説明

印刷装置

【課題】大掛かりなシステムを用いずに、スタンプ押印と同様の手軽さで、印刷対象物上に置いて、複数行の文字や面的に拡がった画像等を印刷対象物に印刷することができ、その印刷する画像,文字の変更やその印刷領域のサイズの変更を容易に行うことができる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷対象物2に対向して縦横に移動可能に筐体22内に取り付けられるとともに、印刷面が印刷対象物2に対し一定の距離を保つように筐体22内に支持されて、液体を吐出する液体ノズルを持つ印刷ヘッド32と、印刷ヘッド32の移動範囲を所定の印刷領域内に規制する印刷領域設定部53と、印刷データを登録する印刷データ登録部51と、印刷の開始を指示する印刷スイッチ部25と、を備え、印刷スイッチ部25の操作によって、印刷ヘッド32が印刷領域内を縦横に移動しながら、印刷対象物に対して液体を吐出し、印刷データ登録部51に登録された印刷データの印刷を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷対象物上に置いた状態で、複数行の文字や面的に拡がった画像等を印刷対象物に印刷する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用途等のスタンプは、年賀状、見舞い状、クリスマスや誕生日のグリーティングカードなどの様々な用途に応じて多種類のスタンプが存在する。また、これらのスタンプの印影の画像やサイズを変更することはできない。このため、様々な用途に使用するためには、多数のスタンプを集める必要がある。
【0003】
多数のスタンプを集めることは困難であるため、所望のスタンプ画像データを作成して、一般的なプリンタ等を用いて用紙に印刷することが行われている。
このような、プリンタを用いてスタンプ画像データを作成する技術としては、例えば、特許文献1に開示された技術がある。
上記特許文献1には、「入力画像データにスタンプ画像データを画像合成して、画像形成部で用紙に記録出力するに際して、画像データの解像度の変換を含む各種画像処理を画像データに施す画像処理部と、入力画像データに合成するスタンプ画像データを格納するスタンプ画像データ記憶部と、を設け、当該スタンプ画像データ記憶部に登録する元スタンプ画像データを画像処理部で必要な画像処理を施して登録スタンプ画像データを生成し、当該登録スタンプ画像データをスタンプ画像データ記憶部に登録し、入力画像データに当該スタンプ画像データ記憶部の当該登録スタンプ画像データを合成して記録出力する。」ことが開示されている。
【特許文献1】特開2005−212120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的なプリンタ等では、所望のスタンプ画像データを作成して印刷できるが、プリンタ装置、プリンタ装置を制御するホストコンピュータ(パーソナルコンピュータ等)を用いるためにシステム構成が大掛かりで高価になり、スタンプ押印の手軽さが無い。また、厚みがある印刷対象物は給紙機構を通過できないため、印刷が不可能である。また、ラベルプリンタなどは、ファイルの背表紙のタイトル印刷など1行の文字列等をラベルに印刷できるが、複数行の文字や面的に拡がった画像等を印刷対象物上に印刷することは不可能である。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、大掛かりなシステムを用いずに、スタンプ押印と同様の手軽さで、印刷対象物上に置いて、複数行の文字や面的に拡がった画像等を印刷対象物に印刷することができ、その印刷する画像,文字の変更やその印刷領域のサイズの変更を容易に行うことができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係る印刷装置は、
印刷対象物に対向して縦横に移動可能に筐体内に取り付けられるとともに、印刷面が印刷対象物に対し一定の距離を保つように前記筐体内に支持されて、液体を吐出する液体ノズルを持つ印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドの移動範囲を所定の印刷領域内に規制する印刷領域設定部と、
印刷データを登録する印刷データ登録部と、
印刷の開始を指示する印刷スイッチ部と、
を備え、
前記印刷スイッチ部の操作によって、前記印刷ヘッドが前記印刷領域内を縦横に移動しながら、前記印刷対象物に対して液体を吐出し、前記印刷データ登録部に登録された印刷データの印刷を行うことを特徴とする。
