説明

印刷装置および印刷装置の制御方法

【課題】各行の境界部分に隙間ができないように印刷することが可能な印刷装置および印刷装置の制御方法を提供する。
【解決手段】行単位で印刷を行う印刷装置1であって、印刷データに含まれる文字コードに対応するフォントデータを記憶するCG−ROM24と、1行分の印刷データに文字コードおよびイメージデータの両方が含まれるか否かを判定するデータ判定部42と、1行分の印刷データに文字コードおよびイメージデータの両方が含まれると判定した場合、文字コードに対応するフォントデータの文字高さと、イメージデータのイメージデータ高さとを比較する高さ比較部43と、比較の結果、文字高さがイメージデータ高さと異なると判定した場合、文字高さとイメージデータ高さとが同じになるように調整する高さ調整部45と、調整後のフォントデータおよびイメージデータに基づいて1行分の印刷をする印刷処理部46と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷データに基づいて、行単位で印刷を行う印刷装置および印刷装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、外部機器(制御装置、ホスト装置)より入力する印刷データ(プリントデータ)に基づいて、印刷媒体に対して行単位で印刷を行う印刷装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この印刷装置は、外部機器より入力する印刷データに基づいて行単位の印刷データを作成して出力するコントローラ部と、コントローラ部より印刷データを受取った後、記録ヘッドを走査して記録媒体に画像を印刷するエンジン部とを備えている。そして、このエンジン部により、記録ヘッドの1の走査で行単位の印刷データを何行まで印刷できるかを判別し、その判別された行までの印刷データを受取ると、記録ヘッドの走査を開始して印刷を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−205498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のように行単位で印刷を行う印刷装置の場合、1行分の印刷データに印刷装置が内蔵しているフォントデータに対応する文字コードとイメージデータ(イメージデータの少なくとも一部)の両方が含まれており、且つ当該文字コードに対応するフォントデータの文字高さ(文字高さのドット数)と、イメージデータの高さ(イメージデータ高さのドット数)とが異なる場合、すべてを印刷するように印刷媒体の紙送り量は高さが高いほう(ドット数の多い方)を基準として決定される。このため、例えば、文字高さがイメージデータ高さよりも高い場合(「文字高さ>イメージデータ高さ」の場合)、「文字高さ−イメージデータ高さ」分だけイメージデータに基づく画像(イメージ画像)の印刷が行われずに紙送りのみが行われるため、複数行を印刷する場合、いずれかの高さが低いところにおける各行の境界部分(行間)に隙間ができてしまい、期待通りの印刷結果が得られないという問題がある。すなわち、上記の場合、イメージ画像の行が分断されて行間に白すじができてしまい、印刷結果の見栄えが悪くなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑み、各行の境界部分に隙間ができないように印刷することが可能な印刷装置および印刷装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の印刷装置は、制御装置に接続可能な印刷装置であり、制御装置から受信した印刷データに基づいて、印刷媒体に対して行単位で印刷を行う印刷装置であって、印刷データに含まれる文字コードに対応するフォントデータを記憶する記憶部と、1行分の印刷データに文字コードおよび少なくとも一部のイメージデータの両方が含まれるか否かを判定する判定部と、判定部による判定の結果、1行分の印刷データに文字コードおよび少なくとも一部のイメージデータの両方が含まれると判定した場合、当該文字コードに対応するフォントデータの文字高さと、当該少なくとも一部のイメージデータのイメージデータ高さと、を比較する比較部と、比較部による比較の結果、文字高さがイメージデータ高さと異なると判定した場合、文字高さとイメージデータ高さとが同じになるように調整する調整部と、調整部による調整後のフォントデータおよび少なくとも一部のイメージデータに基づいて1行分の印刷をする印刷処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の印刷装置の制御方法は、制御装置に接続可能であり、制御装置から受信した印刷データに基づいて、印刷媒体に対して行単位で印刷を行い、印刷データに含まれる文字コードに対応するフォントデータを記憶している印刷装置の制御方法であって、1行分の印刷データに文字コードおよび少なくとも一部のイメージデータの両方が含まれるか否かを判定する判定ステップと、判定ステップによる判定の結果、1行分の印刷データに文字コードおよび少なくとも一部のイメージデータの両方が含まれると判定した場合、当該文字コードに対応するフォントデータの文字高さと、当該少なくとも一部のイメージデータのイメージデータ高さと、を比較する比較ステップと、比較ステップによる比較の結果、文字高さがイメージデータ高さと異なると判定した場合、文字高さとイメージデータ高さとが同じになるように調整する調整ステップと、調整ステップによる調整後のフォントデータおよび少なくとも一部のイメージデータに基づいて1行分の印刷をする印刷処理ステップと、を実行することを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、1行に文字とイメージ画像(イメージデータに基づく画像)の両方を印刷する場合、且つ印刷対象となる文字に対応するフォントデータの文字高さと、イメージデータの高さ(イメージデータ高さ)とが異なる場合に、両者の高さが同一になるように調整して印刷する。これにより、印刷データを複数行に分けて行単位で印刷を行う場合、各行の境界部分に隙間(白すじ)を作ることなく印刷することができ、結果として、ユーザーの期待通りの印刷結果を得ることができる。
なお、文字高さとイメージデータ高さとを同一に調整する方法としては、一方の高さを短くして同一にする方法、一方の高さを長くして同一にする方法、一方の高さを短くすると共に、他方の高さを高くして同一にする方法等が考えられる。
また、ここで言う文字コードとは、改行等の特定の指令を示す文字コード(制御系の文字コード)ではなく、文字や記号(スペースも含む)を示す文字コードを意味する。
【0009】
本発明の印刷装置において、比較部による比較の結果、文字高さがイメージデータ高さより高いと判定した場合、調整部は、文字高さが、イメージデータ高さと同じになるように、文字高さの調整対象となるフォントデータの一部を削除することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、イメージデータの高さを基準とし(優先し)、文字高さがイメージデータ高さと同一になるように文字高さを短くする。例えば、文字高さ>イメージデータ高さの場合に、イメージデータ高さを高くして(長くして)文字高さに合わせると、各行の境界部分の隙間をなくすことはできるものの、イメージデータに基づいて印刷するイメージ画像が間延びして印刷されるため、印刷結果の見た目を損なってしまう。本発明では、イメージデータ高さを基準として調整することで(即ち、イメージデータ高さは変えないことで)、イメージ画像の見た目を損なうことなく、各行の境界部分の隙間をなくすことができる。
【0011】
本発明の印刷装置において、調整部は、フォントデータが文字高さ方向に上余白部分および下余白部分の少なくとも一方を含むものである場合、文字高さ方向の上余白部分および下余白部分の少なくとも一方の一部を削除することで、イメージデータ高さと同じになるように文字高さを短くすることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、フォントデータの文字高さ調整に際し、フォントデータの上下余白部分を削除する方法、上余白部分のみ削除する方法、下余白部分のみ削除する方法といった様々な削除方法を提供することができる。フォントデータに含まれる文字を表示するためのドットのデータのない余白部分を判別して削除するので、印刷結果を損なうことなく、文字としてユーザーが認識するのに必要な情報は印刷でき、ユーザーの期待通りの印刷結果を得ることができる。
【0013】
本発明の印刷装置において、調整部は、フォントデータの上余白部分および下余白部分を削除する場合、フォントデータの種類に応じて、上余白部分および下余白部分の削除割合を変えることが好ましい。
【0014】
