り付けたプレートシリンダ、即ち版胴8(この実施例では、版胴8は、3枚の凹版刷版8a、8b、8cを有する3セグメントのシリンダである(図2))と、版胴8に取り付けた凹版刷版8a、8b、8cの表面にインキを着けるインキ着けシステム9と、枚葉紙に印刷する前に版胴8に取り付けた凹版刷版8a、8b、8cのインク着けされた表面をぬぐうワイピング・ユニット10とを備えている。彫刻凹版印刷機の同様の例が、例えばヨーロッパ特許第0 091 709号、第0 406 157号、第0 873 866号に開示されている。
【0030】
枚葉紙は、フィーダ・ユニット2から給紙台に供給された後、圧胴7に供給される。次に枚葉紙は、圧胴7により、圧胴7と版胴8が接触して凹版印刷がなされる位置に形成される印刷ニップに運ばれる。印刷された枚葉紙は、送出ユニット4に送出するため圧胴7から枚葉紙移動システム11に移される。枚葉紙移動システム11は、通常は、一対のエンドレス・チェーンを有するエンドレス移動システムを含み、エンドレス・チェーンにより、枚葉紙の前縁を掴むための相互に離隔した複数の把持棒を駆動する(印刷されたばかりの枚葉紙側は、送出ユニット4に向かう途中では下方を向いている)。枚葉紙は、圧胴7から対応する一つの把持棒へと次々に移される。
【0031】
印刷されたばかりの枚葉紙は、枚葉紙送出ユニット4に運ばれる間に光学的検査システム5によって検査されることが好ましい。図示実施例では、光学的検査システム5は、枚葉紙移動システム11の通路上にあって印刷ユニット3の直後に配置されることが好ましい。このような光学的検査システム5は既に知られているため、詳細に説明する必要はない。図1に示した彫刻凹版印刷機の光学的検査システム5として用いるのに適した光学的検査システムの例は、例えば、国際出願WO 97/37329とWO 03/070465に記載されている。印刷された枚葉紙の光学的検査を行なうのに適した他の光学的検査システムの例は、ヨーロッパ特許第0 527 453号、第0 543 281号、WO 97/48556、WO 99/41082、WO 02/102595、ヨーロッパ特許第0 820 864号、第0 820 865号、第1 142 712号、第1 167 034号、第1 190 855号、第1 231 057号、第1 323 529号にも見いだすことができる。
【0032】
光学的検査システム5は、印刷された枚葉紙の光学的検査と、印刷エラー発生の検出に適している。この明細書の冒頭で述べたように、光学的検査は例えばアメリカ合衆国特許第5,317,390号と第5,384,859号(ヨーロッパ特許第0 527 285号と第0 540 833号も参照のこと)に開示されている原理、または光学的検査に関する他の適切な原理に従って実施することができる。
【0033】
印刷された枚葉紙は、送出される前に、枚葉紙移動システム11の移動通路上で検査システム5の後ろに配置された乾燥ユニット6の前に運ばれる。乾燥は、枚葉紙の光学的検査を行なう前に実施することができる。
【0034】
光学的検査の結果に応じて、良好な枚葉紙、即ち検査後に印刷品質の観点から許容できると考えられる枚葉紙は、二つある枚葉紙送出パイルの一つに送出される(予め枚葉紙を送出して他方のパイルを空にしながら一つのパイルに枚葉紙が供給される。)。粗悪な枚葉紙、即ち検査後に印刷品質の観点から許容できないと考えられる枚葉紙は、第三の枚葉紙送出パイルに送出される。
【0035】
図2は、図1に示した彫刻凹版印刷機1の印刷ユニット3の概略図である。既述したように、印刷ユニット3は、基本的に、圧胴7と、凹版刷版8a、8b、8cを備えた版胴8と、インキ着けシステム9と、ワイピング・ユニット10とを含む。
【0036】
インキ着けシステム9は、この実施例では四つのインキ着け装置を含む。そのうちの三つは、版胴8と接触する共通のインキ収集シリンダまたはオルロフ・シリンダ9.5(ここでは2セグメントシリンダ)と共働する。四番目のインキ着け装置は、版胴8の表面と直接接触する配置にされている。従って図示したインキ着けシステム9は、版胴8への直接的なインキ着けと間接的なインキ着けの両方に適していることが理解される。インキ収集シリンダ9.5と共働するそれぞれのインキ着け装置は、この例では対のインキ・ローラ9.11、9.21、9.31とそれぞれ共働するインキ溝9.10、9.20、9.30を有する。各対のインキ・ローラ9.11、9.21、9.31は、インキ収集シリンダ9.5と接触する対応するそれぞれのシャブロン(chablon)・シリンダ(選択的インキ着けシリンダとも呼ばれる)9.13、9.23、9.33にインキを着ける。四番目のインキ着け装置に関しては、インキ溝9.40と、追加のインキ・ローラ9.44と、一対のインキ・ローラ9.41と、シャブロン・シリンダ9.43とを備えていて、シャブロン・シリンダは版胴8と接触する。後者の場合には追加のインキ・ローラ9.44が必要である。インキ収集シリンダ9.5とは反対方向に回転する版胴8の表面に直接インキを着けるのに四番目のインキ着け装置9.4が用いられるからである。従来技術で一般的なように、シャブロン・シリンダ9.13、9.23、9.33、9.43の表面は、凹版刷版8a、8b、8cのうちでそれぞれのインキ着け装置から供給される対応する色のインキを受け領域に対応する突起部を有する構造にされる。
【0037】
ワイピング・ユニット10は、(版胴8に近づいたり離れたりする運動が可能な)ワイピング・タンク10.1と、そのワイピング・タンクの中に配置されていて版胴8と接触するワイピング・シリンダ10.2と、ワイピング・シリンダ10.2の表面と接触してワイピング・シリンダ10.2の表面から残ったインキを除去する少なくとも第一のブレード(または乾燥ブレード)10.3と、ワイピング液をワイピング・シリンダ10.2の表面に付着させるクリーニング手段10.4と、ワイピング・シリンダ10.2の表面と接触してワイピング・シリンダ10.2の表面から残ったワイピング液を除去する乾燥ブレード10.5とを含む。クリーニング手段10.4は、代表例として、ワイピング・シリンダ10.2の表面にワイピング液を吹き付けてワイピング・シリンダ10.2の表面をきれいにするための一群のスプレー装置と洗浄ブラシを備える。
【0038】
第一のブレード即ち乾燥ブレード10.3は、代表例として、ワイピング・シリンダ10.2の表面から残ったインキの約80%を除去するのに対し、クリーニング手段10.4は、スプレーしたワイピング液と洗浄ブラシを用いて残ったインキの残りを除去する。乾燥ブレード10.5はワイピング・シリンダ10.2の表面を乾燥させることを目的とし、表面から残ったワイピング液を除去することにより、ワイピング液の残りが版胴の表面を汚染しないようにする。
【0039】
スプレー装置と洗浄ブラシを備えるタイプの上述のワイピング・ユニットは、例えばアメリカ合衆国特許第4,236,450号、ヨーロッパ特許第0 622 191号、WO 03/093011に、より詳細に記載されている。他のタイプのワイピング・ユニットも想定できる。例えばスイス国特許第415 694号、アメリカ合衆国特許第3,468,248号、第3,656,431号に記載されているような浸漬タイプがあり、ワイピング・シリンダの一部がワイピング液の中に浸漬されている。
【0040】
既述したように、現在の技術によれば、印刷された枚葉紙の印刷品質は、代表例として、印刷された枚葉紙の画像を光学的に取得するのに適した適切な光学的検査システムのみによって制御され、取得した画像の処理結果に基づいて印刷された枚葉紙上の印刷エラーの発生が決定される。この明細書の冒頭に記載したように、印刷された最終製品の光学的検査は本質的にさまざまな問題を抱えている。特に、印刷エラーの発生を早期に警告できず、印刷エラーの確実と思われる蓋然的原因(likely cause)を説明もできない。
【0041】
本発明によれば、光学的検査に固有の欠点は、印刷された枚葉紙を処理している間に印刷機の動作をイン-ライン分析することによって克服される。この目的のために、モニタする印刷機の機能的構成要素に複数のセンサを取り付ける。これらのセンサは被印刷体の処理中に印刷機の動作をモニタすることを目的としているので、センサは適切に選択され、印刷機の適当な機能的構成要素上に配置されなければならない。センサの実際の選択と、センサを印刷機に取り付ける場所は、動作をモニタしようとする印刷機の構成に依存する。例えば彫刻凹版印刷機とオフセット印刷機では機械の動作が同じでないため、センサの選択と取り付け場所は同じにならないであろう。
【0042】
厳密に言えば、印刷機のすべての機能的構成要素にセンサを設ける必要はない。むしろ、センサは、印刷機の選択された機能的構成要素に関する動作パラメータが検出されるように選択して配置し、印刷機のさまざまな動作を十分精確に表現する説明を可能にするようにされなければならない。センサは、できるだけ相互に相関しない動作パラメータを検出してモニタするように選択して配置されることが好ましい。実際、動作パラメータの相関が少ないほど、印刷機の動作の説明がより正確になる。例えば共通する一つの駆動装置によって駆動される二つのシリンダのそれぞれの回転速度をモニタすること自体は、二つのパラメータが相互に直接関連しているためにそれほど有用ではない。逆に、印刷機の駆動手段として用いられる電動モータによって生じる電流と、印刷機の二つのシリンダ間の接触圧とをモニタすると、印刷機の動作がよりよく説明される。
【0043】
更に、センサの選択と場所は、モニタしたい実際の動作パターンのセットと、検出したい印刷エラーのクラスを考慮して行なわれなければならない。一般的ルールとして、以下の動作パラメータの任意の組み合わせを感知するために、センサを印刷機に取り付ける。
- 印刷機の処理速度、即ち印刷機が被印刷体を処理する速度、および/または
- 印刷機のシリンダまたはローラの回転速度、および/または
- 印刷機の印刷ユニットのシリンダを駆動する電動モータによって生じる電流、および/または
- 印刷機のシリンダまたはローラの温度、および/または
- 印刷機の二つのシリンダまたはローラ間の圧力、および/または
- 印刷機の一つのシリンダまたはローラの軸受上の拘束、および/または
- 印刷機におけるインキまたは流体の消費、および/または
- 処理された被印刷体の印刷機内における位置または存在(この情報は、いくつかの刷版および/または印刷ブランケットを備える印刷機の事例において、印刷の動作が一つの刷版または印刷ブランケットから次の刷版または印刷ブランケットに変わるときに特に有用である)。
【0044】
個々の印刷機の構成に応じて、他の動作パラメータをモニタすることが有用である。例えば彫刻凹版印刷機の場合には、ワイピング・ユニットの主要部品をモニタすることが、印刷機の動作の代表的モデルを誘導する上で特に有用である。これは、凹版印刷における印刷上の多くの問題が、ワイピング・ユニットの間違った動作または異常な動作に起因するからである。
【0045】
図1に示した彫刻凹版印刷機1の事例において、以下のことパラメータが一般的ルールと考えられる:
- 彫刻凹版印刷機1の処理速度 - (他のタイプの印刷機と同様)彫刻凹版印刷機の動作は、枚葉紙(またはウエブ)を処理する速度に依存する、および/または
- 彫刻凹版印刷機1の印刷ユニット3の駆動手段として用いる電動モータによって生じる電流 - ここでも、印刷機の動作に応じて、印刷ユニット3の駆動手段として用いる電動モータによって生じる電流は特徴的変化をする、および/または
- 圧胴7、および/または版胴8、および/またはインキ着けシステム9またはワイピング・ユニット10のシリンダまたはローラ(例えばインキ着けローラ9.11、9.12、9.21、9.22、9.31、9.32、9.41、9.42、および/またはシャブロン・シリンダ9.13、9.23、9.33、9.43、および/またはインキ収集シリンダ9.5、および/またはワイピング・シリンダ10.2)の回転速度 - 回転速度は、印刷機の他の動作パラメータほど重要ではないが、それでも印刷機の動作の有用な説明情報となる可能性がある、および/または
- 圧胴7、および/または版胴8、および/またはインキ着けシステム9またはワイピング・ユニット10のシリンダまたはローラ(例えばインキ着けローラ9.11、9.12、9.21、9.22、9.31、9.32、9.41、9.42、および/またはシャブロン・シリンダ9.13、9.23、9.33、9.43、および/またはインキ収集シリンダ9.5、および/またはワイピング・シリンダ10.2)の温度 - 温度は機械の動作を説明するための有用な動作パラメータである、特に、版胴8を代表例として熱によって制御して温度を実質的に一定レベル(代表例として約80℃)に維持する彫刻凹版印刷機の場合に当てはまる、版胴8の温度が低すぎると、例えばインキが硬化し始めていないために裏移りの問題が発生する可能性がある、および/または
- 版胴8と圧胴7との間の印刷圧 - 印刷圧は凹版印刷において特に特徴的であり、接触圧は、代表例として、10,000N/cmのオーダーの線圧力に達する、および/または
- 版胴8とワイピング・ユニット10との間のワイピング圧 - 彫刻凹版印刷機のワイピング圧が不十分だったり変動すると、さまざまな印刷エラーの原因となる、従ってワイピング圧は、彫刻凹版印刷機の事例において特に有用なパラメータとなる、および/または
- 版胴8とインキ着けシステム9との間の接触圧(例えばインキ収集シリンダ9.5と版胴8の間、または直接接触するシャブロン・シリンダ9.43と版胴8との間の接触圧) - 印刷圧およびワイピング圧と同様、彫刻凹版印刷機の版胴とインキ着けシステムとの間の接触圧が不十分である(または、変動する)と、インキ着けの問題源になり、従って印刷エラーが起こる可能性がある、および/または
- ワイピング・ユニット10の動作パラメータ - 上記のワイピング圧以外に、ワイピング・ユニットの他の動作パラメータ(リストにして下に示す)が、特にワイピングの機能障害が関係する場合に印刷機の動作をモデル化するのに有用であろう、および/または
- インキ着けシステム9の動作パラメータ - 再度、インキ着けシステム9と版胴8の間の接触圧以外に、インキ着けシステム9におけるインキ供給に関する動作パラメータ(例えばインキ溝の中のインキの量、さまざまなインキ着けローラに移されるインキの量、インキの物理化学的特性(温度、粘度等))が、印刷エラーの原因となる可能性がある。
【0046】
更に詳細には、彫刻凹版印刷機のワイピング・ユニットの動作異常に起因する機械の動作の欠陥または異常の事例において、以下の動作パラメータが印刷機の動作の代表的パラメータと考えられる:
- ワイピング・シリンダ10.2と版胴8間のワイピング圧、および/または
- ワイピング・ユニット10中でのワイピング液の流れ、および/または
- ワイピング液の物理化学的特性(例えばワイピング液の温度、ワイピング液の化学組成等)、および/または
- 乾燥ブレード10.3とワイピング・シリンダ10.2間、または乾燥ブレード10.5とワイピング・シリンダ10.2間のブレード圧、および/または
- ワイピング・シリンダ10.2に対する乾燥ブレード10.3または乾燥ブレード10.5のブレード位置、および/または
- ワイピング・シリンダ10.2の軸受上の拘束。
【0047】
動作パラメータに関する上記リストは、もちろん、すべてを列挙したリストではない。
【0048】
本発明の発明者は、上記動作パラメータの適切な組み合わせに基づき、印刷機の動作をモデル化できること、印刷機のモニタされた動作が、印刷エラーの発生につながるかつながる可能性のある異常な動作または間違った動作に向かうか否かを決定できることを知見した。従って被印刷体の印刷中および/または処理中に印刷機の動作のイン-ライン分析を行なうことにより、被印刷体の印刷品質に影響を与えるか与える可能性のある間違った動作または異常な動作の発生を決定できる。