この構成により、印刷装置の筐体をその印刷面が印刷対象物に対向した状態で印刷対象物上に置き、印刷スイッチ部の操作によって印刷ヘッドを縦方向(Y方向)および横方向(X方向)に往復移動させることにより、印刷対象物および筐体を移動させることなく、予め印刷データ登録部に登録された複数行の文字や広さを持つ画像などを印刷対象物上の所定部位に確実に印刷することができる。
また、印刷ヘッドの移動を印刷データに応じて設定される所定サイズの印刷領域内に規制可能にしたので、印刷対象物のサイズ形状からはみ出さないように印刷することができる。あるいは、印刷対象物に既に形成された画像、文字等と重ならない所望の範囲内に、前記文字や画像等を印刷することができる。
しかも、印刷ヘッドが印刷対象物に対して、印刷に適する一定距離に保たれるため、液体吐出ノズルから吐出されるインク等の液体の吐出距離を最適に保ちながら、印刷対象物上に文字や画像をクリアに印刷することができる。
【0007】
また、好ましくは、前記印刷ヘッドが搭載されたキャリッジを横方向に移動可能に支持するキャリッジ搬送軸と、前記キャリッジを前記キャリッジ搬送軸に沿って往復移動させるキャリッジ駆動部と、前記キャリッジ搬送軸を縦方向に移動可能に支持する搬送軸駆動部と、前記キャリッジ駆動部および搬送軸駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部による前記キャリッジ駆動部および搬送軸駆動部の制御により、前記印刷ヘッドを縦横に移動させて、前記印刷データ登録部に登録された印刷データを印刷対象物に対して印刷することを特徴とする。
この構成により、制御部によるキャリッジ駆動部および搬送軸駆動部の制御によって、印刷対象物上でこの印刷対象物とともに筐体を移動することなく、印刷対象物上の指定された所定位置に印刷ヘッドを縦横自在に移動させることができる。これにより、印刷データ登録部に登録された複数行の文字や面的に広がりを持つ画像等の印刷を、印刷対象物上に行うことができる。
また、好ましくは、前記印刷領域設定部は、入力キーの操作により入力された値に基づいて、印刷領域のサイズを設定することを特徴とする。
これにより、入力キーの操作による印刷領域のサイズの変更を行うことで、印刷対象物のサイズ形状に適合した印刷ができる、印刷対象物に既に形成された画像、文字等と重ならないようにするなど、所望の範囲内に印刷することができる。
また、好ましくは、前記印刷領域設定部は、前記印刷対象物上の印刷可能領域を検出する画像検出部が検出したデータに基づいて、印刷領域のサイズを設定することを特徴とする。
これにより、印刷対象物のサイズ形状を検出して、これをはみ出さない印刷領域のサイズの設定ができる。あるいは、印刷対象物上に形成された画像、文字等を画像検出部で検出して、これらに重ならないように印刷領域のサイズを設定することができる。
また、好ましくは、前記データ入力部を設け、このデータ入力部に入力したデータをドットイメージに変換して、当該ドットイメージを印刷データとして、前記印刷データ登録部へ送信することを特徴とする。
これにより、データ入力部から入力された画像データあるいは文字データを、ドットイメージに展開してこのドットイメージデータを印刷データとして印刷データ登録部へ送信することができる。
また、好ましくは、前記印刷データ登録部は、複数の印刷データの登録が可能であることを特徴とする。
これにより、複数のデータ対応の文字や図形を印刷対象物上に順次又は同時に印刷することができる。
また、好ましくは、前記印刷データ登録部に登録された印刷データの文字や画像を表示する表示部を有することを特徴とする。
これにより、表示部に表示された文字や画像の内容を確認した上で、印刷することができる。
また、好ましくは、複数の印刷データのひとつを選択する印刷データ選択部を有することを特徴とする。
これにより、選択した印刷データ対応の文字や画像のみを印刷対象物上に印刷することができる。
また、好ましくは、前記印刷スイッチ部は、当該印刷装置の筐体底部を前記印刷対象物に押し当てる動作に連動して印刷を開始させるスイッチであることを特徴とする。
これにより、印刷スイッチ部を手動操作しなくても印刷対象物に当該印刷装置の筐体底部を押し当てる動作(スタンプの押印と同様の動作)をすることで自動的に印刷することができる。
また、好ましくは、印刷の終了を通知する印刷終了通知部を有することを特徴とする。
