説明

印刷物

【課題】意匠性及び耐久性に優れ、複製が困難なホログラム箔又は金属箔とパール印刷とを組み合わせた印刷物を提供する。
【解決手段】基材上10に、金属箔又はホログラム箔からなる金属箔層11と、アンカー層12と、パール印刷層13と、オーバーコート層14とを順次積層してなり、アンカー層12とオーバーコート層14とが少なくとも一部で接着している構造の印刷物とする。また、アンカー層12、パール印刷層13及びオーバーコート層14は高分子ポリマーを含み、パール印刷層13及び/又はオーバーコート層14の高分子ポリマーは、アンカー層12の高分子ポリマーと少なくとも一種類の同一の成分を含むものとすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有価証券、宝くじ、パスポート、身分証明書等の印刷物に関し、特にカラー印刷機等による複製が困難な金属箔とパール印刷とを組み合わせた印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子写真技術を利用した複写機が普及し、これを利用して簡単に印刷物を複写することができるようになってきた。特に、デジタルカメラやフラットベットスキャナーで入力した画像をパソコンで処理しインクジェットプリンターやカラーデジタル複写機を使用すれば、多色刷りの精緻な複写物でさえも容易に作製することができる。このため、有価証券やパスポート等において、複写防止等の偽造対策を施した印刷物が種々提案されている。
【0003】
しかしながら、偽造防止対策を施した印刷物の真贋判定は、多くの場合、特殊な鑑定装置を用いたり、熟練した鑑定者を必要とする。したがって、種類が多く、また流通範囲が広い有価証券、宝くじ、パスポート、身分証明書等の場合、真贋判定を特殊な鑑定装置や熟練した鑑定者に依存しなければならない印刷物は実用的ではなく、一般の人にも容易に、かつ瞬時に判定できる印刷物が望まれている。
【0004】
複写機による複製が困難で、かつ一般の人にも容易に瞬時に偽造を判定できる印刷物として、例えば金属箔やホログラム箔を設けたものやパール印刷を利用した技術が実用化されている。
金属箔やホログラム箔は光沢に富み美しい外観を呈し、人目を引くことができるため、意匠面での利用価値は高く、多くの印刷物に活用されている。さらに、光を鏡面反射することから、電子写真技術を利用した複写では黒くなってしまうため偽造防止を目的として用いられることも多い。
パール印刷は、パール顔料を変色性のものにすると見る角度によりパール印刷部位の色彩が変化するため、意匠性の高い印刷を施すことができ、さらに電子写真技術を利用した複写では色彩の変化を再現することが困難であることから印刷物の偽造防止としても用いられている。
【0005】
しかしながら、金属箔は同種あるいは類似の材料を入手することは比較的容易なため、同種あるいは類似の材料を用いて有価証券等の意匠を模倣することは容易にできてしまう。
ホログラム箔は、金属箔に比べ偽造は難しいが、今日の構造解析技術とエンボス形成技術の進歩とともに、ホログラム箔の干渉縞の再現は以前より容易になりつつあり、ホログラム箔単独での偽造防止技術は低下している。
【0006】
特許文献1には、ホログラム箔とパール印刷を組み合わせた積層体が開示されている。この積層体はホログラム上にパール印刷層が積層された構造を有し、開封確認用シールとして用いるものである。この積層体は、パール印刷層がホログラムから剥離し易いので、開封確認用シールとして偽造防止に用いるものである。すなわち、開封確認用シールが開封されると、パール印刷層がホログラムから容易に剥離するのでシールの開封を簡単に確認することができる。また、シールが開封されたときにパール印刷層が確実に剥離されるように、ホログラム上にパール印刷層と保護層を積層した構造のものが示されている。
【特許文献1】特開2003−58055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
開封確認用シールとは異なり、有価証券、宝くじ、パスポート、身分証明書等は、複写等による偽造が困難であることだけでなく耐久性に優れていることが求められる。耐久性が求められるのは、有価証券、宝くじ、パスポート、身分証明書などは流通過程において読み取り機械等に供されることが多いため、摩擦等によって印刷が剥離されてしまうと印刷物としての価値がなくなってしまうからである。
