説明

印刷装置

【課題】 印刷開始前に限らず、吸引回復条件を満たしたら、速やかに自発的に吸引回復をすることができ、印刷品位を維持しながら、印刷開始までの待機時間が短い印刷装置を提供することを目的とする。

【解決手段】 吸引実行装置が吸引を行った最終時刻を記憶し、上記記憶された最終吸引時刻からの経過時間を算出し、上記印字ヘッドを吸引すべき最大時間間隔を設定し、所定条件を満たしているかどうかを判定する吸引判定装置を設け、上記所定条件を満たしていると判定したときに、上記吸引実行装置に吸引指令を発生し、上記吸引判定装置に送る判定指令を生成する時間的間隔を設定し、上記設定された判定指令間隔毎に、上記吸引判定装置に送る判定指令を生成する印刷装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置に係り、特に、吸引回復タイミングの最適化に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシリアルスキャン型インクジェット印刷装置は、印刷ヘッドを搭載するキャリッジと、記録媒体を搬送する搬送装置とを有し、キャリッジを用いて複数のインク吐出口(ノズル)が記録媒体の搬送方向(副走査方向)に列設されている記録ヘッドを、この副走査方向と直交する方向(主走査方向)に、シリアルスキャンさせ、1行分の記録を終了した後に、記録媒体を1ピッチ分だけ搬送し、その後に、停止した記録媒体に対して、次の行の画像を再び記録するという動作を繰り返すことによって、記録媒体全体に記録する。
【0003】
従来のインクジェット印刷装置では、印刷が長時間されないと、ノズル内部に滞留しているインク中の水分が蒸散し、インクがついには固着する。この固着を防止するために、従来例では、最後に吸引回復を行ってからの経過時間が、予め定められた一定時間を越えると、印刷開始直前に吸引回復をするように構成されている。
【0004】
インクジェットヘッドに対する吸引回復、ワイピング、予備吐出からなる一連の回復処理による印字品位の特性改善の程度を向上させる回復方法として、ワイピング手段によるヘッド表面に対するワイピング後、待機時間をおいた後に、ヘッドに対して予備吐出を行う構成が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
図5は、従来の印刷装置300を示すブロック図である。
【0006】
従来の印刷装置300は、印刷指令を生成するホストコンピュータ1と、印刷の手順を制御する印刷制御装置2と、印刷動作を行う印刷実行装置3と、現在時刻を計時する計時装置4と、吸引回復を行った最終時刻を記憶する最終吸引時刻記憶装置5と、最終吸引時刻からの経過時間を算出する経過時間算出装置6と、印字ヘッドを吸引回復すべき最大時間間隔を設定する吸引間隔設定装置7と、吸引回復実行装置9に吸引回復指令を発する吸引判定装置8と、吸引回復を実行する吸引回復実行装置9とを有している。
【0007】
図6は、従来の印刷装置300の動作を示すフローチャートである。
【0008】
ホストコンピュータ1において、印刷指令が生成されると(S1)、印刷制御装置2から吸引判定装置8に判定指令が発せられ、計時した時間に応じて吸引による回復動作が行われる(S2)。なお、この計時した時間に応じて実行する吸引回復の動作を、「タイマ吸引手続き」と以下称することとする。タイマ吸引回復手続きが終了すると、印刷制御装置2から印刷実行装置3に実行指令が発せられ、印刷動作が行われる(S3)。1ページの印刷動作が完了すると、印刷指令が終了する。
【0009】
図7は、図6に示すタイマ吸引回復の動作(S2)を具体的に示すフローチャートである。
【0010】
経過時間算出装置6が経過時間を算出し(S11)、吸引判定装置8が経過時間を判定する(S12)。経過時間が吸引間隔以上であれば、吸引回復実行装置9に実行指令を発し(S13)、吸引回復完了後に、最終吸引時刻記憶装置5に、現在時刻を記憶させる(S14)。
【特許文献1】特開平10−128989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来例においては、印刷開始前に吸引回復を確実に実行するので,最小のインク消費量によって、印刷品位を保つことができる。
【0012】
しかし、上記従来例では、吸引回復条件を満たした後における最初の印刷では、「1stプリントが速い」というインクジェットプリンタの特徴が失われる。特に、公衆プリント用として使用する場合には、稀にしか印刷を行わないが、印刷待ち時間が短いことが必須条件であるが、この印刷待ち時間が短くないという問題がある。
【0013】
