説明

印刷装置

【課題】
高速処理を行いつつも、印刷不良を回避できる印刷装置を提供する。
【解決手段】
ドライバDRが、ヘッドHD1〜HD8が印字位置へと移動してから一定時間経過ごとであり、且つ光学式センサSの信号を受信することで、ヘッドHD1〜HD8の真下に印刷物Lがないとき(ここでは搬送される印刷物Lと印刷物Lとの間)に、全ての吐出ノズルからインクを適量吐出することで、ヘッドクリーニングを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子データに基づいて、印刷物に印刷を行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1個或いは複数のインクヘッドを固定し、その下をコンベア等で搬送される印刷物に対してインクを吐出することで、宛先などの印字等を行う印刷装置が既に市販され、おもに大量の書簡等の印刷物を印刷処理する為に用いられている。
【0003】
ところで、インクヘッドを固定した印刷装置における一つの問題は、インクの乾きによる詰まりの問題である。すなわち、印刷しようとする宛先には、長い住所名と短い住所名が存在するが、長い住所名は一般的には少ないので、それを印字すべき印刷物がしばらく搬送されない場合もある。かかる場合、短い住所名では使用するが、長い住所名では使用しないヘッドの吐出孔が乾き、インクの粘度が増大していわゆるインク詰まりを起こし、印字のカスレ等の印刷不良を招く恐れがある。
【0004】
このことは、印刷装置のユーザーにとって大きな問題となる、つまり、住所が宛先として正確に印字されなかった場合、その印刷物は正しい住所に郵送されない恐れがあるため、投函前に予めチェックする必要が生じる。ところが、印字された印刷物を見ただけでは、印字された住所が正しいか否かを判別することが困難であるから、元の印字データとの突き合わせが必要となって、チェックの手間がかかる。特に、この種の印刷装置は高速処理を目的とするものであり、短時間に大量の印刷物に印字を行うものであるため、印刷不良の発見はより困難である。
【0005】
これに対し、特許文献1には、インク吸収体にセンサを設け、所定のタイミングでインク吸収体にインクを吐出することにより、ヘッドの詰まりが発生していた場合に、インク吸引具などを用いてヘッドのクリーニング動作を行う技術が開示されている。
【特許文献1】特開平7−223323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、特許文献1に開示された技術によれば、インクが詰まったか否かをセンサで検出するものであり、その検出動作を定期的に行うことは、印刷装置の処理時間が低下することを意味する。一方、インクが詰まっているか否かに関わらず、定期的にヘッドクリーニングを行うことも考えられる。しかし、その場合でもヘッドクリーニングの時間は必要であり、印刷装置の処理時間が低下することは避けられない。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高速処理を行いつつも、印刷不良を回避できる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の印刷装置は、
印刷物を搬送するコンベヤと、
前記コンベヤに対して固定位置に配置された、1個或いは複数のインクヘッドと、
前記コンベヤにより搬送される印刷物を検出するセンサと、
前記センサからの信号に応じて、前記インクヘッドを駆動してインクを吐出させる駆動手段とを有し、
前記駆動手段は、前記センサからの信号に応じて所定のタイミングで、前記コンベアにより搬送される印刷物以外の所定領域にインクを吐出するように、前記インクヘッドを駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記駆動手段が、前記センサからの信号に応じて所定のタイミングで、前記コンベアにより搬送される印刷物以外の所定領域(例えば搬送される印刷物と印刷物との間)にインクを吐出するように、前記インクヘッドを駆動するので、印刷処理効率を低下させることなく、前記ヘッドにおけるインクの詰まりを防止できる。尚、「所定のタイミング」とは、電源投入時から一定期間ごとなど、一度も印字しないヘッドにおいてインク詰まりが生じない最長時間間隔が好ましい。
【0010】
前記コンベアの幅が印刷領域と同等或いはそれ以上の幅であり、前記所定領域は、前記コンベヤにより搬送される印刷物と印刷物の間であれば、前記コンベヤにより搬送される印刷物と印刷物との間に、インクを吐出することで、ヘッドの詰まりを防止できるので好ましい。尚、コンベヤに吐出されたインクは、次の印刷物を搬送するまでに乾くので、印刷物が汚れることはない。
