説明

印刷装置、モーター制御装置およびモーター制御方法

【課題】用紙搬送の停止時における停止精度が乱れていた。
【解決手段】少なくとも印刷媒体を搬送するために駆動する搬送モーターと、印刷媒体の搬送経路の所定位置に配設され、搬送経路に供給された印刷媒体に接しつつ搬送モーターの駆動により回転することによって印刷媒体を搬送する搬送ローラーと、搬送ローラーよりも搬送経路の上流側の所定位置に配設され、搬送経路に供給された印刷媒体に接しつつ搬送モーターの駆動により回転することによって印刷媒体を搬送する中間ローラーと、搬送モーターの駆動を制御する制御部とを備え、制御部は、搬送ローラーを回転させるときの搬送モーターの負荷と中間ローラーを回転させるときの搬送モーターの負荷との比較結果に応じた大きさの電流を、印刷媒体が搬送経路上の目標停止位置に到達した場合に搬送モーターに与える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、モーター制御装置およびモーター制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターにおいては各種のモーターが用いられる。当該モーターを制御する技術が特許文献1に開示されている。特許文献1には、モーターの停止位置精度を良好とすべく、モーターの特性を計測手段によって計測して記憶させておき、その後、モーターを記憶された特性に基づいて制御駆動させる技術について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6‐64275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェット式のプリンターには、プリンターの前側から印刷用紙を用紙搬送経路に供給し、印刷用紙が、搬送経路の前半ではプリンターの後側に向かい、その後、カーブを描くように湾曲させられて向きを変え、搬送経路の後半ではプリンターの前側に向かって搬送されるタイプの機種(前面給紙タイプ)が存在する。このような前面給紙タイプのプリンターにおいては、印刷用紙の搬送経路に、一つのモーター(搬送モーター)によって回転駆動する搬送ローラーと、当該搬送ローラーとギアで接続することにより搬送ローラーの回転に伴って回転する中間ローラーが配設されているが、中間ローラーのうち上記湾曲部分に配設されている中間ローラー(特定中間ローラー)には、印刷用紙が湾曲している分だけ大きな負荷が掛かる。
【0005】
ここで、印刷用紙と特定中間ローラーとが接触している状態においては、印刷用紙の停止に際して、印刷用紙が特定中間ローラーの逆回転に引っ張られて搬送の向きとは逆方向にいくらか戻されてしまう。つまり、印刷用紙の停止位置に大きなずれ(目標停止位置と実際の停止位置とのずれ)が生じてしまう。これは、搬送モーターの駆動が停止して特定中間ローラーを回転させる動力が無くなった瞬間、特定中間ローラーが自身に掛かっている大きな負荷等によってそれまでの回転方向とは逆方向に回転(逆回転)し、さらに当該逆回転に引っ張られて搬送ローラーも逆回転してしまうからである。一方、印刷用紙の後端が特定中間ローラーを完全に通過した状態においては、印刷用紙の停止に際して、特定中間ローラー以外の搬送ローラー等の負荷を受けて印刷用紙の停止位置に若干のずれは生じるものの、概ね良好な停止精度が得られる。
なお、印刷用紙の後端が特定中間ローラーを通過した後であっても、搬送モーターの駆動が停止したときに特定中間ローラーの逆回転が若干生じ得るが、特定中間ローラーに負荷が掛かっていない(印刷用紙と接触していない)ためにこの逆回転は極めて微少であると考えられ、よって、この逆回転が印刷用紙に接触している搬送ローラー等に及ぼす影響は殆ど無いと考えられる。
【0006】
すなわち、印刷用紙の後端が特定中間ローラーを通過する前と通過した後では、印刷用紙に掛かる負荷が異なるため、印刷用紙の停止精度が、搬送経路上における印刷用紙の位置によってばらついてしまう(特に、印刷用紙の後端が特定中間ローラーを通過する前の状態においては、印刷用紙の停止精度が低い)。
また、上記のような停止精度のばらつきや、停止精度を低下させる原因である特定中間ローラーの逆回転の程度は、プリンターの個体毎に異なる。そのため、個々のプリンターにおいて適切に上記印刷用紙の停止精度の改善を図ることは困難であった。
【0007】
本発明は上記課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、印刷媒体の停止精度を良好にすることが可能な印刷装置、モーター制御装置およびモーター制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様の一つは、少なくとも印刷媒体を搬送するために駆動する搬送モーターと、上記印刷媒体の搬送経路の所定位置に配設され、搬送経路に供給された印刷媒体に接しつつ上記搬送モーターの駆動により回転することによって印刷媒体を搬送する搬送ローラーと、上記搬送ローラーよりも上記搬送経路の上流側の所定位置に配設され、搬送経路に供給された印刷媒体に接しつつ上記搬送モーターの駆動により回転することによって印刷媒体を搬送する中間ローラーと、上記搬送モーターの駆動を制御する制御部とを備え、上記制御部は、上記搬送ローラーを回転させるときの上記搬送モーターの負荷と上記中間ローラーを回転させるときの上記搬送モーターの負荷との比較結果に応じた大きさの電流を、上記印刷媒体が搬送経路上の目標停止位置に到達した場合に上記搬送モーターに与える構成としてある。
【0009】
本発明によれば、搬送ローラーを回転させるときの搬送モーターの負荷と、中間ローラーを回転させるときの搬送モーターの負荷と、の比較結果に応じた大きさの電流を、印刷媒体が搬送経路上の目標停止位置に到達した場合に搬送モーターに与える。その結果、印刷媒体が目標停止位置に到達した際に生じる中間ローラーの逆回転を打ち消すようなトルクが搬送モーターに発生し、印刷媒体が目標停止位置からほぼ動くことなく停止するようになる。また、上記比較結果は、印刷装置毎にユニークな値であるため、上記比較結果に応じた電流を搬送モーターに与えることで、その印刷装置において生じ得る上記逆回転による印刷媒体の停止位置のずれを、的確に防止することができる。
【0010】
上記制御部は、予め、上記搬送モーターの駆動によって上記搬送ローラーのみを回転させたときの搬送モーターの負荷を示す第一メジャメント値と、搬送モーターの駆動によって搬送ローラーおよび上記中間ローラーを回転させたときの搬送モーターの負荷を示す第二メジャメント値と、を取得するとともに、第二メジャメント値と第一メジャメント値との差分と、第一メジャメント値と、の比を上記比較結果として取得しておき、上記印刷媒体が目標停止位置に到達した場合に、当該比に応じた大きさの電流を搬送モーターに与えるとしてもよい。当該構成によれば、搬送モーターの駆動によって搬送ローラーのみを回転させたときの搬送モーターの負荷(第一メジャメント値)と、搬送モーターの駆動によって中間ローラーのみを回転させたときの搬送モーターの負荷(第二メジャメント値−第一メジャメント値)との比を、上記逆回転の度合い(逆回転の起こり易さ)とし、当該比に応じた大きさの電流を印刷媒体が搬送経路上の目標停止位置に到達した場合に搬送モーターに与えることができる。そのため、中間ローラーの上記逆回転を打ち消すために最適なトルクを搬送モーターに発生させて、印刷媒体の停止精度を極めて良好なものとすることができる。
【0011】
上記制御部は、上記印刷媒体が目標停止位置に到達した際における上記搬送モーターの負荷を示す値を基準として、上記比較結果に応じた電流の大きさを決定するとしてもよい。さらに上記制御部は、上記印刷媒体が目標停止位置に到達した際における上記搬送モーターの負荷を示す値に対して一定割合を乗じて得た一定割合値と、上記印刷媒体が目標停止位置に到達した際における上記搬送モーターの負荷を示す値を上記比較結果に応じて調整して得た調整値と、の和に従って上記電流の大きさを決定するとしてもよい。このような構成によれば、搬送ローラーを回転させるときの搬送モーターの負荷と中間ローラーを回転させるときの搬送モーターの負荷とのバランス(比較結果)に加え、搬送モーターの特性等も考慮した電流の大きさを決定することができる。そのため、その印刷装置において生じ得る印刷媒体の停止位置のずれを的確に防止することができ、搬送経路上における印刷用紙の位置にかかわらず、停止精度を良好な精度に維持することができる。