本発明は、印刷開始前に限らず、吸引回復条件を満たしたら、速やかに自発的に吸引回復をすることができ、印刷品位を維持しながら、印刷開始までの待機時間が短い印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、インクを吐出するインクジェット方式の印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドからインクを吸引する吸引手段と、計時装置と、前記吸引手段により前記印刷ヘッドから吸引を行った最終時刻を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された最終時刻からの経過時間を算出する算出手段と、前記印字ヘッドから吸引すべき最大時間間隔を設定する設定手段と、所定条件を満たしているかどうかを判定し、前記所定条件を満たしていると判定したときに、前記吸引手段により吸引を行わせるための吸引指令を発生する判定手段と、前記判定手段に送る判定指令を生成する時間的間隔を設定する間隔設定手段と、前記間隔設定手段により設定された時間間隔毎に、前記判定手段に送る判定指令を生成する指令生成手段とを有し、前記所定条件は、前記判定手段が前記判定指令を受ける度に、前記計算された経過時間が、設定された吸引間隔以上であるという条件であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、印刷開始前に常に吸引回復を行わず、吸引の動作を必要な条件下において実行するため、印刷開始までの待機時間を短くすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
発明を実施するための最良の形態は、次の実施例である。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例1である印刷装置100を示す概略構成図である。
【0018】
印刷装置100は、ホストコンピュータ1と、印刷制御装置2と、印刷実行装置3と、計時装置4と、最終吸引時刻記憶装置5と、経過時間算出装置6と、吸引間隔設定装置7と、吸引判定装置8と、吸引回復実行装置9と、吸引回復判定指令生成装置10と、判定指令間隔設定装置11とを有する。
【0019】
ホストコンピュータ1は、印刷指令を生成する。印刷制御装置2は、印刷の手順を制御する。印刷実行装置3は、インクジェット方式印刷ヘッドを含み、印刷動作を行う。計時装置4は、現在時刻を計時する。
【0020】
最終吸引時刻記憶装置5は、吸引回復実行装置9が吸引回復した最終時刻を記憶する。経過時間算出装置6は、最終吸引時刻記憶装置5に記憶されている最終吸引時刻からの経過時間を算出する。吸引間隔設定装置7は、印字ヘッドを吸引回復すべき最大時間間隔を設定する。
【0021】
吸引判定装置8は、吸引回復実行装置9に吸引回復指令を発し、上記判定指令を受ける度に、上記計算された経過時間が設定された吸引間隔以上である場合に、吸引回復実行装置9に吸引回復指令を発する。吸引回復実行装置9は、上記印刷ヘッドからインクを吸引することによって吸引回復を実行する。
【0022】
吸引回復判定指令生成装置10は、上記設定された判定指令間隔毎に、上記吸引判定装置8に送る判定指令を生成する。判定指令間隔設定装置11は、吸引判定装置8に判定させるための判定指令を生成する時間的間隔を設定する。
【0023】
次に、印刷装置100の動作について説明する。
【0024】
図2は、印刷装置100の動作を示すフローチャートである。
【0025】
まず、印刷を行っていない間も、判定指令間隔設定装置11に設定されている判定の時間的間隔毎に、吸引回復判定指令生成装置10が、吸引判定装置8に判定指令を発する(S22、S23)。吸引回復必要条件(たとえば、吸引動作を伴う印字動作の開始の指示があったときや、印字動作を開始するときの周囲の温度、等が、必要条件に挙げられる。)を満たしていれば、吸引判定装置8が、吸引回復実行装置9に実行指令を発するので、吸引回復動作が行われる。
【0026】
なお、上位装置から印刷装置100に、印字データが到着した場合における動作は、図6、図7のフローチャートに記載されている動作と同じである。
【実施例2】
【0027】
図3は、本発明の実施例2である印刷装置200を示す概略構成図である。
【0028】
印刷装置200は、印刷装置100に、吸引回復判定許可時間帯設定装置12を付加した装置である。
【0029】
吸引回復判定許可時間帯設定装置12は、予め設定された時間帯において、吸引動作の実行の制御を行うためのものである。
【0030】
また、吸引回復判定許可時間帯設定装置12は、吸引回復判定指令生成装置10に接続されている。
【0031】
次に、印刷装置200の動作について説明する。
【0032】
図4は、印刷装置200の動作を示すフローチャートである。
【0033】
印刷装置200の動作は、印刷装置100の動作とほぼ同じである。現在時刻が吸引回復判定許可時間帯内であれば、タイマ吸引手続きを実行する(S32、S33)。また、開始時刻と終了時刻とを同一にすると、自発的吸引回復が行われなくなる。時間帯設定は、複数あってもよい。
【0034】
上記吸引回復判定許可時間帯の設定は、ホストコンピュータからのコマンドによって行えば、GUIによる設定が可能となり、好適である。もちろん、プリンタ本体に、パネル等の設定手段が設けられていれば、上記吸引回復判定許可時間帯を、プリンタ本体で設定するようにしてもよい。
【0035】
印刷装置100では、所定の吸引条件が成立すると、インクが速やかに吸引される。したがって、夜間に突然プリンタが動作を開始することもあり得る。これは、医療機関等では望ましくない場合がある。
【0036】
また、一般的な店舗で使用する場合には、営業時間外に吸引回復を実行することが望ましいことがある。他方、自発的な吸引回復動作(たとえば、ユーザの指示に従って強制的に実行する回復動作がある)によって、インク消費量が増加するので、これを禁止することが望ましいことがある。
