説明

印刷機

【課題】簡易な構造の印刷機を提供する。
【解決手段】印刷機5は、基材62が載置されるフレーム55と、フレーム55上に配置され、インキが充填される複数のセル63を有するインキ版61と、フレーム55の上方に配置され、基材62上にインキを転移させる転写ロール43と、を備えている。またフレーム55の側方には、連結部58を介してラックベース30が取り付けらており、このラックベース30上にはラック35が取り付けられている。また転写ロール43の側方には、ラック35に上方から係合可能なピニオン45が取り付けられている。また転写ロール43を回転駆動する回転駆動機構46が設けられており、この場合、転写ロール43の回転駆動により、フレーム55がピニオン45およびラック35を介して水平駆動される。またラック35とラックベース30との間にはバネ11が介在されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上にインキを転移させる印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基材が載置されるフレームと、フレームの上方に配置された転写ロールと、を備えた印刷機が知られている。このような印刷機においては、一般に、転写ロールをフレーム上で水平方向に移動させるための駆動機構が設けられている。そして、転写ロールがフレーム上で水平方向に移動する間、転写ロール上のインキが基材上に転移される。
【0003】
また、フレームに対する転写ロールの位置を精密に合わせるため、位置合わせ機構がさらに設けられている。位置合わせ機構は、例えば、フレームの側方に設けられたラックと、転写ロールに設けられ、当該ラックに係合可能なピニオンとからなっている。この場合、インキを基材上に転移させる前に、これらピニオンおよびラックに形成された歯同士が嵌合させられる。これによって、フレームに対する転写ロールの位置合わせ(位相調整)を行うことができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−106077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の印刷機においては、上述のように、転写ロールをフレームに対して移動させるための駆動機構と、フレームに対する転写ロールの位置合わせを行うための機構とがそれぞれ別個に設けられている。このため、印刷機の構造が複雑なものとなっており、また、印刷工程が煩雑なものとなっている。
【0006】
本発明は、このような課題を効果的に解決し得る印刷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明は、基材上にインキを転移させる印刷機において、基材が載置されるフレームと、インキが充填される複数のセルを有するインキ版と、前記フレームの上方に配置され、前記インキ版に当接して前記セル内のインキを受けるとともに、基材上にインキを転移させる転写ロールと、前記フレームに取り付けられたラックベースと、前記ラックベースに取り付けられたラックと、前記転写ロールに設けられ、前記ラックに上方から係合可能なピニオンと、を備え、前記転写ロールを回転駆動する回転駆動機構、または、前記フレームを水平駆動する水平駆動機構のいずれか一方が設けられており、前記転写ロールまたは前記フレームのいずれか一方の駆動により、他方が前記ラックおよび前記ピニオンを介して駆動され、前記ラックと前記ラックベースとの間には弾性部材が介在されていることを特徴とする印刷機である。
【0008】
第1の本発明による印刷機において、前記弾性部材は、上下方向に伸縮する上下方向弾性部材を含んでいてもよい。
【0009】
第1の本発明による印刷機は、前記ラックの下方に設けられ、前記上下方向弾性部材の弾性的な復元力によって前記ラックが急速に押し戻されることを抑制する上下方向衝撃吸収部材をさらに備えていてもよい。
【0010】
第1の本発明による印刷機において、前記弾性部材は、水平方向に伸縮する水平方向弾性部材を含んでいてもよい。
【0011】
第1の本発明による印刷機は、前記ラックの側方に設けられ、前記水平方向弾性部材の弾性的な復元力によって前記ラックが急速に押し戻されることを抑制する水平方向衝撃吸収部材をさらに備えていてもよい。
【0012】
第1の本発明による印刷機において、前記弾性部材は、複数設けられていてもよい。
【0013】
第1の本発明による印刷機において、前記弾性部材は、当該弾性部材の弾性力を適宜調整可能な弾性力調整部材を介して前記ラックに取り付けられていてもよい。
【0014】
第1の本発明による印刷機は、前記ラックの位置を検出する位置検出機構と、前記ラックの上下方向または水平方向の位置を調整する位置調整機構と、をさらに備えていてもよい。
【0015】
第1の本発明による印刷機において、前記インキ版は、前記フレーム上に配置され、その上面に複数のセルを有する平板状インキ版からなっていてもよい。
【0016】
第1の本発明による印刷機において、前記インキ版は、前記フレームの上方に配置され、その外周面に複数のセルを有するロール状インキ版からなっていてもよい。
【0017】
第1の本発明による印刷機において、前記転写ロールは、ロール本体と、ロール本体の外周面に設けられたブランケットとを有していてもよい。
【0018】
第1の本発明による印刷機において、前記転写ロールは、ロール本体と、ロール本体の外周面に設けられたフレキソ版とを有していてもよい。
【0019】
第2の本発明は、基材上にインキを転移させる印刷機において、基材が載置されるフレームと、ロール本体およびロール本体の外周面に設けられたダイレクトグラビア版を含み、基材上にインキを転移させる転写ロールと、前記転写ロールの前記ダイレクトグラビア版にインキを供給するインキ供給部と、前記フレームに取り付けられたラックベースと、前記ラックベースに取り付けられたラックと、前記転写ロールに設けられ、前記ラックに上方から係合可能なピニオンと、を備え、
前記転写ロールを回転駆動する回転駆動機構、または、前記フレームを水平駆動する水平駆動機構のいずれか一方が設けられており、前記転写ロールまたは前記フレームのいずれか一方の駆動により、他方が前記ラックおよび前記ピニオンを介して駆動され、前記ラックと前記ラックベースとの間に弾性部材が介在されていることを特徴とする印刷機である。