【0012】
上記印刷媒体の搬送方向に略直交する方向への主走査を行うことにより印刷媒体に画像を印刷する印刷機構部を備え、上記制御部は、上記搬送モーターを間欠的に駆動させることにより上記主走査の不実行期間において印刷媒体を搬送させるとともに、当該間欠的な駆動のそれぞれにおける上記目標停止位置に印刷媒体が到達した場合に、上記電流を搬送モーターに与えるとしてもよい。当該構成によれば、主走査と交互に実行される印刷媒体の搬送(紙送り)において、毎回、目標停止位置に対して殆どずれの無い位置に印刷媒体を停止させることができるため、良好な画質(印刷結果)を得ることができる。
【0013】
本発明の技術的思想は、印刷装置以外によっても実現可能である。例えば、上述した印刷装置を構成する上記各部を備える装置であって、印刷装置に含まれるモーター制御装置の発明や、上述した印刷装置の各部が実行する処理工程を備える方法(モーター制御方法)の発明や、上述した印刷装置の各部の機能を所定のハードウェア(印刷装置が内蔵するコンピューター等)に実行させるプログラムの発明をも把握可能である。なお、本発明の印刷装置は、単一の装置のみならず、複数の装置によって分散して存在可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】プリンターの構造を概略的に示す図である。
【図2】プリンターの機能構成を概略的に示す図である。
【図3】逆回転度合い検出処理を示すフローチャートである。
【図4】逆回転度合い検出処理におけるメジャメント結果を例示する図である。
【図5】逆回転度合いに応じたオフセットデューティー値を決定する関数を例示する図である。
【図6】印刷処理を示すフローチャートである。
【図7】ホールド電流決定デューティー値を決定する様子を説明する図である。
【図8】ホールド電流を供給する期間を説明する図である。
【図9】本実施形態による効果を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
1.印刷装置の概略構成
図1は、本発明の一実施形態にかかるプリンター1の構造を概略的に示す図である。プリンター1は印刷装置の一種である。またプリンター1は、モーター制御装置を含む構成となっている。図1において、プリンター1は、側方視略矩形状(直方体状)の本体部10を有し、本体部10の下部にプリンター1の前後方向に細長い凹部10aが設けられている。凹部10aは側方視略矩形状(直方体状)に形成されており、プリンター1の前側から凹部10aに対して給紙トレー40を前後にスライドさせて着脱することが可能である。給紙トレー40は、凹部10aよりわずかに小さい直方体状の外形を有しており、内部に上方が開放する用紙収容部40aを有している。用紙収容部40aに対して印刷媒体としての印刷用紙が重ねて載置される。用紙収容部40aに載置された印刷用紙のうち最も上に載置された印刷用紙に対して、PUローラー(ピックアップローラー)12がその外周を接するように備えられている。PUローラー12はPFモーター(搬送モーター)14と図示しないギア等によって結合されており、PFモーター14の駆動によりPUローラー12が印刷用紙に平行な回転軸を中心として回転駆動する。
【0016】
PUローラー12は、図1において反時計回りに正回転し、外周にて接する印刷用紙を後方に送り出す。すると、印刷用紙がプリンター1の後方に向かって進行し、印刷用紙の搬送方向先頭側の端部(用紙先端)が用紙収容部40aの後方側に設けられた斜面40a1に干渉する。斜面40a1に干渉した用紙先端は、斜面40a1によって上方に誘導される。本体部10における斜面40a1の上方には、側方視略U字状に湾曲した湾曲部としての搬送ガイド13が形成されており、PUローラー12によって送り出された印刷用紙は搬送ガイド13に誘導される。以下において、搬送方向先頭側とは、搬送経路の下流側(排紙側)を意味し、搬送方向後方側とは、搬送経路の上流側(給紙側)を意味する。これにより、印刷用紙は、搬送ガイド13に沿って湾曲しつつ上方に供給される。搬送ガイド13の経路の中央部には、中間ローラー19a(特定中間ローラー)が備えられている。中間ローラー19aは、その外周が搬送ガイド13の印刷用紙に外側から接しつつ、印刷用紙に平行な回転軸を中心として回転する。中間ローラー19aは、PFモーター14と図示しないギア等によって結合されており、PFモーター14の駆動により能動的に回転駆動する。図1において中間ローラー19aが正回転する方向は、時計回りである。印刷用紙を挟んで中間ローラー19aに対向するように中間従動ローラー19a1が設けられている。中間ローラー19aが回転駆動することにより、印刷用紙は、搬送ガイド13に沿ってさらに上方に搬送され、用紙先端がプリンター1の前方に向かって略水平に進行する。
【0017】
印刷用紙の搬送経路上においては、用紙先端が前方に向かって略水平となる位置付近に、中間ローラー19bが備えられていてもよい。中間ローラー19bは、その外周が搬送ガイド13の印刷用紙に内側から接しつつ、印刷用紙に平行な回転軸を中心として回転する。中間ローラー19bも、PFモーター14と図示しないギア等によって結合されており、PFモーター14の駆動により能動的に回転駆動する。図1において中間ローラー19bが正回転する方向は、反時計回りである。中間ローラー19bが回転駆動することにより、印刷用紙は、さらにプリンター1の前方に向かって略水平に進行する。ただし本実施形態では、中間ローラー19bを設けることは必須ではない。以下では、中間ローラーを単に中間ローラー19と表現することもある。中間ローラー19には、中間ローラー19aおよび、中間ローラー19bが存在する場合には中間ローラー19bが含まれる。
【0018】
印刷用紙が前方(搬送経路下流側)に向かって略水平にしばらく進行すると、用紙先端がPEセンサー(紙端センサー)20に到達する。PEセンサー20は図示しない発光部と受光部を有しており、発光部と受光部の間の光路を印刷用紙が遮るか否かを判定することにより、用紙先端を検出する。本実施形態では、印刷用紙が給紙トレー40からPUローラー12によって送り出され、その用紙先端がPEセンサー20に検出されるまでの期間における印刷用紙の搬送を「給紙搬送」と呼ぶ。
【0019】
用紙先端がPEセンサー20にて検出され、引き続きPFモーター14が駆動し、印刷用紙が搬送経路下流側に搬送される。PEセンサー20よりも搬送経路下流側には、PFローラー(搬送ローラー)17が備えられており、その外周が印刷用紙に対して下側から接する。PFローラー17も、PFモーター14と図示しないギア等によって結合されており、PFモーターの駆動により能動的に回転駆動する。図1においてPFローラー17が正回転する方向は、反時計回りである。印刷用紙を挟んでPFローラー17に対向するようにPF従動ローラー17aが設けられている。
【0020】
用紙先端がPFローラー17に到達すると、印刷用紙はPFローラー17によって搬送される。印刷用紙の搬送方向後方側の端部(用紙後端)が中間ローラー19よりも搬送経路上流側に位置する場合(用紙後端が中間ローラー19を通過していない場合)には、PFモーター14の駆動によるPFローラー17と中間ローラー19の双方の回転駆動によって印刷用紙が搬送される。一方、用紙後端が中間ローラー19よりも搬送経路下流側に位置する場合(用紙後端が中間ローラー19を通過済みの状態)にも、PFモーター14の駆動によりPFローラー17と中間ローラー19が同期して回転駆動するものの、PFローラー17の回転駆動によって印刷用紙が搬送される。用紙先端がPFローラー17よりも搬送経路上流側に位置する場合(用紙先端がPFローラー17に到達していない場合)には、PFモーター14の駆動によりPFローラー17と中間ローラー19が同期して回転駆動するものの、中間ローラー19の回転駆動によって印刷用紙が搬送される。プリンター1においては、PFローラー17と中間ローラー19による印刷用紙の搬送速度が互いに同じとなるようにローラー径やギア比が設定されている。
