説明

印刷用紙への転写方法及び転写装置

【課題】印刷用紙の所定位置に確実に模様を転写することができる印刷用紙への転写方法及び転写装置を提供する。
【解決手段】印刷用紙を搬送するとともに転写用フィルム5を搬送し、該転写用フィルム5の模様を該印刷用紙2に転写することを繰り返し行う転写部Fを備えた印刷用紙への転写装置であって、前記印刷用紙2の所定位置に前記転写用フィルム5の模様を転写するために、該転写用フィルム5のテンションを調整するテンション調整手段Tとを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷された印刷用紙に、転写用フィルムを押し付けることにより、金箔、エンボス模様やホログラム模様等を転写して印刷面の付加価値を高める技術に関し、より具体的には、転写時に転写用フィルムの模様を印刷用紙の所定位置に転写するための印刷用紙への転写方法及び転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように印刷された印刷用紙に付加価値を付ける艶出し装置が提案されている。これは、印刷ユニットにて印刷された印刷用紙に紫外線硬化型樹脂ワニス(ニスとも言う)を塗布するニスユニットと、このニスユニットにてニスが塗布された印刷用紙に転写用フィルムを押し付けて転写用フィルムの模様を転写するためのエンドレスタイプのホログラム形成ユニットとを備えて、連続して搬送されてくる各印刷用紙の表面に、エンドレスに移動している転写用フィルムのホログラム面が型押しされて、模様が印刷用紙に転写されるように構成している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−315229号公報(図1及び図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1の艶出し装置によれば、印刷用紙が搬送されてくる度に、エンドレスに巻かれた転写用フィルムを押し付ける構成であることから、印刷用紙に転写される転写用フィルムの模様の位置を所定位置に合わせるような構成を備えていないことから、印刷用紙の所定位置に模様を転写することや、全ての印刷用紙の同一箇所に模様を転写することができない不便なものであった。
因みに、大まかに転写位置を手動タイミングにて決めた状態で、多数枚の印刷用紙に転写用フィルムの模様をほぼ同一箇所に転写することも考えられるが、時間経過とともに印刷用紙に転写される位置が変化してしまうことがあり、これを修正する手段がなく、非常に使用し難いものであり、改善の余地があった。
【0004】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、印刷用紙の所定位置に確実に模様を転写することができる印刷用紙への転写方法及び転写装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、印刷用紙を搬送するとともに転写用フィルムを搬送し、該転写用フィルムの模様を該印刷用紙に転写することを繰り返し行う印刷用紙への転写方法であって、前記印刷用紙の所定位置に前記転写用フィルムの模様を転写するために、該転写用フィルムのテンションを調整することにより、該転写用フィルムを搬送方向に伸縮させることを特徴としている。
また、印刷用紙を搬送するとともに転写用フィルムを搬送し、該転写用フィルムの模様を該印刷用紙に転写することを繰り返し行う転写部を備えた印刷用紙への転写装置であって、前記印刷用紙の所定位置に前記転写用フィルムの模様を転写するために、該転写用フィルムのテンションを調整するテンション調整手段を備えた印刷用紙への転写装置であってもよい。
転写用フィルムのテンションを調整することによって、転写用フィルムの搬送速度を速めたり、遅くすることで変更することができるから、搬送されてくる印刷用紙に転写用フィルムの模様を所定位置に転写することができる。
前記印刷用紙に転写される模様は、エンボス模様やホログラム模様の他、金箔を転写するもの等を含むものとする。
【0006】
前記転写用フィルムに所定間隔毎に備えたマークを使用し、前記マークの間隔を検出し、その間隔が所定間隔を外れた場合に、前記テンション調整を行う構成であってもよい。
【0007】