【0020】
第2の本発明による印刷機において、前記弾性部材は、上下方向に伸縮する上下方向弾性部材を含んでいてもよい。
【0021】
第2の本発明による印刷機は、前記ラックの下方に設けられ、前記上下方向弾性部材の弾性的な復元力によって前記ラックが急速に押し戻されることを抑制する上下方向衝撃吸収部材をさらに備えていてもよい。
【0022】
第2の本発明による印刷機において、前記弾性部材は、水平方向に伸縮する水平方向弾性部材を含んでいてもよい。
【0023】
第2の本発明による印刷機は、前記ラックの側方に設けられ、前記水平方向弾性部材の弾性的な復元力によって前記ラックが急速に押し戻されることを抑制する水平方向衝撃吸収部材をさらに備えていてもよい。
【0024】
第2の本発明による印刷機において、前記弾性部材は、複数設けられていてもよい。
【0025】
第2の本発明による印刷機において、前記弾性部材は、当該弾性部材の弾性力を適宜調整可能な弾性力調整部材を介して前記ラックに取り付けられていてもよい。
【0026】
第2の本発明による印刷機は、前記ラックの位置を検出する位置検出機構と、
前記ラックの上下方向または水平方向の位置を調整する位置調整機構と、をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明による印刷機は、基材が載置されるフレームと、インキが充填される複数のセルを有するインキ版と、基材上にインキを転移させる転写ロールと、フレームに取り付けられたラックベースと、ラックベースに取り付けられたラックと、転写ロールに設けられ、ラックに上方から係合可能なピニオンと、を備えている。また、転写ロールを回転駆動する回転駆動機構、または、フレームを水平駆動する水平駆動機構のいずれか一方が設けられている。このため、転写ロールまたはフレームのいずれか一方の駆動により、他方がラックおよびラックに係合したピニオンを介して駆動される。このため、転写ロールを回転駆動する回転駆動機構、または、フレームを水平駆動する水平駆動機構のいずれか一方のみを設けることにより、転写ロールを回転駆動するとともに、フレームを水平駆動することができる。このことにより、印刷機の構成を簡易なものにすることができる。また、ラックとラックベースとの間には弾性部材が介在されている。このため、ピニオンがラックに係合する際に生じる衝撃を緩和することができ、これによって、ピニオンがラックに係合する際にピニオンが振動することを防止することができる。これによって、基材に転移されるインキの厚みにムラが生じるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態による印刷機を側方から見た側面図。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態による印刷機を上方から見た平面図。
【図3】図3は、図1に示す印刷機の偏芯カムローラとダイヤルゲージの近傍を拡大した側面図。
【図4】図4は、図1に示す印刷機のショックアブソーバーの近傍を拡大した側面図。
【図5】図5は、図1に示す印刷機の側方固定部の近傍を拡大した側面図。
【図6】図6は、本発明の第1の実施の形態による印刷機を用いた印刷方法を示した側面図。
【図7】図7は、有機ELを構成する有機層を示した断面図。
【図8】図8は、本発明の第1の実施の形態の変形例による印刷機を側方から見た側面図。
【図9】図9は、転写ローラーの変形例を示す図。
【図10】図10は、本発明の第2の実施の形態による印刷機を側方から見た側面図。
【図11】図11は、本発明の第2の実施の形態による印刷機を上方から見た平面図。
【図12】図12は、本発明の第3の実施の形態による印刷機を側方から見た側面図。
【図13】図13は、本発明の第3の実施の形態による印刷機を上方から見た平面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図1乃至図7を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。はじめに図1および図2を参照して、印刷機5全体について説明する。
【0030】
印刷機
図1および図2に示すように、基材62上にインキを転移させる印刷機5は、基材62が載置されるフレーム55と、フレーム55上に配置され、インキが充填される複数のセル63を有する平板状インキ版61と、フレーム55の上方に配置され、平板状インキ版61に当接してセル63内のインキを受けるとともに、基材62上にインキを転移させる転写ロール43と、を備えている。このうち転写ロール43は、ロール本体41と、ロール本体41の外周面に設けられたブランケット42とを有している。またフレーム55の側方には、連結部58を介してラックベース30が取り付けらており、このラックベース30上にはラック35が取り付けられている。また転写ロール43の側方には、ラック35に上方から係合可能なピニオン45が取り付けられている。
【0031】
なお図1および図2においては、フレーム55上にインキ版定盤56が載置され、このインキ版定盤56上に平板状インキ版61が載置されている例を示した。しかしながら、フレーム55上に平板状インキ版61を配置するための形態が図1および図2に示す形態に限られることはなく、様々な形態によりフレーム55上に平板状インキ版61を配置することができる。例えば、フレーム55上に平板状インキ版61が直接載置されていてもよい。
また図1および図2においては、フレーム55上に基材定盤57が載置され、この基材定盤57上に基材62が載置される例を示した。しかしながら、フレーム55上に基材62を配置するための形態が図1および図2に示す形態に限られることはなく、様々な形態によりフレーム55上に基材62を配置することができる。
【0032】
また図1および図2に示すように、フレーム55上には、平板状インキ版61の上面にインキを供給するインキ供給部66と、インキ供給部66から供給されたインキを平板状インキ版61のセル63内に充填させるドクター65とが設けられている。
【0033】