【0021】
PFローラー17のさらに搬送経路下流側にはプラテン22が設けられており、プラテン22が搬送される印刷用紙を下方から支持する。プラテン22には図示しない吸引機構が備えられており、吸引機構が印刷用紙を下方に吸引することにより、プラテン22上において印刷用紙が安定して保持される。プラテン22に印刷用紙を挟んで上方から対向するようにキャリッジ21が備えられている。キャリッジ21は下方に印字ヘッド21aを備えており、印字ヘッド21aの下面に配列する多数のノズルからインクを吐出することが可能である。キャリッジ21は、図1の紙面に対して垂直な方向に移動(主走査)することが可能である。キャリッジ21は、主走査を行いながらインクを吐出することにより、プラテン22上に保持された印刷用紙におけるノズルに対向する領域(印字位置)に対して、主走査方向に沿ったラスタラインを描画することができる。主走査を行った後に、PFモーター14を駆動させ、印刷用紙を搬送することにより、印刷用紙における印字位置をずらす(副走査)ことができる。従って、印刷用紙における異なる位置にラスタラインを描画することができる。すなわち、上述した主走査と副走査を順次繰り返して実行することにより、印刷用紙上に印刷画像を形成することができる。キャリッジ21や印字ヘッド21aは、印刷機構部に該当する。
【0022】
ここで、「給紙搬送」後の搬送は、「頭出し搬送」と、「印字搬送」と、「排紙搬送」とに分けることができる。頭出し搬送とは、用紙先端がPEセンサー20に検出されてから、当該印刷用紙における最初の印字位置が印字ヘッド21a下の所定位置に到達するまでの期間における搬送を言う。印字搬送とは、印字処理のための印刷用紙の搬送であり、主走査と主走査との合間に間欠的に行なわれる印刷用紙の搬送(副走査)を意味する。ただし、頭出し搬送を、最初の印字搬送と捉えることもできる。排紙搬送とは、印刷用紙の印字位置に対する必要な印刷画像の形成が全て終了した後に、当該印刷用紙をプリンター1前方に排出するための搬送を言う。以下では適宜、給紙搬送後の搬送をまとめて「紙送り」と呼ぶ。
【0023】
図2は、プリンター1の機能構成を示すブロック図である。プリンター1は、既に説明した以外の構成として、外部I/F(外部インターフェイス)30と、CPUとROMとRAMとからなるマイクロコンピューター31と、ASIC32と、ロータリーエンコーダー33と、モータードライバー15等を備えている。外部I/F30は外部のホストコンピューター60との仲介をなし、外部I/F30を介してホストコンピューター60から印刷データPDを取得する。印刷データPDは、ハーフトーン処理等が行われた印刷画像を構成するラスターデータと、プリンター1を制御するための制御データ等から構成されている。制御データには、印刷モードの種類や印刷用紙の種類や印刷用紙のサイズ等(まとめて印刷条件と呼ぶ。)を指定する情報が含まれている。これら印刷条件は、ホストコンピューター60が実行するアプリケーションプログラムやプリンタードライバーを使用して、ユーザーが予め指定している。
【0024】
ASIC32は、PF制御部32aと、キャリッジ制御部32bと、PU制御部(ピックアップローラー制御部)32cを備えている。さらにPF制御部32aは、速度演算部32a1と、位置演算部32a2と、PID演算部32a3と、PWM部32a4とを備え、設定された目標停止位置とロータリーエンコーダー33からの出力とに基づいてフィードバック制御を行う。目標停止位置とは、紙送り(頭出し搬送や印字搬送)を1回行う毎の理想的な停止位置を意味する。頭出し搬送や各回の印字搬送毎に、目標停止位置の設定は更新される。
【0025】
ロータリーエンコーダー33は、PFローラー17またはPFローラー17と結合されたいずれかのギアに備えられたエンコード板と当該エンコード板を挟んで配置された発光部と受光部とから構成され、受光部における受光状態に基づいてPFローラー17の回転駆動速度に応じたパルス周期を有するパルス信号を生成する。速度演算部32a1は、ロータリーエンコーダー33から出力されるパルス信号(パルス周期)に基づいて現在の印刷用紙の搬送速度(回転量に比例する値)を算出する。位置演算部32a2は、ロータリーエンコーダー33から出力されるパルス信号に基づいて現在のPFローラー17(PFモーター14)の回転位置(パルス信号のエッジ数に応じた位置)を演算することにより、現在の用紙先端の位置(用紙先端位置)を特定する。PID演算部32a3は、マイクロコンピューター31側から与えられた目標停止位置と位置演算部32a2によって特定された現在の用紙先端位置との位置偏差に応じて、現在の目標速度を演算する。そして、当該現在の目標速度と速度演算部32a1によって算出された現在の搬送速度との偏差に基づくPID演算を行うことにより、PWM部32a4に出力する制御電圧を決定する。このPID演算においては、偏差の比例値と時間積分値と時間微分値を所定のゲインによって結合することにより制御電圧が決定される。
【0026】
PWM部32a4は、PID演算部32a3から出力された制御電圧に相当するデューティー比DRを決定し、モータードライバー15に出力する。モータードライバー15は、電源電圧としての直流電圧Vc(例えば、Vc=42V)を上記デューティー比DR(パルスの周期に対するONの期間の比率)に応じてパルス幅変調することにより、パルスとしてのPWM信号を生成し、PFモーター14に出力する。PFモーター14は、DCモーターであり、モータードライバー15から出力されたPWM信号を駆動電源として駆動する。すなわち、PFモーター14は、PWM信号(PWM信号のデューティー比DR)に応じた負荷を生じさせる。ここで、PWM信号のデューティー比DRが大きければ大きいほど、PFモーター14に印加される電圧Vmおよび電流Imの平均的な値は大きくなり、PFモーター14の負荷も大きくなる。
【0027】
デューティー比DRは、DR=d/PWMcycleと表現することができる。PWMcycleは、例えば3000といった整数である。dは、デューティー(Duty)値であり、デューティー比DRにおける分子である。PWMcycle=3000とした場合、d=0〜3000の整数である。つまり本実施形態では、PWM部32a4は、上記制御電圧に応じたデューティー比DRを、パルス周期の1/3000単位で調整して決定することができる。
【0028】
PF制御部32aは、微小な時間(制御ステップ)ごとに制御電圧(デューティーDR比)の更新を行っている。すなわち、PFモーター14を駆動させるにあたり、制御ステップごとに目標速度が設定され、目標速度と現在の搬送速度との偏差に基づくフィードバック制御が繰り返される。一方、キャリッジ制御部32bはキャリッジ21や印字ヘッド21aを駆動制御するための処理を実行し、PU制御部32cはPUローラー12を駆動制御するための処理を実行する。
【0029】
マイクロコンピューター31のCPUは、ROMに記憶されたプログラムを読み出して、目標位置設定モジュール31aや、モーター回転制御モジュール31bや、負荷監視モジュール31cや、逆回転度合い検出モジュール31dや、デューティー通知モジュール31e等を実行することにより、後述するように逆回転度合い検出処理や、印刷処理(モーター制御処理を伴う印刷処理)を実現する。この意味で、プリンター1は モーター制御方法の実行主体であると言える。なお、負荷監視モジュール31cは、PFモーター14の負荷を直接的あるいは間接的に示す値を取得する。本実施形態では、負荷監視モジュール31cは、PWM部32a4によって決定されたデューティー比DRのデューティー値dを取得(監視)する。
【0030】
2.逆回転度合い検出処理