これらの構成によれば、フォントデータの上下余白部分を均等に削除したり、上余白部分を下余白部分よりも多めに削除したり、あるいは、下余白部分を上余白部分よりも多めに削除するなど同一行における文字の位置のバランスを調整でき、文字高さの調整対象となるフォントデータの種類に応じて様々な削除方法を提供できる。
【0015】
本発明の印刷装置において、調整部は、フォントデータを記憶した記憶部の読み出すアドレスを変更することで、フォントデータの上余白部分を削除し、フォントデータの印刷に伴う印刷媒体の紙送り量を少なくすることで、フォントデータの下余白部分を削除することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、読み出すアドレスの変更や紙送り量の調整でフォントデータの上下余白部分の削除を行うため、簡単に、且つ印刷装置のパフォーマンスに影響を及ぼすことなく実現できる。
【0017】
本発明の印刷装置において、文字コードに係る装飾に関するコマンドの受信または装置本体の設定により装飾が施されているか否かを判定する装飾有無判定部を、さらに備え、調整部は、装飾有無判定部により文字コードに係る装飾が施されていると判定された場合、当該文字コードに対応するフォントデータの文字高さの調整を行わないことが好ましい。
【0018】
この構成によれば、装飾対象となる文字に関しては、そのフォントデータの文字高さ調整を行わずに印刷する。一般的に、文字に装飾を施す場合は、その文字自体が特別な意図や意味をもち、ユーザーに対する特定の情報提供を目的として印刷されることが多い。即ち、文字の見た目が重要となる。このため、装飾対象となる文字の文字高さの調整を行うと、余白を調整した場合であってもバランスが崩れその文字の見た目を損なう可能性が高く、結果として、ユーザーに正確に特定の情報を提供できない場合がある。これを回避するために、本発明では、装飾対象となる文字に関してはそのフォントデータの文字高さ調整を行わないことで、情報の提供を目的として印刷する文字(装飾文字)の見た目を損なうことなく印刷することができる。
なお、文字の装飾とは、文字の強調印刷、縦倍印刷、横倍印刷等の拡大印刷、縮小印刷、アンダーライン付印刷、取消線付加印刷、イタリック体など文字形態を指定した印刷、太字印刷、細字印刷、白黒反転印刷、文字のカラーや背景のカラーを指定した印刷等を意味する。これらは、文字に係る文字装飾を指定するコマンドの有無やメモリースイッチ等による設定の有無で判定ができる。
【0019】
本発明の印刷装置において、印刷媒体を搬送する搬送部を、をさらに備え、印刷する行の方向は搬送部により印刷媒体を搬送する方向と交わる方向であり、文字高さとイメージデータ高さは印刷媒体を搬送する方向であることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、シリアルヘッドを備えた印刷装置や、ラインヘッドを備えた印刷装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷システムの制御ブロック図である。
【図2】印刷装置の機能ブロック図である。
【図3】フォントデータの一部を削除する方法を説明するためのイメージ図である。
【図4】印刷装置の印刷処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る印刷装置および印刷装置の制御方法について説明する。なお、本実施形態では、印刷装置と、印刷装置と連携するホスト装置と、から構成される印刷システムを例に挙げて説明する。
【0023】
図1は、本発明の印刷システムSYの制御ブロック図である。同図に示すように本実施形態の印刷システムSYは、印刷データに基づいて印刷処理を行う印刷装置1と、印刷データを生成し、当該印刷データを印刷装置1に対して送信するホスト装置2(制御装置)により構成されている。
【0024】
ホスト装置2は、CPU11(Central Processing Unit)、ROM12(Read
Only Memory)、RAM13(Random Access Memory)、HDD14(Hard Disk Drive)、およびインターフェース部15の他、一般的なパーソナルコンピュータに搭載されるハードウェア構成を有している。
【0025】
ROM12は、CPU11が各種処理を実行するための制御プログラムや制御データを記憶する。また、RAM13は、CPU11が各種処理を実行する際の作業領域として利用される。インターフェース部15は、印刷装置1との間でデータの送受信を行うものである。
