説明

印刷装置

【課題】印刷装置のカバーの開閉によるステータス変化に伴う不必要な出力をしない。
【解決手段】ロール紙に印刷を行う印刷装置1は、カバーを開けた状態で本体内のロール紙の収容空間へロール紙の出し入れが可能となる。この印刷装置1は、カバーの開閉を検知するカバー開閉検出器74と、ロール紙の収容空間のロール紙のニアエンドを検出するニアエンド検出器76と、少なくとも、カバー開閉検出器74及びニアエンド検出器76の出力に基づいて定まる印刷装置1のステータスを、印刷装置1と接続されるホスト装置8に対して出力するホストインタフェース71とを備える。そして、カバー開閉検出器75が、カバーが開いている状態を示す信号を出力しているとき、ホストインタフェース71は、印刷装置1のステータスの出力を行わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙に印字を行う印刷装置に関し、特に蓋体を開けて印刷装置内部にロール紙を出し入れする印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されているように、印刷装置の内部にロール紙を収容し、そのロール紙に印字を行う印刷装置がある。この印刷装置では、印刷装置内部のロール紙の残量がわずかになったことを検出するニアエンド検出器が設けられている。このニアエンド検出器は、ロール紙の収容空間に対して側面から検出子を突出させる。そして、ロール紙の側面にこの検出子を当接させ、ロール紙の残量がわずかになると突出量が大きくなり、これによりニアエンドを検出している。
【特許文献1】特開平9−254474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、内部にロール紙を収容する印刷装置では、ロールの出し入れなどを行うときにはカバーを開ける。カバーが開いているとき、検出子が突出したままだとロール紙の残量によっては、ロール紙が正しい位置に収容されないことがある。そこで、カバーを開けたときには、検出子がロール紙の収容空間から待避するようにすれば、そのような問題は生じない。
【0004】
しかしながら、このようにすると新たな問題が生じる。それは、上述のニアエンド検出器は、検出子の突出量によってニアエンドか否かを判定するので、カバーが開くとともに検出子が待避すると、ニアエンド状態が解除される。さらに、印刷装置は、ニアエンド状態であるか否かも含め、印刷装置のステータスが変更されると、ホスト装置に対して自動的にステータスの変更を通知するようになっているものが多い。従って、カバーが開くと、上記のようなステータス変更が検出されて、それがホスト装置へ通知されることになる。
【0005】
カバーが開いているときは、ニアエンド状態に関するステータスは意味を成さないにもかかわらず、カバーの開閉に伴って不必要かつ必ずしも正しくないステータスがホスト装置に通知される。これは、ホスト装置の誤動作の原因となる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、印刷装置のカバーの開閉によるステータス変化に伴う不必要な出力をしないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施態様に従う印刷装置は、本体と蓋体とを備え、前記蓋体を開けた状態で前記本体内のロール紙の収容空間へロール紙の出し入れが可能となる印刷装置である。前記印刷装置は、前記蓋体の開閉を検知する開閉検出器と、前記ロール紙の収容空間のロール紙のニアエンドを検出するニアエンド検出器と、少なくとも、前記開閉検出器及び前記ニアエンド検出器の出力に基づいて定まる前記印刷装置のステータスを、前記印刷装置と接続されるホスト装置に対して出力する通信手段と、を備え、前記開閉検出器が、前記蓋体が開いている状態を示す信号を出力しているとき、前記通信手段は、前記印刷装置のステータスの出力を行わないようにする。
【0008】
これにより、ホスト装置に対して、印刷装置のカバーの開閉によるステータス変化に伴う不必要な出力を行わないようにすることができる。
【0009】
好適な実施形態では、前記ニアエンド検出器は、前記蓋体を閉じた状態のときには前記ロール紙の収容空間内に突出し、前記蓋体を開いた状態のときには前記ロール紙の収容空間から退いて所定の待避領域へ待避するものであり、
前記ニアエンド検出器は、前記ロール紙の収容空間内に収容されたロール紙の残量が所定量以上のときは当該ロール紙と当接して突出量が抑制され、当該ロール紙の残量が所定量以下になると、その突出量が増加することにより、ニアエンドを検出するようになっていてもよい。