前記転写用フィルムのテンションの調整幅を、該フィルムの伸長側への限界となる上限値と該フィルムが緩んでしまう下限値との間に設定し、該調整幅にて印刷用紙に対する該フィルムの位置合わせができない場合には、該フィルムの送り速度を増減させてもよい。
【0008】
前記転写用フィルムは、所定間隔毎にマークを備え、前記マークの間隔を検出する位置検出手段と、該位置検出手段にて検出された間隔が所定間隔であるか否かを判別する判別手段と、該判別手段にて不一致と判別されたときに、前記テンション調整手段を駆動制御する駆動手段とを備えて、位置検出手段にて検出された間隔が所定間隔でないときに、駆動手段にテンション調整手段を駆動制御してテンション調整が自動で行われるようにしてもよい。
【0009】
前記テンション調整手段は、前記転写用フィルムの送出方向始端側に配置された一対の第1ローラと、該転写用フィルムの送出方向終端側に配置された一対の第2ローラと、それら2つのローラをそれぞれ駆動する電動モータとを備え、前記第1ローラと前記第2ローラとの回転速度差が発生するように前記2つの電動モータを駆動することにより、前記転写用フィルムのテンションを調整する手段で構成されていてもよい。
【0010】
前記テンション調整手段による調整後に、印刷用紙の搬送速度変化に応じて、前記一対の第1ローラの回転速度を変化させるとともに、前記第2ローラの回転速度を該送出ローラの回転速度変化分だけ変化させる同期運転制御手段を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
転写用フィルムのテンションを調整することによって、搬送されてくる印刷用紙に転写用フィルムの模様を所定位置に確実に転写することができるだけでなく、印刷用紙に対する模様の位置がずれた場合でもテンションを調整することで直ちに修正して、印刷用紙の所望位置に確実に模様を転写することができる印刷用紙へのフィルム位置合わせ方法及びその装置を提供することができる。
【0012】
前記転写用フィルムに所定間隔毎に備えたマークを使用し、前記マークの間隔を検出し、その間隔が所定間隔を外れた場合に、前記テンション調整を行うように構成することによって、模様の位置がずれたことを直ちに認識してテンション調整を行って位置修正を行うことができる。
【0013】
調整幅にて印刷用紙に対する該フィルムの位置合わせができない場合には、該フィルムの送り速度を増減させることによって、位置合わせ制御を続行することができ、効率よく転写作業を行うことができる利点がある。
【0014】
前記テンション調整手段は、前記転写用フィルムの送出方向始端側に配置された一対の第1ローラと、該転写用フィルムの送出方向終端側に配置された一対の第2ローラと、それら2つのローラをそれぞれ駆動する電動モータとを備え、前記第1ローラと前記第2ローラとの回転速度差が発生するように前記2つの電動モータを駆動することにより、前記転写用フィルムのテンションを調整する手段で構成されている場合には、例えば一対のローラを転写用フィルムの伸縮方向に操作してテンションを調整する伸縮機構を備えるものに比べて、2つのローラを駆動する電動モータを備える構成の方が、装置の小型化を図ることができる。
【0015】
前記テンション調整手段による調整後に、印刷用紙の搬送速度変化に応じて、前記一対の第1ローラの回転速度を変化させるとともに、前記第2ローラの回転速度を該送出ローラの回転速度変化分だけ変化させる同期運転制御手段を備えている場合には、第1ローラの回転速度の変化に伴って第2ローラの回転速度も同じように変更することができ、印刷用紙の搬送速度が変化しても、転写用フィルムの位置と印刷用紙の位置とがずれることがなく、常に両者の位置を合わせながら転写することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に、印刷用紙の印刷面に樹脂ワニスを塗布して光沢を出し、その上から更に金箔、エンボス模様やホログラム模様等を転写することにより、印刷面を加工することができる転写装置6が組み込まれた印刷機の一例を示している。