説明

印刷用凸版とその製造方法並びに有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法

【課題】異物噛みこみ等による局所的な押し込み量過多によるアライメントパターンの崩壊や、発光材料の転位が不均一なことで生じる不明瞭なアライメントパターンの印刷物が生ずることや、印刷画像の凸部やアライメントマークが押し込まれ、印刷が均等に全面にかからなかったために明瞭な被印刷物が得られなかった欠点を解消することが求められていた。
【解決手段】印刷画像領域外にアライメントマークを有するとともに、印刷画像を形成する領域内凸部が形成されている凸版印刷版において、印刷画像領域外に領域外凸部を形成し、前記領域外凸部中に凹形状のアライメントマークが設けられていることを特徴とする印刷用凸版とその製造方法並びに有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス等の硬度の比較的高い被印刷物に詳細なパターンを凸版印刷法により形成するための印刷用凸版とその製造方法、特に有機エレクトロルミネッセンス素子形成のための印刷用凸版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子とする)は、二つの対向する電極の間に有機発光材料からなる有機発光層を形成し、有機発光層に電流を流すことで発光させるものであるが、効率良く発光させるには発光層の膜厚が重要であり、100nm程度の薄膜にする必要がある。さらに、これをカラー表示可能なディスプレイとするには有機EL素子を高精細にパターニングする必要がある。
【0003】
有機発光材料には、低分子材料と高分子材料があり、低分子材料を使用する場合、通常、マスクを用いた真空蒸着を行うことにより、有機パターン層としての発光層を得る。この方法は、発光層を均一な厚さに形成できる点で優れている。しかしながら、低分子材料を蒸着する基板が大きい場合、大きな寸法のマスクを使用することとなるが、パターン精度に優れ且つ寸法の大きなマスクを製造することは難しいため、基板上の所定の位置に発光層を形成できないことがある。
【0004】
そこで、最近では有機発光材料に高分子材料を用い、有機発光材料を溶媒に溶かして塗工液にし、これをウェットコーティング法や印刷法にて薄膜形成する方法が試みられるようになってきている。薄膜形成するためのウェットコーティング法としては、スピンコート法、バーコート法、突出コート法、ディップコート法等があるが、高精細にパターニングしたりRGB3色に塗り分けしたりするためには、これらのウェットコーティング法では難しい。よって、塗り分けパターニングを得意とする印刷法による薄膜形成が有効である。
【0005】
有機ELディスプレイでは基板としてガラス基板を用いることが多いため、グラビア印刷法等のように金属製の印刷版等の硬い版を用いる方法は不向きであり、弾性を有するゴム版を用いたオフセット印刷法や、ゴムやその他の樹脂を主成分とした感光性樹脂版を用いる凸版印刷法が最適である。これらの印刷法の試みとして、オフセット印刷による方法(特許文献1)、凸版印刷による方法(特許文献2)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−93668号公報
【特許文献2】特開2001−155858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
凸部が前記樹脂材料からなる印刷用凸版を製造するにあっては、樹脂材料として感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィー法(フォトリソ法)が用いられる。フォトリソ法により印刷用凸版を形成するにあっては、基材上に各種印刷法やスピンコートなどの塗布により感光性樹脂層を形成した樹脂材(版材)を、遮光部と透光部からなるマスクを用いて露光し、次いで現像することにより、凸部が形成され、印刷用凸版となる。ポジ型の感光性樹脂を用いた場合、露光工程によってマスクの透光部を通過した光が照射された部分が軟
化し、現像工程によって、軟化した部分が除去される。また、感光性樹脂にネガ型の感光性樹脂を用いた場合、露光工程によってマスクの透光部を通過した光が照射された部分が硬化し、現像工程によって、光が照射されない部分(未硬化部分)が除去される。
【0008】
エレクトロニクス分野のような微細なパターニングに凸版印刷法を用いた場合、印刷パターンの形状やそれに伴う印圧の均一さが要求される。またパターンの位置精度を保つためにアライメントマークを用い、取り付けた版と印刷機との位置関係を正確に保つ必要がある。
【0009】
印圧管理はキスタッチの位置からの押し込み量で決定されるのだが、版胴傾きによる異物噛みこみでの局所的な印圧過多で版パターンが座屈する可能性がある。もう一方でアライメントマークの形状が印刷物にて認識が難しいこと、もしくは認識できない場合がある。
【0010】
印刷用凸版を使用した場合、発光材料が転写の際に微小なパターンは転移量の制御が難しく、明瞭な印刷パターンが得られないことが関係している。
【0011】
本発明は以上のような問題を鑑みて考案されたもので、有機EL等に必要とされる高精細な印刷パターン等を形成し、印刷用凸版構成を事前にキスタッチを認識可能にし、かつアライメントマークの認識を良好にすることで今までよりも効率的な印刷条件を見出すことができ、被印刷物の歩留まりを改善できる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、本発明の請求項1に係る発明は、印刷画像領域外にアライメントマークを有するとともに、印刷画像を形成する領域内凸部が形成されている凸版印刷版において、印刷画像領域外に領域外凸部を形成し、前記領域外凸部中に凹形状のアライメントマークが設けられていることを特徴とする印刷用凸版を提供する。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記領域外凸部の高さが、前記領域内凸部より高いことを特徴とする請求項1記載の印刷用凸版を提供する。
【0014】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記領域外凸部の高さと前記領域内凸部より高さの高低差が5μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項2記載の印刷用凸版を提供する。
【0015】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記領域内凸部の高さが20μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項3記載の印刷用凸版を提供する。
【0016】
また、本発明の請求項5に係る発明は、前記領域外凸部が透明であることを特徴とする請求項1から4何れか記載の印刷用凸版を提供する。
【0017】
また、本発明の請求項6に係る発明は、前記領域外凸部が第一感光済樹脂層と第二感光済樹脂層、前記領域内凸部が第二感光済樹脂層から構成されていることを特徴とする請求項1から5何れか記載の印刷用凸版を提供する。
【0018】
また、本発明の請求項7に係る発明は、前記第一感光済樹脂層には、粒子の粒子径が3μm以下かつ粒子径0.1μm以下の粒子群が50重量%以上分散されていることを特徴とする請求項6記載の印刷用凸版を提供する。
【0019】
また、本発明の請求項8に係る発明は、前記第一感光済樹脂層の透過率がOD値で3.