【0010】
好適な実施形態では、前記蓋体は、前記印刷装置の正面または側面に設けられていてもよい。
【0011】
好適な実施形態では、前記本体または前記蓋体表面に設けられた出力装置と、前記印刷装置のステータスに基づいて、前記出力装置を制御する制御手段と、をさらに備えてもよい。そして、前記制御手段は、前記開閉検出器の出力に基づいて前記蓋体が開いたことが検出されると、その時点での前記出力装置の状態を保持するようにしてもよい。
【0012】
これにより、ユーザに対して印刷装置の状態を知らせるために設けられた出力装置に対しても、不必要な出力の変更を行わないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る印刷装置について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置の外観を示す斜視図である。
【0015】
印刷装置1は、本体110と正面側に設けられたカバー120とからなる筐体を備え、筐体内に印刷機構などが収容されているとともに、印刷媒体であるロール紙を収容する空間が設けられている。
【0016】
カバー120にはカバーオープンボタン121と、ユーザインタフェースのためのパネル122とが設けられている。カバーオープンボタン121が押されると、カバー120下部を中心にして、上部が手前に倒れるようにして(つまり矢印Aの方向へ)開く。パネル122には、ロール紙がなくなったとき、及びロール紙残量がわずかとなったニアエンド状態のときに点灯するLED(PAPER OUT LED)123が設けられている。LED123の点灯及び消灯の詳細については後述する。
【0017】
図2は、印刷装置1の筐体を外した内部のフレーム10の構造を示す斜視図である。
【0018】
印刷装置1内部のフレーム10は、金属製の本体フレーム11と、カバー120部分のカバーフレーム12とを備える。カバーフレーム12は、カバー120と一体となって開閉する。
【0019】
おな、後述するように、カバー120及びカバーフレーム12の開閉状態は、カバー開閉検出器により検出される。
【0020】
図3は、カバーフレーム12を開いた状態での、印刷装置1のフレーム10の斜視図である。本体フレーム11の内部には、ロール紙を収容するためのロール紙収容空間20が形成されている。カバーフレーム12(及びカバー120)を開くことにより、このロール紙収容空間20が、印刷装置1正面側に露出する。ロール紙は、ロール紙収容空間20に対して上から出し入れされる。
【0021】
ロール紙収容空間20にロール紙がセットされているか否かは、後述するようにリアルエンド検出器により検出される。
【0022】
図4は、カバーフレーム12を閉じた状態におけるフレーム10の右側面図であり、図5は、このときのRR-RR断面図である。
【0023】
図5に示すように、カバーフレーム12が閉じた状態のときに、ロール紙収容空間20の下部には、ロール紙のニアエンド検出器の検出子21が側面から突出している。ここで、図3を参照するとわかるように、カバーフレーム12を開いた状態では、ニアエンド検出子21は、ロール紙収容空間20内に突出していない。つまり、カバーフレーム12が開いているときは、ニアエンド検出子21は、所定の待避領域に待避している。
【0024】
これは、ロール紙収容空間20内にニアエンド検出子21を突出させたままとすると、ロール紙をセットする場合、本来であれば突出した検出子21を押しのける(検出子21が待避する)ようにして、ロール紙が定位置にセットされる。しかしながら、ロール紙が突出した検出子21を押しのけることなく、そのまま上から乗るような形になり、必ずしも定位置にセットされない場合が生じる。これは、ロール紙の残量が少なくなっている場合に特に問題となる。そこで、本実施形態では、カバー120が開いているときは、ニアエンド検出子21を待避させている。
【0025】
図6〜図8は、ニアエンド検出子21付近を拡大したEE-EE断面図である。
【0026】
図6は、ロール紙収容空間20内にロール紙が収容されていないとき、及びロール紙残量がわずかになり、所定量以下となったときのニアエンド検出子21の様子を示す。すなわち、このとき、ニアエンド検出子21がロール紙収容空間20内に突出する突出量は最大となる。
【0027】