次に、逆回転度合い出処理について説明する。逆回転度合い出処理とは、概略的には、PFローラー17を回転させるときのPFモーター14の負荷と、中間ローラー19を回転させるときのPFモーター14の負荷と、の比較結果を計算で取得する処理を言う。比較結果とは、上記比較の対象となる2つの負荷の差分であってもよいし、比であってもよいが、本実施形態では比を採用する。逆回転度合い出処理は、印刷処理の実行よりも前に実行され、印刷処理では、予め取得されている上記比較結果に応じた大きさのホールド電流を、紙送りにおける印刷用紙の停止精度の向上のために用いる。ホールド電流とは、PFモーター14を逆回転させようとする外的負荷を打ち消すような、正回転方向のトルクをPFモーター14生じさせる電流である。
【0031】
図3は、マイクロコンピューター31が実行する逆回転度合い出処理を示したフローチャートである。
ステップS100では、マイクロコンピューター31は、所定のモーター接続位置セットシーケンスを実行する。モーター接続位置セットシーケンスとは、PFモーター14の駆動力がPFローラー17および中間ローラー19のみに伝わるように、PFモーター14の駆動力を他の各駆動伝達先へ伝えるための機構を制御する処理である。プリンター1においては、PFモーター14が生み出す駆動力は、搬送ローラー17および中間ローラー19に伝わる構成となっているが、これら以外の駆動伝達先、例えばPUローラー12やインクシステム等にも図示しない所定のギアや輪列切替えレバーを介して伝達することが可能である。逆回転度合い出処理では、上述したように、PFローラー17を回転させるときのPFモーター14の負荷や、中間ローラー19を回転させるときのPFモーター14の負荷を算出する必要がある。そこでまずステップS100では、マイクロコンピューター31は、上記ギアや輪列切替えレバーを制御することにより、PFモーター14の駆動力がPFローラー17および中間ローラー19以外の駆動伝達先に伝わらない状態とする。
【0032】
このように逆回転度合い出処理の開始にあたっては、PUローラー12も駆動不能状態となるため、逆回転度合い出処理において、用紙の搬送経路に印刷用紙が供給されることはない。なお、マイクロコンピューター31は、ステップS100を開始する時点で、搬送経路上に印刷用紙が存在していた場合には、当該印刷用紙を排紙搬送させた上でステップS100を実行する。
【0033】
ステップS110では、モーター回転制御モジュール31bは、PF制御部32aに所定の制御ステップ数Z1の期間だけPFモーター14を逆方向に回転させるように指示する。このときモーター回転制御モジュール31bは、PFモーター14を逆回転させる際の目標速度も指示する。PF制御部32aは、モーター回転制御モジュール31bに指示された制御ステップ数Z1の期間だけモーター回転制御モジュール31bに指示された速度でPFモーター14が逆回転するためのPWM信号をモータードライバー15から出力させ、PFモーター14を逆回転させる。PFモーター14の逆回転とは、印刷用紙を搬送経路下流側から上流側へと搬送させる方向への回転である。このようにPFモーター14を制御ステップ数Z1だけ逆回転させることで、中間ローラー19へのPFモーター14の駆動の伝達を切断し、PFモーター14の駆動によってPFローラー17のみが回転可能な状態にする。
【0034】
プリンター1においては、PFモーター14とPFローラー17はギア等で結合しており、PFモーター14が回転すればPFローラー17も必ず回転する。一方、中間ローラー19は、PFローラー17とギア等を介して結合しており、PFローラー17が回転することで、中間ローラー19も回転する。本実施形態では、PFローラー17と中間ローラー19とを結合する過程に遊星ギア機構18(図2参照)を設けている。遊星ギア機構18は、アーム部材18bの先端に遊星ギア18aを有する。この遊星ギア18aは、PFローラー17の回転を結合先(中間ローラー19または、遊星ギア18aと中間ローラー19との間に介在する他のギア)に自転により伝達するものである。かつ、遊星ギア機構18においては、PFモーター14の回転に従ってアーム部材18bが回動する(遊星ギア18aが公転する)。具体的には、PFモーター14の正回転に従って遊星ギア18aが結合先に接近するようにアーム部材18bが回動し、PFモーター14の逆回転に従って遊星ギア18aが結合先から離脱するようにアーム部材18bが回動する構成となっている。従って、当該ステップS110においてPFモーター14が制御ステップ数Z1だけ逆回転すると、遊星ギア機構18は、遊星ギア18aが結合先から離脱する方向へアーム部材18bを回動させ、その結果、PFモーター14の駆動が中間ローラー19へ伝わらない状態となる。
【0035】
上記制御ステップ数Z1の経過後、ステップS120では、モーター回転制御モジュール31bは、PF制御部32aに所定の制御ステップ数Z2の期間だけPFモーター14を正方向に回転させるように指示する。このときモーター回転制御モジュール31bは、PFモーター14を正回転させるときの目標速度も指示する。PF制御部32aは、モーター回転制御モジュール31bに指示された目標速度にてPFモーター14を正回転させるフィードバック制御を開始する。当該ステップS120でPFモーター14を正回転させ始めた時点においては、遊星ギア18aは結合先(中間ローラー19または、遊星ギア18aと中間ローラー19との間に介在する他のギア)から離れているため、PFモーター14の正回転に伴ってPFローラー17のみが回転する。また、このPFモーター14の正回転に従って、遊星ギア機構18においては、遊星ギア18aが上記結合先に接近する方向にアーム部材18bが徐々に回動する。
【0036】
ステップS130では、負荷監視モジュール31cが、PWM部32a4がモータードライバー15に出力するデューティー比DRのデューティー値dを取得する。具体的には、負担監視モジュール31cは、上記ステップS120においてPFモーター14を正回転させるフィードバック制御が開始されてからの制御ステップ数が所定の基準数Ns(ただし、Ns<Z2)となったか否かを判定し、上記ステップS120のフィードバック制御が開始されてからの制御ステップ数が基準数Nsとなった場合に、デューティー値dを計測(メジャメント)する。つまり、上記ステップS120のフィードバック制御が開始された直後においては、PFモーター14の回転速度が加速期にあり安定しないため、上記ステップS120のフィードバック制御が開始されてPFモーター14の回転速度が略安定するようになってから、負荷監視モジュール31cはデューティー値dの計測を開始する。すなわち、上記ステップS120のフィードバック制御が開始されてからの制御ステップ数が基準数Nsになると、PFモーター14が目標速度で略定速回転していると考えることができる。
【0037】
ステップS140では、負荷監視モジュール31cは、上記ステップS120のフィードバック制御が開始されてからの制御ステップ数が、所定数Z3(ただし、Ns<Z3<Z2)に達したか否か判定し、所定数Z3に達していない場合には、ステップS130に戻ってデューティー値dの計測を行う。制御ステップ数Z3は、上記ステップS120のフィードバック制御が開始してから遊星ギア18aが結合先(中間ローラー19または、遊星ギア18aと中間ローラー19との間に介在する他のギア)に結合するまでに要する期間に該当する。すなわち負荷監視モジュール31cは、遊星ギア18aが結合先と離れている期間(PFモーター14の駆動によってPFローラー17のみが回転している期間)において、デューティー値dを繰り返し計測する。負荷監視モジュール31cは、上記ステップS120のフィードバック制御が開始されてからの制御ステップ数が所定数Z3に達したと判定したときは、それまでステップS130の繰り返しにより計測したデューティー値dの平均値を、第一メジャメント値M1としてRAMに記録した上で、ステップS150に進む。
【0038】
ステップS150では、負荷監視モジュール31cはデューティー値dを取得する。ここでは負担監視モジュール31cは、上記ステップS140において制御ステップ数が所定数Z3に到達したと判定してからの制御ステップ数が、PFモーター14の回転速度が略安定するために必要な期間に相当するステップ分に達したか否か判定し、達したと判定した後、所定のメジャメント期間(定速期間内の数制御ステップの間)、デューティー値dを繰り返し計測し、その平均値を第二メジャメント値M2としてRAMに記録する。