0以上であることを特徴とする請求項6または7記載の印刷用凸版を提供する。
【0020】
また、本発明の請求項9に係る発明は、請求項1から8何れか記載の印刷用凸版の製造方法であって、
順に、
基材上に第二感光性樹脂層を形成する第二感光性樹脂層形成工程と、
第二感光性樹脂層上に第二感光性樹脂層の感光条件とは異なる感光条件を持つ感光性樹脂からなる第一感光性樹脂層を形成する第一感光性樹脂層形成工程と、
第一感光性樹脂層のみを露光現像し第一感光済樹脂層を形成する第一感光済樹脂層形成工程と、
第二感光性樹脂層を露光現像し第二感光済樹脂層を形成する第二感光済樹脂層形成工程と、
からなることを特徴とする印刷用凸版の製造方法を提供する。
【0021】
また、本発明の請求項10に係る発明は、第二感光性樹脂層がネガ型またはポジ型感光性樹脂からなり、第二感光性樹脂層がポジ型またはネガ型からなることを特徴とする請求項9記載の印刷用凸版の製造方法を提供する。
【0022】
また、本発明の請求項11に係る発明は、有機発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層といった発光補助層のうち少なくとも1層が請求項1から8何れか記載の印刷用凸版の領域内凸部により印刷形成されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法を提供する。
【0023】
また、本発明の請求項12に係る発明は、前記印刷形成がアライメントマークを認識しながら行うことを特徴とする請求項11記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によって、被印刷物の高精細な印刷パターンを凸版印刷法により形成する。
【0025】
これにより、本発明の印刷用凸版の構成を用いることによって、事前にキスタッチを認識可能にし、かつアライメントマークの認識を良好にすることで今までよりも印刷可能条件を向上させ、印刷物の歩留まりを改善できる。
【0026】
アライメントマーク形状、例えば、十字の形状が本発明の印刷用凸版で作成すると認識良好な結果が得られた。
【0027】
本発明の版構成の場合、アライメントマークが凹部になっている為、アライメントマークが凸部であった場合の印刷に特徴的だった異物噛みこみ等による局所的な押し込み量過多によるアライメントパターンの崩壊は無くなり、発光材料の転位が不均一なことで生じる不明瞭なアライメントパターンの印刷物が改善されたと考えられる。
【0028】
また、印刷画像の領域外である、例えば外周部に領域外凸部が設けられているために、印刷画像である領域内凸部と凸部のアライメントマークのみが押し込まれ、印刷が均等に全面にかからなかったために明瞭な被印刷物が得られなかった欠点が解消した。
【0029】
特に、領域外凸部の高さが、前記領域内凸部より高いことにより、印刷画像である領域内凸部が印刷が均等に全面にかからりやすくなったたために明瞭な被印刷物が得られる。このように、高低差を設けることにより押し込み量の設定が可能になった。
【0030】
これは、前記領域外凸部の高さと前記領域内凸部より高さの高低差が5μm以上10μm以下である場合が好ましい。高低差が10μm以上の場合、印刷パターンにより印圧が均等に全面にかかりにくく、明瞭な被印刷物が得られない場合がある。
【0031】
なお、領域内凸部の高さが20μm以下だと領域内凸部の形成においてバラツキが多く、特にフォトリソ法の場合にバラツキが起き易い。また、100μm以上だと例えばフォトリソ法の現像工程にてパターンが座屈する傾向が見られ、被印刷物に転写ムラも見られ不安定になる場合がある。
【0032】
この様な凸版印刷版は、具体的には、基材上に第二感光性樹脂層を形成する第二感光性樹脂層形成工程と、
第二感光性樹脂層上に第二感光性樹脂層の感光条件とは異なる感光条件を持つ感光性樹脂からなる第一感光性樹脂層を形成する第一感光性樹脂層形成工程と、
第一感光性樹脂層のみを露光現像し第一感光済樹脂層を形成する第一感光済樹脂層形成工程と、
第二感光性樹脂層を露光現像し第二感光済樹脂層を形成する第二感光済樹脂層形成工程と、
からなることにより精確な凸版印刷版を提供することが可能になった。
【0033】
また、領域外凸部が透明であることにより、アライメントマークで位置合わせしながら印刷することが可能になった。
【0034】
また、このような製造方法は、具体的には、
前記領域外凸部が第一感光済樹脂層と第二感光済樹脂層、前記領域内凸部が第二感光済樹脂層から構成されていることにより容易に製造できる。
【0035】
なお、前記第一感光済樹脂層には、粒子の粒子径が3μm以下かつ粒子径0.1μm以上の粒子群が50重量%以上分散されていることが好ましく、第一感光済樹脂層の粒子径も3μm以上があることで樹脂の密着性が悪化し、印刷性やフォトリソ特性の悪化につながり易い。また、50重量%以下の場合、遮光性を損ねる場合が見られた。
【0036】
なお、透過率のOD値も3.0未満の場合、遮光性を損ねることでフォトリソ工程でパターンを露光してしまう場合が見られたので、3.0以上が好ましい。
【0037】
また、有機EL素子形成用などの凸版印刷版の製造に際しては、このような各樹脂を用いることにより、高精細な印刷パターンが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る印刷用凸版の作成フロー図である。
【図2】本発明に係る印刷用凸版の断面図である。
【図3】本発明に係る印刷用凸版を作成する際に用いるフォトマスクであり、(i)が第一感光性樹脂層露光用、(ii)が第二感光性樹脂層露光用である。
【図4】本発明に係る印刷用凸版であり、(a)が平面図、(b)が断面図である。
【図5】本発明に係る凸版印刷法による有機EL素子作成の一例を示した斜視説明図である。
【図6】本発明に係る有機EL素子の一例を断面で示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下に説明する実施の形態のみに限定されるものではない。
【0040】
図1は、本発明に係る印刷用凸版の作成フロー図であり、図2は、本発明の印刷用凸版の断面図である。印刷用凸版は、感光性樹脂を板状に成型したものを、露光、現像することによって形成する方法や、レーザーや金属の刀などで削ることで形成するといった、公知の方法を用いることができるが、その方法の容易さから、感光性樹脂からなる層をフォトリソグラフィー法によりパターン形成する方法が望ましく、かつ発光材料に直接接触する層は耐溶剤性であることがより望ましい。