【0011】
前記コンベアの幅が印刷領域より狭く、前記所定領域は、前記コンベア上と、それ以外の部分も含む領域であって、前記コンベヤ以外の部分はその表面に対してくぼんでいる又は開口していると、前記所定領域にインクを吐出することで、ヘッドの詰まりを防止できるので好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態にかかる印刷装置PRの斜視図である。図2は、ヘッドユニットの斜視図である。図1において、印刷装置PRは、筐体B上に、2つのコンベヤCV1,CV2を直列に配置してなる。コンベヤCV1,CV2は、不図示のモータにより同期して移動し、コンベヤCV1により図1で右方へと搬送されてきた印刷物Lを、コンベヤCV2に受け渡して、更に図1で右方へと搬送するようになっている。尚、本実施の形態では、コンベヤCV1,CV2の幅(搬送方向に直交する長さ)は、コンベヤ上に載置された印刷物Lの幅より大きくなっている。
【0013】
コンベヤCV1上に、ヘッドユニットHU1,HU2が配置されている。ヘッドユニットHU1は、4つのヘッド(インクヘッドともいう)HD1〜HD4を搭載しており、ヘッドユニットHU2も、4つのヘッドHD5〜HD8を搭載している。各ヘッドHD1〜HD8は、下面にマトリクス上に配置された微細なインクの吐出ノズル(不図示)を有し、内蔵するタンク内のインクを、印字データに基づき決定されるパターンで吐出ノズルより吐出することで、印刷物Lに印字が可能となっている。尚、各ヘッドHD1〜HD8は、印字状態では筐体8に対して固定位置となり、従って、吐出ノズルは、印刷物Lの搬送方向に対して直交する方向に対して重ならないように、ずれて配置されている。
【0014】
図2に示すヘッドユニットHU2において、各ヘッドHD5〜HD8は、筐体B(図1)に固定されるフレームFに取り付けられ、移動可能となったホルダHLDに保持されている。ホルダHLDは、レバーLVに連結されており、操作者がレバーLVを手で把持して動かすことで、図2に示す印字位置と、待機位置との間を移動可能となっている。待機位置においては、各ヘッドHD5〜HD8は、フレームFに取り付けられたキャップCP5〜CP8上にそれぞれ位置し、それにより下面の吐出ノズルが密封されて、インクの乾きが防止されるようになっている。又、回すことによって、ヘッドHD5〜HD8とコンベヤCV2との間隔を任意に変えることができるダイヤルDが設けられている。図示していないが、ヘッドユニットHU1も同様な構成であるので、図面及び説明を省略する。
【0015】
図1において、コンベヤCV1、CV2の間に、反射板Mが設けられ、それに対向して光学式センサSが配置されている。光学式センサSは、自ら出射した光束が反射板Mに反射したときに、その反射光を受光するようになっており、コンベヤCV1により搬送されてきた印刷物Lが、コンベヤCV2に受け渡される際に、反射板Mとの間が遮られることで、印刷物Lの通過を検出できるようになっている。
【0016】
図3は、本実施の形態にかかる印刷装置のブロック図である。図1の筐体B内に収容された駆動手段であるドライバDRは、メモリMY内に印字データを蓄積しており、光学式センサSの信号を受信することで、ヘッドHD1〜HD8の真下を通過したときに、いずれかのヘッドを駆動することで、印刷物Lに所定の印字を行うようになっている。
【0017】
ここで、印刷物Lへの印字は、印字データに応じてヘッドHD1〜HD8の全てを使用する場合もあれば、ヘッドHD1〜HD4しか使用しない場合もある。又、個々のヘッドにおいても、使用する吐出ノズルと、使用しない吐出ノズルとが存在する。しかるに、印字位置では、ヘッドHD1〜HD8の下面は、常に空気に触れており、使用されないヘッドについては、吐出ノズル内のインクが乾いてノズル詰まりが発生する恐れがある。
【0018】
これに対し、ヘッドHD1〜HD8が印字位置へと移動してから一定時間経過ごとに、ヘッドHD1〜HD8の使用状態に関わらず、全ての吐出ノズルからインクを適量吐出することで、ヘッドを印字可納状態に保つことができる。しかしながら、インクを吐出したときに、ヘッドHD1〜HD8の真下に印刷物Lが存在した場合、印刷物Lが汚れる恐れがある。
【0019】
