説明

印刷装置、及び印刷装置における記録媒体の搬送方法

【課題】給紙から印刷までの印刷処理全体の処理時間を短くした印刷装置及び印刷装置における記録媒体の搬送方法を提供すること。記録媒体外に印刷されることを防止した印刷装置等を提供すること。
【解決手段】キャリッジを駆動させるキャリッジ駆動手段と、記録媒体を搬送させる搬送駆動手段と、を備え、前記キャリッジに設けられた記録ヘッドにより前記記録媒体への記録を行う印刷装置において、前記搬送駆動手段によって前記記録媒体の前記印刷装置への供給による搬送が終了する前に、前記キャリッジ駆動手段を駆動させる制御手段、を備えることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷装置における記録媒体の搬送方法に関する。詳しくは、印刷用紙の給紙動作中に、キャリッジの移動動作を行うようにした印刷装置及び印刷装置における記録媒体の搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリンタなどの印刷装置では印刷時の処理時間向上のため、紙送り動作とキャリッジ動作とを重ね合わせる、重ね合わせ処理が行われていた。重ね合わせ処理は、まず、1パス分の印字処理が終了すると紙送りモータ(PFモータ)を起動させて紙送りを行う。その後、PFモータの駆動が終了する前に所定のタイミングでキャリッジモータ(CRモータ)を起動させてキャリッジを移動させる。これにより、紙送り終了と同時に印字処理を行うことができる。従って、紙送りの終了後にCRモータを起動させてキャリッジの移動を行う場合と比較して、印刷時の処理時間の向上を図ることができる。
【0003】
このような重ね合わせ処理に関し、従来では、キャリッジの駆動開始から印刷開始までの見積もり時間と記憶手段に記憶された設定時間との減算値に基づいて、キャリッジの開始タイミングを算出することで、複雑な算出処理によるキャリッジの開始遅れを防止するようにしたものがある(例えば、以下の特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−90431号公報、図5など
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような重ね合わせ処理は1パス分の印刷処理の終了後に行われ、印刷用紙を給紙する際に行われていなかった。給紙のための紙送り動作とキャリッジ動作とを重ね合わせてしまうと、用紙外に印刷されてしまう場合があったからである。例えば、プリンタドライバで指定された用紙長さよりも実際に給紙した用紙が短いときである。
【0005】
一方、従来からの印刷装置には、給紙のための紙送りに関して、給紙失敗を検出するために、「紙なし」から「紙あり」を検出する用紙検出センサを備えている。給紙中の紙送りでは、用紙を搬送する動作もあるため、「紙なし」から「紙あり」のみ検出すればよく、必ずしも「紙あり」から「紙なし」を検出する必要はなかった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、給紙から印刷までの印刷処理全体の処理時間を短くした印刷装置及び印刷装置における記録媒体の搬送方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、記録媒体外に印刷されることを防止した印刷装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、キャリッジを駆動させるキャリッジ駆動手段と、記録媒体を搬送させる搬送駆動手段と、を備え、前記キャリッジに設けられた記録ヘッドにより前記記録媒体への記録を行う印刷装置において、前記搬送駆動手段によって前記記録媒体の前記印刷装置への供給による搬送が終了する前に、前記キャリッジ駆動手段を駆動させる制御手段、を備えることを特徴としている。これにより、例えば、給紙動作が終了すると記録ヘッドにより印刷処理が開始されるので印刷処理全体の処理時間を短くすることができる。
【0009】