【0041】
感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィー法を凸部パターン形成法として適用する場合、基材、耐溶剤層、感光性樹脂層が順次積層されている板状感光性樹脂積層体から凸版の凸部を形成することが最も望ましい。耐溶剤層、感光性樹脂層の成型方法は、射出成型法、突出成型法、ラミネート法、バーコート法、スリットコート法、カンマコート法などの公知の方法を用いることができる。
【0042】
本発明の印刷用凸版の凸部である領域内凸部と領域外凸部を形成するのに材料に使用される樹脂としては、感光性樹脂を用いる場合の主成分となるポリマーとして、ニトリルゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴムなどのゴムの他に、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコールなどの合成樹脂やそれらの共重合体、セルロースなどの天然高分子などから一種類以上を選択することができるが、有機発光材料などといった塗工液を塗布する場合、有機溶剤に対する耐溶剤性の観点から、フッ素系エラストマーやポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ六フッ化ビニリデンやそれらの共重合体といったフッ素系樹脂が望ましい。
【0043】
また、少なくとも、ポリアミド、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、酢酸セルロースコハク酸エステル、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、カチオン型ピペラジン含有ポリアミドやこれらの誘導体といった水溶性溶剤に可溶なものを一種類以上含有することにより水を用いた現像が可能となるため、これらの内から一つ以上を選択し用いることが最も望ましい。
【0044】
上記感光性樹脂には感光性樹脂の重合のために光重合開始剤が添加される。例としては、この用途に適するものであれば特に制限は無く、各種文献に報告されているものを用いることができる。前記光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタノール、2−クロロチオキサントン、2−エチルアントラキノン、ジエチルチオキサントン(カヤキュアDETX:日本化薬製)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン(イルガキュア369:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア651:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(イルガキュア819:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)又はビイミダゾール化合物などがあり、これらに限定されるものではない。また、これらの光重合開始剤は、必要に応じて適宜に複数のものを混合して使用しても良い。
【0045】
第一感光性樹脂内に用いるのは一般的に用いられている顔料や染料を使用してもよく、
例えば黒色系であれば、黒色顔料ではチタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。カーボンブラックの品種としてはSAF、ISAF、HAF、FEF、SRF等のファーネスブラック、FT、MT等のサーマルブラック、アセチレンブラック等を挙げることが出来る。これらのカーボンブラックは単独でまたは2種以上を混合してもよい。
【0046】
また、黒色染料の例としては、カラーインデックス名(C.I.Name)でAcid
Blackl、AcidBlack2、AcidBlack48、MordantBlack1、DisperseBIackl、ReactiveBIack5を挙げることができる。また、黒色系に限定されること無く、様々な顔料や染料の粒子を組み合わせてもよい。
【0047】
第一感光済樹脂層1および第二感光済樹脂層2の凸パターン形成(図4の領域外凸部21および領域内凸部22)の為に用いられる露光方式としては、基板とフォトマスクを完全に密着させるコンタクト露光方式と、フォトマスクにダメージを与えないように少し距離をおいたプロキシミティ露光方式がある。フォトマスクのマスク基板にガラスを用いた場合、気泡の混入によりフォトマスクと印刷用凸版形成用樹脂材を密着させることが困難であり、接触による表面の損傷なども考えられることから、フォトマスクと樹脂材は離れている方が良い。しかしコンタクト露光方式では露光光は光の方向に広がりを持つために、フォトマスクと樹脂材との間で光が散逸し、正確なパターニングができない。したがって、露光光の方向がそろっているプロキシミティ露光方式により露光を行うことが好ましい。また本発明に用いられるフォトマスク図3は図3(i)で第一感光性樹脂層8を露光し、図3(ii)で第二感光性樹脂層9を露光する様にクロム鍍金してあるが、これは第二感光性樹脂層9をポジ型にし、第一感光性樹脂層8をネガ型にしている方式で、これに限定されるものではない。
【0048】
現像方式としては、フォトマスクを樹脂凸版から外し、現像を行なう。現像により感光性樹脂層の未硬化部分を除去し、本発明の樹脂凸版である印刷用凸版となる。このとき、露光後に純水により溶解、除去可能なポリマー成分が水溶性高分子からなる水現像タイプの樹脂凸版を用いた場合には、現像液として純水が用いられる。アルカリ性現像液を用いた場合は、NaOHやTMAHといった現像液を用いることが出来る。またポジ型、ネガ型で各々適する液性が異なってもよく、現像後に樹脂層を更に硬化させることを目的として、ベークや後露光をおこなっても良い。
【0049】
本発明はこの露光、現像を繰り返し行なうことで図4(a)の領域外凸部21と、領域内凸部22の形成できる。そのときの断面図は、図4(b)の通りである。なお、図4(a)と図4(b)では領域外凸部21の形状および領域内凸部22と、それに対応する形状のはずの第一感光済樹脂層31および第二感光済樹脂層32の形状が合っていないが、これは分かりやすく説明するための概念的な作図上の相違であり、実際の印刷用凸版では、当然のことながら図4(a)と図4(b)では齟齬を生じない形状になっている。
【0050】