【0039】
図4は、ステップS120においてPFモーター14を正回転させるフィードバック制御が開始されてから制御ステップ数がZ2に達するまでの期間における、デューティー値dの変動(実線)を、簡易的に例示している。図4に示すように、フィードバック制御が開始されてから制御ステップ数Nsに達するまでは、デューティー値dは上昇し、その後制御ステップ数Z3まではデューティー値dは略安定する。これは、PFモーター14の駆動によってPFローラー17のみを回転駆動させている期間に対応し、かつPFモーター14の回転速度の加速期間と定速期間に対応している。上述したように、負荷監視モジュール31cは、PFローラー17のみを回転駆動させている期間における定速期間中に計測したデューティー値dに基づいて、第一メジャメント値M1を取得する。また、制御ステップ数がZ3に達したときには、PFモーター14の駆動がPFローラー17および中間ローラー19に伝わるためPFモーター14にかかる負荷が増大し、これに従ってデューティー値dも増大する。その後、再びデューティー値dは略安定する。すなわち、負荷監視モジュール31cは、PFローラー17および中間ローラー19を回転駆動させているPFモーター14の回転速度が略安定した定速期間中にデューティー値dを計測することにより、第二メジャメント値M2を取得する(上記ステップS150)。
【0040】
このように上記ステップS120においてPFモーター14を正回転させるフィードバック制御が開始されてから、制御ステップ数がZ2に達するまでの期間に、第一メジャメント値M1および第二メジャメント値M2が取得される。
ステップS160では、逆回転度合い検出モジュール31dが、RAMに記録された上記第一メジャメント値M1および第二メジャメント値M2を読み出し、下記式(1)に従って、第三メジャメント値M3を算出する。
M3=M2−M1 …(1)
第二メジャメント値M2と第一メジャメント値M1との差分としての第三メジャメント値M3は、PFモーター14が中間ローラー19のみを回転させる場合におけるPFモーター14の負荷を示していると言える。
【0041】
ステップS170では、逆回転度合い検出モジュール31dは、下記式(2)に従って逆回転度合いxを算出する。
x=M3/M1 …(2)
すなわち、PFローラー17を回転させる場合のPFモーター14の負荷(M1)に対する、PFローラー19を回転させる場合のPFモーター14の負荷(M3)の比率を、逆回転度合いxとする。このような逆回転度合いxは、印刷用紙が中間ローラー19(特に、大きな負荷が掛かっている中間ローラー19a)に接している搬送区間で印刷用紙が停止する場合における、中間ローラー19の逆回転のし易さ(上述した特定中間ローラーの逆回転の生じやすさ)を示していると言える。
【0042】
このように算出される逆回転度合いxは、プリンターの一台毎に異なる値となる。図4では、プリンター1とは別のプリンター(プリンター1と同一モデルのプリンター)において図3のフローチャートを実行した場合に得られる、デューティー値dの変動を、二点鎖線で例示している。二点鎖線で示すデューティー値dの変動においては、PFモーター14の駆動が中間ローラー19にも伝達された時点(制御ステップ数Z3)以降のデューティー値dの上昇度合いが、プリンター1の場合よりもかなり小さいことが分かる。当該別のプリンターにおいては、PFローラー17のみを回転駆動させているときにPFモーター14にかかる負荷(M1)と、PFローラー17および中間ローラー19を回転駆動させているときにPFモーター14にかかる負荷(M2)との差が小さいと言え、そのため当該別のプリンターの逆回転度合いxはプリンター1の逆回転度合いxよりも小さい値となる。つまり、PFローラー17を回転させる場合のPFモーター14の負荷(M1)と、PFローラー19を回転させる場合のPFモーター14の負荷(M3)とのバランスは、プリンターの一台毎に異なり、そのため本実施形態では、プリンター1独自の逆回転度合いxを算出している。
【0043】
ステップS180では、逆回転度合い検出モジュール31dは、上記ステップS170で算出した逆回転度合いxを所定の関数Fに入力することにより、プリンター1特有のオフセットデューティー値を取得し、当該取得したオフセットデューティー値を、マイクロコンピューター31内の所定のメモリーに保存する。オフセットデューティー値は、印刷処理においてPF制御部32aがPFモーター14に与える上記ホールド電流の大きさを決定する値である。
【0044】
図5は、関数Fの一例を示している。関数Fは、入力値としての逆回転度合いxと出力値としてのオフセットデューティー値F(x)との理想的な関係を規定するものとして予め実験等によって係数a,bが決められた関数であり、基本的には、入力値が増加するに従って出力値を増加させる。つまり、逆回転度合いxが大きいということは、それだけ中間ローラー19の逆回転が生じやすいと言えるため、オフセットデューティー値F(x)も大きくなるような関係を規定している。なお図5では、関数Fは、F=ax−bで表される一次関数となっているが、2次関数等の非線形の関数であってもよいし、入力値の増加に応じて、出力値を階段状に増加させる関数等であってもよい。
【0045】
3.印刷処理
次に、逆回転度合い出処理後における印刷処理について説明する。
図6は、プリンター1が実行する印刷処理を示したフローチャートである。ステップS200においては、マイクロコンピューター31がホストコンピューター60から印刷データPDを取得する。ステップS210においては、マイクロコンピューター31は、ASIC32に給紙搬送の指示を出し、ASIC32は給紙搬送を開始する。この結果、給紙トレー40に収容されていた印刷用紙が、PUローラー12の回転によって搬送経路に供給され、さらに中間ローラー19の回転により搬送経路を下流側へ進むこととなる。
【0046】
用紙先端がPEセンサー20に到達すると、ステップS220においてPEセンサー20が用紙先端を検出する。マイクロコンピューター31は、PEセンサー20が用紙先端を検出したと判定した場合に、ASIC32に給紙搬送を終了させる。上述したように、位置演算部32a2が、給紙搬送が開始された以降のPFモーター14の回転量(ロータリーエンコーダー33から出力されるパルス信号に基づくPFローラー17の回転量)に基づいて、用紙先端位置を特定することができるため、マイクロコンピューター31も用紙先端位置を認識することができる。また、マイクロコンピューター31は、印刷用紙のサイズ(長さ)を印刷データPDに基づいて特定できるため、用紙後端の位置(用紙後端位置)も特定することができる。
【0047】
ステップS230において、マイクロコンピューター31は、用紙後端位置を特定する。最初の段階では、用紙先端がPEセンサー20の位置にあるため、搬送経路においてPEセンサー20の位置から印刷用紙の長さだけ搬送方向後方側の位置に、用紙後端が位置することとなる。ステップS240において、マイクロコンピューター31は、用紙後端が、中間ローラー19a(図1参照)よりも搬送経路上流側にあるか(中間ローラー19aを通過していないか)否かを判定する。用紙後端が中間ローラー19aを通過していない場合にはステップS250に進み、用紙後端位置が中間ローラー19aを通過済みである場合にはステップS260に進む。
【0048】
ステップS250,S260においては、そのときの目標停止位置が目標位置設定モジュール31aによってPID演算部32a2に設定され、PFモーター14に対する前記フィードバック制御が行われる。これによりPFモーター14が駆動し、PFローラー17と中間ローラー19とが回転駆動し、印刷用紙が紙送りされる。最初の紙送りでは、頭出し搬送が行なわれ、印刷用紙における印刷開始位置に印字ヘッド21aが対向するように印刷用紙が搬送される。ステップS250,S260における一回分の紙送りが完了すると、ステップS270において、キャリッジ制御部32bがキャリッジ21や印字ヘッド21aを駆動制御する。すなわち、印刷用紙に対してインクを吐出してラスタラインを描画する主走査を行う。主走査が完了すると、ステップS280において印刷が完了したか否かを判定し、完了していない場合には、ステップS230に戻る。これにより、印刷が完了するまで、印字搬送(副走査)と主走査を繰り返して実行することができる。印刷が完了すると、図示しない排紙ローラーを駆動させて排紙搬送を行なって印刷用紙を排出し、印刷処理を終了させる。
