説明

印刷装置および発光ダイオード寿命管理方法

【課題】LEDを紫外線照射の光源とする印刷装置において、照射光量を検出することによって、LEDへの付加電力を制御し、付加電力の値によって容易にLEDの寿命を検出する方法を提供する。
【解決手段】被記録媒体表面に紫外線硬化型インクにより画像を形成する印刷手段と、前記紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を発光する発光ダイオードを備える光源手段と、前記光源手段に備える前記発光ダイオードへ出力する電力を制御する制御手段と、前記光源手段から発光される前記紫外線を受光し、光量を検出する光量検出手段と、前記光量検出手段により検出された検出光量値と所定の光量である目標光量値とを比較する光量比較手段と、を備え、前記光量比較手段において前記検出光量値が前記目標光量値未満であると判定された場合に、前記電力を高くする指令信号を前記制御手段へ送出する指令手段を含む印刷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置および発光ダイオード寿命管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、耐水性、耐溶剤性、および耐擦過性などが良好な画像を被記録媒体の表面に形成する方法として、放射線を照射すると硬化する放射線硬化型インク組成物を含むインクを、インクジェット装置によって吐出して画像を形成する方法が用いられている。特に、半導体装置などの電子部品には、部品種別、メーカー、型番などの情報を電子部品の樹脂パッケージ表面に印刷表示し、識別可能にするために、耐久性に優れた放射線としての紫外線によって硬化するインク組成物によって印刷することが開示されている(特許文献1)。
【0003】
しかし、特許文献1に開示された印刷方法において、インクを硬化させる紫外線が適切に照射されなければ、所望の印刷品質を得ることが困難となってしまう。そこで、紫外線を照射するUVランプが所望の強度で紫外線を照射しているかを、UVランプの照射時間により管理し、表示された照射時間からUVランプの寿命、すなわち取り替え時期を判断していた(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−274335号公報
【特許文献2】特開2005−305742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術において一般的にUV光源としては水銀灯が用いられてきたが、高い電圧電源を必要とし、紫外線光量、強度のコントロールが困難なことから、近年は発光ダイオード、いわゆるLEDによりUVを照射する装置が普及してきている。LEDは、高い効率でUV発光をさせることができ、しかも照射光量や強度を、例えば付加電圧によって容易にコントロール可能な光源である。しかし、LEDのUV発光時に発生する熱などによって、LEDの劣化に至るまでの時間にはばらつきが大きく、上述の特許文献2に開示された照射時間の積算だけではLEDの寿命を判断することは困難であった。
【0006】
そこで、発光ダイオード、いわゆるLEDを紫外線照射の光源とする印刷装置において、照射光量を検出することによって、LEDへの付加電力を制御し、付加電力の値によって容易にLEDの寿命を検出する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも上述の課題の一つを解決するように、下記の形態または適用例として実現され得る。
【0008】
〔適用例1〕本適用例の印刷装置は、被記録媒体表面に紫外線硬化型インクにより画像を形成する印刷手段と、前記紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を発光する発光ダイオードを備える光源手段と、前記光源手段に備える前記発光ダイオードへ出力する電力を制御する制御手段と、前記光源手段から発光される前記紫外線を受光し、光量を検出する光量検出手段と、前記光量検出手段により検出された検出光量値と所定の光量である目標光量値とを比較する光量比較手段と、を備え、前記光量比較手段において前記検出光量値が前記目標光量値未満であると判定された場合に、前記電力を高くする指令信号を前記制御手段へ送出する指令手段を含むことを特徴とする。