また本発明の利点を最大に活かすには第一感光性樹脂層8をネガ型に、第二感光性樹脂層9をポジ型にするのが望ましい為、本発明では前記樹脂構成の印刷用凸版にて説明するが、これに限定されるものではない。
【0051】
本発明の印刷用凸版の凸部及び耐溶剤層は有機発光材料を溶剤中に分散または溶解させて調製した塗工液を印刷するためのものであるため、使用する樹脂には有機発光材料の発光を阻害する光硬化剤や光重合開始剤といった感光性成分を含まないものであってもよく、この用途に用いる凸版を製造する場合には、硬化後の樹脂が、有機溶剤に対する耐溶剤性を有するものとするのがよい。この観点からは、その樹脂の主成分となるポリマーとして、フッ素系エラストマーやポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ六フッ化ビニリデンやそれらの共重合体といったフッ素系樹脂や、ポリアミド、ポリビニルアルコール、酢酸セルロースコハク酸エステル、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、カチオン型ピペラジン含有ポリアミド、といった水溶性溶剤に可溶なものを用いることができる。
【0052】
本発明の印刷用凸版の凸部のパターンが形成される基材5の材料としては、印刷に対する機械的強度を有すれば良く、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコールなどの公知の合成樹脂、鉄や銅、アルミニウムといった公知の金属、またはそれらの積層体を用いることができるが、高い寸法安定性を保持するものが望ましい。そのため、基材として用いられる材料としては金属が好適に使用され、例としては鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、チタン、クロム、金、銀やそれらの合金、積層体などが挙げられるが、特に、加工性、経済性から鉄を主成分とするスチール基材やアルミ基材を好適に用いることができる。
【0053】
耐溶剤層3の材料としては、溶剤に対する耐性があり、分散できる樹脂であればよく、フッ素系エラストマーやポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ六フッ化ビニリデンやそれらの共重合体といったフッ素系樹脂や、ポリアミド、ポリビニルアルコール、酢酸セルロースコハク酸エステル、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、カチオン型ピペラジン含有ポリアミド、といった水溶性溶剤に可溶なものなど、樹脂層1と同一の材料を用いても良い。
【0054】
次に、本発明に係る印刷用凸版を用いた電子デバイスの製造方法の一例として、有機ELデバイスの製造方法について説明する。なお、本発明に係る電子デバイスないし有機ELデバイスの製造方法は、以下に例示する具体的な製造方法のみに限定されるものではない。
【0055】
従って、本発明によってパターン形成された印刷用凸版を用い、凸版印刷法により有機ELディスプレイ用電極基板といった高い精度を必要とする被印刷基板表面にインキパターンを形成する印刷物を製造することができる。以下にその製造方法について示す。
【0056】
図5に本発明の印刷物の製造に用いられる凸版印刷装置の概略図を示した。定盤44には被印刷基板45が固定されており、本発明によってパターン形成された印刷用凸版41は版胴42に固定され、印刷用凸版41はインキ供給体であるアニロックスロール43と接しており、アニロックスロール43はインキ補充装置から通液部47を通過し、供給されている。
【0057】
まず、インキ補充装置から通液部47へ通過し、アニロックスロール43へインキを補充し、アニロックスロール43に供給されたインキのうち余分なインキは、ドクタリング等で除去される。インキ補充装置には、滴下型のインキ補充装置、ファウンテンロール、スリットコータ、ダイコータ、キャップコータなどのコータやそれらを組み合わせたものなどを用いることもできる。ドクタリングするにはドクターブレードの他にドクターロールといった公知の物を用いることもできる。また、アニロックスロール43は、クロム製やセラミックス製のものを用いることができる。また、印刷用凸版へのインキ供給体としてシリンダー状のアニロックスロールではなく、平版のアニロックス版を用いることも可能である。
【0058】
印刷用凸版へのインキ供給体であるアニロックスロール43表面にドクターによって均一に保持されたインキは、版胴42に取り付けられた印刷用凸版41の凸部パターンに転
移、供給される。そして、版胴42の回転に合わせて印刷用凸版41の凸部パターンと基板は接しながら相対的に移動し、インキは定盤44上にある被印刷基板45の所定位置に転移し被印刷基板にインキパターンを形成する。被印刷基板にインキパターンが設けられた後は、必要に応じてオーブンなどによる乾燥工程を設けることができる。
【0059】
なお、印刷用凸版上にあるインキを被印刷基板45に印刷するときにおいては、版胴42の回転にあわせ被印刷基板45が固定された定盤44を移動させる方式であってもよいし、図5上部の版胴42、印刷用凸版41、アニロックスロール43、インキ補充装置からなる印刷ユニットを版胴42の回転に合わせ移動させる方式であってもよい。また、本発明の印刷用凸版は版胴42上に樹脂層を形成し、直接製版し、凸部パターンを形成してもよい。
【0060】
なお、図5は1枚毎に被印刷基板にインキパターンを形成する枚葉式の凸版印刷装置であるが、本発明の印刷物の製造方法にあって被印刷基板がウェブ状で巻き取り可能である場合には、ロール・ツゥー・ロール方式の凸版印刷装置を用いることもできる。ロール・ツゥー・ロール方式の凸版印刷装置を用いた場合には連続してインキパターンを形成することが可能となり、製造コストを低くすることが可能となる。
【0061】
次に、本発明によってパターン形成した印刷用凸版を用いた印刷物の製造方法の一例として、有機EL素子の製造方法について説明する。なお、本発明はこれに限るものではない。
【0062】
図6に本発明の有機EL素子の説明断面図を示した。有機EL素子の駆動方法としては、パッシブマトリックス方式とアクティブマトリックス方式があるが、本発明の有機EL素子はパッシブマトリックス方式の有機EL素子、アクティブマトリックス方式の有機EL素子のどちらにも適用可能である。
【0063】
パッシブマトリックス方式とはストライプ状の電極を直交させるように対向させ、その交点を発光させる方式であるのに対し、アクティブマトリックス方式は画素毎にトランジスタを形成した、いわゆる薄膜トランジスタ(TFT)基板を用いることにより、画素毎に独立して発光する方式である。