この印刷機は、紙積み台からフィーダ装置や用紙分離装置等により一枚ずつ枚葉紙2を送り出すための給紙部1と、この給紙部1からの枚葉紙2に5色の印刷を行うための印刷部3と、該印刷部3にて印刷された印刷用紙としての枚葉紙2に紫外線硬化型樹脂ワニス(ニスとも言う)を塗布(コーティング)するワニス塗布部4と、該ワニス塗布部4にて紫外線硬化型樹脂ワニスが塗布された枚葉紙2の紫外線硬化型樹脂ワニス上に復元力を有する伸縮自在な材料(例えばポリエチレンテレフタレート、所謂PETの他、他の材料でもよい)からなる転写用フィルム5を押し付けて該枚葉紙2の表面加工を行うための転写部Fと、該転写部Fにて表面加工された枚葉紙2を排紙するための排紙部7とを備えている。ここでは、5色の印刷が行えるように5台の印刷ユニット8,9,10,11,12を備えた印刷部3としているが、5色以外の色、つまり1色又は2色以上の印刷が行える印刷部であってもよい。又、前記排紙部7は、グリッパを備えるチェーン搬送装置にて構成しているが、この排紙部7のない印刷機であってもよいし、又、印刷機を構成する各部の具体的な構成は図に示されるものに限定されるものではない。又、印刷用紙として枚葉紙を用いているが、連続する長尺な用紙であってもよい。又、前記転写装置6を印刷機に組み込んで使用する他、印刷機に組み込まないで単独で使用するようにしてもよい。
【0017】
前記印刷面に金箔を付着させる場合には、フォイラーと呼ばれる箔押しにて印刷物を押圧することによって、印刷物の糊(ニスでもよい)の付いた部分に基材から金箔が剥がれて付着することになる。前記印刷面に金箔以外のものを付着させる構成であってもよい。
【0018】
前記印刷ユニット8〜12は、印刷用圧胴8A〜12Aを備え、これら印刷用圧胴8A〜12Aの搬送方向上流側のそれぞれには、各印刷用圧胴へ枚葉紙2を渡すための渡し胴8B〜12Bを備えている。尚、前記渡し胴8B〜12Bのうちの搬送方向始端側に位置する径の小さな渡し胴8Bを給紙胴とも言い、この渡し胴8Bとフィーダ装置や用紙分離装置等とから前記給紙部1を構成している。そして、図示していないが、前記胴8A〜12A及び渡し胴9B〜12Bのそれぞれには、送り出されてきた枚葉紙2を爪台と爪とで把持するグリッパを円周方向の2箇所(図2では1箇所のみ図示している。尚、1箇所又は3箇所以上でもよい)に備えている。尚、前記径の小さな渡し胴8Bには、図示していないが、枚葉紙2を爪台と爪とで把持するグリッパを円周方向の1箇所に備えている。又、前記ワニス塗布部4は、紫外線硬化型樹脂ワニスが供給されるニス胴4Aとこれら対抗配置して印刷された枚葉紙2に紫外線硬化型樹脂ワニスを塗布するための圧胴4Bとを備えている。
この圧胴4Bへ枚葉紙2を受け渡すための渡し胴14を備えている。これら胴14,4Bにも図示していないが、前記同様に送り出されてきた枚葉紙2を爪台と爪とで把持するグリッパを円周方向の2箇所(1箇所又は3箇所以上でもよい)に備えている。
【0019】
図1および図2に示すように、前記転写装置6は、前記胴4Bからの枚葉紙2を受け渡すために設けられた渡し胴18から枚葉紙2を受け取る圧胴19と、圧胴19上の枚葉紙2に前記転写用フィルム5を押し付けて転写するためのフィルム転写機構20とを備えている。前記フィルム転写機構20が枚葉紙2の処理を行う処理手段であり、前記フィルム転写機構20は、ワニス塗布部4にて塗布された紫外線硬化型樹脂ワニスを接着剤として利用しながら前記転写用フィルム5を枚葉紙2に押し付けて、転写用フィルム5から枚葉紙2に金箔、エンボス模様やホログラム模様等を転写する。前記枚葉紙2の紫外線硬化型樹脂ワニスに転写用フィルム5を押し付けることによって、紫外線硬化型樹脂ワニスの塗布面を平滑にすることができ、光沢度をアップさせることができる。そして、押し付けられた転写用フィルム5の上から紫外線照射ランプ21,22(1個又は3個以上であってもよい)からの紫外線を照射することによって、紫外線硬化型樹脂ワニスを硬化させるようにしている。前記渡し胴18も、前記同様に、枚葉紙2を把持するグリッパを周方向2箇所(1箇所又は3箇所以上であってもよい)に備えている。又、前記圧胴19は、前記渡し胴18よりも直径が大きな所謂3倍胴と言われる胴になっており、前記同様に、グリッパを円周方向の3箇所(図示していない)に備えており、圧胴19が1回転する間に渡し胴18が1.5回転することにより、前記のように圧胴19側のグリッパに渡し胴18のグリッパからの枚葉紙2を受け渡すことができるようになっている。前記圧胴19を他の胴に比べて大きな直径(3倍胴)とすることによって、紫外線照射を行う乾燥処理区間を多く確保することができるだけでなく、ワニス塗布部4との距離が長く確保できる利点があるが、他の胴と同一の直径であってもよい。