【0049】
印刷機の動作に関して提案するイン-ライン分析では、印刷機の動作の傾向分析(trend analysis)を実施することが好ましい。換言すれば、時間の一定点での印刷機の動作を調べるのではなく、長期にわたって(即ち被印刷体を連続的に処理している間に)分析を行なう。このような傾向分析は、印刷機の動作の漸進的偏向または悪化の識別もしくは確認(identification)を可能にする点で好ましい。
【0050】
印刷機の動作のイン-ライン分析は、ファジー・パターン分類技術に基づくことが好ましい。おおまかに言えば、パターン分類(またはパターン認識)は、測定結果の説明または分類に関する既知技術である。パターン分類の裏にあるアイデアは、一セットのパターン(ここでは1台の印刷機が示す可能性のあるさまざまな動作)の中で共通する特徴または性質を定義し、それらを決定された分類モデルに従って異なる所定クラスに分類するというものである。より詳細には、本発明の範囲では、この考え方により、所定の1台の印刷機の可能な動作を、印刷エラーの特定クラスに対応する種々のクラスの動作(または動作パターン)に分類することが可能な分類モデルを規定する。
【0051】
従来のモデル化法では、通常、あいまい、不精確、または不確実な説明によるルールを避けようとする。ファジー・システムは、そのような記述規則を意図的に利用する。ファジー・システムでは、パターンが“正”か“誤”という規則によって決まる二値法に従うのではなく、“パラメータαが、値βに等しい/値βよりも大きい/値βよりも小さいならば、そのときは、事象Aが、常に起こる/しばしば起こる/ときどき起こる/決して起こらない”というタイプの相対的な“もし...ならば、そのときは”という規則が利用される。例示した規則における“常に”、“しばしば”、“ときどき”、“決して”という記述語は、代表例として“言語学的修飾語”と呼ばれ、望ましいパターンを徐々に真に近づくという意味でモデル化するのに用いられる。このようにすると、取り扱いが容易で人間の思考により馴染んだ、より単純でより適切なモデルが得られる。
【0052】
本発明の発明者は、ファジー・システムが、印刷機の先験的に無限に変化する動作パターンをモデル化する問題に特に適していることを確認した。特にファジー・パターンの分類は、印刷機の動作を記述して限られた数のクラスに分類する有効な一つの方法である。ファジー・パターンの分類では、代表例として、入力スペース(ここでは、印刷機の機能的構成要素に取り付けた複数のセンサによって検出された変数(即ち動作パラメータ))をカテゴリーまたはパターンのクラスに分割し、カテゴリーの一つに所定パターンを割り当てる。あるパターンが所定のカテゴリーにそのままでは当てはまらない場合には、いわゆる“適合度”(goodness of fit)が報告される。パターンのクラスとしてファジー・セットを用いることにより、あるパターンがある一つのクラスまたは別のクラスに属する程度を記述することが可能である。それぞれのカテゴリーをファジー・セットと見るとともに、一セットのファジーな“もし...ならば、そのときは”の規則を指定演算子と識別することにより、ファジー・セットとパターン分類間に直接的な関係が実現される。
【0053】
図3は、本発明に従って印刷機の動作を分析するためのファジー分類システムの構成の概略図である。複数のセンサ配置によって検出された動作パラメータP1からPnは、場合によっては前処理された後、パターン分類装置に供給される。このような前処理として、特に、センサから出力された信号、中でも特に、印刷機の動作を表わす特徴的パターンが見いだされることが期待される信号のうちのいくつかをスペクトル変換することが挙げられる(これについては後述する)。このようなスペクトル変換は、特に、印刷機から発生する振動またはノイズ(例えば彫刻凹版印刷機の特徴的ノイズ/振動パターン)を表わす信号を処理するために行なわれる。
【0054】
既述したように、ファジー・パターン分類装置は、基本的に、人間の思考を真似た“もし...ならば、そのときは”というファジー規則のセットとして実行されており、その規則は、入力され(場合によっては前処理され)た動作パラメータP1からPnによって表わされる印刷機の動作と、それぞれに印刷エラーの対応するクラスが割り当てられたいくつかの決められたパターンのクラスとをリンクさせるように設計されている。複数のセンサ装置によってモニタされた動作パラメータP1からPnが供給されると、あらかじめ規定されたパターンのクラスと、それに付随する印刷エラーのクラスに分類される。それぞれのパターンのクラスには、入力された動作パラメータP1からPnによって表わされるモニタされた印刷機の動作と、パターンのクラスを形成するファジーセットの規則との間の対応に応じて、対応する“メンバーシップ”値またはウエイト(weight)(“スコア値”または“フィット適合値”とも呼ばれる)が与えられることが好ましい。
【0055】
当業者にはさまざまなファジー・モデルが知られている。その中で特に、いわゆる“ファジー・パターン分類”モデル(FPC)や“タカギ-スゲノ”モデル等が挙げられる。一般的に、これらのモデルは“言語”ファジー規則の助けを借りて設計することができる。更に、出力モデルはいろいろな方法で設計することができ、例えば“重心”法や“単集合(singleton)”に基づく方法等を利用する。本発明の範囲では、“言語”ファジー・モデル化法と“単集合”に基づく出力関数が、印刷機の動作分類の目的に最適であるように思われる。
【0056】
彫刻凹版印刷機の例に戻ると、印刷機に起こる可能性のある印刷エラーに関して決定されたクラスを形成することができる。説明のため、図1に示した彫刻凹版印刷機に起こる可能性があってワイピング・ユニット10の動作異常に起因すると思われる印刷エラーの主要なクラスをリストとして示す:
クラスA:ワイピング・シリンダ10.2と版胴8間の不十分なワイピング圧に起因する印刷エラー - ワイピング圧が不十分だと、代表例として、版胴の表面でぬぐわれる領域が十分でなく、均一にインキ着けされた領域として被印刷体上に反映される、
クラスB:乾燥ブレード10.5の設定が不適切であるためワイピング・シリンダ10.2の表面の乾燥が不十分である(または湿り過ぎている)ことに起因する印刷エラー - ワイピング・シリンダの表面が湿り過ぎていると、代表例として、版胴の表面上のインキが汚れ、凹版印刷の領域においてインキ着けされた領域が希薄化または陰影領域として被印刷体上に反映される、
クラスC:ワイピング・シリンダ10.2が汚れている、即ちワイピング・シリンダ10.2の表面にインキが残っていることに起因する印刷エラー - ワイピング・シリンダの汚れはさまざまな因子の結果である可能性があり、因子として、例えばワイピング液の供給または流れが不十分であること(例えばスプレー装置の問題)、洗浄ブラシが有効でないこと(例えばブラシが摩耗し過ぎている)、乾燥ブレードとワイピング・シリンダ間の圧力が不十分であること、乾燥ブレードが損傷していること、ワイピング液の温度が不十分であること、ワイピング液の物理的特性または化学的特性が不十分であること等がある - ワイピング・シリンダが汚れていると、代表例として、被印刷体上でインキ着けされたパターンがランダムに分布する、
クラスD:ワイピング・シリンダ10.2が損傷していることに起因する印刷エラー - ワイピング・シリンダが損傷していると、代表例として、ワイピング・シリンダが1回転する間のワイピング・ユニットのワイピング効率が局所的に変動し、クラスAと同様に被印刷体に反映される、
クラスE:乾燥ブレード10.5が損傷していることに起因する印刷エラー - 乾燥ブレードが損傷していると、代表例として、ワイピング・シリンダの表面の乾燥/湿潤状態が変動し、そのことが、クラスBと同様に被印刷体に反映される、
クラスF:ワイピング・シリンダ10.2の温度変化に起因する印刷エラー - クラスAおよびクラスDと同様、ワイピング・シリンダの温度が変動するとワイピング・シリンダのサイズが変動するため、ワイピング効率が変化し、そのことが被印刷体に反映される。
【0057】
図4は、図1に示した彫刻凹版印刷機で処理された印刷された枚葉紙の部分図である。より詳細には、図4は、正常な動作条件下で得られた印刷された枚葉紙の図である。
【0058】
図4Aは、彫刻凹版印刷機で処理されて印刷された枚葉紙の一部を示す写真であり、上にクラスAで言及した不十分なワイピング圧に起因する特徴的な印刷エラーが見られる。図4Aの上部に示されたように、印刷エラーが、凹版印刷の領域に均一にインク着けされた領域として現われている。本発明の発明者は、図4Aに示した印刷エラーが実際に発生するのは瞬間的にではなく、ワイピング圧が低下してから一定期間経過した後であることを確認している。印刷ユニットを代表例として駆動する電動モータによって生じる電流をモニタすることにより、ワイピング圧の低下を検出できる。ワイピング圧のそのような低下は、電流消費の低下に反映される。ワイピング・シリンダの軸受で検出される拘束(例えば振動)をモニタすることにより、印刷に関する間違った動作の特徴的モデルを形成し、印刷エラーの発生を予測することができる。クラスDとクラスFで言及したワイピング圧の変動は同様にして検出することができる。
【0059】
図4Bは、彫刻凹版印刷機で処理されて印刷された枚葉紙の一部を示す写真であり、上にクラスBで言及したワイピング液の汚染に起因する特徴的印刷エラーが見られる。図4Bの下部に示されたように、印刷エラーが、凹版印刷の領域における希薄領域または陰影領域として現われている。本発明の発明者は、図4Bに示した印刷エラーが実際に発生するのはこの場合にも瞬間的にではないことを確認した。なぜならワイピング液は、通常は、ワイピング・シリンダの乾燥が不十分であることが原因で凹版刷版の表面に徐々にしかたまらないからである。ここでも、印刷ユニットを駆動する電動モータによって生じる電流をモニタするとともに、乾燥ブレードの位置と、乾燥ブレードとワイピング・シリンダ間のブレード圧とをモニタすることにより、ワイピング・シリンダの表面の乾燥が不十分であることの検出が可能である(このようなモニタは、選択的、または付加的にワイピング・シリンダの表面を直接モニタすることによって可能になる)。ワイピング・シリンダの軸受で検出される拘束をモニタすることは、ここでも、不十分な乾燥に関する印刷機の動作を特徴づけるのに有用である。従って、印刷に関する間違った動作の特徴的モデルを規定し、印刷エラーの発生を予測することが同様に可能である。クラスEで言及した損傷した乾燥ブレードは、同様に検出することができる。
【0060】
図4Cは、彫刻凹版印刷機で処理されて印刷された枚葉紙の一部を示す写真であり、ワイピング液の供給が不十分であることによって起こるクラスCで上述したワイピング・シリンダの表面の汚れに起因する特徴的印刷エラーが見られる。図4Cに見られる肖像領域の左側に示されたように、印刷エラーが、ランダムな形にインキが着いた領域として現われている。他の印刷エラーと同様、本発明の発明者は、図4Cに見られる印刷エラーが、ここでも瞬間的に発生するのではないことを確認した。印刷ユニットを駆動する電動モータによって生じる電流をモニタすることにより、例えばワイピング液の量が少なすぎることを電流消費の増大傾向として検出できる。この測定は、ワイピング領域の流れの測定に加えて行なうことができる。従ってここでも、印刷に関する間違った動作の特徴的モデルを規定し、印刷エラーの発生を予測することができる。クラスCで言及した印刷エラーの他の原因は同様にしてモニタすることができる。
【0061】
リストとして上述した印刷エラーのクラスは、もちろん、説明だけを目的として挙げてある。上記リストはワイピングに問題があることの結果として起こる主要なエラーを表わすと考えられるが、このリストにすべてが列挙されていると理解してはならない。
【0062】
印刷エラーは、ワイピング・ユニットの動作に関連した問題の結果として起こるだけでなく、印刷機の他の機能的構成要素が異常である(例えば版胴8と圧胴7の間の不十分な印刷圧、インキ着けシステム9による版胴8への不十分なインキ着け等)の結果として起こる可能性があることが理解されるであろう。
【0063】
既述したように、印刷機の動作の分析は、印刷機の機能的構成要素の動作パラメータのうちで印刷機の動作を十分に記述する動作パラメータの測定値を提供できる複数のセンサの適切配置に基づいている。印刷機の動作を測定する特に好ましい一つの方法は、印刷機から発生するノイズまたは振動をモニタすることである。そのようなノイズまたは振動は、理論的に印刷機の適切な任意の位置で測定することができる。ノイズまたは振動の測定に特に適した場所は、印刷機のシリンダの軸受上である。図1と図2に示した彫刻凹版印刷機の事例では、一つの好適場所は、ワイピング・シリンダ10.2の支持シャフトである。
【0064】
図5Aと図5Bは、印刷機によってワイピング・シリンダ10.2の軸に発生するノイズまたは振動を感知するためのセンサの可能な配置を示す2枚の写真である。図5Aは、彫刻凹版印刷機の左側(または駆動側)のワイピング・タンク10.1に位置するワイピング・シリンダ10.2の第一のシリンダの軸受101を示すのに対し、図5Bは、ワイピング・シリンダ10.2の反対側の第2のシリンダの軸受102を示す(解明のために、図1は、駆動側から見た彫刻凹版印刷機を示している)。ワイピング・シリンダ10.2は図5Aと図5Bには示されていないが、写真に見られる二つの軸受101と102の間に支持される。版胴8は、図5Aと図5Bに一部が見える。
【0065】
それぞれのシリンダの軸受101、102には、ワイピング・シリンダ10.2の回転軸に垂直の異なる二方向に沿って伝達されるノイズまたは振動を感知するための一対のセンサ51a、51bと52a、52bが取り付けられていることが好ましい。この場合に、水平方向に伝達されるノイズまたは振動はセンサ51a、52aによって、垂直方向に伝達されるノイズまたは振動はセンサ51b、52bによって感知される。センサ51a、51b、52a、52bは、ノイズまたは振動を感知する適切な任意センサであってよく、例えば音響センサ、または加速度センサ、または他の任意圧力感知センサや振動感知センサ等がある。
【0066】
図5Aと図5Bに示した配置のセンサを用いると、ワイピング・シリンダ10.2に伝達されるノイズまたは振動の観点から印刷機の動作をモニタするのに四つの測定チャネルが設けられることが理解されるであろう。既述したように、これら測定チャネルに他の測定チャネルを追加することができる。例えば上記の四つの測定チャネルに以下の付加的チャネルを補充することが好適である:
- 印刷機の処理速度(例えば1時間に処理される枚葉紙の数)を測定するための一つのチャネル、
- 印刷機のシリンダを駆動するモータの電流消費のための一つのチャネル、
- 圧胴7と版胴8間の印刷圧をこれらシリンダの両側で測定するための二つのチャネル、
- 乾燥ブレード10.5とワイピング・シリンダ10.2間のブレード圧(圧力は代表例として油圧手段によって調節される)を測定するための一つのチャネル、
- ワイピング液の流れを測定するための一つのチャネル、
- 乾燥ブレード10.5の位置をブレードの両側で測定するための二つのチャネル、
- 印刷位置に枚葉紙が存在するか不在であるかを示すための一つのチャネル、
- 枚葉紙を印刷するのに使用された刷版を示す一つのチャネル。
【0067】