【0049】
ところで、ステップS250における紙送りでは、PF制御部32aは、用紙先端位置が、その回の目標停止位置に到達した場合に、プリンター1特有の上記オフセットデューティー値F(x)に応じた大きさのホールド電流を、PFモーター14に与える。
この場合、単純な一例として、マイクロコンピューター31が用紙先端位置が目標停止位置に到達したと判定したときに、デューティー通知モジュール31eは、上記所定のメモリーに保存されているオフセットデューティー値F(x)を読み出してPF制御部32aに通知する。そしてPF制御部32aにおいては、PWM部32a4が、オフセットデューティー値F(x)によるデューティー比DR(=F(x)/PWMcycle)を、モータードライバー15に出力する。この結果、モータードライバー15からは、オフセットデューティー値F(x)に応じてパルス幅変調されたPWM信号がPFモーター14に出力される。PFモーター14に供給される電流Imは、下記式(3)によって表すことができる。
【0050】
Im=(DR・Vc−ke・ω)/R …(3)
式(3)において、RはPFモーター14の巻線抵抗値、keはPFモーター14の逆起電圧定数、ωはPFモーター14の回転速度である。
つまり、オフセットデューティー値F(x)に応じたPWM信号がPFモーター14に出力されることにより、オフセットデューティー値F(x)に応じた大きさの電流Im(ホールド電流)がPFモーター14に印加される。この結果、上記逆回転度合いxが示す中間ローラー19の逆回転(および中間ローラー19の逆回転に伴うPFローラー17の逆回転)を打ち消すような正回転を生じさせるトルクがPFモーター14に発生し、よって、これら各ローラーが逆回転することにより印刷用紙の停止位置が搬送経路上流側に引き戻されてしまう現象(停止精度の乱れ)が、適切に防止される。
【0051】
ここで、ステップS250においてPFモーター14に与えられる上記ホールド電流は、上記単純な一例のようにオフセットデューティー値F(x)に応じて決定されてもよいが、本実施形態ではさらに、用紙先端位置が目標停止位置に到達した際におけるPFモーター14の負荷を示す値を基準として、オフセットデューティー値F(x)に応じて決定される。具体的には、デューティー通知モジュール31eは上記オフセットデューティー値F(x)を所定の係数kで正規化した値(F(x)/k)に変換した上で、当該F(x)/kをPF制御部32aに通知する。F(x)を正規化するための係数kは、F(x)が取り得る数値範囲を示しており、例えば「128」等といった整数である。以下では、F(x)/kを、補正値と呼ぶ。
【0052】
PF制御部32aにおいては、PWM部32a4が、用紙先端位置が目標停止位置に到達した際のデューティー値d(目標到達時デューティー値df)に上記補正値を乗算することにより、ホールド電流決定デューティー値d´を算出する(下記式(4)参照)。
d´=df・F(x)/k …(4)
そしてPWM部32a4は、ホールド電流決定デューティー値d´によるデューティー比DR(=d´/PWMcycle)を、モータードライバー15に出力する。この結果、モータードライバー15からは、ホールド電流決定デューティー値d´に応じた大きさのホールド電流がPFモーター14に印加されることとなる。例えば、F(x)/k=32/128であれば、目標到達時デューティー値dfの1/4のデューティー値d´に応じたホールド電流が印加される。
【0053】
図7の上段は、一回の紙送り期間における制御ステップ(時間)と用紙先端位置との関係を実線で例示し、図7の下段は、同紙送り期間における各制御ステップとデューティー値dとの関係を実線で例示している。図7の上段に示すように、時間の経過に従って、用紙先端位置は、そのときの紙送りにおける目標停止位置Pに接近する。また図7の下段に示すように、用紙先端位置が目標停止位置Pに接近するに従って、デューティー値dは減少する。なお一回の紙送りにおいては、PFモーター14の加速期間、定速期間、減速期間というものがあるが、図7では当該減速期間の終盤についてデューティー値dの変動等を例示している。本実施形態では、用紙先端位置が目標停止位置Pに到達した時(あるいは目標停止位置Pに到達した直後)のデューティー値dを上記目標到達時デューティー値dfと呼び、紙送りのためのフィードバック制御では、目標到達時デューティー値dfは、0ではなく正側にある程度オフセットされるようにしている。
【0054】
このような目標到達時デューティー値dfは、プリンターの製品毎の特性に応じて異なる値である。つまり上記式(3)から判るように、PFモーター14に印加される電流Imの大きさは、仮にデューティー値(デューティー比DR)が一定であっても、PFモーター14の各特性(巻線抵抗値R、逆起電圧定数ke等)の製品上のばらつきや電源電圧Vcの製品上のばらつきによって変動する。これは、デューティー値一定のPWM信号をPFモーター14に与えても、PFモーター14が発揮するトルクは、PFモーター14の各特性のばらつきや電源電圧Vcのばらつきによって変動することを意味する。言い換えると、印刷用紙を決まった目標停止位置Pまで搬送したときにPFモーター14が発揮しているべき一定値のトルクを実現するためのデューティー値(目標到達時デューティー値df)は、PFモーター14の各特性のばらつきや電源電圧Vcのばらつきに起因して、プリンター毎に異なる。
【0055】
さらには、目標到達時デューティー値dfは、その時点での印刷用紙の搬送経路上における位置等に応じて異なる。つまり、用紙後端が中間ローラー19aを通過し切っていない状態での紙送りと、用紙後端が中間ローラー19aを通過済みの状態での紙送りとでは、PFモーター14にかかる負荷は当然異なり、用紙後端が中間ローラー19aを通過し切っていない状態での紙送りにおける目標到達時デューティー値dfの方が、用紙後端が中間ローラー19aを通過済みの状態での紙送りにおける目標到達時デューティー値dfよりも大きい。
【0056】
このように本実施形態では、用紙先端位置が目標停止位置に到達したときのPFモーター14の負荷(目標到達時デューティー値df)が、プリンター製品毎のPFモーター14の各特性のばらつき、電源電圧Vcのばらつき、印刷用紙の搬送経路上における位置の違い、等に応じて異なる事実に鑑み、そのときの目標到達時デューティー値dfのレベルを基準として(最大値として)、上記のようにホールド電流決定デューティー値d´をオフセットデューティーF(x)に応じて決定している。この結果、プリンター製品毎のPFモーター14の各特性のばらつきや電源電圧Vcのばらつきや印刷用紙の搬送経路上における位置の違い等に左右されずに、そのときの逆回転度合いxが示す逆回転の起こり易さを打ち消すために最適なトルクを生み出すためのホールド電流を、PFモーター14に与えることができる。例えば、目標到達時デューティー値dfがプリンター1の設計上期待される値より比較的高い場合、ある逆回転度合いxに応じた上記逆回転を打ち消すためには、目標到達時デューティー値dfが設計上期待される値より比較的低い場合よりも、PFモーター14に与えるホールド電流を大きなものとする必要がある。本実施形態によれば、目標到達時デューティー値dfが大きい分、PFモーター14に与えられるホールド電流は大きなものとなるため、印刷用紙の停止精度が常に良好に保たれる。
【0057】