【0008】
ところが、ホログラム箔や金属箔上に積層されたパール印刷は、ホログラム箔や金属箔から剥離され易いため、パール印刷をホログラム箔又は金属箔と組み合わせて、有価証券、宝くじ、パスポート、身分証明書等に使用するには耐久性に問題があり実用的ではない。
また、ホログラム箔や金属箔に施されたパール印刷が、ホログラム箔や金属箔の表面を覆って不透明な層となってしまうため、金属箔のメリットである鏡面効果を阻害してしまう。すなわち、ホログラム箔や金属箔と組み合わせてパール印刷を使用する場合には金属箔とパール印刷の両方の特徴を生かすことが難しく、意匠上の制約が加わるという問題がある。
【0009】
上記問題点に鑑み、本発明は、ホログラム箔又は金属箔とパール印刷とを組み合わせ、双方の特徴を生かした意匠性及び耐久性に優れた印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る印刷物は、基材上に設けられた金属箔層上にアンカー層とパール印刷層とオーバーコート層とが順次積層されてなり、アンカー層とオーバーコート層が少なくとも一部で接着していることを特徴としている。
なお、以下、本明細書において、金属箔層とは、金箔や銀箔のような単色の金属光沢を有するものだけでなく、ホログラム箔のように干渉縞を有し、光の干渉によってホログラム像が再生される金属箔層も含むものである。
本発明の印刷物において、金属箔層は基材上に全面的又は部分的に設けられていて、その金属箔層上において全面的又は部分的にアンカー層、パール印刷層、オーバーコート層が順次積層され、かつ、オーバーコート層は、パール印刷層を覆ってアンカー層と接着していることが好ましい。
【0011】
また、アンカー層、パール印刷層及びオーバーコート層は高分子ポリマーを含んでおり、それぞれの層の少なくとも2つの層の高分子ポリマーが同一、あるいは少なくとも1種類の同一の成分を含むことが好ましい。例えば、アンカー層の高分子ポリマーとパール印刷層又はオーバーコート層の高分子ポリマーであり、また、例えば、パール印刷層の高分子ポリマーとアンカー層又はオーバーコート層の高分子ポリマーである。さらに好ましくは、パール印刷層及びオーバーコート層の高分子ポリマーが、アンカー層と同一又は少なくとも1種類の同一の成分を含む高分子ポリマーとすることである。
また、鏡面性を有する金属箔層上に積層するアンカー層、パール印刷層及びオーバーコート層は、鏡面性を阻害しない程度に透明であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
前述した構造にすることで、パール印刷層を金属箔層と組み合わせても、パール印刷層が金属箔から剥離せず、耐久性に優れた印刷物とすることができる。また、金属箔層上のパール印刷層を、金属箔の金属光沢や鏡面効果を維持したままパール光沢や色彩の変化を呈するようにすることが可能なので、金属箔の意匠上のメリットを生かしたバリエーション豊かな印刷物を得ることができる。
また、金属光沢とパール光沢を生かした目立ち易い印刷物であるため、一般の人でも容易に瞬時に真贋を判定できる。
さらにまた、パール印刷層がオーバーコート層で覆われているので、パール印刷用のインキに用いられる干渉性鱗片粉体がパール印刷層の表層上に露わになることがない。このため、機械で有価証券等の枚数を数えたりしても機械に損傷を与えることが少ないというメリットも有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明にかかる印刷物の一実施形態を示した断面図である。印刷物1は、基材10上に、金属箔層11と、アンカー層12と、パール印刷層13と、オーバーコート層14とが順次積層されてなり、オーバーコート層14は、パール印刷層13を覆って、アンカー層12と少なくとも一部で接着している構造を有している。
【0014】
基材10は、有価証券、宝くじ、パスポート、身分証明書等、適切な材料を選択して用いることができ、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、和紙、各種ラミネート紙などのほか各種繊維、皮革等を挙げることができる。
【0015】
金属箔層11は、前述したように、金箔や銀箔のような単色の金属光沢を有する箔からなる層だけでなく、ホログラム箔のように干渉縞を有し、光の干渉によってホログラム像を再生する箔からなる層をも含む。なお、金属箔やホログラム箔の表面には一般的にワックスやシリコーン等の離型剤が塗布されていることが多い。