図7は、残量が所定量以上あるロール紙5が、ロール紙収容空間20内に収容されているときの様子を示す。すなわち、同図に示すように、ニアエンド検出子21は、その先端Bがロール紙5と当接し、突出量が抑制された状態になっている。
【0028】
図8は、カバーフレーム12が開いているときのニアエンド検出子21の位置を示す。すなわち、このときニアエンド検出子21は、上述したように、ロール紙収容空間20から後退し、ロール紙5の有無にかかわらず、完全にロール紙収容空間20から待避している。
【0029】
なお、ニアエンド検出器の構成及び作用の詳細については、例えば特開平9−254474号公報を参照されたい。
【0030】
次に、本実施形態に係る印刷装置1のステータス管理について説明する。
【0031】
図9は、印刷装置1の機能ブロック図である。
【0032】
印刷装置1は、ホストインタフェース71と、ステータス管理部72と、LED123と、カバー開閉検出器74と、リアルエンド検出器75と、ニアエンド検出器76と、印刷機構制御部77と、印刷機構78とを備える。
【0033】
ホストインタフェース71は、ホスト装置8とデータを送受信する。
【0034】
LED123は、ステータス管理部72の指示に従って点灯及び消灯する。
【0035】
カバー開閉検出器74は、カバー120の開閉を検出し、カバー120の開閉状態を示す信号をステータス管理部72へ通知する。
【0036】
リアルエンド検出器75は、ロール紙収容空間20に収容されているロール紙の有無を検出し、ステータス管理部72へ通知する。例えば、リアルエンド検出器75は、ロール紙収容空間20にロール紙がセットされていれば、ロール紙があることを示す信号をステータス管理部72へ通知する。一方、ロール紙がそもそもロール紙収容空間20にセットされていないとき、及びロール紙収容空間20にセットされたロール紙の残量がなくなったときには、ロール紙がないことを示す信号をステータス管理部72へ通知する。
【0037】
ニアエンド検出器76は、上述のようにして、ロール紙収容空間20に収容されているロール紙の残量が処理定量以下であるか否かを判定する。そして、ロール紙の残量が所定量以下か否かを示す信号を出力する。
【0038】
印刷機構制御部77と、ホスト装置8からの印刷データに基づき、印刷機構78を制御して印刷を実行する。
【0039】
印刷機構78は、図示しない印刷ヘッド、紙送り機構などを備え、印刷機構制御部77の指示に従って印刷を実行する。
【0040】
ステータス管理部72は、印刷装置1のステータスを管理し、ステータスに従った制御を行う。例えば、ステータス管理部72は、少なくともカバー開閉検出器74、リアルエンド検出器75及びニアエンド検出器76からの信号に基づいて、印刷装置1のステータスを定める。そして、ステータス管理部72は、定められたステータスに基づいて、LED73の点灯及び消灯の制御をする。さらに、ステータス管理部72は、印刷装置1のステータスをホストインタフェース71を介してホスト装置8へ通知する。ホスト装置8に対するステータスの通知は、例えば、ステータス管理部72がステータスの変更を検出したときに、そのタイミングで行う。
【0041】
特に、本実施形態では、ステータス管理部72は、以下のようにステータスを管理する。すなわち、カバー開閉検出器74からの信号に基づいてカバー120が開いている状態であることが検出されると、リアルエンド検出器75及びニアエンド検出器76からの信号に基づくステータスの変更を行わない。従って、カバー120が開いているときは、ホスト装置8へステータスは通知されない。さらには、LED123の点灯状態も変化しない。つまり、カバー120が開いた状態である間は、リアルエンド検出器75及びニアエンド検出器76の出力は無視される。
【0042】
これは、カバー120が開いている状態のときは、印字が行われることはないので、ロール紙管理を厳密に行う必要がないからである。例えば、カバー120が開いている間にロール紙がロール紙収容空間20に出し入れされると、それに応じてリアルエンド検出器75の出力が変化するが、これを厳密に把握する必要ない。
【0043】
さらには、既に述べたように、カバーフレーム12が開くと、ロール紙収容空間20内に突出していたニアエンド検出器76の検出子21が待避領域に待避する。これにより、ニアエンド検出器76の出力がニアエンドを示す信号からニアエンドが解除された状態を示す信号へ変化する場合があるが、これも同様に厳密に把握する必要はない。
【0044】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【0045】