本実施の形態による印刷機5においては、後に詳細に説明するように、転写ロール43が水平方向において静止した状態で、平板状インキ版61および基材62が配置されたフレーム55が水平方向D(図1参照)に駆動される。この際、転写ロール43が平板状インキ版61に当接すると、転写ロール43のブランケット42に、平板状インキ版61のセル63のパターンに応じた絵柄でインキが受理される。ブランケット42に受理されたインキは、その後、基材62上に転移される。このようにして、いわゆるグラビアオフセット印刷により基材62への印刷が実施される。従って、平板状インキ版61は、グラビアオフセット印刷用のいわゆるグラビア版となっている。
【0034】
駆動のための構成
次に、転写ロール43が水平方向において静止した状態で、フレーム55を水平方向Dに駆動するための構成について説明する。はじめに転写ロール43側の構成について説明する。図1および図2に示すように、ピニオン45には、ピニオン45および転写ロール43を回転駆動する回転駆動機構46が設けられている。この回転駆動機構46は、例えば回転駆動されるモータからなっている。これら転写ロール43、ピニオン45および回転駆動機構46の組合せにより転写ユニット40が構成されており、この転写ユニット40は、適切な支持機構(図示せず)により上下方向および水平方向において支持されている。
【0035】
次にフレーム55側の構成について説明する。本実施の形態において、フレーム55およびフレーム55に取り付けられたラックベース30は、一体として水平方向に移動可能となっている。また上述のように、転写ユニット40のピニオン45は、ラック35に対して係合可能となっている。このため、ピニオン45の回転運動が、ラック35を介してラック35およびフレーム55に伝達され得るようになっている。
【0036】
ここで上述のように、ピニオン45には、ピニオン45および転写ロール43を回転駆動する回転駆動機構46が設けられている。このため、ピニオン45がラック35に対して係合されている状態でピニオン45が回転駆動されると、ピニオン45および転写ロール43が回転駆動されるだけでなく、同時に、ピニオン45およびラック35を介してラック35およびフレーム55が駆動されることになる。すなわち、回転駆動機構46により、ピニオン45およびラック35を介してフレーム55を水平方向Dに駆動することができる。
【0037】
このように本実施の形態によれば、転写ロール43またはフレーム55のうちの一方(転写ロール43)の駆動により他方(フレーム55)を、ピニオン45およびラック35を介して駆動することができる。またこの場合、他方(フレーム55)に対する一方(転写ロール43)の位置合わせも同時に自動的に実現されている。なぜなら、本実施の形態によれば、転写ロール43が回転駆動されている間、ピニオン45がラック35に対して常に係合しており、このため、他方(フレーム55)に対する一方(転写ロール43)の位置(位相)がずれることがないからである。従って、簡易な駆動機構によりフレーム55を水平方向Dに駆動することができ、かつ基材62上にインキを精度良く転移させることができる。
【0038】
ところで本実施の形態においては、ピニオン45の歯がラック35の歯に頻繁に衝突することが考えられる。この場合、ピニオン45がラック35に衝突する際の衝撃が大きいと、ピニオン45が振動してしまうことになる。ピニオン45が振動すると、ピニオン45に連結されている転写ロール43も振動し、このため基材62上に転移されるインキの厚みにムラが生じることが考えらえる。
【0039】
インキのムラを防ぐための構成
本実施の形態においては、ピニオン45の振動に起因してインキの厚みのムラが生じるのを防ぐため、ピニオン45がラック35に衝突する際の衝撃を可能な限り小さくするための構成が採用されている。以下、このような構成の詳細について、図1乃至図5を参照して説明する。
【0040】
〔緩和のための構成〕
はじめに、ピニオン45がラック35に衝突する際の衝撃を緩和するための構成について説明する。
【0041】
(上下方向弾性部材)
本実施の形態において、ラック35は、ラックベース30に対して鉛直方向および水平方向に移動可能となっている。また図1および図3に示すように、ラック35とラックベース30との間には、上下方向に伸縮可能な複数のバネ11(上下方向弾性部材)が介在されている。このため、ピニオン45がラック35に衝突するとき、ラック35は、ラックベース30およびフレーム55に対して弾性的に下方に移動することができる。ラック35の下方への移動により、ピニオン45がラック35に衝突するときの衝撃を緩和することができ、これによって、衝突の際にピニオン45が上下方向に振動することを防止または抑制することができる。この結果、転写ユニット40が基材62に対して上下方向に振動することを防止または抑制することができる。このことにより、基材62上に転移されるインキの厚みが不均一になるのを防ぐことができる。例えば、基材62上に転移されるインキの厚みが不均一になってしまい、この結果、水平方向Dに対して直交する方向または斜め方向に細かい筋状のムラ、いわゆる段ムラが見えてしまうことを防ぐことができる。
【0042】
(弾性力調整部材)
また図3に示すように、バネ11は、バネ荷重調整ボルト(弾性力調整部材)11aによって、ラック35に対して押圧されて取り付けられている。この場合、バネ荷重調整ボルト11aの締め度合いを調整することによって、バネ11からラック35に対して働く弾性力を調整することができる。これによって、ピニオン45がラック35に衝突するときの上下方向の衝撃がバネ11により緩和される程度を最適に調整することができる。
【0043】
(上下方向衝撃吸収部材)
また図4に示すように、ラック35の下方には、バネ11の弾性的な復元力によってラック35が上方に急速に押し戻されることを抑制するためのショックアブソーバー(上下方向衝撃吸収部材)15が設けられている。具体的には、ラックベース30の下端にショックアブソーバー15が設けられており、当該ショックアブソーバー15の突出部15aがラックベース30を貫通してラック35に取り付けられている。これによって、バネ11の復元力に起因して転写ユニット40が上下方向に振動することを防ぐことができる。
【0044】
(水平方向弾性部材)