一方、ステップS260の紙送りでも、上記ステップS250の紙送り程ではないが、用紙先端位置がその回の目標停止位置に到達したときに、PFローラー17の逆回転等を受けて、用紙の停止位置に若干のブレが生じ得る。そこで、ステップS260の紙送りでは、PF制御部32aは、用紙先端位置がその回の目標停止位置に到達した場合に、ホールド電流をPFモーター14に与えることにより、印刷用紙の停止精度の向上を図るとしてもよい。この場合、マイクロコンピューター31が用紙先端位置が目標停止位置に到達したと判定したときに、PF制御部32aでは、PWM部32a4が目標到達時デューティー値dfに対して固定補正値n/kを乗算することにより、ホールド電流決定デューティー値d''を算出する(下記式(5)参照)。
d''=df・n/k …(5)
【0058】
式(5)における係数kと式(4)における係数kは共通である。n(ただしn>0)は、予め設定された固定値であり、上記ステップS180(図3)で多くの場合算出されるオフセットデューティー値F(x)よりも基本的に低い値に設定されている。つまり、ステップS260の紙送りにおいては、用紙先端が目標停止位置に到達したとき、目標到達時デューティー値dfの一定割合としてのホールド電流決定デューティー値d''に応じた大きさのホールド電流が、PFモーター14に印加される。このように、ステップS260における紙送り(用紙後端が中間ローラー19aを通過済みの状態での紙送り)でも、プリンター製品毎のPFモーター14の各特性のばらつきや電源電圧Vcのばらつきや印刷用紙の搬送経路上における位置の違いによって異なる目標到達時デューティー値dfのレベルを基準としたホールド電流がPFモーター14に与えられるため、そのときの用紙の停止位置を乱れさせる要因に抗するために必要なトルクがPFモーター14によって発生し、印刷用紙の停止精度が向上する。
【0059】
図8は、用紙先端位置が目標停止位置に到達した後、ホールド電流をPFモーター14に印加し続ける時間の長さを説明するための図である。図8では、制御ステップ(時間)に応じたデューティーd値の変動を例示しており、図中の2つの波形の山は、m番目の紙送り期間におけるデューティー値dの変動と、m+1番目の紙送り期間におけるデューティー値dの変動である。つまり、当該m番目の波形の山とm+1番目の波形の山との間の期間(ステップS270の処理が実行させる期間。印字期間と呼ぶ。)に、キャリッジ21の主走査による印刷が一回実行されるため、印字期間中は印刷用紙は停止していなければならない。本実施形態では、PF制御部32aは、印字期間においてどれだけPFモーター14にホールド電流を供給し続けるかを、例えば、ホールド電流決定デューティー値(d´またはd'')自体の大きさに応じて決定する。
【0060】
上記のように用紙先端位置が目標停止位置に到達した際に算出により取得したホールド電流決定デューティー値がある程度小さい場合は、そのときPFモーター14に逆回転を生じさせようとしている負荷も小さいと考えられる。このような場合は、印字期間の途中でホールド電流のPFモーター14への供給を打ち切っても、当該打ち切りの後で印刷用紙が搬送経路上流側に引き戻されることは無いと考えられる。そこでPF制御部32aは、ホールド電流決定デューティー値が所定のしきい値よりも小さい場合は、用紙先端位置が目標停止位置に到達してからの印字期間中において、印字期間中の途中の時点(例えば、1回の印字期間の50%が経過した時点)までホールド電流決定デューティー値に応じたホールド電流をPFモーター14に供給し続け、この途中の時点以降は、ホールド電流の供給を停止する(図8の印字期間における実線参照)。
【0061】
一方、ホールド電流決定デューティー値がある程度大きい場合は、そのときPFモーター14に逆回転を生じさせようとしている負荷も大きいと考えられ、この場合は印字期間の途中でホールド電流の供給を打ち切ると印刷用紙の位置が搬送経路上流側に引き戻されてしまう虞がある。そこでPF制御部32aは、ホールド電流決定デューティー値が上記所定のしきい値以上である場合は、用紙先端位置が目標停止位置に到達してから次の紙送りを開始するまでの間(印字期間の全て)、ホールド電流決定デューティー値に応じたホールド電流をPFモーター14に供給し続ける(図8の印字期間における鎖線参照)。
【0062】
4.変形例
上記ステップS250においてPFモーター14に与えられるホールド電流は、上記ホールド電流決定デューティー値d´およびホールド電流決定デューティー値d''を組み合わせることにより決定してもよい。つまりステップS250の紙送りでは、マイクロコンピューター31が用紙先端位置が目標停止位置に到達したと判定したとき、PF制御部32aでは、PWM部32a4が目標到達時デューティー値dfに補正値F(x)/kを乗算して第一のホールド電流決定デューティー値d´を求めるとともに、目標到達時デューティー値dfに固定補正値n/kを乗算して第二のホールド電流決定デューティー値d''を求め、第一および第二のホールド電流決定デューティー値d´,d''を加算する。そして、当該加算によるデューティー値(d´+d'')によるデューティー比DR{=(d´+d'')/PWMcycle}を、モータードライバー15に出力する。この結果、モータードライバー15からは、デューティー値(d´+d'')に応じた大きさのホールド電流がPFモーター14に印加される。デューティー値(d´+d'')は、一定割合値と調整値との和に該当する。
【0063】
このような変形例を採用した場合であっても、プリンター製品毎のPFモーター14の各特性のばらつきや電源電圧Vcのばらつきや印刷用紙の搬送経路上における位置の違いに応じたホールド電流であって、かつ上記逆回転度合いxが示す逆回転の起こり易さを打ち消すために最適なトルクを生み出すためのホールド電流を、PFモーター14に与えることができる。従って、印刷用紙の停止精度を非常に良好なものとすることができる。ただし当該変形例のようにホールド電流決定デューティー値d´にホールド電流決定デューティー値d''を加算する場合、ホールド電流決定デューティー値d´にホールド電流決定デューティー値d''を加算しない場合と比較して、ホールド電流決定デューティー値d´の大きさ(上記ステップS180において逆回転度合いxに応じて決まるF(x)の大きさ)を、所定程度小さくする必要がある。
【0064】
図9は、本実施形態における効果を説明するための実験結果を示した図である。図9では、各回の紙送りの印刷用紙の停止時にPFモーター14にホールド電流を一切与えなかったとき(条件1)の停止精度と、各回の紙送りの印刷用紙の停止時にPFモーター14に固定値としてのホールド電流を与えたとき(条件2)の停止精度と、各回の紙送りの印刷用紙の停止時に上記逆回転度合いxに応じた大きさのホールド電流(図9では、当該変形例におけるデューティー値(d´+d'')に応じた大きさのホールド電流)を与えたとき(条件3)の停止精度と、を示している。ここで言う停止精度とは、条件1〜3それぞれにおける印刷用紙の停止誤差の範囲を言い、停止誤差の範囲とは、実際の停止位置が目標停止位置から搬送経路上流側へ最もずれたときの位置と実際の停止位置が目標停止位置から搬送経路下流側へ最もずれたときの位置との差である。当該範囲の単位は、1エッジであり、1エッジは、上記エンコード板に所定間隔で設けられたスリットの間隔の1/4に相当する。図9によれば、条件1の停止誤差の範囲は21エッジと非常に大きい。一方、条件2の停止誤差の範囲は10であり、条件3の停止誤差の範囲は7である。つまり本実施形態(条件3)によって、紙送り時の印刷用紙の停止精度が向上したことが判る。
【0065】
5.まとめ
このように本実施形態によれば、プリンター1は、自機特有の中間ローラー19の負荷とPFローラー17の負荷とのバランス(比)に起因する、印刷用紙停止時の逆回転(用紙位置の引き戻し)の生じやすさというものを上記逆回転度合いxとして取得し、この逆回転度合いx(オフセットデューティー値F(x))に応じた大きさのホールド電流を、印刷用紙が目標停止位置に到達した際にPFモーター14に供給するとした。そのため、中間ローラー19の負荷とPFローラー17の負荷とのバランスの違いによって大きかったり小さかったりする上記逆回転を的確に打ち消すことができ、結果、印刷用紙の停止精度が向上し、印刷結果の画質が向上する。
【0066】
