説明

印刷装置及び印刷方法

【課題】ノズルの目詰まり時においても画質に影響が出ない印刷を可能とする。
【解決手段】媒体に対して第1方向に移動可能なキャリッジ14と、キャリッジに設けられた記録ヘッド221と、記録ヘッドに設けられたカラーインクノズル列(151〜154)と、クリアインクノズル列155と、キャリッジに設けられた光照射部(160a、160b)と、各インクノズル列からインクが適切に吐出されているかを検査する検査部とを備え、検査部によりクリアインクノズル列から適切に吐出されていると判断された場合に、クリアインクを吐出し、光照射部で光を照射するまでの時間を第1時間とする第1印刷モード、又は、検査部によりクリアインクノズル列から適切に吐出されていないと判断された場合に、クリアインクを吐出し、光照射部で光を照射するまでの時間を第1時間より長い第2時間とする第2印刷モードのいずれかに基づいて制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式プリンターなどの印刷装置及びこのような印刷装置における印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の中には、インク(液体)を記録媒体(ターゲット)に対して噴射するインクジェット式プリンターが知られている。
【0003】
この印刷装置の中には、インク(例えば、有色のインク)を媒体に噴射する噴射部と、媒体上のインクに紫外線を照射してインクを硬化させる照射部と、を備えたものがある。そして、噴射部から噴射され媒体上に着弾したインクに紫外線を照射することにより、インクが硬化し、画像が印刷される(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−191594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような印刷装置によって供される画像としては、様々な画像表現の実現が求められている。
【0005】
例えば、表面に光沢感のある画像の実現が求められており、この要請に応えるために、噴射部に無色のインク(クリアインク)を噴射させている。そして、媒体に着弾した有色のインク(当該インクは、紫外線が照射されて硬化している)上に、無色のインクを噴射させた後に、前記インクに紫外線を照射させる。これにより、有色のインク上に無色のインクの層(平坦な層)が形成され、全体として光沢のある画像が印刷されることとなる。
【0006】
一方、インクジェット式プリンターを吐出する記録ヘッドを構成するノズルが目詰まりを起こすことがあり、これに伴うエラー処理により印刷の実行が不可能となってしまうことがある。
【0007】
ところで、光沢感を出すために用いられるクリアインクに関しては、これを吐出するノズルに目詰まりがあったとしても、画像への影響が大きくはなく、あったとしても軽微である。従来の印刷装置では、クリアインクを吐出するノズルに目詰まりを検出すると、エラー処理により印刷の実行が不可能となってしまうが、これによると、印刷装置のもつリソースを有効活用することができずに問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するためのもので、本発明に係る印刷装置は、媒体に対して第1方向に移動可能なキャリッジと、前記キャリッジに設けられ、光が照射されると硬化するカラーインクまたは特殊インクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドに設けられ、前記カラーインクを吐出するカラーインクノズル列と、前記記録ヘッドに設けられ、前記特殊インクを吐出する特殊インクノズル列と、前記媒体を前記第1方向と交差する第2方向に相対移動させる移動機構と、前記キャリッジに設けられ、前記光を照射する光照射部と、前記カラーインクノズル列と前記特殊インクノズル列とからインクが適切に吐出されているかを検査する検査部と、コントローラーとを備え、前記コントローラーは、前記検査部の検査により前記特殊インクノズル列におけるノズルからインクが適切に吐出されていることが判断された場合に、前記特殊インクノズル列から特殊インクを吐出し、前記光照射部で前記光を照射するまでの時間を第1時間とする第1印刷モード、又は、前記検査
部の検査により前記特殊インクノズル列におけるノズルからインクが適切に吐出されていないことが判断された場合に、前記特殊インクノズル列から特殊インクを吐出し、前記光照射部で前記光を照射するまでの時間を前記第1時間より長い第2時間とする第2印刷モードのいずれかに基づいて制御を行うことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る印刷装置は、前記第2印刷モードでは扱い得る最大サイズの画素するように特殊インクを吐出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る印刷装置は、前記特殊インクがクリアインクである。
【0011】
また、本発明に係る印刷装置は、前記特殊インクがホワイトインクである。
【0012】
また、本発明に係る印刷装置は、前記特殊インクがメタリックインクである。
【0013】
また、本発明に係る印刷方法は、媒体に対して第1方向に移動可能なキャリッジと、前記キャリッジに設けられ、光が照射されると硬化するカラーインクまたは特殊インクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドに設けられ、前記カラーインクを吐出するカラーインクノズル列と、前記記録ヘッドに設けられ、前記特殊インクを吐出する特殊インクノズル列と、前記媒体を前記第1方向と交差する第2方向に相対移動させる移動機構と、前記キャリッジに設けられ、前記光を照射する光照射部と、前記カラーインクノズル列と前記特殊インクノズル列とからインクが適切に吐出されているかを検査する検査部と、を用いた印刷方法であって、前記検査部の検査により前記特殊インクノズル列におけるノズルからインクが適切に吐出されていることが判断された場合に、前記特殊インクノズル列から特殊インクを吐出し、前記光照射部で前記光を照射するまでの時間を第1時間とする第1印刷モード、又は、前記検査部の検査により前記特殊インクノズル列におけるノズルからインクが適切に吐出されていないことが判断された場合に、前記特殊インクノズル列から特殊インクを吐出し、前記光照射部で前記光を照射するまでの時間を前記第1時間より長い第2時間とする第2印刷モードのいずれかに基づいて印刷を行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る印刷方法は、前記第2印刷モードでは扱い得る最大サイズの画素するように特殊インクを吐出することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る印刷方法は、前記特殊インクがクリアインクである。
【0016】
以上、本発明の印刷装置及び印刷方法では、クリアインクを吐出するノズルに目詰まりなどの異常があったとしても、この異常による不具合を補うような制御を行い、画質の劣化を最小限に抑えつつ印刷を実行することが可能となるので、印刷装置のもつリソースを有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷装置10の概要を示す図である。
【図2】印刷装置10の全体構成の概略ブロック図のである。
【図3】印刷装置10のキャリッジ14に搭載されるヘッドユニット150及び紫外線照射ユニット160a、160bを説明する図である。
【図4】本発明の実施形態に係る印刷装置10のコントローラーをより詳細に説明するためのブロック図である。
【図5】記録ヘッドの内部構造を説明するための断面図である。
【図6】ヘッドドライバーを説明するためのブロック図である。
【図7】ノズル列からインクを吐出させるための基準駆動信号を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る印刷装置10で用いられる紫外線照射ユニット160a、160bの構成例を示す図である。
【図9】記録ヘッド検査装置構成の概略を示す構成図である。
【図10】メインルーチンのフローチャートである。
【図11】ヘッド検査ルーチンのフローチャートである。
【図12】ヘッド検査処理における検査位置の説明図である。
【図13】静電誘導によって誘導電圧が生じる原理の説明図である。
【図14】閾値Vthrの一例を示す説明図である。
【図15】通常印刷処理ルーチンのフローチャートである。
【図16】通常印刷処理ルーチンに基づく印刷動作を説明する図である。
【図17】クリアインクノズルエラー時印刷処理ルーチンのフローチャートである。
【図18】クリアインクノズルエラー時印刷処理ルーチンに基づく印刷動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本発明の実施形態に係る印刷装置10の概要を示す図であり、シリアルヘッド方式のインクジェット記録装置である。また、図2は印刷装置10の全体構成の概略ブロック図である。また、図3は印刷装置10におけるキャリッジ14に搭載されるヘッドユニット150及び紫外線照射ユニット160a、160bを説明する図である。
