印刷用凸版及びそれを用いた印刷方法
【課題】表示パネルにおける配線の形成、電極の形成及び絶縁材料や機能材料を使用した機能素子や電子回路の配線形成に最適で、マージナルを抑制可能な微小窪みを有する印刷用凸版を提供する。
【解決手段】本発明に係る印刷用凸版は、凸版のレリーフの頂面に供給されたインクを被印刷体へ転写する凸版印刷に用いる凸版において、レリーフの頂面に、開口面積が25μm2以上、1600μm2以下の窪みを複数個設けたことを特徴とする。レリーフの先端部窪みに滞留したインクは窪み間の壁により、流動を制限され、マージナル発生が抑制されて転写される。このため、均一な厚みでなおかつラインの直線性に優れる印刷物を得ることが出来る。
【解決手段】本発明に係る印刷用凸版は、凸版のレリーフの頂面に供給されたインクを被印刷体へ転写する凸版印刷に用いる凸版において、レリーフの頂面に、開口面積が25μm2以上、1600μm2以下の窪みを複数個設けたことを特徴とする。レリーフの先端部窪みに滞留したインクは窪み間の壁により、流動を制限され、マージナル発生が抑制されて転写される。このため、均一な厚みでなおかつラインの直線性に優れる印刷物を得ることが出来る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷等の凸版印刷に使用する凸版印刷版及びそれを用いた印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表示パネルや回路のパターン等で微細なサイズのものの形成は、一般的にフォトリソ法が用いられてきた。印刷法はフォトリソ法と比較し、処理速度が速い、プロセスに関わる廃棄物が少ない、材料の利用効率が高い等コスト低減が期待されている。しかし印刷法は以下の点で要求に応えきれていなかった。
【0003】
図1は、凸版印刷に使用する凸版印刷版と転写時の課題を示す図であり、(a)は凸版印刷版を示す断面図、(b)はインクを基板へ押し付けた状態を示す断面図、(c)は基板へ転写されたインクを示す基板の平面図である。従来、レリーフ1の先端にインク2を付着させ、被印刷体である印刷基板に加圧転写する凸版印刷法が広く普及している。このような凸版の代表例として、樹脂材料からなる版を使用したフレキソ印刷法を挙げることができる。フレキソ印刷法は、版が樹脂製であるため加工が比較的容易であること、版材に柔軟性があるため、基板へのダメージ、及び重ね刷り時に於いて先に形成されたパターンへ与えるダメージが低減されること、並びに凸版であるため非画像部にインクが付着しないこと等の特長がある。電子デバイスへの応用を想定した場合は、これらの特長は有利に働く。
【0004】
しかしながら、微細パターンを印刷形成するための手段として、凸版及び凸版印刷法は殆ど使用されていなかった。その主な理由は、マージナルの発生というこの方法特有の問題があり、微細パターンを正確に形成することが難しかったからである。凸版印刷方式においては、インクの転写(図1(b))を行なう工程で印圧を加えなければならないが、印刷版のレリーフ1と基板4とに挟まれたインク2が、レリーフ先端からその周囲にはみ出し、所定の寸法を維持することが困難になる。このように印刷されたパターンの方が印刷版のパターンより大きくなった部分をマージナル(図1(b)においてはマージナル3として示している)といい、図1(c)に示すように、マージナルにより広がったパターン6はマージナルがない場合のパターン5に比べて大きくなる。
【0005】
更にパターンが微細になり、パターン間の距離が小さくなると、マージナルにより隣のパターンと繋がってしまうという問題が発生する。図2は、印刷されたパターンの状態を示す概略図であり、(a)は従来技術のパターンにおいてマージナルが大きいためパターンが繋がった状態を示し、(b)は本発明のパターンにおいてマージナルが改善されパターンが分離された状態を示す(本発明のパターン(b)については後に詳述する)。隣のパターンと繋がってしまうという従来技術の上記問題が生じている状態を、図2(a)においては、マージナルがない場合のパターン5及びマージナルにより広がったパターン6として示している。特に、配線や電極等の導電性パターンを形成する場合、パターンが繋がることはショートを発生させることになり、電子デバイス等を正常に機能させることができなくなるという問題があった。
【0006】
今までにマージナルを減らすために以下のような方法が提案されてきた。例えば、マージナル防止のため版の凸部でインクを固めた後、固化したインク成分を、粘着物質を介して基板に転写する方法(例えば特許文献1を参照。)がある。また、版の凸部の周囲に障壁を設ける方法も提案されている(例えば特許文献2を参照。)。更に、版の凸部に窪みを設け、窪みに余剰インクを収容する方法も提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。また、版の凸部に多数の窪みを設け、マージナル抑制や均一性を向上する方法が提案されている(例えば特許文献4を参照。)。
【0007】
【特許文献1】特許第3475498号公報
【特許文献2】特開2002−117755号公報
【特許文献3】特開2002−178654号公報
【特許文献4】特開2006−240283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の技術では、電子デバイス等において先に形成されたパターンと後から形成されたパターンとの相互間で、電気的接続を必要とする場合、相互の導通性低下が問題であり、また、絶縁層との積層では界面でのトラップ発生によるデバイス特性への影響の問題がある。更には強度的に脆弱な薄膜の転写に於いては転写時のストレスによって膜中へクラックが入る問題が考えられる。さらに、使用できるインクが限定される。
【0009】
また、特許文献2の技術では、インクの粘度が低い場合、ワークへの押し付けが不均等になり、既にパターンがある場合、段差によって障壁で抑え切れずにインクが流れ出す問題が懸念される。
【0010】
特許文献3は窪みの具体的な開口面積については考慮していないため、印刷物の膜厚の制御と面内均一性との両立という問題を考慮していない。そして特許文献3は、通常のフレキソ印刷における課題であるドットゲインを減少させる効果については述べているが、電子材料分野における課題である細線の線太り抑制効果の課題の提示並びに解決方法について具体的に示していない。
【0011】
更に特許文献4の技術では、窪みの大きさと印刷特性との関係や、インクの出入りに関する記載はなく、インクの粘度が低い場合に問題となる、印刷物の膜厚を確保しつつ、その膜厚の均一性も確保するという2つの要素の両立に関しては具体的に示していない。また、電子材料分野で重要な細線におけるマージナル及びラインでの線太りの抑制については具体的に示していない。
【0012】
本発明は、特許文献1〜4が抱える上記の諸問題を有さず、例えば表示パネルにおける配線の形成、電極の形成及び絶縁材料や機能材料を使用した機能素子や電子回路の配線形成に最適な、印刷物の膜厚制御が可能であるとともに優れた膜厚均一性を与える印刷用凸版並びに印刷方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記のような問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明に係る印刷用凸版は、凸版のレリーフの頂面に供給されたインクを被印刷体へ転写する凸版印刷に用いる凸版において、前記レリーフの頂面に、開口面積が25μm2以上、1600μm2以下の窪みを複数個設けたことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る印刷用凸版では、前記レリーフの頂面に複数個設けた窪みの開口面積の合計が、前記レリーフの頂面の面積に対して、30%以上65%未満の割合であることが好ましい。インクのレベリング性が促進され、より均一性が増すとともにマージナルが抑制される。
【0015】
本発明に係る印刷用凸版では、前記レリーフの頂面に複数個設けた窪みの開口面積の合計が、前記レリーフの頂面の面積に対して、40%以上60%未満の割合であることが好ましい。この範囲の場合に、膜のより良好な均一性と線太りの抑制が両立される。
【0016】
本発明に係る印刷方法は、本発明に係る印刷用凸版を、前記レリーフを外側に向けた状態で円筒形とし、前記レリーフの頂面に粘度が0.2Pa・S以下のインクを供給し、円筒軸を中心に転動させることによって被印刷体に対して前記インクを転写する工程を含み、前記転写を、前記レリーフと前記被印刷体との押し込み量が100μm以下となる印圧で行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の印刷用凸版若しくは印刷方法を用いてパターン形成を行なえば、凸版のレリーフ先端に設けられた窪みと窪みの間の壁や窪み自身が印刷時のインクの流れ出しを阻止するように働くためマージナルやラインでの線太りが抑制され、パターン形成においてパターン同士が繋がることを防ぐことができる。さらに膜内均一性、及びエッジの直線性を向上できる。このため、本発明によれば、線幅(ライン(L))が狭く、且つ、線間隔(スペース(S))が狭い場合の印刷を達成できる。例えば、線幅(L)が5μm以上400μm以下、最小線間隔(S)が3μm以上500μm以下でも印刷が可能となった。その結果、印刷法による電子デバイス(配線の形成、電極の形成、絶縁材料や機能材料を用いた機能素子や回路の形成)への応用が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。本発明の効果を奏する限り、種々の形態変更をしてもよい。
【0019】
本発明に係る印刷用凸版について説明する。本実施形態に係る印刷用凸版は、凸版のレリーフの頂面に供給されたインクを被印刷体へ転写する凸版印刷に用いる凸版において、レリーフの頂面に、開口面積が25μm2以上、1600μm2以下の窪みをレリーフ1つ当り複数個設けている(以下、本発明において設けられるこれらの窪みを「微小窪み」とも称する)。
【0020】
図3は、本発明に係る印刷用凸版の一形態を示す概略図であり、(a)はレリーフ断面の一形態を示す断面図であり、(b)はレリーフの頂面を示す平面図である。図3は、複数の窪みを設ける一形態を示しており、本発明に係る印刷用凸版13は、凸版のレリーフ1(レリーフ厚みHを有する)の頂面8に窪み9が複数形成され、碁盤の目状に配置されている。図3(a)のレリーフ1の断面が示すとおり、レリーフの頂面8から深さ方向に窪み9が設けられている。また、図3(b)のレリーフのインクが付着する面が示すとおり、窪み9が碁盤の目状に配置されている。ここで、ある窪みの周縁とこの窪みの隣に位置する窪みの周縁との最短距離で定義される窪み間の距離をAで表す。
【0021】
図4、5及び6は、本発明における窪みの形成態様の例を示す概略図である。図4はレリーフ上に窪みが複数個形成され、その形成された領域がレリーフ先端部分の全域にわたり、窪みがレリーフ端部に掛かって形成されていないことを示す図であり、(a)は窪みの開口形状が円形でその配列方向とレリーフ端部の方向とが一致している場合を示す平面図、(b)は窪みの開口形状が四角形でその配列方向とレリーフ端部の方向とが一致している場合を示す平面図、(c)はレリーフ端部と窪みとが重なる場合に、窪みのレリーフ端部側においてレリーフ端部形状に沿った窪み形状を示す平面図である。図4(c)に示す態様では、レリーフ端部近傍の窪み形状がそれ以外の部分の窪み形状と異なることでレリーフ端部に窪みが掛からないようにされている。図5は、窪みが千鳥配列である形態を示しており、(a)は窪みの開口形状が円形の場合の千鳥配列を示す平面図、(b)は窪みの開口形状が四角形の場合の千鳥配列を示す平面図、(c)はレリーフの断面形状の他形態を示す断面図である。図6は、レリーフ周辺のインク密度を下げるために窪みの大きさ若しくは窪みの深さを調整した例を示しており、(a)は周辺部の窪みの大きさを小さくした場合を示す平面図、(b)は周辺部の窪みの深さを浅くした場合を示す断面図である。
【0022】
窪みの形状は、図3(b)に示す形状、図3(b)と同様に四角柱状であるが(窪みの開口面積)/(頂面の面積)の比が異なる形状(図4(b)に示した四角柱状)の穴(非貫通で有底)のみならず、図4(a)に示すように円柱状の穴(非貫通で有底)の形状をしていてもよい。ここで、図4に示すようにレリーフ上に窪みが複数個形成された領域がレリーフ先端部分の全域にわたっていることが好ましく、さらに窪みがレリーフのエッジ(レリーフ端部)に掛かって形成されていないことが好ましい。
【0023】
窪みの配列は、図3(b)又は図4(b)に示したような碁盤の目状の配列のみならず、図5(a)又は(b)に示すように、千鳥配列としてもよい。配列を工夫することで、インクの流れ出しをより効果的に抑制することを狙いとした配置である。
【0024】
窪みの大きさは、図3(b)又は図4(b)に示したような同一の大きさの窪みを配列するのみならず、図6(a)に示すように窪みの大きさを異ならせしめて配列してもよい。図6は、マージナルをより減らすため、窪みの大きさに工夫を加えた例を示している。図6(a)は、レリーフの端部に近い部分ほど、インク量を減らすために窪みの大きさを小さくし、レリーフの外側へ流れ出すインクの量を減らすことを目的にした例である。図5(c)及び図6(b)は、図6(a)と同様な目的で、レリーフの端部に近い部分ほど、インク量を減らすために窪みの深さを浅くし、レリーフの外側へ流れ出すインクの量を減らすことを目的にした例である。
【0025】
前記いずれの形態に於いても、レリーフ端部の窪みの形状は、レリーフ端部形状を途切れさせないように配列するか、配列の都合上レリーフ端部に窪みが重なる場合は、窪みの端部と重なる部分が端部形状に一致する側壁で閉じられていることが好ましい。
【0026】
本発明によれば、レリーフの頂面に窪みを設けることによって、凸版を印刷基板に押し付けた時に発生するレリーフ外側へのインクの流れが阻止されるため、マージナルの発生を低減させることができる。レリーフ端部において、窪みがレリーフ端部に掛からずにレリーフが本来の形状に沿った縁辺の線部を有するように窪みが配置される場合には、パターンの再現性も向上する、また、ラインエッジの直線性が良好な印刷物が得られる。これらの窪みの特性をより詳細に検討した結果、レリーフ上に形成した窪みの1個あたりの開口面積が25μm2(例えば窪みの開口形状が正方形の場合、窪み径は5μm)以上、1600μm2(例えば窪みの開口形状が正方形の場合、窪み径は40μm)以下の時においてのみ転写したインクの膜厚の制御と面内均一性の両立が可能であることを見出した。すなわち、1600μm2を超えると窪み部にインクが過剰にたまり、転写したインクの面内の均一性やレリーフ端部に相当する解像性が損なわれる。また、インクの種類によっては、レリーフ上の窪みは印刷時においてインクの逃げ場としての機能を有し、この場合は開口面積が1600μm2を超えるとパターンの欠損の原因にもなる。一方、開口面積が25μm2未満であるとインクの出入りが困難になり、インクのアニロックスロールからの転写性やインクの基板への転写効率が悪くなり、窪み部に対応する欠損によってパターンの再現性が損なわれてしまう上に、マージナル抑制効果さえも低下してしまう。また上記のように、インクの種類によっては、レリーフ上の窪みは印刷時においてインクの逃げ場としての機能を有し、この場合は開口面積が25μm2未満であるとインクの逃げ場としての効果が減少し、マージナルや線太りの原因となる。窪みの開口面積は、50μm2以上、1000μm2以下にすることが好ましい。
【0027】
上記のような窪みによって転写したインクの膜厚を制御することも可能であり、インクを溜める窪みの容積を任意に設定することが可能である。この際、窪みの容積は、その開口部の面積と深さとによって決まるが、例えば0.1〜20μm(非乾燥時)のような厚みの比較的厚膜を形成する場合においては、開口部の総面積が所望の範囲にあるときに特に優れた印刷特性を示すことが分かった。開口部の総面積が小さすぎる場合には、厚膜にしようとすると面内の均一性が損なわれる場合があり、逆に開口部の総面積が大きすぎる場合には、マージナルの発生が起きる場合がある。これらの現象は特にインクの粘度が低い場合に見られる。以上の理由により、レリーフの頂面に複数個設けた窪みの開口面積の合計が、レリーフの頂面の面積に対して、30%以上65%未満の割合であることが好ましく、35%以上60%以下の割合であることがより好ましい。また、印刷条件によっては、インクをすべて充填させずに、窪みを印刷時のインクの逃げ場として機能させて印刷する方法もある。この場合は、窪み開口部の総面積が小さすぎると線太りは大きくなる。また、開口部の総面積が大きくなるとパターン上の抜けの原因にもなる。よって、レリーフの頂面に複数個設けた窪みの開口面積の合計が、レリーフの頂面の面積に対して、35%以上65%未満の割合であることが好ましく、40%以上、60%未満の割合であることがより好ましい。40%以上の場合にさらに線太りの抑制効果が良好で、60%未満の場合にパターンの欠損率がさらに低減される。また、面積率が65%以上になると、レリーフ頂面の強度が落ちるため、耐刷性が低下しやすい傾向がある。