【0026】
HDD14には、文字や画像を印刷するためのアプリケーションプログラム14aが記憶されている。CPU11は、このアプリケーションプログラム14a上で印刷命令を実行することにより、インターフェース部15を介して印刷装置1に印刷データを送信する。なお、この印刷データには、文字コード、イメージデータ(グラフィックデータ)、制御コマンド(文字装飾に係るコマンドを含む)等が含まれる。
【0027】
印刷装置1は、CPU21、ROM22、RAM23、キャラクタジェネレータROM24(CG−ROM24,記憶部)、インターフェース部25、印刷部26および搬送部27を備え、これらは互いに内部バス28により接続されている。
【0028】
インターフェース部25は、ホスト装置2と接続するためのものであり、インターフェース部25を介してホスト装置2から印刷データを受信する。受信した印刷データは、後述する受信バッファ33を介してプリントバッファ34へ記憶される。
【0029】
印刷部26は、印刷ヘッド35を主要部とし、後述するプリントバッファ34に記憶された印刷イメージに基づいて、印刷ヘッド35を駆動して行単位で文字や記号等のキャラクターやイメージ画像(イメージデータに基づく画像)の印刷を行う。搬送部27は、紙送りローラー36を主要部とし、印刷ヘッド35による印刷動作と同期して、紙送りローラー36を駆動させて印刷媒体の紙送り(搬送)を行う。
【0030】
なお、本実施形態の印刷ヘッド35は、シリアルヘッドで構成しても良いし、ラインヘッドで構成しても良い。印刷ヘッド35がシリアルヘッドで構成されている場合、印刷ヘッド35により1行分の印刷が完了した後に、紙送りローラー36を駆動して印刷媒体の紙送りが行われる。一方、印刷ヘッド35が、ラインヘッドで構成されている場合、紙送りローラー36の駆動により紙送りをしつつ、1ドットライン毎に印刷を行うことで1行分の印刷を実行する。
【0031】
CG−ROM24は、文字や記号等のキャラクターのフォントデータを記憶するものであり、所定の文字コードが与えられると、対応するフォントデータを出力する。
【0032】
RAM23は、CPU21が各種処理を実行する際に使用されるワークエリアブロック32の他、ホスト装置2から受信した印刷データを一時的に記憶する受信バッファ33と、実際に印刷を行うため印刷イメージを行単位で記憶するプリントバッファ34と、を有している。受信バッファ33に記憶された印刷データは、後述の高さ調整プログラム31により1行分ずつ処理され、処理後の印刷イメージを行単位でプリントバッファ34に記憶する。
【0033】
ROM22は、CPU21が各種コマンドの解析および各種処理を実行するための制御プログラムや制御データを記憶する。制御プログラムとしては、具体的に、高さ調整プログラム31が含まれる。高さ調整プログラム31は、1行分の印刷データに文字コードとイメージデータの両方を含んでいる場合に(即ち、1行に文字コードに対応するキャラクター(文字や記号等)とイメージ画像を印刷する場合)、文字コードに対応するフォントデータの高さ(フォントデータの印刷媒体を搬送する方向のドット数。以下、「文字高さ」と称す。)とイメージデータの高さ(イメージデータの印刷媒体を搬送する方向のドット数。以下、「イメージデータ高さ」と称す。)が同じになるように調整するプログラムである(詳細は後述する)。
【0034】
なお、印刷データに含まれる文字コードは、ユーザーに対して何らかの情報提供を目的とした文字(以下、「通常文字」と称す。)を印刷するために使用される場合と、イメージデータに基づいて印刷されるイメージ画像の位置調整(印刷媒体上におけるイメージ画像の印刷位置の調整)を目的とした文字(以下、「位置調整文字」と称す。)として使用される場合があり、後者の場合に上述の高さ調整プログラム31による処理が実行される。
【0035】
次に、図2および図3を参照して、印刷装置1が提供する機能について説明する。図2は、印刷装置1の機能ブロック図であり、図3は、フォントデータの一部を削除する方法を説明するためのイメージ図(概念図)である。
【0036】
図2に示すように、印刷装置1は、データ受信部41、データ判定部42(判定部)、高さ比較部43(比較部)、装飾有無判定部44、高さ調整部45(調整部)および印刷処理部46を備えている。なお、データ判定部42、高さ比較部43、装飾有無判定部44および高さ調整部45は、高さ調整プログラム31を主要部とするものである。
【0037】