また図1に示すように、ラック35の水平方向の両側方(両端部)には、フレーム55に固定された側方固定部17が設けられている。この側方固定部17内には、図5に示すように、水平方向に伸縮可能なバネ(水平方向弾性部材)12が設けられている。また上述のように、ラックベース30は連結部58を介してフレーム55に取り付けられている。このため、ピニオン45がラック35に衝突するとき、ラック35は、ラックベース30およびフレーム55に対して弾性的に水平方向に移動することができる。ラック35の水平方向への移動により、ピニオン45がラック35に衝突するときの衝撃を緩和することができ、これによって、衝突の際にピニオン45が水平方向に振動することを防止または抑制することができる。この結果、転写ユニット40が基材62に対して水平方向に振動することを防止または抑制することができる。このことにより、基材62上に転移されるインキの厚みが不均一になるのを防ぐことができる。
【0045】
(弾性力調整部材)
また図5に示すように、バネ12は、側方固定部17を貫通したバネ荷重調整ボルト(弾性力調整部材)12aによって、ラック35に対して押圧されて取り付けられている。この場合、バネ荷重調整ボルト12aの締め度合いを調整することによって、バネ12からラック35に対して働く弾性力を調整することができる。これによって、ピニオン45がラック35に衝突するときの水平方向の衝撃の大きさがバネ12により緩和される程度を最適に調整することができる。
【0046】
(水平方向衝撃吸収部材)
また上述のショックアブソーバー15と同様に、水平方向のバネ12が急速に押し戻されるのを抑制するためのショックアブソーバー(図示せず)がラック35の端部に設けられていてもよい。これによって、バネ12の復元力に起因して転写ユニット40が左右方向に振動することを防ぐことができる。
【0047】
〔位置の最適化のための構成〕
次に、ピニオン45に対するラック35の位置を最適化し、これによって、ピニオン45がラック35に衝突する際の衝撃を可能な限り小さくするための構成について説明する。
【0048】
(位置調整機構)
図1および図3に示すように、フレーム55の側方には、ラック35およびラックベース30のフレーム55に対する上下方向の位置を調整する偏芯カムローラ(位置調整機構)1が設けられている。この偏芯カムローラ1を回転させることによって、偏芯カムローラ1をラックベース30の下端に当接させるとともに、下方からラックベース30およびラック35を上方に押し上げることができる。
【0049】
(位置検出機構)
さらに図1および図5に示すように、ラック35の両端部の近傍には、ラック35のフレーム55に対する上下方向の位置を検出する上下方向レーザ変位計(位置検出機構)21が設けられている。またラック35の両端部の近傍には、ラック35のフレーム55に対する水平方向の位置を検出する水平方向レーザ変位計(位置検出機構)22が設けられている。これらの上下方向レーザ変位計21および水平方向レーザ変位計22は、ラック35の端部に取り付けられた検出部35a(図5参照)へレーザ光を照射し、当該検出部35aからのレーザ光の反射を受けて、上下方向レーザ変位計21および水平方向レーザ変位計22と検出部35aとの間の距離を測定する。
【0050】
(位置検出装置)
なお、図1および図3に示すように、フレーム55の側方に、ラックベース30のフレーム55に対する上下方向の位置を検出するダイヤルゲージ(位置検出装置)25がさらに設けられていてもよい。
【0051】
本実施の形態によれば、上述の位置調整機構、および位置検出機構または位置検出装置を用いることにより、ピニオン45に対するラック35の位置を最適化することができる。例えば、上下方向レーザ変位計21からの情報に基づいて偏芯カムローラ1を制御することにより、上下方向におけるピニオン45に対するラック35の位置を最適化することができる。これによって、ピニオン45がラック35に衝突する際の衝撃をより小さくすることができる。
【0052】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。はじめに、印刷機5によって印刷により作製される有機層について説明し、次に、印刷機5を用いた印刷方法について説明する。
【0053】
有機層
はじめに図7を参照して、印刷機5によって作製される有機層について説明する。
【0054】
有機ELや有機薄膜トランジスタ(有機TFT)に用いられる有機層では膜の均一性が要求される。従って、本実施の形態による印刷機5が用いられることが好ましい。
【0055】
インキが転移される基材62は、有機ELに用いられる有機層を載置するための基板を含むことが好ましい。このような基材62としては、例えば、(何も載置されていない)ガラス基板や、有機ELや有機TFTに用いられる有機層の幾つかが既に載置されているガラス基板や、絶縁層および(ITOなどの)電極が既に載置されているガラス基板や、(何も載置されていない)フィルム基板や、有機ELや有機TFTに用いられる有機層の幾つかが既に載置されているフィルム基板、絶縁層および(ITOなどの)電極が既に載置されているフィルム基板などを用いることできる。
【0056】
このようなガラス基板やフィルム基板などの基材62に形成される、または載置されている有機層としては、例えば、発光層72、電子輸送層71、中間層74、正孔注入層・正孔輸送層75などを挙げることができる(図7参照)。ここで、発光層72の厚みは80nm程であり、中間層74の厚みは20nm程であり、正孔注入層・正孔輸送層75の厚みは80nm程である。このうち発光層72は、特に膜厚の均一性が要求される。従って、このような発光層72を生成する際に、本実施の形態による印刷機5が高い効果を発揮する。
【0057】
印刷方法
次に印刷機5を用いた印刷方法について説明する。
【0058】
まず、ラック35のフレーム55に対する上下方向の位置が調整される(調整工程)。具体的には、ダイヤルゲージ25によってラックベース30のフレーム55に対する位置を測定しながら、偏芯カムローラ1を適切な量だけ回転させる。これによって、ラック35のフレーム55に対する上下方向の位置を最適に調整することができる。その後、調整された位置でラックベース30をフレーム55に対して固定する(図6(a)の矢印A参照)。
【0059】
次に、ピニオン45とラック35とが係合される(係合工程)(図6(a)の矢印B参照)。このとき、上述の調整工程によって、ラック35のフレーム55に対する上下方向の位置が調整されているので、ラック35とピニオン45との間の間隙(バックラッシ)が適切な値になっている。
【0060】