そこで、本実施の形態においては、ドライバDRが、所定のタイミングとして、ヘッドHD1〜HD8が印字位置へと移動してから一定時間経過ごとであり、且つ光学式センサSの信号を受信することで、ヘッドHD1〜HD8の真下に印刷物Lがないとき(ここでは先行して搬送される印刷物Lと後続の印刷物Lとの間)に、全ての吐出ノズルからインクを適量吐出することで、ヘッドクリーニングを実行するようになっている。かかる場合、コンベヤCV2上にインクが吐出されることになるが、吐出された部位が1回転して、次の印刷物Lを搬送するまでに、吐出されたインクが乾いてしまうので、次の印刷物Lを汚すことはない。尚、コンベヤの色はインクの色と同系色又は同色であると、その汚れが目立たないので好ましい。
【0020】
図4は、別な実施の形態にかかるコンベヤを示す図である。図4に示すコンベヤは、図1のコンベヤCV2に対応するものであり、それ以外の構成については、図1〜3の示す実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0021】
図4において、2本のローラR1,R2に2つのコンベヤCVa、CVbが掛け渡されている。コンベヤCVa、CVbは隔置配置されており、従ってローラR1,R2の間は固定支持部FSとなっている。固定支持部FSの上面には、くぼみCが、少なくともヘッドHD1〜HD8の幅及び長さ以上の領域(コンベヤCVa、CVbの下方含む)にわたって設けられてる。本実施の形態においては、コンベヤCVa、CVbの幅は、印刷物Lの幅より狭くなっている。
【0022】
本実施の形態においては、ドライバDR(図3)が、ヘッドHD1〜HD8(図1)が印字位置へと移動してから一定時間経過ごとに、且つ光学式センサS(図1)の信号を受信することで、ヘッドHD1〜HD8の真下に印刷物Lがないとき、所定領域としてのくぼみC内)に向かって、全ての吐出ノズルからインクを適量吐出することで、ヘッドクリーニングを実行するようになっている。かかる場合、コンベアCVa、CVb以外の部分に排出されたインクが、くぼみC内に吐出されるので、インクが堆積しても、印刷物Lに触れることがなく好ましい。くぼみC内は、定期的にクリーニングをおこなうことが望ましい。
【0023】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、一定期間内にインクを吐出されなかったヘッドのみを駆動して、上記ヘッドクリーニングを行うこともできる。又、ヘッドは複数に限らず単一であっても良い。更に、センサSは光学式に限らず、接触式であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施の形態にかかる印刷装置PRの斜視図である。
【図2】ヘッドユニットの斜視図である。
【図3】本実施の形態にかかる印刷装置のブロック図である。
【図4】別な実施の形態にかかるコンベヤを示す図である。
【符号の説明】
【0025】
B 筐体
CP5〜CP8 キャップ
CV1,CV2、CVa、CVb コンベヤ
D ダイヤル
DR ドライバ
F フレーム
FS 固定支持部
HD1〜HD8 ヘッド
HLD ホルダ
HU1,HU2 ヘッドユニット
L 印刷物
LV レバー
M 反射板
MY メモリ
PR 印刷装置
R1,R2 ローラ
S 光学式センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物を搬送するコンベヤと、
前記コンベヤに対して固定位置に配置された、1個或いは複数のインクヘッドと、
前記コンベヤにより搬送される印刷物を検出するセンサと、
前記センサからの信号に応じて、前記インクヘッドを駆動してインクを吐出させる駆動手段とを有し、
前記駆動手段は、前記センサからの信号に応じて所定のタイミングで、前記コンベアにより搬送される印刷物以外の所定領域にインクを吐出するように、前記インクヘッドを駆動することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記コンベアの幅が印刷領域と同等或いはそれ以上の幅であり、前記所定領域は、前記コンベヤにより搬送される印刷物と印刷物の間であることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記コンベアの幅が印刷領域より狭く、前記所定領域は、前記コンベア上と、それ以外の部分も含む領域であって、前記コンベヤ以外の部分はその表面に対してくぼんでいる又は開口していることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−1037(P2006−1037A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176978(P2004−176978)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000217284)田中精機株式会社 (13)
【Fターム(参考)】