また、プリンター1は、印刷用紙が目標停止位置に到達した際のPFモーター14の負荷を示す値(目標到達時デューティー値df)を基準として、上記逆回転度合いx(オフセットデューティー値F(x))に応じてホールド電流の大きさを決定するとした。そのため、プリンター1特有のPFモーター14の特性や、電源電圧Vcや、印刷用紙の搬送経路上における位置の違い、といった各要素を考慮した大きさのホールド電流であって、かつ逆回転度合いxが示す上記逆回転の起こり易さを打ち消すために最適なホールド電流を、PFモーター14に与えることができる。
【0067】
さらに、プリンター1は、上記逆回転度合い検出処理を定期的あるいは不定期に繰り返し実行することで、逆回転度合いxを最新の値に更新することができる。例えば、逆回転度合い検出処理を、プリンター1に電源が投入されたタイミングで実行したり、特定枚数の印刷がなされる度に実行したりすることができる。このような構成とすれば、プリンター1の経年的変化や、周囲の環境(気温、湿度等)等に応じて変り得る逆回転度合いxを随時捕捉することができ、そのときのプリンター1における上記逆回転(用紙位置の引き戻し)の起こりやすさを的確に打ち消すホールド電流によって、印刷用紙の停止精度を常に良好なものとすることができる。
【0068】
なお本発明は、モーターの負荷が大きい特殊動作実行時におけるモーター制御に適用可能である。例えば、プリンター1は、上記輪列切替えレバーを介してPFモーター14とインクシステムが結合しているとき(インクシステム稼働時)のPFモーター14の負荷を計測するとともに、PFモーター14とインクシステムが結合していないときのPFモーター14の負荷を計測する。そして、これら両計測結果の比を、インクシステムとPFモーター14とが結合している期間における逆回転度合いxとし、インクシステム稼働後の停止時に、当該逆回転度合いxに応じたホールド電流でPFモーター14の駆動を制御することにより、インクシステムの停止精度の向上を図っても良い。
【符号の説明】
【0069】
1…プリンター、10…本体部、10a…凹部、12…PUローラー、13…搬送ガイド、14…PFモーター、15…モータードライバー、17…PFローラー、17a…PF従動ローラー、18…遊星ギア機構、18a…遊星ギア、18b…アーム部材、19,19a,19b…中間ローラー、19a1…中間従動ローラー、20…PEセンサー、21…キャリッジ、21a…印字ヘッド、22…プラテン、30…外部I/F、31…マイクロコンピューター、31a…目標位置設定モジュール、31b…モーター回転制御モジュール、31c…負荷監視モジュール、31d…逆回転度合い検出モジュール、31e…デューティー通知モジュール、32…ASIC、32a…PF制御部、32a1…速度演算部、32a2…位置演算部、32a3…PID演算部、32a4…PWM部、32b…キャリッジ制御部、32c…PU制御部、33…ロータリーエンコーダー、40…給紙トレー、40a…用紙収容部、40a1…斜面、60…ホストコンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも印刷媒体を搬送するために駆動する搬送モーターと、
上記印刷媒体の搬送経路の所定位置に配設され、搬送経路に供給された印刷媒体に接しつつ上記搬送モーターの駆動により回転することによって印刷媒体を搬送する搬送ローラーと、
上記搬送ローラーよりも上記搬送経路の上流側の所定位置に配設され、搬送経路に供給された印刷媒体に接しつつ上記搬送モーターの駆動により回転することによって印刷媒体を搬送する中間ローラーと、
上記搬送モーターの駆動を制御する制御部とを備え、
上記制御部は、上記搬送ローラーを回転させるときの上記搬送モーターの負荷と上記中間ローラーを回転させるときの上記搬送モーターの負荷との比較結果に応じた大きさの電流を、上記印刷媒体が搬送経路上の目標停止位置に到達した場合に上記搬送モーターに与えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
上記制御部は、予め、上記搬送モーターの駆動によって上記搬送ローラーのみを回転させたときの搬送モーターの負荷を示す第一メジャメント値と、搬送モーターの駆動によって搬送ローラーおよび上記中間ローラーを回転させたときの搬送モーターの負荷を示す第二メジャメント値と、を取得するとともに、第二メジャメント値と第一メジャメント値との差分と、第一メジャメント値と、の比を上記比較結果として取得しておき、上記印刷媒体が目標停止位置に到達した場合に、当該比に応じた大きさの電流を搬送モーターに与えることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
上記制御部は、上記印刷媒体が目標停止位置に到達した際における上記搬送モーターの負荷を示す値を基準として、上記比較結果に応じた電流の大きさを決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
上記制御部は、上記印刷媒体が目標停止位置に到達した際における上記搬送モーターの負荷を示す値に対して一定割合を乗じて得た一定割合値と、上記印刷媒体が目標停止位置に到達した際における上記搬送モーターの負荷を示す値を上記比較結果に応じて調整して得た調整値と、の和に従って上記電流の大きさを決定することを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
上記印刷媒体の搬送方向に略直交する方向への主走査を行うことにより印刷媒体に画像を印刷する印刷機構部を備え、
上記制御部は、上記搬送モーターを間欠的に駆動させることにより上記主走査の不実行期間において印刷媒体を搬送させるとともに、当該間欠的な駆動のそれぞれにおける上記目標停止位置に印刷媒体が到達した場合に、上記電流を搬送モーターに与えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
少なくとも印刷媒体を搬送するために駆動する搬送モーターと、
上記印刷媒体の搬送経路の所定位置に配設され、搬送経路に供給された印刷媒体に接しつつ上記搬送モーターの駆動により回転することによって印刷媒体を搬送する搬送ローラーと、
上記搬送ローラーよりも上記搬送経路の上流側の所定位置に配設され、搬送経路に供給された印刷媒体に接しつつ上記搬送モーターの駆動により回転することによって印刷媒体を搬送する中間ローラーと、
上記搬送モーターの駆動を制御する制御部とを備え、
上記制御部は、上記搬送ローラーを回転させるときの上記搬送モーターの負荷と上記中間ローラーを回転させるときの上記搬送モーターの負荷との比較結果に応じた大きさの電流を、上記印刷媒体が搬送経路上の目標停止位置に到達した場合に上記搬送モーターに与えることを特徴とするモーター制御装置。
【請求項7】
少なくとも印刷媒体を搬送するために駆動する搬送モーター、を備えるモーター制御装置が実行するモーター制御方法であって、
上記モーター制御装置は、上記印刷媒体の搬送経路の所定位置に配設され、搬送経路に供給された印刷媒体に接しつつ上記搬送モーターの駆動により回転することによって印刷媒体を搬送する搬送ローラーと、当該搬送ローラーよりも搬送経路の上流側の所定位置に配設され、搬送経路に供給された印刷媒体に接しつつ上記搬送モーターの駆動により回転することによって印刷媒体を搬送する中間ローラーとを備え、
上記搬送ローラーを回転させるときの上記搬送モーターの負荷と上記中間ローラーを回転させるときの上記搬送モーターの負荷との比較結果に応じた大きさの電流を、上記印刷媒体が搬送経路上の目標停止位置に到達した場合に上記搬送モーターに与えることを特徴とするモーター制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−83913(P2011−83913A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236480(P2009−236480)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】