【0009】
本適用例の印刷装置によれば、光量検出手段および光量比較手段を備えることにより、光量検出手段において光源手段に備える発光ダイオードの照射光量を検出し、検出された照射光量と、被記録媒体上に紫外線硬化型インクにより形成される記録画像を硬化させるための目標光量と、を光量比較手段で比較することにより、確実に発光ダイオードの紫外線照射に係る寿命判定を可能にし、記録画像の硬化不足などの不良発生が抑制できる印刷装置を得ることができる。また、確実に発光ダイオードの寿命を判定できるため、発光ダイオードの実使用可能限界まで使用することができ、記録画像の品質を維持しながらも発光ダイオードの頻繁な交換を抑制し、コストダウンが実現できる印刷装置を得ることができる。
【0010】
〔適用例2〕上述の適用例において、前記制御手段は、前記指令信号に基づく前記電力が前記発光ダイオードへの最大許容電力を超えた場合、前記発光ダイオードが寿命であると判定する発光ダイオード寿命判定手段を含むことを特徴とする。
【0011】
上述の適用例によれば、発光ダイオードの仕様規格として規定されている最大許容電力値を閾値として、容易に寿命判定ができるため、記録画像の品質低下を抑制することができる。
【0012】
〔適用例3〕上述の適用例において、前記指令信号が電圧であることを特徴とする。
【0013】
上述の適用例によれば、定電圧駆動制御によって印刷装置に備える光源手段を制御することで、安定した紫外線照射を得ることができる。よって、定電圧駆動制御を用いて電圧を指令信号として制御することで、LEDが寿命判定されるまで安定した紫外線照射を行わせることができる。すなわち、記録画像の品質をLED寿命まで維持できる印刷装置を得ることができる。
【0014】
〔適用例4〕本適用例の発光ダイオード寿命管理方法は、紫外線を発光する発光ダイオードに所定電力を供給し紫外線を発光させる点灯工程と、発光された前記紫外線を受光し検出光量値を演算する光量検出工程と、前記検出光量値と、前記発光ダイオードの目標光量値と、を比較する光量比較工程と、前記光量比較工程において前記検出光量値が前記目標光量値より低い場合に、前記発光ダイオードに前記所定電力を超える指令電力を供給する制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
本適用例の発光ダイオード寿命管理方法によれば、光量検出工程および光量比較工程を備えることにより、光量検出工程において光源手段に備える発光ダイオードの照射光量を検出し、検出された照射光量と、被記録媒体上に紫外線硬化型インクにより形成される記録画像を硬化させるための目標光量と、を光量比較工程で比較することにより、確実に発光ダイオードの紫外線照射に係る寿命判定を可能にし、記録画像の硬化不足などの不良発生を確実に抑制することができる。また、確実に発光ダイオードの寿命を判定できるため、発光ダイオードの実使用可能限界まで使用することができ、記録画像の品質を維持しながらも発光ダイオードの頻繁な交換を抑制することができる。
【0016】
〔適用例5〕上述の適用例において、前記制御工程により供給される前記指令電力が、前記発光ダイオードの最大許容電力を超える場合、前記発光ダイオードが寿命であると判定する発光ダイオード寿命判定工程を含むことを特徴とする。
【0017】
上述の適用例によれば、発光ダイオードの仕様規格として規定されている最大許容電力値を閾値として、容易に寿命判定ができる。従って光量不足による記録画像の品質低下を抑制することができる。
【0018】
〔適用例6〕上述の適用例において、前記指令電力は電圧を指令信号として制御されることを特徴とする。
【0019】
上述の適用例によれば、定電圧制御によって印刷装置に備える光源手段を制御することで、安定した紫外線照射を得ることができる。そこで、定電圧制御を用いて電圧を指令信号として制御することで、LEDが寿命判定されるまで安定した紫外線照射を行わせることができる。すなわち、記録画像の品質をLED寿命まで安定して維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態に係る印刷装置を示すブロック図。
【図2】第1実施形態に係る印刷装置による画像形成を説明する概念図。