【0064】
図6に示すように、本発明の有機EL素子は、基板60の上に、陽極としてストライプ状に第一電極59を有している。隔壁58は第一電極間に設けられ、第一電極端部のバリ等よるショートを防ぐことを目的として第一電極端部を覆うことがましい。
【0065】
そして、本発明の有機EL素子は、第一電極59上であって、隔壁58で区画された領域(発光領域L、画素部)に有機発光層及び発光補助層からなる有機EL層を有している。電極間に挟まれる有機EL層は、有機発光層単独から構成されたものであってもよいし、有機発光層と発光補助層との積層構造から構成されたものでもよい。発光補助層としては正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層が挙げられる。図4では発光補助層である正孔輸送層55と有機発光層(51、52、53)との積層構造からなる構成を示している。第一電極59上に正孔輸送層55が設けられ、正孔輸送層55上に赤色(R)有機発光層51、緑色(G)有機発光層52、青色(B)有機発光層53がそれぞれ設けられている。
【0066】
次に、有機発光媒体層上に陽極である第一電極59と対向するように陰極として第二電極54が配置される。パッシブマトリックス方式の場合、ストライプ状を有する第一電極と直交する形で第二電極はストライプ状に設けられる。アクティブマトリックス方式の場合、第二電極は、有機EL素子全面に形成される。更に、図示していないが、環境中の水
分、酸素の第一電極、有機発光層、発光補助層、第二電極への侵入を防ぐために有効画素全面に対してガラスキャップ等による封止体が設けられ、接着剤を介して基板と貼りあわされる。
【0067】
本発明の有機EL素子は、少なくとも基板と、当該基板に支持されたパターン状の第一電極と、有機発光層と、第二電極を具備する。本発明の有機EL素子は、図4とは逆に、第一電極を陰極、第二電極を陽極とする構造であっても良い。また、ガラスキャップ等の封止体の代わりに有機発光媒体層や電極を外部の酸素や水分の浸入から保護するためにパッシベーション層や外部応力から保護する保護層、あるいはその両方の機能備えた封止基材を備えてもよい。
【0068】
次に、有機EL素子の製造方法を説明する。
【0069】
本発明にかかる基板としては、絶縁性を有する基板であればいかなる基板も使用することができる。この基板側から光を取り出すボトムエミッション方式の有機EL素子とする場合には、基板として透明なものを使用する必要がある。
【0070】
例えば、基板としてはガラス基板や石英基板が使用できる。また、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルムやシートであっても良い。これら、プラスチックフィルムやシートに、有機発光媒体層への水分の侵入を防ぐことを目的として、金属酸化物薄膜、金属弗化物薄膜、金属窒化物薄膜、金属酸窒化膜薄膜、あるいは高分子樹脂膜を積層したものを基板として利用してもよい。
【0071】
また、これらの基板は、あらかじめ加熱処理を行うことにより、基板内部や表面に吸着した水分を極力低減することがより好ましい。また、基板上に積層される材料に応じて、密着性を向上させるために、超音波洗浄処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、UVオゾン処理などの表面処理を施してから使用することが好ましい。
【0072】
また、これらに薄膜トランジスタ(TFT)を形成して、アクティブマトリックス方式の有機EL素子用の基板とすることが可能である。
【0073】
また、隔壁形成材料が感光性材料の場合、形成材料溶液をスリットコート法やスピンコート法により全面コーティングしたあと、露光、現像といったフォトリソ法によりパターニングがおこなわれる。スピンコート法の場合、隔壁の高さは、スピンコートするときの回転数等の条件でコントロールできるが、1回のコーティングでは限界の高さがあり、それ以上高くするときは複数回スピンコートを繰り返す手法を用いる。
【0074】
感光性材料を用いてフォトリソ法により隔壁を形成する場合、その形状は露光条件や現像条件により制御可能である。例えば、ネガ型の感光性樹脂を塗布し、露光・現像した後、ポストベークして、隔壁を得るときに、隔壁端部の形状を順テーパー形状としたい場合には、この現像条件である現像液の種類、濃度、温度、あるいは現像時間を制御すればよい。現像条件を穏やかなものとすれば、隔壁端部は順テーパー形状となり、現像条件を過酷にすれば、隔壁端部は逆テーパー形状となる。
【0075】
また、隔壁形成材料がSiO、TiOの場合、スパッタリング法、CVD法といった乾式成膜法で形成可能である。この場合、隔壁のパターニングはマスクやフォトリソ法により行うことができる。
【0076】
次に、有機発光層及び発光補助層からなる有機EL層を形成する。電極間に挟まれる有機EL層としては、有機発光層単独から構成されたものでもよいし、有機発光層と正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層といった発光を補助するための発光補助層との積層構造としてもよい。なお、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層は必要に応じて適宜選択される。
【0077】
そして、本発明は有機発光層や正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層といった発光補助層からなる有機EL層のうち少なくとも1層を、有機EL層材料を溶媒に溶解、または分散させたインキを用い、本発明の印刷用凸版を用いた凸版印刷により前記第一電極の上方に印刷して形成する際に適用することができる。以降、本発明において、有機発光材料を溶媒に溶解、または分散させた有機発光インキを用いた場合について示す。
【0078】
有機発光層は電流を流すことにより発光する層である。有機発光層の形成する有機発光材料としては、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス[8−(パラ−トシル)アミノキノリン]亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、ポリ−2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレンなどの低分子系発光材料が使用できる。
