説明

印刷装置、印刷制御システム、印刷制御システムの制御方法、及びプログラム

【課題】 ホストコンピュータで同一のパスワードが付加された複数の印刷データを送信する場合、ユーザは印刷装置で何度もパスワードの認証操作を行う必要がある。
【解決手段】 ホストコンピュータは、同一のパスワードが付加された複数の印刷データを印刷装置へ送信し、印刷装置は、送信された複数の印刷データのうちの一つの印刷データを受信して記憶する手段と、ユーザからパスワードの入力を受け付けるための操作手段と、ユーザから入力されたパスワードと、記憶された印刷データに付加されたパスワードとが一致する場合に、一致するパスワードが付加された印刷データに基づいて画像形成を行う画像形成手段と、画像形成をした後に、送信された複数の印刷データのうちの残りの印刷データを受信した場合、再度パスワードをユーザに入力させることなく、残りの印刷データに基づいて画像形成させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホストコンピュータにより送信された印刷データを印刷装置で留め置く印刷装置であって、ユーザから印刷装置の操作部を介して操作を受け付けたことに応じて印刷データの印刷を行う印刷装置、印刷制御システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
PCなどのホストコンピュータから送信された印刷データをすぐに印刷せず印刷装置で記憶しておき、ユーザが印刷装置の前で印刷のための操作を行った場合に印刷処理を実行する印刷制御システムが知られている。このような印刷制御システムにおいては、印刷装置の操作画面でユーザが正しいパスワード等を入力した場合にその印刷データに基づく印刷をすることができる。このような印刷制御システムは、例えば、その印刷装置がネットワークに接続された共用のプリンタである場合であって、その印刷物を他人に見られたくない場合に有効である。
【0003】
ところで、ホストコンピュータで印刷物の部数とソート処理(その印刷物を部単位に仕分けした状態で印刷装置の排紙部に排出する処理)とを指定して印刷指示する場合がある。この場合、印刷装置側でソート処理をすると、印刷データに含まれる全ページ画像を印刷装置のメモリに記憶する必要があり、印刷装置のメモリを圧迫する場合がある。そのため、印刷装置に印刷データを記憶できるメモリ容量が限られているような場合、特許文献1のように印刷データを送受信する方法が知られている。特許文献1によると、指定された印刷部数の部ごとに(部単位で)ホストコンピュータ側で複数の印刷データを生成し、生成した複数の印刷データのそれぞれを順次ホストコンピュータから印刷装置へ送信する。このように部単位で生成した複数の印刷データを順次印刷装置へ送信すると、1ページ目から最終ページまでの全画像データを印刷装置のメモリにキャッシュする必要がなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−216125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように部単位で生成した複数の印刷データを印刷装置へ送信する場合であって、それらの印刷データを印刷装置で留め置く場合には、生成された複数の印刷データのそれぞれに同一のパスワードを付加して送信する必要がある。このように部単位で生成された同一のパスワードが付加された複数の印刷データを順次印刷装置へ送信するホストコンピュータと、送信された印刷データを留め置くことが可能なメモリの容量が制限されている印刷装置とを有するシステムでは、以下のような課題がある。印刷装置で留め置きできる容量を超える印刷データをホストコンピュータが送信する場合、ホストコンピュータは、制限を超えた印刷データを送信するために印刷装置のメモリが空くのを待機する。このとき、ホストコンピュータで生成した複数の印刷データのうちの少なくとも1つの印刷データは印刷装置で留め置かれ、残りの印刷データはホストコンピュータで留め置かれている(印刷データの送信待ちをしている)状態が起こる。
【0006】
このような状態で、印刷装置の操作画面でユーザが正しいパスワードの入力等を行い所定の印刷操作をすると、印刷装置側で記憶している印刷データに基づく印刷が行われる。印刷が終了すると、印刷装置に記憶された印刷データは消去される。印刷データが消去されると、ホストコンピュータ側で待機している残りの印刷データが印刷装置へ送信される。送信された残りの印刷データは印刷装置に記憶され、再度パスワードが入力されるまで印刷装置に記憶されつづける。このように、同一のパスワードが付加された印刷データに基づく印刷処理であるにも関わらず、印刷装置側で正しいパスワードを入力してから印刷データに基づく印刷がされるまでの一連の処理が複数回にわたって断続的に行われることになる。また印刷装置でユーザに何度もパスワードを入力させる必要があり使い勝手もわるいという課題がある。
【0007】
また、印刷装置に記憶している印刷データを消去するイベント(例えばタイムアウト時間が経過したときに印刷データを消去するイベントや、ユーザによるジョブの消去指示ななど)が発生する場合も同様の課題が起こる。印刷データを消去するイベントが発生した場合、何度も印刷データの消去イベントを発生させることになり効率がわるい。
【0008】
本発明は、上述した課題のうちの少なくとも一つに鑑みて、ホストコンピュータによって単一の指示に基づき生成された複数の印刷データが送信された場合に、送信された複数の印刷データの全てを一括して処理する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、ホストコンピュータと印刷装置とを有する印刷制御システムであって、前記ホストコンピュータは、アプリケーションにより生成されたデータを印刷する指示を受け付ける受付手段と、前記受付手段により受け付けた指示に基づいて、同一のパスワードが付加された複数の印刷データを送信する送信手段とを有し、前記印刷装置は、前記送信手段により送信された前記複数の印刷データのうちの少なくとも一つの印刷データを受信する受信手段と、前記受信手段により受信された印刷データを記憶する記憶手段と、ユーザからパスワードの入力を受け付けるための操作手段と、前記操作手段を介してユーザから入力されたパスワードと、前記記憶手段に記憶した印刷データに付加されたパスワードとが一致したことに応じて、当該一致するパスワードが付加された印刷データに基づく画像形成を行う画像形成手段と、前記記憶手段に記憶した印刷データに付加されたパスワードと一致するパスワードが前記操作手段を介して入力された後に、前記同一のパスワードが付加された複数の印刷データのうちの残りの印刷データを前記受信手段が受信した場合、前記操作手段で再度パスワードをユーザに入力させることなく、当該受信した残りの印刷データに基づいて前記画像形成手段に画像形成させる制御手段と
を有することを特徴とする。