データ受信部41は、インターフェース部25を主要部とし、ホスト装置2から印刷データを受信し、受信した印刷データを受信バッファ33に記憶する。
【0038】
データ判定部42は、受信バッファ33から1行単位で印刷データを読み出し、当該1行分の印刷データに文字コードおよびイメージデータ(イメージデータの少なくとも一部)の両方が含まれるか否かを判定する。なお、1行の区切りは、1行に印刷可能な印刷データの数や、改行等を示すコードの受信で判断することができる。
【0039】
高さ比較部43は、データ判定部42による判定の結果、1行分の印刷データに文字コードおよびイメージデータの両方が含まれると判定した場合、当該文字コードに対応するフォントデータを参照し、そのフォントデータの文字高さと、イメージデータの高さ(イメージデータ高さ)と、を比較する。
【0040】
装飾有無判定部44は、高さ比較部43による比較の結果、文字高さがイメージデータ高さよりも高い場合(文字高さ>イメージデータ高さの場合)、当該文字コードに係る装飾に関する制御コマンド(以下、「装飾コマンド」と称す。)を受信しているか否かを判定する。装飾コマンドを受信している場合、文字コードに対応するフォントデータを「通常文字」として判定し、装飾コマンドを受信していない場合、文字コードに対応するフォントデータを「位置調整文字」として判定する。
【0041】
高さ調整部45は、文字高さ>イメージデータ高さの場合、且つ装飾コマンドを受信していない場合(即ち、フォントデータが「位置調整文字」として判定された場合)、フォントデータの文字高さが、イメージデータ高さと同じになるように、フォントデータの文字高さ方向の上余白部分および下余白部分の一部を削除する。
【0042】
印刷処理部46は、印刷部26および搬送部27を主要部とするものであり、高さ調整部45による調整後のフォントデータおよびイメージデータに基づいて1行分の印刷イメージを生成し、印刷部26および搬送部27を制御して、当該印刷イメージに基づく印刷を実行する。
【0043】
ここで、理解を容易にするために、図3のイメージ図を用いて、高さ調整部45により実行されるフォントデータの上下余白部分の削除について説明する。図3(a)は、1行に印刷されるフォントデータとイメージデータの高さが異なっている様子を示すイメージ図である。ここでは、フォントデータの文字高さは27ドットであり、イメージデータのイメージデータ高さは24ドットとする。即ち、イメージデータ高さに比べ、フォントデータの文字高さが3ドット分だけ高いため、高さ調整部45によりフォントデータの文字高さを3ドット分だけ削除する(短くする)処理が行われる。
【0044】
この削除処理は、図3(b)に示すように、フォントデータの上余白部分51および下余白部分52をトータルで3ドット分削除することにより行われる。図3(b)では、上余白部分51を1ドット削除し、下余白部分52を2ドット分削除する様子を示している。
【0045】
この上余白部分51の削除は、フォントデータをCG−ROM24から読み出す際の先頭アドレスを変更することによって実現する。即ち、フォントデータを読み出すときの先頭アドレスを、通常より文字高さ方向に1ドット分先を示すアドレスに変更することで実現される。
【0046】
一方、下余白部分52の削除は、紙送り量を調整することで実現する。即ち、紙送り量を2ドット分(文字高さ方向に2ドット分)少なくするように、搬送部27(紙送りローラー36)による紙送りを制御することで実現される。このように削除処理を行うことで、図3(c)に示すように、フォントデータの文字高さと、イメージデータのイメージデータ高さとが同一(ここでは、24ドット)になるように調整する。
【0047】
なお、図3(b)のように、上余白部分51を1ドット、下余白部分52を2ドット削除する方法は一例であり、例えば、上余白部分51を2ドット、下余白部分52を1ドット削除するようにしても良い。また、対象となるフォントデータの種類ごとに、上下余白部分51、52の削除割合を変更するようにしても良い。あるいは、フォントデータの種類にかかわらず、上下余白部分51、52の削除割合を一定にしても良い。また、図3では、1行に、1文字分のフォントデータがあるものとして説明しているが、これは一例であり、複数のフォントデータがある場合も同様の処理を行うことで、フォントデータの文字高さをイメージデータ高さに合わせることができる。
【0048】