印刷機の動作を感知するための複数のセンサの配置に関する上記の例では、異なる14のチャネルが設けられる。彫刻凹版印刷機の動作を少なくともワイピング・ユニット10に関して適切に記述してモニタするのに十分であることがわかった。
【0068】
印刷機の動作をモニタするのに用いるセンサから出力される信号のいくつかを前処理することが望ましいことは上述した。これは、特に、印刷機から発生するノイズおよび/または振動の感知に関して真実であり、その信号は、代表例として多数の周波数成分を示す。そのような信号を処理する従来法では、信号のスペクトル変換を行なう。通常のスペクトル変換は、よく知られているフーリエ変換(とその変形)であり、信号が時間領域から周波数領域に変換される。信号の処理は、このようにして得られたスペクトルで作業することによってより簡単になる。周期的信号成分は、スペクトルのピークとして周波数領域で容易に識別できるからである。しかしフーリエ変換の欠点は、信号中の位相の移動、シフト、ドリフト(drifts)、エコー、ノイズ等を効率的に識別して分離できないことにある。
【0069】
より適切な“スペクトル”分析は、いわゆる“ケプストラム(cepstrum)”分析である。“ケプストラム”は“スペクトル”のアナグラムであり、ある信号のスペクトルの対数の逆フーリエ変換として受け入れられている用語である。ケプストラム分析は、周波数を分析する代わりに“音”を分析するのに特に用いられる。ケプストラムは、異なるスペクトル帯での変化速度に関する情報と見なすことができる。これは、そもそもは、地震と爆弾の爆発から生じる地震エコーを特徴づけるために提案された(Bogert、Healy、Tuleyの「エコーのための時間系列の周波数分析:ケプストラム、擬自己共分散、クロス-ケプストラム、サフィー・クラッキング」という題名の論文(1963年)を参照のこと)。Bogert他は、エコーを含む信号のパワー・スペクトルの対数がエコーのために加算的周期成分を有すること、従ってパワー・スペクトルの対数のフーリエ変換がエコー遅延位置においてピークを示すはずであることを観測した。彼らはこの関数を、“スペクトル”という単語の文字を入れ換えて“ケプストラム”と名づけた。なぜなら、「代表例として、われわれは、通常は時間側で行なう方法で周波数側で演算を行なっており、逆も同様であることがわかった」からである。ある信号をそのケプストラムに変換することは準同型変換であり、ケプストラムの考え方は、畳み込みによって組み合わされた信号を処理する準同型システムの理論の基本的な一部である(『離散した時間信号の処理』、A.V. OppenheimとR.W. Schafer、プレンティス・ホール、エングルウッド・クリフス、ニュージャージー州、1989年を参照のこと)。
【0070】
ケプストラム分析の利点は多数ある:
- 最も強力な属性の一つは、スペクトルに存在するあらゆる周期性または繰り返しパターンが、ケプストラムの一つまたは二つの特別な成分として感知されることである、
- スペクトルに側波帯または調和系列のセットがいくつか含まれている場合、セットの重合のために混乱される可能性がある。しかしケプストラムでは、これらのセットは、スペクトルが時間信号中で繰り返しパターンに分離されるのと同じようにして分離される、
- ケプストラム分析は、振動する回転要素の分析に特に適している。
【0071】
従って本発明の好ましい一実施形態として、印刷機の回転要素で測定された信号(例えば上述のワイピング・シリンダの軸受で発生して音響/振動センサによって感知されるノイズおよび/または振動)は、上記ケプストラム分析を利用して前処理される。
【0072】
図1と図2に示した彫刻凹版印刷機のワイピング・シリンダ10.2の軸受での測定に戻ると、ケプストラム分析は、“枚葉紙ごとのケプストラム”の値、“ケプストラム2:3”の値、“回転ごとのケプストラム”の値と名づけた三つの変数を取り出すことを目的として行なうことが好ましく、これらのうちの二つの変数に基づいて傾向分析を行なう。“枚葉紙ごとのケプストラム”の値は、本発明の範囲では、枚葉紙間の時間間隔、即ち連続した2枚の枚葉紙間の間隔に対応するケプストラム値として定義される。“ケプストラム2:3”の値は、本発明の範囲では、版胴8とオルロフ・シリンダ9.5(この例では、それぞれ3セグメントのシリンダと2セグメントのシリンダである)の置換間隔(permutation interval)に対応するケプストラム値として定義される。“回転ごとのケプストラム”の値は、本発明の範囲では、印刷機の版胴が完全に一回転するのに必要な時間の間隔(または回転間隔)に対応するケプストラム値として定義される(この間隔は、枚葉紙間の間隔の倍数である)。3セグメントの版胴と、2セグメントのオルロフ(Orlof)・シリンダとを備える図1と図2に示した凹版刷版の事例では、枚葉紙間の間隔、置換間隔、回転間隔(単位は秒)は、以下の式で与えられる:
枚葉紙間の間隔[秒]= 3600/枚葉紙処理速度[枚/時間]、
置換間隔[秒]= 枚葉紙間隔[秒]×#セグメントのオルロフ・シリンダ、
回転時間[秒]= 枚葉紙間隔[秒]×#セグメントの版胴。
【0073】
図6は、ワイピング・シリンダ10.2の一つの軸受の位置で測定したノイズ信号のケプストラムの一例である。彫刻凹版印刷機での枚葉紙の処理速度は、この例では1時間に6316枚(枚葉紙間の間隔は0.57秒)に設定されていて、置換間隔は1.14秒であり、回転間隔は0.71秒であり、対応する“枚葉紙ごとのケプストラム”の値、“2:3ケプストラム”の値、“回転ごとのケプストラム”の値は、図6のケプストラムに三つのピークとして現われる。
【0074】
“枚葉紙ごとのケプストラム”の値と“回転ごとのケプストラム”の値のそれぞれの変化(または傾向)は速度で標準化した移動帯域通過フィルタを用いてモニタし、ケプストラム中の関係する帯域をフィルタすることが好ましい。この帯域通過フィルタは、関係する枚葉紙間隔または回転間隔にそれぞれ“ロックされる(locked)”(これらの間隔は、枚葉紙の処理速度に逆比例する)。フィルタされて得られる信号の最大値が検出され、時間軸で得られた振幅が記録される。図7に、上述した処理とフィルタリングの原理を図示した。図7の左上に示してあるように、ケプストラムは、まず最初に、速度で標準化した適切な移動帯域通過フィルタ(関係する時間間隔に即ち中心でロックされる帯域通過フィルタ)を用いて関係する時間間隔(即ち枚葉紙間隔または回転間隔)の周囲でフィルタされる。ケプストラムに関してフィルタされて得られる帯域を図7の右上に示した。フィルタされた帯域の最大値が検出され、その振幅が時間軸で記録され、結果としての信号が図7の下部に示されている。この信号は、印刷機の動作の傾向をモニタするための基礎として用いられる。
【0075】
図5Aと図5Bを参照して上に行なった、四つの異なる測定チャネル(即ちワイピング・シリンダの両側で実施した水平方向の測定と垂直方向の測定)を表わす音響および/または振動の測定に戻ると、上述のケプストラム分析を四つの測定チャネルのそれぞれについて実施し、得られた八つの傾向信号を、印刷機の動作をモニタするための基礎として用いる。
【0076】
本発明の好ましい一実施形態によれば、印刷機の動作のイン-ライン分析は、被印刷体のイン-ライン検査と組み合わされる。換言すれば、印刷機の動作のパターン分類から誘導される結論は、被印刷体の光学的検査から誘導される結論に関係づけられる。
【0077】
検出された動作パラメータは、印刷機の間違った動作または異常な動作の特徴を表わしているため、被印刷体の光学的検査に頼ることなく、検出された間違った動作または異常な動作が印刷エラーにつながるという結論を直ちに引き出すことができる場合がある。しかし別の場合には、印刷エラーが発生する可能性に関する明確な結論を直接引き出すことはできず、印刷機の動作のパターン分類の結果からだけ明確な結論が引き出される。このような場合には、動作分析と被印刷体の光学的検査とを組み合わせることが役立つ。
【0078】
一般的な観点からすると、印刷機の動作の分析と被印刷体の検査とを組み合わせることの目的は、
- 印刷機の特徴的な間違った動作または異常な動作の決定後に、検査システムによって取得された画像は印刷エラーがないことをまだ示しているのに印刷エラー発生の蓋然性が高いという警告を早期に出すこと、および/または
- 被印刷体の光学的検査によって検出された印刷エラーの蓋然性が高い発生原因を示すことにある。
【0079】
ファジー論理技術は、ここでも、被印刷体の検査から得られる結果と、印刷機の動作の分析からの結果を結びつけるのに役立つ。印刷機の特徴的な間違った動作または異常な動作を表わすセンサのデータと、印刷エラーを表わす光学的表示の画像データとを比較することで、ファジー・セットを規定することができ、(印刷機の動作のパターン分類に関して上述したように)より高いランクのパターン分類装置が構成される。
【0080】
当業者には、添付の請求項に規定されている本発明の範囲を逸脱することなく、上述の実施形態に対してさまざまな変更および/または改善が可能であることが理解されるであろう。
【0081】
例えばケプストラム分析をノイズまたは振動に関して測定した信号の前処理に特に適していると上述したが、他のタイプのスペクトル変換を利用したスペクトル分析が考えられる。この文脈で、フーリエ変換の適切な任意変形が考えられるであろう。例えば、いわゆる円変換とウエーブレット変換が含まれる。
【0082】
更に、ファジー論理技術をモデル化とパターン分類の問題に関して説明してきたが、他の方法(例えばいわゆる神経回路網を利用したモデル化技術)も考えられる。これら二つの方法の一つの違いは、ファジー・パターン分類装置は、実験データと、関係するプロセスに関する知見とに基づいて学習プロセスと熟練した設計者(いわゆる“エキスパート”)により構成できるのに対し、神経回路網は、学習プロセスだけに基づいていることである。エキスパートは、“言語学的修正因子”の助けを借りてシステムをチューニングすることができる。
【符号の説明】
【0083】
1 彫刻凹版印刷機
7 圧胴
8 版胴
9 インキ着けシステム
10 ワイピング・ユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、印刷機で処理される被印刷体(printed substrates)の品質の検査に関する。より詳細には、本発明は、被印刷体(例えば印刷された枚葉紙(sheets)またはウエブ(webs))のイン-ライン検査、即ち印刷機で被印刷体が処理されている間に被印刷体上の印刷エラーの発生を検出する方法に関する。本発明は特に、有価証券、とりわけ銀行券製造用の被印刷体上の印刷エラーの発生の検出を対象とする。
【背景技術】
【0002】
印刷物を製造中に、一定レベルの印刷の質が保証されるような処置が代表例として取られる。これは特に、最終製品(即ち銀行券、有価証券等)の到達すべき品質基準が非常に高いセキュリティ(security)印刷の分野に当てはまる。印刷物の品質検査は、通常は印刷物の光学的検査に限定される。このような光学的検査は、オフ-ライン・プロセスとして実施すること、即ち印刷物が印刷機で処理された後に実施すること、またはイン-ライン・プロセスとして実施すること、即ち印刷運転が行なわれている印刷機上で実施することができるが、後者のほうが多い。
【0003】
印刷物全般の検査に基本的に適した光学的検査システムは市場ですでに入手できる。こうした検査システムは、代表例として、閾値に基づく古典的検査法と現在では呼ばれる方法に基づいていて、RGBドメインで動作する。このような検査法は、例えばアメリカ合衆国特許第5,384,859号と第5,317,390号に開示されている。これら公報には、いわゆるアイコン画素差検査法または閾値検査法、即ち印刷物のサンプル画像と参照画像との間の画素密度の差の分析に基づく検査法が開示されている。閾値パラメータは、通常、いくつかのマスター画像の比較に基づいて定義され、それによって画像の局所領域における平均値または標準偏差が決定されて対応する閾値または許容誤差を割り当てられる。次にこれらの値と許容誤差が、検査される材料のサンプル画像について測定された実際の画像値と比較される。
【0004】
上記の閾値検査法は、以下に詳しく説明するようにいくつかの欠点を有する。これら検査法は、有価証券の検査に適するようにできるが、一定条件下においてである。閾値に基づく検査法は、有価証券の検査に直接的には適用されない。というのも、有価証券は、商業印刷では代表例として用いられていない特殊印刷法(例えば凹版印刷)を利用して印刷されるからである。従って閾値に基づく従来検査法は、有価証券に印刷される特別の特徴に適するようにされなければならない。
【0005】
現在の技術によれば、アイコン閾値画像処理法(上記のアメリカ合衆国特許第5,384,859号と第5,317,390号に記載されている)が、高生産性から通常に利用されている。しかしこれらの方法には欠点がある。製造プロセス中に大きいが許容可能な変動があるため、コントラストの突然の変化が存在する検査画像の領域内にニセのエラーが検出される可能性がある。このようなニセのエラーの発生を防止するため、コントラストの突然の変化に特徴付けられる領域は代表例としてエラー検出されないようにして(即ちこのような領域には大きな許容誤差を割り当て)、検査プロセスを安定化させることができる。従ってコントラストの突然の変化がある領域におけるエラー検出はほぼ不可能になる。
【0006】
他の光学的検査法も従来技術で知られている。例えばヨーロッパ特許第0 730 959号と第0 985 531号には、被印刷体に起こりうる変形を考慮した“弾性”モデルに基づく検査法が開示されている。人間の視覚による認知を原始的な方法で真似た知覚検査法も、国際出願WO 2004/017034とドイツ国特許出願第102 08 285号によって既知である。画像パターンの統計的分析に基づく統計的方法も従来技術で知られているが、十分に満足のゆく性能は見られていない。
【0007】
上記の光学的検査法は、定義により、印刷物の光学的品質の検査に限定される。例えば、印刷された材料の表面に付着したインキが多すぎるか少なすぎるか、付着したインキの密度が許容できるかどうか、付着したインキの空間的分布が正しいかどうか等である。こうしたシステムは印刷エラーを比較的効率的に検出するのに適しているが、徐々に形成されていく印刷エラーを早期に検出することはできない。このような印刷エラーは突然には起こらず、徐々に蓄積されていく。こうした印刷エラーは代表例として、印刷機の動作が徐々に劣化または偏向によって起こる。光学的検査システムは本質的に検査許容誤差を持っているため、印刷エラーは、一定期間を経過してその光学的検査システムの許容誤差を超えたときにのみ検出される。
【0008】
印刷機の熟練工は、印刷エラーの発生につながる可能性のある印刷機の動作の悪化または偏向を、例えば印刷機が発する特徴的ノイズに基づいて識別できる。しかしこの能力は、印刷機をことする技術者の実体験、ノウハウ、注意力に大きく依存する。更に、印刷機の動作のこうした変化を検出する能力は、作業者の変動(例えばスタッフの再配置、キーパーソンの離脱または退職等)に本質的に依存する。加えて、この技術熟練は人が基本であるため、時間の経過により知識が失われる危険性が大きい。可能な唯一の処方箋は、あらゆる形態の重要な技術的知識を確実に保存し、技術者に適切な訓練を施すことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】アメリカ合衆国特許第5,384,859号
【特許文献2】アメリカ合衆国特許第5,317,390号
【特許文献3】ヨーロッパ特許第0 730 959号
【特許文献4】ヨーロッパ特許第0 985 531号