金属箔層11は、基材10の全面を覆うように設けられていてもよく、図2のように、基材10上に金属箔層11が部分的に設けられていてもよい。
【0016】
図2は、本発明の印刷物1を有する有価証券の一例を示すものである。基材10上に金属箔層11が部分的に設けられ、文字「KP GIFT CARD」が金属箔層11を跨いで印刷されている。
金属箔層11の形成は、例えば、基材10の所望の部分に金箔や銀箔あるいはホログラム箔を平圧式版又はシリンダー式版でベタ又は網点状に箔押しして行うことができる。
【0017】
アンカー層12は、単層でも多層でもよく、材質としては特に制限されるものではないが、透明性の高い高分子ポリマーを用いることが好ましい。高分子ポリマーとして、単一の分子重合樹脂あるいは共重合樹脂である熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができ、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂を成分とするものである。これらの樹脂は単独あるいは混合して用いてもよい。
【0018】
これらの高分子ポリマーは、顔料や溶剤等と配合されてアンカー層用溶剤系インキに調合され、必要に応じて、希釈溶剤と混合して金属箔層11上に塗布されることでアンカー層12を形成する。希釈溶剤は、アンカー層用溶剤系インキの印刷適正に応じて添加されるものである。しかし、アンカー層用溶剤系インキ:希釈溶剤は、重量比で100:0〜30の範囲が好ましい。希釈溶剤の重量比が30を超えると、金属箔層11下に存在する接着剤を溶解して、金属箔層11と基材10との接着力が弱まるので好ましくない。基材10への塗布は、金属箔層11の全面あるいは一部分にグラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法のほか、一般的に用いられる各種印刷法、又はこれらの複数の印刷法を組み合わせて行うことができる。
【0019】
アンカー層12は、パール印刷層13と金属箔層11との剥離を防止するためのものであり、層厚は10〜30μm、好ましくは15μm前後である。10μmより薄いと接着性を維持することが困難であり、アンカー層12が金属箔層11から摩擦等で簡単に剥離してしまうので好ましくない。30μmを超えると、印刷物1が全体的に厚くなるため好ましくない。
【0020】
加えて、アンカー層12をパール印刷層13の下に設けることで、パール光沢や色彩の変化を呈し、かつ金属箔層11の鏡面効果を阻害することの無いパール印刷層13を形成することができる。パール光沢や色彩の変化と鏡面効果を共に維持することにより、パール印刷の意匠上のバリエーションを豊かにでき、有価証券等の見栄えをよくすることができる。
【0021】
なお、アンカー層12の色は透明性を維持できる範囲で有色としてもよい。この場合、アンカー層用溶剤系インキに用いる染料や顔料の量は、重量比で20%以下とすることが望ましい。また、溶剤にはトルエン、キシレン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の有機溶媒を用いることができるが、これらに限定されるものではない。アンカー層用溶剤系インキと配合される希釈溶剤は、一般的に用いられるキシレン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等から適宜選択して用いればよい。
【0022】
パール印刷層13は、酸化チタンや酸化鉄をマイカや金属粉に被覆させたパール顔料を透明インクに混ぜ、それをアンカー層12上に文字や意匠の形態に印刷して形成される層である。
パール顔料は、高分子ポリマー、着色剤、溶剤等と配合されてパール印刷層用溶剤系インキに調合され、希釈溶剤とともにアンカー層12上に印刷されてパール印刷層13を形成する。希釈溶剤は、パール印刷層用溶剤系インキの印刷適正に応じて添加されるもので、印刷方法等の印刷条件に応じた量を使用すればよい。印刷は、溶剤系インキをアンカー層12の全面あるいは一部分にグラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法のほか、一般的に用いられる各種印刷法、又はこれらの複数の印刷法を組み合わせて行うことができる。
【0023】