また、本発明は上記印刷装置において、前記記録媒体の前記印刷装置への供給による搬送が終了する前とは、前記記録媒体の前記供給による記録開始位置までの搬送のことであって、更に、前記記録開始位置までの搬送が行われている最中に、前記記録媒体ありから前記記録媒体なしを検出する記録媒体検出センサを備え、前記制御手段は前記記録媒体検出センサにより前記記録媒体なしを検出しないときに前記キャリッジ駆動手段を駆動させる、ことを特徴としている。これにより、例えば、検出センサにより記録媒体ありからなしが検出されないとキャリッジ駆動手段を駆動させるようにしているため、記録媒体外に印刷が行われることを防止できる。
【0010】
更に、本発明は上記印刷装置において、前記制御手段は、前記記録媒体検出センサにより前記記録媒体ありから前記記録媒体なしを検出したとき前記搬送駆動手段を駆動させ、前記記録媒体を前記印刷装置外に排出させる、ことを特徴としている。これにより、例えば、検出センサによって記録媒体ありからなしが検出されると記録媒体が排出されるため、記録媒体外に印刷されるのを防止できる。
【0011】
更に、本発明は上記印刷装置において、前記制御手段は、前記搬送駆動手段によって前記記録媒体の前記供給による前記記録開始位置までの搬送が行われている最中に前記記録媒体の搬送経路における位置決めがなされるように前記搬送駆動手段を制御する、ことを特徴としている。これにより、例えば、記録媒体がスキュー補正され、記録媒体上の所望の位置で印刷が行われる。
【0012】
更に、本発明は上記印刷装置において、前記制御手段は、前記記録媒体の前記供給による前記記録開始位置までの搬送が行なわれている最中に、前記供給による搬送が終了したときに前記記録開始位置から前記記録媒体への記録が行われる時間を演算し、当該時間に前記キャリッジ駆動手段を駆動させる、ことを特徴としている。
【0013】
更に、本発明は上記印刷装置において、前記制御手段は、前記記録媒体の前記供給による前記記録開始位置までの搬送が行われている最中に、前記搬送駆動手段への搬送駆動時間が前記キャリッジ駆動手段へのキャリッジ駆動時間と同じか短いとき、前記搬送駆動時間が開始する時点から前記記録媒体検出センサから前記記録ヘッドまでの距離に基づく固定時間が経過した時点で前記キャリッジ駆動手段を駆動させ、前記搬送駆動時間が前記キャリッジ駆動時間より長いとき、前記搬送駆動時間が終了する時点から、前記キャリッジ駆動時間と前記固定時間とを減算した減算時間を逆算した時点で、前記キャリッジ駆動手段を駆動させる、ことを特徴としている。これにより、例えば、給紙動作が終了すると記録ヘッドによる印刷処理が開始されるため、給紙から印刷までの処理時間の短縮を図ることができる。
【0014】
更に、キャリッジを駆動させるキャリッジ駆動手段と、記録媒体を搬送させる搬送駆動手段と、を備え、前記キャリッジに設けられた記録ヘッドにより前記記録媒体への記録を行う印刷装置における前記記録媒体の搬送方法であって、前記搬送駆動手段によって前記記録媒体の前記印刷装置への供給による搬送が終了する前に、前記キャリッジ駆動手段を駆動させる工程、を備えることを特徴としている。これにより、例えば、給紙動作が終了すると記録ヘッドにより印刷処理が開始されるので印刷処理全体の処理時間を短くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。図1は本発明が適用される印刷装置1の一例を示す図である。
【0016】
図1に示すように、印刷装置1にはキャリッジ2を備える。キャリッジ2は、着脱可能に設けられたインクカートリッジ7とインクカートリッジ7からのインクが供給される記録ヘッド6とから構成される。記録ヘッド6には複数のノズルを備え、このノズルから記録媒体の一例である印刷用紙8にインクが吐出され、印刷が行われる。
【0017】
また、印刷装置1には、駆動プーリ3と従動プーリ4、これらのプーリ3、4により張設されたタイミングベルト5、及びキャリッジ駆動手段としてのキャリッジモータ(CRモータ)9を備える。キャリッジ2はタイミングベルト5に取り付けられ、CRモータ9の回転駆動により駆動プーリ3が回転してタイミングベルト5が移動し、それに伴いキャリッジ2が主走査方向に移動する。
【0018】