例えば、上記実施形態では、カバーは印刷装置正面に設けられているが、側面に設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置1の外観を示す斜視図である。
【図2】印刷装置1のフレーム10を示す斜視図である。
【図3】カバーフレーム12を開いた状態での、印刷装置1のフレーム10の斜視図である。
【図4】カバーフレーム12を閉じた状態における右側面図である。
【図5】カバーフレーム12を閉じた状態におけるRR-RR断面図である。
【図6】ニアエンド検出子21付近を拡大した図である。
【図7】ニアエンド検出子21付近を拡大した図である。
【図8】ニアエンド検出子21付近を拡大した図である。
【図9】印刷装置1の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0047】
1…印刷装置、11…本体フレーム、12…カバーフレーム、20…ロール紙収容空間、21…ニアエンド検出子、71…ホストインタフェース、72…ステータス管理部、74…カバー開閉検出器、75…リアルエンド検出器、76…ニアエンド検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と蓋体とを備え、前記蓋体を開けた状態で前記本体内のロール紙の収容空間へロール紙の出し入れが可能となる、ロール紙に印刷を行う印刷装置であって、
前記蓋体の開閉を検知する開閉検出器と、
前記ロール紙の収容空間のロール紙のニアエンドを検出するニアエンド検出器と、
少なくとも、前記開閉検出器及び前記ニアエンド検出器の出力に基づいて定まる前記印刷装置のステータスを、前記印刷装置と接続されるホスト装置に対して出力する通信手段と、を備え、
前記開閉検出器が、前記蓋体が開いている状態を示す信号を出力しているとき、前記通信手段は、前記印刷装置のステータスの出力を行わないことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記ニアエンド検出器は、前記蓋体を閉じた状態のときには前記ロール紙の収容空間内に突出し、前記蓋体を開いた状態のときには前記ロール紙の収容空間から退いて所定の待避領域へ待避するものであり、
前記ニアエンド検出器は、前記ロール紙の収容空間内に収容されたロール紙の残量が所定量以上のときは当該ロール紙と当接して突出量が抑制され、当該ロール紙の残量が所定量以下になると、その突出量が増加することにより、ニアエンドを検出するようになっている、請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記蓋体は、印刷装置の正面または側面に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記本体または前記蓋体表面に設けられた出力装置と、
前記印刷装置のステータスに基づいて、前記出力装置を制御する制御手段と、をさらに備え、
前記制御手段は、前記開閉検出器の出力に基づいて前記蓋体が開いたことが検出されると、その時点での前記出力装置の状態を保持することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
本体と蓋体とを備え、前記蓋体を開けた状態で前記本体内のロール紙の収容空間へロール紙の出し入れが可能となる、ロール紙に印刷を行う印刷装置において、
前記蓋体の開閉を検出する開閉検出器が、前記蓋体の開閉に応じた信号を出力する処理と、
前記ロール紙の収容空間のロール紙のニアエンドを検出するニアエンド検出器が、ロール紙のニアエンドを検出すると所定の信号を出力する処理と、
前記開閉検出器が、前記蓋体が閉じている状態を示す信号を出力しているときは、少なくとも、前記開閉検出器及び前記ニアエンド検出器の出力に基づいて定まる前記印刷装置のステータスを、前記印刷装置と接続されるホスト装置に対して出力し、
前記開閉検出器が、前記蓋体が開いている状態を示す信号を出力しているときは、前記印刷装置のステータスを出力しない処理とを行う、印刷装置のステータス出力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−137592(P2007−137592A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333605(P2005−333605)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】