ここで、高分子ポリマーは透明な単一の分子重合樹脂あるいは共重合樹脂である熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができ、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂を成分とするものである。これらの樹脂は単独あるいは混合して用いてもよい。また、溶剤にはトルエン、キシレン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の有機溶媒を用いることができるが、これらに限定されるものではない。着色剤は、パール印刷層13の透明性を阻害しない程度に配合することができ、種類は特に限定されるものではなく、一般的な顔料や染料を選択して用いることができる。パール印刷層用溶剤系インキと配合される希釈溶剤は、一般的に用いられるキシレン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等から適宜選択して用いればよい。
【0024】
パール印刷層13は、金属粉の被覆された鱗片状のパール顔料を含むため、パール印刷層13が金属箔層11上に形成されている場合には、鱗片と金属箔層11の接する部分の接着力が弱くなるので、パール印刷層13と金属箔層11とは剥離し易くなってしまう。しかし、パール印刷層13と金属箔層11の間にアンカー層12を設けることで、金属箔層11からパール印刷層13が剥離することを防止することができる。これは、アンカー層12と接した鱗片状のパール顔料が包み込まれるようにパール印刷層13が形成されるため、鱗片状のパール顔料が金属箔層11に接しなくなるためと考えられる。
【0025】
パール印刷層13の金属箔層11からの剥離防止をさらに強化するためには、パール印刷層用溶剤系インキの高分子ポリマーの成分とアンカー層用溶剤系インキの高分子ポリマーの成分が同一又は少なくとも一種類の同一の成分を含んでいることが好ましい。それぞれの高分子ポリマーの成分が複数の樹脂成分の混合物である場合には、少なくとも一種類の同一の成分を含んでいれば良く、全ての樹脂成分の種類と混合割合を同一または近似したものにすることがさらに好ましい。それぞれの高分子ポリマーが少なくとも一種類の同一のポリマー成分を含むか同一の成分とすることで接着性が高まる。
【0026】
金属箔層11上に、鏡面効果を維持しパール光沢を備えたパール印刷層13を形成する場合、使用するパール顔料の粒度や使用量、高分子ポリマーの種類によって異なるが、パール印刷層の層厚を通常の厚さより薄くすることによって達成できる。アンカー層12が無い場合、金属箔層11との接着性を維持するため、パール印刷層の層厚を厚くすることが必要である。ところが、この厚い層が金属箔層11の鏡面効果を阻害してしまう。しかし、アンカー層12が存在することにより、パール印刷層13が透明性のあるアンカー層12に包み込まれるように形成されるため、金属箔層11との接着性を弱くすることなく、パール印刷層13の層厚を薄くすることができる。なお、パール印刷層13が金属箔の鏡面効果を阻害した場合、カラーコピー機での複写では、金属箔層11の色がパール印刷の色となってしまうのに対して、鏡面効果を維持したパール印刷層13では、ややグレー系の色となる。
【0027】
オーバーコート層14は、高分子ポリマー、着色剤、溶剤等と配合されてオーバーコート層用溶剤系インキに調合され、希釈溶剤とともにパール印刷層13を覆ってアンカー層12と接着している。希釈溶剤は、オーバーコート層用溶剤系インキの印刷適正に応じて添加されるもので、印刷方法等の印刷条件に応じた量を使用すればよい。なお、耐擦過性を高めるためにワックスやシリコン等を添加してもよい。ここでオーバーコート層14はパール印刷層13全体を覆っていてもよく、あるいは網状に覆ってもよい。アンカー層12とオーバーコート層14の接着は、オーバーコート層14の端部20の一部でも接着していれば良いが、接着面の面積は大きい方がより望ましく、端部20が全体的に全周で接着していることが最も好ましい。
【0028】
オーバーコート層用溶剤系インキをグラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法のほか、一般的に用いられる各種印刷法又はこれらの複数の印刷法を組み合わせた印刷法により、パール印刷層13を全面あるいは部分的に覆い、オーバーコート層14の端部20がアンカー層12と接着したオーバーコート層14を形成することができる。オーバーコート層14の層厚は、特に限定されるものではないが、10μm〜30μm程度の範囲が望ましい。