【図3】第2実施形態に係る発光ダイオード寿命管理方法を示すフローチャート。
【図4】第2実施形態に係る光量検出工程でのノイズ除去を説明するブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係る印刷装置を示す機能ブロック図である。図1に示すように、印刷装置100はコンピューターなどの外部制御装置200によって、所望の印刷仕様が入力される。入力された印刷仕様は、印刷装置100に備える制御装置10に含まれる駆動制御装置11および紫外線照射制御装置12(以下、UV照射制御装置12という)によって、印刷が制御される。
【0023】
本実施形態に係る印刷装置100は、キャリッジ20に備えるインクジェットヘッド21から放射線としての紫外線によって硬化する紫外線硬化型インクを含む液滴Lを被記録媒体30の記録面30aに吐出し、所望の記録画像pを形成する。形成された記録画像pは、放射線としての紫外線を発光する発光ダイオード(以下、LED(Light Emitting Diode)という)を備える紫外線照射装置40(以下、UV照射装置40という)から照射される紫外線Eによって硬化し記録画像Pを得ることができる。UV照射装置40は、キャリッジ20の移動方向(図示S方向)の両側にLEDを内蔵する紫外線照射部41,42(以下、UV照射部41,42という)を備えている。UV照射部41,42は、LEDから発光される紫外線を外部に射光する射光口41a,42aを備えている。また、被記録媒体30は、インクジェットヘッド21と相対的な位置が制御されるテーブル50に載置、固定される。テーブル50は、図示しない駆動装置によって記録画像Pを形成するように、インクジェットヘッド21を備えるキャリッジ20と連携駆動される。
【0024】
キャリッジ20の駆動方向(図示S方向)の一方の側の被記録媒体30が載置されない領域に紫外線光量検出部60(以下、UV検出部60という)が配置されている。UV検出部60は、UV照射部41,42から照射される紫外線Eの光量を検出し、UV照射制御装置12に備える検出光量比較部12bに受光光量を検出信号として送出する。
【0025】
UV照射装置40に備えるLEDには、UV照射制御装置12に備えるUV照射制御部12aによって形成画像pを硬化させるための所定の光量および強度の紫外線を発生させる電力が供給される。所定の紫外線光量および強度は、印刷仕様、LED規格などにより設定される電力値テーブルを、外部制御装置200もしくはUV照射制御装置12に備えることで、所望の光量および強度の紫外線を照射させることができる。
【0026】
本実施形態の印刷装置100において、UV照射制御装置12に備える検出光量比較部12bでは、UV検出部60から得られた検出光量と、形成画像pを硬化させるための目標光量とを比較し、後述する第2実施形態に係る発光ダイオード寿命管理方法によって、比較結果をLED寿命判定部12c、もしくは指令部12dへ送出する。LED寿命判定部12cでは、検出光量比較部12bでの比較結果としてLEDが寿命に至っていることを示す場合、使用しているLEDが寿命と判定し、外部制御装置200、もしくは図示しない印刷装置100に備える表示手段にLEDの交換が必要である、との表示を行う。なお、表示とあわせて、印刷装置100の停止を指示する信号を送出しても良い。
【0027】
また、検出光量比較部12bにおいて、LEDは寿命には至っていないがUV照射装置40から照射される紫外線光量が目標光量に満たないとの比較結果の場合には、指令部12dにその比較結果を送出する。指令部12dでは、後述する第2実施形態に係る発光ダイオード寿命管理方法によって、UV照射装置40から照射される紫外線光量が目標光量になるように、電力を上げる指令をUV照射制御部12aへ送出し、所定の紫外線光量が照射されるようにしている。
【0028】
UV照射制御装置12において紫外線照射の駆動制御方法として、定電圧駆動制御または定電流駆動制御のどちらも用いることができる。しかし、より簡単な回路構成によりUV照射制御装置12を構成することができることから、定電圧駆動制御によるLED点灯駆動性制御を用いることが好ましい。定電圧駆動制御を用いることで、上述の、UV照射装置40から照射される紫外線光量が目標光量になるようにUV照射制御部12aに送出される電力を上げる指令を電圧指令とすることで、駆動制御することができる。