更に、印刷装置1にはキャリッジ2の移動速度、移動方向、位置等を検出するためのリニアエンコーダ13が配設される。リニアエンコーダ13は、印刷装置1内面の側壁に架設された被検出用テープ14とキャリッジ2の背面に固着されたキャリッジ検出センサ15(図3参照)とから構成される。被検出用テープ14には無数のスリット14aが一定間隔で形成され(図3参照)、キャリッジ検出センサ15がこのスリット14aを検出することでリニアエンコーダ13はキャリッジ2の移動速度、位置等を検出する。
【0019】
また、印刷装置1の下部側端には搬送駆動手段としての紙送りモータ(PFモータ)10と、ロータリーエンコーダ16とを備える。PFモータ10は、各ローラを回転させることで印刷用紙8を印刷装置1内に供給させ、副走査方向に紙送りを行う。ロータリーエンコーダ16は、印刷用紙8の紙送り速度、移動方向、位置等を検出するためのもので、回転盤に被検出テープが設けられている以外はリニアエンコーダ13と同様である。
【0020】
図2は、印刷装置1の断面図であり、主に印刷用紙8の搬送系の構成を説明するための図である。印刷装置1には給紙トレイ19と、上流側から順に給紙ローラ20と、搬送ローラ11とその従動ローラ17、及び排紙ローラ12とその従動ローラ18を備える。各ローラ20、11、12はPFモータ10と接続される。
【0021】
給紙トレイ19に載置された印刷用紙8は、PFモータ10の駆動に伴い給紙ローラ20が回転し、印刷装置1内部へと供給される。そして、PFモータ10の駆動により搬送ローラ11が回転して印刷用紙8が印刷位置に搬送され、記録ヘッド6により印刷が行われる。その後、PFモータ10の駆動により排紙ローラ12が回転して印刷用紙8が排紙される。なお、レジスト機能を有する搬送ローラ11は印刷用紙8に対して正確な位置決めがなされるようスキュー補正を行う。
【0022】
更に、図2に示すよう印刷装置1には本発明の特徴部分である、記録媒体検出センサとしての用紙検出センサ33を備える。用紙検出センサ33は、印刷用紙8が印刷装置1内に給紙失敗を検出するため「紙なし」から「紙あり」の状態を検出するとともに、給紙終了後に印刷用紙8外に印刷が行われることを防止するため「紙あり」から「紙なし」の状態を検出する。詳細は後述する。
【0023】
図3は印刷装置1の電気的な全体構成図である。印刷装置1はCPU21、ASIC22、DCユニット23、PROM24、RAM25、EEPROM26、インターフェース(IF)27、及び各ドライバ29、30、31を備える。また、印刷装置1はホストコンピュータ28と接続される。
【0024】
ホスト28から供給された印刷データはIF27を介してASIC22に入力される。CPU21はこの印刷データに基づき、記録ヘッド6の印刷スケジュールを設定する。この印刷スケジュールに従い、CPU21はヘッドドライバ29を介して記録ヘッド6を駆動制御する。
【0025】
また、CPU21は印刷データに基づいて、CRモータ9及びPFモータ10の起動や走行スケジュールを設定する。設定された走行スケジュール等は指令信号としてCPU21からDCユニット23に出力される。
【0026】
DCユニット23は、この指令信号に基づきCRモータドライバ30を介してCRモータ9を、PFモータドライバ31を介してPFモータ10を駆動制御する。なお、DCユニット23はキャリッジ2が駆動される際にリニアエンコーダ13のキャリッジ検出センサ15によって検出されたパルス信号が入力され、キャリッジ2の移動速度等を算出する。また、DCユニット23は印刷用紙8の紙送りの際にロータリーエンコーダ16からパルス信号が入力され、PFモータ10の駆動速度や、印刷用紙8の紙送り速度等を算出する。DCユニット23は算出されたこれらの値に基づいて各モータ9、10が所定の回転速度等に至るよう各モータ9、10を制御する。
【0027】
次に図4乃至図11を参照して、重ね合わせ処理の詳細について説明する。重ね合わせ処理とは、紙送り終了時点で実際に印字が開始されるように、キャリッジ2の移動動作と印刷用紙8の紙送り動作とを重ね合わせる処理のことである。つまり、PFモータ10の駆動が終了する前にCRモータ9の駆動を開始させる処理のことである。
【0028】