【0028】
次に窪みの形状等について述べる。窪みの開口形状(平面形状)、すなわちレリーフの頂面を正面視した形状としては、円形若しくは直線で構成される三角形、四角形、六角形、それ以上の多角形並びに直線及び曲線で構成された形状を用いることができるが、インク転写用のアニロックスロール等との組み合わせによるモワレや斑、印刷後のレベリングの状況を勘案して決めればよい。これらの構成や窪みの配置間隔、深さを変えることでインクの量を調整することもできる。もちろん1つのパターン内でこれらの構成を変えてもよい。前述のとおり配列に関しては、碁盤の目状の配列を示した図3(b)や図4(a)(b)の形態、又は、千鳥配列を示した図5(a)(b)の形態を採ることも可能である。例えば千鳥配列を示した図5(a)(b)では、窪み間距離がより均等化することでレベリング性が向上し、隣り合う窪みが碁盤の目状配列と比較するとずれるため、その方向へのインクの流れの抑制に効果があると考えられる。
【0029】
レリーフ上に形成した窪みの深さは、インクの出入りのしやすさから1μm以上30μm以下が好ましい。さらに好ましくは3μm以上20μm以下である。窪みの深さが30μmより深くなると、インクの出入りが困難になり、パターンの再現性が悪くなる傾向がある。また窪みの深さが1μm未満であると、インクの転写量が不足する傾向がある。又は、印刷条件によっては、インクをすべて充填させずに、窪みを印刷時のインクの逃げ場として機能させて印刷する方法もある。この場合、レリーフ上に形成した窪みの深さは、インクの逃げ場としての機能から0.5μm以上、30μm以下が好ましく、0.5μm以上、20μm以下がさらに好ましい。
【0030】
また、本発明に係る印刷用凸版では、図3(b)の部分拡大図で示すように、窪みの周縁とその窪みの隣に位置する窪みの周縁との最短距離で定義される窪み間の距離(A)が1μm以上、30μm以下であることが好ましい。窪み間の距離(A)をこのような範囲とすることによって、インクのレベリング性が促進され、より均一性が増す。さらに好ましくは3μm以上20μm以下である。
【0031】
次に本発明の印刷用凸版の製造方法について述べる。印刷用凸版のパターンの形成方法としては、例えば(1)光により形成する方法、(2)型から複製する方法、(3)彫刻により形成する方法、がある。
【0032】
(第1の方法:光によりパターンを形成する方法)
光によりパターンを形成する方法では感光性樹脂が使用可能であり、該方法としては次の方法が挙げられる。通常の感光性樹脂を用いた方法で、感光性樹脂をレリーフの形状に合わせ、レリーフ上部の微小窪みに相当しない部分において光を透過しそれ以外の部分では光を透過しないネガフィルムを準備する。露光前が液状の感光性樹脂を用いる場合、このネガフィルムをガラス板の表面に積層した後、その上に液状の感光性樹脂を塗布し、その表面に透明なベースフィルムを積層し、更にその表面にガラス板を積層する。なお感光性樹脂層の厚みは所定の寸法になるよう設定する。次いでランプを用い、上側のガラス板とベースフィルムを介して感光性樹脂に紫外線を照射すると共に、下側のガラス板とネガフィルムを介して感光性樹脂に紫外線を照射する。画像露光用の照射光源は公知のものを使用可能である。上記の液状感光性樹脂からなる層の上面全体から入った光と、ネガフィルムの光を透過する部分を透過した光とが所定量届いた部分が硬化される。硬化後上下のガラス板、ネガフィルムを取り除き、未硬化部分を洗浄除去し、レリーフ形成側に紫外線を照射し硬化を促進し、印刷用凸版とする。
【0033】
別の方法として、レリーフ形成のために、感光性樹脂を硬化可能な波長のレーザー光源を用い、硬化に必要な光量を走査露光しても良い。常温で液状タイプでなく常温で固溶体状の感光性樹脂を用いる場合、感光性樹脂を加熱して所定の厚みに成形したのち、同様に画像露光以降の操作を行なえばよい。
【0034】
さらに、上記ではネガタイプの感光性樹脂を使用した際の印刷用凸版の製造方法を説明したが、ポジタイプの感光性樹脂をポジフィルムと共に用いることも可能である。
【0035】
また、フォトマスク上に予め型(モールド)を作製しておき、窪みの深さをより正確に制御する方法も採用できる。例えば、上記ネガフィルム上に微小窪みの深さに相当する膜厚でポジタイプの感光性樹脂を被着し、ネガフィルム側から紫外線を照射し、露光部分を現像処理したものである。これにより、ネガフィルムの遮光部上に微小窪みに対応した微小突起が形成される。このネガフィルム上に形成した型上に、さらにネガタイプの感光性樹脂を所望のレリーフ厚みに応じて塗布し、その表面にベースフィルムを積層する。次いでネガフィルム及び型を通して下側(ネガフィルム側)から紫外線を照射し、ネガフィルム及びモールドを取り除き、未硬化部分を洗浄除去することで、ベースフィルム上に微小窪みを有するレリーフを精度良く形成することができる。この際、拡散反射率の比較的高いベースフィルムを使用する場合、入射紫外線がベースフィルム表面で拡散反射し、レリーフ部全体の硬化を促進させることができる。尚、ネガフィルムに型を確実に被着させるために、ネガフィルム表面に紫外線透過性を有する市販の接着剤(ゴム系、ポリエステル系、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、シラン系等)によるコーティング処理を施すこと、ハードコート(アクリル系等)等の各種コーティング材を接着層上に設けること、及びカップリング剤等による表面処理を行なうことができる。
【0036】
(第2の方法:型からパターンを複製する方法)
型から複製パターンを作製する方法としては次の方法を挙げることができる。パターン形状に対応した型を作製し、レリーフが樹脂製であることにふさわしい方法で型取りする。方法としては、1)光硬化法、又は2)熱硬化法、を採用することができる。又は3)加熱した型を樹脂に押し付け、パターンに相当する形状を付与する熱転写法(冷却凝固法ともいう)、でも良い。上記1)には感光性樹脂、上記2)には室温で液体又は固溶体状の熱硬化性樹脂、上記3)には熱可塑性樹脂がそれぞれ使用可能である。型は、採用する加工方法及び解像度により公知のものから選択すればよく、例えば金属金型、Si型、石英型、SiC型、Ni電鋳型、樹脂型等が使用可能である。
【0037】
(第3の方法:彫刻によりパターンを形成する方法)
彫刻によりパターンを形成する方法としては、次の方法を挙げることができる。架橋されたゴム系材料や、硬化された熱硬化性樹脂、同じく硬化された光硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂等を版材料として使用することが可能である。固体の版材料を彫刻する方法としては、レーザーによる彫刻方式を挙げることができる。現実的には必要とするパターン形状の寸法に応じレーザーを使い分ければよい。炭酸ガスレーザー、YAG3倍波若しくは4倍波レーザー、又はエキシマレーザー等の各種レーザーを解像度や彫刻性に応じて選定して彫刻することができる。この方法を用いれば、レリーフの頂面と溝部の表面自由エネルギーが異なる組み合わせの版も作ることができる。この場合、レリーフ先端層とその下の層とで、異なる材料を積層する、異なる材料を塗布し重ねる、或いは、プラズマ処理を行なう等の各種方法で、レリーフ先端層とその下の層で表面自由エネルギーの異なる組み合わせを作り、レーザーで下の層まで達するよう彫刻する方法を採ることもできる。
【0038】
本発明に係る印刷用凸版を形成する材料としては、上記のように室温で固体、高温で流動性を有する熱可塑性樹脂、及び室温で粘凋若しくは固溶体状の感光性樹脂又は熱硬化性樹脂を使用でき、それぞれの可塑性又は硬化性の性質を利用して版を成型することができる。樹脂の種類について特に制約は無い。版として使用する形態における力学的物性、例えば硬度、ヤング率、反発弾性、引張強伸度、表面張力、或いは耐溶剤性等の化学的物性が所望する印刷に適するように樹脂を選択、設計すればよい。また、架橋されたゴム系材料も本発明に係る印刷用凸版を形成する材料であることができる。
【0039】
ネガタイプの感光性樹脂としては、ラジカル重合系、光カチオン重合系、光アニオン重合系又は光二量化反応系等が適用可能である。以下、汎用的なラジカル重合系を例に説明する。
【0040】
ラジカル重合性樹脂組成物の多くが本発明に適用され得るが、その中で代表的なものとしてプレポリマー、モノマー、開始剤及び熱重合禁止剤を配合した組成物が使用可能である。
【0041】
プレポリマーとしては、重合性二重結合を分子中少なくとも1個以上有し、例えば、不飽和ポリエステル、不飽和ポリウレタン、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリレート樹脂、不飽和メタクリレート樹脂又はこれらの各種変性物等を少なくとも1種類用いたものを挙げることができる。
【0042】
モノマーは、典型的には重合性二重結合を有するエチレン性不飽和単量体であり、例えば、スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメタクリルアミド、α−アセトアミド、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、α−クロロアクリル酸、パラカルボキシスチレン、2,5−ジヒドロキシスチレン、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート等、及びフォトポリマー懇話会著、「フォトポリマーハンドブック」、(株)工業調査会刊、1989年6月26日、p.31‐36記載の材料を用いることができる。
【0043】
開始剤としては、エチレン付加重合性不飽和基を用いて三次元架橋反応を行なうときに反応効率を高めるために用いる公知の光重合開始剤又は熱重合開始剤を用いることができる。光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、キサントン、チオキサントン、クロロキサントン、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセトフェノン、(2−アクリロイルオキシエチル)(4−ベンゾイルベンジル)ジメチル臭化アンモニウム、(4−ベンゾイルベンジル)塩化トリメチルアンモニウム、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3−,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オン−メソクロライド,1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(Oベンゾイル)オキシム、チオフェノール、2−ベンゾチアゾールチオール、2−ベンゾオキサゾールチオール、2−ベンズイミダゾールチオール、ジフェニルスルフィド、デシルフェニルスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジベンジルスルフィド、ジベンゾイルジスルフィド、ジアセチルジスルフィド、ジビニルジスルフィドジメトキシキサントゲンジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムテトラスルフィド、ベンジルジメチルジチオカーバメイトキノキサリン、1,3−ジオキソラン、N−ラウリルピリジニウム等が例示できる。一方、熱重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、過硫酸塩−亜硫酸水素ナトリウム等の過酸化物、アゾ化合物、レドックス開始剤といった公知のものが使用できる。
【0044】
本発明に用いる熱重合禁止剤として、ハイドロキノン、モノ第三ブチルハイドロキノン、ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、ピクリン酸、ジ−p−フルオロフェニルアミン、p−メトキシフェノール、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール等を挙げることができる。
【0045】
感光性樹脂組成物としては特開昭52−90804号公報、特公昭48−19125号公報、特開昭49−109104号公報、特公昭48−41708号公報等に記載の物が挙げられる。さらに、東レリサーチセンター調査研究事業部編、「フォトポリマー技術の新展開」東レリサーチセンター刊、1993年3月10日、p.35〜37、山岡亜夫監修、「フォトポリマーの基礎と応用」シーエムシー出版、2003年3月27日、第4章製版材料とフォトレジスト、や松井真二他監修、「ナノインプリントの開発と応用」、シーエムシー出版刊、2005年8月31日、p.50及びp.151に記載の材料を用いることができる。同p.158及びp.159に記載のフッ素変性したフルオロアルキル基を有するアクリレート、メタクリレートや含フッ素のエポキシ系の感光性樹脂を用いることもできる。
【0046】
また少なくとも未加硫ゴム、重合性二重結合を有する単量体及び重合開始剤からなる光重合性ゴム組成物、いわゆる感光性エラストマーといわれているもの(例えば特開昭51−106501号公報及び特開昭47−37521号公報を参照)、並びに、発インク性とのバランスが必要であるもののジアルキルシリコン系樹脂の使用が可能である。
【0047】
熱可塑性樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、環状ポリオレフィン樹脂(COP)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルペンテン(TPX)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PSt)、塩化ビニル(PVC)、塩化ビニリデン(PVDC)、アクリロニトリル/スチレン(AS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)、フッ素系樹脂としてフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン/ノルボルネン共重合体等のフッ素化ポリオレフィン、含フッ素アクリル樹脂、含フッ素ポリイミド樹脂、含フッ素ビニルエーテル樹脂等が挙げられ、これら以外でも熱により加工できるものであれば使用でき、例えば三羽忠広著、「基礎合成樹脂の科学」、技報堂出版(株)、1987年6月15日、p.113‐p.397、各論 1.重合型樹脂 2.縮合型樹脂 に記載の熱可塑性樹脂を使用しても良い。
【0048】
熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル、不飽和ポリウレタン、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリレート、不飽和メタクリレートの樹脂又はこれらの各種変性物を少なくとも1種、重合性二重結合を有するエチレン性不飽和単量体、及び熱重合開始剤を含むラジカル重合性樹脂組成物や、エポキシに硬化剤を添加した樹脂組成物、シリコン系のポリジメチルシロキサン系樹脂等を使用しても良い。フッ素系樹脂としては、架橋材や熱によりラジカルの発生する重合開始剤を含むフッ素モノマーや含フッ素オリゴマーを用いた熱硬化性樹脂を使用しても良い。これ以外にも例えば三羽忠広著、「基礎合成樹脂の科学」、技報堂出版(株)、1987年6月15日、p.240−p.397、各論 2.縮合型樹脂 に記載の熱硬化性樹脂を使用しても良い。
【0049】
ゴム系材料としては、天然ゴム、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ブチル、エチレンプロピレン、スチレンブタジエン、ポリイソブチレン、スチレンブタジエン、ニトリル、アクリル、エピクロルヒドリン、ウレタン、シリコン、フッ素系ゴムを使用しても良い。
【0050】
以上に記した方法や材料を用いることにより、本発明に係る印刷用凸版を製版することができる。
【0051】