【0010】
また上記の課題を解決するために、本発明は、ホストコンピュータと印刷装置とを有する印刷制御システムであって、前記ホストコンピュータは、アプリケーションにより生成されたデータを印刷する指示を受け付ける受付手段と、前記受付手段により受け付けた単一の指示に基づいて複数の印刷データを送信する送信手段とを有し、前記印刷装置は、前記送信手段により送信された前記複数の印刷データのうちの少なくとも一つの印刷データを受信する受信手段と、前記受信手段により受信された印刷データを記憶する記憶手段と、前記印刷装置の操作部を介してユーザから印刷する指示を受け付けたことに応じて、前記記憶手段に記憶された印刷データに基づく画像形成を行う画像形成手段と、前記印刷データに基づく画像形成をしていない印刷データを消去するイベントが発生した場合、前記記憶手段に記憶された印刷データを消去する消去手段と、前記記憶手段に記憶された印刷データを前記消去手段が消去した後に、前記送信手段により送信された複数の印刷データのうちの残りの印刷データを前記受信手段が受信した場合には、前記操作部を介してユーザから印刷する指示を受け付けることなく、当該受信した残りの印刷データを前記消去手段に消去させる制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、同一のパスワードが付加された複数の印刷データがホストコンピュータにより送信された場合に、印刷装置で複数回にわたってユーザにパスワードを入力させる手間を軽減することができる。
【0012】
またその他の発明によれば、単一の指示に基づいて生成された複数の印刷データがホストコンピュータにより送信された場合、印刷装置で発生した印刷データの消去イベントに基づいて複数の印刷データを一括して消去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態におけるホストコンピュータと印刷装置とを有する印刷制御システムの構成を示す図である。
【図2】図1のホストコンピュータにおいて印刷を指示する画面である。
【図3】図2の画面でセキュアプリントを指定した場合に、文書名、ユーザ名、及びパスワードを設定する画面である。
【図4】図1のホストコンピュータに蓄積している印刷データの状況を示すテーブルである。
【図5】図1の印刷装置のRAMの記憶領域を示す図である。
【図6】図1のホストコンピュータにおける印刷処理を示すフローチャートである。
【図7】図1の印刷装置において受信した印刷データの印刷処理を示すフローチャートである。
【図8】図1の印刷装置で管理しているセキュアプリントジョブの管理テーブルを模式的に示す図である。
【図9】図1の印刷装置においてユーザの認証操作に対する処理を示すフローチャートである。
【図10】図1の印刷装置で表示される認証操作画面とその画面の遷移を示す図である。
【図11】図5のセキュアプリント用の記憶領域に記憶された印刷データを消去する処理を示すフローチャートである。
【図12】図8に示すセキュアプリントジョブの管理テーブルのレコードを削除する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0015】
図1は、本実施形態における印刷制御システムの構成を示す図である。図1に示すように、ホストコンピュータ100と印刷装置200とがネットワークと接続しており、互いに通信可能な構成となっている。ホストコンピュータ100は、制御部110、キーボード120、表示装置130、外部記憶装置140を備えている。制御部110は、ROM113に記憶されたプログラムあるいは外部メモリに記憶されたプログラム(またはアプリケーション)に基づいて文書処理などを実行するCPU111を備える。またROM113は、CPU111の制御プログラムであるオペレーティングシステム(以下OS)等を記憶している。RAM112は、CPU111の主メモリまたはワークエリアとして機能する。
【0016】
操作部インタフェース114は、キーボード120や不図示のポインティングデバイスからのキー入力を制御する。表示部インタフェース115は、液晶ディスプレイやCRTディスプレイなどの表示装置130の表示を制御する。外部記憶装置インタフェース116は、外部記憶装置140のアクセスを制御する。外部記憶装置140は、ブートプログラム、各種のアプリケーション、フォントデータ、ユーザファイル、編集ファイル、プリンタ制御コマンド生成プログラム(以下、プリンタドライバという)等を記憶する。なお外部記憶装置140には、プリンタドライバにより生成された印刷データをホストコンピュータ100で管理するためのスプーラ等の領域が設けられている。外部記憶装置140の一例としてハードディスク(HD)やSSD(Solid State Drive)等がある。ネットワークインタフェース117は、ネットワークと印刷装置200とを接続し、印刷装置200の通信制御処理を行う。
【0017】
CPU111は、表示装置130の操作画面に表示されるマウスカーソル(不図示)で指示されたコマンドに基づいて登録された種々のウインドウを開き、種々のデータ処理を実行する。ユーザは、印刷を実行する際、印刷の設定に関するウインドウを開き、プリンタの設定や、印刷モードの選択を含むプリンタドライバに対する印刷処理方法の設定を行える。
【0018】
次に同図を用いて印刷装置200のハードウェア構成について説明する。印刷装置200は、制御部210、操作部220、印刷部230、読取部240を備えている。制御部210はCPU211を備え、印刷装置200を制御する。CPU211は、ROM213に記憶した制御プログラムに基づいて印刷処理等を実行する。
【0019】
CPU211は、ネットワークインタフェース214を介してホストコンピュータ100と通信し、印刷装置200内の情報をホストコンピュータ100へ通知する。RAM212は、CPU211の主メモリやワークエリア等として機能する。RAM212は、出力情報展開領域、環境データ格納領域、NVRAM等に用いられる。操作部インタフェース215は、操作部220からのキー入力を制御する。操作部220は、電源のON/OFFを行うスイッチ、およびLED表示器、及びユーザの操作を受け付ける各種キーが配されている。印刷部インタフェース216は、制御部210から出力されたビットマップ画像を印刷する印刷部230を制御する。読取部インタフェース217は、原稿画像を読み取る読取部240を制御する。
【0020】