【0029】
図2は、本実施形態に係る印刷装置100によって被記録媒体30の記録面30a上に、記録画像Pを形成する装置動作の概略を示した概念図であり、(a)はインクジェットヘッド21から紫外線硬化型インクを含むインクの液滴Lを吐出し硬化前の記録画像pが形成される状態図、(b)は記録画像pに紫外線Eが照射されて硬化した記録画像Pが形成される状態図、(c)は紫外線光量を受光する場合の状態図。
【0030】
図2(a)に示すように、テーブル50に被記録媒体30が所定の位置に載置、固定される。キャリッジ20およびテーブル50は、被記録媒体30の記録面30aの所定位置に記録画像pが形成される位置まで移動し、インクジェットヘッド21から記録面30aに向けて紫外線硬化型インクを含むインク液滴Lが吐出される。この時、キャリッジ20およびテーブル50は図示する矢印方向SL,SR(図1におけるS方向)、および図の紙面に鉛直方向に移動することにより所定の記録画像pが形成される。
【0031】
次に図2(b)に示すように、キャリッジ20が移動し、記録画像pにUV照射部41または42の射光口41aまたは42aを対向させ、紫外線Eを記録画像pに向けて照射する。これにより、記録画像pに含まれる紫外線硬化型インクの重合が開始、進行し、硬化した記録画像Pが形成される。なお、記録画像Pの形成、すなわち紫外線Eの照射の場合でも、キャリッジ20およびテーブル50のどちらか一方、または両方を駆動させ、硬化前の記録画像pに対して紫外線Eを均一に照射する。UV照射装置40はUV照射部41,42をキャリッジ20の移動方向側に備える形態を例示をしたが、これに限定はされず、UV照射装置40は記録画像pに紫外線が照射される位置に配置されれば良く、UV照射部41,42は所定の紫外線光量が照射可能であれば、UV照射部41または42のいずれか一方を備えれば良く、またUV照射装置40としてUV照射部を3以上備えても良い。
【0032】
UV照射部41,42から適正な光量、強度の紫外線Eが照射されているかを検出する場合には、図2(c)に示すように、被記録媒体30が載置、固定される領域から外れた位置に配置されたUV検出部60に、UV照射部41,42を近接させ、紫外線Eを照射し、UV検出部60に備える図示しないセンサーによって紫外線光量を検出する。図2(c)に示す形態においては、UV検出部60はUV照射部41および42に対して対向した位置に配置されてはいないが、照射される紫外線Eの一部eを検出し、所定の補正値によって紫外線Eの光量、強度データを生成することができる。あるいは、UV照射部41および42を、それぞれ交互にUV検出部60に対向配置させ、UV照射部41および42を、各々個別に紫外線光量を検出することとしても良い。または、UV照射部41,42のそれぞれ個々に対向するようにUV検出部60を配置しても良い。なお、図2(c)に示す紫外線Eの光量、強度の検出方法は後述するが、記録画像Pを形成する工程前もしくは後に行っても良く、または記録画像Pの形成回数が所定回数になった場合に実行しても良い。
【0033】
(第2実施形態)
次に第2実施形態として、第1実施形態に係る印刷装置100における発光ダイオード寿命管理方法(以下、LED寿命管理方法という)について説明する。図3は、第1実施形態に係る印刷装置100の図2(c)に示す状態において実行されるLED寿命管理方法を示すフローチャートである。なお、本実施形態に係るLED寿命管理方法は、LEDの駆動(点灯)制御方法を定電圧駆動制御方法として説明する。
【0034】
〔点灯工程〕
初めにLEDを点灯する点灯工程(S11)が実行される。点灯工程(S11)では、図1に示す外部制御装置200からの指令に基づき、駆動制御装置11によってキャリッジ20を図2(c)に示す位置に移動させ、UV照射制御部12aからUV照射装置40に備えるLEDへ、所定の光量と強度の紫外線が照射できる指令電力としての指令電圧V0が供給される。UV照射装置40に備えるLEDは、第1実施形態にかかる印刷装置100で使用されるインクに含まれる紫外線硬化型インクの重合を開始し進行させる波長の紫外線を発光する仕様規格のものが用いられ、そのLEDを点灯させるための指令電圧V0は、仕様規格として指定されている。