これにより、ユーザは印刷終了の通知を受けたことを確認した上で、筐体を移動させて、新たに印刷を開始することができる。
また、好ましくは、前記印刷データ登録部は、前記印刷データを記憶する不揮発性メモリを備えることを特徴とする。
これにより、印刷装置の電源が切られた場合にも、印刷データ登録部に格納された印刷データが不用意に消去されることを回避できる。
また、好ましくは、インク系の異常、バッテリ残量の低下、印刷データ登録部、印刷領域設定部の異常のうちの少なくとも一つを検出する異常検出部が設けられていることを特徴とする。
これにより、印刷の実行不可能または印刷ミスが発生するのを回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明に係る印刷装置の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る印刷装置を概念的に示す斜視図、図2は印刷装置の一部を破断して示す正面図、図3は印刷装置の底面図である。
【0009】
図1に示すように、本実施の形態に係る印刷装置はスタンプ型をなし、液体吐出ノズルを印刷ヘッドに配置したプリンタと略同様の機能を備える。この印刷装置1は、全体として円筒形の筐体21と台形の筐体22とを一体に連接したものからなる。
【0010】
筐体21、22は金属板や合成樹脂の成形品からなり、それぞれには印刷制御用の電子回路や印刷ヘッドを含む印刷機構などが収納されている。筐体21は、上面に印刷データの入力および選択やキーコード入力等のための各種入力キー23や、入力データの確認などに用いられる表示部24等を備えている。
【0011】
筐体21の外周には、印刷の開始を指示する印刷スイッチ部25のほか、印刷データ等を格納したメモリカードの挿入孔26が設けられている。印刷スイッチ部25には押下スイッチなどが用いられる。メモリカードは不揮発性メモリ素子等を使用した各種メモリカードである。挿入孔26は、各種メモリカードに適合する形状、サイズに形成されている。
【0012】
一方、台形の筐体22内には、図2および図3に示すように、印刷機構27が設けられている。この印刷機構27はキャリッジ搬送軸28と、キャリッジ駆動部29と、並行搬送軸30と、搬送軸駆動部31とを備えている。これらのうち、キャリッジ搬送軸28は印刷ヘッド32が搭載されたキャリッジ33を横方向(X方向)に移動可能にする。このため、キャリッジ33はキャリッジ搬送軸28に対し螺合されている。
【0013】
キャリッジ搬送軸28の回転により、キャリッジ33はその軸方向に図示しないガイドに案内されることにより、回転することなくX方向に水平移動可能になっている。また、キャリッジ搬送軸28の一端はブロック34上のキャリッジ駆動部(モータ)29に連結されて駆動可能であり、他端は他のブロック36上の軸受部材37に回転自在に支持されている。
【0014】
並行搬送軸30は、キャリッジ搬送軸28に対し直交する方向(Y方向)に2本分並行配置されている。これらの並行搬送軸30は、前記ブロック34、36のそれぞれを移動可能に支持する。このため、各ブロック34、36は各並行搬送軸30に対し螺合されている。各並行搬送軸30は互いに同一方向に同一回転量(同一回転数)回転するため、各ブロック34、36も同一方向に同一移動量水平移動する。
【0015】
一方、並行搬送軸30の一端は搬送駆動部(モータ)31に連結されて駆動可能であり、他端は軸受部材38に回転自在に支持されている。また、搬送軸駆動部31近傍の並行搬送軸30上にはプーリ39が取り付けられている。他方の並行搬送軸30の両端は各位置の軸受部材40、41にそれぞれ支持され、その一端には前記プーリ39と同一径のプーリ42が取り付けられている。これらのプーリ39、42にはベルト43が架設されている。
【0016】
このため、搬送軸駆動部31は各並行搬送軸30を同時に同一方向に、同量回転させる。従って、印刷機構27にあっては、キャリッジ駆動部29および搬送軸駆動部31の駆動量を制御することにより、キャリッジ33を筐体22内において縦横に移動させることができる。
また、図2に示すように、印刷ヘッド32は、筐体22の下端に対し僅かに上方に臨んでいる。つまり、印刷ヘッド32に設けられた各液体吐出ノズルと筐体22の下端との間が、液体吐出印刷に適する一定の吐出距離Gに保たれている。また、この吐出距離Gは、印刷対象物2に対する画像等の印刷品質を良好に維持することができる。