図2は、ホストコンピュータ100の表示装置130に表示する操作画面の一例を示す図である。図2の操作画面は、外部記憶装置140に記憶されている、印刷装置200専用のプリンタドライバにより表示される画面である。ジョブ種類201は、ジョブ種類の属性を指定する項目である。「印刷」または「セキュアプリント」のいずれかを指定できる。印刷部数202は、印刷物の部数を指定する項目である。その他、ページレイアウト203(1ページ/枚、2ページ/枚、4ページ/枚)、配置順204(左上から右向き、左上から下向き、右上から左向き、右向きから下向き)、印刷方法205(片面印刷、両面印刷、製本印刷)、とじ方向206(長辺とじ、短辺とじ)等の項目も指定する。更に、排紙方法207として「指定しない」、「ソート」、「ステイプル」の何れかを指定する。本実施形態における「ソート」とは、印刷部数で指定された部の単位で印刷物を印刷装置200の排紙部(不図示)に排出する機能のことである。「ステイプル」とは、上述のように印刷物を部単位で印刷し、更に、その印刷物にステイプルを施して印刷装置200の排紙部に排出する機能のことである。
【0021】
図3は、図2の画面に配置されるジョブ種類201の項目で「セキュアプリント」が指定された際に表示する画面である。図3の設定画面は、図2と同様プリンタドライバにより表示される。この画面では、文書名、ユーザ名、及びパスワードを設定する。301は文書名を入力する領域である。初期値としてホストコンピュータ100のアプリケーションで生成したデータのファイル名が自動的にセットされている。302はユーザ名を入力する領域である。初期値として、ホストコンピュータにログインしているユーザのログイン名がセットされている。なおここで入力する文書名及びユーザ名は、自由に編集可能である。303はパスワードを入力する領域である。301〜303のそれぞれの領域に値が入力された状態でOKボタンをユーザが押下すると、ホストコンピュータ100は、文書名、ユーザ名、及びパスワードを付加した印刷データに関するプリントジョブを印刷装置200へ送信する。
【0022】
なお本実施形態におけるプリントジョブとは、PDL(Page Description Language)で記述した印刷データを基に画像を印刷するジョブのことである。プリントジョブは、更に「セキュアプリントジョブ」と「非セキュアプリントジョブ」とに分類される。セキュアプリントジョブとは、ホストコンピュータ100側でユーザにパスワードを付加して印刷データを送信し、印刷装置200の操作部220でユーザが正しいパスワードを入力した場合に印刷するジョブのことである。非セキュアプリントジョブは、上記のセキュアプリントジョブ以外のプリントジョブである。
【0023】
図4は、ホストコンピュータ100におけるスプーラに蓄積しているプリントジョブのデータテーブルを示している。ジョブID401は、スプーラに蓄積しているプリントジョブを識別する識別子である。402は文書名(302で入力した文書名)、403はユーザ名(303で入力したユーザ名)、404は印刷データのデータサイズを示している。図4の例では、文書名「4/1配布資料」、ユーザ名「suzuki」の印刷データをスプーラに蓄積する場合の例である。排紙方法207を「ソート」に指定し、印刷部数202を「5部」と指定すると、図4のように5つのプリントジョブが作成される。そして、作成したプリントジョブが順次印刷装置200へ送信される。もし印刷装置200でメモリフルが発生している場合には、メモリ容量が空くまで印刷データの送信を待機する。
【0024】
図5は、印刷装置200のRAM212の記憶領域を示す図である。本実施形態の印刷装置200では、RAM212は、上述したCPU211の主メモリやワークエリア等として使用する記憶領域の他に、図5に示す特別の記憶領域が割り当てられている。セキュアプリント用の記憶領域501は、セキュアプリントジョブに関する印刷データをパスワード認証が行われるまで保持するために専用に割り当てられている領域である。セキュアプリント用に割り当てる記憶領域のメモリ容量は、操作部220のユーザあるいは管理者の操作で可変に設定することができる。セキュアプリント用の記憶領域501に割り当てるメモリ容量を大きくすればするほど、印刷装置200側でより多くのセキュアプリントジョブに関する印刷データを保持できる。ただし、その分RAM212全体のメモリ容量をセキュアプリントジョブの印刷データで占有することになる。
【0025】
非セキュアプリント用の記憶領域502は、非セキュアプリントジョブに関する印刷データを受信して印刷する際に使用する領域である。受信した印刷データを記憶し、印刷データをラスタライズする処理のために使用する。なお後述するが、非セキュアプリント用の記憶領域502は、非セキュアプリントジョブを実行する場合だけに使用するわけではない。セキュアプリントジョブについてパスワード認証をした後、認証済みのパスワード付き印刷データに基づく画像形成を行う際も使用する。更に、プリントジョブ以外のジョブ、例えばコピージョブや、画像送信ジョブなどを実行する際にも使用する。
【0026】
セキュアプリント用の記憶領域501と非セキュアプリント用の記憶領域502は、物理的に区別してもよいし、論理的にメモリアドレスを割り当てることにより管理してもよい。
【0027】
他の領域503は、ホストコンピュータ100から印刷データとともに受信した文書名やユーザ名、パスワード等の情報を印刷データと対応づけて記憶する。
【0028】
図6は、ホストコンピュータ100における印刷処理を示すフローチャートである。図6の各ステップは、CPU111が外部記憶装置140に記憶されたプログラムを実行することで実現される。図6のフローチャートは、ホストコンピュータ100の操作画面を介して印刷指示を受付けたことで開始する。
【0029】
S601にて、ホストコンピュータ100のCPU111は、アプリケーションにより生成されたデータの印刷指示を受付ける。受付ける印刷指示には、図2と図3の画面でユーザが設定した201〜208の項目の値が含まれている。これ以外にもさまざまな設定値が印刷指示に含まれているが、本実施形態の本質部分とは関係ないので省略する。
【0030】
S602では、CPU111は、S601で受付けた印刷指示に含まれる印刷設定を解析し、部単位で印刷データを生成するか否かを判定する。この判定は、印刷設定の排紙方法207の値に基づき行う。例えば本実施形態においては、印刷設定の排紙方法207で「ソート」または「ステイプル」が選択されている場合、部単位で印刷データを生成すると判定する。一方で排紙方法207の項目で「指定しない」が選択されている場合には、S602でNOと判定する。なお印刷設定で「ソート」や「ステイプル」が選択されていない場合でも、初期値として印刷データを部単位で生成することが指定されている場合もある。このような場合はS602でYESと判定する。
【0031】
S603では、CPU111は、S601で受付けた印刷指示に含まれる印刷設定を解析し、セキュアプリントジョブを生成するか非セキュアプリントジョブを生成するかを判定する。この判定は、印刷設定のジョブ種類201の値に基づいて行われる。ジョブ種類201で「印刷」を選択していれば非セキュアプリントジョブを生成すると判定し(S603でNO)、「セキュアプリント」が選択されていればセキュアプリントジョブを生成すると判定する(S603でYES)。
【0032】