【0035】
〔光量検出工程〕
点灯工程(S11)によって、LEDが発光されると、次の光量検出工程(S12)に移行する。光量検出工程(S12)では、点灯工程(S11)において指令電圧V0で点灯されたLEDから照射される紫外線光量を、UV検出部60に備えるセンサーとしての発光紫外線の波長帯に感応する帯域を有するフォトダイオードを用い、受光する紫外線光量を電圧に変換することにより紫外線光量を検出する。
【0036】
UV検出部60は、UV照射装置40から照射される紫外線だけではなく、例えば外部照明が発光する紫外線、あるいは外光に含まれる紫外線など、も受光してしまう。そこで、正確な紫外線照射光量を検出するためには、外部照明あるいは外光などの光量検出に対するノイズ(外乱)を除去する必要がある。ノイズ除去の方法の一例を図4に示すブロック図で説明する。
【0037】
図4に示すように、UV照射装置40から発光される紫外線Eは、UV照射制御部12aの制御によってUV照射装置40に備えるUV照射部41,42から発光されるが、この紫外線発光の制御は、UV照射制御部12aに備える発振器からの信号によってPWM(Pulse Width Modulation)点灯され、図示する発光パターンC1によって紫外線Eはパルス照射される。
【0038】
UV検出部60では、紫外線Eと、外部照明、外光などのノイズと、を含めて検出し、図示する検出電圧C2のデータを出力する。このノイズを含んだ検出電圧のデータからノイズを除去するために、まずAD変換部を通しでデジタルデータ化する。デジタル化された検出電圧データに、上述したLEDのPWM点灯の制御発振信号C3を乗算させる。これにより、図示する乗算後検出電圧C4のデータを得る。乗算後検出電圧C4は、検出電圧C2から発振信号C3に同期しないデータが除外された信号に生成され、ローパスフィルターを通すことによって連続信号、すなわちノイズ除去された検出電圧C5となり、検出光量に読み換え変換される。このようにして、外部照明や外光などによる検出データに含まれるノイズを除去し、UV照射装置40からの紫外線Eだけの光量、強度を測定することができる。
【0039】
なお、外部ノイズの除去方法は上述には限定されない。例えば、予め外部ノイズとしての外部照明あるいは外光だけの紫外線光量を測定し、外部ノイズを含む検出データから測定された紫外線光量から、予め測定された外部ノイズ紫外線光量を減ずることでUV照射装置40からの紫外線Eだけの光量、強度を測定することもできる。
【0040】
〔光量比較工程〕
次に、図3に示す光量検出工程(S12)において、ノイズが除去された検出光量と、所望の目標光量とを比較する光量比較工程(S13)に移行する。光量比較工程(S13)において、検出光量が目標光量以上である場合(YES)、所定の印刷工程(S14)に移行し、被記録媒体30に記録画像Pを形成し、終了する。なお、光量比較工程(S13)において、検出光量が目標光量未満の場合(NO)、指令電圧比較工程(S21)に移行する。
【0041】
図3に示す印刷工程(S14)以降は、印刷完了までフローを進行させている形態としているが、これに限定されない。例えば、所定の数量の被記録媒体30に印刷(画像記録)を実行させた後、もしくは1個の被記録媒体30に印刷を実行させる毎に、第2実施形態に係る発光ダイオード寿命管理方法に関する点灯工程(S11)に移行させ、印刷工程(S14)が終了する途中であっても発光ダイオード寿命管理方法のフローを実行しても良い。
【0042】
〔指令電圧比較工程〕
指令電圧比較工程(S21)は、点灯工程(S11)でUV照射制御部12aから送られた指令電力としての指令電圧V0が、UV照射装置40に備えるLEDに対して付加できる最大許容電力としての最大許容電圧Vmaxより低いか、を比較する。Vmaxは、使用されるLEDには部品仕様としての指令電圧V0と共に表示され、最大許容電圧Vmaxを超えない駆動電圧をLEDに付加することで、所定の性能である紫外線照射光量、強度をLEDメーカーが保証している。しかし、光量比較工程(S13)において検出光量が目標光量を下回っている、すなわちUV照射装置40からの紫外線Eの照射光量が目標光量より下回っていること判定された場合、照射される紫外線Eを目標光量まで高めるため点灯工程(S11)で入力された指令電圧V0を高める必要がある。しかし、その値はLEDへの最大許容電圧Vmaxを上回ってはならない。