次に、回転駆動機構46によりピニオン45および転写ロール43が回転駆動される(図6(a)の矢印C参照)。この際、回転駆動機構46の駆動力が、ピニオン45およびラック35を介してフレーム55に伝達される。これによって、平板状インキ版61および基材62が配置されたフレーム55が水平方向Dに駆動される(水平方向移動工程)(図6(b)参照)。この際、図6(a)(b)に示すように、転写ロール43は水平方向において静止したままとなっている。
【0061】
上述のようにフレーム55を転写ユニット40に対して水平方向に移動させることによって、まず、インキ供給部66から吐出されたインキ(塗料)がドクター65によって運ばれる。次に、当該インキが、平板状インキ版61のセル63内に充填される。その後、セル63内に充填されたインキが、転写ユニット40の転写ロール43のブランケット42に受理される。その後、ブランケット42に受理されたインキが、基材定盤57に載置された基材62上に転移される。
【0062】
ここで本実施の形態によれば、図3に示すように、ラック35とラックベース30との間には、上下方向に伸縮する複数のバネ11が介在されている。このため、ピニオン45がラック35と上下方向で衝突するときの衝撃を緩和することができ、これによって、衝突の衝撃でピニオン45が上下方向に振動することを防止または抑制することができる。この結果、転写ロール43が基材62に対して上下方向に振動することを防止または抑制することができ、このことにより、基材62上に転移されるインキの厚みが不均一になるのを防ぐことができる。
【0063】
また本実施の形態によれば、図5に示すように、ラック35と、フレーム55に固定された側方固定部17との間には、水平方向に伸縮するバネ12が介在されている。このため、ピニオン45がラック35と水平方向で衝突するときの衝撃を緩和することができ、これによって、衝突の衝撃でピニオン45が水平方向に振動することを防止または抑制することができる。この結果、転写ロール43が基材62に対して水平方向に振動することを防止または抑制することができ、このことにより、基材62上に転移されるインキの厚みが不均一になるのを防ぐことができる。
【0064】
(駆動のための構成の変形例)
なお本実施の形態において、転写ロール43を回転駆動する回転駆動機構46が設けられており、また転写ロール43の回転駆動により、フレーム55がピニオン45およびラック35を介して水平駆動される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図2において二点鎖線で示すように、フレーム55を水平駆動する水平駆動機構50が設けられていてもよい。この場合、水平駆動機構50の駆動力が、ラック35およびピニオン45を介して転写ロール43に伝達される。このため、フレーム55の水平駆動により、転写ロール43がラック35およびピニオン45を介して回転駆動される。この場合も、簡易な駆動機構により転写ロール43を回転駆動することができ、かつ基材62上にインキを精度良く転移させることができる。
【0065】
このような水平駆動機構50の具体的な構成は特に限られないが、例えば図2に示すように水平駆動機構50は、いわゆるボールネジによりフレーム55を水平方向に駆動するためのねじ軸51と、ねじ軸51に取り付けられるとともに、フレーム55に連結部54を介して連結された走行体52と、ねじ軸51の端部に設けられ、ねじ軸51を回転駆動する駆動モータ53と、を有している。
【0066】
このように本変形例によれば、転写ロール43またはフレーム55のうちの一方(フレーム55)の駆動により他方(転写ロール43)を、ピニオン45およびラック35を介して駆動することができる。またこの場合、他方(転写ロール43)に対する一方(フレーム55)の位置合わせも同時に自動的に実現されている。なぜなら、本変形例によれば、フレーム55が水平駆動されている間、ピニオン45がラック35に対して常に係合しており、このため、他方(転写ロール43)に対する一方(フレーム55)の位置(位相)がずれることがないからである。従って、簡易な駆動機構により転写ロール43を回転駆動することができ、かつ基材62上にインキを精度良く転移させることができる。
【0067】
なお本変形例において、水平駆動機構50としてボールネジが用いられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、水平駆動機構50として、リニアモーターガイド、エアシリンダ、電動シリンダなど、様々な駆動機構が適宜用いられ得る。
【0068】
(位置の最適化のための構成の変形例)
また本実施の形態において、フレーム55の側方に、ラック35およびラックベース30のフレーム55に対する上下方向の位置を調整する偏芯カムローラ1が設けられている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図8に示すように、フレーム55の側方に、ラック35およびラックベース30のフレーム55に対する上下方向の位置を調整する上下方向移動機構10aと、ラック35およびラックベース30のフレーム55に対する水平方向の位置を調整する水平方向移動機構10bとが設けられていてもよい。
【0069】
本変形例によれば、上下方向レーザ変位計21からの情報に基づいて、上下方向移動機構10aにより、ラック35およびラックベース30のフレーム55に対する上下方向の位置を調整することができる。さらに、水平方向レーザ変位計22からの情報に基づいて、水平方向移動機構10bにより、ラック35およびラックベース30のフレーム55に対する水平方向の位置を調整することができる。このように本変形例によれば、上下方向および水平方向の二方向においてラック35の位置を調整することができる。このため、ピニオン45に対するラック35の位置をより最適に調整することができる。これによって、ピニオン45がラック35に衝突する際の衝撃をより小さくすることができる。
【0070】
(印刷方式の変形例)
また本実施の形態において、グラビアオフセット印刷により基材62への印刷が実施される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、例えばフレキソ印刷により基材62への印刷を実施してもよい。この場合、図9に示すように、転写ロール43として、ロール本体41と、ロール本体41の外周面に設けられたフレキソ版47と、を有する転写ロール43が用いられる。また平板状インキ版61としては、フレキソ版47にインキを供給するアニロックス版が用いられる。