【0019】
印刷装置10は、図1に示すように、棒状のガイドレール12を有しており、このガイドレール12には、キャリッジ14が支持されている。このキャリッジ14は、キャリッジ駆動ユニット140(図2参照)によって主走査方向(第1の方向)をガイドレール12に沿って往復移動するようになっている。
【0020】
キャリッジ14の中央部には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、クリア(CL)の各色の色インクを記録媒体Sに吐出するノズルを形成してなるヘッドユニット150が搭載されている。ヘッドユニット150で吐出されるインクのうちイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色インクは、主として画像記録用インクとして、上位装置であるコンピューター1等から受信した画像データに基づいた所定画像の描画のために用いられる。
【0021】
また、上位装置であるコンピューター1等から受信したクリアインク吐出データに基づいて、ヘッドユニット150からクリア(CL)インクが、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)で形成された画像の上に、吐出されることで、画像に光沢感やシボ感を付与する。クリア(CL)インクは、無色透明なインクであり、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)インクは、有色のインク(カラーインク)である。すなわち、ヘッドユニット150は、有色のインクと無色のインクとを記録媒体Sに噴射する。
【0022】
なお、以下において、イエローやイエローインクのこと「Y」などと略記することがある。
【0023】
キャリッジ14に連結されたインク供給チューブ15は、不図示のインクタンクからヘッドユニット150に各色のインクを供給するものである。
【0024】
コンピューター1は、印刷を行う画像に応じた画像データを、プリンタードライバーを介して印刷装置10に送る。画像データには、媒体の各画素についてインク色毎にインクを吐出するか否かを示す画素データが含まれている。
【0025】
なお、本実施形態で使用するインクは、紫外線を照射することにより硬化する紫外線硬化型のUVインクである。紫外線硬化型のインクとしては、重合性化合物として、ラジカル重合性化合物を含むラジカル重合系インク、カチオン重合性化合物を含むカチオン重合系インク、及びラジカル重合系インクとカチオン重合系インクとを複合させたハイブリッド型インクが適用可能である。なお、インクには、紫外線以外の光で重合して硬化する重合性化合物と、紫外線以外の光、例えば電子線、X線、赤外線等で重合性化合物同士の重合反応を開始させる光開始剤とが適用されてもよい。
【0026】
また、本発明による印刷装置10に用いられる記録媒体Sしては、普通紙、再生紙、光沢紙等の各種紙、各種布地、各種不織布、樹脂、金属、ガラス、樹脂製フィルム等の材質からなる記録媒体Sが適用可能である。なお、樹脂製フィルムの樹脂としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PS(ポリエステル)、PP(ポリプロピレン)等が好適に用いられる。
【0027】
上記のようなヘッドユニット150は、コントローラー110に接続されており、ヘッドユニット150に対しては、駆動信号COM、インクの吐出を制御するための信号などが送られる。
【0028】
キャリッジ14におけるヘッドユニット150の両側部には、ノズルから記録媒体Sに吐出されたインクに対して紫外線を照射する光照射装置としての紫外線照射ユニット160a、160bが、ヘッドにおける主走査方向(第1の方向)と直交し記録媒体Sを搬送する副走査方向(第2の方向)の上流側端部から下流側端部にわたってそれぞれ設けられている。
【0029】
キャリッジ14の移動可能範囲の中央部分は、記録媒体Sに記録を行う記録領域とされており、この記録領域には、記録媒体Sを非記録面側から水平に支持するプラテン9が設けられている。
【0030】
また、印刷装置10には、複数の搬送ローラー13等により構成され、副走査方向(第2の方向)に記録媒体Sを送るための記録媒体搬送ユニット130(図2参照)が設けられている。記録媒体搬送ユニット130は、画像記録時において、キャリッジ14の動作に合わせて、記録媒体Sの搬送と停止とを繰り返して記録媒体Sを間欠的に搬送する。
【0031】
また、印刷装置10の筐体上面(不図示)には、例えばタッチパネルにより構成され、ユーザーが選択可能な記録モードを表示するとともに、表示された記録モードをユーザーが選択して入力する入力操作ユニット120が設けられている。この入力操作ユニット120は、後述のコントローラー110に接続されており、所定操作に基づいて選択された記録モードに係る信号をコントローラー110に対して出力するようになっている。
【0032】
検査ボックス350は、プラテン9の側方であり、かつ、キャリッジ14が到達可能な印刷装置10筐体内に設けられており、キャリッジ14に搭載される記録ヘッドを構成するノズルの目詰まりを検査するための構成である。
【0033】
図2は本実施形態における印刷装置10を制御するための制御ブロックを示したものであり、この制御ブロックにおけるコントローラー110は、たとえば、CPU111、ROM112、RAM113からなり、ROM112に記録された処理プログラムをRAM113に展開してCPU111によりこの処理プログラムを実行するようになっている。また、インターフェイス105は、印刷装置10のコントローラー110とコンピューター1を接続するために設けられたインターフェイスである。
【0034】
このコントローラー110は、前述の処理プログラムに従い、記録媒体搬送ユニット130、キャリッジ駆動ユニット140、ヘッドユニット150、紫外線照射ユニット160等の動作状況等のステータスに基づいて、各部材の動作を制御するようになっている。また、キャリッジ位置検出器180は、キャリッジ14の原点位置を検出する位置検出センサ(不図示)等から構成されており、これによる検出情報はコントローラー110に入力されるように構成され、キャリッジ駆動ユニット140の駆動処理に役立てられる。
【0035】
駆動信号生成回路117は、後述する駆動信号COMを生成する。駆動信号生成回路117は、コントローラー110から、駆動信号COMの波形に関するデータを取得する。そして、この波形に関するデータに基づいて電圧信号を生成し、これを電力増幅することにより駆動信号COMを生成する。駆動信号COMの波形の一例については、後述する。
【0036】
紫外線照射ユニット160a、160bは、媒体に吐出されたUVインクに対して紫外線を照射してUVインクを硬化させるための装置である。紫外線照射ユニット160a、160bの光源としては、例えば、紫外線を発生するUV−LED(Ultra Violet Light Emitting Diode;紫外線LED)などによって構成される。そして、コントローラー110からの制御により紫外線の照射率を制御できるようになっている。このようにすることで、記録媒体Sの各位置おいて紫外線を照射する量を変化させることもできるようになっている。なお、前記光源としては他にメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等が利用可能である。
【0037】
印刷装置10では、コントローラー110は、記録モードに応じて、ヘッドユニット150からインクを吐出させる順序を変更して、インクを吐出させて画像を記録させるようにヘッドユニット150や記録媒体搬送ユニット130等を制御するようになっている。
【0038】
次に、印刷装置10のキャリッジ14に搭載されるヘッドユニット150について図3を参照して説明する。図3はキャリッジ14の底面(記録媒体Sと対向する面)を概略的に示している。図示するように、ヘッドユニット150は、副走査方向に複数のノズルが並んで形成されたノズル列151〜155を備えている。本実施例では、各ノズル列は、180個のノズルから形成されている。なお、ノズル列におけるノズル数については、図では略記するようにしている。これらのノズル列151〜155は、ヘッドユニット150から吐出されるインクのインク色に対応している。すなわち、ノズル列151〜155は、シアンインク吐出用ノズル列151、マゼンタインク吐出用ノズル列152、イエローインク吐出用ノズル列153、ブラックインク吐出用ノズル列154、 クリアインク
吐出用ノズル列155から構成されている。
【0039】
なお、本実施例では、各インク色に対応するノズル列は、ノズルが1列に並んで構成されるが、1つのノズル列におけるノズルの配置は、特に限定するものではなく、例えば、ノズルが複数列に並び、かつ、複数列のノズルが千鳥状となるように構成されてもよい。
【0040】
また、図3に示すヘッドユニット150においては単一のヘッド構造体にノズル列151乃至155の全てのノズル列が設けられた構成であるが、ノズル列151乃至155の各ノズルをそれぞれ異なったヘッド構造体として、これらをキャリッジ14に搭載するような構成とすることもできる。このような異なったヘッド構造体を構成する際には、1つのノズル列に対応して1つのヘッド構造体を構成するようにしてもよいし、複数のノズル列に対応して1つのヘッド構造体を構成するようにしてもよい。