【0037】
このような千差万別なユーザの要求に応えるために、実施例2では自発的な吸引回復動作を許可する時間帯を、ユーザによって設定できるようにした実施例である。または、自発的な吸引回復動作を全く禁止する設定にしてもよい。
【0038】
上記実施例によれば、印刷開始前に吸引回復を行わないので、印刷開始までの待機時間を短くすることができる。
【0039】
また、上記実施例によれば、自発的な吸引回復動作を行う時間帯を限定するようにすれば、ユーザの意図しない時間帯の動作を抑制することができ、さらに、インク消費量を最少化したければ、自発的な吸引回復動作を一切禁止することもできる。
【0040】
つまり、上記実施例は、インクを吐出するインクジェット方式の印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドからインクを吸引する吸引手段と、計時装置と、前記吸引手段により前記印刷ヘッドから吸引を行った最終時刻を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された最終時刻からの経過時間を算出する算出手段と、前記印字ヘッドから吸引すべき最大時間間隔を設定する設定手段と、所定条件を満たしているかどうかを判定し、前記所定条件を満たしていると判定したときに、前記吸引手段により吸引を行わせるための吸引指令を発生する判定手段と、前記判定手段に送る判定指令を生成する時間的間隔を設定する間隔設定手段と、前記間隔設定手段により設定された時間間隔毎に、前記判定手段に送る判定指令を生成する指令生成手段とを有し、前記所定条件は、前記判定手段が前記判定指令を受ける度に、前記計算された経過時間が、設定された吸引間隔以上であるという条件であることを特徴とする印刷装置の例である。
【0041】
この場合、前記吸引を行う判定を許可する開始時刻とその終了時刻とを設定する時間帯設定手段を有し、前記指令生成手段は、前記時間帯設定手段により設定された開始時刻と終了時刻の範囲内の時間帯内に限り、判定指令を発する手段であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施例1である印刷装置100を示す概略構成図である。
【図2】印刷装置100の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例2である印刷装置200を示す概略構成図である。
【図4】印刷装置200の動作を示すフローチャートである。
【図5】従来の印刷装置300を示すブロック図である。
【図6】従来の印刷装置300の動作を示すフローチャートである。
【図7】図6に示すタイマ吸引回復の動作(S2)を具体的に示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
100、200…印刷装置、
1…ホストコンピュータ、
2…印刷制御装置、
3…印刷実行装置、
4…計時装置、
5…最終吸引時刻記憶装置
6…経過時間算出装置、
7…吸引間隔設定装置、
8…吸引判定装置、
9…吸引回復実行装置、
10…吸引回復判定指令生成装置、
11…判定指令間隔設定装置
12…吸引回復判定許可時間帯設定装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するインクジェット方式の印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドからインクを吸引する吸引手段と、
計時装置と、
前記吸引手段により前記印刷ヘッドから吸引を行った最終時刻を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された最終時刻からの経過時間を算出する算出手段と、
前記印字ヘッドから吸引すべき最大時間間隔を設定する設定手段と、
所定条件を満たしているかどうかを判定し、前記所定条件を満たしていると判定したときに、前記吸引手段により吸引を行わせるための吸引指令を発生する判定手段と、
前記判定手段に送る判定指令を生成する時間的間隔を設定する間隔設定手段と、
前記間隔設定手段により設定された時間間隔毎に、前記判定手段に送る判定指令を生成する指令生成手段と、
を有し、前記所定条件は、前記判定手段が前記判定指令を受ける度に、前記計算された経過時間が、設定された吸引間隔以上であるという条件であることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記吸引を行う判定を許可する開始時刻とその終了時刻とを設定する時間帯設定手段を有し、
前記指令生成手段は、前記時間帯設定手段により設定された開始時刻と終了時刻の範囲内の時間帯内に限り、判定指令を発することを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−159610(P2006−159610A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354013(P2004−354013)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】