【0017】
次に、本実施の形態に係る印刷装置1の内部構成について説明する。
図4はこの印刷装置1の内部構成を示すブロック図である。この印刷装置1は、印刷データ登録部51と、表示部24と、印刷データ選択部52と、印刷部27と、印刷スイッチ部25と、印刷領域設定部53と、電源用のバッテリ57と、データ入力部55と、制御部56と、を備える。
【0018】
これらのうち印刷データ登録部51は、複数種類の印刷データを登録可能な不揮発性メモリ等のメモリ(記憶素子)などからなる。従って、印刷装置1の電源が何らかの原因で切れても、印刷データ登録部51に格納された印刷データは消失しない。印刷データは、例えば年賀状の「謹賀新年」、クリスマスカードの「メリークリスマス」などの印影である。これらの印刷データは、図1における挿入孔26に挿入されたメモリカードに記録されたデータを取り込むことによって、印刷データ登録部51に格納される。
【0019】
表示部24は、入力キー23のいずれかの操作によって、印刷データ登録部51に登録された印刷データの文字や画像を表示する。これにより、印刷データの文字や画像を確認することができる。この表示部24は、例えば液晶パネル、有機ELパネル、電子ペーパーなどで構成される。
【0020】
印刷データ選択部52は、表示部24に表示して確認した印刷データをキー入力により特定して印刷データを選択するものである。
【0021】
印刷部27は、印刷データ選択部52で選択された印刷データの文字や画像を印刷対象物2に印刷するものである。この印刷部27は、液体吐出ノズルを印刷面に配置した印刷ヘッド32を含む。この印刷ヘッド32は前述のようにキャリッジ駆動部29および搬送軸駆動部31の駆動によって縦横に移動しながら液体を吐出して、印刷対象物2上に印刷データを印刷することができる。
【0022】
なお、印刷スイッチ部25は押下スイッチに限定するものではなく、印刷対象物2に筐体22の底部を押し当てる動作(スタンプの押印と同様の動作)に連動して印刷を開始させるスイッチとして、圧力センサスイッチを筐体22の底部に設置するなどしてもよい。前記圧力センサスイッチとしては、歪ゲージ型、半導体ストレインゲージ、光スイッチ、ダイアフラムスイッチなど、周知のものの中から任意に選択して使用することができる。
【0023】
印刷領域設定部53は、印刷ヘッド32の移動範囲を所定サイズの印刷領域内に規制するように印刷領域を設定する。この印刷領域は手動または自動的に設定することができる。従って、印刷対象物である年賀状やグリーティングカード等のサイズ形状に応じて印刷領域を設定できる。あるいは、既に印刷対象物に形成されている画像や文字等に重ならないように印刷するべく印刷領域を設定することができる。
【0024】
この印刷領域のサイズの手動設定は、前記入力キー23のいずれかの操作によって実施できる。また、光センサ54(画像検出部)で検出した、印刷対象物2のサイズ形状、印刷対象物2上の画像、文字等から印刷可能領域を検出したデータに基づき、印刷領域設定部53が、その画像、文字等を避けるように、印刷領域のサイズを自動設定するようにしてもよい。
【0025】
この印刷領域設定部53は、設定した印刷領域を変更したり、変更後に固定したりすることができる。この印刷領域の変更や固定は、印刷領域のサイズと印刷データの文字や画像のサイズとの比較により実施される。なお、印刷データが現在の印刷領域のサイズでは印刷できないサイズであることを、印刷領域設定部53が判断すると、表示部24に異常を表示したり、図示しないブザーや発光ダイオード等で警報することとなる。
【0026】
また、制御部56は印刷領域設定部53が前記印刷領域を設定した場合には、印刷を開始または停止させることができる。この印刷領域設定部53の併用によって、サイズが異なる画像等の印刷が可能になる。
【0027】
データ入力部55は、印刷データを入力する部分であり、例えば、メモリカードの挿入孔26から挿入されたメモリカードに記憶された所定の画像フォーマット(例えば、BMP、JPG、GIF、TIFF等)のデータをドットイメージデータに変換して、あるいは、文字フォントデータを使用して、メモリカードに記憶された文字データをドットイメージに変換するようにしてもよい。そして、ドットイメージに変換したデータを印刷データ登録部51へ送信する。
【0028】
なお、メモリカードに入っているデータが本実施の形態の印刷装置1に最適なドットイメージの印刷データであれば、上記ドットイメージへの変換処理は省略できる。