【0041】
また、キャリッジ14の底面の両端部には、ノズル列151〜155を挟むようにして、2つの紫外線照射ユニット160a、160bが配されている。紫外線照射ユニット1
60a、160bは、キャリッジ14を主走査方向に走査しつつ、ノズル列151〜155で吐出される全てのインクに対して、紫外光を照射できるものが用いられる。この紫外線照射ユニット160a、160bにより、各ノズル列で吐出されたインクに対して光を照射することで、インクを硬化させる。
【0042】
計測器群180には、キャリッジ14の位置を検出するためのリニア式エンコーダー(図1には不図示)と、搬送ローラー13の回転量を検出するためのロータリー式エンコーダー(図1には不図示)と、印刷される記録媒体Sの先端及び後端の位置を検出するための記録媒体S検出センサ等が含まれる。
【0043】
コントローラー110は、印刷装置10に接続されたコンピューター1等から送出された印刷データPDに基づいて画像を印刷すべく、印刷装置10の各ユニットを制御する。
【0044】
このような印刷装置10では、印刷時において、印刷用記録媒体Sが搬送ローラー13により間欠的に所定の搬送量で搬送され、その間欠的な搬送の合間にキャリッジ14が、搬送ローラー13による搬送方向(第2方向)に対して交差する方向(第1方向)、即ちCR移動方向に沿って移動しながら、記録ヘッド221から印刷用記録媒体Sに向けてインクを吐出する。この吐出されたインクによって、印刷用記録媒体S上にはドットが形成されて印刷用記録媒体S上に画像が形成される。
【0045】
キャップ装置340は印刷休止中などに記録ヘッドを構成するノズルが乾燥するのを防止するためにノズルを封止するときに利用されるものである。
【0046】
記録ヘッド検査装置350は、記録ヘッド221を構成するインク吐出ノズルの目詰まりを検査する装置である。この記録ヘッド検査装置350の詳細については後述する。
【0047】
図4は本発明の実施形態に係る印刷装置10のコントローラーをより詳細に説明するためのブロック図である。
【0048】
コントローラー110は、外部インターフェイス(外部I/F)105と、各種データを一時的に記憶するRAM113と、制御プログラム等を記憶したROM112と、CPU等を含んで構成された制御部228と、クロック信号(CK)を発生する発振回路229と、記録ヘッド221へ供給するための駆動信号(COM)を生成する駆動信号生成回路220(詳細は後述する)と、駆動信号や、印刷データ(記録データ)に基づいて展開されたドットパターンデータ(ビットマップデータ)等を、記録媒体搬送ユニット130と、ヘッドユニット150、キャリッジ駆動ユニット140等に送信する内部インターフェイス(内部I/F)231と、を備えている。
【0049】
外部I/F105は、例えば、キャラクタコード、グラフィック関数、イメージデータ等によって構成される印刷データを、図示しない外部のコンピューター等から受信する。また、ビジー信号(BUSY)やアクノレッジ信号(ACK)が、外部I/F105を通じて、コンピューター等に対して出力される。
【0050】
RAM113は、受信バッファ、中間バッファ、出力バッファ及びワークメモリー(図示せず)を有している。そして、受信バッファは、外部I/F105を介して受信された印刷データを一時的に記憶し、中間バッファは、制御部228により変換された中間コードデータを記憶し、出力バッファは、画素パターンデータを記憶する。ここで、画素パターンデータとは、中間コードデータ(例えば、階調データ)をデコード(翻訳)することにより得られる印刷データである。
【0051】
ROM112には、各種データ処理を行わせるための制御プログラム(制御ルーチン)の他に、フォントデータ、グラフィック関数等が記憶されている。また、ROM112には、後述する各ノズル列に対応付けられたズレ量情報と、各ノズル列に供給する駆動信号を対応付けるための駆動データテーブルも記憶されている。
【0052】
制御部228は、ROM112に記憶された制御プログラムに従って各種の制御を行う。例えば、受信バッファ内の印刷データを読み出すと共にこの印刷データを変換して中間コードデータとし、当該中間コードデータを中間バッファに記憶させる。また、制御部228は、中間バッファから読み出した中間コードデータを解析し、ROM112に記憶されているフォントデータ及びグラフィック関数等を参照して、画素パターンデータに展開(デコード)する。そして、制御部228は、必要な装飾処理を施した後に、この画素パターンデータを出力バッファに記憶させる。各画素パターンデータは、階調情報として、例えば2ビットのデータからなる。すなわち、制御部228は、階調データ設定手段として機能する。
【0053】
記録ヘッド221の1回のCR移動方向への移動により記録可能な1行分の画素パターンデータが得られると、当該1行分の画素パターンデータが、出力バッファから内部I/F231を通じて順次ヘッドドライバー222に出力される。出力バッファから1行分の画素パターンデータが出力されると、展開済みの中間コードデータが中間バッファから消去され、次の中間コードデータについての展開処理が行われる。
【0054】
また、コントローラー110は、記録媒体搬送ユニット130と、キャリッジ駆動ユニット140と接続されており、コントローラーにより、PFモーター215が駆動されて印刷用記録媒体Sが搬送され、CRモーター242が駆動されてキャリッジ14を移動させる。
【0055】
ヘッドユニット150は、記録ヘッド221とヘッドドライバー222とを有している。
【0056】
図3は、記録ヘッド221を下面側から見た図である。記録ヘッド221の下面には、ブラックインクを吐出するインク吐出部としてのイエロー(Y)インクノズル列、マゼンタ(M)インクノズル列、シアン(C)インクノズル列、ブラック(K)インクノズル列、クリア(CL)インクノズル列が設けられている。
【0057】
各ノズル列の複数のノズルは記録媒体の搬送方向に沿って整列している。印刷時には、キャリッジ14(図1)とともに記録ヘッド221がCR移動方向(第1方向)に移動しつつ、各ノズル列からインクが吐出される。各ノズルからは例えば滴状のインクが吐出される。また、この例では記録媒体Sの搬送方向の上流側に1番ノズルが配置されている。
【0058】
図5は、記録ヘッドの内部構造を説明するための断面図である。
【0059】
記録ヘッド221は、図5に示すように、インクカートリッジ(不図示)からのインクが供給されるインク室262と、複数(例えば64個)のノズルnが搬送方向に列設されたノズルプレート264と、ノズルnのそれぞれに対応して複数設けられた圧力室266と、を主に備える。圧力室266は、駆動素子としてのピエゾ素子265の変形によって膨張・収縮するようになっている。
【0060】
インク室262と圧力室266とは、インク供給口267及び供給側連通孔268を介して連通されている。また、圧力室266とノズルnとは、第1ノズル連通孔269及び第2ノズル連通孔261を介して連通されている。即ち、インク室262から圧力室26
6を通ってノズルnに至る一連のインク流路が、ノズルn毎に形成されている。
【0061】
本実施の形態におけるノズルプレート264は、撥インク処理ノズルプレートとして構成してある。
【0062】
ノズルnは、印刷用の記録媒体Sと対向するノズルプレート264の外側の表面に、比較的小さい口径で開口している一方、第2ノズル連通孔261側であるノズルプレートの裏側に、比較的大きい口径で開口している。このため、ノズルnの内側壁面は、漏斗状、あるいは、コーン状となる。
【0063】
上記のピエゾ素子265は、所謂たわみ振動モードのピエゾ素子265である。たわみ振動モードのピエゾ素子265を用いると、充電によりピエゾ素子265が電界と直交する方向に縮んで圧力室266が収縮し、充電されたピエゾ素子265を放電することにより、ピエゾ素子265が電界と直交する方向に伸長して圧力室266が膨張する。
【0064】
すなわち、記録ヘッド221では、ピエゾ素子265に対する充放電に伴って、対応する圧力室266の容量が変化する。このような圧力室266の圧力変動を利用して、ノズルnからインク滴を吐出させることができる。
【0065】
なお、上記のたわみ振動モードのピエゾ素子265に代えて、いわゆる縦振動モードの圧電振動子を用いることも可能である。縦振動モードの圧電振動子は、充電による変形で圧力室を膨張させ、放電による変形で圧力室266を収縮させる圧電振動子である。
【0066】
以上のように構成された印刷装置10は、記録動作時においてキャリッジ14の往復移動の各々に同期させて、記録ヘッド221から滴状のインクを吐出させる。一方、キャリッジ14の往路移動と復路移動との切替わり時に搬送ローラー13を回転し、印刷記録媒体Sを搬送方向に設定行幅分だけ移動させる。この結果、印刷用の記録媒体Sには、印刷データに基づく画像や文字等が記録される。
【0067】