本発明の印刷用凸版は、支持体上に上述のような各種樹脂を用いて版を形成したものである。支持体としては、寸法変化が小さく、版胴に巻きつけて使用する場合が多いという使用態様に適合するように版胴の径に合わせて曲げることが可能であることが好ましい。具体的には、PET基板等のプラスチック基板、アルミ基板、ステンレス(SUS)基板、各種金属基板等が挙げられる。特に寸法変化が小さくさびにくい点でガラス複合プラスチック基板及びSUS基板が好ましい。また、本発明の印刷用凸版は、シート状だけでなく、ロール状のシームレス版でも良い。ロール状の場合には、取り付け時に曲げることは考慮する必要はない。よって、ロールの素材としては特に限定はないが、寸法変化の小さいものが良い。
【0052】
本発明は、上述したような本発明に係る印刷用凸版を、レリーフを外側に向けた状態で円筒形とし、該レリーフの頂面に粘度が0.2Pa・S以下のインクを供給し、円筒軸を中心に転動させることによって被印刷体に対してインクを転写する工程を含み、該転写を、レリーフと被印刷体との押し込み量が100μm以下となる印圧で行なうことを特徴とする印刷方法をも提供する。以下、本発明の印刷方法の実施の形態の例について説明する。
【0053】
まず本発明の印刷方法に使用できる印刷機について説明する。図7は、本発明において使用できる印刷機の例を示す図である。印刷機としては、例えば市販されている図7に示す方式のものを用いることができる。これは一例であり、この方式に限定されるものではない。印刷は以下のようにして行なう。図7に示した方式の印刷機を使用し、凹凸を設けたアニロックスロール11とドクターブレード12が合わさっている上にインク2を置き、アニロックスロール11が回転することによってインクが計量される。次にアニロックスロール11と版胴14に巻かれた版13とが接触すると、レリーフの先端である頂面にインクが付着する。この状態で版13を基板4に押し付けインクを転写する。その後、インクのレベリングが進み、均一化する。図8は、本発明の印刷方法について説明する断面図であり、印刷時における版の部分を拡大断面図として示す。図8中、(a)はインクが展開されたアニロックスプレート上に版が押し付けられた状態、(b)はレリーフ先端にパターン形成用インクが供給された状態、(c)は版を基板へ押し付けた状態、(d)は版を基板から離すことにより転写を終えた状態、(e)はインクがレベリングした状態を示す。印刷機のアニロックスロール11上に展開されたインク2が、図8(a)のように版13のレリーフ1の先端面である頂面とアニロックスロール11とに接触し、次に図8(b)のように版13のレリーフ1の頂面にインク2が移され、その後、図8(c)、(d)及び(e)に示すようにして基板4にパターン15が転写される。ただし、図8に示した転写方法は一例であり、微小窪みにインクが充填されずにパターンが転写される方法も可能である。
【0054】
本発明に係る印刷用凸版では、マージナルをより抑制するため、版構成を多層構成としてもよい。図9は、本発明に係る印刷用凸版のレリーフ断面形状を示す断面図であり、単層構成及び多層構成の態様を示す。図9中、(a)は単層版を示す。(b)は硬度差を設けた2層構成(低硬度層1a,及び高硬度層1b)の多層版を示す。(c)は(b)と同じく硬度差を設けた2層構成(低硬度層1a,及び高硬度層1b)であるが、レリーフの頂面と低硬度層1aとがなす角度を、レリーフの頂面と高硬度層1bの側面とがなす角度よりも鋭角にした(すなわちショルダー差を設けた)2層構造の多層版を示している。なお(c)は、レリーフ先端の角度(レリーフの頂面とレリーフ側面とがなす角度)が(b)の形態よりも鋭角に構成された版を示している。(d)はショルダー角10(ベース部7(すなわち基部層)とレリーフ側面とがなす角度)が設定された単層版を示す。(e)はレリーフ層1(低硬度層1a及び高硬度層1b)とベース層との3層構造の多層版を示す。即ち、版構成を多層構成とする態様としては、凸版のレリーフを多層化する形態(例えば図9(b)及び(c))と、レリーフ層1とベース層(ベース部7)とで多層化する形態(図9(e))があり、さらにこれらを併用しても良い。版から転写されたインク皮膜の均一性を高めるには、図9(b)及び(c)に示すように、インクが着肉するレリーフ上部を低硬度(低圧縮モジュラス)層とすることが好ましい。
【0055】
マージナルをさらに抑制する方法としては、図9(c)に示すようにレリーフ先端の角度をより鋭角とする技術が適用出来る。この場合、レリーフの断面形状が、図9(c)に示すような上記ショルダー差を有し、下層部のショルダー角が小さい多層レリーフ構成を有することは、レリーフの傾倒を防ぐことができる点で好ましい。同様に、図9(d)に示すように、レリーフ形状が富士山のように拡がった、即ちショルダー角10の小さい単層版も可能である。
【0056】
更に、上記では印刷方式として樹脂版によるフレキソ方式を例に挙げて説明したが、本発明は、典型的なフレキソ印刷のみならず他の凸版印刷方式、例えば凸版オフセット印刷方式の凸版についても同様に実施可能である。
【0057】
以上に記した方法でマージナルが抑制されることによって、より近接したパターンを独立して形成できるようになる。前述したように、図2の概略図には、従来技術のパターン(a)と本発明のパターン(b)とのパターン再現性を比較して示している。従来はマージナルによって、パターン同士を近づけるとパターンとパターンが繋がってしまう場合があったが(図2(a))、本発明ではマージナルの低減によりパターン同士の繋がりを抑制でき(図2(b))るため、従来と比較してパターン間隔をより狭めることができる。すなわち、上述した本発明の態様から明らかなように、本発明によれば、レリーフ周囲へのインクのはみ出しが抑制され、マージナルが抑えられる。従って、パターンとパターンの間隔をより狭くすることが可能となる。
【0058】
本発明の印刷方法において、インク粘度が0.2Pa・S以下の場合、従来の凸版印刷では、均一な厚膜の形成が困難であったが、本発明の印刷用凸版を用いることにより、インクがレリーフの特定の開口面積の窪みに入ることで、インクの転写量が確保できる。よって、従来の凸版よりも均一な厚膜が可能となる。この効果は、前述したように複数個の窪みの開口面積の合計が、レリーフの頂面の面積に対して、30%以上65%未満の割合である場合により顕著に表れ、さらに35%以上60%以下の割合の時に効果が一層顕著となる。結果として、印刷時におけるインク粘度の設計範囲を広げ、印刷物の特性の向上に繋がる。また、版材とインクの表面自由エネルギーを調整することにより、印刷の安定性を向上することも可能である。さらにインクの固形分濃度を調整することで、所望の乾燥後の膜厚を得て印刷物の膜厚を調節することができる。また、レリーフ頂面の窪みが印刷時のインクの逃げ場として機能して印刷が行なわれる場合、すなわち微小窪みにインクをすべて充填させない場合は、インク粘度が0.2Pa・S以下において、レリーフ頂面の複数個の窪みの開口面積の合計が、レリーフの頂面の面積に対して、40%以上60%未満の割合の場合に線太り抑制効果並びにパターンの欠損率の低下効果が顕著である。さらに好ましくは、インクの粘度は0.1Pa・S以下である。
【0059】
次に、本発明に係る印刷用凸版を使用して形成される印刷物について述べる。印刷物としては、例えば、有機EL素子、有機薄膜太陽電池、トランジスタ、電極、配線等がある。
【0060】
本発明に係る印刷用凸版を用いて上記の印刷物を印刷する方法を具体的に説明する。本発明に係る印刷方法は、本発明に係る印刷用凸版を被印刷体(基板)に押し当てて印刷を行う工程を含む凸版印刷方法であり、印刷用凸版を円筒形の版胴の外周面に配置し、該版胴を転動させることによって、被印刷体に対して転写を行なう転写工程において、転写時のレリーフと被印刷体との押し込み量が100μm以下となる印圧で印刷する。該押し込み量が100μmよりも高くなる印圧の場合、レリーフがつぶれてしまい、窪みの効果が小さくなり、マージナルや均一性に問題が生じる場合がある。該押し込み量が100μm以下となる印圧を用いることは、特に粘度が0.2Pa・S以下のインクを使用する場合において大きな効果を発揮する。
【0061】
印刷物の製造方法の例としてトランジスタの製造方法について説明する。まず基板の上にゲート電極及び配線に相当する導電性のパターンを、印刷用凸版を用いて印刷して作製する。導電性パターン形成用のインクとしては金属微粒子を分散させたものや導電性のポリマー等を用いることができる。次に、形成したパターン上の所定の位置に合わせ、トランジスタのゲート絶縁膜に相当するパターンを印刷する。印刷用凸版は絶縁膜のパターンに相当するものに交換しておく。以後パターンを変更するたびに版を変更する。ゲート絶縁膜形成用のインクとしては有機系の材料を溶剤に溶解したものや無機系の塗布材料、例えばポリシラザン系の材料等が使用可能である。次に所定の位置にソース電極とドレイン電極及びこれらに接続される配線を形成する。次にソース電極とドレイン電極とを跨るように半導体のパターンを形成する。半導体パターン形成用のインクとしては溶剤に可溶なポリチオフェン系誘導体やポリアセン系等の有機半導体が使用可能である。次いで素子を保護するため、これらのパターンを覆うように保護膜パターンを形成する。保護膜の材料としては高分子の樹脂材料等を溶剤に溶解させたものが使用可能である。
【0062】
また、印刷物の別の例として有機EL素子について説明する。有機EL素子はディスプレイや照明用途にて用いられる。有機EL素子は有機物を陽極と陰極とで挟み込んだ構造をとっている。その中で本発明の印刷用凸版と印刷方法を用いる工程としては、電極形成時並びに電極に挟み込まれた有機物、具体的にはホール注入材料や発光材料を塗布する工程が適している。電極形成方法としては、ガラス基板若しくはプラスチック基板に酸化インジウム・スズ(ITO)等の透明電極を所望のパターンにて印刷する。この透明電極を作製する際に本発明に係る印刷方法を用いてパターンを作製することができる。また、ITO電極の上のホール注入材料及び/又はホール輸送材料、さらにその上の発光材料を形成する場合においても本発明に係る印刷方法を使用することができる。
【0063】
ホール注入材料又はホール輸送材料又はこれら両材料の機能を有するホール注入輸送材料の例としては、芳香族アミン系材料、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)等のフタロシアニン系錯体、アニリン系共重合体、ポリフィリン系化合物、イミダゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、さらにアントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン等のアセン系化合物等が挙げられる。また、これらのアセン系化合物の誘導体、すなわち、上記アセン系化合物にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、ケトン基、エステル基、エーテル基、アミノ基、ヒドロキシ基、ベンジル基、ベンゾイル基、フェニル基、ナフチル基等の置換基を導入した誘導体や、上記アセン系化合物のキノン誘導体等も挙げられる。
【0064】
また、ポリアニリン、ポリビニルアントラセン、ポリカルバゾール、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリフルオレン、ポリ(エチレンジオキシ)チオフェン/ポリ(スチレンスルフォン酸)(PEDOT/PSS)、チオフェン−フルオレン共重合体、フェニレンエチニレン−チオフェン共重合体、ポリアルキルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、その他、チオフェン系化合物等の高分子系正孔注入材料又は高分子系正孔輸送材料等も挙げられる。
【0065】
発光材料としては、ポリ(パラ−フェニレンビニレン)、ポリ(チオフェン)、ポリ(フルオレン)又はこれらの誘導体等の高分子系発光材料を挙げることができる。また、トリス(8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体(BeBq2)、フェナントロリン系ユウロピウム錯体(Eu(TTA)3(phn))、ペリレン、クマリン誘導体、キナクリドン、イリジウム錯体(Ir(ppy)3、Firpic、Ir(ppy)2(acac))といった蛍光材料や燐光材料等を挙げることができる。
【0066】
これらは、ホール若しくは電子輸送性又はその両方を有するホスト材料に少量ドープして用いてもよい。そのようなホスト材料としては4,4’−ビス(9−カルバゾール)ビフェニル(CBP)、2,7−ジ−9−カルバゾリル−9,9’−スピロビフルレン(spiro−CBP)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)等が挙げられる。
【0067】
本発明の印刷方法を用いる場合は、上記の各種材料(例えば、ホール注入材料、ホール輸送材料、発光材料、有機半導体材料等)を各種溶媒に分散若しくは溶解させて使用する。その時の溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン(デカリン)、テトラリン等の炭化水素類等が挙げられる。
【実施例】
【0068】
以下に本発明の印刷用凸版を実施例により詳細に説明する。なお、本発明は実施例により制限されるものではない。実施例においては、印刷用凸版は、光により形成する方法によって製造したが、型から複製する方法又は彫刻により形成する方法を採用してもよい。図10及び11は、ライン/スペースの形状と窪みの形状を示す図である。
【0069】
[実施例1]
図10のようなライン/スペース(L/S 200μm/400μm、長さ20mm)形状において、光透過部の中に微小窪みに対応する四角形の遮光部を等間隔に有する厚さ2.3mmの石英クロムマスクを用意した。石英クロムマスク表面をUV洗浄装置にて処理した後、窒素雰囲気下でHMDS(1,1,1,3,3,3−Hexamethyldisilazane)(1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン)の気流処理を20分間行なった。この石英クロムマスク表面にポジ型感光性樹脂をスピンコーターによって乾燥後厚みが10μmになるように塗布、風乾後、110℃、7分加熱処理を行なった。ポジ型感光性樹脂は東京応化社製PMER(P−LA300PM)を用いた。次にオーク社製平行光露光装置を用いて石英クロムマスク側から露光、ディップ現像(現像液P−7G)を行ない、風乾後、さらに110℃、5分加熱処理を行なった。この石英クロムマスク上に形成した樹脂モールド上に、離型剤として旭硝子社製サイトップ(CTX−809AP2)の4wt%液をスピンコーターにより、乾燥後厚みが0.5μmになるように塗布し、110℃で10分乾燥させた。得られた離型剤処理された樹脂モールド上に、旭化成ケミカルズ社製ネガ型液状感光性樹脂APR−G31(ポリエステル系樹脂)を100μmの厚みになるようにナイフコーターを用いて塗布した後、塗布上面にベースフィルムとして厚み150μmのステンレスシート(SUS304)をラミネートした。尚、ステンレスシートは信越化学工業社製シランカップリング剤(KBM−503)により表面処理したものを用いた。露光は石英クロムマスク側からオーク社製平行光露光装置を用いて500mj/cm2で行なった。樹脂モールドからベースフィルムを剥離し、0.1wt%炭酸ナトリウム溶液と界面活性剤からなる洗浄液で洗浄し、後露光を行ない、100μm厚のレリーフ上の先端に、深さ10μmの微小窪みを複数有するL/Sパターンの印刷版1を得た。
【0070】
[実施例2乃至7]
実施例1に使用したマスクパターンのライン/スペース(L/S 200μm/400μm、長さ20mm)形状において、光透過部の中の微小窪みに対応する四角形の遮光部の大きさと個数を変更した以外は実施例1と同様にして印刷版2乃至7(実施例2乃至7)を得た。
【0071】
[実施例8]
実施例1において、図11のようなライン/スペース(L/S 200μm/400μm、長さ20mm)形状において、光透過部の中に微小窪みに対応する円形の遮光部を等間隔で複数有する厚さ2.3mmの石英クロムマスクを用いた以外は実施例1と同様にして印刷版8を得た。
【0072】
[実施例9乃至11]
実施例1に使用したマスクパターンのライン/スペース(L/S 200μm/400μm、長さ20mm)形状において、光透過部の中の微小窪みに対応する四角形の遮光部の大きさと個数を変更した以外は実施例1と同様にして印刷版12乃至14(実施例9乃至11)を得た。
【0073】
[実施例12乃至17]