【0071】
この場合、平板状インキ版61のセル63内のインキが、転写ロール43のフレキソ版47の凸部によって受けられる。そして、フレキソ版47の凸部のインキが、凸部のパターンに応じた絵柄で基材62上に転移される。
【0072】
(その他の変形例)
また本実施の形態において、ラック35の水平方向の両側方(両端部)に、フレーム55に固定され、バネ12を含む側方固定部17が設けられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、ラック35の水平方向の一端部にだけ、フレーム55に固定され、バネ12を含む側方固定部17が設けられていてもよい。なお、ピニオン45がラック35に衝突する際には、ラック35がフレーム55の進行方向の片側に移動する傾向があるので、このように一端部にだけ側方固定部17およびバネ12を設ける場合には、当該側方固定部17およびバネ12をラック35に対してフレーム55の進行方向の片側に設けることが好ましい。
【0073】
また本実施の形態において、ラック35の両側方(両端部)の近傍に、上下方向レーザ変位計21および水平方向レーザ変位計22が設けられている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、ラック35の一端部の近傍にだけ、上下方向レーザ変位計21および水平方向レーザ変位計22を設けてもよい。また、ラック35の両側方(両端部)の近傍に、上下方向レーザ変位計21、または、水平方向レーザ変位計22の一方だけを設けてもよい。
【0074】
第2の実施の形態
次に図10および図11を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。ここで図10および図11は、本発明の第2の実施の形態による印刷機を示す側面図および平面図である。
【0075】
図10および図11に示す第2の実施の形態は、インキ版が、その外周面に複数のセルを有するロール状インキ版からなる点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図7に示す第1の実施の形態と略同一である。図10および図11に示す第2の実施の形態において、図1乃至図7に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0076】
印刷機
図10および図11に示すように、基材62上にインキを転移させる印刷機5は、基材62が載置されるフレーム55と、フレーム55の上方に配置され、その外周面に複数のセル69を有するロール状インキ版68と、フレーム55の上方に配置され、ロール状インキ版68に当接してセル69内のインキを受けるとともに、基材62上にインキを転移させる転写ロール43と、を備えている。
【0077】
またロール状インキ版68の近傍には、ロール状インキ版68の外周面にインキを供給するインキ供給部66と、インキ供給部66から供給されたインキをロール状インキ版68のセル69内に充填させるドクター65とが設けられている。
【0078】
また図示はしないが、ロール状インキ版68には、ロール状インキ版68を回転駆動するためのインキ版用回転駆動機構が取り付けられている。また図示はしないが、本実施の形態による印刷機5においても、上述の第1の実施の形態において示される偏芯カムローラ1、バネ荷重調整ボルト11a、バネ荷重調整ボルト12a、ショックアブソーバー、上下方向移動機構10a、水平方向移動機構10b、上下方向レーザ変位計21、水平方向レーザ変位計22またはダイヤルゲージ25などが適宜設けられている。
【0079】
印刷方法
次に、本実施の形態による印刷機5を用いた印刷方法について説明する。
【0080】
はじめに、ラック35のフレーム55に対する上下方向の位置が調整される(調整工程)。次に、ピニオン45とラック35とが係合される(係合工程)。これらの工程は、上述の第1の実施の形態の場合と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0081】
次に、回転駆動機構46によりピニオン45および転写ロール43が回転駆動される。同時に、インキ版用回転駆動機構によりロール状インキ版68が回転駆動される。この際、転写ロール43の回転とロール状インキ版68の回転とが同期するよう、回転駆動機構46またはインキ版用回転駆動機構の少なくともいずれか一方が適宜制御される。
【0082】
ロール状インキ版68が回転すると、インキ供給部66から吐出されたインキがドクター65によってロール状インキ版68のセル63内に充填される。その後、転写ロール43がロール状インキ版68に当接すると、セル63内に充填されたインキが転写ユニット40の転写ロール43のブランケット42に受理される。
【0083】
また、回転駆動機構46によりピニオン45および転写ロール43が回転駆動されると、回転駆動機構46の駆動力が、ピニオン45およびラック35を介してフレーム55に伝達される。これによって、基材62が配置されたフレーム55が水平方向Dに駆動される。この際、転写ロール43は水平方向において静止したままとなっている。
【0084】
その後、フレーム55上の基材62が転写ロール43に到達すると、ロール状インキ版68から転写ロール43のブランケット42に受理されたインキが、基材定盤57に載置された基材62上に転移される。
【0085】
ここで本実施の形態によれば、第1の実施の形態の場合と同様に、ラック35とラックベース30との間には、上下方向に伸縮する複数のバネ11が介在されている。このため、ピニオン45がラック35と上下方向で衝突するときの衝撃を緩和することができ、これによって、衝突の衝撃でピニオン45が上下方向に振動することを防止または抑制することができる。この結果、転写ロール43が基材62に対して上下方向に振動することを防止または抑制することができ、このことにより、基材62上に転移されるインキの厚みが不均一になるのを防ぐことができる。
【0086】