次に、図4のフローチャートを参照し、印刷装置1による印刷処理手順について説明する。まず、CPU21(印刷装置1)は、ホスト装置2から印刷データを受信し、受信バッファ33に記憶する(S01)。次に、CPU21は、受信バッファ33から1行分の印刷データを取得し(S02)、この1行分の印刷データに、文字コードおよびイメージデータ(少なくとも一部のイメージデータ)の両方が含まれているか否かを判定する(S03,判定ステップ)。
【0049】
S03による判定の結果、1行分の印刷データに文字コードおよびイメージデータのいずれか一方しか含まれない場合、即ち、1行分の印刷データが文字コードのみ、あるいはイメージデータのみで構成される場合(S04;No)、CPU21は、当該文字コードに対応するフォントデータ、あるいはイメージデータに基づいて印刷イメージを生成し、当該印刷イメージに基づいて印刷を行う(S10)。即ち、この場合、フォントデータ、あるいはイメージデータの高さ調整は行わずに、通常の印刷処理を行う。
【0050】
一方、S03による判定の結果、1行分の印刷データに文字コードおよびイメージデータの両方が含まれる場合(S04;Yes)、CPU21は、当該文字コードに対応するフォントデータの文字高さと、当該イメージデータのイメージデータ高さとを比較する(S05,比較ステップ)。
【0051】
S05による比較の結果、文字高さがイメージデータ高さ以下の場合(文字高さ≦イメージデータ高さの場合,S06;No)、CPU21は、当該文字コードに対応するフォントデータおよびイメージデータに基づいて印刷イメージを生成し、紙送り量をイメージデータ高さを基準として決定して印刷を実行する(S10)。
【0052】
一方、S06による比較の結果、文字高さがイメージデータ高さよりも高い場合(文字高さ>イメージデータ高さの場合,S06;Yes)、CPU21は、1行分の印刷データに文字コードに係る装飾コマンドが含まれているか否かを判定する(S07)。
【0053】
S07で装飾コマンドが含まれていると判定された場合(S08;Yes)、CPU21は、当該文字コードに対応するフォントデータは、「通常文字」として印刷するものであると判定し、当該文字コードに対応するフォントデータ、イメージデータおよび装飾コマンドに基づいて印刷イメージを生成し、紙送り量をフォントデータの文字高さを基準として決定して印刷を実行する(S10)。
【0054】
一方、S07で装飾コマンドが含まれていないと判定された場合(S08;No)、CPU21は、当該文字コードに対応するフォントデータは「位置調整文字」であると判定し、文字コードに対応するフォントデータの上余白部分51および下余白部分52の削除処理を実行し、フォントデータの文字高さと、イメージデータのイメージデータ高さと、が同じになるように調整する。言い換えれば、イメージデータ高さを優先し(基準とし)、フォントデータの文字高さをイメージデータ高さに合わせる処理を実行する(S09,調整ステップ)。そして、CPU21は、S09で調整後のフォントデータおよびイメージデータに基づいて、1行分の印刷イメージを生成し、印刷部26および搬送部27を制御して、当該印刷イメージに基づく印刷を実行する(S10,印刷処理ステップ)。なお、CPU21は、印刷対象となる印刷データがなくなるまで、S01〜S10までの処理を繰り返し実行する。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、1行分の印刷データに文字コードとイメージデータの両方が含まれる場合、且つ印刷対象となる文字コードに対応するフォントデータの文字高さと、イメージデータの高さ(イメージデータ高さ)とが異なる場合に、両者の高さが同一になるように調整して印刷する。これにより、印刷データを複数行に分けて行単位で印刷を行う場合、各行の境界部分に隙間(白すじ)を作ることなく印刷することができ、結果として、ユーザーの期待通りの印刷結果を得ることができる。
【0056】
なお、本実施形態では、文字高さとイメージデータ高さとを同一に調整する方法として、文字高さを短くしてイメージデータ高さと同一にする方法を例示しているが、これに限るものではない。例えば、イメージデータ高さを高くして文字高さと同一になるように調整しても良いし、あるいは、文字高さを短くすると共にイメージデータの高さを高くして、両者が同一になるように調整しても良い。
【0057】