ヘッドドライバー222は、図5に示すように、第1シフトレジスタ(第1SR)232及び第2シフトレジスタ(第2SR)233からなるシフトレジスタ回路と、第1ラッチ回路237及び第2ラッチ回路238からなるラッチ回路と、デコーダー239と、制御ロジック254と、レベルシフタ234と、スイッチ回路255とを備えている。
【0068】
図6は、ヘッドドライバーを説明するためのブロック図である。
【0069】
各シフトレジスタ、各ラッチ回路、デコーダー及びスイッチ回路は、それぞれ、図6に示すように、記録ヘッド221のノズルn毎に設けた第1シフトレジスタ232A〜232N 、第2シフトレジスタ233A〜33N、第1ラッチ回路237A〜37N、第2
ラッチ回路238A〜238N、デコーダー239A〜239N及びスイッチ回路255A〜255Nから構成されている。
【0070】
このようなヘッドドライバー222に駆動され、記録ヘッド221は、コントローラー110からの印刷データ及びタイミング信号に基づいてインク滴を吐出する。コントローラー110からの印刷データ(SI)は、発振回路229からのクロック信号(CK)に同期して、内部I/F231から第1シフトレジスタ232及び第2シフトレジスタ233にシリアル伝送される。
【0071】
コントローラー110からの印刷データは、各画素を2ビットのデータにて示している。各画素は、3滴のインク滴にて形成可能な3つのドットの形成、非形成により、サイズ
の異なる3種類の画素を形成可能である。具体的には、各画素は、非形成、小サイズ画素、中サイズ画素、大サイズ画素からなる4階調にて示され、印刷データは非記録が(00)、小サイズ画素が(01)、中サイズ画素が(10)、大サイズ画素が(11)にて示されている。
【0072】
このような印刷データは、画素毎及びノズルn毎に設定される。そして、全てのノズルnに関して下位ビットのデータが第1シフトレジスタ232(232A〜232N)に入力され、全てのノズルnに関して上位ビットのデータが第2シフトレジスタ233(233A〜233N)に入力される。
【0073】
図6に示すように、第1シフトレジスタ232には、第1ラッチ回路237が電気的に接続されている。同様に、第2シフトレジスタ233には、第2ラッチ回路238が電気的に接続されている。
【0074】
そして、コントローラー110から基準タイミング信号としてのPTS信号をトリガとして供給されるラッチ信号(LAT)が各ラッチ回路237,238に入力されると、第1ラッチ回路237は印刷データの下位ビットのデータをラッチし、第2ラッチ回路238は印刷データの上位ビットをラッチする。
【0075】
このように、第1シフトレジスタ232及び第1ラッチ回路237からなる回路ユニットと、第2シフトレジスタ233及び第2ラッチ回路238からなる回路ユニットは、それぞれが記憶回路として機能する。すなわち、これらの回路ユニットは、デコーダー239に入力される前の印刷データを一時的に記憶する。
【0076】
各ラッチ回路237、238にてラッチされた印刷データは、デコーダー239A〜239Nに入力される。デコーダー239は、2ビットの印刷データを翻訳してパルス選択データ(パルス選択情報)を生成する。パルス選択データは、階調データに等しいかそれよりも多い複数ビットで構成され、各ビットは駆動信号(COM)を構成する各パルス波形に対応している。そして、各ビットの内容(例えば、(0),(1))に応じて、ピエゾ素子265に対する駆動パルス波形の供給/非供給が選択されるようになっている。なお、駆動信号(COM )及び駆動パルス波形の供給についての詳細は、後述する。
【0077】
一方、デコーダー239には、制御ロジック254からのタイミング信号としてラッチ信号(LAT)及びチェンジ信号(CH)も入力される。
【0078】
デコーダー239によって翻訳されたパルス選択データは、上位ビット側から順に、タイミング信号によって規定されるタイミングが到来する毎にレベルシフタ234に入力される。例えば、記録周期における最初のタイミングではパルス選択データの最上位ビットのデータがレベルシフタ234に入力され、2番目のタイミングではパルス選択データにおける2番目のビットのデータがレベルシフタ234に入力される。
【0079】
レベルシフタ234は、電圧増幅器として機能し、パルス選択データが「1」の場合には、スイッチ回路255を駆動できる電圧、例えば数十ボルト程度の電圧に昇圧された電気信号を出力する。
【0080】
レベルシフタ234で昇圧された「1」のパルス選択データは、駆動パルス生成手段及び制御本体部として機能するスイッチ回路255に供給される。このスイッチ回路255は、印刷データの翻訳により生成されたパルス選択データに基づき、駆動信号(COM)に含まれる駆動パルスを選択して駆動パルスを生成すると共に、当該駆動パルスをピエゾ素子265に供給するものである。従って、スイッチ回路255の入力側には、駆動信号
生成回路220からの駆動信号(COM)が供給されるようになっており、その出力側にはピエゾ素子265が接続されている。
【0081】
パルス選択データは、スイッチ回路255の作動を制御する。例えば、スイッチ回路255に加わるパルス選択データが「1」である期間中は、スイッチ回路255が接続状態になり、駆動信号の駆動パルスがピエゾ素子265に供給される。この結果、ピエゾ素子265の電位レベルが変化する。
【0082】
一方、スイッチ回路255に加わるパルス選択データが「0」の期間中は、レベルシフタ234からスイッチ回路255を作動させる電気信号が出力されない。このため、スイッチ回路255が切断状態になり、駆動信号の駆動パルスがピエゾ素子265に供給されない。パルス選択データが「0」の期間においては、ピエゾ素子265は、パルス選択データが「0」に切り換わる直前の電位レベルを維持する。
【0083】
本実施形態において、1つの画素は、3滴のインク滴の組み合わせにより、各サイズの画素、すなわち大サイズ画素、中サイズ画素、小サイズ画素が形成されている。そして、1画素を形成するためのインクを吐出可能な期間(以下、1画素期間という)TWに最大3滴のインクを吐出する。
【0084】
図7は、ノズル列からインクを吐出させるための基準駆動信号を示す図である。
【0085】
図7に示すように、駆動信号Wは、1画素期間内に3滴のインクにてドットを形成可能な3つのドット形成信号を有している。このドット形成信号は、期間T1に出力される第1パルス信号PS1と、期間T2に出力される第2パルス信号PS2と、期間T3に出力される第3パルス信号PS3とであり、1つの画素を形成する周期TWにて繰り返し発生するパルス列波形信号である。
【0086】
駆動信号Wにおいて、第1パルス信号PS1はノズルnから中インク滴を吐出させ中ドット駆動パルスDP1であり、第2パルス信号PS2はノズルnから小インク滴を吐出させる小ドット駆動パルスDP2であり、第3パルス信号PS3は第1パルス信号PS1と同様に、ノズルnから中インク滴を吐出させる中ドット駆動パルスDP3である。
【0087】
そして、図7に示すように大サイズ画素を形成する際には、第1パルス信号PS1と第3パルス信号PS3とがピエゾ素子265に供給されて、2つの中ドットにて1つの画素が形成される。中サイズ画素を形成する際には、第1パルス信号PS1及び第3パルス信号PS3のいずれかと、第2パルス信号PS2とがピエゾ素子265に供給されて、1つの中ドットと1つの小ドットにて1つの画素が形成される。このとき、第1パルス信号PS1及び第3パルス信号PS3のいずれを供給するかは、キャリッジ14の移動方向により設定されている。小サイズ画素を形成する際には、第2パルス信号PS2がピエゾ素子265に供給されて、1つの小ドットにて1つの画素が形成される。図7の画素イメージ図において、2つのドットにて形成される画素が有するドット同士の間隔が開いているように示されているが、実際にはインクの広がりや滲みにより1つの画素を形成している。
【0088】
第1駆動パルスDP1は、PTS信号をトリガとして供給されるラッチ信号(LAT)が出力されてから電位を変化し始めるまで中間電位VMを維持させる第1ホールド要素P1と、中間電位VMから第1最高電位VH1まで電位を上昇させる第1充電要素P2と、第1最高電位VH1を所定時間維持させる第2ホールド要素P3と、第1最高電位VH1から第1最低電位VL1まで所定時間にて電位を下降させる第1放電要素P4と、第1最低電位VL1を所定時間維持させる第3ホールド要素P5と、第1最低電位VL1から中間電位VMまで所定時間にて電位を上昇させる第2充電要素P6、中間電位VMを維持さ
せる第4ホールド要素P7とから構成される。第3駆動パルスDP3を構成する各要素は、第1駆動パルスDP1と同様であるが、第1ホールド要素の基点が、ラッチ信号ではなく、PTS信号が出力されて所定時間後に供給されるチェンジ信号であることが相違する。また、第1駆動パルスDP1と第3駆動パルスDP3とは、各々個別に最高電位、最低電位、各ホールド要素のホールド時間、充電要素、放電要素の所要時間を、設定することが可能である。
【0089】