実施例1と同様の作製方法にて、印刷版No.1の微小窪みの深さを1μmに変更した印刷版15(実施例12)を得た。同様に印刷版2の微小窪みの深さを1μmに変更した印刷版16(実施例13)を得た。同様に印刷版3の微小窪みの深さを1μmに変更した印刷版17(実施例14)を得た。同様に印刷版12の微小窪みの深さを1μmに変更した印刷版18(実施例15)を得た。同様に印刷版13の微小窪みの深さを1μmに変更した印刷版19(実施例16)を得た。同様に印刷版14の微小窪みの深さを1μmに変更した印刷版20(実施例17)を得た。
【0074】
[比較例1及び2]
実施例1において、マスクパターンのライン/スペース(L/S 200μm/400μm、長さ20mm)形状において、光透過部の中の微小窪みに対応する遮光部の大きさと個数を変更させることによって印刷版9(比較例1)及び印刷版10(比較例2)を得た。
【0075】
[比較例3]
旭化成ケミカルズ社製ネガ型液状感光性樹脂APR−G31(ポリエステル系樹脂)を100μmの厚みになるようにナイフコーターを用いて塗布した後、塗布上面にベースフィルムとして厚み150μmのステンレスシート(SUS304)をラミネートした。尚、ステンレスシートは信越化学工業社製シランカップリング剤(KBM−503)により表面処理したものを用いた。露光は石英クロムマスク側からオーク社製平行光露光装置を用いて500mj/cm2で行なった。樹脂モールドからベースフィルムを剥離し、0.1wt%炭酸ナトリウム溶液と界面活性剤からなる洗浄液で洗浄し、後露光を行ない、100μm厚のレリーフを有するL/Sパターンの微小窪みを有していない印刷版11を得た(L/S 200μm/400μm、長さ20mm)。
【0076】
[比較例4]
比較例1と同様の作製方法にて、印刷版9の微小窪みの深さを1μmに変更した印刷版21を得た。
【0077】
[実施例と比較例のまとめ]
得られた実施例の印刷版1乃至8、印刷版12乃至14及び比較例の印刷版9及び10のレリーフ上の先端にある窪みの開口部の形状、開口径及び1個あたりの開口部の面積と、レリーフ先端にある窪みの個数分布及び開口部の面積率(開口部の総面積/レリーフ先端の面積×100)を表1に示す。なお表中に示す窪みの径は、窪み形状が□型(開口形状が正方形)の場合は該正方形の1辺の長さ、○型(開口形状が円)の場合は該円の直径である。尚、窪み開口部1個に関する値は10個の平均値であるが、変動率はすべて±5%以内であった。又、図12は、印刷用凸版及びレリーフ頂面の顕微鏡観察結果を示す図面代用写真である。左の画像はレリーフの頂面の正面視画像、右の画像はその拡大画像であり、窪み形状が四角柱状に抜けた穴(有底)である。上段は実施例1(印刷版1)、中段は実施例2(印刷版2)、下段は比較例1(印刷版9)にそれぞれ対応する。
【0078】
【表1】
【0079】
[印刷実験1]
実施例の印刷版1及び2並びに比較例の印刷版9、10及び11を用いて、印刷実験を行った。印刷条件としては、得られた印刷版を日本電子精機社製精密印刷機に両面テープで取り付け、インクテック社製UVインク(粘度1.0Pa・S/TV−33型粘度計を使用し、25℃にて測定)をガラス基板に、押し込み量が90μmの印圧と押し込み量が190μmの印圧との設定で印刷し、紫外線ランプでUVインクを硬化した。
【0080】
押し込み量が90μmの印圧の場合の結果を示す。膜厚均一性とマージナルについて光学顕微鏡(デジタルマイクロスコープVHX−900/株式会社キーエンス)並びに光干渉を用いた顕微鏡(Vert Scan2.0/株式会社菱化システム)にて評価したところ、印刷後の印刷版1の線幅が225μm、印刷版2の線幅が222μm、印刷版11の線幅が238μmであった。レリーフ上に微細な窪みを設けるという表面加工をすることで線太りの抑制効果が確認された。また、印刷版9及び10を用いた印刷では、印刷物を観察すると、均一にインクが転写されず、窪みの形状が印刷物に現われてしまい、均一な膜が得られなかった。また、印刷物にインクが塗れていない箇所があった。
【0081】
押し込み量が190μmの印圧の場合には、印刷版1の線幅が231μm、印刷版2の線幅が226μmであった。よって、印圧が高くなると線太りも大きくなることが分かった。さらに印圧が高い方が膜厚の均一性にも大きなばらつきが生じた。
【0082】
[印刷実験2]
実施例の印刷版1、2、3、12、13及び14並びに比較例の印刷版9及び11を用いて、印刷実験を行った。これらは同時印刷にて評価した。印刷方法としては、得られた印刷版を日本電子精機社製精密印刷機にテープで取り付け、印刷時の押し込み量が30μmとなる印圧にて印刷を行なった。印刷時のアニロックスロールは550線/インチを使用した。印刷に用いたインクはアルバックマテリアル(株)社製Agナノメタルインク(L−Ag1TeH/粘度12mPa・S)である。また、印刷基板としては、無アルカリガラスを使用し、銀インクを印刷後、150℃にて30分間熱養生し、薄膜を作製した。得られた薄膜を光学顕微鏡(デジタルマイクロスコープVHX−900/株式会社キーエンス)を用いて観察した。印刷後の結果、得られた線幅の値を表2に示す。また、均一性については実施例の印刷版1、2、3、12、13及び14ではきれいな薄膜が形成されたが、比較例の印刷版9ではライン上にインクが塗れていない箇所(欠陥)が目立ち、均一性が悪かった。また、印刷版2及び11はラインの線太りが大きかった。よって、ラインの均一性が良く、線太りが抑制されているものは、印刷版1、3、12、13及び14である。
【0083】
【表2】
【0084】
図13及び14は、窪みの面積率(%)とライン幅との関係を示す図である。表1及び表2の値から、開口部の面積率と線幅との関係をグラフにすると図13に示す通りとなる。ここで、同じ面積率を有する印刷版2と印刷版12とを比較すると、印刷版12の方が線太りは小さい。よって、同じ面積率の場合は、微小窪みの1個の面積が大きい方が線太りの抑制効果が高い。また、ほぼ同じ面積率を有している印刷版1と印刷版3とを比較すると、微小窪みの1個の面積が大きい印刷版3の方が若干線太りは小さいが、いずれも良好な印刷性が得られた。図13において、点線の間(ただし、図中、点線端部の黒丸印は該印が接している点線上を上記「点線の間」の範囲に含むことを示し、白丸印は該印が接している点線上を上記「点線の間」の範囲に含まないことを示す。なお図14においても同様である。)が微小窪みの1個の面積によらず良好な印刷ができる印刷版の範囲である。すなわち、レリーフの頂面に複数個設けた窪みの開口面積の合計が、上記レリーフの頂面の面積に対して、40%以上60%未満の割合の場合において良好な印刷性が得られた。ただし、同じ開口部の面積率の場合、微小窪みの1個の面積が大きい方がより良好な印刷が可能となる。なお、表2の実施例を包含する微小窪みの1個の開口面積が25μm2以上、1600μm2以下の条件を満たせば、レリーフの頂面に複数個設けた窪みの開口面積の合計が、上記レリーフの頂面の面積に対して、40%以上60%未満の割合の場合において特に良好な印刷性が得られ、さらに同じ開口部の面積率の場合、微小窪みの1個の面積が大きい方がより良好な印刷が可能であることも確認された。
【0085】
[印刷実験3]
実施例の印刷版15、16、17、18、19及び20並びに比較例の印刷版11及び21を用いて、印刷実験を行なった。なお、印刷版11については、表2の評価で使用した印刷版11の印刷版と同等の印刷版を別途準備して、印刷実験3を行なった。これらは、同時印刷にて評価した。印刷方法としては、得られた印刷版を日本電子精機社製精密印刷機にテープで取り付け、印刷時の押し込み量が30μmとなる印圧にて印刷を行なった。印刷時のアニロックスロールは550線/インチを使用した。印刷に用いたインクはアルバックマテリアル(株)社製Agナノメタルインク(L−Ag1TeH/粘度12mPa・S)である。また、印刷基板としては、無アルカリガラスを使用し、銀インクを印刷後、150℃にて30分間熱養生し、薄膜を作製した。得られた薄膜を光学顕微鏡(デジタルマイクロスコープVHX−900/株式会社キーエンス)を用いて観察した。印刷後に得られた線幅の値を表3に示す。また、均一性の結果としては、印刷版15、16、17、18、19及び20ではきれいな薄膜が形成されたが、印刷版21ではライン上にインクが塗れていない箇所(欠陥)が目立ち、均一性が悪かった。また、印刷版16及び11はラインの線太りが大きかった。よって、ラインの均一性が良く、線太りが良好に抑制されているものは、印刷版15、17、18、19及び20である。
【0086】
【表3】
【0087】
表1及び表3の値から、開口部の面積率と線幅との関係をグラフにすると、図14に示す通りとなる。ここで、同じ面積率を有する印刷版16と印刷版18とを比較すると、印刷版18の方が線太りは小さい。よって、同じ面積率の場合は、微小窪みの1個の面積が大きい方が線太りはより良好に抑制できる。また、ほぼ同じ面積率を有している印刷版15と印刷版17とを比較すると、微小窪みの1個の面積が大きい印刷版17の方が若干線太りは小さいが、いずれも良好な印刷性が得られた。図14において、点線の間(ただし、図中、黒丸印の点線上は含み、白丸印の点線上は含まれない。)が微小窪みの1個の面積によらず良好な印刷ができる印刷版の範囲である。すなわち、レリーフの頂面に複数個設けた窪みの開口面積の合計が、上記レリーフの頂面の面積に対して、40%以上60%未満の割合の場合において良好な印刷性が得られた。ただし、同じ開口部の面積率の場合、微小窪みの1個の面積が大きい方がより良好な印刷が可能となる。なお、表3の実施例を包含する微小窪みの1個の開口面積が25μm2以上、1600μm2以下の条件を満たせば、レリーフの頂面に複数個設けた窪みの開口面積の合計が、上記レリーフの頂面の面積に対して、40%以上60%未満の割合の場合において特に良好な印刷性が得られ、さらに同じ開口部の面積率の場合、微小窪みの1個の面積が大きい方がより良好な印刷が可能であることも確認された。
【0088】
[印刷実験4]
・インク粘度の影響について
実施例の印刷版2と比較例の印刷版11とを用いて、印刷実験を行なった。印刷に用いたインクは、ハリマ化成(株)製の銀インク(NPSの分散媒をテトラデカンに変更したインク、粘度を50mPa・Sと210mPa・Sに設定)である。印刷機としては日本電子精機社製精密印刷機を用いた。印刷方法は、アニロックスロール550線/インチを用い、アニロックスロールから印刷版へインキングを行ない、印刷版からワークへインクを転写した。ワークへの転写時の印圧は、押し込み量で定義し、押し込み量は定盤の高さで調整した。本実験では、押し込み量50μmで行なった。基板としてガラス基板を用い、印刷後220℃にて30分乾燥した。評価は光干渉を用いた顕微鏡(Vert Scan2.0/株式会社菱化システム)を使用した。
【0089】
図15は、インク粘度と線幅増加率との関係を示す図であり、図16は、インク粘度と膜の均一性との関係を示す図である。上記の結果を、横軸にインク粘度(mPa・S)、縦軸に線幅増加率(%)をとってプロットした結果は図15に示す通りである。また、横軸には線幅増加率(%)を、縦軸には膜の均一性を評価するために(端部の膜厚)/(中央の膜厚)の比をとってプロットした結果は図16に示す通りである。ここで線幅増加率とは{((印刷物の線幅)−(印刷版の線幅))/(印刷版の線幅)}×100(%)のことである。つまり、この結果からどれくらい線太りをするか分かる。この結果から、印刷版2と印刷版11とを比較すると、粘度が210mPa・Sの場合では、印刷版2は線太りが抑制され、印刷結果は良好である。また、粘度が50mPa・Sと210mPa・Sとの場合を比較すると、粘度が50mPa・Sの場合の方が線太りの抑制効果が高く、膜の均一性も高い。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、例えばエレクトロニクス、フォトニクス、バイオエレクトロニクス等に関連する微細なパターンの作製を凸版印刷法で実施する場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】凸版印刷に使用する凸版印刷版と転写時の課題を示す図であり、(a)は凸版印刷版を示す断面図、(b)はインクを基板へ押し付けた状態を示す断面図、(c)は基板へ転写されたインクを示す基板の平面図である。
【図2】印刷されたパターンの状態を示す概略図であり、(a)は従来技術のパターンにおいてマージナルが大きいためパターンが繋がった状態を示し、(b)は本発明のパターンにおいてマージナルが改善されパターンが分離された状態を示す。
【図3】本発明に係る印刷用凸版の一形態を示す概略図であり、(a)はレリーフ断面の一形態を示す断面図であり、(b)はレリーフの頂面を示す平面図である。
【図4】本発明における窪みの形成態様の例を示す概略図であり、レリーフ上に窪みが複数個形成され、その形成された領域がレリーフ先端部分の全域にわたり、窪みがレリーフ端部に掛かって形成されていないことを示しており、(a)は窪みの開口形状が円形でその配列方向とレリーフ端部の方向とが一致している場合を示す平面図、(b)は窪みの開口形状が四角形でその配列方向とレリーフ端部の方向とが一致している場合を示す平面図、(c)はレリーフ端部と窪みとが重なる場合に、窪みのレリーフ端部側においてレリーフ端部形状に沿った窪み形状を示す平面図である。
【図5】本発明における窪みの形成態様の例を示す概略図であり、窪みが千鳥配列である形態を示しており、(a)は窪み形状が円形の場合の千鳥配列を示す平面図、(b)は窪み形状が四角形の場合の千鳥配列を示す平面図、(c)はレリーフの断面形状の他形態を示す断面図である。
【図6】本発明における窪みの形成態様の例を示す概略図であり、レリーフ周辺のインク密度を下げるために窪みの大きさ若しくは窪みの深さで調整した例を示しており、(a)は周辺部の窪みの大きさを小さくした場合を示す平面図、(b)は周辺部の窪みの深さを浅くした場合を示す断面図である。
【図7】本発明において使用できる印刷機の例を示す図である。
【図8】本発明の印刷方法について説明する断面図であり、(a)はインクが展開されたアニロックスプレート上に版が押し付けられた状態、(b)はレリーフ先端にパターン形成用インクが供給された状態、(c)は版を基板へ押し付けた状態、(d)は版を基板から離すことにより転写を終えた状態、(e)はインクがレベリングした状態を示す。
【図9】本発明に係る印刷用凸版のレリーフ断面形状を示す断面図であり、(a)は単層版、(b)は硬度差を設けた2層構造の多層版、(c)はショルダー差を設けた2層構造の多層版、(d)はショルダー角10が設定された単層版、(e)はレリーフ層とベース層との3層構造の多層版、を示す。
【図10】ライン/スペースの形状と窪みの形状を示す図である。
【図11】ライン/スペースの形状と窪みの形状を示す図である。
【図12】印刷用凸版及びレリーフ頂面の顕微鏡観察結果を示す図面代用写真である。左の画像はレリーフの頂面の正面視画像、右の画像はその拡大画像であり、窪み形状が四角柱状に抜けた穴である。上段は実施例1(印刷版1)、中段は実施例2(印刷版2)、下段は比較例1(印刷版9)にそれぞれ対応する。
【図13】窪みの面積率(%)とライン幅との関係を示す図である。
【図14】窪みの面積率(%)とライン幅との関係を示す図である。
【図15】インク粘度と線幅増加率との関係を示す図である。
【図16】インク粘度と膜の均一性との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1 レリーフ
1a 低硬度層
1b 高硬度層
2 インク
3 マージナル
4 基板
5 マージナルがない場合のパターン
6 マージナルにより広がったパターン
7 ベース部
8 頂面
9 窪み
10 ショルダー角
11 アニロックスロール
12 ドクターブレード
13 版
14 版胴
15 パターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷等の凸版印刷に使用する凸版印刷版及びそれを用いた印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表示パネルや回路のパターン等で微細なサイズのものの形成は、一般的にフォトリソ法が用いられてきた。印刷法はフォトリソ法と比較し、処理速度が速い、プロセスに関わる廃棄物が少ない、材料の利用効率が高い等コスト低減が期待されている。しかし印刷法は以下の点で要求に応えきれていなかった。
【0003】