【特許文献5】ドイツ国特許出願第102 08 285号
【特許文献6】特開平4−299147号
【特許文献7】国際公報第2005−104034号
【特許文献8】特開平11−77978号
【特許文献9】実開平8−498号
【特許文献10】特開昭63−137846号
【特許文献11】特開平6−286275号
【特許文献12】特開平110198349号
【特許文献13】特開平7−164619号
【特許文献14】特開2002−316405号
【特許文献15】特開平3−264359号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、印刷された最終製品の光学的検査に限定されず、光学的品質基準以外の因子を考慮できる改善された検査システムが必要とされている。
【0011】
従って本発明の全般的な目的は、既知検査技術を改良し、印刷機、特に銀行券や有価証券等の製造中に利用される支持体を処理する設計の印刷機によって処理される被印刷体の品質の包括的制御を確実にできる検査法を提案することである。
【0012】
更に、本発明の目的は、印刷機の操作を促進するように設計されたエキスパート・システムとして実現するのに適した方法を提案することである。この文脈で、印刷エラーの発生予測に適したエキスパート・システムを実現できる方法を提案すること、および/または印刷エラーが発生した場合に印刷エラーの蓋然性の高い原因(likely cause)の説明を提供することが特に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的は、添付の請求項に記載されている方法とエキスパート・システムによって実現される。
【0014】
従って、被印刷体を印刷機で処理中にその被印刷体上の印刷エラーの発生を検出する方法であって、印刷機の機能的構成要素に複数のセンサを取り付け、被印刷体の処理中に印刷機の動作をモニタする工程と、印刷機の動作のイン-ライン分析を行なって、印刷機の特徴的で被印刷体上の印刷エラーの発生につながるかつながる可能性のある動作が起こるか、それとも被印刷体の良好な印刷品質につながるかつながる可能性のある印刷機の特徴的動作が起こるかを決定する工程を含む方法が提供される。
【0015】
本発明のこの文脈では、エキスパート・システムは、基本的に、被印刷体の処理中に印刷機の動作をモニタするために印刷機の機能的構成要素に接続された複数のセンサと、そのセンサに接続されていて印刷機の動作のイン-ライン分析を行なう処理システムとを含み、その処理システムは、上記方法を実施できるように構成される。
【0016】
上記方法は、印刷機の動作のイン-ライン分析に、被印刷体のイン-ライン光学的検査を組み合わせることを含むことが好ましい。被印刷体のイン-ライン光学的検査は、(i)印刷機で処理された被印刷体の画像を光学的に取得し、かつ(ii)被印刷体上で起こる可能性のある印刷エラーを識別するために被印刷体に関して取得された画像を処理することを含む。
【0017】
一実施形態によれば、印刷機の間違った動作または異常な動作を決定した上で、印刷エラー発生の可能性のあることを早期に警告するように、印刷機の動作のイン-ライン分析を被印刷体のイン-ライン光学的検査と組み合わせ、他方で取得された画像に印刷エラーがないこと決定する。換言すれば、印刷機の動作がモニタされ、他方で被印刷体が光学的に検査されてその印刷品質がチェックされ、かつ印刷機の動作に欠陥や異常が検出された場合には、印刷エラーが将来発生する可能性があることが早期に示される。この実施形態により印刷エラー発生の可能性があることが早期に警告されるため、印刷機の操作者が印刷機を適切に変更して印刷エラーの発生を防止し、または印刷エラーの実際の発生から印刷機の修理までの時間をできるだけ短くすることができる。
【0018】
別の実施形態によれば、印刷エラーの蓋然性の高い発生原因の表示を提示するように、印刷機の動作のイン-ライン分析を被印刷体のイン-ライン光学的検査と組み合わせる。換言すれば、印刷エラーが光学的検査システムによって検出された場合には、印刷エラーの蓋然的原因もしくは可能原因に関する一つ以上の説明が、被印刷体の処理中に印刷機の動作の分析に基づいて提示されてよい。
【0019】
印刷機の動作の分析は、適切に配置した複数のセンサを用いて印刷機の特徴的動作をモデル化することによって行なうことが好ましい。これらのセンサは印刷機の機能的構成要素の動作パラメータを感知し、そのパラメータが、特徴的動作の代表的パラメータとして利用される。その特徴的動作として、
- 印刷エラーの発生につながるか、つながる可能性のある印刷機の間違った動作または異常な動作、および/または
- 被印刷体の良好な印刷品質につながるか、つながる可能性のある印刷機の正常な動作が含まれる。
【0020】
更に、誤ったエラーまたはニセのエラー(即ち上述の光学的検査システムによって間違って検出されるエラー)を減らし、いわゆるαエラーとβエラーを最適化することを目的として印刷機の特徴的動作をモデル化することができる。αエラーは、良好な枚葉紙の束の中で粗悪な枚葉紙を見いだす確率であると理解され、他方、βエラーは、粗悪な枚葉紙の束の中で良好な枚葉紙を見いだす確率であると理解されている。本発明によれば、複数センサを配置すること(即ち複数の測定チャネルを有するセンサ・システムを用いること)により、αエラーとβエラーを効率的に減らすことができる。
【0021】
この場合、印刷機の機能的構成要素に関して感知された動作パラメータが印刷機の間違った動作または異常な動作を示しているかどうかの決定は、被印刷体が印刷機で処理されている間に印刷機の機能的構成要素の動作パラメータをモニタし、モニタされた動作パラメータが印刷機のモデル化された特徴的動作のうちのいずれか一つを示しているかを決定することによって行なわれる。
【0022】
印刷機の間違った動作または異常な動作のモデル化は、
- 印刷機に起こる可能性のある印刷エラーの複数のクラスを規定し、
- 印刷エラーのそれぞれのクラスに関し、印刷エラーの発生につながるか、つながる可能性のある印刷機の間違った動作または異常な動作を特徴付ける印刷機の動作パラメータを決定し、
- 印刷エラーのそれぞれのクラスに関し、間違った動作または異常な動作を特徴付けると決定される動作パラメータに基づき、印刷機の間違った動作または異常な動作の対応するモデルを規定することを含むことが好ましい。
【0023】
この後者の場合、印刷機の機能的構成要素に関して感知された動作パラメータが、印刷機が間違った動作または異常な動作をしていることを示しているかどうかの決定は、モニタされたその動作パラメータが、印刷機の間違った動作または異常な動作に関して規定されたモデルのうちの任意の一つに対応しているかを決定することによって行なわれる。
【0024】
ファジー・パターン分類技術を利用して機械の動作を分析することが好ましい。換言すれば、ファジー論理規則のセットを利用して印刷機の動作を特徴づけ、印刷機に現われる可能性のあるさまざまなクラスの印刷エラーをモデル化する。これらファジー論理規則が決まると、それを適用して印刷機の動作をモニタし、かつ印刷エラーの発生につながるかつながる可能性のある印刷機の動作により対応する可能性を識別する。
【0025】
本発明の好ましい実施形態は従属項の対象事項である。
【0026】
本発明の他の特徴と利点は、単なる例示として添付図面に示した本発明の実施形態に関する以下の詳細な説明から明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】駆動側から見た彫刻凹版印刷機の側面図である。
【図2】図1に示した彫刻凹版印刷機の印刷ユニットの拡大側面図である。
【図3】印刷機の動作をイン-ライン分析するためのファジー・パターン分類システムの概略図である。
【図4】図1に示した彫刻凹版印刷機での処理中にカメラで撮影した印刷枚葉紙の画像の一例であり、枚葉紙は、光学的品質基準に合致していると考えられる(即ち良好な枚葉紙)。
【図4A】図1に示した彫刻凹版印刷機での処理中にカメラで撮影した印刷枚葉紙の画像の第二の例であり、枚葉紙は、不十分なワイピング圧による印刷エラーを含んでいる。
【図4B】図1に示した彫刻凹版印刷機上での処理中にカメラで撮影した印刷枚葉紙の画像の第三例であり、枚葉紙は、ワイピング・シリンダの表面の湿りによる印刷エラーを含んでいる。
【図4C】図1に示した彫刻凹版印刷機上での処理中にカメラで撮影した印刷枚葉紙の画像の第四例であり、枚葉紙は、ワイピング・シリンダの表面汚れによる印刷エラーを含んでいる。
【図5A】図1と図2に示した彫刻凹版印刷機のワイピング・ユニットの一側から取った写真であり、ワイピング・シリンダの軸受と、印刷機から発生するノイズ/振動を検出するためのセンサ装置を示し、センサ装置は、ワイピング・シリンダの各軸受の上に配置されている。
【図5B】図1と図2に示した彫刻凹版印刷機のワイピング・ユニットの他側から取った写真であり、ワイピング・シリンダの軸受と、印刷機から発生するノイズ/振動を検出するためのセンサ装置を示し、センサ装置は、ワイピング・シリンダの各軸受の上に配置されている。
【図6】ワイピング・シリンダの一つの軸受上で測定された信号を処理することによって得られたいわゆるケプストラムの例である。
【図7】いかにして図6のケプストラムを更に処理し、ケプストラムの選択された値、即ち図6に示した“枚葉紙あたりのケプストラム”の値と“回転あたりのケプストラム”の値の振幅の時間変化に対応する処理済み信号を取り出しうるかをおおまかに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
枚葉紙彫刻凹版印刷機の特定形態の事例において本発明を次に説明する。請求項に記載の本発明は、他のタイプの印刷機に同様に適用できることが理解されるであろう。以下に説明する印刷機は次々に供給される枚葉紙(sheets)の形態の被印刷体を処理するのに適しているが、本発明は、被印刷体が連続的ウエブを形成するウエブ供給印刷機にも適用できることが理解されるであろう。
【0029】
図1は彫刻凹版印刷機1の形態の枚葉紙印刷機を示し、この印刷機は、従来と同様、印刷される枚葉紙を供給するための枚葉紙フィーダ2と、枚葉紙にここでは凹版印刷によって印刷するための印刷ユニット3と、印刷されたばかりの枚葉紙を集収するための枚葉紙送出ユニット4とを含む。印刷ユニット3は凹版印刷に適し、代表的には、インプレッションシリンダ、即ち圧胴7と、凹版刷版を取り付けたプレートシリンダ、即ち版胴8(この実施例では、版胴8は、3枚の凹版刷版8a、8b、8cを有する3セグメントのシリンダである(図2))と、版胴8に取り付けた凹版刷版8a、8b、8cの表面にインキを着けるインキ着けシステム9と、枚葉紙に印刷する前に版胴8に取り付けた凹版刷版8a、8b、8cのインク着けされた表面をぬぐうワイピング・ユニット10とを備えている。彫刻凹版印刷機の同様の例が、例えばヨーロッパ特許第0 091 709号、第0 406 157号、第0 873 866号に開示されている。
【0030】
枚葉紙は、フィーダ・ユニット2から給紙台に供給された後、圧胴7に供給される。次に枚葉紙は、圧胴7により、圧胴7と版胴8が接触して凹版印刷がなされる位置に形成される印刷ニップに運ばれる。印刷された枚葉紙は、送出ユニット4に送出するため圧胴7から枚葉紙移動システム11に移される。枚葉紙移動システム11は、通常は、一対のエンドレス・チェーンを有するエンドレス移動システムを含み、エンドレス・チェーンにより、枚葉紙の前縁を掴むための相互に離隔した複数の把持棒を駆動する(印刷されたばかりの枚葉紙側は、送出ユニット4に向かう途中では下方を向いている)。枚葉紙は、圧胴7から対応する一つの把持棒へと次々に移される。
【0031】
印刷されたばかりの枚葉紙は、枚葉紙送出ユニット4に運ばれる間に光学的検査システム5によって検査されることが好ましい。図示実施例では、光学的検査システム5は、枚葉紙移動システム11の通路上にあって印刷ユニット3の直後に配置されることが好ましい。このような光学的検査システム5は既に知られているため、詳細に説明する必要はない。図1に示した彫刻凹版印刷機の光学的検査システム5として用いるのに適した光学的検査システムの例は、例えば、国際出願WO 97/37329とWO 03/070465に記載されている。印刷された枚葉紙の光学的検査を行なうのに適した他の光学的検査システムの例は、ヨーロッパ特許第0 527 453号、第0 543 281号、WO 97/48556、WO 99/41082、WO 02/102595、ヨーロッパ特許第0 820 864号、第0 820 865号、第1 142 712号、第1 167 034号、第1 190 855号、第1 231 057号、第1 323 529号にも見いだすことができる。
【0032】
光学的検査システム5は、印刷された枚葉紙の光学的検査と、印刷エラー発生の検出に適している。この明細書の冒頭で述べたように、光学的検査は例えばアメリカ合衆国特許第5,317,390号と第5,384,859号(ヨーロッパ特許第0 527 285号と第0 540 833号も参照のこと)に開示されている原理、または光学的検査に関する他の適切な原理に従って実施することができる。
【0033】
印刷された枚葉紙は、送出される前に、枚葉紙移動システム11の移動通路上で検査システム5の後ろに配置された乾燥ユニット6の前に運ばれる。乾燥は、枚葉紙の光学的検査を行なう前に実施することができる。
【0034】
光学的検査の結果に応じて、良好な枚葉紙、即ち検査後に印刷品質の観点から許容できると考えられる枚葉紙は、二つある枚葉紙送出パイルの一つに送出される(予め枚葉紙を送出して他方のパイルを空にしながら一つのパイルに枚葉紙が供給される。)。粗悪な枚葉紙、即ち検査後に印刷品質の観点から許容できないと考えられる枚葉紙は、第三の枚葉紙送出パイルに送出される。
【0035】
図2は、図1に示した彫刻凹版印刷機1の印刷ユニット3の概略図である。既述したように、印刷ユニット3は、基本的に、圧胴7と、凹版刷版8a、8b、8cを備えた版胴8と、インキ着けシステム9と、ワイピング・ユニット10とを含む。
【0036】
インキ着けシステム9は、この実施例では四つのインキ着け装置を含む。そのうちの三つは、版胴8と接触する共通のインキ収集シリンダまたはオルロフ・シリンダ9.5(ここでは2セグメントシリンダ)と共働する。四番目のインキ着け装置は、版胴8の表面と直接接触する配置にされている。従って図示したインキ着けシステム9は、版胴8への直接的なインキ着けと間接的なインキ着けの両方に適していることが理解される。インキ収集シリンダ9.5と共働するそれぞれのインキ着け装置は、この例では対のインキ・ローラ9.11、9.21、9.31とそれぞれ共働するインキ溝9.10、9.20、9.30を有する。各対のインキ・ローラ9.11、9.21、9.31は、インキ収集シリンダ9.5と接触する対応するそれぞれのシャブロン(chablon)・シリンダ(選択的インキ着けシリンダとも呼ばれる)9.13、9.23、9.33にインキを着ける。四番目のインキ着け装置に関しては、インキ溝9.40と、追加のインキ・ローラ9.44と、一対のインキ・ローラ9.41と、シャブロン・シリンダ9.43とを備えていて、シャブロン・シリンダは版胴8と接触する。後者の場合には追加のインキ・ローラ9.44が必要である。インキ収集シリンダ9.5とは反対方向に回転する版胴8の表面に直接インキを着けるのに四番目のインキ着け装置9.4が用いられるからである。従来技術で一般的なように、シャブロン・シリンダ9.13、9.23、9.33、9.43の表面は、凹版刷版8a、8b、8cのうちでそれぞれのインキ着け装置から供給される対応する色のインキを受け領域に対応する突起部を有する構造にされる。