【0043】
そこで、指令電圧比較工程(S21)では、点灯工程(S11)での指令電圧V0と、LEDへの最大許容電圧Vmaxとを比較判定する。指令電圧比較工程(S21)において、指令電圧V0が最大許容電圧Vmax以上(V0≧Vmax)、すなわちYESと判断された場合、UV照射装置40からの紫外線Eの光量を多くするために指令電圧V0を更に高くすることができないと判断され、次のLED寿命判定工程(S22)に移行する。
【0044】
〔LED寿命判定工程〕
LED寿命判定工程(S22)は、指令電圧比較工程(S21)において、指令電圧V0が最大許容電圧Vmax以上(V0≧Vmax)との比較結果が入力され、UV照射装置40に備えるLEDが寿命であり、交換を必要としていることの情報を、LED寿命判定部12c(図1参照)から外部制御装置200、もしくは印刷装置100に備える図示しない表示装置に送る。表示されたLED交換指示情報に基づき、UV照射装置40に備えるLEDが交換される。LEDの交換後、点灯工程(S11)に移行する。指令電圧V0がLEDへの最大許容電圧Vmax未満(V0<Vmax)である、すなわちNOと判断された場合、再指令電圧生成工程(S31)に移行する。
【0045】
上述した通り、指令電力としての指令電圧V0を、LEDに予め規定されている最大許容電力としての最大許容電圧Vmaxを閾値として、容易にLEDの寿命判定ができる。従って光量不足による記録画像の品質低下を抑制することができる。
【0046】
〔再指令電圧生成工程〕
再指令電圧生成工程(S31)では、指令部12d(図1参照)において目標光量へ照射光量を引き上げるための新たな指令電圧としての再指令電圧V0´を生成する。再指令電圧V0´は、最大許容電圧Vmaxと指令電圧V0との差より小さい昇圧電圧δVを、指令電圧V0に加算されて生成される。昇圧電圧δVは、特に限定は無く、例えば最大許容電圧Vmaxと指令電圧V0との間を均等に分けるように決定しても良く、最大許容電圧Vmaxと指令電圧V0との差分としても良い。このように再指令電圧V0´が生成されると、次の指令電圧決定工程(S32)に移行する。
【0047】
〔指令電圧決定工程〕
指令電圧決定工程(S32)は、点灯工程(S11)に送る指令電圧V0を、再指令電圧生成工程(S31)で生成された再指令電圧V0´の値に置き換える。指令電圧決定工程(S32)で決定された更新された指令電圧V0は、指令部12dよりUV照射制御部12aに送られ、点灯工程(S11)から実行され、UV照射装置40からの紫外線Eの光量が多くされたLED駆動が実行される。
【0048】
以上、述べた指令電圧比較工程(S21)と、再指令電圧生成工程(S31)と、指令電圧決定工程(S32)と、を含んで制御工程(S100)が構成される。
【0049】
従来の光源としてのLED寿命管理方法では、点灯時間の積算値などの経過時間で管理していた。しかし、この管理方法では、本来の性能を具備していないLEDを用いた場合に、所定に時間に至る前に紫外線光量、強度は低下し、記録画像品質を低下させてしまうこととなる。また、本来の性能、あるいはそれ以上の性能を具備したLEDを用いた場合には、使用環境、使用方法などの条件から、LEDの寿命と判断する所定時間に至った場合でも、まだ十分な紫外線光量、強度を発揮できる場合があり、その場合には使用可能とされる所定時間を超えて使用可能なLEDを交換してしまい、コストダウンの機会を逃してしまう。
【0050】
しかし、上述したように照射される紫外線を受光し、受光した紫外線光量と目標光量とを比較し、受光した紫外線光量が目標光量に満たない場合には、最大許容電圧までLED駆動の指令電圧を上昇させて、所定の照射光量を維持させることができる。従って、LEDが劣化し使用不能となる直前まで使用可能とすることができるため、LED交換の頻度の低減、それによるコストダウン、記録画像の品質確保、などを実現することができる。また、所定の性能を具備しないLEDを用いても、寿命判定が確実に行えるため、記録画像の不良発生を抑制することができる。
【0051】