【0079】
また、クマリン系蛍光体、ペリレン系蛍光体、ピラン系蛍光体、アンスロン系蛍光体、ポリフィリン系蛍光体、キナクリドン系蛍光体、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系蛍光体、ナフタルイミド系蛍光体、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系蛍光体等、Ir錯体等の燐光性発光体などの低分子系発光材料を、高分子中に分散させたものが使用できる。高分子としてはポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等が使用できる。
【0080】
また、ポリ(2−デシルオキシ−1,4−フェニレン)(DO−PPP)やポリ[2,5−ビス−[2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)エトキシ]−1,4−フェニル−アルト−1,4−フェニルレン]ジブロマイドなどのPPP誘導体、ポリ[2−(2’−エチルヘキシルオキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン](MEHPPV)、ポリ[5−メトキシ−(2−プロパノキシサルフォニド)−1,4−フェニレンビニレン](MPS−PPV)、ポリ[2,5−ビス−(ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)](CN−PPV)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(PDAF)、ポリスピロフルオレンなどの高分子発光材料であってもよい。PPV前駆体、PPP前駆体などの高分子前駆体が挙げられる。また、その他既存の発光材料を用いることもできる。
【0081】
正孔輸送層を形成する正孔輸送材料としては、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン類及び無金属フタロシアニン類、キナクリドン化合物、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン系低分子正孔注入輸送材料や、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物などの高分子正孔輸送材料、チオフェンオリゴマー材料、その他既存の正孔輸送材料の中から選ぶことができる。
【0082】
また、電子輸送層を形成する電子輸送材料としては、2−(4−ビフィニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)1,3,4−オキサジアゾール、オキサジアゾール誘導体やビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラート)ベリリウム錯体、トリアゾール化合物等を用いることができる。
【0083】
有機発光材料を溶解または分散する溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、2−メチル−(t−ブチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、ペンチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,3,5−トリ−イソプロピルベンゼン等を単独又は混合して用いることができる。また、有機発光インキには、必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等が添加されてもよい。
【0084】
正孔輸送材料、電子輸送材料を溶解または分散させる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水等の単独またはこれらの混合溶剤などが挙げられる。特に、正孔輸送材料をインキ化する場合には水またはアルコール類が好適である。
【0085】
有機発光層や発光補助層は湿式成膜法により形成される。なお、これらの層が積層構造から構成される場合には、その各層の全てを湿式成膜法により形成する必要はない。湿式成膜法としては、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法、吐出コート法、プレコート法ロールコート法、バーコート法等の塗布法と、凸版印刷法、インクジェット印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等の印刷法が挙げられる。特に、RGB三色の有機発光層をパターン形成する場合、印刷法によって画素部に選択的に形成することができ、カラー表示のできる有機EL素子を製造することが可能となる。有機発光媒体層の膜厚は、単層又は積層により形成する場合においても1000nm以下であり、好ましくは50nm〜150nmである。
【0086】
繰り返しになるが、本発明は有機発光インキを用い凸版印刷法により有機発光層形成する場合だけでなく、正孔輸送インキや電子輸送インキを用い凸版印刷法により正孔輸送層や電子輸送層といった発光補助層を形成する場合にも使用することができる。
【0087】
次に、第二電極を形成する。第二電極を陰極とした場合その材料としては電子注入効率の高い物質を用いる。具体的にはMg、Al、Yb等の金属単体を用い、発光媒体と接する界面にLiや酸化Li、LiF等の化合物を1nm程度挟んで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して用いる。または電子注入効率と安定性を両立させるため、低仕事関数なLi、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb等の金属1種以上と、安定なAg、Al、Cu等の金属元素との合金系が用いられる。具体的にはMgAg、AlLi,CuLi等の合金が使用できる。また、トップエミッション方式の有機EL素子とする場合は、陰極は透明性を有する必要があり、例えば、これら金属とITO等の透明導電層の組み合わせによる透明化が可能となる。
【0088】
第二電極の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸
着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の乾式成膜法を用いることができる。また、第二電極をパターンとする必要がある場合には、マスク等によりパターニングすることができる。第二電極の厚さは10nm〜1000nmが好ましい。なお、本発明では第一の電極を陰極、第二の電極を陽極とすることも可能である。
【0089】
有機EL素子としては電極間に有機発光層を挟み、電流を流すことで発光させることが可能であるが、有機発光材料や発光補助層形成材料、電極形成材料の一部は大気中の水分や酸素によって容易に劣化してしまうため通常は外部と遮断するための封止体を設ける。
【0090】
封止体は、例えば第一電極、有機発光層、発光補助層、第二電極が形成された基板に対して、凹部を有するガラスキャップ、金属キャップを用いて、第一電極、有機発光媒体層、第二電極上空に凹部があたるようにして、その周辺部についてキャップと基板、接着剤を介して接着させることにより封止がおこなわれる。
【0091】
また、封止体は、例えば第一電極、有機発光層、発光補助層、第二電極が形成された基板に対して、封止材上に樹脂層を設け、該樹脂層により封止材と基板を貼りあわせることによりおこなうことも可能である。
【0092】
このとき封止材としては、水分や酸素の透過性が低い基材である必要がある。また、材料の一例として、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素等のセラミックス、無アルカリガラス、アルカリガラス等のガラス、石英、アルミニウムやステンレスなどの金属箔、耐湿性フィルムなどを挙げることができる。耐湿性フィルムの例として、プラスチック基材の両面にSiOxをCVD法で形成したフィルムや、透過性の小さいフィルムと吸水性のあるフィルムまたは吸水剤を塗布した重合体フィルムなどがあり、耐湿性フィルムの水蒸気透過率は、10−6g/m/day以下であることが好ましい。
【0093】
樹脂層としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂などからなる光硬化型接着性樹脂、熱硬化型接着性樹脂、2液硬化型接着性樹脂や、エチレンエチルアクリレート(EA)ポリマー等のアクリル系樹脂、エチレンビニルアセテート(EVA)等のビニル系樹脂、ポリアミド、合成ゴム等の熱可塑性樹脂や、ポリエチレンやポリプロピレンの酸変性物などの熱可塑性接着性樹脂を挙げることができる。樹脂層を封止材の上に形成する方法の一例として、溶剤溶液法、押出ラミ法、溶融・ホットメルト法、カレンダー法、ノズル塗布法、スクリーン印刷法、真空ラミネート法、熱ロールラミネート法などを挙げることができる。必要に応じて吸湿性や吸酸素性を有する材料を含有させることもできる。封止材上に形成する樹脂層の厚みは、封止する有機EL素子の大きさや形状により任意に決定されるが、5〜500μm程度が望ましい。
【0094】
第一電極、有機発光層、発光補助層、第二電極が形成された基板と封止体の貼り合わせは封止室でおこなわれる。封止体を、封止材と樹脂層の2層構造とし、樹脂層に熱可塑性樹脂を使用した場合は、加熱したロールで圧着のみ行うことが好ましい。熱硬化型接着樹脂を使用した場合は、加熱したロールで圧着した後、さらに硬化温度で加熱硬化を行うことが好ましい。光硬化性接着樹脂を使用した場合は、ロールで圧着した後、さらに光を照射することで硬化を行うことができる。なお、ここでは封止材上に樹脂層を形成したが、基板上に樹脂層を形成して封止材と貼りあわせることも可能である。
【0095】
封止体を用いて封止を行う前やその代わりに、例えばパッシベーション膜として、CVD法を用いて、窒化珪素膜を150nm成膜するなど、無機薄膜による封止体とすることも可能であり、また、これらを組み合わせることも可能である。
【0096】
以下に本発明の具体的な実施例について説明するが、これに限るものではない。
【実施例】
【0097】
(実施例1)
<発光層形成用塗工液の調製>
高分子蛍光体をキシレンに塗工液濃度が1.0重量%となるように溶解させ、発光層形成用塗工液を調製した。高分子蛍光体としては、ポリ(パラフェニレンビニレン)誘導体からなる発光材料を使用した。
【0098】
<被転写基板(デバイス基板)の作製>
150mm角、厚さ0.4mmのガラス基板上に、表面抵抗率15ΩのITOを成膜した基材(ジオマテック(株)製)を用意し、その基材上にスピンコーターを用いて正孔輸送層としてポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を100nm膜厚で成膜した。さらにこの成膜されたPEDOT/PSS薄膜を減圧下100℃で1時間乾燥することで、被転写基板(デバイス基板)を作製した。
【0099】
<印刷用凸版の作製>
印刷用凸版の基材5として、厚さ250μmのスチール材を用い、スピンコート法にて第二感光性樹脂と第一感光性樹脂を順次塗布し、第二感光性樹脂層と第一感光性樹脂層を形成した。塗布した後、順次露光現像を繰り返してフォトリソ法により、第一感光済樹脂層と第二感光済樹脂層からなる印刷用凸版を形成した。
【0100】
本実施例として、遮光する粒子としてカーボンを主成分とした黒色系の顔料をネガ型の第一感光性樹脂層に分散させた。第二感光性樹脂層はポリアミドを主成分にしたポジ型の感光性樹脂層で構成し、それぞれ露光、現像し、印刷用凸版を形成した。
なお、第一感光性樹脂の現像液にはアルカリ現像液として、TMAHを用い、第二感光性樹脂の現像液には純水を用いた。
【0101】
なお、印刷画像領域外に第一感光済樹脂層と第二感光済樹脂層からなる領域外凸部となり、領域外凸部中に第二感光済樹脂層がない形状の十字のアライメントマークが設けられている。また、印刷画像を形成する領域内凸部は、第二感光済樹脂層のみからなっている。
【0102】
<有機ELデバイスの作製>
以上により形成した異なる層構造を持つ印刷用凸版を用いて有機ELデバイスを作製した。上記印刷用凸版のそれぞれについて、印刷用凸版を印刷機の印刷シリンダーに両面テープを用いて固定し、上記の発光層形成用塗工液を用いて、被転写基板に対し印刷を行った。印刷は100枚連続印刷を実施した。発光層の印刷を行った後、130℃で1時間乾燥を行った。乾燥の後、印刷により形成した発光層上にカルシウムを10nm成膜し、さらにその上に銀を300nm真空蒸着して有機ELデバイスを作製した。
【0103】
(比較例1)
次に、比較例について示す。
【0104】
比較例1では、実施例での版の同様の作製方法で、第二感光済樹脂層2のみの印刷画像および十字のアライメントマークのみの印刷用凸版を用いた。
【0105】
実施例1及び比較例1のアライメントマーク視認性の結果を以下に示す。