駆動パルスDP1、DP3がピエゾ素子に供給されると、中ドットを形成し得る量のインク滴がノズルnから吐出される。より具体的には、第1ホールド要素P1による所定時間中間電位VMに維持された後、第1充電要素P2が供給されてピエゾ素子265が中間電位VMから充電される。この充電により圧力室266の容積は、基準容積から第1最大容積まで膨張する。この圧力室266の膨張動作が、圧力室266にインクが引き込まれる引込動作である。そして、第1放電要素P4により、圧力室266は第1最小容積まで急激に収縮する。この圧力室266の収縮状態は第3ホールド要素P5が供給されている期間に亘って維持される。この圧力室266の急激な収縮及び収縮状態の保持により、圧力室266内のインク圧力が急速に高まりノズルnからは中インク滴が吐出される。すなわち、この圧力室266の収縮動作が、圧力室266からインクを押し出す押出動作である。そして、第2充電要素P6により、メニスカスの振動を短時間で収束させるべく圧力室266を膨張復帰させる。
【0090】
駆動パルスDP2は、PTS信号が出力されてから所定時間後に供給されるチェンジ信号が出力されてから電位を変化し始めるまで中間電位VMを維持させる第5ホールド要素P8と、中間電位VMから第2最高電位VH2まで電位を上昇させる第3充電要素P9と、第2最高電位VH2を所定時間維持させる第6ホールド要素P10と、第2最高電位VH2から第2最低電位VL2まで所定時間にて電位を下降させる第2放電要素P11と、第2最低電位VL2を所定時間維持させる第7ホールド要素P12と、第2最低電位VL2から中間電位VMまで所定時間にて電位を上昇させる第4充電要素P13と、中間電位VMを維持させる第8ホールド要素P14とから構成される。第2駆動パルスDP2は、最高電位、最低電位、各ホールド要素のホールド時間、充電要素、放電要素の所要時間を設定することが可能である。
【0091】
駆動パルスDP2がピエゾ素子265に供給されると、小ドットを形成し得る量のインク滴がノズルnから吐出される。より具体的には、第5ホールド要素P8による所定時間中間電位VMに維持された後、第3充電要素P9が供給されてピエゾ素子265が中間電位VMから充電されることにより、圧力室266の容積は、基準容積から第2最大容積まで膨張する(引込動作)。そして、第2放電要素P11により、圧力室266は第2最小容積まで急激に収縮する。この圧力室266の収縮状態は第7ホールド要素P12が供給されている期間に亘って維持される。この圧力室266の急激な収縮及び収縮状態の保持により、圧力室266内のインク圧力が急速に高まりノズルnからは小インク滴が吐出される(押出動作)。そして、第4充電要素P13により、メニスカスの振動を短時間で収束させるべく圧力室266を膨張復帰させる。
【0092】
次に、本発明の実施形態に係る印刷装置10で用いられる紫外線照射ユニット160a、160bのより具体的な構成例について、図8を参照して説明する。図8は本発明の実施形態に係る印刷装置10で用いられる紫外線照射ユニット160a、160bの構成例を示す図である。紫外線照射ユニット160a、160bは、図8に示されるように、副走査方向である第2方向に直列接続された複数の紫外線LEDから構成されている。図8に示す例では、直列接続された複数の紫外線LEDが3系統設けられており、それぞれの系統に対して、第1制御部、第2制御部、第3制御部が接続されている。
【0093】
紫外線照射ユニット160a、160bで照射強度をコントロールする際には、これらの制御部によって、いずれかの系統の紫外線LEDをオンオフしたり、或いは、第1制御部、第2制御部、第3制御部の全てで同様に紫外線LEDの発光レベルをコントロールしたりすることでこれを行う。
【0094】
記録ヘッド検査装置350は、図9に示すように、記録ヘッド221のノズルから飛翔したインク滴が着弾可能な検査ボックス351と、検査ボックス351内に設けられ記録ヘッド221からの所定の距離を隔てて設けられた検査領域352と、この検査領域352と記録ヘッド221との間に電圧を印加する電圧印加回路353と、検査領域352の電圧を検出する電圧検出回路354とを備えている。ここで、電圧印加回路353は、回路の開閉を行うスイッチSWを有しており、このスイッチSWは後述するヘッド検査ルーチンの実行時にオンにされるが、その他の場合にはオフにされる。
【0095】
検査ボックス351は、プラテン19の印刷可能領域から左側に外れた位置に設けられ(図1参照)、略直方体で上部が開口した筐体であり、撥水性材料であるシリコンゴム製又はフッ素樹脂製である。
【0096】
検査領域352は、検査ボックス351の中に設けられ、インク滴が直接着弾する上側インク吸収体355と、この上側インク吸収体355に着弾したあと下方に透過してきたインク滴を吸収する下側インク吸収体356と、上側インク吸収体355と下側インク吸収体356との間に配置されたメッシュ状の電極部材357とにより構成されている。
【0097】
上側インク吸収体355は、電極部材357と同電位となるように導電性を有するスポンジによって作製され、その表面が検査領域352となっている。このスポンジは、着弾したインク滴が速やかに下方に移動可能な透過性の高いものであり、ここではエステル系ウレタンスポンジ(商品名:エバーライトSK−E,ブリジストン(株)製)が用いられている。
【0098】
下側インク吸収体356は、上側インク吸収体355に比べてインクの保持力が高いものであり、フェルトなどの不織布によって作製されており、ここでは不織布(商品名:キノクロス,王子キノクロス(株)製)が用いられている。電極部材357は、ステンレス(例えばSUS)製の金属からなる格子状のメッシュとして形成されている。このため、上側インク吸収体355に一旦吸収されたインクは格子状の電極部材357の隙間を通って下側インク吸収体356に吸収・保持される。
【0099】
電圧印加回路353は、電極部材357が正極、記録ヘッド221が負極となるように直流電源(例えば400V)と抵抗素子(例えば1MΩ)とを介して両者を電気的に接続している。ここで、電極部材357は、導電性を有する上側インク吸収体355と接触しているため、上側インク吸収体355の表面すなわち検査領域352も電極部材357と同電位となる。
【0100】
電圧検出回路354は、検査領域352の電圧と同視される電極部材357の電圧を検出するように接続され、電極部材357の電圧信号を積分して出力する積分回路354aと、この積分回路354aから出力された信号を反転増幅して出力する反転増幅回路354bと、この反転増幅回路354bから出力された信号をA/D変換してコントローラーへ出力するA/D変換回路354cとを備えている。積分回路354aは、1つのインク滴の飛翔・着弾による電圧変化が小さいことから、複数のインク滴の飛翔・着弾による電圧変化を積分することにより大きな電圧変化として出力するものである。反転増幅回路354bは、電圧変化の正負を反転させると共に回路構成によって決まる所定の増幅率で積分回路から出力された信号を増幅して出力するものである。A/D変換回路354cは、
反転増幅回路354bから出力されたアナログ信号をディジタル信号に変換してコントローラー110に出力するものである。
【0101】
キャップ装置340は、図1に示すように、印刷休止中などにノズルが乾燥するのを防止するためにノズルを封止するときに利用されるものである。このキャップ装置340は、記録ヘッド221がキャリッジ14と共に右端(ホームポジションという)まで移動したときに該記録ヘッド221のノズル形成面を覆うように作動される。また、キャップ装置340には、図示しない吸引ポンプが接続されている。そして、例えば記録ヘッド検査装置350でノズルのインク詰まりが検出されたときなど、必要に応じて、キャップ装置340で封止された記録ヘッド221のノズル形成面に吸引ポンプの負圧を作用させてノズルから詰まったインクを吸引排出させる。なお、吸引排出された廃インクは、図示しない廃液タンクに溜められる。
【0102】
コントローラー110は、図1に示すように、CPU111を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、各種処理プログラムを記憶したROM112と、一時的にデータを記憶したりデータを保存したりするRAM113と、データを書き込み消去可能な図示しないフラッシュメモリーと、図示しない入出力ポートとを備えている。外部機器との情報のやり取りを行うインターフェイス(I/F)は、コントローラー110に接続される。なお、ROM112には、後述するメインルーチンや予備吐出ルーチン、ヘッド検査ルーチン、印刷処理ルーチンの各処理プログラムが記憶されている。また、RAM113には、印刷バッファ領域が設けられており、この印刷バッファにコンピューター1からI/F105を介して送られてきた印刷データが記憶される。
【0103】
このコントローラー110には、記録ヘッド検査装置350の電圧検出回路354から出力された電圧信号や、リニア式エンコーダーからのポジション信号などが図示しない入力ポートを介して入力されるほか、コンピューター1から出力された印刷ジョブなどがI/F105を介して入力される。また、コントローラー110からは、記録ヘッド221への制御信号やPFモーター215への制御信号、CRモーター242への駆動信号、キャップ装置340への動作制御信号などが図示しない出力ポートを介して出力されるほか、コンピューター1への印刷ステータス情報などがI/F105を介して出力される。