最も単純には、PFモータ10が停止し紙送りが終了した時点でCRモータ9への通電を開始してCRモータ9を駆動させればよい。しかし、CRモータ9の通電開始からキャリッジ2が印字位置まで移動する時間は待ち時間となる。これでは、印刷処理に時間がかかってしまう。そこで、PFモータ10が駆動され紙送りの動作が終了する前に所定のタイミングでCRモータ9への通電を開始し紙送り動作とキャリッジ2動作との重ね合わせて処理を行う。これにより、その待ち時間を詰めて印刷の処理時間短縮を図ることができる。
【0029】
図4はCRモータ9及びPFモータ10の駆動速度を示す波形図である。横軸は時間で、縦軸は駆動速度を示す。まず、CRモータ9の通電開始から印字位置までにかかる時間Tについて説明する。
【0030】
図4に示すように、ある時点xでDCユニット23によってCRモータ9への通電が開始される。本実施例において、CRモータ9はDCモータを用いているため、制御上実際には時点yにて駆動が開始される。そして、通電開始から所定時間t1経過後に記録ヘッド6からインクが吐出され、印字が行われる。この経過時間t1は、印刷装置1の構造上の仕様により予め決められた時間である。
【0031】
一方で、この印字位置は画像データ(印刷データ)の配置により異なる。図5(A)は印字位置の違いを説明するための図である。図5(A)に示すように、キャリッジ2が同じ位置から加速を開始しても、画像データの位置によりその印字位置は異なる。
【0032】
よって、実際にはCRモータ9への通電開始から印字位置までの時間は、図4に示すように、予め決められた時間t1に経過時間t2を加算した値Tとなる。t1は一定であるが、t2は画像データの位置により異なる。
【0033】
次に、PFモータ10の駆動時間Bについて説明する。PFモータ10についても駆動開始から実際に駆動されるまでの時間等、所定時間のマージンがあるため、図4に示すように駆動時間Bは示される。
【0034】
ここで、時刻αは最も早くCRモータ9の起動が可能な時間を示す。このαの時点からCRモータ9を起動させればPFモータ10の起動の終了後に記録ヘッド6から印字が行われる。なお、このαは用紙検出センサ33から記録ヘッド6までの距離に基づき算出された時間を示し、印刷用紙8に対して図5(B)に示すように給紙される場合、つまり図面上、上から順に給紙される場合、印刷用紙8の最も下端を基準にした時間を示す。
【0035】
また、時間AはこのαからPFモータ10が起動を停止するまでの時間を示す(図4参照)。この時間Aは印刷用紙8の紙送り速度によって変化する。
【0036】
図6は、CRモータ9の起動開始タイミングを説明するための図である。図でβはCRモータ9の起動開始時間を示す。重ね合わせ処理で問題となるのは、PFモータ10の起動中、どのタイミングでCRモータ9の起動を開始すればよいか、である。
【0037】
上述したように、時刻αは最も早くCRモータ9の起動が可能な時間を示すため、時刻αのタイミングでCRモータ9の起動を開始すればよいことになる。しかし、時間Aと時間Tとを比較して、時間Aが時間Tと同じか大きいとき、このαのタイミングでCRモータ9の起動を開始すると、図6(A)に示すようにPFモータ10が起動している最中に印字を開始する事態が発生する。この場合紙送りの最中に印字が行われるため、例えば、印刷用紙8には記録画像が最初は斜め方向で途中から主走査方向(又は最初は主走査方向で途中から斜め方向)に印字されてしまう。そこで、時間Aが時間Tと同じか大きいとき、CRモータ9の起動開始時刻βは、少し遅らせ、PFモータ10の駆動が終了する時点から逆算して時間T経過時となるように設定する(図6(B)参照)。すなわち、開始時刻βは印字開始位置をPFモータ10の起動終了時に合わせて、(B−T)時間経過時である。紙送り終了と同時に印字を開始するため、印刷処理時間の短縮を図ることができるからである。
【0038】
一方、CRモータ9の駆動開始から印字までの時間Tの方が、時刻αからPFモータ10の駆動が終了するまでの時間Aよりも大きいとき、同様にPFモータ10の起動が終了すると同時に印字を行うようするには、図7(A)に示すように、CRモータ9の起動開始時刻βを設定すればよい。図6(B)の例と比較して、CRモータ9の起動を早くしている。