また、本実施形態では、フォントデータの文字高さ調整に際し、フォントデータの上余白部分51および下余白部分52の両方を削除する方法について説明しているが、これに限るものではない。例えば、フォントデータの上余白部分51のみを削除して文字高さを調整しても良いし、あるいは、フォントデータの下余白部分52のみを削除して文字高さを調整しても良い。同一行における文字の位置のバランスを適正に調整できる。
【0058】
また、本実施形態では、文字高さ>イメージ高さの関係が成立する場合に高さ調整をする手順を説明しているが、これに限るものではなく、文字高さ<イメージ高さの場合にも高さ調整をするようにしても良い。この場合、文字高さをイメージ高さに合わせるように高くしても良いし、イメージデータ高さを文字高さに合わせるように短くしても良い。あるいは、文字高さを高くすると共にイメージデータ高さを短くして、両者が同一になるように調整しても良い。
【0059】
また、本実施形態では、文字装飾を装飾コマンドによって実現しているが、これに限るものではない。例えば、印刷装置1本体のディップスイッチやメモリースイッチ等(いずれも図示省略)の設定により文字に装飾を施す機能を備えた装置にも適用可能である。この場合、装飾有無判定部44は、ディップスイッチやメモリースイッチの設定状態を確認し、文字装飾の有無を判定すれば良い。
【0060】
また、本実施形態では、印刷データに文字コードに係る装飾コマンドがある場合に、文字コードに対応するフォントデータが「位置調整文字」として使用されると判定し、高さ調整部45による処理を実行しているが、これに限るものではない。例えば、印刷データに含まれる文字コードが、特定の文字コード(例えば、スペースを示す文字コードや記号を示す文字コード)である場合に、文字コードに対応するフォントデータを「位置調整文字」として判定し、高さ調整部45による処理を実行するようにしても良い。
この際、高さ調整部45が、フォントデータを解析し、フォントデータに含まれる文字を表示するためのドットのデータのない余白部分を判別して削除してもよい。印刷結果を損なうことなく、文字としてユーザーが認識するのに必要な情報は印刷でき、ユーザーの期待通りの印刷結果を得ることができる。
【0061】
また、本実施形態では、行方向と紙送り方向が交わるような方向の例で説明したが、ページ毎で印刷する場合にも適用が可能である。この場合、プリントバッファ34をページとして領域を規定し、フォントデータやイメージデータを行単位の印刷イメージとしてプリントバッファ34のページ領域内の指定された位置に配置して記憶する。フォントデータやイメージデータを含む行は、ページ領域内の任意の方向に配置できるので、本実施形態のように行方向と紙送り方向が交わるような方向紙に配置して印刷できる他、行方向と紙送り方向が平行となる方向に配置して印刷することもできる。後者のように、行方向と紙送り方向が平行となる方向であっても、上述の本実施形態で説明したようにフォントデータの余白部分を削除する等を行い、ページ領域へ配置すればよいので、同じ行のフォントデータの高さとイメージデータの高さを調整することが可能である。
【0062】
また、上述した実施例によらず、印刷システムSYの装置構成や処理工程、および印刷装置1の機器構成、処理工程および制御方法等について、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更も可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…印刷装置 2…ホスト装置 24…CG−ROM 26…印刷部 27…搬送部 31…高さ調整プログラム 42…データ判定部 43…高さ比較部 44…装飾有無判定部 45…高さ調整部 46…印刷処理部 51…上余白部分 52…下余白部分 SY…印刷システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置に接続可能な印刷装置であり、前記制御装置から受信した印刷データに基づいて、印刷媒体に対して行単位で印刷を行う印刷装置であって、
前記印刷データに含まれる文字コードに対応するフォントデータを記憶する記憶部と、
1行分の前記印刷データに前記文字コードおよび少なくとも一部のイメージデータの両方が含まれるか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定の結果、1行分の前記印刷データに前記文字コードおよび前記少なくとも一部のイメージデータの両方が含まれると判定した場合、当該文字コードに対応するフォントデータの文字高さと、当該少なくとも一部のイメージデータのイメージデータ高さと、を比較する比較部と、