【0104】
次に、こうして構成された本実施形態の印刷装置の動作について説明する。ここでは、まず、メインルーチンの動作について図10に基づいて説明する。図10は、コントローラー110のCPU111により実行されるメインルーチンのフローチャートである。このルーチンは、印刷装置の電源がオンされたあと所定のタイミングごとに(例えば数msecごとに)CPU111により実行される。
【0105】
このルーチンが開始されると、CPU111は、まず、印刷待ち状態の印刷データが存在するか否かを判定する(ステップS100)。ここでは、コンピューター1から受信した印刷データは、RAM113に形成された印刷バッファ領域に格納されて印刷待ち状態の印刷データとなるため、印刷データを受信したときに印刷中の場合だけでなく直ちに印刷可能な場合であっても印刷待ち状態の印刷データとなる。
【0106】
そして、ステップS100で印刷待ち状態の印刷データが存在しないときには、そのままこのメインルーチンを終了する。一方、ステップS100で、印刷待ち状態の印刷データが存在したときには、ヘッド検査ルーチンを実行する(ステップS101)。
【0107】
このヘッド検査ルーチンは、記録ヘッド221 に配置されたすべてのノズルの詰まりの有無を検査する処理である。図11は、このヘッド検査ルーチンのフローチャートである。このルーチンが開始されると、CPU111は、電圧印加回路353のスイッチSW
を入れて検査領域352と記録ヘッド221との間に所定の電位差を発生させると共に、今回の検査位置つまりノズルからインクを吐出する検査領域352の位置を取得する(ステップS300)。
【0108】
ここでは、インクの吐出により検査領域352の表面にインクに含まれる固形物が堆積することがあるため、ヘッド検査を行うごとに検査位置を変更するように設定されている。図12は、記録ヘッド検査処理における検査位置の説明図である。図12では複数の検査位置p1,p2,p3,p4が設定され、1回のヘッド検査においては、検査位置の違いによる誘電電圧の検出値のばらつきが生じないように、各ノズル列で同じ検査位置にインクを吐出するよう設定されている。
【0109】
例えば、今回のヘッド検査を検査位置p1で行う場合には、最初にシアンインクノズル列151を検査位置p1に対向するように位置決めしてそのシアンインクノズル列151に含まれる各ノズルからインク滴を吐出し、次にマゼンタインクノズル列152を検査位置p1に対向するように位置決めしてそのマゼンタインクノズル列152に含まれる各ノズルからインク滴を吐出し、その後イエローインクノズル列153、ブラックインクノズル列154、クリアインクノズル列155についても同様にして検査位置p1にて各ノズルから各色インク滴を吐出する。
【0110】
また、ある検査位置だけにインクの固形分が堆積し過ぎないように、次回の検査位置は今回の検査位置とは別の位置にインクを吐出するようになっている。例えば、今回のヘッド検査を検査位置p1で行った場合には次回のヘッド検査は検査位置p2で行う、という具合である。
【0111】
さて、図11に戻り、ステップS300で今回の検査位置を取得したあと、CPU111はCRモーター242を駆動して記録ヘッド221のノズル列のうち検査対象となるノズル列が今回の検査位置に対向するようにキャリッジ14を移動し(ステップS310)、検査対象となるノズル列のうち1つのノズルから帯電したインク滴を吐出させる(ステップS320)。
【0112】
ここで、帯電したインク滴が記録ヘッド221のノズルから飛翔して上側インク吸収体355からなる検査領域352に至る場合の電極部材357における電圧の変化について図13に基づいて説明する。図13は静電誘導によって誘導電圧が生じる原理の説明図である。
【0113】
図13(a)に示すように、記録ヘッド221でノズルから飛翔する前のインク滴は電圧印加回路353によって負に帯電している。また、記録ヘッド221と検査領域352とは距離を隔てて配置されると共に両者間に所定の電位差が発生していることから、両者間には所定の電界強度(=電位差/距離)が生じている。
【0114】
このため、図13(b)に示すように、この負に帯電したインク滴がノズルから飛翔して上側インク吸収体355へ近づくにつれ、静電誘導によって上側インク吸収体355の表面には正電荷が増加する。この結果、記録ヘッド221と電極部材357との間の電圧は、静電誘導によって生じる誘導電圧により当初の電圧値よりも高くなる。
【0115】
その後、図13(c)に示すように、負に帯電したインク滴が上側インク吸収体355に達すると、インク滴の負電荷により上側インク吸収体355の正電荷が中和される。この結果、記録ヘッド221と電極部材357との間の電圧は当初の電圧値を下回る。その後、記録ヘッド221と電極部材357との間の電圧は印加されている電圧値に戻る。このときの出力信号の振幅は、記録ヘッド221から上側インク吸収体355(検査領域3
52)までの距離に依存するほか、飛翔するインク滴の有無やその大きさにも依存する。

【0116】
このため、ノズルが詰まってインク滴が飛翔しなかったりインク滴が所定の大きさより小さかったりしたときには、出力信号の振幅が通常時に比べて小さくなるため、出力信号の振幅に基づいてノズルの詰まりの有無を判定することができる。本実施形態では、インク滴が所定の大きさであっても1ショット分のインク滴による出力信号の振幅が極めて小さいことから、駆動波形を表す1セグメントの第1〜第3パルスP1,P2,P3のすべてを出力する操作を8回行うことにより24ショット分のインク滴を吐出する。これにより、出力信号は24ショット分のインク滴による積分値となるため、電圧検出回路354からは十分大きな出力波形が得られる。なお、電圧検出回路354から出力される信号は、反転増幅回路354bを経由することから振幅の向きが逆転する。
【0117】
図11に戻り、このように検査対象となるノズル列のうちの1つのノズルから帯電したインク滴を吐出させたあと、CPU111は電圧検出回路354から出力された信号の振幅すなわち出力レベルが閾値Vthr以上か否かを判定する(ステップS330)。
【0118】
この閾値Vthrは、図14に示すように、24ショット分のインクが正常に吐出されたときに出力レベルが超えるように、また24ショット分のインクが正常に吐出されなかったときにはノイズ等によって超えることのないように、経験的に定められた値である。

【0119】
そして、ステップS330で出力レベルが閾値Vthr未満だったときには、今回のノズルに詰まりなどの異常が生じているとみなし、そのノズルを特定する情報(例えばどのノズル列の何番目のノズルかを示す情報)をRAM113の所定領域に記憶する(ステップS340)。
【0120】
このステップS340のあと又はステップS330で出力レベルが閾値Vthr以上のとき(つまり今回のノズルが正常だったとき)、CPU111は現在検査中のノズル列に含まれるすべてのノズルについて検査を行ったか否かを判定し(ステップS350)、現在検査中のノズル列に未検査のノズルがあるときには、検査対象となるノズルを未検査のものに更新し(ステップS360)、その後再びステップS320以降の処理を行う。
【0121】
一方、ステップS350で現在検査中のノズル列に含まれるすべてのノズルについて検査を行ったときには、記録ヘッド221に含まれるすべてのノズル列について検査を行ったか否かを判定し(ステップS370)、未検査のノズル列が存在するときには、検査対象となるノズル列を未検査のノズル列に更新し(ステップS380)、その後再びステップS310以降の処理を行う。
【0122】
一方、ステップS370で記録ヘッド221に含まれるすべてのノズル列について検査を行ったときには、電圧印加回路353のスイッチSWをオフにし(ステップS390)、このヘッド検査ルーチンを終了する。このルーチンを実行することにより、RAM113の所定領域には、記録ヘッド221に配列された全ノズルのうち異常が発生しているノズルがある場合にはそのノズルを特定する情報が記憶され、異常が発生しているノズルがない場合には何も記憶されない。
【0123】
さて、図10のメインルーチンに戻り、上述したヘッド検査ルーチン(ステップS110)を実行したあと、記録ヘッド221に配列された全ノズルのうち異常が発生しているノズルがあるか否かをRAM113の所定領域の記憶内容に基づいて判定し(ステップS120)、異常が発生しているノズルがあるときには、詰まりが原因となっていることを
考慮して記録ヘッド221のクリーニングを行うが、その前にクリーニングを行った回数が所定回数(例えば3回)未満か否かを判定する(ステップS104)。
【0124】
そして、クリーニングを行った回数が所定回数未満のときには、記録ヘッド221のクリーニングを実行する(ステップS105)。具体的には、CRモーター242を駆動して記録ヘッド221がキャップ装置340と対向するホームポジションに来るまでキャリッジ14を移動させ、キャップ装置340を作動してキャップ装置340が記録ヘッド221 のノズル形成面を覆うようにした後、ノズル形成面に図示しない吸引ポンプの負圧を作用させてノズルから詰まったインクを吸引排出させる。このクリーニングを実行した後、ノズルの異常が解消されたか否かを調べるため再びステップS101に戻る。