【0039】
しかし、実際に給紙された印刷用紙8の給紙方向の長さが指定された長さより短くなった場合、図7(B)に示すように、用紙8の給紙方向の長さが短くなった分だけ、PFモータ10の駆動時間Bが短縮されB2となり、用紙8外に印刷される事態が発生する。図8はかかる事態を説明するための図である。例えば、図8(A)に示すように、ホストコンピュータ28から印刷データが指定されても、図8(B)に示すように、実際に給紙される印刷用紙8の給紙方向の長さが短いと、印字領域(黒の四角で示される領域)が印刷用紙8からはみ出ることで、用紙8外に印刷されてしまう。
【0040】
つまり、印刷処理時間を短縮すべくCRモータ9の開始時刻βを設定しても、実際に給紙される用紙8が短いと、用紙8がないとわかった時点で既にCRモータ9が駆動を開始し、用紙8の存在しない位置に印字を行うため、用紙8外に印刷される。なお、時刻αは上述したように印刷用紙8の下端を基準にしているため、図7(A)、(B)のように印刷用紙8の紙送り方向の長さが変わっても、PFモータ10の停止位置からの時間は変わらない。例えば、印刷用紙8の長さが短くなると、時刻αの基準位置は、図8(B)に示すように用紙8の下端を基準にしているため、PFモータ10の駆動終了時点からの時間は変わらない。
【0041】
このように用紙8外に印刷される事態を防止するため、CRモータ9の開始時刻βを図7(A)と比較して少し遅らせ、時刻αに設定する(図9参照)。このように設定することで、用紙8の給紙方向の長さが短くなった場合、時刻βはPFモータ10の起動終了後となり(図10参照)、CRモータ9の駆動が開始されることはなく、用紙8外に印刷される事態を防止できる(図11(A)参照)。なお、本実施の形態での印刷装置1において、CRモータ9はPFモータ10の駆動終了後に駆動されないものとしている。
【0042】
以上から重ね合わせ処理における、CRモータ9の駆動開始(通電開始)タイミングは、経過時間Aが経過時間Tと同じか大きいとき、(B−T)経過時であり、時間Aが時間Tより小さいときは、時刻αとなる。
【0043】
この重ね合わせ処理は、従来では1パス分の印刷が終了した時点で行われていた。本発明では、給紙動作中にも行うようにする。つまり、本発明では給紙による紙送り動作の際にも重ね合わせ処理を行うようにする。但し、上述した印刷用紙8の紙送り方向の長さが短い場合など、印刷用紙8外に印刷が行われることを防止するために、用紙検出センサ33により「紙あり」から「紙なし」状態を監視する。なお、本実施の形態において給紙とは印刷開始位置までの紙送りのことである。1パス分の印刷終了後の紙送りや排紙のための紙送りとは異なる。
【0044】
給紙動作中に行われる、かかる処理の詳細について説明する。図12(A)は、給紙動作全体の処理を示すフローチャートである。
【0045】
まず、PFモータ10により給紙ローラ20が回転駆動することで、印刷用紙8の給紙動作が開始される(S100)。次いで、CPU21は用紙検出センサ33によって「紙なし」から「紙あり」が検出されたか否かを判断する(S101)。印刷用紙8を検出することで給紙失敗を防止するためである。従って、「紙あり」が検出されないと(NO)、給紙エラーとなる(S102)。
【0046】
一方、「紙なし」から「紙あり」を検出すると(S101でYES)、スキュー取り動作が行われる(S103)。給紙された印刷用紙8を搬送経路で正確に位置決めするためである。搬送ローラ11によって、印刷用紙8への圧力と複数回の往復移動を行わせることで動作が行われる(図11(B)参照)。例えば、DCユニット23がPFモータ10を制御することで行われる。
【0047】
次いで、印刷用紙8が印刷位置まで紙送りされる(S104)。印刷位置で実際に印刷を行わせるためである。例えば、DCユニット23によってPFモータ10が制御され、給紙ローラ20や搬送ローラ11が回転駆動されることで印刷位置までの紙送りが行われる。
【0048】