S604では、CPU111は、アプリケーションにより生成されたデータからパスワード付き印刷データを生成する。本実施形態においてパスワード付き印刷データとは、図3の画面で入力されたパスワードが付加されている印刷データのことである。
【0033】
ここで、S604の処理は、S601で受け付けた印刷指示に含まれる印刷部数の数だけ繰り返す。そのため、S604で生成した同一のパスワード付き印刷データが、印刷部数202で指定した数だけ生成される。例えばユーザが図2の画面で印刷部数を「5部」印刷することを指示し、図3の画面でパスワードを設定すると、設定したパスワードを付加した印刷データを5つ生成し、ホストコンピュータ100のスプーラにプリントジョブを投入する。
【0034】
S605は、S603で非セキュアプリントジョブを生成すると判定した場合の処理である。S605では、CPU111は印刷データを印刷部数202の項目で指定された部数分だけS604と同様にして生成し、生成した印刷データに関するプリントジョブをスプーラに投入する。
【0035】
S606は、S603で受け付けた印刷指示に含まれる印刷設定にセキュアプリントの指定があるか否かを判定する処理である。この判定はS603の処理と同様であるので説明を省略する。
【0036】
S607は、セキュアプリントジョブのパスワード付き印刷データを生成する処理である。CPU111は、S601で受け付けた印刷指示に含まれる印刷部数202の指定及びパスワードを付加し、印刷データを生成する。この処理では、S604やS605の処理とは異なり、印刷部数202の指定に関わらず1つのセキュアプリントジョブの印刷データを生成する。
【0037】
S608は、非セキュアプリントジョブの印刷データを生成する処理である。CPU111は、印刷部数の指定を付加し、1つのセキュアプリントジョブの印刷データを生成する。
【0038】
S609では、CPU111は、ネットワークインタフェース117で送受信するパケットを監視し、印刷装置200に印刷データを送信可能か否か判定する。例えば印刷装置200のメモリがフルの状態であるか、または印刷装置がビジーの状態などで印刷データを送信できない状態であるかなどを判定する。印刷データを送信可能と判定した場合は(S609でYES)、印刷データが送信可能となるまで待機する。
【0039】
S609で印刷データを送信可能と判定すると、S610でCPU111は印刷データを順次送信する。生成したジョブに関する印刷データを送信し終えるまではS609とS610の処理を繰り返す。図4で示すようにスプーラに複数のプリントジョブが投入されている場合、その全てのプリントジョブに関する印刷データを送信するまで繰り返すことになる。全て印刷装置200へ印刷データを送信し終えた場合(S611でYES)は本フローチャートの処理を終了する。
【0040】
図7は、印刷装置200における印刷データの受信処理を示すフローチャートである。図7に示す各ステップは、印刷装置200のROM213に記憶されたプログラムをCPU211が実行して実現される。図7のフローチャートは、図6のS610でホストコンピュータ100が送信した一または複数のプリントジョブに関する印刷データを受信することにより開始する。
【0041】
S701にて、印刷装置200のネットワークインタフェース214は印刷データをホストコンピュータ100から受信する。またこのとき印刷データともに文書名やユーザ名、その他の印刷設定等も受信する。
【0042】
S702にて、CPU211は、S701で受信した印刷データにパスワードが付加されているか否かを判定する。そして、その結果に基づいて印刷データに関するプリントジョブがセキュアプリントジョブであるか非セキュアプリントジョブであるかを判定する。セキュアプリントジョブであると判定した場合(S702でYES)、S703へ進む。非セキュアプリントジョブであると判定した場合(S702でNO)、S718へ進む。
【0043】
S703で、CPU211は、セキュアプリント用の記憶領域501がメモリフルであるかどうかを判定する。CPU211は、RAM212のセキュアプリント用の記憶領域501に既に記憶されているデータを参照し、閾値以上の有効なデータが記憶されていることによりメモリフルが発生しているかどうかを判定する。閾値以上の有効なデータがセキュアプリント用の記憶領域501に記憶されていると判定した場合、メモリフルである、すなわち、これ以上セキュアプリントジョブの印刷データを印刷装置200で留め置くことができない状態であると判断し、S704へ進む。
【0044】
例えば図4のように、ホストコンピュータ100で同一のパスワードをもつ5つのセキュアプリントジョブに関する印刷データを生成したとする。そして、5つのセキュアプリントジョブのうち3つのセキュアプリントジョブに関する印刷データを印刷装置200に記憶したところでメモリフルが発生したとする。この場合、同一のパスワードをもつ5つのセキュアプリントジョブのうち3つのセキュアプリントジョブの印刷データは印刷装置に記憶される。残り2つのセキュアプリントジョブの印刷データは、セキュアプリント用の記憶領域501の印刷データが消去されるまでホストコンピュータ100で待機していることになる。
【0045】
S704にて、CPU211はネットワークインタフェース214を介してホストコンピュータ100へメモリフルエラーを通知する。またS701で受信した印刷データは破棄する。
【0046】
S705で、CPU211は、セキュアプリント用の記憶領域501の印刷データが消去されることによりメモリフルが解消したかどうかを監視する。セキュアプリント用の記憶領域501に記憶されている印刷データが消去される場合とは、例えば、印刷装置200に既に留め置かれているセキュアプリントジョブのパスワード認証を行って印刷処理が完了した場合などである。他にも、ユーザによりセキュアプリントジョブをキャンセルする指示があった場合や、セキュアプリントジョブに対して設けられたタイムアウト時間が経過した場合も、セキュアプリント用の記憶領域501に記憶された印刷データは消去される。メモリフルが解消しない場合は(S705でNO)S705の処理を繰り返す。
【0047】
S706で、CPU211は、上述のような要因でメモリフルが解消したことをネットワークインタフェース214を介してホストコンピュータ100へ通知し、S701で受信した印刷データを再送するように促す。
【0048】
S707にて、CPU211は、セキュアプリント用の記憶領域501にパスワード付き印刷データを記憶する。印刷データとともに受信したパスワード、文書名及びユーザ名は、RAM212内の他の領域503に記憶し、セキュアプリントジョブの管理テーブルで一元管理する。
【0049】