【0125】
なお、このステップでは、異常が発生していたノズルのみを再検査してもよいが、何らかの原因でクリーニング時に正常だったノズルに詰まりが発生することも考えられることから、記録ヘッド221のすべてのノズルについて再検査を行う。
【0126】
一方、ステップS104でクリーニングを行った回数が所定回数以上だったときには、ステップS106に進み、目詰まりを起こしているノズルが、クリアインクノズル155に属するものであるか判定される。ステップS106における判定がYESであれば、目詰まりに基づく画質の低下があまりないことが期待できるので、ステップS108に進み、本願発明に特有な、クリアインクノズルエラー時印刷処理ルーチンを実行する。このクリアインクノズルエラー時印刷処理ルーチンについては後述する。なお、クリアインクノズルエラー時印刷処理ルーチンに基づく印刷動作を第2印刷モードと称する。
【0127】
一方、ステップS106における判定がNOであれば、異常が発生したノズルはカラーインクを吐出するものであり、クリーニングを行ったとしても異常が発生したノズルは正常化しないとみなし、入力操作ユニット120における操作パネルにエラーメッセージを表示し(ステップS107)、このメインルーチンを終了する。
【0128】
ステップS102で異常が発生しているノズルがなかったときには、通常印刷処理ルーチンを実行する(ステップS103)。この印刷処理ルーチンは、図15に示すように、印刷データを印刷する処理である。ここでは、「双方向印刷」を例に説明する。通常印刷処理ルーチンに基づく印刷動作を第1印刷モードと称する。
【0129】
このルーチンが開始されると、CPU111は、まず、紙送りに係る処理を実行する(ステップS400)。この記録媒体搬送処理は、PFモーター215の駆動により搬送ローラー13を回転駆動させ記録媒体Sを搬送する処理である。
【0130】
次に、ステップS401でCPU111は、CRモーター242の駆動によりキャリッジ14を第1の方向(往路)に移動させながら、第1方向に移動するカラーインクのノズル列151〜154からカラーインクを吐出させて、記録媒体Sにカラー画像を形成させるとともに、このとき形成されたカラー画像に対して紫外線照射ユニット160aから紫外光を照射してカラー画像を硬化させる。
【0131】
ステップS402では、CPU111は、CRモーター242の駆動によりキャリッジ14を第1の方向(復路)に移動させながら、第1方向に移動するクリアインクのノズル列155からクリアインクを吐出させて記録媒体Sの前記カラー画像上にクリアインク層を形成させるとともに、このとき形成されたクリアインク層に対して紫外線照射ユニット160bから紫外光を照射してクリアインクを硬化させる。
【0132】
このような2つのステップで1つのバンド幅に対して、カラーインク層を形成し、さら
にカラーインク層上に無色のクリアインクの層(平坦な層)を形成し、全体として光沢のある画像を印刷する。
【0133】
続いて、ステップS403で、CPU111は、現在印刷中の記録媒体Sへ印刷すべき印刷データがあるか否かを判定し、現在印刷中の記録媒体Sへ印刷すべきデータがあるときには、ステップS400に戻りループする。
【0134】
上記のような通常印刷処理ルーチンに基づく印刷動作を図16に基づいて説明する。図16は印刷装置10を上側から見た図であり、記録媒体Sとキャリッジ14を模式的に示している。紙面の右左の方向が第1の方向でキャリッジ14が移動する方向であり、紙面の上下方向が第2の方向で記録媒体Sが搬送される方向である。また、図16はキャリッジ14に搭載される各インクのノズル列151〜155の長さに相当する幅(バンド幅)を印刷する動作について示している。
【0135】
まず、記録媒体Sが搬送されると、図16(A)に示すように、キャリッジ14を第1方向に移動させて、第1方向に移動するカラーインクのノズル列151〜154からカラーインクを吐出させて、記録媒体Sにカラー画像を形成させるとともに、このとき形成されたカラー画像に対して紫外線照射ユニット160aから紫外光を照射してカラー画像を硬化させる。
【0136】
図16(A)の動作の後には、図16(B)に示すように、キャリッジ14を第1方向に移動させて、第1方向に移動するクリアインクのノズル列155からクリアインクを吐出させて記録媒体Sの前記カラー画像上にクリアインク層を形成させるとともに、このとき形成されたクリアインク層に対して紫外線照射ユニット160bから紫外光を照射してクリアインクを硬化させる。
【0137】
図16(B)の動作の後には、図16(C)に示すように、続くバンド幅を印刷するべく、搬送ローラー13によりバンド幅分の記録媒体Sを第2方向に移動させる。
【0138】
このような印刷動作によれば、1つのバンド幅に対して、カラーインク層を形成し、さらにカラーインク層上に無色のクリアインクの層(平坦な層)を形成することとなるので、全体として光沢のある画像を印刷することが可能となる。
【0139】
次に、クリアインクノズルで異常が発生した際に実行されるクリアインクノズルエラー時印刷処理ルーチンについて説明する。
【0140】
クリアインクノズルエラー時印刷処理ルーチンが開始されると、CPU111は、まず、紙送りに係る処理を実行する(ステップS500)。この記録媒体搬送処理は、PFモーター215の駆動により搬送ローラー13を回転駆動させ記録媒体Sを搬送する処理である。
【0141】
次に、ステップS501でCPU111は、CRモーター242の駆動によりキャリッジ14を第1の方向(往路又は復路)に移動させながら、第1方向に移動するカラーインクのノズル列151〜154からカラーインクを吐出させて、記録媒体Sにカラー画像を形成させるとともに、このとき形成されたカラー画像に対して紫外線照射ユニット160aから紫外光を照射してカラー画像を硬化させる。
【0142】
ステップS502では、CPU111は、CRモーター242の駆動によりキャリッジ14を第1の方向(復路又は往路)に移動させながら、第1方向に移動するクリアインクのノズル列155からクリアインクを吐出させて記録媒体Sの前記カラー画像上にクリア
インク層を形成させる。通常印刷処理ルーチンでの動作では、このステップで、紫外線も同時に照射して、クリアインク層の形成の直後(第1時間経過後)にこれを硬化させるようにしていた。本実施形態では、この第1時間より長い第2時間経過後に、クリアインク層の硬化を行うようにしている。
【0143】
すなわち、ステップS503で、CPU111が、CRモーター242の駆動によりキャリッジ14を第1の方向(往路又は復路)に移動させながら、クリアインク層に対して紫外線照射ユニット160bから紫外光を照射してクリアインクを硬化させるようにしている。
【0144】
クリアインクノズル155のノズルに適正に動作しない場合においても、このノズルの異常に基づく画質低下はほとんど行いものと考えられる。しかし、このようなノズル異常に基づく、画質低下を防止する観点で、クリアインクノズル155のノズルに異常が見つかった場合には、クリアインク層を形成してからこれを硬化させるまで、ある程度時間(第2時間)を稼ぐことで、クリアインク層を平坦にレベリングさせて、異常ノズルにおける画素を周囲の画素で補うようにしてから、これを硬化させる。本実施形態においては、このような印刷処理ルーチンを備えることで、クリアインクを吐出するノズルに目詰まりなどの異常があったとしても、この異常による不具合を補うような制御を行い、画質の劣化を最小限に抑えつつ印刷を実行することが可能となるので、印刷装置のもつリソースを有効活用することができる。
【0145】
フローに戻り、ステップS503で、CPU111は、現在印刷中の記録媒体Sへ印刷すべき印刷データがあるか否かを判定し、現在印刷中の記録媒体Sへ印刷すべきデータがあるときには、ステップS500に戻りループする。
【0146】
上記のようなクリアインクノズルエラー時印刷処理ルーチンに基づく印刷動作を図18に基づいて説明する。図18は印刷装置10を上側から見た図であり、記録媒体Sとキャリッジ14を模式的に示している。紙面の右左の方向が第1の方向でキャリッジ14が移動する方向であり、紙面の上下方向が第2の方向で記録媒体Sが搬送される方向である。また、図18はキャリッジ14に搭載される各インクのノズル列151〜155の長さに相当する幅(バンド幅)を印刷する動作について示している。
【0147】
まず、記録媒体Sが搬送されると、図18(A)に示すように、キャリッジ14を第1方向に移動させて、第1方向に移動するカラーインクのノズル列151〜154からカラーインクを吐出させて、記録媒体Sにカラー画像を形成させるとともに、このとき形成されたカラー画像に対して紫外線照射ユニット160aから紫外光を照射してカラー画像を硬化させる。
【0148】
図18(B)の動作の後には、図18(B)に示すように、キャリッジ14を第1方向に移動させて、第1方向に移動するクリアインクのノズル列155からクリアインクを吐出させて記録媒体Sの前記カラー画像上にクリアインク層を形成させる。このとき、いずれの紫外線照射ユニット160もオフとする。
【0149】