図1は、凸版印刷に使用する凸版印刷版と転写時の課題を示す図であり、(a)は凸版印刷版を示す断面図、(b)はインクを基板へ押し付けた状態を示す断面図、(c)は基板へ転写されたインクを示す基板の平面図である。従来、レリーフ1の先端にインク2を付着させ、被印刷体である印刷基板に加圧転写する凸版印刷法が広く普及している。このような凸版の代表例として、樹脂材料からなる版を使用したフレキソ印刷法を挙げることができる。フレキソ印刷法は、版が樹脂製であるため加工が比較的容易であること、版材に柔軟性があるため、基板へのダメージ、及び重ね刷り時に於いて先に形成されたパターンへ与えるダメージが低減されること、並びに凸版であるため非画像部にインクが付着しないこと等の特長がある。電子デバイスへの応用を想定した場合は、これらの特長は有利に働く。
【0004】
しかしながら、微細パターンを印刷形成するための手段として、凸版及び凸版印刷法は殆ど使用されていなかった。その主な理由は、マージナルの発生というこの方法特有の問題があり、微細パターンを正確に形成することが難しかったからである。凸版印刷方式においては、インクの転写(図1(b))を行なう工程で印圧を加えなければならないが、印刷版のレリーフ1と基板4とに挟まれたインク2が、レリーフ先端からその周囲にはみ出し、所定の寸法を維持することが困難になる。このように印刷されたパターンの方が印刷版のパターンより大きくなった部分をマージナル(図1(b)においてはマージナル3として示している)といい、図1(c)に示すように、マージナルにより広がったパターン6はマージナルがない場合のパターン5に比べて大きくなる。
【0005】
更にパターンが微細になり、パターン間の距離が小さくなると、マージナルにより隣のパターンと繋がってしまうという問題が発生する。図2は、印刷されたパターンの状態を示す概略図であり、(a)は従来技術のパターンにおいてマージナルが大きいためパターンが繋がった状態を示し、(b)は本発明のパターンにおいてマージナルが改善されパターンが分離された状態を示す(本発明のパターン(b)については後に詳述する)。隣のパターンと繋がってしまうという従来技術の上記問題が生じている状態を、図2(a)においては、マージナルがない場合のパターン5及びマージナルにより広がったパターン6として示している。特に、配線や電極等の導電性パターンを形成する場合、パターンが繋がることはショートを発生させることになり、電子デバイス等を正常に機能させることができなくなるという問題があった。
【0006】
今までにマージナルを減らすために以下のような方法が提案されてきた。例えば、マージナル防止のため版の凸部でインクを固めた後、固化したインク成分を、粘着物質を介して基板に転写する方法(例えば特許文献1を参照。)がある。また、版の凸部の周囲に障壁を設ける方法も提案されている(例えば特許文献2を参照。)。更に、版の凸部に窪みを設け、窪みに余剰インクを収容する方法も提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。また、版の凸部に多数の窪みを設け、マージナル抑制や均一性を向上する方法が提案されている(例えば特許文献4を参照。)。
【0007】
【特許文献1】特許第3475498号公報
【特許文献2】特開2002−117755号公報
【特許文献3】特開2002−178654号公報
【特許文献4】特開2006−240283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の技術では、電子デバイス等において先に形成されたパターンと後から形成されたパターンとの相互間で、電気的接続を必要とする場合、相互の導通性低下が問題であり、また、絶縁層との積層では界面でのトラップ発生によるデバイス特性への影響の問題がある。更には強度的に脆弱な薄膜の転写に於いては転写時のストレスによって膜中へクラックが入る問題が考えられる。さらに、使用できるインクが限定される。
【0009】
また、特許文献2の技術では、インクの粘度が低い場合、ワークへの押し付けが不均等になり、既にパターンがある場合、段差によって障壁で抑え切れずにインクが流れ出す問題が懸念される。
【0010】
特許文献3は窪みの具体的な開口面積については考慮していないため、印刷物の膜厚の制御と面内均一性との両立という問題を考慮していない。そして特許文献3は、通常のフレキソ印刷における課題であるドットゲインを減少させる効果については述べているが、電子材料分野における課題である細線の線太り抑制効果の課題の提示並びに解決方法について具体的に示していない。
【0011】
更に特許文献4の技術では、窪みの大きさと印刷特性との関係や、インクの出入りに関する記載はなく、インクの粘度が低い場合に問題となる、印刷物の膜厚を確保しつつ、その膜厚の均一性も確保するという2つの要素の両立に関しては具体的に示していない。また、電子材料分野で重要な細線におけるマージナル及びラインでの線太りの抑制については具体的に示していない。
【0012】
本発明は、特許文献1〜4が抱える上記の諸問題を有さず、例えば表示パネルにおける配線の形成、電極の形成及び絶縁材料や機能材料を使用した機能素子や電子回路の配線形成に最適な、印刷物の膜厚制御が可能であるとともに優れた膜厚均一性を与える印刷用凸版並びに印刷方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記のような問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明に係る印刷用凸版は、凸版のレリーフの頂面に供給されたインクを被印刷体へ転写する凸版印刷に用いる凸版において、前記レリーフの頂面に、開口面積が25μm2以上、1600μm2以下の窪みを複数個設けたことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る印刷用凸版では、前記レリーフの頂面に複数個設けた窪みの開口面積の合計が、前記レリーフの頂面の面積に対して、30%以上65%未満の割合であることが好ましい。インクのレベリング性が促進され、より均一性が増すとともにマージナルが抑制される。
【0015】
本発明に係る印刷用凸版では、前記レリーフの頂面に複数個設けた窪みの開口面積の合計が、前記レリーフの頂面の面積に対して、40%以上60%未満の割合であることが好ましい。この範囲の場合に、膜のより良好な均一性と線太りの抑制が両立される。
【0016】
本発明に係る印刷方法は、本発明に係る印刷用凸版を、前記レリーフを外側に向けた状態で円筒形とし、前記レリーフの頂面に粘度が0.2Pa・S以下のインクを供給し、円筒軸を中心に転動させることによって被印刷体に対して前記インクを転写する工程を含み、前記転写を、前記レリーフと前記被印刷体との押し込み量が100μm以下となる印圧で行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の印刷用凸版若しくは印刷方法を用いてパターン形成を行なえば、凸版のレリーフ先端に設けられた窪みと窪みの間の壁や窪み自身が印刷時のインクの流れ出しを阻止するように働くためマージナルやラインでの線太りが抑制され、パターン形成においてパターン同士が繋がることを防ぐことができる。さらに膜内均一性、及びエッジの直線性を向上できる。このため、本発明によれば、線幅(ライン(L))が狭く、且つ、線間隔(スペース(S))が狭い場合の印刷を達成できる。例えば、線幅(L)が5μm以上400μm以下、最小線間隔(S)が3μm以上500μm以下でも印刷が可能となった。その結果、印刷法による電子デバイス(配線の形成、電極の形成、絶縁材料や機能材料を用いた機能素子や回路の形成)への応用が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。本発明の効果を奏する限り、種々の形態変更をしてもよい。
【0019】
本発明に係る印刷用凸版について説明する。本実施形態に係る印刷用凸版は、凸版のレリーフの頂面に供給されたインクを被印刷体へ転写する凸版印刷に用いる凸版において、レリーフの頂面に、開口面積が25μm2以上、1600μm2以下の窪みをレリーフ1つ当り複数個設けている(以下、本発明において設けられるこれらの窪みを「微小窪み」とも称する)。
【0020】
図3は、本発明に係る印刷用凸版の一形態を示す概略図であり、(a)はレリーフ断面の一形態を示す断面図であり、(b)はレリーフの頂面を示す平面図である。図3は、複数の窪みを設ける一形態を示しており、本発明に係る印刷用凸版13は、凸版のレリーフ1(レリーフ厚みHを有する)の頂面8に窪み9が複数形成され、碁盤の目状に配置されている。図3(a)のレリーフ1の断面が示すとおり、レリーフの頂面8から深さ方向に窪み9が設けられている。また、図3(b)のレリーフのインクが付着する面が示すとおり、窪み9が碁盤の目状に配置されている。ここで、ある窪みの周縁とこの窪みの隣に位置する窪みの周縁との最短距離で定義される窪み間の距離をAで表す。
【0021】
図4、5及び6は、本発明における窪みの形成態様の例を示す概略図である。図4はレリーフ上に窪みが複数個形成され、その形成された領域がレリーフ先端部分の全域にわたり、窪みがレリーフ端部に掛かって形成されていないことを示す図であり、(a)は窪みの開口形状が円形でその配列方向とレリーフ端部の方向とが一致している場合を示す平面図、(b)は窪みの開口形状が四角形でその配列方向とレリーフ端部の方向とが一致している場合を示す平面図、(c)はレリーフ端部と窪みとが重なる場合に、窪みのレリーフ端部側においてレリーフ端部形状に沿った窪み形状を示す平面図である。図4(c)に示す態様では、レリーフ端部近傍の窪み形状がそれ以外の部分の窪み形状と異なることでレリーフ端部に窪みが掛からないようにされている。図5は、窪みが千鳥配列である形態を示しており、(a)は窪みの開口形状が円形の場合の千鳥配列を示す平面図、(b)は窪みの開口形状が四角形の場合の千鳥配列を示す平面図、(c)はレリーフの断面形状の他形態を示す断面図である。図6は、レリーフ周辺のインク密度を下げるために窪みの大きさ若しくは窪みの深さを調整した例を示しており、(a)は周辺部の窪みの大きさを小さくした場合を示す平面図、(b)は周辺部の窪みの深さを浅くした場合を示す断面図である。
【0022】
窪みの形状は、図3(b)に示す形状、図3(b)と同様に四角柱状であるが(窪みの開口面積)/(頂面の面積)の比が異なる形状(図4(b)に示した四角柱状)の穴(非貫通で有底)のみならず、図4(a)に示すように円柱状の穴(非貫通で有底)の形状をしていてもよい。ここで、図4に示すようにレリーフ上に窪みが複数個形成された領域がレリーフ先端部分の全域にわたっていることが好ましく、さらに窪みがレリーフのエッジ(レリーフ端部)に掛かって形成されていないことが好ましい。
【0023】
窪みの配列は、図3(b)又は図4(b)に示したような碁盤の目状の配列のみならず、図5(a)又は(b)に示すように、千鳥配列としてもよい。配列を工夫することで、インクの流れ出しをより効果的に抑制することを狙いとした配置である。
【0024】
窪みの大きさは、図3(b)又は図4(b)に示したような同一の大きさの窪みを配列するのみならず、図6(a)に示すように窪みの大きさを異ならせしめて配列してもよい。図6は、マージナルをより減らすため、窪みの大きさに工夫を加えた例を示している。図6(a)は、レリーフの端部に近い部分ほど、インク量を減らすために窪みの大きさを小さくし、レリーフの外側へ流れ出すインクの量を減らすことを目的にした例である。図5(c)及び図6(b)は、図6(a)と同様な目的で、レリーフの端部に近い部分ほど、インク量を減らすために窪みの深さを浅くし、レリーフの外側へ流れ出すインクの量を減らすことを目的にした例である。
【0025】
前記いずれの形態に於いても、レリーフ端部の窪みの形状は、レリーフ端部形状を途切れさせないように配列するか、配列の都合上レリーフ端部に窪みが重なる場合は、窪みの端部と重なる部分が端部形状に一致する側壁で閉じられていることが好ましい。
【0026】
本発明によれば、レリーフの頂面に窪みを設けることによって、凸版を印刷基板に押し付けた時に発生するレリーフ外側へのインクの流れが阻止されるため、マージナルの発生を低減させることができる。レリーフ端部において、窪みがレリーフ端部に掛からずにレリーフが本来の形状に沿った縁辺の線部を有するように窪みが配置される場合には、パターンの再現性も向上する、また、ラインエッジの直線性が良好な印刷物が得られる。これらの窪みの特性をより詳細に検討した結果、レリーフ上に形成した窪みの1個あたりの開口面積が25μm2(例えば窪みの開口形状が正方形の場合、窪み径は5μm)以上、1600μm2(例えば窪みの開口形状が正方形の場合、窪み径は40μm)以下の時においてのみ転写したインクの膜厚の制御と面内均一性の両立が可能であることを見出した。すなわち、1600μm2を超えると窪み部にインクが過剰にたまり、転写したインクの面内の均一性やレリーフ端部に相当する解像性が損なわれる。また、インクの種類によっては、レリーフ上の窪みは印刷時においてインクの逃げ場としての機能を有し、この場合は開口面積が1600μm2を超えるとパターンの欠損の原因にもなる。一方、開口面積が25μm2未満であるとインクの出入りが困難になり、インクのアニロックスロールからの転写性やインクの基板への転写効率が悪くなり、窪み部に対応する欠損によってパターンの再現性が損なわれてしまう上に、マージナル抑制効果さえも低下してしまう。また上記のように、インクの種類によっては、レリーフ上の窪みは印刷時においてインクの逃げ場としての機能を有し、この場合は開口面積が25μm2未満であるとインクの逃げ場としての効果が減少し、マージナルや線太りの原因となる。窪みの開口面積は、50μm2以上、1000μm2以下にすることが好ましい。
【0027】
上記のような窪みによって転写したインクの膜厚を制御することも可能であり、インクを溜める窪みの容積を任意に設定することが可能である。この際、窪みの容積は、その開口部の面積と深さとによって決まるが、例えば0.1〜20μm(非乾燥時)のような厚みの比較的厚膜を形成する場合においては、開口部の総面積が所望の範囲にあるときに特に優れた印刷特性を示すことが分かった。開口部の総面積が小さすぎる場合には、厚膜にしようとすると面内の均一性が損なわれる場合があり、逆に開口部の総面積が大きすぎる場合には、マージナルの発生が起きる場合がある。これらの現象は特にインクの粘度が低い場合に見られる。以上の理由により、レリーフの頂面に複数個設けた窪みの開口面積の合計が、レリーフの頂面の面積に対して、30%以上65%未満の割合であることが好ましく、35%以上60%以下の割合であることがより好ましい。また、印刷条件によっては、インクをすべて充填させずに、窪みを印刷時のインクの逃げ場として機能させて印刷する方法もある。この場合は、窪み開口部の総面積が小さすぎると線太りは大きくなる。また、開口部の総面積が大きくなるとパターン上の抜けの原因にもなる。よって、レリーフの頂面に複数個設けた窪みの開口面積の合計が、レリーフの頂面の面積に対して、35%以上65%未満の割合であることが好ましく、40%以上、60%未満の割合であることがより好ましい。40%以上の場合にさらに線太りの抑制効果が良好で、60%未満の場合にパターンの欠損率がさらに低減される。また、面積率が65%以上になると、レリーフ頂面の強度が落ちるため、耐刷性が低下しやすい傾向がある。
【0028】
次に窪みの形状等について述べる。窪みの開口形状(平面形状)、すなわちレリーフの頂面を正面視した形状としては、円形若しくは直線で構成される三角形、四角形、六角形、それ以上の多角形並びに直線及び曲線で構成された形状を用いることができるが、インク転写用のアニロックスロール等との組み合わせによるモワレや斑、印刷後のレベリングの状況を勘案して決めればよい。これらの構成や窪みの配置間隔、深さを変えることでインクの量を調整することもできる。もちろん1つのパターン内でこれらの構成を変えてもよい。前述のとおり配列に関しては、碁盤の目状の配列を示した図3(b)や図4(a)(b)の形態、又は、千鳥配列を示した図5(a)(b)の形態を採ることも可能である。例えば千鳥配列を示した図5(a)(b)では、窪み間距離がより均等化することでレベリング性が向上し、隣り合う窪みが碁盤の目状配列と比較するとずれるため、その方向へのインクの流れの抑制に効果があると考えられる。
【0029】
レリーフ上に形成した窪みの深さは、インクの出入りのしやすさから1μm以上30μm以下が好ましい。さらに好ましくは3μm以上20μm以下である。窪みの深さが30μmより深くなると、インクの出入りが困難になり、パターンの再現性が悪くなる傾向がある。また窪みの深さが1μm未満であると、インクの転写量が不足する傾向がある。又は、印刷条件によっては、インクをすべて充填させずに、窪みを印刷時のインクの逃げ場として機能させて印刷する方法もある。この場合、レリーフ上に形成した窪みの深さは、インクの逃げ場としての機能から0.5μm以上、30μm以下が好ましく、0.5μm以上、20μm以下がさらに好ましい。