セキュアプリント用の記憶領域501の印刷データは、後で操作部220を介してパスワードの認証操作が行われるまではラスタライズせず、PDLの形式のまま記憶される。ただし印刷データを保持する際にPDL形式のまま保持するのではなく、PDLの印刷データをラスタライズして得たビットマップ画像データを記憶してもよい。ビットマップ画像データを記憶することで、ユーザにより操作部220で印刷指示された後即座に印刷物を出力することができる。
【0050】
S708にて、CPU211は、印刷装置200で管理している図8の管理テーブルを参照する。
【0051】
図8は、印刷装置200のRAM212に記憶されている、セキュアプリントジョブの状態を管理する管理テーブルである。この管理テーブルで示される各レコードの値は、図5に示すRAM212の他の領域503に記憶されているものである。セキュアプリントジョブID801は、セキュアプリント用の記憶領域501に記憶されている印刷データに関するプリントジョブを識別する識別子である。文書名802、ユーザ名803、パスワード804は、セキュアプリントジョブIDに対応する印刷データの文書名、ユーザ名、パスワードであり、S701で印刷データとともに受信したものである。
【0052】
受信時刻805は、印刷装置200で印刷データを受信した際の時刻である。もし印刷データがホストコンピュータ100で複数のパケットに分割されており、パケット毎に分割された複数の印刷データを印刷装置200で受信した場合には、最初に印刷データを受信した際の時刻を記憶する。管理テーブルの各レコードは、CPU211により定期的に監視されている。監視の結果、受信時刻805が印刷装置200で予め決められたタイムアウト時間を経過した場合は、そのセキュアプリントジョブIDで特定する印刷データをセキュアプリント用の記憶領域501から消去する。
【0053】
状態806は、「認証待ち」「認証済み」「期限切れ」「中止」の4つの状態のうちのいずれかを示す状態情報である。「認証待ち」とは、セキュアプリントジョブがパスワードの認証を待機している状態を示す状態情報である。「認証済み」とは、パスワードの認証が成功して印刷処理を完了した状態を示す状態情報である。状態806が認証済みであるセキュアプリントジョブをこの管理テーブルのレコードで管理している間は、文書名、ユーザ名、及びパスワードが同一の印刷データについては再度パスワードをユーザに入力させることなく印刷する。つまり、セキュアプリント用の記憶領域501のメモリフルなどの要因で印刷データが後から印刷装置に到着する場合であっても、上述の期間に受信した印刷データだけはユーザのパスワード入力操作を省略して印刷することができる。「期限切れ」とは、受信時刻805から所定時間(タイムアウト時間)が経過して印刷データが強制的に消去された状態を示す状態情報のことである。タイムアウト時間は、印刷装置200で予め設定された、印刷データを記憶する有効時間のことである。状態806が期限切れを示しているセキュアプリントジョブをこの管理テーブルのレコードで保持している間は、文書名、ユーザ名、及びパスワードが同一の印刷データを受信した場合、その受信した印刷データは即座に(タイムアウト時間を待たずに)消去される。「中止」とは、ユーザから操作部220を介してジョブのキャンセルが指示されたことにより、印刷処理を行わずに印刷データが消去された状態を示す状態情報である。操作部220でセキュアプリントジョブの中止(キャンセル)を指示すると、そのセキュアプリントジョブの印刷データは、非セキュアプリント用の記憶領域501から消去され、状態806は中止に更新される。
【0054】
なお状態806の情報は、同一のパスワードが付加された印刷データを後からホストコンピュータ100から受信した場合に、その受信した印刷データに対して所定の処理(みなし認証や印刷データ消去等)を行うために管理している。
【0055】
経過時間807は、状態806が「認証済み」、「期限切れ」、「中止」の何れかに変更されてから経過した時間を示している。認証後経過時間807が印刷装置200で設定された所定時間(例えば30分)が経過するまでは、管理テーブルのレコードを削除せずに保持している。認証後の経過時間807が所定時間を経過すると、該当するセキュアプリントジョブのレコードを管理テーブルから削除する。
【0056】
図7の説明に戻る。S709にて、CPU211は、S701で受信しS707でセキュアプリント用の記憶領域501に記憶した印刷データに付加されている文書名、ユーザ名、及びパスワードと一致するジョブのレコードが、図8の管理テーブルに記憶されているか否かを判定する。一致するレコードがある場合(S709でYES)、S710へ進む。一致するレコードがない場合(S709でNO)、S715へ進む。
【0057】
なお本実施形態では、受信した印刷データに付加されている文書名とユーザ名とパスワードの全てが一致するレコードがあるかどうかを判定している。ただし、ユーザ名とパスワードのみが一致するレコードがあるかどうかを判定してもよい。またパスワードのみが一致するレコードがあるかどうかを判定してもよい。
【0058】
S710にて、CPU211は、S709で一致すると判定されたレコードの状態806を参照する。参照したレコードの状態806が期限切れまたは中止を示しているか否かを判定する。期限切れを示していると判定した場合(S710でYES)、既に同じパスワードが付加された印刷データがタイムアウト時間の経過により消去されていると判断する。レコードの状態806が中止を示している場合(S710でYES)、既に同じパスワードが付加された印刷データがユーザの操作によりキャンセル(中止)されたと判断する。参照したレコードの状態806が期限切れ及び中止の何れも示していない場合(S710でNO)、S711へ進む。
【0059】
S711にて、CPU211は、S709で一致すると判定されたレコードの状態806を参照し、レコードの状態806が認証済みを示しているかを判定する。認証済みを示していると判定した場合(S711でYES)、既に同じパスワード等を付加した印刷データが認証されていることになる。そのため、再度ユーザによりパスワードを入力させることなく印刷処理を行ってもよいとみなして、S712へ進む。認証済みでない、すなわち、参照したレコードの状態806が認証待ちを示す、と判定した場合(S711でNO)、S715へ進む。
【0060】
S712にて、CPU211は、他のジョブ(非セキュアプリントジョブや、コピージョブ、画像送信ジョブなど)が印刷装置200で実行中であるかどうかを判定する。他のジョブが実行中である場合、非セキュアプリント用の記憶領域502は実行中のジョブに関するデータで占有されていることになる。そのため、実行中のジョブが完了して非セキュアプリント用の記憶領域502が使用できるようになるまで待機する。他のジョブが実行中でなければ、S709へ進む。
【0061】