【0020】
前記転写装置6について詳述すれば、図1及び図2に示すように、前記転写用フィルム5が巻き付けられるとともに送り出し可能な供給ロール13と、この供給ロール13から送り出された転写用フィルム5を前記圧胴19上の枚葉紙(印刷用紙)2に押し付ける2個(1個又は3個以上でもよい)の押圧ローラ15,16と、該押圧ローラ15,16にて前記転写用フィルム5を押圧した後、印刷用紙から剥離される該転写用フィルム5を巻き取る巻取用ロール17とを備えている。そして、図2に示すR1〜R10が、供給ロール13と搬送方向上流側に位置する押圧ローラ15との間に配置されたフィルム案内用のローラであり、このうちのR9,R10とR5,R6とが、後述のテンション調整手段Tのローラを構成している。又、R13〜R16が、搬送方向下流側に位置する押圧ローラ16と巻取用ロール17との間に配置されたフィルム案内用のローラである。又、ローラR4は、送り出し側に設けたテンションローラであり、所定のテンションをかけるようにしている。又、ローラR15は、巻き取り側に設けたテンションローラであり、所定のテンションをかけるようにしている。前記搬送方向下流側に位置する押圧ローラ16を圧胴19から上方へ設定距離離間した位置に配置しているのは、転写用フィルム5と枚葉紙2との分離(剥離)をスムーズに行うことができるようにするためであるが、押圧ローラ16を圧胴19に圧接した状態であってもよい。前記供給ロール13は、供給ロール用の電動モータM1の動力を用いて駆動回転され、前記巻取用ロール17は、巻取用ロール用の電動モータM2を用いて駆動回転されるようになっており、これら2つの電動モータM1,M2と後述する駆動回転するための2つの電動モータ28,30の4つの電動モータは基本的には同期運転されるようになっているが、転写用フィルム5の弛みや必要以上の張力が発生したときに原因となる電動モータの回転速度を制御して弛みや必要以上の張力を良好に解消できるようにしている。前記供給ロール13から送り出した転写用フィルム5を巻取用ロール17に巻き取れるように構成する他、転写用フィルム5をエンドレスに搬送できるようにロールを配置して構成したものであってもよい。
【0021】
前記転写装置6には、搬送されてきた枚葉紙2の所定位置に転写用フィルムの模様を転写することができるように枚葉紙への転写用フィルム位置合わせ装置を備えている。具体的には、図3に示すように、無色透明の薄いシートからなる転写用フィルム5上に所定間隔をおいて位置検出用の黒色のマーク23を塗布しているが、図の転写用フィルム5の長手方向に並ぶマーク23,23間に備える模様24をマークとしてもよいし、例えばフィルムの多数枚を繋ぎ合わせて転写用フィルムとしている場合には、その繋ぎ目(半透明部分)をマークとしてもよい。尚、図では模様24を全て同じものにしているが、異なる模様であってもよい。又、前記模様は、マーク間の一部にのみ形成されている構成の他、転写用フィルムの全域に形成されていてもよい。
【0022】
図2に示すように、前記マーク23の位置を検出する位置検出手段としての投光部25Aと受光部25Bとからなる光電センサ25を、後述するテンション調整手段Tを通過した直後の位置(フィルム転写が開始される地点から設定距離離れたフィルム供給側の位置)に、転写用フィルム5を挟んで両側に投光面と受光面とが対向位置する状態で配置し、図4に示すように、光電センサ25にて検出したマークに対して次のマークを検出したときの時間をカウントすることによりマーク間の間隔(距離)を検出し、その間隔が予め記憶されている所定間隔であるか否かを判別する判別手段26と、該判別手段26にて不一致と判別されたときに、後述のテンション調整手段を駆動制御する駆動手段27とを備えて、駆動手段27にてテンション調整手段Tを駆動することによって、転写用フィルム5のテンションを調整することで、例えば転写用フィルム5のマーク23が枚葉紙2の搬送方向先端位置(どこの位置に設定してもよい)に一致させた状態で重ね合わせて前記押圧ローラ15,16にて押圧し、模様24を予め設定された枚葉紙2の所定位置に転写することができるように構成している。前記判別手段26及び駆動手段27は、コンピュータの制御装置U内に備えている。
【0023】