【0030】
また、本発明に係る印刷用凸版では、図3(b)の部分拡大図で示すように、窪みの周縁とその窪みの隣に位置する窪みの周縁との最短距離で定義される窪み間の距離(A)が1μm以上、30μm以下であることが好ましい。窪み間の距離(A)をこのような範囲とすることによって、インクのレベリング性が促進され、より均一性が増す。さらに好ましくは3μm以上20μm以下である。
【0031】
次に本発明の印刷用凸版の製造方法について述べる。印刷用凸版のパターンの形成方法としては、例えば(1)光により形成する方法、(2)型から複製する方法、(3)彫刻により形成する方法、がある。
【0032】
(第1の方法:光によりパターンを形成する方法)
光によりパターンを形成する方法では感光性樹脂が使用可能であり、該方法としては次の方法が挙げられる。通常の感光性樹脂を用いた方法で、感光性樹脂をレリーフの形状に合わせ、レリーフ上部の微小窪みに相当しない部分において光を透過しそれ以外の部分では光を透過しないネガフィルムを準備する。露光前が液状の感光性樹脂を用いる場合、このネガフィルムをガラス板の表面に積層した後、その上に液状の感光性樹脂を塗布し、その表面に透明なベースフィルムを積層し、更にその表面にガラス板を積層する。なお感光性樹脂層の厚みは所定の寸法になるよう設定する。次いでランプを用い、上側のガラス板とベースフィルムを介して感光性樹脂に紫外線を照射すると共に、下側のガラス板とネガフィルムを介して感光性樹脂に紫外線を照射する。画像露光用の照射光源は公知のものを使用可能である。上記の液状感光性樹脂からなる層の上面全体から入った光と、ネガフィルムの光を透過する部分を透過した光とが所定量届いた部分が硬化される。硬化後上下のガラス板、ネガフィルムを取り除き、未硬化部分を洗浄除去し、レリーフ形成側に紫外線を照射し硬化を促進し、印刷用凸版とする。
【0033】
別の方法として、レリーフ形成のために、感光性樹脂を硬化可能な波長のレーザー光源を用い、硬化に必要な光量を走査露光しても良い。常温で液状タイプでなく常温で固溶体状の感光性樹脂を用いる場合、感光性樹脂を加熱して所定の厚みに成形したのち、同様に画像露光以降の操作を行なえばよい。
【0034】
さらに、上記ではネガタイプの感光性樹脂を使用した際の印刷用凸版の製造方法を説明したが、ポジタイプの感光性樹脂をポジフィルムと共に用いることも可能である。
【0035】
また、フォトマスク上に予め型(モールド)を作製しておき、窪みの深さをより正確に制御する方法も採用できる。例えば、上記ネガフィルム上に微小窪みの深さに相当する膜厚でポジタイプの感光性樹脂を被着し、ネガフィルム側から紫外線を照射し、露光部分を現像処理したものである。これにより、ネガフィルムの遮光部上に微小窪みに対応した微小突起が形成される。このネガフィルム上に形成した型上に、さらにネガタイプの感光性樹脂を所望のレリーフ厚みに応じて塗布し、その表面にベースフィルムを積層する。次いでネガフィルム及び型を通して下側(ネガフィルム側)から紫外線を照射し、ネガフィルム及びモールドを取り除き、未硬化部分を洗浄除去することで、ベースフィルム上に微小窪みを有するレリーフを精度良く形成することができる。この際、拡散反射率の比較的高いベースフィルムを使用する場合、入射紫外線がベースフィルム表面で拡散反射し、レリーフ部全体の硬化を促進させることができる。尚、ネガフィルムに型を確実に被着させるために、ネガフィルム表面に紫外線透過性を有する市販の接着剤(ゴム系、ポリエステル系、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、シラン系等)によるコーティング処理を施すこと、ハードコート(アクリル系等)等の各種コーティング材を接着層上に設けること、及びカップリング剤等による表面処理を行なうことができる。
【0036】
(第2の方法:型からパターンを複製する方法)
型から複製パターンを作製する方法としては次の方法を挙げることができる。パターン形状に対応した型を作製し、レリーフが樹脂製であることにふさわしい方法で型取りする。方法としては、1)光硬化法、又は2)熱硬化法、を採用することができる。又は3)加熱した型を樹脂に押し付け、パターンに相当する形状を付与する熱転写法(冷却凝固法ともいう)、でも良い。上記1)には感光性樹脂、上記2)には室温で液体又は固溶体状の熱硬化性樹脂、上記3)には熱可塑性樹脂がそれぞれ使用可能である。型は、採用する加工方法及び解像度により公知のものから選択すればよく、例えば金属金型、Si型、石英型、SiC型、Ni電鋳型、樹脂型等が使用可能である。
【0037】
(第3の方法:彫刻によりパターンを形成する方法)
彫刻によりパターンを形成する方法としては、次の方法を挙げることができる。架橋されたゴム系材料や、硬化された熱硬化性樹脂、同じく硬化された光硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂等を版材料として使用することが可能である。固体の版材料を彫刻する方法としては、レーザーによる彫刻方式を挙げることができる。現実的には必要とするパターン形状の寸法に応じレーザーを使い分ければよい。炭酸ガスレーザー、YAG3倍波若しくは4倍波レーザー、又はエキシマレーザー等の各種レーザーを解像度や彫刻性に応じて選定して彫刻することができる。この方法を用いれば、レリーフの頂面と溝部の表面自由エネルギーが異なる組み合わせの版も作ることができる。この場合、レリーフ先端層とその下の層とで、異なる材料を積層する、異なる材料を塗布し重ねる、或いは、プラズマ処理を行なう等の各種方法で、レリーフ先端層とその下の層で表面自由エネルギーの異なる組み合わせを作り、レーザーで下の層まで達するよう彫刻する方法を採ることもできる。
【0038】
本発明に係る印刷用凸版を形成する材料としては、上記のように室温で固体、高温で流動性を有する熱可塑性樹脂、及び室温で粘凋若しくは固溶体状の感光性樹脂又は熱硬化性樹脂を使用でき、それぞれの可塑性又は硬化性の性質を利用して版を成型することができる。樹脂の種類について特に制約は無い。版として使用する形態における力学的物性、例えば硬度、ヤング率、反発弾性、引張強伸度、表面張力、或いは耐溶剤性等の化学的物性が所望する印刷に適するように樹脂を選択、設計すればよい。また、架橋されたゴム系材料も本発明に係る印刷用凸版を形成する材料であることができる。
【0039】
ネガタイプの感光性樹脂としては、ラジカル重合系、光カチオン重合系、光アニオン重合系又は光二量化反応系等が適用可能である。以下、汎用的なラジカル重合系を例に説明する。
【0040】
ラジカル重合性樹脂組成物の多くが本発明に適用され得るが、その中で代表的なものとしてプレポリマー、モノマー、開始剤及び熱重合禁止剤を配合した組成物が使用可能である。
【0041】
プレポリマーとしては、重合性二重結合を分子中少なくとも1個以上有し、例えば、不飽和ポリエステル、不飽和ポリウレタン、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリレート樹脂、不飽和メタクリレート樹脂又はこれらの各種変性物等を少なくとも1種類用いたものを挙げることができる。
【0042】
モノマーは、典型的には重合性二重結合を有するエチレン性不飽和単量体であり、例えば、スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメタクリルアミド、α−アセトアミド、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、α−クロロアクリル酸、パラカルボキシスチレン、2,5−ジヒドロキシスチレン、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート等、及びフォトポリマー懇話会著、「フォトポリマーハンドブック」、(株)工業調査会刊、1989年6月26日、p.31‐36記載の材料を用いることができる。
【0043】
開始剤としては、エチレン付加重合性不飽和基を用いて三次元架橋反応を行なうときに反応効率を高めるために用いる公知の光重合開始剤又は熱重合開始剤を用いることができる。光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、キサントン、チオキサントン、クロロキサントン、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセトフェノン、(2−アクリロイルオキシエチル)(4−ベンゾイルベンジル)ジメチル臭化アンモニウム、(4−ベンゾイルベンジル)塩化トリメチルアンモニウム、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3−,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オン−メソクロライド,1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(Oベンゾイル)オキシム、チオフェノール、2−ベンゾチアゾールチオール、2−ベンゾオキサゾールチオール、2−ベンズイミダゾールチオール、ジフェニルスルフィド、デシルフェニルスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジベンジルスルフィド、ジベンゾイルジスルフィド、ジアセチルジスルフィド、ジビニルジスルフィドジメトキシキサントゲンジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムテトラスルフィド、ベンジルジメチルジチオカーバメイトキノキサリン、1,3−ジオキソラン、N−ラウリルピリジニウム等が例示できる。一方、熱重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、過硫酸塩−亜硫酸水素ナトリウム等の過酸化物、アゾ化合物、レドックス開始剤といった公知のものが使用できる。
【0044】
本発明に用いる熱重合禁止剤として、ハイドロキノン、モノ第三ブチルハイドロキノン、ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、ピクリン酸、ジ−p−フルオロフェニルアミン、p−メトキシフェノール、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール等を挙げることができる。
【0045】
感光性樹脂組成物としては特開昭52−90804号公報、特公昭48−19125号公報、特開昭49−109104号公報、特公昭48−41708号公報等に記載の物が挙げられる。さらに、東レリサーチセンター調査研究事業部編、「フォトポリマー技術の新展開」東レリサーチセンター刊、1993年3月10日、p.35〜37、山岡亜夫監修、「フォトポリマーの基礎と応用」シーエムシー出版、2003年3月27日、第4章製版材料とフォトレジスト、や松井真二他監修、「ナノインプリントの開発と応用」、シーエムシー出版刊、2005年8月31日、p.50及びp.151に記載の材料を用いることができる。同p.158及びp.159に記載のフッ素変性したフルオロアルキル基を有するアクリレート、メタクリレートや含フッ素のエポキシ系の感光性樹脂を用いることもできる。
【0046】
また少なくとも未加硫ゴム、重合性二重結合を有する単量体及び重合開始剤からなる光重合性ゴム組成物、いわゆる感光性エラストマーといわれているもの(例えば特開昭51−106501号公報及び特開昭47−37521号公報を参照)、並びに、発インク性とのバランスが必要であるもののジアルキルシリコン系樹脂の使用が可能である。
【0047】
熱可塑性樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、環状ポリオレフィン樹脂(COP)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルペンテン(TPX)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PSt)、塩化ビニル(PVC)、塩化ビニリデン(PVDC)、アクリロニトリル/スチレン(AS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)、フッ素系樹脂としてフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン/ノルボルネン共重合体等のフッ素化ポリオレフィン、含フッ素アクリル樹脂、含フッ素ポリイミド樹脂、含フッ素ビニルエーテル樹脂等が挙げられ、これら以外でも熱により加工できるものであれば使用でき、例えば三羽忠広著、「基礎合成樹脂の科学」、技報堂出版(株)、1987年6月15日、p.113‐p.397、各論 1.重合型樹脂 2.縮合型樹脂 に記載の熱可塑性樹脂を使用しても良い。
【0048】
熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル、不飽和ポリウレタン、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリレート、不飽和メタクリレートの樹脂又はこれらの各種変性物を少なくとも1種、重合性二重結合を有するエチレン性不飽和単量体、及び熱重合開始剤を含むラジカル重合性樹脂組成物や、エポキシに硬化剤を添加した樹脂組成物、シリコン系のポリジメチルシロキサン系樹脂等を使用しても良い。フッ素系樹脂としては、架橋材や熱によりラジカルの発生する重合開始剤を含むフッ素モノマーや含フッ素オリゴマーを用いた熱硬化性樹脂を使用しても良い。これ以外にも例えば三羽忠広著、「基礎合成樹脂の科学」、技報堂出版(株)、1987年6月15日、p.240−p.397、各論 2.縮合型樹脂 に記載の熱硬化性樹脂を使用しても良い。
【0049】
ゴム系材料としては、天然ゴム、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ブチル、エチレンプロピレン、スチレンブタジエン、ポリイソブチレン、スチレンブタジエン、ニトリル、アクリル、エピクロルヒドリン、ウレタン、シリコン、フッ素系ゴムを使用しても良い。
【0050】
以上に記した方法や材料を用いることにより、本発明に係る印刷用凸版を製版することができる。
【0051】
本発明の印刷用凸版は、支持体上に上述のような各種樹脂を用いて版を形成したものである。支持体としては、寸法変化が小さく、版胴に巻きつけて使用する場合が多いという使用態様に適合するように版胴の径に合わせて曲げることが可能であることが好ましい。具体的には、PET基板等のプラスチック基板、アルミ基板、ステンレス(SUS)基板、各種金属基板等が挙げられる。特に寸法変化が小さくさびにくい点でガラス複合プラスチック基板及びSUS基板が好ましい。また、本発明の印刷用凸版は、シート状だけでなく、ロール状のシームレス版でも良い。ロール状の場合には、取り付け時に曲げることは考慮する必要はない。よって、ロールの素材としては特に限定はないが、寸法変化の小さいものが良い。
【0052】
本発明は、上述したような本発明に係る印刷用凸版を、レリーフを外側に向けた状態で円筒形とし、該レリーフの頂面に粘度が0.2Pa・S以下のインクを供給し、円筒軸を中心に転動させることによって被印刷体に対してインクを転写する工程を含み、該転写を、レリーフと被印刷体との押し込み量が100μm以下となる印圧で行なうことを特徴とする印刷方法をも提供する。以下、本発明の印刷方法の実施の形態の例について説明する。
【0053】
まず本発明の印刷方法に使用できる印刷機について説明する。図7は、本発明において使用できる印刷機の例を示す図である。印刷機としては、例えば市販されている図7に示す方式のものを用いることができる。これは一例であり、この方式に限定されるものではない。印刷は以下のようにして行なう。図7に示した方式の印刷機を使用し、凹凸を設けたアニロックスロール11とドクターブレード12が合わさっている上にインク2を置き、アニロックスロール11が回転することによってインクが計量される。次にアニロックスロール11と版胴14に巻かれた版13とが接触すると、レリーフの先端である頂面にインクが付着する。この状態で版13を基板4に押し付けインクを転写する。その後、インクのレベリングが進み、均一化する。図8は、本発明の印刷方法について説明する断面図であり、印刷時における版の部分を拡大断面図として示す。図8中、(a)はインクが展開されたアニロックスプレート上に版が押し付けられた状態、(b)はレリーフ先端にパターン形成用インクが供給された状態、(c)は版を基板へ押し付けた状態、(d)は版を基板から離すことにより転写を終えた状態、(e)はインクがレベリングした状態を示す。印刷機のアニロックスロール11上に展開されたインク2が、図8(a)のように版13のレリーフ1の先端面である頂面とアニロックスロール11とに接触し、次に図8(b)のように版13のレリーフ1の頂面にインク2が移され、その後、図8(c)、(d)及び(e)に示すようにして基板4にパターン15が転写される。ただし、図8に示した転写方法は一例であり、微小窪みにインクが充填されずにパターンが転写される方法も可能である。