S713にて、CPU211は、RAM212のセキュアプリント用の記憶領域501に記憶したパスワード付き印刷データを読み出し、ラスタライズ処理し、印刷部230へ出力し、印刷部230で画像形成を行う。S713で印刷処理を行う際は、セキュアプリント用の記憶領域501から読み出した印刷データを、非セキュアプリント用の記憶領域502にコピーする。そして、コピー元の印刷データを記憶する記憶領域を解放し、コピー先の記憶領域を使用して印刷処理を行う。これは、速やかにセキュアプリント用の記憶領域を解放し、ホストコンピュータ100側で送信を待機している(あるいは待機しているかもしれない)印刷データを受信可能にするためである。
【0062】
S714では、CPU211は、図8の管理テーブルの状態806を認証済みに設定し、本処理を終了する。
【0063】
S715は、CPU211は管理テーブルの状態806を認証待ちに設定し、本処理を終了する。
【0064】
S716にて、CPU211は、セキュアプリント用の記憶領域501に記憶した印刷データを消去する。この印刷データは、ホストコンピュータ100から受信されてからタイムアウト時間が経過するのを待つことなく消去される。
【0065】
S717にて、CPU211は、S716で消去した印刷データに対応する管理テーブルの状態806を認証待ちから期限切れに更新し、本処理を終了する。
【0066】
S718は、受信した印刷データが非セキュアプリントジョブの印刷データであると判定した場合の処理である。S715では、受信された印刷データを非セキュアプリント用の記憶領域502に記憶する。なお、非セキュアプリントジョブの印刷データを記憶領域502に記憶する際にメモリフルとなる可能性もあるが、この場合については本実施形態の本質ではないので説明を省略する。S719では、CPU211は、非セキュアプリント用の記憶領域502に記憶された印刷データに基づいて印刷部230に画像形成処理させ、本処理を終了する。
【0067】
図9は、印刷装置200におけるセキュアプリントジョブのパスワード認証処理を示すフローチャートである。図9の各ステップは、印刷装置200のROM213に記憶したプログラムをCPU211が実行して実現される。図9の処理は、操作部220の状態確認キー(不図示)が押下されたことにより開始される。
【0068】
S901にて、CPU211はセキュアプリントジョブの状態を確認する指示を受け付けると、図10の1001に示す画面を表示する。
【0069】
図10は、印刷装置200の操作部220で表示する1001〜1004の画面とその画面の遷移を示す図である。プリントジョブ状況/履歴画面1001にはプリント状況とセキュアプリントジョブ状況とが表示されており、操作部220の上下キー(不図示)を操作してセキュアプリントジョブ状況を選択した状態でOKボタンの押下を検知すると、S902へ進む。なおセキュアプリントジョブ状況の項目は、管理テーブルの状態806が認証待ちの状態であるセキュアプリントジョブが印刷装置200で留め置かれている場合にのみ表示される。
【0070】
S902では、CPU211は、セキュアプリントジョブが1つだけであるか複数あるかを判定する。図8の管理テーブルを参照し、管理テーブルに存在するレコードが1つであるか複数であるかをチェックして上述の判定を行う。セキュアプリントジョブが複数ある場合(S902でNO)、S903へ進む。一方、セキュアプリントジョブが1つである場合(S903でYES)、ユーザ名や文書名をユーザに選択させる必要がないので、以降のS903〜S907の処理を省略して直接S908へ進み、図10のパスワード入力画面1004を操作部220に表示する。
【0071】
S903では、CPU211は、管理テーブルのレコードのユーザ名803の列を参照し、現在保持しているセキュアプリントジョブを印刷装置200に投入したユーザが一人だけかどうかを判定する。複数であると判定した場合は、S904へ進み、ユーザ選択画面1002を操作部220に表示する。一人だけであると判定した場合は、ユーザ名を選択させる必要はないので、直接S908へ進む。
【0072】
S905では、CPU211は、ユーザ選択画面1002でユーザによりユーザ名が選択されたことを検知し(S905でYES)、S906でそのユーザ名に対応する文書選択画面1003を表示する。S906で表示されている文書選択画面1003には、「4/1配布資料」の文書名の項目が3つ並んでいる。即ち、文書名「4/1配布資料」、ユーザ名「suzuki」が付加された印刷データを3つ印刷装置200で記憶していることを意味する。この一例では、ホストコンピュータ100側で、文書名「4/1配布資料」、ユーザ名「suzuki」の印刷データを5つ生成した場合を例にして説明する。印刷装置200には、文書名「4/1配布資料」のセキュアプリントジョブが3つしか記憶していない。従って、残り2つのジョブは、ホストコンピュータ100でセキュアプリント用の記憶領域501が空くのを待機しているか、あるいはネットワーク上の遅延等で印刷装置200に印刷データが到着していない状態であることがわかる。
【0073】
S907では、CPU211は、文書選択画面1003でユーザにより表示された文書名の何れかが選択されたことを検知し(S907でYES)、S908へ進む。S908では、操作部220はパスワード入力画面1004を表示し、ユーザに対して操作部220の英数字キー(不図示)を操作してパスワードを入力するように促す。
【0074】
S909では、CPU211はパスワード入力画面1004で入力されたパスワードと、対応するセキュアプリントジョブに関する印刷データに付加されているパスワードとが一致するか否かを判定する。一致すると判定した場合(S909でYES)、S910へ進み、一致しないと判定した場合(S909でNO)、パスワードが正しくない旨のメッセージを操作部220に表示した後にS901の処理に戻る。
【0075】
S910では、CPU211は、S909で一致すると判定したパスワードが付加された印刷データに基づき印刷処理を行う。S909で一致すると判定したパスワード付き印刷データが複数存在する場合は、それら複数のパスワード付き印刷データを一括して印刷処理する。この結果、同じパスワードを設定したジョブに対して何度もパスワード認証させる手間を省くことができる。
【0076】
S911では、CPU211は、印刷処理後の印刷データをRAM212から消去する。S912では、CPU211は、実行後のセキュアプリントジョブの認証状態を認証待ちから認証済みに変更し、本フローチャートの処理を終了する。
【0077】
図11は、印刷装置200におけるセキュアプリントジョブの印刷データの消去処理を示すフローチャートである。図11の処理は、印刷データの受信時刻805からタイムアウト時間が経過した場合に、セキュアプリント用の記憶領域501の印刷データを消去するものである。図11の各ステップは、印刷装置200のROM213に記憶したプログラムをCPU211が実行して実現する。図11の処理は、定期的なタイミングで(例えば1分毎に)行われるものである。
【0078】