【0029】
また、制御部56は、前記各部の動作を制御する。例えば、キャリッジ駆動部29や搬送軸駆動部31の作動によって、キャリッジ搬送軸28および並行搬送軸30を所定の制御量まで駆動するように制御する。バッテリ57は、各部に対し所定レベルの電源電力を供給する。なお、このバッテリ57に代えて外部電源を使用することは任意である。
【0030】
また、前記制御部56は、インク系の異常やバッテリ残量の低下あるいはメモリの異常(エラー)を、図示しないインク残量検出器、バッテリ残量検出器、メモリ異常検出器等の出力に基づいてそれぞれ検出するように機能する。また、このエラー検出結果を表示部24や図示しない発光ダイオード等のエラー表示器に表示させることができる。これらのエラー検出に、専用のエラー検出部およびエラー表示部を別途用意してもよい。
【0031】
次に、この印刷装置の動作を、図5〜図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。
まず、印刷装置の登録処理手順について、図5、図6を参照して説明する。
図5は、本発明の実施の形態に係る印刷装置の印刷データの入力手順の一例を示すフローチャートである。図6は、本発明の実施の形態に係る印刷装置の登録処理手順を示すフローチャートである。
登録処理に先だって、印刷データの入力手順の一例を挙げて図5を参照して説明する。
【0032】
まず、メモリカードの挿入孔26からメモリカードを挿入する。データ入力部55は、このメモリカードの挿入を検知(ステップS101)し、メモリカードから印刷データとなる画像データ(あるいは文字データ)を読み込む(ステップS102)。データ入力部55は、読み込んだ画像データ(あるいは文字データ)をドットイメージに変換する(ステップS103)。
【0033】
変換されたドットイメージは印刷データとして、印刷データ登録部51へ送信される(ステップS104)。
【0034】
以上のステップS101〜S104のようにして、送信された印刷データは、以下のように登録処理される。
まず、図6に示すように、印刷データ登録部51に既に印刷データが登録されているか否かを調べる(ステップS1)。印刷データがあった場合(ステップS1:YES)には、さらに印刷データの変更が必要か否かを調べる(ステップS2)。
【0035】
一方、印刷データがない場合(ステップS1:NO)には、入力した印刷データを保存する(ステップS4)。
【0036】
印刷データの変更が必要な場合には、入力した印刷データを登録済みの印刷データに上書きが可能か否かを判別する(ステップS3)。判別内容の詳細は、既存の印刷データと入力した印刷データのサイズや、印刷データ登録部51として使用するメモリの電気的特性により異なる。
【0037】
データ変更の必要がない場合(ステップS2:NO)には、処理を終了する。また、ステップS3による判別の結果上書きが可能な場合には、入力した印刷データを印刷データ登録部51に保存(登録)する(ステップS4)。
【0038】
一方、上書き不可能な場合には、登録済みの印刷データを一旦削除した後で(ステップS5)、入力した印刷データを保存する(ステップS4)。
【0039】
続いて、印刷データ登録部51の不揮発性メモリ等のメモリに異常があるか否かを調べる(ステップS6)。メモリ異常がなければ、ユーザが登録しようとする印刷データが正しいか否かを確認する(ステップS7)。正しい印刷データである場合には処理を終了する。
正しい印刷データか否かの判定は表示部24に保存する印刷データを表示し、ユーザがこれを確認する。
【0040】
そして、この正しい印刷データを以後の印刷データとして印刷に利用することになる。また、正しい印刷データでない場合には、ステップS3以下の処理を繰り返し実行する。この処理は印刷データごとに実行される。
【0041】
また、ステップS6において、印刷データ登録部51にメモリ異常があると判定された場合には、その印刷データ登録部51にメモリ異常があることを、表示部24にてエラーを表示して(ステップS8)、処理を終了する。
【0042】
次に、印刷装置1による印刷処理手順を、図7を参照して説明する。図7は、本発明の実施の形態に係る印刷装置1の印刷手順の一例を示すフローチャートである。なお、ここでは、印刷領域のサイズを手動で変更する場合を述べる。
【0043】