【0037】
ワイピング・ユニット10は、(版胴8に近づいたり離れたりする運動が可能な)ワイピング・タンク10.1と、そのワイピング・タンクの中に配置されていて版胴8と接触するワイピング・シリンダ10.2と、ワイピング・シリンダ10.2の表面と接触してワイピング・シリンダ10.2の表面から残ったインキを除去する少なくとも第一のブレード(または乾燥ブレード)10.3と、ワイピング液をワイピング・シリンダ10.2の表面に付着させるクリーニング手段10.4と、ワイピング・シリンダ10.2の表面と接触してワイピング・シリンダ10.2の表面から残ったワイピング液を除去する乾燥ブレード10.5とを含む。クリーニング手段10.4は、代表例として、ワイピング・シリンダ10.2の表面にワイピング液を吹き付けてワイピング・シリンダ10.2の表面をきれいにするための一群のスプレー装置と洗浄ブラシを備える。
【0038】
第一のブレード即ち乾燥ブレード10.3は、代表例として、ワイピング・シリンダ10.2の表面から残ったインキの約80%を除去するのに対し、クリーニング手段10.4は、スプレーしたワイピング液と洗浄ブラシを用いて残ったインキの残りを除去する。乾燥ブレード10.5はワイピング・シリンダ10.2の表面を乾燥させることを目的とし、表面から残ったワイピング液を除去することにより、ワイピング液の残りが版胴の表面を汚染しないようにする。
【0039】
スプレー装置と洗浄ブラシを備えるタイプの上述のワイピング・ユニットは、例えばアメリカ合衆国特許第4,236,450号、ヨーロッパ特許第0 622 191号、WO 03/093011に、より詳細に記載されている。他のタイプのワイピング・ユニットも想定できる。例えばスイス国特許第415 694号、アメリカ合衆国特許第3,468,248号、第3,656,431号に記載されているような浸漬タイプがあり、ワイピング・シリンダの一部がワイピング液の中に浸漬されている。
【0040】
既述したように、現在の技術によれば、印刷された枚葉紙の印刷品質は、代表例として、印刷された枚葉紙の画像を光学的に取得するのに適した適切な光学的検査システムのみによって制御され、取得した画像の処理結果に基づいて印刷された枚葉紙上の印刷エラーの発生が決定される。この明細書の冒頭に記載したように、印刷された最終製品の光学的検査は本質的にさまざまな問題を抱えている。特に、印刷エラーの発生を早期に警告できず、印刷エラーの確実と思われる蓋然的原因(likely cause)を説明もできない。
【0041】
本発明によれば、光学的検査に固有の欠点は、印刷された枚葉紙を処理している間に印刷機の動作をイン-ライン分析することによって克服される。この目的のために、モニタする印刷機の機能的構成要素に複数のセンサを取り付ける。これらのセンサは被印刷体の処理中に印刷機の動作をモニタすることを目的としているので、センサは適切に選択され、印刷機の適当な機能的構成要素上に配置されなければならない。センサの実際の選択と、センサを印刷機に取り付ける場所は、動作をモニタしようとする印刷機の構成に依存する。例えば彫刻凹版印刷機とオフセット印刷機では機械の動作が同じでないため、センサの選択と取り付け場所は同じにならないであろう。
【0042】
厳密に言えば、印刷機のすべての機能的構成要素にセンサを設ける必要はない。むしろ、センサは、印刷機の選択された機能的構成要素に関する動作パラメータが検出されるように選択して配置し、印刷機のさまざまな動作を十分精確に表現する説明を可能にするようにされなければならない。センサは、できるだけ相互に相関しない動作パラメータを検出してモニタするように選択して配置されることが好ましい。実際、動作パラメータの相関が少ないほど、印刷機の動作の説明がより正確になる。例えば共通する一つの駆動装置によって駆動される二つのシリンダのそれぞれの回転速度をモニタすること自体は、二つのパラメータが相互に直接関連しているためにそれほど有用ではない。逆に、印刷機の駆動手段として用いられる電動モータによって生じる電流と、印刷機の二つのシリンダ間の接触圧とをモニタすると、印刷機の動作がよりよく説明される。
【0043】
更に、センサの選択と場所は、モニタしたい実際の動作パターンのセットと、検出したい印刷エラーのクラスを考慮して行なわれなければならない。一般的ルールとして、以下の動作パラメータの任意の組み合わせを感知するために、センサを印刷機に取り付ける。
- 印刷機の処理速度、即ち印刷機が被印刷体を処理する速度、および/または
- 印刷機のシリンダまたはローラの回転速度、および/または
- 印刷機の印刷ユニットのシリンダを駆動する電動モータによって生じる電流、および/または
- 印刷機のシリンダまたはローラの温度、および/または
- 印刷機の二つのシリンダまたはローラ間の圧力、および/または
- 印刷機の一つのシリンダまたはローラの軸受上の拘束、および/または
- 印刷機におけるインキまたは流体の消費、および/または
- 処理された被印刷体の印刷機内における位置または存在(この情報は、いくつかの刷版および/または印刷ブランケットを備える印刷機の事例において、印刷の動作が一つの刷版または印刷ブランケットから次の刷版または印刷ブランケットに変わるときに特に有用である)。
【0044】
個々の印刷機の構成に応じて、他の動作パラメータをモニタすることが有用である。例えば彫刻凹版印刷機の場合には、ワイピング・ユニットの主要部品をモニタすることが、印刷機の動作の代表的モデルを誘導する上で特に有用である。これは、凹版印刷における印刷上の多くの問題が、ワイピング・ユニットの間違った動作または異常な動作に起因するからである。
【0045】
図1に示した彫刻凹版印刷機1の事例において、以下のことパラメータが一般的ルールと考えられる:
- 彫刻凹版印刷機1の処理速度 - (他のタイプの印刷機と同様)彫刻凹版印刷機の動作は、枚葉紙(またはウエブ)を処理する速度に依存する、および/または
- 彫刻凹版印刷機1の印刷ユニット3の駆動手段として用いる電動モータによって生じる電流 - ここでも、印刷機の動作に応じて、印刷ユニット3の駆動手段として用いる電動モータによって生じる電流は特徴的変化をする、および/または
- 圧胴7、および/または版胴8、および/またはインキ着けシステム9またはワイピング・ユニット10のシリンダまたはローラ(例えばインキ着けローラ9.11、9.12、9.21、9.22、9.31、9.32、9.41、9.42、および/またはシャブロン・シリンダ9.13、9.23、9.33、9.43、および/またはインキ収集シリンダ9.5、および/またはワイピング・シリンダ10.2)の回転速度 - 回転速度は、印刷機の他の動作パラメータほど重要ではないが、それでも印刷機の動作の有用な説明情報となる可能性がある、および/または
- 圧胴7、および/または版胴8、および/またはインキ着けシステム9またはワイピング・ユニット10のシリンダまたはローラ(例えばインキ着けローラ9.11、9.12、9.21、9.22、9.31、9.32、9.41、9.42、および/またはシャブロン・シリンダ9.13、9.23、9.33、9.43、および/またはインキ収集シリンダ9.5、および/またはワイピング・シリンダ10.2)の温度 - 温度は機械の動作を説明するための有用な動作パラメータである、特に、版胴8を代表例として熱によって制御して温度を実質的に一定レベル(代表例として約80℃)に維持する彫刻凹版印刷機の場合に当てはまる、版胴8の温度が低すぎると、例えばインキが硬化し始めていないために裏移りの問題が発生する可能性がある、および/または
- 版胴8と圧胴7との間の印刷圧 - 印刷圧は凹版印刷において特に特徴的であり、接触圧は、代表例として、10,000N/cmのオーダーの線圧力に達する、および/または
- 版胴8とワイピング・ユニット10との間のワイピング圧 - 彫刻凹版印刷機のワイピング圧が不十分だったり変動すると、さまざまな印刷エラーの原因となる、従ってワイピング圧は、彫刻凹版印刷機の事例において特に有用なパラメータとなる、および/または
- 版胴8とインキ着けシステム9との間の接触圧(例えばインキ収集シリンダ9.5と版胴8の間、または直接接触するシャブロン・シリンダ9.43と版胴8との間の接触圧) - 印刷圧およびワイピング圧と同様、彫刻凹版印刷機の版胴とインキ着けシステムとの間の接触圧が不十分である(または、変動する)と、インキ着けの問題源になり、従って印刷エラーが起こる可能性がある、および/または
- ワイピング・ユニット10の動作パラメータ - 上記のワイピング圧以外に、ワイピング・ユニットの他の動作パラメータ(リストにして下に示す)が、特にワイピングの機能障害が関係する場合に印刷機の動作をモデル化するのに有用であろう、および/または
- インキ着けシステム9の動作パラメータ - 再度、インキ着けシステム9と版胴8の間の接触圧以外に、インキ着けシステム9におけるインキ供給に関する動作パラメータ(例えばインキ溝の中のインキの量、さまざまなインキ着けローラに移されるインキの量、インキの物理化学的特性(温度、粘度等))が、印刷エラーの原因となる可能性がある。
【0046】
更に詳細には、彫刻凹版印刷機のワイピング・ユニットの動作異常に起因する機械の動作の欠陥または異常の事例において、以下の動作パラメータが印刷機の動作の代表的パラメータと考えられる:
- ワイピング・シリンダ10.2と版胴8間のワイピング圧、および/または
- ワイピング・ユニット10中でのワイピング液の流れ、および/または
- ワイピング液の物理化学的特性(例えばワイピング液の温度、ワイピング液の化学組成等)、および/または
- 乾燥ブレード10.3とワイピング・シリンダ10.2間、または乾燥ブレード10.5とワイピング・シリンダ10.2間のブレード圧、および/または
- ワイピング・シリンダ10.2に対する乾燥ブレード10.3または乾燥ブレード10.5のブレード位置、および/または
- ワイピング・シリンダ10.2の軸受上の拘束。
【0047】
動作パラメータに関する上記リストは、もちろん、すべてを列挙したリストではない。
【0048】
本発明の発明者は、上記動作パラメータの適切な組み合わせに基づき、印刷機の動作をモデル化できること、印刷機のモニタされた動作が、印刷エラーの発生につながるかつながる可能性のある異常な動作または間違った動作に向かうか否かを決定できることを知見した。従って被印刷体の印刷中および/または処理中に印刷機の動作のイン-ライン分析を行なうことにより、被印刷体の印刷品質に影響を与えるか与える可能性のある間違った動作または異常な動作の発生を決定できる。
【0049】
印刷機の動作に関して提案するイン-ライン分析では、印刷機の動作の傾向分析(trend analysis)を実施することが好ましい。換言すれば、時間の一定点での印刷機の動作を調べるのではなく、長期にわたって(即ち被印刷体を連続的に処理している間に)分析を行なう。このような傾向分析は、印刷機の動作の漸進的偏向または悪化の識別もしくは確認(identification)を可能にする点で好ましい。
【0050】
印刷機の動作のイン-ライン分析は、ファジー・パターン分類技術に基づくことが好ましい。おおまかに言えば、パターン分類(またはパターン認識)は、測定結果の説明または分類に関する既知技術である。パターン分類の裏にあるアイデアは、一セットのパターン(ここでは1台の印刷機が示す可能性のあるさまざまな動作)の中で共通する特徴または性質を定義し、それらを決定された分類モデルに従って異なる所定クラスに分類するというものである。より詳細には、本発明の範囲では、この考え方により、所定の1台の印刷機の可能な動作を、印刷エラーの特定クラスに対応する種々のクラスの動作(または動作パターン)に分類することが可能な分類モデルを規定する。
【0051】
従来のモデル化法では、通常、あいまい、不精確、または不確実な説明によるルールを避けようとする。ファジー・システムは、そのような記述規則を意図的に利用する。ファジー・システムでは、パターンが“正”か“誤”という規則によって決まる二値法に従うのではなく、“パラメータαが、値βに等しい/値βよりも大きい/値βよりも小さいならば、そのときは、事象Aが、常に起こる/しばしば起こる/ときどき起こる/決して起こらない”というタイプの相対的な“もし...ならば、そのときは”という規則が利用される。例示した規則における“常に”、“しばしば”、“ときどき”、“決して”という記述語は、代表例として“言語学的修飾語”と呼ばれ、望ましいパターンを徐々に真に近づくという意味でモデル化するのに用いられる。このようにすると、取り扱いが容易で人間の思考により馴染んだ、より単純でより適切なモデルが得られる。
【0052】
本発明の発明者は、ファジー・システムが、印刷機の先験的に無限に変化する動作パターンをモデル化する問題に特に適していることを確認した。特にファジー・パターンの分類は、印刷機の動作を記述して限られた数のクラスに分類する有効な一つの方法である。ファジー・パターンの分類では、代表例として、入力スペース(ここでは、印刷機の機能的構成要素に取り付けた複数のセンサによって検出された変数(即ち動作パラメータ))をカテゴリーまたはパターンのクラスに分割し、カテゴリーの一つに所定パターンを割り当てる。あるパターンが所定のカテゴリーにそのままでは当てはまらない場合には、いわゆる“適合度”(goodness of fit)が報告される。パターンのクラスとしてファジー・セットを用いることにより、あるパターンがある一つのクラスまたは別のクラスに属する程度を記述することが可能である。それぞれのカテゴリーをファジー・セットと見るとともに、一セットのファジーな“もし...ならば、そのときは”の規則を指定演算子と識別することにより、ファジー・セットとパターン分類間に直接的な関係が実現される。
【0053】
図3は、本発明に従って印刷機の動作を分析するためのファジー分類システムの構成の概略図である。複数のセンサ配置によって検出された動作パラメータP1からPnは、場合によっては前処理された後、パターン分類装置に供給される。このような前処理として、特に、センサから出力された信号、中でも特に、印刷機の動作を表わす特徴的パターンが見いだされることが期待される信号のうちのいくつかをスペクトル変換することが挙げられる(これについては後述する)。このようなスペクトル変換は、特に、印刷機から発生する振動またはノイズ(例えば彫刻凹版印刷機の特徴的ノイズ/振動パターン)を表わす信号を処理するために行なわれる。
【0054】
既述したように、ファジー・パターン分類装置は、基本的に、人間の思考を真似た“もし...ならば、そのときは”というファジー規則のセットとして実行されており、その規則は、入力され(場合によっては前処理され)た動作パラメータP1からPnによって表わされる印刷機の動作と、それぞれに印刷エラーの対応するクラスが割り当てられたいくつかの決められたパターンのクラスとをリンクさせるように設計されている。複数のセンサ装置によってモニタされた動作パラメータP1からPnが供給されると、あらかじめ規定されたパターンのクラスと、それに付随する印刷エラーのクラスに分類される。それぞれのパターンのクラスには、入力された動作パラメータP1からPnによって表わされるモニタされた印刷機の動作と、パターンのクラスを形成するファジーセットの規則との間の対応に応じて、対応する“メンバーシップ”値またはウエイト(weight)(“スコア値”または“フィット適合値”とも呼ばれる)が与えられることが好ましい。
【0055】