【0029】
高分子ポリマーは透明な単一の分子重合樹脂あるいは共重合樹脂である熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができ、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂を成分とするものである。これらの樹脂は単独あるいは混合して用いてもよい。また、溶剤にはトルエン、キシレン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の有機溶媒を用いることができるが、これらに限定されるものではない。着色剤は必要に応じて用いればよく、透明性を阻害しない範囲で一般的な顔料や染料から選択して用いればよい。オーバーコート層用溶剤系インキと配合される希釈溶剤は、一般的に用いられるキシレン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等から適宜選択して用いればよい。
【0030】
なお、前述したように、パール印刷層13は、金属箔層11と基材10上に跨って形成してもよい。図2及び図3に文字の一部「RD」(図3ではAで示す領域)、すなわちパール印刷層13がアンカー層12とともに金属箔層11と基材10上に跨っている有価証券の一例を示す。図3は、図2のA−Aの断面を示す図である。
図3に示すように、オーバーコート層14は、金属箔層上で、パール印刷層13、ここでは文字「RD」を包み込むように覆い、オーバーコート層14の端部20がアンカー層12と接着しているアンカー層12とオーバーコート層14がパール印刷層13を包み込むように覆われるので、パール印刷層13はアンカー層12と確実に接着することになる。その結果、パール印刷層13の金属箔層11からの剥離防止効果が相乗的に補完されることになる。なお、図3において、Bで示す領域には、金属箔層11は存在しない。また、この例では、RとDのそれぞれの文字を覆うオーバーコート層14のそれぞれの端部20がそれぞれアンカー層12と接着している。すなわち、RとDがそれぞれ独立して覆われ、それぞれの端部がアンカー層12と接着している。しかし、RとDとが独立しておらず、あたかも1文字としてオーバーコート層14に覆われて、その端部20がアンカー層12と接着していてもよい。
【0031】
アンカー層12とオーバーコート層14の端部20との接着性を高めるため、アンカー層用溶剤系インキとオーバーコート層用溶剤系インキの高分子ポリマーの少なくとも一種類の成分を一致させておくことが望ましい。好ましくは、それぞれの溶剤系インキ成分を同一のものとする。それぞれの高分子ポリマーの成分が複数の樹脂成分の混合物である場合には、少なくとも一種類の同一の成分を含んでいれば良く、さらに好ましくは、全ての樹脂成分の種類と混合割合を同一または近似したものにする。
【0032】
また、オーバーコート層14とパール印刷層13との接着性を強化するため、オーバーコート層用溶剤系インキの高分子ポリマーの成分とパール印刷層用溶剤系インキの高分子ポリマー成分が少なくとも一種類の同一の成分を含むようにすることが好ましい。それぞれの高分子ポリマーの成分が複数の樹脂成分の混合物である場合には、少なくとも一種類の同一の成分を含んでいれば良く、全ての樹脂成分の種類と混合割合を同一または近似したものにすることがさらに好ましい。
【0033】
すなわち、アンカー層用溶剤系インキ、パール印刷層用溶剤系インキ及びオーバーコート層用溶剤系インキの高分子ポリマーの成分の少なくとも一種類を一致させることにより、アンカー層12とパール印刷層13の接着性とオーバーコート層14とアンカー層12の接着性を相乗的に強化することができる。最も好ましくは、全ての層の溶剤系インキの高分子ポリマーの成分が一致していることである。
なお、意匠上の観点から基材10上に予め単色あるいは多色の色刷り印刷を施し、その色刷り印刷の上に部分的に金属箔層11を設けてもよい。
【実施例1】
【0034】
厚紙に金箔が箔押された印刷物(村田金箔製)上に、スクリーン印刷(シルク紗100L)により、以下に示す組成の溶剤系インキ(100部;重量)と希釈溶剤(20部;重量)を用いて厚さ15μmのアンカー層を形成した。