まず、印刷データ登録部51に印刷データが登録されているか否かを調べる(ステップS11)。印刷データの登録がある場合には、印刷データ登録部51から印刷データを読み出して、表示部24に表示する。また、入力キー23によるユーザ指示に基づき印刷データ選択部52が特定の印刷データを選択する(ステップS12)。
【0044】
また、ステップS11において印刷データ登録部51に印刷データがない場合には、登録データなしとの判定に基づき、表示部24にエラーを表示して(ステップS13)、処理を終了する。
一方、印刷データを選択した(ステップS12)後、印刷対象物2の印刷を所望する部分に印刷装置1を置く。このとき、印刷ヘッド32の移動可能範囲を印刷領域として、入力キー23の操作により印刷領域のサイズを変更する(ステップS14)。この印刷領域のサイズの変更指示は制御部56に伝えられ、制御部56はキャリッジ駆動部29および搬送軸駆動部31の駆動量を設定する。
【0045】
上記ステップS14にて変更した印刷領域のサイズと印刷データのサイズとの比較が行われ、変更後の印刷領域のサイズに異常がないこと(印刷データが変更後の印刷領域のサイズに収まること)を確認する(ステップS15)。変更後の印刷領域のサイズに異常がある(印刷データが変更後の印刷領域のサイズに収まらない)場合(ステップS15:NO)は、表示部24にエラーを表示し(ステップS18)、ステップS14に戻り、印刷データが印刷領域のサイズに収まるまで、印刷領域のサイズを変更する。
【0046】
変更後の印刷領域のサイズに異常がなければ(印刷データが変更後の印刷領域のサイズに収まれば)(ステップS15:Yes)、印刷開始の待機状態となり、印刷スイッチ部25に対する押下操作を検出する(ステップS16)。印刷スイッチ部25の押下操作が検知されると(ステップS16:Yes)、印刷部(印刷機構)27は前記キャリッジ駆動部29および搬送軸駆動部31によりキャリッジ搬送軸28および並行搬送軸30のそれぞれを駆動させることにより、キャリッジ33とともに印刷ヘッド32を印刷データの入力順に従って縦横に移動させる。このとき、印刷ヘッド32の各ノズルを駆動し、文字や画像などの印刷データを印刷する(ステップS17)。
印刷領域のサイズに異常がない(ステップS15:Yes)場合、印刷待機状態となったことを表示部24に表示するようにしても良い。これにより、ユーザは印刷スイッチ部25を押下操作するタイミングを知ることができる。
【0047】
次に、本発明の実施の形態に係る印刷装置1で印刷領域のサイズを自動変更して印刷する場合の印刷処理手順を図8を参照して説明する。
【0048】
まず、図8において、制御部56は、印刷データ登録部51に印刷データが登録されているか否かを検出する(ステップS21)。
ステップS21において印刷データ登録部51に印刷データがない場合(ステップS21:No)には、登録データなしとの判定に基づき、表示部24等にエラーを表示して(ステップS22)、処理を終了する。
印刷データの登録がある場合(ステップS21:Yes)には、印刷データ登録部51から印刷データを読み出して、表示部24に表示する。この表示をユーザが確認して入力キー23を操作すると、入力キー23からの入力情報に基づき印刷データ選択部52が特定の印刷データを選択する(ステップS23)。
【0049】
次に、印刷対象物の印刷を所望する部分に印刷装置1を置く。このとき、制御部56の制御により、前記キャリッジ駆動部29および搬送軸駆動部31を駆動することで、キャリッジ33とともに印刷ヘッド32を移動させて、その移動領域を規制し、印刷領域の印刷領域のサイズの変更を行う(ステップS24)。
【0050】
続いて、変更後の印刷領域のサイズに異常がないか(印刷データが変更後の印刷領域のサイズに収まるか)を確認し(ステップS25)、変更後の印刷領域のサイズに異常がなければ(印刷データが変更後の印刷領域のサイズに収まれば)(ステップS25:Yes)、印刷開始の待機状態となり、印刷スイッチ部25に対する押下操作の検出確認をする(ステップS26)。
印刷領域のサイズに異常がない(ステップS25:Yes)場合、印刷待機状態となったことを表示部24に表示するようにしても良い。これにより、ユーザは印刷スイッチ部25を押下操作するタイミングを知ることができる。
【0051】
押下操作の検出(ステップS26:Yes)によって、印刷部27は、印刷ヘッド32のノズルから液体を吐出させ、選択された印刷データの印刷をする(ステップS27)。
【0052】