そして、この紙送り動作が行われている最中に、図12(B)に示す処理が行われる。すなわち、CPU21は、用紙検出センサ33が「紙あり」から「紙なし」を検出したか否かを判断する(S110)。既に検出センサ33によって「紙なし」から「紙あり」が検出されたので(S101でYES)、印刷用紙8は給紙されている。しかし、印刷用紙8の紙送り方向の長さが指定された長さより短いと、上述したように用紙8外に印刷されてしまう場合もある。このような事態を防止するため、「紙あり」から「紙なし」の状態を用紙検出センサ33によって検出(監視)する。
【0049】
検出センサ33によって、「紙あり」から「紙なし」が検出されないと(S110でNO)、印刷用紙8に対して最初の1パス目の印刷を行うべく、上述したPFモータ10とCRモータ9との重ね合わせ処理が行われる(S111)。給紙動作中の重ね合わせ処理のため、例えば図6等に示すPFモータ10は給紙のためのモータ駆動であり、CRモータ9は最初の1パス目における印刷のためのキャリッジ2の駆動となる。
【0050】
一方、「紙あり」から「紙なし」が用紙検出センサ33によって検出されると(S110でYES)、すなわち用紙8の長さが指定された長さより短いと、次いでCPU21は印字可能領域があるか否かを判断する(S112)。用紙8の長さが短くても印字できる領域があれば印字するためである。印字できる領域がないと(NO)、給紙された用紙8が排紙される(S113)。印字領域があれば(S112でYES)、印字領域分の印刷を行わせるため、重ね合わせ処理が行われる(S111)。例えば、文字「ABC」を印字する場合に、用紙8の長さが短くなっても、「AB」のみ印字できる領域があれば、これらの文字の印刷を行うべく、重ね合わせ処理を行う。その後、給紙動作が終了し(図12(A)のS105)、一連の処理が終了する。
【0051】
このように、印刷用紙8の紙送り動作中にPFモータ10とCRモータ9との重ね合わせ処理を行わせることで、印刷処理全体の処理時間の短縮を図ることができる。図13は、その例を説明するための図である。給紙動作中にCRモータ9とPFモータ10との重ね合わせ処理を行わない場合(図13(A))は、PFモータ10による給紙のためのモータ駆動が終了した後に、CRモータ9が最初の1パス目の印刷を行うべく駆動する。一方、給紙動作中に重ね合わせ処理を行う場合(図13(B))は、CRモータ9の駆動と給紙動作のためのPFモータ10の駆動とが重なっているため、図13(A)の場合と比較して、CRモータ9の駆動開始が早くなり、更に相対的にPFモータ10の駆動も早くなるため、印刷処理全体の時間が短縮し、処理の高速化を図ることができる。
【0052】
上述した例では、印刷装置1としていわゆるプリンタを用いて説明した。これ以外にも、印刷装置1はファクシミリ装置、複写機やこれらの機能を有する複合機などでもよい。
【0053】
また、上述した例では、記録媒体として印刷用紙8を例にして説明した。記録ヘッド6から吐出されたインクを記録できるものであれば何でもよく、例えば、OHPや厚紙、はがき等であってもよい。
【0054】
更に、上述した例は、CRモータ9とPFモータ10とをDCモータとして説明した。それ以外にもステッピングモータなどの各種モータであってもよい。但し、ステッピングモータを使用する場合は、図4に示す駆動波形で立ち上がり部分等でのマージンを考慮せずに重ね合わせ処理におけるCRモータ9の駆動開始タイミングを演算する必要がある。いずれの場合であっても、本発明では上述した例と同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明が適用される印刷装置の内部構成図である。
【図2】印刷装置の内部構成を示す断面図である。
【図3】印刷装置の電気的な構成図である。
【図4】CRモータとPFモータの駆動波形を示す図である。
【図5】図5(A)は画像データの配置により印刷位置が異なることを説明するための図で、図5(B)は印刷用紙におけるαの基準位置を説明するための図である。
【図6】CRモータの駆動開始タイミングを示す図である。
【図7】CRモータの駆動開始タイミングを示す図である。
【図8】印刷データの例と、印刷用紙上での印字位置の例を示す図である。
【図9】CRモータの駆動開始タイミングを示す図である。
【図10】CRモータの駆動開始タイミングを示す図である。