また、上述の実施形態に係るLED寿命管理方法によれば、LEDの表面に付着した汚れによる紫外線光量低下に対しても、再指令電圧生成工程(S31)および指令電圧決定工程(S32)を実行させることで、LEDに目標光量となる発光を実行させることができ、安定した形成画像を得ることができる。LEDに付着する汚れとしては、浮遊ミストや、点検などによって作業者(人)によって付着される汚れ、などが考えられる。更に、LEDの表面に付着した汚れによって紫外線光量が低下し、LED寿命判定工程(S22)においてLEDの寿命と判定された場合に、LED交換前に表面汚れを確認し、汚れ除去によって紫外線光量を目標光量とすることができ、不要なLED交換を防止することができる。
【0052】
また、紫外線照射部41あるいは42が複数のLEDを備える照射部であった場合、複数備えるLEDの一部が断線などの故障を発生しても、残るLEDに対して再指令電圧生成工程(S31)および指令電圧決定工程(S32)を実行させることで紫外線照射部41あるいは42としての目標光量を生成させることができる。従って、紫外線照射装置40は頻繁にLED交換をすることなく目標光量を発光させることができ、安定した形成画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
10…制御装置、20…キャリッジ、30…被記録媒体、40…紫外線照射装置、50…テーブル、60…紫外線検出部、100…印刷装置、200…外部制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体表面に紫外線硬化型インクにより画像を形成する印刷手段と、
前記紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を発光する発光ダイオードを備える光源手段と、
前記光源手段に備える前記発光ダイオードへ出力する電力を制御する制御手段と、
前記光源手段から発光される前記紫外線を受光し、光量を検出する光量検出手段と、
前記光量検出手段により検出された検出光量値と所定の光量である目標光量値とを比較する光量比較手段と、を備え、
前記光量比較手段において前記検出光量値が前記目標光量値未満であると判定された場合に、前記電力を高くする指令信号を前記制御手段へ送出する指令手段を含む、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記指令信号に基づく前記電力が前記発光ダイオードへの最大許容電力を超えた場合、前記発光ダイオードが寿命であると判定する発光ダイオード寿命判定手段を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記指令信号が電圧である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
紫外線を発光する発光ダイオードに所定電力を供給し紫外線を発光させる点灯工程と、
発光された前記紫外線を受光し検出光量値を演算する光量検出工程と、
前記検出光量値と、前記発光ダイオードの目標光量値と、を比較する光量比較工程と、
前記光量比較工程において前記検出光量値が前記目標光量値より低い場合に、前記発光ダイオードに前記所定電力を超える指令電力を供給する制御工程と、を含む、
ことを特徴とする発光ダイオード寿命管理方法。
【請求項5】
前記制御工程により供給される前記指令電力が、前記発光ダイオードの最大許容電力を超える場合、前記発光ダイオードが寿命であると判定する発光ダイオード寿命判定工程を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の発光ダイオード寿命管理方法。
【請求項6】
前記指令電力は電圧を指令信号として制御される、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の発光ダイオード寿命管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−43310(P2013−43310A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181281(P2011−181281)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】