【0035】
(溶剤系インキ組成)
樹脂:塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂 20〜40%
溶剤:シクロヘキサノン 50〜60%
アルキルベンゼン 1〜10%
【0036】
次に、上記溶剤系インキ100部(重量)に対しパール顔料(IriodinIR201/メルクジャパン)を18部(重量)添加したパール印刷層用溶剤系インキと希釈溶剤50部(重量)を用い、スクリーン印刷(シルク紗305L)により、アンカー層上にパール印刷層を形成した。さらに、上記溶剤系インキ100部(重量)と希釈溶剤20部(重量)を用い、スクリーン印刷(シルク紗100L)によりパール印刷層を覆うように塗布してオーバーコート層を形成し、乾燥して印刷物とした。
【0037】
得られた印刷物は、金箔層がパール印刷によりやや白みがかっていたものの、金箔の鏡面効果を残しており、金箔層上でもパール光沢も有していた。また、この印刷物をカラーコピー機で複写したところ、パール印刷が施された金箔の部分がグレーになった複写物が得られた。
ついで、金箔層上のパール印刷層付近に3種類の粘着テープ(3M製白半透明弱粘テープ、ニチバン製紙テープ、ニチバン製セロハンテープ(登録商標))を貼り付けてから粘着テープを剥ぎ取る試験を2回繰り返して行ったところ、全ての粘着テープによる剥ぎ取り試験でもパール印刷層は金属箔層上に残っていた。
【実施例2】
【0038】
実施例1のアンカー層とオーバーコート層の形成において、希釈溶剤を使用しない他は、実施例1の同じ条件で印刷物を作製した。
得られた印刷物は、実施例1同様、金属箔層の鏡面効果を維持しており、剥ぎ取り試験では、実施例1とほとんど差がなかったが、若干接着力は向上していた。
【0039】
〔比較例1〕
実施例1の比較として、アンカー層のない印刷物を実施例1に準じて作製した。
実施例1と同じように、粘着テープによる剥ぎ取り試験を行ったところ、粘着テープとともにほとんどのパール印刷層が剥ぎ取られていた。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明にかかる印刷物の一実施形態を示した断面図である。
【図2】本発明にかかる印刷物を有する有価証券の一例を示すものである。
【図3】図2のA−A断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 印刷物
10 基材
11 金属箔層
12 アンカー層
13 パール印刷層
14 オーバーコート層
20 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に設けられた金属箔層上に、アンカー層と、パール印刷層と、オーバーコート層とが順次積層されてなり、上記アンカー層と上記オーバーコート層が少なくとも一部で接着していることを特徴とする、印刷物。
【請求項2】
前記アンカー層は、前記金属箔層上に部分的に設けられて、前記オーバーコート層は前記パール印刷層を覆って前記アンカー層と接着していることを特徴とする、請求項1記載の印刷物。
【請求項3】
前記アンカー層、前記パール印刷層及び前記オーバーコート層は、それぞれ高分子ポリマーを含み、前記アンカー層の高分子ポリマーと、前記オーバーコート層の高分子ポリマーとが同一、あるいは少なくとも一種類の同一の成分を含むことを特徴とする、請求項1又は2記載の印刷物。
【請求項4】
前記アンカー層、前記パール印刷層及び前記オーバーコート層に含まれる高分子ポリマーが同一、あるいは少なくとも一種類の同一の成分を含むことを特徴とする、請求項1又は2記載の印刷物。
【請求項5】
前記パール印刷層に含まれる高分子ポリマーと、前記アンカー層又は前記オーバーコート層に含まれる高分子ポリマーとが同一、あるいは少なくとも一種類の同一の成分を含むことを特徴とする、請求項1又は2記載の印刷物。
【請求項6】
前記金属箔層が鏡面性を有する層であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−298126(P2009−298126A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158453(P2008−158453)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】