当業者にはさまざまなファジー・モデルが知られている。その中で特に、いわゆる“ファジー・パターン分類”モデル(FPC)や“タカギ-スゲノ”モデル等が挙げられる。一般的に、これらのモデルは“言語”ファジー規則の助けを借りて設計することができる。更に、出力モデルはいろいろな方法で設計することができ、例えば“重心”法や“単集合(singleton)”に基づく方法等を利用する。本発明の範囲では、“言語”ファジー・モデル化法と“単集合”に基づく出力関数が、印刷機の動作分類の目的に最適であるように思われる。
【0056】
彫刻凹版印刷機の例に戻ると、印刷機に起こる可能性のある印刷エラーに関して決定されたクラスを形成することができる。説明のため、図1に示した彫刻凹版印刷機に起こる可能性があってワイピング・ユニット10の動作異常に起因すると思われる印刷エラーの主要なクラスをリストとして示す:
クラスA:ワイピング・シリンダ10.2と版胴8間の不十分なワイピング圧に起因する印刷エラー - ワイピング圧が不十分だと、代表例として、版胴の表面でぬぐわれる領域が十分でなく、均一にインキ着けされた領域として被印刷体上に反映される、
クラスB:乾燥ブレード10.5の設定が不適切であるためワイピング・シリンダ10.2の表面の乾燥が不十分である(または湿り過ぎている)ことに起因する印刷エラー - ワイピング・シリンダの表面が湿り過ぎていると、代表例として、版胴の表面上のインキが汚れ、凹版印刷の領域においてインキ着けされた領域が希薄化または陰影領域として被印刷体上に反映される、
クラスC:ワイピング・シリンダ10.2が汚れている、即ちワイピング・シリンダ10.2の表面にインキが残っていることに起因する印刷エラー - ワイピング・シリンダの汚れはさまざまな因子の結果である可能性があり、因子として、例えばワイピング液の供給または流れが不十分であること(例えばスプレー装置の問題)、洗浄ブラシが有効でないこと(例えばブラシが摩耗し過ぎている)、乾燥ブレードとワイピング・シリンダ間の圧力が不十分であること、乾燥ブレードが損傷していること、ワイピング液の温度が不十分であること、ワイピング液の物理的特性または化学的特性が不十分であること等がある - ワイピング・シリンダが汚れていると、代表例として、被印刷体上でインキ着けされたパターンがランダムに分布する、
クラスD:ワイピング・シリンダ10.2が損傷していることに起因する印刷エラー - ワイピング・シリンダが損傷していると、代表例として、ワイピング・シリンダが1回転する間のワイピング・ユニットのワイピング効率が局所的に変動し、クラスAと同様に被印刷体に反映される、
クラスE:乾燥ブレード10.5が損傷していることに起因する印刷エラー - 乾燥ブレードが損傷していると、代表例として、ワイピング・シリンダの表面の乾燥/湿潤状態が変動し、そのことが、クラスBと同様に被印刷体に反映される、
クラスF:ワイピング・シリンダ10.2の温度変化に起因する印刷エラー - クラスAおよびクラスDと同様、ワイピング・シリンダの温度が変動するとワイピング・シリンダのサイズが変動するため、ワイピング効率が変化し、そのことが被印刷体に反映される。
【0057】
図4は、図1に示した彫刻凹版印刷機で処理された印刷された枚葉紙の部分図である。より詳細には、図4は、正常な動作条件下で得られた印刷された枚葉紙の図である。
【0058】
図4Aは、彫刻凹版印刷機で処理されて印刷された枚葉紙の一部を示す写真であり、上にクラスAで言及した不十分なワイピング圧に起因する特徴的な印刷エラーが見られる。図4Aの上部に示されたように、印刷エラーが、凹版印刷の領域に均一にインク着けされた領域として現われている。本発明の発明者は、図4Aに示した印刷エラーが実際に発生するのは瞬間的にではなく、ワイピング圧が低下してから一定期間経過した後であることを確認している。印刷ユニットを代表例として駆動する電動モータによって生じる電流をモニタすることにより、ワイピング圧の低下を検出できる。ワイピング圧のそのような低下は、電流消費の低下に反映される。ワイピング・シリンダの軸受で検出される拘束(例えば振動)をモニタすることにより、印刷に関する間違った動作の特徴的モデルを形成し、印刷エラーの発生を予測することができる。クラスDとクラスFで言及したワイピング圧の変動は同様にして検出することができる。
【0059】
図4Bは、彫刻凹版印刷機で処理されて印刷された枚葉紙の一部を示す写真であり、上にクラスBで言及したワイピング液の汚染に起因する特徴的印刷エラーが見られる。図4Bの下部に示されたように、印刷エラーが、凹版印刷の領域における希薄領域または陰影領域として現われている。本発明の発明者は、図4Bに示した印刷エラーが実際に発生するのはこの場合にも瞬間的にではないことを確認した。なぜならワイピング液は、通常は、ワイピング・シリンダの乾燥が不十分であることが原因で凹版刷版の表面に徐々にしかたまらないからである。ここでも、印刷ユニットを駆動する電動モータによって生じる電流をモニタするとともに、乾燥ブレードの位置と、乾燥ブレードとワイピング・シリンダ間のブレード圧とをモニタすることにより、ワイピング・シリンダの表面の乾燥が不十分であることの検出が可能である(このようなモニタは、選択的、または付加的にワイピング・シリンダの表面を直接モニタすることによって可能になる)。ワイピング・シリンダの軸受で検出される拘束をモニタすることは、ここでも、不十分な乾燥に関する印刷機の動作を特徴づけるのに有用である。従って、印刷に関する間違った動作の特徴的モデルを規定し、印刷エラーの発生を予測することが同様に可能である。クラスEで言及した損傷した乾燥ブレードは、同様に検出することができる。
【0060】
図4Cは、彫刻凹版印刷機で処理されて印刷された枚葉紙の一部を示す写真であり、ワイピング液の供給が不十分であることによって起こるクラスCで上述したワイピング・シリンダの表面の汚れに起因する特徴的印刷エラーが見られる。図4Cに見られる肖像領域の左側に示されたように、印刷エラーが、ランダムな形にインキが着いた領域として現われている。他の印刷エラーと同様、本発明の発明者は、図4Cに見られる印刷エラーが、ここでも瞬間的に発生するのではないことを確認した。印刷ユニットを駆動する電動モータによって生じる電流をモニタすることにより、例えばワイピング液の量が少なすぎることを電流消費の増大傾向として検出できる。この測定は、ワイピング領域の流れの測定に加えて行なうことができる。従ってここでも、印刷に関する間違った動作の特徴的モデルを規定し、印刷エラーの発生を予測することができる。クラスCで言及した印刷エラーの他の原因は同様にしてモニタすることができる。
【0061】
リストとして上述した印刷エラーのクラスは、もちろん、説明だけを目的として挙げてある。上記リストはワイピングに問題があることの結果として起こる主要なエラーを表わすと考えられるが、このリストにすべてが列挙されていると理解してはならない。
【0062】
印刷エラーは、ワイピング・ユニットの動作に関連した問題の結果として起こるだけでなく、印刷機の他の機能的構成要素が異常である(例えば版胴8と圧胴7の間の不十分な印刷圧、インキ着けシステム9による版胴8への不十分なインキ着け等)の結果として起こる可能性があることが理解されるであろう。
【0063】
既述したように、印刷機の動作の分析は、印刷機の機能的構成要素の動作パラメータのうちで印刷機の動作を十分に記述する動作パラメータの測定値を提供できる複数のセンサの適切配置に基づいている。印刷機の動作を測定する特に好ましい一つの方法は、印刷機から発生するノイズまたは振動をモニタすることである。そのようなノイズまたは振動は、理論的に印刷機の適切な任意の位置で測定することができる。ノイズまたは振動の測定に特に適した場所は、印刷機のシリンダの軸受上である。図1と図2に示した彫刻凹版印刷機の事例では、一つの好適場所は、ワイピング・シリンダ10.2の支持シャフトである。
【0064】
図5Aと図5Bは、印刷機によってワイピング・シリンダ10.2の軸に発生するノイズまたは振動を感知するためのセンサの可能な配置を示す2枚の写真である。図5Aは、彫刻凹版印刷機の左側(または駆動側)のワイピング・タンク10.1に位置するワイピング・シリンダ10.2の第一のシリンダの軸受101を示すのに対し、図5Bは、ワイピング・シリンダ10.2の反対側の第2のシリンダの軸受102を示す(解明のために、図1は、駆動側から見た彫刻凹版印刷機を示している)。ワイピング・シリンダ10.2は図5Aと図5Bには示されていないが、写真に見られる二つの軸受101と102の間に支持される。版胴8は、図5Aと図5Bに一部が見える。
【0065】
それぞれのシリンダの軸受101、102には、ワイピング・シリンダ10.2の回転軸に垂直の異なる二方向に沿って伝達されるノイズまたは振動を感知するための一対のセンサ51a、51bと52a、52bが取り付けられていることが好ましい。この場合に、水平方向に伝達されるノイズまたは振動はセンサ51a、52aによって、垂直方向に伝達されるノイズまたは振動はセンサ51b、52bによって感知される。センサ51a、51b、52a、52bは、ノイズまたは振動を感知する適切な任意センサであってよく、例えば音響センサ、または加速度センサ、または他の任意圧力感知センサや振動感知センサ等がある。
【0066】
図5Aと図5Bに示した配置のセンサを用いると、ワイピング・シリンダ10.2に伝達されるノイズまたは振動の観点から印刷機の動作をモニタするのに四つの測定チャネルが設けられることが理解されるであろう。既述したように、これら測定チャネルに他の測定チャネルを追加することができる。例えば上記の四つの測定チャネルに以下の付加的チャネルを補充することが好適である:
- 印刷機の処理速度(例えば1時間に処理される枚葉紙の数)を測定するための一つのチャネル、
- 印刷機のシリンダを駆動するモータの電流消費のための一つのチャネル、
- 圧胴7と版胴8間の印刷圧をこれらシリンダの両側で測定するための二つのチャネル、
- 乾燥ブレード10.5とワイピング・シリンダ10.2間のブレード圧(圧力は代表例として油圧手段によって調節される)を測定するための一つのチャネル、
- ワイピング液の流れを測定するための一つのチャネル、
- 乾燥ブレード10.5の位置をブレードの両側で測定するための二つのチャネル、
- 印刷位置に枚葉紙が存在するか不在であるかを示すための一つのチャネル、
- 枚葉紙を印刷するのに使用された刷版を示す一つのチャネル。
【0067】
印刷機の動作を感知するための複数のセンサの配置に関する上記の例では、異なる14のチャネルが設けられる。彫刻凹版印刷機の動作を少なくともワイピング・ユニット10に関して適切に記述してモニタするのに十分であることがわかった。
【0068】
印刷機の動作をモニタするのに用いるセンサから出力される信号のいくつかを前処理することが望ましいことは上述した。これは、特に、印刷機から発生するノイズおよび/または振動の感知に関して真実であり、その信号は、代表例として多数の周波数成分を示す。そのような信号を処理する従来法では、信号のスペクトル変換を行なう。通常のスペクトル変換は、よく知られているフーリエ変換(とその変形)であり、信号が時間領域から周波数領域に変換される。信号の処理は、このようにして得られたスペクトルで作業することによってより簡単になる。周期的信号成分は、スペクトルのピークとして周波数領域で容易に識別できるからである。しかしフーリエ変換の欠点は、信号中の位相の移動、シフト、ドリフト(drifts)、エコー、ノイズ等を効率的に識別して分離できないことにある。
【0069】
より適切な“スペクトル”分析は、いわゆる“ケプストラム(cepstrum)”分析である。“ケプストラム”は“スペクトル”のアナグラムであり、ある信号のスペクトルの対数の逆フーリエ変換として受け入れられている用語である。ケプストラム分析は、周波数を分析する代わりに“音”を分析するのに特に用いられる。ケプストラムは、異なるスペクトル帯での変化速度に関する情報と見なすことができる。これは、そもそもは、地震と爆弾の爆発から生じる地震エコーを特徴づけるために提案された(Bogert、Healy、Tuleyの「エコーのための時間系列の周波数分析:ケプストラム、擬自己共分散、クロス-ケプストラム、サフィー・クラッキング」という題名の論文(1963年)を参照のこと)。Bogert他は、エコーを含む信号のパワー・スペクトルの対数がエコーのために加算的周期成分を有すること、従ってパワー・スペクトルの対数のフーリエ変換がエコー遅延位置においてピークを示すはずであることを観測した。彼らはこの関数を、“スペクトル”という単語の文字を入れ換えて“ケプストラム”と名づけた。なぜなら、「代表例として、われわれは、通常は時間側で行なう方法で周波数側で演算を行なっており、逆も同様であることがわかった」からである。ある信号をそのケプストラムに変換することは準同型変換であり、ケプストラムの考え方は、畳み込みによって組み合わされた信号を処理する準同型システムの理論の基本的な一部である(『離散した時間信号の処理』、A.V. OppenheimとR.W. Schafer、プレンティス・ホール、エングルウッド・クリフス、ニュージャージー州、1989年を参照のこと)。
【0070】
ケプストラム分析の利点は多数ある:
- 最も強力な属性の一つは、スペクトルに存在するあらゆる周期性または繰り返しパターンが、ケプストラムの一つまたは二つの特別な成分として感知されることである、
- スペクトルに側波帯または調和系列のセットがいくつか含まれている場合、セットの重合のために混乱される可能性がある。しかしケプストラムでは、これらのセットは、スペクトルが時間信号中で繰り返しパターンに分離されるのと同じようにして分離される、
- ケプストラム分析は、振動する回転要素の分析に特に適している。
【0071】
従って本発明の好ましい一実施形態として、印刷機の回転要素で測定された信号(例えば上述のワイピング・シリンダの軸受で発生して音響/振動センサによって感知されるノイズおよび/または振動)は、上記ケプストラム分析を利用して前処理される。
【0072】
図1と図2に示した彫刻凹版印刷機のワイピング・シリンダ10.2の軸受での測定に戻ると、ケプストラム分析は、“枚葉紙ごとのケプストラム”の値、“ケプストラム2:3”の値、“回転ごとのケプストラム”の値と名づけた三つの変数を取り出すことを目的として行なうことが好ましく、これらのうちの二つの変数に基づいて傾向分析を行なう。“枚葉紙ごとのケプストラム”の値は、本発明の範囲では、枚葉紙間の時間間隔、即ち連続した2枚の枚葉紙間の間隔に対応するケプストラム値として定義される。“ケプストラム2:3”の値は、本発明の範囲では、版胴8とオルロフ・シリンダ9.5(この例では、それぞれ3セグメントのシリンダと2セグメントのシリンダである)の置換間隔(permutation interval)に対応するケプストラム値として定義される。“回転ごとのケプストラム”の値は、本発明の範囲では、印刷機の版胴が完全に一回転するのに必要な時間の間隔(または回転間隔)に対応するケプストラム値として定義される(この間隔は、枚葉紙間の間隔の倍数である)。3セグメントの版胴と、2セグメントのオルロフ(Orlof)・シリンダとを備える図1と図2に示した凹版刷版の事例では、枚葉紙間の間隔、置換間隔、回転間隔(単位は秒)は、以下の式で与えられる:
枚葉紙間の間隔[秒]= 3600/枚葉紙処理速度[枚/時間]、
置換間隔[秒]= 枚葉紙間隔[秒]×#セグメントのオルロフ・シリンダ、
回転時間[秒]= 枚葉紙間隔[秒]×#セグメントの版胴。
【0073】