前記比較部による比較の結果、前記文字高さが前記イメージデータ高さと異なると判定した場合、前記文字高さと前記イメージデータ高さとが同じになるように調整する調整部と、
前記調整部による調整後の前記フォントデータおよび前記少なくとも一部のイメージデータに基づいて1行分の印刷をする印刷処理部と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記比較部による比較の結果、前記文字高さが前記イメージデータ高さより高いと判定した場合、
前記調整部は、
前記文字高さが、前記イメージデータ高さと同じになるように、前記文字高さの調整対象となる前記フォントデータの一部を削除することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記調整部は、
前記フォントデータが前記文字高さ方向に上余白部分および下余白部分の少なくとも一方を含むものである場合、前記文字高さ方向の上余白部分および下余白部分の少なくとも一方の一部を削除することで、前記イメージデータ高さと同じになるように前記文字高さを短くすることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記調整部は、
前記フォントデータの前記上余白部分および前記下余白部分を削除する場合、前記フォントデータの種類に応じて、前記上余白部分および前記下余白部分の削除割合を変えることを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記調整部は、
前記フォントデータを記憶した前記記憶部の読み出すアドレスを変更することで、前記フォントデータの前記上余白部分を削除し、
前記フォントデータの印刷に伴う前記印刷媒体の紙送り量を少なくすることで、前記フォントデータの下余白部分を削除することを特徴とする請求項3または4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記文字コードに係る装飾に関するコマンドの受信または装置本体の設定により装飾が施されているか否かを判定する装飾有無判定部を、さらに備え、
前記調整部は、
前記装飾有無判定部により前記文字コードに係る装飾が施されていると判定された場合、当該文字コードに対応するフォントデータの文字高さの調整を行わないことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記印刷媒体を搬送する搬送部を、をさらに備え、
印刷する行の方向は前記搬送部により前記印刷媒体を搬送する方向と交わる方向であり、前記文字高さと前記イメージデータ高さは前記印刷媒体を搬送する方向であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項8】
制御装置に接続可能であり、前記制御装置から受信した印刷データに基づいて、印刷媒体に対して行単位で印刷を行い、前記印刷データに含まれる文字コードに対応するフォントデータを記憶している印刷装置の制御方法であって、
1行分の前記印刷データに前記文字コードおよび少なくとも一部のイメージデータの両方が含まれるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップによる判定の結果、1行分の前記印刷データに前記文字コードおよび前記少なくとも一部のイメージデータの両方が含まれると判定した場合、当該文字コードに対応するフォントデータの文字高さと、当該少なくとも一部のイメージデータのイメージデータ高さと、を比較する比較ステップと、
前記比較ステップによる比較の結果、前記文字高さが前記イメージデータ高さと異なると判定した場合、前記文字高さと前記イメージデータ高さとが同じになるように調整する調整ステップと、
前記調整ステップによる調整後の前記フォントデータおよび前記少なくとも一部のイメージデータに基づいて1行分の印刷をする印刷処理ステップと、
を実行することを特徴とする印刷装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−75417(P2013−75417A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216376(P2011−216376)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】