【0054】
本発明に係る印刷用凸版では、マージナルをより抑制するため、版構成を多層構成としてもよい。図9は、本発明に係る印刷用凸版のレリーフ断面形状を示す断面図であり、単層構成及び多層構成の態様を示す。図9中、(a)は単層版を示す。(b)は硬度差を設けた2層構成(低硬度層1a,及び高硬度層1b)の多層版を示す。(c)は(b)と同じく硬度差を設けた2層構成(低硬度層1a,及び高硬度層1b)であるが、レリーフの頂面と低硬度層1aとがなす角度を、レリーフの頂面と高硬度層1bの側面とがなす角度よりも鋭角にした(すなわちショルダー差を設けた)2層構造の多層版を示している。なお(c)は、レリーフ先端の角度(レリーフの頂面とレリーフ側面とがなす角度)が(b)の形態よりも鋭角に構成された版を示している。(d)はショルダー角10(ベース部7(すなわち基部層)とレリーフ側面とがなす角度)が設定された単層版を示す。(e)はレリーフ層1(低硬度層1a及び高硬度層1b)とベース層との3層構造の多層版を示す。即ち、版構成を多層構成とする態様としては、凸版のレリーフを多層化する形態(例えば図9(b)及び(c))と、レリーフ層1とベース層(ベース部7)とで多層化する形態(図9(e))があり、さらにこれらを併用しても良い。版から転写されたインク皮膜の均一性を高めるには、図9(b)及び(c)に示すように、インクが着肉するレリーフ上部を低硬度(低圧縮モジュラス)層とすることが好ましい。
【0055】
マージナルをさらに抑制する方法としては、図9(c)に示すようにレリーフ先端の角度をより鋭角とする技術が適用出来る。この場合、レリーフの断面形状が、図9(c)に示すような上記ショルダー差を有し、下層部のショルダー角が小さい多層レリーフ構成を有することは、レリーフの傾倒を防ぐことができる点で好ましい。同様に、図9(d)に示すように、レリーフ形状が富士山のように拡がった、即ちショルダー角10の小さい単層版も可能である。
【0056】
更に、上記では印刷方式として樹脂版によるフレキソ方式を例に挙げて説明したが、本発明は、典型的なフレキソ印刷のみならず他の凸版印刷方式、例えば凸版オフセット印刷方式の凸版についても同様に実施可能である。
【0057】
以上に記した方法でマージナルが抑制されることによって、より近接したパターンを独立して形成できるようになる。前述したように、図2の概略図には、従来技術のパターン(a)と本発明のパターン(b)とのパターン再現性を比較して示している。従来はマージナルによって、パターン同士を近づけるとパターンとパターンが繋がってしまう場合があったが(図2(a))、本発明ではマージナルの低減によりパターン同士の繋がりを抑制でき(図2(b))るため、従来と比較してパターン間隔をより狭めることができる。すなわち、上述した本発明の態様から明らかなように、本発明によれば、レリーフ周囲へのインクのはみ出しが抑制され、マージナルが抑えられる。従って、パターンとパターンの間隔をより狭くすることが可能となる。
【0058】
本発明の印刷方法において、インク粘度が0.2Pa・S以下の場合、従来の凸版印刷では、均一な厚膜の形成が困難であったが、本発明の印刷用凸版を用いることにより、インクがレリーフの特定の開口面積の窪みに入ることで、インクの転写量が確保できる。よって、従来の凸版よりも均一な厚膜が可能となる。この効果は、前述したように複数個の窪みの開口面積の合計が、レリーフの頂面の面積に対して、30%以上65%未満の割合である場合により顕著に表れ、さらに35%以上60%以下の割合の時に効果が一層顕著となる。結果として、印刷時におけるインク粘度の設計範囲を広げ、印刷物の特性の向上に繋がる。また、版材とインクの表面自由エネルギーを調整することにより、印刷の安定性を向上することも可能である。さらにインクの固形分濃度を調整することで、所望の乾燥後の膜厚を得て印刷物の膜厚を調節することができる。また、レリーフ頂面の窪みが印刷時のインクの逃げ場として機能して印刷が行なわれる場合、すなわち微小窪みにインクをすべて充填させない場合は、インク粘度が0.2Pa・S以下において、レリーフ頂面の複数個の窪みの開口面積の合計が、レリーフの頂面の面積に対して、40%以上60%未満の割合の場合に線太り抑制効果並びにパターンの欠損率の低下効果が顕著である。さらに好ましくは、インクの粘度は0.1Pa・S以下である。
【0059】
次に、本発明に係る印刷用凸版を使用して形成される印刷物について述べる。印刷物としては、例えば、有機EL素子、有機薄膜太陽電池、トランジスタ、電極、配線等がある。
【0060】
本発明に係る印刷用凸版を用いて上記の印刷物を印刷する方法を具体的に説明する。本発明に係る印刷方法は、本発明に係る印刷用凸版を被印刷体(基板)に押し当てて印刷を行う工程を含む凸版印刷方法であり、印刷用凸版を円筒形の版胴の外周面に配置し、該版胴を転動させることによって、被印刷体に対して転写を行なう転写工程において、転写時のレリーフと被印刷体との押し込み量が100μm以下となる印圧で印刷する。該押し込み量が100μmよりも高くなる印圧の場合、レリーフがつぶれてしまい、窪みの効果が小さくなり、マージナルや均一性に問題が生じる場合がある。該押し込み量が100μm以下となる印圧を用いることは、特に粘度が0.2Pa・S以下のインクを使用する場合において大きな効果を発揮する。
【0061】
印刷物の製造方法の例としてトランジスタの製造方法について説明する。まず基板の上にゲート電極及び配線に相当する導電性のパターンを、印刷用凸版を用いて印刷して作製する。導電性パターン形成用のインクとしては金属微粒子を分散させたものや導電性のポリマー等を用いることができる。次に、形成したパターン上の所定の位置に合わせ、トランジスタのゲート絶縁膜に相当するパターンを印刷する。印刷用凸版は絶縁膜のパターンに相当するものに交換しておく。以後パターンを変更するたびに版を変更する。ゲート絶縁膜形成用のインクとしては有機系の材料を溶剤に溶解したものや無機系の塗布材料、例えばポリシラザン系の材料等が使用可能である。次に所定の位置にソース電極とドレイン電極及びこれらに接続される配線を形成する。次にソース電極とドレイン電極とを跨るように半導体のパターンを形成する。半導体パターン形成用のインクとしては溶剤に可溶なポリチオフェン系誘導体やポリアセン系等の有機半導体が使用可能である。次いで素子を保護するため、これらのパターンを覆うように保護膜パターンを形成する。保護膜の材料としては高分子の樹脂材料等を溶剤に溶解させたものが使用可能である。
【0062】
また、印刷物の別の例として有機EL素子について説明する。有機EL素子はディスプレイや照明用途にて用いられる。有機EL素子は有機物を陽極と陰極とで挟み込んだ構造をとっている。その中で本発明の印刷用凸版と印刷方法を用いる工程としては、電極形成時並びに電極に挟み込まれた有機物、具体的にはホール注入材料や発光材料を塗布する工程が適している。電極形成方法としては、ガラス基板若しくはプラスチック基板に酸化インジウム・スズ(ITO)等の透明電極を所望のパターンにて印刷する。この透明電極を作製する際に本発明に係る印刷方法を用いてパターンを作製することができる。また、ITO電極の上のホール注入材料及び/又はホール輸送材料、さらにその上の発光材料を形成する場合においても本発明に係る印刷方法を使用することができる。
【0063】
ホール注入材料又はホール輸送材料又はこれら両材料の機能を有するホール注入輸送材料の例としては、芳香族アミン系材料、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)等のフタロシアニン系錯体、アニリン系共重合体、ポリフィリン系化合物、イミダゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、さらにアントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン等のアセン系化合物等が挙げられる。また、これらのアセン系化合物の誘導体、すなわち、上記アセン系化合物にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、ケトン基、エステル基、エーテル基、アミノ基、ヒドロキシ基、ベンジル基、ベンゾイル基、フェニル基、ナフチル基等の置換基を導入した誘導体や、上記アセン系化合物のキノン誘導体等も挙げられる。
【0064】
また、ポリアニリン、ポリビニルアントラセン、ポリカルバゾール、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリフルオレン、ポリ(エチレンジオキシ)チオフェン/ポリ(スチレンスルフォン酸)(PEDOT/PSS)、チオフェン−フルオレン共重合体、フェニレンエチニレン−チオフェン共重合体、ポリアルキルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、その他、チオフェン系化合物等の高分子系正孔注入材料又は高分子系正孔輸送材料等も挙げられる。
【0065】
発光材料としては、ポリ(パラ−フェニレンビニレン)、ポリ(チオフェン)、ポリ(フルオレン)又はこれらの誘導体等の高分子系発光材料を挙げることができる。また、トリス(8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体(BeBq2)、フェナントロリン系ユウロピウム錯体(Eu(TTA)3(phn))、ペリレン、クマリン誘導体、キナクリドン、イリジウム錯体(Ir(ppy)3、Firpic、Ir(ppy)2(acac))といった蛍光材料や燐光材料等を挙げることができる。
【0066】
これらは、ホール若しくは電子輸送性又はその両方を有するホスト材料に少量ドープして用いてもよい。そのようなホスト材料としては4,4’−ビス(9−カルバゾール)ビフェニル(CBP)、2,7−ジ−9−カルバゾリル−9,9’−スピロビフルレン(spiro−CBP)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)等が挙げられる。
【0067】
本発明の印刷方法を用いる場合は、上記の各種材料(例えば、ホール注入材料、ホール輸送材料、発光材料、有機半導体材料等)を各種溶媒に分散若しくは溶解させて使用する。その時の溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン(デカリン)、テトラリン等の炭化水素類等が挙げられる。
【実施例】
【0068】
以下に本発明の印刷用凸版を実施例により詳細に説明する。なお、本発明は実施例により制限されるものではない。実施例においては、印刷用凸版は、光により形成する方法によって製造したが、型から複製する方法又は彫刻により形成する方法を採用してもよい。図10及び11は、ライン/スペースの形状と窪みの形状を示す図である。
【0069】
[実施例1]
図10のようなライン/スペース(L/S 200μm/400μm、長さ20mm)形状において、光透過部の中に微小窪みに対応する四角形の遮光部を等間隔に有する厚さ2.3mmの石英クロムマスクを用意した。石英クロムマスク表面をUV洗浄装置にて処理した後、窒素雰囲気下でHMDS(1,1,1,3,3,3−Hexamethyldisilazane)(1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン)の気流処理を20分間行なった。この石英クロムマスク表面にポジ型感光性樹脂をスピンコーターによって乾燥後厚みが10μmになるように塗布、風乾後、110℃、7分加熱処理を行なった。ポジ型感光性樹脂は東京応化社製PMER(P−LA300PM)を用いた。次にオーク社製平行光露光装置を用いて石英クロムマスク側から露光、ディップ現像(現像液P−7G)を行ない、風乾後、さらに110℃、5分加熱処理を行なった。この石英クロムマスク上に形成した樹脂モールド上に、離型剤として旭硝子社製サイトップ(CTX−809AP2)の4wt%液をスピンコーターにより、乾燥後厚みが0.5μmになるように塗布し、110℃で10分乾燥させた。得られた離型剤処理された樹脂モールド上に、旭化成ケミカルズ社製ネガ型液状感光性樹脂APR−G31(ポリエステル系樹脂)を100μmの厚みになるようにナイフコーターを用いて塗布した後、塗布上面にベースフィルムとして厚み150μmのステンレスシート(SUS304)をラミネートした。尚、ステンレスシートは信越化学工業社製シランカップリング剤(KBM−503)により表面処理したものを用いた。露光は石英クロムマスク側からオーク社製平行光露光装置を用いて500mj/cm2で行なった。樹脂モールドからベースフィルムを剥離し、0.1wt%炭酸ナトリウム溶液と界面活性剤からなる洗浄液で洗浄し、後露光を行ない、100μm厚のレリーフ上の先端に、深さ10μmの微小窪みを複数有するL/Sパターンの印刷版1を得た。
【0070】
[実施例2乃至7]
実施例1に使用したマスクパターンのライン/スペース(L/S 200μm/400μm、長さ20mm)形状において、光透過部の中の微小窪みに対応する四角形の遮光部の大きさと個数を変更した以外は実施例1と同様にして印刷版2乃至7(実施例2乃至7)を得た。
【0071】
[実施例8]
実施例1において、図11のようなライン/スペース(L/S 200μm/400μm、長さ20mm)形状において、光透過部の中に微小窪みに対応する円形の遮光部を等間隔で複数有する厚さ2.3mmの石英クロムマスクを用いた以外は実施例1と同様にして印刷版8を得た。
【0072】
[実施例9乃至11]
実施例1に使用したマスクパターンのライン/スペース(L/S 200μm/400μm、長さ20mm)形状において、光透過部の中の微小窪みに対応する四角形の遮光部の大きさと個数を変更した以外は実施例1と同様にして印刷版12乃至14(実施例9乃至11)を得た。
【0073】
[実施例12乃至17]
実施例1と同様の作製方法にて、印刷版No.1の微小窪みの深さを1μmに変更した印刷版15(実施例12)を得た。同様に印刷版2の微小窪みの深さを1μmに変更した印刷版16(実施例13)を得た。同様に印刷版3の微小窪みの深さを1μmに変更した印刷版17(実施例14)を得た。同様に印刷版12の微小窪みの深さを1μmに変更した印刷版18(実施例15)を得た。同様に印刷版13の微小窪みの深さを1μmに変更した印刷版19(実施例16)を得た。同様に印刷版14の微小窪みの深さを1μmに変更した印刷版20(実施例17)を得た。
【0074】
[比較例1及び2]
実施例1において、マスクパターンのライン/スペース(L/S 200μm/400μm、長さ20mm)形状において、光透過部の中の微小窪みに対応する遮光部の大きさと個数を変更させることによって印刷版9(比較例1)及び印刷版10(比較例2)を得た。
【0075】
[比較例3]
旭化成ケミカルズ社製ネガ型液状感光性樹脂APR−G31(ポリエステル系樹脂)を100μmの厚みになるようにナイフコーターを用いて塗布した後、塗布上面にベースフィルムとして厚み150μmのステンレスシート(SUS304)をラミネートした。尚、ステンレスシートは信越化学工業社製シランカップリング剤(KBM−503)により表面処理したものを用いた。露光は石英クロムマスク側からオーク社製平行光露光装置を用いて500mj/cm2で行なった。樹脂モールドからベースフィルムを剥離し、0.1wt%炭酸ナトリウム溶液と界面活性剤からなる洗浄液で洗浄し、後露光を行ない、100μm厚のレリーフを有するL/Sパターンの微小窪みを有していない印刷版11を得た(L/S 200μm/400μm、長さ20mm)。
【0076】
[比較例4]
比較例1と同様の作製方法にて、印刷版9の微小窪みの深さを1μmに変更した印刷版21を得た。
【0077】
[実施例と比較例のまとめ]