【図11】図11(A)は印刷用紙上での印字位置の例を示す図で、図11(B)はスキュー補正の動作を示す図である。
【図12】図12(A)は給紙処理全体のフローチャートと、図12(B)は紙送り動作中に行われる処理のフローチャートである。
【図13】図13(A)は給紙動作中に重ねあわせ処理を行わない場合の各モータの駆動波形を示し、図13(B)は重ねあわせ処理を行った場合の駆動波形を示す。
【符号の説明】
【0056】
1 印刷装置、 2 キャリッジ、 6 記録ヘッド、 8 印刷用紙、 9 CRモータ、 10 PFモータ、 21 CPU、 23 DCユニット、 33 用紙検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリッジを駆動させるキャリッジ駆動手段と、記録媒体を搬送させる搬送駆動手段と、を備え、前記キャリッジに設けられた記録ヘッドにより前記記録媒体への記録を行う印刷装置において、
前記搬送駆動手段によって前記記録媒体の前記印刷装置への供給による搬送が終了する前に、前記キャリッジ駆動手段を駆動させる制御手段、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置において、
前記記録媒体の前記印刷装置への供給による搬送が終了する前とは、前記記録媒体の前記供給による記録開始位置までの搬送のことであって、
更に、前記記録開始位置までの搬送が行われている最中に、前記記録媒体ありから前記記録媒体なしを検出する記録媒体検出センサを備え、
前記制御手段は前記記録媒体検出センサにより前記記録媒体なしを検出しないときに前記キャリッジ駆動手段を駆動させる、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2記載の印刷装置において、
前記制御手段は、前記記録媒体検出センサにより前記記録媒体ありから前記記録媒体なしを検出したとき前記搬送駆動手段を駆動させ、前記記録媒体を前記印刷装置外に排出させる、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項2記載の印刷装置において、
前記制御手段は、前記搬送駆動手段によって前記記録媒体の前記供給による前記記録開始位置までの搬送が行われている最中に前記記録媒体の搬送経路における位置決めがなされるように前記搬送駆動手段を制御する、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項2記載の印刷装置において、
前記制御手段は、前記記録媒体の前記供給による前記記録開始位置までの搬送が行なわれている最中に、前記供給による搬送が終了したときに前記記録開始位置から前記記録媒体への記録が行われる時間を演算し、当該時間に前記キャリッジ駆動手段を駆動させる、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項2記載の印刷装置において、
前記制御手段は、前記記録媒体の前記供給による前記記録開始位置までの搬送が行われている最中に、前記搬送駆動手段への搬送駆動時間が前記キャリッジ駆動手段へのキャリッジ駆動時間と同じか短いとき、前記搬送駆動時間が開始する時点から前記記録媒体検出センサから前記記録ヘッドまでの距離に基づく固定時間が経過した時点で前記キャリッジ駆動手段を駆動させ、前記搬送駆動時間が前記キャリッジ駆動時間より長いとき、前記搬送駆動時間が終了する時点から、前記キャリッジ駆動時間と前記固定時間とを減算した減算時間を逆算した時点で、前記キャリッジ駆動手段を駆動させる、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
キャリッジを駆動させるキャリッジ駆動手段と、記録媒体を搬送させる搬送駆動手段と、を備え、前記キャリッジに設けられた記録ヘッドにより前記記録媒体への記録を行う印刷装置における前記記録媒体の搬送方法であって、
前記搬送駆動手段によって前記記録媒体の前記印刷装置への供給による搬送が終了する前に、前記キャリッジ駆動手段を駆動させる工程、
を備えることを特徴とする搬送方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリッジを駆動させるキャリッジ駆動手段と、