前記テンション調整手段Tは、前記転写用フィルム5の送出方向始端側(先端側)に水平方向に並べた状態(どのように配置してもよい)で配置された一対の第1ローラR9,R10と、該転写用フィルム5の送出方向終端側に水平方向に並べた状態(どのように配置してもよい)で配置された一対の第2ローラR5,R6と、これら2つのローラR9,R5をそれぞれ駆動する電動モータ28,30を備え、前記位置検出手段25にて検出したマーク23,23間の間隔が所定間隔よりも長い場合には、第1ローラR9,R10の回転速度と第2ローラR5,R6の回転速度とがほぼ同速度になるように、又、前記検出された間隔が所定間隔よりも短い場合には、第1ローラR9,R10の回転速度よりも第2ローラR5,R6の回転速度を遅くなるように、電動モータ28,30を駆動手段27により駆動することによって、前記転写用フィルム5のテンションを調整する手段を構成している。前記テンション調整を行うことから、枚葉紙2の搬送方向の寸法よりもマーク23間のピッチを短く設定しているが、転写用フィルム5をテンション調整手段Tにて伸ばして送り出していることから、第1ローラR9,R10の回転速度よりも第2ローラR5,R6の回転速度が少し遅くなるようにしている。このようにテンション調整を行うことによって、枚葉紙2に対する転写用フィルム5の位置を調整することができるようになっている。
【0024】
詳述すれば、前記第1ローラR9のプーリと前記第1電動モータ28のプーリとをタイミングベルト29(チェーン連動又はギヤ連動でもよい)を介して連動連結して、第1電動モータ28の駆動を制御することによって、第1ローラR9の回転速度を変更することができるようになっている。又、前記第2ローラR5も第1ローラR9と同様に、第2ローラR5のプーリと前記第2電動モータ30のプーリとをタイミングベルト31(チェーン連動又はギヤ連動でもよい)を介して連動連結して、第2電動モータ30の駆動を制御することによって、第2ローラR5の回転速度を変更することができるようになっている。このように構成されたテンション調整手段Tを用いてテンションを調整する場合には、例えば転写用フィルム5のマーク23を順次検出する、つまり2つのマーク23,23の間隔又は前のマークを検出してから次のマークが通過するまでの時間を前記制御装置Uに備えている演算手段(図示せず)にて演算し、その演算したマーク23,23の間隔又は通過時間と予め記憶されている間隔又は通過時間とを前記判別手段26にて比較し、両者が不一致である場合、例えば検出した間隔又は時間が予め記憶されている間隔又は時間よりも短い場合には、転写用フィルム5の搬送速度が早過ぎると判別手段26にて判断し、第1ローラR9の回転速度に対して第2ローラR5の回転速度を遅くするべく、駆動手段27から第2電動モータ30に減速信号を出力するようにしている。前記とは反対に、判別手段26にて遅すぎると判断した場合には、第2ローラR5の回転速度を速くするべく、駆動手段27から第2電動モータ30に増速信号を出力するようにしている。ここでは、一対のローラR9,R10又はR5,R6のうちの一方のローラR9又はR5のみを駆動させる場合を示しているが、両方のローラとも駆動させる構成であってもよい。このように転写用フィルム5の搬送速度を制御することによって、前記圧胴19の爪が枚葉紙2を受け取って転写用フィルム5に合流する合流位置でのタイミングを一致させるようにしている。ここでは、圧胴19に代えて、ベルトコンベヤやローラコンベヤ等であってもよい。
【0025】
前記テンション調整手段Tによるテンションの調整幅は、該フィルム5の伸長側への限界となる上限値と該フィルム5が緩んでしまう下限値との間に設定されることになるが、該調整幅、つまり前記第1ローラR9の回転速度と第2ローラR5の回転速度との速度差だけで前記マーク間の間隔を所定間隔に合わせることができない場合には、該フィルム5の送り速度を増減させる速度増減手段32を前記制御装置Uに備えている。換言すれば、駆動手段27による調整だけでは、転写用フィルム5の搬送速度が所定速度よりも遅くなったり、速くなる場合に、いつまで経っても前記マーク間の間隔と所定間隔とを一致させることができない場合でも、速度増減手段32にて第1電動モータ28及び第2電動モータ30に増速信号や減速信号を出力することによって、一致させることができるようにしている。