また本実施の形態によれば、第1の実施の形態の場合と同様に、ラック35とフレーム55に固定された側方固定部17との間には、水平方向に伸縮するバネ12が介在されている。このため、ピニオン45がラック35と水平方向で衝突するときの衝撃を緩和することができ、これによって、衝突の衝撃でピニオン45が水平方向に振動することを防止または抑制することができる。この結果、転写ロール43が基材62に対して水平方向に振動することを防止または抑制することができ、このことにより、基材62上に転移されるインキの厚みが不均一になるのを防ぐことができる。
【0087】
なお本実施の形態による印刷方式としては、第1の実施の形態の場合と同様に、グラビアオフセット印刷が用いられてもよく、またはフレキソ印刷が用いられてもよい。
【0088】
また本実施の形態において、ロール状インキ版68にインキ版用回転駆動機構が取り付けられており、また転写ロール43の回転とロール状インキ版68の回転とが同期するよう、回転駆動機構46またはインキ版用回転駆動機構の少なくともいずれか一方が適宜制御される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、ロール状インキ版68にインキ版用回転駆動機構が設けられていなくてもよい。この場合、回転駆動機構46による転写ロール43の回転駆動により、ロール状インキ版68が、転写ロール43とロール状インキ版68の間の摩擦力を介して回転駆動されてもよい。
【0089】
また本実施の形態において、回転駆動機構46による転写ロール43の回転駆動により、フレーム55が、ピニオン45およびラック35を介して水平駆動される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1の実施の形態の変形例の場合と同様に、水平駆動機構50によるフレーム55の水平駆動により、転写ロール43が、ピニオン45およびラック35を介して回転駆動されてもよい。この際、ロール状インキ版68にインキ版用回転駆動機構が設けられていてもよく、若しくは設けられていなくてもよい。
【0090】
第3の実施の形態
次に図12および図13を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。ここで図12および図13は、本発明の第3の実施の形態による印刷機を示す側面図および平面図である。
【0091】
図12および図13に示す第3の実施の形態においては、印刷方式としてダイレクトグラビア印刷が採用される。図12および図13に示す第3の実施の形態において、図1乃至図7に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0092】
印刷機
図12および図13に示すように、基材62上にインキを転移させる印刷機5は、基材62が載置されるフレーム55と、ロール本体41およびロール本体41の外周面に設けられたダイレクトグラビア版48を含み、基材62上にインキを転移させる転写ロール43と、転写ロール43のダイレクトグラビア版48にインキを供給するインキ供給部66と、インキ供給部66から供給されたインキを転写ロール43のダイレクトグラビア版48に充填させるドクター65と、を備えている。
【0093】
また図示はしないが、本実施の形態による印刷機5においても、上述の第1の実施の形態において示される偏芯カムローラ1、バネ荷重調整ボルト11a、バネ荷重調整ボルト12a、ショックアブソーバー、上下方向移動機構10a、水平方向移動機構10b、上下方向レーザ変位計21、水平方向レーザ変位計22またはダイヤルゲージ25などが適宜設けられている。
【0094】
印刷方法
次に、本実施の形態による印刷機5を用いた印刷方法について説明する。
【0095】
はじめに、ラック35のフレーム55に対する上下方向の位置が調整される(調整工程)。次に、ピニオン45とラック35とが係合される(係合工程)。これらの工程は、上述の第1の実施の形態の場合と略同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0096】
次に、回転駆動機構46によりピニオン45および転写ロール43が回転駆動される。転写ロール43が回転すると、インキ供給部66から吐出されたインキがドクター65によって転写ロール43のダイレクトグラビア版48に充填される。
【0097】
また、回転駆動機構46によりピニオン45および転写ロール43が回転駆動されると、回転駆動機構46の駆動力が、ピニオン45およびラック35を介してフレーム55に伝達される。これによって、基材62が配置されたフレーム55が水平方向Dに駆動される。この際、転写ロール43は水平方向において静止したままとなっている。
【0098】
その後、フレーム55上の基材62が転写ロール43に到達すると、ダイレクトグラビア版48に受理されたインキが、基材定盤57に載置された基材62上に転移される。
【0099】
ここで本実施の形態によれば、第1の実施の形態の場合と同様に、ラック35とラックベース30との間には、上下方向に伸縮する複数のバネ11が介在されている。このため、ピニオン45がラック35と上下方向で衝突するときの衝撃を緩和することができ、これによって、衝突の衝撃でピニオン45が上下方向に振動することを防止または抑制することができる。この結果、転写ロール43が基材62に対して上下方向に振動することを防止または抑制することができ、このことにより、基材62上に転移されるインキの厚みが不均一になるのを防ぐことができる。
【0100】
また本実施の形態によれば、第1の実施の形態の場合と同様に、ラック35とフレーム55に固定された側方固定部17との間には、水平方向に伸縮するバネ12が介在されている。このため、ピニオン45がラック35と水平方向で衝突するときの衝撃を緩和することができ、これによって、衝突の衝撃でピニオン45が水平方向に振動することを防止または抑制することができる。この結果、転写ロール43が基材62に対して水平方向に振動することを防止または抑制することができ、このことにより、基材62上に転移されるインキの厚みが不均一になるのを防ぐことができる。
【0101】
また本実施の形態において、回転駆動機構46による転写ロール43の回転駆動により、フレーム55が、ピニオン45およびラック35を介して水平駆動される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1の実施の形態の変形例の場合と同様に、水平駆動機構50によるフレーム55の水平駆動により、転写ロール43が、ピニオン45およびラック35を介して回転駆動されてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 偏芯カムローラ(上下位置調整機構)