記録媒体を搬送させる搬送駆動手段と、を備え、
前記キャリッジに設けられた記録ヘッドにより前記記録媒体への記録を行う印刷装置において、
前記搬送駆動手段によって前記記録媒体の給紙のための搬送が終了する前に、前記キャリッジ駆動手段を駆動させる制御手段、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置において、
更に、給紙のための搬送が行われている最中に、前記記録媒体ありから前記記録媒体なしを検出する記録媒体検出センサを備え、
前記制御手段は前記記録媒体検出センサにより前記記録媒体なしを検出しないときに前記キャリッジ駆動手段を駆動させる、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2記載の印刷装置において、
前記制御手段は、前記記録媒体検出センサにより前記記録媒体ありから前記記録媒体なしを検出したとき、前記記録媒体における印字領域の有無に応じて、前記搬送駆動手段を制御する、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項3記載の印刷装置において、
前記制御手段は、前記印字領域があるとき、前記キャリッジ駆動手段を駆動させて前記印刷開始位置に向けて駆動させ、前記印字領域がないとき、前記記録媒体を前記印刷装置外に排出させるよう前記駆動手段を制御する印刷装置。
【請求項5】
請求項2記載の印刷装置において、
前記制御手段は、前記搬送駆動手段によって前記記録媒体の給紙のための搬送が行われている最中に前記記録媒体の搬送経路における位置決めがなされるように前記搬送駆動手段を制御する、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項2記載の印刷装置において、
前記制御手段は、前記記録媒体の給紙のための搬送が行なわれている最中に、前記キャリッジ駆動手段の駆動を開始する時間を演算し、前記記録媒体の給紙のための搬送が終了する前に、前記キャリッジ駆動手段を駆動させる、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項6記載の印刷装置において、
前記制御手段によって前記搬送手段を駆動開始してから停止させるまで、の駆動時間の途中の所定時点から
前記制御手段によって前記搬送手段の駆動を停止させるための第1の時間と、
前記制御手段によって前記キャリッジ駆動手段を駆動開始してから、印字開始するまでの第2の時間と、を比較し、
前記制御手段は前記比較に基づいて前記キャリッジ駆動手段の駆動開始時刻を変更する、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項7記載の印刷装置において、
前記制御手段は、前記第1の時間が前記第2の時間より大きいとき、前記搬送駆動手段の駆動終了時に、前記記録ヘッドによる印刷が開示されるように、前記キャリッジ駆動手段の駆動を開始することを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
請求項7記載の印刷装置において、
前記制御手段は、前記第2の時間が前記第1の時間より大きいとき、前記所定の時刻に前記キャリッジ駆動手段の駆動を開始することを特徴とする印刷装置。
【請求項10】
キャリッジを駆動させるキャリッジ駆動手段と、記録媒体を搬送させる搬送駆動手段と、を備え、前記キャリッジに設けられた記録ヘッドにより前記記録媒体への記録を行う印刷装置における前記記録媒体の搬送方法であって、
前記搬送駆動手段によって前記記録媒体の給紙のための搬送が終了する前に、前記キャリッジ駆動手段を駆動させる工程、
を備えることを特徴とする搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−212923(P2006−212923A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27624(P2005−27624)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】