図18(B)の動作の後には、図18(C)に示すように、形成されたクリアインク層に対して紫外線照射ユニット160bから紫外光を照射してクリアインクを硬化させる。
【0150】
図18(C)の動作の後には、図18(D)に示すように、続くバンド幅を印刷するべく、搬送ローラー13によりバンド幅分の記録媒体Sを第2方向に移動させる。
【0151】
以上、本発明の印刷装置及び印刷方法では、クリアインクを吐出するノズルに目詰まり
などの異常があったとしても、この異常による不具合を補うような制御を行い、画質の劣化を最小限に抑えつつ印刷を実行することが可能となるので、印刷装置のもつリソースを有効活用することができる。
【0152】
なお、以上の実施形態においては、クリアインクを吐出するノズルに異常があった場合に、クリアインクノズルエラー時印刷処理ルーチンを実行する例について説明したが、本発明はこれに限らず、画質への影響が少ないインクを吐出するノズルに異常があった場合全般に適用することができる。
【0153】
このようなインクとしては、白ベタを印刷するホワイトインクや、金属的光沢感を画像に与えるために利用されるメタリックインクなどの、所謂特殊インクを挙げることができる。
【0154】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
【0155】
先の実施形態においては、クリアインクノズル155のノズルに異常が見つかった場合には、クリアインク層を形成してからこれを硬化させるまで、ある程度時間(第2時間)を稼ぐことで、クリアインク層を平坦にレベリングさせて、異常ノズルにおける画素を周囲の画素で補うようにしてから、これを硬化させるようにしていた。本実施形態においては、これに加えて、異常が見つかったノズルの周辺のノズルでは、装置が扱い得る最大の画素サイズによって、クリアインクを吐出する。
【0156】
このような実施形態では、異常が見つかったノズルの周辺のノズルから、装置が扱い得る最大の画素サイズによってクリアインクを吐出することで、異常ノズルにおけるクリアインクを補うようにすることが可能となる。さらに、クリアインク層を形成してからこれを硬化させるまで、ある程度時間(第2時間)を稼ぐことで、クリアインク層を平坦にレベリングさせて、異常ノズルにおける画素を周囲の画素で補うようにしてから、これを硬化させるようにする。これにより、異常ノズルを補う比較的大量のクリアインクが、時間をかけてレベリングするので、画質低下を防止することが可能となる。
【0157】
以上のような他の実施形態に係る印刷装置及び印刷方法によっても、クリアインクを吐出するノズルに目詰まりなどの異常があったとしても、この異常による不具合を補うような制御を行い、画質の劣化を最小限に抑えつつ印刷を実行することが可能となるので、印刷装置のもつリソースを有効活用することができる。
【符号の説明】
【0158】
1・・・コンピューター、10・・・印刷装置、12・・・ガイドレール、13・・・搬送ローラー、14・・・キャリッジ、19・・・プラテン、24・・・紫外線照射キャリッジ、81・・・シフトレジスタ、82・・・ラッチ回路、83・・・デコーダー、84・・・制御ロジック、85・・・スイッチ、86・・・OR回路、105・・・インターフェイス、110・・・コントローラー、111・・・CPU、112・・・RAM113・・・RAM、117・・・駆動信号生成回路、120・・・入力操作ユニット、130・・・記録媒体搬送ユニット、140・・・キャリッジ駆動ユニット、150・・・ヘッドユニット、151・・・(シアンインク)ノズル列、152・・・(マゼンタインク)ノズル列、153・・・(イエローインク)ノズル列、154・・・(ブラックインク)ノズル列、155・・・(クリアインク)ノズル列、160・・・紫外線照射ユニット
、170・・・ラインヘッドユニット、180・・・計測器群、215・・・PFモーター、220・・・駆動信号生成回路、221・・・記録ヘッド、222・・・ヘッドドライバー、228・・・制御部、229・・・発振回路、231・・・内部インターフェイス(内部I/F)、232・・・第1シフトレジスタ(第1SR)、233・・・第2シ
フトレジスタ(第2SR)、234・・・レベルシフタ、237・・・第1ラッチ回路、238・・・第2ラッチ回路、239・・・デコーダー、254・・・制御ロジック、255・・・スイッチ回路、242・・・CRモーター、261・・・第2ノズル連通孔、262・・・インク室、264・・・ノズルプレート、265・・・ピエゾ素子、266・・・圧力室、267・・・インク供給口、268・・・供給側連通孔、340・・・キャップ装置、350・・・記録ヘッド検査装置、351・・・検査ボックス、352・・・検査領域、353・・・電圧印加回路、354・・・電圧検出回路、354a・・・積分回路、354b・・・反転増幅回路、354c・・・A/D変換回路、355・・・上側インク吸収体、356・・・下側インク吸収体、357・・・電極部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対して第1方向に移動可能なキャリッジと、
前記キャリッジに設けられ、光が照射されると硬化するカラーインクまたは特殊インクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに設けられ、前記カラーインクを吐出するカラーインクノズル列と、
前記記録ヘッドに設けられ、前記特殊インクを吐出する特殊インクノズル列と、
前記媒体を前記第1方向と交差する第2方向に相対移動させる移動機構と、
前記キャリッジに設けられ、前記光を照射する光照射部と、
前記カラーインクノズル列と前記特殊インクノズル列とからインクが適切に吐出されているかを検査する検査部と、
コントローラーと
を備え、
前記コントローラーは、
前記検査部の検査により前記特殊インクノズル列におけるノズルからインクが適切に吐出されていることが判断された場合に、
前記特殊インクノズル列から特殊インクを吐出し、前記光照射部で前記光を照射するまでの時間を第1時間とする第1印刷モード、又は、
前記検査部の検査により前記特殊インクノズル列におけるノズルからインクが適切に吐出されていないことが判断された場合に、
前記特殊インクノズル列から特殊インクを吐出し、前記光照射部で前記光を照射するまでの時間を前記第1時間より長い第2時間とする第2印刷モードのいずれかに基づいて制御を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記第2印刷モードでは扱い得る最大サイズの画素するように特殊インクを吐出することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記特殊インクがクリアインクである請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記特殊インクがホワイトインクである請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記特殊インクがメタリックインクである請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項6】
媒体に対して第1方向に移動可能なキャリッジと、
前記キャリッジに設けられ、光が照射されると硬化するカラーインクまたは特殊インクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに設けられ、前記カラーインクを吐出するカラーインクノズル列と、
前記記録ヘッドに設けられ、前記特殊インクを吐出する特殊インクノズル列と、
前記媒体を前記第1方向と交差する第2方向に相対移動させる移動機構と、
前記キャリッジに設けられ、前記光を照射する光照射部と、
前記カラーインクノズル列と前記特殊インクノズル列とからインクが適切に吐出されているかを検査する検査部と、
を用いた印刷方法であって、
前記検査部の検査により前記特殊インクノズル列におけるノズルからインクが適切に吐出されていることが判断された場合に、
前記特殊インクノズル列から特殊インクを吐出し、前記光照射部で前記光を照射するまでの時間を第1時間とする第1印刷モード、又は、
前記検査部の検査により前記特殊インクノズル列におけるノズルからインクが適切に吐出されていないことが判断された場合に、
前記特殊インクノズル列から特殊インクを吐出し、前記光照射部で前記光を照射するまで
の時間を前記第1時間より長い第2時間とする第2印刷モードのいずれかに基づいて印刷を行うことを特徴とする印刷方法。
【請求項7】
前記第2印刷モードでは扱い得る最大サイズの画素するように特殊インクを吐出することを特徴とする請求項6に記載の印刷方法。
【請求項8】
前記特殊インクがクリアインクである請求項6又は請求項7に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−28011(P2013−28011A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164251(P2011−164251)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】