図6は、ワイピング・シリンダ10.2の一つの軸受の位置で測定したノイズ信号のケプストラムの一例である。彫刻凹版印刷機での枚葉紙の処理速度は、この例では1時間に6316枚(枚葉紙間の間隔は0.57秒)に設定されていて、置換間隔は1.14秒であり、回転間隔は0.71秒であり、対応する“枚葉紙ごとのケプストラム”の値、“2:3ケプストラム”の値、“回転ごとのケプストラム”の値は、図6のケプストラムに三つのピークとして現われる。
【0074】
“枚葉紙ごとのケプストラム”の値と“回転ごとのケプストラム”の値のそれぞれの変化(または傾向)は速度で標準化した移動帯域通過フィルタを用いてモニタし、ケプストラム中の関係する帯域をフィルタすることが好ましい。この帯域通過フィルタは、関係する枚葉紙間隔または回転間隔にそれぞれ“ロックされる(locked)”(これらの間隔は、枚葉紙の処理速度に逆比例する)。フィルタされて得られる信号の最大値が検出され、時間軸で得られた振幅が記録される。図7に、上述した処理とフィルタリングの原理を図示した。図7の左上に示してあるように、ケプストラムは、まず最初に、速度で標準化した適切な移動帯域通過フィルタ(関係する時間間隔に即ち中心でロックされる帯域通過フィルタ)を用いて関係する時間間隔(即ち枚葉紙間隔または回転間隔)の周囲でフィルタされる。ケプストラムに関してフィルタされて得られる帯域を図7の右上に示した。フィルタされた帯域の最大値が検出され、その振幅が時間軸で記録され、結果としての信号が図7の下部に示されている。この信号は、印刷機の動作の傾向をモニタするための基礎として用いられる。
【0075】
図5Aと図5Bを参照して上に行なった、四つの異なる測定チャネル(即ちワイピング・シリンダの両側で実施した水平方向の測定と垂直方向の測定)を表わす音響および/または振動の測定に戻ると、上述のケプストラム分析を四つの測定チャネルのそれぞれについて実施し、得られた八つの傾向信号を、印刷機の動作をモニタするための基礎として用いる。
【0076】
本発明の好ましい一実施形態によれば、印刷機の動作のイン-ライン分析は、被印刷体のイン-ライン検査と組み合わされる。換言すれば、印刷機の動作のパターン分類から誘導される結論は、被印刷体の光学的検査から誘導される結論に関係づけられる。
【0077】
検出された動作パラメータは、印刷機の間違った動作または異常な動作の特徴を表わしているため、被印刷体の光学的検査に頼ることなく、検出された間違った動作または異常な動作が印刷エラーにつながるという結論を直ちに引き出すことができる場合がある。しかし別の場合には、印刷エラーが発生する可能性に関する明確な結論を直接引き出すことはできず、印刷機の動作のパターン分類の結果からだけ明確な結論が引き出される。このような場合には、動作分析と被印刷体の光学的検査とを組み合わせることが役立つ。
【0078】
一般的な観点からすると、印刷機の動作の分析と被印刷体の検査とを組み合わせることの目的は、
- 印刷機の特徴的な間違った動作または異常な動作の決定後に、検査システムによって取得された画像は印刷エラーがないことをまだ示しているのに印刷エラー発生の蓋然性が高いという警告を早期に出すこと、および/または
- 被印刷体の光学的検査によって検出された印刷エラーの蓋然性が高い発生原因を示すことにある。
【0079】
ファジー論理技術は、ここでも、被印刷体の検査から得られる結果と、印刷機の動作の分析からの結果を結びつけるのに役立つ。印刷機の特徴的な間違った動作または異常な動作を表わすセンサのデータと、印刷エラーを表わす光学的表示の画像データとを比較することで、ファジー・セットを規定することができ、(印刷機の動作のパターン分類に関して上述したように)より高いランクのパターン分類装置が構成される。
【0080】
当業者には、添付の請求項に規定されている本発明の範囲を逸脱することなく、上述の実施形態に対してさまざまな変更および/または改善が可能であることが理解されるであろう。
【0081】
例えばケプストラム分析をノイズまたは振動に関して測定した信号の前処理に特に適していると上述したが、他のタイプのスペクトル変換を利用したスペクトル分析が考えられる。この文脈で、フーリエ変換の適切な任意変形が考えられるであろう。例えば、いわゆる円変換とウエーブレット変換が含まれる。
【0082】
更に、ファジー論理技術をモデル化とパターン分類の問題に関して説明してきたが、他の方法(例えばいわゆる神経回路網を利用したモデル化技術)も考えられる。これら二つの方法の一つの違いは、ファジー・パターン分類装置は、実験データと、関係するプロセスに関する知見とに基づいて学習プロセスと熟練した設計者(いわゆる“エキスパート”)により構成できるのに対し、神経回路網は、学習プロセスだけに基づいていることである。エキスパートは、“言語学的修正因子”の助けを借りてシステムをチューニングすることができる。
【符号の説明】
【0083】
1 彫刻凹版印刷機
7 圧胴
8 版胴
9 インキ着けシステム
10 ワイピング・ユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷体を印刷機で処理中に被印刷体上の印刷エラーの発生を検出する方法であって、被印刷体の処理中に印刷機の動作をモニタするために印刷機の機能的構成要素に複数のセンサを取り付け、かつ被印刷体上の印刷エラーの発生につながるかつながる可能性のある印刷機の特徴的動作、または被印刷体の良好な印刷品質につながるかつながる可能性のある印刷機の特徴的動作の発生を決定するために印刷機の動作のイン-ライン分析を行なう工程を含む方法。
【請求項2】
上記印刷機の動作のイン-ライン分析が、いくつかの連続した被印刷体の処理中に印刷機の動作の傾向分析を行なうことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記印刷機の動作のイン-ライン分析が、印刷機の動作のファジー・パターン分類を行なうことを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記印刷機の動作のイン-ライン分析と被印刷体のイン-ライン光学的検査とを組み合わせることを更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
被印刷体のイン-ライン光学的検査が、
(i)上記印刷機で処理された被印刷体の画像を光学的に取得し、かつ
(ii)被印刷体上で起こる可能性のある印刷エラーを識別するために、取得された被印刷体の画像を処理することを含み、
一方で取得された上記画像に印刷エラーのないことを決定しながら、上記印刷機の間違ったまたは異常な動作の決定後に印刷エラーが発生する可能性のあることを早期に警告するように、上記印刷機の動作のイン-ライン分析を被印刷体のイン-ライン光学的検査に組み合わせる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記被印刷体のイン-ライン光学的検査が、
(i)上記印刷機で処理された被印刷体の画像を光学的に取得し、かつ
(ii)取得した被印刷体の画像を処理してその被印刷体上に印刷エラーが起こる可能性のあることを識別することを含み、
被印刷体のイン-ライン光学的検査によって検出された印刷エラーの発生の蓋然的原因の説明を提供するように、上記印刷機の動作のイン-ライン分析を被印刷体のイン-ライン光学的検査に組み合わせる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
上記印刷機の動作のイン-ライン分析が、
(a1)被印刷体の印刷機上での処理中に、印刷機の機能的構成要素の動作パラメータとして、被印刷体の印刷機上での処理中の印刷機の動作を表わす動作パラメータを感知する工程と、
(a2)印刷機の機能的構成要素の感知された動作パラメータが、印刷エラーにつながる可能性のある印刷機の間違ったまたは異常な動作を示しているかを決定する工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
印刷機の機能的構成要素の動作パラメータを特徴的な動作を表わすパラメータとして利用して印刷機の特徴的動作をモデル化する予備工程(a0)を更に含み、その特徴的な動作が、
- 印刷エラーの発生につながるか、つながる可能性のある印刷機の間違ったまたは異常な動作、および/または
- 被印刷体の良好な印刷品質につながるか、つながる可能性のある印刷機の正常な動作を含み、
決定する上記工程(a2)が、
(a21)被印刷体の印刷機上での処理中に印刷機の機能的構成要素の動作パラメータをモニタし、
(a22)モニタされた動作パラメータが印刷機のモデル化された特徴的動作のうちのいずれか一つを示しているかどうかを決定することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記予備工程(a0)が、印刷エラーの発生につながるか、つながる可能性のある印刷機の間違ったまたは異常な動作をモデル化することを含み、
(a01)上記印刷機に起こる可能性のある印刷エラーの複数のクラスを定義する工程と、
(a02)印刷エラーのそれぞれのクラスに関し、印刷エラーの発生につながるか、つながる可能性のある印刷機の間違ったまたは異常な動作を特徴づける印刷機の動作パラメータを決定する工程と、
(a03)印刷エラーのそれぞれのクラスに関し、上記間違った動作または異常な動作に特徴的であることが決定された動作パラメータに基づき、印刷機の間違ったまたは異常な動作の対応するモデルを形成する工程を含み、
決定する上記工程(a22)が、モニタされた動作パラメータが、印刷機の間違った動作または異常な動作に関して形成されたモデルのいずれか一つに対応するかを決定することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
印刷機の特徴的動作をモデル化することが、数セットのファジー論理規則を用いて特徴的動作をモデル化することを含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
任意組合せの次の動作パラメータ:
- 印刷機の処理速度、および/または
- 印刷機のシリンダまたはローラの回転速度、および/または
- 印刷機のシリンダを駆動する電動モータによって生じる電流、および/または
- 印刷機のシリンダまたはローラの温度、および/または
- 印刷機の二つのシリンダまたはローラ間の圧力、および/または
- 印刷機のシリンダまたはローラの軸受上の拘束、および/または
- 印刷機におけるインキまたは流体の消費、および/または
- 処理された被印刷体の印刷機の中での位置または存在
を感知するためにセンサを印刷機に取り付ける、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
印刷機の機能的構成要素のできるだけ相互に相関していない動作パラメータを感知するためにセンサを印刷機に取り付ける、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
圧胴(7)と、その圧胴(7)と接触する版胴(8)と、その版胴(8)の表面にインキを着けるインキ着けシステム(9)と、印刷前に版胴(8)のインキが着いた表面をぬぐうためのワイピング・ユニット(10)とを少なくとも含む彫刻凹版印刷機(1)で実施される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
任意組合せの次の動作パラメータ:
- 上記彫刻凹版印刷機(1)の処理速度、および/または
- 上記彫刻凹版印刷機(1)の駆動手段として用いる電動モータによって生じる電流、および/または
- 上記圧胴(7)、および/または上記版胴(8)、および/または上記インキ着けシステム(9)または上記ワイピング・ユニット(10)のシリンダまたはローラの回転速度、および/または
- 上記圧胴(7)、および/または上記版胴(8)、および/または上記インキ着けシステム(9)または上記ワイピング・ユニット(10)のシリンダまたはローラの温度、および/または
- 上記版胴(8)と上記圧胴(7)間の印刷圧、および/または
- 上記版胴(8)と上記ワイピング・ユニット(10)間のワイピング圧、および/または
- 上記版胴(8)と上記インキ着けシステム(9)間の接触圧、および/または
- 上記ワイピング・ユニット(10)の動作パラメータ、および/または
- 上記インキ着けシステム(9)の動作パラメータ
を感知するためにセンサを彫刻凹版印刷機(1)に取り付ける、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
被印刷体上に上記ワイピング・ユニット(10)の動作異常が原因で起こる印刷エラーを検出するために実施される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
上記ワイピング・ユニット(10)が、ワイピング・タンク(10.1)と、ワイピング・タンク(10.1)の中に配置されていて版胴(8)と接触するワイピング・シリンダ(10.2)と、ワイピング・シリンダ(10.2)の表面と接触してワイピング・シリンダ(10.2)の表面から残ったインキをぬぐい去る乾燥ブレード(10.3)と、ワイピング液をそのワイピング・シリンダ(10.2)の表面に付着させるクリーニング手段(10.4)と、ワイピング・シリンダ(10.2)の表面と接触してワイピング・シリンダ(10.2)の表面から残ったワイピング液を除去する乾燥ブレード(10.5)とを含み、かつ
- 上記ワイピング・シリンダ(10.2)と上記版胴(8)間のワイピング圧、および/または
- 上記ワイピング・ユニット(10)の中でのワイピング液の流れ、および/または
- ワイピング液の物理化学的特性、および/または
- 上記乾燥ブレード(10.3)と上記ワイピング・シリンダ(10.2)間、または上記乾燥ブレード(10.5)と上記ワイピング・シリンダ(10.2)間のブレード圧、および/または
- 上記ワイピング・シリンダ(10.2)に対する上記乾燥ブレード(10.3)または上記乾燥ブレード(10.5)のブレード位置、および/または
- 上記ワイピング・シリンダ(10.2)の軸受上の拘束
を感知するためにセンサを取り付ける、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記ワイピング圧、および/または上記ブレード圧、および/または上記ブレード位置、および/または上記ワイピング・シリンダ(10.2)の軸受上の拘束を、ワイピング・シリンダ(10.2)の各端部で感知する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記印刷機の動作のモニタに、被印刷体が処理されている間に印刷機から発生するノイズおよび/または振動をモニタすることが含まれる、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
上記印刷機から発生するノイズおよび/または振動を、印刷機のシリンダの軸受上で感知する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
圧胴(7)と、圧胴(7)と接触する版胴(8)と、版胴(8)の表面にインキを着けるインキ着けシステム(9)と、印刷前に版胴(8)のインキが着いた表面をぬぐうためにその版胴(8)と接触するワイピング・シリンダ(10.2)を備えるワイピング・ユニット(10)とを少なくとも含む彫刻凹版印刷機(1)で実施され、彫刻凹版印刷機(1)から発生するノイズおよび/または振動を、上記ワイピング・シリンダ(10.2)の軸受上で感知する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