S1101にて、CPU211は、図8の管理テーブルの認証待ちのレコードを監視する。監視の結果に基づいて、各レコードの受信時刻805が、印刷装置200で予め決められたタイムアウト時間を超えたかどうかを判断する(S1102)。タイムアウト時間が経過したと判定した場合(S1102でYES)、印刷データを消去するイベントが発生したと判断し、該当する管理テーブルのレコードの状態806を期限切れに設定する(S1103)。そして、セキュアプリント用の記憶領域501で保持する印刷データに基づく画像形成を印刷部230で消去する(S1104)。
【0079】
図12は、図8の管理テーブルのレコードを削除する処理を示すフローチャートである。本実施形態においては、図12で示すフローチャートの処理が行わない限り図8の管理テーブルの各レコードを削除しないようにしている。これは、一定時間経過後に同じパスワードが付加された印刷データを受信した場合に、受信した印刷データに関連するプリントジョブの状態を参照するためである。図12の各ステップは、印刷装置200のROM213に記憶したプログラムをCPU211が実行して実現される。図12の処理も、図11の処理と同様に定期的なタイミングで行われる。
【0080】
S1201では、CPU211は、図8の管理テーブルを参照してセキュアプリントジョブのレコードのうち状態806が認証済みを示すレコードを監視する。監視されたレコードの認証後経過時間807が所定時間経過している場合(S1202でYES)、該当するレコードを削除し(S1203)、本フローチャートの処理を終了する。
【0081】
以上説明したように、本実施形態によれば、印刷装置200に同一のパスワードが付加されている印刷データに対するパスワード認証を行う場合、一度のパスワード入力で該当する印刷データを一括して印刷処理できる。そのため、ユーザに何度もパスワードを入力させずに済む。
【0082】
更に、一度パスワード認証が完了したセキュアプリントジョブについては、管理テーブルで認証済みとして管理するようにした。そのため、同一のパスワードが付加された印刷データを印刷装置200で後から受信した場合でも、その印刷データに付加されたパスワードを再度ユーザに入力させずに印刷処理を可能とする。
【0083】
更に、同一パスワードが付加された印刷データを印刷する際に再度ユーザにパスワードを入力させずに印刷処理を可能とする期間を一定期間に制限した。そのため、同じパスワードを有するセキュアプリントを、ユーザによるパスワードの入力なしで無制限に印刷処理されてしまう事態を抑制することができる。
【0084】
更に、本実施形態によれば、セキュアプリントジョブの印刷データをホストコンピュータから受信してから所定時間(タイムアウト時間)が経過した場合には、自動的に消去するように設定した。その結果、RAM212のセキュアプリント用の記憶領域を長時間占有せずに済む。
【0085】
そして、タイムアウト時間が経過して印刷データを消去した後になって、同じ認証情報(パスワード等)が付加された残りの印刷データをホストコンピュータから受信した場合、タイムアウト時間を待つことなく受信した印刷データを即座に消去するようにした。その結果、タイムアウト時間が経過して印刷データが消去されたにも関わらず残りの印刷データがメモリに記憶されたままとなってしまうような事態を防止できる。
【0086】
更に、本実施形態によれば、部単位で生成された複数のセキュアプリントジョブの1つをユーザの指示でキャンセル(中止)すると、そのキャンセルしたセキュアプリントジョブとパスワードが一致する残りのプリントジョブも同時にキャンセルするようにした。そのため、同じパスワードを有するセキュアプリントジョブ(印刷データ)を逐一キャンセル(中止)する必要がない。また、キャンセルしたセキュアプリントジョブとパスワードが一致するプリントジョブがキャンセル後に印刷装置200に到着した場合でも、適切に印刷データを消去することができる。
【0087】
なお本実施形態によれば、図2の操作画面の、ジョブ種類201、印刷部数202、排紙方法207等の項目で設定した値に従って、同一のパスワードが付加された複数の印刷データをホストコンピュータで生成する。しかし、必ずしもこれらの設定値に従って複数の印刷データを生成する必要はない。例えば、生成した印刷データをデータサイズに基づいて複数に分割するものであっても本実施形態を適用できる。この場合、所定のデータサイズに分割された複数の印刷データのそれぞれに、同一のパスワード(認証情報)を付加して印刷装置200へ送信することになる。また他の変形例として、印刷データに含まれる複数ページの画像のページ単位で複数の印刷データを生成してもよい。この場合、ページ単位で生成された複数の印刷データのそれぞれに同一の認証情報を付加して印刷装置200へ送信することになる。
【0088】
(他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0089】
100 ホストコンピュータ
200 印刷装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストコンピュータと印刷装置とを有する印刷制御システムであって、
前記ホストコンピュータは、
アプリケーションにより生成されたデータを印刷する指示を受け付ける受付手段と、
前記受付手段により受け付けた指示に基づいて、同一のパスワードが付加された複数の印刷データを送信する送信手段とを有し、
前記印刷装置は、
前記送信手段により送信された前記複数の印刷データのうちの少なくとも一つの印刷データを受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された印刷データを記憶する記憶手段と、
ユーザからパスワードの入力を受け付けるための操作手段と、
前記操作手段を介してユーザから入力されたパスワードと、前記記憶手段に記憶した印刷データに付加されたパスワードとが一致したことに応じて、当該一致するパスワードが付加された印刷データに基づく画像形成を行う画像形成手段と、
前記記憶手段に記憶した印刷データに付加されたパスワードと一致するパスワードが前記操作手段を介して入力された後に、前記同一のパスワードが付加された複数の印刷データのうちの残りの印刷データを前記受信手段が受信した場合、前記操作手段で再度パスワードをユーザに入力させることなく、当該受信した残りの印刷データに基づいて前記画像形成手段に画像形成させる制御手段と
を有することを特徴とする印刷制御システム。
【請求項2】
前記受信手段は、前記送信手段により送信された複数の印刷データのうちの残りの印刷データを、少なくとも前記操作手段を介してユーザからパスワードが入力された後に受信することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記操作手段を介して入力されたパスワードと、前記記憶手段に記憶した印刷データに付加されたパスワードとが一致する場合、認証済みであることを示す状態情報を当該一致するパスワードに対応づけて管理する管理手段とを有し、