一方、印刷領域のサイズに異常があった場合には(ステップS25:No)、エラーを表示して(ステップS28)、処理を終了する。このようにして、印刷装置による印刷データの登録処理と印刷処理が実行される。
【0053】
なお、印刷の終了時には、図示しない印刷終了通知部が印刷終了情報を文字や音声によってユーザに通知するようにする。これにより、ユーザは印刷の終了を確認した上で筐体を移動させ、新たに印刷を開始することができる。
【0054】
また、ステップS24の印刷領域の印刷領域のサイズの変更の際に、光センサ54が印刷対象物2のサイズ形状、および印刷対象物2上の画像、文字等から印刷可能領域を検出する。この検出結果に基づき、印刷領域設定部53は、印刷対象物2上で検出した画像、文字等を避けるように印刷領域の印刷領域のサイズの変更を行うようにしてもよい。
【0055】
なお、上述の実施形態のメモリカードに変えて、光ディスク、光磁気ディスク、磁気ディスク、あるいはその他の記憶媒体を用いてもよい。また、データ入力部55は、画像や文字データの入ったメモリカードを挿入部26に挿入することにより、印刷データを入力するものとしたが、前記メモリカードによるデータ入力に替えて(あるいは加えて)、有線又は無線によってホストコンピュータやネットワークと接続する機構及びインタフェース等を設け、印刷データとなる画像や文字データを入力するようにしてもよい。
【0056】
なお、上述の実施の形態では手持ち操作が可能なサイズの印刷装置を例に挙げて述べたが、本発明の印刷装置の筐体の大きさは任意であり、上述の縦横に移動可能な印刷機構(印刷部27)等を、例えば大判の印刷対象物に対して印刷を行う大型の印刷装置に適用することも可能である。
【0057】
また、上述の実施の形態ではインクジェットタイプの印刷ヘッドを例に挙げて説明したが、インパクトプリント用の印刷ヘッドへの応用も可能である。さらに、印刷のインクをカラーとすることで、カラー画像等の印刷装置としての使用も可能になる。
【0058】
以上、詳述したように、本実施の形態に係る印刷装置1によれば、印刷装置1の筐体をその印刷面が印刷対象物2に対向した状態で印刷対象物2上に置き、印刷装置1の筐体を印刷対象物2上に載せた状態で、印刷スイッチ部25の操作によって印刷ヘッド32を縦方向(Y方向)および横方向(X方向)に往復移動させることにより、印刷対象物2および筐体を移動させることなく、予め印刷データ登録部51に登録された複数行の文字や広さを持つ画像などを印刷対象物2上の所定部位に確実に印刷することができる。
また、印刷ヘッド32の移動を印刷データに応じて設定される所定サイズの印刷領域内に規制可能としたことで、印刷対象物2に既に形成された画像、文字等と重ならないようにするなど、所望の範囲内に文字や画像を印刷することができる。
しかも、印刷ヘッド32が印刷対象物2に対し、印刷に適する一定距離に保たれるため、液体吐出ノズルからのインクの吐出距離Gが最適に保たれて、印刷対象物2上に文字や画像をクリアに印刷できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態に係る印刷装置を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る印刷装置を一部破断して示す正面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る印刷装置を示す底面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る印刷装置の内部構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る印刷装置の印刷データの入力手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態に係る印刷装置の登録処理手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態に係る印刷装置の印刷手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態に係る印刷装置で印刷領域のサイズを自動変更して印刷する場合の印刷処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