上記印刷機から発生するノイズまたは振動を、シリンダの軸受(101、102)に配置されていてシリンダの回転軸に垂直の異なる少なくとも二つの方向に沿って伝達されるノイズまたは振動を感知する少なくとも二つのセンサ(51a、51b、52a、52b)によって感知する、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
上記印刷機から発生するノイズまたは振動を、音響センサ、加速度センサ、圧力感知センサのいずれかによって感知する、請求項19〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
上記センサから出力された信号の前処理を行なうことを更に含む、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
上記センサから出力された信号の上記前処理が、信号のいわゆるケプストラム(cepstrum)分析を実施することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
被印刷体を印刷機で処理している間にその被印刷体上の印刷エラーの発生を検出するエキスパート・システムであって、被印刷体の処理中に印刷機の動作をモニタするために印刷機の機能的構成要素に接続された複数のセンサと、センサに接続されていて印刷機の動作のイン-ライン分析を行なう処理システムとを含み、前記処理システムが、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法を実施できるようにされているエキスパート・システム。
【請求項26】
請求項25に記載のエキスパート・システムを備えた印刷機。
【請求項1】
被印刷体を印刷機で処理中に被印刷体上の印刷エラーの発生を検出する方法であって、被印刷体の処理中に印刷機の動作をモニタするために印刷機の機能的構成要素に複数のセンサを取り付け、かつ被印刷体上の印刷エラーの発生につながるかつながる可能性のある印刷機の特徴的動作、または被印刷体の良好な印刷品質につながるかつながる可能性のある印刷機の特徴的動作の発生を決定するために印刷機の動作のイン-ライン分析を行なう工程を含む方法。
【請求項2】
上記印刷機の動作のイン-ライン分析が、いくつかの連続した被印刷体の処理中に印刷機の動作の傾向分析を行なうことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記印刷機の動作のイン-ライン分析が、印刷機の動作のファジー・パターン分類を行なうことを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記印刷機の動作のイン-ライン分析と被印刷体のイン-ライン光学的検査とを組み合わせることを更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
被印刷体のイン-ライン光学的検査が、
(i)上記印刷機で処理された被印刷体の画像を光学的に取得し、かつ
(ii)被印刷体上で起こる可能性のある印刷エラーを識別するために、取得された被印刷体の画像を処理することを含み、
一方で取得された上記画像に印刷エラーのないことを決定しながら、上記印刷機の間違ったまたは異常な動作の決定後に印刷エラーが発生する可能性のあることを早期に警告するように、上記印刷機の動作のイン-ライン分析を被印刷体のイン-ライン光学的検査に組み合わせる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記被印刷体のイン-ライン光学的検査が、
(i)上記印刷機で処理された被印刷体の画像を光学的に取得し、かつ
(ii)取得した被印刷体の画像を処理してその被印刷体上に印刷エラーが起こる可能性のあることを識別することを含み、
被印刷体のイン-ライン光学的検査によって検出された印刷エラーの発生の蓋然的原因の説明を提供するように、上記印刷機の動作のイン-ライン分析を被印刷体のイン-ライン光学的検査に組み合わせる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
上記印刷機の動作のイン-ライン分析が、
(a1)被印刷体の印刷機上での処理中に、印刷機の機能的構成要素の動作パラメータとして、被印刷体の印刷機上での処理中の印刷機の動作を表わす動作パラメータを感知する工程と、
(a2)印刷機の機能的構成要素の感知された動作パラメータが、印刷エラーにつながる可能性のある印刷機の間違ったまたは異常な動作を示しているかを決定する工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
印刷機の機能的構成要素の動作パラメータを特徴的な動作を表わすパラメータとして利用して印刷機の特徴的動作をモデル化する予備工程(a0)を更に含み、その特徴的な動作が、
- 印刷エラーの発生につながるか、つながる可能性のある印刷機の間違ったまたは異常な動作、および/または
- 被印刷体の良好な印刷品質につながるか、つながる可能性のある印刷機の正常な動作を含み、
決定する上記工程(a2)が、
(a21)被印刷体の印刷機上での処理中に印刷機の機能的構成要素の動作パラメータをモニタし、
(a22)モニタされた動作パラメータが印刷機のモデル化された特徴的動作のうちのいずれか一つを示しているかどうかを決定することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記予備工程(a0)が、印刷エラーの発生につながるか、つながる可能性のある印刷機の間違ったまたは異常な動作をモデル化することを含み、
(a01)上記印刷機に起こる可能性のある印刷エラーの複数のクラスを定義する工程と、
(a02)印刷エラーのそれぞれのクラスに関し、印刷エラーの発生につながるか、つながる可能性のある印刷機の間違ったまたは異常な動作を特徴づける印刷機の動作パラメータを決定する工程と、
(a03)印刷エラーのそれぞれのクラスに関し、上記間違った動作または異常な動作に特徴的であることが決定された動作パラメータに基づき、印刷機の間違ったまたは異常な動作の対応するモデルを形成する工程を含み、
決定する上記工程(a22)が、モニタされた動作パラメータが、印刷機の間違った動作または異常な動作に関して形成されたモデルのいずれか一つに対応するかを決定することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
印刷機の特徴的動作をモデル化することが、数セットのファジー論理規則を用いて特徴的動作をモデル化することを含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
任意組合せの次の動作パラメータ:
- 印刷機の処理速度、および/または
- 印刷機のシリンダまたはローラの回転速度、および/または
- 印刷機のシリンダを駆動する電動モータによって生じる電流、および/または
- 印刷機のシリンダまたはローラの温度、および/または
- 印刷機の二つのシリンダまたはローラ間の圧力、および/または
- 印刷機のシリンダまたはローラの軸受上の拘束、および/または
- 印刷機におけるインキまたは流体の消費、および/または
- 処理された被印刷体の印刷機の中での位置または存在
を感知するためにセンサを印刷機に取り付ける、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
印刷機の機能的構成要素のできるだけ相互に相関していない動作パラメータを感知するためにセンサを印刷機に取り付ける、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
圧胴(7)と、その圧胴(7)と接触する版胴(8)と、その版胴(8)の表面にインキを着けるインキ着けシステム(9)と、印刷前に版胴(8)のインキが着いた表面をぬぐうためのワイピング・ユニット(10)とを少なくとも含む彫刻凹版印刷機(1)で実施される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
任意組合せの次の動作パラメータ:
- 上記彫刻凹版印刷機(1)の処理速度、および/または
- 上記彫刻凹版印刷機(1)の駆動手段として用いる電動モータによって生じる電流、および/または
- 上記圧胴(7)、および/または上記版胴(8)、および/または上記インキ着けシステム(9)または上記ワイピング・ユニット(10)のシリンダまたはローラの回転速度、および/または
- 上記圧胴(7)、および/または上記版胴(8)、および/または上記インキ着けシステム(9)または上記ワイピング・ユニット(10)のシリンダまたはローラの温度、および/または
- 上記版胴(8)と上記圧胴(7)間の印刷圧、および/または
- 上記版胴(8)と上記ワイピング・ユニット(10)間のワイピング圧、および/または
- 上記版胴(8)と上記インキ着けシステム(9)間の接触圧、および/または
- 上記ワイピング・ユニット(10)の動作パラメータ、および/または
- 上記インキ着けシステム(9)の動作パラメータ
を感知するためにセンサを彫刻凹版印刷機(1)に取り付ける、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
被印刷体上に上記ワイピング・ユニット(10)の動作異常が原因で起こる印刷エラーを検出するために実施される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
上記ワイピング・ユニット(10)が、ワイピング・タンク(10.1)と、ワイピング・タンク(10.1)の中に配置されていて版胴(8)と接触するワイピング・シリンダ(10.2)と、ワイピング・シリンダ(10.2)の表面と接触してワイピング・シリンダ(10.2)の表面から残ったインキをぬぐい去る乾燥ブレード(10.3)と、ワイピング液をそのワイピング・シリンダ(10.2)の表面に付着させるクリーニング手段(10.4)と、ワイピング・シリンダ(10.2)の表面と接触してワイピング・シリンダ(10.2)の表面から残ったワイピング液を除去する乾燥ブレード(10.5)とを含み、かつ
- 上記ワイピング・シリンダ(10.2)と上記版胴(8)間のワイピング圧、および/または
- 上記ワイピング・ユニット(10)の中でのワイピング液の流れ、および/または
- ワイピング液の物理化学的特性、および/または
- 上記乾燥ブレード(10.3)と上記ワイピング・シリンダ(10.2)間、または上記乾燥ブレード(10.5)と上記ワイピング・シリンダ(10.2)間のブレード圧、および/または
- 上記ワイピング・シリンダ(10.2)に対する上記乾燥ブレード(10.3)または上記乾燥ブレード(10.5)のブレード位置、および/または
- 上記ワイピング・シリンダ(10.2)の軸受上の拘束
を感知するためにセンサを取り付ける、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記ワイピング圧、および/または上記ブレード圧、および/または上記ブレード位置、および/または上記ワイピング・シリンダ(10.2)の軸受上の拘束を、ワイピング・シリンダ(10.2)の各端部で感知する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記印刷機の動作のモニタに、被印刷体が処理されている間に印刷機から発生するノイズおよび/または振動をモニタすることが含まれる、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
上記印刷機から発生するノイズおよび/または振動を、印刷機のシリンダの軸受上で感知する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
圧胴(7)と、圧胴(7)と接触する版胴(8)と、版胴(8)の表面にインキを着けるインキ着けシステム(9)と、印刷前に版胴(8)のインキが着いた表面をぬぐうためにその版胴(8)と接触するワイピング・シリンダ(10.2)を備えるワイピング・ユニット(10)とを少なくとも含む彫刻凹版印刷機(1)で実施され、彫刻凹版印刷機(1)から発生するノイズおよび/または振動を、上記ワイピング・シリンダ(10.2)の軸受上で感知する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
上記印刷機から発生するノイズまたは振動を、シリンダの軸受(101、102)に配置されていてシリンダの回転軸に垂直の異なる少なくとも二つの方向に沿って伝達されるノイズまたは振動を感知する少なくとも二つのセンサ(51a、51b、52a、52b)によって感知する、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
上記印刷機から発生するノイズまたは振動を、音響センサ、加速度センサ、圧力感知センサのいずれかによって感知する、請求項19〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
上記センサから出力された信号の前処理を行なうことを更に含む、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
上記センサから出力された信号の上記前処理が、信号のいわゆるケプストラム(cepstrum)分析を実施することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
被印刷体を印刷機で処理している間にその被印刷体上の印刷エラーの発生を検出するエキスパート・システムであって、被印刷体の処理中に印刷機の動作をモニタするために印刷機の機能的構成要素に接続された複数のセンサと、センサに接続されていて印刷機の動作のイン-ライン分析を行なう処理システムとを含み、前記処理システムが、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法を実施できるようにされているエキスパート・システム。
【請求項26】
請求項25に記載のエキスパート・システムを備えた印刷機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図4】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図4】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【公開番号】特開2013−10362(P2013−10362A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−219544(P2012−219544)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【分割の表示】特願2008−541880(P2008−541880)の分割
【原出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(591031371)カーベーアー−ノタシ ソシエテ アノニム (54)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【分割の表示】特願2008−541880(P2008−541880)の分割
【原出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(591031371)カーベーアー−ノタシ ソシエテ アノニム (54)
【Fターム(参考)】
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