前記制御手段は、前記送信手段により送信された複数の印刷データのうちの残りの印刷データに付加されているパスワードと同一のパスワードが、前記管理手段により前記状態情報と対応づけて管理されている場合、前記操作手段で再度パスワードをユーザに入力させることなく、前記受信した残りの印刷データに基づいて前記画像形成手段に画像形成させるように制御することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷制御システム。
【請求項4】
前記記憶手段は、前記送信手段により送信された印刷データに付加されているパスワードと、前記管理手段により前記状態情報に対応づけて管理されているパスワードとが一致しない場合、前記操作手段を介してパスワードが入力されるまで当該印刷データを記憶することを特徴とする請求項3に記載の印刷制御システム。
【請求項5】
前記受付手段は、更に、前記印刷装置で排出する印刷物の印刷部数の指定を受け付け、
前記送信手段により生成される複数の印刷データは、前記受付手段で受け付けた印刷部数の部ごとに生成されることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の印刷制御システム。
【請求項6】
ホストコンピュータと印刷装置とを有する印刷制御システムであって、
前記ホストコンピュータは、
アプリケーションにより生成されたデータを印刷する指示を受け付ける受付手段と、
前記受付手段により受け付けた単一の指示に基づいて複数の印刷データを送信する送信手段とを有し、
前記印刷装置は、
前記送信手段により送信された前記複数の印刷データのうちの少なくとも一つの印刷データを受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された印刷データを、少なくとも前記印刷装置の操作部を介してユーザから印刷する指示を受け付けるまで記憶する記憶手段と、
前記ユーザから印刷する指示を受け付けたことに応じて、前記記憶手段に記憶された印刷データに基づく画像形成を行う画像形成手段と、
前記印刷データに基づく画像形成をしていない印刷データを消去するイベントが発生した場合、前記記憶手段に記憶された印刷データを消去する消去手段と、
前記記憶手段に記憶された印刷データを前記消去手段が消去した後に、前記送信手段により送信された複数の印刷データのうちの残りの印刷データを前記受信手段が受信した場合には、前記操作部を介してユーザから印刷する指示を受け付けることなく、当該受信した残りの印刷データを前記消去手段に消去させる制御手段と
を有することを特徴とする印刷制御システム。
【請求項7】
前記印刷データを消去するイベントは、前記記憶手段に記憶された印刷データを消去するために予め設定された時間が経過した場合に発生することを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記印刷データを消去するイベントは、前記記憶手段に記憶された印刷データを消去する指示をユーザから前記操作部を介して受け付けた場合に発生することを特徴とする請求項6または7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記送信手段により送信された複数の印刷データは同一のパスワードが付加されており、
前記画像形成手段は、前記記憶手段に記憶されている印刷データに付加されているパスワードと、前記操作部を介して入力されたパスワードとが一致する場合、当該一致するパスワードが付加されて印刷データに基づいて画像形成を行うことを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項10】
ホストコンピュータと通信可能な印刷装置であって、
前記ホストコンピュータによりより送信された、同一のパスワードが付加された複数の印刷データのうちの少なくとも一つの印刷データを受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された印刷データを記憶する記憶手段と、
ユーザからパスワードの入力を受け付けるための操作手段と、
前記操作手段を介してユーザから入力されたパスワードと、前記記憶手段に記憶した印刷データに付加されたパスワードとが一致したことに応じて、当該一致するパスワードが付加された印刷データに基づく画像形成を行う画像形成手段と、
前記記憶手段に記憶した印刷データに付加されたパスワードと一致するパスワードが前記操作手段を介して入力された後に、前記同一のパスワードが付加された複数の印刷データのうちの残りの印刷データを前記受信手段が受信した場合、前記操作手段で再度パスワードをユーザに入力させることなく、当該受信した残りの印刷データに基づいて前記画像形成手段に画像形成させる制御手段と
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項11】
ホストコンピュータと印刷装置とを有する印刷制御システムの制御方法であって、
前記ホストコンピュータのアプリケーションにより生成されたデータを印刷する指示を受け付ける受付ステップと、
前記受付ステップで受け付けた指示に基づいて同一のパスワードが付加された複数の印刷データを前記印刷装置へ送信する送信ステップとを有し、
前記送信ステップで送信された前記複数の印刷データのうちの少なくとも一つの印刷データを前記印刷装置が受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信された印刷データを記憶手段に記憶する記憶ステップと、
ユーザから前記印刷装置の操作手段を介してパスワードの入力を受け付けるステップと、
前記操作手段を介してユーザから入力されたパスワードと、前記記憶手段に記憶した印刷データに付加されたパスワードとが一致したことに応じて、当該一致するパスワードが付加された印刷データに基づく画像形成を画像形成手段が行う画像形成ステップと、
前記記憶手段に記憶した印刷データに付加されたパスワードと一致するパスワードが前記操作手段を介して入力された後に、前記同一のパスワードが付加された複数の印刷データのうちの残りの印刷データを前記印刷装置が受信した場合、前記操作手段で再度パスワードをユーザに入力させることなく、当該受信した残りの印刷データに基づいて前記画像形成手段に画像形成させる制御ステップと
を有することを特徴とする印刷制御システムの制御方法。
【請求項12】
コンピュータを請求項9に記載の画像形成装置の各手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−128595(P2012−128595A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278559(P2010−278559)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】