尚、第1電動モータ28及び第2電動モータ30に増速信号や減速信号を出力して、前記マーク間の間隔と所定間隔とが一致すると、前記駆動手段27にてテンション調整手段Tを駆動制御してテンション調整を行う制御に戻るようにしている。前記マーク間の間隔と所定間隔とを一致させることができないと判断するには、例えばテンション調整手段Tによるテンション調整を2回(3回以上でもよい)行っても、マーク間の間隔と所定間隔とを一致させることができない場合として実施してもよい。前記テンション調整を位置検出手段25の検出情報に基づいて自動的に調整する場合を示しているが、目視により印刷用紙への転写用フィルムの転写位置がずれてきたことを確認すると、前記電動モータ30の速度を手動操作により調整する構成であってもよいし、前記目視での確認を位置検出手段25に置き換えて電動モータ30の速度を手動操作で行うようにしてもよい。
【0026】
図4に示すように、前記テンション調整手段Tによる調整後に、枚葉紙2の搬送速度を検出する搬送速度検出手段33からの搬送速度変化を前記制御装置Uに備えた速度判定手段34にて判断されると、その速度変化に応じて、前記一対の第1ローラR9,R10の回転速度を変化させ、前記第2ローラR5,R6の回転速度を該第1ローラR9,R10の回転速度変化分だけ変化させる同期運転制御手段35を備えている。このように枚葉紙2の搬送速度が変化した場合でも、同期運転制御手段35にて第1電動モータ28及び第2電動モータ30に増速信号を出力して、枚葉紙2の搬送速度にフィルム5の送り速度を合わせるようにしている。
【0027】
図2に示すように、前記押圧ローラ15,16と両押圧ローラ15,16間に掛かっている転写用フィルム5とでなる転写部Fが、前記圧胴19に対して離間(2点鎖線で示す)又は接近する(実線で示す)ように移動自在に構成されており、例えば転写作業を行わない場合には、上方に離間させた位置に位置させて置くことができるようにしている。
【0028】
前記転写部Fを前記圧胴19に対して離間又は接近させるための駆動手段を備え、その駆動手段は、図2に示すように、エアシリンダ36の伸縮ロッド36Aに、転写装置6のケーシング6Aに回転自在に固定されたギヤ37に噛み合う歯部を形成し、前記伸縮ロッド36Aの伸縮により回転されるギヤ37の回転力を上下移動力に変換する歯部を備えたラック38の下端を、前記押圧ローラ15,16等が取り付けられた支持部材39の枚葉紙搬送方向ほぼ中央部の上端に連結している。従って、表面処理を行わない場合には、エアシリンダ36の伸縮ロッド36Aを図2の2点鎖線で示す位置まで伸長させることにより、ギヤ37が反時計回りで回転してラック38を2点鎖線で示す上方位置まで移動させるとともに、支持部材39を上方位置へ移動させるのである。これにより、転写部F(押圧ローラ15,16及び両押圧ローラ15,16間に掛かっている転写用フィルム5)を圧胴19に対して離間させることができるようになっている。また、転写部Fを下降させるためには、前記エアシリンダ36の伸縮ロッド36Aを図2の破線で示す位置まで短縮させることにより、転写部F(押圧ローラ15,16及び両押圧ローラ15,16間に掛かっている転写用フィルム5)を圧胴19に対して接近させる(図2の実線参照)ことができるようになっている。この下降位置において前記のように搬送されてくる枚葉紙2に対して転写用フィルム5の位置を合わせを行う制御を行いながら、転写部Fにて表面処理を繰り返し行うことになる。
【0029】
前記排紙部7には、処理装置にて処理されて搬送されてきた枚葉紙2を受け取って所定位置まで搬送するための搬送装置を備えている。この搬送装置は、枚葉紙を把持するグリッパ(図示していないが、前述したグリッパと基本構成は同一である)を枚葉紙の搬送方向両端に配置された左右一対ずつのスプロケット7A,7Bに掛け渡された無端走行体である左右一対のチェーン7Cに掛け渡されている(図1参照)。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】印刷機の概略側面図である。
【図2】転写部の側面図である。
【図3】転写用フィルムの平面図である。
【図4】枚葉紙と転写用フィルムとの位置を合わせるための制御ブロック図である。
【符号の説明】
【0031】