5 印刷機
10a 上下方向移動機構
10b 水平方向移動機構
11 バネ(上下方向弾性部材)
11a バネ荷重調整ボルト(弾性力調整部材)
12 バネ(水平方向弾性部材)
12a バネ荷重調整ボルト
15 ショックアブソーバー(上下方向衝撃吸収部材)
17 側方固定部
21 上下方向レーザ変位計(上下位置検出装置)
22 水平方向レーザ変位計(水平位置検出装置)
25 ダイヤルゲージ(位置検出装置)
30 ラックベース
35 ラック
40 転写ユニット
41 ロール本体
42 ブランケット
43 転写ロール
45 ピニオン
46 回転駆動機構
47 フレキソ版
48 ダイレクトグラビア版
50 水平駆動機構
51 ねじ軸
52 走行体
53 駆動モータ
54 連結部
55 フレーム
56 インキ版定盤
57 基材定盤
58 連結部
61 平板状インキ版
62 基材
63 セル
65 ドクター
66 インキ供給部
68 ロール状インキ版
69 セル
71 電子輸送層
72 発光層
74 中間層
75 正孔注入層・正孔輸送層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にインキを転移させる印刷機において、
基材が載置されるフレームと、
インキが充填される複数のセルを有するインキ版と、
前記フレームの上方に配置され、前記インキ版に当接して前記セル内のインキを受けるとともに、基材上にインキを転移させる転写ロールと、
前記フレームに取り付けられたラックベースと、
前記ラックベースに取り付けられたラックと、
前記転写ロールに設けられ、前記ラックに上方から係合可能なピニオンと、を備え、
前記転写ロールを回転駆動する回転駆動機構、または、前記フレームを水平駆動する水平駆動機構のいずれか一方が設けられており、前記転写ロールまたは前記フレームのいずれか一方の駆動により、他方が前記ラックおよび前記ピニオンを介して駆動され、
前記ラックと前記ラックベースとの間に弾性部材が介在されていることを特徴とする印刷機。
【請求項2】
前記フレームを水平駆動する水平駆動機構が設けられており、前記フレームの水平駆動により、前記転写ロールが前記ラックおよび前記ピニオンを介して駆動されることを特徴とする請求項1に記載の印刷機。
【請求項3】
前記弾性部材は、上下方向に伸縮する上下方向弾性部材を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷機。
【請求項4】
前記ラックの下方に設けられ、前記上下方向弾性部材の弾性的な復元力によって前記ラックが急速に押し戻されることを抑制する上下方向衝撃吸収部材をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の印刷機。
【請求項5】
前記弾性部材は、水平方向に伸縮する水平方向弾性部材を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷機。
【請求項6】
前記ラックの側方に設けられ、前記水平方向弾性部材の弾性的な復元力によって前記ラックが急速に押し戻されることを抑制する水平方向衝撃吸収部材をさらに備えたことを特徴とする請求項5に記載の印刷機。
【請求項7】
前記弾性部材は、複数設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷機。
【請求項8】
前記弾性部材は、当該弾性部材の弾性力を適宜調整可能な弾性力調整部材を介して前記ラックに取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷機。
【請求項9】
前記ラックの位置を検出する位置検出機構と、
前記ラックの上下方向または水平方向の位置を調整する位置調整機構と、をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の印刷機。
【請求項10】
前記インキ版は、前記フレーム上に配置され、その上面に複数のセルを有する平板状インキ版からなることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷機。
【請求項11】
前記インキ版は、その外周面に複数のセルを有するロール状インキ版からなることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷機。
【請求項12】
前記転写ロールは、ロール本体と、ロール本体の外周面に設けられたブランケットとを有することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷機。
【請求項13】
前記転写ロールは、ロール本体と、ロール本体の外周面に設けられたフレキソ版とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷機。
【請求項14】
基材上にインキを転移させる印刷機において、
基材が載置されるフレームと、
ロール本体およびロール本体の外周面に設けられたダイレクトグラビア版を含み、基材上にインキを転移させる転写ロールと、
前記転写ロールの前記ダイレクトグラビア版にインキを供給するインキ供給部と、
前記フレームに取り付けられたラックベースと、
前記ラックベースに取り付けられたラックと、
前記転写ロールに設けられ、前記ラックに上方から係合可能なピニオンと、を備え、
前記転写ロールを回転駆動する回転駆動機構、または、前記フレームを水平駆動する水平駆動機構のいずれか一方が設けられており、前記転写ロールまたは前記フレームのいずれか一方の駆動により、他方が前記ラックおよび前記ピニオンを介して駆動され、
前記ラックと前記ラックベースとの間に弾性部材が介在されていることを特徴とする印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−139895(P2012−139895A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293653(P2010−293653)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】