1:印刷装置、2:印刷対象物、21、22:筐体、23:入力キー、24:表示部、25:印刷スイッチ部、26:挿入孔、27:印刷部、28:キャリッジ搬送軸、29:キャリッジ駆動部、30:並行搬送軸、31:搬送軸駆動部、32:印刷ヘッド、33:キャリッジ、51:印刷データ登録部、52:印刷データ選択部、53:印刷領域設定部、54:光センサ、55:データ入力部、56:制御部、57:バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象物に対向して縦横に移動可能に筐体内に取り付けられるとともに、印刷面が印刷対象物に対し一定の距離を保つように前記筐体内に支持されて、液体を吐出する液体ノズルを持つ印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドの移動範囲を所定の印刷領域内に規制する印刷領域設定部と、
印刷データを登録する印刷データ登録部と、
印刷の開始を指示する印刷スイッチ部と、
を備え、
前記印刷スイッチ部の操作によって、前記印刷ヘッドが前記印刷領域内を縦横に移動しながら、前記印刷対象物に対して液体を吐出し、前記印刷データ登録部に登録された印刷データの印刷を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記印刷ヘッドが搭載されたキャリッジを横方向に移動可能に支持するキャリッジ搬送軸と、
前記キャリッジを前記キャリッジ搬送軸に沿って往復移動させるキャリッジ駆動部と、
前記キャリッジ搬送軸を縦方向に移動可能に支持する搬送軸駆動部と、
前記キャリッジ駆動部および搬送軸駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部による前記キャリッジ駆動部および搬送軸駆動部の制御により、前記印刷ヘッドを縦横に移動させて、前記印刷データ登録部に登録された印刷データを印刷対象物に対して印刷することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷領域設定部は、入力キーの操作により入力された値に基づいて、印刷領域のサイズを設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷領域設定部は、前記印刷対象物上の印刷可能領域を検出する画像検出部が検出したデータに基づいて、印刷領域のサイズを設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項5】
データ入力部を有し、該データ入力部が入力されたデータをドットイメージに変換して、当該ドットイメージを印刷データとして、前記印刷データ登録部へ送信することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記印刷データ登録部は、複数の印刷データの登録が可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記印刷データ登録部に登録された印刷データの文字または画像を表示する表示部を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項8】
複数の印刷データのひとつを選択する印刷データ選択部を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記印刷スイッチ部は、当該印刷装置の筐体底部を前記印刷対象物に押し当てる動作に連動して印刷を開始させるスイッチであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項10】
印刷の終了を通知する印刷終了通知部を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記印刷データ登録部は、前記印刷データを記憶する不揮発性メモリを備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項12】
インク系の異常、バッテリ残量の低下、印刷データ登録部、印刷領域設定部の異常のうちの少なくとも一つを検出する異常検出部が設けられていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−262415(P2009−262415A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114923(P2008−114923)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】