1…給紙部、2…枚葉紙(印刷用紙)、3…印刷部、4…ワニス塗布部、4A…ニス胴、4B…圧胴、5…転写用フィルム、5A…部分、6…転写装置、6A…ケーシング、7…排紙部、8〜12…印刷ユニット、8A〜12A…印刷用圧胴、8B〜12B…渡し胴、13…供給ロール、14…渡し胴、15,16…押圧ローラ、17…巻取用ロール、18…渡し胴、19…圧胴、20…フィルム転写機構、21,22…紫外線照射ランプ、23…マーク、24…模様、25…光電センサ(位置検出手段)、25A…投光部、25B…受光部、26…判別手段、27…テンション調整手段、28…第1電動モータ、29,31…タイミングベルト、30…第2電動モータ、32…速度増減手段、33…搬送速度検出手段、34…速度判定手段、35…同期運転制御手段、36…エアシリンダ、36A…伸縮ロッド、37…ギヤ、38…ラック、39…支持部材、F…転写部、M1,M2…電動モータ、R1〜R10、R13〜R16…ローラ、R4,R15…テンションローラ、U…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用紙を搬送するとともに転写用フィルムを搬送し、該転写用フィルムの模様を該印刷用紙に転写することを繰り返し行う印刷用紙への転写方法であって、
前記印刷用紙の所定位置に前記転写用フィルムの模様を転写するために、該転写用フィルムのテンションを調整することにより、該転写用フィルムを搬送方向に伸縮させることを特徴とする印刷用紙への転写方法。
【請求項2】
前記転写用フィルムに所定間隔毎に備えたマークを使用し、前記マークの間隔を検出し、その間隔が所定間隔を外れた場合に、前記テンション調整を行うことを特徴とする請求項1記載の印刷用紙への転写方法。
【請求項3】
前記転写用フィルムのテンションの調整幅を、該フィルムの伸長側への限界となる上限値と該フィルムが緩んでしまう下限値との間とし、該調整幅にて印刷用紙に対する該フィルムの位置合わせができない場合には、該フィルムの送り速度を増減させることを特徴とする請求項1又は2記載の印刷用紙への転写方法。
【請求項4】
印刷用紙を搬送するとともに転写用フィルムを搬送し、該転写用フィルムの模様を該印刷用紙に転写することを繰り返し行う転写部を備えた印刷用紙への転写装置であって、
前記印刷用紙の所定位置に前記転写用フィルムの模様を転写するために、該転写用フィルムのテンションを調整するテンション調整手段を備えていることを特徴とする印刷用紙への転写装置。
【請求項5】
前記転写用フィルムは、所定間隔毎にマークを備え、前記マークの間隔を検出する位置検出手段と、該位置検出手段にて検出された間隔が所定間隔であるか否かを判別する判別手段と、該判別手段にて不一致と判別されたときに、前記テンション調整手段を駆動制御する駆動手段とを備えたことを特徴とする請求項4記載の印刷用紙への転写装置。
【請求項6】
前記テンション調整手段によるテンションの調整幅は、該フィルムの伸長側への限界となる上限値と該フィルムが緩んでしまう下限値との間に設定され、該調整幅にて印刷用紙に対する該フィルムの位置合わせができない場合には、該フィルムの送り速度を増減させる速度増減手段を備えたことを特徴とする請求項4又は5記載の印刷用紙への転写装置。
【請求項7】
前記テンション調整手段は、前記転写用フィルムの送出方向始端側に配置された一対の第1ローラと、該転写用フィルムの送出方向終端側に配置された一対の第2ローラと、それら2つのローラをそれぞれ駆動する電動モータとを備え、前記第1ローラと前記第2ローラとの回転速度差が発生するように前記2つの電動モータを駆動することにより、前記転写用フィルムのテンションを調整する手段でなる請求項4〜6のいずれかに記載の印刷用紙への転写装置。
【請求項8】
前記テンション調整手段による調整後に、印刷用紙の搬送速度変化に応じて、前記一対の第1ローラの回転速度を変化させるとともに、前記第2ローラの回転速度を該送出ローラの回転速度変化分だけ変化させる同期運転制御手段を備えている請求項7記載の印刷用紙への転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−73015(P2009−73015A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243808(P2007−243808)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】