得られた実施例の印刷版1乃至8、印刷版12乃至14及び比較例の印刷版9及び10のレリーフ上の先端にある窪みの開口部の形状、開口径及び1個あたりの開口部の面積と、レリーフ先端にある窪みの個数分布及び開口部の面積率(開口部の総面積/レリーフ先端の面積×100)を表1に示す。なお表中に示す窪みの径は、窪み形状が□型(開口形状が正方形)の場合は該正方形の1辺の長さ、○型(開口形状が円)の場合は該円の直径である。尚、窪み開口部1個に関する値は10個の平均値であるが、変動率はすべて±5%以内であった。又、図12は、印刷用凸版及びレリーフ頂面の顕微鏡観察結果を示す図面代用写真である。左の画像はレリーフの頂面の正面視画像、右の画像はその拡大画像であり、窪み形状が四角柱状に抜けた穴(有底)である。上段は実施例1(印刷版1)、中段は実施例2(印刷版2)、下段は比較例1(印刷版9)にそれぞれ対応する。
【0078】
【表1】
【0079】
[印刷実験1]
実施例の印刷版1及び2並びに比較例の印刷版9、10及び11を用いて、印刷実験を行った。印刷条件としては、得られた印刷版を日本電子精機社製精密印刷機に両面テープで取り付け、インクテック社製UVインク(粘度1.0Pa・S/TV−33型粘度計を使用し、25℃にて測定)をガラス基板に、押し込み量が90μmの印圧と押し込み量が190μmの印圧との設定で印刷し、紫外線ランプでUVインクを硬化した。
【0080】
押し込み量が90μmの印圧の場合の結果を示す。膜厚均一性とマージナルについて光学顕微鏡(デジタルマイクロスコープVHX−900/株式会社キーエンス)並びに光干渉を用いた顕微鏡(Vert Scan2.0/株式会社菱化システム)にて評価したところ、印刷後の印刷版1の線幅が225μm、印刷版2の線幅が222μm、印刷版11の線幅が238μmであった。レリーフ上に微細な窪みを設けるという表面加工をすることで線太りの抑制効果が確認された。また、印刷版9及び10を用いた印刷では、印刷物を観察すると、均一にインクが転写されず、窪みの形状が印刷物に現われてしまい、均一な膜が得られなかった。また、印刷物にインクが塗れていない箇所があった。
【0081】
押し込み量が190μmの印圧の場合には、印刷版1の線幅が231μm、印刷版2の線幅が226μmであった。よって、印圧が高くなると線太りも大きくなることが分かった。さらに印圧が高い方が膜厚の均一性にも大きなばらつきが生じた。
【0082】
[印刷実験2]
実施例の印刷版1、2、3、12、13及び14並びに比較例の印刷版9及び11を用いて、印刷実験を行った。これらは同時印刷にて評価した。印刷方法としては、得られた印刷版を日本電子精機社製精密印刷機にテープで取り付け、印刷時の押し込み量が30μmとなる印圧にて印刷を行なった。印刷時のアニロックスロールは550線/インチを使用した。印刷に用いたインクはアルバックマテリアル(株)社製Agナノメタルインク(L−Ag1TeH/粘度12mPa・S)である。また、印刷基板としては、無アルカリガラスを使用し、銀インクを印刷後、150℃にて30分間熱養生し、薄膜を作製した。得られた薄膜を光学顕微鏡(デジタルマイクロスコープVHX−900/株式会社キーエンス)を用いて観察した。印刷後の結果、得られた線幅の値を表2に示す。また、均一性については実施例の印刷版1、2、3、12、13及び14ではきれいな薄膜が形成されたが、比較例の印刷版9ではライン上にインクが塗れていない箇所(欠陥)が目立ち、均一性が悪かった。また、印刷版2及び11はラインの線太りが大きかった。よって、ラインの均一性が良く、線太りが抑制されているものは、印刷版1、3、12、13及び14である。
【0083】
【表2】
【0084】
図13及び14は、窪みの面積率(%)とライン幅との関係を示す図である。表1及び表2の値から、開口部の面積率と線幅との関係をグラフにすると図13に示す通りとなる。ここで、同じ面積率を有する印刷版2と印刷版12とを比較すると、印刷版12の方が線太りは小さい。よって、同じ面積率の場合は、微小窪みの1個の面積が大きい方が線太りの抑制効果が高い。また、ほぼ同じ面積率を有している印刷版1と印刷版3とを比較すると、微小窪みの1個の面積が大きい印刷版3の方が若干線太りは小さいが、いずれも良好な印刷性が得られた。図13において、点線の間(ただし、図中、点線端部の黒丸印は該印が接している点線上を上記「点線の間」の範囲に含むことを示し、白丸印は該印が接している点線上を上記「点線の間」の範囲に含まないことを示す。なお図14においても同様である。)が微小窪みの1個の面積によらず良好な印刷ができる印刷版の範囲である。すなわち、レリーフの頂面に複数個設けた窪みの開口面積の合計が、上記レリーフの頂面の面積に対して、40%以上60%未満の割合の場合において良好な印刷性が得られた。ただし、同じ開口部の面積率の場合、微小窪みの1個の面積が大きい方がより良好な印刷が可能となる。なお、表2の実施例を包含する微小窪みの1個の開口面積が25μm2以上、1600μm2以下の条件を満たせば、レリーフの頂面に複数個設けた窪みの開口面積の合計が、上記レリーフの頂面の面積に対して、40%以上60%未満の割合の場合において特に良好な印刷性が得られ、さらに同じ開口部の面積率の場合、微小窪みの1個の面積が大きい方がより良好な印刷が可能であることも確認された。
【0085】
[印刷実験3]
実施例の印刷版15、16、17、18、19及び20並びに比較例の印刷版11及び21を用いて、印刷実験を行なった。なお、印刷版11については、表2の評価で使用した印刷版11の印刷版と同等の印刷版を別途準備して、印刷実験3を行なった。これらは、同時印刷にて評価した。印刷方法としては、得られた印刷版を日本電子精機社製精密印刷機にテープで取り付け、印刷時の押し込み量が30μmとなる印圧にて印刷を行なった。印刷時のアニロックスロールは550線/インチを使用した。印刷に用いたインクはアルバックマテリアル(株)社製Agナノメタルインク(L−Ag1TeH/粘度12mPa・S)である。また、印刷基板としては、無アルカリガラスを使用し、銀インクを印刷後、150℃にて30分間熱養生し、薄膜を作製した。得られた薄膜を光学顕微鏡(デジタルマイクロスコープVHX−900/株式会社キーエンス)を用いて観察した。印刷後に得られた線幅の値を表3に示す。また、均一性の結果としては、印刷版15、16、17、18、19及び20ではきれいな薄膜が形成されたが、印刷版21ではライン上にインクが塗れていない箇所(欠陥)が目立ち、均一性が悪かった。また、印刷版16及び11はラインの線太りが大きかった。よって、ラインの均一性が良く、線太りが良好に抑制されているものは、印刷版15、17、18、19及び20である。
【0086】
【表3】
【0087】
表1及び表3の値から、開口部の面積率と線幅との関係をグラフにすると、図14に示す通りとなる。ここで、同じ面積率を有する印刷版16と印刷版18とを比較すると、印刷版18の方が線太りは小さい。よって、同じ面積率の場合は、微小窪みの1個の面積が大きい方が線太りはより良好に抑制できる。また、ほぼ同じ面積率を有している印刷版15と印刷版17とを比較すると、微小窪みの1個の面積が大きい印刷版17の方が若干線太りは小さいが、いずれも良好な印刷性が得られた。図14において、点線の間(ただし、図中、黒丸印の点線上は含み、白丸印の点線上は含まれない。)が微小窪みの1個の面積によらず良好な印刷ができる印刷版の範囲である。すなわち、レリーフの頂面に複数個設けた窪みの開口面積の合計が、上記レリーフの頂面の面積に対して、40%以上60%未満の割合の場合において良好な印刷性が得られた。ただし、同じ開口部の面積率の場合、微小窪みの1個の面積が大きい方がより良好な印刷が可能となる。なお、表3の実施例を包含する微小窪みの1個の開口面積が25μm2以上、1600μm2以下の条件を満たせば、レリーフの頂面に複数個設けた窪みの開口面積の合計が、上記レリーフの頂面の面積に対して、40%以上60%未満の割合の場合において特に良好な印刷性が得られ、さらに同じ開口部の面積率の場合、微小窪みの1個の面積が大きい方がより良好な印刷が可能であることも確認された。
【0088】
[印刷実験4]
・インク粘度の影響について
実施例の印刷版2と比較例の印刷版11とを用いて、印刷実験を行なった。印刷に用いたインクは、ハリマ化成(株)製の銀インク(NPSの分散媒をテトラデカンに変更したインク、粘度を50mPa・Sと210mPa・Sに設定)である。印刷機としては日本電子精機社製精密印刷機を用いた。印刷方法は、アニロックスロール550線/インチを用い、アニロックスロールから印刷版へインキングを行ない、印刷版からワークへインクを転写した。ワークへの転写時の印圧は、押し込み量で定義し、押し込み量は定盤の高さで調整した。本実験では、押し込み量50μmで行なった。基板としてガラス基板を用い、印刷後220℃にて30分乾燥した。評価は光干渉を用いた顕微鏡(Vert Scan2.0/株式会社菱化システム)を使用した。
【0089】
図15は、インク粘度と線幅増加率との関係を示す図であり、図16は、インク粘度と膜の均一性との関係を示す図である。上記の結果を、横軸にインク粘度(mPa・S)、縦軸に線幅増加率(%)をとってプロットした結果は図15に示す通りである。また、横軸には線幅増加率(%)を、縦軸には膜の均一性を評価するために(端部の膜厚)/(中央の膜厚)の比をとってプロットした結果は図16に示す通りである。ここで線幅増加率とは{((印刷物の線幅)−(印刷版の線幅))/(印刷版の線幅)}×100(%)のことである。つまり、この結果からどれくらい線太りをするか分かる。この結果から、印刷版2と印刷版11とを比較すると、粘度が210mPa・Sの場合では、印刷版2は線太りが抑制され、印刷結果は良好である。また、粘度が50mPa・Sと210mPa・Sとの場合を比較すると、粘度が50mPa・Sの場合の方が線太りの抑制効果が高く、膜の均一性も高い。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、例えばエレクトロニクス、フォトニクス、バイオエレクトロニクス等に関連する微細なパターンの作製を凸版印刷法で実施する場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】凸版印刷に使用する凸版印刷版と転写時の課題を示す図であり、(a)は凸版印刷版を示す断面図、(b)はインクを基板へ押し付けた状態を示す断面図、(c)は基板へ転写されたインクを示す基板の平面図である。
【図2】印刷されたパターンの状態を示す概略図であり、(a)は従来技術のパターンにおいてマージナルが大きいためパターンが繋がった状態を示し、(b)は本発明のパターンにおいてマージナルが改善されパターンが分離された状態を示す。
【図3】本発明に係る印刷用凸版の一形態を示す概略図であり、(a)はレリーフ断面の一形態を示す断面図であり、(b)はレリーフの頂面を示す平面図である。
【図4】本発明における窪みの形成態様の例を示す概略図であり、レリーフ上に窪みが複数個形成され、その形成された領域がレリーフ先端部分の全域にわたり、窪みがレリーフ端部に掛かって形成されていないことを示しており、(a)は窪みの開口形状が円形でその配列方向とレリーフ端部の方向とが一致している場合を示す平面図、(b)は窪みの開口形状が四角形でその配列方向とレリーフ端部の方向とが一致している場合を示す平面図、(c)はレリーフ端部と窪みとが重なる場合に、窪みのレリーフ端部側においてレリーフ端部形状に沿った窪み形状を示す平面図である。
【図5】本発明における窪みの形成態様の例を示す概略図であり、窪みが千鳥配列である形態を示しており、(a)は窪み形状が円形の場合の千鳥配列を示す平面図、(b)は窪み形状が四角形の場合の千鳥配列を示す平面図、(c)はレリーフの断面形状の他形態を示す断面図である。
【図6】本発明における窪みの形成態様の例を示す概略図であり、レリーフ周辺のインク密度を下げるために窪みの大きさ若しくは窪みの深さで調整した例を示しており、(a)は周辺部の窪みの大きさを小さくした場合を示す平面図、(b)は周辺部の窪みの深さを浅くした場合を示す断面図である。
【図7】本発明において使用できる印刷機の例を示す図である。
【図8】本発明の印刷方法について説明する断面図であり、(a)はインクが展開されたアニロックスプレート上に版が押し付けられた状態、(b)はレリーフ先端にパターン形成用インクが供給された状態、(c)は版を基板へ押し付けた状態、(d)は版を基板から離すことにより転写を終えた状態、(e)はインクがレベリングした状態を示す。
【図9】本発明に係る印刷用凸版のレリーフ断面形状を示す断面図であり、(a)は単層版、(b)は硬度差を設けた2層構造の多層版、(c)はショルダー差を設けた2層構造の多層版、(d)はショルダー角10が設定された単層版、(e)はレリーフ層とベース層との3層構造の多層版、を示す。
【図10】ライン/スペースの形状と窪みの形状を示す図である。
【図11】ライン/スペースの形状と窪みの形状を示す図である。
【図12】印刷用凸版及びレリーフ頂面の顕微鏡観察結果を示す図面代用写真である。左の画像はレリーフの頂面の正面視画像、右の画像はその拡大画像であり、窪み形状が四角柱状に抜けた穴である。上段は実施例1(印刷版1)、中段は実施例2(印刷版2)、下段は比較例1(印刷版9)にそれぞれ対応する。
【図13】窪みの面積率(%)とライン幅との関係を示す図である。
【図14】窪みの面積率(%)とライン幅との関係を示す図である。
【図15】インク粘度と線幅増加率との関係を示す図である。
【図16】インク粘度と膜の均一性との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1 レリーフ
1a 低硬度層
1b 高硬度層
2 インク
3 マージナル
4 基板
5 マージナルがない場合のパターン
6 マージナルにより広がったパターン
7 ベース部
8 頂面
9 窪み
10 ショルダー角
11 アニロックスロール
12 ドクターブレード
13 版
14 版胴
15 パターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸版のレリーフの頂面に供給されたインクを被印刷体へ転写する凸版印刷に用いる凸版において、前記レリーフの頂面に、開口面積が25μm2以上、1600μm2以下の窪みを複数個設けたことを特徴とする印刷用凸版。
【請求項2】
前記レリーフの頂面に複数個設けた窪みの開口面積の合計が、前記レリーフの頂面の面積に対して、30%以上65%未満の割合であることを特徴とする請求項1に記載の印刷用凸版。
【請求項3】
前記レリーフの頂面に複数個設けた窪みの開口面積の合計が、前記レリーフの頂面の面積に対して、40%以上60%未満の割合であることを特徴とする請求項1に記載の印刷用凸版。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の印刷用凸版を、前記レリーフを外側に向けた状態で円筒形とし、前記レリーフの頂面に粘度が0.2Pa・S以下のインクを供給し、円筒軸を中心に転動させることによって被印刷体に対して前記インクを転写する工程を含み、
前記転写を、前記レリーフと前記被印刷体との押し込み量が100μm以下となる印圧で行なうことを特徴とする、印刷方法。
【請求項1】
凸版のレリーフの頂面に供給されたインクを被印刷体へ転写する凸版印刷に用いる凸版において、前記レリーフの頂面に、開口面積が25μm2以上、1600μm2以下の窪みを複数個設けたことを特徴とする印刷用凸版。
【請求項2】
前記レリーフの頂面に複数個設けた窪みの開口面積の合計が、前記レリーフの頂面の面積に対して、30%以上65%未満の割合であることを特徴とする請求項1に記載の印刷用凸版。
【請求項3】
前記レリーフの頂面に複数個設けた窪みの開口面積の合計が、前記レリーフの頂面の面積に対して、40%以上60%未満の割合であることを特徴とする請求項1に記載の印刷用凸版。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の印刷用凸版を、前記レリーフを外側に向けた状態で円筒形とし、前記レリーフの頂面に粘度が0.2Pa・S以下のインクを供給し、円筒軸を中心に転動させることによって被印刷体に対して前記インクを転写する工程を含み、
前記転写を、前記レリーフと前記被印刷体との押し込み量が100μm以下となる印圧で行なうことを特徴とする、印刷方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図12】
【公開番号】特開2009−286113(P2009−286113A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302987(P2008−302987)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】
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