【0106】
アライメントマーク十字の形状が本発明の印刷用凸版で作成すると認識良好な結果が得
られた。
【0107】
しかし、比較例1のアライメントマーク十字の形状は抜けている箇所が有り、正確な十字で無いことがあった。アライメントマークの視認性が悪化していることで、アライメントマーク読み取りに時間がかかり、余分な生産時間がかかる。またこれによるアライメントマークの誤認識で生産性を損ねることが懸念される。
【0108】
また、印刷開始前の版の押し込み量を設定する際に、キスタッチ位置からの押し込みにて設定している場合、版胴の傾きが発生した際、押し込み量の誤りで被印刷物との接触により、印刷画像を形成する凸パターンやアライメントマークの崩壊が発生する。これが本発明の印刷用凸版の場合、十字アライメントマークが凹部になっている為、凸部の印刷に特徴的だった押し込み量過多によるアライメントパターンの崩壊は無くなり、発光材料の転移が不均一なことで生じる不明瞭なアライメントパターンの印刷物が改善されたと考えられる。かつ直に凸パターンの部分を直接押し込まず、第一感光済樹脂層もある外周部からキスタッチ位置を設定することで、10μmから20μm押し込む位置にて第二感光済樹脂層のみで構成されている印刷画像を形成する凸パターンの印刷が可能になり、それによる押し込み量の設定が可能になった。
【0109】
第一感光済樹脂層が10μm以上の場合、印圧が均等に全面にかからなかったため、明瞭な被印刷物が得られなかった。また、第二感光済樹脂層が20μm以下だと凸パターン形成でバラツキが多く、100μm以上だとフォトリソ法の現像工程にてパターンが座屈する傾向が見られ、被印刷物に転写ムラも見られ不安定であった。
【0110】
また第一感光済樹脂層に分散されている粒子の粒子径も3μm以上があることで樹脂の密着性が悪化し、パターニング性、印刷性やフォトリソ特性の悪化につながる。また、50重量%以下の場合、遮光性を損ねる場合が見られた。
【0111】
また、OD値も3.0以下の場合、遮光性を損ねることでフォトリソ工程でパターンを露光してしまう場合が見られた。
【符号の説明】
【0112】
1・・・・・第一感光済樹脂層
2・・・・・第二感光済樹脂層
3・・・・・耐溶剤層
4・・・・・接着層
5・・・・・基材
6・・・・・フォトマスク
7・・・・・露光光
8・・・・・第一感光性樹脂層
9・・・・・第二感光性樹脂層第二層凸部
11・・・・・フォトマスク上アライメントマーク部
12・・・・・遮光部
13・・・・・フォトマスク上ストライプパターン部
21・・・・・領域外凸部
22・・・・・領域内凸部
31・・・・・第一感光済樹脂層
32・・・・・第二感光済樹脂層
33・・・・・耐溶剤層
34・・・・・接着層
35・・・・・基材
41・・・・・印刷用凸版
42・・・・・版胴
43・・・・・アニロックスロール
44・・・・・定盤
45・・・・・基板
46・・・・・インキチャンバー
47・・・・・通液部
51・・・・・有機発光層
52・・・・・有機発光層
53・・・・・有機発光層
54・・・・・第二電極層
55・・・・・正孔輸送層
56・・・・・樹脂層
57・・・・・封止材
58・・・・・隔壁
59・・・・・第一電極
60・・・・・基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷画像領域外にアライメントマークを有するとともに、印刷画像を形成する領域内凸部が形成されている凸版印刷版において、印刷画像領域外に領域外凸部を形成し、前記領域外凸部中に凹形状のアライメントマークが設けられていることを特徴とする印刷用凸版。
【請求項2】
前記領域外凸部の高さが、前記領域内凸部より高いことを特徴とする請求項1記載の印刷用凸版。
【請求項3】
前記領域外凸部の高さと前記領域内凸部より高さの高低差が5μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項2記載の印刷用凸版。
【請求項4】
前記領域内凸部の高さが20μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項3記載の印刷用凸版。
【請求項5】
前記領域外凸部が透明であることを特徴とする請求項1から4何れか記載の印刷用凸版。
【請求項6】
前記領域外凸部が第一感光済樹脂層と第二感光済樹脂層、前記領域内凸部が第二感光済樹脂層から構成されていることを特徴とする請求項1から5何れか記載の印刷用凸版。
【請求項7】
前記第一感光済樹脂層には、粒子の粒子径が3μm以下かつ粒子径0.1μm以下の粒子群が50重量%以上分散されていることを特徴とする請求項6記載の印刷用凸版。
【請求項8】
前記第一感光済樹脂層の透過率がOD値で3.0以上であることを特徴とする請求項6または7記載の印刷用凸版。
【請求項9】
請求項1から8何れか記載の印刷用凸版の製造方法であって、
順に、
基材上に第二感光性樹脂層を形成する第二感光性樹脂層形成工程と、
第二感光性樹脂層上に第二感光性樹脂層の感光条件とは異なる感光条件を持つ感光性樹脂からなる第一感光性樹脂層を形成する第一感光性樹脂層形成工程と、
第一感光性樹脂層のみを露光現像し第一感光済樹脂層を形成する第一感光済樹脂層形成工程と、
第二感光性樹脂層を露光現像し第二感光済樹脂層を形成する第二感光済樹脂層形成工程と、
からなることを特徴とする印刷用凸版の製造方法。
【請求項10】
第二感光性樹脂層がネガ型またはポジ型感光性樹脂からなり、第二感光性樹脂層がポジ型またはネガ型からなることを特徴とする請求項9記載の印刷用凸版の製造方法。
【請求項11】
有機発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層といった発光補助層のうち少なくとも1層が請求項1から8何れか記載の印刷用凸版の領域内凸部により印刷形成されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法。
【請求項12】
前記印刷形成がアライメントマークを認識しながら行うことを特徴とする請求項11記載の有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−204060(P2012−204060A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65949(P2011−65949)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】